説明

ナノ粒子含有複合多孔体およびその製造方法

本発明のナノ粒子含有複合多孔体は、固体骨格部1aと細孔1bとを有する多孔体1と、無機物質のナノ粒子2とを含む。ナノ粒子2は、互いに凝集することなく、且つ、固体骨格部に化学結合することなく担持されている。ナノ粒子2を有機凝集体3で覆った複合粒子体4として固体骨格部に担持してもよい。有機凝集体3としては、球殻状タンパク質やデンドリマーなどの球状有機凝集体を好適に用いることができる。また、有機凝集体は必要に応じて分解除去してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ナノ粒子を含む複合多孔体およびその製造方法に関する。本発明のナノ粒子含有複合多孔体は、ナノ粒子の特徴を生かしたフィルタやガス吸着材、脱臭材などの触媒担持体、電池や化学センサなどの電気化学素子、蛍光体や光変調などの光学素子等に好適に用いることができる。
【背景技術】
ナノメートルサイズの微粒子であるナノ粒子は、幾何学的な高い比表面積を有している上に、量子サイズ効果の発現が期待されるために、触媒反応や発光特性などの化学的および物理的な変換特性の向上など、バルク材料では得られなかった新機能が期待される。
このようなナノ粒子をデバイスへ用いる場合には、支持体へ担持する必要がある。支持体として、ナノ粒子の比表面積の高さを生かし、効率の高い反応を行わせるために、ハニカム構造、繊維集合体あるいは粒集合体などの多孔構造を有する支持体(以下「多孔体」という。)が好適に用いられる。また、ナノ粒子を担持した多孔体は、多孔体を形成する原料材料にナノ粒子または原料粒子(前駆体粒子)を混合し、あるいは多孔体をナノ粒子または原料粒子を含む溶液に含浸することによって得られる。
しかし、このような方法では、ナノ粒子が凝集してしまい、本来ナノ粒子の持っている活性が低下したり、それを用いたデバイスの効率が低下したりしてしまうことになる。したがって、ナノ粒子の特徴を生かすために、ナノ粒子を均質に分散する方法が必要であり、その開発が行われている。特に、電極反応に用いる触媒においては、できるだけ少ない量でかつ高い効率を得るために、ナノサイズの触媒粒子を凝集させることなく均質に最適な濃度で形成する必要がある。そのための方法として、担持体の構造を制御することによってナノサイズの触媒粒子を形成しながら分散する技術が検討されている。例えば、特開2002−159851号公報では、カーボンナノホーンを用いてその幾何学的な構造によって触媒を形成するサイズを小さくすることによって担持体の構造を制御する方法が開示されている。また、特開2000−012041号公報では、カーボン担持体に固体高分子電解質を表面に塗布した際に形成される孔によって幾何学的に触媒を形成するサイズを小さく制御する方法が開示されている。また、他の方法として、予め形成されたナノ粒子に凝集を防ぐための表面処理を行ったり、粒子を拡散性の高い溶媒を用いたりすることによって多孔体へ凝集しにくく分散する方法がY.Tai,M.Watanabe,K.Kaneko,S.Tanemura,T.Miki,J.Murakami,and K.Tajiri,ADVANCED MATERIALS,13巻,21号,1611頁から1614頁(2001年)や特開2001−089129号公報に開示されている。
また、粒径が均一なナノ粒子を作製する方法としては、コロイドのように溶液中での合成方法や、真空中での加熱やレーザーアブレーションでの乾式プロセスによる方法などが知られている。また、均一な粒径のナノ粒子を得るために、構造の特定された有機化合物の内部にてナノ粒子を形成する方法が検討されている。例えば、タンパク質であるフェリチンを用いた方法が特開平11−045990号公報および特開平11−204774号公報に開示されており、デンドリマー高分子を用いた方法が国際公開公報WO98/30604(対応国内公表:特表2001−508484号公報)に開示されている。国際公開公報WO98/30604の全ての開示内容を参考のために本明細書に援用する。
上記のように、高活性なナノ粒子の特性を生かすために、それらを凝集することなく支持体に担持する技術は重要である。そのために、触媒などの粒子を凝集させることなく均質に分散する方法は従来から多くの検討がされているが、それらは応用展開毎に検討が進められおり、さらなる性能向上のために新しい技術の開発が求められている。
担持体の構造を制御することによってナノサイズの触媒粒子を形成しながら分散する技術は、支持体となる担持体の構造をその利用目的によって開発する必要がある。また、予め形成されたナノ粒子に表面処理を行うことによって多孔体へ凝集しないように分散する技術は、ナノ粒子が作製時に凝集を防ぐことも兼ねている。例えば、金コロイドなどではコロイド状粒子の表面に保護材を形成して凝集を避ける方法などが知られており、上記のY.Taiらによる文献では保護材を吸着した金のナノ粒子が用いられている。しかしながら、ナノ粒子の固体全体の特性を利用する光学的、電気的な用途においては、この保護材はさほど問題とはならないが、触媒や吸着材などのナノ粒子の表面を利用する用途においては、この保護材の存在が効率低下の要因となる。その対策として、ナノ粒子を担持してから保護材を除去することもできるが、従来のイオン性の静電的な保護材や界面活性剤の吸着による保護材では、その保護がナノ粒子の一部を覆うことで効果が得られるものであり、除去する際に隣接したナノ粒子との凝集を生じたりすることがある。また、多孔体を原料から形成する際に保護材を用いたナノ粒子を混合して作製した場合には、多孔体の固体骨格部にナノ粒子が含まれてその固体骨格部に覆われるものが多くなってしまい、保護材を除去した後もその活性が抑制されてしまうこともある。
さらに、均一な粒径のナノ粒子を応用する技術としてフェリチンタンパク質やデンドリマー高分子を利用することが開示されているが、これらの技術では有機化合物とナノ粒子が複合した構造を幾何学的な効果を用いることが検討されている。しかしながら、これらの特性を利用してナノ粒子の高活性を生かすために多孔体へ分散担持する技術としては開示されていない。なお、特開平4−285081号公報では、多孔質シリカを形成するための鋳型としてデンドリマー高分子を用いる製造方法が開示されているが、ナノ粒子の担持技術としては何ら開示されていない。
【発明の開示】
上記の従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、高活性なナノ粒子の特性を低下させることなく担持したナノ粒子含有複合多孔体およびその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の局面によるナノ粒子含有複合多孔体は、固体骨格部と細孔とを有する多孔体と、無機物質のナノ粒子とを含み、前記ナノ粒子は、互いに凝集することなく、且つ、前記固体骨格部に化学結合することなく担持されていることを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
ある実施形態において、前記ナノ粒子は前記固体骨格部内に担持されている。
ある実施形態において、前記ナノ粒子含有複合多孔体は、有機凝集体を更に有し、前記有機凝集体は前記ナノ粒子を覆い、複合体粒子を形成しており、前記ナノ粒子は前記固体骨格部に前記有機凝集体を介して担持されている。
ある実施形態において、前記有機凝集体は前記固体骨格部に化学結合している。
ある実施形態において、前記有機凝集体は秩序構造を有している。例えば、デンドリマーなどの樹状高分子は、自己組織化構造を形成する。
ある実施形態において、前記有機凝集体は球状有機凝集体である。
ある実施形態において、前記球状有機凝集体が球殻状タンパク質である
ある実施形態において、前記球殻状タンパク質がフェリチンである。
ある実施形態において、前記球状有機凝集体が樹状高分子である。
ある実施形態において、前記樹状高分子がデンドリマーである。
ある実施形態において、前記多孔体の前記固体骨格部が網目構造を形成している。
ある実施形態において、前記多孔体が無機酸化物の乾燥ゲルである。
ある実施形態において、前記多孔体がカーボン多孔体である。
本発明の第2の局面によるナノ粒子含有複合多孔体の製造方法は、無機物質のナノ粒子と前記ナノ粒子を覆う有機凝集体とを有する複合体粒子を用意する工程と、多孔体を作製するための原料溶液を調製する工程と、前記原料溶液に前記複合体粒子を混合する工程と、前記原料溶液から固体骨格部と細孔とを有する多孔体を形成する工程であって、前記複合体粒子を分散した状態で含む多孔体を形成する工程とを包含することを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
ある実施形態において、有機凝集体を用意する工程と、多孔体を作製するための原料溶液を調製する工程と、前記原料溶液に前記有機凝集体を混合する工程と、前記原料溶液から固体骨格部と細孔とを有する多孔体を形成する工程であって、前記有機凝集体を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、前記多孔体に含まれる前記有機凝集体の内部にナノ粒子を形成する工程とを包含する。
ある実施形態において、無機物質のナノ粒子と前記ナノ粒子を覆う有機凝集体とを有する複合体粒子を含む溶液を用意する工程と、固体骨格部と細孔とを有する多孔体を用意する工程と、前記多孔体を前記溶液中に浸漬することによって、前記多孔体に前記複合体粒子を分散した状態で含む多孔体を形成する工程とを包含する。
ある実施形態において、有機凝集体を含む溶液を用意する工程と、固体骨格部と細孔とを有する多孔体を用意する工程と、前記多孔体を前記溶液中に浸漬することによって、前記多孔体に前記有機凝集体を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、前記多孔体に含まれる前記有機凝集体の内部にナノ粒子を形成する工程とを包含する。
ある実施形態において、前記多孔体はゾルゲル法によって形成される。
ある実施形態において、前記多孔体を乾燥する工程をさらに包含する。
ある実施形態において、前記多孔体の固体骨格部はカーボン前駆体から形成されており、前記乾燥工程の後に、前記カーボンを炭化することによってカーボン多孔体を形成する工程をさらに包含する。
ある実施形態において、前記多孔体に含まれる前記有機凝集体を分解する工程をさらに包含する。
ある実施形態において、前記分解工程は、前記有機凝集体を加熱する工程を包含する。
ある実施形態において、前記分解工程において、前記有機凝集体を実質的に除去する。
ある実施形態において、前記ナノ粒子を形成する工程は、前記ナノ粒子の前駆体を調製する工程と、前記前駆体をナノ粒子に変換する工程とを包含する。
ある実施形態において、前記多孔体に含まれる前記有機凝集体を分解する工程をさらに包含し、前記前駆体を変換する工程は、前記有機凝集体を分解する工程において実行される。
本発明の他の局面によるナノ粒子含有複合多孔体は上記のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする。上記のいずれかに記載の製造方法を用いることによって、第1の局面のナノ粒子含有複合多孔体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による実施形態のナノ粒子含有複合多孔体10の構造を模式的に示す図である。
図2は、ナノ粒子含有複合多孔体10におけるナノ粒子の担持状態を説明するための模式図である。
図3は、本発明による他の実施形態のナノ粒子含有複合多孔体20の構造を模式的に示す図である。
図4は、本発明のナノ粒子含有複合多孔体に用いられる複合体粒子(フェリチン粒子)を説明する図である。
図5(a)および(b)は、本発明のナノ粒子含有複合多孔体に用いられる他の複合体粒子を説明する図であり、図5(a)は、デンドリマーによるナノ粒子複合体を示す模式図であり、図5(b)はデンドリマーを示す模式図である。
図6は、本発明による他の実施形態のナノ粒子含有複合多孔体におけるナノ粒子の担持状態を説明するための模式図である。
図7は、従来のナノ粒子含有複合多孔体の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明による実施形態のナノ粒子含有複合多孔体は、固体骨格部と細孔とを有する多孔体と、無機物質のナノ粒子とを含み、ナノ粒子は、互いに凝集することなく、且つ、固体骨格部に化学結合することなく担持されている。ナノ粒子は、例えば無機化合物や金属などから形成されている。
ナノ粒子を担持する支持体として多孔体を用いることによって、比表面積の高いナノ粒子を空間的に効率良く配置させることによって、ナノ粒子の利用効率を高めることができる。さらに、ナノ粒子が互いに凝集することが防止されるとともに、ナノ粒子が多孔体の固体骨格部に化学結合しない状態で多孔体に担持されているので、ナノ粒子の特異な機能が阻害されず、十分に発現される。
多孔体としては、ハニカム構造体、繊維体集合体、セラミック粒焼結体のような粒集合体などの多孔構造を有する支持体を利用することができる。特に、ナノサイズの細孔を有し、かつ、高比表面積な網目構造を形成する固体骨格部を有する多孔体を用いることが好ましい。このような多孔体としては、例えば、ゾルゲル法によって作製される湿潤ゲルおよび湿潤ゲルを乾燥することによって得られる乾燥ゲルを好適に用いることができる。
(ナノ粒子含有複合多孔体の構成)
まず、本発明による実施形態のナノ粒子含有複合多孔体の構成を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明による実施形態のナノ粒子含有複合多孔体10の構造を模式的に示す図であり、ナノ粒子含有複合多孔体10の一部分を拡大して示している。
ナノ粒子含有複合多孔体10は、固体骨格部1aと細孔1bとを有する多孔体1に、ナノ粒子2が凝集することなく担持されている。ナノ粒子2が互いに凝集せずに存在する状態のことを「均質分散」ということもある。また、ナノ粒子2は、多孔体1を構成する固体骨格部1aと化学結合していない。
ナノ粒子含有複合多孔体10が含むナノ粒子2は、多孔体の固体骨格に化学結合することなく均質分散状態で担持されているので、ナノ粒子2の高比表面積を保持することができると共に、担持による活性低下を防ぐことができる。
ここで、図7に示す従来のナノ粒子含有複合多孔体の構造と比較しながら、本実施形態のナノ粒子含有複合多孔体10の特徴を説明する。
図7に示した従来のナノ粒子含有複合多孔体は、固体骨格部を有する多孔体1の固体骨格部1aにナノ粒子2が担持されている点で、本実施形態のナノ粒子含有複合多孔体10と共通するが、担持されているナノ粒子2は凝集体7を形成している点で異なっている。ナノ粒子2が凝集体7を形成しているので、物理的には、ナノ粒子2の比表面積が低下してしまうことになり好ましくない。また、化学的には、凝集体7においてナノ粒子2の活性な部位同士が結合し、活性低下してしまうことになり好ましくない。
図1に示した本実施形態のナノ粒子含有複合多孔体10では、図7に示したナノ粒子含有複合多孔体における上述の問題が発生せず、ナノ粒子2の特徴を損なうことが抑制・防止される。
本発明による他の実施形態のナノ粒子含有複合多孔体20の構成を図2および図3に模式的に示す。
ナノ粒子含有複合多孔体20は、有機凝集体3を更に有し、有機凝集体3はナノ粒子2を覆い、複合体粒子4を形成しており、ナノ粒子2は固体骨格部1aに有機凝集体3を介して担持されている。それぞれの複合体粒子4は、典型的には図したように1つのナノ粒子2を含んでおり、多孔体1に分散した状態で保持されている。従って、ナノ粒子2が互いに凝集することもないし、ナノ粒子2が固体骨格部1aと結合することもない。なお、複合体粒子4のそれぞれが1つのナノ粒子2を含むことがナノ粒子2の利用効率の観点からは好ましいが、1つの複合体粒子4が複数のナノ粒子2を内包してもよい。但し、この場合にも、1つの複合体粒子4に含まれるナノ粒子2は有機凝集体3によって互いに分離されるように構成する。
複合粒子体4の形態でナノ粒子2を分散すると、ナノ粒子2同士間およびナノ粒子2と固体骨格部1aとの間には有機凝集体3が必ず存在するので、一定の距離で隔たっており、電子顕微鏡等で観察した場合には、透過した電子線によって重なって見える他は単一の粒子として分散している状態が観察される。
この有機凝集体3を用いることによって得られる効果は、上述したようにナノ粒子2を互いに分離するスペーサ的な効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
有機凝集体3は、一般に、気体や液体に対しては透過性を有するため、ナノ粒子2の比表面積を実質的に低下させることがない。また、有機凝集体3とナノ粒子2とが化学結合を形成せずに複合化されているので、ナノ粒子2との化学的な反応を利用する場合において、ナノ粒子2の高い活性を十分に発現させることができる。また、ナノ粒子2が有機凝集体3に覆われているので、ナノ粒子2の凝集を防止する効果は経時的にも安定している。すなわち、ナノ粒子含有複合多孔体を使用している間に、経時的にナノ粒子2が凝集するという現象の発生が抑制される。
さらに、球状有機凝集体3が多孔体1の固体骨格部1aと化学的に結合している場合には、複合体粒子4が固体骨格部1aに安定に支持されるので、信頼性の高いナノ粒子含有複合多孔体を提供することができる。
なお、図2に示したナノ粒子含有複合多孔体20を例えば加熱することによって有機凝集体3を分解することによって、図1に示したナノ粒子含有複合多孔体10を得ることができる。
(ナノ粒子)
本発明による実施形態のナノ粒子含有複合多孔体に用いられるナノ粒子2としては、無機物質から形成された公知のナノ粒子を広く用いることができる。無機物質は例えば金属や無機化合物である。
ナノ粒子2に用いることのできる金属元素は、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、鱗、マンガン、ニッケル、コバルト、ロジウム、イリジウム、ゲルマニウム、リチウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、バナジウム、錫、ルテニウム、イットリウム、ネオジウム、ユーロピウムなどや、これらの合金や複合物である。これらの金属は、例えば溶液を利用してイオンとして有機凝集体(例えばフェリチンやデンドリマー)に導入することができるという利点があるが、これらに限られない。
また、これらの金属ナノ粒子から無機化合物のナノ粒子を得ることができる。例えば、金属酸化物は、酸化剤の使用や酸素を含む雰囲気での加熱処理やオゾン処理などによって得ることができる。金属水酸化物は、水との接触や水を含む雰囲気での加熱処理など、ハロゲン化物や硫化物はハロゲン化水素や硫化水素での処理などを行うことができる。なお、逆に、金属酸化物のナノ粒子を還元することによって金属ナノ粒子を得ることもできる。還元処理としては、例えば、水素雰囲気での加熱処理や、あるいは、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムや水素化ホウ素カリウムなどの還元剤を含むメタノール溶液を用いる方法がある。
さらに、後述するように、前駆体粒子を変換することによってナノ粒子2を得ることもできる。この場合、前駆体粒子を分散した状態で担持した多孔体を作製し、その後で、前駆体粒子を変換することによってナノ粒子を得てもよい。この工程は、有機凝集体を分解する工程において同時に行うこともできる。
ナノ粒子含有複合多孔体を触媒やガス吸着剤などに用いる場合には、特に、白金、パラジウム、ニッケル、金、白金パラジウム合金、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛など従来から触媒等の作用のある無機物質からなるナノ粒子を用いることによって高い活性が得られるために好ましい。
また、ナノ粒子含有複合多孔体を蛍光体、非線型光学材などに用いる場合には、硫化カドミウム、硫化亜鉛などの半導体粒子、ルテニウム含有酸化物、ユーロピウム含有酸化物、金などの量子サイズ効果で特性が向上するナノ粒子を用いることが好ましい。
金属ナノ粒子を用いる場合、ナノ粒子2の大きさとしては、単原子の大きさである0.数nmから100nm程度までの範囲であり、好ましくは、ナノ粒子2の比表面積がおよそ10m/g以上になるサイズである。例えば、白金でおよそ30nm、パラジウムでおよそ50nmである。この大きさより小さくなると、比表面積が急激に大きくなって反応活性等が高くなってくる。さらに、好ましくは、ナノ粒子の比表面積がおよそ50m/g以上になるサイズであり、例えば、白金でおよそ6nm、パラジウムでおよそ10nmである。この大きさ程度より小さくなると、比表面積の増大による反応活性の向上に加えて、量子サイズ効果などの発現によるさらなる反応活性の向上が見られるようになる。無機化合物ナノ粒子を用いる場合、ナノ粒子2の大きさとしては、およそ100nm以下であることで比表面積の増大や反応活性の向上が生じる。さらに、ナノ粒子の比表面積が50m/g以上になり、ナノ粒子の大きさが数10nm程度より小さくなるとさらに反応活性が向上するために好ましく用いることができる。
(有機凝集体)
有機凝集体とは、有機物質が凝集した構造を広く指し、複数の有機分子(低分子または高分子)が凝集したものでも良いし、1つの高分子が凝集構造(高次構造)を形成したものでも良い。いずれの場合にも有機凝集体は秩序組織を形成していることが好ましい。有機凝集体が秩序構造を有していると構成していると(秩序構造を有する有機凝集体を「有機組織体」ということがある。)、その内部にナノ粒子の原料または前駆体が侵入しやすい。これは、有機組織体がその内部に比較的大きく規則的な間隙(通路)を有することによる。さらに、有機組織体がその構成分子の性質によって、ナノ粒子の構造を規制することができる。例えば、金属イオンを含む溶液に有機組織体を浸漬すると、有機組織体の内部に侵入したイオンがその構成分子(化学構造)の影響を受けて、有機組織体の内部の所定のサイトに集まり、所定の大きさでかつサイズの均一なナノ粒子を形成することができる。このようにして形成された複合体粒子は、一定の構造およびサイズのナノ粒子を有するので、反応活性のばらつきが少ないために高い反応活性のナノ粒子だけを効率よく用いることができ、多孔体の固体骨格部に担持する際に構造やサイズにばらつきのあるナノ粒子を用いる場合に比べて同じ効果を得るのに少ない量で適用することができるという利点が得られる。また、有機凝集体は一般に気体や液体に対する透過性が高いが、有機組織体は、特に高い透過性を有するので好ましい。有機凝集体として有機組織体を用いると、ナノ粒子の活性を低下させない効果および内部にナノ粒子を例えば溶液を用いて容易に導入できる効果に優れる。
さらに、ナノ粒子含有複合多孔体に用いられる有機凝集体は、内含させるナノ粒子同士およびナノ粒子と多孔体の固体骨格部との距離をほぼ一定の間隔で保持させるために球状有機凝集体が好ましい。ほぼ一定の間隔で保持することによって、多孔体の固体骨格部に担持する際に、ナノ粒子が凝集して不活性化することなく用いることができるとともに、ナノサイズの間隔で配置されることができるので、間隔がばらばらで担持している場合に比べて凝集のない状態を保持しつつ最適な反応活性の効果を得ることができるという利点が得られる。
また、有機凝集体の外部には、多孔体の固体骨格部と化学的に反応しやすい官能基を有することが望ましい。最終的なナノ粒子含有複合多孔体において有機凝集体が固体骨格部と化学結合を形成することによって、ナノ粒子を安定に担持することができるので、ナノ粒子含有複合多孔体の特性が安定する。このような球状有機組織体として、例えば、球殻状タンパク質の一種であるフェリチン、または樹状高分子の一種であるデンドリマーを好ましく用いることができる。
フェリチンは、図4に模式的に示すように、分子量2万程度のタンパク質からなるサブユニット8が非共有結合で24個結合しており、その中心のコア9には酸化鉄の球状粒子を有している。従って、フェリチンそのものが複合体粒子であると言うことができる。フェリチン粒子の直径は約12nmであり、コア9の酸化鉄ナノ粒子は直径が約6nmとサイズが制御されたものである。この構造制御は、フェリチンのタンパク質中の鉄酸化活性部位で2価鉄イオンが酸化された後、フェリチン内部の負電荷領域で酸化鉄の結晶粒子を形成して構造規制された複合体粒子である。
また、フェリチンのコアが空洞になっているアポフェリチンを用いて複合体粒子を作製することができる。フェリチンのコアに金属イオンを侵入させた後に、金属の酸化物、塩化物、水酸化物、硫化物などの無機化合物ナノ粒子に変換したり、還元したりすることによって金属ナノ粒子に変換することができる。これらの異なる無機化合物のナノ粒子や金属ナノ粒子は、アポフェリチンの中央に規定された空洞部によって構造(サイズを含む)が規制されるので、その直径はいずれも約6nmである。
また、有機組織体としてデンドリマーを用いることによって、例えば、図5(a)に模式的に複合体粒子4Aを得ることができる。デンドリマーは、高分子を規則正しく樹状成長させた多分岐の球状高分子であり、図5(b)に模式的に示すように、芯部と、芯部から延びる枝骨格部3bおよび最も外側の枝骨格部3bに結合した官能基(最表面基)3aの3つの要素で特徴付けられる。さらに、デンドリマーは、例えば、核となる芯部の分子から順に枝骨格部3bを重合させていくことによって合成され、その重合の回数によってデンドリマーの世代を決定している。
デンドリマーの3つの要素および世代を決定することによって、デンドリマーの構造およびサイズを精密に制御できるとともに、図5(a)に示したように内部に導入するナノ粒子2Aの構造およびサイズを規制することができる。
デンドリマーの種類としては、例えば、ポリアミドアミン系、ポリプロピレンイミン系、ポリエーテル系などであり、脂肪族系高分子や芳香族系高分子など種々の高分子が知られている。デンドリマーの大きさは、成長の世代を調整することによって制御できるが、ナノ粒子を内部に担持できる大きさであれば良く、およそ1nmから100nmの範囲であり、1nmから50nmの範囲であることが好ましい。デンドリマーの大きさの下限値は内包するナノ粒子の大きさに応じて設定され、上限値はナノ粒子の高い活性等の特性を阻害しないように設定される。すなわち、100nmを超えるとナノ粒子の特性を阻害する、あるいは、例えば外部からの気体や液体がナノ粒子に到達することを阻害することがある。また、あまり大きなサイズになると、多孔体の固体骨格部に担持する際にナノ粒子の担持される量が少なくなるために高い反応活性が得られにくくなる傾向になる。
図5(a)に有機組織体であるデンドリマー3Aにナノ粒子2Aを内含する複合体粒子4Aの構造を模式的に示す。
ナノ粒子2Aは、例えば、デンドリマー3Aに金属イオンなどを含む溶液を侵入させる形成される。デンドリマー3Aに侵入した金属イオンが、例えば、デンドリマーの内部の要素(芯部や枝骨格部)にイオン結合、錯結合(配位結合)または水素結合などで保持され、この金属イオンを酸化物、水酸化物、ハロゲン化物または硫化物等の無機化合物に変換する、あるいは金属イオンを還元することによって金属原子に変換することによって形成される。このナノ粒子2Aの形成は、デンドリマーの大きさ、分子種(芯部および/または枝骨格部を構成する化合物)や、金属イオンの種類、溶液中の金属イオン濃度や、侵入(含浸)させる温度、時間などのパラメータを調整することによって制御することができる。複数種類の金属イオンを混合することによって、複合無機化合物や合金などのナノ粒子を形成することも可能である。
なお、ナノ粒子は、有機組織体と共有結合などの化学結合を形成しない方が活性低下が少ないために好ましい。フェリチンおよびデンドリマーにおいては、有機組織体とナノ粒子が化学結合を形成していないために活性低下が生じ難い。ナノ粒子と化学結合を形成しない方が好ましいのは、例示した有機組織体に限られず、他の有機凝集体についても同じである。また、化学結合を形成する場合であっても、結合強度が弱い場合には、活性が低下しない場合もある。
デンドリマーの最表面基3aとして、種々の官能基を導入することができる。例えば、多孔体の固体骨格部と反応して結合を形成する官能基を導入しておくことで、複合体粒子を安定に多孔体に結合させることできるので好ましい。例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、トリメトキシシリル基、トリクロロシリル基、チオール基、ジチオ基、ビニル基、エポキシ基などが挙げられるが、化学的な結合を得られるものであればこれらに限られるものではない。また、フェリチンでは、タンパク質表面の活性基が多孔体の固体骨格部との化学的な結合に寄与することができる。
(多孔体)
本発明による実施形態のナノ粒子含有複合多孔体を構成する多孔体としては、公知の多孔体(ハニカム構造、繊維集合体や粒集合体)を広く用いることができる。そのなかでも、細孔の直径が100nm以下の多孔体は比表面積が大きく、ナノ粒子の高い比表面積や高い活性を効率的に利用できるので好ましい。このような多孔体としては、乾燥ゲルやメソ多孔体を好適に用いることができる。なお、乾燥ゲルは、例えば、ゾルゲル法を用いて作製される湿潤ゲルを乾燥することによって得られる。利用分野によっては湿潤ゲルを多孔体として用いることができるが、以下では乾燥ゲルを中心に説明することにする。また、メソ多孔体は、例えば、界面活性剤と一緒に無機化合物を合成することによって得られる。特に、ゾルゲル法を用いて形成される乾燥ゲルは、高比表面積に加えて、網目構造を形成する固体骨格部を有しているために3次元的に均質にナノ粒子を担持できるという利点がある。
図1に示した多孔体1は乾燥ゲルからなるものであり、固体骨格部1aが網目構造を形成している。この網目構造は、ゾルゲル法によって形成された原料溶液中のゾル微粒子が凝集し、互いに結合することによって形成される。乾燥ゲルを電子顕微鏡等で観察すると微粒子の凝集体が固体骨格部1aを構成し、固体骨格部1aの空隙に細孔1bが形成されている。固体骨格部1aを構成する微粒子の直径は典型的には50nm以下であり、細孔の直径は典型的には100nm以下である。乾燥ゲルを用いると、空孔率50%以上の低密度体を得ることができ、比表面積の高い多孔体を得ることができる。なお、比表面積としては、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー法(以下、BET法と略す。)で測定した値で、100m/g以上の多孔体が得られ、さらに500m/g以上の高比表面積の多孔体(すなわち乾燥ゲル)を得ることができる。
乾燥ゲルの固体骨格部を形成する材料としては、無機物、特に無機酸化物が耐熱性や化学的安定性の観点から好ましい。無機酸化物の材料としては、一般的な金属酸化物を用いることができるが、網目構造を有する固体骨格部を形成するために、ゾルゲル法で形成されるものが好ましい。例えば、酸化シリコン(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどや、複数種類の金属元素を含む酸化物が挙げられる。
これらのうち、シリカおよびアルミナ、酸化チタンは、ゾルゲル法による湿潤ゲルの形成が容易であるために、特に好ましい。これらの無機酸化物の原料としては、ゾルゲル反応で湿潤ゲルを形成できるものであればよい。例えば、ケイ酸ナトリウムや水酸化アルミニウムなどの無機原料、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシドやアルミニウム−sec−ブトキシド、チタンイソプロポキシドなどの有機金属アルコキシドの有機原料などを触媒とともに溶媒中でゾルゲル法によって湿潤ゲルを作製する。ゲルの原料と触媒(ゲル化触媒)および溶媒を含む溶液をゲル原料溶液ということがある。なお、触媒は省略することもできる。
以下に、シリカを例として、湿潤ゲルの作製方法を少し詳細に説明する。
シリカの原料溶液からゾルゲル反応によってシリカ微粒子を合成し、溶媒中でゲル化し湿潤ゲルを作製する。溶液中で原料が反応することによってシリカの微粒子が形成され、これらが集まって網目構造を有する固体骨格部を形成する。具体的には、所定の固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。所定の組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型塗布などによって所望の使用形態にする。この状態を一定時間維持することによって、溶液はゲル化して湿潤ゲルが得られる。また、必要に応じて、湿潤ゲルの熟成や細孔の大きさおよび/または分布を制御するためにエージング処理を行っても良い。作製時の温度条件としては、通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて加熱してもよい。但し、溶媒の沸点以下の温度で実施することが好ましい。
シリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。
溶媒としては原料が溶解してシリカが形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。
触媒としては、塩基触媒および/または酸触媒であり、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。
粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。
また、最終的なナノ粒子含有複合多孔体において乾燥ゲルとして使用する場合、複合多孔体の耐湿性などの信頼性や表面の親和性を変えることによる取扱性を向上するために、固体骨格部に表面処理を施しても良い。表面処理は、湿潤ゲルの状態で行っても良いし、乾燥ゲルを作製した後で、表面処理を行っても良い。
この表面処理は、例えば、湿潤ゲルの状態で溶媒中で表面処理剤を固体骨格部の表面に化学反応させることによって行うができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシラン、フェニルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。用途によってその表面処理剤を選定すればよい。
また、多孔体として、カーボン多孔体を好適に用いることができる。カーボン多孔体は耐熱性や化学的安定性の観点に加えて、導電性付与することができるため電極用途などに好ましく用いることができる。
カーボン多孔体は、カーボン前駆体の乾燥ゲルを形成した後、カーボン前駆体を炭化することによって作製される。まず、有機高分子の原料を重合させながらゲル化して固定化することで湿潤ゲルを得る。この湿潤ゲルを乾燥することによって、カーボン前駆体である乾燥ゲル(高分子ゲル)が得られる。
カーボン前駆体の有機高分子としては、公知の高分子を広く用いることができる。例えば、ポリアクリロニトリルやポリフルフリルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリフェノール、ポリアニリンなどを用いることができる。ポリアクリロニトリル、ポリフルフリルアルコールおよびポリアニリンの原料は、それぞれ、アクリロニトリル、フルフリルアルコール、アニリンである。また、ポリイミドは、イミド環を形成させる縮重合反応で、一般的なものとして無水テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物を用いることができる。ポリアミドは、アミド結合を形成させる縮重合反応で、一般的なものとしてジカルボン酸化合物やジカルボン酸クロリド化合物と、ジアミン化合物を用いることができる。同様に、ポリウレタンはポリオールなどのジオール化合物とジイソシアネート化合物、ポリウレアはジイソシアネート化合物、ポリフェノールはフェノール化合物とアルデヒド化合物などである。なお、炭化反応を進行しやすい高分子が好ましく、そのような高分子としては、芳香族成分を有するものが好ましい。また、必要に応じて、これら原料を触媒と一緒に反応させることで、カーボン前駆体となる高分子ゲルを効率的に生成することができる。
例えば、ポリフェノールでは、フェノール化合物としてフェノール、クレゾール、レゾルシノール(1,3−ベンゼンジオール)、カテコール、フロログリシノール、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、またはサリチル酸、オキシ安息香酸などのフェノールカルボン酸などで挙げられる。縮合剤であるアルデヒド化合物としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、加熱によってホルムアルデヒドを生成するパラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミンなどがあげられる。縮合触媒としては、塩基触媒および/または酸触媒を用いる。塩基触媒は主にメチロール基などの付加反応を進行させ、酸触媒は主にメチレン結合などの重付加縮合反応を進行させる。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸化物、アミン、アンモニアなど、一般的なフェノール樹脂製造用の触媒を用いることができる。酸触媒としては、硫酸、塩酸、りん酸、しゅう酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などを用いることができる。また、溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールなどのアルコール、エチレングリコールまたはプロピレングリコールなどのグリコールなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または混合して用いることができる。
次に、網目構造の固体骨格部を有する湿潤ゲルから乾燥ゲルを得るための乾燥工程について説明する。
乾燥処理には、自然乾燥法、加熱乾燥法、減圧乾燥法などの通常乾燥法や、超臨界乾燥法や凍結乾燥法などを用いることができる。一般に、乾燥ゲルの表面積を高く、かつ低密度にするためには、湿潤ゲル中の固体成分量を少なくするとゲル強度が低下する。また、通常、ただ単に乾燥するだけの乾燥法では、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまうことが多い。そのため、湿潤ゲルから優れた多孔質性能を有する乾燥ゲルを得るためには、乾燥方法として超臨界乾燥法や凍結乾燥法を好ましく用いることによって、乾燥時のゲルの収縮、すなわち高密度化を防ぐことができる。通常の溶媒蒸発させる乾燥方法においても、蒸発速度をゆっくりするための高沸点溶媒を使用したり、蒸発温度を制御したりして乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。また、湿潤ゲルにおいてゲルの固体成分の表面を撥水処理等によって表面張力を制御することによっても、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。
(ナノ粒子含有複合多孔体の製造方法)
次に、本発明による実施形態のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法を説明する。ナノ粒子含有複合多孔体の製造法は、大きく分けて、多孔体を作製する過程で複合体粒子を分散する方法(第1の製造方法)と、予め作製した多孔体に複合体粒子を分散する方法(第2の製造方法)とがある。
(第1の製造方法)
第1の製造方法はさらに2つの方法(製造方法1−1と製造方法1−2ということにする。)に大別される。
製造方法1−1は、無機物質のナノ粒子とナノ粒子を覆う有機凝集体とを有する複合体粒子を用意する工程と、多孔体を作製するための原料溶液を調製する工程と、原料溶液に複合体粒子を混合する工程と、原料溶液から固体骨格部と細孔とを有する多孔体を形成する工程であって、複合体粒子を分散した状態で含む多孔体を形成する工程とを包含する。
製造方法1−2は、有機凝集体を用意する工程と、多孔体を作製するための原料溶液を調製する工程と、原料溶液に有機凝集体を混合する工程と、原料溶液から固体骨格部と細孔とを有する多孔体を形成する工程であって、有機凝集体を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、多孔体に含まれる有機凝集体の内部にナノ粒子を形成する工程とを包含する。
いずれの場合も、多孔体は典型的にはゾルゲル法で作製され、まず、湿潤ゲルとして得られる。必要に応じて湿潤ゲルを乾燥することによって乾燥ゲルとしてもよい。
これらの方法によって、図2に示したナノ粒子含有複合多孔体20を得ることができる。また、有機凝集体または複合体粒子を多孔体の固体骨格部内部に形成することも可能である。さらに、有機凝集体の選択によって、有機凝集体と多孔体の固体骨格部との間に結合を形成することもできる。
さらに、第1の製造方法で得られた図2に示したナノ粒子含有複合多孔体20から、図1に示したナノ粒子含有複合多孔体10を得ることができる。すなわち、ナノ粒子含有複合多孔体20の有機凝集体3を除去することによって、ナノ粒子含有複合多孔体10を得ることができる。有機凝集体3の除去は例えば熱分解反応や酸化反応を利用して行うことができる。なお、有機凝集体3を完全に除去する必要は必ずしも無く、必要に応じて残存させても良い。
また、複合体粒子4を固体骨格部の内部に形成した構成において、有機凝集体3を分解すると、図6に模式的に示すように、固体骨格部1aに空孔部分5が形成された構造を得ることができる。このような構造においても、ナノ粒子2の物理的な凝集が防がれているとともに、経時的な凝集が抑制される。さらに、ナノ粒子2の周辺部に空間が形成されているために、化学的な反応に利用する用途においては、ナノ粒子2の高い比表面積を生かして高活性を得られる効果がある。さらに、付加的な効果として、多孔体1自体の比表面積が高くなるために、多孔体1自体に触媒活性または助触媒活性などの変換機能を有する場合には活性が高くなる効果が得られる。
有機凝集体3を除去する方法としては、有機凝集体3は一般に300℃程度以上で熱分解反応が進行しはじめるため、300℃以上に加熱する方法が簡便である。作業時間の効率性の観点から、好ましくは400℃以上の温度が適している。また、加熱温度の上限は、多孔体の固体骨格部の無機物質の耐熱温度以下であればよい。例えば、多孔体の固体骨格部として無機酸化物のシリカを用いた場合には、1000℃以上では収縮する傾向があるので、1000℃未満で行うことが好ましい。なお、この場合の雰囲気は、空気中で行うことができる。さらに、燃焼反応による過剰な発熱を生じさせないためには低濃度酸素雰囲気下で行うのが好ましい。低濃度酸素雰囲気下とは、雰囲気の酸素濃度が10%以下であることを言い無酸素雰囲気を含むものとする。乾留法や、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中での加熱、または真空中での加熱でも行うことができる。
また、有機凝集体を酸化することによって除去することもできる。この場合には、例えば、オゾンや過酸化水素等によって処理を行う。オゾン処理は紫外線照射等により生成したオゾン利用するなどの方法がある。
(第2の製造方法)
第2の製造方法はさらに2つの方法(製造方法2−1と製造方法2−2ということにする。)に大別される。
製造方法2−1は、無機物質のナノ粒子とナノ粒子を覆う有機凝集体とを有する複合体粒子を含む溶液を用意する工程と、固体骨格部と細孔とを有する多孔体を用意する工程と、多孔体を溶液中に浸漬することによって、多孔体に複合体粒子を分散した状態で含む多孔体を形成する工程とを包含する。
製造方法2−2は、有機凝集体を含む溶液を用意する工程と、固体骨格部と細孔とを有する多孔体を用意する工程と、多孔体を溶液中に浸漬することによって、多孔体に有機凝集体を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、多孔体に含まれる有機凝集体の内部にナノ粒子を形成する工程とを包含する。
第1の製造方法と同様に、いずれの場合も、多孔体は典型的にはゾルゲル法で作製され、まず、湿潤ゲルとして得られる。必要に応じて湿潤ゲルを乾燥することによって乾燥ゲルとしてもよい。
第2の製造方法によって、図2に示したナノ粒子含有複合多孔体20が得られる。第1の製造方法について上述したのと同様に、ナノ粒子含有複合多孔体20の有機凝集体3を除去することによって、ナノ粒子含有複合多孔体10を得ることができる。有機凝集体3の除去は例えば熱分解反応や酸化分解反応を利用して行うことができる。なお、有機凝集体3を完全に除去する必要は必ずしも無く、必要に応じて残存させても良い。
(カーボン多孔体を備えるナノ粒子含有複合多孔体の製造方法)
カーボン多孔体を備えるナノ粒子含有複合多孔体も基本的には上述の第1および第2の製造方法で製造することができる。
1つの製造方法は、予め作製したカーボン多孔体に複合体粒子を分散させることによってナノ粒子含有複合多孔体を得ることができる(上記第2の製造方法)。さらに、有機凝集体を除去することによって、ナノ粒子がカーボン多孔体に分散したナノ粒子含有複合多孔体を得ることもできる。
他の製造方法は、上記第1および第2の製造方法で説明した工程によって、カーボン前駆体から形成された固体骨格部を有する多孔体を用いてナノ粒子含有複合多孔体(前駆体複合多孔体)を得た後、炭化処理を行うことによってナノ粒子がカーボン多孔体に分散したナノ粒子含有複合多孔体を得ることができる。この方法において、カーボン前駆体の多孔体を形成する際に同時に有機凝集体または複合体粒子を混合することによって、均質分散性に優れ、多孔体の固体骨格部内部にナノ粒子が分散した活性の高いナノ粒子含有複合多孔体を得ることができる。
カーボン前駆体を炭化処理する方法としては、カーボン前駆体は、300℃程度で炭化が進行しはじめるため、300℃以上で行う。作業時間の効率性の観点から、好ましくは400℃以上の温度が適している。また、加熱温度の上限は、ナノ粒子材料の耐熱温度以下であればよい。網目構造を有するカーボン前駆体乾燥ゲルから作られるカーボン多孔体では、1500℃位まで炭化は十分に進行する。多孔体の収縮が小さい状態で炭化を行うには、1000℃未満での炭化処理が好ましい。なお、この場合の雰囲気は、空気中でもよいが、500℃以上になると燃焼してしまうため、温度を高く設定する場合には、低濃度酸素雰囲気下で行うのが好ましい。
炭化処理する条件は、複合体粒子から有機凝集体を分解除去する条件とほぼ等しい条件で行うことが可能である。したがって、カーボンのナノ粒子含有複合多孔体を得る場合には、炭化処理と有機凝集体の除去処理とを同時に行うことが可能になるため、作業上効率的になる。
また、得られたカーボンナノ粒子含有複合多孔体は、1000℃以上で加熱処理をして、カーボンの黒鉛化を促進してグラファイトとすることが可能である。これによって、導電性の必要な電極用途などに供することが可能になる。また、カーボンの活性を向上するために、水蒸気や二酸化炭素などの雰囲気や薬剤による賦活処理を施してやればさらに比表面積を高めることができる。これらの後処理は、ナノ粒子含有複合多孔体の使用目的に合わせて選択すればよい。
なお、上記の実施形態では予め形成された有機凝集体を用いた例を説明したが、多孔体内部で有機凝集体を合成して分散する方法も利用することができる。
【実施例】
以下に、本発明の具体的な実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
多孔体の固体骨格部として無機酸化物のシリカの乾燥ゲルを用い、複合体粒子としてフェリチンを用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
シリカの原料溶液としてテトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1対3対4になるように調製した溶液に、フェリチンを0.1mmol/Lになるように混合した。なお、フェリチンは、直径が約12nmであり、フェリチンコアの芯に鉄酸化物が形成されているもので約6nmの直径を有しているものである。この溶液を、容器に入れて室温にてゲル化して固体化したシリカの湿潤ゲルを得た。
この湿潤ゲルを乾燥して、フェリチンが分散したシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体Aを得た。乾燥方法は、この湿潤ゲルの内部の溶媒をアセトンに置換してから、二酸化炭素による超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温することによって乾燥ゲルを得た。このとき、乾燥前後の大きさはほぼ同じであり、ほとんど収縮していなかった。
また、ナノ粒子含有複合多孔体Aを窒素雰囲気にて500℃で1時間熱処理して、フェリチンの有機凝集体であるタンパク質を除去して、ナノ粒子として鉄酸化物の分散したナノ粒子含有複合多孔体Bを得た。
さらに、ナノ粒子含有複合多孔体Bを水素雰囲気にて700℃で1時間熱処理して、鉄酸化物が還元して鉄になったナノ粒子が分散したナノ粒子含有複合多孔体Cを得た。なお、この実施例では鉄酸化物が鉄粒子の前駆体の役割となっている。
《比較例1》
実施例1の効果を確認するために、次の多孔体およびナノ粒子含有複合多孔体を得た。
実施例1のシリカ乾燥ゲルを得る工程において、フェリチンを混合せずに作製した他は同じ条件でシリカ乾燥ゲルからなる多孔体Dを得た。
また、実施例1のシリカ乾燥ゲルを得る工程において、直径約4nmの金コロイドを0.1mmol/Lになるように混合したほかは同じ条件で金コロイドが分散したシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体Eを得た。ナノ粒子含有複合多孔体Eを窒素雰囲気にて500℃で1時間処理して、金コロイドが分散したシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体Fを得た。
次に、実施例1と比較例1を比較した結果について述べる。各ナノ粒子含有複合多孔体中のナノ粒子の分散等に関する評価を行った結果を表1に示す。

密度は、多孔体であることを確認するために評価し、各多孔体のサイズと重量から算出したみかけ密度である。すべてのナノ粒子含有複合多孔体において低密度であり、ほぼ同程度の値となっている。このことから、ナノ粒子を担持しているシリカ乾燥ゲルの固体骨格部が同程度の多孔構造になっていると推察される。
多孔物性を評価するために、窒素吸着法による比表面積と細孔分布の測定で行った。BET法による比表面積と、バレット・ジョイナー・ハレンダ法(以下、BJH法と略す)による細孔分布解析からの平均細孔直径を得た。有機凝集体を除去したナノ粒子含有複合多孔体BおよびCでは、有機凝集体が除去されたことによる空孔部分の形成によって比表面積のわずかな増加が観察されたものと考えられる。これらにおいて細孔直径が少し小さくなっているのは加熱処理時の収縮がわずかに生じたためと考えられる。従来例のナノ粒子含有複合多孔体EおよびFでは、比表面積や細孔の変化を生じているが、分散した金コロイドの影響によるものと考えている。
走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)によって多孔体の網目固体骨格部構造状態とナノ粒子の分散状態を観察した。なお、SEMでは、多孔体を特に処理することなく5万倍で観察した。すべての多孔体において網目固体骨格部構造が観察された。ナノ粒子の凝集は、ナノ粒子含有複合多孔体A、B、Cでは明確には観察されなかったが、ナノ粒子含有複合多孔体EおよびFでは明らかなナノ粒子の凝集したものが観察された。
透過型電子顕微鏡(以下、TEMと略す)によってナノ粒子の分散している粒径、その分散度合、ナノ粒子間の最近接距離を評価した。なお、TEMでは、10万倍から50万倍で測定した。ナノ粒子の粒子径は、ナノ粒子含有複合多孔体Aではフェリチンコアの粒子のサイズとほぼ等しいサイズで分散していることが観察された。また、ナノ粒子含有複合多孔体Aを熱処理したナノ粒子含有複合多孔体B、Cでも等しい値であった。これらはTEM観察では、透過観察によるナノ粒子の重なりと思われる部分以外は、等しいサイズで単一の粒子として分散している状態であり、特に大きな凝集等は見られなかった。また、それらの粒子間の近接処理は、球状有機凝集体であるフェリチンの大きさとほぼ等しい値であり、このことから有機凝集体によってナノ粒子の凝集が抑制されて、均質分散を生じているものと考えられた。また、ナノ粒子は固体骨格部内部に存在しているものが多かった。
なお、電子顕微鏡では、固体骨格部成分のケイ素と有機凝集体の炭素との質量数の差が小さいために、明確な存在は観察できなかったが、熱処理による比表面積の増加と、ナノ粒子同士の近接距離が有機凝集体のサイズにほぼ一致していることからその存在による効果が推察されるものである。
【実施例2】
多孔体の固体骨格部としてシリカ乾燥ゲルを用い、複合体粒子としてパラジウム粒子を内含したデンドリマーを用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
シリカの原料溶液としてテトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1対3対4になるように調製した溶液に、パラジウム粒子を内含したデンドリマーを0.1mmol/Lになるように混合した。この溶液を、容器に入れて室温にてゲル化して固体化したシリカの湿潤ゲルを得た。
なお、パラジウム粒子を内含したデンドリマーは、第4世代のポリプロピレンイミンデンドリマーで、デンドリマー直径が約4.5nm、内含しているパラジウム粒子の直径が約2.4nm、最表面がアミノ基となっているものであり、最表面はシリカ原料のテトラメトキシシランと反応して、シリカと化学結合するものである。
この湿潤ゲルを乾燥して、デンドリマーの複合体粒子が分散したシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体Gを得た。乾燥方法は、この湿潤ゲルの内部の溶媒をアセトンに置換してから、二酸化炭素による超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温することによって乾燥ゲルを得た。このとき、乾燥前後の大きさはほぼ同じであり、ほとんど収縮していなかった。
また、ナノ粒子含有複合多孔体Gを窒素雰囲気にて500℃で1時間熱処理して、有機凝集体であるデンドリマーを除去して、ナノ粒子としてパラジウム粒子の分散したナノ粒子含有複合多孔体Hを得た。
次に、実施例2と比較例1を比較した結果について述べる。実施例1と同様に、各ナノ粒子含有複合多孔体中のナノ粒子の分散等に関する評価を行った結果を表2に示す。

密度は、多孔体であることを確認するために評価し、各多孔体のサイズと重量から算出した。すべてのナノ粒子含有複合多孔体において低密度であり、ほぼ同程度の値となっている。このことから、ナノ粒子を担持しているシリカ乾燥ゲルの固体骨格部が同程度の多孔構造になっていると推察される。
多孔物性を評価するために、窒素吸着法による比表面積と細孔分布の測定で行った。BET法による比表面積と、BJH法による細孔分布解析からの平均細孔直径を得た。有機凝集体を除去したナノ粒子含有複合多孔体Hでは、有機凝集体が除去されたことによる空孔部分の形成によって比表面積のわずかな増加が観察されたものと考えられる。
SEMによって多孔体の網目固体骨格部構造状態とナノ粒子の分散状態を観察した。なお、SEMでは、多孔体を特に処理することなく5万倍で観察した。実施例1と同様に、すべての多孔体において網目固体骨格部構造が観察された。ナノ粒子の凝集は、ナノ粒子含有複合多孔体GおよびHでは明確には観察されなかったが、ナノ粒子含有複合多孔体EおよびFでは明らかな金コロイドの凝集が観察された。
TEMによってナノ粒子の分散している粒径、その分散度合、ナノ粒子間の最近接距離を評価した。なお、TEMでは、10万倍から50万倍で測定した。ナノ粒子の粒子径は、ナノ粒子含有複合多孔体Gではデンドリマー内に存在するパラジウム粒子のサイズとほぼ等しいサイズで分散していることが観察された。また、ナノ粒子含有複合多孔体Gを熱処理したナノ粒子含有複合多孔体Hでも等しい値であった。これらはTEM観察では、透過観察によるナノ粒子の重なりと思われる部分以外は、等しいサイズで単一の粒子として分散している状態している様子であり、特に大きな凝集等は見られなかった。また、それらの粒子間の近接処理は、球状有機凝集体であるデンドリマーの大きさよりも小さな値であったが、ナノ粒子の凝集が抑制されていることがわかった。また、ナノ粒子は固体骨格部内部に存在しているものが多かった。
【実施例3】
多孔体の固体骨格部としてカーボン前駆体乾燥ゲルを用い、複合体粒子として白金粒子を内含したデンドリマーを用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
多孔体は、水を溶媒として用いてレゾルシノール(0.3mol/L)とホルムアルデヒドと炭酸ナトリウムをモル比で1対2対0.01になるように調製し、約80℃で4日間放置してポリフェノール系高分子からなるカーボン前駆体の湿潤ゲルを形成するものである。この原料溶液に、白金ナノ粒子を内含したデンドリマーを0.1mmol/Lになるように混合した。なお、白金ナノ粒子を内含したデンドリマーは、第4世代のポリアミドアミンデンドリマーで、デンドリマー直径が約4.5nm、内含しているパラジウム粒子の直径が約1.5nm、最表面が水酸基となっているものである。
この湿潤ゲルを乾燥して、デンドリマーの複合体粒子が分散したカーボン前駆体乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体Iを得た。乾燥方法は、この湿潤ゲルの内部の水をアセトンに置換してから、二酸化炭素による超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温することによって乾燥ゲルを得た。このとき、乾燥前後の大きさはほぼ同じであり、ほとんど収縮していなかった。
また、ナノ粒子含有複合多孔体Iを窒素雰囲気にて200℃で1時間、300℃で1時間、600℃で1時間熱処理して、有機凝集体であるデンドリマーを除去するとともに、カーボン前駆体からなる固体骨格部をカーボンとした白金ナノ粒子の分散したカーボン多孔体からなるナノ粒子含有複合多孔体Jを得た。
《比較例2》
実施例3の効果を確認するために、次の多孔体およびナノ粒子含有複合多孔体を得た。
実施例3のカーボン前駆体乾燥ゲルを得る工程において、デンドリマーを混合せずに作製した他は同じ条件でカーボン前駆体乾燥ゲルからなる多孔体Kを得た。
さらに、このカーボン前駆体乾燥ゲルを、実施例3で行った条件で熱処理してカーボン多孔体からなる多孔体Lを得た。
また、実施例3のカーボン前駆体乾燥ゲルを得る工程において、直径約4nmの金コロイドを0.1mmol/Lになるように混合したほかは同じ条件でカーボン前駆体乾燥ゲルを得た後に、実施例3で行った条件で熱処理して金コロイドが分散したカーボン多孔体からなるナノ粒子含有複合多孔体Mを得た。
次に、実施例3と比較例2を比較した結果について述べる。各ナノ粒子含有複合多孔体中のナノ粒子の分散等に関する評価を行った結果を表3に示す。

密度は、多孔体であることを確認するために評価し、各多孔体のサイズと重量から算出した。すべてのナノ粒子含有複合多孔体において低密度な多孔構造であることがわかった。炭化する前のナノ粒子含有複合多孔体Iと多孔体Kは、ほぼ同程度の値となっており、炭化してカーボンになっているナノ粒子含有複合多孔体J、多孔体K、ナノ粒子含有複合多孔体Mはほぼ同程度になっている。このことから、同じ条件で作製した際には多孔体部分はほぼ同じ構造であることがわかった。
多孔物性を評価するために、窒素吸着法による比表面積と細孔分布の測定で行った。BET法による比表面積と、BJH法による細孔分布解析からの平均細孔直径を得た。多孔体がシリカ乾燥ゲルである実施例1および実施例2のときとは異なり、炭化のための加熱処理を行ったものが低密度かつ高比表面積になっている。このことは、有機凝集体が除去されたことによる空孔部分の形成による効果と固体骨格部が熱分解しながらカーボン化することによる効果の両者の効果があいまっていると考えられる。
SEMによって多孔体の網目固体骨格部構造状態とナノ粒子の分散状態を観察した。なお、SEMでは、多孔体を特に処理することなく5万倍で観察した。実施例1および実施例2と同様に、すべての多孔体において網目固体骨格部構造が観察された。ナノ粒子の凝集は、ナノ粒子含有複合多孔体IおよびJでは明確には観察されなかったが、ナノ粒子含有複合多孔体Mでは明らかな金コロイドの凝集が観察された。
TEMによってナノ粒子の分散している粒径、その分散度合、ナノ粒子間の最近接距離を評価した。なお、TEMでは、10万倍から50万倍で測定した。ナノ粒子の粒子径は、ナノ粒子含有複合多孔体IおよびJではデンドリマー内に存在する白金粒子のサイズとほぼ等しいサイズで分散していることが観察された。これらはTEM観察では、透過観察によるナノ粒子の重なりと思われる部分以外は、等しいサイズで単一の粒子として分散している状態している様子であり、特に大きな凝集等は見られなかった。また、それらの粒子間の近接処理は、球状有機凝集体であるデンドリマーの大きさよりも小さな値であったが、ナノ粒子の凝集が抑制されていることがわかった。また、白金のナノ粒子は固体骨格部内部に存在しているものが多かった。
【実施例4】
多孔体の固体骨格部としてシリカ乾燥ゲルを用い、有機凝集体としてナノ粒子を含んでいないデンドリマー、ナノ粒子として白金粒子を用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
シリカの原料溶液としてテトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1対3対4になるように調製した溶液に、水酸基を表面に有する第4世代のポリアミドアミンデンドリマーを0.2mmol/Lになるように混合した。この溶液を、容器に入れて室温にてゲル化して固体化した、デンドリマーが固体骨格部に分散したシリカ湿潤ゲルを得た。なお、第4世代のポリアミドアミンデンドリマーは、デンドリマー直径が約4.5nmであり、最表面の水酸基がシリカ原料のテトラメトキシシランと反応して、シリカと化学結合するものである。
このシリカ湿潤ゲルを、塩化白金酸の3mmol/Lのエタノール溶液に1日間含浸することで、白金粒子の前駆体である白金塩を多孔体固体骨格部中のデンドリマー内部に担持を行った。これに室温で水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元することによって白金粒子からなる触媒を担持した。
湿潤ゲルの乾燥方法は、この湿潤ゲルの内部の溶媒をアセトンに置換してから、二酸化炭素による超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温することによって、白金粒子を含むデンドリマーが分散したシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体を得た。なお、乾燥前後の大きさはほぼ同じであり、ほとんど収縮していなかった。
このナノ粒子含有複合多孔体は、みかけ密度が約210kg/m、比表面積が約600m/g、細孔直径が約20nmの網目構造を有し、分散している白金ナノ粒子は約2nmで凝集がなく均質分散してなることが確認された。
さらに、このナノ粒子含有複合多孔体を大気雰囲気にて500℃で1時間熱処理して、有機凝集体であるデンドリマーを除去して、ナノ粒子が分散したナノ粒子含有複合多孔体を得た。得られたナノ粒子含有複合多孔体は、みかけ密度が約210kg/m、比表面積が約650m/g、細孔直径が約20nmの網目構造を有し、分散している白金ナノ粒子は約2nmで凝集がなく均質分散してなることが確認された。なお、このナノ粒子含有複合多孔体にはほとんど炭素成分は存在しなかった。
【実施例5】
多孔体の固体骨格部としてシリカ乾燥ゲルを用い、有機凝集体としてコア粒子のないフェリチンであるアポフェリチン、ナノ粒子として白金粒子を用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
シリカの原料溶液としてテトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1対3対4になるように調製して、室温にてゲル化してシリカ湿潤ゲルを得た。この湿潤ゲルを、アポフェリチンが0.5mmol/L濃度で入ったpH7の緩衝溶液に室温で2日間含浸する。このナポフェリチンを分散したシリカ湿潤ゲルを、塩化白金酸アンモニウムの3mmol/Lのエタノール溶液に1日間含浸することで、白金粒子の前駆体である白金塩をアポフェリチン内部に担持を行った。
この湿潤ゲルの内部の溶媒をアセトンに置換してから、二酸化炭素による超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温することによって、白金塩を含むアポフェリチンが分散したシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体を得た。
このナノ粒子含有複合多孔体は、みかけ密度が約210kg/m、比表面積が約650m/g、細孔直径が約20nmの網目構造を有していることが確認された。
さらに、このナノ粒子含有複合多孔体を水素雰囲気にて500℃で1時間熱処理して、有機凝集体であるフェリチンのタンパク質を除去すると共に、白金塩を還元して白金ナノ粒子にしたシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体を得た。得られたナノ粒子含有複合多孔体は、この白金ナノ粒子が分散したナノ粒子含有複合多孔体は、みかけ密度が約230kg/m、比表面積が約600m/g、細孔直径が約20nmの網目構造を有し、分散している白金粒子の直径は約5nmで凝集のほとんどない状態であった。
【実施例6】
多孔体の固体骨格部としてカーボン前駆体乾燥ゲルを用い、複合体粒子の有機凝集体としてデンドリマー、複合体粒子のナノ粒子として酸化マンガン粒子を用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
まず、水を溶媒として用いてレゾルシノール(0.3mol/L)とホルムアルデヒドと炭酸ナトリウムをモル比で1対2対0.01になるように調製し、約80℃で4日間放置してポリフェノール系高分子からなるカーボン前駆体の湿潤ゲルを形成した。得られた湿潤ゲルを、酸化マンガン粒子を内含した水酸基を表面に有する第4世代のポリアミドアミンデンドリマーの1mmol/Lのエタノール溶液に含浸した。この溶液を、室温にて1週間放置して、カーボン前駆体の多孔体固体骨格部にデンドリマーが分散したナノ粒子含有複合多孔体の湿潤ゲルを得た。
湿潤ゲルの乾燥方法は、この湿潤ゲルの内部の溶媒をアセトンに置換してから、二酸化炭素による超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温することによって、白金粒子を含むデンドリマーが分散したシリカ乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体を得た。
このナノ粒子含有複合多孔体は、みかけ密度が約150kg/m、比表面積が約700m/g、細孔直径が約18nmの網目構造を有し、分散している酸化マンガンナノ粒子は約3nmで凝集がなく均質分散してなることが確認された。
さらに、このナノ粒子含有複合多孔体を窒素雰囲気にて200℃で1時間、300℃で1時間、600℃で1時間、800℃1時間の炭化処理をして、有機凝集体であるデンドリマーを除去して、ナノ粒子が分散したナノ粒子含有複合多孔体を得た。得られたナノ粒子含有複合多孔体は、みかけ密度が約120kg/m、比表面積が約700m/g、細孔直径が約16nmの網目構造を有し、分散している酸化マンガンのナノ粒子は約3nmで凝集がなく均質分散してなることが確認された。このときのナノ粒子間の最近接距離は約3nmであった。
【実施例7】
実施例6において、カーボン前駆体湿潤ゲルを、酸化マンガン粒子を内含した水酸基を表面に有する第4世代のポリアミドアミンアンドリマーと酸化マンガン粒子を内含していない同じデンドリマーが1対1の組成で入った1mmol/Lのエタノール溶液に含浸した。この溶液を、室温にて1週間放置して、カーボン前駆体の多孔体固体骨格部にデンドリマーが分散したナノ粒子含有複合多孔体の湿潤ゲルを得た。さらに、この湿潤ゲルを乾燥した後に、同じ条件で炭化処理を行ってナノ粒子含有複合多孔体を得た。
この酸化マンガンを内含したカーボン多孔体は、多孔体の物性値は実施例6とほぼ同じであり、ナノ粒子の直径もほぼ同じ約3nmであったが、ナノ粒子間の最近接距離は約5nmと広がっていることが確認できた。これは、ナノ粒子を含まないデンドリマーが混在していたために調整できたものと考えられた。
【実施例8】
多孔体の固体骨格部としてシリカ乾燥ゲルを用い、有機凝集体としてナノ粒子を含んでいないデンドリマー、ナノ粒子として酸化チタンと白金を用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
シリカの原料溶液としてテトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1対3対4になるように調製した溶液に、酸化チタン粒子を内含した水酸基を表面に有する第4世代のポリアミドアミンデンドリマーを0.2mmol/Lになるように混合した。この溶液を、室温にてゲル化して酸化チタン粒子を内含したデンドリマーが固体骨格部に分散したシリカ湿潤ゲルを得た。なお、第4世代のポリアミドアミンデンドリマーは、酸化チタン粒子の直径は約2nm、デンドリマー直径が約4.5nmであり、最表面の水酸基がシリカ原料のテトラメトキシシランと反応して、シリカと化学結合するものである。
このシリカ湿潤ゲルを、塩化白金酸の3mmol/Lのエタノール溶液に5時間含浸することで、白金粒子の前駆体である白金塩を多孔体固体骨格部中のデンドリマー内部に担持を行った。これに室温で水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元することによって白金をさらにデンドリマー内部に形成した。
この酸化チタン粒子と白金とを内含したデンドリマーが分散したシリカ湿潤ゲルを、ゲル内部の溶媒を水に置換してから紫外線照射を行ったところ、この多孔体から気体が発生した。気体の成分には水素が含まれており、水の光分解触媒として働いたものと考えられた。
なお、この湿潤ゲルを他の実施例と同様に乾燥したところ、みかけ密度が約210kg/m、比表面積が約600m/g、細孔直径が約20nmの網目構造を有し、形成されているナノ粒子の多くは均質に分散している約2nmの酸化チタン粒子にそれ以下の大きさの白金粒子が付着した複合粒子であることが確認された。
【実施例9】
多孔体の固体骨格部としてチタニア乾燥ゲルを用い、複合体粒子としてパラジウム粒子を内含したデンドリマーを用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
チタニアの原料溶液としてチタンイソプロポキシドとイソプロピルアルコールと塩酸をモル比で1対5対4になるように調製した溶液に、デンドリマーを0.5mmol/Lになるように混合した。この溶液を、室温にてゲル化したチタニアの湿潤ゲルを得た。なお、用いたデンドリマーは、第4世代のポリプロピレンイミンデンドリマーで、デンドリマー直径が約4.5nmで、最表面がアミノ基となっているものであり、最表面はチタンイソプロポキシドと反応して化学結合するものである。
この湿潤ゲルを塩化パラジウム酸ナトリウムの3mmol/Lのエタノール溶液に1日間含浸することで、パラジウム粒子の前駆体であるパラジウム塩をデンドリマー内部に担持を行った。これに室温で水素化ホウ素カリウムを加えて還元することによってパラジウム粒子を生成した。他の実施例と同様に乾燥して、デンドリマーの複合体粒子が分散したチタニア乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体を得た。
このナノ粒子含有複合多孔体を窒素雰囲気にて600℃で1時間熱処理することによって、網目構造を形成する固体骨格部を有するチタニアの多結晶化を行うと共に、有機凝集体であるデンドリマーを除去して、ナノ粒子としてパラジウム粒子の分散したナノ粒子含有複合多孔体を得た。このナノ粒子含有複合多孔体は、みかけ密度が約300kg/m、比表面積が約300m/g、細孔直径が約10nmの網目構造を有し、分散しているパラジウム粒子は約2nmで凝集がなく均質分散してなることが確認された。
このナノ粒子含有複合多孔体を石英窓を有した密閉容器の中に入れて、NOxを混合した空気を封入した。この容器の中に石英窓を通して紫外線を照射したところ、内部のNOx濃度が低減することが確認され、光触媒としての作用を有することが確認された。
【実施例10】
多孔体の固体骨格部としてカーボン前駆体乾燥ゲルを用い、複合体粒子としてパラジウム粒子を内含したデンドリマーを用いたナノ粒子含有複合多孔体の製造を行った。
多孔体は、水を溶媒として用いてレゾルシノール(0.3mol/L)とホルムアルデヒドと炭酸ナトリウムをモル比で1対2対0.01になるように調製し、約80℃で4日間放置してポリフェノール系高分子からなるカーボン前駆体の湿潤ゲルを形成するものである。この溶液に、パラジウム粒子を内含したデンドリマーを1mmol/Lになるように混合した。この溶液を、ゲル化してカーボン前駆体の湿潤ゲルを得た。なお、パラジウム粒子を内含したデンドリマーは、第4世代のポリプロピレンイミンデンドリマーであり、デンドリマー直径が約4.5nm、内含しているパラジウム粒子の直径が約2.4nmを用いた。
この湿潤ゲルを乾燥して、デンドリマーの複合体粒子が分散したカーボン前駆体乾燥ゲルからなるナノ粒子含有複合多孔体を得た。乾燥方法は、この湿潤ゲルの内部の水をアセトンに置換してから、二酸化炭素による超臨界乾燥を行った。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温することによって乾燥ゲルを得た。このとき、乾燥前後の大きさはほぼ同じであり、ほとんど収縮していなかった。
さらに、このナノ粒子含有複合多孔体を窒素雰囲気にて200℃で1時間、300℃で1時間、600℃で1時間熱処理して、有機凝集体であるデンドリマーを除去するとともに、カーボン前駆体からなる固体骨格部をカーボンとしたパラジウム粒子の分散したカーボン多孔体からなるナノ粒子含有複合多孔体を得た。この多孔体は、みかけ密度が約120kg/m、比表面積が約700m/g、細孔直径が約15nmの網目構造を有し、分散しているパラジウム粒子は約2.4nmで凝集がなく均質分散してなることが確認された。
得られたカーボンナノ粒子含有複合多孔体を粉砕して、スルホン酸基を有するフッ素系高分子電解質のナフィオンと混合して、固体高分子電解質のナフィオンフィルムの両面に塗布して電極を形成した電気化学素子を作製した。この電気化学素子の片面に水素を導入し、対向する面に空気を導入して燃料電池とした。両端の電極間での出力電圧を測定したところ、0.8Vの出力が得られ、電極において触媒として動作していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
本発明によると、高比表面積でかつ高活性なナノ粒子を、その特性を損なうことなく高比表面積な多孔体に担持したナノ粒子含有複合多孔体が提供される。
本発明のナノ粒子含有複合多孔体は、ナノ粒子が均質分散していることによって活性低下することなく、例えば触媒や電極として好適に用いることができる。これらを用いた電気化学素子への応用が可能であり、例えば燃料電池、空気電池、水電解装置、電気二重層キャパシタ、ガスセンサ、汚染ガス除去装置などを提供することができる。また、ナノ粒子が凝集することなく均質分散していることから、そのナノ粒子の特性を生かした発光、光変調などの光学素子や電子素子などのデバイスへの展開できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体骨格部と細孔とを有する多孔体と、無機物質のナノ粒子とを含み、
前記ナノ粒子は、互いに凝集することなく、且つ、前記固体骨格部に化学結合することなく担持されている、ナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項2】
前記ナノ粒子は前記固体骨格部内に担持されている請求項1に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項3】
有機凝集体を更に有し、
前記有機凝集体は前記ナノ粒子を覆い、複合体粒子を形成しており、
前記ナノ粒子は前記固体骨格部に前記有機凝集体を介して担持されている、請求項1または2に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項4】
前記有機凝集体は前記固体骨格部に化学結合している請求項3に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項5】
前記有機凝集体は秩序構造を有している請求項3または4に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項6】
前記有機凝集体は球状有機凝集体である請求項5に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項7】
前記球状有機凝集体が球殻状タンパク質である請求項6に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項8】
前記球殻状タンパク質がフェリチンである請求項7に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項9】
前記球状有機凝集体が樹状高分子である請求項5または6に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項10】
前記樹状高分子がデンドリマーである請求項9に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項11】
前記多孔体の前記固体骨格部が網目構造を形成している請求項1から10いずれかに記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項12】
前記多孔体が無機酸化物の乾燥ゲルである請求項11に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項13】
前記多孔体がカーボン多孔体である請求項12に記載のナノ粒子含有複合多孔体。
【請求項14】
無機物質のナノ粒子と前記ナノ粒子を覆う有機凝集体とを有する複合体粒子を用意する工程と、
多孔体を作製するための原料溶液を調製する工程と、
前記原料溶液に前記複合体粒子を混合する工程と、
前記原料溶液から固体骨格部と細孔とを有する多孔体を形成する工程であって、前記複合体粒子を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、
を包含する、ナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項15】
有機凝集体を用意する工程と、
多孔体を作製するための原料溶液を調製する工程と、
前記原料溶液に前記有機凝集体を混合する工程と、
前記原料溶液から固体骨格部と細孔とを有する多孔体を形成する工程であって、前記有機凝集体を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、
前記多孔体に含まれる前記有機凝集体の内部にナノ粒子を形成する工程と、
を包含する、ナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項16】
無機物質のナノ粒子と前記ナノ粒子を覆う有機凝集体とを有する複合体粒子を含む溶液を用意する工程と、
固体骨格部と細孔とを有する多孔体を用意する工程と、
前記多孔体を前記溶液中に浸漬することによって、前記多孔体に前記複合体粒子を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、
を包含する、ナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項17】
有機凝集体を含む溶液を用意する工程と、
固体骨格部と細孔とを有する多孔体を用意する工程と、
前記多孔体を前記溶液中に浸漬することによって、前記多孔体に前記有機凝集体を分散した状態で含む多孔体を形成する工程と、
前記多孔体に含まれる前記有機凝集体の内部にナノ粒子を形成する工程と、
を包含する、ナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項18】
前記多孔体はゾルゲル法によって形成される、請求項14から17のいずれかに記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項19】
前記多孔体を乾燥する工程をさらに包含する、請求項18に記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項20】
前記多孔体の固体骨格部はカーボン前駆体から形成されており、前記乾燥工程の後に、前記カーボンを炭化することによってカーボン多孔体を形成する工程をさらに包含する、請求項19に記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項21】
前記多孔体に含まれる前記有機凝集体を分解する工程をさらに包含する、請求項14から20のいずれかに記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項22】
前記分解工程は、前記有機凝集体を加熱する工程を包含する請求項21に記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項23】
前記分解工程において、前記有機凝集体を実質的に除去する請求項21または22に記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項24】
前記ナノ粒子を形成する工程は、前記ナノ粒子の前駆体を調製する工程と、前記前駆体をナノ粒子に変換する工程とを包含する、請求項15または17に記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項25】
前記多孔体に含まれる前記有機凝集体を分解する工程をさらに包含し、前記前駆体を変換する工程は、前記有機凝集体を分解する工程において実行される、請求項24に記載のナノ粒子含有複合多孔体の製造方法。
【請求項26】
請求項14から25のいずれかに記載の製造方法によって製造されたナノ粒子含有複合多孔体。

【国際公開番号】WO2004/110930
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506887(P2005−506887)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007424
【国際出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】