説明

ナノ粒子担持材料およびその製造方法

【課題】 光がなくとも酸化作用を有し、菌などの増殖抑制効果、有害なガス、微細液滴を消臭、無害化する無効化効果を発揮する機能を持ったナノ粒子を、バインダーを用いることなく担持させた有機材料および繊維集合物を提供する。
【解決手段】 平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含み、機能性ナノ粒子の少なくとも30質量%は親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子を含む懸濁液を、有機材料の少なくとも一部の表面に付与して、前記機能性ナノ粒子を吸着し、固着・担持させた後、前記酸化チタン系ナノ粒子に過酸化物を付与することにより、優れた機能を有するナノ粒子が表面に露出した有機材料および繊維集合物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の殺菌、制菌、除菌などの増殖抑制効果、悪臭性または有害なガス、微細液滴を消臭、無害化する無効化効果を発揮する機能を持ったナノ粒子を担持した有機材料および繊維集合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光照射を必要とする光触媒担持繊維製品としては、例えば、特開平9−78454号公報(特許文献1)では、表面皮膜を形成する樹脂に光触媒を混合した屋外用シートが開示されている。また、特許2939524号公報(特許文献2)では、光触媒粒子を表面皮膜に熱圧着して担持させたものが開示されている。特に、特許文献2は、光触媒粒子が大きい場合を想定されていると推察される。近年になって、光触媒の粒子を微細にする検討が数多く行われて、微細な光触媒が市販されるようになった。
【0003】
光触媒は、その機能として光触媒表面の有機物を酸化させる機能を持っており、有機性汚れの酸化分解だけでなく、光触媒を保持または担持している樹脂をも酸化劣化させるため、無機物の酸化劣化しにくいアパタイトなどで光触媒を覆い、直接光触媒を保持または担持している樹脂との直接接触を避けて樹脂を保護する光触媒加工品も数多く提案されている。
【0004】
一方、機能性粒子を樹脂、繊維、あるいは繊維製品に担持した技術としては、例えば、特許2565371号公報(特許文献3)では、1hPa以下の減圧状態で行うスパッタエッチング処理でフィルム表面の粗面加工を行った後に、機能性粉末を吸着させた機能性シートが開示されている。特開平10−61986号公報(特許文献4)では、紫外線ランプと光触媒を塗布した不織布フィルターを利用した空気清浄機が開示されている。特開2003−250920号公報(特許文献5)および特開2003−334262号公報(特許文献6)では、光触媒として作用する酸化チタン水溶液を織布、不織布等に含浸させた殺菌、防臭効果を有するマスクが開示されている。
【0005】
また、特開2003−250920号公報(特許文献7)または特開2003−334262号公報(特許文献8)では、ペルオキソチタン酸アナターゼゾルなどの酸化チタン水溶液を繊維に付着させて、その酸化力を用いたマスクなども開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−78454号公報
【特許文献2】特許2939524号公報
【特許文献3】特許2565371号公報
【特許文献4】特開平10−61986号公報
【特許文献5】特開2003−250920号公報
【特許文献6】特開2003−334262号公報
【特許文献7】特許2938376号公報
【特許文献8】特許2875993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の殺菌、制菌、除菌などの増殖抑制効果、悪臭性または有害なガス、微細液滴を消臭、無害化する無効化効果を発揮する機能は、有機材料おいて全て材料表面で生じる機能であり、これらの機能を材料表面でなせるようにするのが最も経済的である。現在の常法では、これらの機能を持つ薬剤を、材料を構成する樹脂に練り込むか、接着剤に混合して材料に付着していた。しかし、このような方法では、材料に練り込むとその表面に露出する機能剤は僅かで、練り込んだ機能剤の大半が機能の発現に全く寄与せず、死蔵されて不経済で問題があった。また、接着剤に混合すると機能剤の表面が接着剤で覆われて、本来発揮できる機能より能力が著しく低下する問題があった。
【0008】
例えば、特許文献4〜6で用いられている光触媒を担持した不織布は、機能性粒子である光触媒粒子を接着剤と混合し、不織布表面に単純に塗布したものなので、高価な光触媒粒子を過剰に使用する必要があり、経済的ではなく、塗布液の粘度が高くなり、塗布むらが生じやすいなどの問題があった。従来のバインダーを使用して固着させる手法がまだ採られているので、前述したような問題があった。また、光触媒粒子を用いるので、酸化機能を発揮するには、光照射と水分が不可欠な要因となっていた。
【0009】
また、特許文献7、8で提案されている化学組成がTi25(OH)Xの過酸化チタン(別名ペルオキソチタン)は、強酸性下でカチオン状態でのみ安定で、徐々に黄色い水不溶性のペルオキソチタン水和物Ti25(OH)2に変質する。これは、非晶質で、光触媒機能を持っていない。すなわち、光触媒機能を発揮するには酸化チタンが結晶形態でなければならないのである。特許文献7、8では、この過酸化チタンを光触媒の前駆体として使用している。しかし、前記過酸化チタンは、不安定で水和物の沈殿を生じるために、特許文献7、8では、溶液の安定化を図ったものである。この過酸化チタンはTi−O−O−TiとTi−OHの化学構造で、かつ非結晶なので、酸化剤としての機能がないのは公知であり、無光下で制菌効果を発揮させるなどの用途での利用は不適であった。このペルオキソチタン溶液が安定化したアナターゼ分散液(別称ペルオキソ改質アナターゼゾル)は、100℃を超える加熱処理で結晶化させた純然たる結晶酸化チタンであり、従来の酸化チタン光触媒と同様の光触媒機能を持っている。しかし、従来の酸化チタン光触媒と同様に光なしでの酸化剤としての機能はないと考えられ、光なしでの酸化剤としての検討はなんら検討がなされていないのが実情である。さらに、光触媒としての結晶形態を採る酸化チタン微粒子は、沈殿分離しない長期に安定した水分散が難しい。そのため、前記アナターゼ分散液が提案されているが、これは酸化チタン微粒子自身の親水性が不十分であることを意味しており、分散寿命も極めて短いことから、酸化チタン微粒子を固着させた繊維集合物は製造上に問題であった。
【0010】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、酸化チタン微粒子がバインダーなどに埋没することなく、その機能を十分に発揮することができ、光なくとも酸化作用を有し、細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の殺菌、制菌、除菌などの増殖抑制効果、悪臭性または有害なガス、微細液滴を消臭、無害化する無効化効果を発揮する機能を持ったナノ粒子を担持した有機材料および繊維集合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、光触媒が有機物を酸化劣化させることと、この周囲の有機物の劣化を防止するために光触媒の周りをアパタイト等の無機化合物で被覆した光触媒が存在すること、非常に微細な無機化合物被覆光触媒が存在すること、アパタイト等の無機化合物が吸着し易いこと、無機化合物被覆光触媒が物理吸着し易いこと、及びこの光触媒は水に懸濁させることができ、かつ、長期に渡り沈降などの分離現象を生じない水懸濁液とすることができることを知った。
【0012】
また、本発明では、特に気体吸着能を持つシリカ、カーボンブラック、アパタイト等の親水性に富んだ無機化合物そのもの、あるいはこれらで粒子表面が覆われている被覆粒子であって、その粒径が100nm未満のナノサイズのナノ粒子は、これらを水懸濁させて非撥水性、言い換えれば親水性の材料に塗ると、前記ナノ粒子がこれら材料に吸着して固定化する現象があることを知った。
【0013】
そして、光触媒として用いられる酸化チタンは、水の存在下で光を照射すると、光触媒粒子表面もしくは表面近郊のTi−O結合が、Ti−O−OH結合に変化し、被酸化物と接触すると、・OHラジカルを発生して酸化すると推定、仮説を立てて、ナノ粒子の光触媒微粒子を吸着・固着させた有機材料に希釈過酸化水素を付与したものの殺菌性を測定したところ、光を照射しなくとも、光を照射した光触媒担持材料と全く同じ殺菌性を示すことを見出したのである。
【0014】
すなわち、本発明のナノ粒子担持材料は、有機材料と、平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含むナノ粒子担持材料であって、前記機能性ナノ粒子が、少なくとも粒子自体の吸着能により有機材料の少なくとも一部の表面に吸着し、固着・担持されており、前記機能性ナノ粒子の少なくとも30質量%が、親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子であり、酸化チタンのチタン−酸素結合のうち少なくともその一部が酸化機能を持つヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のフィルター用繊維集合物は、繊維集合物の一方の表面が、平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含み、前記機能性ナノ粒子が少なくとも粒子自体の吸着能により繊維表面に吸着し、固着・担持されている繊維を含む面であって、前記機能性ナノ粒子の少なくとも50質量%が親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子であり、酸化チタンのチタン−酸素結合のうち少なくともその一部が酸化機能を持つヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子を含むナノ粒子担持面を備えており、もう一方の表面が、エレクトレット化された繊維を含むエレクトレット面を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明のナノ粒子担持材料の製造方法は、平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含み、機能性ナノ粒子の少なくとも30質量%は親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子を含む懸濁液を、有機材料の少なくとも一部の表面に付与して、前記機能性ナノ粒子を吸着し、固着・担持させた後、前記酸化チタン系ナノ粒子に過酸化物を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のナノ粒子担持材料は、親水性無機化合物を粒子表面とする機能性ナノ粒子が有機材料の表面に粒子自身の吸着能によって吸着し、有機材料表面に露出して固着・担持しているので、固着している比表面積が大きく、有害ガスや液滴、そして細菌やかび胞子を吸着して除去することができる。また、本発明は親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子を使用しているので、前記した吸着・除去の機能に加え、これら吸着物を内包する酸化チタン系ナノ粒子の光触媒としての酸化分解能力によって、無害化することができる。
【0018】
そして、本発明のナノ粒子担持材料は、酸化チタン系ナノ粒子の酸化チタンの一部を酸化力のあるヒドロパーオキサイド化しているため、光がなくとも従来の光触媒と同様に酸化分解能力によって、無害化することができる。光なしで使用して消費されたヒドロパーオキサイドは、例えば、間歇的に過酸化水素と接触させることにより、容易に補充、即ち賦活化することができる。
【0019】
本発明のナノ粒子担持材料は、ナノ粒子の担持を水懸濁液の塗布、印刷などの手軽な付与手段で行うことができ、過酸化水素等の過酸化物による賦活化処理は、これに希薄過酸化水素水溶液等を付与することで手軽に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のナノ粒子担持材料は、有機材料と、平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含むナノ粒子担持材料であって、前記機能性ナノ粒子が、少なくとも粒子自体の吸着能により有機材料の少なくとも一部の表面に吸着し、固着・担持されており、前記機能性ナノ粒子の少なくとも30質量%が、親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子であり、酸化チタンのチタン−酸素結合のうち少なくともその一部が酸化機能を持つヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子を含むことを特徴とする。前記有機材料とは、有機物質で構成されるものであって、例えば、樹脂、フィルム、繊維等の形態を有するものをいう。本発明は、大きさが100nm未満というナノ粒子である親水性無機化合物粒子自身の吸着力で有機材料に吸着し、固着・担持させることにより、水に濡れる成分が表面を形成している有機材料のその表面部分にバインダーを使用せずに、固着一体化させたナノ粒子担持材料である。そして、機能性ナノ粒子のうち酸化チタン系ナノ粒子は光触媒機能も有するので、光触媒粒子の酸化効果により殺菌、制菌、除菌などの細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の増殖抑制効果を発揮し、悪臭性または有害なガスや微細液滴を、光触媒粒子を被覆している親水性無機化合物が吸着し、内包されている光触媒の酸化効果によって消臭や無害化する無効化効果を発揮する機能を有している。その機能は、光の暴露が十分であれば、少なくとも一昼夜、条件によっては1週間程度でこれらの効果が持続する光触媒担持材料となる。
【0021】
しかし、この酸化効果を発揮するには、光と水分を必要とする重大な欠点があり、受光可能な薄い平面形状に適応が限られるという問題もあった。そこで、鋭意検討の結果、光触媒粒子である酸化チタンを、過酸化水素またはオゾン水などの過酸化物と接触させることにより、ヒドロパーオキサイド化させると光照射したものと同じ酸化効果を発揮させ得ることを発見し、本発明に至ったのである。
【0022】
まず、第一に、珪酸のシリカ、燐酸塩のアパタイトや炭などの親水性無機化合物は、比表面積が大きいその多孔体が、良くガス吸着することで知られていたが、本発明者は、これら親水性無機化合物が限りなく微細となり、ナノ粒子となった場合に、水で濡らすことのできる樹脂にこれらを水懸濁液として極めて薄く塗布し、乾燥させると、前記と逆にこれら樹脂表面に吸着し、超音波水処理でも離脱させることができないほど固着・担持することを確認した。このナノ粒子の吸着し固着・担持する作用について、当初、塩化ビニル樹脂で被覆する工程で、被覆層表面に無数の微細な凹凸が生じ、該凹部にナノ粒子がトラップされて保持されていると考えていたが、電子顕微鏡で樹脂被覆したシートの表面を観察すると、微細な凹凸は無く、緩やかなうねり状の凹凸であり、塗布したナノ粒子がすっぽりと収まって固定化されるような孔が無く、滑らかな表面であった。過剰塗布で無い場合、うねり状の凹凸の表面形状と無関係に、かつ、当該シートはスパッタエッチング処理をしていないにも関わらず塗布した表面の全面に吸着されていることが明らかであった。しかも、日光暴露を数日間おこなったものを水洗しても、過剰塗布のものは脱落するであろうが、その表面はナノ粒子で覆われており、爪で擦っても剥離せず、剃刀の刃で擦ると、基材が削られているところ以外はナノ粒子で覆われ、強固に固着していることを確認し、微細な凹部による固着ではないことを確認した。前記水懸濁液をセロファン、そして軟質塩化ビニル樹脂やポリエステル(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂などの熱可塑性樹脂フィルムに塗布して、その付着状況を観察したところ、水に濡れ易い(親水性)フィルムは容易に薄く均一に塗布することができ、該懸濁液を乾燥すると、白い天花粉を塗した様な外観のフィルムとなったが、吸着効果が大きくて、過剰塗布した光触媒の過剰部分は簡単に擦ると除去されるが、フィルム表面の光触媒は簡単には除去できないことと、超音波洗浄でも簡単には除去できないことを知った。これは、洗浄したものを日光暴露し、その後で水滴を垂らす親水性評価で確認した。直接的には、光触媒を微細な部分塗布したものを同様にして日光暴露し、非金蒸着下で電子顕微鏡撮影すると、繊維集合物表面に熱可塑性樹脂を含浸させたシートを例に図1に示す。図1のとおり、塗布されている部分(黒い部分)と、塗布されていない部分で帯電状態が異なり観察することができる。また、このフィルムや樹脂含浸繊維シートを、屋外暴露して光触媒の機能を観察したが、容易には光触媒が脱落せず、光触媒による持続性のある殺菌、制菌、除菌などの増殖抑制効果、防汚効果などが発揮されていることを知った。
【0023】
第二に、発明者らは、担持する繊維等の劣化を抑制する目的で、光触媒粒子を酸化劣化しない無機物で被覆した親水性無機化合物被覆光触媒を使用した。前記ナノ粒子の芯に光触媒を内包させることにより、光触媒機能を有しつつ、粒子表面の親水性無機化合物が、水で濡らすことのできる樹脂等有機材料の表面に固着・担持することを知った。すなわち、ナノサイズの光触媒粒子が繊維等に付着・固着する現象を用いた、バインダーを使用せずに固着・担持する光触媒担持材料であり、光触媒粒子を固着させたものに紫外線などの光を照射すると、少なくとも光触媒の酸化効果によって殺菌、制菌、除菌などの細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の少なくとも増殖抑制効果や、悪臭性または有害なガスや微細液滴を、光触媒粒子を被覆している親水性無機化合物が吸着し、内包されている光触媒の酸化効果によって消臭や無害化する無効化効果を発揮する機能を持ち、光の暴露が十分であれば、少なくとも一昼夜、条件によって1週間程度は、これらの効果が持続する光触媒担持材料を得ることができる。ただし、上記光触媒担持材料は、光触媒の酸化効果を発揮するには、水分と光の照射が不可欠であり、これが光触媒担持商品の展開上、大きな障害となっており、光照射に頼らず、同様の酸化効果を発揮する繊維集合物が望まれていた。また、使用する機能剤が光触媒の場合、光が当たらない、厚くて内部まで光がとどかない、および光をあてることができないなどの用途では使用できない問題があった。
【0024】
本発明者らは、清浄な環境下では、光照射後1週間程度経過後もこれらの酸化効果が持続することに注目し、その酸化メカニズムを詳細に検討したところ、酸化効果の持続性から、単なる・OHラジカルではなく、その前駆体として、酸化チタンのすくなくとも一部がヒドロパーオキサイド化しており、・OHラジカルより寿命の長いこのヒドロパーオキサイドが随時被酸化物と反応して・OHラジカルが発生して酸化効果を発揮していると推定した。そこで、酸化チタンの部分ヒドロパーオキサイド化を検討した結果、間歇的な過酸化物処理により、光照射処理に代替し光照射に頼らずとも、同様の酸化効果を発揮することを知り、本発明に至ったのである。具体的には、酸化チタン系ナノ粒子に間歇的に過酸化水素またはオゾン水などの過酸化物を接触させて、酸化チタン分子の一部分をチタンヒドロパーオキサイドとすることにより、ヒドロパーオキサイドから発生する酸化効果によって、光照射がなくとも、殺菌、制菌、除菌などの細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の少なくとも増殖抑制効果や、悪臭性または有害なガスや微細液滴を、消臭や無害化する無効化効果を発揮する機能を持ったナノ粒子を担持した有機材料および繊維集合物を得ることができる。また、上記ヒドロパーオキサイド化により、光暴露のために必要とされた繊維集合物の厚みの制限を受けることがない。
【0025】
また、ナノ粒子担持材料がナノ粒子担持繊維およびナノ粒子担持繊維集合物の場合、ナノ粒子の吸着現象を利用しているため、過剰な塗布がなければ、粒子の脱落がより大きい粒子の塗布に比べて格段に少なく、珪酸のシリカ、燐酸塩のアパタイトや炭などの親水性無機化合物のナノ粒子を用いたものは、比表面積の大きい繊維素材に担持されているため、極めて比表面積が大きくなっており、極めて吸着速度が早く、また低濃度なものも吸着して除去できるフィルターなどに最適な吸着繊維素材となる。さらに、ナノ粒子は一般に高価であるが、塗布に使用する量が少なくても、菌制御などの効果を発揮できるため、例えば高価な光触媒の使用量を従来のバインダーを用いたものより極小とできるなど経済的である。
【0026】
本発明は、親水性無機化合物で被覆されたナノ粒子を非撥水性材料、より好ましくは親水性材料に吸着させ固定することで、前記材料に親水性無機化合物を担持させたものである。前記材料の形態が繊維にあっては、繊維表面の非撥水性材料上に吸着・担持させるものであり、前記材料の形態が繊維集合物にあっては、その繊維集合物を構成する繊維の繊維表面が非撥水性材料で構成されているもの全て、もしくは、前記繊維集合物の表面に露出している繊維の当該繊維表面に吸着・担持させたものである。親水性無機化合物で被覆された粒子が光触媒粒子である場合、紫外線ランプまたは直射日光に暴露して光触媒粒子を活性化させると、光触媒粒子の酸化効果で、殺菌、制菌、除菌などの細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の少なくとも増殖抑制効果や、悪臭性または有害なガスや微細液滴を、消臭や無害化する無効化効果を発揮する機能を発揮する。しかし、これを一般的な写真現像用の暗室内に約10日放置すると、これらの効果が低下または喪失してしまう問題があり、これら機能を発揮するには光と湿度が不可欠であることが明確となった。
【0027】
そこで、光触媒のうち酸化チタン系光触媒は、水の存在下で光を照射すると、光触媒粒子表面もしくは表面近郊のTi−O結合が、Ti−O−OH結合に変化し、被酸化物と接触すると、・OHラジカルを発生して酸化すると推定した。光触媒ナノ粒子を吸着・固着させたセルロース不織布に希釈過酸化水素を噴霧し、風乾したものの殺菌性を測定したところ、光を照射しなくとも、光を照射した同不織布と全く同じ殺菌性を示すことを見出したのである。さらに、光触媒ナノ粒子懸濁液を過剰塗布した不織布に10%高濃度過酸化水素を付与(噴霧)したところ、付与面が過酸化チタン(別名ペルオキソチタン)と同じ黄色に変色したが、希釈過酸化水素付与(噴霧)と同様に殺菌性を有していた。数%以下の希釈過酸化水素水溶液の付与(噴霧)では、濃度低下と共に黄変程度が低下し、0.5%以下では黄変は認められないが殺菌性を有していた。このことより、過酸化チタン生成反応とは別の反応が生じていると推定され、過酸化チタンが最終的に安定な黄色い水不溶性のペルオキソチタン水和物Ti25(OH)2になり、当該化合物のチタンと酸素の結合が、Ti−O−O−Tiのペルオキシチタン結合であることが知られているため、チタンと酸素の結合は他の形の結合となっていると推定される。また、本発明のナノ粒子担持材料が殺菌性を保持していることから、酸化性の結合が存在していることは間違いなく、結合形態で残る形態はTi−O−OHのヒドロパーオキサイド結合のみとなり、当該の形態を採っていると推定した。これは、前記した光触媒粒子が水の存在下で光照射されて発生すると仮定した現象と全く同じであり、殺菌性の評価と一致する。そこで、本発明の光触媒担持不織布はヒドロパーオキサイド結合が存在すると断定できるのである。
【0028】
すなわち、本発明は、非撥水性材料で繊維表面の過半が占められている繊維の、少なくとも非撥水性材料で覆われている繊維表面の上に、平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で、少なくとも気体吸着機能を持つ微細なナノ粒子が、少なくとも粒子自身の吸着能によって繊維表面に吸着し、その結果、ナノ粒子が固着・担持されている機能性ナノ粒子担持繊維であって、機能性ナノ粒子の少なくとも30質量%がアパタイトで被覆されている酸化チタン系のアパタイト被覆光触媒と称す被覆光触媒であり、その酸化チタンの少なくとも10質量%が、該酸化チタン粒子のチタン−酸素結合の少なくともその一部が、酸化機能を持つヒドロパーオキサイド化していることを特徴とするナノ粒子担持繊維であることが好ましい。なお、本発明でいう被撥水性材料とは、フッ素樹脂など超撥水性樹脂と呼ばれている樹脂を除くものであり、これに親水基等を付与して親水化処理した樹脂を含む概念である。
【0029】
さらには、この繊維を構成要素とする紙、不織布、織編物等の繊維集合物であって、少なくとも1表面を形成する繊維の内、機能性ナノ粒子担持繊維で、構成繊維の少なくとも20重量%を占めてなるナノ粒子担持繊維集合物であり、フィルターとしては、殺菌効果を確実にするため、非撥水性材料で繊維表面の過半が占められている繊維を含む、紙、不織布や織編み物などの繊維集合物であって、本発明のナノ粒子担持繊維が繊維集合物の表面など、その一部に層状に、偏在するナノ粒子担持繊維集合物であることが好ましい。
【0030】
また、本発明においては、少なくとも気体吸着機能を持つ微細なナノ粒子の固着手段が、ナノ粒子懸濁液の塗布および印刷などの付与によるものであり、前記ナノ粒子担持繊維集合物の少なくとも1表面の全部および/または整然と配された一部において、非撥水性材料で繊維表面の過半が占められている繊維の非撥水性材料で覆われている繊維表面の上にナノ粒子を付着・固定化し、その後、ナノ粒子固着繊維あるいは、ナノ粒子固着繊維を含む繊維集合物に過酸化水素およびオゾン水などを噴霧などの方法で付与して、酸化チタン粒子の少なくともその一部をヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子担持繊維集合物であることが好ましい。
【0031】
ナノ粒子担持繊維集合物の具体的応用商品としては、繊維集合物の一表面に露出している繊維が、アパタイト被覆光触媒粒子が少なくとも50質量%含まれる機能性ナノ粒子を担持しており、もう片面が、エレクトレット化処理可能な繊維で構成されているフィルター用のナノ粒子担持繊維集合物であり、光触媒の使用量を著しく減らした経済的なエアフィルター素材とでき、これをエレクトレット化処理することで塵埃も捕集できるフィルター素材とすることができる。
【0032】
液体もしくは気体のフィルター素材として、前記シート状のナノ粒子担持繊維集合物をプリーツ折りしてプリーツ状に折り畳まれたカートリッジフィルター、前記シート状ナノ粒子担持繊維集合物を多孔性コア材に巻回して筒状の巻回したカートリッジフィルター、あるいはシート状ナノ粒子担持繊維集合物に熱接着性繊維を混綿して前記熱接着性繊維で巻回熱接着した筒状のモールド型カートリッジフィルターとして利用するナノ粒子担持繊維集合物であり、液体フィルターとして用いる場合は、1日あるいは数日間の間隔で間歇的に希薄過酸化水素液を流すことで殺菌性などの酸化機能を回復、賦活化させて繰り返し使用が可能となる。
【0033】
抗菌性、防かび性や消臭性を要求される用途の不織布などの繊維集合物には、殺菌剤、防かび剤や消臭剤などの化学薬品が専ら使用されているが、これらの内、殺菌剤や防かび剤は原理的にも効くものと効かないもの、即ちスペクトルがあり、全ての菌や黴に効果のある薬剤は無いが、過酸化水素で賦活化した本発明のナノ粒子担持繊維およびその繊維集合物は、酸化させて死滅させるものであり、広範囲にこれらの効果を発揮できる可能性が高いが、ブリードアウトして広範囲に効力を発揮する殺菌剤と異なり、光触媒の酸化効果を発揮できる程の距離に細菌などを持ってくる必要が有る。本発明の過酸化水素などの過酸化物で賦活化した光触媒機能を有する酸化チタン粒子を利用してこれらの効果を発揮させる場合では、問題はこれら細菌などを過酸化水素光触媒の直近に集めることであり、本発明では、吸着機能を持つ親水性無機化合物で光触媒を覆う、もしくは、吸着機能を持つ微粒子と併用することで、問題を解決した。
【0034】
一般に光触媒を用いたシートなどの繊維製品は、光触媒を熱可塑性樹脂に練り込むまたは混合して使用され、光触媒が高価なため、表面層の一部に練り込んだ樹脂を配したりして、光触媒の使用量を少なくすることが試みられていた。これらは、何れも光触媒単独または無機化合物により練り込まれた樹脂の酸化劣化を防止する対策が打たれているが、樹脂を接着剤としていずれも使用して、光触媒をシートに固定するものであり、光触媒を吸着によってシートに保持させる考えのものではなかった。本発明では、微細な吸着能のあるアパタイト等の多孔性の親水性無機化合物で覆った光触媒を使用し、このアパタイト等の吸着力で光触媒を繊維表面に保持、固定させることを基本とし、光触媒固着厚みを200nm未満と極めて薄くなしたため、その光触媒の付着量を少なくして透明性を向上させ、光触媒の全面塗布による白っぽさを回避したものである。しかしながら、繊維集合物で本発明を実施するに当たり、印刷などの手段による塗布では、部分的には前記光触媒固着厚みを超える部分が発生する可能性があるので、限定から外した。しかし厚みを超える部分は全体から見ると僅かであり、この部分の過剰塗布部が脱落しても、脱落物は極めて微小であり、商品価値を損なうものではない。本発明では、前記したアパタイト等の親水性無機化合物で被覆されたナノ光触媒粒子を吸着によって固着させた繊維および繊維集合物等の有機材料に、過酸化水素またはオゾン水などの過酸化物を噴霧などの手段で接触させて、光触媒粒子である酸化チタンを、ヒドロパーオキサイド化させ、無光下でも光照射したものと同じ酸化効果を発揮し得るようになしている。以下、親水性無機化合物で被覆された光触媒等の機能性ナノ粒子(以下、単に無機化合物被覆ナノ粒子という)を吸着によって固着させた繊維と、機能性ナノ粒子に含まれる酸化チタン系ナノ粒子のヒドロパーオキサイド化処理に分けて説明する。
【0035】
前記無機化合物被覆ナノ粒子を吸着によって固着させた繊維および繊維集合物等の有機材料(以下、光触媒固着繊維等ともいう)は、無機化合物被覆ナノ粒子を薄く塗布したものであって、繊維表面または繊維集合物表面の全面に存在する必要もなく、塗布形態をドットプリントの点状印刷として部分印刷とすることで、無機化合物被覆ナノ粒子の塗布絶対面積と量をさらに少なくして、経済効果を高めたものも含まれる。本発明は、前述のシートと同様に、繊維集合物にあっては無機化合物被覆ナノ粒子の使用量を極少として安価に同程度の光触媒等の機能性粒子の効果を発揮させることができる。光触媒等の無機化合物被覆ナノ粒子の使用量を極少化するため、ノーバインダーとし、塗布厚みもサブミクロンオーダーとし、場合によっては、塗布を全面塗布から部分塗布に変更してさらに光触媒等の使用量を減らした。この結果、前記した効果で述べた様に、透明性などが塗布していないものに相当する良い結果を得ることに成功している。
【0036】
本発明は、アパタイト等の親水性の無機化合物で被覆された数十nmと微細なナノ粒子を用いており、ナノ粒子の表面を形成するアパタイト等の吸着効果で繊維の非疎水性、より好ましくは親水性表面に固着させることで担持させるものである。すなわち、光触媒を印刷・塗布するにおいて、印刷時はナノ粒子懸濁液がはじかれず、馴染む程度に繊維表面が親水性であり、親水性の繊維表面に光触媒を内包する親水性無機化合物が少なくとも吸着されて固着される。すなわち、前記親水性無機化合物を介して光触媒等の機能性ナノ粒子が繊維等の表面に固着する。この固着は、前述したようにしっかり固着しており、吸着効果が大きくて、簡単には塗布した無機化合物被覆ナノ粒子を除去できない状態とすることができる。したがって、その塗布厚みは、光触媒粒子の2次凝集粒子径より小さいことが、しっかり固着させる点で好ましく、平均2次粒子径が数百nm未満のため、200nm未満としている。したがって、本発明では、光触媒ナノ粒子等を親水性の無機化合物で被覆しているため、水懸濁液として塗布に、主として使用するので、この懸濁液をはじかない素材への塗布が好ましく、かつ、極めて薄く塗布する必要がある。薄く塗布する手段は、転写型ロールコーターなどの塗布装置、より好ましくはフレキソ印刷、オフセット印刷またはドット印刷などの印刷手段を用いて、光触媒懸濁液の全面塗布または微細な点状の部分塗布によって容易に達成できる。
【0037】
本発明で使用する機能性ナノ粒子は、繊維素材への自己吸着能を必須要件としているため、粒子表面を、少なくとも気体吸着機能を持つ親水性無機化合物で構成されることが好ましい。さらに自己吸着能を発揮するためにナノ粒子である必要が有り、その粒子径は、平均一次粒子径が100nm未満であり、懸濁液の製造など塗布の利便性から1nmを超えるものが用いられる。これらの粒子表面を、少なくとも気体吸着機能を持つ親水性無機化合物で構成された微細なナノ粒子が、少なくとも粒子自身の吸着能によって繊維表面に吸着し、その結果、該粒子が固着・担持されている機能性ナノ粒子担持材料となり、繊維集合物では少なくとも繊維集合物表面に露出している繊維が、前記機能性ナノ粒子担持繊維で形成されていることが好ましい。
【0038】
さらに、本発明に使用する機能性ナノ粒子の一つである光触媒粒子は、アナターゼ型酸化チタンなど公知の光触媒が都合良く用いられ、これら光触媒は周辺の樹脂の劣化を低減する対策のために親水性無機化合物で被覆しており、例えばアパタイトで被覆されている光触媒を周辺の樹脂の劣化対策だけでなく、吸着性に注目して使用することが好ましい。また、本発明に使用する光触媒は、市販されている極微小の粉体を用いるのであるが、平均一次粒子径が100nm未満のものも市販されており、後述する吸着効果を高めるために、100nm未満が好ましく、80nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。なお、微小の粉体に付きものの二次凝集は避けることが好ましく、凝集した場合のその二次凝集粒子は、数が少なく、その径は1μm未満が好ましい。より好ましくは500nm未満であり、さらに小さいほど表面積が大きくなって吸着力が向上して、固着力が高くなるのでさらに好ましくなるのである。
【0039】
本発明に使用する光触媒は、光触媒を被覆している物質が親水性無機化合物である。親水性無機化合物としてはアパタイトやシリカがあり、これらの微粉末はガスなどを極めて吸着し易いことが知られている。この被覆されたアパタイト被覆光触媒やシリカ被覆光触媒は、単品の化合物と同様に吸着能が高く、逆に親水性高分子に自身が吸着して固着する現象を本発明者らは確認したのである。なお、吸着現象は同じ吸着材では表面積が大きいほど大きいこと、そして、粉体では粒子径が小さいほど単位重量当たりの表面積が大きいことが周知であり、すなわち、逆に吸着材が極小であるほど物に吸着し易いことになる。この理由により前記した本発明に使用する光触媒の粒子径が決まるのである。なお、本発明でいうアパタイト被覆またはシリカ被覆光触媒とはアパタイト系またはシリカ系の化合物で覆われた光触媒をいい、特にアパタイト被覆酸化チタンナノ光触媒粒子が好ましい。無論他の被覆ナノ光触媒粒子との併用は不都合ではないが、使用する光触媒は後述の過酸化水素等の過酸化物による賦活化反応が酸化チタンに特有であり、他のナノ粒子との併用であっても親水性無機化合物被覆酸化チタンナノ光触媒粒子を少なくとも30質量%含む必要がある。さらには吸着の実績から被覆無機化合物もアパタイトが特に好ましく、本発明ではアパタイト被覆酸化チタンナノ光触媒粒子を少なくとも30質量%含むことが好ましい。なお、他のナノ粒子との併用で30質量%未満となると、凝集などの現象が生じ易くなり、塗布に偏分散を生じ易く好ましくない。なお、前記した光触媒の他の本発明に使用する親水性無機化合物の機能性ナノ粒子には前記したアパタイトやシリカに加え、カーボンブラックが挙げられるが、これに限定されるものでなく、気体吸着機能を持つ親水性無機化合物で粒子自身の吸着能を持つナノ粒子であれば好ましく用いられる。
【0040】
前記アパタイト、シリカや活性炭等の無機化合物の粒子は、良好な親水性を示し、ミリメートルオーダーからマイクロメートルオーダーの粒子は、良好なガス吸着材でもある。これらは水に容易に分散させて懸濁液とでき、長時間の保管で沈殿を生じる。しかしこれらの素材から成る本発明に用いる数十nmの微細な粒子は、濃度によって増粘効果を生じ、1か月の保管でも沈殿を生じない、また水希釈する時、希釈水のPHによって粘度むらのある液(ままこ)となるなど、ミリメートルオーダーからマイクロメートルオーダーの粒子と異なる現象があり、これら水懸濁液を、この液を撥かないほどの親水性を示す樹脂フィルム(具体例としては塩化ビニル樹脂やポリエチレン・テレフタレート樹脂など)に薄く塗布して乾かすと、水に濡れた様に該フィルムに綺麗に付着する。当然ながら、樹脂フィルムの表面の凹凸よりも付着厚みははるかに小さく、鋭い刃の刃物で該フィルムの表面を這わせても一部のフィルム表面が付着粒子と共に削りとられるだけで、ほとんど全ての付着粒子はフィルム表面に残存しており、水中で洗っても、塗布面した部分での、付着粒子が除去された表面は発見できなかった。おそらく過剰に塗布された粒子は脱落していると考えられるが、水洗しても、少なくとも光触媒を塗布した部分は全て当該粒子で覆われている結果を得た。
【0041】
なお、本発明に使用する機能性ナノ粒子は、塗布するのが簡易な様に、水の懸濁液として塗布に供するのが都合良く、該懸濁液には、水や光触媒粒子以外に、分散剤、粘度調整剤やPH調整剤などを適宜加えて調合して、2次凝集や光触媒粒子の沈殿分離を防ぐまたは遅延させることが好ましい。
【0042】
また、使用する光触媒粒子は純度が100%でなくても実用上不都合はなく、光触媒粒子の表面を被覆しているアパタイトやシリカあるいは他の親水性無機化合物のみの、本発明の光触媒粒子相当の粒子径の微粒子が混在しても不都合ではない。光触媒を含有する光触媒粒子と他の粒子の割合は、全面塗布の場合は光触媒粒子が少なくとも30質量%であり、部分塗布の場合は、塗布面積割合(A面積%)×光触媒粒子混合割合(B質量%)>30を少なくとも満足する光触媒粒子混合割合が望ましい。前記混合割合を下回ると、効果が不十分となる場合が生じ好ましくない。
【0043】
本発明に使用する機能性ナノ粒子や光触媒ナノ粒子は、親水性の化合物で表面が形成されていて、水に対する分散性に優れているために水の懸濁液で説明を進めるが、速乾性を要する場合は、アルコールやアセトンなどの水に相溶する有機溶剤を添加などすることも不都合ではない。また、本発明に使用する機能性ナノ粒子懸濁液に、水に可溶の金属塩などの金属含有化合物を溶解して使用すると、消臭やハロー現象を持つ殺菌機能をさらに高めることができて好ましい。該金属含有化合物としては、硫酸銅や酢酸銅などの銅化合物や硫酸亜鉛などの亜鉛化合物が例示でき、これらは、アンモニアを錯体として、硫化水素を硫化物として化学的に捕集できる。この他に鉄化合物など有害ガスと反応する公知のものが多数ある。
【0044】
以下、本発明の説明を簡単にするため、アパタイト被覆ナノ光触媒粒子の水系懸濁物を例に挙げて説明する。
【0045】
本発明の光触媒担持繊維集合物は、前記光触媒粒子懸濁液をロール転写法で薄く塗布することで得られるが、上記した様に全面に塗布しなくとも、公知の部分塗布(点状印刷)でも抗菌や消臭機能を持つ繊維集合物とすることができる。無論薄い懸濁液に溝漬けしてニップして絞って全層の繊維に担持できるのは言うまでもない。部分塗布の手段としては、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷またはドット印刷などがあり、都合良く利用できる。なお、凹版印刷のグラビア印刷などでは、光触媒粒子懸濁液の濃度をフレキソ印刷より薄くしないと過剰塗布となるので注意する必要がある。本発明では、前記した様に繊維集合物表面を、点状のドットで光触媒を印刷・塗布するのも光触媒の使用量を少なくする経済的な観点から好ましい。その点状のドットの形状は、円、楕円や多角形や不定形であっても良いが、光触媒の印刷面積を少なくするには、各印刷点が整然と規則正しく配置される必要があり、円または四角形などの多角形が特に好ましく、かつその面積も特定のルールに沿って規則正しい組合せが菌などの増殖抑制効果や消臭、無害化効果を少ない面積の印刷で発揮させるには好ましい。
【0046】
本発明の光触媒の使用量は、表面被覆割合を50%としても、全面に表面に塗布する方法に比べ50%であり、一般に行われている従来の樹脂含浸方法と比較して、5%以下の使用量となり、多少印刷などの費用が増えても同等の効果を発揮する上での経済効果は大きい。
【0047】
光触媒粒子懸濁液を均一に薄く塗布するロール転写は、例えば、フレキソ印刷で、まずロールコーターで第1番目のロールの表面に薄く塗布し、印刷ロールに転写して印刷に供する装置を、印刷ロールを滑らかな表面のゴム被覆ロールや鏡面仕上げした印刷ロールに換えて行うと都合が良い。しかし、これよりもさらに薄く塗布面するには、印刷面積の大きいフレキソ印刷が都合良い。これは部分的に過剰に印刷ロールに光触媒粒子懸濁液が塗布されても液の逃げ場があるため全体として薄く塗布できる理由による。なお、この場合、過剰な懸濁液はフレキソ印刷板の凹部に押出されて、そこの部分は過剰塗布となるが、全体に占める面積も小さく、白濁などの目だった欠点とはなり難く、使用中に脱落することも期待できるので、特に好ましい。なお、本発明の説明では、水系懸濁物で話を進めるが、生産する上での速乾性の要望に対してはアルコールやアセトンなどの水に溶ける有機溶剤の併用なども好ましいことは言うまでもない。
【0048】
本発明では、親水性の化合物で被覆した光触媒を主として水懸濁液で塗布するため、ナノ粒子が担持されている繊維表面を形成している素材は、湿式あるいは乾式のレーヨン繊維、脱脂コットンや麻などの天然繊維であるセルロースが固着の点で特に好ましく、ポリエチレン・テレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル樹脂、可塑剤を含む軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、クロロプレンゴム、クロロスルホン化エチレンゴム、またはウレタンエラストマー樹脂から選ばれた1つまたは複数種の非撥水性材料を主成分とする樹脂、または羊毛などの天然の原料に起因する素材であるのが好ましいが、光触媒粒子の懸濁液塗布は、後述の様に親水化処理すると塗布が可能となるポリオレフィン樹脂などの撥水性樹脂でも何ら不都合では無く、無論、親水性樹脂の更なる親水化はさらに好ましい。
【0049】
具体的には、本発明の繊維集合物は、素材として一般的に現用されている、コットン、レーヨンなどのセルロース繊維、ポリエチレン・テレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリビニルアルコール系繊維、アクリル繊維およびガラス繊維から選ばれた1つまたは複数種の繊維からなる織物や不織布を使用すると都合が良く、不織布にあってはレーヨンスパンボンド不織布(商品名ベンリーゼ(旭化成せんい社製)等)や熱接着繊維を混綿した水流交絡不織布や熱接着不織布が特に都合が良い。
【0050】
本発明では現在汎用されている織物や不織布などの繊維集合物を使用するのが、経済的であり、水濡れ性が不足する場合は液濡れ性を改善するため、汎用されているこれらに、コロナ放電処理やフレームプラズマ処理などの表面改質による接着性改善処理や、スルホン化処理、オゾン酸化処理や弗素処理など接着剤を用いた接着改良処理に使用する親水化処理を行うのは大変好ましい。しかし、販売価格を考慮することも大事であり、撥水性物質の不添加や混入に注意すれば、大半はこれら表面処理が不要である。
【0051】
また、繊維集合物を構成する繊維は、織編物にあっては、紡績糸やマルチフィラメント繊維、およびコアヤーンなどの糸条であるのが織り易く都合が良い。また繊維が分割タイプの繊維にあっては、これらの糸条の織物を高圧水流交絡加工して分割処理した極細繊維を含む織物もドレープ性を向上させ得るので好ましい。
【0052】
本発明の繊維集合物は、織編物、不織布、紙であるが、より具体的には、その一つは水流交絡不織布または熱接着不織布であり、少なくともその10質量%が熱接着性複合繊維で占められ、少なくとも前記複合繊維の低融点の熱接着成分が溶融して不織布の接着一体化に寄与しているものであり、熱接着繊維が10質量%を下回ると不織布強力に問題を生じ易く好ましくない。
【0053】
その二つ目は、繊維集合物の一表面に機能性ナノ粒子を担持した繊維が露出しており、もう片面にエレクトレット化処理された繊維で構成されている繊維層が配されているものであり、前記機能性ナノ粒子は、アパタイト被覆光触媒粒子を少なくとも50質量%含み、カーボン微粒子を0〜50質量%含むものからなっているものである。そして、繊維集合物が、脱脂コットン、湿式あるいは乾式のレーヨン繊維やアセテート繊維、あるいはパルプややしがら繊維などのセルロース繊維、そして脱脂した羊毛や絹などの天然繊維、またはビニロンやポリエステル繊維などの合成繊維から主としてなる非撥水性材料100〜30質量%と、熱接着繊維70〜0質量%からなる基材層と、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂の1つまたは複数種からなるスパンボンド不織布層と、該スパンボンド不織布に少なくとも自ら融着接着して一体化しているエレクトレット可能な繊維層からなり、スパンボンド不織布に基材層の繊維が繊維交絡して一体化している、スパンボンド不織布を中層とし、基材層とエレクトレット可能な繊維層がそれぞれ不織布表面を形成している繊維集合物であって、少なくとも不織布表面露出し表面を形成している基材層の繊維の表面に機能性ナノ粒子が担持されているものであり、これらはエアフィルターなどフィルター材として極めて有用である。
【0054】
その三つ目は、機能性ナノ粒子担持繊維集合物が構成要素の複合化不織布である繊維集合物であり、具体的には、複合化不織布が、ガスなどを吸着する機能を特徴とする機能性ナノ粒子担持繊維集合物の片面にエレクトレット化した、または、エレクトレット可能な繊維で構成された不織布層が、少なくとも該不織布の構成繊維の成分で融着して一体化した、または、ホットメルト樹脂などの接着材で接着されて一体化した複合化不織布であって、担持されている機能性ナノ粒子がアパタイト被覆酸化チタンナノ光触媒粒子を構成要素の少なくとも一つとし、光触媒を担持された繊維でもう片面を構成している、または、さらに該片面を透光性の繊維層で覆って触感などの繊維製品特性を改善した繊維集合物であり、これらは、難易マスクや通気性仕切りカーテンなどに有用である。
【0055】
その四つ目は、繊維集合物が織編物であり、その片面が機能性ナノ粒子で塗布・印刷されて、機能性ナノ粒子が固着されており、もう片面が、染色処理されているカーテンやドレープなどの意匠性繊維集合物、あるいはその片面が、非撥水性樹脂で被覆されており、該被覆樹脂表面にも、本発明の機能性ナノ粒子が担持されている複合化された手術用ベッドカバーや失禁マットなどの遮水シートなどに最適な機能性ナノ粒子担持繊維集合物であったり、樹脂被覆に替り多孔性フィルムが接着され一体化している、遮水性と通気性を具備している複合化された機能性ナノ粒子担持繊維集合物であり、さらに、その一表面をなす多孔性フィルム表面にも、本発明の機能性ナノ粒子が担持されている複合化された機能性ナノ粒子担持繊維集合物であり、洗濯時に後述する過酸化水素を噴霧する賦活化処理している。
【0056】
その五つ目は、全く光照射が期待できないフィルター用途のエアフィルター用途の不織布やナイメンメッシュ、そして、液体濾過、特に水濾過用途のフィルターであって、ナノ粒子担持繊維集合物が、プリーツ状に折り畳まれ、あるいは筒状に巻廻または筒状に巻廻熱接着されているカートリッジフィルター形状に成型されているもので、エアフィルター用途にあっては間歇的な希薄過酸化水素水溶液の噴霧、また、液体フィルターにあっては、同じく間歇的に希釈過酸化水素水溶液を通液させて、本発明のナノ粒子担持繊維およびその繊維集合物の酸化機能を簡単に賦活化させることができる。
【0057】
また、本発明の繊維集合物は光触媒を塗布しても無色透明に近いため、塗布していないものと区別がつきにくく、光触媒液に耐光性の劣る有機染料を添加して着色することで塗布状態をビジュアル化して生産の品質管理をし易くすることもできる。またこの液で使用上の注意書きなどを印刷することも好ましく、光触媒の作用によってこれらシートは数週間の使用で退色して無着色の状態となるので使用には全く差し支えなくなる。
【0058】
さらに、本発明の繊維集合物は従来の樹脂に光触媒を分散させたものと比較すると、光触媒が樹脂やバインダーで全く被覆されておらず、繊維表面に露出しているため最初から殺菌や消臭の効果を発揮し得るが、過剰に塗布された余分な光触媒の脱落と他の物への光触媒の付着を防止するため、乾燥後に予め光触媒を印刷した面を水洗し、さらに希釈過酸化水素水溶液水を塗布または噴霧させることで、使用直後から光触媒の脱落もなく防汚効果を発揮させ得る様にすることも容易に可能である。
【0059】
本発明のナノ粒子担持繊維およびその繊維集合物の酸化機能を発現させるために、アパタイト被覆ナノ光触媒粒子の酸化チタン粒子の、チタン−酸素結合の少なくともその一部を、酸化機能を持つヒドロパーオキサイド化するのは、すでに述べた本発明のアパタイト被覆ナノ光触媒粒子固着繊維およびその繊維集合物に、噴霧または浸漬の手段で希釈過酸化水素水溶液を塗布し、ナノ光触媒粒子と過酸化水素を接触させることで容易に達成できる。過酸化水素の塗布は、過酸化水素の濃度と塗布量によるが、一般的には、過酸化水素濃度が10〜0.01質量%の液を使用するのが都合良く、噴霧では5〜0.1質量%、そして浸漬では2〜0.01質量%が良い。濃度が高い場合は、黄変して、見栄えが悪くなるので好ましいことではなく、濃度が低いほど着色は低下し、2質量%以下では着色が判断できないくらい低下するので好ましいが、余り濃度が低いとヒドロパーオキサイドの発生量が少なくなる、即ち、殺菌などの酸化効果が低くなるので目的に添わない。また、低濃度の過酸化水素を使用している場合、光触媒機能も保有しており、さらに都合が良い。なお、殺菌などの賦活化は、前記と同様にして過酸化水素を噴霧すれば達成できる。なお、ヒドロパーオキサイド化は、酸化チタン粒子内、チタン−酸素結合の少なくともその一部が変化した酸化チタンが、酸化チタン添加総量の少なくとも10質量%であることが好ましく、50%を超えると黄変が酷くなり、10%を切ると塗布斑が発生し易くなりあまり好ましくない。また、過酸化水素塗布後に、水濡れ感の防止に加熱して乾燥するのが好ましい。なお、ナノ粒子塗布後の乾燥直後の過酸化水素噴霧などや、しっかり乾燥したアパタイト被覆ナノ光触媒粒子固着繊維およびその繊維集合物では、乾燥しなくても良い場合もある。
【0060】
前記酸化チタン系ナノ粒子の有機材料への固着量は、繊維集合物の片面から透視すると途切れなく塗布されているのが最も好ましく、この状態を簡単に実現できるのは、繊維集合物の少なくとも片面に印刷することにある。この少なくとも片面への印刷では、酸化チタン系ナノ粒子の固着量が0.5g/m2を超える量であれば、効果を発揮することができる。塗布むらを考慮すると、1〜3g/m2で十分であるが、繊維集合物の非撥水性繊維素材表面に塗布することを望めば、繊維集合物の目付にもよるが、100g/m2は必要となることがある。また、本発明に使用する酸化チタン系ナノ粒子は水懸濁液で印刷または塗布されると、微細な点状印刷、すなわちドット印刷でも滲んで周辺に散って吸着・固着するため、十分効果を発揮しうるのである。なお、過剰に厚く塗布しても脱落することがあるので、対象とする繊維表面積に見合う量を塗布するのが好ましい。
【0061】
本発明のナノ粒子担持材料は、気体吸着機能を持つ親水性無機化合物を粒子表面とする微細なナノ粒子は、接着材や樹脂に内包されることなく、即ち、ノーバインダーで、少なくとも粒子自身の吸着能によって繊維表面に吸着し、その結果、該粒子が固着・担持されている機能性ナノ粒子担持繊維および該繊維を含む繊維集合物であるため、固着している比表面積が大きく、活性炭やゼオライトの様に、有害ガスや液滴、そして細菌やかび胞子を吸着して除去する効果を持つ。そして、本発明はアパタイト被覆ナノ光触媒を使用しているため、前記した吸着・除去の機能に加え、これら吸着物を内包するアパタイト被覆ナノ光触媒の酸化分解能力によって、無害化する効果を持つ。なお、無害化とは光触媒が保有している酸化効果と全く同様に、殺菌、制菌、除菌などの細菌・黴・ウイルスなど微細生命体の少なくとも増殖抑制効果を発揮する、そして、悪臭性または有害なガスや微細液滴を、光触媒粒子を被覆している親水性無機化合物が吸着し、内包されている光触媒の酸化効果によって消臭や無害化する無効化効果をいう。
【0062】
さらに、本発明の光触媒はその一部を酸化力のあるヒドロパーオキサイド化しているため、無光下でも従来の光触媒と同様に酸化分解能力によって、無害化する効果を持つ。無光下使用で消費されたヒドロパーオキサイドの補充、即ち賦活化は、洗濯時あるいは概ね1週間以内の間歇的な過酸化水素との接触により容易にできる。なお、前記した間歇的な過酸化水素との接触を概ね1週間以内としたのは、被覆された光触媒微粒子は、一度光暴露されると、光が当たらなくても、その酸化効果が少なくとも1昼夜、条件によっては1週間以上持続することを根拠としており、過酸化水素賦活化処理した本発明の不織布で同様の結果を得ている。
【0063】
なお、本発明に用いる酸化チタン系ナノ粒子は、賦活化処理する過酸化水素の濃度と量に拠るが一部がヒドロパーオキサイド化している場合も多く、本来の光触媒としての機能を喪失しているわけではないので、光で十分に露光されると、少なくとも空気中では励起エネルギーが1日から1週間以上保持され、光が当たっていない場合でも、殺菌などの酸化効果を発揮するのであり、本発明のヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子担持材料は、光照射が期待できない状態で長期に使用する場合に特に有用で、従来の光触媒担持繊維集合物が光照射を必要とするため、光照射が容易な形状の布や不織布の形の窓用レースのカーテン、老人ホームやリハビリセンターなどの日光浴用の椅子や、学童の通学時に使用するマスクに代表される、定期的に日光が当たる繊維製品に限定されていたが、本発明の繊維集合物等は、間歇的な過酸化水素暴露を必要とはするが、これらの制限を撤廃できるので、マスク、シーツ、タオル、カーゼや包帯、手術ドレープ、白衣や手術着やカバー、病室や診療室の間仕切りカーテンなどの、介護や医療用の繊維製品をも有害な殺菌剤に曝すことなく容易に消臭、殺菌、防黴性の繊維製品とすることができる。
【0064】
本発明の最大の特徴は、新たに新商品として開発するのではなく、間歇的な過酸化水素暴露を必要とするが、すでに普及している繊維商品を殺菌や消臭機能を持つ機能商品として転用することが容易であることであるため、市場開拓を簡略化できることである。特に、シーツなどの定期的に洗濯する繊維製品は、すでに業務用途のシーツなどでは過酸化水素殺菌が行われており、洗濯の設備などをそのまま使用できてさらに有用である。また、本発明のヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子担持繊維およびその繊維集合物は、ナノ粒子の担持を、水懸濁液の印刷などの手軽な手段で行うことができ、過酸化水素賦活化処理は、これに希薄過酸化水素水溶液を噴霧することで手軽に行える。また洗濯する場合も、マルセル石鹸等で洗濯し、その後、同様に噴霧することで達成できる。特にカーテンは、本発明の繊維集合物が、吸着能力を持っているため、その吸着作用で空気中に浮遊している細菌や、細菌の付着している塵埃を吸着し、ナノ粒子で酸化して無害化できるため、有用と考える。
【0065】
本発明のナノ粒子担持材料は、極めて薄い、200nm未満、より好ましくは100nm未満という厚さの親水性無機化合物で被覆された光触媒等の層で少なくとも繊維表面の一部が覆われているため、光触媒等を担持しても、極僅かな表面の光散乱は生じるが、無色透明であり、過酸化水素賦活化処理しても同様であるため、担持した繊維集合物が染色や文字などの印刷物であっても色合いや風合いなどを損なわない、色鮮やかさに優れた増殖抑制効果、無効化効果などの機能を持つ光触媒担持物とできると共に、光触媒の使用量が極めて少なくできるので、これらを安価に提供することができ、市場浸透に有利となる。
【0066】
制菌効果を利用するものとしては、従来の光触媒の用途、例えば、車両用の座席や病院の待合室の座席など、光が当たる場所に設置する座席シートの表装資材があり、制菌効果と消臭などの複合効果を利用するものとしては、病室の間仕切りカーテンや家庭の窓用カーテンなどのカーテン類や、ベッドシーツや寝具カバーなどのカバー類に加え、本発明品は光照射を期待せずに使用できるため、従来適応できなかった、空気清浄機やエアーコンのエアフィルターや、食品製造の洗浄水などの殺菌のための液体カートリッジフィルターとして極めて有用であり、制菌効果は、シート表面に担持されている、細菌などを吸着し易い親水性無機化合物で表面を被覆されている光触媒が、その吸着作用で空気中に浮遊している細菌や、細菌の付着している塵埃を吸着し、光触媒に、またはその近傍に付着した細菌などを光触媒の酸化作用で殺菌または不活性化することで生じる。また、制菌効果と消臭などの複合効果は、前記と同様にして、有機性の有害塵埃やガス、液滴を吸着し、酸化することで生じる。
【0067】
また、制菌効果を期待する場合は全面に光触媒粒子懸濁液を印刷することが好ましいが、ドット印刷でも不都合ではなく、フレキソ印刷機、グラビア印刷機やドットプリンターを用いると、光触媒が印刷されていない部分に任意の顔料を印刷できるので、文字やデザイン絵を光触媒の塗布と同時に描くことも容易にできる。これらは、間近で見るのではなく、ある程度離れた場所から見る用途が大半であるため、表示の目的をも十分発揮できる。なお、光触媒の印刷状態を確認するため、耐候性の無いメチレンブルーなどの染料を光触媒印刷液に添加し、印刷すると印刷状態の状況把握が簡単にでき、これを日光暴露や過酸化水素噴霧すると、直射日光では数時間、一般には数週間で該染料が酸化分解されて無色化され、添加されていない商品と同じ状態に復帰する。この原理を使用して、織編み物、不織布や紙などの繊維集合物などの寸法表示や形の印刷を行い、縫製をし易くすることや、最終ユーザー宛の使用上の注意書きなども印刷できる。
【実施例】
【0068】
次に、本発明の効果を実施例で具体的に説明する。なお、以下の説明では、アパタイト被覆酸化チタン光触媒を用いて説明し、他の親水性無機化合物で被覆した光触媒や単純な機能性ナノ粒子との組み合わせについて説明はしないが、以下の記載を参考にすれば容易に使用することができよう。また、銅アンモニアレーヨンスパンボンド不織布(商品名ベンリーゼ、旭化成せんい(株)製)で主に説明し、ポリプロピレン樹脂を芯成分とし、鞘成分をポリエチレン樹脂とする熱接着性複合繊維(以下PHともいう)を30質量%と、レーヨン(以下Rともいう)70質量%とを混綿した水流交絡不織布、ポリエチレン・テレフタレート樹脂からなる繊維(以下PETともいう)30質量%とレーヨン70質量%混綿した水流交絡不織布、レーヨン水流交絡不織布、ナイロンメッシュ(以下Nyともいう)、およびこれらの平織物、水流交絡不織布で説明するが、他の素材も同様に実施できる。
【0069】
(使用する光触媒)
実施例に用いるアパタイト系化合物で覆われた酸化チタン光触媒は、具体的にその一例を示すと、昭和電工(株)から容易に入手でき、その平均1次粒子径は約30nm、凝集した2次粒子径は200〜500nmのものである。この光触媒を溶媒に均一分散させたものを用いて、印刷するのである。なお、溶媒は水に若干量の薬剤を添加したものである。
【0070】
前記光触媒は十分に微細なため、物に極めて吸着され易くなっている。例えば、前記光触媒の水への均一分散には、極少量の分散増粘剤や浸透剤を添加し、場合によってはアルコール類を添加した印刷液とすることにより、粒子の沈降を防ぎ、水懸濁液の安定性向上、印刷適正の向上を図ることができ、都合が良い。
【0071】
前記光触媒は微細であり、ドット印刷して被覆皮膜に乗せると、図1の様にびっしりと皮膜表面に吸着されていた。図1の写真は、金蒸着させずに走査型電子顕微鏡で撮影したもので、アパタイト系光触媒が吸着している部分が黒く写っている。これは、アパタイト系光触媒が若干の導電性を持ち、非吸着部分に比べ、表面の帯電状態が小さい差によるものと推定される。この状況でさらに拡大しても、光触媒は粒子として確認できない程微小であった。なお、本発明の用いられる光触媒は、アナターゼ型の酸化チタンだけでなく、一般に公知の光触媒をアパタイト系またはシリカ系化合物で覆うことで、同様に使用できる。本発明で使用するアパタイト系またはシリカ系化合物で覆われた光触媒ナノ粒子の大きさは、光触媒を主として吸着させて固定するため、100nm未満が好ましく、また2次凝集をできるだけ防ぐ工夫をした光触媒液が好ましい。さらにこの被覆された光触媒の平均1次粒子径は、50nm以下、より好ましくは30nm以下と、微細なほどより好ましい。
【0072】
以上の理由で、前記光触媒を以下の実施例で使用して説明するが、光触媒としてアパタイトと同様に親水性であるシリカで被覆されているシリカ系光触媒も全くアパタイト系光触媒と同様であった。なお、平均一次粒子径は、以下の方法で測定した。
[平均一次粒子径]
透過型電子顕微鏡により観察し、粒子100個を任意に抽出し、各粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を算出した。
【0073】
本発明の実施例で使用する印刷液の原液は、前記粒子径の昭和電工(株)製アパタイト化合物でコーティングされたアパタイト系光触媒微粒子20質量%と、粒子分散のための浸透剤0.5質量%の水溶液に、分散光触媒微粒子を保管中に沈降分離させ難くするための分散増粘剤0.4質量%を添加して混合したもので、数百(約300)センチポイズの粘度の水懸濁液である。粘度は分散増粘剤の添加量を変えることで任意に設定でき、フレキソ印刷機に合わせ、前記した印刷液原液を、浸透剤と分散増粘剤を加えPH調整したイオン交換水で希釈して光触媒粒子の5質量%懸濁液を作製して、ゴムロール印刷の印刷液とした。なお適宜、これをイオン交換水で希釈して、他の塗布や含浸にも用いた。
【0074】
(使用するカーボンブラック)
本発明に用いるカーボンブラックは、具体的にその一例を示すと、三菱化学(株)から容易に入手でき、その平均1次粒子径は約24nm、凝集した2次粒子径は100nm前後のものである。これを水に挽き潰しながら均一分散させたものを用いて、ゴムロール印刷するのである。なお、溶媒は水に若干量の薬剤を添加したものである。
【0075】
(使用する銅アンモニアレーヨンスパンボンド不織布)
目付52g/m2の旭化成せんい(株)製ベンリーゼNN500を使用した(以下A不織布という)。
【0076】
(使用するレーヨン水流交絡不織布)
(1)R不織布
1.7dtexのR繊維を開繊してウェブとなし、水流交絡加工して、目付約35g/m2の水流交絡不織布とした(以下R不織布という)。
(2)RH1不織布
2.2dtexのPH繊維30質量%と、1.7dtexのR繊維を開繊してウェブとなし、水流交絡加工して、目付約35g/m2の水流交絡不織布とした(以下RH1不織布という)。
(3)RH2不織布
6.7dtexのPH繊維30質量%と、6.7dtexのR繊維を開繊してウェブとなし、水流交絡加工して、目付約35g/m2の水流交絡不織布とした(以下RH2不織布という)。
(4)RH3不織布
2.2dtexのPET繊維30質量%と、1.7dtexのR繊維を開繊してウェブとなし、水流交絡加工して、目付約35g/m2の水流交絡不織布とした(以下RH3不織布という)。
【0077】
(使用する合成繊維水流交絡不織布)
(1)PET不織布
1.7dtexのPETステープル繊維を開繊してウェブとなし、水流交絡加工して、目付約40g/m2の水流交絡不織布とした(以下PET不織布という)。
(2)PE不織布
2.2dtexPETステープル繊維85質量%と、複合比1/1の2.2dtexのPH繊維15質量%を混綿し、水流交絡加工して、乾燥後さらに145℃に加熱してポリエチレンを溶かして熱接着させ、腰があり毛羽立ちを防いだ目付約40g/m2の推量交絡不織布とした(以下PE不織布という)。
(3)AR不織布
2dtex前後のアクリルステープル繊維を開繊してウェブとなし、水流交絡加工して、目付約45g/m2の水流交絡不織布とした(以下AR不織布という)。
【0078】
(使用するNyメッシュ)
約30メッシュの6ナイロンメッシュを水流交絡加工してオリゴマーなどを除去したものを使用した。
【0079】
(使用する平織物)
1.1dtexのPETステープル繊維30質量%と、コットン70質量%を混紡した30番手のTC混糸を平織りし、目付160g/m2のカツターシャツ生地とし、精錬して脱脂後乾燥したものを使用した。
【0080】
[実施例1〜5、比較例1]
暗室内で、昭和電工(株)製アパタイト被覆ナノ光触媒粒子の5質量%懸濁液を滑らかなガラス板に垂らし、謄写版の印刷に使用するゴムロールを用いて前記ガラス板に薄く均一に広げた。この懸濁液を同じゴムロールに転写し、A不織布に塗布した。ゴムロールの回転を不織布に印しし、これを140℃の乾燥機で1時間乾燥してアパタイト被覆ナノ光触媒粒子固着不織布とした。それぞれの回転目の質量増加量を測定し、光触媒の塗布目付H(g/m2)とした。
【0081】
前記アパタイト被覆ナノ光触媒粒子固着不織布は、ゴムロール2回転目の光触媒を2g/m2固着した不織布で、これに希釈した過酸化水素水溶液をプラスチック製霧吹きで噴霧し、80℃の乾燥機で1時間乾燥して、実施例1〜5のヒドロパーオキサイド化している不織布を作製した。得られた不織布について殺菌・制菌活性値評価を行った。またこれを更に洗濯して洗濯耐久性の試験も同様にして評価した。また、参考値として、直射日光暴露3日間行ったものも同様にして評価した。噴霧条件と結果は、表1の通りである。
【0082】
【表1】

【0083】
なお、比較例1の不織布は、これら実施例に用いた光触媒固着不織布の原反であり、約1カ月無光下の暗室に放置したものである。表1の評価方法は、以下のとおりである。
【0084】
[黄変の程度]
黄変の程度は、目視により、着色を認められないものを良、微かだが僅かに認められるものを極微、微かに認められるものを微、黄変しているものを着色と表示した。
【0085】
[殺菌および制菌活性値]
殺菌および制菌活性値は、JIS−L−1902の菌液吸収法を用い、黄色ぶどう球菌を希釈平板培養法で生菌数を測定して得た。ブランクの無加工布は標準綿布を使用し、殺菌活性値は、0以上で効果ありの判定となり、制菌活性値は、2以上で効果ありの判定とした。合格(効果ありの判定)を○印、効果ありの判定とならなかったものを不合格とし×印で表示した。なお値の▲はマイナスを示す。この結果より、過酸化水素の噴霧があまり多くなると、黄変を引き起こすが、殺菌・制菌効果が十分あることが判った。また、マルセル石鹸洗濯や水洗濯しても殺菌・制菌効果が十分あることが判った。そして当然のことながら、日光暴露でも同様の結果であり、光触媒機能も保持されていることが判った。
【0086】
[実施例6〜11]
実施例1と同様に、謄写版の印刷に使用するゴムロールを用いて、光触媒濃度20、10、2、および1質量%の印刷液で塗布を行った。これを実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
[実施例12〜20、参考例1〜3]
実施例9の不織布に代えて表3に示す不織布、メッシュ、および織物を用いて、実施例1と全く同じ条件で過酸化水素賦活化処理までしたものを作製して本発明の繊維集合物を作製した。得られた不織布について、殺菌・制菌効果を評価した結果を表3、表4に示す。なお、光触媒付着量は3〜6質量%の範囲に収まり、殺菌・制菌効果も同様にあった。なお、参考例1〜3は、過酸化水素賦活化処理せずに、比較例1と同様にして日光暴露を3日間実施したものである。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
[実施例21]
目付が15g/m2のポリプロピレンスパンボンド不織布の上に、実施例12と同じレーヨンステープル繊維の開繊ウェブを積層し、実施例1と同様にしてウェブ側から水流交絡加工し、繊維交絡して一体化した水流交絡不織布を作製した。次いで、レーヨン繊維層表面に、実施例1と同様にして光触媒を塗布、乾燥し、乾燥機出口で続いて過酸化水素水溶液を噴霧して、ナノ粒子担持基布を作製した。前記基布のスパンボンド不織布側に、ポリブテン−1を鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする約2dtexの複合繊維のメルトブローン不織布を融着接着させ複合化不織布とし、次いで、これを120℃に加熱した乾燥機中および冷却中に10〜20KVの電界下でエレクトレット加工してエレクトレットフィルターとした。この複合化不織布を実施例1と同様にして、光触媒塗布面の殺菌・制菌効果を評価したところ、実施例12と同様の結果となった。また、JIS−Z−2911繊維製品の試験・湿式法に従って、寒天培地上に前記複合化不織布を貼り付け、黴の胞子懸濁液を噴霧する繊維製品のかび抵抗性試験を行ったところ、何れも、少なくとも10日間、黴の生育が認められない結果を得ることができ、抗かび性を確認できた。
【0092】
[実施例22〜23、比較例2]
実施例13と14で用いた過酸化水素処理光触媒塗布不織布を、145℃の熱風乾燥機で加熱して出口で鉄心に巻取り、それぞれ既製品と同じ寸法の内径が28mmφで外径が68mmφで長さが250mmの円筒状のモールド型カートリッジフィルターを作製した。前記カートリッジフィルターを既存のカートリッジフィルターハウジングに装着し、農業用ため池の水を殺菌していない工業用水で50分の1に希釈してポリ容器からポンプを使用して前記ハウジングに送液し、濾過量が20Lを超えた所の液を採取して、その液そのものを希釈せず、JIS−K−0101・63・5の感度が鋭敏な、LB−BGLB法と言われる、ダイムラー発酵管を使用した大腸菌群測定法で評価したところ、いずれも大腸菌を検知できなかった。比較例として、ポリエチレンを鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする約2dtexの熱接着性複合繊維を同一条件で熱接着しながら巻回して作製した既製品のモールド型カートリッジフィルターを作製して、実施例21と同様の評価を行った。比較例2のカートリッジフィルターは、希釈しても検知され、感度の鈍いJIS−K−0102・72・3の寒天培地測定法で測定したところ、数千個/mlのオーダーであった。
【0093】
[実施例24〜25、比較例3〜4]
実施例1のサンプルAの10cm×10cmサンプルを5Lのテドラーバッグに入れ、50ppmの希釈酢酸空気に24時間暴露させると4ppmとなった(実施例24)。光触媒を付着させていないレーヨンスパンボンド不織布では19ppmとなった(比較例3)。その差は15ppmであり、吸着効果増加が認められた。なお、ここで吸着効果といっているのは、光触媒の酸化効果を未確認のためである。また、酢酸に替え、植物の成熟化ホルモンであるエチレンガスを同様にして評価したところ、10ppmの希釈ガスが24時間暴露させると1ppmとなった(実施例25)。同じくブランクのレーヨンスパンボンド不織布は8ppmであった(比較例4)。少なくとも吸着効果があることは確認できた。
【0094】
[実施例26〜28]
実施例6において、印刷手段をフレキソ印刷機とし、ウレタン樹脂被覆印刷ロールを、点状ドット1個当たりの面積を0.1mm2とし、印刷された面積が総対象面積の40%、25%、および15%を占めるように彫刻したロールとし、それぞれのロールを用いてドット印刷して、印刷割合が40面積%、25面積%で、光触媒の固着量が7、3.5g/m2の固着不織布と作製した。次いで、前記固着不織布を実施例6と同様にして賦活化処理して殺菌・制菌効果を評価したところ、ほほ同様の結果を得た(実施例26,27)。また、印刷割合が15面積%で、光触媒の固着量が0.5g/m2の固着不織布を作製した。次いで、実施例6と同様にして賦活化処理して殺菌・制菌効果を評価した(実施例28)。実施例28の不織布は、殺菌活性値が1、制菌活性値が3と大幅に低下した結果となったが、基準には合格していた。
【0095】
[実施例29、30]
実施例1で使用した5質量%光触媒印刷液を用い、無脂綿の1.7dtexレーヨンをガラス板上に引き揃えて、実施例1と同様にして繊維に光触媒を塗布した。これをポリエチレン袋に入れて揉み洗いの要領で良く混合して全体に光触媒を塗布し、100℃の乾燥機で乾燥し、少し湿った綿とした。次いで、塗布繊維が30質量%(実施例29)、15質量%(実施例30)の混綿率となるように未塗布レーヨン繊維と混合して、カードウェブを作製し、ニードルパンチ機で繊維交絡させて70g/m2の交絡不織布とした。実施例29の不織布は、実施例1とほほ同様の殺菌・制菌効果を示した。実施例30の不織布は、殺菌活性値が1、制菌活性値が3と大幅に低下した結果となったが、基準には合格していた。
【0096】
[実施例31]
実施例17の不織布をコロナ放電加工した後、実施例17と同様にして光触媒を塗布し、過酸化水素賦活化処理して固着不織布とした。これを実施例17と同様にして殺菌・制菌効果を評価すると、実施例1と同様の最高レベルの結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】酸化チタン系ナノ粒子を含む懸濁液をドット印刷した繊維集合物表面非金蒸着走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料と、平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含むナノ粒子担持材料であって、
前記機能性ナノ粒子は、少なくとも粒子自体の吸着能により有機材料の少なくとも一部の表面に吸着し、固着・担持されており、
前記機能性ナノ粒子の少なくとも30質量%は、親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子であり、酸化チタンのチタン−酸素結合のうち少なくともその一部が酸化機能を持つヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子を含む、ナノ粒子担持材料。
【請求項2】
前記酸化チタン系ナノ粒子は、光触媒機能を有している、請求項1に記載のナノ粒子担持材料。
【請求項3】
前記有機材料は、非撥水性材料で繊維表面の過半が占められている繊維であり、前記機能性ナノ粒子が少なくとも粒子自体の吸着能により繊維表面に吸着し、固着・担持している、請求項1または2に記載のナノ粒子担持材料。
【請求項4】
前記有機材料は、非撥水性材料で繊維表面の過半が占められている繊維を含む繊維集合物であり、前記機能性ナノ粒子が少なくとも粒子自体の吸着能により繊維表面に吸着し、固着・担持している、請求項1または2に記載のナノ粒子担持材料。
【請求項5】
前記繊維は、セルロース系繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載のナノ粒子担持材料。
【請求項6】
前記繊維集合物は、折り畳まれたプリーツ状、巻回または巻回後熱接着された筒状から選ばれる1つの形状に成型されている、請求項4または5に記載のナノ粒子担持材料。
【請求項7】
繊維集合物の一方の表面が、平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含み、前記機能性ナノ粒子が少なくとも粒子自体の吸着能により繊維表面に吸着し、固着・担持されている繊維を含む面であって、前記機能性ナノ粒子の少なくとも50質量%が親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子であり、酸化チタンのチタン−酸素結合のうち少なくともその一部が酸化機能を持つヒドロパーオキサイド化しているナノ粒子を含むナノ粒子担持面を備えており、
もう一方の表面が、エレクトレット化された繊維を含むエレクトレット面を備えている、フィルター用繊維集合物。
【請求項8】
平均一次粒子径が1nmを超え100nm未満であり、粒子表面が親水性無機化合物で被覆された機能性ナノ粒子を含み、機能性ナノ粒子の少なくとも30質量%は親水性無機化合物で被覆された酸化チタン系ナノ粒子を含む懸濁液を、
有機材料の少なくとも一部の表面に付与して、前記機能性ナノ粒子を吸着し、固着・担持させた後、
前記酸化チタン系ナノ粒子に過酸化物を付与する、ナノ粒子担持材料の製造方法。
【請求項9】
前記過酸化物は、過酸化水素またはオゾン水である、請求項8に記載のナノ粒子担持材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−2007(P2008−2007A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171994(P2006−171994)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】