説明

ナノ粒子状のカルベジロール製剤

本発明は、改善された薬物動態プロファイル、改善された生物学的利用能、溶出速度、および効力を有するナノ粒子状のカルベジロール組成物を目的とする。1つの態様では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物は、約2000 nm未満の有効平均粒子径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子状のカルベジロール(carvedilol)製剤、ならびに同製剤を作製および使用する方法に関する。本発明の製剤は、高血圧(高血圧症)、うっ血性心不全、癌、ウイルス感染、精神病関連条件、および類似の条件の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
A.カルベジロールに関する背景
高血圧は心臓および動脈に負荷をかける。仮に、この状態が長期間にわたって続くようであれば、心臓および動脈は適切に機能しなくなる恐れがある。高血圧は、脳、心臓、および腎臓の血管を損ない、ひいては発作、心不全、または腎不全につながる場合がある。高血圧は、心発作のリスクを高める可能性もある。これらの問題は、血圧がコントロールされれば生じにくくなる可能性が高い。
【0003】
心不全は、心機能の異常による、心臓が血液を代謝組織の必要条件に相応の速度で汲み出せなくなる状態と定義することができる。症状は一般に非特異的であり、ならびに疲労、呼吸困難、足関節の腫脹、および運動不耐性を含む。慢性心不全(CHF)の全体的な有病率は1000人あたり10〜20人と推定されており、年間発生率は1000人あたり1〜5人と推定されている。有病率と発生率はいずれも加齢とともに上昇する。McDonagh et al.、「Epidemiology and Pathophysiology of Heart Failure」、Medicine, 26:111-5 (1998)。心不全は、罹患率と死亡率の主因である(同文献)。CHFは、他の任意の慢性の内科的疾患より、生活の質を大きく損なうと見なされている(同文献)。CHF患者の予後は、重傷度(症状および運動能力によって明らかとなる)、年齢および性別に依存し、男性患者の予後は悪い(同文献)。心不全患者は、生涯にわたる治療を必要とする。薬剤による治療は、患者の生活の質と生存率の両方の改善を狙ったものである。利尿剤およびアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤を、薬剤を使用しない処置と組み合わせた治療が、初期治療の基礎となっている。Davies et al.、「ABC of Heart Failure: Management: Diuretics, ACE Inhibitors, and Nitrates」、BMJ, 320:428-31 (2000)。一部の患者には、ジゴキシンが追加される場合がある。
【0004】
今日、左室収縮機能不全に起因するCHF患者におけるベータブロッカーの使用の有効性を示す、かなり多くの臨床データが得られている。Sharpe N.、「Benefits of Beta-Blockers for Heart Failure: Proven in 1999」、Lancet, 353:1988-9 (1999);Califf et al.、「Beta-Blocker Therapy for Heart Failure」、JAMA, 283:1335-7 (2000)。
【0005】
カルベジロールは、ベータアドレナリン遮断薬、ベータ遮断薬、またはより一般的にはベータブロッカーと呼ばれる一群の薬剤に属する。ベータブロッカーは、身体の特定の部位における一部の神経インパルスに対する反応に影響を及ぼすことで作用する。結果として、このような薬剤は負荷を和らげることで、心臓が必要とする血液および酸素の量を減少させる。このような薬剤はまた、心臓が、より規則的に拍動することも容易にする。ベータブロッカーは、一部の心臓不整脈も緩和可能である。
【0006】
カルベジロールは高血圧(高血圧症)の治療に使用されている。カルベジロールはまた、利尿剤、ジゴキシン、およびACE阻害剤などの他の治療薬を併用して、うっ血性心不全の悪化の予防にも使用されている。カルベジロールは、交感神経系の作用を低めることで心不全に作用すると考えられている。カルベジロールは、継続的に使用することで、左室駆出率を高め、心臓および肺の血管内圧を下げ、心拍数を下げ、ならびに左心室の進行性肥大を防ぐ。カルベジロールは、心発作後の左室機能不全の治療に使用されている。左室機能不全は、左心室(心臓の主要ポンプ空間(pumping chamber))が硬化して拡大すると生じ、および肺を血液で満たす場合がある。米国食品医薬品局によって心不全に関して承認されたベータブロッカーは、メトプロロール(Toprol(登録商標)-XL)およびカルベジロール(COREG(登録商標))を含む。メトプロロールは、ベータ1受容体をブロックする。カルベジロールは、ベータ1受容体、ベータ2受容体、およびアルファ受容体をブロックする。いずれの薬剤も心不全に良好に作用するが、カルベジロールの方が血圧をより大きく低下させる。
【0007】
カルベジロールは、他の条件の治療にも使用可能である。例えば最近、カルベジロールは抗癌活性を有することが報告されている。これについては、カルベジロールおよびその異性体の使用による、上皮成長因子および血小板由来増殖因子に依存した癌細胞増殖の阻害について記載された、「Anti-cancer activity of carvedilol and its isomers」と題する米国特許第6,632,832号を参照されたい。治療対象となった例示的な癌は、結腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、黒色腫、膠芽腫、口腔癌、および白血病が含まれていた。さらにWO 98/38986には、ウイルス感染の治療および予防におけるカルベジロールの使用について記載されており、ならびに「Novel methods of treating or preventing tardive dyskinesia, tardive dystonia and tardive akathisia using the antipsychotic agent, carvedilol」と題する米国特許第6,365,618号には、精神病の治療におけるカルベジロールの使用について記載されている。同文献には、カルベジロールが、躁病エピソード、大うつ病エピソード、ならびに精神病、特に統合失調症および統合失調性感情障害などの、ドーパミン遮断薬が使用される精神障害の治療の改善に有用なことも記載されている。
【0008】
非ナノ粒子状のカルベジロールについて記載している米国特許は、「Carbazolyl-(4)-oxypropanolamine compounds and therapeutic compositions」と題する米国特許第4,503,067号、「Method of treatment for decreasing mortality resulting from congestive heart failure」と題する米国特許第5,760,069号、および「Use of carbazole compounds for the treatment of congestive heart failure」と題する米国特許第5,902,821号を含むが、これらに限定されない。
【0009】
臨床試験においてカルベジロール療法に関して報告されている有害事象は、めまい(カルベジロール投与患者の3人に約1人)、徐脈、低血圧、浮腫、上気道感染、疲労、頭のくらくら感、息切れ、胸痛(カルベジロール投与患者の7人に約1人)、低心拍数および低血圧、下痢(カルベジロール投与患者の7人に約1人)、高血糖(体重の増加を招く)、インポテンス(COREG(登録商標)の臨床試験に参加した男性の50人に1〜2人がインポテンスとなった);実生活における数は15%にものぼる可能性がある(Am. J. Hypertens., 14:27-31, 70-73 (2001))、うつ、悪心、嘔吐、背部痛、不眠症、または頭痛を含む。
【0010】
米国ではカルベジロールは、COREG(登録商標)(GlaxoSmithKline)の商品名で販売されている(他の国々では、カルベジロールは、Dilitrend(商標)、Dimitone(商標)、Eucardic(商標)、およびKredex(商標)などの他の商品名で販売されている)。COREG(登録商標)は、3.125 mg、6.25 mg、12.5 mg、または25 mgのカルベジロールを含む、白色で楕円型をした、フィルムでコーティングされた錠剤である。6.25 mg、12.5 mg、および25 mgの錠剤は、TILTAB(登録商標)錠剤である。不活性成分は、コロイド状の二酸化ケイ素、クロスポビドン、ヒプロメロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80、ポビドン、ショ糖、および二酸化チタンからなる。
【0011】
カルベジロールの用量は、個々の患者によって異なる。以下の情報は、カルベジロールの平均用量のみを含む。経口投与剤形(錠剤)の場合:(a)うっ血性心不全:成人-3.125 mgを1日2回、食事とともに服用;(b)心発作後の高血圧または左室機能不全:成人-6.25 mgを1日2回、食事とともに服用。うっ血性心不全の場合は、最大推奨用量は、85 kg未満の患者には25 mgを1日2回であり、および85 kgを上回る患者には50 mgを1日2回である。高血圧の場合は、カルベジロールの推奨初回用量は6.25 mgを1日2回である。最大1日用量は50 mgである。
【0012】
薬物動態:COREG(登録商標)(カルベジロール)は、経口投与後に迅速かつ十分に吸収され、絶対生物学的利用能は、有意な程度の初回通過代謝のために約25%〜35%である。経口投与後のカルベジロールの平均の見かけの終末相半減期は一般に7〜10時間である。達する血漿中濃度は、投与される経口用量に比例する。食事とともに投与されると、吸収速度がが緩やかになることは、ピーク血漿レベルに達する時間が遅延し、生物学的利用能の程度に有意差がないことから明らかである。患者は、起立性低血圧のリスクを最小限に抑えるために、COREG(登録商標)(カルベジロール)を食事とともに服用することが勧められている。
【0013】
カルベジロールは、立体選択的な初回通過代謝を受け、R(+)-カルベジロールの血漿レベルは、健常者への経口投与後に、S(-)-カルベジロールより約2〜3倍高くなる。R(+)-カルベジロールの平均の見かけの終末相半減期は5〜9時間であり、S(-)-エナンチオマーの半減期は7〜11時間である。
【0014】
B.ナノ粒子状の活性薬剤組成物に関する背景
米国特許第5,145,684号(「'684特許」)に最初に記載されたナノ粒子状の活性薬剤組成物は、非架橋型の表面安定剤の表面から吸収されるか、または同表面に結合する、溶解性の低い治療薬または診断薬からなる粒子である。'684特許には、カルベジロールのナノ粒子状組成物については記載されていない。
【0015】
ナノ粒子状の活性薬剤組成物の作製法は例えば、いずれも「Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,518,187号および第5,862,999号;「Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,718,388号;ならびに「Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles」と題する米国特許第5,510,118号に記載されている。
【0016】
ナノ粒子状の活性薬剤組成物は例えば、いずれも特異的に参照により組み入れられる、「Use of Ionic Cloud Point Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization」と題する米国特許第5,298,262号;「Method to Reduce Particle Size Growth During Lyophilization」と題する第5,302,401号;「X-Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging」と題する第5,318,767号;「Novel Formulation For Nanoparticulate X-Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non-ionic Surfactants」と題する第5,326,552号;「Method of X-Ray Imaging Using Iodinated Aromatic Propanedioates」と題する第5,328,404号;「Use of Charged Phospholipids to Reduce Nanoparticle Aggregation」と題する第5,336,507号;「Formulations Comprising Olin 10-G to Prevent Particle Aggregation and Increase Stability」と題する第5,340,564号;「Use of Non-Ionic Cloud Point Modifiers to Minimize Nanoparticulate Aggregation During Sterilization」と題する第5,346,702号;「Preparation and Magnetic Properties of Very Small Magnetic-Dextran Particles」と題する第5,349,957号;「Use of Purified Surface Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization」と題する第5,352,459号;いずれも「Surface Modified Anticancer Nanoparticles」と題する第5,399,363号および第5,494,683号;「Water Insoluble Non-Magnetic Manganese Particles as Magnetic Resonance Enhancement Agents」と題する第5,401,492号;「Use of Tyloxapol as a Nanoparticulate Stabilizer」と題する第5,429,824号;「Method for Making Nanoparticulate X-Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non-ionic Surfactants」と題する第5,447,710号;「X-Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging」と題する第5,451,393号:「Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X-Ray Contrast Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays」と題する第5,466,440号;「Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation」と題する第5,470,583号;「Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbamic Anhydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,472,683号;「Nanoparticulate Diagnostic Dimers as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,500,204号;「Nanoparticulate NSAID Formulations」と題する第5,518,738号;「Nanoparticulate Iododipamide Derivatives for Use as X-Ray Contrast Agents」と題する第5,521,218号;「Nanoparticulate Diagnostic Diatrizoxy Ester X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,525,328号;「Process of Preparing X-Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles」と題する第5,543,133号;「Surface Modified NSAID Nanoparticles」と題する第5,552,160号;「Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids」と題する第5,560,931号;「Polyalkylene Block Copolymers as Surface Modifiers for Nanoparticles」と題する第5,565,188号;「Sulfated Non-ionic Block Copolymers Surfactant as Stabilizer Coatings for Nanoparticle Compositions」と題する第5,569,448号;「Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids」と題する第5,571,536号;「Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carboxylic Anhydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,573,749号;「Diagnostic Imaging X-Ray Contrast Agents」と題する第5,573,750号;「Redispersible Nanoparticulate Film Matrices With Protective Overcoats」と題する第5,573,783号;「Site-specific Adhesion Within the GI Tract Using Nanoparticles Stabilized by High Molecular Weight、Linear Poly(ethylene Oxide) Polymers」と題する第5,580,579号;「Formulations of Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays」と題する第5,585,108号;「Butylene Oxide-Ethylene Oxide Block Copolymers Surfactant as Stabilizer Coatings for Nanoparticulate Compositions」と題する第5,587,143号;「Milled Naproxen with Hydroxypropyl Cellulose as Dispersion Stabilizer」と題する第5,591,456号;「Novel Barium Salt Formulations Stabilized by Non-ionic and Anionic Stabilizers」と題する第5,593,657号;「Sugar Based Surfactant for Nanocrystals」と題する第5,622,938号;「Improved Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X-Ray Contrast Agents and Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents」と題する第5,628,981号;「Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbonic Anhydrides as X-Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging」と題する第5,643,552号;「Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する第5,718,388号;「Nanoparticles Containing the R(-)Enantiomer of Ibuprofen」と題する第5,718,919号;「Aerosols Containing Beclomethasone Nanoparticle Dispersions」と題する第5,747,001号;「Reduction of Intravenously Administered Nanoparticulate Formulation Induced Adverse Physiological Reactions」と題する第5,834,025号;「Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus (HIV) Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers」と題する第6,045,829号;「Methods of Making Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus (HIV) Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers」と題する第6,068,858号;「Injectable Formulations of Nanoparticulate Naproxen」と題する第6,153,225号;「New Solid Dose Form of Nanoparticulate Naproxen」と題する第6,165,506号;「Methods of Treating Mammals Using Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV) Protease Inhibitors」と題する第6,221,400号;「Nebulized Aerosols Containing Nanoparticle Dispersions」と題する第6,264,922号;「Methods for Preventing Crystal Growth and Particle Aggregation in Nanoparticle Compositions」と題する第6,267,989号;「Use of PEG-Derivatized Lipids as Surface Stabilizers for Nanoparticulate Compositions」と題する第6,270,806号;「Rapidly Disintegrating Solid Oral Dosage Form」と題する第6,316,029号;「Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabiliser and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」と題する第6,375,986号;「Bioadhesive Nanoparticulate Compositions Having Cationic Surface Stabilizers」と題する第6,428,814号;「Small Scale Mill」と題する第6,431,478号;および「Methods for Targeting Drug Delivery to the Upper and/or Lower Gastrointestinal Tract」と題する第6,432,381号;「Nanoparticulate Dispersions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」と題する米国特許第6,592,903号;「Apparatus for Sanitary Wet Milling」と題する米国特許第6,582,285号;「Nanoparticulate Compositions Comprising Amorphous Cyclosporine」と題する第6,656,504号;「System and Method for Milling Materials」と題する第6,742,734号;「Small Scale Mill and Method Thereof」と題する第6,745,962号;「Liquid Droplet Aerosols of Nanoparticulate Drugs」と題する第6,811,767号;「Compositions Having a Combination of Immediate Release and Controlled Release Characteristics」と題する第6,908,626号;「Nanoparticulate Compositions Comprising Copolymers of Vinyl Pyrrolidone and Vinyl Acetate as Surface Stabilizers」と題する第6,969,529号;「System and Method for Milling Materials」と題する第6,976,647号;「Method of Using a Small Scale Mill」と題する第6,991,191号;「Nanoparticulate Megestrol Formulation」と題する第7,101,576号にも記載されている。
【0017】
さらに、「Nanoparticulate clarithromycin formulations」と題する米国特許出願公開第20070015719号、「Nanoparticulate clopidogrel formulations」と題する米国特許出願公開第20070003628号、「Nanoparticulate clopidogrel and aspirin combination formulations」と題する米国特許出願公開第20070003615号、「Nanoparticulate acetaminophen formulations」と題する米国特許出願公開第20060292214号、「Nanoparticulate imatinib mesylate formulations」と題する米国特許出願公開第20060275372号、「Nanoparticulate quinazoline derivative formulations」と題する米国特許出願公開第20060246142号、「Nanoparticulate lipase inhibitor formulations」と題する米国特許出願公開第20060246141号、「Nanoparticulate corticosteroid and antihistamine formulations」と題する米国特許出願公開第20060216353号、「Nanoparticulate bisphosphonate compositions」と題する米国特許出願公開第20060210639号、「Injectable compositions of nanoparticulate immunosuppressive compounds」と題する米国特許出願公開第20060210638号、「Formulations of a nanoparticulate finasteride, dutasteride or tamsulosin hydrochloride, and mixtures thereof」と題する米国特許出願公開第20060204588号、「Aerosol and injectable formulations of nanoparticulate benzodiazepine」と題する米国特許出願公開第20060198896号、「Nanoparticulate Compositions of Mitogen-Activated (MAP) Kinase Inhibitors」と題する米国特許出願公開第20060193920号、「Nanoparticulate formulations of docetaxel and analogues thereof」と題する米国特許出願公開第20060188566号、「Nanoparticulate candesartan formulations」と題する米国特許出願公開第20060165806号、「Nanoparticulate bicalutamide formulations」と題する米国特許出願公開第20060159767号、「Nanoparticulate tacrolimus formulations」と題する米国特許出願公開第20060159766号、「Nanoparticulate benzothiophene formulations」と題する米国特許出願公開第20060159628号、「Injectable nanoparticulate olanzapine formulations」と題する米国特許出願公開第20060154918号、「Topiramate pharmaceutical composition」と題する米国特許出願公開第20060121112号、「Controlled Release Nanoparticulate Compositions」と題する米国特許出願公開第20020012675 A1号、「Compositions and method for milling materials」と題する米国特許出願公開第20040195413 A1号、「Milling microgram quantities of nanoparticulate candidate compounds」と題する米国特許出願公開第20040173696 A1号、「Nanoparticulate Fibrate Formulations」と題する米国特許出願公開第20050276974号;「Nanoparticulate Compositions Having a Peptide as a Surface Stabilizer」と題する米国特許出願公開第20050238725号;「Nanoparticulate Megestrol Formulations」と題する米国特許出願公開第20050233001号;「Compositions Comprising Antibodies and Methods of Using the Same for Targeting Nanoparticulate Active Agent Delivery」と題する米国特許出願公開第20050147664号;「Novel Metaxalone Compositions」と題する米国特許出願公開第20050063913号;「Novel Compositions of Sildenafil Free Base」と題する米国特許出願公開第20050042177号;「Gel Stabilized Nanoparticulate Active Agent Compositions」と題する米国特許出願公開第20050031691号;「Novel Glipizide Compositions」と題する米国特許出願公開第20050019412号;「Novel Griseofulvin Compositions」と題する米国特許出願公開第20050004049号;「Nanoparticulate Topiramate Formulations」と題する米国特許出願公開第20040258758号;「Liquid Dosage Compositions of Stable Nanoparticulate Active Agents」と題する米国特許出願公開第20040258757号;「Nanoparticulate Meloxicam Formulations」と題する米国特許出願公開第20040229038号;「Novel Fluticasone Formulations」と題する米国特許出願公開第20040208833号;「Solid Dosage Forms Comprising Pullulan」と題する米国特許出願公開第20040156895号;「Novel Nimesulide Compositions」と題する米国特許出願公開第20040156872号;「Novel Triamcinolone Compositions」と題する米国特許出願公開第20040141925号;「Novel Nifedipine Compositions」と題する米国特許出願公開第20040115134号;「Low Viscosity Liquid Dosage Forms」と題する米国特許出願公開第20040105889号;「Gamma Irradiation of Solid Nanoparticulate Active Agents」と題する米国特許出願公開第20040105778号;「Novel Benzoyl Peroxide Compositions」と題する米国特許出願公開第20040101566号;「Nanoparticulate Beclomethasone Dipropionate Compositions」と題する米国特許出願公開第20040057905号;「Nanoparticulate Compositions of Angiogenesis Inhibitors」と題する米国特許出願公開第20040033267号;「Nanoparticulate Sterol Formulations and Novel Sterol Combinations」と題する米国特許出願公開第20040033202号;「Nanoparticulate Nystatin Formulations」と題する米国特許出願公開第20040018242号;「Drug Delivery Systems and Methods」と題する米国特許出願公開第20040015134号;「Nanoparticulate Polycosanol Formulations & Novel Polycosanol Combinations」と題する米国特許出願公開第20030232796号;「Fast Dissolving Dosage Forms Having Reduced Friability」と題する米国特許出願公開第20030215502号;「Nanoparticulate Compositions Having Lysozyme as a Surface Stabilizer」と題する米国特許出願公開第20030185869号;「Nanoparticulate Compositions of Mitogen-Activated Protein(MAP) Kinase Inhibitors」と題する米国特許出願公開第20030181411号;「Compositions Having a Combination of Immediate Release and Controlled Release Characteristics」と題する米国特許出願公開第20030137067号;「Nanoparticulate Compositions Comprising Copolymers of Vinyl Pyrrolidone and Vinyl Acetate as Surface Stabilizers」と題する米国特許出願公開第20030108616号;「Nanoparticulate Insulin」と題する米国特許出願公開第20030095928号;「Method for High Through-put Screening Using a Small Scale Mill or Microfluidics」と題する米国特許出願公開第20030087308号;「Drug Delivery Systems & Methods」と題する米国特許出願公開第20030023203号;「System and Method for Milling Materials」と題する米国特許出願公開第20020179758号;および「Apparatus for Sanitary Wet Milling」と題する米国特許出願公開第20010053664号は、ナノ粒子状の活性薬剤組成物について記載しており、かつ特異的に参照により組み入れられる。
【0018】
非結晶の小型粒子組成物は例えば、「Particulate Composition and Use Thereof as Antimicrobial Agent」と題する米国特許第4,783,484号;「Method for Making Uniformly Sized Particles from Water-Insoluble Organic Compounds」と題する米国特許第4,826,689号;「Method for Making Uniformly-Sized Particles From Insoluble Compounds」と題する米国特許第4,997,454号;「Ultrasmall, Non-aggregated Porous Particles of Uniform Size for Entrapping Gas Bubbles Within and Methods」と題する米国特許第5,741,522号;および「Ultrasmall Porous Particles for Enhancing Ultrasound Back Scatter」と題する米国特許第5,776,496号に記載されている。
【0019】
当技術分野では、より大きな生物学的利用能、低い発生率、頻度、または重傷度の有害事象、少ない投与量、および他の投与量に関して改善された性質を有するカルベジロール組成物が必要とされている。本発明は、こうしたニーズを満たす。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は、カルベジロールを含むナノ粒子状組成物に関する。同組成物は、カルベジロール、およびカルベジロール粒子の表面から吸収されるか、または同表面に結合する少なくとも1つの表面安定剤を含む。本発明のナノ粒子状のカルベジロール粒子は、約2000 nm未満の有効平均粒子径を有する。本発明の好ましい投与剤形は固体投与剤形であるが、薬学的に許容される任意の投与剤形を使用することができる。
【0021】
本発明の別の局面は、本発明のナノ粒子状のカルベジロール製剤を含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、カルベジロール、少なくとも1つの表面安定剤、および薬学的に許容される担体、ならびに任意の望ましい賦形剤を含む。
【0022】
本発明の別の局面は、従来の微結晶性または溶解状態のカルベジロール製剤と比較して薬物動態プロファイルが改善されたナノ粒子状のカルベジロール組成物に関する。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、カルベジロール組成物の、絶食状態の対象への投与が、同組成物の摂食状態の対象への投与と比較して、AUC、Cmax、Tmax、またはこれらの任意の組み合わせによって測定される、同等か、または生物学的に同等な吸収速度を生じるカルベジロール組成物を含む。
【0024】
本発明の別の態様は、高血圧、うっ血性心不全、または関連条件の治療に有用な1つもしくは複数の化合物を追加的に含むナノ粒子状のカルベジロール組成物に関する。
【0025】
本発明はさらに、本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物を作製する方法を開示する。このような方法は、カルベジロールおよび少なくとも1つの表面安定剤を、ナノ粒子状のカルベジロール組成物が提供されるのに十分な時間および条件で接触させる段階を含む。このような1つもしくは複数の表面安定剤をカルベジロールに、カルベジロールのサイズの減少前、減少中、または減少後に接触させることができる。
【0026】
本発明は、高血圧、うっ血性心不全、癌、ウイルス感染、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、および遅発性アカシジアなどの精神病関連条件、ならびに関連条件などの条件の治療用または予防用の本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物を使用する方法にも関する。
【0027】
本発明の前述の一般的な記述、および以下の詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的であり、ならびに請求される本発明のさらなる詳細を提供することが意図される。他の目的、利点、および新しい特徴は、本発明の以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0028】
発明の詳細な説明
A.はじめに
本発明は、カルベジロールを含むナノ粒子状組成物に関する。組成物は、カルベジロール、および好ましくは同薬剤の表面から吸収されるか、または同表面に結合する少なくとも1つの表面安定剤を含む。ナノ粒子状のカルベジロール粒子は、約2000 nm未満の有効平均粒子径を有する。
【0029】
従来の非ナノ粒子状または溶解状態の投与剤形のカルベジロールと比較して、本発明のナノ粒子状のカルベジロール製剤の利点は、以下を含むが、これらに限定されない:(1)錠剤もしくは他の固体投与剤形のサイズが小さいか、または製剤の投与回数が少なくて済む;(2)従来の微結晶性または溶解状態のカルベジロールと比較して、同じ薬理効果を得るのに必要な薬剤用量が少量で済む;(3)大きい生物学的利用能;(4)Tmax、Cmax、および/またはAUCプロファイルなどの薬物動態プロファイルの改善;(5)摂食状態と絶食状態に投与時に、ナノ粒子状のカルベジロール組成物の薬物動態プロファイルと実質的に同等か生物学的に同等;(6)従来の微結晶性または溶解状態のカルベジロールと比較して、ナノ粒子状のカルベジロール組成物の溶解速度が速い;(7)従来の微結晶性または溶解状態のカルベジロールと比較して、有害事象の発生率、頻度、または重傷度が低い;ならびに(8)ナノ粒子状のカルベジロール組成物の、高血圧、うっ血性心不全、および関連条件の治療に有用な他の活性薬剤との併用。
【0030】
本発明はまた、ナノ粒子状のカルベジロール組成物を、1つもしくは複数の、担体と総称される、毒性のない生理学的に許容される担体、補助剤、または溶媒とともに含む。組成物は、経口投与用に固体状、液体状、またはエアロゾル状に、(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下への)注射剤に、膣内投与用、微内投与用、結腸内投与用、眼内投与用、局所投与用(粉末、軟膏、もしくはドロップ)、舌下投与用、大槽内投与用、腹腔内投与用、または局所投与用などに製剤化され得る。本発明の好ましい投与剤形は、経口投与用の固体投与剤形であるが、任意の薬学的に許容される投与剤形を使用することができる。例示的な固体投与剤形は、錠剤、カプセル剤、サシェ剤、トローチ剤、粉末剤、丸剤、または顆粒剤を含むが、これらに限定されない。
【0031】
固体投与剤形を含む本発明の投与剤形は例えば、迅速溶解型の投与剤形、放出制御型の投与剤形、凍結乾燥型の投与剤形、遅延放出型の投与剤形、持続放出型の投与剤形、パルス放出型の投与剤形、即時放出と放出制御の混合型の投与剤形、またはこれらの組み合わせの場合がある。固体の錠剤製剤が好ましい。
【0032】
B.定義
本発明を本明細書で、以下に記載された、および本出願の全体に記載された複数の定義を用いて説明する。
【0033】
本明細書で用いる、「有効平均粒子径」という用語は、ナノ粒子状のカルベジロール粒子の少なくとも50%が、例えば流動場沈降分画法、光子相関分光法、光散乱法、ディスク遠心法、および当業者に既知の他の手法によって測定時に、重量によって、または他の適切な測定法(すなわち体積、数など)によって、約2000 nm未満の粒子径を有することを意味する。
【0034】
本明細書で用いる、「約」とは当業者によって理解され、および使用される文脈によって、ある程度、変動する。仮に、使用される文脈において当業者に明らかでなく同表現が使用される場合、「約」は特定の数値のプラスマイナス10%を意味する。
【0035】
カルベジロールに関して本明細書で用いる、「安定な」という表現は、以下の1つもしくは複数のパラメータを意味するが、これらに限定されない:(1)カルベジロール粒子が、粒子間の引力のために、評価可能なほどに凝集もしくは凝塊形成しないか、または粒子径が経時的に有意に大きくなること;(2)カルベジロール粒子の物理的構造が非晶相から結晶相への変換などによって経時的に変化しないこと;(3)カルベジロール粒子が化学的に安定なこと;および/または(4)カルベジロールが、本発明のナノ粒子の作製時において、カルベジロールの融点か、または融点以上の温度による加熱過程を受けていないこと。
【0036】
「従来の」または「非ナノ粒子状の」活性薬剤という表現は、可溶化されるか、または約2000 nmを上回る有効平均粒子径を有する活性薬剤を意味する。本明細書で定義されるナノ粒子状の活性薬剤は、約2000 nm未満の有効平均粒子径を有する。
【0037】
本明細書で用いる、「水に対する溶解度が低い薬剤」という表現は、水に対する溶解度が約30 mg/ml未満、好ましくは約20 mg/ml未満、好ましくは約10 mg/ml未満、または好ましくは約1 mg/ml未満である薬剤を意味する。
【0038】
本明細書で用いる、「治療有効量」という表現は、治療を必要とする有意な数の対象に投与される薬剤が特定の薬理反応を提供する薬剤投与量を意味する。特定の状況で特定の対象に投与される治療的有効量の薬剤は、そのような投与量が当業者によって治療的有効量であると考えられても、本明細書に記載された条件/疾患の治療に必ずしも常に有効であるとは限らないことは特に重要である。
【0039】
C.ナノ粒子状のカルベジロール組成物の好ましい特徴
本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物には、いくつかの改善された薬理学的特徴が存在する。
【0040】
1.大きい生物学的利用能
本発明の1つの態様では、本発明のカルベジロール製剤は、従来の非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))に対して、同じ用量で大きい生物学的利用能を示すので、同等の薬物動態プロファイルを達成するのに、より少量の用量の薬剤の投与で済む。
【0041】
2.優れた薬物動態プロファイル
本発明は、哺乳類対象に投与時に望ましい薬物動態プロファイルを有するカルベジロール組成物も提供する。カルベジロール組成物の望ましい薬物動態プロファイルは好ましくは、以下を含むが、これらに限定されない:(1)投与後の哺乳類対象の血漿の検討時に、好ましくは、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))のCmaxより大きいカルベジロールのCmax;および/または(2)投与後の哺乳類対象の血漿の検討時に、好ましくは、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))のAUCより大きいカルベジロールのAUC;および/または(3)投与後の哺乳類対象の血漿の検討時に、好ましくは、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))のTmaxより小さいカルベジロールのTmax。本明細書で用いる望ましい薬物動態プロファイルは、カルベジロールの初回投与後に測定される薬物動態プロファイルである。
【0042】
1つの態様では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物は、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))との比較薬物動態学的な検討で、非ナノ粒子状のカルベジロール製剤が示すTmaxの約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または約5%以下のTmaxを示す。
【0043】
別の態様では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物は、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))との比較薬物動態学的な検討で、非ナノ粒子状のカルベジロール製剤が示すCmaxより少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、または少なくとも約1900%大きいCmaxを示す。
【0044】
さらに別の態様では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物は、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))との比較薬物動態学的な検討で、非ナノ粒子状のカルベジロール製剤(例えばCOREG(登録商標))が示すAUCより少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約750%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、または少なくとも約1200%大きいAUCを示す。
【0045】
3.本発明のカルベジロール組成物の薬物動態プロファイルは、組成物を摂取した対象の摂食・絶食状態の影響を受けない
本発明の別の態様では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物中のカルベジロールの薬物動態プロファイルは、組成物を摂取した対象の摂食状態または絶食状態に実質的に影響されない。これは、摂食状態もしくは絶食状態におけるナノ粒子状のカルベジロール組成物の投与時に、薬剤吸収量(AUCによって測定)または薬剤吸収速度(Tmaxおよび/またはCmaxによって測定)に差がほとんどないか、または検出可能な差がないことを意味する。摂食状態もしくは絶食状態における投与時のナノ粒子状のカルベジロールを含む組成物のAUC、Cmax、および/またはTmax(または、これらの任意の組み合わせ)の差は好ましくは、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、もしくは約3%未満である。
【0046】
食物の作用を実質的に除く投与剤形の利点は、対象にとっての利便性の向上を含むので、対象のコンプライアンスを高める。というのは対象は、食物とともに、または食物をとらない時間に用量を確実に摂取する必要がないからである。これは、対象のコンプライアンスが低いと、薬剤が処方される医学的条件の悪化が観察される可能性が高いことから重要である。
【0047】
本発明の1つの態様では、本発明は、ナノ粒子状のカルベジロールを含む組成物を含み、同組成物の、絶食状態の対象への投与は、特に米国食品医薬品局および対応する欧州の規制機関(EMEA)によるCmaxおよびAUCに関するガイドラインによって定義される、摂食状態の対象への組成物の投与と生物学的に同等である。米国FDAおよび現在の欧州EMEAのガイドラインでは、2つの製品または方法は、AUCおよびCmaxの90%信頼区間(CI)が80%〜125%の場合に生物学的に同等とされる(Tmaxの測定値は、規制目的の生物学的同等性に関しては重要ではない)。これまでは、欧州のEMEAガイドラインに従って2つの化合物または投与条件間の生物学的同等性を示すためには、AUCの90% CIは80%〜125%でなければならず、およびCmaxの90% CIは70%〜143%でなければならなかった。
【0048】
4.本発明のカルベジロール組成物の溶解プロファイル
本発明の別の態様では、本発明のカルベジロール組成物は、予想外に迅速な溶解プロファイルを有する。カルベジロールは、投与後に速やかに溶解することが好ましい。というのは、速い溶解は、より迅速な作用発現、およびより大きな生物学的利用能につながる可能性があるからである。
【0049】
本発明のカルベジロールは好ましくは、約5分以内にカルベジロールの少なくとも約20%が溶解する溶解プロファイルを有する。本発明の他の態様では、カルベジロールの少なくとも約30%または少なくとも約40%が約5分以内に溶解する。本発明のさらに他の態様では、カルベジロールの少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%が約10分以内に溶解する。最後に本発明の別の態様では、カルベジロールの少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%が20分以内に溶解する。
【0050】
溶解は好ましくは、識別能のある溶媒中で測定される。このような溶解用溶媒(dissolution medium)は、胃液中で異なるインビボ溶解プロファイルを有する2種類の生成物に関して、インビトロ溶解プロファイルを生じることが意図される。すなわち、溶解用溶媒中の生成物の溶解挙動は、体内における溶解挙動を予測可能なことが意図される。例示的な溶解用溶媒は、界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを0.025 Mの濃度で含む水性溶媒である。溶解量は分光光度法で決定することができる。溶解は、回転ブレード法(欧州薬局方)で測定することができる。
【0051】
5.本発明のカルベジロール組成物の再分散プロファイル
本発明の1つの態様では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物は固体投与剤形に製剤化され、および固体投与剤形は、再分散したカルベジロール粒子の有効平均粒子径が約2ミクロン未満となるように再分散する。これは、本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物が投与時に、ナノ粒子の粒子径に再分散しない場合に、投与剤形が、カルベジロールをナノ粒子の粒子径に製剤化することでもたらされる利益を失う場合があることから重要である。
【0052】
実際に、本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物は、カルベジロールの粒子径が小さいことによる利点があり;仮にカルベジロールが、投与時に小さな粒子径に再分散しないと、ナノ粒子系の極めて高い表面自由エネルギー、および自由エネルギーを全体的に低下させる熱力学的駆動力によって、「クランプ」すなわち凝集したカルベジロール粒子が形成される。このような凝集状のカルベジロール粒子の形成によって、カルベジロールの投与剤形の生物学的利用能は、ナノ粒子状の活性薬剤の良好な分散時に観察される利用度以下に有意に低下する可能性がある。
【0053】
さらに、本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物は、再分散したカルベジロール粒子の有効平均粒子径が約2ミクロン未満となるように、生物学的に重要な水性溶媒中における再構成/再分散によって示されるように、ヒトや動物などの哺乳類への投与時に、ナノ粒子状のカルベジロール粒子の十分な再分散を示すと考えられている。このような生物学的に重要な水性溶媒は、溶媒の生物学的重要性の基礎を形成する望ましいイオン強度およびpHを示す任意の水性溶媒の場合がある。望ましいpHおよびイオン強度は、人体内に見られる代表的な生理学的条件である。このような生物学的に重要な水性溶媒は例えば、望ましいpHおよびイオン強度を示す電解質水溶液、または任意の塩、酸、塩基の水溶液、またはこれらの組み合わせの場合がある。
【0054】
生物学的に重要なpHは当技術分野で周知である。例えば胃内では、pHの範囲は2よりやや低い(ただし典型的には1より大きい)値から最高4または5である。小腸内では、pHは4〜6の範囲をとる場合があり、および結腸内では6〜8の範囲を取り得る。生物学的に重要なイオン強度も当技術分野で周知である。絶食状態の胃液のイオン強度は約0.1 Mであり、絶食状態の腸液のイオン強度は約0.14 Mである。これについては例えば、Lindahl et al.、「Characterization of Fluids from the Stomach and Proximal Jejunum in Men and Women」、Pharm. Res., 14(4):497-502 (1997)を参照されたい。試験溶液のpHおよびイオン強度は、特定の化学物質の含有量より重要であると考えられている。したがって、適切なpHおよびイオン強度の値は、強酸、強塩基、塩、1つまたは複数の共役酸-塩基の対(すなわち弱酸と対応する弱酸の塩)、一塩基および多塩基の電解質などの数多くの組み合わせによって得られる。
【0055】
代表的な電解質溶液は、濃度が約0.001〜約0.1 NのHCl溶液、および濃度が約0.001〜約0.1 MのNaCl溶液、およびこれらの混合物の場合があるが、これらに限定されない。例えば電解質溶液は、約0.1 Nまたはこれ未満のHCl、約0.01 Nまたはこれ未満のHCl、約0.001 Nまたはこれ未満のHCl、約0.1 Mまたはこれ未満のNaCl、約0.01 Mまたはこれ未満のNaCl、約0.001 Mまたはこれ未満のNaCl、およびこれらの混合物の場合があるが、これらに限定されない。このような電解質溶液のなかで、0.01 MのHClおよび/または0.1 MのNaClが、近位消化管のpHおよびイオン強度の条件のために、最も代表的な絶食時のヒトの生理学的条件である。
【0056】
0.001 NのHCl、0.01 NのHCl、および0.1 NのHClの電解質濃度はそれぞれ、pH 3、pH 2、およびpH 1に対応する。したがって0.01 NのHCl溶液は、胃内の典型的な酸性条件を再現する。0.1 MのNaCl溶液は、消化器液を含む体の全体で見出されるイオン強度条件の妥当な近似を提供するが、0.1 Mより高い濃度を使用して、ヒトのGI管内の摂食条件を再現することができる。
【0057】
望ましいpHおよびイオン強度を示す、塩、酸、塩基、またはこれらの組み合わせの例示的な溶液は、リン酸/リン酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩、酢酸/酢酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩、炭酸/重炭酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩、ならびにクエン酸/クエン酸塩+ナトリウム、カリウム、およびカルシウムの塩化物塩を含むが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の他の態様では、本発明の再分散したカルベジロール粒子(水中、生物学的に重要な溶媒中、または任意の他の適切な溶媒中に再分散した粒子)は、光散乱法、顕微鏡法、または他の適切な方法で測定時に、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約990 nm未満、約980 nm未満、約970 nm未満、約960 nm未満、約950 nm未満、約940 nm未満、約930 nm未満、約920 nm未満、約910 nm未満、約900 nm未満、約890 nm未満、約880 nm未満、約870 nm未満、約860 nm未満、約850 nm未満、約840 nm未満、約830 nm未満、約820 nm未満、約810 nm未満、約800 nm未満、約790 nm未満、約780 nm未満、約770 nm未満、約760 nm未満、約750 nm未満、約740 nm未満、約730 nm未満、約720 nm未満、約710 nm未満、約700 nm未満、約690 nm未満、約680 nm未満、約670 nm未満、約660 nm未満、約650 nm未満、約640 nm未満、約630 nm未満、約620 nm未満、約610 nm未満、約600 nm未満、約590 nm未満、約580 nm未満、約570 nm未満、約560 nm未満、約550 nm未満、約540 nm未満、約530 nm未満、約520 nm未満、約510 nm未満、約500 nm未満、約490 nm未満、約480 nm未満、約470 nm未満、約460 nm未満、約450 nm未満、約440 nm未満、約430 nm未満、約420 nm未満、約410 nm未満、約400 nm未満、約390 nm未満、約380 nm未満、約370 nm未満、約360 nm未満、約350 nm未満、約340 nm未満、約330 nm未満、約320 nm未満、約310 nm未満、約300 nm未満、約290 nm未満、約280 nm未満、約270 nm未満、約260 nm未満、約250 nm未満、約240 nm未満、約230 nm未満、約220 nm未満、約210 nm未満、約200 nm未満、約190 nm未満、約180 nm未満、約170 nm未満、約160 nm未満、約150 nm未満、約140 nm未満、約130 nm未満、約120 nm未満、約110 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、または約50 nm未満の有効平均粒子径を有する。
【0059】
再分散性は、当技術分野で既知の任意の適切な手段で検討可能である。これについては例えば、「Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate」と題する米国特許第6,375,986号の実施例セクションを参照されたい。
【0060】
6.他の薬学的賦形剤
本発明の薬学的組成物は、1つもしくは複数の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤を含む場合もある。このような賦形剤は当技術分野で既知である。
【0061】
充填剤の例は、乳糖一水和物、無水乳糖、およびさまざまなデンプンを含み;結合剤の例は、さまざまなセルロース、および架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標) PH101やAvicel(登録商標) PH102などの微結晶セルロース、ならびにケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(商標))である。圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤を含む適切な潤滑剤は、Aerosil(登録商標) 200などのコロイド状二酸化シリコン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルである。甘味剤の例は、ショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、およびアセスルファムなどの任意の天然または人工の甘味剤である。香味剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、風船ガム香料、および果実フレーバーなどである。
【0062】
保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルアルコールやベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール化合物、または塩化ベンザルコニウムなどの四級化合物である。適切な希釈剤は、微結晶セルロース、乳糖、リン酸水素二カルシウム、糖類、および/または前述の任意の混合物などの、薬学的に許容される不活性な充填剤を含む。希釈剤の例は、Avicel(登録商標) PH101やAvicel(登録商標) PH102などの微結晶セルロース;乳糖一水和物、無水乳糖、およびPharmatose(登録商標) DCL21などの乳糖;Emcompress(登録商標)などのリン酸水素二カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;ショ糖;およびグルコースを含む。
【0063】
適切な崩壊剤は、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および化工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、およびこれらの混合物を含む。発泡剤の例は、有機酸および炭酸塩または重炭酸塩などの発泡性結合化合物(effervescent couple)である。適切な有機酸は例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびに無水物および酸性塩を含む。適切な炭酸塩および重炭酸塩は例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、炭酸L-リシン、および炭酸アルギニンを含む。あるいは、発泡結合化合物の重炭酸ナトリウム成分のみが存在する場合がある。
【0064】
7.混合組成物の薬物動態プロファイル
本発明のさらに別の態様では、望ましい薬物動態プロファイルを提供する第1のナノ粒子状のカルベジロール組成物は、同時に投与されるか、連続的に投与されるか、または、望ましい異なる薬物動態プロファイルを生じる少なくとも1つの他のカルベジロール組成物と組み合わせて投与される。2種類以上のカルベジロール組成物を同時に投与するか、連続的に投与するか、または組み合わせることができる。第1のカルベジロール組成物がナノ粒子の粒子径を有するのに対し、追加される1つもしくは複数のカルベジロール組成物は、ナノ粒子状、溶解状態の場合があるほか、微粒子の粒子径を有する場合がある。
【0065】
第2、第3、第4などのカルベジロール組成物は例えば以下の点が、第1のカルベジロール組成物と、および相互に異なる場合がある:(1)カルベジロールの有効平均粒子径;または(2)カルベジロールの投与量。このような混合組成物は、必要な投与頻度を低減可能である。仮に、第2のカルベジロール組成物がナノ粒子の粒子径を有するのであれば、好ましくは第2の組成物のカルベジロール粒子は、薬剤粒子の表面に結合する少なくとも1つの表面安定剤を有する。1つもしくは複数の表面安定剤は、第1のカルベジロール組成物中に存在する表面安定剤と同じ場合もあれば異なる場合もある。
【0066】
好ましくは、「即時作用型(fast-acting)」製剤と「長期作用型(longer-lasting)」製剤の同時投与が望ましい場合は、これら2種類の製剤は、1つの組成物中に、例えば二重放出型(dual-release)組成物中に混合される。
【0067】
8.放出制御型のナノ粒子状のカルベジロール組成物
本発明の1つの態様では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物は放出制御型の投与剤形に製剤化される。放出制御プロファイルは例えば、放出制御、持続放出、パルス放出、および遅延放出のプロファイルを含む。即時放出型の組成物とは対照的に、放出制御型のカルベジロール組成物は、所定のプロファイルによる対象への長時間にわたるカルベジロールの輸送が可能である。このような放出速度は、長時間にわたって治療的に有効なレベルのカルベジロールを提供可能なので、従来の迅速な放出投与剤形と比較して、より長期にわたる薬理学的または診断的な反応を提供し得る。このような長時間の反応は、対応する短時間作用型の即時放出型の調製物では達成されない数多くの固有の利益を提供する。
【0068】
ナノ粒子状活性薬剤の放出制御型の投与剤形については、特異的に参照により組み入れられる、「Controlled Release Nanoparticulate Compositions」と題する米国特許出願第20020012675 A1号に記載されている。典型的には、放出制御型のカルベジロール組成物は、ナノ粒子状のカルベジロール、少なくとも1つの表面安定剤、および少なくとも1つの速度制御用ポリマー(rate controlling polymer)を含む。速度制御用ポリマーのタイプは、使用される速度制御型の投与剤形のタイプに依存する。
【0069】
多種多様なタイプの速度制御型の投与剤形が存在する。本発明の第1の局面では、ナノ粒子状のカルベジロール、少なくとも1つの表面安定剤、および1つまたは複数の補助賦形剤材料は、錠剤の形状に圧縮後に、速度制御用ポリマー材料でコーティングされる。第2の局面では、ナノ粒子状のカルベジロール、少なくとも1つの表面安定剤、速度制御用ポリマー材料、および1つまたは複数の補助賦形剤がともに圧縮されて放出制御型マトリックスが形成される。放出制御型マトリックスは任意で、速度制御用ポリマーでコーティングされることで、追加的な放出制御特性が提供される。第3の局面では、ナノ粒子状のカルベジロール、少なくとも1つの表面安定剤、および1つまたは複数の補助賦形剤材料は、多層錠剤の形状に圧縮された後に速度制御用ポリマー材料でコーティングされる。第4の局面では、ナノ粒子状のカルベジロールおよび少なくとも1つの表面安定剤は、速度制御用ポリマー材料中に分散され、ならびに多層錠剤中に圧縮される。多層錠剤を任意で、速度制御用ポリマー材料でコーティングすることで、追加的な放出制御特性が得られる。別の態様では、このような多層錠剤中の第1層が本発明の放出制御型の組成物を含み、および第2層が即時放出型の組成物などの組成物(例えばカルベジロールまたは他の活性薬剤)を含む従来の活性薬剤を含む。第5の局面では、ナノ粒子状のカルベジロールおよび少なくとも1つの表面安定剤は、半透膜で囲まれた浸透剤(osmagent)を含む1層または多層の錠剤中に統合される(半透膜がオリフィスを規定する)。この態様では、半透膜には胃腸液などの水性溶媒は透過するが、溶液状または他の形状の低溶解性のカルベジロールは透過しない。このような浸透圧輸送系は当技術分野で周知であり、半透膜を通した液体の注入は浸透剤の膨潤を引き起こすことで、半透膜によって規定されるオリフィスを通じてカルベジロールを押し出す。第6の局面では、ナノ粒子状のカルベジロール、少なくとも1つの表面安定剤、1つまたは複数の補助賦形剤、および速度制御用ポリマー材料は多粒子形状(multiparticulate form)中に混合される。多粒子形状は好ましくは、分散した粒子、ペレット、小型錠剤、またはこれらの組み合わせを含む。最終的な経口投与剤形では、多粒子形状を例えば、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルで包むことができる。あるいは多粒子形状を、サシェ剤などの他の最終投与剤形中に統合することができる。分散した粒子またはペレットを含む多粒子形状の場合は、多粒子形状は、任意で補助賦形剤を追加することで、錠剤の形状に圧縮され得る。圧縮された多粒子状の錠剤は任意で、追加的な放出制御特性を提供するように、速度制御用ポリマー材料でコーティングすることができる。
【0070】
速度制御用ポリマーの選択は第1に、使用される放出制御系のタイプ(すなわちコーティング系かマトリックス系か)に依存する。コーティング系を利用する速度制御型の組成物は、ポリ(アルキルメタクリレート)などの非水溶性のバックボーンを形成するポリマーを速度制御用ポリマーとして使用する。ポリビニルピロリドン(PVP)やポリエチレングリコール(PEG)などの水溶性ポリマーも、コーティング系に使用可能であるが、これらは非水溶性のバックボーンを形成して放出制御型の組成物を生じるポリマーとともに使用しなければならない。したがって仮に、水溶性ポリマーであるPVPおよびPEGが、非水溶性のバックボーンを形成するポリマーの非存在下でコーティング系に使用される場合は、結果として得られる組成物は即時放出型の組成物である。
【0071】
マトリックス放出制御系は、粘張なヒドロゲルを形成するのに十分高い分子量を有する水溶性ポリマーを速度制御用ポリマーとして使用可能である。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)やヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの水溶性ポリマーは、さまざまな「グレード」または分子量を有し:高分子量のポリマーは粘性が高く、かつ強固であり、このようなポリマーに由来する粘張なゲルは、水の拡散および薬剤の放出をコントロールし、速度制御特性を付与する。これについては、「Formulating for Controlled Release with METHOCEL Premium Cellulose Ethers」、The Dow Chemical Company (1995)を参照されたい。
【0072】
例示的な速度制御用ポリマーは、本発明の組成物または投与剤形からのカルベジロールの放出を遅らせることが可能な親水性ポリマー、疎水性ポリマー、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーの混合物を含むが、これらに限定されない。投与後におけるカルベジロールの有効な制御された放出を引き起こすために特に有用な速度制御用ポリマーは、植物浸出液(アラビアゴム)、海草抽出物(寒天)、植物種子ガムまたは粘液(グアーガム)、穀物ガム(デンプン)、発酵ガム(デキストラン)、動物生産品(ゼラチン)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などのヒドロキシアルキルセルロース、グアー、ペクチン、およびカラギーナンを含む。他のポリマーは、ポリ(エチレン)オキシド、エチルセルロースやメチルセルロースなどのアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリ(アルキルメタクリレート)、ならびにポリ(酢酸ビニル)を含む。他の適切な疎水性ポリマーは、アクリル酸もしくはメタクリル酸、およびこれらの個々のエステル、ロウ、セラック、および硬化植物油に由来するポリマーおよび/またはコポリマーを含む。2種類またはこれ以上の速度制御用ポリマーを組み合わせて使用することができる。このようなポリマーは市販されているほか、および/または当技術分野で既知の手法で作製することができる。
【0073】
9.他の活性薬剤とともに使用されるカルベジロール組成物
本発明のカルベジロール組成物には、高血圧、うっ血性心不全(または脂質異常、高脂質血症、高コレステロール血症、および心疾患などの関連条件)、ウイルス感染、癌、精神病、または関連条件の治療に有用な1つもしくは複数の非カルベジロール化合物を追加的に含めることができる。本発明の組成物は、このような他の活性薬剤と同時に製剤化可能なほか、本発明の組成物は、このような活性薬剤と同時に投与するか、または連続的に投与することが可能である。
【0074】
このような化合物の例は、ジゴキシン、CETP(コレステロールエステル輸送タンパク質)阻害剤(例えばトルセトラピブ)、コレステロール低下化合物(例えばエゼチミブ(Zetia(登録商標))、抗高血糖薬、スタチンすなわちHMG-CoA還元酵素阻害剤、降圧薬、ACE阻害剤、および硝酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0075】
降圧薬の例は、利尿剤(「ウォーターピル」)、ベータブロッカー、アルファブロッカー、アルファ-ベータブロッカー、交感神経阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムチャネルブロッカー、アンジオテンシン受容体ブロッカー(正式薬剤名はアンジオテンシン-2-受容体アンタゴニスト、「sartans」として知られる)を含むが、これらに限定されない。
【0076】
高血糖の治療に有用な例示的な薬剤は、(a)インスリン(Humulin(登録商標)、Novolin(登録商標))、(b)グリブリド(Diabeta(登録商標)、Micronase(登録商標))、アセトへキサミド(Dymelor(登録商標))、クロルプロパミド(Diabinese(登録商標))、グリメピリド(Amaryl(登録商標))、グリピジド(Glucotrol(登録商標))、グリクラジド、トラザミド(Tolinase(登録商標))、およびトルブタミド(Orinase(登録商標))などのスルホニル尿素、(c)レパグリニド(Prandin(登録商標))やナテグリニド(Starlix(登録商標))などのメグリチニド、(d)メトホルミン(Glucophage(登録商標)、Glycon)などのビグアナイド、(e)ロジグリタゾン(Avandia(登録商標))やピオグリタゾン(Actos(登録商標))などのチアゾリジンジオン、ならびに(f)アカルボース(Precose(登録商標))やミグリトール(Glyset(登録商標))などのグルコシダーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0077】
スタチンすなわちHMG-CoA還元酵素阻害剤の例は、ロバスタチン(Mevacor(登録商標)、Altocor(登録商標));プラバスタチン(Pravachol(登録商標));シンバスタチン(Zocor(登録商標));ベロスタチン;アトルバスタチン(Lipitor(登録商標))、ならびに米国特許第4,647,576号に開示された他の6-[2-(置換-ピロール-1-イル)アルキル]ピラン-2-オンおよび誘導体);フルバスタチン(Lescol(登録商標));フルインドスタチン(Sandoz XU-62-320);PCT出願WO 86/03488に開示されたメバロノラクトン誘導体のピラゾール類似体;リバスタチン(セリバスタチンとしても知られる、Baycol(登録商標))、および欧州特許第491226A号に開示されている他のピリジルジヒドロキシヘプテン酸;Searle社のSC-45355(3-置換型のペンタン二酸の誘導体);ジクロロ酢酸塩;PCT出願WO 86/07054に開示されているメバロノラクトンのイミダゾールアナログ;フランス特許第2,596,393号に開示されている3-カルボキシ-2-ヒドロキシ-プロパン-ホスホン酸誘導体;欧州特許出願第0221025号に開示されている2,3-ジ-置換ピロール、フラン、およびチオフェンの誘導体;米国特許第4,686,237号に開示されているメバロノラクトンのナフチルアナログ;米国特許第4,499,289号に記載されている化合物などのオクタヒドロナフタレン;欧州特許出願第0,142,146 A2号に開示されているメビノリン(ロバスタチン)のケトアナログ;ホスフィン酸化合物;ロスバスタチン(Crestor(登録商標));ピタバスタチン(Pitava(登録商標))、ならびに他のHMG-CoA還元酵素阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0078】
D.組成物
本発明は、ナノ粒子状のカルベジロール粒子および少なくとも1つの表面安定剤を含む組成物を提供する。表面安定剤は好ましくは、カルベジロール粒子の表面に吸収されるか、または同表面に結合する。本発明で有用な表面安定剤は、カルベジロール粒子またはそれ自体と化学的に反応しない。好ましくは、表面安定剤の個々の分子は本質的に分子間架橋を含まない。組成物は、2種類もしくは2種類以上の表面安定剤を含む場合がある。
【0079】
本発明は、ナノ粒子状のカルベジロール組成物とともに、1つもしくは複数の、担体と総称される、非毒性の生理学的に許容される担体、補助剤、または溶媒も含む。組成物は、注射(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下への注射)用に、固体状、液体状、またはエアロゾル状の経口投与用、膣内投与用、鼻内投与用、直腸内投与用、眼内投与用、局所投与用(粉末、軟膏、またはドロップ)、舌下投与用、大槽内投与用、腹腔内投与用、または局所投与用などに製剤化することができる。例えば、本発明の組成物は、以下のように製剤化することができる:(a)経口投与、肺内投与、直腸内投与、眼内(opthalmic)投与、結腸内投与、非経口投与、大槽内投与、膣内投与、腹腔内投与、局所投与、舌下投与、鼻内投与、眼内(otic)投与、および局所投与からなる群より選択される投与用;(b)液体分散剤、経口懸濁剤、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム剤、錠剤、カプセル剤からなる群より選択される投与剤形;(c)放出制御型の製剤、即時溶解型の製剤、凍結乾燥型の製剤、遅延放出型の製剤、持続放出型の製剤、パルス放出型の製剤、ならびに即時放出と放出制御の混合型の製剤からなる群より選択される投与剤形;または(d)これらの任意の組み合わせ。
【0080】
1.カルベジロール
カルベジロールは、結晶相、非晶相、半結晶相、半非晶相、またはこれらの混合物の場合がある。本明細書で使用される、「カルベジロール」という用語は、ラセミ混合物、光学活性異性体を含むR(+)-カルベジロールおよび/またはS(-)-カルベジロールなどのカルベジロールの異性体、カルベジロールのヒドロキシカルバゾール誘導体、カルベジロールの薬学的に許容される塩、ならびにこれらの誘導体を含む。
【0081】
カルベジロールは、a1-遮断活性を有する非選択的なb-アドレナリン遮断薬である。カルベジロールは、(±)-1-(カルバゾール-4-イルオキシ)-3-[[2-(o-メトキシフェノキシ)エチル]アミノ]-2-プロパノールである。カルベジロールは、以下の構造を有するラセミ混合物である。

【0082】
カルベジロールは白色〜オフホワイトの粉末であり、分子量は406.5であり、および分子式はC24H26N2O4である。カルベジロールは、ジメチルスルホキシドに容易に溶解し;塩化メチレンおよびメタノールに溶解し;95%のエタノールおよびイソプロパノールにある程度溶解し;エチルエーテルにわずかに溶解し;ならびに水、胃液(TS、pH 1.1で模擬)、および腸液(パンクレアチンを含まないTS、pH 7.5で模擬)に実質的に溶解しない。
【0083】
カルベジロール、この異性体、またはこの誘導体は、いずれも特異的に参照により組み入れられる、米国特許第4,503,067号;第5,760,069号;第5,902,821号;第6,699,997号;および第6,730,326号に詳細が記載された手順などの、確立された手順で作製することができる。
【0084】
2.表面安定剤
好ましくは、本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物は少なくとも1つの表面安定剤を含む。本発明では、複数の表面安定剤の組み合わせを使用可能である。
【0085】
本発明に使用可能な有用な表面安定剤は、既知の有機および無機の薬学的賦形剤を含むが、これらに限定されない。このような賦形剤は、さまざまなポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、および界面活性剤を含む。例示的な表面安定剤は、非イオン性、イオン性、陰イオン性、陽イオン性、および両性イオン性の界面活性剤を含む。
【0086】
表面安定剤の代表例は、ヒト血清アルブミンおよびウシアルブミンを含むが、これらに限定されないアルブミン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(現在はヒプロメロースとして知られる)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000などのマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween 20(登録商標)やTween 80(登録商標)などの市販のTween(登録商標)(ICI Speciality Chemicals));ポリエチレングリコール(例えば、Carbowaxs 3550(登録商標)および934(登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化シリコン、リン酸塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、酸化エチレンおよびホルムアルデヒドを含む4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトライトン(triton)としても知られる)、ポロキサマー(例えば、酸化エチレンと酸化プロピレンのブロック共重合体であるPluronics F68(登録商標)およびF108(登録商標));ポロキサミン(例えば、エチレンジアミンへの酸化プロピレンおよび酸化エチレンの逐次付加に由来する四官能性のブロック共重合体であるPoloxamine 908(登録商標)としても知られるTetronic 908(登録商標)(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany, N.J.));Tetronic 1508(登録商標)(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホン酸アルキルアリールポリエーテルであるTritons X-200(登録商標)(Rohm and Haas);ステアリン酸ショ糖とジステアリン酸ショ糖の混合物であるCrodestas F-110(登録商標)(Croda Inc.);Olin-1OG(登録商標)またはSurfactant 10-G(登録商標)(Olin Chemicals, Stamford, CT)としても知られるp-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール);Crodestas SL-40(登録商標)(Croda, Inc.);ならびにC18H37CH2(CON(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2OH)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、リゾチーム、Plasdone(登録商標) S630などのビニルピロリドンと酢酸ビニルのランダム共重合体などを含む。
【0087】
有用な陽イオン性表面安定剤の例は、ポリマー、生体高分子、多糖類、セルロース誘導体、アルギン酸塩、リン脂質、および両性イオン性安定剤などの非ポリマー化合物、ポリ-n-メチルピリジニウム、アンスリルピリジニウムクロライド、陽イオン性リン脂質、キトサン、ポリリシン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、ならびにポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートのジメチル硫酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0088】
他の有用な陽イオン性安定剤は、陽イオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム、ならびにステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロライドまたはブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロライドまたはブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロライド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライドまたはブロミド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライドまたはブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライドまたはブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドまたはブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロライドまたはブロミド、N-アルキル(C12-18)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、N-アルキル(C14-18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロライド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロライド、N-アルキルおよび(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩、およびジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩および/またはエトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロライド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド一水和物、N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロライドおよびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12, C15, C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロライド、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウム、トリセチルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(ALIQUAT 336(商標))、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミドなどの四級アンモニウム化合物、コリンエステル(脂肪酸のコリンエステルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物(塩化ステアリルトリモニウムや塩化ジ-ステアリルジモニウムなど)、セチルピリジニウムブロミドまたはクロライド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハライド塩、MIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Company)、アルキルピリジニウム塩;アルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N-ジアルキルアミノアルキルアクリレート、およびビニルピリジンなどのアミン、酢酸ラウリルアミン、酢酸ステアリルアミン、アルキルピリジニウム塩、およびアルキルイミダゾリウム塩などのアミン塩、ならびにアミンオキシド;イミドアゾリニウム塩;プロトン化四級アクリルアミド;ポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロライド]およびポリ-[N-メチルビニルピリジニウムクロライド]などのメチル化四級ポリマー;ならびにカチオン化グアーを含むが、これらに限定されない。
【0089】
このような例示的な陽イオン性表面安定剤、および他の有用な陽イオン性表面安定剤は、J. Cross and E. Singer, Cationic Surfactants: Analytical and Biological Evaluation(Marcel Dekker, 1994);P. and D. Rubingh (Editor), Cationic Surfactants: Physical Chemistry (Marcel Dekker, 1991);およびJ. Richmond, Cationic Surfactants: Organic Chemistry, (Marcel Dekker, 1990)に記載されている。
【0090】
非ポリマー性の表面安定剤は、塩化ベンザルコニウム、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物などの任意の非ポリマー化合物、陽イオン性有機金属化合物、四級亜リン酸化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、一級アンモニウム化合物、二級アンモニウム化合物、三級アンモニウム化合物、および化学式NR1R2R3R4(+)で表される四級アンモニウム化合物である。以下である、式NR1R2R3R4(+)で表される化合物:
(i)R1〜R4がCH3ではないか;
(ii)R1〜R4の1つがCH3であるか;
(iii)R1〜R4の3つがCH3であるか;
(iv)R1〜R4の全てがCH3であるか;
(v)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、およびR1〜R4の1つが7個以下の炭素原子のアルキル鎖であるか;
(vi)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、およびR1〜R4の1つが19個以上の炭素原子のアルキル鎖であるか;
(vii)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つが官能基C6H5(CH2)n(ここでn>1)であるか;
(viii)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、およびR1〜R4の1つが少なくとも1個のヘテロ原子を含むか;
(ix)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、およびR1〜R4の1つが少なくとも1個のハロゲンを含むか;
(x)R1〜R4の2つがCH3であり、R1〜R4の1つがC6H5CH2であり、およびR1〜R4の1つが少なくとも1個の環状断片を含むか;
(xi)R1〜R4の2つがCH3であり、およびR1〜R4の1つがフェニル環であるか;または
(xii)R1〜R4の2つがCH3であり、およびR1〜R4の2つが純粋な脂肪族断片である。
【0091】
このような化合物は、塩化ベヘナルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベヘントリモニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セトリモニウム、フッ化水素酸セチルアミン、クロルアリルメテナミンクロライド(Quaternium-15)、ジステアリルジモニウムクロライド(Quaternium-5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド(Quaternium-14)、Quaternium-22、Quaternium-26、Quaternium-18ヘクトライト、塩酸ジメチルアミノエチルクロライド、塩酸システイン、リン酸ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレチルエーテル、リン酸ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルエーテル、タロウアルコニウムクロライド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、塩化ステアラルコニウム、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化ラウルトリモニウム、エチレンジアミンジヒドロクロライド、塩酸グアニジン、塩酸ピリドキシン、塩酸イオフェタミン、塩酸メグルミン、メチルベンゼトニウムクロライド、ミトリモニウムブロミド、オレイルトリモニウムクロライド、ポリクオタニウム-1、塩酸プロカイン、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトナイト、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオライド、タロウトリモニウムクロライド、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含むが、これらに限定されない。
【0092】
特に好ましい表面安定剤は、特に硫酸ラウリルナトリウムおよび/またはジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルとビニルピロリドンのランダム共重合体であるPlasdone(登録商標) S-630、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない化合物と組み合わされるポリマー表面安定剤である。
【0093】
表面安定剤は市販されているか、および/または当技術分野で既知の手法で作製することができる。表面安定剤の多くは既知の薬学的賦形剤であり、および米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)と英国薬学会(The Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同出版され、ならびに特異的に参照により本明細書に組み入れられる、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(The Pharmaceutical Press, 2000)に詳細に記載されている。
【0094】
3.ナノ粒子状のカルベジロールの粒子径
本発明の組成物は、光散乱法、顕微鏡法、または他の適切な方法で測定時に、約2000 nm(すなわち2ミクロン)未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約990 nm未満、約980 nm未満、約970 nm未満、約960 nm未満、約950 nm未満、約940 nm未満、約930 nm未満、約920 nm未満、約910 nm未満、約900 nm未満、約890 nm未満、約880 nm未満、約870 nm未満、約860 nm未満、約850 nm未満、約840 nm未満、約830 nm未満、約820 nm未満、約810 nm未満、約800 nm未満、約790 nm未満、約780 nm未満、約770 nm未満、約760 nm未満、約750 nm未満、約740 nm未満、約730 nm未満、約720 nm未満、約710 nm未満、約700 nm未満、約690 nm未満、約680 nm未満、約670 nm未満、約660 nm未満、約650 nm未満、約640 nm未満、約630 nm未満、約620 nm未満、約610 nm未満、約600 nm未満、約590 nm未満、約580 nm未満、約570 nm未満、約560 nm未満、約550 nm未満、約540 nm未満、約530 nm未満、約520 nm未満、約510 nm未満、約500 nm未満、約490 nm未満、約480 nm未満、約470 nm未満、約460 nm未満、約450 nm未満、約440 nm未満、約430 nm未満、約420 nm未満、約410 nm未満、約400 nm未満、約390 nm未満、約380 nm未満、約370 nm未満、約360 nm未満、約350 nm未満、約340 nm未満、約330 nm未満、約320 nm未満、約310 nm未満、約300 nm未満、約290 nm未満、約280 nm未満、約270 nm未満、約260 nm未満、約250 nm未満、約240 nm未満、約230 nm未満、約220 nm未満、約210 nm未満、約200 nm未満、約190 nm未満、約180 nm未満、約170 nm未満、約160 nm未満、約150 nm未満、約140 nm未満、約130 nm未満、約120 nm未満、約110 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、または約50 nm未満の有効平均粒子径を有するナノ粒子状のカルベジロール粒子を含む。
【0095】
「有効平均粒子径が約2000 nm未満である」という表現は、カルベジロール粒子の少なくとも50%が重量比で、または他の適切な測定法で(すなわち体積や数などで)、有効平均未満の粒子径を有すること、すなわち上記の手法で測定時に、約2000 nm未満、約1900 nm未満、約1800 nm未満など(上述)の粒子径を有することを意味する。本発明の他の態様では、カルベジロール粒子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%(例えば、それぞれD60、D70、D80、D90、D95、およびD99の粒子径)が重量比で、または他の適切な測定法で(すなわち体積や数などで)、有効平均未満の粒子径、すなわち約2000 nm未満、1900 nm、1800 nm、1700 nmなどの粒子径を有する。本発明の別の態様では、上記の「有効平均粒子径」は、組成物の平均粒子径である(すなわち本発明は、平均粒子径が約2000 nm未満、...約1000 nm未満、約990 nm未満、約980 nm未満、約970 nmなどである組成物を含む)。
【0096】
本発明では、ナノ粒子状のカルベジロール組成物のD50の値は重量比で、または他の適切な測定法で(すなわち体積や数などで)、カルベジロール粒子の50%未満が含まれる粒子径である。同様にD90は重量比で、または他の適切な測定値で(すなわち体積や数などで)、カルベジロール粒子の90%未満が含まれる粒子径であり、およびD99は重量比で、または他の適切な測定法で(すなわち体積や数などで)、カルベジロール粒子の99%が含まれる粒子径である。
【0097】
4.カルベジロールおよび表面安定剤の濃度
カルベジロール、および1つもしくは複数の表面安定剤の相対量は大きく変動する場合がある。個々の成分の最適量は例えば、選択される特定のカルベジロール、親水親油バランス(HLB)、融点、および安定剤の水溶液の表面張力などに依存する場合がある。
【0098】
1つの態様では、カルベジロールの濃度は、他の賦形剤を含まないカルベジロールおよび少なくとも1つの表面安定剤の全総合重量に対して、重量比で約99.5%〜約0.001%、約95%〜約0.1%、または約90%〜約0.5%を変動する場合がある。
【0099】
別の態様では、少なくとも1つの表面安定剤の濃度は、他の賦形剤を含まないカルベジロールおよび少なくとも1つの表面安定剤の全総合乾燥重量に対して、重量比で約0.5%〜約99.999%、約5.0%〜約99.9%、または約10%〜約99.5%を変動する場合がある。
【0100】
5.例示的なナノ粒子状のカルベジロールの錠剤製剤
本発明の複数の例示的なカルベジロールの錠剤製剤を以下に示す。これらの例は、クレームをいかなる点においても制限する意図はなく、むしろ本発明の方法で利用可能な本発明のカルベジロールの例示的な錠剤製剤を提供する。このような例示的な錠剤には、コーティング剤を含めることもできる。
【0101】



【0102】
E.カルベジロール製剤の作製法
本発明の別の局面では、本発明のナノ粒子状のカルベジロール製剤を作製する方法が提供される。本発明の組成物は、例えば粉砕(milling)(湿式粉砕を含むが、これに限定されない)、均一化、沈殿、蒸発、凍結、テンプレートエマルジョン法、もしくは超臨界流体法、ナノエレクトロスプレー法、またはこれらの任意の組み合わせによって作製することができる。ナノ粒子状の活性薬剤組成物の例示的な作製法は、米国特許第5,145,684号に記載されている。ナノ粒子状の活性薬剤組成物の作製法は、いずれも特異的に参照により組み入れられる、「Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,518,187号;「Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,718,388号;「Method of Grinding Pharmaceutical Substances」と題する米国特許第5,862,999号;「Co-Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers」と題する米国特許第5,665,331号;「Co-Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers」と題する米国特許第5,662,883号;「Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents」と題する米国特許第5,560,932号;「Process of Preparing X-Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles」と題する米国特許第5,543,133号;「Method of Preparing Stable Drug Nanoparticles」と題する米国特許第5,534,270号;「Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles」と題する米国特許第5,510,118号;「Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation」と題する米国特許第5,470,583号にも記載されている。
【0103】
任意の適切な方法によるナノ粒子状のカルベジロール組成物の作製後に、結果として得られるカルベジロール組成物を、投与に適切な投与剤形に使用することができる。
【0104】
磨砕および均一化に関しては好ましくは、粒子径の減少過程に使用される分散媒は水性である。しかしながら、カルベジロールの溶解性および分散性が低い任意の溶媒を分散媒として使用することができる。分散媒の非水性の例は、水性塩溶液、ベニバナ油、およびエタノール、t-ブタノール、ヘキサン、またはグリコールなどの溶媒を含むが、これらに限定されない。
【0105】
カルベジロールを、本質的に不溶な液体溶媒に添加することで予備混合物を形成させることができる。表面安定剤を予備混合物中に存在させること、粒子径の減少中に存在させること、または薬剤の粒子径の減少後に薬剤分散液に添加することが可能である。
【0106】
予備混合物は、これに機械的手段を加えることで、分散液中における平均カルベジロール粒子径を所望の径に、好ましくは約5ミクロン未満に減少させることで直接、使用可能である。ボールミルを磨砕に使用する場合は、予備混合物を直接、使用することが好ましい。あるいは、カルベジロールおよび表面安定剤を、大きな凝集物が肉眼で見えなくなる均一な分散が観察されるまで、適切な攪拌によって、例えばCowles型ミキサーを使用して、液体溶媒中に分散させることができる。再循環用の媒体ミルを磨砕に使用する場合は、予備混合物を対象に、このような予備粉砕の分散段階を行うことが好ましい。
【0107】
カルベジロールの粒子径の減少に機械力を提供する有効な方法は、ボール粉砕、媒体粉砕、および例えばMicrofluidizer(登録商標)(Microfluidics Corp.)による均一化を含むが、これらに限定されない。
【0108】
磨砕時間は大きく変えることが可能であり、ならびに主に特定の機械的手段、および選択される処理条件に依存する。ボールミルの場合は、最長5日間またはこれ以上の処理時間が必要とされる場合がある。あるいは、高剪断速度の媒体ミルを使用することで、1日未満の処理時間(1分〜最長数時間の滞留時間)が可能である。
【0109】
好ましくは、カルベジロール粒子は、カルベジロールを大きく損なわない温度で径が減少される。約30℃未満〜約40℃未満の処理温度が、通常好ましい。望ましいならば処理装置を従来の冷却装置で冷却することができる。例えば、冷却液による粉砕容器の被覆(jacketing)または浸漬(immersion)による温度のコントロールが想定される。一般に本発明の方法は、大気温度の条件で、および粉砕過程に安全かつ有効な処理圧力で簡便に実施される。ボールミル、磨砕ミル、および振動ミルに対しては周囲処理圧力(ambient processing pressures)で行うのが一般的である。
【0110】
1.ナノ粒子状のカルベジロール分散物を得るための粉砕
カルベジロールを粉砕してナノ粒子状の分散物を得る方法は、カルベジロール粒子を、カルベジロールがほとんど溶解しない液体分散媒中に分散させた後に、粉砕媒体(grinding media)の存在下で機械的手段を加えて、カルベジロールの粒子径を望ましい有効平均粒子径に減少させる段階を含む。粉砕媒体は、所望の径の範囲および選択される粒子安定剤に依存して、媒体の径および組成に関して均一な場合もあれば不均一な場合もある。粉砕という用語は、粒子系内で剪断力を生じる、粒子系への入力が存在することで粒子径を減少させる任意の方法を含むと定義される。分散媒は例えば、水、ベニバナ油、エタノール、t-ブタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサン、またはグリコールの場合がある。好ましい分散媒は水である。
【0111】
カルベジロール粒子は、その径を、少なくとも1つの表面安定剤の存在下で減少させることが可能である。あるいは、カルベジロール粒子に、磨砕後に1つもしくは複数の表面安定剤を接触させることができる。希釈剤などの他の化合物を、粒子径減少過程中にカルベジロール/表面安定剤組成物に添加することができる。分散液は連続的に、またはバッチモードで作製することができる。
【0112】
本発明の1つの態様では、カルベジロールおよび1つもしくは複数の表面安定剤の混合物を、粉砕過程中に加熱する。ポリマーの表面安定剤を使用する場合は、温度をポリマー表面安定剤の曇り点以上に、ただしカルベジロールの実際の、すなわち降下した融点未満に上げる。熱の使用は、粉砕過程のスケールアップに重要な場合がある。というのは、1つもしくは複数の活性薬剤の溶解を容易にするからである。
【0113】
カルベジロールの粒子径を減少させるために加えられる機械的手段は、好都合には分散ミルの形状を取り得る。適切な分散ミルは、ボールミル、磨砕ミル、振動ミル、およびサンドミルやビーズミルなどの媒体ミルを含む。粒子径の望ましい減少を可能とするのに必要な粉砕時間が比較的短くてすむことから、媒体ミルが好ましい。媒体粉砕の場合は、予備混合物の見かけ上の粘性は、好ましくは約100〜約1000センチポアズであり、およびボール粉砕の場合は、予備混合物の見かけ上の粘性は、好ましくは約1〜約100センチポアズである。このような範囲は、効率的な粒子径の減少と媒体の目減りの間の最適なバランスを図ることが可能であるが、制限されない。
【0114】
媒体粉砕は、高エネルギーを要する粉砕過程である。カルベジロール、表面安定剤、および液体がリザーバー内に収められ、ならびに媒体および回転式シャフト/羽根車を含む容器内で再循環される。回転シャフトが媒体を攪拌し、これによってカルベジロールに嵌入するか剪断力が加わることで、カルベジロールの粒子径が減少する。
【0115】
ボール粉砕は、粉砕媒体、薬剤、安定剤、および液体を使用する低エネルギーの粉砕過程である。これらの材料は、媒体が滝のように流れ、および薬剤の粒子径を嵌入によって小さくなるように、最適速度で回転する粉砕用容器内に収められる。使用される媒体は高密度でなければならない。というのは、粒子径の減少のためのエネルギーは、重力および磨砕媒体の質量によって提供されるからである。
【0116】
粉砕媒体
粒子径減少段階用の粉砕媒体は、好ましくは球形の剛性媒体、または約3 mm未満の平均径、およびより好ましくは約1 mm未満の平均径を有する形状の粒子から選択することができる。このような媒体は望ましくは、短い処理時間が短くて粉砕装置に対する損傷が少ない本発明の粒子を提供し得る。粉砕媒体用の材料の選択は、重要であるとは考えられていない。マグネシアによって安定化された95% ZrOなどの酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、セラミック、ステンレス鋼、チタニア、アルミナ、イットリウムによって安定化された95% ZrO、およびガラス製の粉砕媒体が、例示的な粉砕用材料である。
【0117】
粉砕媒体は、好ましくは形状が実質的に球形の粒子、例えば、本質的にポリマー樹脂またはガラスまたはケイ酸ジルコニウムまたは他の適切な組成物からなるビーズを含む場合がある。あるいは粉砕媒体は、同媒体に吸着するポリマー樹脂のコーティングが施されたコアを含む場合がある。
【0118】
一般に、適切なポリマー樹脂は、化学的および物理的に不活性であり、実質的に金属、溶媒、および単量体を含まず、ならびに粉砕中の薄片化または破砕の回避を可能とする十分な硬度および摩損度を有する。適切なポリマー樹脂は、ジビニルベンゼンによって架橋されたポリスチレンなどの架橋ポリスチレン;スチレンコポリマー;ポリカーボネート;Delrin(登録商標)(E.I. du Pont de Nemours and Co.)などのポリアセタール;塩化ビニルのポリマーおよびコポリマー;ポリウレタン;ポリアミド;ポリ(テトラフルオロエチレン)、例えばTeflon(登録商標)(E.I du Pont de Nemours and Co.)、および他のフッ素重合体;高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;セルロースエーテル、および酢酸セルロースなどのエステル;ポリヒドロキシメタクリレート;ポリヒドロキシエチルアクリレート;ならびにポリシロキサンなどのシリコーン含有ポリマーなどを含む。ポリマーは生分解性の場合がある。例示的な生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ラクチドとグリコリドのポリ(グリコリド)コポリマー、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(イミノカルボネート)、ポリ(N-アシルヒドロキシプロリン)エステル、ポリ(N-パルミトイルヒドロキシプロリン)エステル、エチレン-ビニルアセテートのコポリマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、およびポリ(ホスファゼン)を含む。生分解性ポリマーの場合、媒体そのものからの混入物は、有利にはインビボで、体内から除去されうる生物学的に許容される生成物に代謝され得る。ポリマー樹脂は、約0.8〜約3.0 g/cm3の密度を有する場合がある。
【0119】
粉砕媒体は好ましくは約0.01〜約3 mmの径を有する。微細な粉砕の場合は、粉砕媒体は好ましくは約0.02〜約2 mmの径であり、より好ましくは約0.03〜約1 mmの径である。
【0120】
本発明の1つの態様では、カルベジロール粒子は連続的に作製される。このような方法は、カルベジロールを粉砕容器内に連続的に導入する段階、カルベジロールに、容器内でカルベジロールの粒子径を減少させながら粉砕媒体を接触させる段階、およびナノ粒子状のカルベジロールを粉砕容器から連続的に除去する段階を含む。
【0121】
粉砕媒体は、単純な濾過、メッシュフィルターやスクリーンによるふるいなどによる第2の過程において、粉砕されたナノ粒子状のカルベジロールから、従来の分離法で分離可能である。遠心分離などの他の分離手法を使用することもできる。あるいは、粉砕過程中にスクリーニングを利用して、粒子径減少の完了後に粉砕媒体を除去することができる。
【0122】
2.ナノ粒子状のカルベジロール組成物を得るための沈殿法
望ましいナノ粒子状のカルベジロール組成物を作製する別の方法は、ミクロ沈殿法(microprecipitation)である。これは、溶解度の低い活性薬剤の安定な分散液を、任意の微量の毒性溶媒または可溶化した重金属不純物を含まない1つもしくは複数の表面安定剤、および1つもしくは複数のコロイド状の安定性促進性の表面活性薬剤の存在下で作製する方法である。
【0123】
このような方法は例えば、以下の段階を含む:(1)カルベジロールを適切な溶媒に溶解する段階;(2)段階(1)で得られた製剤を、少なくとも1つの表面安定剤を含む溶液に添加する段階;および(3)段階(2)に由来する製剤を、適切な非溶媒を使用して沈殿させる段階。この方法には、形成された任意の塩(存在する場合)の透析またはダイアフィルトレーションによる除去、および従来の手段による分散液の濃縮を続けることができる。
【0124】
3.ナノ粒子状のカルベジロール組成物を得るための均一化
均一化は、粉砕媒体を使用しない手法である。カルベジロール、表面安定剤、および液体(またはカルベジロール、およびカルベジロールの粒子径減少後に添加された表面安定剤を含む液体)は、Microfluidizer(登録商標)ではインタラクションチャンバー(Interaction Chamber)と呼ばれるプロセスゾーン中に送込まれるプロセスストリーム(process stream)を構成する。処理対象の生成物は、ポンプ中に誘導された後に強制的に押し出される。Microfluidizer(登録商標)のプライミングバルブは、ポンプから空気を脱気する。ポンプが生成物で満たされたら、プライミングバルブを閉じて、生成物を強制的にインタラクションチャンバーに通す。インタラクションチャンバーの幾何学的配置は、カルベジロールの粒子径減少に関与する強力な剪断力、衝撃力、およびキャビテーションを発生する。具体的には、インタラクションチャンバー内では、加圧された生成物が2つの流れに分けられ、および極めて高速度に加速される。次に、生じたジェットを向かい合わせにして、インタラクションチャンバー内で衝突させる。結果として得られた生成物は極めて微細で、かつ均一な粒子または液滴の径である。Microfluidizer(登録商標)は、生成物の冷却を可能とする熱交換器も備えている。特異的に参照により組み入れられる米国特許第5,510,118号には、ナノ粒子状の活性薬剤粒子を生じるMicrofluidizer(登録商標)を使用するプロセスについて記載されている。希釈剤などの他の化合物を、カルベジロール/表面安定剤組成物に、粒子径減少の過程前、過程中、または過程後のいずれかの時点で添加することができる。分散液は連続的に、またはバッチモードで作製することができる。
【0125】
4.ナノ粒子状のカルベジロール組成物を得るための低温法
望ましいナノ粒子状のカルベジロール組成物を形成する別の方法は、液体中への噴霧凍結(「SFL」)である。この手法では、有機溶液または有機性水溶液のカルベジロールを安定剤とともに、液体窒素などの低温液体中に注入する。カルベジロール溶液の液滴は、結晶化および粒子成長を最小化するために、ひいてはナノ構造を有するカルベジロール粒子を製剤化するのに十分な速度で凍結する。溶媒系および処理条件の選択に依存して、ナノ粒子状のカルベジロール粒子は、さまざまな粒子形態を取り得る。単離段階では、窒素および溶媒が、カルベジロール粒子の凝集または成長を避ける条件で除去される。
【0126】
SFLを補う手法として、超高速凍結法(「URF」)で、表面積の極めて大きい同等のナノ構造を有するカルベジロール粒子を作製することもできる。URFは、カルベジロールの有機溶液または有機水溶液を、低温基質上の安定剤とともに含む。
【0127】
5.ナノ粒子状のカルベジロール組成物を得るためのエマルジョン法
望ましいナノ粒子状のカルベジロール組成物を作る別の方法は、テンプレートエマルジョン法である。テンプレートエマルジョン法では、粒子径の分布および速やかな溶解挙動が制御される、ナノ構造を有するカルベジロール粒子が作られる。この方法は、調製後にカルベジロールおよび安定剤を含む非水溶液によって膨潤する水中油型のエマルジョンを含む。カルベジロール粒子の粒子径の分布は、この過程で制御可能かつ最適化可能な特性をカルベジロールに付与する前のエマルジョン液滴のサイズの直接的な結果である。さらに、溶媒および安定剤を選択的に使用することで、エマルジョンの安定性がオストワルド成長なしに、またはオストワルド成長を抑えながら達成される。続いて溶媒および水が除去され、ならびに安定化されたナノ構造を有するカルベジロール粒子が回収される。さまざまなカルベジロール粒子の形状は、処理条件を適切に制御することで達成可能である。
【0128】
6.ナノ粒子状のカルベジロール組成物を得るための超臨界流体法の使用
1997年4月24日に公開された、Pace et al.による、国際公開特許出願WO 97/144407では、化合物を溶液に溶解後に、適切な表面修飾剤の存在下で、溶液を圧縮ガス、液体、または超臨界流体に吹き付けることで作製される、平均粒子径が100 nm〜300 nmの、水に不溶性の生物学的に活性のある化合物の粒子について開示されている。「超臨界流体」は、ある物質の熱力学的な臨界点を上回る温度および圧力における任意の物質である。超臨界流体の一般的な例は、二酸化炭素、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、トリフルオロメタン(フルオロホルム)、クロロトリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、アンモニア、水、シクロヘキサン、n-ペンタン、およびトルエンを含むが、これらに限定されない。
【0129】
7.ナノ粒子状のカルベジロール組成物を得るためのナノエレクトロスプレー法
エレクトロスプレーイオン化法では、液体が、極めて小さな荷電性の通常は金属製のキャピラリを通して押し出される。この液体は、通常は解析対象物より揮発性がはるかに高い多量の溶媒中に溶解した望ましい物質、例えばカルベジロール(「解析対象物」)を含む。揮発性の酸、塩基、または緩衝液が、この溶液に添加されることもある。解析対象物は、プロトン化した状態か、または陰イオンのいずれかの状態で、溶液中にイオンとして存在する。同じ電荷は反発するので、液体は、それ自体をキャピラリから押し出し、および幅が約10 μmの小さな液滴のミストまたはエアロゾルを生成する。このエアロゾル液滴のジェットは少なくとも部分的には、テイラーコーンおよび同コーンの先端に由来するジェットの形成を含む過程によって生じる。場合によっては、窒素ガスなどの中性搬送ガスが、液体を容易に霧状にするために、および小さな液滴中の中性溶媒を容易に蒸発させるために使用される。小さな液滴が蒸発して空気中に浮遊すると、荷電性の解析対象物の分子は強制的に接近する。液滴は、類似の荷電性分子が接近すると不安定となり、液滴は再び解離する。これは、クーロン分裂と呼ばれる。なぜなら、これは荷電性の解析対象物分子間に作用する反発性のクーロン力だからである。この過程そのものは、解析対象物が溶媒を含まなくなって孤立したイオンとなるまで繰り返される。
【0130】
ナノ技術では、エレクトロスプレー法で1個の粒子を、例えばカルベジロール粒子の表面に沈着させることができる。これは、コロイドを噴霧して、1個の液滴あたり平均して最高1個の粒子が確実に吹き付けられることで達成される。これに続く、周囲の溶媒の乾燥によって所望のタイプの1種類の粒子のエアロゾル流が生じる。この場合、過程のイオン化特性は本出願に重要ではないが、粒子の電気集塵に使用することができる。
【0131】
F.治療法
本発明は、本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物を使用する、高血圧、うっ血性心不全、癌、ウイルス感染、遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、および遅発性アカシジアなどの精神病関連条件などの条件、ならびに関連条件の治療法および予防法にも関する。さらに、本発明のナノ粒子状のカルベジロール組成物は、躁病エピソード、大うつ病エピソード、ならびに精神病(特に統合失調症および統合失調性感情障害)などの、ドーパミン遮断薬が使用される精神障害の治療の改善に有用である。
【0132】
例えば、ナノ粒子状のカルベジロール組成物を使用して、高血圧、うっ血性心不全、および関連条件の治療または予防が可能である。さらに、ナノ粒子状のカルベジロール組成物を使用して、結腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、黒色腫、膠芽腫、口腔癌、および白血病などの癌の治療が可能である。本発明の組成物は、癌細胞の上皮成長因子および/または血小板由来成長因子、プロテインキナーゼC(PKC)活性、および/またはシクロオキシゲナーゼ2酵素が関与する癌の治療に特に有用である。
【0133】
このような治療は、本発明のナノ粒子状のカルベジロール製剤を対象に投与する段階を含む。本明細書で用いる、「対象」という用語は、動物、好ましくはヒトまたは非ヒトを含む哺乳類を意味するように使用される。患者および対象という表現は互換的に使用される場合がある。
【0134】
注射に適した組成物は、生理学的に許容される無菌性の水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液、または乳濁液、および無菌性の注射液もしくは分散液に再生するための無菌性粉末を含む場合がある。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒、または水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、これらの適切な混合物、植物油(オリーブオイルなど)、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む溶媒の例。適切な流動性は例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することで、分散剤の場合は必要な粒子径を維持することで、および界面活性剤を使用することで維持することができる。
【0135】
ナノ粒子状組成物には、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含めることもできる。微生物の成長は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤によって確実に防ぐことができる。糖や塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい場合もある。注射可能な薬学的剤形の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの薬剤遅延吸収剤を使用することで実現可能である。
【0136】
当業者であれば、カルベジロールの有効量が実験的に決定可能であり、および純粋な状態で使用可能なこと、またはそのような形状が、薬学的に許容される塩、エステル、もしくはプロドラッグの形状で存在することを理解するであろう。本発明のナノ粒子状組成物中のカルベジロールの実際の投与量レベルは、特定の組成物および投与法に望ましい治療反応を得るのに有効なカルベジロール量を得るために変動し得る。したがって、選択される投与量レベルは、投与されるカルベジロールの望ましい治療効果、投与経路、力価、望ましい治療期間、および他の因子に依存する。
【0137】
用量単位の組成物は、1日の投与期間または他の適切な投与期間(例えば、1日おき、週に1回、週に2回、月に1回など)を構成するのに使用可能な約数の量を含む場合がある。しかしながら、任意の特定の患者に対する特異的な用量レベルが、達成される細胞反応または生理学的反応のタイプおよび規模;使用される特定の薬剤または組成物の活性;使用される特定の薬剤または組成物;患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別、および食習慣;薬剤の投与時間、投与経路、および排出速度;治療期間;特定の薬剤と組み合わせて、もしくは同時に使用される薬剤;ならびに医学分野で周知の同様の因子といった、さまざまな因子に依存することが理解されるであろう。
【0138】
以下の実施例を、本発明を説明する目的で供する。しかしながら、本発明の趣旨および範囲は、これらの実施例に記載された特定の条件または詳細に制限されず、特許請求の範囲によってのみ制限されるべきであると理解されたい。米国特許を含む、本明細書で言及された全ての参考文献は、明確に参照により本明細書に組み入れられる。
【0139】
実施例1
この実施例の目的は、ナノ粒子状のカルベジロール製剤を作製することであった。
【0140】
5%(w/w)カルベジロール(Verion, Inc. (Lionville, PA))の水性分散液を、1.25%(w/w)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL)および0.05%(w/w)ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)と混合した。次に同混合物をローラーミル(U.S. Stoneware, Mahwah, NJ)中で、0.8 mmのイットリウム処理ジルコニア媒体(Tosoh, Ceramics Division)(媒体量50%)を使用して、170 rpmで46時間かけて粉砕した。
【0141】
Leica DM5000BおよびLeica CTR 5000光源(Laboratory Instruments and Supplies Ltd., Ashbourne Co., Meath, Ireland)を使用して、粉砕済みのカルベジロール試料を顕微鏡で観察した結果、個々の粒子が良好に分散していることが判明した。この試料は、見かけ上、許容可能であった。
【0142】
粉砕後、粉砕済みのカルベジロール粒子の粒子径を、脱イオン化済みの蒸留水中で、Horiba LA 910粒子径分析装置で測定した。粉砕後の平均カルベジロール粒子径は160 nmであり、D90は228 nm未満であった。ナノ粒子状のカルベジロール分散液のpHは9.6であった。
【0143】
室温で3日間の保存後に、カルベジロール粒子は分散液中に残存しており(すなわち沈殿もしくは結晶成長は認められず)、視認可能な粒子径の拡大または凝集は認められなかった。3日後の時点で、平均カルベジロール粒子径は163 nmであり、D90は229 nm未満であった。
【0144】
次に、ナノ粒子状のカルベジロール分散液の安定性を模擬体液中で測定した。模擬体液中における検討に際しては、組成物を40℃で1時間、模擬胃液(HClおよび水を溶媒とする塩化ナトリウムおよびペプシン)中で、0.01 N HCl(胃内の典型的な酸性条件を模擬)中で、ならびに模擬腸液(リン酸2水素カリウム、水、水酸化ナトリウム、およびパンクレアチン)中でインキュベートした。結果を以下の表1に示す。
【0145】
(表1)模擬体液中におけるナノ粒子状のカルベジロール組成物の安定性

【0146】
この結果から、ナノ粒子状のカルベジロール組成物が室温で安定なことがわかる。さらに同組成物は、模擬体液中でのインキュベート時に、粒子径の有意な拡大を示さない。これらの結果から、インビボにおける生物学的利用能が優れていることが推定される。
【0147】
実施例2
この実施例の目的は、ナノ粒子状のカルベジロール製剤を作製することであった。
【0148】
5%(w/w)カルベジロール(Verion, Inc. (Lionville, PA))の水性分散液を、1.25%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および0.05%(w/w)ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)と混合した。次に同混合物をローラーミル(U.S. Stoneware, Mahwah, NJ)中で、0.8 mmのイットリウム処理ジルコニア磨砕媒体(Tosoh, Ceramics Division)(媒体量50%)を使用して粉砕した。同混合物は、170 rpmの速度で46時間かけて粉砕した。
【0149】
Leica DM5000BおよびLeica CTR 5000光源(Laboratory Instruments and Supplies Ltd., Ashbourne Co., Meath, Ireland)を使用して、ナノ粒子状のカルベジロール試料を顕微鏡で観察した結果、粒子が良好に分散していることが判明した。この試料は、見かけ上、許容可能であった。
【0150】
粉砕後、粉砕済みのカルベジロール粒子の粒子径を、脱イオン化済みの蒸留水中で、Horiba LA 910粒子径分析装置で測定した。粉砕後の平均カルベジロール粒子径は160 nmであり、D90は235 nm未満であった。粉砕後のカルベジロール分散液のpHは9.8であった。
【0151】
室温で3日間の保存後に、カルベジロール粒子は分散液中に残存しており(すなわち沈殿もしくは結晶成長は認められず)、視認可能な粒子径の拡大または凝集は認められなかった。3日後の時点で、平均カルベジロール粒子径は157 nmであり、D90は223 nm未満であった。
【0152】
次に、ナノ粒子状のカルベジロール分散液の安定性を模擬体液中で測定した。模擬体液中における検討に際しては、組成物を40℃で1時間、模擬胃液(HClおよび水を溶媒とする塩化ナトリウムおよびペプシン)中で、0.01 N HCl(胃内の典型的な酸性条件を模擬)中で、ならびに模擬腸液(リン酸2水素カリウム、水、水酸化ナトリウム、およびパンクレアチン)中でインキュベートした。結果を以下の表2に示す。
【0153】
(表2)模擬体液中におけるナノ粒子状のカルベジロール組成物の安定性

【0154】
この結果から、ナノ粒子状のカルベジロール組成物が室温で安定なことがわかる。さらに同組成物は、実施例1の手順で作製された製剤が模擬腸液中でインキュベート時に、わずかな凝集を示したのに対し、模擬体液中でのインキュベート時に、粒子径の有意な拡大を示さない。これらの結果から、インビボにおける生物学的利用能が優れていることが推定される。
【0155】
実施例3
この実施例の目的は、ナノ粒子状のカルベジロール製剤を作製することであった。
【0156】
5%(w/w)カルベジロール(Verion, Inc. (Lionville, PA))の水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)および0.05%(w/w)ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)と混合した。次に同混合物をローラーミル(U.S. Stoneware, Mahwah, NJ)中で、0.8 mmのイットリウム処理ジルコニア磨砕媒体(Tosoh, Ceramics Division)(媒体量50%)を使用して粉砕した。同混合物は、170 rpmの速度で5日間かけて粉砕した。
【0157】
Leica DM5000BおよびLeica CTR 5000光源(Laboratory Instruments and Supplies Ltd., Ashbourne Co., Meath, Ireland)を使用して、粉砕済みのカルベジロール試料を顕微鏡で観察した結果、粒子が良好に分散していることが判明した。この試料は、見かけ上、許容可能であった。
【0158】
粉砕後、粉砕済みのカルベジロール粒子の粒子径を、脱イオン化済みの蒸留水中で、Horiba LA 910粒子径分析装置で測定した。粉砕後の平均カルベジロール粒子径は107 nmであり、D90は167 nm未満であった。粉砕後のカルベジロール分散液のpHは9.2であった。
【0159】
次に、ナノ粒子状のカルベジロール分散液の安定性を模擬体液中で測定した。模擬体液中における検討に際しては、組成物を40℃で1時間、模擬胃液(HClおよび水を溶媒とする塩化ナトリウムおよびペプシン)中で、0.01 N HCl(胃内の典型的な酸性条件を模擬)中で、ならびに模擬腸液(リン酸2水素カリウム、水、水酸化ナトリウム、およびパンクレアチン)中でインキュベートした。結果を以下の表3に示す。
【0160】
(表3)模擬体液中におけるナノ粒子状のカルベジロール組成物の安定性

【0161】
この結果から、ナノ粒子状のカルベジロール組成物が、模擬体液中でのインキュベート時に、粒子径の有意な拡大を示さないことがわかる。これらの結果から、インビボにおける生物学的利用能が優れていることが推定される。
【0162】
実施例4
この実施例の目的は、ナノ粒子状のカルベジロール製剤を作製することであった。
【0163】
5%(w/w)カルベジロール(Verion, Inc. (Lionville, PA))の水性分散液を、1.25%(w/w)Pluronic(登録商標)S-630(酢酸ビニルとビニルピロリドンのランダム共重合体)および0.05%(w/w)ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)と混合した。次に同混合物をローラーミル(U.S. Stoneware, Mahwah, NJ)中で、0.8 mmのイットリウム処理ジルコニア磨砕媒体(Tosoh, Ceramics Division)(媒体量50%)を使用して粉砕した。同混合物は、170 rpmの速度で46時間かけて粉砕した。
【0164】
Leica DM5000BおよびLeica CTR 5000光源(Laboratory Instruments and Supplies Ltd., Ashbourne Co., Meath, Ireland)を使用して、ナノ粒子状のカルベジロール試料を顕微鏡で観察した結果、粒子が良好に分散していることが判明した。この試料は、見かけ上、許容可能であった。
【0165】
粉砕後、粉砕済みのカルベジロール粒子の粒子径を、脱イオン化済みの蒸留水中で、Horiba LA 910粒子径分析装置で測定した。粉砕後の平均カルベジロール粒子径は189 nmであり、D90は279 nm未満であった。粉砕後のカルベジロール分散液のpHは8.9であった。
【0166】
室温で3日間の保存後に、カルベジロール粒子は分散液中に残存しており(すなわち沈殿もしくは結晶成長は認められず)、視認可能な粒子径の拡大または凝集は認められなかった。3日間の時点で、平均カルベジロール粒子径は160 nmであり、D90は224 nm未満であった。
【0167】
次に、ナノ粒子状のカルベジロール分散液の安定性を模擬体液中で測定した。模擬体液中における検討に際しては、組成物を40℃で1時間、模擬胃液(HClおよび水を溶媒とする塩化ナトリウムおよびペプシン)中で、0.01 N HCl(胃内の典型的な酸性条件を模擬)中で、ならびに模擬腸液(リン酸2水素カリウム、水、水酸化ナトリウム、およびパンクレアチン)中でインキュベートした。結果を以下の表4に示す。
【0168】
(表4)模擬体液中におけるナノ粒子状のカルベジロール組成物の安定性

【0169】
この結果から、ナノ粒子状のカルベジロール組成物が室温で安定なことがわかる。さらに同組成物は、実施例1および3で作製された製剤が模擬腸液中でインキュベート時に、わずかな凝集を示したのに対し、模擬体液中でのインキュベート時に粒子径の有意な拡大を示さない。これらの結果から、インビボにおける生物学的利用能が優れていることが推定される。
【0170】
本発明の方法および組成物に関して、さまざまな変形および変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく成され得ることは、当業者には明らかであろう。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物に含まれる場合に、本発明の変形および変更を許容することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、安定なナノ粒子状のカルベジロール(carvedilol)組成物:
(a)約2000 nm未満の有効平均粒子径を有する、カルベジロール、その塩、またはその光学活性異性体の粒子;および
(b)少なくとも1つの表面安定剤。
【請求項2】
カルベジロールが、結晶相、非晶相、半結晶相、半非晶相、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ナノ粒子状のカルベジロール粒子の有効平均粒子径が、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約990 nm未満、約980 nm未満、約970 nm未満、約960 nm未満、約950 nm未満、約940 nm未満、約930 nm未満、約920 nm未満、約910 nm未満、約900 nm未満、約890 nm未満、約880 nm未満、約870 nm未満、約860 nm未満、約850 nm未満、約840 nm未満、約830 nm未満、約820 nm未満、約810 nm未満、約800 nm未満、約790 nm未満、約780 nm未満、約770 nm未満、約760 nm未満、約750 nm未満、約740 nm未満、約730 nm未満、約720 nm未満、約710 nm未満、約700 nm未満、約690 nm未満、約680 nm未満、約670 nm未満、約660 nm未満、約650 nm未満、約640 nm未満、約630 nm未満、約620 nm未満、約610 nm未満、約600 nm未満、約590 nm未満、約580 nm未満、約570 nm未満、約560 nm未満、約550 nm未満、約540 nm未満、約530 nm未満、約520 nm未満、約510 nm未満、約500 nm未満、約490 nm未満、約480 nm未満、約470 nm未満、約460 nm未満、約450 nm未満、約440 nm、約430 nm未満、約420 nm未満、約410 nm未満、約400 nm未満、約390 nm未満、約380 nm未満、約370 nm未満、約360 nm未満、約350 nm未満、約340 nm未満、約330 nm未満、約320 nm未満、約310 nm未満、約300 nm未満、約290 nm未満、約280 nm未満、約270 nm未満、約260 nm未満、約250 nm未満、約240 nm未満、約230 nm未満、約220 nm未満、約210 nm未満、約200 nm未満、約190 nm未満、約180 nm未満、約170 nm未満、約160 nm未満、約150 nm未満、約140 nm未満、約130 nm未満、約120 nm未満、約110 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、および約50 nm未満からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
「有効平均粒子径」が、平均、D50、D60、D70、D80、D90、D95、およびD99の粒子径からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、以下のように製剤化される、請求項1記載の組成物:
(a)経口投与、肺内投与、直腸内投与、眼内(ophthalmic)投与、結腸内投与、非経口投与、大槽内投与、膣内投与、腹腔内投与、局所投与、舌下投与、鼻内投与、耳内投与、および局所投与からなる群より選択される投与用;
(b)液体分散剤、経口懸濁物、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム剤、錠剤、カプセル剤からなる群より選択される投与剤形;
(c)放出制御型の製剤、即時溶解型の製剤、凍結乾燥型の製剤、遅延放出型の製剤、持続放出型の製剤、パルス放出型の製剤、および即時放出と放出制御の混合型の製剤からなる群より選択される投与剤形;または
(d)それらの任意の組み合わせ。
【請求項6】
カルベジロール組成物が、放出制御型の投与剤形に製剤化される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
以下である、請求項1記載の組成物:
(a)カルベジロールが、他の賦形剤を含まないカルベジロールおよび少なくとも1つの表面安定剤の全総合重量に対して、重量比で約99.5%〜約0.001%、約95%〜約0.1%、および約90%〜約0.5%からなる群より選択される量で存在するか;
(b)少なくとも1つの表面安定剤が、他の賦形剤を含まないカルベジロールおよび少なくとも1つの表面安定剤の全総合乾燥重量に対して、重量比で約0.5%〜約99.999%、重量比で約5.0%〜約99.9%、および重量比で約10%〜約99.5%からなる群より選択される量で存在するか;または
(c)(a)および(b)の組み合わせ。
【請求項9】
少なくとも1つの表面安定剤が、非イオン性表面安定剤、イオン性表面安定剤、陰イオン性表面安定剤、陽イオン性表面安定剤、および両性イオン性表面安定剤からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの表面安定剤が、アルブミン、ヒト血清アルブミン、ウシアルブミン、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド、デキストラン、グリセロール、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化シリコン、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸化エチレンおよびホルムアルデヒドを含む4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー、ポロキサマー;ポロキサミン、荷電性リン脂質、ジオクチルスルホサクシネート、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホン酸アルキルアリールポリエーテル、ステアリン酸ショ糖とジステアリン酸ショ糖の混合物、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチルβ-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチルβ-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;リゾチーム、PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、酢酸ビニルとビニルピロリドンのランダム共重合体、陽イオン性ポリマー、陽イオン性生体ポリマー、陽イオン性多糖、陽イオン性セルロース誘導体、陽イオン性アルギン酸塩、陽イオン性非ポリマー化合物、陽イオン性リン脂質、陽イオン性脂質、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド、スルホニウム化合物、ポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートのジメチル硫酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ホスホニウム化合物、四級アンモニウム化合物、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロライド、ココナツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロライド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライドブロミド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、C12-15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライドブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロライド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムブロミド、N-アルキル(C12-18)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、N-アルキル(C14-18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロライド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロライド、N-アルキルおよび(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロライド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド一水和物、N-アルキル(C12-14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12トリメチルアンモニウムブロミド、C15トリメチルアンモニウムブロミド、C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロライド、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウム、トリセチルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物、臭化セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハライド塩、MIRAPOL(商標)、ALKAQUAT(商標)、アルキルピリジニウム塩;アミン、アミン塩、アミンオキシド、イミドアゾリニウム塩、プロトン化四級アクリルアミド、メチル化四級ポリマー、ならびにカチオン化グアーからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
投与後の哺乳類対象の血漿において解析した場合のカルベジロールのAUCが、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤のAUCより大きい、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
投与後の哺乳類対象の血漿において解析した場合のカルベジロールのCmaxが、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤のCmaxより大きい、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
投与後の哺乳類対象の血漿において解析した場合のカルベジロールのTmaxが、同じ投与量で投与された非ナノ粒子状のカルベジロール製剤のTmaxより小さい、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、絶食状態と比較して、摂食状態のヒトへの投与時に類似の吸収速度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
組成物が、絶食状態のヒト対象への投与と比較して、摂食状態のヒト対象への投与時に生物学的同等性を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
生物学的同等性が、以下によって定められる、請求項15記載の組成物:
(a)AUCに関する90%信頼区間が80%〜125%である;および
(b)Cmaxに関する90%信頼区間が80%〜125%である。
【請求項17】
投与時に、カルベジロール粒子が約2ミクロン未満の有効平均粒子径に分散する固体投与剤形に製剤化される、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
再分散したカルベジロールの粒子径が、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約990 nm未満、約980 nm未満、約970 nm未満、約960 nm未満、約950 nm未満、約940 nm未満、約930 nm未満、約920 nm未満、約910 nm未満、約900 nm未満、約890 nm未満、約880 nm未満、約870 nm未満、約860 nm未満、約850 nm未満、約840 nm未満、約830 nm未満、約820 nm未満、約810 nm未満、約800 nm未満、約790 nm未満、約780 nm未満、約770 nm未満、約760 nm未満、約750 nm未満、約740 nm未満、約730 nm未満、約720 nm未満、約710 nm未満、約700 nm未満、約690 nm未満、約680 nm未満、約670 nm未満、約660 nm未満、約650 nm未満、約640 nm未満、約630 nm未満、約620 nm未満、約610 nm未満、約600 nm未満、約590 nm未満、約580 nm未満、約570 nm未満、約560 nm未満、約550 nm未満、約540 nm未満、約530 nm未満、約520 nm未満、約510 nm未満、約500 nm未満、約490 nm未満、約480 nm未満、約470 nm未満、約460 nm未満、約450 nm未満、約440 nm未満、約430 nm未満、約420 nm未満、約410 nm未満、約400 nm未満、約390 nm未満、約380 nm未満、約370 nm未満、約360 nm未満、約350 nm未満、約340 nm未満、約330 nm未満、約320 nm未満、約310 nm未満、約300 nm未満、約290 nm未満、約280 nm未満、約270 nm未満、約260 nm未満、約250 nm未満、約240 nm未満、約230 nm未満、約220 nm未満、約210 nm未満、約200 nm未満、約190 nm未満、約180 nm未満、約170 nm未満、約160 nm未満、約150 nm未満、約140 nm未満、約130 nm未満、約120 nm未満、約110 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、および50 nm未満からなる群より選択される、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
カルベジロールの再分散粒子が約2000 nm未満の有効平均粒子径を有するように、カルベジロール粒子が生物関連溶媒中に再分散する固体投与剤形に製剤化される、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
カルベジロールの再分散粒子が、約1900 nm未満、約1800 nm未満、約1700 nm未満、約1600 nm未満、約1500 nm未満、約1400 nm未満、約1300 nm未満、約1200 nm未満、約1100 nm未満、約1000 nm未満、約990 nm未満、約980 nm未満、約970 nm未満、約960 nm未満、約950 nm未満、約940 nm未満、約930 nm未満、約920 nm未満、約910 nm未満、約900 nm未満、約890 nm未満、約880 nm未満、約870 nm未満、約860 nm未満、約850 nm未満、約840 nm未満、約830 nm未満、約820 nm未満、約810 nm未満、約800 nm未満、約790 nm未満、約780 nm未満、約770 nm未満、約760 nm未満、約750 nm未満、約740 nm未満、約730 nm未満、約720 nm未満、約710 nm未満、約700 nm未満、約690 nm未満、約680 nm未満、約670 nm未満、約660 nm未満、約650 nm未満、約640 nm未満、約630 nm未満、約620 nm未満、約610 nm未満、約600 nm未満、約590 nm未満、約580 nm未満、約570 nm未満、約560 nm未満、約550 nm未満、約540 nm未満、約530 nm未満、約520 nm未満、約510 nm未満、約500 nm未満、約490 nm未満、約480 nm未満、約470 nm未満、約460 nm未満、約450 nm未満、約440 nm未満、約430 nm未満、約420 nm未満、約410 nm未満、約400 nm未満、約390 nm未満、約380 nm未満、約370 nm未満、約360 nm未満、約350 nm未満、約340 nm未満、約330 nm未満、約320 nm未満、約310 nm未満、約300 nm未満、約290 nm未満、約280 nm未満、約270 nm未満、約260 nm未満、約250 nm未満、約240 nm未満、約230 nm未満、約220 nm未満、約210 nm未満、約200 nm未満、約190 nm未満、約180 nm未満、約170 nm未満、約160 nm未満、約150 nm未満、約140 nm未満、約130 nm未満、約120 nm未満、約110 nm未満、約100 nm未満、約75 nm未満、および約50 nm未満からなる群より選択される有効平均粒子径を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
1つまたは複数の非カルベジロール活性薬剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
1つまたは複数の非カルベジロール活性薬剤が、降圧薬、うっ血性心不全の治療に有用な活性薬剤、および心疾患の治療に有用な活性薬剤からなる群より選択される、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
1つまたは複数の非カルベジロール活性薬剤が、ジゴキシン、硝酸塩、利尿剤、ベータブロッカー、アルファブロッカー、アルファ-ベータブロッカー、交感神経阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムチャネルブロッカー、およびアンジオテンシン受容体ブロッカーからなる群より選択される、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
以下の段階を含む、ナノ粒子状のカルベジロール組成物を作製する方法:
カルベジロールの粒子、その光学活性異性体、またはその塩に、少なくとも1つの表面安定剤を、約2ミクロン未満の有効平均粒子径を有するカルベジロール組成物を提供するのに十分な時間および条件下で接触させる段階。
【請求項25】
接触させる段階が、粉砕(milling)、湿式粉砕、均一化、沈殿、蒸発、凍結、超臨界流体粒子生成法、テンプレートエマルジョン法、ナノエレクトロスプレー法、またはそれらの組み合わせを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
以下を含む有効量の組成物を必要とする対象に投与する段階を含む、高血圧を治療または予防する方法:
(a)約2ミクロン未満の有効平均粒子径を有するカルベジロールのナノ粒子;
(b)少なくとも1つの表面安定剤;および
(c)少なくとも1つの薬学的に許容される担体。
【請求項27】
以下を含む有効量の組成物を必要とする対象に投与する段階を含む、うっ血性心不全を治療する方法:
(a)約2ミクロン未満の有効平均粒子径を有するカルベジロールのナノ粒子;
(b)少なくとも1つの表面安定剤;および
(c)少なくとも1つの薬学的に許容される担体。

【公表番号】特表2009−528349(P2009−528349A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557272(P2008−557272)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003479
【国際公開番号】WO2007/100466
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】