説明

ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーおよび塗料への該シリコーンオルガノコポリマーの使用

本発明の対象は、
B)エチレン系不飽和のラジカル重合可能な基で官能化されている、1000nm以下の平均直径を有する少なくとも1つの粒子Pの存在下で、
但し、この場合B1)粒子Pとして金属酸化物および半金属酸化物の群からの1つ以上の前記酸化物が使用され、および/または
B2)粒子Pとして一般式[R4(p+z)SiO(4-p-z)/2m (II)〔式中、個々の基R4は、それぞれ互いに独立に水素、ヒドロキシ基、ならびに場合によっては置換されていてよい、それぞれ18個までのC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、この場合mは、30以上の整数を表わし、この場合それぞれのシリコーン樹脂少なくとも20モル%に対してp+z=0、1または3である〕で示されるシリコーン樹脂が使用されるものとし、
水性媒体中でのラジカルにより開始された重合および場合によってはその際に得られたポリマー分散液の引続く乾燥により得られた、
A)ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、1,3−ジエン、ビニルエーテルおよびビニルハロゲン化物を含む群からの1つ以上のモノマー、および場合によってはこのモノマーと共重合可能なモノマーからの、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの水性ポリマー分散液の形または水中で分散可能なポリマー粉末の形のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーであり、この前記のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーは、
C)一般式R93SiO−[R82SiO2/2n−SiR93 (III)〔式中、個々の基R8およびR9は、それぞれ互いに独立に、場合によっては置換されていてよい、ヒドロキシ基、それぞれ18個までのC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、この場合基R9の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、nは、100以下の整数を表わす〕で示される1つ以上の直鎖状ポリジオルガノシロキサンが共重合されており、
この場合B1)、B2)およびC)は、それぞれ一般式(R1O)3-k(R2kSi(CR32)−X〔式中、R1は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表わし、R2およびR3は、それぞれ互いに独立に水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表わし、kは、0、1または2の値を表わすことができ、Xは、エチレン系不飽和基を有する、2〜20個の炭化水素原子を有する基である〕で示される1つ以上のα−オルガノシランで官能化されていることによって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性分散液または水中に分散可能な粉末の形のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー、その製造法ならびに殊に絶縁複合材料系を製造するための、塗料中への該シリコーンオルガノコポリマーの使用に関する。
【0002】
絶縁複合材料系(WDVS)は、建築物、殊に建築物の外壁の絶縁にとって著しく重要である。WDVSは、通常、絶縁材料、プラスター層ならびに塗料、例えばペイント塗料での塗膜を含む。通常の絶縁材料は、ガラスウール、またはポリスチレンを基礎とする板である。WDVSのための下地は、例えば煉瓦、石灰質砂岩またはコンクリートである。絶縁材料上には、通常モルタルを基礎とするプラスター層が施されうる。更に、最上層としてWDVSは、塗料での塗膜を含む。建築物表面とWDVSとからなる全ての複合体は、断熱複合体ファッサードとも呼称される。建築物の熱損失は、WDVSによって減少される。WDVSの絶縁特性は、本質的にWDVSが劣悪な熱伝導率を有する少なくとも1つの成分、例えば空気細孔を含む成分を含有することに基づく。
【0003】
しばしば、WDVS中には、露水によって損傷が生じる。露水は、WDVSが環境空気によって、例えばWDVSの空気細孔中に存在する空気の露点が達成されるかまたは前記露点を下廻り、したがって水が凝縮する程度の強さに冷却される場合にWDVS中で発生しうる。WDVS中で生じた露水を蒸発させ、および最終的にWDVSから遊離させるために、例えば、WDVS中への日光の入射によって搬入される熱がもはや十分ではない場合、露水の発生は、殊に寒気の季節の問題で処理される。
【0004】
露水は、WDVSの耐候試験、例えば絶縁材料の十分な湿潤、WDVSの成分、引続き凍結する露水の成分の藻類の生長または剥げ落ちを生じ、したがって、WDVSは、断熱能の点で制限され、最終的に除去されなければならないかまたは完全に修復されなければならない程度に損傷される。
【0005】
従って、WDVSを、WDVS中での露水の捕集または環境からWDVS中への水の導入が阻止される程度に形成させることは、重要である。
【0006】
外部ファッサードまたはWDVS中への水の導入を阻止するために、塗料は、これまでしばしば疎水性添加剤としての有機珪素化合物で変性される。即ち、欧州特許出願公開第0791566号明細書は、鉱物質建築材料の疎水化のためにアルコキシシランおよび場合によってはアルコキシ官能性オルガノポリシロキサンを基礎とする塗料を推奨している。ドイツ連邦共和国特許出願公開第1076946号明細書には、多孔質の建築材料を疎水化するために添加剤としてのアルキルアルコキシシランおよびエチレングリコールを基礎とするオルガノポリシロキサンの使用が教示されている。例は、シリコーン樹脂塗料またはシリコーンで変性されたケイ酸塩塗料または分散液塗料でもある。この種の変性された塗料の適用は、被覆された建築材料を生じ、この建築材料の表面ならびに該表面と結合された、該建築材料の毛管は、疎水化されている。従って、相応して製造されたWDVSは、表面疎水性および毛管疎水性であり、したがって、例えばWDVS中で水蒸気の形で生じた露水は、疎水化された塗膜によって弾き返され、水滴の形でWDVS中に捕集される。水滴は、薄手の水フィルムと比較して僅かな表面積を有し、それに応じてよりいっそう緩徐に蒸発する。
【0007】
更に、毛管疎水性の塗膜は、水蒸気に対して高い拡散抵抗を形成し、したがって相応する疎水化されたWDVSからの露水の遊離は、困難になる。これとは異なり、WDVSの場合には、水蒸気のための拡散抵抗は、WDVSの空気側に向かって減少し、WDVSからの水蒸気の逃出を簡易化する。
【0008】
欧州特許出願公開第1833867号明細書には、例えばエチレン系不飽和モノマーおよびエチレン系官能化ナノ粒子を基礎とするコポリマーを建築材料のための塗料として使用することが記載されている。しかし、それによって得られた塗膜は、水で湿潤するにはなお不十分である。その上、上記刊行物中に記載されたコポリマーは、高度には透明でなく、このことは、数多くの使用範囲で塗料に対する重要な要件を表わす。
【0009】
前記の背景に対して、塗料中への透明なポリマーの使用が、塗膜中への水の導入が阻止される程度に疎水化され、同時に、塗膜が水によって湿潤可能である程度に親水化されている塗膜が得られる透明なポリマーを提供するという課題が課された。
【0010】
意外なことに、直鎖状ポリジオルガノシロキサンの単位を含有するナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーを用いると、本発明による課題の解決のために必要とされる方法で親水性と疎水性の対立する性質を同時に併せ持つ塗料が得られる。
【0011】
本発明の対象は、
B)エチレン系不飽和のラジカル重合可能な基で官能化されている、1000nm以下の平均直径を有する少なくとも1つの粒子Pの存在下で、
但し、この場合B1)粒子Pとして金属酸化物および半金属酸化物の群からの1つ以上の前記酸化物が使用され、および/または
B2)粒子Pとして一般式[R4(p+z)SiO(4-p-z)/2m (II)〔式中、個々の基R4は、それぞれ互いに独立に水素、ヒドロキシ基、ならびに場合によっては置換されていてよい、それぞれ18個までのC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、mは、30以上の整数を表わし、この場合それぞれのシリコーン樹脂少なくとも20モル%に対してp+z=0、1または3である〕で示されるシリコーン樹脂が使用されるものとし、
A)ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、1,3−ジエン、ビニルエーテルおよびビニルハロゲン化物を含む群からの1つ以上のモノマー、および場合によってはこのモノマーと共重合可能なモノマーからの、水性媒体中でのフリーラジカルにより開始された重合および場合によってはその際に得られたのポリマー分散液の引続く乾燥により得られた、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの水性ポリマー分散液の形または水中で再分散可能なポリマー粉末の形のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーであり、このナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーは、
C)一般式R93SiO−[R82SiO2/2n−SiR93 (III)〔式中、個々の基R8およびR9は、それぞれ互いに独立に、場合によっては置換されていてよい、ヒドロキシ基、それぞれ18個までのC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、この場合基R9の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、nは、100以下の整数を表わす〕で示される1つ以上の直鎖状ポリジオルガノシロキサンが共重合されており、
この場合B1)、B2)およびC)は、それぞれ一般式(R1O)3-k(R2kSi(CR32)−X〔式中、R1は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表わし、R2およびR3は、それぞれ互いに独立に水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表わし、kは、0、1または2の値を表わすことができ、Xは、エチレン系不飽和基を有する、2〜20個の炭化水素原子を有する基である〕で示される1つ以上のα−オルガノシランで官能化されていることによって特徴付けられる。
【0012】
適したビニルエステルは、C原子1〜15個を有するカルボン酸のビニルエステルである。好ましいのは、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート、ビニルピバレート、および9〜11個のC原子を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)またはVeoVa10(登録商標)(Resolutions社の商品名)である。特に好ましいのは、酢酸ビニルである。
【0013】
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの群からの適したモノマーは、1〜15個のC原子を有する非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコールのエステルである。好ましいメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびノルボルニルアクリレートである。特に好ましいのは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびノルボルニルアクリレートである。
【0014】
ビニル芳香族化合物として好ましいのは、スチレン、α−メチルスチレン、異性体ビニルトルエンおよびビニルキシレンならびにジビニルベンゼンである。特に好ましいのは、スチレンである。
【0015】
ビニルハロゲン化合物は、塩化ビニル、塩化ビニリデン、さらにテトラフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ヘキシルペルフルオロエチレン、3,3,3−トルフルオロプロペン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンおよびフッ化ビニルを挙げることができる。特に好ましいのは、塩化ビニルである。好ましいビニルエーテルは、例えばメチルビニルエーテルである。
【0016】
好ましいオレフィンは、エテン、プロペン、1−アルキルエテンならびにポリ不飽和アルケンであり、好ましいジエンは、1,3−ブタジエンおよびイソプレンである。特に好ましいのは、エテンおよび1,3−ブタジエンである。
【0017】
モノマーA)として、場合によっては1つ以上のエチレン系不飽和モノカルボン酸またはエチレン系不飽和ジカルボン酸、エチレン系不飽和スルホン酸またはこれらの塩は、特にモノマーA)の全質量に対して0.1〜5質量%が共重合されてよい。好ましいモノカルボン酸またはジカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸である。好ましいスルホン酸は、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。エチレン系不飽和モノカルボン酸またはエチレン系不飽和ジカルボン酸、またはスルホン酸の使用は、水性分散液の安定化またはナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーのポリマー粉末の再分散を生じる。
【0018】
場合によっては、モノマーA)の全質量に対して、補助モノマー0.1〜5質量%がさらに共重合されてよい。有利には、補助モノマー0.5〜2,5質量%が使用される。補助モノマーの例は、エチレン系不飽和カルボン酸アミドおよびエチレン系不飽和カルボン酸ニトリル、特にアクリルアミドおよびアクリルニトリル;フマル酸およびマレイン酸のモノエステルおよびジエステル、例えばジエチルエステルおよびジイソプロピルエステルならびに無水マレイン酸である。更なる例は、前架橋性のコモノマー、例えばポリエチレン系不飽和のコモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、またはトリアリルシアヌレート、または後架橋性のコモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテルまたはN−メチロールアクリルアミドエステル、N−メチロールメタクリルアミドエステルおよびN−メチロールアリルカルバメートエステルである。エポキシ官能性コモノマー、例えばグリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートも適している。ヒドロキシ基またはCO基を有するモノマー、例えばメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよびアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシブチルアクリレート、またはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはヒドロキシブチルメタクリレート、ならびにジアセトンアクリルアミドおよびアセチルアセトキシエチルアクリレートまたはアセチルアセトキシエチルメタクリレートのような化合物も挙げられる。
【0019】
モノマーA)として、ビニルアセテート、9〜11個のC原子を有するα−分枝鎖状モノカルボン酸、塩化ビニル、エチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、1,3−ブタジエンが特に好ましい。モノマーA)として、ビニルアセテートとエチレンとの混合物;ビニルアセテートとエチレンと9〜11個のC原子を有するα−分枝鎖状モノカルボン酸のビニルエステルとの混合物;n−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートおよび/またはメチルメタクリレートとの混合物;スチレンとメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの群からの1つ以上のモノマーとの混合物;ビニルアセテートとメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの群からの1つ以上のモノマーと場合によってはエチレンとの混合物;1,3−ブタジエンとスチレンおよび/またはメチルメタクリレートとの混合物も特に好ましく、この場合記載された混合物は、場合によっては上記のエチレン系不飽和モノカルボン酸またはエチレン系不飽和ジカルボン酸の1つ以上、エチレン系不飽和スルホン酸またはこれらの塩、または補助モノマーをさらに含有していてよい。
【0020】
この場合、モノマーの選択またはモノマーの質量含量の選択は、一般に60℃以下、特に−50℃〜+60℃のガラス転移温度が生じるように行なわれる。ポリマーのガラス転移温度Tgは、公知方法で示差走査熱分析(DSC)により算出されることができる。Tgは、フォックス(Fox)の方程式により近似的に見積もることもできる。Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,第123頁(1956)によれば、次のものが当てはまる:1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+...+xn/Tgn、この場合xnは、モノマーnの質量分数(質量%/100)を表わし、Tgnは、モノマーnのホモポリマーのケルビンでのガラス転移温度である。ホモポリマーのTg値は、Polymer Handbook 2nd Edition,J.Wiley & Sons,New Yorl(1975)中に記載されている。
【0021】
モノマーA)の割合は、それぞれナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーを製造するための成分A)、B)およびC)の全質量に対して特に50質量%以上、特に有利に70〜92質量%である。
【0022】
適当な粒子Pは、酸化珪素および金属酸化物の群B1)からの粒子である。金属酸化物の場合、金属のアルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、亜鉛および錫の酸化物が好ましい。酸化珪素の場合、コロイド状ケイ酸、熱分解法ケイ酸、沈降ケイ酸、シリカゾルが特に好ましい。金属酸化物の場合、酸化アルミニウム、例えばコランダム、別の金属および/または珪素とのアルミニウム混合酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄が特に好ましい。
【0023】
シリコーン樹脂の群からの好ましい粒子Pは、少なくとも30モル%がQ単位から構成され、即ち一般式(II)の繰返し単位[R4(p+z)SiO(4-p-z)/2]中のp+zが0の意味を有する粒子である。特に好ましいシリコーン樹脂は、M単位およびQ単位だけから構成され、即ち一般式(II)の繰返し単位[R4(p+z)SiO(4-p-z)/2]中のp+zが0および3の意味だけを有する粒子である。基R4が置換されている場合には、この基は、付加的にO原子、S原子、Si原子、Cl原子、F原子、Br原子、P原子またはN原子から選択された1個以上の同一かまたは異なるヘテロ原子を含有することができる。更に、M単位(R3SiO−)、D単位(−OSiR2O−)、T単位(RSiO33-)およびQ単位(SiO44-)の任意の組合せからなるシリコーン樹脂が適当であり、但し、常にT単位および/またはQ単位が含有されており、シリコーン樹脂を構成する単位に対する前記T単位および/またはQ単位の割合は、総和で少なくとも20モル%であり、それぞれ前記単位の1つだけが存在する場合には、この単位の割合は、それぞれ少なくとも20モル%である。
【0024】
最も好ましいシリコーン樹脂B2)は、本質的にM単位およびQ単位だけから構成されるシリコーン樹脂であり、この場合M/Q単位のモル比は、30/70〜60/40に達し、殊に好ましいのは、35/65〜45/55のM/Q比を有する樹脂である。更に、最も好ましい樹脂は、大部分がT単位かたなる樹脂、殊に80モル%超がT単位からなる樹脂、殊に有利に実際に100モル%がT単位からなる樹脂である。
【0025】
mは、一般式(II)中で特に30〜100、特に有利に30〜70、殊に有利に30〜50の値を取る。
【0026】
粒子Pは、有利に1〜1000nm、特に有利に1〜100nmの平均直径を有し、この場合粒度は、得られた分散液または分散液から得られたフィルムの透過電子顕微鏡法によって測定される。
【0027】
α−オルガノシランは、アルコキシ置換、アリールオキシ置換またはOH置換された珪素原子が直接にメチレン橋により、1個以上のエチレン系不飽和炭素結合を有する不飽和炭化水素基と結合されているシランであり、この場合このメチレン橋の水素基は、アルキル基および/またはアリール基によって置換されていてよく、C=C−二重結合は、Si原子に対してα位に存在する。
【0028】
また、式(R1O)2-k(R2kSi−(CR32)−X (I)の適当なα−オルガノシランは、基R1、R2およびR3の炭素鎖が隣接していない酸素基、硫黄基またはNR4基によって中断されているオルガノシランである。基R1およびR2として1〜6個のC原子を有する置換されていないアルキル基は、好ましく、および基R3として水素は、好ましい。基Xは、直鎖状、分枝鎖状または環状であることができる。更に、二重結合と共に、一般にオレフィン系重合に対して不活性である官能基、例えばハロゲン基、カルボキシ基、スルフィナト基、スルホナト基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、エポキシ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、チオエーテル基およびチオエステル基ならびに芳香族イソ環式基およびヘテロ環式基が存在していてもよい。Xの好ましい例は、モノ不飽和C2〜C10基であり、最も好ましいのは、基Xとしてアクリル基およびメタクリル基である。
【0029】
α−オルガノシランでの官能化と共に、γ−オルガノシラン(珪素原子は、1個のプロピレン橋により不飽和炭化水素基と結合している)またはビニルオルガノシランH2C=CH−SiX3(この場合、Xは、それぞれ互いに独立にアルキル基またはアルコキシ基である)で官能化されている成分B)も適当であることが指摘される。
【0030】
モノマーB)の割合は、それぞれナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーを製造するための成分A)、B)およびC)の全質量に対して特に0.5〜49.9質量%以上、有利に1〜30質量%、特に有利に4〜20質量%である。
【0031】
好ましい直鎖状ポリジオルガノシロキサンC)の例は、一般式R93SiO−[R82SiO2/2n−SiR93の直鎖状単官能性シリコーン油であり、この場合基R8は、それぞれ1個の炭素原子によりシロキサン鎖のそれぞれの珪素原子に結合され、シロキサン鎖の2個の末端珪素原子の1つは、1個の炭素原子により結合された3個の基R9を有し、別の末端珪素原子は、1個の炭素原子により結合された2個の基R9および1個の炭素原子により結合された1個の基R9を有し、この場合には、上記されたような一般式(R1O)3k(R2kSi−(CR32)−X (I)のα−オルガノシランとの反応能を有するヒドロキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基が問題である。
【0032】
直鎖状ポリジオルガノシロキサンC)の官能化には、成分B)に対して相応して記載されている同一のオルガノシランが適しているかまたは好ましい。
【0033】
式IIIにおいて、nは、特に1〜40、特に有利に1〜25、殊に有利に1〜10の整数である。
【0034】
式IIIにおいて、基R8は、特にメチル、フェニルまたは水素、特に有利にメチルを表わす。基R9は、特にメチル、フェニル、水素、メチルオキシ、フェニルオキシおよびヒドロキシを含む群、特に有利にメチルおよびメチルオキシを含む群から選択されたものである。
【0035】
α−オルガノシランで官能化されている好ましいポリジオルガノシロキサンC)の例は、特に1〜60、特に有利に1〜40、殊に有利に1〜20の値n(1H−NMR分光分析法により測定した)を有するα−メタクリルオキシメチルポリジメチルシロキサンおよびα−メタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサンである。
【0036】
ポリジオルガノシロキサンC)の割合は、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの製造のために、それぞれ成分A)、B)およびC)の全質量に対して特に0.1〜10質量%、特に有利に0.1〜7質量%、殊に有利に0.1〜5質量%である。
【0037】
成分A)、B)およびC)と共に、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーは、成分A)、B)およびC)の全質量に対して一般式(R54-j−Si−(OR6j (IV)で示される少なくとも1つのシランをなお30質量%まで含有することができ、上記式中、jは、1、2、3または4の値の中の1つの数を表わし、R5は、それぞれ1〜12個のC原子を有するアルコキシ基およびアリールオキシ基、ホスホン酸モノエステル基、ホスホン酸ジエステル基、ホスホン酸基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアナト基、但し、この場合このイソシアナト基は、場合によっては化学反応からの保護のために反応遮断されていてよく、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリシジルオキシ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、1個以上の窒素原子を有する第1アミノ基、第2アミノ基または第3アミノ基、但し、この場合窒素原子は、水素または1価の芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素基によって置換されていてよいものとし、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、アルデヒド基、ウレタン基、尿素基の群から選択された有機官能基であり、この場合基R5は、直接に珪素原子に結合されていてよいか、または1〜6個のC原子の炭素鎖によって珪素原子と分離されていてよく、R6は、それぞれ1〜12個のC原子を有する1価の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族または脂環式炭化水素基または1価の芳香族炭化水素基を表わすか、または基−C(=O)−R7を表わし、この場合R7は、それぞれ1〜12個のC原子を有する1価の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族または脂環式炭化水素基または1価の芳香族炭化水素基を表わす。選択されたシランまたは場合によっては選択されたシランは、加水分解されていない形、加水分解された形または加水分解されかつ部分的に縮合された形または加水分解されかつ縮合された形、または前記形の混合形で存在することができる。
【0038】
ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー内での粒子ドメインの平均直径は、特に1nm〜1000nm、殊に1nm〜500nm、殊に有利に1nm〜200nmの範囲内である。この平均直径は、例えばナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの水性分散液またはポリマーフィルムを手動で走査電子顕微鏡検査または透過電子顕微鏡検査することによって測定することができる。
【0039】
更に、ミニエマルジョン重合の場合には、場合によってはなお疎水性添加剤が成分A)、B)およびC)の全質量に対して3質量%までの量で存在していてよい(いわゆる、"共界面活性剤"、"疎水化剤")。本発明の場合には、シリコーン粒子は、しばしば"共界面活性剤"の機能を受け継ぐことができる。更に、共界面活性剤の例は、ヘキサデカン、セチルアルコール、パラフィン、オリゴマーのシクロシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンであるが、しかし、植物油、例えばナタネ油、ヒマワリ油またはオリーブ油でもある。更に、10000未満の数平均分子量を有する有機または無機ポリマーが適している。本発明によれば、好ましい疎水化剤は、重合すべきシリコーン粒子それ自体、ならびにD3環状化合物、D4環状化合物およびD5環状化合物、ならびにヘキサデカンである。特に好ましいのは、重合すべきシリコーン粒子、パラフィンおよびヘキサデカンである。
【0040】
コポリマーは、異相プロセスで懸濁重合、乳化重合またはミニエマルジョン重合の公知技術により製造される(例えば、Peter A. Lovell, M.S. El-Aasser, "Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers" 1997, John Wiley and Sons, Chichester参照)。この反応は、特に好ましい形でミニエマルジョン重合の方法により実施される。ミニエマルジョン重合は、共重合のために水不溶性モノマーが特に好適であるという若干の本質的な点で別の異相重合と区別される(例えば、K. Lnadfester, "Polyreactions in Miniemulsions", Macromol. Rapid. Commun. 2001, 22, 896-936およびM. S. El-Aasser, E.D. Sudol, "Miniemulsions: Overview of Research and Applications" 2004, JCT Research, 1, 20-31参照)。
【0041】
反応温度は、0℃〜100℃、有利に5℃〜80℃、特に有利に30℃〜70℃である。分散媒体のpH値は、2〜9、有利に4〜8である。特に好ましい実施態様では、6.5〜7.5である。反応の開始前のpH値は、塩酸または苛性ソーダ液によって調節されることができる。重合は、反応混合物の全てまたは個々の成分の装入下に、または反応混合物の個々の成分の部分的な装入下および後計量供給下に、または装入なしに計量供給法により実施されることができる。全ての計量供給は、特にそれぞれの成分の使用量に応じて行なわれる。
【0042】
重合は、通常の水溶性開始剤によるか、または酸化還元開始剤の組合せにより開始される。開始剤の例は、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、過酸化水素、過酸化第三ブチル、第三ブチルヒドロペルオキシド、カリウムペルオキソジホスフェート、第三ブチルペルオキソピバレート、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドおよびアゾビスイソブチロニトリルである。記載された開始剤は、特にモノマーの全質量に対して0.01〜4.0質量%の量で使用される。酸化還元開始剤の組合せとしては、上記の開始剤が1つの還元剤と一緒に使用される。適当な還元剤は、1価カチオンの亜硫酸塩および亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸ナトリウム、スルホキシル酸の誘導体、例えば亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレートまたはアルカリ金属ホルムアルデヒドスルホキシレート、例えばナトリウムヒドロキシメタンスルフィネートおよびアスコルビン酸である。還元剤量は、特に使用されるモノマー量に対して0.15〜3質量%である。付加的に重合媒体中で可溶性の微少量の金属化合物は、導入されてよく、この金属化合物の金属成分は、重合条件下で、例えば鉄またはバナジウムに対して酸化還元活性である。前記成分からの特に好ましい開始剤系は、第三ブチルヒドロペルオキシド/第三ブチルナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート/Fe系(EDTA)2+/3+である。
【0043】
ミニエマルジョン重合法による反応の実施の場合には、主に油可溶性開始剤、例えばクメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、過酸化ジベンゾイルまたはアゾビスイソブチロニトリルが使用されてもよい。ミニエマルジョン重合法に好ましい開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリルならびに過酸化ジベンゾイルである。
【0044】
水中に再分散可能なポリマー粉末の形のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーを製造するために、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの水性分散液は、当業者に公知の方法で、特に噴霧乾燥法により乾燥される。
【0045】
更に、本発明の対象は、1つ以上の本発明によるナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーならびに場合によっては1つ以上の助剤および場合によっては1つ以上の添加剤を含有する塗料である。
【0046】
助剤の例は、界面活性剤であり、この場合には、陰イオン性界面活性剤ならびに非イオン性界面活性剤、または陽イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤が適している。更に、また、助剤は、顔料、例えば土壌顔料、例えば白亜、黄色土、アンバー、緑色土、鉱物質顔料、例えば二酸化チタン、クロムイエロー、鉛丹、亜鉛黄、亜鉛緑、カドミウムレッド、コバルトブルー、有機顔料、例えばセピア、カッセルブラウン(Kasseler Braun)、インジゴ、アゾ顔料、アントラキノイド顔料、インジゴイド顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料およびアルカリブルー顔料である。
【0047】
添加剤は、例えば殺生剤、濃稠化剤、アルキルオルトチタネート、アルキル硼酸エステル、顔料湿潤剤および分散剤、消泡剤、耐蝕顔料、金属酸化物、金属炭酸塩または有機樹脂である。
【0048】
前記塗料は、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー分散液特に1〜90質量%、特に有利に4〜70質量%;界面活性剤特に0.1〜10質量%、特に有利に0.5〜5質量%;顔料特に0.5〜40質量%、特に有利に2〜35質量%、殊に有利に5〜30質量%;添加剤特に0.1〜60質量%、特に有利に1〜50質量%、殊に有利に10〜40質量%;水特に10〜70質量%、特に有利に15〜65質量%、殊に有利に20〜60質量%を含有する。この場合、質量%での割合は、それぞれの塗料の全質量に対するものである。
【0049】
塗料の製造のために、この塗料の個々の成分は、任意の方法でこのために常用の装置中で混合されることができる。特に、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーは、粉末の形で、シリコーン樹脂結合剤にとって典型的であるように粉砕物に添加されるか、または分散液の形で塗布中に塗料に添加される。
【0050】
特に、この塗料は、ペイントして、例えばインテリアまたは特にエクステリアで建物に適用するために使用されるか、または他にベランダまたはテラスに塗料としても使用される。
【0051】
しかし、この塗料は、取り付けられていない建築材料、例えば煉瓦、石灰質砂岩またはコンクリートブロックを塗布するために使用されてもよい。
【0052】
本発明による塗料を含有するペイントは、臨界超過で配合されてもよいし、臨界未満で配合されてもよい。好ましいのは、臨界超過の配合物、即ち60%を上廻る顔料体積濃度(PVK)を有するペイントである。顔料体積濃度の定義は、例えばUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, 第4版, 第15巻,第668頁の記載から当業者に公知である。
【0053】
更に、本発明の対象は、断熱複合材料系(WDVS)を含有する絶縁材料および1つ以上の塗膜であり、この塗膜は、該塗膜の少なくとも1つを形成させるために、1つ以上の本発明によるナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーを含有する塗料が使用されたことによって特徴付けられる。
【0054】
適当な絶縁材料は、例えば鉱物綿、例えば岩綿またはガラスウール、鉱物フォーム、例えばケイ酸カルシウム水和物、有機材料または合成材料、例えばポリスチレン硬質フォーム(PS)、ポリスチレン粒子フォーム(EPS)、ポリスチレン押出機フォーム(XPS)、ポリウレタン硬質フォーム(PUR)、真空絶縁ボード(VIP)であるか、または天然材料、例えば木部繊維、コルク、大麻または葦でもある。
【0055】
塗膜は、1つ以上のプラスター層、例えば場合によっては織布を含有する下塗りプラスター、ならびに場合によっては仕上げプラスターを含むことができる。特に、プラスター層は、モルタルを基礎とする。
【0056】
WDVSは、常法により製造されることができ、全ての通常の下地上に施こされてよい。通常、絶縁材料は、ボードまたはシートの形で接着剤、ねじまたは合くぎによりそれぞれの下地上に施こされる。通常の下地は、天然鉱物、金属、プラスチックまたは天然材料、例えば木材または木材プラスチック複合材料である。好ましい下地は、煉瓦、石灰質砂岩またはコンクリートである。絶縁材料上には、1つ以上のプラスター層が施こされてよい。1つ以上の本発明によるナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーを含有する塗料は、特に最上層としてWDVS上に施こされる。この場合、本発明による塗料は、特に有利にペイントである。
【0057】
本発明によるWDVSは、殊に外側の建築物表面、特に有利に建築物の外壁に適している。
【0058】
好ましくは、本発明による塗料は、多孔質の蒸気透過性の塗膜を生じ、この塗膜の表面上または塗膜の毛管内で水が分解し、水玉として流入せず、この場合この塗膜は、液体水が外側から塗膜中またはWDVS中に侵入するを阻止するのに十分に疎水性である。
【0059】
上記の用途と共に、本発明によるシリコーンオルガノコポリマーは、塗料材料または含浸物およびこれらから得られる塗膜の製造および基材、例えば金属、ガラス、木材、鉱物基材、テキスタイル、カーペット、床敷物、または繊維から製造できる他の物体の製造のためのプラスチック繊維および天然繊維、皮革、プラスチック、例えばシート、成形体上のカバーの製造に使用されてもよい。本発明によるシリコーンオルガノコポリマーは、液状または硬化した固体の形で、エラストマー材料中に組み込まれてよい。この際、このシリコーンオルガノコポリマーは、別の使用特性、例えば、透明度、熱安定性、黄変傾向、耐候性の制御の増強または改善のために使用されることができる。シリコーンオルガノコポリマーは、記載された目的のために純粋物質として、即ち他の添加剤なしに使用されることができる。
【0060】
ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーは、高い貯蔵安定性を持っている。このナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーは、例えば気候の影響、化学的影響による攻撃およびUV線に抗する顕著な耐性を塗膜に付与する。同様に、この塗膜により極めて良好な耐水性および少ない汚染傾向が実現される。加水分解可能および縮合可能な基を含有するシランを前記シリコーンオルガノコポリマー中へ重合導入することにより、塗料の塗布後に湿分硬化性である塗料を製造することができ、したがって塗膜硬度、熱可塑性および汚染傾向を調節することができる。
【実施例】
【0061】
全ての記載は、別記しない限り、室温で常圧下でのものである。
【0062】
メタクリル官能性粒子の製造
粒子1:
トルエン中の粒子状オルガノポリシロキサン樹脂100質量部(M単位39%;Q単位61%;式IIに記載のR4:メチル)およびα−シランメタクリラトメチル−メチルジメトキシシラン5質量部からなる溶液を酸性触媒Tonsil(登録商標)Optimum FF3質量部(酸性層状ケイ酸塩;Sued-Chemieの商品名)の存在下で反応させた。触媒の濾別後に、溶剤を蒸発させた。
【0063】
ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの製造:
実施例1:ポリマー1:
ジャケット冷却部、蒸発冷却部および馬蹄形攪拌機を備えた100リットルの反応釜に水6560gを供給し、Fe(II)−EDTA−錯体1グラムを添加した。2回の排気および窒素での真空の制動によって、前記装置を自動力のないようにした。第2の釜中でメタクリル酸、水およびナトリウムドデシルスルフェートを下記の計量供給1の項目に記載の量で溶解した(水相)。
【0064】
第3の釜中で、計量供給1の項目の残存する成分を前記量で均一に溶解した(油相)。 引続き、この油相を徹底的に攪拌しながら水相を有する釜中に導入した。こうして得られた粗製エマルジョンを800バールの圧力でIKA社の高圧ホモジナイザーで1回の通過で均質化した。計量供給1の項目の全ての成分を含有する前エマルジョンが得られた。この前エマルジョンを攪拌釜(前エマルジョン釜)中で室温で攪拌した。それぞれ別々の釜中に計量供給2の項目の成分または計量供給3の項目の成分を次に記載された量で導入した。
【0065】
計量供給1(全てグラムでの記載):
ヘキサデカン 131.2
ブチルアクリレート 7216
メチルメタクリレート(MMA) 6560
ブチルメタクリレート 2296
スチレン 1312
メタクリル酸 360.8
ナトリウムドデシルスルフェート 492
直鎖状のモノメタクリラトメチル官能性PDMS(数平均分子量:1200g/mol) 918.4
粒子1 918.4
蒸留水 9840
計量供給2(全てグラムでの記載):
水 1417
第三ブチルヒドロペルオキシド 157.4
計量供給3(全てグラムでの記載):
水 1496
Brueggolit(登録商標) 78.7。
【0066】
水を供給した反応釜を50℃に加熱した。反応を計量供給1〜3の同時に開始によって開始した。計量供給1の項目の成分を3時間に亘って反応釜中に供給し、一方で、計量供給2および3の項目の成分を200分の時間に亘って計量供給した。この場合、この反応混合物を反応釜のジャケット冷却によって50℃の温度で維持した。個々の計量供給の項目の成分を完全に添加した後に、なお30分間さらに攪拌した。引続き、10質量%のアンモニア水溶液を用いて分散液のpH値を約3から8.0のpH値にもたらした。こうして得られた分散液を、50マイクロメートルの目開きを有するスクリーンストッキングを介して濾過した後、分散液を50%の固体含量および90nmの体積平均粒度で得た。
【0067】
実施例2:ポリマー2:
ポリマー2の製造を実施例1と同様に行なったが、しかし、"計量供給1"は、次の組成を有していた:
計量供給1(全てグラムでの記載):
ヘキサデカン 131.2
ブチルアクリレート 7216
MMA 7872
ブチルメタクリレート 2296
メタクリル酸 360.8
ナトリウムドデシルスルフェート 492
直鎖状のモノメタクリラトメチル官能性PDMS(数平均分子量:1200g/mol) 918.4
粒子1 918.4
蒸留水 9840
ポリマー3:
ポリマー3の製造を実施例1に相応して行なったが、しかし、"計量供給1"は、次の組成を有していた:
計量供給1(全てグラムでの記載):
ヘキサデカン 131.2
ブチルアクリレート 7216
MMA 6560
ブチルメタクリレート 2296
スチレン 1312
メタクリル酸 360.8
ナトリウムドデシルスルフェート 492
粒子1 1837
蒸留水 9840
ポリマー4:
ポリマー4の製造を実施例1に相応して行なったが、しかし、"計量供給1"は、次の組成を有していた:
計量供給1(全てグラムでの記載):
ヘキサデカン 131.2
ブチルアクリレート 7216
MMA 6560
ブチルメタクリレート 2296
スチレン 1312
メタクリル酸 360.8
ナトリウムドデシルスルフェート 492
約1200g/molの数平均分子量を有する直鎖状のモノメタクリル官能性PDMS 1837
蒸留水 9840。
【0068】
全てのポリマーを、約50質量%の固体含量FG、約90nmの体積平均粒度および8.0のpH値を有する分散液の形で得た。
【0069】
塗料の製造:
それぞれの塗料を、第1表中に記載された成分を番号付けに相応して順次に添加し、常用の高速攪拌機(Getzmann社のディスソルバー)を用いて徹底的に混合することにより、製造した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
塗料の性能試験
次の(比較例)実施例において、質量部または質量%の全ての記載は、別記しない限り、それぞれの組成の全質量に関連するものである。
【0073】
それぞれの試験体は、DIN EN 1062−3により、それぞれの塗料(第1表)を刷毛を用いて200g/m2の塗膜厚さで石灰質砂岩上に塗布し、こうして塗布された石灰質砂岩を室温で1週間乾燥し、その後に標準空調室(23℃±2℃、50%±5%の相対空気湿度)中で24時間貯蔵することにより、製造された。
【0074】
それぞれの試験体の水透過率は、DIN EN 1062−3(塗膜の水透過率の測定、1999年2月)により測定された。塗布されていない石灰質砂岩は、24時間の水貯蔵W24後に6.19kg/(m20.5)の水吸収係数を有していた。こうして得られた、水吸収率の値は、第2表中に記載されている。
【0075】
水蒸気透過率は、ISO 7783−2によりそれぞれの試験体について測定された(第2表参照)。
【0076】
それぞれの試験の水吸収率は、DIN EN 1062−3により測定されたが、しかし、試験体は、それぞれ24時間毎に3回新しい水道水中に貯蔵され、それぞれ乾燥されるのではなく、72時間を通して水中に貯蔵され、引続き50℃±5℃で24時間乾燥された。こうして得られた水吸収率の値は、第2表中に記載されている。
【0077】
表面疎水性を評価するために、ビーディング効果を測定した(第2表)。そのために、それぞれ水平方向に貯蔵された試験体上に水滴をもたらした。この水滴が水玉として流入するか、表面上に留まるか、分解するか、または浸透するかを観察した。
【0078】
このビーディング効果は、スクールグレードシステム(school-grade system)につき次の評価判断基準で評価された:
1=極めて良好なビーディング効果、下地の湿潤なし、水は、完全に水玉として流入し、液滴は、付着していない。
2=良好なビーディング効果、個々の水滴は、付着しているが、水の浸透は無い。
3=妥当なビーディング効果、下地は、部分的に湿潤している。
4=劣悪なビーディング効果、下地は、湿潤している。
5=ビーディング効果なし、下地は、湿潤されており、吸収された水によって暗色に着色している。
透明度の測定のために、50質量%の固体含量FGを有するそれぞれのポリマーの水性分散液を製造した。それぞれの分散液を100マイクロメートルの間隙幅を有する四方コーティングバー(Kastenrakel)を用いてフィルムに延伸し、室温で24時間乾燥させた。引続き、DIN 50014に関連して、このフィルムを目視試験によって1〜10の目盛りにつき評価し、この場合1は、完全に透明なフィルムに相当し、10は、不透明なフィルムに相当する。
【0079】
【表3】

【0080】
a)シリコーン樹脂ペイントは、第1表に対応する組成を有し、この場合結合剤として、メチルシリコーン樹脂のシリコーン樹脂エマルジョン(6000g/molの分子量Mw;直接珪素に結合した全ての炭化水素基は、メチル基であり;メチルシリコーン樹脂は、粒子の全質量に対してヒドロキシ基0.4%およびエトキシ基3.7%である)およびシリコーン含有早期疎水化添加剤(KOHの存在下でのα,ω−ビスヒドロキシ−ポリジメチルシロキサンとN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランとからの縮合生成物の水性エマルジョン(FG=55%)シリコーン含有早期疎水化添加剤は、約0.3のアミン価、25℃で約1500mm2/秒の粘度およびN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン中に最初に存在するメトキシ基に対する5モル%未満の残留メトキシ含量を有する。)ならびに
Wacker Polymer Systems社のFLEXCRYL SAF 34(分散結合剤)が含有されている。
【0081】
標準シリコーン樹脂ペイントを含有する塗膜(第2表:比較例8)は、極めて僅かな水蒸気透過性および低い吸水量を有し、および著しく顕著なビーディング効果を示し、このことは、外部ファッサードでの塗膜の相応する使用の際に冒頭に記載された問題をまねく。また、比較例6または7(ポリマー3または4)の塗膜は、顕著なビーディング効果を示す。本発明によるシリコーンオルガノコポリマーを含有する本発明による実施例4または5だけは、良好な吸水量および水蒸気透過性を示し、同時に水滴が表面上に浸透し、水玉として流入しない程に表面親水性である。更に、本発明によるシリコーンオルガノコポリマー(ポリマー1または2)は、比較例6または7で使用されたポリマー3または4よりも透明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B)エチレン系不飽和のラジカル重合可能な基で官能化されている、1000nm以下の平均直径を有する少なくとも1つの粒子Pの存在下で、
但し、この場合B1)粒子Pとして金属酸化物および半金属酸化物の群からの1つ以上の前記酸化物が使用され、および/または
B2)粒子Pとして一般式[R4(p+z)SiO(4-p-z)/2m (II)〔式中、個々の基R4は、それぞれ互いに独立に水素、ヒドロキシ基、ならびに場合によっては置換されていてよい、それぞれ18個までのC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、この場合mは、30以上の整数を表わし、この場合それぞれのシリコーン樹脂少なくとも20モル%に対してp+z=0、1または3である〕で示されるシリコーン樹脂が使用されるものとし、
水性媒体中でのフリーラジカルにより開始された重合および場合によってはその際に得られたポリマー分散液の引続く乾燥により得られた、
A)ビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、1,3−ジエン、ビニルエーテルおよびビニルハロゲン化物を含む群からの1つ以上のモノマー、および場合によってはこのモノマーと共重合可能なモノマーからの、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの水性ポリマー分散液の形または水中で分散可能なポリマー粉末の形のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーにおいて、
C)一般式R93SiO−[R82SiO2/2n−SiR93 (III)〔式中、個々の基R8およびR9は、それぞれ互いに独立に、場合によっては置換されていてよい、ヒドロキシ基、それぞれ18個までのC原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、この場合基R9の少なくとも1つは、ヒドロキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表わし、nは、100以下の整数を表わす〕で示される1つ以上の直鎖状ポリジオルガノシロキサンが共重合されており、
この場合B1)、B2)およびC)は、それぞれ一般式(R1O)3-k(R2kSi(CR32)−X〔式中、R1は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表わし、R2およびR3は、それぞれ互いに独立に水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表わし、kは、0、1または2の値を表わすことができ、Xは、エチレン系不飽和基を有する、2〜20個の炭化水素原子を有する基である〕で示される1つ以上のα−オルガノシランで官能化されていることことを特徴とする、ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの水性ポリマー分散液の形または水中で分散可能なポリマー粉末の形のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー。
【請求項2】
直鎖状ポリジオルガノシロキサンC)の基R8は、メチル、フェニルまたは水素を表わす、請求項1記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー。
【請求項3】
直鎖状ポリジオルガノシロキサンC)の基R9は、メチル、フェニル、水素、メチルオキシ、フェニルオキシまたはヒドロキシを含む群から選択されている、請求項1または2記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー。
【請求項4】
群B1からの粒子Pとして酸化珪素、または金属のアルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、亜鉛または錫の酸化物が使用されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー。
【請求項5】
群B2)からの粒子Pには、一般式[R4(p+z)SiO(4-p-z)/2m (II)のシリコーン樹脂が使用されており、このシリコーン樹脂は、M単位(R3SiO−)、D単位(−OSiR2O−)、T単位(RSiO33-)およびQ単位(SiO44-)の任意の組合せからなり、但し、この場合常にT単位および/またはQ単位が含有されており、シリコーン樹脂を構成する単位に対する前記T単位および/またはQ単位の割合は、総和で少なくとも20モル%であり、それぞれ前記単位の1つだけが存在する場合には、この単位の割合は、それぞれ少なくとも20モル%である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー。
【請求項6】
式(R1O)3-k(R2kSi−(CR32)−X (I)のα−オルガノシランが基R1およびR2として1〜6個のC原子を有する未置換のアルキルを有し、基R3として水素を有し、基Xとしてモノ不飽和C2〜C10基を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー。
【請求項7】
ナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの粒子ドメインの平均直径が1nm〜1000nmである、請求項1から6までのいずれか1項に記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマー。
【請求項8】
懸濁重合、乳化重合またはミニエマルジョン重合による、請求項1から7までのいずれか1項に記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの製造法。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の1つ以上のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーならびに場合によっては1つ以上の助剤および場合によっては1つ以上の添加剤を含有する塗料。
【請求項10】
ペイントしての請求項9記載の塗料の使用。
【請求項11】
絶縁材料および1つ以上の塗膜を含む断熱複合材料系(WDVS)において、塗膜の少なくとも1つを形成させるために、請求項1から7までのいずれか1項に記載の1つ以上のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーを含有する塗料を使用したことを特徴とする、絶縁材料および1つ以上の塗膜を含む断熱複合材料系(WDVS)。
【請求項12】
塗料材料および含浸物の製造のため、およびテキスタイル、カーペット、床敷物、または繊維から製造できる他の物体、皮革、プラスチック、例えばシート、成形体の製造のための請求項1から7までのいずれか1項に記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの使用。
【請求項13】
エラストマー材料中に組み込むための請求項1から7までのいずれか1項に記載のナノ粒子状シリコーンオルガノコポリマーの使用。

【公表番号】特表2011−524922(P2011−524922A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513992(P2011−513992)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057137
【国際公開番号】WO2009/153195
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】