説明

ナノ粒子組成物

【課題】粒子状の抗癌剤、該粒子を含んで成る抗癌性組成物及び該粒子の使用方法を提供することを目的とする。
【解決手段】実質的に、約1000nm未満の平均有効粒子径を維持するのに充分な量で表面上に表面修飾剤を吸着せしめた結晶状抗癌剤から成る分散可能な粒子を提供する。該粒子を含んで成る抗癌性組成物は、毒性低減及び/又は有効性増大を示し且つ注射投与可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状の抗癌剤、該粒子を含んで成る抗癌性組成物及び該粒子の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療係数は、薬剤が、その所望の効果を与える際にどれほど選択的であるのかの指標であり、そして50%致死量対50%有効量の比、すなわち、(LD50/ED50)と定義されうる( Goodman and Gilman, 治療の薬理学的基準(The Pharmacological Basis of Therapeutics ),第8版,68〜69ページ参照(非特許文献1))。
【0003】
ほとんどすべての抗癌剤が低い治療係数、例えば、約 1.0未満を有する。例えば、毒性低減又は有効性増大による治療係数の増加は、医師に対して、抗癌剤を必要とする患者への抗癌剤の投与という彼らの職務においてより広い許容範囲を提供するであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Goodman and Gilman, 治療の薬理学的基準(The Pharmacological Basis of Therapeutics ),第8版,68〜69ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、抗癌剤の毒性を低減し及び/又は有効性を増大して該薬剤の治療係数を増加する方法は、癌の治療において大いに価値がある。
加えて、弱水溶性の薬剤、例えば、弱水溶性抗癌剤は静脈内(IV) ボーラス注射で容易に注射可能ではない。弱可溶性薬剤の注射可能な形状への創造は、侮り難い課題の代表である。弱可溶性薬剤、例えば、弱可溶性抗癌剤をIVボーラス注射可能な形状で提供できるようにすることが強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、表面修飾ナノ粒子の形で抗癌剤を含んで成る抗癌性組成物が、毒性低減及び/又は有効性増大を示すことを発見した。
より詳細には、本発明に従って、実質的に、約1000nm未満の平均有効粒子径を維持するのに充分な量で表面上に表面修飾剤を吸着せしめた結晶状抗癌剤から成る粒子が提供される。
【0007】
本発明は、更に前記粒子を含んで成る抗癌性組成物を提供する。
本発明の別の態様では、前記抗癌性組成物を哺乳動物に投与することを含んで成る哺乳動物の治療方法を提供する。
本発明の更に別の態様では、前記粒子の形で該薬剤を投与する段階を包含する抗癌剤の有効性を増大する方法及び/又は毒性を低減する方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
抗癌性組成物が毒性低減を示すことは、本発明の有利な特徴である。
抗癌性組成物が改良された有効性を示すことは、本発明の別の有利な特徴である。
本発明のまた別の有利な特徴は、組成物が、IVボーラス注射によって投与できる弱可溶性抗癌剤を特徴とすることである。
本発明の更に又別の有利な特徴は、組成物が、IVボーラス注射後に血液プール中の循環延長を示す弱可溶性抗癌剤を含有することである。
【0009】
本発明は、表面修飾抗癌性ナノ粒子が毒性低減及び/又は有効性増大を示すという発見に部分的に基づいている。本発明は、その好ましいクラスの薬剤、すなわち、免疫抑制剤を包含する抗癌剤に関連して主に本明細書に記載されているが、それはまた弱水溶性薬剤、特に別のクラスの薬物由来の低治療係数を示すものに関しても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粒子は抗癌剤を含んで成る。抗癌剤は、1つ以上の別個の結晶相に存在する。結晶相は、非結晶相、すなわち、例えば、米国特許第 4,826,689号明細書に記載されるようなサブミクロンサイズ範囲の粒子の製造する際の従来の溶剤沈殿技術により得られる非晶相とは異なる。
【0011】
本発明は多種多様な抗癌剤を用いて実施できる。しかしながら、抗癌剤は少なくとも1つの液状媒体に弱可溶性であり且つ分散可能でなければならない。「弱可溶性」とは、薬物の液状分散媒体、例えば、水への溶解度が、処理温度、例えば、室温で、約 10mg/mL未満、好ましくは1mg/mL 未満であることを意味する。好ましい液状分散媒体は水である。しかしながら本発明は、例えば、水性塩溶液、サフラワー油、並びに溶剤類、例えば、エタノール、t−ブタノール、ヘキサン及びグリコールを包含する、抗癌剤が分散可能である別の液状分散媒体を用いて実施できる。水性分散媒体のpHは当該技術分野で既知である技術によって調節できる。
【0012】
好ましくは抗癌剤は、アルキル化剤類、代謝拮抗物質類、天然物類、ホルモン類及び拮抗物質類並びに種々雑多な薬剤類、例えば、放射線感受性増強物質類より選ばれる。
【0013】
アルキル化剤の具体例には、ビス−(2−クロロエチル)−アミン基を有するアルキル化剤、例えば、クロロメチン、クロラムブシル、メルファラン、ウラムスチン、マンノムスチン、硫酸エキストラムスチン、メクロレタミンオキシド、シクロホスファミド、イホスファミド及びトリホスファミド;
置換アジリジンを有するアルキル化剤、例えば、トレタミン、チオテパ、トリアジキノン及びマイトマイシン;
アルキルスルホネート型のアルキル化剤、例えば、ブスルファン、ピポスルファン及びピポスルファム;
アルキル化N−アルキル−N−ニトロソウレア誘導体、例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチンもしくはストレプトゾトシン;並びに
ミトブロニトール、ダカルバジン及びプロカルバジン型のアルキル化剤が挙げられる。
【0014】
代謝拮抗物質の具体例には、葉酸類似体類、例えば、メトトレキサート;
ピリミジン類似体類、例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、テガフール、シタラビン、イドクスウリジン及びフルシトシン;並びに
プリン誘導体類、例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、チアミプリン、ビダラビン、ペントスタチン及びピューロマイシンが挙げられる。
【0015】
天然物の具体例には、ビンカアルカロイド類、例えば、ビンブラスチン及びビンクリスチン;
エピポドフィロトキシン類、例えば、エトポシド及びテニポシド;
抗生物質類、例えば、アドリアマイシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミスラマイシン、ブレオマイシン及びマイトマイシン;
酵素類、例えば、L−アスパラギナーゼ;
生体応答調節物質類、例えば、α−インターフェロン;
カンプトテシン;
タキソル;並びに
レチノイド類、例えば、レチノイン酸が挙げられる。
【0016】
ホルモン及び拮抗物質の具体例には、アドレノコルチコステロイド類、例えば、プレドニゾン;
プロゲスチン類、例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロール;
エストロゲン類、例えば、ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール;
抗エストロゲン類、例えば、タモキシフェン;
アンドロゲン類、例えば、プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン;
抗アンドロゲン類、例えば、フルタミド;並びに
ゴナドトロピン放出性ホルモン類似体類、例えば、ロイプロリドが挙げられる。
【0017】
種々雑多な薬剤の具体例には、例えば、放射線感受性増強物質類、例えば、 1,2,4−ベンゾトリアジン−3−アミン 1,4−ジオキシド(SR 4889)及び 1,2,4−ベンゾトリアジン−7−アミン 1,4−ジオキシド(WIN 59075);
白金配位錯体類、例えば、シスプラチン及びカルボプラチン;
アントラセンジオン類、例えば、ミトキサントロン;
置換尿素類、例えば、ヒドロキシウレア;並びに
副腎皮質抑制剤類、例えば、マイトテイン及びアミノグルテチミドが挙げられる。
【0018】
更に、抗癌剤は免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、スルファサラジン、メトキサレン及びサリドマイドであってもよい。
本発明の実施に際して有用な抗癌剤は既知化合物であるか、及び/又は当該技術分野で既知である技術によって製造できる。
【0019】
抗癌剤は、単独で又は1つ以上の抗癌剤を組み合わせて使用できる。
本発明の粒子は、それらの表面上に表面修飾剤を吸着せしめた前記抗癌剤を含む。有用な表面修飾剤は、抗癌剤の表面に物理的に付着するが抗癌剤に対して化学的に結合しないものを包含すると信じられている。
【0020】
好ましくは、適する表面修飾剤が既知有機及び無機薬用賦形剤より選択できる。このような賦形剤には、種々ポリマー類、低分子量オリゴマー類、天然物類及び界面活性剤類が挙げられる。好ましい表面修飾剤には、非イオン性及びアニオン性界面活性剤が挙げられる。賦形剤の代表例には、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド類)、アラビアゴム、コレステロール、トラガント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、例えば、マクロゴールエーテル類、例えば、セトマクロゴール1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、例えば、市販のTween(商標) 類、ポリエチレングリコール類、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイドシリカ(二酸化珪素)、ホスフェート類、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非晶質セルロース、珪酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。これらの賦形剤のほとんどが、薬用賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients ),American Pharmaceutical Association 及びthe Pharmaceutical Society of Great Britain の共同出版,the Pharmaceutical Press, 1986,に詳細に記載されている。表面修飾剤は、市販されているものであるか、及び/又は当該技術分野で既知である技術によって製造できる。2つ以上の表面修飾剤を合わせて使用できる。
【0021】
特に好ましい表面修飾剤には、ポリビニルピロリドン、チロキサポール、ポロクサマー類、例えば、BASFより入手可能なエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるPluronic(商標)F68, F108 及びF127 、並びにポロクサミン類、例えば、BASFより入手可能なエチレンジアミンに対するエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの逐次付加によって誘導される四機能性ブロックコポリマーであるTetronic(商標)908 ( T908 )、デキストラン、レシチン、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルであるAerosol OT(商標) (AOT),American Cyanamid 市販、ラウリル硫酸ナトリウムであるDuponol(商標)P,Dupont市販、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTriton(商標)X−200 ,Rohm and Haas 市販、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるTween 20,40,60及び80,ICI Speciality Chemicals市販、脂肪酸のソルビタンエステルであるSpan 20,40,60 及び80、脂肪酸のソルビタンエステルであるArlacel 20,40,60及び80,Hercules,Inc. 市販、ポリエチレングリコールであるCarbowax(商標)3550及び934 ,Union Carbide 市販、ステアリン酸スクロース及びジステアリン酸スクロースの混合物であるCrodesta(商標)F−110 ,Croda Inc.市販、Crodesta SL−40,Croda Inc.市販、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、ウシ血清アルブミン、並びにC18H37CH2(CON(CH3)CH2(CHOH)4CH2OH)2 であるSA90HCOが挙げられる。特に有用であることが認められた表面修飾剤には、ポリビニルピロリドン、PluronicF−108 、ポリビニルアルコール及びアラビアゴムが挙げられる。
【0022】
表面修飾剤は、約1000nm未満の有効平均粒子径を維持するのに充分な量で抗癌剤の表面に吸着せしめられる。表面修飾剤は抗癌剤又はそれ自身と化学的に反応しない。更に、別個に吸着せしめた表面修飾剤の分子は、実質的に分子間架橋がない。
【0023】
本明細書で用いられる粒子径は、当業者らに周知である伝統的な粒子径測定方法、例えば、沈降フィールドフローフラクショネーション、フォトンコレクション分光法又はディスク遠心法によって測定される数平均粒子径を称する。「約1000nm未満の有効平均粒子径」とは、前記方法によって測定したときに、少なくとも90%の粒子が約1000nm未満の数平均粒子径を有することを意味する。本発明の特に好ましい態様では、有効平均粒子径は約 400nm未満である。本発明の幾つかの態様では、有効平均粒子径は約 300nm未満である。有効平均粒子径に関連して、少なくとも95%、そしてより好ましくは少なくとも99%の粒子が、有効平均、例えば、1000nmより小さい粒子径を有することが好ましい。特に好ましい態様では、実質的にすべての粒子が1000nm未満の粒子径を有する。
【0024】
Motoyama他、米国特許第 4,540,602号明細書は、固形薬剤が水溶性高分子物質の水性溶液中で微粉砕でき、そしてこのような湿式粉砕によって、薬剤は直径 0.5μm 〜5μm 未満の範囲内の微細粒子に形成されることを開示する。しかしながら、約1μm 未満の平均粒子径を有する粒子を得ることができるという示唆はどこにもない。Motoyama他により記載された湿式粉砕方法を再現することを試みたが、1μm を遙に上回る平均粒子径を有する粒子が得られた。
【0025】
本発明の粒子は、抗癌剤を液状分散媒体に分散せしめる工程、並びに粉砕媒体の存在下で機械的手段によって抗癌剤の粒子径を約1000nm未満の有効平均粒子径まで低減せしめる工程を含んで成る方法により製造できる。粒子は表面修飾剤の存在下でサイズを低減できる。あるいは、磨砕後に粒子を表面修飾剤と接触せしめることができる。
【0026】
本発明の粒子の一般的な製造方法を以下に示す。選ばれた抗癌剤は、市販のものであるか及び/又は当該技術分野で既知である方法により製造された通常粗状態のものである。必須ではないが、粗抗癌剤の粒子径が、篩分けにより測定されたものとして約 100μm 未満であるように選ばれることが好ましい。抗癌剤の粗粒子径が約 100μm を越える場合には、抗癌剤の粒子を常用の微粉砕方法、例えば、エアジェット又は破砕ミルを用いて 100μm より小さいサイズに低減せしめることが好ましい。
【0027】
次いで選ばれた粗抗癌剤を、それが実質的に不溶性である液状媒体に添加してプレミックスを生成できる。液状媒体中の抗癌剤の濃度は、約 0.1〜60%まで変化でき、そして好ましくは5〜30%(w/w)である。必須ではないが、表面修飾剤がプレミックス中に存在することが好ましい。表面修飾剤の濃度は、薬物及び表面修飾剤の両者を合わせた総重量に基づいて、約 0.1〜約90重量%まで変化でき、そして好ましくは1〜75重量%、より好ましくは20〜60重量%である。好ましくはプレミックス懸濁液の見掛粘度が約1000センチポアズ未満である。
【0028】
プレミックスは、それを機械的手段にかけて分散体中の平均粒子径を1000nm未満に低減させることによって直接使用できる。ボールミルが磨砕に用いられる場合には、プレミックスを直接使用することが好ましい。あるいは、抗癌剤及び任意の表面修飾剤は、肉眼で目視可能な大きな塊が全く存在しない均質な分散体が認められるまで、適当な攪拌方法、例えば、ローラーミル又はCowles型ミキサーを用いて液状媒体に分散せしめることができる。再循環性媒体ミルが磨砕に用いられる場合には、プレミックスをこのような予備微粉砕分散工程にかけることが好ましい。
【0029】
抗癌剤の粒子径を低減するために適用される機械的手段は、分散ミルの形式を取ることができる。適する分散ミルには、ボールミル、磨砕ミル、振動ミル、遊星形ミル、媒体ミル、例えば、サンドミル及びビーズミルが挙げられる。意図した結果、すなわち所望の粒子径低減を提供するのに必要とされる微粉砕時間が比較的短いので媒体ミルが好ましい。媒体ミルに関しては、好ましくはプレミックスの見掛密度が約 100〜約1000センチポアズである。ボールミルに関しては、好ましくはプレミックスの見掛密度が約1〜約 100センチポアズである。このような範囲は、有効粒子破砕及び媒体浸蝕間に最適なバランスを与えやすい。
【0030】
粒子径低減工程に用いる粉砕媒体は、約3mm未満、そしてより好ましくは約1mm未満の平均径を有するもので好ましくは球状又は粒状の硬質媒体より選択できる。望ましくはこのような媒体が、より短い処理時間で本発明の粒子を提供でき且つ微粉砕装置に低磨耗性を与える。粉砕媒体に用いる材料の選択は、臨界的であるとは信じられていない。しかしながら、酸化ジルコニウム、例えば、マグネシアで安定化された95%ZrO 、珪酸ジルコニウム、及びガラス粉砕媒体は、薬用組成物の製造に許容されると信じられる汚染レベルの粒子を提供する。更に別の媒体、例えば、ステンレススチール、チタニア、アルミナ及びイットリウムで安定化された95%ZrO は有用であると予測される。好ましい媒体は約 2.5g/cm3 を越える濃度を有する。
【0031】
磨砕時間は広範に変化でき、そして主に選択された特定の機械的手段及び処理条件に依存する。ボールミルに関しては、5日間まで又はそれ以上の処理時間を必要とするかもしれない。一方1日間未満の処理時間(1分間から数時間までの滞留時間)で、高剪断媒体ミルを用いて所望の結果が得られる。
【0032】
粒子は、抗癌剤をほとんど分解しない温度でサイズを低減せねばならない。約30〜40℃より低い処理温度が通常好ましい。所望であれば、処理装置は従来の冷却装置で冷却できる。該方法は、周囲温度の条件下、及び安全且つ微粉砕処理に有効である処理圧力で都合良く実施できる。例えば、周囲処理圧力は、ボールミル、磨砕ミル及び振動ミルに典型的に用いられる圧力である。約20プサイ( 1.4kg/cm2)までの処理圧力が媒体ミルに典型的に用いられる。
【0033】
表面修飾剤がプレミックスに存在しない場合には、磨砕後に先にプレミックスについて記載した量の表面修飾剤を分散体に添加しなければならない。その後、例えば、激しく振盪することによって分散体を混合できる。任意に、例えば、超音波力の供給によるような超音波処理工程に分散体をかけることができる。例えば、分散体に約1〜 120秒間20〜80 kHzの周波数の超音波エネルギーをかけることができる。
【0034】
抗癌剤及び表面修飾剤の相対量は広範に変化でき、表面修飾剤の最適量は、例えば、選択された特定の抗癌剤及び表面修飾剤、表面修飾剤がミセルを形成するのであればその臨界ミセル濃度、抗癌剤の表面領域などに依存できる。好ましくは表面修飾剤は、抗癌剤の表面領域1平方メートル当たり約 0.1〜10mgの量で存在する。表面修飾剤は、乾燥粒子の総重量に基づいて、 0.1〜90重量%、好ましくは 0.5〜80重量%、そしてより好ましくは1〜60重量%の量で存在できる。
【0035】
簡単なスクリーニング方法が開発されており、それによって比較可能な表面修飾剤及び抗癌剤から所望の粒子の安定な分散体を提供するものを選択できる。最初に抗癌剤の粗粒子を、抗癌剤が実質的に不溶性である液体、例えば、水に2%(w/v) で分散せしめそして 120時間ローラーミル中で以下の微粉砕条件下で微粉砕した。
粉砕用容器:8oz. ( 250mL) ガラスジャー
粉砕用容器の許容容量: 250mL
媒体容量: 120mL
媒体タイプ: 1.0mmの予備洗浄済酸化ジルコニウムビーズ
(Zircoa, Inc.市販)
微粉砕時間: 120時間
スラリー容量:60mL
RPM:92
室温
【0036】
常用の方法、例えば、容器の外へスラリーを流しだすことにより又はピペットを用いて微粉砕媒体からスラリーを分離した。次いで分離したスラリーをアリコートに分け、そして抗癌剤及び表面修飾剤を合わせた総重量に基づいて2〜50重量%間の濃度で表面修飾剤を添加した。次いで分散体を超音波処理(1分間,20 kHz)するか、又は1分間多管式ボルテックスを用いて攪拌して塊を分散し、粒子径分析、例えば、フォトンコレクション分光法(PCS)及び/又は光学顕微鏡法(倍率1000×)での検査にかけた。安定な分散体が認められたら、特定の抗癌剤と表面修飾剤の組み合わせの製造方法が前記技術に従って最適化できたことになる。安定とは、好ましくは1000×の倍率で光学顕微鏡を用いて製造後少なくとも15分間、好ましくは少なくとも2日間以上観察したときに、分散体が肉眼で目視可能な凝集もしくは粒状の塊を全く示さないことを意味する。更に、好ましい粒子は、 0.1N HCl 及び/又はリン酸緩衝溶液,pH 7.4 (PBS)又はラットの血漿に分散した場合に、凝集もしくは塊を全く示さなかった。
【0037】
得られた分散体は安定であり且つ液状分散媒体及び前記粒子から成るものであった。表面を修飾された抗癌剤のナノ粒子の分散体は、当該技術分野で周知である技術によって流動層スプレー塗布機で糖球体上又は薬用賦形剤上にスプレー塗布できる。
【0038】
本発明に従う抗癌性薬用組成物は、前記粒子及びそれらの薬剤的に許容される賦形剤を含む。適する薬剤的に許容される賦形剤は当業者らに周知である。これらには、非経口的注射用、固形剤もしくは液剤状態での経口投与用、直腸投与用、鼻腔内投与用、筋肉内投与用並びに皮下投与用などの非毒性の生理学的に許容される賦形剤類、添加剤類もしくはビヒクル類が挙げられる。
【0039】
本発明に従う哺乳動物の治療方法は、治療を必要とする哺乳動物に有効量の前記抗癌性組成物を投与する段階を含んで成る。選択された薬用量レベルの治療用抗癌剤は、特定の組成物及び投与方法についての所望の治療応答を得るのに有効である。選択された薬用量は当業者によって容易に決定でき、且つ特定の抗癌剤、所望の治療効果、投与経路、所望の治療期間及び別の要因に依存する。
【0040】
本発明の抗癌性組成物が以下の実施例で具体的に示されるように毒性低減及び/又は有効性増大を示すことは、特に有利な特徴である。更に、本発明の粒子は血液プール中における循環の延長を示す。
【0041】
更に、今までの抗癌剤は注射によって投与できないが、本発明に従うナノ粒子として製造された場合及び抗癌性組成物状に形成された場合、それは注射、例えば、静脈内ボーラス注射によって実際上投与できる。
【実施例】
【0042】
以下の例は本発明を更に具体的に説明するものである。
実施例1〜4 ピポスルファンのナノ粒子
実施例1
ピポスルファン(Eastman Kodak より購入)を、0.33%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート,Tween 80,(ICI Americas, Inc., Wilmington, DE)及び0.67%ソルビタンモノオレアート、Span 80 ,(ICI) の混合物中、1mm酸化ジルコニウムビーズを用いて約96時間微粉砕して直径およそ 240nmの粒子を生成した。懸濁液中の最終ピポスルファン濃度は 10mg/mlであった。粒子はラット血漿中凝集/凝結に対して安定であった。
【0043】
微粉砕条件:ピポスルファンの粗懸濁液を、1mmの予備洗浄した酸化ジルコニウムビーズ(Zircoa Inc., Solon, OH)60ml及び1%Tween 80/Span 80 (比 1対2)の溶液30mLで予め満たした4oz. (120ml) アンバーボトル(色付きボトル)に薬剤 300mgを添加することによって製造した。界面活性剤溶液を、メスフラスコ中でTween 80 333mg及びSpan 80 667mgを正確に測定し、続いて注射用滅菌水を添加して界面活性剤を溶解/分散せしめることにより調整した。最終容量 100mLとするのに充分な量の水を添加した。酸化ジルコニウムビーズを初めに1N硫酸で処理し、続いてイオン交換水で数回処理してきれいにした。媒体を真空オーブン中約 100℃で一晩乾燥した。
【0044】
封をした第一容器を、締り嵌めを確実に行える第二パッドアルミニウム収納器に充填した。それをローラーミル(US Stoneware, Mawah, NJ)を用いて 144 RPMで約96時間微粉砕した。微粉砕期間の終了時にスラリーを媒体から分離し、そして粒子径を PCSデバイスを用いて測定した。これらの粒子のラット血漿に対する安定性を、倍率1000×の光学顕微鏡により評価した。製剤の最終pHは6であった。
【0045】
対照A(未微粉砕),塊状ピポスルファン40mgを含有する粗懸濁液を、3%エタノール及び1%Tween 80の存在する水に分散せしめた。この懸濁液はIV注射できなかった。
【0046】
実施例1を初期段階の乳房腺癌#16/Cを移植して0日目の雌マウス(平均重量22g)における有効性調査について評価した。製剤を1日目から始めて数日間注射した。腫瘍重量をモニターし、そしてそれを対照の動物と比較することにより抗腫瘍活性を評価した。結果を以下に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
* 投与−IV 静脈内;SC 皮下
実施例1は 10mg/ml懸濁液として直接注射できる。一回量 78mg/kgの注射後に急性毒性は全く認められなかった。
【0049】
T/C=治療動物における腫瘍の重量割る対照の動物の腫瘍の重量、パーセント値として報告。より低い値はより大きな有効性を示し、0%は治癒を意味する。<10%は高活性であると見なされ、10〜42%は中程度の活性製剤である。>42%は不活性であると見なされる。
【0050】
Log Kill=(T−C)/3.32(Td),ここでTは治療した動物の腫瘍が中央値1000mgの大きさに到達するまでの日数であり、Cは対照の動物の腫瘍が中央値1000mgの大きさに到達するまでの日数であり、そしてTdは腫瘍の容量が2倍になる日数である。治癒(腫瘍を有しない動物)は(T−C)計算から排除した。
【0051】
実施例1は、従来の組成物と比較して本発明の組成物が毒性低減及び有効性増大を示し、そしてIVボーラス注射によって投与できることを具体的に示している。
【0052】
実施例2〜4
Tween 80対Span 80 の比が2:1であったことを除いて、実施例1に記載された微粉砕方法を繰り返した。得られた平均粒子径は 297nmであった。
Tween 80対Span 80 の比が1:1であったことを除いて、実施例1に記載された微粉砕方法を繰り返した。得られた平均粒子径は 380nmであった。
表面修飾剤のTween 60対Span 60 の比が1:1であったことを除いて、実施例1に記載された微粉砕方法を繰り返した。得られた平均粒子径は 301nmであった。
また表面修飾剤としてウシ血清アルブミンを用いて安定なピポスルファンナノ粒子を製造した。
【0053】
実施例5〜7 カンプトテシンのナノ粒子
実施例5
予備洗浄した酸化ジルコニウムビーズ(1mm)およそ60mLを 120mL広口丸底アンバーボトルにいれた。それにTetronic 908(BASF) 0.35gを添加し、続いてカンプトテシン(Sigma Chemicals ,純度95%)0.35gを添加した。前記混合物に注射用水(Abbott) 35mLを添加した。ボトルに封をしてローラーミルにかけた。 100 RPMで7日間ボトルを回転せしめることによって微粉砕を行った。
微粉砕の終了時に、アリコート( 100μL)についてMalvern Zetasizer を用いて粒子径のチェックをした。粒子を測定すると平均粒子径 240nmであった。
【0054】
実施例6
Tetronic 908をポリビニルアルコール(MW 30 〜70 K)に置き換えたことを除いて実施例5を繰り返した。最終粒子径は 256nmであった。
【0055】
実施例7
Tetronic 908をアラビアゴムに置き換えたことを除いて実施例5を繰り返した。最終粒子径は 298nmであった。
【0056】
ナノカンプトテシン製剤を2つのネズミの腫瘍モデル、すなわち、乳房腺癌#16/C及び膵管腺癌#03における有効性について評価した。抗腫瘍活性を、実験及び対照動物由来の腫瘍重量をモニターすることにより評価した。
【0057】
1.膵管腺癌#03における有効性調査
【表2】

【0058】
対照B製剤は、3%エタノール及び1%Tween 20中1%粗カンプトテシンから成るものであった。対照Bは皮下投与のみ可能であり、そして最低SC用量(18mg/kg) でさえも不活性であった。対照Bは試験した動物の1/5に対して毒性であった。対照的に、本発明のナノカンプトテシン製剤を24〜93mg/kg の範囲内の用量で静脈内注射(IV)すると、安全且つ有効であることを示した。
【0059】
2.乳房腺癌#16/Cのネズミの腫瘍モデルにおける有効性調査
【表3】

【0060】
T908 及びPVA 対照は、それぞれの表面修飾剤の1%水性溶液から成るものであった。対照Bを皮下注射すると、それは試験したすべての用量で毒性であった。本発明のナノカンプトテシンを有効な用量で静脈内投与した。
** 対照動物についての%T/Cは生存動物より求めた,N=2。
【0061】
3.血液及び腫瘍クリアランス
有効性増大が薬物動態特性の変化に関連するかどうか、乳房腺癌#16/Cのネズミの腫瘍モデルにおける血液クリアランス及び腫瘍分布を求めることで調査した。
腫瘍保持マウスに、実施例5及び6に記載のように製剤されたカンプトテシン 10mg/ml並びに 0.1N NaOH の添加により溶解せしめたカンプトテシン5mg/ml の対照を尾静脈に注射した。注射後多様な時間、すなわち、5分間、30分間、60分間、2時間、8時間、16時間、24時間及び48時間後に動物を安楽死させ、そして血液サンプルを採取しそして腫瘍を摘出した。薬剤サンプルの濃度をHPLCを用いて定量した。結果は、本発明の組成物が血液の循環プール及び腫瘍由来の薬剤のクリアランスに影響を及ぼすことを示した。
【0062】
【表4】

【0063】
本発明に従って製剤した場合には、腫瘍中のカンプトテシンの消失半減期及び滞留時間が著しく延長した。それは、カンプトテシンのナノ粒子製剤の薬物動態パラメーターが薬物挙動の改良に直接関与するという結論に達する。
【0064】
実施例8〜10 エトポシドのナノ粒子
実施例8
エトポシド 1.7gを PVA 1.7gと合わせ、そして微粉砕時間を14日間にしたことを除いて実施例5を繰り返した。最終粒子径は 310nmであった。粒子は酸及び血漿中で安定であった。
【0065】
実施例9
PVAをPluronic F-108 (BASF) に置き換えたことを除いて実施例8を繰り返した。最終粒子径は 312nmであった。粒子は酸及び血漿中で安定であった。
【0066】
実施例10
エトポシド(2%)を滅菌水中で7日間微粉砕した。微粉砕したスラリーの1:1混合物を2%Pluronic F127 溶液で調整した。混合物を攪拌した後に粒子径を測定した。最終サイズは 277nmであった。スラリーは疑似胃液、PBS(pH 7.4)及びラット血漿中で安定であった。
【0067】
有効性調査
ナノエトポシド製剤を膵管腺癌#03(PANC #03)における2つの別個の有効性調査で評価した。対照Cは、Physicians' Desk Reference,第46版, 741〜743 ページに記載される処方を用いて調整した2%非水性エトポシド溶液であった。上述のように、実験及び対照動物由来の腫瘍重量をモニターすることによって抗腫瘍活性を評価した。これらの調査は、本発明のエトポシド組成物が厳密な毒性反応で実証することなく高用量の薬剤を排出するための手段を提供することを具体的に示している。
【0068】
1.PANC #03のネズミの腫瘍モデルにおけるナノエトポシドについての有効性調査
【表5】

【0069】
実施例11〜16 タキソルのナノ粒子
実施例11
予備洗浄した酸化ジルコニウム媒体(1mm)およそ18mLを30mLアンバージャーに添加した。それにタキソル (Sigma Chemicals) 240mg及びTween 20 180mgを添加した。最後に、注射用水12mLをジャーに添加し、それを封じそしてローラーミルに11日間かけた。最終粒子径は 327nmであった。PBS(pH 7.4)及びラット血漿に暴露したときに、製剤は安定であった。
【0070】
実施例12
Tween 20を PVA (MW 30 〜70 k) に置き換えたことを除いて実施例11を繰り返した。最終粒子径は 365nmであった。
【0071】
前記サンプルを、マウス保有性初期段階乳房腺癌#16/Cにおける有効性調査で評価した。タキソル治療動物の腫瘍重量を未治療動物の腫瘍重量と比較することにより、抗腫瘍活性を評価した。エンド・ポイントとして死亡及び重量喪失による用量範囲調査によって毒性を評価した。すべてのサンプルをIV注射した。
【0072】
【表6】

【0073】
タキソル(NCI)の対照サンプルは入手可能ではない。しかしながら、Cremophore EL で製剤された一回量のタキソルは、総用量 25mg/kgで即死状態を引き起こした。しかしながら、本発明の組成物に処方されたタキソルは、全く明らかな悪影響を示すことなく 88mg/kgの用量で注射できる。
【0074】
実施例11と同様の方法で調整されたタキソル懸濁液を、それぞれ数種の表面修飾剤で処理した。新しい表面修飾剤の添加後、混合物を攪拌しそして粒子径及び流体安定性について評価した。すべての懸濁液が1%タキソル及び0.75%Tween 20を含有した。結果は以下のとおりである。
【0075】
【表7】

【0076】
*SA=やや凝集
実施例17〜18 WIN 59075 のナノ粒子
予備洗浄した酸化ジルコニウム媒体(1mm)およそ60mLを4oz( 120ml)アンバージャーに移した。それに続いてWIN 59075 1.5g及び注射用水28.5mLを添加した。ジャーに封をし、ローラーミルに置き、そして95 RPMで48時間瀑落せしめた。PCS分析で粒子径を求めると 322nmであったが、しかしながら巨大粒子が認められた。微粉砕を更に5日間続けた。
【0077】
先に調整したWIN 59075 スラリー 0.5mLを6%表面修飾剤溶液 0.5mLと混合せしめることにより実験を行った。薬剤の最終濃度は 2.5%であり、そして表面修飾剤の最終濃度は3%であった。次いでWIN 59075 の表面修飾剤安定化ナノ懸濁液をPBS(pH 7.0)又は 0.1N HCl (pH 1)のどちらかで処理した。光学顕微鏡観察を行って流体安定性を測定した。結果は以下のとおりであった。
【0078】
【表8】

【0079】
安定なWIN 59075 のナノ粒子が製造できるという結論に達した。
実施例19〜22 SR 4889 のナノ粒子
SR 4889 18.75g及び水3.75mLと共に、予備洗浄した酸化ジルコニウム媒体(1mm) 7.5mLを15mLアンバージャーに移した。11日間微粉砕後、ナノ懸濁液を媒体から分離した。各懸濁液のアリコート 100μLに界面活性剤溶液(2%) 100μLを添加して最終濃度0.25%薬剤及び1%界面活性剤とした。混合物を攪拌しそして粒子径について分析した。懸濁液10μLをラット血漿90μLと混合せしめることにより流体安定性を顕微鏡で評価した。結果は以下のとおりであった。
【0080】
【表9】

【0081】
実施例23 レチノイン酸のナノ粒子
予備洗浄した酸化ジルコニウム媒体30mLを60mLアンバージャーに移した。それにトランスレチノイン酸(Sigma)1g、チロキサポール 470mg及び水15mLを添加した。混合物をローラーミルで15日間微粉砕した。最終粒子径は 140nmであった。ナノ懸濁液は、ラット血漿及び疑似胃液のどちらかに暴露したときは安定であった。
【0082】
本発明の抗癌性組成物は、毒性低減及び/又は有効性増大を示し且つ注射投与可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)及び(b):
(a)クロロメチン、クロラムブシル、メルファラン、ウラムスチン、燐酸エキストラムスチン、メクロレタミンオキシド、イホスファミド、トリホスファミド、トレタミン、トリアジクオン、ミトマイシン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ミトブロニトール、ダカルバジン、プロカルバジン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、テガフール、シタラビン、イドクスウリジン、フルシトシン、メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、チアミプリン、ビダラビン、ペントスタチン、ピューロマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、テニポシド、アドリアマイシン、ダウノマイシン、ドクチノマイシン、ミスラマイシン、ブレオマイシン、ミトマイシン、L−アスパラギナーゼ、α−インターフェロン、レチノイン酸、プレドニソン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、ロイプロリド、シスプラチン、カルボプラチン、ミトキサントロン、ヒドロキシウレア、マイトテイン、アミノグルエチミド、アザチオプリン、スルファサァジン、メトキサレン及びサリドマイドからなる群より選ばれた、水への溶解度が室温で10mg/mL未満である結晶性抗癌剤、並びに
(b)平均粒径を400nm未満に維持せしめるに十分な量で前記抗癌剤の表面に吸着した少なくとも一種の無架橋表面修飾剤
を含んで成る安定なナノ粒子組成物であって、
該粒子はその粒子サイズを該表面修飾剤の存在下で機械的手段により低減して得られ、
該抗癌剤の存在量が、該抗癌剤と該表面修飾剤との合計質量を基準として99.9%〜10%の範囲内にあり、
該表面修飾剤の存在量が、該抗癌剤と該表面修飾剤との合計質量を基準として0.1%〜90%の範囲内にあり、かつ、該粒子の90質量%以上が400nm未満の平均粒子サイズを有することを維持するのに十分な量であり、そして
該粒子を含む分散体が、その調製後2日以上裸眼で観察できる凝集沈殿または粒子凝集を示さない
ことを特徴とするナノ粒子組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子の平均粒径が300nm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が注射可能である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも一種の表面修飾剤が、ゼラチン、カゼイン、レシチン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴル乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド二酸化珪素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非晶質セルロース、珪酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、チロキサポール、ポロキサマー、ポロキサミン、デキストラン、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホネート、脂肪酸のソルビタンエステル、ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースの混合物、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ウシ血清アルブミン、エチレンジアミンにエチレンオキシドとプロピレンオキシドを逐次付加して得られた4官能性ブロックコポリマー、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーからなる群より選ばれた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗癌剤がレチノイン酸である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗癌剤がレチノイン酸であり、且つ前記表面修飾剤がチロキサポールである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに第二の表面修飾剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに医薬用担体を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
固形剤もしくは液剤状態での経口投与用、非経口的注射用、直腸投与用、鼻腔内投与用、筋肉内投与用又は皮下投与用に処方された、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(a)水への溶解度が室温で10mg/mL未満である弱可溶性の結晶性抗癌剤を液体分散媒に分散させ、
(b)前記抗癌剤を硬質粉砕媒体の存在下で湿式摩砕し、その後
(c)前記抗癌剤に少なくとも一種の無架橋表面修飾剤を接触させて当該表面修飾剤を前記抗癌剤の表面に吸着せしめることにより、平均粒径400nm未満の抗癌剤粒子を形成させることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の安定な組成物の製造方法。
【請求項11】
(a)水への溶解度が室温で10mg/mL未満である弱可溶性の結晶性抗癌剤を液体分散媒に分散させ、そして
(b)前記抗癌剤を硬質粉砕媒体と少なくとも一種の無架橋表面修飾剤の存在下で湿式摩砕して当該表面修飾剤を前記抗癌剤の表面に吸着せしめることにより、平均粒径400nm未満の抗癌剤粒子を形成させることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の安定な組成物の製造方法。
【請求項12】
前記硬質粉砕媒体が、酸化ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、ガラス、ステンレススチール、チタニア及びアルミナからなる群より選ばれる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記硬質粉砕媒体が球状である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記硬質粉砕媒体の平均粒径が3mm未満である、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記硬質粉砕媒体の平均粒径が1mm未満である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記硬質粉砕媒体の密度が2.5g/cm3より高い、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記湿式粉砕が分散ミル又は媒体ミルにおいて行われる、請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ミルがボールミル、摩砕ミル、振動ミル、遊星形ミル、サンドミル又はビーズミルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記湿式粉砕が周囲温度において行われる、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記湿式粉砕が冷却条件下で行われる、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−265324(P2010−265324A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186927(P2010−186927)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【分割の表示】特願2008−138475(P2008−138475)の分割
【原出願日】平成5年6月29日(1993.6.29)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】