説明

ナノ粒子蛍光体

【課題】天然歯に近い青白色の蛍光を発する蛍光体であって、該蛍光体を含有する組成物を硬化した際には研磨滑沢性及び耐変色性に優れ、かつ、高い審美性を呈する硬化物を提供することができる蛍光体、該蛍光体を含有する重合硬化性組成物、該重合硬化性組成物からなる歯科用硬化性組成物、ならびに、該歯科用硬化性組成物からなるコンポジットレジンを提供すること。
【解決手段】アルミナ微粒子(A)及び、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)を含む蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、医療機器、その他一般工業製品に広く用いられる蛍光体に関する。また、歯科材料であって、天然歯同様の蛍光を発することにより、高い審美性が求められる充填用コンポジットレジン、及び、歯冠材料として好適に使用できる歯科用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤等から構成される歯科用硬化性組成物は、コンポジットレジンと呼ばれ、歯の欠損部や虫歯を修復するための材料として今日最も多用される歯科材料となっている。このような歯科用硬化性組成物が重合硬化した硬化物においては、天然歯と置換可能な十分な機械的強度、硬度、口腔内での噛み合わせ、歯ブラシ摩耗に対する耐磨耗性、表面滑沢耐久性、修復部分が天然歯と見分けがつかない高い審美性が要求される。
【0003】
また、天然歯は、紫外線照射によって蛍光を発し、太陽光下で明るさを与え、ブラックライト下では青白く見える。従って、歯科材料によって修復された部分が、天然歯と見分けがつかない程の審美性を示すためには、天然歯と同等の蛍光性を持つ歯科材料を用いる必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、複合体の蛍光性を増してより天然の歯に一致させるために少量の2,5−ジヒドロキシジエチルテレフタレートを添加することが記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、蛍光顔料として、ユーロピウム付活ピロリン酸ストロンチウム系無機顔料4種を歯科組成物中に配合する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−233605号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日歯技工誌 24:72〜78,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法においては、ブラックライト下の蛍光色が、青味が強く、修復部分と天然歯との識別が容易であり、審美的に満足のいくレベルではなかった。また、口腔内環境では、硬化物である修復物の変色が大きく、審美的に満足のいくものではなかった。
【0009】
非特許文献1に記載の方法においては、十分な蛍光強度を得るためには、ユーロピウム付活ピロリン酸ストロンチウム系無機顔料を組成物に多量に配合する必要があり、該無機顔料の平均粒子径が約6μmであることから、組成物硬化物の研磨滑沢性が満足のいくものではなかった。
【0010】
本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、天然歯に近い青白色の蛍光を発する蛍光体であって、該蛍光体を含有する組成物を硬化した際には研磨滑沢性及び耐変色性に優れ、かつ、高い審美性を呈する硬化物を提供することができる蛍光体、該蛍光体を含有する重合硬化性組成物、該重合硬化性組成物からなる歯科用硬化性組成物、ならびに、該歯科用硬化性組成物からなるコンポジットレジンを提供することにある。本発明はまた、前記蛍光体が、テレビ、プラズマディスプレイ等の電子機器、照明器具、標識、塗料、顔料、染料等、一般産業用途に広く用いることができるものであることを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに、アルミナ微粒子とベンゾフェノン骨格を有する化合物とを混合することによって、青白色の蛍光を発する蛍光体が得られることがわかった。
【0012】
本発明は、
〔1〕 アルミナ微粒子(A)及び、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)を含む蛍光体、
〔2〕 前記〔1〕記載の蛍光体、重合性単量体(C)、及び重合開始剤(D)を含有してなる重合硬化性組成物、
〔3〕 アルミナ微粒子(A)、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)、重合性単量体(C)、及び重合開始剤(D)を含有してなる重合硬化性組成物、
〔4〕 前記〔2〕又は〔3〕記載の重合硬化性組成物からなる歯科用硬化性組成物、ならびに
〔5〕 前記〔4〕記載の歯科用硬化性組成物からなるコンポジットレジン
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蛍光体は、天然歯に近い青白色の蛍光を発し、該蛍光体を配合した組成物を硬化した際には、研磨滑沢性及び耐変色性に優れる硬化物を得ることができる。また、該蛍光体を含有する組成物は、高い審美性が求められる充填用コンポジットレジン及び歯冠材料などの歯科材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施例1の蛍光体Iの蛍光スペクトルを示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例2の組成物の蛍光スペクトルを示す図である。
【図3】図3は、本発明の比較例1の組成物の蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】図4は、本発明の比較例2の組成物の蛍光スペクトルを示す図である。
【図5】図5は、本発明の比較例3の組成物の蛍光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の蛍光体は、アルミナ微粒子(A)とベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)を構成要素として含むものであり、アルミナ微粒子(A)とベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)を混合することにより得られる。なお、この蛍光体は、アルミナ微粒子を用いた場合のみ得られ、アルミナに代えて、歯科材料に用いられる他の無機微粒子を用いた場合には、得られない。
【0016】
本発明に用いられるアルミナ微粒子(A)としては、一般工業界で使用されているアルミナ微粒子から選択して使用することができる。アルミナ微粒子の組成、種類は、特に限定されないが、粒子径が小さいほど、蛍光発光強度が大きくなることから、平均一次粒子径1nm〜1000nmが好ましい。また、歯科用硬化性組成物に用いる場合、研磨滑沢性の点から、1nm〜300nmがより好ましい。さらに、組成や種類が異なるものを2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。なお、アルミナ微粒子の平均粒子径は、アルミナ微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、無作為に選択した複数(例えば、200個以上)のアルミナ微粒子の粒子径の平均値として測定できる。粒子径は、アルミナ微粒子の最長と最短の長さの算術平均をもって粒子径とし、凝集粒子である場合には、一次粒子の粒子径とする。
【0017】
前記アルミナ微粒子は、重合性単量体と組み合わせて歯科用硬化性組成物に用いることができることから、該アルミナ微粒子と重合性単量体との親和性を改善したり、該アルミナ微粒子と重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させたりするために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。
【0018】
かかる表面処理剤として、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の共有結合性の金属原子を有する有機金属化合物、また、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する酸性基含有有機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸性基含有有機化合物を用いることができる。有機金属化合物、酸性基含有有機化合物を2種以上使用する場合は、有機金属化合物と酸性基含有有機化合物の2種以上の化合物の混合物の表面処理層としてもよいし、有機金属化合物層と酸性基含有有機化合物とが複数積層した複層構造の表面処理層としてもよい。
【0019】
有機ケイ素化合物としては、RSiX4−nで表される化合物が挙げられる(式中、Rは炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0〜3の整数であり、但し、R及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい)。
【0020】
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等〕等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリル」及び「(メタ)アクリ」の表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
【0021】
この中でも、後述の重合性単量体(C)と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましく用いられる。
【0022】
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
【0023】
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニルアセテート等が挙げられる。
【0024】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
【0025】
リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0026】
ピロリン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、ピロリン酸ビスオクチル、ピロリン酸ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0027】
チオリン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、エチルジハイドロジェンチオホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンチオホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】
ホスホン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、ヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0029】
スルホン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、ベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
カルボン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、分子内に1つのカルボキシル基を有する化合物と、分子内に複数のカルボキシル基を有する化合物とが挙げられる。
【0031】
分子内に1つのカルボキシル基を有する化合物としては、オクタン酸、デカン酸、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート及びこれらの酸ハロゲン化物が挙げられる。
【0032】
分子内に複数のカルボキシル基を有する化合物としては、マロン酸、グルタル酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート及びこれらの酸無水物又は酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0033】
上記の有機金属化合物及び酸性基含有有機化合物は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。また、該アルミナ微粒子と後述の重合性単量体(C)との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、重合性単量体と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物を用いることがより好ましい。
【0034】
ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)は、一般工業界で使用されているベンゾフェノン骨格を有する化合物から選択して使用できる。該ベンゾフェノン骨格を有する化合物は、アルミナ微粒子の表面において、物理的に吸着しており、光増感剤として働き、紫外線を吸収して得たエネルギーをアルミナに渡すことにより発光すると推定される。
【0035】
ベンゾフェノン骨格を有する化合物としては、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノン等が挙げられる。
【0036】
前記ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)の配合量は、特に限定はされないが、天然歯に近い蛍光色を再現するため、アルミナ微粒子(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.001〜1.0重量部がより好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましい。なお、本明細書において、「配合量」とは、「配合量」又は「含有量」のことである。
【0037】
本発明の蛍光体は、前記アルミナ微粒子(A)とベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)を混合することにより得られるが、混合方法としては、特に限定はなく、例えば、乳鉢を用いて粉体混合する、又は、溶解させたベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)にアルミナ微粒子(A)を攪拌混合する方法が挙げられる。
【0038】
本発明の蛍光体は、ブラックライト(紫外線)を照射すると、青白い色の光を発する。また、微粒子であることから、比表面積が大きく、蛍光強度が大きい。
【0039】
本発明はまた、本発明の蛍光体と、重合性単量体(C)、重合開始剤(D)を含有する重合硬化性組成物(態様1)、ならびに、前記アルミナ微粒子(A)、前記ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)、重合性単量体(C)、及び重合開始剤(D)を含有する重合硬化性組成物(態様2)を提供する。
【0040】
態様1の組成物における、本発明の蛍光体の含有量は、重合性単量体100重量部に対して、2〜400重量部が好ましく、3.3〜333重量部がより好ましく、6.25〜333重量部がさらに好ましい。なお、本明細書において、重合性単量体100重量部とは、組成物に含有される重合性単量体の総量が100重量部であることを意味する。
【0041】
態様2の組成物における、アルミナ微粒子(A)の含有量は、重合性単量体100重量部に対して、2〜400重量部が好ましく、3.3〜333重量部がより好ましく、6.25〜333重量部がさらに好ましい。また、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)の含有量は、アルミナ微粒子(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.001〜1.0重量部がより好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましい。
【0042】
態様1及び態様2の組成物で用いられる重合性単量体(C)は、歯科用硬化性組成物等に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。重合性単量体(C)におけるラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル系の重合性単量体の例を以下に示す。
【0044】
(I)一官能性(メタ)アクリレート
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0045】
(II)二官能性(メタ)アクリレート
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、通称Bis−GMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)などが挙げられる。
【0046】
(III)三官能性以上の(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
【0047】
前記重合性単量体は、いずれも、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
なお、歯質、金属、セラミックスなどに対する接着性を向上させる場合、本発明の重合硬化性組成物には、これらの被着体に対する接着性を付与する機能性モノマーを重合性単量体として含有させることが好ましい場合がある。
【0049】
機能性モノマーとして、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー、及び11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などのカルボン酸基を有するモノマーは、歯質や非金属に対して優れた接着性を呈するので好ましい。
【0050】
また、機能性モノマーとして、例えば、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート、6−(4−ビニルベンジル−n−プロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオン、特開平10−1473号公報に記載のチオウラシル誘導体や特開平11−92461号公報に記載の硫黄元素を有する化合物は、貴金属に対して優れた接着性を呈するので、好ましい。
【0051】
さらに、機能性モノマーとして、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤は、セラミックス、陶材、歯科用コンポジットレジンへの接着に効果的である。
【0052】
態様1及び態様2の組成物に用いられる重合開始剤(D)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。なかでも、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
【0053】
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル類、α−アミノケトン類などが挙げられる。
【0054】
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルホスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、及びこれらの塩などが挙げられる。ビスアシルホスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0055】
上記光重合開始剤として用いられる水溶性アシルホスフィンオキサイド類は、アシルホスフィンオキサイド分子内にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ピリジニウムイオン又はアンモニウムイオンを有することが好ましい。例えば、水溶性アシルホスフィンオキサイド類は、欧州特許第0009348号明細書又は特開昭57−197289号公報に開示されている方法により合成することができる。
【0056】
上記水溶性アシルホスフィンオキサイド類の具体例としては、モノメチルアセチルホスホネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソプロピル)ホスホネート・ナトリウム、モノメチルベンゾイルホスホネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソブチル)ホスホネート・ナトリウム、モノメチル(2−メチル−1−オキソプロピル)ホスホネート・ナトリウム、アセチルホスホネート・ナトリウム、モノメチルアセチルホスホネート・ナトリウム、アセチルメチルホスホネート・ナトリウム、メチル4−(ヒドロキシメトキシホスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、メチル−4−オキソホスホノブタノエート・モノナトリウム塩、アセチルフェニールホスフィネート・ナトリウム塩、(1−オキソプロピル)ペンチルホスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシペンチルホスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、アセチルペンチルホスフィネート・ナトリウム、アセチルエチルホスフィネート・ナトリウム、メチル(1,1−ジメチル)メチルホスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルホスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルホスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシメチルホスフィニル)−4−オキソブタノエート・リチウム塩、4−(ヒドロキシメチルホスフィニル)−4−オキソブタノイックアシッド・ジリチウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリディン−2−イル)ホスホナイト・ナトリウム塩、(2−メチルパーヒドロ−1,3−ディアジン−2−イル)ホスホナイト・ナトリウム塩、アセチルホスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)ホスホナイト・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)メチルホスホナイト・ナトリウム塩、メチル(2−メチルオキサチオラン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2,4,5−トリメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1,1−プロポキシエチル)ホスフィネート・ナトリウム塩、(1−メトキシビニル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、(1−エチルチオビニル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−ジアジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−チアジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジアゾリジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、(2,2−ジシアノ−1−メチルエチニル)ホスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルホスフィネートオキシム・ナトリウム塩、アセチルメチルホスフィネート−O−ベンジルオキシム・ナトリウム塩、1−[(N−エトキシイミノ)エチル]メチルホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルイミノエチル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルヒドラゾンエチル)ホスフィネート・ナトリウム塩、[1−(2,4−ジニトロフェニルヒドラゾノ)エチル]メチルホスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルホスフィネートセミカルバゾン・ナトリウム塩、(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、(ジメトキシメチル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、フォーミルメチルホスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−オキソプロピル)ホスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルホスフィネート・ドデシルグアニジン塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルホスフィネート・イソプロピルアミン塩、アセチルメチルホスフィネートチオセミカルバゾン・ナトリウム塩、1,3,5−トリブチル−4−メチルアミノ−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルホスフィネート、1−ブチル−4−ブチルアミノメチルアミノ−3,5−ジプロピル−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルホスフィネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドのアンモニウム塩などが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物も挙げられる。
【0057】
これら(ビス)アシルホスフィンオキサイド類及び水溶性アシルホスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩が好ましい。
【0058】
上記光重合開始剤として用いられるチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩としては、例えば、チオキサントン、2−クロルチオキサンセン−9−オン、2−ヒドロキシ−3−(9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1−メチル−9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1,3,4−トリメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
【0059】
これらチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩の中でも、好適なチオキサントン類は、2−クロルチオキサンセン−9−オンであり、好適なチオキサントン類の第4級アンモニウム塩は、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドである。
【0060】
上記光重合開始剤として用いられるケタール類の例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。
【0061】
上記光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが好ましい。
【0062】
上記光重合開始剤として用いられるクマリン類の例としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0063】
上述のクマリン化合物の中でも、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
【0064】
上記光重合開始剤として用いられるアントラキノン類の例としては、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
【0065】
上記光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0066】
上記光重合開始剤として用いられるα−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0067】
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類及び水溶性アシルホスフィンオキサイド類、α−ジケトン類、及びクマリン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す組成物が得られる。
【0068】
本発明に用いられる重合開始剤(D)のうち化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0069】
上記化学重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
【0070】
上記化学重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0071】
上記化学重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0072】
上記化学重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
【0073】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
【0074】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
【0075】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0076】
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドがより好ましく用いられる。
【0077】
態様1及び態様2の組成物に用いられる重合開始剤(D)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体100重量部に対して、重合開始剤(D)が0.001〜30重量部含有されることが好ましい。重合開始剤(D)の配合量が0.001重量部以上の場合、重合が十分に進行して、機械的強度及び/又は接着力の低下を招くおそれがなく、より好適には0.05重量部以上、さらに好適には0.10重量部以上である。一方、重合開始剤(D)の配合量が30重量部以下であると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合でも十分な機械的強度及び/又は接着強さが得られ、さらには組成物からの析出を招くおそれがないため、より好適には20重量部以下、さらに好適には15重量部以下である。
【0078】
また、態様1及び態様2の重合硬化性組成物は、硬化物の機械的強度の向上の観点から、充填材(E)を含有することが好ましい。
【0079】
態様1及び態様2の組成物で用いられる充填材(E)は、歯科用硬化性組成物等に使用される公知の充填材が何ら制限無く用いられる。このような充填材は、一般的に、無機フィラー、無機超微粒子、有機無機複合フィラー、有機フィラーに大別される。単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
無機フィラーとしては、歯科用硬化性組成物等に使用される公知の無機粒子が何ら制限なく使用される。該無機フィラーとしては、各種ガラス類〔シリカを主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウム等の酸化物を含有する。例えば、溶融シリカ、石英、ソーダライムシリカガラス、Eガラス、Cガラス、ボロシリケートガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)等の一般的な組成のガラス粉末;バリウムガラス(GM27884、8235、ショット社製、Ray−SorbE2000、Ray−SorbE3000、SpecialtyGlass社製)、ストロンチウム・ボロシリケートガラス(Ray−SorbE4000、SpecialtyGlass社製)、ランタンガラスセラミックス(GM31684、ショット社製)、フルオロアルミノシリケートガラス(GM35429、G018−091、G018−117、ショット社製)などの歯科用ガラス粉末〕、各種セラミック類、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア等の複合酸化物、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、シリカを主成分として含むもの(シリカを25重量%以上、好ましくは40重量%以上含むもの)が好適である。
【0081】
該無機フィラーの平均粒子径としては、0.1〜3.0μmが好ましく、0.1〜0.9μmがより好ましく、0.1〜0.7μmがさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm以上では、機械的強度が十分であり、ペーストにべたつきがなく操作性が良好となり、3.0μm以下であると、硬化物の研磨滑沢性や滑沢耐久性を損なうおそれがない。なお、無機フィラーの平均粒子径は、レーザー回折散乱法により、求めることができる。具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
【0082】
前記無機フィラーは、重合性単量体と組み合わせて歯科用硬化性組成物に用いることができることから、該無機フィラーと重合性単量体との親和性を改善したり、該無機フィラーと重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させたりするために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。かかる表面処理剤としては、前記アルミナ微粒子で例示した有機金属化合物、酸性基含有有機化合物を同様に用いることができる。
【0083】
無機フィラーの形状としては特に制限されることなく、不定形もしくは球形の粒子の粉末として用いることができる。不定形の無機フィラーを用いると、機械的強度及び耐磨耗性に優れ、球形の無機フィラーを用いると、研磨滑沢性及び滑沢耐久性に優れる。無機フィラーの形状は歯科用硬化性組成物の目的に応じて適宜選択することができる。
【0084】
無機超微粒子としては、歯科用硬化性組成物等に使用される公知の無機超微粒子が何ら制限なく使用される。好ましくは、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ化イットリウム、フッ化イッテルビウム等が挙げられる。好ましくは、火炎熱分解法で作製されるシリカ、アルミナ、チタニア等の粒子であり、例えば、日本アエロジル社製、商品名:アエロジル、アエロキサイドAluC、アエロキサイドTiOP25、アエロキサイドTiOP25S、VP Zirconium Oxide 3−YSZ、VP Zirconium Oxide 3−YSZ PHが挙げられる。なお、態様2の組成物においてアルミナ微粒子を用いた場合、一部は充填材(E)として、一部はアルミナ微粒子(A)としての役割を発揮する。
【0085】
優れたペースト性状を得るため、無機超微粒子の平均粒子径としては、5〜50nmが好ましく、10〜40nmがより好ましい。なお、無機超微粒子の平均粒子径は、超微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、無作為に選択した複数(例えば、200個以上)の超微粒子の粒子径の平均値として測定できる。なお、超微粒子が非球状である場合には、粒子径は、超微粒子の最長と最短の長さの算術平均をもって粒子径とし、凝集粒子である場合には、一次粒子の粒子径とする。
【0086】
前記無機超微粒子は、前記無機フィラーと同様に、重合性単量体と組み合わせて歯科用硬化性組成物に用いることができることから、該無機超微粒子と重合性単量体との親和性を改善したり、該無機超微粒子と重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させたりするために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。かかる表面処理剤としては、前記アルミナ微粒子で例示した有機金属化合物、酸性基含有有機化合物を同様に用いることができる。
【0087】
有機無機複合フィラーとしては、歯科用硬化性組成物等に使用される公知の有機無機複合粒子が何ら制限なく使用される。一般的に、有機無機複合粒子は、前記無機フィラー、及び/又は、前記無機超微粒子に重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕することにより得られるものである。該有機無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。
【0088】
該有機無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、該有機無機複合フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0089】
該有機無機複合粒子フィラーは、前記無機フィラーと同様に、重合性単量体と組み合わせて歯科用硬化性組成物に用いることができることから、該有機無機複合フィラーと重合性単量体との親和性を改善したり、該有機無機複合フィラーと重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させたりするために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。かかる表面処理剤としては前記アルミナ微粒子で例示した有機金属化合物、酸性基含有有機化合物を同様に用いることができる。
【0090】
有機フィラーとしては、歯科用硬化性組成物等に使用される公知の有機フィラーが何ら制限なく使用される。当該有機フィラーの素材としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0091】
当該有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、当該有機フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0092】
態様1及び態様2の組成物に用いられる充填材(E)の配合量は、特に限定されないが、重合性単量体(C)100重量部に対して、50〜1900重量部が好ましく、100〜900重量部がより好ましく、150〜850重量部がさらに好ましい。なお、ここでいう充填材の配合量とは、組成物に含有される充填材の総量を意味する。
【0093】
また、本発明の態様1及び態様2の組成物は、重合促進剤を含むことが好ましい。本発明に用いられる重合促進剤としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
【0094】
重合促進剤として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
【0095】
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0096】
重合促進剤として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
【0097】
重合促進剤として用いられるボレート化合物は、好ましくはアリールボレート化合物である。好適に使用されるアリールボレート化合物を具体的に例示すると、1分子中に1個のアリール基を有するボレート化合物として、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びトリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
【0098】
また、1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物としては、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、ジアルキルジ(p−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0099】
さらに、1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリ(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びモノアルキルトリ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基又はn−ドデシル基等から選択される1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0100】
さらに1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素、(p−フロロフェニル)トリフェニルホウ素、(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルトリフェニルホウ素、(p−ニトロフェニル)トリフェニルホウ素、(m−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(m−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素及び(p−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0101】
これらアリールボレート化合物の中でも、保存安定性の観点から、1分子中に3個又は4個のアリール基を有するボレート化合物を用いることがより好ましい。また、これらアリールボレート化合物は1種又は2種以上を混合して用いることも可能である。
【0102】
重合促進剤として用いられるバルビツール酸誘導体としては、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−1−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−メチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、1,5−ジエチルバルビツール酸、1−エチル−5−メチルバルビツール酸、1−エチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジエチル−5−ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−メチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−オクチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルバルビツール酸、5−ブチル−1−シクロヘキシルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(アルカリ金属又はアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸類の塩としては、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウム等が例示される。
【0103】
好適なバルビツール酸誘導体としては、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩が挙げられる。
【0104】
重合促進剤として用いられるトリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が例示される。
【0105】
上記で例示したトリアジン化合物の中で好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
【0106】
重合促進剤として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
【0107】
重合促進剤として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
【0108】
重合促進剤として用いられるバナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物類である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物類としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等の特開2003−96122号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0109】
重合促進剤として用いられるハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に用いられる。
【0110】
重合促進剤として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
【0111】
重合促進剤として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0112】
重合促進剤として用いられる亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0113】
重合促進剤として用いられる亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。
【0114】
重合促進剤として用いられるチオ尿素化合物としては、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素等が挙げられる。
【0115】
本発明に用いられる重合促進剤の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体100重量部に対して、重合促進剤を0.001〜30重量部含有してなることが好ましい。重合促進剤の配合量が0.001重量部以上の場合、重合が十分に進行して、機械的強度及び/又は接着力の低下を招くおそれがなく、より好適には0.05重量部以上、さらに好適には0.1重量部以上である。一方、重合促進剤の配合量が30重量部以下であると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合にでも十分な機械的強度、及び、又は、接着強さが得られ、さらには組成物からの析出を招くおそれがないため、より好適には20重量部以下である。
【0116】
本発明の態様1の組成物は本発明の蛍光体を含有し、態様2の組成物はアルミナ微粒子とベンゾフェノン骨格を有する化合物を含有することから、それぞれ、天然歯に近い青白色の蛍光を発するため、態様1及び態様2の組成物は、歯科用硬化性組成物として用いることができる。従って、本発明はまた、態様1又は態様2の組成物からなる歯科用硬化性組成物を提供する。
【0117】
本発明の蛍光体は、粉体、液体、固体など、形態を問わず使用できる。よって、態様1の組成物を歯科用硬化性組成物として用いる場合は、蛍光体100重量部に対し、重合性単量体(C)25〜5000重量部、重合開始剤(D)0.0025〜1500重量部、充填材(E)12.5〜95000重量部が好ましく、重合性単量体(C)30〜3000重量部、重合開始剤(D)0.125〜1000重量部、充填材(E)25〜45000重量部がより好ましく、重合性単量体(C)30〜1600重量部、重合開始剤(D)0.250〜750重量部、充填材(E)37.5〜42500重量部がさらに好ましい。
【0118】
また、態様2の組成物を歯科用硬化性組成物として用いる場合は、アルミナ微粒子(A)100重量部に対し、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)0.001〜5重量部、重合性単量体(C)25〜5000重量部、重合開始剤(D)0.0025〜1500重量部、充填材(E)12.5〜95000重量部が好ましく、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)0.001〜1.0重量部、重合性単量体(C)30〜3000重量部、重合開始剤(D)0.125〜1000重量部、充填材(E)25〜45000重量部がより好ましく、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)0.001〜0.5重量部、重合性単量体(C)30〜1600重量部、重合開始剤(D)0.250〜750重量部、充填材(E)37.5〜42500重量部がさらに好ましい。
【0119】
本発明の歯科用硬化性組成物には、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、本発明の蛍光体以外の蛍光剤などをさらに添加することも可能である。
【0120】
例えば、硬化後の表面からフッ素イオン徐放性を期待する場合、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ素イオン徐放性フィラーを添加することもできる。
【0121】
抗菌性を期待する場合は、例えば、セチルピリジニウムクロライド、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイドなどの抗菌活性を有する界面活性剤や光触媒性酸化チタンを添加することができる。
【0122】
また、本発明の歯科用硬化性組成物は、プライマー、ボンディング材、コンポジットレジン、セメント(レジンセメント、レジン強化型グラスアイオノマーセメント)、小窩裂溝填塞材、義歯床用レジン等として用いることができるが、本発明の歯科用硬化性組成物は高い審美性を提供することができることから、コンポジットレジンとして好適に用いられる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において用いられる試験方法、材料等を以下にまとめて示す。
【0124】
〔粉末の粒子径の測定〕
粉末の粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)を用いて写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の平均粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア〔Macview(株式会社マウンテック)〕を用いて求める。このとき、粒子の粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径(一次平均粒子径)が算出される。
【0125】
〔蛍光スペクトル〕
蛍光光度計(日本分光FP6500)を用いて、励起波長365nmでの蛍光スペクトルを測定する。
【0126】
〔製造例1〕アルミナ微粒子A−1の製造
市販アルミナ(日本アエロジル社製、AEROXIDE Alu C、平均一次粒子径13nm)100重量部に対して、30重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、アルミナ微粒子A−1を得た。
【0127】
〔製造例2〕アルミナ微粒子A−2の製造
市販アルミナ(日本アエロジル社製、AEROXIDE Alu C、平均一次粒子径13nm)を公知の方法により、遠心分離器を用いて分級操作を行い、平均一次粒子径7nmのアルミナ粉体を得た。このアルミナ粉体100重量部に対して、40重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、アルミナ微粒子A−2を得た。
【0128】
〔製造例3〕アルミナ微粒子A−3の製造
市販アルミナ(CIKナノテック社製、酸化アルミニウム、平均一次粒子径30nm)100重量部に対して、25重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、アルミナ微粒子A−3を得た。
【0129】
〔製造例4〕アルミナ微粒子A−4の製造
市販アルミナ(大明化学社製、高純度アルミナ粉体TM−DAR、平均一次粒子径170nm)100重量部に対して、15重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、アルミナ微粒子A−4を得た。
【0130】
〔製造例5〕アルミナ微粒子A−5の製造
市販アルミナ(大明化学社製、高純度アルミナ粉体TM−5D、平均一次粒子径230nm)100重量部に対して、13重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、アルミナ微粒子A−5を得た。
【0131】
〔製造例6〕アルミナ微粒子A−6の製造
市販アルミナ(日本軽金属社製、微粒アルミナA33F、平均一次粒子径700nm)100重量部に対して、4重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、アルミナ微粒子A−6を得た。
【0132】
実施例1
アルミナ微粒子(A−1)100重量部に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部を配合して、乳鉢を用いて混合し、蛍光体Iを得た。
【0133】
実施例2
重合性単量体(C)としてトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(以降、3Gと略す)100重量部に、重合開始剤(D)としてα−カンファーキノン0.2重量部、及び重合促進剤としてN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル0.3重量部を溶解させて、重合性組成物(C’−1)を調製した。
【0134】
アルミナ微粒子(A−1)100重量部に、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.3重量部及び重合性組成物(C’−1)1300重量部を配合、混合して組成物を得た。得られた組成物は、ハロゲン照射器を用いて光硬化させた。
【0135】
比較例1
アルミナ微粒子(A−1)100重量部に、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール14重量部及び実施例2と同様に作製した重合性組成物(C’−1)1300重量部を配合、混合して組成物を得た。得られた組成物は、ハロゲン照射器を用いて光硬化させた。
【0136】
比較例2
アルミナ微粒子(A−1)100重量部に、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)14重量部及び実施例2と同様に作製した重合性組成物(C’−1)1300重量部を配合、混合して組成物を得た。得られた組成物は、ハロゲン照射器を用いて光硬化させた。
【0137】
比較例3
アルミナ微粒子(A−1)100重量部に、実施例2と同様に作製した重合性組成物(C’−1)1300重量部を配合、混合して組成物を得た。得られた組成物は、ハロゲン照射器を用いて光硬化させた。
【0138】
得られた蛍光体はそのまま、組成物は厚さ1mmの硬化物片について、蛍光スペクトルを測定した。結果を図1〜5に示す。
【0139】
図1〜5より、紫外線を吸収することのできる化合物として、ベンゾフェノン骨格を有する化合物をアルミナ微粒子と組み合わせることにより、蛍光性を示すことがわかる。
【0140】
実施例3〜17及び比較例4、9〜10
重合性単量体(C)として、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン(Bis−GMA)75重量部、3G25重量部、重合開始剤(D)としてα−カンファーキノン0.5重量部、及び重合促進剤としてN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル1.0重量部を溶解させて、重合性組成物(C’−2)を調製した。
【0141】
表1又は表2に記載された配合比で、得られた重合性組成物(C’−2)に、ベンゾフェノン骨格を有する化合物として2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(B−1)又は2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(B−2)を溶解したところに、アルミナ微粒子(A)として前記製造例で製造したアルミナ微粒子又は該アルミナ微粒子の表面未処理品(A−7)、又は充填材(E)でもあるシリカ微粒子AEROSIL 130(日本アエロジル社製、平均一次粒子径16nm)又は酸化チタン微粒子AEROXIDE TiO P25(日本アエロジル社製、平均一次粒子径21nm)を添加するか、あるいは、実施例1記載の蛍光体Iを添加して、さらに、充填材(E)としてバリウムガラス粉表面処理品(SCHOTT社製、8235UF0.7、表面処理品)を添加して混合練和して均一にしたものを真空脱泡し、実施例3〜17及び比較例4、9〜10の歯科用硬化性組成物を得た。
【0142】
比較例5
ベンゾフェノン骨格を有する化合物を添加しない以外は、実施例3と同様にして歯科用硬化性組成物を得た。
【0143】
比較例6〜8
表2に記載された配合比で、実施例3と同様にして得られた重合性組成物(C’−2)に、蛍光顔料である2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル、又は、ユーロピウム付活ピロリン酸ストロンチウム(日亜化学社製、NP−101)を分散させ、そこに、アルミナ微粒子(A)として前記製造例で製造したアルミナ微粒子を添加して、さらに、充填材(E)としてバリウムガラス粉表面処理品(SCHOTT社製、8235UF0.7、表面処理品)を添加して混合練和して均一にしたものを真空脱泡し、比較例6〜8の歯科用硬化性組成物を得た。
【0144】
得られた歯科用硬化性組成物について、以下の試験例1〜3に従って、特性を調べた。結果を表1及び2に示す。
【0145】
試験例1(蛍光色調)
得られた歯科用硬化性組成物をハロゲン照射器を用いて光硬化させた硬化物の試験片(10mmφ×1mm)を作製した。また、人抜去歯を研磨し、厚さ1mmの人歯試験片を作製した。約20cmの距離から、ブラックライト(波長365nm)を照射した状態で、硬化物試験片、及び、人歯試験片を写真撮影した。得られた写真に映し出されている硬化物試験片像の色(白背景のL*,a*,b*)を測定し、同様に測定した人歯試験片の色(白背景のL*,a*,b*)との色差ΔE*を下式より求めた。
ΔE*={(L*−L*+(a*−a*+(b*−b*1/2
なお、色は、分光色差計(日本電色工業社製、SE6000、光源D65/2)を用いて、測定した。ΔE*は小さいほど良く、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0146】
試験例2(耐変色性)
試験例1と同様にして得られた硬化物の試験片(10mmφ×1mm)を作製した。試験片を37℃水中に2週間浸漬し、浸漬前後の色(白背景のL*,a*,b*)を測定し、下式から色差ΔE*を求めた。
ΔE*={(L*−L*+(a*−a*+(b*−b*1/2
なお、色は、分光色差計(日本電色工業社製、SE6000、光源D65/2)を用いて、測定した。ΔE*は小さいほど良く、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0147】
試験例3(研磨滑沢性)
得られた歯科用硬化性組成物をステンレス製の金型(厚さ1mm、直径15mm)に充填した。上下面をスライドガラスで圧接し、両面から各2分間光照射して硬化させた。硬化物は金型から取り出した後、800番の耐水研磨紙で研磨し、この研磨面を、技工用ポリッシングボックス(KAVO社製、EWL80)を用いて、3000回転/分でバフ研磨を20秒行った。研磨材はポーセニーハイドン(東京歯材社製)を用いた。この面の光沢を光沢度計(日本電色工業製VG−107)を用いて測定し、鏡の光沢を100としたときの割合(光沢度)を算出した。なお、測定の角度は、60度とした。光沢度は、高いほど良く、80以上が好ましく、85以上がより好ましい。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
表1〜2より、実施例の歯科用硬化性組成物は、天然歯に近い蛍光を発し、研磨滑沢性及び耐変色性に優れる硬化物を提供することができることがわかる。また、アルミナ微粒子の一次平均粒子径が小さいほど、天然歯に近い蛍光であり、研磨滑沢性に優れる。さらに、この蛍光は、無機微粒子の中で、アルミナ微粒子に特有の現象であり、微粒子の表面処理の有無に関係なく、発現することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の蛍光体を含有する歯科用組成物は、天然歯に近い蛍光を発し、研磨滑沢性及び耐変色性に優れる硬化物を提供することができ、歯科医療の分野において、コンポジットレジンとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ微粒子(A)及び、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)を含む蛍光体。
【請求項2】
アルミナ微粒子(A)の平均粒子径が1〜1000nmであることを特徴とする請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
アルミナ微粒子(A)100重量部に対して、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)0.001〜5重量部を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体。
【請求項4】
アルミナ微粒子(A)が、有機金属化合物及び酸性基含有有機化合物からなる群より選択される少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の蛍光体。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の蛍光体、重合性単量体(C)、及び重合開始剤(D)を含有してなる重合硬化性組成物。
【請求項6】
アルミナ微粒子(A)、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(B)、重合性単量体(C)、及び重合開始剤(D)を含有してなる重合硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、充填材(E)を含有してなる、請求項5又は6記載の重合硬化性組成物。
【請求項8】
請求項5〜7いずれか記載の重合硬化性組成物からなる歯科用硬化性組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の歯科用硬化性組成物からなるコンポジットレジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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