説明

ナノ粒子/ナノファイバによる化学センサ、そのセンサのアレイ、その使用及び製造方法、並びに検体の検出方法

【課題】ナノ粒子/ナノファイバに基づく化学センサ装置及びそのような装置のアレイ、その製造方法、及びその使用方法に関し、さらに検体の検出方法に関する。
【解決手段】導電性または半導体性の粒子またはファイバを有する基板1上の検体感知層3と、少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたは少なくとも1種のポリマー電解質を有する前記検体感知層上のポリマー層とを有する化学センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子(nanoparticle)/ナノファイバ(nanofiber)に基づく化学センサ及びそのようなセンサのアレイ、その製造方法、及びその使用方法に関し、さらに検体(analyte)の検出方法に関する。特に、本発明は、向上した選択性及び/または感度を有する化学センサに関し、向上した選択性及び/または感度で検体を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、ナノ粒子を検体の検出に用いることができることが知られている。それらは、例えば、ケミレジスタ(chemiresistor)センサまたは光学センサに使用され、ここで、検出しようとする検体の存在に応答して光学または電気特性が変化する。
【0003】
導電性ナノ複合材料に基づく、流体(例えば気体及び蒸気)中の検体を検出するためのケミレジスタセンサは、非導電性または半導体性の媒体中に配置された電気伝導性の成分を含む。導電性の成分としては、金属ナノ粒子、カーボンブラックナノ粒子、または導電ナノファイバが用いられうる。非導電性の成分は、典型的には中に導電性粒子が分布される連続相として働く有機材料である。非導電性材料は、また、金属ナノ粒子のリガンド(ligand)として、また、3Dネットワーク中で粒子を結合するために働く、官能基を有する有機分子も有してよい。
【0004】
これらのセンサの作用している原理は、複合材料における検体の収着(ソープション:sorption)によって生じる膜抵抗における変化の測定を有する。検体の存在において体積の変化を経験するために、ケミレジスタの感度は複合材料の能力によることが確信される。ケミレジスタの化学選択性は、化学組成とナノ複合材料の有機の成分における特定の官能基の存在に有る程度依存する。典型的には、これらのケミレジスタの検体の検出限界は、低いパート・パー・ミリオン(ppm)濃度領域にある。
【0005】
感知層の化学組成の変更による、検体に対する無機/有機複合ケミレジスタの感度と化学選択性の向上のために多数の研究が実行された[1]。金属酸化物感知層の上層に半透過膜を配置することによる、金属酸化物ケミレジスタの選択性の向上の研究が知られている[2]。センサから空間的に分離された補助的(ancillary)濃縮素子(preconcentrator)を用いた気相/蒸気センサの選択性の向上の研究も知られている[3]。上述の従来技術は以下のようにまとめられる:
【0006】
[1]無機/有機ナノ複合ケミレジスタの選択性/感度の向上
特許文献1は、リンカー(linker)分子中に選択性向上ユニットを導入した高選択性のナノ粒子/有機結合センサの形成方法を記載している。選択性向上官能基の近接近(close proximity)に追加の微調整ユニットを導入することで選択性の微調整を達成できる。
特許文献2は、チオールでカプセル化した(thiol-encapsulated)Auナノ粒子の膜に基づくセンサを記載しており、それによって目的の検体の収着のための活性部位を提供するリガンドシェルへの官能基の導入により、センサの選択性が調整されている。
特許文献3は、ポリマー及び/またはポリマー/モノマー混合物のブレンドを用いて、有機成分の組成を変えることで、カーボンブラック/ポリマーケミレジスタの選択性の調整方法を開示している。
【0007】
[2]半透過膜を用いた金属酸化物ケミレジスタセンサの化学選択性の向上
特許文献4は、酸化ガリウム層の上層への二酸化シリコンか他のガス感知金属酸化物のいずれかを有するフィルタ層の堆積による、酸化ガリウム半導体ガスセンサの選択性を増加させるための方法を記載している。
非特許文献1は、商業的な半導体ガスセンサ(FIGARO)の選択性を高める熱抵抗性のポリマー被膜の使用方法を記載している。
非特許文献2は、電界効果ガスセンサの選択性の変更のためのポジ型およびネガ型フォトレジスト膜の使用方法を記載している。
【0008】
[3]気相/蒸気センサの例の感度の向上のための補助的濃縮素子
特許文献5は、高選択性の小型化した化学分析システムを形成するために用いられる化学濃縮素子を記載している。
非特許文献3は、検体の検出限界を低減する(即ちセンサの感度を高める)ためのカーボン粒子が混ぜられたポリマー膜からなるケミレジスタのアレイに結合されたマイクロマシン化したホットプレート濃縮素子を記載している。
非特許文献4は、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムと多数成分の蒸気混合物の分析のための金属ナノ粒子のケミレジスタのアレイに連結された二重の吸着体(dual-adsorbent)のキャピラリの小型濃縮素子の使用方法を記載している。
【0009】
非特許文献5は、一重壁(single-walled)のカーボンナノチューブ(SWNT)を記載しており、ここで、カーボンナノチューブのネットワークが化学選択的ポリマー層によって被覆されている。結果として得られるセンサは遅い応答速度を有すると記載されている。ポリマー層は100nmより大きい厚みを有する。
【特許文献1】EP1215485A1号公報
【特許文献2】WO9927357号パンフレット
【特許文献3】US6290911号公報
【特許文献4】US6012327号公報
【特許文献5】US6171378号公報
【特許文献6】US5208111号公報
【特許文献7】PCT/EP02/13309、2002年11月26日出願
【非特許文献1】K. K. Wong et al., Tencon '95. Proc. IEEE Int. Conference on Microelectronics and VLSI, 1995, 179-182
【非特許文献2】E. Hedborg et al., Sensors and Actuators B 7, 1992, 661-664
【非特許文献3】Davis et al., Sensors and Actuators B 104, 2005, 207-216
【非特許文献4】Q.-Y. Cai et al., Anal. Chem. 74, 2002, 3533-3539
【非特許文献5】Snow et al., Science, 307, 2005, 1942-1945
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術の研究で得られた見込みのある結果にもかかわらず、センサ、例えばケミレジスタの対象検体に対する感度と選択性の向上がまだ必要である。従って、高められた感度及び/または選択性を有するナノ粒子に基づく向上した化学センサを提供することが本発明の目的であった。さらに、ここで用いられる全く同じナノ粒子材料に基づいていても、化学的に互いに別個の選択パターンを持つセンサの製造を可能にする、ナノ粒子に基づく化学センサの製造方法を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらのすべての問題は、
基板と、
平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満である導電性または半導体性の粒子またはファイバを有する前記基板上の検体感知層と、
少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたは少なくとも1種のポリマー電解質を有する前記検体感知層上のポリマー層と
を有する、化学センサにより解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ある実施形態において、前記検体感知層は、平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは1〜100nm、最も好ましくは1〜50nmの範囲の直径である導電性または半導体性の粒子を有する。
【0013】
上述のナノ粒子(nanoparticle)は、ナノ球体(nanosphere)、ナノロッド(nanorod)、ナノディスク(nanodisk)を含んで、しかしこれらに限定されることなく、多数の形状をとってもよい、あるいは、それらは、例えばマルチポッド(multi-pod)、星状(star like)あるいはスパイク状(spiky)などの不規則な形状またはフラクタル形状を有してもよい。
【0014】
好ましい実施形態において、前記検体感知層はファイバを含まず、有機ポリマー媒体(medium)及び/または有機リガンド(ligand)及び/または有機リンカー(linker)を含んだこれらの粒子のみを有する。
【0015】
ある実施形態において、前記検体感知層は、有機媒体好ましくは有機ポリマー媒体をさらに有し、有機ポリマー媒体は非導電性または半導体性であり、前記導電性または半導体性の粒子は前記有機媒体に埋め込まれている。前記導電性または半導体性の粒子は好ましくは前記有機媒体により互いに分離されている。
【0016】
他の実施形態において、前記検体感知層は有機ポリマー媒体を有さず、前記導電性または半導体性の粒子は有機リンカー分子によって互いに結合されており、または、前記導電性粒子は有機リガンド分子によって覆われている。
【0017】
ファイバの場合、好ましくは、これらは有機媒体に埋め込まれておらず、あるいは有機リンカーまたはリガンド分子によって結合も覆われてもいない。それらは単純に、有機媒体なしで、また、有機リンカーまたはリガンド分子なしで、前記基板上に堆積されている。
【0018】
ある実施形態において、前記検体感知層は、1μm以下、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは1〜300nmの範囲の厚さを有する。
【0019】
ある実施形態において、前記ポリマー層は、10μm未満、好ましくは1μm未満、さらに好ましくは100nm以下、またさらに好ましくは70nm未満、最も好ましくは1〜50nmの範囲の厚さを有する。
【0020】
ある実施形態において、前記ポリマー層と前記検体感知層の厚さの比は0.001〜10000の範囲であり、好ましくは0.01〜10の範囲であり、さらに好ましくは0.01〜1の範囲であり、最も好ましくは0.1〜1である。
【0021】
好ましくは、前記少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたはポリマー電解質は、1000〜10の範囲の平均の分子量を有する。
【0022】
ある実施形態において、前記少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーは、合成ポリマー、即ち、ポリアミド、ポリアミドアミン、ポリプロプレンイミン、ポリフェニレン、ポリ酸化エチレン、ポリエチレンイミン、超分岐ポリエチレンイミン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ4−ビニルフェノール、ポリエピクロルヒドリン(poly(epichchlorohydrin))、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカプロラクトン、フルオロポリオール、ポリシロキサン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールのようなホモポリマー、または、酸化エチレン−アミドアミン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエステル−無水マレイン酸共重合体のような共重合体、及びそれらの組み合わせを含むグループから選択される。また、少なくとも1種のポリマー電解質は、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリル酸、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化物などの合成ポリマー電解質及びそれらの組み合わせを含むグループから選択される。さらに、少なくとも1種の非導電性または半導体性ポリマーまたはポリマー電解質は、天然ポリマー及び/またはポリマー電解質、例えば、デキストラン、キチン、キトサン、セルロース、ポリペプチド、タンパク質、RNA、DNAを含むグループから選択することができる。
【0023】
ある実施形態において、前記ポリマー層も、平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満の粒子またはファイバを有し、前記粒子またはファイバは、少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーの材料とは異なる材料である。好ましくは、そのような粒子またはファイバは、Tenax(商標)、Chemosorb(商標)、Carbosieve(商標)、Carbotrap(商標)、Carboxen(商標)、Carbopack(商標)など、これらは全て市場で購入可能であり、これらの吸着材料からの粒子またはファイバを含むグループから選択される。
【0024】
ある実施形態において、前記ポリマー層は上述の少なくとも1種のポリマーと前記ポリマーとは異なる材料の上述の粒子またはファイバの複合材料からなる。
【0025】
ある実施形態において、前記検体感知層及び前記ポリマー層は、センサの周囲に存在する検体に対して異なる収着能力または膨張(swelling)能力を有する。
【0026】
ある実施形態において、前記ポリマー層は、空間的に検体感知層と結合して、特定の検体に対して本来の場所で(in-sisu)の予備濃縮(preconcentration)ユニットとして機能し、このようにしてこれらの検体に対するセンサの増強された感度をもたらす。
【0027】
ある実施形態において、前記基板は、1つまたはいくつかの電極、好ましくは互いに入り込んだ(interdigitated)電極構造の電極を表面に有し、あるいは、1つまたはいくつかの電界効果トランジスタ(FET)を表面に有し、前記基板上の前記検体感知層は前記1つまたはいくつかの電極と接触しており、あるいは、典型的には絶縁層を貫通して前記1つまたはいくつかの電界効果トランジスタの少なくとも1つの導電チャネルと接触しており、あるいは、それ自身に前記1つまたはいくつかの電界効果トランジスタの導電チャネルを形成する。
【0028】
ある実施形態において、前記ポリマー層及び/または前記基板は、UV、可視及びIR放射を含む100nm〜10000nmの範囲の波長を有する電磁放射に対して透明である。
【0029】
好ましくは、前記導電性または半導体性の粒子は、金属粒子、即ち、Au,Pt,Ag,Pdなどの貴金属粒子、Cu,Ni,Feなどの貨幣金属粒子を含むグループから選択される。単一ナノ粒子において、これらの金属の組み合わせを用いること、即ち、合金あるいはコア/シェル金属ナノ粒子とすることも可能である。半導体ナノ粒子、即ち、CdS,CdSe,CdTe,ZnS,ZnSe,ZnTe,HgS,HgSe,HgTeなどのII/VI半導体、あるいはGaAs,InPなどのIII/V半導体を用いることも可能であり、または、導電性ポリマーなどの有機材料から導電性または半導体性のナノ粒子を提供することも可能である。さらに、導電性粒子として、カーボンブラック粒子または金属装飾された(metal-decorated)カーボンブラック粒子、例えば、PtRu/カーボンブラック及びPt/カーボンブラックナノ粒子を用いることも可能である。
【0030】
ある実施形態において、前記検体感知層は、平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは100nm未満である導電性のファイバを有し、好ましくは前記導電性のファイバは、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステンのナノファイバ(nanofiber)などの金属酸化物ナノファイバ、またはそれらの組み合わせ及びカーボンナノチューブを含むグループから選択される。導電ポリマーなどの導電性または半導体性の有機材料のナノファイバを用いることも可能である。
【0031】
ある実施形態において、前記有機媒体は電気絶縁性または半導体性であり、少なくとも1つのポリマーからなる。ここで用いられるように、「有機媒体」及び「有機マトリクス」の用語は同じ意味で使われる。
【0032】
そのような有機ポリマー媒体は、ポリイミド、ポリアミドアミン、ポリプロプレンイミン、ポリフェニレン、ポリ酸化エチレン、ポリエチレンイミン、超分岐ポリエチレンイミン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ4−ビニルフェノール、ポリエピクロルヒドリン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカプロラクトンフルオロポリオール、ポリシロキサン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールのようなホモポリマー、または、酸化エチレン−アミドアミン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエステル−無水マレイン酸共重合体のような共重合体、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0033】
他の実施形態において、前記有機リガンド分子(被覆(capping)分子)は、それらの官能基(アンカー基)の一つにより、導電性粒子の表面に付くことができる単官能、二官能、または多官能の有機化合物である。そのようなアンカー基は、好ましくは、以下の例のような、硫黄含有官能基、窒素含有官能基、リン含有官能基、または酸素含有官能基を含むグループから選択される。
【0034】
【化1】

【0035】
他の実施形態において、前記有機リンカー分子は、それらの官能基(アンカー基)の少なくとも2つにより、導電性粒子の表面に付くことができる、二官能または多官能の有機化合物であり、好ましくは、上記のリガンド分子に対する例のような、硫黄含有官能基、窒素含有官能基、リン含有官能基、または酸素含有官能基を含むグループから選択される。
【0036】
上述の官能基が末端基を形成する場合、リンカーまたはリガンド分子に結合していないバレンス(valence)が水素原子あるいは小さなアルキル基ユニットを携えてよく、あるいはプロトンがはずれてイオンユニットを形成してもよい。
【0037】
好ましくは、前記ポリマー層は前記検体感知層の表面を覆って、連続的かつ均一的に分布している。
【0038】
好ましくは、本発明の実施形態に係る化学センサは、検出しようとする検体をさらに有し、前記少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたはポリマー電解質は、その極性の見地から、前記検出しようとする検体の極性に適合するように選択される。
【0039】
好ましくは、本発明の実施形態に係る化学センサ装置は、検出しようとする検体をさらに有し、前記少なくとも1種の半導体性または導電性のポリマーは、その電子伝達特性(例えばホールまたは電子伝導性)の見地から、前記検出しようとする検体への電子の供給/引き抜き能力と関連するように選択される。
【0040】
本発明の目的は、少なくとも2つのセンサ、好ましくは本発明の実施形態に係る複数のセンサを有する化学センサアレイによっても解決され、個々のセンサは、それらの各ポリマー層において非導電性又は半導体性ポリマーあるいはポリマー電解質の種類、及び/またはそれらの各ポリマー層と検体感知層の間の組み合わせにおいて互いに異なっており、このようにして各センサに対して異なる化学選択性を提供する。適切なパターン識別分析を用いることにより、アレイにおけるセンサの化学的選択パターン間の相違に基づいて異なる検体を同定できる。
【0041】
あるいは、本発明の実施形態に係るアレイは、アレイ内のそれぞれのポリマー層の厚みが互いに異なるだけの同一のセンサを有してもよく、このようにして検体検出の時間的な分解能を提供する。ポリマー層の差異は、異なるセンサ間で応答時間を変化させ、即ち、短縮あるいは延長させる。これは、(それらの個々の検体感知層及びポリマー層のそれぞれに同一の材料を有する)組成的に同一なセンサからなるセンサアレイを形成する可能性を付与し、センサにおけるそれらの位置及び応答時間のみが異なる。このようにして、異なる検体が異なるパターンの応答をもたらしうる。適切なパターン識別分析を用いることで、アレイのセンサ間の時間の応答の差異に基づいて異なる検体が同定できる。
【0042】
あるいは、組成の異なるセンサであって、それらセンサはさらにそれらのポリマー層の厚みにおいても互いに異なるセンサのアレイを提供し、このようにして同じアレイにおいて化学的選択性と時間的分解能を組み合わせることができる。
【0043】
本発明の目的は、基板と平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満である導電性または半導体性の粒子またはファイバを有する前記基板上の検体感知層を用い、さらに少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたは少なくとも1種のポリマー電解質を有する前記検体感知層上のポリマー層を用い、
前記検体感知層及び/またはポリマー層は前記検体に曝され、前記検体は少なくとも前記ポリマー層にあるいは層中に収着され、
さらに、収着で、好ましくは前記ポリマー層及び/または検体感知層へあるいは層中への収着で、好ましくは電気抵抗の変化の測定により、あるいは仕事関数の変化、前記感知層と相互作用するFETの導電チャネルを流れる電流の変化の測定により、あるいは、前記検体感知層の反射率の変化、屈折率の変化、発光、好ましくは蛍光発光、りん光発光、あるいは吸収の変化の測定により、あるいは、前記検体感知層のUV/可視またはIR吸収または透過スペクトルの変化により、前記検体が検知される
ことを特徴とする検体の検出方法によっても解決される。
【0044】
好ましくは、本発明の実施形態に係る検体の検出方法において、前記基板、前記検体感知層及び前記ポリマー層はさらに上記のように定義される。
【0045】
本発明の目的は、以下の
基板を用意する工程、
前記基板上に、好ましくは、層ごとの堆積、ディップコート、スピンコート、ドロップキャスト、スプレーコート、インクジェット印刷、スタンピング、ラングミューア−ブロジェット(Langmuir-Blodgett)、ラングミューア−シェーファー堆積(Langmuir Schafer deposition)、あるいは溶液からのリガンド交換沈殿(ligand-exchange precipitation)によって、平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満である導電性または半導体性の粒子またはファイバを堆積することによって、検体感知層を堆積し、堆積の間に前記粒子が非導電性または半導体性の媒体中に、好ましくは非導電性または半導体性のポリマー媒体中に埋め込まれ、あるいは有機リンカー分子によって互いに結合し、あるいは有機リガンド分子によって覆われる工程、
前記検体感知層上に、好ましくは、層ごとの堆積、ディップコート、スピンコート、ドロップキャスト、スプレーコート、インクジェット印刷、スタンピング、ラングミューア−ブロジェット、ラングミューア−シェーファー堆積によって、ポリマー層を堆積する工程、
ここで、前記基板、前記検体感知層、もし存在するならば前記有機媒体を含み、また、前記導電性または半導体性の粒子またはファイバを含む前記検体感知層の成分(component)、及び前記ポリマー層は、さらに上記のように定義され、本発明の実施形態に係るアレイの場合には、少なくとも2個、好ましくは複数個のセンサを製造するのに必要な回数これらの工程を繰り返す
ことによって特徴付けられる、本発明の実施形態の化学センサまたはアレイの製造方法によっても解決される。
【0046】
好ましくは、本発明の実施形態に係る化学センサまたは化学センサアレイの製造方法において、前記基板、前記検体感知層、もし存在するならば前記有機媒体を含み、また、前記導電性または半導体性の粒子またはファイバを含む前記検体感知層の成分、及び前記ポリマー層は、さらに上記のように定義される。
【0047】
製造においてファイバが用いられる場合、好ましくは、有機媒体あるいは有機リンカーまたはリガンド分子なしで単純に堆積され、一方で導電性または半導体性の粒子はそのような有機媒体またはリガンド分子とともに堆積される。
【0048】
本発明の目的は、検体を、好ましくは流体相中において、検出するための本発明の実施形態に係る化学センサまたはアレイの使用方法によっても解決される。
【0049】
本発明者らは、驚くべきことに、ナノ粒子またはナノファイバを有する検体感知層の上層のポリマー層の堆積及び存在が、ターゲット検体に対する感度を大きく高め、ナノ粒子系の検体センサの感度にも影響を与えて改善しうることを見出した。本発明者らは、どんな理論にとらわれることを望まず、検体感知層の上層のポリマー層である追加の層の存在が、検体感知層の付近で検体を濃縮するのに役立ち、従って感知層中の検体濃度の増加に至らしめ、それは最終的に検体感知層からの高い信号という結果になると現在確信している。さらに、検体感知層の上層のポリマー層は、検体と検体感知層の間の相互作用を変更でき、このように、特定の検体感知層に対する選択性の増加に至らしめうる。
【0050】
ここで用いられる「ナノ粒子」または「ナノファイバ」という用語は、1μm未満の特徴的な大きさを有する粒子またはファイバを称することが意図される。さらに、そのようなナノ粒子は、異なる形状、即ち、多面体(球体)状、棒状、ディスク状、あるいは、例えば、マルチポッド、星状、スパイク状などのフラクタル状などであることができる。典型的には、これらのナノ粒子及び/またはナノファイバの特徴的な直径は、平均で、1μ未満、好ましくは500nm以下、さらにより好ましくは300nm以下である。好ましい実施形態において、上記の粒子またはファイバは、1nm〜100nm、最も好ましくは1nm〜50nmの範囲の平均の直径を有する。しかしながら、ナノ粒子/ナノファイバの大きさは、また、特定の検体に対するその化学選択性を決定し、及び/または、作用するので、個々のナノ粒子/ナノファイバの実際の大きさもまた、検出しようとする個々の検体による。しかし、前記ナノ粒子の大きさが1μmを超える、または前記ナノファイバの直径が1μmを超えることにはならない。言い換えると(in turn)、前述の大きさの要求に応じる粒子またはファイバは、本出願において、「ナノ粒子」または「ナノファイバ」とも称せられうる。
【0051】
ここで用いられている「検体感知層」という用語は、検体の存在に応答して、従来の手段により、例えば、この層の化学抵抗を測定することにより、あるいは、IR、UV/Visの吸収率、透過率あるいは反射率などのその光学特性、あるいは発光特性、例えば蛍光及び/またはリン光発光を測定することにより、検出できる、測定できる信号を生成する層を名づけることが意図されている。
【0052】
ここで用いられる「(層)での収着」または「(層)への収着」は、吸収及び/または吸着を意味することが意図されている。それは、起こっている一方あるいは他方のプロセス、あるいは両方を暗に意味する。
【0053】
典型的には、本発明に係る化学センサ装置の基板は、特に限定されず、例えばガラス、セラミック、シリコン、あるいはプラスチックであってよい。ナノ粒子またはナノファイバは、それ自体は電気伝導性であり、非導電性あるいは半導体性の有機媒体あるいはマトリクス中に埋め込まれてよく、あるいは、有機リガンド分子で覆われ、あるいは有機リンカー分子で連結されうる。そのような有機リガンドあるいはリンカー分子は、単−、二−、あるいは多官能有機分子でありうる。リンカーの場合、それらは二−あるいは多官能有機分子である。有機リガンドでの被覆と、有機リンカーでの連結は、ナノ粒子系のセンサを記載し、ここでナノ粒子が連結され、及び/または被覆されている、ヨーロッパ特許公報特許文献1に明確に広範囲に記載されている。
【0054】
ときどき、本出願において、「ナノ複合材料」が参照される。この用語は、検体感知層中に見出すことができる材料を称することが意図されている。即ち、それは、絶縁性あるいは半導体性の有機媒体中に埋め込まれている電気伝導性ナノ粒子またはナノファイバでありうる。あるいは、それはリガンドで被覆したナノ粒子またはナノファイバでありうる。あるいは、それは、二−あるいは多官能有機分子で連結したナノ粒子またはナノファイバのネットワークでありうる。
【0055】
金、白金、銀のナノ粒子のような金属ナノ粒子、カーボンブラックナノ粒子あるいは酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステンのナノファイバ及びカーボンナノチューブなど、これに限定されないが、電気伝導性のナノ粒子及びナノファイバの多数の例が得られる。
【0056】
好ましくは、前記電気伝導性あるいは半導体性の粒子が、金属粒子、即ち、Au、Pt、Ag、Pdなどの貴金属粒子、Cu、Ni、Feなどの貨幣金属粒子を有するグループから選択される。単一のナノ粒子において、これらの金属の組み合わせを用いること、即ち、合金またはコア/シェルの金属ナノ粒子も可能である。半導体性のナノ粒子、即ち、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeなどのII/VI半導体、あるいは、GaAs、InPなどのIII/V半導体を用いること、あるいは、導電性ポリマーなど、有機材料から導電性または半導体性のナノ粒子を供することも可能である。さらに、導電性粒子として、カーボンブラック粒子または金属装飾されたカーボンブラック粒子、例えば、Pt/カーボンブラック及び/またはPtRu/カーボンブラックのナノ粒子を用いることも可能である。
【0057】
ここで用いられるように、「電気伝導性」という用語は、電子または正孔を輸送する能力をさす。「非電気伝導性」のポリマーは、そのような輸送ができないポリマーである。それと対照的に、ここで用いられる「ポリマー電解質」は、電子や正孔ではなく、イオンを輸送することができる。
【0058】
検体感知層が形成できる方法は、当業者に知られており、例えば特許文献1に記載されている。それらは、例えば、繰り返しの連続的なナノ粒子/ナノファイバの懸濁液及び有機成分(例えば有機ポリマー媒体を構成するポリマーまたはリンカー分子)の溶液への基板の浸漬を伴う、層ごとの堆積によって形成することができる。検体感知層を形成する他の可能性は、ディップコート技術、スピンコート技術、ドロップキャスト技術、スプレーコート技術、インクジェット印刷、スタンピング、溶液からのリガンド交換沈殿、ラングミューア−ブロジェット、ラングミューア−シェーファー技術を含む。
【0059】
本発明に最高に重要なのは、検体感知層の上層のポリマー層の存在である。ポリマー層は厚みが変わってもよく、通常10μmより小さく、好ましくは1μmより小さく、さらに好ましくは100nmより小さく、さらにより好ましくは70nmより小さく、最も好ましくは1nm〜50nmの範囲である厚みである。
【0060】
特にそのような薄い、70nmより薄い範囲のポリマー層で、著しく強められた選択性が達成され、同時に逆に応答時間に作用しない、即ち、過度に延長しないことを、本発明者らは見出した。典型的には、そのような薄いポリマー層(70nmより小さい)を用いることで達成される応答時間は180秒より短いt90on、またはt90offであり、それは例えば本願の図2に見ることができる。t90onは、検体への露出の始まりの時からの測定された全信号の90%を達成するのに必要な時間である。t90offは、検体への露出の終わりから、検体の露出の前の信号(ベースライン信号)に戻るのに必要な、そのようなベースライン信号への戻りの90%が達成する点まで測定された時間である。
【0061】
「流体相」という用語は、液相と気相を両方含むことが意図されている。
【0062】
好ましい実施形態においては10〜0.01の範囲であるが、通常、ポリマー相の厚みと検体感知層の厚みの比は10000〜0.001の範囲である。従って、検体感知層それ自体は1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは1nm〜300nmの範囲の厚みを有する。続く実施例において、典型的には、ポリマー層と検体感知層の両方が100nm以下の厚みである。
【0063】
次の特定の記載において、ケミレジスタ(chemiresistor)センサとして機能する、即ち、検体の存在または不在に応じた電気抵抗が測定される検体感知層が望まれているが、本発明による検体感知層の上層のポリマー層の原理を、電界効果トランジスタまたはセンサに基づくセンサなどの、検出しようとする検体の存在の結果として、吸収特性あるいは反射あるいは蛍光あるいはリン光発光特性などの光学特性が変化する、他の形態のセンサに適用することも可能である。ケミレジスタセンサ、即ち、電気抵抗の測定を伴う場合、基板はさらに少なくとも1つの電極、通常はいくつかの電極と、ある実施形態では櫛形電極構造を有する。そのような櫛形電極構造は、例えば特許文献1に記載されている。電界効果トランジスタが用いられる場合、基板は1つあるいはいくつかの電界効果トランジスタを有し、ナノ複合材料は好ましくは絶縁層を通して、電界効果トランジスタの伝導チャネルと接触し、あるいは、それ自体が電界効果トランジスタの伝導チャネルを形成する。ナノ粒子/ナノファイバの光学特性が測定される場合、検体感知層の上層のポリマー層及び/または基板は、ナノ粒子/ナノファイバの光学特性の測定を可能にするために、好ましくはUVと赤外を含む範囲の、さらに好ましくは100nm〜10000nmの範囲の電磁放射に対して透明/透過性でなければならない。
【0064】
ポリマー層は、スピンコート、ドロップキャスト、スプレーコート、層ごとの堆積、インクジェット印刷、スタンピング、及び、例えば、参照によりその全体がここで組み込まれる特許文献1に記載された他の知られた技術など、当業者に知られた方法で堆積される。
【0065】
ここで提案される、本発明に係る化学センサのケミレジスタ実施形態は、複合材料に対応する(address)電極構造有し、基板上に堆積された、数ナノメートル厚の導電ナノ複合材料の層を有する。有機非導電ポリマー層はまた数ナノメートルの厚みであって、導電性材料の上層に堆積される。導電複合材料と流体相に存在する検体分子との相互作用は、導電性材料の抵抗の変化に至らしめる。測定されたセンサ信号は規格化された抵抗の変化
ΔR/Rini=(R−Rini)/Rini
であり、ここで、Riniは検体への露出前のセンサ抵抗であり、Rは検体露出の開始の後の時刻tにおけるセンサ抵抗である。この意味でここで提案される化学センサはケミレジスタである。
【0066】
ケミレジスタの実施形態の模式図が図1に示される。基板(1)はガラス、セラミック、シリコンまたはプラスチック基板でよく、その上層に櫛形電極構造(2)がリソグラフィまたは印刷技術を通して形成されている。ナノ複合材料(3)は導電ナノ粒子を有し、それは有機マトリクス、好ましくは有機ポリマーマトリクスに埋め込まれてもよく、あるいは、単−、二−あるいは多官能有機リガンド分子で被覆されてもよく、あるいは二−あるいは多官能有機リンカー分子で結合されていてもよい。導電ナノ粒子は、限定されないが、(Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Cu、Fe、合金及びコア/シェルナノ粒子などの)金属ナノ粒子、(CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaAs、InP、導電ポリマーナノ粒子などの)半導体性ナノ粒子、あるいはカーボンブラック及び/または金属装飾されたカーボンブラックナノ粒子を有してもよい。
【0067】
有機マトリクスあるいは媒体は、ポリアミド、ポリアミドアミン、ポリプロピレンイミン、ポリフェニレン、ポリ酸化エチレン、ポリエチレンイミン、超分岐ポリエチレンイミン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ4−ビニルフェノール、ポリエピクロルヒドリン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカプロラクトン、フルオロポリオール、ポリシロキサン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、または、酸化エチレン−アミドアミン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエステル−無水マレイン酸共重合体のような共重合体、及びそれらの組み合わせなどの、絶縁性あるいは半導体性のポリマーを有してもよい。
【0068】
一般に、本発明者らは、どんな理論にとらわれることを望まず、ポリマー層が検体とナノ複合導電層の間の相互作用を変更し、このようにして同時に半透過性の膜として、また、感知層に結合した、検体が本来の場所にある(analyte in-situ)濃縮(conceentrator)ユニットとして機能する働きをする。さらに、異なるポリマーは、同じ検体に対して相互作用するのに変動する能力を表すので、組成が別個のポリマー層で被覆された等しい複合ケミレジスタが目的の検体に対して異なる応答を供し、このように、特定に選択パターンを示す。このようにして、別個の応答の特徴を持つが、単一の導電ナノ複合材料に基づくセンサ素子のアレイが形成できる。
【0069】
上記で概説したように、化学センサ装置はケミレジスタにもナノ粒子の使用にも制限されない。図1に示されるセンサ構造の変更も可能である。あるそのような変更は導電層の組成と構造に関係する。例えば、ナノファイバ材料、例えば五酸化バナジウムナノファイバ(特許文献7)、酸化モリブデン、酸化タングステン、ナノファイバまたはカーボンナノチューブは、ナノ粒子/有機複合材料の代わりに導電性成分として用いられうる。他の変更は、検体検出に伴う変換(transduction)原理に関する。例えば、ナノ複合材料が、典型的には絶縁層を通して、FETの導電チャネルに接触して、あるいはそれ自体がFETの導電チャネルを形成して、検体感知層として用いられている電界効果トランジスタ(FET)もまた、考えられる。本出願に存在する感度及び選択性の向上に対する研究が、他の導電性材料及び/または異なる変換原理が適用される場合にも効力があることが期待されている。例えば、ナノ粒子/ナノファイバの独特な光学特性を使用することも可能であり、そのような光学特性は検体の存在に応答して変化しうる。そのような光学特性は吸収特性あるいは蛍光発光またはリン光発光などのルミネッセンス発光特性でありうる。そのような場合、光学特性の変化が、ポリマー層、基板、またはその両者のいずれかを通して検出できることが重要であり、どの光学特性が検出されるかに応じて、ポリマー層または基板が対応する波長の電磁放射に対して透明でなければならない。
【0070】
以下において、図面が参照される。
【0071】
以下において、図解のために提供されるが本発明を限定はしない、次の実施例が参照される。
【0072】
実施例
本発明における研究が以下の実験的発見によって明らかにされる。以下で提供される実施例は、ヘキサデカンジチオール分子(HDT)で結合された金ナノ粒子(AuNP)を有するケミレジスタセンサに基づいているが、本発明はケミレジスタにも特定の粒子の使用にも限定されないことは明らかである。
【0073】
実施例1
A)導電複合材料の堆積
導電性材料の形成は、櫛形電極構造(IDE)が設けられたBK7ガラス基板上への層ごとの自己組織化により行った。各基板は、5nmのチタン接着層を有し、その上層の95nmの金層が堆積された3つのIDEを支持した。各IDEは、10μmのフィンガー(finger)ギャップ、10μmのフィンガー幅、1800μmの重なりを有する50本のフィンガーの対からなっていた。そのように形成された基本的な複合ケミレジスタは、これ以降はAuHDTと称せられる。AuHDTケミレジスタの形成は、以前に特許文献1において他のAuNP系のケミレジスタに対して記載されており、参照によりその全体がここに組み込まれる。用いたナノ粒子は3nm〜6nmの範囲の平均の直径を有した。
【0074】
実施例2
B)ポリマー層の堆積
被膜層を形成するために用いたポリマーの構造式及び分子量が表1に示される。
AuHDTケミレジスタの上層へのポリマー層の堆積はスピンコートまたは層ごとの組織化によって行った。
【0075】
表1:被膜を形成するのに用いられたポリマーの構造式及び分子量、ポリマー溶液の調製に用いられた溶媒
【表1】

【0076】
a.スピンコートによる堆積
表1のポリマー1〜6はAuHDTケミレジスタの上層にスピンコートで堆積された。ポリマー溶液の調製のため、ポリマー50mgが5mlの溶媒に溶解された。溶液の調製のために用いられた溶媒も表1に載せてある。AuHDTケミレジスタの表面へのポリマーのスピンコートは次のように行った。まず、対応するポリマーが溶解された0.3mlの溶媒がAuHDTケミレジスタの表面に滴下された。数秒後に、続くポリマー層の堆積のために、ケミレジスタがわずかに濡れた表面とするように回転された。回転が終了した後で、0.3mlのポリマー溶液がケミレジスタの前処理した表面上に置かれた。AuHDTケミレジスタの上層に薄いポリマー層を形成するために、数秒後に試料は再び回転された。
【0077】
b.LbL組織化(assembly)による堆積
表1のポリマー7と8は、AuHDTケミレジスタの上層に層ごとの堆積によってポリ電解質(polyelectrolyte)被膜を形成するために用いられた。PSS溶液は102.3gのPSSを50mlの脱イオン水中NaClの1M溶液(50mlのMilliQ水中、2.92gのNaCl、抵抗率18.2MΩcm)に溶解して調製された。PAH溶液は45.1gのPAHを50mlの脱イオン水中NaClの1M溶液に溶解して調製された。このようにして、10−2mol/lのPSSとPAH溶液(モノマー溶液として)が得られた。ポリマー層のLbL堆積は、AuHDTケミレジスタのPSS及びPAH溶液への連続的な浸漬とその間のMilliQ水中のリンスによって行われた。浸漬の手順は5回繰り返した。このようにして、PSS−PAHの二重層を5層有するAuHDTケミレジスタの上層のポリマー層が得られた。PSS−PAH二重層のLbL堆積の手順は特許文献6に記載されている。
【0078】
c.原子間力顕微鏡(AFM)によってよみ決定されたAuNP/ポリマー膜及びポリマー層の厚み
厚みの測定は、Nanoscope IVコントローラを有するAFM Dimension 3100顕微鏡(Digital Instruments、USA)を用いて、Tapping MODE AFMによって行われた。
まず、膜材料から薄いストライプを除去するために、下層に位置するガラス(SiO)基板が見えるまで、針で膜にひっかき傷を形成した。それから、ひっかき傷のエッジをAFMで撮像し、ひっかき傷の高さとして膜厚が決定された。良好な統計のために、各膜に対して異なるスポット及びひっかき傷での少なくとも20の測定が行われた。ポリマー層の厚みだけは、AuHDT/ポリマーシステムの厚みと未被覆のAuHDT材料の厚みの差として決められた。
結果は下記の表2に示される。全ての場合でポリマー層の厚みは70nmより下であり、ほとんどで50nmより下でさえある。特にこれらの70nm未満の大変薄いポリマー層において、高感度と高速応答時間が観測される。
【0079】
表2:異なるポリマー層で形成され、被覆されたAuHDTケミレジスタの全厚及びポリマー層の厚み
【表2】

【0080】
上述の厚み測定手順を図解する典型的なAFM像が図5−a〜図5−cに示される。
【0081】
実施例3
C)気相感度測定
未被覆及びポリマー層で被覆されたAuHDTケミレジスタの応答が、トルエン、1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノン(4M2P)、メタノール及び水の気相に対して、400、2400、及び5000ppm(体積/体積)の濃度で、特許文献1に記載のように測定された。
【0082】
実施例4
D)結果
ポリマー被膜のAuHDTケミレジスタの応答に対する効果を例示するために、5000ppm(v/v)の気相のトルエン、4M2P、メタノール及び水に対するセンサの応答記録が図2に示される。測定された応答から導かれた各センサの化学選択パターンが図3に示される。応答時間t90on及びt90offは、図2からわかるように、典型的には180秒より小さい。
【0083】
主な発見は以下のようにまとめられる。
a.ポリマー層は、ポリマーと気相が似ている極性を有する場合に、AuHDT応答の大きさの増加を引き起こす。例えば、被覆されたケミレジスタの未被覆のものに対する応答の大きさの増加は以下のように見られる:
・トルエンに対するPSで被覆されたAuHDT−約2倍に増加
・4M2Pに対するPVPdで被覆されたAuHDT−約3倍に増加
・水に対するPNIPAM,PVPd及びPSS−PAHで被覆されたAuHDT−約4倍に増加
・メタノールに対するPNIPAM及びPVPdで被覆されたAuHDT−8倍〜9倍に増加
【0084】
b.ポリマー層は、ケミレジスタの化学選択パターンの変化を引き起こし、それはポリマーと気相の間の極性の合致に依存する。例えば、
・PSで被覆されたAuHDT−選択パターンがより疎水性の強いものに変わった。
・PNIPAM及びPVPdで被覆されたAuHDT−選択パターンが疎水性からより極性のものに変わった。センサは気相の4M2Pに対する最も高い選択性を、気相のトルエンに対してはより低い選択性を、気相のアルコールと水に対しては最も低い選択性を示す。
・PSS−PAHで被覆されたAuHDT−選択パターンが疎水性から親水性のものに完全に切り替わった。センサは気相の水に対して最も高い選択性を、気相のトルエンに対して最も低い選択性を示す。
【0085】
c.ポリマー層は、センサの応答時間の特徴的な遅れを引き起こす。これは、主として被膜のない、また、異なる被膜を有するいくつかのケミレジスタがアレイで用いられ、検体の同定がパターン認識分析によってなされる場合、センサの応答から一時的な情報が得られる予定であるときに重要である。典型的には、t90on及びt90offが180秒より小さい。
【0086】
明細書、請求項、及び/または添付の図面に開示された本発明の特徴は、分離して、また、それらのいずれの組合わせのどちらも、その様々な形態において発明を実現するための材料になりうる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、本発明に係るケミレジスタ装置の模式断面図を示す。
【図2】図2は、a)トルエン、b)4−メチル−2−ペンタノンc)メタノール、d)水の500oppm(体積/体積)までの、ヘキサデカンジチオール分子(HDT)で結合されたAu−ナノ粒子を有する、未被覆及びポリマーで被覆されたケミレジスタ(AuHDT)の応答記録を示し、全ての測定は室温で行った。
【図3】図3は、未被覆及びポリマーで被覆されたAuHDTのケミレジスタの気相濃度5000ppmにおける気相感度測定から導かれた化学選択パターンを示す。
【図4−a】図4−aは、ポリマー層、検体感知層及び基板を示す、本発明に係る化学センサのある実施形態に模式的配置を示す。
【図4−b】図4−bは、検体が化学センサ中へ拡散したときの図4の配置を示す。
【図5−a】図5−aは、ポリマー層のないAuHDTの検体感知層を、AFM像として、堆積した層の厚みをnmで示すパネルとともに、示す。
【図5−b】図5−bは、頂部にポリスチレンのポリマー層を有するAuHDTの検体感知層を、AFM像として、堆積した層の厚みをnmで示すさらなるパネルとともに、示す。
【図5−c】図5−cは、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩及びポリアリルアミン塩酸塩のポリマー層を有するAuHDTの検体感知層を、AFM像として、堆積した層の厚みをnmで示すさらなるパネルとともに、示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満である導電性または半導体性の粒子またはファイバを有する前記基板上の検体感知層と、
少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたは少なくとも1種のポリマー電解質を有する前記検体感知層上のポリマー層と
を有する、化学センサ。
【請求項2】
前記検体感知層は、平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは1〜100nm、最も好ましくは1〜50nmの範囲の直径である導電性または半導体性の粒子を有することを特徴とする
請求項1に記載の化学センサ。
【請求項3】
前記検体感知層は、非導電性または半導体性である、有機媒体好ましくは有機ポリマー媒体をさらに有し、前記導電性または半導体性の粒子は前記有機ポリマー媒体に埋め込まれていることを特徴とする
請求項2に記載の化学センサ。
【請求項4】
前記検体感知層は有機ポリマー媒体を有さず、前記導電性または半導体性の粒子は有機リンカー分子によって互いに結合されており、または、前記導電性または半導体性の粒子は有機リガンド分子によって覆われていることを特徴とする
請求項2に記載の化学センサ。
【請求項5】
前記検体感知層は、1μm以下、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは1〜300nmの範囲の厚さを有することを特徴とする
請求項1〜4のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項6】
前記ポリマー層は、10μm未満、好ましくは1μm未満、さらに好ましくは100nm以下、またさらに好ましくは70nm未満、最も好ましくは1〜50nmの範囲の厚さを有することを特徴とする
請求項1〜5のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項7】
前記ポリマー層と前記検体感知層の厚さの比は0.001〜10000の範囲であり、好ましくは0.01〜10の範囲であり、さらに好ましくは0.01〜1の範囲であり、最も好ましくは0.1〜1であることを特徴とする
請求項1〜6のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項8】
前記少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたは前記少なくとも1種のポリマー電解質は、1000〜10の範囲の平均の分子量を有することを特徴とする
請求項1〜7のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項9】
前記少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーは、合成ポリマー、即ち、ポリアミド、ポリアミドアミン、ポリプロプレンイミン、ポリフェニレン、ポリ酸化エチレン、ポリエチレンイミン、超分岐ポリエチレンイミン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ4−ビニルフェノール、ポリエピクロルヒドリン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカプロラクトンフルオロポリオール、ポリシロキサン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールのようなホモポリマー、または、酸化エチレン−アミドアミン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエステル−無水マレイン酸共重合体のような共重合体、及びそれらの組み合わせを含むグループから選択され、少なくとも1種のポリマー電解質は、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリル酸、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化物などの合成ポリマー電解質及びそれらの組み合わせを含むグループから選択され、あるいは、少なくとも1種の非導電性または半導体性ポリマーまたはポリマー電解質は、デキストラン、キチン、キトサン、セルロース、ポリペプチド、タンパク質、RNA、DNAなどの天然ポリマー及び天然ポリマー電解質を含むグループから選択されていることを特徴とする
請求項1〜8のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項10】
前記基板は、1つまたはいくつかの電極を表面に有し、あるいは、1つまたはいくつかの電界効果トランジスタを表面に有し、前記基板上の前記検体感知層は前記1つまたはいくつかの電極と接触しており、あるいは、好ましくは絶縁層を貫通して前記1つまたはいくつかの電界効果トランジスタの少なくとも1つの導電チャネルと接触しており、あるいは、それ自身に前記1つまたはいくつかの電界効果トランジスタの導電チャネルを形成することを特徴とする
請求項1〜9のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項11】
前記ポリマー層及び/または前記基板は、UV、可視及びIR放射を含む100nm〜10000nmの範囲の波長を有する電磁放射に対して透明であることを特徴とする
請求項1〜9のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項12】
前記導電性または半導体性の粒子は、金属粒子、即ち、Au,Pt,Ag,Pdなどの貴金属粒子、Cu,Ni,Feなどの貨幣金属粒子、単一ナノ粒子におけるこれらの金属の組み合わせ、例えば合金あるいはコア/シェル金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、例えば、CdS,CdSe,CdTe,ZnS,ZnSe,ZnTe,HgS,HgSe,HgTeなどのII/VI半導体、あるいはGaAs,InPなどのIII/V半導体、導電性ポリマーなどの有機材料から導電性または半導体性のナノ粒子、カーボンブラック粒子または金属装飾されたカーボンブラック粒子、例えば、Pt/カーボンブラックまたはPtRu/カーボンブラックナノ粒子などの導電性粒子を含むグループから選択されることを特徴とする
請求項1〜11のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項13】
前記検体感知層は、平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは100nm未満である導電性のファイバを有することを特徴とする
請求項1,5〜11のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項14】
前記導電性のファイバは、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステンのナノファイバなどの金属酸化物ナノファイバ、例えば導電ポリマーの有機材料からのナノファイバ、及びカーボンナノチューブを含むグループから選択されることを特徴とする
請求項13に記載の化学センサ。
【請求項15】
前記有機媒体は電気絶縁性または半導体性であり、少なくとも1つのポリマーからなり、前記ポリマーは、ポリイミド、ポリアミドアミン、ポリプロプレンイミン、ポリフェニレン、ポリ酸化エチレン、ポリエチレンイミン、超分岐ポリエチレンイミン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ4−ビニルフェノール、ポリエピクロルヒドリン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカプロラクトンフルオロポリオール、ポリシロキサン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールのようなホモポリマー、または、酸化エチレン−アミドアミン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエステル−無水マレイン酸共重合体のような共重合体、及びそれらの組み合わせ、を有するグループから選択されることを特徴とする
請求項3,5〜12のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項16】
前記有機リガンド分子は、それらの官能基の一つにより、導電性粒子の表面に付くことができる単官能、二官能、または多官能の有機化合物であり、そのような官能基は、好ましくは、硫黄含有官能基、窒素含有官能基、リン含有官能基、または酸素含有官能基、例えば下記の化学式を含むグループから選択されることを特徴とする
請求項4,5〜12のいずれかに記載の化学センサ。
【化1】

【請求項17】
前記有機リンカー分子は、それらの官能基の少なくとも2つにより、導電性粒子の表面に付くことができる、二官能または多官能の有機化合物であり、好ましくは、前記官能基は、硫黄含有官能基、窒素含有官能基、リン含有官能基、または酸素含有官能基、例えば下記の化学式を含むグループから選択されることを特徴とする
請求項4,5〜12のいずれかに記載の化学センサ装置。
【化2】

【請求項18】
前記ポリマー層は前記検体感知層の表面を覆って、連続的かつ均一的に分布していることを特徴とする
請求項1〜17のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項19】
検出しようとする検体をさらに有し、前記少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたはポリマー電解質は、その極性の見地から、及び/または、電子伝達特性、例えばホールまたは電子伝導性の見地から、前記検出しようとする検体の極性に適合するように、及び/または前記検出しようとする検体への電子の供給/引き抜き能力と関連するように、選択されることを特徴とする
請求項1〜18のいずれかに記載の化学センサ。
【請求項20】
少なくとも2つのセンサ、好ましくは請求項1〜19のいずれかに係るセンサを複数個有する化学センサアレイであって、個々のセンサは、それらの各ポリマー層において非導電性又は半導体性ポリマーあるいはポリマー電解質の種類において、及び/または、それぞれのポリマー層の厚みにおいて、及び/または、ポリマーと検体感知層の間の特定の組み合わせにおいて、互いに異なっており、このようにして各センサに対して異なる化学選択性、及び/または、異なる応答時間を提供する
化学センサアレイ。
【請求項21】
基板と平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満である導電性または半導体性の粒子またはファイバを有する前記基板上の検体感知層を用い、さらに少なくとも1種の非導電性または半導体性のポリマーまたは少なくとも1種のポリマー電解質を有する前記検体感知層上のポリマー層を用い、
前記検体感知層及び/またはポリマー層は前記検体に曝され、前記検体は少なくとも前記検体感知層の上層の前記ポリマー層にあるいは層中に収着され、
また、収着で、好ましくは前記ポリマー層及び/または検体感知層へあるいは層中への収着で、好ましくは、前記検体感知層の、電気抵抗の変化、仕事関数の変化、前記FETの導電チャネルを流れる電流の変化、IR、UV/vis吸収率または透過率の変化、反射率の変化、屈折率の変化、ルミネッセンス、好ましくは蛍光発光、リン光発光、あるいは吸収率の変化の測定により、前記検体が検知されることを特徴とする
検体の検出方法。
【請求項22】
前記基板、前記検体感知層、及び前記ポリマー層が、請求項1〜19のいずれかで定義されることを特徴とする
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
基板を用意する工程、
前記基板上に、好ましくは、層ごとの堆積、ディップコート、スピンコート、ドロップキャスト、スプレーコート、インクジェット印刷、スタンピング、ラングミューア−ブロジェット、ラングミューア−シェーファー堆積、あるいは溶液からのリガンド交換沈殿によって、平均の直径が1μm未満、好ましくは500nm未満である導電性または半導体性の粒子またはファイバを堆積することによって、検体感知層を堆積し、堆積の間に前記粒子が非導電性または半導体性の媒体中に埋め込まれ、あるいは有機リンカー分子によって互いに結合し、あるいは有機リガンド分子によって覆われる工程、
前記検体感知層上に、好ましくは、層ごとの堆積、ディップコート、スピンコート、ドロップキャスト、スプレーコート、インクジェット印刷、スタンピング、ラングミューア−ブロジェット、ラングミューア−シェーファー堆積によって、ポリマー層を堆積する工程、
ここで、前記基板、前記検体感知層及び前記ポリマー層は、請求項1〜19のいずれかのように定義され、また、請求項20に係るアレイの場合には、少なくとも2個、好ましくは複数個のセンサを製造するのに必要な回数これらの工程を繰り返す
ことによって特徴付けられる、請求項1〜19のいずれかの化学センサまたは請求項20のアレイの製造方法。
【請求項24】
検体を、好ましくは流体相中において、検出するための請求項1〜19のいずれかに係る化学センサまたは請求項20に係るアレイの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−a】
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【図4−b】
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【図5−a】
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【図5−b】
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【図5−c】
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【公開番号】特開2007−192805(P2007−192805A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−317198(P2006−317198)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(397051508)ソニー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (140)
【Fターム(参考)】