説明

ナノ粒子/活性成分結合体

本発明は、ナノ粒子であって、少なくとも1つの治療上活性物質がナノ粒子に結合されており、そして治療上活性物質の放出が、交流磁場によってもたらされる、または開始される、ナノ粒子に関する。さらに、本発明は、該ナノ粒子を含む医薬品組成物、特に注射液、および癌の治療のためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上活性物質が結合されているナノ粒子であって、治療上活性物質の放出が、交流磁場によって引き起こされる、開始される、または実質的に増強される、ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
超常磁性ナノ粒子は、疾患の治療における医薬品添加物として用いられ得ることが知られている。この場合、種々のアプローチが追求されている。例えば、1つの公知の戦略は、いわゆる「磁性薬剤ターゲッティング」に基づき、そこでは、磁場によって活性成分の濃度の局所的な増大を実現することが試みられている(DE10059151A,Alexiou)。同様に、化学的様式で標的となる発見すべき特性を粒子に与えることによって、特定の身体領域に該粒子の蓄積を実現することが試みられている(DE4428851A1、EP0516252A2)。粒子および活性成分からなる結合体を有する、腫瘍細胞への浸潤のための多殻粒子が、WO98/58673(INM)の特許明細書に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、健常組織では治療上活性物質の顕著な放出が生じることなく、そしてナノ粒子が腫瘍組織および腫瘍細胞に進入すると治療上活性物質の制御される放出が起こり得るように、治療上活性物質をナノ粒子に付加することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的は、請求項1に記載のナノ粒子、および請求項11に記載の医薬品組成物、ならびに請求項12に記載の該ナノ粒子の使用によって達成される。
【0005】
さらなる好都合な実施態様が、従属請求項、実施例および明細書から生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、ナノ粒子であって、治療上活性物質が該ナノ粒子に結合されており、そして該ナノ粒子からの該治療上活性物質の解離が、交流磁場によって引き起こされる、開始される、または実質的に増強される、ナノ粒子に関する。この場合、少なくとも1つの治療上活性物質は、交流磁場の直接的影響によって、または交流磁場により引き起こされる局所的な加熱によって放出される。好ましくは、活性成分(すなわち、治療上活性物質)とナノ粒子との間の熱に不安定なリンカーが熱的に切断されるという事実、および/または交流磁場に対して不安定なリンカーが用いられるという事実によって、放出が引き起こされる。したがって、本発明は、熱的におよび/または磁場によって切断され得るリンカーによって、治療上活性物質、特に細胞分裂阻害剤をナノ粒子に結合することからなる。
【0007】
本発明によるナノ粒子は、少なくとも1つの治療上活性物質がナノ粒子に結合されており、そしてここで、ナノ粒子からの少なくとも1つの治療上活性物質の解離が、交流磁場によって引き起こされる、または開始される、または実質的に増強されるという特徴を有する。
【0008】
すなわち、本発明は、ナノ粒子であって、少なくとも1つの治療上活性物質が、リンカーによって、共有結合またはイオン結合または水素結合または錯形成(錯結合)またはインターカレーションまたは親油性相互作用を介して結合されており、そしてリンカーが、熱的開始および/または電磁場または磁場による開始によって切断され得る、ナノ粒子に関する。
【0009】
切断が熱的に開始されるとは、生理的条件下で45℃よりも高い、好ましくは50℃よりも高い温度まで局所的に加熱することがリンカーを切断するのに十分であることを意味する。切断が電磁場または磁場によって開始されるとは、生理的条件下の電磁場または磁場の適用が、電磁場または磁場によってのみか、および/または電磁場または磁場によって誘導される局所的なpHの低下によって、リンカーの切断を引き起こすことを意味する。
【0010】
少なくとも1つの治療上活性物質、すなわち、少なくとも1つの治療上活性物質の種類の分子または1つの特定の活性成分は、治療上活性物質の制御されない放出が実質的に回避され得るように、好ましくは共有結合または主として共有結合および/または十分に強いイオン結合、包接化合物または錯形成(錯結合)によって、あるいは十分な数の水素結合または疎水性相互作用の配置によって結合される。制御されない放出とは、健常組織で治療上活性物質が離れること、特に交流磁場の影響なく離れることをいう。
【0011】
このような制御されない放出は、治療効果よりも有害な副作用を引き起こす可能性の方が高い部位、すなわち、癌原性組織外または腫瘍細胞外に、治療上活性物質が放出されることを生じる。
【0012】
したがって、治療上活性物質は、ナノ粒子に固定されて結合されたままで、ナノ粒子と一緒になって癌細胞へ輸送される。ナノ粒子が癌細胞へ輸送されるまでの間は、取るに足りないまでのほんの微量な量の治療上活性物質しか放出されない。癌細胞の中に到達すると、治療上活性物質は、交流磁場によって、特に外部の交流磁場または外側から付与される交流磁場(インパルス)によって放出される。
【0013】
この場合、「交流磁場によって引き起こされる、または開始される」とは、放出または解離が、交流磁場またはインパルスによって直接的に引き起こされるか、あるいは例えば、酵素の遺伝子発現の活性化または誘導によって、または熱の発生によって間接的に引き起こされるかのいずれかを意味する。
【0014】
ナノ粒子は、磁性材料、好ましくは強磁性、反強磁性、フェリ磁性、反フェリ磁性または超常磁性の材料、さらに好ましくは鉄酸化物、特に超常磁性の鉄酸化物または酸化物層を備える純鉄からなる。このようなナノ粒子は、交流磁場によって加熱され得る。ナノ粒子を含む組織は、50℃よりも高い温度への加熱が可能である。このような高温は、腫瘍細胞あたり、ナノ粒子の形態で800pgまでおよびそれ以上の鉄が吸収され得るという事実によって達成され得る。
【0015】
好ましくは、ナノ粒子は、鉄酸化物および特にマグネタイト(Fe)、マグヘマイト(γ−Fe)または該2つの酸化物の混合物からなる。一般に、好ましいナノ粒子は、式FeO(Xは1〜2の数である)によって表される。好ましくは、ナノ粒子は、500nm未満の直径を有する。好ましくは、ナノ粒子は、15nmの平均直径を有し、または1〜100nmの範囲内にあり、そして10〜20nmの範囲内にあることが特に好ましい。
【0016】
式FeO(Xは1.0〜2.0の範囲内の数である)の磁性材料に加えて、一般式MFe(MはCo,Ni,Mn,Zn,Cd,Baまたは他のフェライトである)の材料が、本発明にしたがって用いられ得る。さらに、シリカまたは高分子の粒子に、本明細書で挙げられる磁性材料のような磁性材料が組み込まれていること、および/またはこのような材料が結合されていることもまた適切である。
【0017】
治療上活性物質は、上記ナノ粒子、特に超常磁性ナノ粒子に結合されている。ここで共有結合が好ましい。選択され得る治療上活性物質としては、抗増殖性、抗遊走性、抗血管新生性、抗血栓性、抗炎症性、消炎性、細胞分裂阻害性、細胞障害性、抗凝固性、抗細菌性、抗ウイルス性および/または抗真菌性の薬剤が挙げられる。ここで抗増殖性、抗遊走性、抗血管新生性、細胞分裂阻害性および/または細胞障害性の物質、および抗増殖性、抗遊走性、抗血管新生性、抗血栓性、抗炎症性、消炎性、細胞分裂阻害性、細胞障害性、抗凝固性、抗細菌性、抗ウイルス性および/または抗真菌性の特性を有する核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカンまたはリポタンパク質が好ましい。さらに、このような物質はまた、他の通常の癌治療方法でも組み合わされる放射線増感剤または増感剤または増幅剤であり得、またはこのような増感剤を含み得る。
【0018】
細胞障害性および/または細胞分裂阻害性の化合物、すなわち、細胞障害性および/または細胞分裂阻害性の特性を有する化学物質として、以下に示すものが用いられ得る:アルキル化剤、細胞分裂阻害特性を有する抗生物質、代謝拮抗剤、微小管インヒビターおよびトポイソメラーゼインヒビター、白金を含む化合物、および他の細胞分裂阻害剤、例えば、アスパラギナーゼ、トレチノイン、アルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン、ミルテホシン(登録商標)、ホルモン、免疫調節物質、モノクローナル抗体、シグナル伝達物質(シグナル伝達のための分子)およびサイトカイン。
【0019】
アルキル化剤の例としては、特にクロレタミン、シクロホスファミド、トロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロミド、トレオスルファン、エストラムスチンおよびニムスチンが挙げられる。
【0020】
細胞分裂阻害特性を有する抗生物質の例としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダクチノマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、エピルビシン(4−エピ−アドリアマイシン)、イダルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリンおよびアクチノマイシンDが挙げられる。
【0021】
メトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、ゲムシタビン、シタラビン、アザチオプリン、ラルチトレキセド、カペシタビン、シトシンアラビノシド、チオグアニンおよびメルカプトプリンが、代謝拮抗剤(代謝拮抗の薬剤)の例として挙げられ得る。
【0022】
ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシドおよびテニポシドは、アルカロイドおよびポドフィロトキシンの種類として挙げられる。さらに、白金を含む化合物が、本発明にしたがって用いられ得る。シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンが、白金を含む化合物の例である。微小管インヒビターの例としては、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)およびパクリタキセル(タキソール(登録商標))およびパクリタキセルの誘導体のようなアルカロイドが挙げられる。トポイソメラーゼインヒビターの例としては、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカンおよびイリノテカンが挙げられる。
【0023】
パクリタキセルおよびドセタキセルは、タキサンの化合物の種類の例であり、そして他の細胞分裂阻害物質(他の細胞分裂阻害剤)の例としては、ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシ尿素)、イマチニブ、ミルテホシン(登録商標)、アムサクリン、トポテカン(トポイソメラーゼ−Iのインヒビター)、ペントスタチン、ベキサロテン、バイオリムスA9、ラパマイシン(シロリムス)、ロドマイシンD、アメタントロン、ベンダムスチン、オキサザホスホリン、5’−デオキシ−5−フルオロウリジン、9−アミノカンプトテシン、ポドフィロトキシン誘導体、ミトポドジド、ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、メイタンシノイド、トレチノインおよびアスパラギナーゼが挙げられる。モノクローナル抗体の化合物の種類の代表は、特にトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)としてもまた知られている)、アレムツズマブ(マブキャンパス(登録商標)としてもまた知られている)およびリツキシマブ(マブセラ(登録商標)としてもまた知られている)である。
【0024】
本発明によれば、ホルモン、例えば、グルココルチコイド(プレドニゾン)、エストロゲン(ホスフェストロール、エストラムスチン)、LHRH(ブセレリン、ゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリン)、フルタミド、酢酸シプロテロン、タモキシフェン、トレミフェン、アミノグルテチミド、ホルメスタン、エキセメスタン、レトロゾールおよびアナストロゾールもまた用いられ得る。免疫調節物質、サイトカイン、抗体およびシグナル伝達物質の種類としては、インターロイキン−2、インターフェロン−α、エリスロポエチン、G−CSF、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、リツキシマブ(マブセラ(登録商標))、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、イブリツモマブ(ゼバリン(登録商標))、レバミソールおよびレチノイドが挙げられる。
【0025】
好ましくは、上記の物質は、ナノ粒子に共有結合される。例えば、物質は、それぞれの物質が保有する官能基に応じて、水酸基、アミノ基、カルボニル基、チオール基またはカルボキシル基を介して結合され得る。したがって、例えば、ドキソルビシンは、第1位の水酸基を介してエステルの形態で結合され得る;白金誘導体(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンなど)は、白金での求核置換によってアミノ基に結合され得る;またはパクリタキセルは、イミン結合を介して結合され得る。
【0026】
水酸基は、好ましくはエステル、アセタールまたはケタールとして結合される;チオ基は、好ましくはチオエステル、チオアセタールまたはチオケタールとして結合される;アミノ基は、好ましくはアミドとしておよび部分的にイミン(シッフ塩基)としてもまた結合され、またはイソシアネート基と反応させることによってウレタンとして結合される;カルボキシル基は、好ましくはエステルまたはアミドとして結合され、そしてカルボニル基は、好ましくはアセタールまたはケタールとして結合される。
【0027】
活性成分を伴わずそしてコーティングも伴わないナノ粒子の調製は、DE4428851Aに詳細に記載されている。さらに、ナノ粒子の表面の官能性付与が公知である。したがって、公知の手順を用いて、アミノ基、水酸基、カルボキシル基またはカルボニル基が、ナノ粒子の表面に生成され得る。
【0028】
したがって、本発明は、複数のアミノ基、水酸基、カルボキシル基またはカルボニル基をそれらの表面に有するナノ粒子であって、そして該官能基の少なくとも一部に、リンカーが、イミン結合、アミン結合、エステル結合、アミド結合またはケタール結合によって結合され、さらに該リンカーが、治療上活性物質に、共有結合、イオン結合、錯形成、親油性結合または水素結合によって結合している、ナノ粒子に関する。
【0029】
本発明のナノ粒子の好ましい実施態様の特定の特徴は、活性成分が特別な型の結合によって磁性ナノ粒子に結合されていることにある。該結合は、活性成分の放出が外部の交流磁場(インパルス)によって刺激され得るように構成される。
【0030】
交流磁場は、超常磁性粒子の場合には、粒子の種々の緩和プロセスの誘発する外因的な刺激として作用する。特に該プロセスは、粒子およびそれらの周囲の加熱を生じる。本発明によれば、交流磁場によって誘発される該プロセスは、ナノ粒子と治療上活性物質との間の結合を切断する、または切断プロセスを強く加速するために用いられる。この場合、生物学的プロセス(例えば、酵素的切断)による切断の速度は、インパルスによって強く増強され得る。したがって、インパルスが付与されて初めて、標的での活性成分の濃度の増大が達成され得る。同様に、結合は、化学反応(例えば、加水分解)によって切断が誘発される、または著しく加速されるように構成され得る。さらに、磁場によって誘導される加熱は、リンカーとして用いられる核酸分子またはポリペプチド分子の融解を引き起こし得る。
【0031】
治療上活性物質は、直接的にまたはリンカー分子を介して結合される。好ましくは、リンカー分子は、アミド結合またはエステル結合によって、ナノ粒子にまたはそれぞれのナノ粒子に結合される。
【0032】
本発明によれば、種々の長さの核酸(デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)またはペプチド核酸(PNA))またはポリペプチドがリンカーとして用いられ得ることもまた可能である。必要な分子は、遺伝子操作あるいは合成で随意に生産され得る。リンカーは、生理的条件下にて、熱、磁気または酸で誘導される方法で切断され得る。
【0033】
リンカーの切断とは、リンカーがリンカー内に少なくとも1つの結合を含み、その結合が熱の衝撃によって、磁場(すなわち、磁性インパルス)の影響によって、または酸への曝露によって生理的条件下で切断され得ることを意味する。該結合は、生理的条件下では、熱(好ましくは少なくとも45℃)および/または磁場および/または酸への曝露によって、このような曝露が提供されない場合の少なくとも2倍速く切断される。酸の形成および局所的なpHの低下は、例えば、既に死滅した細胞によって引き起こされ得る。「リンカー内の結合」という表現は、ナノ粒子とのリンカーの結合および治療上活性物質とのリンカーの結合もまた含む。さらに、リンカーはまた、2つまたは3つのリンカー分子で構成されていてもよい。
【0034】
必要とされる切断性を確保するために、リンカーは、以下の官能基の少なくとも1つを有する:
−S−S−,−O−P(=O)(O)−O−,−CO−CO−,−NH−CO−CO−NH−,−C=N−C,ケタール,−CO−NH−N=C−,トリオキシシラン(−O−)(−O−)(−O−)Si−Cまたはアセタール。
【0035】
例えば、適切なリンカーは、以下の形態を有し得る:
【0036】
【化1】

【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
ジグザグの線は、活性成分とリンカーとの間またはリンカーとナノ粒子との間の結合を示す。
【0040】
好ましい核酸は、40〜60℃の範囲内の融点を有する(好ましくは二本鎖の)構築物である。二本鎖のDNA、RNAまたはPNAが用いられる場合、鎖は、粒子に結合し得る基(例えば、アミド亜リン酸基を介して結合されるアミノ基またはカルボキシ基)を有する。その相補鎖が、例えば、活性成分を保有し得、これもまた共有結合を介して結合される。この活性成分は、鎖間の塩基対合によって、粒子にも結合される。活性成分は、交流磁場での熱の発生によって二重らせんが融解されて開くと放出され得る。このプロセスで、一本鎖同士は分離し、そして活性物質は粒子から脱離される。リンカーの融点および分解は、DNA−DNA、DNA−RNA、DNA−PNA、RNA−RNA、RNA−PNAまたはPNA−PNAからの対応するホモハイブリッドまたはヘテロハイブリッドを選択することによって制御され得る。
【0041】
好ましいポリペプチドは、特に水素結合(例えば、イムノグロブリンのドメイン間の)または疎水性相互作用(例えば、いわゆるロイシンジッパーにおける)を介して、所定のホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成する傾向がある分子である。該場合もまた、40〜60℃の範囲内の融点を有し、したがって、生理的条件下では主として対の状態で存在するが治療上達成され得る温度でモノマーに分解される対が用いられる。これに関して、一方の結合相手はナノ粒子に共有結合され、そして他方は治療上活性物質に共有結合される。2つのペプチド鎖の間の結合が融解されたとき、ナノ粒子からの脱離が生じ、そして治療上活性物質は、それ以後、おそらく酵素的切断のような切断の後に初めて自由に拡散可能な形態となる。
【0042】
同様に、ポリペプチドと核酸との間の相互作用は、対応するリンカーにおいて用いられ得る。これに関して、例えば、核酸に結合し得るポリペプチドがナノ粒子に結合され、このポリペプチドは、非共有結合様式で核酸と相互作用する。該相互作用はまた熱の衝撃によって融解され得るため、結合されたエフェクター分子に加えて、結合された核酸が放出される。放出された核酸それ自体がエフェクター分子としても作用し得る場合がある(例えば、siRNA、アンチセンスDNAなど)。核酸に結合し得るポリペプチドは、特に20〜50アミノ酸の間の長さを有するジンクフィンガーであるが、DNA結合ドメインの頻繁なヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフまたはDNA結合についての「一本鎖結合タンパク質」(SSB)(約100アミノ酸のDNA結合ドメインを有する小タンパク質)、あるいは一本鎖RNA結合タンパク質(約90アミノ酸の大きさがある)の「RNA認識モチーフ」(RRMまたはRNP−1)または二本鎖RNA結合タンパク質(約65アミノ酸の大きさがある)の「二本鎖RNA結合モチーフ」(DRBM)もまた用いられ得る。
【0043】
別のバリエーションは、リンカー系において核酸(アプタマー)またはタンパク質による低分子量リガンドの結合を用いることにある。一般に、例えば、いわゆる「ハプテン」のようなものに対する抗体を生産することによって、すべての分子が用いられ得る(例えば、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、ジゴキシゲニン、ジゴキシン、ビオチンに対する抗体が、頻繁に用いられる)。補酵素(例えば、補酵素A、ATP、GTP、FAD、NADH、NADPH、ビオチン、葉酸、リン酸ピリドキサールなど)、基質(例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼGSTのグルタチオン結合部位(73アミノ酸を含む))またはホルモン(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、レチノイン酸、チロキシン、ビタミンD3についての核ホルモンレセプターのホルモン結合ドメイン(218〜252アミノ酸の大きさがある))などのような生体分子の結合ポケットもまた実施可能である。最も頻繁に用いられる相互作用の1つ、そして同時に最も強い公知の非共有結合は、アビジンまたはストレプトアビジンに対するビオチンの結合である。その高結合活性のため、技術的に達成され得る温度の範囲内で融解を実現するためには、修飾されたアビジンまたはより弱い結合を有するビオチンアナログ(例えば、デスチオビオチンまたはイミノビオチン)を用いることがより良好であり得る。すべての場合において、小分子リガンドがエフェクター分子に結合し、かつ大分子リガンドがナノ粒子に結合することが有用であるが、リガンドの選択に応じて、逆の配置もまた好都合であり得る。
【0044】
この好ましい実施態様においてちょうど考えられる結合方法としては、ナノ粒子と活性成分との間に結合を生成する方法であって、該結合が「通常の」生理的条件下では十分に安定であるが、本発明にしたがって用いられる条件(インパルス)下では相当に安定性が低くなる、方法がある。放出それ自体の機構、およびしたがってまた結合の型も、標的(例えば、癌の場合の腫瘍)に依存し、そして通常の化学的結合方法によって調節できなければならない。同様にして、放出は細胞内(例えば、腫瘍細胞の中)または細胞外で生じ得る。本発明にしたがって生産される粒子は、交流磁場で活性化されることによってのみ有効性が達成され得るが、該インパルスがない場合には活性成分が大部分は有効でないままであるという点で、活性成分の公知のキャリアと異なる。
【0045】
本発明によれば、ナノ粒子/活性成分結合体は、好ましくは、鉄を含む磁気コアを土台とする;該コアは、1以上のコロイドの被覆またはコーティングによって囲まれ、これは、活性成分が官能基を介してそこに結合されることを可能にする。コアは、好ましくは、マグネタイトまたはマグヘマイトからなる。被覆の第1次機能は、水性媒体中のコロイドの分配を実現すること、およびナノ粒子が凝集することを防御することからなる。原理的には、WO98/58673に記載のような数種の被覆を有する粒子は、活性化され得るナノ粒子/活性成分結合体の土台として適している。なぜなら、このような粒子の生物学的挙動は、高分子でのコーティングによって調節され得、そして活性成分は、第1次被覆の官能基に結合され得るからである。
【0046】
活性成分は、種々の方法を用いて第1次被覆に結合され得る。粒子コアがアミノシランによってあるいはアミノ基を保有する被覆またはコーティングによって安定化される場合、活性成分は、例えば、表面に近く位置するアミノ基に結合され得る。この場合、結合は、例えば、スクシンイミジルエステル、スルホスクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、塩化トリアジニル、塩化スルホニル、テトラフルオロフェニルエステルを介してまたはアルデヒド基を介しても行われ得る。このために、活性成分は、このような基と化学的に結合することが可能でなければならない。活性成分が該方法を用いて直接的に結合できない場合、リンカー分子が用いられ得る。該「リンカー」は、活性成分を保護被覆の官能基と接続し、したがって、結合能に関する可変性をより増大させる。したがって、リンカー分子は、熱に不安定である、電磁気に不安定である、光、酸に不安定である、インターカレートされ得る、インターカレートされた、あるいは酵素的切断によって切断され得る基を含むことが好ましい。さらに、放出機構もまた、リンカーを介して制御され得る。したがって、リンカーはまた、活性成分が切断されるのを可能にする基を組み込み得る。これに適した基の例としては、pHにて切断され得る、アセタール、エステル、ヒドラゾンまたはイミンの基が挙げられる。同様に、ペプチド配列が、このようなリンカーとしての使用に適しており、酵素的切断の後または非共有結合の融解の後に活性成分が放出される。さらに、DNA、RNAおよびPNAの分子が、好ましくは二本鎖のリンカーとして用いられ得、二本鎖の熱誘導性融解によって放出が生じる。
【0047】
本発明によれば、通常の生理的条件下ではいかなる切断速度も引き起こさないか、または緩慢な切断速度のみを引き起こすリンカーのみ用いればよい。例えば、リンカー分子は、たとえ標的領域での放出(例えば、腫瘍細胞中での酵素的放出)が可能であっても、該放出が通常の条件下では非常に緩慢であるために活性成分の治療濃度を達成することが不可能であるように構築され得る。リンカー分子の切断または十分に高い速度でのリンカー分子の切断は、交流磁場による外部からのインパルスの結果としてのみ引き起こされて、活性成分の活性化を生じる。好ましくは、これは、用いられるリンカーが、核酸の二本鎖または多重鎖あるいはペプチドダイマーまたはペプチドオリゴマーの熱誘導性融解が生じた後にのみ酵素的切断を可能にするようなコンホメーションをとることによって実現される。
【0048】
種々の官能基(例えば、カルボキシ、エポキシ、アルデヒド)によって安定化された粒子は、アミノシランによって安定化された粒子と同様にして処理され得る。結合方法は、上記条件下でのみ放出が起こり得るように選択されることが重要である。同様にして、活性成分が、上記基で官能性を付与されたアルコキシシランに結合され得(実施例1を参照のこと)、後続工程で、該結合体が、シランによって予め安定化された粒子の保護被覆に結合される。結合は、共有結合に制限されない。本発明によれば、十分な安定性を有するイオン性相互作用を生成することもまた可能である。
【0049】
WO98/58673の特許明細書に記載のように、(例えば、高分子で)活性化され得るナノ粒子/活性成分結合体のさらなるコーティングもまた可能であり、そして粒子/活性成分結合体の生物学的特徴を改良するために用いられ得る。同様にして、標的となる発見すべき特性を、完成した構築物に与える他の分子が結合され得る(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、アプタマー、Fabフラグメント、Fcフラグメント、ペプチド、ペプチド模倣物、ギャップマー、リボザイム、CpGオリゴマー、DNAザイム、リボスイッチまたは脂質)。このために、さらなる修飾は、標的での活性成分の放出が活性化され得ることを妨げるものであってはならない。
【0050】
したがって、500までの炭素原子、または10〜30塩基対、好ましくは15〜25塩基対、または10〜30アミノ酸、好ましくは15〜25アミノ酸を有する種々の分子がリンカーとして働き得るが、但し、リンカーは、熱的、光化学的または酵素的に切断され得る基、酸に不安定な基または容易に脱着され得る任意の他の基を含む。したがって、リンカー分子内の結合および/または活性成分に対するリンカーの結合および/またはナノ粒子の表面に対するリンカーの結合は、交流磁場の作用によって直接的に切断され得るか、または間接的に切断され得るかのいずれかでなければならない。間接的切断とは、例えば交流磁場によって、ペプチダーゼ、エステラーゼまたはヒドロラーゼのような酵素が標的で(例えば癌細胞中で)刺激されるか、またはそれらの活性または発現が増強されて、該酵素が上記切断を行い得ることを意味する。さらに、磁性ナノ粒子が用いられる場合において、該粒子が交流磁場によって加熱され、熱に不安定な結合の切断をもたらすときに、間接的切断が生じ得る。また、交流磁場の作用による標的でのpHの上昇およびその後のリンカー分子内の酸に不安定な結合の切断が意図される。
【0051】
エステル基およびアミド基またはペプチド基は、リンカー分子内またはリンカー分子で酵素的に切断され得る基の一部である。熱的にまたは酸によって切断され得る基は、例えば、リン酸基、チオリン酸基、硫酸基、アミドリン酸基、カルバメート基またはイミン基を含む。
【0052】
活性成分は、必ずしもリンカーに共有結合される必要はない;代わりに、それはまた、イオン結合され得、または水素結合を介して結合され得、あるいはインターカレート形態または錯形態で存在し得る。
【0053】
さらに、活性成分をナノ粒子の表面に吸着で結合し、そしてバリア層でそれらをカバーすることもまた可能である。このバリア層によって活性成分の放出を大きく防いでおり、交流磁場の作用によって、バリア層は、活性成分が放出され得るように修飾(特に分解)される。
【0054】
他の好ましい実施態様において、本発明のナノ粒子は、1以上の被覆またはコーティングによって囲まれ、またはカバーされる。該被覆またはコーティングは、1以上の機能を有し得、そして保護被覆、バリア層または細胞選択性コーティングとして働き得る。
【0055】
ナノ粒子に対する治療上活性物質の結合が弱い場合、例えば、非共有結合、イオン結合、吸着結合、親油性結合および/またはファンデルワールス結合および/または水素結合による付着の場合、保護被覆またはバリアコーティングが、ナノ粒子がそれらの目的地に到達するまで治療上活性物質の放出を防ぎ得る。この保護被覆またはバリアコーティングの代わりに、あるいはこの保護被覆またはバリアコーティングの上のさらなる層として、細胞特異的官能性を保有する外部層を、該保護被覆またはバリアコーティングに付与してもよい。
【0056】
該細胞特異的コーティングは、特定の細胞、例えば、特定の細菌細胞または特定の腫瘍細胞に対するナノ粒子の親和性を増大させる;したがって、それは細胞の識別のために役立つ。このような細胞特異的ナノ粒子は、好ましくは細胞の中に蓄積し、細胞に対するそれらの親和性は、それらの表面上の官能性によって増大する;したがって、このようなナノ粒子は、腫瘍特異的である。この技術によって、例えば、特定の型の癌に対する腫瘍特異的ナノ粒子が開発され得る。
【0057】
さらに、ナノ粒子はまた、コロイドの保護被覆によって安定化され得、これは、ナノ粒子が凝集することを防御する。好ましくは、このような保護被覆またはコーティングは、アミノ基またはカルボキシ基を備える。保護被覆化またはコーティングのために生物学的高分子、合成または半合成の高分子が用いられ得る。バリア層を生成するために、好ましくは生物学的に安定である、すなわち生物学的分解に大いに抵抗性である、高分子が、代表的に用いられる。細胞特異的被覆またはコーティングの生成のためには、生分解性高分子を用いることが好ましい。
【0058】
以下の高分子が生物学的に安定な高分子として用いられ得る:ポリアクリル酸およびポリアクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボウレタン、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリイソブチレン、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、シリコーンポリウレタン、シリコーンポリカーボネートウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDMゴム、フルオロシリコーン、カルボキシメチルキトサン、ポリアリールエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバレレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、三酢酸レーヨン、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸エチルビニルコポリマー、ポリスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMゴム、シリコーン(例えば、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン)、ポリビニルハロゲンおよびコポリマー、セルロースエーテル、三酢酸セルロース、キトサンおよび上記物質のコポリマーおよび/または混合物。
【0059】
以下の高分子が生分解性高分子として用いられ得る:ポリバレロラクトン、ポリ−ε−デカラクトン、ポリラクトン酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグリコリドとのコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−バレレート、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、ポリ無水物(例えば、ポリ無水マレイン酸)、ポリヒドロキシメタクリレート、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−β−マレイン酸、ポリカプロラクトンアクリル酸ブチル、多ブロック高分子(例えば、オリゴカプロラクトンジオールおよびオリゴジオキサノンジオールから)、ポリエーテルエステル多ブロック高分子(例えば、PEGおよびポリ(ブチレンテレフタレート))、ポリピボットラクトン、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリカプロラクトングリコリド、ポリ(γ−グルタミン酸エチル)、ポリ(DTH−イミノカーボネート)、ポリ(DTE−コ−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノールAイミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ(N−ビニル)−ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、ポリ[(p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリ無水物、ポリエチレンオキシドプロピレンオキシド、軟質ポリウレタン、骨格にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエーテルエステル(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアルケンオキサレート、ポリオルトエステルおよびそれらのコポリマー)、脂質、カラゲナン、フィブリノーゲン、澱粉、コラーゲン、タンパク質に基づく高分子、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、修飾されたゼイン、ポリヒドロキシアルカノエート、ペクチン酸、アクチン酸、修飾されたおよび修飾されていないフィブリンおよびカゼイン、カルボキシメチルサルフェート、アルブミン、ヒアルロン酸、キトサンおよびその誘導体、ヘパラン硫酸およびその誘導体、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、β−シクロデキストリン、アルギネート、グリコサミノグリカン、糖類、多糖類、プロテオグリカン、糖タンパク質、PEGとポリプロピレングリコールとを有するコポリマー、アラビアゴム、グアー、ゼラチン、コラーゲンN−ヒドロキシスクシンイミドコラーゲン、脂質、リン脂質、上記物質の修飾およびコポリマーおよび/または混合物。
【0060】
特定の細胞に対して親和性をさらに増大させるために、モノクローナル抗体および/またはアプタマーが、ナノ粒子の表面上あるいはナノ粒子の外部層または被覆上に結合され得る。モノクローナル抗体およびアプタマーは、腫瘍細胞のような特定の細胞を認識し得、ナノ粒子の細胞識別をさらに増強するように設計される。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、磁性ナノ粒子のコアは、マグネタイト(Fe)、マグヘマイト(γ−Fe)または該2つの酸化物の混合物からなり、そして好ましくは、それらは超常磁性である。さらに、コアは、コロイドの保護被覆によって安定化され、治療上活性物質の付着を可能にする。この結合の型によって、磁性ナノ粒子と治療上活性物質との結合体は、ヒト身体内での治療上活性物質の制御される放出が交流磁場(インパルス)によって引き起こされ得るように構成される。
【0062】
さらに、本発明は、本発明のナノ粒子を含む医薬品組成物、およびこのような医薬品組成物を調製するための本発明のナノ粒子の使用に関する。
【0063】
特に、該医薬品組成物は、点滴液または注射液である。ナノ粒子のこのような溶液(例えば、生理的食塩水中の)は、間質性または腫瘍内投与に適している。非固形腫瘍および/または腫瘍転移を形成する種類の腫瘍の場合には、さらに動脈内または静脈内投与が、全身に関する全身性治療を可能にする。
【0064】
本発明によるナノ粒子および医薬品組成物は、退化した細胞種または外来細胞によって特徴づけられる疾患の治療および予防の両方に用いられる。ここでは、外来細胞または退化した細胞と健常な自己由来細胞とを識別し得るという本発明のナノ粒子の特徴が、都合よく用いられ得る。退化した細胞としては、特に、癌細胞または増殖に関して欠陥がある細胞および狭窄または再狭窄組織が挙げられる。外来細胞としては、特に細菌細胞が挙げられる。
【0065】
したがって、本発明のナノ粒子およびナノ粒子を含む医薬品組成物は、腫瘍、カルシノーマおよび癌の予防および治療に用いられる。
【0066】
本発明のナノ粒子が用いられ得る癌および腫瘍の型の例としては、以下に示すものが挙げられる:腺癌、脈絡膜黒色腫、急性白血病、聴神経鞘腫、膨大部癌、肛門癌、星状細胞腫、基底細胞癌、膵臓癌、結合組織腫瘍、膀胱癌、気管支癌、非小細胞気管支癌、乳癌、バーキットリンパ腫、子宮体癌、CUP症候群、大腸癌、小腸癌、小腸腫瘍、卵巣癌、子宮内膜癌、脳室上衣腫、上皮癌、ユーイング腫瘍、胃腸癌、胆嚢癌、胆癌、子宮癌、子宮頚部癌、神経膠芽腫、婦人科癌、耳、鼻および咽喉の腫瘍、血液新形成、有毛細胞白血病、尿道癌、皮膚癌、脳腫瘍(神経膠腫)、脳腫瘍転移、精巣癌、脳下垂体腫瘍、カルチノイド、カポジ肉腫、喉頭癌、生殖細胞腫瘍、骨癌、結腸直腸癌、頭頚部腫瘍(頚部、鼻および耳の領域に位置する腫瘍)、結腸癌、頭蓋咽頭腫、口内および唇上の癌、肝臓癌、肝臓腫瘍転移、白血病、眼瞼腫瘍、肺癌、悪性リンパ腫(ホジキン/非ホジキン)、リンパ腫、胃癌、悪性黒色腫、悪性新生物、胃腸管悪性腫、乳癌(カルシノーマ)、直腸癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、ホジキン病、菌状息肉腫、鼻癌、神経鞘腫、神経芽細胞腫、腎臓癌、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、乏突起膠腫、食道癌(カルシノーマ)、溶骨性腫瘍および骨芽細胞腫瘍、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、形質細胞腫、頭頚部扁平上皮癌、前立腺癌、咽喉癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、膣癌、甲状腺癌、シュネーベルク肺癌、食道癌、有棘細胞癌、T細胞リンパ腫(菌状息肉腫)、胸腺腫、管癌、眼腫瘍、尿道癌、泌尿器腫瘍、尿路上皮癌、外陰癌、疣贅の出現、軟部組織腫瘍、軟部組織肉腫、ウィルムス腫瘍、頚部癌および舌癌。
【0067】
固形腫瘍が特に好ましい。さらに、前立腺癌、脳腫瘍、肉腫、子宮頚部癌、卵巣癌、乳癌、気管支癌、黒色腫、頭頚部腫瘍、食道癌、直腸癌、膵臓癌、膀胱癌および腎臓癌、肝臓、脳およびリンパ節での腫瘍転移が好ましい。
【0068】
さらに、通常の温熱療法、放射線療法および/または通常の化学療法と共に、本発明のナノ粒子を適用および使用することが特に好ましい。
【実施例】
【0069】
実施例1
放出させるマイトマイシンと結合させたナノ粒子の調製:
アミノシランによって安定化された鉄酸化物ナノ粒子に細胞分裂阻害性のマイトマイシンを結合させるために、マイトマイシンとトリエトキシシリルブチルアルデヒドとの結合体を合成する。このために、マイトマイシンとトリエトキシシリルブチルアルデヒドとを1:1のモル比で溶解し、そして2時間撹拌する。そうすると、活性成分がイミン結合によってシランに結合される。次いで、該結合体を、以下のように鉄酸化物ナノ粒子をコーティングするために用いる:コーティングされていない鉄酸化物粒子の懸濁液(水酸化ナトリウムによる沈殿によって塩化鉄(II)および塩化鉄(III)から調製される)を、酢酸を用いてpH5に設定する。次いで、マイトマイシン/シラン結合体とアミノプロピルトリエトキシシランとの混合物を連続撹拌下で添加する。アミノプロピルトリエトキシシランに対するマイトマイシンのモル比を予め1:50に設定する。24時間後、懸濁液の体積が2倍になるようにエチレングリコールを添加する。次いで、水を蒸留によって除去する。したがって、シランは鉄酸化物粒子に固定されて結合される。懸濁液を、超純水に対する透析によって精製し、そして(蒸留によって)1mol/lの鉄濃度まで濃縮する。
【0070】
実施例2
リンカーとしてグルタルアルデヒドを用いた、鉄酸化物ナノ粒子へのアミノ修飾オリゴヌクレオチドの結合
アミノシランによって安定化されたナノ粒子を、水酸化ナトリウムによる塩化鉄(II)および塩化鉄(III)の沈殿によって調製し、アミノプロピルトリエトキシシランの添加によってコーティングする(WO97/38058にしたがう)。懸濁液を2mol/lの鉄濃度まで濃縮する。
【0071】
500μlの懸濁液を10mlのPIPESバッファー(ピペラジン−N,N’−ビス−2−エタンスルホン酸;pH=7.4)で洗浄する。次いで、5%グルタルアルデヒド溶液(6ml)を添加し、そして混合物を2時間撹拌する。それによって活性化される粒子を洗浄し、そして800μlのPIPESバッファーに再懸濁する。0.3μmolのアミノ修飾されたオリゴヌクレオチド(アミノ末端修飾)を水に溶解し、そしてそこへ添加する。懸濁液を12時間撹拌する。次いで、粒子を超純水で洗浄し、そして500μlの超純水に再懸濁する。
【0072】
実施例3
生分解性層の付与
実施例2にしたがって調製した、グルタルジアルデヒドリンカーおよびそこに固定化されたオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子を、凍結乾燥し、そしてスプレー法を用いて、ポリグリコールを含むエタノール溶液で処理する。溶媒の除去後、生分解性ポリグリコールコーティングを備えるナノ粒子が得られる。このようなコーティングは、例えば、アプタマーおよび腫瘍細胞特異的抗体を付着させるために役立つ。
【0073】
実施例4
オリゴヌクレオチドを介する活性物質の結合
最近では、オリゴヌクレオチド合成は、大部分は自動化され、そして確立された保護基化学を用いて行われている。15ヌクレオチドからなる短いオリゴヌクレオチドを、ナノ粒子に共有結合させる(実施例2を参照のこと)。第1のオリゴヌクレオチドに相補的である第2のオリゴヌクレオチドを、末端修飾を介して活性成分のドキソルビシンと結合させる。両方の構成成分を一緒にし、そして95℃の温度に短時間加熱し、オリゴヌクレオチドを変性させる。次いで、オリゴヌクレオチドの融点のすぐ下の温度でインキュベートすることによって2つの鎖を対合させ、二本鎖を形成させる。オリゴヌクレオチドの配列は、二本鎖の融解が起こらないように生理的条件下での融点が約48℃となるように選択する。50℃よりも高くに加熱することによって、調製されたDNA二本鎖は量的に融解され、そして活性成分は、付着されているオリゴヌクレオチドと一緒になって放出される。一本鎖DNAは、細胞に進入するとすぐに急速に分解されるため、活性成分は完全に放出される。
【0074】
実施例5
核酸の三重らせんを介する活性物質の結合
二重鎖RNAは、特異的遺伝子を不活性化するために、いわゆるsiRNA(低分子干渉RNA)として治療で用いられ得る。このようなRNAが、輸送体として用いられるナノ粒子から外部制御下に放出される場合、選り抜きの方法は、特異的三重らせんを介する結合にある。
【0075】
二本鎖に結合しかつ用いるsiRNAにマッチするオリゴヌクレオチドを、(実施例2にしたがって)末端修飾を介してナノ粒子に共有結合させる(これは、引き続き、いわゆる「三重鎖形成オリゴヌクレオチド」(TFO)を形成することを可能にする)。加水分解酵素に対する増大した安定性を達成するために、核酸の糖リン酸骨格が核酸の構造に類似の構造を有する合成ペプチド様骨格と置換されたオリゴヌクレオチド、いわゆるペプチド核酸(PNA)を用いる。共有結合されたオリゴヌクレオチドは、所望の三重らせんの融点のすぐ下(これは同時に二本鎖RNAの融点よりも低い)でのハイブリダイゼーションによって、二本鎖RNAに広い溝で結合する。
【0076】
生理的条件下では、著しい放出は起こらない。なぜなら、この場合、45℃の融点は達成されないからである。治療上において三重らせんの該融点を上回ってやっと、該三重らせんは融解し、二本鎖siRNAを放出する。
【0077】
実施例6
オリゴペプチド分子を介する活性物質の結合
温度感受性オリゴペプチドドメインを介する温度感受性結合は、腫瘍壊死因子(TNFα)のようなポリペプチドエフェクターの遺伝子操作産物のターゲッティングのために特に適している。この場合、ヘテロダイマー化、いわゆるロイシンジッパーが用いられる。荷電基(アルギニン/リジン対グルタミン酸/アスパラギン酸)のイオン性相互作用によって、結合が安定化され、そして同時に特異化される。
【0078】
ナノ粒子で、maxロイシンジッパーの22アミノ酸からなる合成オリゴペプチドを、オリゴペプチドの末端修飾を介して結合させる。mycロイシンジッパーの対応する22アミノ酸を末端に保有する遺伝子操作生産TNF調製物を添加し、腫瘍壊死因子をナノ粒子に量的に結合させる。温熱療法の間にロイシンジッパーの融点を上回るので、(その機能は影響を受けずに)腫瘍壊死因子は局所的に放出される。
【0079】
実施例7
オリゴヌクレオチドペプチド結合を介する活性物質の結合
核酸と核酸との、およびタンパク質とタンパク質との(またはポリペプチドとポリペプチドとの)特異的な熱に不安定な相互作用に加えて、タンパク質またはポリペプチドと核酸との間の特異的(および非特異的)な生物学的相互作用もまたある。このような相互作用は同じ非共有結合に基づくため、これは、基本的には上記とまさに同じく熱に不安定であり、したがって、活性成分の熱的放出のための熱に不安定なリンカー系として同等に用いられ得る。核酸と非特異的に相互作用するタンパク質(例えば、ヒストンまたはDNA複製フォークの一本鎖SSBタンパク質)あるいは核酸と非常に特異的に相互作用するタンパク質(例えば、リプレッサー、転写因子)のいずれも用いられる。リプレッサータンパク質のいわゆる「ヘリックス・ターン・ヘリックス」モチーフおよび核レセプタータンパク質のいわゆる「ジンクフィンガー」モチーフが、特異的DNA結合ポリペプチドとして用いられる。それらは両方とも、代表的には約60アミノ酸を含む。(ジンクフィンガーモチーフは、2つの同等のサイズのループからなり、それぞれが2対のシステインを有するか、または1対のシステインおよび1対のヒスチジンを有し、これらが、錯形成亜鉛原子によって一緒に保持される)。したがって、2つの指様構造が形成され、DNAの主溝の中に達する。これらの2つの構造の間に、15〜20のアミノ酸を含むリンカーが位置し、このリンカーは、ステロイドホルモンレセプターの場合には、パリンドロームのDNA配列を特異的に認識するアミノ酸配列を含む。
【0080】
60アミノ酸からなり、そしてグルココルチコイドレセプターの完全なジンクフィンガーモチーフを含む合成オリゴペプチドを、ナノ粒子の表面に共有結合させる。活性成分分子のドキソルビシンを、グルココルチコイドレセプターの認識配列(いわゆる「グルココルチコイド反応性エレメント」GRE)を含む、15塩基対の大きさがある二本鎖オリゴヌクレオチドに共有結合させる。両方の構成成分を結合させ、生理的条件下で安定な複合体を形成させる。交流磁場の適用によってナノ粒子を加熱し、複合体の融点を超過させる。複合体の分解によってオリゴヌクレオチド/活性成分結合体が放出される。
【0081】
実施例8:ハプテン抗体結合を介する活性成分の結合
治療薬としてのハプテンの自己由来タンパク質に対する自発的な結合は、免疫反応をもたらし得る。抗体の結合は、効果の中和もまたもたらし得る。該効果は、ハプテン/抗体複合体の熱的分解によって局所的な活性化を実現するために用いられる。
【0082】
ドキソルビシンに対する抗体のいわゆるFvフラグメント(抗原結合可能な最も小さい抗体フラグメント)(これは、生化学的に(または必要に応じて遺伝子操作で)生産される)を、ナノ粒子の表面に共有結合させる。抗原結合部位を、過剰のドキソルビシンの添加によって飽和させる。ドキソルビシンで飽和させたナノ粒子から、非特異的に結合された活性成分を磁気分離または遠心分離によって取り除き、そして必要に応じてさらに洗浄する。
【0083】
ドキソルビシンで飽和させたナノ粒子を静脈内投与した後、該ナノ粒子は循環し、そして細胞分裂阻害剤の通常の副作用が大部分なくなる。ナノ粒子は、絶えず新たに形成されているがなお透過性の血管壁を通って血管から離れ得るので、腫瘍の領域内でナノ粒子の非特異的な蓄積が達成される。さらに、特別な表面コーティングによって、(有糸分裂の頻度による)腫瘍細胞では細胞内の受け入れが生じ得るが、良性細胞では生じ得ない。適当な期間の腫瘍内蓄積後、外部の磁場によって、ナノ粒子の加熱を生じさせ得る;これは、温熱療法による組織損傷と熱の発生によるハプテン/抗体(フラグメント)複合体の融解との両方を生じる。温熱療法の組織損傷効果は、自律的な細胞障害性効果およびドキソルビシンによって引き起こされる照射に対する増感効果によって増強される。したがって、腫瘍治療における実体的な相乗作用が達成される。
【0084】
実施例9:ビオチン/アビジン結合を介する活性成分の結合
ビタミンであるビオチンと雌鳥卵白由来の結合タンパク質であるアビジン(またはその細菌のアナログであるストレプトアビジン)との間の非共有結合は、知られている最も強い非共有結合の相互作用である。しかし、高い結合エネルギーによって、この結合は、利用できる温度区間内では融解され得ない。該非常に特異的な結合をなお利用できるようにするには、減少した結合強度を有するビオチンの誘導体、例えば、デスチオビオチン(ビオチンの場合の1×1015と比較して5×1013の解離定数を有する)またはイミノビオチン(3.5×1011の解離定数)が用いられなければならない。(ストレプト)アビジンに対するこれらの結合は、治療上達成され得る温度で生理的に融解される。
【0085】
イミノビオチンを、そのε−アミノ基を介してドキソルビシンのアミノ基と結合させる;結合はグルタルジアルデヒドを介して形成される。ナノ粒子もまた、グルタルジアルデヒドによって表面コーティングのアミノ官能性を介して商業的に入手可能なストレプトアビジンに結合させる。過剰のイミノビオチニルドキソルビシンの添加によって、ドキソルビシンをナノ粒子に付加する。頻繁に、該ドキソルビシンを付加したナノ粒子は、腫瘍の領域内の内皮細胞の透過性によってインビボで受動的に濃縮され、さらに、それらは、腫瘍細胞のエンドサイトーシスによって能動的に濃縮される。この場合もまた、磁気で誘導される温熱療法は、増感剤であるドキソルビシンの熱的放出によって相乗的に増強される。
【0086】
実施例10
放出させるシスプラチンと結合させたナノ粒子の調製:
アミノシランによって安定化された鉄酸化物ナノ粒子に細胞分裂阻害性のシスプラチンを結合させるために、まず、実施例1の特徴を有するナノ粒子を、アミノプロピルトリエトキシシランによって誘導体化する。このために、コーティングされていない鉄酸化物粒子の懸濁液(水酸化ナトリウムによる沈殿によって塩化鉄(II)および塩化鉄(III)から調製される)を、酢酸を用いてpH5に設定する。アミノプロピルトリエトキシシランを、水酸基の理論最大数に対するモル比で液滴により添加し、室温で1時間撹拌し、次いで、シスプラチンの等モル量と混合し、シランのアミノ基と求核置換反応で反応させる。
【0087】
得られた誘導体化されたナノ粒子は、以下の構造を有する:
【0088】
【化4】

【0089】
実施例11:実施例10によるシスプラチンナノ粒子の神経膠芽腫細胞に対する効果
該シスプラチンナノ粒子の水溶液を非誘導体化ナノ粒子と比較して神経膠芽腫細胞で調べた。
【0090】
DE19912798C1に記載のように、インビトロ試験を、神経膠芽腫ヒト細胞系RUSIRS1(脳腫瘍)を用いて行った。神経膠芽腫細胞を患者の腫瘍組織から取り、培養した。シスプラチンナノ粒子の有効性を試験するために、それぞれ2×10のRUSIRS1細胞を25mlの細胞培養培地(D−MEM+20%FBS+1.2mlのピルベート)を有する75cmの細胞培養ボトル中に調製した。細胞懸濁液を4つの培養容器に均一に分配した。それぞれ153μlの該シスプラチンナノ粒子の水溶液(CFe=2mol/l)を、該細胞懸濁液のうち2つへ添加した。他の2つの培養ボトルはリファレンスとして扱い、そして153μlの非誘導体化ナノ粒子の水溶液(CFe=2mol/l)をそこへ添加した。細胞への添加の前に、ナノ粒子の試料を37℃の温度に15分間加熱し、そして室温で10分間放置した。ナノ粒子の添加後、試料を1時間放置し、次いで、交流磁場による処理に30分間供した。該処理を24時間後に反復した。37℃での48時間のインキュベーション期間の後にはもはや、シスプラチンナノ粒子を有する2つの試料で、非誘導体化ナノ粒子を含む2つの試料におけるよりも明らかに際立った損傷がみられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子であって、少なくとも1つの治療上活性物質が、リンカー分子を介して該ナノ粒子に結合されており、該リンカー分子が、熱に不安定である、電磁気に不安定である、光に不安定である、酸に不安定である、インターカレートされ得るまたは酵素的に切断され得る基を含み、そして該ナノ粒子からの該少なくとも1つの治療上活性物質の解離が、交流磁場によって引き起こされる、または開始される、または実質的に増強される、ナノ粒子。
【請求項2】
前記少なくとも1つの治療上活性物質が、前記ナノ粒子に共有結合されている、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記リンカー分子が、核酸分子、ポリペプチド、ペプチド核酸、アプタマー、DNA、RNA、ロイシンジッパー、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ハプテン抗体結合またはビオチンアビジン結合である、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記リンカー分子が、DNA−DNA、DNA−RNA、DNA−PNA、RNA−RNA、RNA−PNAまたはPNA−PNAからの二本鎖核酸構築物、二重らせん、ホモハイブリッドまたはヘテロハイブリッドである、前記いずれかの請求項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、保護被覆またはコーティングのいずれかを備える、前記いずれかの請求項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記保護被覆またはコーティングが、アミノ基またはカルボキシ基を有する、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記少なくとも1つの治療上活性物質が、抗増殖性、抗遊走性、抗血管新生性、抗血栓性、抗炎症性、消炎性、細胞分裂阻害性、細胞障害性、抗凝固性、抗細菌性、抗ウイルス性および/または抗真菌性の薬剤を含む群から選択される、前記いずれかの請求項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記少なくとも1つの治療上活性物質が、アクチノマイシンD、アメタントロン、9−アミノカンプトテシン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、プリンおよびピリミジン塩基のアンタゴニスト、アントラサイクリン、アロマターゼインヒビター、アスパラギナーゼ、抗エストロゲン剤、ベンダムスチン、ベキサロテン、バイオリムスA9、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、シトシンアラビノシド、アルキル化細胞分裂阻害剤、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、5’−デオキシ−5−フルオロウリジン、ドセタキセル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フルダラビン、フルオロウラシル、葉酸アンタゴニスト、ホルメスタン、ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリン、ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト、ハイカムチン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、レトロゾール、リュープロレリン、ロムスチン、メイタンシノイド、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミルテホシン、マイトマイシン、ミトポドジド、抗有糸分裂剤、ミトキサントロン、ニムスチン、オキサリプラチン、オキサザホスホリン、パクリタキセル、ペントスタチン、ポドフィロトキシン誘導体、プロカルバジン、ラパマイシン、ロドマイシンD、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、チオグアニン、トポイソメラーゼインヒビター、トポテカン、トレオスルファン、トレチノイン、トリプトレリン、トロホスファミド、ビンカアルカロイド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、細胞分裂阻害活性抗生物質を含む群から選択される、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記少なくとも1つの治療上活性物質が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカンまたはリポタンパク質を含む群から選択され、該物質が、抗増殖性、抗遊走性、抗血管新生性、抗血栓性、抗炎症性、消炎性、細胞分裂阻害性、細胞障害性、抗凝固性、抗細菌性、抗ウイルス性および/または抗真菌性の特性を有する、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、超常磁性の鉄酸化物または酸化物層を有する純鉄で構成されている、前記いずれかの請求項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
通常の癌治療方法を補助するための増感剤、放射線増感剤および/または増幅剤が、前記ナノ粒子に結合されている、前記いずれかの請求項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
モノクローナル抗体または抗体フラグメントおよび/またはアプタマーが、前記ナノ粒子の表面に結合されている、前記いずれかの請求項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかの項に記載のナノ粒子を含む点滴液。
【請求項14】
増殖性疾患、癌および細菌感染の治療および/または予防のための医薬品組成物の調製のための、請求項1から12のいずれかの項に記載のナノ粒子の使用。

【公表番号】特表2008−536837(P2008−536837A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505731(P2008−505731)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000653
【国際公開番号】WO2006/108405
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507338471)マグフォース ナノテクノロジーズ アーゲー (2)
【Fターム(参考)】