説明

ナノ粒子

本発明は、ナノ粒子、とくに、粒子相関分光法(PCS)または透過型電子顕微鏡により決定される3〜50nmの範囲の平均粒子サイズを有し、有機溶媒中に分散した表面修飾ナノ粒子であって、該ナノ粒子の1つまたは2つ以上の前駆体をM3−x[O3−xSiR1+x](式中xは0、1または2から選択される整数を表わし、MはH、Li、NaまたはKを表わし、そして全てのRは、それぞれ互いに独立して、分枝または非分枝、飽和または不飽和の1〜28のC原子を有する炭化水素ラジカルを表わし、そこにおいて、1つまたは2つ以上のC原子はOによって置換されていてもよい)で表わされる化合物と有機溶媒中で反応させ、該ナノ粒子を得ることを特徴とする、前記ナノ粒子に関し、およびポリマー中のUV防護のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子、特に表面修飾ナノ粒子、かかる粒子の製造方法、およびそのUV保護のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ナノ粒子のポリマーマトリックスへの取り込みは、例えばマトリックスの機械的性質、例えば衝撃強度など、に影響を及ぼすだけでなく、その光学的性質、例えば波長依存性伝達、色(吸収スペクトル)および屈折率を修飾する。光学適用のための混合物において、マトリックスの屈折率と異なる屈折率を有する物質の添加により、必然的に光散乱および究極的には光不透過が生じるため、粒子サイズは重要な役割を果たす。混合物を通過する際の規定の波長の放射の強度の低下は、無機粒子の直径に対する高い依存性を示す。
【0003】
さらに、多数のポリマーはUV照射に敏感であり、このことは、ポリマーは実用的用途に対しUV安定性である必要があることを意味する。ここにおいて安定剤として主に適合するであろう多くの有機UVフィルターは残念ながらそれ自体は光安定性ではなく、したがって、長期適用に好適な材料に対する継続した需要が存在する。
【0004】
好適な物質は、したがって、UV領域を吸収し、可視領域においてできるだけ透明かつ無色に見え、容易にポリマー中へと取り込まれなければならない。数々の金属酸化物がUV光を吸収するが、しかしながら、上述の理由のために、可視光領域においておける機械的または光学的性質を損なうことなくそれらをポリマー中へと取り込むことは、困難を伴わざるを得ない。
【0005】
ポリマー中での分散のために好適なナノ材料の開発は、粒子サイズだけでなく、粒子の表面性質の制御を要する。親水性粒子と疎水性ポリマーマトリックスとの単純な混合(例えば押し出し成形による)により、ポリマー中での粒子の不均一な分布、さらにはその凝集が、結果として引き起こされる。それゆえ、無機粒子のポリマーへの均一な取り込みのために、それらの表面は少なくとも疎水性に修飾されなければならない。さらに、ナノ粒子材料は、特に、凝集体を形成する強い傾向を呈し、これは続く表面処理においてもまた存続するものである。
【0006】
以下の文献は、好適な粒子を提供するさまざまな方法を含む。
国際公開WO 2005/070820は、ポリマーにおけるUV安定化剤として好適なポリマー修飾ナノ粒子を記載する。これらの粒子は、ステップa)において、1つまたは2つ以上のナノ粒子の水溶性前駆体を含む逆相エマルジョンまたは溶解物を、疎水性ラジカルを含有する少なくとも1つのモノマーおよび親水性ラジカルを含有する少なくとも1つのモノマーのランダム共重合体の補助で調製し、およびステップb)において粒子を生成する方法により、得ることができる。これらの粒子は、好ましくは、本質的にメタクリル酸ラウリル(LMA)およびメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)からなる共重合体の被覆を有する、30〜50nmの粒子サイズを有するZnO粒子である。該ZnO粒子は、例えば、水性酢酸亜鉛溶液からの塩基性沈殿により、生成される。
【0007】
国際公開WO 2000/050503は、少なくとも1つの亜鉛化合物のアルコールまたはアルコール/水混合物中での塩基性加水分解による、加水分解中にまず形成する沈殿を該酸化亜鉛が完全に凝集するまで熟成させ、この沈殿を次いでコンパクトにしてゲルとし、上清相から分離することを特徴とする、酸化亜鉛ゲルの調製方法を記載する。
【0008】
国際公開WO 2005/037925は、発光性プラスチックの調製に好適なZnOおよびZnSナノ粒子の生成を記載する。ZnO粒子は、酢酸亜鉛のエタノール性溶液からエタノール性NaOH溶液により沈殿させ、24時間熟成させ、その後エタノールをブタンジオールモノアクリレートにより置換する。
【0009】
国際公開WO 2004/106237は、溶液1キログラムあたり1〜10molのOHの水酸化物イオン濃度を有するメタノール性水酸化カルシウム溶液を、溶液1キログラムあたり0.01〜5molのZnの亜鉛イオン濃度を有する亜鉛カルボン酸塩のメタノール溶液に、1.5〜1.8のOH:Znモル比で攪拌しながら添加し、添加が完了したときに得られた沈殿溶液を40〜65℃の温度で5〜50分間の期間にわたって熟成させ、最終的に25℃の温度へと冷却し、実質的に球状の粒子を得る、酸化亜鉛粒子の製造方法を記載する。
【0010】
K. Feddernの論文(「Synthese and optische Eigenschaften von ZnO Nanokristallen」[Synthesis and Optical Properties of ZnO Nanocrystals], University of Hamburg, June 2002)は、イソプロパノール中のLiOHによる酢酸亜鉛からのZnO粒子の生成を記載する。該粒子は、ここで、いわゆる「Stoeber process」に類似の方法で、アンモニア存在下におけるテトラエトキシシランとの反応によりSiOで被覆することができるが、ここでは濁った分散物が形成される。分散したZnO粒子のオルトホスフェートまたはトリブチルホスフェートまたはジイソオクチルホスフィン酸による被覆もまた、ここに記載される。
【0011】
独国特許出願DE 102005056621およびDE 102005056622は、ステップa)において、ナノ粒子の1つまたは2つ以上の前駆体を有機溶媒中でナノ粒子に転換し、ステップb)において、反応溶液のUV/VISスペクトルにおける吸収限界が所望の値に達するとき、ナノ粒子の増大を、少なくとも1つの修飾剤(これは疎水性ラジカルを少なくとも1つのモノマーおよび親水性ラジカルまたはアルコキシシランを含有する少なくとも1つのモノマーを含有する共重合体であり得る)の添加により終了させる、ナノ粒子の製造方法、およびポリマーにおけるUV保護のためのその使用を記載する。
【発明の概要】
【0012】
ナノ粒子のための好適な表面修飾、および吸収および分散挙動の正確な設定および粒子サイズ制御を可能にする製造方法に対する継続した需要が存在する。
【0013】
それゆえ、小さなナノ粒子を、好適な表面修飾で、可能であれば凝集体を含まずに製造することができる方法であって、このようにして得られる粒子が分散物中でUV領域の放射を吸収するが、可視領域においてはほとんど吸収や散乱をせず、この状態で長期間安定である方法を、有することが望ましい。
【0014】
驚くべきことに、粒子形成および表面修飾がシロキシ化合物により開始される場合、1つのステップでこのことが可能であることが、今回見出された。
【0015】
それゆえ、本発明は、第1に、粒子相関分光法(PCS)により決定される3〜50nmの範囲の平均粒子サイズを有する、有機溶媒中に分散したナノ粒子であって、該ナノ粒子の1つまたは2つ以上の前駆体が有機溶媒中で化合物M3−x[O3−xSiR1+x](式中xは0、1または2から選択される整数を表わし、MはH、Li、NaまたはKを表わし、そして全てのRはそれぞれ互いに独立して1〜28個のC原子を有する分枝または非分枝、飽和または不飽和炭化水素ラジカルを表わし、ここで、1つまたは2つ以上のC原子はOにより置換されてもよい)と反応させてナノ粒子を得る方法によって得ることができることを特徴とする、ナノ粒子に関する。
【0016】
本発明による粒子は、可視領域における高い透明度とともに、UV領域、特に好ましくはUV−A領域における高吸収により差別化される。先行技術から公知の多くの粒子等級と対照的に、本発明による粒子のこれらの特性は、貯蔵の際に変化しないか、または取るに足らない程度にしか変化しないことである。
【0017】
さらに、粒子表面上のSiR1+x基は、粒子の光触媒活性、またはその光触媒分解を低下させる。本発明の好ましい態様において、特にさらなる層による粒子の修飾の後において、粒子の光触媒活性が(例4に記載のように)顕著に低下する。
【0018】
さらに、本発明による製造方法は、製品懸濁液において、従来の水酸化塩基の使用よりも高い固形含有量を達成できるため、粒子の経済的生産を可能にする。さらに、化合物M3−x[O3−xSiR1+x]の添加により、粒子のより優れた安定化が、より広汎なサイズ範囲にわたって達成可能となった。このことは、修飾層または適合化層の適用のための期間が顕著に大きくなることを意味する。本発明において、適合化するということは、多くの適用に(例えば、表面被覆において)必要とされるような、有機性の疎水性溶媒への移動を可能にするような、粒子の機能化を意味する。これは、例えば、好適な疎水性シランにより達成することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様において、ナノ粒子は、ケイ素、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、チタン、鉄、イットリウム、ジルコニウムまたはそれらの混合物の酸化物または水酸化物から本質的になる粒子であり、粒子は好ましくは酸化亜鉛または酸化セリウム粒子、またはこれらの構成物質の少なくとも1つを含む混合酸化物粒子である。
【0020】
本発明による粒子は、好ましくは、粒子相関分光法(PCS)により、または透過型電子顕微鏡により決定される、5〜20nmの、好ましくは7〜15nmの平均粒子サイズを有する。特に、本発明の好ましい態様と同様に、粒子サイズの分布は狭く、例えば、d50値であり、特に好ましい態様において、d90値でさえもあり、好ましくは5〜15nmまたは7〜12nmでさえもある、上述の範囲である。
【0021】
本発明の変形において、粒子がさらなる修飾、好ましくはシリカ被膜および/または疎水性修飾を有することが、好ましい。
本発明の目的に関し、シリカは本質的に二酸化ケイ素および/または水酸化ケイ素からなる材料を意味し、Si原子のいくつかは、また、修飾剤に既に存在する有機ラジカルを持っていてもよい。
【0022】
疎水性修飾のための表面改質剤は、例えば、有機官能シラン、4級アンモニウム化合物、ホスホネート、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物、またはその混合物の群から選択される。好ましい表面改質剤は、以下に詳細を記載する有機官能シランである。
【0023】
本発明のさらなる変形において、本発明による粒子は、シリカ被膜を有すること、有機官能シラン、4級アンモニウム化合物、ホスホネート、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物またはその混合物の群から選択される表面改質剤によりさらに修飾されていることが好ましい。好ましい表面改質剤は、以下に詳細を記載する有機官能シランである。
【0024】
本発明は、対応する製造方法、すなわち、3〜50nmの範囲の平均粒子サイズを有し、有機溶媒に分散したナノ粒子であって、ナノ粒子の1つまたは2つ以上の前駆体を、有機溶媒中で化合物M3−x[O3−xSiR1+x](式中xは0、1または2から選択される整数を表わし、MはH、Li、NaまたはKを表わし、そして全てのRはそれぞれ互いに独立して分枝または非分枝、飽和または不飽和の1〜28個のC原子を有する炭化水素基を表し、式中1つまたは2つ以上のC原子はOにより置換されてもよい)と反応させてナノ粒子を得ることを特徴とする、ナノ粒子の製造方法に、さらに関する。
【0025】
したがって、使用できる無機ナノ粒子の前駆体は、例えば、水溶性金属化合物、好ましくはケイ素、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、チタン、鉄、イットリウムおよび/またはジルコニウム化合物である。好ましい前駆体はカルボン酸の亜鉛塩、例えば酢酸亜鉛、またはハロゲン化物である。混合酸化物は、対応する前駆体の適合した混合による単純な方法において得ることができる。好適な前駆体の選択は、当業者に困難を呈しない:対応する標的化合物の水溶液からの沈殿のために適合する全ての化合物が、適合する。酸化物の沈殿のための好適な前駆体の概説が、例えば、K. Osseo-Asare "Microemulsion-mediated Synthesis of nanosize Oxides Materials" in: Kumar P., Mittal KL, (editors), Handbook of microemulsion science and technology, New York: Marcel Dekker, Inc., pp. 559-573の表6において得られ、その内容は本発明の開示内容に明示的に属する。
【0026】
1つの態様において、塩基MOH、式中MはLi、NaまたはKを表わす、がさらに用いることができ、M3−x[O3−xSiR1+x]および塩基の総量における塩基の割合は99.5%以下である。さらなる塩基MOHを用いる場合、塩基の割合は、総量に基づいて好ましくは10〜70モル%、またはとくに好ましくは30〜60モル%である。
【0027】
化合物M3−x[O3−xSiR1+x]における少なくとも1つのラジカルRは、好ましくは、1〜27個のC原子を有するアルコキシラジカル、好ましくはメトキシまたはエトキシラジカルを表わす。
さらなる好ましい態様において、xは2を表わし、全てのRはそれぞれ互いに独立してメチルまたはエチルを表わす。
【0028】
好ましい化合物M3−x[O3−xSiR1+x]において、全てのRはそれぞれ互いに独立して、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシを表わす。さらに、本発明に従い、MがKを表わすことが好ましい場合があり得る。本発明の変形において、xが2を表わし、前記化合物の化学式がそれゆえM[OSiR]と単純化されることが、さらにとくに好ましい。ここで非常に特に好ましいのは、式K[OSiRCH]で表わされる化合物の使用であり、Rは上で示したとおりであり、全てのRは好ましくはメチルを表わす。
【0029】
さらに好ましい組み合わせは、特許請求の範囲で開示される。
さらなる態様において、化合物M3−x[O3−xSiR1+x](式中MはLi、NaまたはKを表わし、xおよびRは上で示した意味を有する)は、好ましくは塩基MOHおよび化合物R’3−x[O3−xSiR1+x]からin situで生成され、式中R’は1〜16個のC原子、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル基、非常に特に好ましくはエチルを表わす。
【0030】
本発明のさらなる変形において、さらなる反応段階において、少なくとも1つの修飾剤がシリカ被膜の生成のために、または疎水性のシェル(shell)の生成のために添加される有機官能シラン、4級アンモニウム化合物、ホスホネート、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物の群から選択される表面改質剤のために、添加されることが好ましい。
【0031】
シリカの前駆体である修飾剤は、好ましくは、トリアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランであり、ここで、アルコキシは、好ましくはメトキシまたはエトキシ、特に好ましくはメトキシを表わす。本発明に従い、特に好ましいのは、テトラメトキシシラン(TMOS)の使用である。
【0032】
修飾剤は、一般的に、反応の開始の1〜50分後に、好ましくは反応の開始の10〜40分後に、特に好ましくは約30分後に、添加される。
【0033】
本発明による方法の特に好ましい変形において、シリカ被膜の適用後、少なくとも1つの表面改質剤がさらなる反応段階において添加され、ここで修飾剤は好ましくは有機官能シラン、4級アンモニウム化合物、ホスホネート、ホスホニウムまたはスルホニウム化合物である。
【0034】
表面改質剤での好ましい処置により、個々の粒子が被覆された形態で直接的に形成するため、ナノ粒子を分散物から実質的に凝集体なしで単離することが可能となる。さらに、この方法で得られたナノ粒子は、特に単純にそして均質に再分散することができ、ここで、特に、可視光におけるかかる分散物の透明性の望ましくない減損を、実質的に回避することができる。
【0035】
好適な表面改質剤(修飾剤)は、例えば、有機官能シラン、4級アンモニウム化合物、ホスホン酸塩、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物またはそれらの混合物である。表面改質剤は、好ましくは、有機官能シランの群から選択される。
【0036】
本発明に従って記載される表面改質剤の要件は、特に、2つまたは3つ以上の官能基を具備する接着促進剤により充足される。接着促進剤の基は、ナノ粒子の酸化物表面と化学的に反応する。アルコキシシリル基(例えばメトキシ−エトキシシラン)、ハロシラン(例えばクロロシラン)またはリン酸エステルの酸性基またはホスホン酸およびホスホン酸エステルを、ここで考慮にいれる。記載された基は、相対的に長いスペーサーを介して、第2の官能基に結合する。このスペーサーは、一般式(C,Si)(N,O,S)(式中n=1〜50、m=2〜100およびx=0〜50である)の非反応性アルキル鎖、シロキサン、ポリエーテル、チオエーテルまたはウレタンあるいはこれらの基の組み合わせである。官能基は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アミノ、シアノ、イソシアネート、エポキシド、カルボキシル基または水酸基である。
【0037】
シランに基づく表面改質剤は、例えばDE 40 11 044 C2に記載される。リン酸に基づく表面改質剤は、とりわけ、LUBRIZOL (Langer & Co.)よりLubrizol(登録商標)2061および2063として入手可能である。好適なシランは、例えば、C3〜C18−アルキルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−エチルアミノ−N−プロピルジメトキシシラン、イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルアリルジクロロシラン、3−イソシアナートプロポキシトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロペニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、1,2−エポキシ−4−(エチルトリエトキシシリル)シクロヘキサン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリルオキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(ブトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(プロポキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(ブトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(ブトキシエトキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(プロポキシ)シラン、3−アクリルオキシプロピルトリス(ブトキシ)シランである。3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびヘキサデシルトリメトキシシランが特に好ましい。これらのおよび他のシランは、例えばABCR GmbH & Co., Karlsruheより、またはSivento Chemie GmbH, Duesseldorfより市販されている。上記のように用いられる表面改質剤は、非常に特に好ましくはヘキサデシルトリメトキシシランである。
【0038】
ビニルホスホン酸およびジエチルビニルホスホネートは、ここでまた、接着促進剤として述べられてもよい(製造者Hoechst AG, Frankfurt am Main)。
【0039】
ここでまた特に好ましくは、表面改質剤が一般式(R)Si−S−Ahp−Bhbの両親媒性シランであることが好ましく、式中基Rは同一または異なってもよく、加水分解で除去可能な基を表わし、Sは、−O−あるいは1〜18個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖または分枝のアルケニル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖または分枝のアルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分不飽和または完全不飽和のシクロアルキルのいずれかを示し、それらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されてもよく、Ahpは親水性ブロックを示し、Bhbは疎水性ブロックを示し、そしてそこにおいて少なくとも1つの反応性官能基は好ましくはAhpおよび/またはBhbに結合している。
【0040】
ここで特に好ましいのは、2−(2−ヘキシルエトキシ)エチル(3−トリメトキシシアニルプロピル)カルバメートの使用である。
両親媒性シランは頭部基(R)Siを含有し、式中ラジカルRは同一でも異なってもよく、加水分解で除去可能なラジカルを表わす。ラジカルRは好ましくは同一である。
【0041】
好適な加水分解で除去可能な基は、例えば、1〜10個のC原子を有する、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、水素、2〜10のC原子を有するアシルオキシ基、とくに2〜6個のC原子を有するアシルオキシ基、またはNR’基、式中基R’は同一でも異なってもよく、水素、および1〜10個のC原子を有するアルキル、とくに1〜6個のC原子を有するアルキルから選択される。好適なアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシである。適したハロゲンは、とくに、BrおよびClである。アシルオキシ基の例は、アセトキシおよびプロポキシ基である。オキシムは、また、加水分解で除去可能な基として好適である。ここでオキシムは水素または任意の所望の有機ラジカルにより置換されてもよい。ラジカルRは好ましくはアルコキシ基であり、とくにメトキシまたはエトキシ基である。
【0042】
スペーサーSは上述の頭部基に共有結合し、Si頭部基および親水性ブロックAhpの間の接続要素として機能し、本発明の目的のための架橋機能を果たす。基Sは−O−あるいは1〜18個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキル、2〜18個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝のアルケニル基、2〜18個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝のアルキニル基、3〜7個のC原子を有する飽和、部分または完全不飽和シクロアルキルであり、それらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。
【0043】
のC〜C18−アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルあるいはテトラデシル基である。それは、例えばジフルオロメチル、テトラフルオロエチル、ヘキサフルオロプロピルまたはオクタフルオロブチル基として、随意にペルフルオロ化されてもよい。
【0044】
複数の二重結合がまた存在してもよい、2〜18個のC原子を有する直鎖または分枝アルケニルは、例えば、ビニル、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニルであり、さらには4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C16、−C1018〜−C1834であり、好ましくはアリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニルであり、さらに好ましくは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0045】
複数の三重結合がまた存在してもよい、2〜18個のC原子を有する直鎖または分枝アルケニルは、例えば、エチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニルであり、さらには4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C14、−C1016〜−C1832であり、好ましくはエチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
【0046】
3〜7個のC原子を有する、非置換の飽和あるいは部分または完全非飽和シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニル基であることができ、C−〜C−アルキル基により置換される。
【0047】
スペーサー基Sのあとに、親水性ブロックAhpが続く。後者は、非イオン性、カチオン性、アニオン性および双性イオン性の、親水性ポリマー、オリゴマーおよび基から選択することができる。最も単純な態様において、親水性ブロックはアンモニウム、スルホニウムまたはホスホニウム基、カルボキシル、硫酸またはリン酸側基を含有するアルキル鎖、それはまた対応する塩、遊離の酸性または塩基性の基を含有する部分的にエステル化された無水物の形態であってもよい、少なくとも1つのOH基を含有するOH置換アルキルまたはシクロアルキル鎖(例えば糖)、NH−およびSH−置換アルキルまたはシクロアルキル鎖、あるいはモノ−、ジ−、トリ−またはオリゴエチレングリコール基を含む。対応するアルキル鎖の長さは、1〜20個のC原子、好ましくは1〜6個のC原子であることができる。
【0048】
ここで、非イオン性、カチオン性、アニオン性または双性イオン性の、親水性ポリマー、オリゴマーまたは基は、当業者に一般的に公知の方法による重合化により、対応するモノマーから調製されることができる。ここで好適な親水性モノマーは、以下からなる群から選択される少なくとも1つの分散官能基(dispersing functional group)を含有する。
(i) 中和剤によりアニオンに転換されることができる官能基、およびアニオン性の基、および/または
(ii) 中和剤および/または四級化剤によりカチオンに転換されることができる官能基、およびカチオン性の基、および/または
(iii) 非イオン性の親水性基。
【0049】
官能基(i)は、好ましくは、カルボキシル、スルホニルおよびホスホニル基、酸性硫酸およびリン酸エステル基、およびカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、硫酸エステルおよびリン酸エステル基からなる群から選択され、官能基(ii)は、好ましくは、1級、2級および3級アミノ基、1級、2級、3級および4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基および3級スルホニウム基からなる群から選択され、官能基(iii)は、好ましくは、オメガ−ヒドロキシ−およびオメガ−アルコキシポリ(アルキレンオキシド)−1−イル基からなる群から選択される。
中和されない場合は、1級および2級アミノ基は、イソシアネート−反応性官能基としての役割も果たす。
【0050】
官能基(i)を含有する、非常に好適な親水性モノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−カルボキシエチル アクリレート、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸;オレフィン系の不飽和なスルホン酸およびホスホン酸ならびにその部分エステル;およびモノ(メト)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、モノ(メト)アクリロイルオキシエチルコハク酸、およびモノ(メト)アクリロイルオキシエチルフタル酸塩、とくにアクリル酸およびメタクリル酸である。
【0051】
官能基(ii)を含有する、非常に好適な親水性モノマーの例は、2−アミノエチルアクリレートおよびメタクリレートおよびアリルアミンである。
官能基(iii)を含有する、非常に好適な親水性モノマーの例は、オメガ−ヒドロキシ−およびオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド)−1−イル、オメガ−メトキシポリ(プロピレンオキシド)−1−イルおよびオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド−コ−ポリプロピレンオキシド)−1−イルアクリレートおよびメタクリレート、ならびにヒドロキシル置換エチレン、アクリレートおよびメタクリレート、例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチルなど、である。
【0052】
双性イオン性親水性ポリマーの形成のために好適なモノマーの例は、ベタイン構造が側鎖に生じるものである。側鎖は、好ましくは、−(CH−(N(CH)−(CH−SO、−(CH−(N(CH)−(CH−PO2−、−(CH−(N(CH)−(CH−O−PO2−および−(CH−(P(CH)−(CH−SOから選択され、式中mは1〜30の範囲の、好ましくは1〜6の範囲の整数を、とくに好ましくは2を表わし、nは1〜30の範囲の、好ましくは1〜8の範囲の整数を、とくに好ましくは3を表わす。
ここで、親水性ブロックの少なくとも1つの構造単位が、ホスホニウムまたはスルホニウムラジカルを含有することがとくに好ましい。
【0053】
親水性モノマーを選択するとき、官能基(i)を含有する親水性モノマーおよび官能基(ii)を含有する親水性モノマーが、不溶性の塩または複合体が形成されないように、互いに好ましく混合されることを確実にする。対照的に、官能基(i)を含有する、または官能基(ii)を含有する親水性モノマーを、官能基(iii)を含有する親水性モノマーと所望のように混合することができる。
上記の親水性モノマーのうち、官能基(i)を含有するモノマーがとくに好ましく用いられる。
【0054】
アニオンへ転換されることができる官能基(i)のための中和剤は、ここで、好ましくは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリフェニルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2−アミノメチルプロパノール、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンからなる群から選択され、カチオンへと転換されることができる官能基(ii)のための中和剤は、ここで、好ましくは、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸およびクエン酸からなる群から選択される。
【0055】
親水性ブロックは、非常にとくに好ましくは、モノ−、ジ−およびトリエチレングリコール構造単位から選択される。
【0056】
疎水性ブロックBhbは、親水性ブロックAhpに結合して続く。ブロックBhbは疎水性基、または親水性ブロックなど、重合化に好適な疎水性モノマーに基づく。
好適な疎水性基の例は、1〜18個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分または完全不飽和シクロアルキルであり、これは、1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。かかる基の例は上で既に述べられている。さらに、2個より多いC原子を有するアリール、ポリアリール、アリール−C〜C−アルキルまたはエステルが好適である。さらに、前記の基は、また、とくにハロゲンにより置換されていてもよく、ペルフルオロ化された基がとくに好適である。
【0057】
アリール−C〜C−アルキルは、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを表わし、そこにおいてフェニル環およびアルキレン鎖の両方は、上述のとおり、Fにより部分または完全置換されていてもよく、とくに好ましくはベンジルまたはフェニルプロピルである。
【0058】
疎水性ブロックBhbに適した疎水性のオレフィン性の不飽和モノマーは、以下のとおりである。
(1)本質的に酸性基を含まないオレフィン系の不飽和酸のエステル、例えば、20個以下の炭素原子をアルキルラジカル中に有する、(メト)アクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、ビニルホスホン酸またはビニルスルホン酸の、アルキルまたはシクロアルキルエステルなど、とくにメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ステアリルまたはラウリルアクリレート、メタクリレート、クロトネート、エタクリレートまたはビニルホスホネートまたはビニルスルホネート;(メト)アクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、ビニルホスホン酸またはビニルスルホン酸の環式脂肪族エステル、とくにシクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンタジエニル、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インダンメタノールまたはtert−ブチルシクロヘキシル(メト)アクリレート、クロトネート、エタクリレート、ビニルホスホネートまたはビニルスルホネート。これらは少量の(メト)アクリル酸、クロトン酸またはエタクリル酸のポリ官能化アルキルまたはシクロアルキルエステル、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インダンジメタノールまたはシクロヘキサン−1,2−、−1,3−または−1,4−ジオールジ(メト)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メト)アクリレートあるいはペンタエリトリトールテトラ(メト)アクリレートなど、および類似のエタクリレートまたはクロトネートを含んでもよい。本発明の目的に対し、少量のポリ官能化モノマー(1)は、ポリマーの架橋またはゲル化を起こさない量の意味を有する;
【0059】
(2)1分子あたり少なくとも1つの水酸基またはヒドロキシメチルアミノ基を有し、本質的に酸性基を含まないモノマー、例えば、
− アルファ、ベータ−オレフィン系の不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびエタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルであって、該ヒドロキシアルキル基が20個以下の炭素原子を含有し、例えば2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリレートまたはエタクリレートなど;1,4−bis(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インダンジメタノールまたはメチルプロパンジオールモノアクリレート、モノメタクリレート、モノエタクリレートまたはモノクロトン酸塩;または環状エステルの反応の生成物、例えば、イプシロン−カプロラクトン、およびこれらのヒドロキシアルキルエステルなど;
【0060】
− オレフィン系の不飽和なアルコール、例えばアリルアルコールなど;
− ポリオールのアリルエーテル、例えばトリメチロールプロパンモノアリルエーテルまたはペンタエリトリトールモノ−、ジ−またはトリアリルエーテル。ポリ官能化モノマーは、一般的に少量でのみ用いられる。本発明の目的に対し、少量のポリ官能化モノマーは、ポリマーの架橋またはゲル化を起こさない量の意味を有する。
【0061】
− アルファ、ベータ−オレフィン系の不飽和カルボン酸の、分子中に5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分枝モノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応の生成物。アクリル酸またはメタクリル酸と3級アルファ−炭素原子を含有するカルボン酸のグリシジルエステルとの反応は、重合化反応前、反応中、または反応後に起こすことができる。用いられるモノマー(2)は、好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸の、Versatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応の成生物である。このグリシジルエステルはCardura(登録商標)E10の名前で市販されている。さらに、Roempp Lexikon Lacke and Druckfarben [Roempp's Lexicon of Surface Coatings and Printing Inks], Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, 605および606頁を参照。
【0062】
− アルファ、ベータ−オレフィン系の不飽和カルボン酸のおよびアルファ、ベータ−不飽和カルボキシアミドのアミノアルキルエステルのホルムアルデヒド付加、例えばN−メチロール−およびN,N−ジメチロールアミノエチルアクリレート、−アミノエチルメタクリレート、−アクリルアミドおよび−メタクリルアミド;および、
【0063】
− ヒドロキシル官能性シランとエピクロロヒドリン30との反応、およびその後の、中間体と、アルファ、ベータ−オレフィン系の不飽和カルボン酸、とくにアクリル酸またはメタクリル酸、またはそのヒドロキシアルキルエステルとの反応により調製することができる、アクリルオキシシラン基および水酸基を含有するオレフィン系の不飽和モノマー;
【0064】
(3)分子中に5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分枝モノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa(登録商標)ブランドで市販されるVersatic(登録商標)酸のビニルエステルなど;
【0065】
(4)環状および/または非環状オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブト−1−エン、ペント−1−エン、ヘキソ−1−エン、シクロヘキセン、シクロペンテン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンなど;
【0066】
(5)アルファ、ベータ−オレフィン系の不飽和カルボン酸のアミド、例えば(メト)アクリルアミド、N−メチル−、N,N−ジメチル−、N−エチル−、N,N−ジエチル−、N−プロピル−、N,N−ジプロピルル−、N−ブチル−、N,N−ジブチル−および/またはN,N−シクロヘキシルメチル(メト)アクリルアミドなど;
【0067】
(6)エボキシド基を含有するモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および/またはイタコン酸のグリシジルエステルなど;
【0068】
(7)ビニル芳香族炭化水素、例えばスチレン、ビニルトルエン、またはアルファ−アルキルスチレン、とくにアルファ−メチルスチレンなど;
(8) ニトリル、例えばアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルなど;
【0069】
(9) 以下からなる群から選択される、ビニル化合物:ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、二塩化ビニリデン、二フッ化ビニリデンなど;ビニルアミド、例えばN−ビニルピロリドンなど;ビニルエーテル、例えばエチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルおよびビニルシクロヘキシルエーテルなど;およびビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルなど。
【0070】
(10)以下からなる群から選択される、アリル化合物:アリルエーテルおよびエステル、例えばプロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルまたは酢酸アリルまたはプロピオン酸アリルなど;ポリ官能性モノマーが関連する限り、上述のものは同様に適用する。
【0071】
(11)すでに上で述べた飽和、不飽和、直鎖または分枝のアルキル基または他の疎水性基で置換されてもよい、シロキサンまたはポリシロキサンモノマー。また適するのは、1000〜40,000の数平均分子量Mnを有し、1分子あたり平均0.5〜2.5のエチレン性に不飽和な二重結合を含有するポリシロキサン、とくに2000〜20,000、とくに好ましくは2500〜10,000、とくに3000〜7000の数平均分子量Mnを有し、1分子あたり平均0.5〜2.5、好ましくは0.5〜1.5のエチレン性に不飽和な二重結合を含有するポリシロキサンマクロモノマーであり、DE 38 07 571 A 1 の5〜7頁、DE 37 06 095 A 1の3〜7欄、EP 0 358 153 B 1の3〜6頁、US 4,754,014 A 1の5〜9欄、DE 44 21 823 A 1または国際公開WO 92/22615の12頁18行〜18頁10行に記載されるもの;および
【0072】
(12)カルバメート基またはアロファネート基を含有するモノマー、例えばアクリロイルオキシ−またはメタクリロイルオキシエチル、−プロピルまたは−ブチルカルバメートまたはアロファネート;カルバメート基を含有する好適なモノマーのさらなる例は、特許出願US 3,479,328 A 1、US 3,674,838 A 1、US 4,126,747 A 1、US 4,279,833 A 1またはUS 4,340,497 A 1に記載される。
【0073】
上述のモノマーの重合は、当業者に公知の任意の方法により、例えば、重付加またはカチオン性、アニオン性またはフリーラジカル重合化により、行うことができる。これに関連して、重付加が好ましい。なぜなら、異なる型のモノマー、例えばエポキシドとジカルボン酸またはイソシアネートとジオールなどを、単純な方法で互いに混合されることができるからである好ましい。
【0074】
それぞれの親水性または疎水性ブロックは、原則的には、任意の所望の方法で互いに混合されることができる。本発明による両親媒性シランは、好ましくは2〜19の範囲、好ましくは4〜15の範囲のHLB値を有する。HLB値は
【数1】

で定義され、シランがより親水性または疎水性の性質を有するかどうか、つまり2つのブロックAhpおよびBhbのいずれが本発明によるシランの性質を支配するか、を示す。HLB値は理論的に計算され、親水性および疎水性基の質量分率から生じる。0のHLB値は、脂溶性化合物を示す;HLB値20を有する化合物は親水性分画のみを有する。
【0075】
両親媒性シランは、さらに、少なくとも1つの反応性官能基がAhpおよび/またはBhbに結合するという事実により区別される。反応性官能基は好ましくは疎水性ブロックBhbに配置され、ここでこれはとくに好ましくは疎水性ブロックの終端に結合される。好ましい態様において、頭部基(R)Siおよび反応性官能基は最大の可能な分離を有する。これにより、ブロックAhpおよびBhbの鎖長の柔軟な設定を、例えば周囲媒質との反応性基の可能な反応性を顕著に制限することなく、可能にする。
【0076】
反応性官能基は、加水分解で除去可能なラジカルを含有するシリル基、OH、カルボキシル、NH、SH基、ハロゲンおよび二重結合を含有する反応性基、例えばアクリレートまたはビニルキなど、から選択されることができる。加水分解で除去可能な基を含有する好適なシリル基は、すでに頭部基(R)Siの説明において上に記載されている。反応性基は好ましくはOH基である。
【0077】
本発明による方法は、上記のように実行されることができる。本発明のよる方法における反応は、有機溶媒または溶媒混合液において実行される。好ましい溶媒はアルコールまたはエーテルであり、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよび/またはジオキサンまたはそれらの混合物の使用が、とくに好ましい。メタノールがとくに好適な溶媒であることが示されている。
【0078】
反応温度は室温と選択された溶媒の沸点との間の範囲において選択することができる。反応速度は、反応温度、開始材料およびそのの濃度および溶媒の濃度の好適な選択を介して制御することができ、従って、当業者はこのように速度を制御するに全く困難を生じないる。粒子サイズの制御のために所望される場合、UV分光法による反応の経過のモニタリングが可能である。
【0079】
ある場合において、乳化剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を用いれば有用であるかもしれない。好ましい乳化剤は、随意にエトキシ化またはプロポキシ化され、さまざまな程度のエトキシ化またはプロポキシ化(例えば、0〜50molのアルキレンオキシドの付加)を有する、相対的に長鎖のアルカノールまたはアルキルフェノールである。
【0080】
分散補助剤が有利に用いられ、好ましくは極性基を含有する水溶性、高分子量の有機化合物、例えば、ポリビニルピロリドン、プロピオン酸または酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体、アクリレートおよびアクリロニトリルの部分けん化共重合体、さまざまな残留アセテート含有量を有するポリビニルアルコール、セルロースエーテル、ゼラチン、ブロック共重合体、加工でんぷん、カルボキシルおよび/またはスルホニル基を含有する低分子量ポリマー、またはこれらの物質の混合物の使用である。
【0081】
とくに好ましい保護コロイドは、40mol%未満、とくに5〜39mol%の残留アセテート含有量を有するポリビニルアルコール、および/または、35重量%、とくに5〜30重量%のビニルエステル含有量を有するビニルピロリドン−プロピオン酸ビニル共重合体である。
【0082】
温度、圧力、反応時間などの反応条件の調節により、必須のナノ粒子の所望の特性の組み合わせを目標とする様式に設定することが可能となる。これらのパラメーターの対応する調節により、当業者に完全に困難を呈しない。例えば、反応は多くの目的に対し、大気圧および室温において実行されることができる。
【0083】
本発明によるナノ粒子は、とくに、ポリマーにおけるUV防護のために用いられる。この適用において、粒子はポリマー自体をUV照射による変性に対して防護するか、あるいはかわりにナノ粒子を含むポリマー組成物が他の材料に対するUV防護として用いられ、例えば防護フィルムの形式で、または被覆フィルム、例えば他の材料に対するUV防護として適用される。それゆえ、本発明は、さらに、本発明によるナノ粒子の、ポリマーのUV安定化のための対応する使用に関し、および、ポリマーが本発明によるナノ粒子を含むことを特徴とする、少なくとも1つのポリマーまたは表面被覆組成物から本質的になるUV安定化ポリマー組成物に関する。
【0084】
ポリマーにおけるUV防護のためのこれらのナノ粒子の使用の意味において、分散物の吸収限界が、例えば0.001重量%のナノ粒子で、300〜500nmの範囲、好ましくは300〜400nmまでの範囲およびとくに好ましくは320〜380nmの範囲に位置することがとくに好ましい。本発明に従って、層厚さが10mmでの0.001重量%を含む(ここで重量%データは研究方法により限定される)場合のこの懸濁液(または、分散物とも同義)の透過率は、320nmにおいて10%未満、好ましくは5%未満であり、440nmにおいて90%よりも大き高く、好ましくは95%よりも高い場合が特に好ましい。
【0085】
ポリマーへの組み込みのために、単離されたナノ粒子の使用が必須である。
したがって、本発明はまた、粒子相関分光法(PCS)により決定される、3〜50nmの範囲の平均粒子サイズを有しするナノ粒子に関し、これらは、上記のまたは請求の範囲で定義される本発明による方法により得られるが、有機溶媒が除去されて乾燥されることを特徴とする。
【0086】
それゆえ、本発明は、また、この型の単離されたナノ粒子の製造方法であって、有機溶媒を最終段階において除去し、乾燥する、製造方法に関する。
【0087】
本発明によるナノ粒子がよく組み込まれるポリマーは、とくに、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PETP)、ポリアミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)または前記ポリマーの1つの少なくとも1部分を含む共重合体である。
【0088】
組み込みは、ここにおいて、ポリマー組成物の調製のための従来の方法により実行することができる。例えば、ポリマー物質は、本発明による単離されたナノ粒子と、好ましくは押し出し成形機またはコンパウンダーにおいて、混合されることができる。
【0089】
本発明によるシラン被覆を有する粒子の特別な利点は、ポリマーにおける粒子の一様な分布のために、先行技術と比較して低いエネルギー入力しか必要でないということにある。
【0090】
ここで、ポリマーは、ポリマーの分散物、例えば、表面被覆物または表面被覆組成物など、であることができる。ここで、組み込みは、従来の混合操作により実行することができる。本発明による粒子の良好な再分散能は、とくに、この型の分散物の調製を単純化する。したがって、本発明はさらに、分散媒体としてのポリマーまたは溶媒中の本発明による粒子の分散物に関する。
【0091】
表面被覆は、例えば、アルキド樹脂、塩化ゴム、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オイル、ニトロ、ポリエステルまたはポリウレタン被覆、またはニトロセルロースおよびアルキド樹脂にもとづく組み合わせの被覆であってもよい。ポリウレタン被覆が、ここにおいて大きな重要性を有する。
【0092】
本発明による分散物において用いられる溶媒は、好ましくは、エーテルアルコール、脂肪族化合物、アルコール、芳香族、塩素化炭化水素、エステル、ヒドロ芳香族、ケトン、テルペン系炭化水素および/または水である。
【0093】
上記または請求項7および/または8で定義される、ナノ粒子を含む本発明によるポリマー組成物または本発明による分散物もまた、例えば、木材、プラスチック、繊維またはガラスの表面の被覆のために、さらにまた好適である。表面または被覆の下にある材料を、このように、例えばUV照射に対して、防護することができる。
【0094】
以下の例は、保護の範囲を制限することなく、本発明を詳細に説明する。例において記載される、関連のある例が基づく、化合物の特徴、特性および有利点は、とくにまた、いずれにも他に記載されていない限り、詳細には記載されていないが保護の範囲内にある他の物質および化合物に適用されることができる。さらに、本発明は主張する範囲にわたって実行されることができ、ここで与えられる例に制限されない。
【0095】
粒子相関分光法
測定を、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いて、室温において実行される。測定を532nmのレーザー波長において実行する。
全てのケースにおける試料容量は1mlであり、濃度は、酢酸ブチル中、粒子0.5重量%である。測定の前に、溶液を0.45μmフィルターを用いて、ろ過する。
【0096】
透過電子顕微鏡法
電界放出陰極を有するFei Company Tecnai 20Fが用いられる。記録は200kVの加速電圧で行う。データはGatanからの2k CCDカメラで得る。
【0097】
透過電子顕微鏡法における測定のための、ナノ粒子を含む液体試料の調製
試料調製のために、ナノ粒子を含む溶液を1重量%へと希釈し、1滴のこの溶液をカーボン膜被覆Cuメッシュ上に配置し、過剰の溶液を、ただちにろ紙を用いて吸収する。試料を室温での1日間の乾燥ののちに測定する。
【0098】
透過型電子顕微鏡における測定のためのナノ粒子を含む表面被覆試料の調製
被覆層の乾燥後のZnO含有量が5%となるように、粒子分散物を表面被覆物と混合する。被覆物を、テフロン(登録商標)鍋中で厚層に硬化し、少なくとも2mmの厚さの自立性の膜とする。これらの試料を、室温において、35°ダイヤモンドナイフで、切断厚さ60nmで、包埋せずに超薄切片化する。切片を水で膨潤し、カーボン膜被覆Cuメッシュへと移動し、測定する。
【0099】
例1a:ZnO粒子の形成
125mlのメタノール中のZn(OAc)*2HOの0.178molの溶液を50℃に調節する。同様に50℃でに調節された、125mlのメタノール中0.288molのK[OSi(CH]の溶液を、攪拌しながら添加した。
【0100】
酸化亜鉛への転換およびナノ粒子の成長ののちに、UV分光法を行う。1分だけの反応時間ののちに、吸収極大は一定を保つ。すなわち、ZnO形成は最初の1分間においてすでに完了している。
【0101】
安定した透明な懸濁液が得られ、これは、UV分光法およびX線回折によればZnOを含む。Malvern (PCS) Zetasizer Nano ZSを用いた粒子相関分光法による調査による粒子の直径は4〜12nmであり、d50は6〜7nm、d90は5〜10nmである。それゆえ、サイズは、透明適用で必要とされるように、15〜20nm未満の範囲である。このようにして産生された粒子は数時間にわたって安定であり、さらなる官能化を可能とする。
【0102】
塩基としてK[OSi(CH]のかわりにKOHを用いる比較実験(例3)により、溶液が数分後に濁り、沈降した酸化亜鉛粒子の沈殿が最終的に形成されるという事実から明らかなように、継続した粒子成長を示す。この沈殿物は容易にろ過除去することができ、粒子またはその凝集体のサイズは、それゆえ、15〜20nm未満の目標サイズを著しく超える。
【0103】
例1b:引き続くシラン化による修飾
50℃30分間の攪拌ののち、8.0mmolのヘキサデシルトリメトキシシランを例1aからの分散物に添加する。混合物を50℃で5h、攪拌する。疎水性粒子をペンタンまたは石油エーテルとの攪拌により分離する。
【0104】
安定した、透明の懸濁液が得られ、それは、UV分光法およびX線回折によると、ZnOを含む。さらに、X線図において、酢酸カリウム反射は見られなかった。Malvern (PCS) Zetasizer Nano ZSを用いた光子相関分光法による調査によると、粒子の直径は4〜12nmであり、d50は6〜7nmであり、d90は5〜10nmである。
10日後の再測定により、測定精度の範囲内での同じ値を得る。したがって、粒子の凝集を除外することができる。
【0105】
例1c:K[OSiMe]のIn−situ産生
2molの酢酸亜鉛二水和物をはじめに1650mlのメタノールに導入し、懸濁液を50℃へ温める。別に、3.3molの水酸化カルシウムを650mlのメタノール中に完全に溶解させ、次いで3.3molのトリメチルエトキシシランを攪拌しながら添加し、混合物をさらに1時間攪拌する。この溶液を酢酸亜鉛懸濁液へと攪拌しながら添加し、この時点から反応時間を測定する。反応の進行をUV/VIS分光計で追跡する。所望の吸収限界に達するとき、0.08molのヘキサデシルトリメトキシシランを添加し、混合物を50℃で5時間攪拌する。そして、1500mlのリグロインを反応混合物に添加する。
【0106】
安定した、透明の懸濁液が得られ、これは、UV分光法およびX線回折によれば、ZnOを含む。さらに、X線図において酢酸カリウム反射は見られない。Malvern (PCS) Zetasizer Nano ZSを用いた光子相関分光法による調査によると、粒子の直径は4〜12nmであり、d50は6〜7nm、d90は5〜10nmである。
10日後の再測定により測定精度の範囲内で同じ値が得られる。したがって、粒子の凝集を除外することができる。
【0107】
例2a:TMOSの添加による修飾
30分後、8.0mmolのオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)を例1aからの分散物に添加し、50℃で攪拌を続ける。
【0108】
安定した、透明の懸濁液が得られ、それはUV分光法およびX線回折によると、ZnOを含む。Malvern (PCS) Zetasizer Nano ZSを用いる粒子相関分光法による調査によると、粒子の直径は4〜12nmであり、d50は6〜7nm、d90は5〜10nmである。
【0109】
例2b:TMOSの添加による修飾および引き続くシラン化
60分後、10.0mmolのヘキサデシルトリメトキシシランを50℃で攪拌しながら例2aで記載された懸濁液へ添加する。混合物を50℃で5時間攪拌する。疎水性粒子を、ペンタンまたは石油エーテルとの振とうにより分離除去する。
安定した、透明な懸濁液が得られ、それは、UV分光法およびX線回折によると、ZnOを含む。さらに、X線図において、酢酸カリウム反射は見られない。Malvern (PCS) Zetasizer Nano ZSを用いる光子相関分光法による調査によると、粒子の直径は4〜12nmであり、d50は6〜7nm、d90は5〜10nmである。
10日後の再測定により、測定精度範囲内での同じの値を得る。粒子の凝集を、したがって、除外することができる。
【0110】
比較例3:KOHを用いるZnOの調製
250mlのメタノール中の0.4molのZn(OAc)*2HOの溶液を、50℃に調節する。同様に50℃に調節した、250mlのメタノール中の0.680molのKOHの溶液を、攪拌しながら添加する。
【0111】
酢酸亜鉛の転換およびナノ粒子の成長に次いで、UV分光法を行ってもよい。ほんの10分の後に、酢酸亜鉛の白色沈殿物が沈降する。反応を5時間継続する。沈殿をメタノールで洗浄する。
【0112】
白色懸濁液が得られ、それは、X線回折によると、ZnOを含む。さらに、酢酸カリウムX線反射は見られなかった。
【0113】
例4:光触媒活性の測定
分解されるモデル物質はイソプロパノールであり、それは光活性表面上で、蒸気および酸素の存在下で、媒介アセトンを介して、照射によりCOへと酸化される。この反応の速度は、調査するそれぞれの物質の光活性の指標とする。1.58gのそれぞれの物質、例えば例1b、2bまたは3からのZnOが微細なブラシを用いて直立の篩(直径5cm、127メッシュ)により、ペトリ皿へと直接添加する。この物質へと作用するUV−A照射の強度を、調査直前に15mW/cmへと設定する。光触媒活性に関して調査される試料を反応器へと配置した後、装置をキャリアガス(合成空気)で入念にフラッシュされ、規定の水性ガス濃度を加湿器を介して通気操作中に設定する(計測速度 1800μl/h〜10,000ppm)。循環操作モードに切り替えられたのち、正確に1μlのイソプロパノールを隔壁を介してガススペース中へと注入し、ポンプにより継続して循環させる。試料表面と気相との間の吸着/脱着平衡が確立されたのち、照射のスイッチを入れる。
【0114】
酸化される成分の起こりうる分解およびそれらの副生成物を、FTIRにより連続的に記録されたスペクトルから定量的に追跡することができる。FTIRに接続されたコンピューターのソフトウェアは、それぞれの実験スペクトルを、分解プロセスに関連する種の参照スペクトルの合計として評価する。気相におけるそれぞれの個別の成分の濃度が、実験スペクトル中のそれらの強度の割合から計算することができる。照射前後の濃度における差異が、光触媒分解の指標である。
【0115】
【表1】

例2b(試料3)からのZnOは、最も低い光触媒活性を示す。
【0116】
例5:
ポリマーナノ複合材料の調製
例2bからの懸濁液を蒸発させ、減圧下で乾燥させた。表面が修飾された酸化亜鉛を含む、微細で自由流動性の粉末が得られた。
【0117】
10gのこれらの粒子を、1kgのPMMA(ポリメチルメタクリレート、Degussa RoehmからのPMMA成形組成物7H)と押出し成形機中で混合し、10gの生成された顆粒を、100gの同じポリマーとともに再度押出し成形した。得られたナノ複合材料は厚さ1.5mmの平板へと射出成形により変形した。
【0118】
例6:表面被覆への組み込み
ZnOナノ粒子を含む表面被覆組成物の調製
以下の構成物質を混合することにより、2つの成分を調製した:
成分A
46.39gのDesmophen A 870 BA、酢酸ブチル中70%(Bayer)
0.5gのBaysilone(登録商標)被覆添加物OL17、キシレン中10%(Borchers GmbH)
14.67gの1−メトキシプロピル 2−アセテートおよび溶媒ナフサ100の1:1混合物(DHC Solvent-Chemie GmbH)
12.5gの例2bからのZn分散物
成分B
9.98gのDesmodur N 3390 BA/SN、酢酸ブチル/溶媒ナフサ100(1:1)中90%(Bayer)
12.83gのDesmodur Z 4470 BA、酢酸ブチル(Bayer)中70%
【0119】
成分AおよびBを混合し、ガラスプレートへと200μmの層厚さでドクターブレードで適用する。RTでの10分間の乾燥時間の後、被覆物を130℃で30分間処理し、光学的に透明で、無色の、約100μmの厚さを有する被覆層を得る。
UVスペクトルにおいて、この層は、450nmで95%より高い透過率、350nmで5%未満の透過率を呈する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子相関分光法(PCS)により決定される3〜50nmの範囲の平均粒子サイズを有し、有機溶媒中に分散されるナノ粒子であって、前記ナノ粒子の1つまたは2つ以上の前駆体を、M3−x[O3−xSiR1+x](式中xは0、1または2から選択される整数を表し、MはH、Li、NaまたはKを表し、全てのRはそれぞれ互いに独立して分枝または非分枝、飽和または不飽和の1〜28個のC原子を有する炭化水素ラジカルを表し、そこにおいて1つまたは2つ以上のC原子はOにより置換されてもよい)の化合物と有機溶媒中で反応させて前記ナノ粒子を得る方法により入手可能であることを特徴とする、前記ナノ粒子。
【請求項2】
本質的にケイ素、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、チタン、鉄、イットリウム、ジルコニウムまたはその混合物の酸化物または水酸化物からなる粒子であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
粒子が、好ましくは酸化亜鉛または酸化セリウム粒子、あるいはこれらの構成物質の少なくとも1つを含む混合酸化粒子である、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
粒子が粒子相関分光法(PCS)により決定される5〜20nmの平均粒子サイズを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項5】
粒子がさらなる表面修飾、好ましくはシリカ被覆および/または疎水性修飾、を有することを特徴とする、請求項1〜4の少なくとも1つに記載のナノ粒子。
【請求項6】
シリカ被覆を有する粒子が、有機官能シラン、4級アンモニウム化合物、ホスホネート、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物、またはこれらの混合物の群から選択される、少なくとも1つのさらなる表面改質剤、好ましくは有機官能シランにより、さらに修飾されることを特徴とする、請求項1〜5の少なくとも1つに記載のナノ粒子。
【請求項7】
ナノ粒子が少なくとも1つの有機官能シランにより修飾されることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1つに記載のナノ粒子。
【請求項8】
請求項1〜7の1つまたは2つ以上に記載のナノ粒子およびポリマーを含む分散物。
【請求項9】
分散物が表面被覆または表面被覆組成物であることを特徴とする、請求項8に記載の分散物。
【請求項10】
3〜50nmからの範囲の平均粒子サイズを有し、有機溶媒に分散されるナノ粒子の製造方法であって、前記ナノ粒子の1つまたは2つ以上の前駆体を、M3−x[O3−xSiR1+x](式中xは0、1または2から選択される整数を表し、MはH、Li、NaまたはKを表し、全てのRはそれぞれ互いに独立して分枝または非分枝、飽和または不飽和の1〜28個のC原子を有する炭化水素ラジカルを表し、そこにおいて1つまたは2つ以上のC原子はOにより置換されてもよい)の化合物と有機溶媒中で反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
1つまたは2つ以上の前駆体が、水溶性金属化合物、好ましくはケイ素、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、チタン、鉄、イットリウムまたはジルコニウム化合物、好ましくはカルボン酸またはハロゲン化物の亜鉛塩から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化合物M3−x[O3−xSiR1+x](式中MはLi、NaまたはKを表し、xおよびRは請求項10において示した意味を有する)が、in situで塩基MOHおよび化合物R’3−x[O3−xSiR1+x](式中R’は1〜16個のC原子を有するアルキル基を示す)から生成されることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
化合物M3−x[O3−xSiR1+x]における少なくとも1つのRが、1〜27個のC原子を有するアルコキシラジカル、好ましくはメトキシまたはエトキシラジカルを表すことを特徴とする、請求項10〜12の1つまたは2つ以上に記載の方法。
【請求項14】
化合物M3−x[O3−xSiR1+x]において、xが2を表し、全てのRがそれぞれ互いに独立してメチルまたはエチルを表すことを特徴とする、請求項10〜13の1つまたは2つ以上に記載の方法。
【請求項15】
全てのRがメチルを表し、MがKを表すことを特徴とする、請求項10〜14の1つまたは2つ以上に記載の方法。
【請求項16】
さらなる反応段階において、水性シェルの生成のためのシリカ被覆または表面改質剤の生成のための少なくとも1つの修飾剤が添加されることを特徴とする、請求項10〜15の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項17】
シリカ被覆の生成のための修飾剤がトリアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランであることを特徴とする、請求項10〜16の1つまたは2つ以上の記載の方法。
【請求項18】
シリカ被膜の適用の後に、少なくとも1つの表面改質剤がさらなる反応段階において添加されることを特徴とする、請求項10〜17の1つまたは2つ以上に記載の製造方法であって、改質剤が好ましくは有機官能シラン、4級アンモニウム化合物、ホスホン酸塩、ホスホニウムまたはスルホニウム化合物である、前記方法。
【請求項19】
表面改質剤が有機官能シランであることを特徴とする、請求項10〜18の1つまたは2つ以上に記載の方法。
【請求項20】
表面改質剤が、一般式(R)Si−S−Ahp−Bhb(式中、ラジカルRは同一であっても異なっていてもよく、加水分解により除去可能なラジカルを表し、Sは−O−または1〜18個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖または分枝のアルケニル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖または分枝のアルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分不飽和または完全不飽和のシクロアルキル基、これは、1〜6個のC原子を有するアルキル基で置換されもよい、のいずれかを示し、Ahpは親水性ブロックを示し、Bhbは疎水性ブロックを示し、そして式中少なくとも1つの反応性官能基は好ましくはAhpおよび/またはBhbに結合する)の両親媒性シランであることを特徴とする、請求項10〜19の1つまたは2つ以上に記載の製造方法。
【請求項21】
有機溶媒がアルコールまたはエーテルから選択されることを特徴とする、請求項10〜20の1つまたは2つ以上に記載の方法。
【請求項22】
乳化剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、が使用されることを特徴とする、請求項10〜21の1つまたは2つ以上に記載の方法。
【請求項23】
粒子相関分光法(PCS)により決定される、3〜50nmの範囲の平均粒子サイズを有するナノ粒子であって、請求項10〜22の1つまたは2つ以上に記載の方法により入手可能であるが、有機溶媒が除去され乾燥されることを特徴とする、前記ナノ粒子。
【請求項24】
請求項10〜22の1つまたは2つ以上に記載の方法により生成され、最終段階において有機溶媒が除去され乾燥されることを特徴とする、請求項23に記載のナノ粒子を生成するための方法。
【請求項25】
請求項1〜7または23の少なくとも1つに記載のナノ粒子、または請求項8または9の少なくとも1つに記載の分散物の、ポリマーのUV安定化のための使用。
【請求項26】
本質的に少なくとも1つのポリマーからなるポリマー組成物であって、前記ポリマーが請求項23に記載のナノ粒子を含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項27】
ポリマーが、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PETP)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)または前記ポリマーの少なくとも一部分を含む共重合体であることを特徴とする、請求項26に記載のポリマー組成物。
【請求項28】
ポリマー物質が請求項23に記載のナノ粒子とともに、好ましくは押し出し成形機またはコンパウンダーにおいて混合されることを特徴とする、請求項26または27に記載のポリマー組成物の調製方法。
【請求項29】
請求項8または9に記載の分散物で処置された木材。
【請求項30】
請求項8または9に記載の分散物で処置されたか、または請求項26または27に記載のポリマー組成物を含む、プラスチック。
【請求項31】
請求項8または9に記載の分散物で処置された、または請求項26または27に記載のポリマー組成物を含む、繊維。
【請求項32】
請求項8または9に記載の分散物で処置されたガラス。

【公表番号】特表2009−537445(P2009−537445A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511360(P2009−511360)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004034
【国際公開番号】WO2007/134712
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】