説明

ナノ結晶成長方法および装置

【課題】 成長点の位置制御を安定して行いつつ、格子定数の異なる基材上にナノレベルの結晶成長を行わせる。
【解決手段】 サンプルS上に金属針23aの先端を配置した後、金属針23aの先端を昇温させることにより、サンプルSと金属との合金融液を生成し、合金融液が生成され状態で、気相状の有機金属化合物を合金融液に接触させることにより、触媒反応により合金融液中に元素の形で取り込ませ、合金融液中で有機金属化合物の構成元素の過飽和現象を生じさせて、合金融液とサンプルSとの界面に過剰の元素を析出させることで、ワイヤ状の単結晶を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ結晶成長方法および装置に関し、特に、金属針を用いてナノオーダーの結晶構造を作製する方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子デバイスや光デバイスの構造を結晶成長にて形成する方法として、MBE(分子線エピタキシー)あるいはMOVPE(有機金属気相成長)などが知られている。これらは、主に格子定数の近い材料を用いて大面積の基板上にヘテロエピ成長を行う方法として開発されたものである。近年のSi基板上の加工技術の発展は著しく、品質の良好な集積回路やフォトニック結晶などが大量生産されている。フォトニック結晶導波路では、Q値が10000以上の共振器構造を持つ導波路がSOI基板上で得られている(非特許文献1)。
【0003】
一方、GaAs系やInP系などの化合物半導体では、発光や受光などのSiでは不可能な機能を有するデバイスを除くと、欠陥やダメージの影響でSiレベルの生産性を得るには至らないのが現状である。Si上に作製されたデバイスに化合物半導体の特徴である発光受光素子を品質よく簡単に作り込む方法は今のところ見当たらない。Si(111)基板面上にGaNの量子ドットを成長させると、その量子ドットのサイズによって基板からの歪の影響により青から赤色の発光が得られることが知られている。サイズの異なる量子ドットを重ね合わせることで白色光が得られるが、量子ドットを重ね合わせることで欠陥が増殖するため、未だ電流注入素子を作製できるレベルまでには至っていない(非特許文献2)。
【0004】
SiまたはGaAsなどの化合物半導体では、Auなどの金属との共晶による融点の低下により、微小金属粒子の下に選択的に結晶成長が起こるVLS(Vaper Liquid Solid)成長が知られている(非特許文献3)。このVLS成長では、[111]B方向に柱状構造が成長し、成長条件によっては、柱の径が長さ方向で一定なナノワイヤを形成することができる。このナノワイヤは、格子定数の異なる基板上へも作製が可能であり、また、ヘテロ接合やpn接合などを作ることができる。
【非特許文献1】S.Mitsugi,A.Shinya,E.Kuramochi,M.Notomi,T.Tsuchizawa,T.Watanabe,“Resonant tunneling wavelength filters with high Q and high transmittance based on photonic crystal slabs”,LEOS 2003,2003/10/26−30,Tucson,USA,214,2003.
【非特許文献2】B.Damilano,N.Grandjean,F.Semond,J.Massies,and M.Leroux,Appl.Phys.Lett.75,962(1999)
【非特許文献3】S.Bhunia,T.Kawamura,Y.Watanabe,S.Fujikawa,and K.Tokushima,Appl.Phys.Lett.83,3371(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、VLS成長では、触媒となるAuの微粒子が浮遊状態にあるため、成長点が動きやすく、高品質な単結晶を得ることが困難である。また、VLS成長では、双晶が形成され、そこでの電流特性の劣化や光吸収が懸念されるため、実用上適した方法とは言えない。
そこで、本発明の目的は、成長点の位置制御を安定して行いつつ、格子定数の異なる基材上にナノレベルの結晶成長を行わせることが可能なナノ結晶成長方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係るナノ結晶成長方法によれば、所定の真空度において、先端がナノサイズの金属の針またはナノサイズの金属粒子が先端に付いた針を基材に接触させる工程と、前記針を加熱しながら結晶成長の原料となるガスを前記針の周囲に供給することにより、前記基材上に結晶成長させる工程と、前記結晶成長させながら、前記針と前記基材との位置関係を変化させる工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、針の先端のナノ領域の部分が結晶成長の反応点となるが、針を動かすピエゾ素子がナノオーダーの精度で動作し、制御することが可能であるため、位置制御性良く結晶成長させることができる。また、本発明はVLS成長のようにAuの微粒子が浮いた状態ではなく針に固定されており、成長点が動きにくいため、単結晶で成長し易くより高品質な結晶を成長させることができる。本発明で形成できるようなナノ構造は、リソグラフィ技術を用いてエッチングなどで作製するものよりもプロセスが簡易であり、また、リソグラフィでは困難なより複雑な構造も容易に形成可能である。MBE法やMOVPE法に比べると、ナノ領域分の原料供給でよいため、オーダーレベルで少ない原料消費となる。
【0008】
また、請求項2に係るナノ結晶成長方法によれば、前記針の加熱方法は、抵抗加熱または光照射であることを特徴とする。
これにより、針が基材に触れた部分のみを加熱することができ、基材の他の領域を低温に保つことができる。このため、針が基材に触れた部分のみに選択的に結晶成長させることが可能となり、ナノオーダーの結晶構造を位置制御性良く作製することができる。
【0009】
また、請求項3に係るナノ結晶成長方法によれば、前記針と前記基材との位置関係を変化させる方法は、前記針または前記基材を所定方向にナノオーダーで移動させる方法であることを特徴とする。
これにより、ナノワイヤの他、球形、三角錐、コイル形状などの立体構造をナノスケールで作製することが可能となり、Si上に作製された電子デバイスに化合物半導体からなる発光受光素子を品質よく簡単に作り込むことができる。
【0010】
また、請求項4に係るナノ結晶成長方法によれば、前記結晶成長の原料となるガスは、有機金属化合物であることを特徴とする。
これにより、有機金属化合物の消費量を抑制しつつ、Si上に作製された電子デバイスに化合物半導体からなる発光受光素子をナノスケールで作製することが可能となり、高品質の光集積回路を簡易かつ安価に作成することができる。
【0011】
また、請求項5に係るナノ結晶成長方法によれば、電子顕微鏡または走査型プローブ顕微鏡にて結晶成長の位置を見積もる工程をさらに備えることを特徴とする。
これにより、針と基材との位置関係をナノスケールで観測することが可能となり、ナノオーダーの結晶構造を位置制御性よく作成することができる。
【0012】
また、請求項6に係るナノ結晶成長装置によれば、試料を設置可能な反応管と、前記反応管内を真空引きする真空ポンプと、結晶成長の原料となるガスを前記反応管内に供給するガス供給源と、前記反応管内に設置され、先端がナノサイズの金属の針またはナノサイズの金属粒子が先端に付いた針と、前記針の先端と前記試料との位置関係を制御する位置制御手段と、前記針を加熱する加熱手段とを備えることを特徴とする。
これにより、成長点の位置を固定しながら、金属触媒を用いたナノレベルの結晶成長を行わせることが可能となる。このため、成長点の位置制御を安定して行いつつ、格子定数の異なる基材上にナノレベルの結晶成長を行わせることが可能となり、様々の材料から構成されるデバイスを集積化することができる。
【0013】
また、請求項7に係るナノ結晶成長装置によれば、前記針を支持する支持体と、前記反応管内に供給されたガスを前記支持体内に引き込むガス導入部と、前記針の近傍に配置され、前記支持体内に引き込まれたガスを噴出させる噴出孔とをさらに備えることを特徴とする。
これにより、熱伝導の低い材料で針を支持することが可能となるとともに、針の近傍にのみ原料ガスを噴出させることが可能となる。このため、針が基材に触れた部分のみを効率よく加熱することができ、基材の他の領域を低温に保つことが可能となるとともに、成長点の近傍にのみ原料ガスを噴出させることができる。この結果、針が基材に触れた部分のみに選択的に結晶成長させることが可能となり、ナノオーダーの結晶構造を位置制御性良く作製することが可能となるとともに、原料の消費量を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、金属触媒が形成された針の位置を制御しながら結晶成長を行わせることにより、格子定数が異なる場合においても、ナノサイズの高品質な発光および受光デバイスを位置制御性よく作製することができ、Siで作製される電子回路に光回路を付加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るナノ結晶成長方法および装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るナノ結晶成長装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において、反応管1には、排気管11を介して反応管1内の真空引きを行うターボ分子ポンプ3が接続され、ターボ分子ポンプ3には、粗引きを行うロータリーポンプ2が接続されている。また、反応管1とターボ分子ポンプ3との間には、不純物を濾過するフィルタ4が設けられている。
【0016】
また、反応管1には、ガス供給管12を介して結晶成長の原料となる原料ガスGSを反応管1内に供給するガス供給源7a、7bが接続されている。なお、原料ガスGSとしては、例えば、TMGa(trimethygallium)、TBAs(tertiarybutylarsine)などの有機金属化合物を用いることができる。
ここで、ガス供給源7a、7bから供給されるガスの流路には、ガスの流路の開閉を行うバルブ8a、8b、ガスの圧力を計測する圧力計9a、9bおよびガスの流量を調整する流量調整器10a、10bがそれぞれ設けられている。また、ガス供給管12には、リークバルブ6が設けられるとともに、リークバルブ6の上流側には、圧力調整管13の一端が接続されている。また、圧力調整管13の他端は、ターボ分子ポンプ3とロータリーポンプ2との間に接続され、圧力調整管13には、圧力調整管13を流れるガスの流量を調整する流量調整器5が設けられている。
【0017】
図2は、図1の反応管1内の構成例を示す断面図、図3は、図1のガラスフォルダ22の構成例を示す平面図である。
図2において、反応管1内には、サンプルSを載置するサンプルステージ21が設けられるとともに、サンプルステージ21上には、金属プレート23を保持するガラスフォルダ22が設けられている。なお、金属プレート23を保持するための保持体は、ガラス以外にもセラミックなどの材料を用いるようにしてもよい。ここで、金属プレート23を保持するための保持体は、金属プレート23を構成する金属よりも熱伝導率の低い材料を用いることが好ましい。
【0018】
また、金属プレート23には、先端がナノサイズの径を有する金属針23aが設けられている。なお、金属プレート23および金属針23aを構成する金属としては、例えば、金、銀、銅または白金などの他、これらの合金を用いるようにしてもよい。金属プレート23と金属針23aの材質は同一でもよく異なっていてもよい。また、金属針23aの代わりに、ナノサイズの金属粒子が先端に付いた針を用いるようにしてもよく、例えば、金属粒子を付けたカーボンナノチューブなどの導電体、あるいは先鋭化された先端に金属が付着された光ファイバを用いるようにしてもよい。
【0019】
そして、ガラスフォルダ22には、金属プレート23に設けられた金属針23aを突出させる開口部22aが設けられるとともに、反応管1内に導入された原料ガスGSをガラスフォルダ22内に引き込むガス導入部22cが設けられている。そして、図3に示すように、ガラスフォルダ22に設けられた開口部22aの周囲には、ガラスフォルダ22内に引き込まれた原料ガスGSを噴出させるガス噴出孔22bが配置されている。そして、図1のガス供給管12は、Oリング27を介して、ガラスフォルダ22に設けられたガス導入部22cに接続されている。
【0020】
なお、反応管1内に供給された原料ガスGSがガラスフォルダ22の横からガラスフォルダ22内に取り込まれるように、ガス導入部22cを配置することができる。
また、ガラスフォルダ22上には、金属プレート23に光を照射するためのガラスロッド29が配置されている。そして、ガラスロッド29を介して金属プレート23に光を照射することにより、金属針23aを昇温させることができる。ここで、ガラスフォルダ22上にガラスロッド29を配置することにより、金属プレート23に光を効率よく照射することができ、金属針23aの先端を効率よく昇温させることができる。また、金属プレート23として熱伝導率の高い材料を用いることにより、金属プレート23を介して金属針23aを効率よく加熱することができる。なお、金属針23aを加熱する方法としては、光照射を用いる方法の他、抵抗加熱を用いるようにしてもよい。
【0021】
そして、サンプルステージ21と金属プレート23との間には、電源24が接続されるとともに、金属針23aの先端を流れるトンネル電流を計測する電流計25が接続されている。また、金属プレート23には、金属針23aの温度を計測する熱電対28が配置されている。
また、反応管1内には、ガラスフォルダ22またはサンプルステージ21をXYZ方向にナノスケールの単位で移動させる駆動部が設けられている。なお、駆動部としては、例えば、ピエゾ素子またはステッピングモータなどを用いることができる。
【0022】
そして、サンプルS上で結晶成長を行わせる場合、サンプルステージ21上にサンプルSを載置する。そして、ロータリーポンプ2およびターボ分子ポンプ3にて反応管1内の真空引きを行う。また、電流計25による計測値を参照しながら、ガラスフォルダ22またはサンプルステージ21を移動させることにより、金属針23aの先端とサンプルSとの位置関係を調整する。そして、熱電対28による計測値を参照しながら、ガラスロッド29を介して金属プレート23に光を照射することにより、金属針23aの先端を所定の温度に加熱する。
【0023】
そして、反応管1内が所定の真空度に達すると、真空バルブ8a、8bを開き、原料ガスGSの蒸気圧を用いることにより、流量調整器10a、10bおよびリークバルブ6を介して原料ガスGSを反応管1内に供給する。
そして、反応管1内に供給された原料ガスGSは、ガス導入部22cを介してガラスフォルダ22内に導かれ、ガス噴出孔22bを介してサンプルS上に噴出される。ここで、ガス噴出孔22bを金属針23aの周囲に配置することにより、原料ガスGSを金属針23aに効率よく接触させることができ、MBE法やMOVPE法に比べると、ナノ領域分の原料供給でよいため、オーダーレベルで少ない原料消費とすることができる。
【0024】
ここで、サンプルS上に金属針23aの先端を配置した後、金属針23aの先端を昇温させると、サンプルSと金属との合金融液が生成される。そして、合金融液が生成された状態で、気相状の有機金属化合物が合金融液に接触すると、触媒反応により合金融液中に元素の形で取り込まれ、合金融液中で有機金属化合物の構成元素の過飽和現象が生じ、合金融液とサンプルSとの界面に過剰の元素が析出し、ワイヤ状の単結晶を成長させることができる。
【0025】
ここで、金属触媒として金属針23aを用いることにより、成長点の位置を固定しながら、金属触媒を用いたナノレベルの結晶成長を行わせることが可能となる。このため、成長点の位置制御を安定して行いつつ、格子定数の異なるサンプルS上にナノレベルの結晶成長を行わせることが可能となり、様々の材料から構成されるデバイスを集積化することができる。
【0026】
また、金属針23aを用いることにより、成長点を局所的に効率よく加熱することができる。このため、成長温度を高くすることが可能となり、合金融液の中で原料ガスGSを十分に拡散させることができる。この結果、結晶軸方向が動くことを防止しつつ、結晶成長を行なわせることができ、高品質の単結晶を安定して作製することが可能となる。
なお、結晶成長の位置は、電子顕微鏡または金属針23aを流れる電流や金属針23aの振動をフィードバックすることにより観測する走査型プローブ顕微鏡にて見積もりながら制御するようにしてもよい。
【0027】
図4は、本発明のナノ結晶成長方法で作製されたGaAsナノワイヤの構成例を示す斜視図である。
図4において、図2のサンプルSとしてGaAs基板31を用いた。また、原料ガスGSとして、TMGaおよびTBAsを用いた。また、金属針23aおよび金属プレート23の材質として金を用いた。そして、GaAs基板31をサンプルステージ21上に載置し、ロータリーポンプ2およびターボ分子ポンプ3にて反応管1内の真空引きを行いながら、反応管1内の圧力が10-3Torrになるようにリークバルブ6を調整した。そして、金属針23aの温度が700℃になるように、金属プレート23を昇温させ、TMGaとTBAsとの流量比が1対60になるように、原料ガスGSを反応管1内に導入した。
【0028】
ここで、GaAs基板31上に金属針23aの先端を配置した後、金属針23aの先端を昇温させると、GaAsと金との合金融液が生成される。そして、合金融液が生成され状態で、気相状のTMGaおよびTBAsが合金融液に接触すると、触媒反応により合金融液中にGaおよびAsが元素の形で取り込まれ、合金融液中でGaおよびAsの過飽和現象が生じ、合金融液とGaAs基板31との界面に過剰のGaAsが析出する。そして、サンプルステージ21の位置を制御して金属針23aを動かすことにより、GaAsナノワイヤ32がGaAs基板31上に形成される。
【0029】
そして、GaAsナノワイヤ32がGaAs基板31上に形成されると、透過型電子顕微鏡にてGaAsナノワイヤ32を観察することにより、GaAsナノワイヤ32が単結晶であることを確認した。
なお、図4の実施形態では、GaAs基板31上にGaAsナノワイヤ32を形成したが、球形、三角錐、コイル形状などの立体構造をナノスケールで作製するようにしてもよい。
【0030】
図5(a)は、pin型ナノダイオードが搭載されたSi電子回路の構成例を示す斜視図、図5(b)は、図5(a)のpin型ナノダイオードを拡大して示す平面図である。
図5において、図2のサンプルSとして、電子回路42が形成されたSi基板41を用いた。また、Si基板41には、pin型ナノダイオード48を形成する領域が設けられ、pin型ナノダイオード48を形成する領域には、−電極43および+電極47が形成されている。ここで、−電極43と+電極47との間隔は1μmとし、−電極43および+電極47の材質としては、WまたはMoを用いた。また、原料ガスGSとして、TMIn(trimethylindium)、TBP(tertiarybutylphosphine)およびTBAsを用いた。また、p型ドーパント原料として、DEZn(dimethylzinc)、n型ドーパント原料として、テトラエチルシランを用いた。また、金属針23aの代わりに、20nmの径の金の微粒子が高温で先端に接合されたカーボンナノチューブを用いた。
【0031】
そして、電子回路42が形成されたSi基板41をサンプルステージ21上に載置し、反応管1内の真空引きを行いながら、金の微粒子が接合されたカーボンナノチューブを昇温させ、V族原料とIII族原料との流量比が1対60になるようにして、原料ガスGSを反応管1内に導入した。また、ドーパント原料の流量は、キャリア濃度が1018cm-3となるように調整した、
そして、サンプルステージ21の位置を制御して金の微粒子が接合されたカーボンナノチューブを動かすことにより、pin型ナノダイオード48をSi基板41上に形成した。ここで、pin型ナノダイオード48には、n−InP層44、InAs層45およびp−InP層46が設けられ、n−InP層44は−電極43に接続し、p−InP層46は+電極47に接続した。また、n−InP層44の長さは490nm、InAs層45の長さは20nm、p−InP層46の長さは490nmとした。
【0032】
そして、−電極43および+電極47を介してpin型ナノダイオード48に電流を流すことにより、1.3μmでの発光を確認した。また、pin型ナノダイオード48をSi基板41上に2つ相対して配置し、一方のpin型ナノダイオード48に順方向に電流を流すことにより発光素子として動作させ、他方のpin型ナノダイオード48に逆方向に電流を流すことにより受光素子として動作させることにより、光接続を行った。そして、電子回路42の素子間で1Gbitの伝送速度を確認した。
【0033】
図6(a)は、pin型ナノダイオードが搭載されたフォトニック結晶レーザの構成例を示す斜視図、図6(b)は、図6(a)のpin型ナノダイオードを拡大して示す断面図である。
図6において、図2のサンプルSとして、SOI基板上に形成されたフォトニック結晶導波路を用いた。ここで、p−Si基板51上には、空気層52を介してn−Si層53が形成され、n−Si層53には、導波路となる部分を避けるようにして配置された開口部54が設けられている。また、n−Si層53には、フォトニック結晶導波路上に配置された開口部55が設けられている。なお、空気層52は、SOI基板のSiO2層をフッ酸で除去することにより形成することができる。また、原料ガスGSとして、TMIn(trimethylindium)、TBP(tertiarybutylphosphine)およびTBAsを用いた。また、p型ドーパント原料としてDEZn(dimethylzinc)、n型ドーパント原料としてテトラエチルシランを用いた。また、金属針23aの代わりに、20nmの径の金の微粒子が高温で先端に接合されたカーボンナノチューブを用いた。
【0034】
そして、フォトニック結晶導波路が形成されたp−Si基板51をサンプルステージ21上に載置し、反応管1内の真空引きを行いながら、金の微粒子が接合されたカーボンナノチューブを昇温させ、V族原料とIII族原料との流量比が1対60になるようにして、原料ガスGSを反応管1内に導入した。また、ドーパント原料の流量は、キャリア濃度が1018cm-3となるように調整した。
【0035】
そして、サンプルステージ21の位置を制御して金の微粒子が接合されたカーボンナノチューブを動かすことにより、p−InP層56、InAs層57およびn−InP層58をp−Si基板51上に順次積層させ、pin型ナノダイオードを開口部55内に形成した。ここで、p−InP層56の底面はp−Si基板51に接続し、n−InP層58の先端はn−Si層53に接続した。また、InAs層57は、n−Si層53の中央の高さに位置するように配置した。
そして、p−Si基板51およびn−Si層53に電極を形成し、開口部55内に形成されたpin型ナノダイオードに電流を流すことにより、1.3μmでの発光を確認した。また、Q値の高い共振器構造を持つフォトニック結晶導波路を用いることにより、導波路方向にレーザ発振することを確認した。
【0036】
図7は、本発明のナノ結晶成長方法で作製されたGaN白色ナノダイオードの構成例を示す斜視図である。
図7において、図2のサンプルSとして、高抵抗Si基板61を用いた。ここで、高抵抗Si基板61上には、−電極63a〜63cおよび+電極67a〜67cが形成され、−電極63a〜63cおよび+電極67a〜67cの材質としてWを用いた。また、原料ガスGSとして、TMGa、TMAlおよびNH3を用いた。また、n型ドーパント原料としてSiH4、n型ドーパント原料としてDEZnを用いた。また、金属針23aの代わりに、20nmの径の金の微粒子が高温で先端に接合されたカーボンナノチューブを用いた。
【0037】
そして、−電極63a〜63cおよび+電極67a〜67cが形成された高抵抗Si基板61をサンプルステージ21上に載置し、反応管1内の真空引きを行いながら、金の微粒子が接合されたカーボンナノチューブを昇温させ、V族原料とIII族原料との流量比が1対60になるようにして、原料ガスGSを反応管1内に導入した。また、ドーパント原料の流量は、キャリア濃度が1018cm-3となるように調整した、
そして、サンプルステージ21の位置を制御して金の微粒子が接合されたカーボンナノチューブを動かすことにより、電極63aと+電極67aとの間にGaN赤色ナノダイオード68aを形成した後、電極63bと+電極67bとの間にGaN黄色ナノダイオード68bを形成し、さらに、電極63cと+電極67cとの間にGaN青色ナノダイオード67cを形成した。
【0038】
ここで、GaN赤色ナノダイオード68aには、n−AlNワイヤ層64a、GaN量子ドット層65aおよびp−AlNワイヤ層66aが設けられ、n−AlNワイヤ層64aは−電極63aに接続し、p−AlNワイヤ層66aは+電極67aに接続した。また、n−AlNワイヤ層64aの直径は20nm、長さは500nmとし、GaN量子ドット層65aの直径および長さは発光波長が450nmとなるように調整し、p−AlNワイヤ層66aの直径は20nm、長さは500nmとした。
【0039】
また、GaN黄色ナノダイオード68bには、n−AlNワイヤ層64b、GaN量子ドット層65bおよびp−AlNワイヤ層66bが設けられ、n−AlNワイヤ層64bは−電極63bに接続し、p−AlNワイヤ層66bは+電極67bに接続した。また、n−AlNワイヤ層64bの直径は20nm、長さは500nmとし、GaN量子ドット層65bの直径および長さは発光波長が520nmとなるように調整し、p−AlNワイヤ層66bの直径は20nm、長さは500nmとした。
【0040】
また、GaN青色ナノダイオード68cには、n−AlNワイヤ層64c、GaN量子ドット層65cおよびp−AlNワイヤ層66cが設けられ、n−AlNワイヤ層64cは−電極63cに接続し、p−AlNワイヤ層66cは+電極67cに接続した。また、n−AlNワイヤ層64cの直径は20nm、長さは500nmとし、GaN量子ドット層65cの直径および長さは発光波長が600nmとなるように調整し、p−AlNワイヤ層66cの直径は20nm、長さは500nmとした。
【0041】
また、GaN赤色ナノダイオード68a、GaN黄色ナノダイオード68bおよびGaN青色ナノダイオード67cの間隔は、500nmとした。
そして、−電極63a〜63cおよび+電極67a〜67cをそれぞれ介して、GaN赤色ナノダイオード68a、GaN黄色ナノダイオード68bおよびGaN青色ナノダイオード67cに同時に電流を流すことにより、白色の発光を確認した。ここで、GaN赤色ナノダイオード68a、GaN黄色ナノダイオード68bおよびGaN青色ナノダイオード67cを微小間隔で隣り合うように配置することにより、GaN赤色ナノダイオード68a、GaN黄色ナノダイオード68bおよびGaN青色ナノダイオード67cを互いに重ね合わせることなく白色の発光を得ることができ、発光効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のナノ結晶成長方法は、ナノサイズの高品質な発光および受光デバイスを位置制御性よく作製することができ、Si上に作製された集積回路やフォトニック結晶上などに化合物半導体で作製されるナノレベルの発光受光素子を品質よく簡単に作り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るナノ結晶成長装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の反応管1内の構成例を示す断面図である。
【図3】図1のガラスフォルダ22の構成例を示す平面図である。
【図4】本発明のナノ結晶成長方法で作製されたGaAsナノワイヤの構成例を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は、ナノ発光受光素子が搭載されたSi電子回路の構成例を示す斜視図、図5(b)は、図5(a)のナノ発光受光素子を拡大して示す平面図である。
【図6】図6(a)は、pin型ナノダイオードが搭載されたフォトニック結晶レーザの構成例を示す斜視図、図6(b)は、図6(a)のpin型ナノダイオードを拡大して示す断面図である。
【図7】本発明のナノ結晶成長方法で作製されたGaN白色ナノダイオードの構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 反応管
2 ロータリーポンプ
3 ターボ分子ポンプ
4 フィルタ
5、10a、10b 流量調整器
6 リークバルブ
7a、7b ガス供給源
8a、8b バルブ
9a、9b 圧力計
11 排気管
12 ガス供給管
13 圧力調整管
S サンプル
21 サンプルステージ
22 ガラスフォルダ
22a 開口部
22b 噴出孔
22c ガス導入部
23 金属プレート
23a 金属針
24 電源
25 電流計
26 ガス管
27 Oリング
28 熱電対
29 ガラスロッド
GS ガス
31 GaAs基板
32 GaAsナノワイヤ
41、61 Si基板
42 電子回路
43、63a〜63c −電極
44、58 n−InP層
45、57 InAs層
46、56 p−InP層
47、67a〜67c +電極
48 pin型ナノダイオード
51 p−Si基板
52 空気層
53 n−Si層
54、55 開口部
64a〜64c n−AlNワイヤ層
65a〜65c GaN量子ドット層
66a〜66c p−AlNワイヤ層
68a GaN赤色ナノダイオード
68b GaN黄色ナノダイオード
68c GaN青色ナノダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の真空度において、先端がナノサイズの金属の針またはナノサイズの金属粒子が先端に付いた針を基材に接触させる工程と、
前記針を加熱しながら結晶成長の原料となるガスを前記針の周囲に供給することにより、前記基材上に結晶成長させる工程と、
前記結晶成長させながら、前記針と前記基材との位置関係を変化させる工程とを備えることを特徴とするナノ結晶成長方法。
【請求項2】
前記針の加熱方法は、抵抗加熱または光照射であることを特徴とする請求項1記載のナノ結晶成長方法。
【請求項3】
前記針と前記基材との位置関係を変化させる方法は、前記針または前記基材を所定方向にナノオーダーで移動させる方法であることを特徴とする請求項1または2記載のナノ結晶成長方法。
【請求項4】
前記結晶成長の原料となるガスは、有機金属化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノ結晶成長方法。
【請求項5】
電子顕微鏡または走査型プローブ顕微鏡にて結晶成長の位置を見積もる工程をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のナノ結晶成長方法。
【請求項6】
試料を設置可能な反応管と、
前記反応管内を真空引きする真空ポンプと、
結晶成長の原料となるガスを前記反応管内に供給するガス供給源と、
前記反応管内に設置され、先端がナノサイズの金属の針またはナノサイズの金属粒子が先端に付いた針と、
前記針の先端と前記試料との位置関係を制御する位置制御手段と、
前記針を加熱する加熱手段とを備えることを特徴とするナノ結晶成長装置。
【請求項7】
前記針を支持する支持体と、
前記反応管内に供給されたガスを前記支持体内に引き込むガス導入部と、
前記針の近傍に配置され、前記支持体内に引き込まれたガスを噴出させる噴出孔とをさらに備えることを特徴とする請求項6記載のナノ結晶成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−43830(P2006−43830A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229612(P2004−229612)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】