説明

ナノ繊維の製造方法、ナノ繊維、不織布及び糸

【課題】石油資源や森林資源の使用を抑制しつつナノ繊維を得ることが可能であり、強度の高いナノ繊維を得ることが可能であり、従来のナノ繊維の製造方法よりも高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能であり、かつ、従来のナノ繊維の製造方法よりも不純物を少なくすることが可能なナノ繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むナノ繊維の製造方法であって、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させてケナフ溶液を準備するケナフ溶液準備工程と、ケナフ溶液を含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行う電界紡糸工程とをこの順番で含むことを特徴とするナノ繊維の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ繊維の製造方法、ナノ繊維、不織布及び糸であって、特にケナフを原料とするケナフ由来のポリマーを含むものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノ繊維及びナノ繊維を含む製品が広く知られている。ナノ繊維とは平均直径が数千nm以下の繊維のことをいい、極めて細い繊維径及び極めて高い比表面積を有する。このため、ナノ繊維は様々な工業的分野(例えば、衣料品、各種フィルター、各種セパレーター、各種機械材料、ワイピングクロース、おむつ、人工血管、人工骨等の分野。)に適用されており、又は適用が期待されている。
【0003】
一方、地球環境の世界的な変化への危惧から、石油資源や森林資源の使用を抑制することについて関心が高まっている。それに関連して、植物性繊維を扱う技術分野においては、栽培可能な草であり、成長が早く、かつ、強度の高い繊維が多く得られるケナフ(洋麻ともいう。)が注目されている。
【0004】
ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むナノ繊維の製造方法としては、従来、ケナフ由来の植物繊維を物理的な力(2枚のディスクの回転方向の差異により生じる力)でほぐしてナノ繊維を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来のナノ繊維の製造方法によれば、栽培可能な草であるケナフを用いることで、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつナノ繊維を得ることが可能となる。また、強度(特に引っ張り強度)の高い繊維が多く得られるケナフを原料とするため、強度の高いナノ繊維を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−155349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のナノ繊維の製造方法においては、物理的な力でほぐしてナノ繊維を製造するため、高い均一性を有する(つまり、繊維の平均径や長さのばらつきが小さい)ナノ繊維を得ることが困難であるという問題がある。また、原料となるケナフは天然物であるため、収穫や加工の際、原料に不純物が混ざることがあるが、従来のナノ繊維の製造方法においては、不純物を少なくすることが困難であるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつナノ繊維を得ることが可能であり、強度の高いナノ繊維を得ることが可能であり、従来のナノ繊維の製造方法よりも高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能であり、かつ、従来のナノ繊維の製造方法よりも不純物を少なくすることが可能なナノ繊維の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の製造方法により製造されたナノ繊維を提供することを目的とする。さらにまた、本発明のナノ繊維を含む不織布及び糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明のナノ繊維の製造方法は、ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むナノ繊維の製造方法であって、前記ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させてケナフ溶液を準備するケナフ溶液準備工程と、前記ケナフ溶液を含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行う電界紡糸工程とをこの順番で含むことを特徴とする。
【0009】
このため、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させてケナフ溶液を準備するケナフ溶液準備工程と、ケナフ溶液を含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行う電界紡糸工程とをこの順番で含むため、均一な電界紡糸溶液を調製し、これを用いて電界紡糸を行うことで、従来のナノ繊維の製造方法よりも高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0010】
また、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させるため、溶媒に溶解しない不純物を除去することが可能となり、その結果、従来のナノ繊維の製造方法よりも不純物を少なくすることが可能となる。
【0011】
また、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、従来のナノ繊維の製造方法と同様に、ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むナノ繊維の製造方法であるため、栽培可能な草であるケナフを用いることで、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつナノ繊維を得ることが可能となる。
【0012】
さらにまた、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、従来のナノ繊維の製造方法と同様に、強度の高い繊維が多く得られるケナフを原料とするため、強度の高いナノ繊維を得ることが可能となる。
【0013】
したがって、本発明のナノ繊維の製造方法は、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつナノ繊維を得ることが可能であり、強度の高いナノ繊維を得ることが可能であり、従来のナノ繊維の製造方法よりも高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能であり、かつ、従来のナノ繊維の製造方法よりも不純物を少なくすることが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0014】
[2]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記電界紡糸工程より前に、前記ケナフ由来のポリマーとは異なる他のポリマーを溶媒に溶解させて他のポリマー溶液を準備する他のポリマー溶液準備工程をさらに含み、前記電界紡糸工程は、前記電界紡糸溶液として、前記ケナフ溶液及び前記他のポリマー溶液を混合した混合溶液を用いて電界紡糸を行う工程であることが好ましい。
【0015】
このような方法とすることにより、他のポリマーの性質を付加して、様々な性質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
【0016】
また、このような方法とすることにより、他のポリマー溶液を混合することにより安定して電界紡糸を行うことが可能となるため、電界紡糸工程を安定して実施し、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0017】
[3]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記他のポリマーは、ポリビニルアルコールを含むことが好ましい。
【0018】
このような方法とすることにより、後述する実験例からもわかるように、電界紡糸工程を一層安定して実施し、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0019】
なお、「ポリビニルアルコールを含む」には、ポリビニルアルコールのみを含むことと、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール以外の他のポリマーを含むこととの両方を含む。
【0020】
[4]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記混合溶液において、前記ケナフ由来のポリマーと、前記他のポリマーとの重量比が、1:99〜1:1の範囲内にあることが好ましい。
【0021】
このような方法とすることにより、高い強度を有するナノ繊維を得ることが可能となり、かつ、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0022】
なお、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比が1:99〜1:1の範囲内にあることとしたのは、上記範囲よりもケナフ由来のポリマーの比率が小さい場合には高い強度を有するナノ繊維を得ることが困難な場合があるためであり、上記範囲よりもケナフ由来のポリマーの比率が大きい場合には電界紡糸工程を安定して実施することができない場合があり、その結果、高い均一性を有するナノ繊維を得ることができない場合があるためである。上記観点からは、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比が1:9〜4:6の範囲内にあることが一層好ましい。
【0023】
[5]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記ケナフ溶液準備工程は、ケナフに可溶化処理を施して前記ケナフ由来のポリマーを得た後、前記ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させる工程であることが好ましい。
【0024】
このような方法とすることにより、より一層高い均一性を有する電界紡糸溶液を調製することが可能となり、これを用いて電界紡糸を行うことで、従来のナノ繊維の製造方法よりも一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0025】
[6]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記可溶化処理は、カルボキシメチル化処理であることが好ましい。
【0026】
カルボキシメチル化処理は比較的簡単な処理であり、かつ、ケナフよりも格段に溶媒に溶解しやすいケナフ由来のポリマーを得られるため、このような方法とすることにより、ケナフの加工に伴う環境負荷を低減しつつ均一な電界紡糸溶液を得ることが可能となり、その結果、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0027】
カルボキシメチル化処理の方法としては、種々の方法を用いることができる(例えば、アルカリ環境下でモノクロロ酢酸と反応させる方法。後述する実験例1参照。)。
【0028】
[7]本発明のナノ繊維は、ケナフ由来のポリマーを少なくとも含み、前記ケナフ由来のポリマーを含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行うことにより製造されたものであることを特徴とする。
【0029】
このため、本発明のナノ繊維によれば、ケナフ由来のポリマーを含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行うことにより製造されたものであるため、均一な電界紡糸溶液を調製し、これを用いて電界紡糸を行うことで、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも高い均一性を有するようにすることが可能となる。
【0030】
また、本発明のナノ繊維によれば、電界紡糸を行うことにより製造されたものであるため、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させ、溶媒に溶解しない不純物を除去することが可能となり、その結果、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも不純物を少なくすることが可能となる。
【0031】
また、本発明のナノ繊維によれば、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維と同様に、ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むため、栽培可能な草であるケナフを用いることで、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつ得ることが可能となる。
【0032】
さらにまた、本発明のナノ繊維によれば、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維と同様に、強度の高い繊維が多く得られるケナフを原料とするため、高い強度を有するようにすることが可能となる。
【0033】
したがって、本発明のナノ繊維は、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつ得ることが可能であり、高い強度を有するようにすることが可能であり、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも高い均一性を有するようにすることが可能であり、かつ、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも不純物を少なくすることが可能なナノ繊維となる。
【0034】
[8]本発明のナノ繊維は、前記ケナフ由来のポリマーの他に、ケナフ以外を原料とする他のポリマーをさらに含むことが好ましい。
【0035】
このような構成とすることにより、他のポリマーの性質を付加して、様々な性質を有するようにすることが可能となる。
【0036】
また、このような構成とすることにより、他のポリマーにより安定して電界紡糸を行うことが可能となるため、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0037】
[9]本発明のナノ繊維においては、前記他のポリマーは、ポリビニルアルコールを含むことが好ましい。
【0038】
このような構成とすることにより、後述する実験例からもわかるように、電界紡糸を一層安定して行い、より一層高い均一性を有するようにすることが可能となる。
【0039】
[10]本発明のナノ繊維においては、前記ケナフ由来のポリマーと、前記他のポリマーとの重量比が、1:99〜1:1の範囲内にあることが好ましい。
【0040】
このような構成とすることにより、高い強度を有するようにすることが可能となり、かつ、より一層高い均一性を有するようにすることが可能となる。
【0041】
なお、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比が1:99〜1:1の範囲内にあることとしたのは、上記範囲よりもケナフ由来のポリマーの比率が小さい場合には高い強度を有するようにすることが困難な場合があるためであり、上記範囲よりもケナフ由来のポリマーの比率が大きい場合には電界紡糸を安定して行うことができない場合があり、その結果、高い均一性を有するようにすることができない場合があるためである。上記観点からは、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比が1:9〜4:6の範囲内にあることが一層好ましい。
【0042】
[11]本発明のナノ繊維においては、前記ケナフ由来のポリマーは、前記ケナフにカルボキシメチル化処理を施すことにより得られるものであることが好ましい。
【0043】
カルボキシメチル化は比較的簡単な処理であり、かつ、ケナフよりも格段に溶媒に溶解しやすいケナフ由来のポリマーを得られるため、このような構成とすることにより、ケナフの加工に伴う環境負荷を低減しつつ均一な電界紡糸溶液を得ることが可能となり、その結果、より一層高い均一性を有するナノ繊維とすることが可能となる。
【0044】
[12]本発明の不織布は、本発明のナノ繊維を含むことを特徴とする。
【0045】
本発明の不織布によれば、ナノ繊維を含むため、様々な工業的分野(例えば、衣料品、各種フィルター、各種機械材料、ワイピングクロース、おむつ、人工血管、人工骨等の分野。)に適用することが可能となる。
【0046】
また、本発明の不織布によれば、本発明のナノ繊維を含むため、製造時の環境負荷が低く、高い品質(高い均一性、高い強度)を有する不織布とすることが可能となる。
【0047】
なお、「本発明のナノ繊維を含む」には、本発明のナノ繊維のみを含むことと、本発明のナノ繊維及び本発明のナノ繊維以外の物質(特に、各種繊維)を含むこととの両方を含む。
【0048】
[13]本発明のセパレーターは、本発明のナノ繊維を含むことを特徴とする。
【0049】
本発明のセパレーターによれば、強度の高い繊維が多く得られるケナフを原料とし、高い強度を有するようにすることが可能となる本発明のナノ繊維を含むため、高い強度を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0050】
また、本発明のセパレーターによれば、本発明のナノ繊維を含むため、製造時の環境負荷が低く、高い強度以外にも高い均一性を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0051】
なお、本明細書においては、「セパレーター」とは、電池(一次電池及び二次電池を含む。)やコンデンサー(キャパシターともいう。)等に用いるセパレーター(仕切り)のことをいう。
【0052】
[14]本発明の糸は、本発明のナノ繊維を含むことを特徴とする。
【0053】
本発明の糸によれば、ナノ繊維を含むため、様々な工業的分野(例えば、衣料品、各種フィルター、各種機械材料、ワイピングクロース、おむつ、人工血管、人工骨等の分野。)に適用することが可能となる。
【0054】
また、本発明の糸によれば、本発明のナノ繊維を含むため、製造時の環境負荷が低く、高い品質(高い均一性、高い強度)を有する糸とすることが可能となる。
【0055】
なお、「本発明のナノ繊維を含む」には、本発明のナノ繊維のみを含むことと、本発明のナノ繊維及び本発明のナノ繊維以外の物質(特に、各種繊維)を含むこととの両方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】実施形態1に係るナノ繊維12、不織布14及び糸18それぞれの製造方法を説明するために示す図である。
【図3】実施形態2に係るセパレーター20を説明するために示す図である。
【図4】実験例1に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。
【図5】実験例2に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。
【図6】実験例3に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。
【図7】実験例4に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明のナノ繊維の製造方法、ナノ繊維、不織布及び糸について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0058】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、実施形態1に係るナノ繊維12、不織布14及び糸18それぞれの製造方法を説明するために示す図である。図2(a)は電界紡糸装置100を用いてナノ繊維12及び不織布14を製造する様子を示す図であり、図2(b)は不織布14を帯状に切断して帯状不織布16を製造する様子を示す図であり、図2(c)は撚り糸装置200を用いて糸18を製造する様子を示す図である。
【0059】
1.実施形態1に係るナノ繊維の製造方法
実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、ケナフを原料とするケナフ由来のポリマーを少なくとも含むナノ繊維12(図2(a)参照。)の製造方法であって、図1に示すように、ケナフ溶液準備工程S1と、他のポリマー溶液準備工程S2と、混合工程S3と、電界紡糸工程S4とを含む。以下、各工程を詳細に説明する。
【0060】
(1)ケナフ溶液準備工程S1
ケナフ溶液準備工程S1は、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させてケナフ溶液を準備する工程である。さらにいえば、ケナフ溶液準備工程S1は、ケナフに可溶化処理を施してケナフ由来のポリマーを得た後、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させる工程である。実施形態1においては、可溶化処理は、カルボキシメチル化処理である。
【0061】
ケナフ由来のポリマー溶解させる溶媒としては、例えば、N−メチルモルフォリン−N−オキシド、水、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THF等を用いることができる。また、溶媒として複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。さらに、導電性向上剤等の添加剤を加えてもよい。
【0062】
(2)他のポリマー溶液準備工程S2
他のポリマー溶液準備工程S2は、ケナフ由来のポリマーとは異なる他のポリマーを溶媒に溶解させて他のポリマー溶液を準備する工程である。実施形態1においては、他のポリマーはポリビニルアルコールを含む。
【0063】
(3)混合工程S3
混合工程S3は、ケナフ溶液と他のポリマー溶液とを混合した混合溶液(電界紡糸溶液10)を調製する工程である。混合溶液において、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比は1:99〜1:1の範囲内にあり、一層好ましくは1:9〜4:6の範囲内にある。
【0064】
(4)電界紡糸工程S4
電界紡糸工程S4は、図2(a)に示すように、ケナフ溶液を含む電界紡糸溶液10を用いて電界紡糸を行う工程である。さらにいえば、電界紡糸工程S4は、電界紡糸溶液10として、ケナフ溶液及び他のポリマー溶液を混合した混合溶液を用いて電界紡糸を行う工程である。
【0065】
電界紡糸工程S4は、例えば、電界紡糸装置100を用いて以下のようにして行う。電界紡糸装置100に備え付けられた原料タンク102に電界紡糸溶液10を充填し、バルブ104を開け、電界紡糸溶液10をノズル106に供給可能な状態にする。その後、高圧電源110を用いてノズル106とコレクター108との間に高電圧を印加することにより電界紡糸を行い、ナノ繊維12を得る。
【0066】
なお、この場合、ナノ繊維12は、コレクター108上にシート状の不織布14として堆積する。
【0067】
ノズル106とコレクター108との間に印加する電圧は、例えば、10kV〜30kVに設定することができ、15kV付近に設定することが好ましい。
紡糸区域の温度は、例えば25℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば30%〜40%に設定することができる。
【0068】
2.実施形態1に係るナノ繊維12、不織布14及び糸20
実施形態1に係るナノ繊維12は、図2(a)に示すように、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法により製造されたものであり、ケナフ由来のポリマーを少なくとも含み、ケナフ由来のポリマーを含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行うことにより製造されたものである。
【0069】
ナノ繊維12は、ケナフ由来のポリマーの他に、ケナフ由来のポリマーとは異なる他のポリマーをさらに含む。ナノ繊維12においては、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比が、1:99〜1:1の範囲内にあり、一層好ましくは1:9〜4:6の範囲内にある。他のポリマーは、ポリビニルアルコールを含む。ケナフ由来のポリマーは、上記したように、ケナフにカルボキシメチル化処理を施すことにより得られるものである。
【0070】
実施形態1に係る不織布14は、図2(a)に示すように、実施形態1に係るナノ繊維12を含む。不織布14は、上記したように、電界紡糸工程S4により得られる。
【0071】
実施形態1に係る糸18は、図2(b)及び図2(c)に示すように、実施形態1に係る不織布14から得られるため、実施形態1に係るナノ繊維12を含む。
【0072】
糸18は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、図2(b)に示すように、電界紡糸工程S4で得られた不織布14を帯状に裁断し、帯状不織布16とする。次に、図2(c)に示すように、帯状不織布16を撚り糸装置200にかけて撚糸し、糸18を得る。なお、符号202で示すのは帯状不織布16を撚糸する主撚り糸装置であり、符号204及び符号206で示すのは糸18を強固に撚るとともに糸18を一定方向(図2(c)においては、紙面右方向)に向かって送る糸送り装置である。
【0073】
3.実施形態1に係るナノ繊維の製造方法、ナノ繊維12、不織布14及び糸20の効果
実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させてケナフ溶液を準備するケナフ溶液準備工程S1と、ケナフ溶液を含む電界紡糸溶液10を用いて電界紡糸を行う電界紡糸工程S4とをこの順番で含むため、均一な電界紡糸溶液を調製し、これを用いて電界紡糸を行うことで、従来のナノ繊維の製造方法よりも高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0074】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させるため、溶媒に溶解しない不純物を除去することが可能となり、その結果、従来のナノ繊維の製造方法よりも不純物を少なくすることが可能となる。
【0075】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、従来のナノ繊維の製造方法と同様に、ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むナノ繊維12の製造方法であるため、栽培可能な草であるケナフを用いることで、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつナノ繊維を得ることが可能となる。
【0076】
さらにまた、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、従来のナノ繊維の製造方法と同様に、強度の高い繊維が多く得られるケナフを原料とするため、強度の高いナノ繊維を得ることが可能となる。
【0077】
したがって、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつナノ繊維を得ることが可能であり、強度の高いナノ繊維を得ることが可能であり、従来のナノ繊維の製造方法よりも高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能であり、かつ、従来のナノ繊維の製造方法よりも不純物を少なくすることが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0078】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、他のポリマー溶液準備工程S2をさらに含み、電界紡糸工程S4は、電界紡糸溶液10として、ケナフ溶液及び他のポリマー溶液を混合した混合溶液を用いて電界紡糸を行う工程であるため、他のポリマーの性質を付加して、様々な性質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
【0079】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、他のポリマー溶液を混合することにより安定して電界紡糸を行うことが可能となるため、電界紡糸工程を安定して実施し、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0080】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、他のポリマーがポリビニルアルコールを含むため、後述する実験例からもわかるように、電界紡糸工程を一層安定して実施し、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0081】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、混合溶液において、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比が1:99〜1:1の範囲内にあるため、高い強度を有するナノ繊維を得ることが可能となり、かつ、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0082】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、ケナフ溶液準備工程S1は、ケナフに可溶化処理を施してケナフ由来のポリマーを得た後、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させる工程であるため、より一層高い均一性を有する電界紡糸溶液を調製することが可能となり、これを用いて電界紡糸を行うことで、従来のナノ繊維の製造方法よりも一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0083】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、可溶化処理がカルボキシメチル化処理であるため、ケナフの加工に伴う環境負荷を低減しつつ均一な電界紡糸溶液を得ることが可能となり、その結果、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0084】
実施形態1に係るナノ繊維12によれば、電界紡糸を行うことにより製造されたものであるため、均一な電界紡糸溶液を調製し、これを用いて電界紡糸を行うことで、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも高い均一性を有するようにすることが可能となる。
【0085】
また、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、電界紡糸を行うことにより製造されたものであるため、ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させ、溶媒に溶解しない不純物を除去することが可能となり、その結果、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも不純物を少なくすることが可能となる。
【0086】
また、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維と同様に、ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むため、栽培可能な草であるケナフを用いることで、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつ得ることが可能となる。
【0087】
さらにまた、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維と同様に、強度の高い繊維が多く得られるケナフを原料とするため、高い強度を有するようにすることが可能となる。
【0088】
したがって、実施形態1に係るナノ繊維12は、石油資源や森林資源の使用を抑制しつつ得ることが可能であり、高い強度を有するようにすることが可能であり、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも高い均一性を有するようにすることが可能であり、かつ、従来のナノ繊維の製造方法で得られるナノ繊維よりも不純物を少なくすることが可能なナノ繊維となる。
【0089】
また、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、ケナフ由来のポリマーの他に、ケナフ以外を原料とする他のポリマーをさらに含むため、他のポリマーの性質を付加して、様々な性質を有するようにすることが可能となる。
【0090】
また、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、他のポリマーにより安定して電界紡糸を行うことが可能となるため、より一層高い均一性を有するナノ繊維を得ることが可能となる。
【0091】
また、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、他のポリマーがポリビニルアルコールを含むため、後述する実験例からもわかるように、電界紡糸を一層安定して行い、より一層高い均一性を有するようにすることが可能となる。
【0092】
また、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、ケナフ由来のポリマーと他のポリマーとの重量比が1:99〜1:1の範囲内にあるため、高い強度を有するようにすることが可能となり、かつ、より一層高い均一性を有するようにすることが可能となる。
【0093】
また、実施形態1に係るナノ繊維12によれば、ケナフ由来のポリマーは、ケナフにカルボキシメチル化処理を施すことにより得られるものであるため、ケナフの加工に伴う環境負荷を低減しつつ均一な電界紡糸溶液を得ることが可能となり、その結果、より一層高い均一性を有するナノ繊維とすることが可能となる。
【0094】
実施形態1に係る不織布14は、ナノ繊維12を含むため、様々な工業的分野(例えば、衣料品、各種フィルター、各種機械材料、ワイピングクロース、おむつ、人工血管、人工骨等の分野。)に適用することが可能となる。
【0095】
また、実施形態1に係る不織布14によれば、本発明のナノ繊維であるナノ繊維12を含むため、製造時の環境負荷が低く、高い品質(高い均一性、高い強度)を有する不織布とすることが可能となる。
【0096】
実施形態1に係る糸18によれば、ナノ繊維12を含むため、様々な工業的分野(例えば、衣料品、各種フィルター、各種機械材料、ワイピングクロース、おむつ、人工血管、人工骨等の分野。)に適用することが可能となる。
【0097】
また、実施形態1に係る糸18によれば、本発明のナノ繊維であるナノ繊維12を含むため、製造時の環境負荷が低く、高い品質(高い均一性、高い強度)を有する不織布とすることが可能となる。
【0098】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係るセパレーター20を説明するために示す図である。図3(a)は芯材(符号を図示せず。)に巻いた状態のセパレーター20の斜視図であり、図3(b)は図3(a)のAで示す範囲をさらに拡大して示す模式図である。
【0099】
実施形態2に係るセパレーター20は、図3に示すように、実施形態2に係るナノ繊維22を含むセパレーターであり、さらにいえば、ナノ繊維22からなる層を有するセパレーターである。実施形態2に係るナノ繊維22は、実施形態1に係るナノ繊維12と同様の構成を有するため、構成の詳細及び効果に関する記載は省略する。
【0100】
実施形態2に係るセパレーター20は、例えば、シート状の基材層(図示せず。)の上に電界紡糸を行い、ナノ繊維22を層状に堆積させ、その後基材層を除去することにより製造することができる。なお、基材層自体もセパレーターとして用いることが可能なものからなる場合には、基材層を除去せずにセパレーターとして用いてもよい。
【0101】
実施形態2に係るセパレーター20によれば、強度の高い繊維が多く得られるケナフを原料とし、高い強度を有するようにすることが可能となるナノ繊維22を含むため、高い強度を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0102】
また、実施形態2に係るセパレーター20によれば、ナノ繊維22を含むため、製造時の環境負荷が低く、高い強度以外にも高い均一性を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0103】
[実験例1]
図4は、実験例1に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。図4(a)及び図4(b)は光学顕微鏡による拡大写真であり、図4(c)は走査型電子顕微鏡による拡大写真である。なお、図4(a)の写真と図4(b)の写真とでは拡大率が異なり、図4(b)の写真の方が拡大率が高い。また、図4(c)の写真はナノ繊維を1箇所に集めてから撮った写真である。
【0104】
実験例1として、上記実施形態1に係るナノ繊維の製造方法に沿って、実際にナノ繊維を製造する実験を行った。
各工程は、明細書中に特段の記載がない場合には、汎用の実験器具及び実験装置を用いて行った。
光学顕微鏡を用いた観察は、Digital Micro Scope VH−5500(キーエンス社製)を用いて行った。
以下、工程ごとに実験内容を説明する。
【0105】
(1)ケナフ溶液準備工程
実験例1におけるケナフ溶液準備工程では、まず、前処理として3gのケナフ(韓国濟州特別自治道濟州市三陽洞産のもの)を裁断し、ある程度細かくした後、ケナフをNaOHの15%イソプロパノール溶液100ml中に投入し、25℃で1時間かけアルカリ化を行った。その後、3.6gのモノクロロ酢酸を加え、55℃で3時間反応させた。反応後、濃度10%の塩酸で中和し、濾過を行ってケナフ由来のポリマーを含む残渣を得た。当該残渣を70%エタノールで数回洗浄して副生成物を取り除き、オーブンで乾燥させてケナフ由来のポリマーを得た。
【0106】
上記のようにして得たケナフ由来のポリマーを、窒素雰囲気下、110℃〜120℃で、N−メチルモルフォリン−N−オキシド(アルドリッチ社より購入。)の50wt%水溶液に溶解させ、ケナフ溶液を得た。なお、ケナフ溶液におけるケナフ由来のポリマーの濃度は30wt%〜35wt%とした。
【0107】
(2)他のポリマー溶液準備工程
ポリビニルアルコール(加水分解度88%、アルドリッチ社より購入。)を蒸留水に溶解させ、ポリビニルアルコールの濃度が10wt%の他のポリマー溶液を得た。
【0108】
(3)電界紡糸工程
まず、上記のようにして得たケナフ溶液と他のポリマー溶液とを混合させ、電界紡糸溶液としての混合溶液を得た。混合は、混合溶液において、ケナフ由来のポリマーとポリビニルアルコールとの重量比が、1:9となるように行った。
次に、混合溶液を用いて電界紡糸を行い、ナノ繊維を得た。ノズル−コレクター間の電圧は14kVとし、ノズル−コレクター間の距離は13cmとし、温度は室温(25℃)として電界紡糸を行った。
【0109】
上記のようにして得たナノ繊維を、光学顕微鏡及び走査型顕微鏡により観察した。その結果、図4に示すように、実験例1に係るナノ繊維の製造方法によりナノ繊維が得られることが確認できた。
【0110】
[実験例2]
図5は、実験例2に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。図5(a)及び図5(b)は光学顕微鏡による拡大写真である。なお、図5(a)の写真と図5(b)の写真とでは拡大率が異なり、図5(b)の写真の方が拡大率が高い。
【0111】
実験例2に係るナノ繊維の製造方法においては、電界紡糸工程における混合を、ケナフ由来のポリマーとポリビニルアルコールとの重量比が2:8となるように行った。
実験例2に係るナノ繊維の製造方法においては、上記混合以外については実験例1とまったく同じ方法を用いたため、詳細の記載は省略する。
【0112】
上記のようにして得たナノ繊維を、光学顕微鏡により観察した。その結果、図5に示すように、実験例2に係るナノ繊維の製造方法によりナノ繊維が得られることが確認できた。
【0113】
[実験例3]
図6は、実験例3に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。図6(a)及び図6(b)は光学顕微鏡による拡大写真である。なお、図6(a)の写真と図6(b)の写真とでは拡大率が異なり、図6(b)の写真の方が拡大率が高い。
【0114】
実験例3に係るナノ繊維の製造方法においては、電界紡糸工程における混合を、ケナフ由来のポリマーとポリビニルアルコールとの重量比が3:7となるように行った。
実験例3に係るナノ繊維の製造方法においては、上記混合以外については実験例1とまったく同じ方法を用いたため、詳細の記載は省略する。
【0115】
上記のようにして得たナノ繊維を、光学顕微鏡により観察した。その結果、図6に示すように、実験例3に係るナノ繊維の製造方法によりナノ繊維が得られることが確認できた。
【0116】
[実験例4]
図7は、実験例4に係るナノ繊維の顕微鏡写真である。図7(a)及び図7(b)は光学顕微鏡による拡大写真である。なお、図7(a)の写真と図7(b)の写真とでは拡大率が異なり、図7(b)の写真の方が拡大率が高い。
【0117】
実験例4に係るナノ繊維の製造方法においては、電界紡糸工程における混合を、ケナフ由来のポリマーとポリビニルアルコールとの重量比が4:6となるように行った。
実験例4に係るナノ繊維の製造方法においては、上記混合以外については実験例1とまったく同じ方法を用いたため、詳細の記載は省略する。
【0118】
上記のようにして得たナノ繊維を、光学顕微鏡により観察した。その結果、図7に示すように、実験例4に係るナノ繊維の製造方法によりナノ繊維が得られることが確認できた。
【0119】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0120】
(1)実施形態1に係るナノ繊維の製造方法においては、電界紡糸装置100を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のナノ繊維の製造方法には、種々の電界紡糸装置を用いることができる。また、実施形態1に係るナノ繊維12は、電界紡糸装置100を用いて製造することとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のナノ繊維は、種々の電界紡糸装置を用いて製造することができる。不織布14に関しても同様である。
【0121】
(2)実施形態1に係る不織布14は、電界紡糸装置100を用いて製造することとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の不織布は、種々の電界紡糸装置を用いて製造することができる。また、不織布14は、電界紡糸装置100により直接得ることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電界紡糸装置によりナノ繊維を得た後、当該ナノ繊維を不織布製造装置にかけて得ることとしてもよい。
【0122】
(3)実施形態1に係る糸18は、撚り糸装置200を用いて製造することとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の糸は、種々の撚り糸装置を用いて製造することができる。
【0123】
(4)実施形態1においては、他のポリマーとしてポリビニルアルコールを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、他のポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサン等を用いてもよい。また、上記した他のポリマーを混合して用いてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10…電界紡糸溶液、12,22…ナノ繊維、14…不織布、16…帯状不織布、18…糸、20…セパレーター、100…電界紡糸装置、102…原料タンク、104…バルブ、106…ノズル、108…コレクター、110…高圧電源、200…撚り糸装置、202…主撚り糸装置、204,206…糸送り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケナフ由来のポリマーを少なくとも含むナノ繊維の製造方法であって、
前記ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させてケナフ溶液を準備するケナフ溶液準備工程と、
前記ケナフ溶液を含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行う電界紡糸工程とをこの順番で含むことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記電界紡糸工程より前に、前記ケナフ由来のポリマーとは異なる他のポリマーを溶媒に溶解させて他のポリマー溶液を準備する他のポリマー溶液準備工程をさらに含み、
前記電界紡糸工程は、前記電界紡糸溶液として、前記ケナフ溶液及び前記他のポリマー溶液を混合した混合溶液を用いて電界紡糸を行う工程であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記他のポリマーは、ポリビニルアルコールを含むことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記混合溶液において、前記ケナフ由来のポリマーと、前記他のポリマーとの重量比が、1:99〜1:1の範囲内にあることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法であって、
前記ケナフ溶液準備工程は、ケナフに可溶化処理を施して前記ケナフ由来のポリマーを得た後、前記ケナフ由来のポリマーを溶媒に溶解させる工程であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記可溶化処理は、カルボキシメチル化処理であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項7】
ケナフを原料とするケナフ由来のポリマーを少なくとも含み、
前記ケナフ由来のポリマーを含む電界紡糸溶液を用いて電界紡糸を行うことにより製造されたものであることを特徴とするナノ繊維。
【請求項8】
請求項7に記載のナノ繊維において、
前記ケナフ由来のポリマーの他に、ケナフ以外を原料とする他のポリマーをさらに含むことを特徴とするナノ繊維。
【請求項9】
請求項8に記載のナノ繊維において、
前記他のポリマーは、ポリビニルアルコールを含むことを特徴とするナノ繊維。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のナノ繊維において、
前記ケナフ由来のポリマーと、前記他のポリマーとの重量比が、1:99〜1:1の範囲内にあることを特徴とするナノ繊維。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載のナノ繊維において、
前記ケナフ由来のポリマーは、前記ケナフにカルボキシメチル化処理を施すことにより得られるものであることを特徴とするナノ繊維。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のナノ繊維を含むことを特徴とする不織布。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれかに記載のナノ繊維を含むことを特徴とするセパレーター。
【請求項14】
請求項7〜11のいずれかに記載のナノ繊維を含むことを特徴とする糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−44063(P2013−44063A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182068(P2011−182068)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】