ナノ繊維の製造方法、ナノ繊維の製造装置及び「ナノ繊維からなる糸」の製造方法
【課題】極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を形成する第1工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより高分子材料を延伸してナノ繊維を製造する第2工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維を回収する第3工程とをこの順序で含むナノ繊維の製造方法。
【解決手段】互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を形成する第1工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより高分子材料を延伸してナノ繊維を製造する第2工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維を回収する第3工程とをこの順序で含むナノ繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ繊維の製造方法、ナノ繊維の製造装置及び「ナノ繊維からなる糸」の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノ繊維の製造方法として、溶融紡糸法(メルトブロウン紡糸法)を用いたナノ繊維の製造方法(例えば、特許文献1参照。)及び電界紡糸法(エレクトロスピニング紡糸法)を用いたナノ繊維の製造方法(例えば、特許文献2〜4参照。)が知られている。溶融紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法は、細いノズルから溶融したポリマーを高温気流とともに吐出させることによりナノ繊維を製造するというものである。また、電界紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法は、ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態でポリマー溶液をノズルから吐出させることによりナノ繊維を製造するというものである。
【0003】
このため、これらのナノ繊維の製造方法によれば、平均直径が1000nm程度又はそれ以下の平均直径を有する極細のナノ繊維を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6114017号明細書
【特許文献2】米国特許第6673136号明細書
【特許文献3】国際公開第WO2009/153051号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO2009/034765号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶融紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法においては、細いノズルから溶融したポリマーを高温気流とともに吐出させるための大がかりな機構が必要であるという問題があった。また、電界紡糸法によるナノ繊維の製造方法においては、ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態でポリマー溶液をノズルから吐出させるための大がかりな機構が必要であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造方法及びナノ繊維の製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく「ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能な「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のナノ繊維の製造方法は、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を形成する第1工程と、前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する第2工程と、前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収する第3工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0008】
このため、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、後述する実施例からも明らかなように、間に粘弾性体が挟持された状態の2つの試料付着板を急激に引き離すだけの極めて簡単な方法で、平均直径が1000nm以下の極細のナノ繊維を製造することができる。その結果、本発明のナノ繊維の製造方法は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0009】
また、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、試料付着板を引き離す方向に粘弾性体が延伸されてナノ繊維が製造される結果、後述する実施例からも明らかなように、配向性及び結晶性が良く高強度のナノ繊維を製造することができる。
【0010】
[2]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程〜前記第3工程をこの順序で含む素工程を複数回繰り返すことが好ましい。
【0011】
このような方法とすることにより、極細のナノ繊維を高い生産性でもって製造することができる。
【0012】
[3]本発明のナノ繊維の製造方法においては、第1工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に予め形成しておいた粘弾性体供給孔を通して、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に前記粘弾性体を供給することにより行うことが好ましい。
【0013】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0014】
[4]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程を、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に、2つの試料付着板の外周部から前記粘弾性体を浸み込ませることにより行うことが好ましい。
【0015】
このような方法とすることによっても、2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0016】
[5]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程を、前記試料付着面を所定量離隔させた状態の前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に向けて、ノズルから前記粘弾性体を吐出した後、前記2つの試料付着面を近接させることにより行うことが好ましい。
【0017】
このような方法とすることによっても、2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0018】
[6]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程を、前記試料付着面を所定の温度に加熱した状態で行うことが好ましい。
【0019】
このような方法とすることにより、粘弾性体の粘度を低くすることができるため、より一層極細のナノ繊維を製造することが可能となる。
【0020】
また、粘弾性体として、高分子材料を含有する高分子材料溶液を用いた場合には、2つの試料付着板を急激に引き離して高分子材料を延伸する際に高分子材料溶液の溶媒が除去され、溶媒含有量の極めて少ない高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。また、ガラス転移温度よりも高い温度で高分子材料を延伸することが可能となるため高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。
【0021】
[7]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方をバネの伸長又は圧縮により移動させることにより行うことが好ましい。
【0022】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板を急激に引き離す動作を高速に行うことができる。バネには、機械式のスプリングバネの他、気圧バネ(エアシリンダ)、油圧バネなどを公的に用いることができる。
【0023】
[8]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を所定の手順に従ってモーターで移動させることにより行うことが好ましい。
【0024】
このような方法とすることによっても、2つの試料付着板を急激に引き離す動作を高速に、かつ、高精度に行うことができる。
【0025】
[9]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を、所定の手順に従ってモーターで移動させることにより、前記2つの試料付着面を0.01mm〜0.5mmの範囲内に近接させることが好ましい。
【0026】
このような方法とすることにより、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される粘弾性体の層厚を正確に制御することが可能となる。
ここで、試料付着面間隔規制用の突起の高さを0.01mm〜0.5mmの範囲内としたのは、以下の理由による。すなわち、試料付着面間隔規制用の突起の高さが0.5mmよりも高い場合には、粘弾性体の層厚が厚すぎて極細の高分子ナノ繊維を製造することが困難となる場合があるからである。一方、試料付着面間隔規制用の突起の高さが0.01mmよりも低い場合には、粘弾性体の層厚が薄すぎて極細の高分子ナノ繊維を高い生産性でもって製造することが困難となる場合があるからである。
【0027】
[10]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面には、高さが0.01mm〜0.5mmの範囲内にある試料付着面間隔規制用の突起が複数個形成されていることが好ましい。
【0028】
このような方法とすることによっても、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される粘弾性体の層厚を正確に制御することが可能となる。試料付着面間隔規制用の突起の高さを0.01mm〜0.5mmの範囲内としたのは、上記と同様の理由による。
【0029】
[11]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第3工程においては、前記ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板を、前記2つの試料付着板を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、前記ナノ繊維としてナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0030】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、ナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0031】
[12]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記ナノ繊維回収板は、粗面に形成された回収面を有することが好ましい。
【0032】
このような方法とすることにより、ナノ繊維をナノ繊維回収板から容易に分離できるようになる。
【0033】
[13]本発明のナノ繊維の製造方法においては、ナノ繊維を回収するに当たっては、吸引力により前記ナノ繊維を前記ナノ繊維回収板から分離することが好ましい。
【0034】
このような方法とすることによっても、ナノ繊維をナノ繊維回収板から容易に分離できるようになる。
【0035】
[14]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に沿って間欠的に又は連続的に移動するエンドレスベルト上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0036】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、ナノ繊維の延伸軸に沿って長尺のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0037】
[15]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に軸の周りに間欠的又は連続的に回転する回転ドラム上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に直交する方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0038】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、ナノ繊維の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0039】
[16]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記2つの試料付着板を少なくとも2組以上準備するとともに、これら少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」を各引き離し方向が交差するように配置しておき、前記第1工程〜前記3工程からなる素工程を、前記少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」について順次行うことにより、異なる延伸軸を有するナノ繊維層が順次積層された状態のシート状のナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0040】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、シート状のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0041】
[17]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記粘弾性体が、高分子材料を含有する高分子材料溶液又は高分子材料を溶融させた溶融高分子材料であることが好ましい。
【0042】
このような方法とすることにより、ナノ繊維として、高分子ナノ繊維を回収することが可能となる。
【0043】
この場合、電界紡糸法では単独では用いることができない溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いることができるため、電界紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法では製造することが容易でない種類のナノ繊維(例えばポリプロピレンからなるナノ繊維)を製造することも可能となる。
【0044】
[18]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記粘弾性体が、低分子材料を含有する低分子材料溶液又は低分子材料を溶融させた溶融低分子材料であることが好ましい。
【0045】
このような方法とすることにより、ナノ繊維として、高分子ナノ繊維を回収することが可能となる。
【0046】
[19]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記粘弾性体が、金属材料を溶融させた溶融金属材料であることが好ましい。
【0047】
このような方法とすることにより、ナノ繊維として、金属ナノ繊維を回収することが可能となる。
【0048】
[20]本発明のナノ繊維の製造装置は、本発明のナノ繊維の製造方法を実施するためのナノ繊維の製造装置であって、基台と、前記基台上に設置され、互いに対向する試料付着面を有する2つの試料付着板と、前記2つの試料付着板の間に粘弾性体を供給する粘弾性体供給装置と、前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する試料付着板引き離し装置と、前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収するナノ繊維回収装置とを備えることを特徴とする。
【0049】
このため、本発明のナノ繊維の製造装置によれば、本発明のナノ繊維の製造方法を実施することが可能となるため、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造装置となる。
【0050】
また、本発明のナノ繊維の製造装置によれば、本発明のナノ繊維の製造方法を実施することが可能となるため、配向性及び結晶性が良く高強度のナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造装置となる。
【0051】
[21]本発明の「ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、本発明のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を撚り糸装置内に通過させて前記ナノ繊維から「ナノ繊維からなる糸」を製造することを特徴とする
【0052】
このような方法とすることにより、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【0053】
[22]本発明の「ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、本発明のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を用いて「ナノ繊維からなる糸」を製造する「ナノ繊維からなる糸」の製造方法であって、前記第3工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を前記試料付着面に垂直な軸周りに回転することにより撚糸された状態となった「ナノ繊維からなる糸」を回収することを特徴とする。
【0054】
このような方法とすることによっても、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のナノ繊維の製造方法の原理を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係る高分子ナノ繊維の製造装置100を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1における第1試料付着板120を説明するために示す図である。
【図4】実施形態1における第2試料付着板130を説明するために示す図である。
【図5】実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図6】実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図7】変形例1における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。
【図8】変形例2における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。
【図9】変形例3における試料付着板136を説明するために示す図である。
【図10】変形例4における第2試料付着板130の動作を説明するために示す図である。
【図11】実施形態2に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図12】実施形態2に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図13】実施形態3に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図14】実施形態4に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図15】実施形態4に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図16】実施形態5に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図17】実施例1において製造されたナノ繊維の光学顕微鏡写真である。
【図18】実施例1において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
【図19】実施例1において製造されたナノ繊維のX線回折チャートである。
【図20】実施例2において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
【図21】実施例2において製造された「ナノ繊維からなる糸」の走査型電子顕微鏡写真である。
【図22】実施例3において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明のナノ繊維の製造方法、ナノ繊維の製造装置及び「ナノ繊維からなる糸」の製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0057】
本発明のナノ繊維の製造方法の原理をまず説明する。図1は、本発明のナノ繊維の製造方法の原理を説明するために示す図である。図1(a)は親指と人差し指を用いてナノ繊維10を製造する様子を示す図であり、図2(a)は2つのシャーレを用いてナノ繊維10を製造する様子を示す図である。
【0058】
図1から分かるように、本発明のナノ繊維の製造方法は、指やシャーレなどの2つの試料付着板の間に、高分子材料を含有する高分子材料溶液などの粘弾性体が挟持された状態を形成し、その後、この状態から指やシャーレなどの2つの試料付着板を急激に引き離すことにより粘弾性体を延伸してナノ繊維10を製造するというものである。
【0059】
従って、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、後述する実施例からも明らかなように、間に粘弾性体が挟持された状態の2つの試料付着板を急激に引き離すだけの極めて簡単な方法で、平均直径が1000nm以下の極細のナノ繊維10を製造することができる。その結果、本発明のナノ繊維の製造方法は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維10を製造することが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0060】
[実施形態1]
1.ナノ繊維の製造装置100の構成
まず、実施形態1に係るナノ繊維の製造装置100の構成について、図2〜図4を用いて説明する。
【0061】
図2は、実施形態1に係るナノ繊維の製造装置100を説明するために示す図である。図2(a)はナノ繊維の製造装置100の正面図であり、図2(b)はナノ繊維の製造装置100の上面図であり、図2(c)は図2(b)のA1−A1断面図である。なお、図2(a)においては、ナノ繊維回収装置160及びナノ繊維回収トレイ170の図示は省略している。
【0062】
図3は、実施形態1における第1試料付着板120を説明するために示す図である。図3(a)は第1試料付着板120の側面図であり、図3(b)は第1試料付着板120の正面図である。
図4は、実施形態1における第2試料付着板130を説明するために示す図である。図4(a)は第2試料付着板130の正面図であり、図4(b)は第2試料付着板130の側面図である。
【0063】
実施形態1に係るナノ繊維の製造装置100は、図2に示すように、基台110と、基台110上に設置され、互いに対向する試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を有する2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に粘弾性体を供給する粘弾性体供給装置150と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより粘弾性体を延伸してナノ繊維10を製造するコイルバネ142と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を回収するナノ繊維回収装置160及びナノ繊維回収トレイ170とを備える。
【0064】
第1試料付着板120は、図2に示すように、基台110上に第1基台114を介して固定されている。また、第1試料付着板120は、図3に示すように、第2試料付着板130と対向する面に第1試料付着面122を有する。また、第1試料付着板120は、図3に示すように、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に粘弾性体を供給するための粘弾性体供給孔126を有する。また、第1試料付着板120の背面には、図3に示すように、第1試料付着面122を所定の温度に加熱するためのヒーター124が設置されている。
【0065】
第2試料付着板130は、図2に示すように、基台110上に第2基台112を介して固定された外筒部材140の内部を図1(a)中左右方向に沿って移動可能な内筒部材136の先端部(図2(a)では左端部)に設けられている。内筒部材136の内部にはコイルバネ142が挿入され、コイルバネ142の先端部は内筒部材136の先端部裏側に固定されており、コイルバネ142の後端部は外筒部材140に固定されている。内筒部材136は、図示しないモーターにより図2中、左右方向に沿って移動可能である。第2試料付着板130は、図4に示すように、第1試料付着板120と対向する面に第2試料付着面132を有する。また、第2試料付着板130の背面には、図4に示すように、第2試料付着面132を所定の温度に加熱するためのヒーター134が設置されている。
【0066】
粘弾性体供給装置150は、粘弾性体を貯蔵する原料タンク151と、一端側が原料タンク151に接続された接続ライン152と、接続ライン152中に設置された電磁バルブ154とを備える。接続ライン152の他端側は、第1試料付着板120の粘弾性体供給孔126に接続されている。
【0067】
ナノ繊維回収装置160は、ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板168と、ナノ繊維回収板168を2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に垂直な方向に動かす駆動機構(モーター162、アーム164及び支持部166)とを備える。
【0068】
2.ナノ繊維の製造方法
図5及び図6は、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。図5(a)〜図5(d)及び図6(a)〜図6(d)は各工程図である。なお、図5(a)〜図5(d)及び図6(a)は図2(a)に対応する図であり、図6(b)〜図6(d)は図2(c)に対応する図である。
【0069】
実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、粘弾性体として、高分子材料を含有する高分子材料溶液を用いる。実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、図5及び図6に示すように、互いに対向する試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に、粘弾性体としての高分子材料溶液が挟持された状態を形成する第1工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより高分子材料を延伸してナノ繊維10を製造する第2工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を回収する第3工程とをこの順序で含む素工程を複数回繰り返すナノ繊維の製造方法である。
【0070】
(1)第1工程
第1工程は、互いに対向する試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に、高分子材料溶液が挟持された状態を形成する工程である(図5(a)〜図5(d)参照。)。
【0071】
第1工程は、第1試料付着板120の試料付着面122に予め形成しておいた粘弾性体供給孔126を通して、試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液を供給することにより行う。
【0072】
高分子材料溶液の供給は、電磁バルブ154の開閉により行うことができる。原料タンク150と電磁バルブ154との間の経路に高分子材料溶液に加圧力を加える加圧装置を配設することもできる。
【0073】
高分子材料としては、特に限定されるものではなく、溶媒に可溶なポリマーであれば何でも用いることができる。高分子材料溶液の濃度としても、特に限定されるものではないが、例えば、1重量%〜20重量%を例示することができる。高分子材料溶液の粘度としても、特に限定されるものではない。
【0074】
第1工程は、試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液を供給した後、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間隔が変化する方向に2つの試料付着板を振動させたり、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の少なくとも一方を軸周りの周方向に沿って振動させたりすることにより、高分子材料溶液をなじませることがより好ましい。
【0075】
コイルバネ142の圧縮応力又は伸長応力に抗して第2試料付着板130(及び内筒部材136)を左右方向に動かすのは、上記したモーターにより行う。
【0076】
第1工程は、ヒーター124,134の加熱により、試料付着面122,132を所定の温度(例えば30℃〜100℃)に加熱した状態で行う。なお、粘弾性体として溶融高分子材料を用いる場合には、第1工程は、例えば100℃〜300℃に加熱した状態で行う。
【0077】
(2)第2工程
第2工程は、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより高分子材料を延伸してナノ繊維10を製造する工程である(図5(d)〜図6(a)参照。)。
【0078】
第2工程は、第2試料付着板130(及び内筒部材136)に固定された伸縮自在のコイルバネ142の圧縮により行う。第2試料付着板130(及び内筒部材136)は、図示しない留め金機構により図2(a)における左右方向の動きを規制することができる。留め金機構をはずすことによりコイルバネ142の働きにより第2試料付着板130が勢いよく図2(a)における右方向に動くこととなる。
【0079】
2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離す速度や加速減速の程度は、用いる高分子材料溶液の種類や粘度に依存するが、製造される高分子ナノ繊維の直径を計測しながら、最適な値を決定すればよい。
【0080】
(3)第3工程
第3工程は、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を回収する工程である(図6(b)〜図6(d)参照。)。
【0081】
第3工程においては、ナノ繊維10を回収するためのナノ繊維回収板168を、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、高分子ナノ繊維として高分子ナノ繊維の集合体12を回収することにより行う。
【0082】
以上の工程を実施することにより、ナノ繊維10を製造するとともに、製造されたナノ繊維10をナノ繊維の集合体12として回収することができる。
【0083】
3.ナノ繊維の製造方法等の効果
以上説明した実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、間に高分子材料溶液が挟持された状態の2つの試料付着板を急激に引き離すだけの極めて簡単な方法で、平均直径が1000nm以下の極細のナノ繊維を製造することができる。その結果、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0084】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、試料付着板を引き離す方向に高分子材料が延伸されてナノ繊維が製造される結果、配向性及び結晶性が良く高強度のナノ繊維を製造することができる。
【0085】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、電界紡糸法では単独では用いることができない溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いることができるため、電界紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法では製造することが容易ではない種類の高分子ナノ繊維(例えばポリプロピレンからなる高分子ナノ繊維)を製造することも可能となる。
【0086】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第1工程〜第3工程をこの順序で含む素工程を複数回繰り返すこととしているため、極細のナノ繊維を高い生産性でもって製造することができる。
【0087】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第1工程を、第1試料付着面122に予め形成しておいた粘弾性体供給孔126を通して、試料付着面122,132を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液を供給することにより行うこととしているため、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0088】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第1工程を、第1試料付着面122及び第2試料付着面132を所定の温度に加熱した状態で行うこととしてるため、高分子材料の温度を高くすることができるようになり、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離して高分子材料を延伸する際に高分子材料溶液の溶媒が除去され、溶媒含有量の極めて少ない高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。また、ガラス転移温度よりも高い温度で高分子材料を延伸することが可能となるため、高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。
【0089】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第2工程を、第2試料付着板130に設けられたコイルバネの伸長により行うこととしているため、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離す動作を高速に行うことができる。
【0090】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第3工程においては、ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板168を、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、ナノ繊維としてナノ繊維の集合体12を回収することとしているため、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を、ナノ繊維の集合体12として回収することができる。
【0091】
[変形例1〜4]
実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、以下の変形例1〜4によっても実施可能である。図7は、変形例1における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。図8は、変形例2における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。図9は、変形例3における第2試料付着板136を説明するために示す図である。図10は、変形例4における第2試料付着板130の動作を説明するために示す図である。
【0092】
変形例1に係るナノ繊維の製造方法においては、図7に示すように、第1工程を、各試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に、接続ライン152の他端に接続されたノズル156を用いて、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の外周部から高分子材料溶液を浸み込ませることにより行うこととしている。このような方法とすることによっても、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0093】
変形例2に係るナノ繊維の製造方法においては、図8に示すように、第1工程を、各試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を所定量離隔させた状態の第2試料付着板130の試料付着面132に向けて、接続ライン152の他端に接続されたノズル158から高分子材料溶液を吐出した後、2つの試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させることにより行うこととしている。このような方法とすることによっても、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0094】
変形例3に係る高分子ナノ繊維の製造方法においては、図9に示すように、第2試料付着板として、高さが0.01mm〜0.5mmの範囲内にある試料付着面間隔規制用の突起139が試料付着面に複数個形成されている第2試料付着板138を用いてナノ繊維を製造することとしている。このような方法とすることにより、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される高分子材料溶液の層厚を正確に制御することが可能となる。
【0095】
変形例4に係る高分子ナノ繊維の製造方法においては、図10に示すように、所定の手順に従ってモーターで移動させることにより、2つの試料付着面を間隔d(d=0.01mm〜0.5mm)の範囲内に近接させることとしている。このような方法とすることにより、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される高分子材料溶液の層厚を正確に制御することが可能となる。
【0096】
[実施形態2]
図11は、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。図11(a)〜図11(c)はナノ繊維の製造装置102の要部を上方から見た各工程図であり、図11(d)は図11(c)のナノ繊維の製造装置102の要部を正面から見た図である。図12は、実施形態2に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【0097】
実施形態2に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、第3工程の内容が実施形態1に係る高分子ナノ繊維の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法においては、図11に示すように、第3工程を実施する毎に、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に沿って間欠的に又は連続的に移動するエンドレスベルト172上に、回収されたナノ繊維の集合体12を載置することとしている。このような方法とすることにより、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を、ナノ繊維10の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体14として回収することができる。なお、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法においては、規制部材174の働きにより、束ねられた状態の長尺のナノ繊維の集合体16を巻き取りドラム178に巻き取ることができる。なお、符号176は搬送用ローラーを示す。また、複数の規制部材を設けて、束ねられた状態の複数の長尺のナノ繊維の集合体16を巻き取りドラム178に巻き取ることもできる。
【0098】
従って、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法により製造された長尺のナノ繊維の集合体16を、図12に示すように、撚り糸装置200における主撚り糸装置180内に通過させることにより、当該集合体16から「ナノ繊維からなる糸18」を製造することが可能となる(実施形態2に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法)。このような方法とすることにより、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【0099】
[実施形態3]
図13は、実施形態3に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
実施形態3に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、第3工程の内容が実施形態1に係る高分子ナノ繊維の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係るナノ繊維の製造方法においては、図13に示すように、第3工程を実施する毎に、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に平行な軸の周りに間欠的又は連続的に回転する回転ドラム上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することとしている。このような方法とすることにより、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を、ナノ繊維10の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体20として回収することができる。なお、実施形態3に係るナノ繊維の製造方法においては、回転ドラム190、搬送用ローラー192及び巻き取りドラム194の働きにより、長尺のナノ繊維の集合体20を巻き取りドラム194に巻き取ることができる。
【0100】
[実施形態4]
図14〜図15は、実施形態4に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。図14(a)は実施形態4におけるナノ繊維の製造装置106の要部を上方から見た模式図であり、図14(b)は実施形態4におけるナノ繊維の製造装置106の要部を正面から見た模式図である。図15(a)〜図15(d)は各工程図であり、図15(e)は製造されるシート状のナノ繊維の集合体20を示す図である。なお、図15(a)及び図15(c)はナノ繊維の製造装置106の要部を上方から見た図であり、、図15(b)及び図15(d)はナノ繊維の製造装置106の要部を正面から見た図である。
【0101】
実施形態4に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、図14及び図15に示すように、2つの試料付着板を2組用いてナノ繊維を製造する点で、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法とは異なる。すなわち、実施形態4に係るナノ繊維の製造方法においては、2つの試料付着板(「第1試料付着板120a及び第2試料付着板130a」及び第1試料付着板120b及び第2試料付着板130b」)を2組準備するとともに(図14参照。)、これら2組の「2つの試料付着板」を各引き離し方向が直交するように配置しておき、第1工程〜3工程からなる素工程を、2組の「2つの試料付着板」について順次(交互に)行うことにより、異なる延伸軸を有するナノ繊維層が順次積層された状態のシート状のナノ繊維の集合体を回収することとしている(図15参照。)。このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、シート状のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0102】
[実施形態5]
図16は、実施形態5に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。図16(a)は第3工程実施前におけるナノ繊維を説明するために示す図であり、図16(b)は第3工程においてナノ繊維を回収する直前の「ナノ繊維からなる糸」を説明するために示す図である。
【0103】
実施形態5に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、第3工程の内容が実施形態1に係るナノ繊維の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図16に示すように、第3工程において、第2試料付着板130を第2試料付着面132に垂直な軸周りに回転することにより撚糸された状態となった「ナノ繊維からなる糸22」(図16(a)及び図16(b)参照。)を回収することとしている。このような方法とすることによっても、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【0104】
[実施例1]
実施例1においては、図1(a)に示す方法によって、手作業でナノ繊維を製造した。すなわち、適量の粘弾性体を親指と人差し指との間に落としなじませた後、親指と人差し指とを間隔を一気に拡げることにより、ナノ繊維を製造した。粘弾性体としては、エタノールに15重量%のポリ酢酸ビニル(重量平均分子量:500,000)を含有させた高分子材料溶液を用いた。
【0105】
その後、製造されたナノ繊維の光学顕微鏡写真及び走査型電子顕微鏡写真を撮影した。図17は、実施例1において製造されたナノ繊維の光学顕微鏡写真である。図18は、実施例1において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。図17及び図18に示すように、図1(a)に示す方法によって、ポリ酢酸ビニルからなる極細のナノ繊維を製造可能であることがわかった。
【0106】
その後、製造されたナノ繊維のX線回折測定を行った。図19は、実施例1において製造されたナノ繊維のX線回折チャートである。図19中、実線は実施例1において製造されたナノ繊維のX線回折データを示し、破線は別途電界紡糸法によって製造されたナノ繊維のX線回折データを示す。図19に示すように、実施例1において製造されたナノ繊維は、電界紡糸法によって製造されたナノ繊維よりも若干高い結晶性を有することがわかった。すなわち、実施例1において製造されたナノ繊維と電界紡糸法によって製造されたナノ繊維とを比較すると、主ピーク(2θ=12°)は両者ともほぼ同じ強度を有する反面、副ピーク(2θ=22°)は、実施例1において製造されたナノ繊維の方が大きい強度を有する。
【0107】
[実施例2]
実施例2においても、図1(a)に示す方法によって、手作業でナノ繊維を製造した。
すなわち、適量の粘弾性体を親指と人差し指との間に落としなじませた後、親指と人差し指とを間隔を一気に拡げることにより、ナノ繊維を製造した。粘弾性体としては、シクロヘキサンに5重量%のシンジオタクティックポリプロピレン(重量平均分子量:127,000)を含有させた高分子材料溶液を用いた。
【0108】
その後、製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。図20は、実施例2において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。図20に示すように、図1(a)に示す方法によって、シンジオタクティックポリプロピレンからなる極細のナノ繊維を製造可能であることがわかった。なお、シンジオタクティックポリプロピレンは、これを溶解させる溶媒として非極性溶媒を単独では用いることができないため、電界紡糸法によりシンジオタクティックポリプロピレンからなる高分子ナノ繊維を製造することは容易ではない。これに対して、実施例2によれば、このようなシンジオタクティックポリプロピレンからなる高分子ナノ繊維をも容易に製造することが可能である。
【0109】
その後、実施例2においては、製造された高分子ナノ繊維を撚り糸して、「ナノ繊維からなる糸」を製造した。図21は、実施例2において製造された「ナノ繊維からなる糸」の走査型電子顕微鏡写真である。図21に示すように、実施例2において、「ナノ繊維からなる糸」が製造可能であることがわかった。
【0110】
[実施例3]
実施例3においても、図1(a)に示す方法によって、手作業でナノ繊維を製造した。すなわち、適量の粘弾性体を親指と人差し指との間に落としなじませた後、親指と人差し指とを間隔を一気に拡げることにより、ナノ繊維を製造した。粘弾性体としては、アイソタクティックポリプロピレン(メルトフローレート:1,200)を溶融させた溶融高分子材料を用いた。
【0111】
その後、製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。図22は、実施例3において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。図22に示すように、図1(a)に示す方法によって、アイソタクティックポリプロピレンからなる極細のナノ繊維を製造可能であることがわかった。
【0112】
以上、本発明のナノ繊維の製造方法、ナノ繊維の製造装置及び「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0113】
(1)上記実施形態1においては、コイルバネの伸長により第2工程を行っているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コイルバネの圧縮により第2工程を行ってもよい。また、コイルバネに限られず、気圧バネや油圧バネの伸長又は圧縮により第2工程を行ってもよい。また、モーターにより第2工程を行ってもよい。
【0114】
(2)上記実施形態1においては、アームを回転させることにより弧を描くようにナノ繊維回収板を動かしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、直線的にナノ繊維回収板を動かしてもよい。
【0115】
(3)上記実施形態1においては、ナノ繊維の製造装置100を用いてナノ繊維を製造しているが、本発明はこれに限定されるものではない。他の構造のナノ繊維の製造装置を用いてナノ繊維を製造してもよい。
【0116】
(4)上記実施例1〜3においては、ポリ酢酸ビニル、シンジオタクティックポリプロピレン、アイソタクティックポリプロピレンからナノ繊維を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。各種ポリマーを用いることができる。
【0117】
(5)上記実施例1〜3においては、粘弾性体として、高分子材料からなる粘弾性体(実施例1及び2においては高分子材料溶液、実施例3においては溶融高分子材料)を用いてナノ繊維を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。高分子材料以外の粘弾性体、例えば、低分子材料からなる粘弾性体、溶融金属材料なども用いることができる。
【符号の説明】
【0118】
10…ナノ繊維、12…ナノ繊維の集合体、14,16,20…長尺のナノ繊維の集合体、18,22…ナノ繊維からなる糸、100,102,104,106,108…ナノ繊維の製造装置、110…基台、112…第1基台、114…第2基台、120…第1試料付着板、122…第1試料付着面、124…ヒーター、126…粘弾性体供給孔、130,138…第2試料付着板、132…第2試料付着面、134…ヒーター、136…内筒部材、139…試料付着面間隔規制用の突起、140…外筒部材、142…コイルバネ、144…モーター、150…原料タンク、152…接続ライン、154…電磁バルブ、160…ナノ繊維回収装置、162…モーター、164…アーム、166…支持部、168…ナノ繊維回収板、170…ナノ繊維回収トレイ、172…エンドレスベルト、174…規制部材、176,192…搬送用ローラー、178,194…巻き取りドラム、180…撚り糸装置、182,184…ローラー、190…回転ドラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ繊維の製造方法、ナノ繊維の製造装置及び「ナノ繊維からなる糸」の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノ繊維の製造方法として、溶融紡糸法(メルトブロウン紡糸法)を用いたナノ繊維の製造方法(例えば、特許文献1参照。)及び電界紡糸法(エレクトロスピニング紡糸法)を用いたナノ繊維の製造方法(例えば、特許文献2〜4参照。)が知られている。溶融紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法は、細いノズルから溶融したポリマーを高温気流とともに吐出させることによりナノ繊維を製造するというものである。また、電界紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法は、ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態でポリマー溶液をノズルから吐出させることによりナノ繊維を製造するというものである。
【0003】
このため、これらのナノ繊維の製造方法によれば、平均直径が1000nm程度又はそれ以下の平均直径を有する極細のナノ繊維を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6114017号明細書
【特許文献2】米国特許第6673136号明細書
【特許文献3】国際公開第WO2009/153051号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO2009/034765号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶融紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法においては、細いノズルから溶融したポリマーを高温気流とともに吐出させるための大がかりな機構が必要であるという問題があった。また、電界紡糸法によるナノ繊維の製造方法においては、ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態でポリマー溶液をノズルから吐出させるための大がかりな機構が必要であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造方法及びナノ繊維の製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく「ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能な「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のナノ繊維の製造方法は、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を形成する第1工程と、前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する第2工程と、前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収する第3工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0008】
このため、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、後述する実施例からも明らかなように、間に粘弾性体が挟持された状態の2つの試料付着板を急激に引き離すだけの極めて簡単な方法で、平均直径が1000nm以下の極細のナノ繊維を製造することができる。その結果、本発明のナノ繊維の製造方法は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0009】
また、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、試料付着板を引き離す方向に粘弾性体が延伸されてナノ繊維が製造される結果、後述する実施例からも明らかなように、配向性及び結晶性が良く高強度のナノ繊維を製造することができる。
【0010】
[2]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程〜前記第3工程をこの順序で含む素工程を複数回繰り返すことが好ましい。
【0011】
このような方法とすることにより、極細のナノ繊維を高い生産性でもって製造することができる。
【0012】
[3]本発明のナノ繊維の製造方法においては、第1工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に予め形成しておいた粘弾性体供給孔を通して、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に前記粘弾性体を供給することにより行うことが好ましい。
【0013】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0014】
[4]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程を、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に、2つの試料付着板の外周部から前記粘弾性体を浸み込ませることにより行うことが好ましい。
【0015】
このような方法とすることによっても、2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0016】
[5]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程を、前記試料付着面を所定量離隔させた状態の前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に向けて、ノズルから前記粘弾性体を吐出した後、前記2つの試料付着面を近接させることにより行うことが好ましい。
【0017】
このような方法とすることによっても、2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0018】
[6]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程を、前記試料付着面を所定の温度に加熱した状態で行うことが好ましい。
【0019】
このような方法とすることにより、粘弾性体の粘度を低くすることができるため、より一層極細のナノ繊維を製造することが可能となる。
【0020】
また、粘弾性体として、高分子材料を含有する高分子材料溶液を用いた場合には、2つの試料付着板を急激に引き離して高分子材料を延伸する際に高分子材料溶液の溶媒が除去され、溶媒含有量の極めて少ない高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。また、ガラス転移温度よりも高い温度で高分子材料を延伸することが可能となるため高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。
【0021】
[7]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方をバネの伸長又は圧縮により移動させることにより行うことが好ましい。
【0022】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板を急激に引き離す動作を高速に行うことができる。バネには、機械式のスプリングバネの他、気圧バネ(エアシリンダ)、油圧バネなどを公的に用いることができる。
【0023】
[8]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を所定の手順に従ってモーターで移動させることにより行うことが好ましい。
【0024】
このような方法とすることによっても、2つの試料付着板を急激に引き離す動作を高速に、かつ、高精度に行うことができる。
【0025】
[9]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第1工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を、所定の手順に従ってモーターで移動させることにより、前記2つの試料付着面を0.01mm〜0.5mmの範囲内に近接させることが好ましい。
【0026】
このような方法とすることにより、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される粘弾性体の層厚を正確に制御することが可能となる。
ここで、試料付着面間隔規制用の突起の高さを0.01mm〜0.5mmの範囲内としたのは、以下の理由による。すなわち、試料付着面間隔規制用の突起の高さが0.5mmよりも高い場合には、粘弾性体の層厚が厚すぎて極細の高分子ナノ繊維を製造することが困難となる場合があるからである。一方、試料付着面間隔規制用の突起の高さが0.01mmよりも低い場合には、粘弾性体の層厚が薄すぎて極細の高分子ナノ繊維を高い生産性でもって製造することが困難となる場合があるからである。
【0027】
[10]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面には、高さが0.01mm〜0.5mmの範囲内にある試料付着面間隔規制用の突起が複数個形成されていることが好ましい。
【0028】
このような方法とすることによっても、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される粘弾性体の層厚を正確に制御することが可能となる。試料付着面間隔規制用の突起の高さを0.01mm〜0.5mmの範囲内としたのは、上記と同様の理由による。
【0029】
[11]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第3工程においては、前記ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板を、前記2つの試料付着板を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、前記ナノ繊維としてナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0030】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、ナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0031】
[12]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記ナノ繊維回収板は、粗面に形成された回収面を有することが好ましい。
【0032】
このような方法とすることにより、ナノ繊維をナノ繊維回収板から容易に分離できるようになる。
【0033】
[13]本発明のナノ繊維の製造方法においては、ナノ繊維を回収するに当たっては、吸引力により前記ナノ繊維を前記ナノ繊維回収板から分離することが好ましい。
【0034】
このような方法とすることによっても、ナノ繊維をナノ繊維回収板から容易に分離できるようになる。
【0035】
[14]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に沿って間欠的に又は連続的に移動するエンドレスベルト上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0036】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、ナノ繊維の延伸軸に沿って長尺のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0037】
[15]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に軸の周りに間欠的又は連続的に回転する回転ドラム上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に直交する方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0038】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、ナノ繊維の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0039】
[16]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記2つの試料付着板を少なくとも2組以上準備するとともに、これら少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」を各引き離し方向が交差するように配置しておき、前記第1工程〜前記3工程からなる素工程を、前記少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」について順次行うことにより、異なる延伸軸を有するナノ繊維層が順次積層された状態のシート状のナノ繊維の集合体を回収することが好ましい。
【0040】
このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、シート状のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0041】
[17]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記粘弾性体が、高分子材料を含有する高分子材料溶液又は高分子材料を溶融させた溶融高分子材料であることが好ましい。
【0042】
このような方法とすることにより、ナノ繊維として、高分子ナノ繊維を回収することが可能となる。
【0043】
この場合、電界紡糸法では単独では用いることができない溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いることができるため、電界紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法では製造することが容易でない種類のナノ繊維(例えばポリプロピレンからなるナノ繊維)を製造することも可能となる。
【0044】
[18]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記粘弾性体が、低分子材料を含有する低分子材料溶液又は低分子材料を溶融させた溶融低分子材料であることが好ましい。
【0045】
このような方法とすることにより、ナノ繊維として、高分子ナノ繊維を回収することが可能となる。
【0046】
[19]本発明のナノ繊維の製造方法においては、前記粘弾性体が、金属材料を溶融させた溶融金属材料であることが好ましい。
【0047】
このような方法とすることにより、ナノ繊維として、金属ナノ繊維を回収することが可能となる。
【0048】
[20]本発明のナノ繊維の製造装置は、本発明のナノ繊維の製造方法を実施するためのナノ繊維の製造装置であって、基台と、前記基台上に設置され、互いに対向する試料付着面を有する2つの試料付着板と、前記2つの試料付着板の間に粘弾性体を供給する粘弾性体供給装置と、前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する試料付着板引き離し装置と、前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収するナノ繊維回収装置とを備えることを特徴とする。
【0049】
このため、本発明のナノ繊維の製造装置によれば、本発明のナノ繊維の製造方法を実施することが可能となるため、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造装置となる。
【0050】
また、本発明のナノ繊維の製造装置によれば、本発明のナノ繊維の製造方法を実施することが可能となるため、配向性及び結晶性が良く高強度のナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造装置となる。
【0051】
[21]本発明の「ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、本発明のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を撚り糸装置内に通過させて前記ナノ繊維から「ナノ繊維からなる糸」を製造することを特徴とする
【0052】
このような方法とすることにより、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【0053】
[22]本発明の「ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、本発明のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を用いて「ナノ繊維からなる糸」を製造する「ナノ繊維からなる糸」の製造方法であって、前記第3工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を前記試料付着面に垂直な軸周りに回転することにより撚糸された状態となった「ナノ繊維からなる糸」を回収することを特徴とする。
【0054】
このような方法とすることによっても、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のナノ繊維の製造方法の原理を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係る高分子ナノ繊維の製造装置100を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1における第1試料付着板120を説明するために示す図である。
【図4】実施形態1における第2試料付着板130を説明するために示す図である。
【図5】実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図6】実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図7】変形例1における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。
【図8】変形例2における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。
【図9】変形例3における試料付着板136を説明するために示す図である。
【図10】変形例4における第2試料付着板130の動作を説明するために示す図である。
【図11】実施形態2に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図12】実施形態2に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図13】実施形態3に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図14】実施形態4に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図15】実施形態4に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
【図16】実施形態5に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図17】実施例1において製造されたナノ繊維の光学顕微鏡写真である。
【図18】実施例1において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
【図19】実施例1において製造されたナノ繊維のX線回折チャートである。
【図20】実施例2において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
【図21】実施例2において製造された「ナノ繊維からなる糸」の走査型電子顕微鏡写真である。
【図22】実施例3において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明のナノ繊維の製造方法、ナノ繊維の製造装置及び「ナノ繊維からなる糸」の製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0057】
本発明のナノ繊維の製造方法の原理をまず説明する。図1は、本発明のナノ繊維の製造方法の原理を説明するために示す図である。図1(a)は親指と人差し指を用いてナノ繊維10を製造する様子を示す図であり、図2(a)は2つのシャーレを用いてナノ繊維10を製造する様子を示す図である。
【0058】
図1から分かるように、本発明のナノ繊維の製造方法は、指やシャーレなどの2つの試料付着板の間に、高分子材料を含有する高分子材料溶液などの粘弾性体が挟持された状態を形成し、その後、この状態から指やシャーレなどの2つの試料付着板を急激に引き離すことにより粘弾性体を延伸してナノ繊維10を製造するというものである。
【0059】
従って、本発明のナノ繊維の製造方法によれば、後述する実施例からも明らかなように、間に粘弾性体が挟持された状態の2つの試料付着板を急激に引き離すだけの極めて簡単な方法で、平均直径が1000nm以下の極細のナノ繊維10を製造することができる。その結果、本発明のナノ繊維の製造方法は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維10を製造することが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0060】
[実施形態1]
1.ナノ繊維の製造装置100の構成
まず、実施形態1に係るナノ繊維の製造装置100の構成について、図2〜図4を用いて説明する。
【0061】
図2は、実施形態1に係るナノ繊維の製造装置100を説明するために示す図である。図2(a)はナノ繊維の製造装置100の正面図であり、図2(b)はナノ繊維の製造装置100の上面図であり、図2(c)は図2(b)のA1−A1断面図である。なお、図2(a)においては、ナノ繊維回収装置160及びナノ繊維回収トレイ170の図示は省略している。
【0062】
図3は、実施形態1における第1試料付着板120を説明するために示す図である。図3(a)は第1試料付着板120の側面図であり、図3(b)は第1試料付着板120の正面図である。
図4は、実施形態1における第2試料付着板130を説明するために示す図である。図4(a)は第2試料付着板130の正面図であり、図4(b)は第2試料付着板130の側面図である。
【0063】
実施形態1に係るナノ繊維の製造装置100は、図2に示すように、基台110と、基台110上に設置され、互いに対向する試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を有する2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に粘弾性体を供給する粘弾性体供給装置150と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより粘弾性体を延伸してナノ繊維10を製造するコイルバネ142と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を回収するナノ繊維回収装置160及びナノ繊維回収トレイ170とを備える。
【0064】
第1試料付着板120は、図2に示すように、基台110上に第1基台114を介して固定されている。また、第1試料付着板120は、図3に示すように、第2試料付着板130と対向する面に第1試料付着面122を有する。また、第1試料付着板120は、図3に示すように、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に粘弾性体を供給するための粘弾性体供給孔126を有する。また、第1試料付着板120の背面には、図3に示すように、第1試料付着面122を所定の温度に加熱するためのヒーター124が設置されている。
【0065】
第2試料付着板130は、図2に示すように、基台110上に第2基台112を介して固定された外筒部材140の内部を図1(a)中左右方向に沿って移動可能な内筒部材136の先端部(図2(a)では左端部)に設けられている。内筒部材136の内部にはコイルバネ142が挿入され、コイルバネ142の先端部は内筒部材136の先端部裏側に固定されており、コイルバネ142の後端部は外筒部材140に固定されている。内筒部材136は、図示しないモーターにより図2中、左右方向に沿って移動可能である。第2試料付着板130は、図4に示すように、第1試料付着板120と対向する面に第2試料付着面132を有する。また、第2試料付着板130の背面には、図4に示すように、第2試料付着面132を所定の温度に加熱するためのヒーター134が設置されている。
【0066】
粘弾性体供給装置150は、粘弾性体を貯蔵する原料タンク151と、一端側が原料タンク151に接続された接続ライン152と、接続ライン152中に設置された電磁バルブ154とを備える。接続ライン152の他端側は、第1試料付着板120の粘弾性体供給孔126に接続されている。
【0067】
ナノ繊維回収装置160は、ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板168と、ナノ繊維回収板168を2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に垂直な方向に動かす駆動機構(モーター162、アーム164及び支持部166)とを備える。
【0068】
2.ナノ繊維の製造方法
図5及び図6は、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。図5(a)〜図5(d)及び図6(a)〜図6(d)は各工程図である。なお、図5(a)〜図5(d)及び図6(a)は図2(a)に対応する図であり、図6(b)〜図6(d)は図2(c)に対応する図である。
【0069】
実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、粘弾性体として、高分子材料を含有する高分子材料溶液を用いる。実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、図5及び図6に示すように、互いに対向する試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に、粘弾性体としての高分子材料溶液が挟持された状態を形成する第1工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより高分子材料を延伸してナノ繊維10を製造する第2工程と、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を回収する第3工程とをこの順序で含む素工程を複数回繰り返すナノ繊維の製造方法である。
【0070】
(1)第1工程
第1工程は、互いに対向する試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に、高分子材料溶液が挟持された状態を形成する工程である(図5(a)〜図5(d)参照。)。
【0071】
第1工程は、第1試料付着板120の試料付着面122に予め形成しておいた粘弾性体供給孔126を通して、試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液を供給することにより行う。
【0072】
高分子材料溶液の供給は、電磁バルブ154の開閉により行うことができる。原料タンク150と電磁バルブ154との間の経路に高分子材料溶液に加圧力を加える加圧装置を配設することもできる。
【0073】
高分子材料としては、特に限定されるものではなく、溶媒に可溶なポリマーであれば何でも用いることができる。高分子材料溶液の濃度としても、特に限定されるものではないが、例えば、1重量%〜20重量%を例示することができる。高分子材料溶液の粘度としても、特に限定されるものではない。
【0074】
第1工程は、試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液を供給した後、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間隔が変化する方向に2つの試料付着板を振動させたり、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の少なくとも一方を軸周りの周方向に沿って振動させたりすることにより、高分子材料溶液をなじませることがより好ましい。
【0075】
コイルバネ142の圧縮応力又は伸長応力に抗して第2試料付着板130(及び内筒部材136)を左右方向に動かすのは、上記したモーターにより行う。
【0076】
第1工程は、ヒーター124,134の加熱により、試料付着面122,132を所定の温度(例えば30℃〜100℃)に加熱した状態で行う。なお、粘弾性体として溶融高分子材料を用いる場合には、第1工程は、例えば100℃〜300℃に加熱した状態で行う。
【0077】
(2)第2工程
第2工程は、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離すことにより高分子材料を延伸してナノ繊維10を製造する工程である(図5(d)〜図6(a)参照。)。
【0078】
第2工程は、第2試料付着板130(及び内筒部材136)に固定された伸縮自在のコイルバネ142の圧縮により行う。第2試料付着板130(及び内筒部材136)は、図示しない留め金機構により図2(a)における左右方向の動きを規制することができる。留め金機構をはずすことによりコイルバネ142の働きにより第2試料付着板130が勢いよく図2(a)における右方向に動くこととなる。
【0079】
2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離す速度や加速減速の程度は、用いる高分子材料溶液の種類や粘度に依存するが、製造される高分子ナノ繊維の直径を計測しながら、最適な値を決定すればよい。
【0080】
(3)第3工程
第3工程は、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を回収する工程である(図6(b)〜図6(d)参照。)。
【0081】
第3工程においては、ナノ繊維10を回収するためのナノ繊維回収板168を、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、高分子ナノ繊維として高分子ナノ繊維の集合体12を回収することにより行う。
【0082】
以上の工程を実施することにより、ナノ繊維10を製造するとともに、製造されたナノ繊維10をナノ繊維の集合体12として回収することができる。
【0083】
3.ナノ繊維の製造方法等の効果
以上説明した実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、間に高分子材料溶液が挟持された状態の2つの試料付着板を急激に引き離すだけの極めて簡単な方法で、平均直径が1000nm以下の極細のナノ繊維を製造することができる。その結果、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなくナノ繊維を製造することが可能なナノ繊維の製造方法となる。
【0084】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、試料付着板を引き離す方向に高分子材料が延伸されてナノ繊維が製造される結果、配向性及び結晶性が良く高強度のナノ繊維を製造することができる。
【0085】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、電界紡糸法では単独では用いることができない溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いることができるため、電界紡糸法を用いたナノ繊維の製造方法では製造することが容易ではない種類の高分子ナノ繊維(例えばポリプロピレンからなる高分子ナノ繊維)を製造することも可能となる。
【0086】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第1工程〜第3工程をこの順序で含む素工程を複数回繰り返すこととしているため、極細のナノ繊維を高い生産性でもって製造することができる。
【0087】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第1工程を、第1試料付着面122に予め形成しておいた粘弾性体供給孔126を通して、試料付着面122,132を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液を供給することにより行うこととしているため、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0088】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第1工程を、第1試料付着面122及び第2試料付着面132を所定の温度に加熱した状態で行うこととしてるため、高分子材料の温度を高くすることができるようになり、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離して高分子材料を延伸する際に高分子材料溶液の溶媒が除去され、溶媒含有量の極めて少ない高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。また、ガラス転移温度よりも高い温度で高分子材料を延伸することが可能となるため、高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。
【0089】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第2工程を、第2試料付着板130に設けられたコイルバネの伸長により行うこととしているため、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を急激に引き離す動作を高速に行うことができる。
【0090】
また、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法によれば、第3工程においては、ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板168を、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、ナノ繊維としてナノ繊維の集合体12を回収することとしているため、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を、ナノ繊維の集合体12として回収することができる。
【0091】
[変形例1〜4]
実施形態1に係るナノ繊維の製造方法は、以下の変形例1〜4によっても実施可能である。図7は、変形例1における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。図8は、変形例2における粘弾性体供給装置を説明するために示す図である。図9は、変形例3における第2試料付着板136を説明するために示す図である。図10は、変形例4における第2試料付着板130の動作を説明するために示す図である。
【0092】
変形例1に係るナノ繊維の製造方法においては、図7に示すように、第1工程を、各試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させた状態の2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に、接続ライン152の他端に接続されたノズル156を用いて、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の外周部から高分子材料溶液を浸み込ませることにより行うこととしている。このような方法とすることによっても、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0093】
変形例2に係るナノ繊維の製造方法においては、図8に示すように、第1工程を、各試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を所定量離隔させた状態の第2試料付着板130の試料付着面132に向けて、接続ライン152の他端に接続されたノズル158から高分子材料溶液を吐出した後、2つの試料付着面(第1試料付着面122及び第2試料付着面132)を近接させることにより行うこととしている。このような方法とすることによっても、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間に高分子材料溶液が挟持された状態を比較的容易に形成することが可能となる。
【0094】
変形例3に係る高分子ナノ繊維の製造方法においては、図9に示すように、第2試料付着板として、高さが0.01mm〜0.5mmの範囲内にある試料付着面間隔規制用の突起139が試料付着面に複数個形成されている第2試料付着板138を用いてナノ繊維を製造することとしている。このような方法とすることにより、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される高分子材料溶液の層厚を正確に制御することが可能となる。
【0095】
変形例4に係る高分子ナノ繊維の製造方法においては、図10に示すように、所定の手順に従ってモーターで移動させることにより、2つの試料付着面を間隔d(d=0.01mm〜0.5mm)の範囲内に近接させることとしている。このような方法とすることにより、互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に挟持される高分子材料溶液の層厚を正確に制御することが可能となる。
【0096】
[実施形態2]
図11は、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。図11(a)〜図11(c)はナノ繊維の製造装置102の要部を上方から見た各工程図であり、図11(d)は図11(c)のナノ繊維の製造装置102の要部を正面から見た図である。図12は、実施形態2に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【0097】
実施形態2に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、第3工程の内容が実施形態1に係る高分子ナノ繊維の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法においては、図11に示すように、第3工程を実施する毎に、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に沿って間欠的に又は連続的に移動するエンドレスベルト172上に、回収されたナノ繊維の集合体12を載置することとしている。このような方法とすることにより、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を、ナノ繊維10の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体14として回収することができる。なお、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法においては、規制部材174の働きにより、束ねられた状態の長尺のナノ繊維の集合体16を巻き取りドラム178に巻き取ることができる。なお、符号176は搬送用ローラーを示す。また、複数の規制部材を設けて、束ねられた状態の複数の長尺のナノ繊維の集合体16を巻き取りドラム178に巻き取ることもできる。
【0098】
従って、実施形態2に係るナノ繊維の製造方法により製造された長尺のナノ繊維の集合体16を、図12に示すように、撚り糸装置200における主撚り糸装置180内に通過させることにより、当該集合体16から「ナノ繊維からなる糸18」を製造することが可能となる(実施形態2に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法)。このような方法とすることにより、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【0099】
[実施形態3]
図13は、実施形態3に係るナノ繊維の製造方法を説明するために示す図である。
実施形態3に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、第3工程の内容が実施形態1に係る高分子ナノ繊維の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係るナノ繊維の製造方法においては、図13に示すように、第3工程を実施する毎に、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)を引き離した方向に平行な軸の周りに間欠的又は連続的に回転する回転ドラム上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することとしている。このような方法とすることにより、2つの試料付着板(第1試料付着板120及び第2試料付着板130)の間で延伸された状態にあるナノ繊維10を、ナノ繊維10の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体20として回収することができる。なお、実施形態3に係るナノ繊維の製造方法においては、回転ドラム190、搬送用ローラー192及び巻き取りドラム194の働きにより、長尺のナノ繊維の集合体20を巻き取りドラム194に巻き取ることができる。
【0100】
[実施形態4]
図14〜図15は、実施形態4に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。図14(a)は実施形態4におけるナノ繊維の製造装置106の要部を上方から見た模式図であり、図14(b)は実施形態4におけるナノ繊維の製造装置106の要部を正面から見た模式図である。図15(a)〜図15(d)は各工程図であり、図15(e)は製造されるシート状のナノ繊維の集合体20を示す図である。なお、図15(a)及び図15(c)はナノ繊維の製造装置106の要部を上方から見た図であり、、図15(b)及び図15(d)はナノ繊維の製造装置106の要部を正面から見た図である。
【0101】
実施形態4に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、図14及び図15に示すように、2つの試料付着板を2組用いてナノ繊維を製造する点で、実施形態1に係るナノ繊維の製造方法とは異なる。すなわち、実施形態4に係るナノ繊維の製造方法においては、2つの試料付着板(「第1試料付着板120a及び第2試料付着板130a」及び第1試料付着板120b及び第2試料付着板130b」)を2組準備するとともに(図14参照。)、これら2組の「2つの試料付着板」を各引き離し方向が直交するように配置しておき、第1工程〜3工程からなる素工程を、2組の「2つの試料付着板」について順次(交互に)行うことにより、異なる延伸軸を有するナノ繊維層が順次積層された状態のシート状のナノ繊維の集合体を回収することとしている(図15参照。)。このような方法とすることにより、2つの試料付着板の間で延伸された状態にあるナノ繊維を、シート状のナノ繊維の集合体として回収することができる。
【0102】
[実施形態5]
図16は、実施形態5に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。図16(a)は第3工程実施前におけるナノ繊維を説明するために示す図であり、図16(b)は第3工程においてナノ繊維を回収する直前の「ナノ繊維からなる糸」を説明するために示す図である。
【0103】
実施形態5に係るナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態1に係るナノ繊維の製造方法と同様の工程を含むが、第3工程の内容が実施形態1に係るナノ繊維の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係る「ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図16に示すように、第3工程において、第2試料付着板130を第2試料付着面132に垂直な軸周りに回転することにより撚糸された状態となった「ナノ繊維からなる糸22」(図16(a)及び図16(b)参照。)を回収することとしている。このような方法とすることによっても、極めて簡単な工程で、かつ、大がかりな機構を必要とすることなく、配向性及び結晶性が良く高強度の「ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【0104】
[実施例1]
実施例1においては、図1(a)に示す方法によって、手作業でナノ繊維を製造した。すなわち、適量の粘弾性体を親指と人差し指との間に落としなじませた後、親指と人差し指とを間隔を一気に拡げることにより、ナノ繊維を製造した。粘弾性体としては、エタノールに15重量%のポリ酢酸ビニル(重量平均分子量:500,000)を含有させた高分子材料溶液を用いた。
【0105】
その後、製造されたナノ繊維の光学顕微鏡写真及び走査型電子顕微鏡写真を撮影した。図17は、実施例1において製造されたナノ繊維の光学顕微鏡写真である。図18は、実施例1において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。図17及び図18に示すように、図1(a)に示す方法によって、ポリ酢酸ビニルからなる極細のナノ繊維を製造可能であることがわかった。
【0106】
その後、製造されたナノ繊維のX線回折測定を行った。図19は、実施例1において製造されたナノ繊維のX線回折チャートである。図19中、実線は実施例1において製造されたナノ繊維のX線回折データを示し、破線は別途電界紡糸法によって製造されたナノ繊維のX線回折データを示す。図19に示すように、実施例1において製造されたナノ繊維は、電界紡糸法によって製造されたナノ繊維よりも若干高い結晶性を有することがわかった。すなわち、実施例1において製造されたナノ繊維と電界紡糸法によって製造されたナノ繊維とを比較すると、主ピーク(2θ=12°)は両者ともほぼ同じ強度を有する反面、副ピーク(2θ=22°)は、実施例1において製造されたナノ繊維の方が大きい強度を有する。
【0107】
[実施例2]
実施例2においても、図1(a)に示す方法によって、手作業でナノ繊維を製造した。
すなわち、適量の粘弾性体を親指と人差し指との間に落としなじませた後、親指と人差し指とを間隔を一気に拡げることにより、ナノ繊維を製造した。粘弾性体としては、シクロヘキサンに5重量%のシンジオタクティックポリプロピレン(重量平均分子量:127,000)を含有させた高分子材料溶液を用いた。
【0108】
その後、製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。図20は、実施例2において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。図20に示すように、図1(a)に示す方法によって、シンジオタクティックポリプロピレンからなる極細のナノ繊維を製造可能であることがわかった。なお、シンジオタクティックポリプロピレンは、これを溶解させる溶媒として非極性溶媒を単独では用いることができないため、電界紡糸法によりシンジオタクティックポリプロピレンからなる高分子ナノ繊維を製造することは容易ではない。これに対して、実施例2によれば、このようなシンジオタクティックポリプロピレンからなる高分子ナノ繊維をも容易に製造することが可能である。
【0109】
その後、実施例2においては、製造された高分子ナノ繊維を撚り糸して、「ナノ繊維からなる糸」を製造した。図21は、実施例2において製造された「ナノ繊維からなる糸」の走査型電子顕微鏡写真である。図21に示すように、実施例2において、「ナノ繊維からなる糸」が製造可能であることがわかった。
【0110】
[実施例3]
実施例3においても、図1(a)に示す方法によって、手作業でナノ繊維を製造した。すなわち、適量の粘弾性体を親指と人差し指との間に落としなじませた後、親指と人差し指とを間隔を一気に拡げることにより、ナノ繊維を製造した。粘弾性体としては、アイソタクティックポリプロピレン(メルトフローレート:1,200)を溶融させた溶融高分子材料を用いた。
【0111】
その後、製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。図22は、実施例3において製造されたナノ繊維の走査型電子顕微鏡写真である。図22に示すように、図1(a)に示す方法によって、アイソタクティックポリプロピレンからなる極細のナノ繊維を製造可能であることがわかった。
【0112】
以上、本発明のナノ繊維の製造方法、ナノ繊維の製造装置及び「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0113】
(1)上記実施形態1においては、コイルバネの伸長により第2工程を行っているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コイルバネの圧縮により第2工程を行ってもよい。また、コイルバネに限られず、気圧バネや油圧バネの伸長又は圧縮により第2工程を行ってもよい。また、モーターにより第2工程を行ってもよい。
【0114】
(2)上記実施形態1においては、アームを回転させることにより弧を描くようにナノ繊維回収板を動かしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、直線的にナノ繊維回収板を動かしてもよい。
【0115】
(3)上記実施形態1においては、ナノ繊維の製造装置100を用いてナノ繊維を製造しているが、本発明はこれに限定されるものではない。他の構造のナノ繊維の製造装置を用いてナノ繊維を製造してもよい。
【0116】
(4)上記実施例1〜3においては、ポリ酢酸ビニル、シンジオタクティックポリプロピレン、アイソタクティックポリプロピレンからナノ繊維を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。各種ポリマーを用いることができる。
【0117】
(5)上記実施例1〜3においては、粘弾性体として、高分子材料からなる粘弾性体(実施例1及び2においては高分子材料溶液、実施例3においては溶融高分子材料)を用いてナノ繊維を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。高分子材料以外の粘弾性体、例えば、低分子材料からなる粘弾性体、溶融金属材料なども用いることができる。
【符号の説明】
【0118】
10…ナノ繊維、12…ナノ繊維の集合体、14,16,20…長尺のナノ繊維の集合体、18,22…ナノ繊維からなる糸、100,102,104,106,108…ナノ繊維の製造装置、110…基台、112…第1基台、114…第2基台、120…第1試料付着板、122…第1試料付着面、124…ヒーター、126…粘弾性体供給孔、130,138…第2試料付着板、132…第2試料付着面、134…ヒーター、136…内筒部材、139…試料付着面間隔規制用の突起、140…外筒部材、142…コイルバネ、144…モーター、150…原料タンク、152…接続ライン、154…電磁バルブ、160…ナノ繊維回収装置、162…モーター、164…アーム、166…支持部、168…ナノ繊維回収板、170…ナノ繊維回収トレイ、172…エンドレスベルト、174…規制部材、176,192…搬送用ローラー、178,194…巻き取りドラム、180…撚り糸装置、182,184…ローラー、190…回転ドラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を形成する第1工程と、
前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する第2工程と、
前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収する第3工程とをこの順序で含むことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程〜前記第3工程をこの順序で含む素工程を複数回繰り返すことを特徴とするナノ繊維集合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナノ繊維の製造方法において、
第1工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に予め形成しておいた粘弾性体供給孔を通して、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に前記粘弾性体を供給することにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程を、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に、2つの試料付着板の外周部から前記粘弾性体を浸み込ませることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程を、前記試料付着面を所定量離隔させた状態の前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に向けて、ノズルから前記粘弾性体を吐出した後、前記2つの試料付着面を近接させることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程を、前記試料付着面を所定の温度に加熱した状態で行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方をバネの伸長又は圧縮により移動させることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を所定の手順に従ってモーターで移動させることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を、所定の手順に従ってモーターで移動させることにより、前記2つの試料付着面を0.01mm〜0.5mmの範囲内に近接させることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面には、高さが0.01mm〜0.5mmの範囲内にある試料付着面間隔規制用の突起が複数個形成されていることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項11】
請求項2に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第3工程を実施する毎に、前記ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板を、前記2つの試料付着板を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記ナノ繊維回収板は、粗面に形成された回収面を有することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のナノ繊維の製造方法において、
ナノ繊維を回収するに当たっては、吸引力により前記ナノ繊維を前記ナノ繊維回収板から分離することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に沿って間欠的に又は連続的に移動するエンドレスベルト上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に軸の周りに間欠的又は連続的に回転する回転ドラム上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記2つの試料付着板を少なくとも2組以上準備するとともに、これら少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」を各引き離し方向が交差するように配置しておき、
前記第1工程〜前記3工程からなる素工程を、前記少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」について順次行うことにより、異なる延伸軸を有するナノ繊維層が順次積層された状態のシート状のナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記粘弾性体が、高分子材料を含有する高分子材料溶液又は高分子材料を溶融させた溶融高分子材料であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記粘弾性体が、低分子材料を含有する低分子材料溶液又は低分子材料を溶融させた溶融低分子材料であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記粘弾性体が、金属材料を溶融させた溶融金属材料であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法を実施するためのナノ繊維の製造装置であって、
基台と、
前記基台上に設置され、互いに対向する試料付着面を有する2つの試料付着板と、
前記2つの試料付着板の間に粘弾性体を供給する粘弾性体供給装置と、
前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する試料付着板引き離し装置と、
前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収するナノ繊維回収装置とを備えることを特徴とするナノ繊維の製造装置。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を撚り糸装置内に通過させて前記ナノ繊維から「ナノ繊維からなる糸」を製造することを特徴とする「ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を用いて「ナノ繊維からなる糸」を製造する「ナノ繊維からなる糸」の製造方法であって、
前記第3工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を前記試料付着面に垂直な軸周りに回転することにより撚糸された状態となった「ナノ繊維からなる糸」を回収することを特徴とする「ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項1】
互いに対向する試料付着面を近接させた状態の2つの試料付着板の間に粘弾性体が挟持された状態を形成する第1工程と、
前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する第2工程と、
前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収する第3工程とをこの順序で含むことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程〜前記第3工程をこの順序で含む素工程を複数回繰り返すことを特徴とするナノ繊維集合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナノ繊維の製造方法において、
第1工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に予め形成しておいた粘弾性体供給孔を通して、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に前記粘弾性体を供給することにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程を、前記試料付着面を近接させた状態の前記2つの試料付着板の間に、2つの試料付着板の外周部から前記粘弾性体を浸み込ませることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程を、前記試料付着面を所定量離隔させた状態の前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面に向けて、ノズルから前記粘弾性体を吐出した後、前記2つの試料付着面を近接させることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程を、前記試料付着面を所定の温度に加熱した状態で行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方をバネの伸長又は圧縮により移動させることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第2工程を、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を所定の手順に従ってモーターで移動させることにより行うことを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を、所定の手順に従ってモーターで移動させることにより、前記2つの試料付着面を0.01mm〜0.5mmの範囲内に近接させることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記試料付着板のうち少なくとも一方の試料付着面には、高さが0.01mm〜0.5mmの範囲内にある試料付着面間隔規制用の突起が複数個形成されていることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項11】
請求項2に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第3工程を実施する毎に、前記ナノ繊維を回収するためのナノ繊維回収板を、前記2つの試料付着板を引き離した方向に垂直な方向に動かすことにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記ナノ繊維回収板は、粗面に形成された回収面を有することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のナノ繊維の製造方法において、
ナノ繊維を回収するに当たっては、吸引力により前記ナノ繊維を前記ナノ繊維回収板から分離することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に沿って間欠的に又は連続的に移動するエンドレスベルト上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記第3工程を実施する毎に、前記2つの試料付着板を引き離した方向に軸の周りに間欠的又は連続的に回転する回転ドラム上に、回収されたナノ繊維の集合体を載置することにより、前記ナノ繊維として、ナノ繊維の延伸軸に垂直な方向に沿って長尺のナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載のナノ繊維の製造方法において、
前記2つの試料付着板を少なくとも2組以上準備するとともに、これら少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」を各引き離し方向が交差するように配置しておき、
前記第1工程〜前記3工程からなる素工程を、前記少なくとも2組以上の「2つの試料付着板」について順次行うことにより、異なる延伸軸を有するナノ繊維層が順次積層された状態のシート状のナノ繊維の集合体を回収することを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記粘弾性体が、高分子材料を含有する高分子材料溶液又は高分子材料を溶融させた溶融高分子材料であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記粘弾性体が、低分子材料を含有する低分子材料溶液又は低分子材料を溶融させた溶融低分子材料であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法において、
前記粘弾性体が、金属材料を溶融させた溶融金属材料であることを特徴とするナノ繊維の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法を実施するためのナノ繊維の製造装置であって、
基台と、
前記基台上に設置され、互いに対向する試料付着面を有する2つの試料付着板と、
前記2つの試料付着板の間に粘弾性体を供給する粘弾性体供給装置と、
前記2つの試料付着板を急激に引き離すことにより前記粘弾性体を延伸してナノ繊維を製造する試料付着板引き離し装置と、
前記2つの試料付着板の間で延伸された状態にある前記ナノ繊維を回収するナノ繊維回収装置とを備えることを特徴とするナノ繊維の製造装置。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を撚り糸装置内に通過させて前記ナノ繊維から「ナノ繊維からなる糸」を製造することを特徴とする「ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれかに記載のナノ繊維の製造方法により製造されたナノ繊維を用いて「ナノ繊維からなる糸」を製造する「ナノ繊維からなる糸」の製造方法であって、
前記第3工程においては、前記2つの試料付着板のうち少なくとも一方を前記試料付着面に垂直な軸周りに回転することにより撚糸された状態となった「ナノ繊維からなる糸」を回収することを特徴とする「ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図1】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図1】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−214174(P2011−214174A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81385(P2010−81385)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成21年度、文部科学省、科学技術総合研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成21年度、文部科学省、科学技術総合研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】
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