説明

ナノ繊維製造装置

【課題】上向きノズルの吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら電界紡糸する場合であっても、ポリマー固化物がナノ繊維に付着してナノ繊維の品質を低下させてしまうという問題を解決可能なナノ繊維製造装置を提供する。
【解決手段】複数の上向きノズル126、ポリマー溶液供給経路114及びポリマー溶液回収経路120を有するノズルブロック110と、コレクター150と、電源装置とを備え、ポリマー溶液をオーバーフローさせながら複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するとともに、オーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することを可能としたナノ繊維製造装置であって、ノズル先端部132は、円筒を当該円筒の軸と斜めに交わる平面に沿って切断した形状を有することを特徴とするナノ繊維製造装置。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、ナノ繊維製造装置に関する。なお、本発明において、「ナノ繊維」とは、ポリマー材料からなり、平均直径が数nm〜数千nmの繊維のことをいう。また、「ポリマー溶液」とは、ポリマーを溶媒に溶解させた溶液のことをいう。
【0002】
複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することを可能としたナノ繊維製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。図5は、従来のナノ繊維製造装置900を説明するために示す図である。図5(a)はナノ繊維製造装置900の正面図であり、図5(b)は上向きノズル912周辺の斜視図であり、図5(c)はノズル先端部913の正面図である。
【0003】
従来のナノ繊維製造装置900は、図5(a)及び図5(b)に示すように、ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する複数の上向きノズル912、当該複数の上向きノズル912にポリマー溶液を供給するポリマー溶液供給経路914及び上向きノズル912の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収するポリマー溶液回収経路916を有するノズルブロック910と、ノズルブロック910よりも上方に配置されたコレクター920と、複数の上向きノズル912とコレクター920との間に高電圧を印加する電源装置930と、ナノ繊維の原料となるポリマー溶液を貯蔵するタンク940と、タンク940に貯蔵されたポリマー溶液をノズルブロック910のポリマー溶液供給経路914に供給する計量ポンプ950と、複数の上向きノズル912の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してタンク940に戻す回収ポンプ960とを備える。
【0004】
上向きノズル912の先端部であるノズル先端部913は、図5(b)及び図5(c)に示すように、先端が広がった円筒状の形状からなる。
【0005】
従来のナノ繊維製造装置900によれば、複数の上向きノズル912の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するため、従来の下向きノズルを用いたナノ繊維製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象(下向きノズルから紡糸されなかったポリマー溶液の塊がそのまま長尺シートに付着する現象)が発生することがなく、高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。
また、従来のナノ繊維製造装置900によれば、複数の上向きノズル912の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながらナノ繊維を電界紡糸するため、常に十分な量のポリマー溶液が上向きノズルに供給され、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
また、従来のナノ繊維製造装置900によれば、複数の上向きノズル912の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することが可能であるため、原料の使用料を減らすことが可能となる結果、安価な製造コストでナノ繊維を製造することが可能となる。また、このことは省資源化の流れにも沿うものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4414458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明の発明者の研究の結果、従来のナノ繊維製造装置においては、上向きノズルの吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら電界紡糸する過程でポリマー溶液から溶媒が揮発することに起因して上向きノズルの吐出口の近傍においてポリマー固化物が生成し、当該ポリマー固化物が「製品となるナノ繊維」に付着してナノ繊維の品質を低下させてしまう場合があるという問題があることがわかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、上向きノズルの吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら電界紡糸する場合であっても、ポリマー固化物がナノ繊維に付着してナノ繊維の品質を低下させてしまうという問題を解決可能なナノ繊維製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明のナノ繊維製造装置は、ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する複数の上向きノズル、当該複数の上向きノズルに前記ポリマー溶液を供給するポリマー溶液供給経路及び前記複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローした前記ポリマー溶液を回収するポリマー溶液回収経路を有するノズルブロックと、前記ノズルブロックよりも上方に配置されたコレクターと、前記複数の上向きノズルと前記コレクターとの間に高電圧を印加する電源装置とを備え、前記複数の上向きノズルの吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら前記複数の上向きノズルの吐出口から前記ポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するとともに、前記複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローした前記ポリマー溶液を回収して前記ナノ繊維の原料として再利用することを可能としたナノ繊維製造装置であって、前記上向きノズルの先端部(以下、ノズル先端部という。)は、円筒を当該円筒の軸と斜めに交わる平面に沿って切断した形状を有することを特徴とする。
【0010】
本発明のナノ繊維製造装置によれば、従来のナノ繊維製造装置の場合と同様に、複数の上向きノズルの吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するため、従来の下向きノズルを用いたナノ繊維製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象が発生することがなく、高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。
また、本発明のナノ繊維製造装置によれば、従来のナノ繊維製造装置の場合と同様に、複数の上向きノズルの吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながらナノ繊維を電界紡糸するため、常に十分な量のポリマー溶液が上向きノズルに供給され、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
また、本発明のナノ繊維製造装置によれば、従来のナノ繊維製造装置の場合と同様に、複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することが可能であるため、原料の使用料を減らすことが可能となる結果、安価な製造コストでナノ繊維を製造することが可能となる。また、このことは省資源化の流れにも沿うものとなる。
【0011】
また、本発明のナノ繊維製造装置によれば、ノズル先端部が、円筒を当該円筒の軸と斜めに交わる平面に沿って切断した形状を有するため、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液が、ノズル先端部の部分で滞留することなく速やかに流れ落ちるようになる。このため、電界紡糸する過程でポリマー溶液から溶媒が揮発する量を極めて少なくするとともに、上向きノズルの吐出口の近傍において生成するポリマー固化物の量を極めて少なくすることが可能となる。その結果、本発明のナノ繊維製造装置によれば、上向きノズルの吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら電界紡糸する場合であっても、ポリマー固化物がナノ繊維に付着してナノ繊維の品質を低下させてしまうという問題を解決することが可能となる。
【0012】
[2]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記円筒の軸と、前記平面とのなす角度は、15°〜60°の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
円筒の軸と平面とのなす角度を15°〜60°の範囲内にしたのは、当該角度が60°以下である場合には、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液がノズル先端部の部分で滞留することなくより一層速やかに流れ落ちるようになるからであり、当該角度が15°以上である場合には、上向きノズルの斜面の長さが長くなりすぎることに起因して電界紡糸条件がばらついてしまうということもなくなるからである。
【0014】
[3]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記ポリマー溶液回収経路は、前記複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローした前記ポリマー溶液を受ける受部と、前記受部を覆うとともに各上向きノズルを通す複数のノズル用孔を有する蓋部と、前記複数のノズル用孔から突出する各上向きノズルの側面を覆う複数のジャケットから形成されてなり、前記ジャケットの基端側をジャケット基端部とし、前記ジャケットの先端側をジャケット先端部とするとき、前記ジャケット先端部は、前記ジャケット基端部よりも細いことが好ましい。
【0015】
このような構成とすることにより、上向きノズルの側面を覆うジャケットの働きにより、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となる。
【0016】
また、ジャケット先端部はジャケット基端部よりも細いため、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となる。
【0017】
[4]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記ジャケット基端部は、太さが一定の筒状の形状を有し、前記ジャケット先端部は、当該ジャケット先端部と前記ジャケット基端部との接続部から先端にかけて徐々に太さが減少する筒状の形状を有することが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、単純な形状のジャケットを用いて、ポリマー溶液から溶媒が揮発する量を低減することが可能となる。
【0019】
なお、「徐々に太さが減少する」例としては、一定の割合で太さが減少することを挙げることができる。
【0020】
[5]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記ノズル先端部の先端側に形成された斜面部の先端は、前記ジャケットの先端よりも上方に位置することが好ましい。
【0021】
このような構成とすることにより、上向きノズルとコレクターとの間に形成される電界が安定するため、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
【0022】
[6]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記斜面部の先端と前記ジャケットの先端との前記円筒の軸に沿った間隔d1は、0.1mm〜2.0mmの範囲内にあることが好ましい。
【0023】
間隔d1を0.1mm〜2.0mmの範囲内にしたのは、当該間隔d1が2.0mm以下である場合には、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となるからであり、間隔d1が0.1mm以上である場合には、上向きノズルとコレクターとの間に形成される電界が安定するため、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となるからである。
【0024】
[7]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記ノズル先端部の先端側に形成された斜面部の基端は、前記ジャケットの先端よりも下方に位置することが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となる。
【0026】
[8]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記斜面部の基端と前記ジャケットの先端との前記円筒の軸に沿った間隔d2は、0.1mm〜1.0mmの範囲内にあることが好ましい。
【0027】
間隔d2を0.1mm〜1.0mmの範囲内にしたのは、当該間隔d2が0.1mm以上である場合には、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となるからであり、間隔d2が1.0mm以下である場合には、ポリマー溶液が上向きノズルの吐出口からコレクターに向かって安定して吐出されるようになるため、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となるからである。
【0028】
[9]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記上向きノズル及び前記ジャケットを前記上向きノズルの上方から前記円筒の軸に沿って見たとき、前記ジャケットの内周に囲まれる領域の面積をS1とし、前記ノズル先端部の外周に囲まれる領域の面積をS2とするとき、「S2≦S1−S2≦4×S2」の関係を満たすことが好ましい。
【0029】
「S1−S2」は、上向きノズルとジャケットとの隙間の面積に対応する値であるが、「S2≦S1−S2≦4×S2」の関係を満たすことが好ましいとした理由は、「S1−S2」が「4×S2」以下である場合には、上向きノズルの吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となるからであり、「S1−S2」が「S2」以上である場合には、上向きノズルとジャケットとの隙間を通過できないポリマー溶液がジャケットの外側に溢れてしまうことがなくなるからである。
【0030】
[10]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記蓋部は、前記ノズル用孔の周囲に蓋部側ねじ部をさらに有し、前記ジャケットは、前記ジャケット基端部の基端側に前記蓋部側ねじ部と対応するジャケット側ねじ部をさらに有し、前記蓋部側ねじ部と前記ジャケット側ねじ部との嵌合により前記蓋部と前記ジャケットとが結合されていることが好ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、ジャケットの着脱が容易となり、製造及びメンテナンスが容易なナノ繊維製造装置となる。
【0032】
[11]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記ポリマー溶液供給経路は、ポリマー溶液供給経路側ねじ部をさらに有し、前記上向きノズルは、前記上向きノズルの基端側に前記ポリマー溶液供給経路側ねじ部と対応する上向きノズル側ねじ部をさらに有し、前記ポリマー溶液供給経路側ねじ部と前記上向きノズル側ねじ部との嵌合により前記ポリマー溶液供給経路と前記上向きノズルとが結合され、前記上向きノズルの基端部は、多角形の筒状形状からなることが好ましい。
【0033】
このような構成とすることにより、上向きノズルの着脱が容易となり、製造及びメンテナンスが容易なナノ繊維製造装置となる。
【0034】
また、上向きノズルの基端部が多角形の筒状形状からなるため、レンチ等の工具を用いて上向きノズルを容易に着脱することが可能となり、製造及びメンテナンスがより一層容易なナノ繊維製造装置となる。
【0035】
多角形の筒状形状の例としては、四角形の筒状形状、六角形の筒状形状及び八角形の筒状形状を挙げることができる。
【0036】
[12]本発明のナノ繊維製造装置においては、前記ナノ繊維の原料となる前記ポリマー溶液を貯蔵する原料タンクと、回収された前記ポリマー溶液を再生するための再生タンクであって、再生された前記ポリマー溶液を貯蔵する再生タンクと、前記原料タンク又は前記再生タンクから供給された前記ポリマー溶液を貯蔵する中間タンクと、前記ノズルブロックの前記ポリマー溶液回収経路から前記再生タンクへ前記ポリマー溶液を移送する第1移送装置と、前記第1移送装置の移送動作を制御する第1移送制御装置と、前記原料タンク及び前記再生タンクから前記中間タンクへ前記ポリマー溶液を移送する第2移送装置と、前記第2移送装置の移送動作を制御する第2移送制御装置とをさらに備えることが好ましい。
【0037】
このような構成とすることにより、回収したポリマー溶液を再生タンクに移送した後、当該ポリマー溶液の組成を測定するとともに、当該測定結果に応じてポリマー溶液に溶媒その他の必要な成分を添加することで、当該ポリマー溶液を元のポリマー溶液の組成と同じか極めて近い組成を有するポリマー溶液に再生することが可能となる。このため、本発明のナノ繊維製造装置によれば、オーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用可能としながら、電界紡糸過程における紡糸条件(この場合ポリマー溶液の組成)を長時間にわたって一定に保つことが可能となり、均一な品質を有するナノ繊維を大量生産することが可能となる。
【0038】
なお、「移送装置」には、ポリマー溶液を通すパイプ、ポリマー溶液を移送するポンプなどが含まれる。また、「移送制御装置」には、ポリマー溶液の通過の可否及び通過量を制御するバルブ、当該バルブや上記したポンプの動作を制御する制御装置などが含まれる。
【0039】
[13]本発明のナノ繊維製造装置においては、長尺シートを搬送する搬送装置をさらに備えるとともに、前記ノズルブロックと前記コレクターとを少なくとも備え、前記長尺シートの表面にナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置として、前記長尺シートの搬送方向に沿って直列に配置された複数の電界紡糸装置を備えることが好ましい。
【0040】
このような構成とすることにより、ナノ繊維をより一層高い生産性で大量生産することが可能となる。また、ナノ繊維を厚く堆積させた製品や、多種類のナノ繊維を堆積させた製品等を大量生産することも可能となる。
【0041】
本発明のナノ繊維製造装置によれば、高機能・高感性テキスタイルなどの衣料品、ヘルスケア、スキンケアなど美容関連用品、ワイピングクロス、フィルターなど産業資材、二次電池のセパレーター、コンデンサーのセパレーター、各種触媒の担体、各種センサー材料などの電子・機械材料、再生医療材料、バイオメディカル材料、医療用MEMS材料、バイオセンサー材料などの医療材料、その他の幅広い用途に使用可能なナノ繊維を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態に係るナノ繊維製造装置1の正面図である。
【図2】実施形態における電界紡糸装置20の正面図である。
【図3】実施形態におけるノズルブロック110の断面図である。
【図4】実施形態におけるノズルブロック110の要部を示す図である。
【図5】従来のナノ繊維製造装置900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明のナノ繊維製造装置を、実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0044】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るナノ繊維製造装置1の正面図である。図2は、実施形態における電界紡糸装置20の正面図である。なお、図1及び図2においては、筐体100、ノズルブロック110、原料タンク200、中間タンク230及び再生タンク270,272については断面図として表示している。
図3は、実施形態におけるノズルブロック110の断面図である。図4は、実施形態におけるノズルブロック110の要部を示す図である。図4(a)は図3中符号Aが示す範囲を拡大して示す図であり、図4(b)は図4(a)中符号Bが示す範囲を拡大して示す図であり、図4(c)はノズル基端部130の断面図であり、図4(d)は上向きノズル126及びジャケット134の上面図である。
なお、各図面は模式図であり、各構成要素の大きさは、必ずしも現実に即したものではない。
【0045】
1.実施形態に係るナノ繊維製造装置1の構成
実施形態に係るナノ繊維製造装置1は、図1に示すように、長尺シートWを所定の搬送速度で搬送する搬送装置10と、搬送装置10により搬送されている長尺シートWにナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置20と、ナノ繊維を堆積させた長尺シートWを加熱する加熱装置30と、電界紡糸装置20によりナノ繊維を堆積させた長尺シートWの通気度を計測する通気度計測装置40と、通気度計測装置40により計測された通気度に基づいて搬送速度を制御する搬送速度制御装置50(図示せず。)と、「搬送装置10、電界紡糸装置20、加熱装置30、通気度計測装置40、搬送速度制御装置50、後述するVOC処理装置70」を制御する主制御装置60(図示せず。)と、長尺シートWにナノ繊維を堆積させる際に発生する揮発性成分を燃焼して除去するVOC処理装置70(図示せず。)とを備える。
【0046】
実施形態に係るナノ繊維製造装置1においては、電界紡糸装置として、長尺シートWが搬送されていく所定の搬送方向に沿って直列に配置された2台の電界紡糸装置20を備える。
【0047】
搬送装置10は、長尺シートWを繰り出す繰り出しローラー11及び長尺シートWを巻き取る巻き取りローラー12並びに繰り出しローラー11と巻き取りローラー12との間に位置する補助ローラー13を備える。繰り出しローラー11及び巻き取りローラー12は、図示しない駆動モーターにより回転駆動される構造となっている。
【0048】
電界紡糸装置20の構成については後述する。
【0049】
加熱装置30は、電界紡糸装置20と通気度計測装置40との間に配置され、ナノ繊維を堆積させた長尺シートWを加熱する。加熱温度は、長尺シートWやナノ繊維の種類によって異なるが、例えば、長尺シートWを50℃〜300℃の温度に加熱することができる。
通気度計測装置40としては、一般的な通気度計測装置を使用することができる。
【0050】
以下、電界紡糸装置20の構成について詳しく説明する。
電界紡糸装置20は、図2に示すように、筐体100と、ノズルブロック110と、コレクター150と、電源装置160と、補助ベルト装置170と、原料タンク200と、第2移送装置210と、第2移送制御装置220と、中間タンク230と、供給装置240と、供給制御装置242と、第1移送装置250と、第1移送制御装置260と、再生タンク270,272とを備える。
【0051】
筐体100は、導電体からなる。
ノズルブロック110は、図3に示すように、複数の上向きノズル126、ポリマー溶液供給経路114、ポリマー溶液回収経路120及び第2センサー142を有する。
本発明のナノ繊維製造装置には様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルブロックを用いることができるが、ノズルブロック110は、例えば、上面から見たときに一辺が0.5m〜3mの長方形(正方形を含む)に見える大きさ及び形状を有する。
【0052】
各上向きノズル126は、図4(a)に示すように、上向きノズル126の基端部であるノズル基端部130、上向きノズル126の中間部であるノズル中間部128及び上向きノズル126の先端部であるノズル先端部132からなる。上向きノズル126は、図示による詳しい説明は省略するが、上向きノズル126の基端側(ノズル基端部130の基端側)にポリマー溶液供給経路側ねじ部118(後述)と対応する上向きノズル側ねじ部を有する。上向きノズル126の内部は空洞になっており、当該空洞はポリマー溶液供給経路114内の空洞と連通している。上向きノズル126は、ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する。上向きノズル126は導電体、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる。
【0053】
複数の上向きノズル126は、例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。
複数の上向きノズル126の数は、例えば、36個(縦横同数に配列した場合、6個×6個)〜21904個(縦横同数に配列した場合、148個×148個)である。
【0054】
ノズル先端部132は、図4(b)に示すように、円筒を当該円筒の軸と斜めに交わる平面に沿って切断した形状からなる。円筒の軸と平面とのなす角度θは、50°である。
【0055】
ノズル先端部132の先端側には斜面部133が形成され、当該斜面部133の先端は、ジャケット134の先端よりも上方に位置する。斜面部133の先端とジャケット134の先端との円筒の軸に沿った間隔d1は0.5mmである。
【0056】
斜面部133の基端は、ジャケット134の先端よりも下方に位置する。斜面部133の基端とジャケット134の先端との円筒の軸に沿った間隔d2は0.5mmである。
【0057】
上向きノズル126及びジャケット134を上向きノズル126の上方から円筒の軸に沿って見たとき(図4(d)参照。)、ジャケット134の内周に囲まれる領域の面積をS1とし、ノズル先端部132の外周に囲まれる領域の面積をS2とするとき、上向きノズル126及びジャケット134は、「S1−S2=3.3×S2」となるように構成されている。
【0058】
ノズル中間部128は、略円筒形状からなる。
ノズル基端部130は、図4(c)に示すように、六角形の筒状形状からなる。
【0059】
ポリマー溶液供給経路114は、図3に示すように、略直方体形状を有し、内部に空洞を有し、この内部の空洞を介して供給装置240からのポリマー溶液を複数の上向きノズル126に供給する。ポリマー溶液供給経路114は、供給装置との接続部116を有し、当該供給装置との接続部116のところで供給装置240と接続されている。また、ポリマー溶液供給経路114は、ポリマー溶液供給経路側ねじ部118をさらに有する。ナノ繊維製造装置1においては、ポリマー溶液供給経路側ねじ部118と上向きノズル側ねじ部との嵌合によりポリマー溶液供給経路114と上向きノズル126とが結合されている。
【0060】
ポリマー溶液回収経路120は、受部121、溝部124、蓋部123及び複数のジャケット134から形成されてなる。ポリマー溶液回収経路120は、複数の上向きノズル126の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収する。
受部121は、複数の上向きノズル126の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を受ける。受部121は、ポリマー溶液供給経路114の上部に配置されている。受部121には、溝部124に向かってわずかに傾斜が設けられており、受けたポリマー溶液を溝部124に向かって導く機能を有する。
【0061】
溝部124は、受部121の側方に配置されている。溝部124は、底面において第1移送装置との接続部125を有し、当該第1移送装置との接続部125のところで第1移送装置250と接続されている。
蓋部123は、受部121を覆うとともに各上向きノズル126を通す複数のノズル用孔を有する。また、蓋部123は、ノズル用孔の周囲に蓋部側ねじ部122を有する。
【0062】
ジャケット134は、複数のノズル用孔から突出する各上向きノズル126の側面を覆う。ジャケット134は、ジャケット134の基端側であるジャケット基端部138と、ジャケット134の先端側であるジャケット先端部140を有する。ジャケット134においては、ジャケット先端部140は、ジャケット基端部138よりも細い。具体的には、ジャケット基端部138は、太さが一定の円筒状の形状を有し、ジャケット先端部140は、当該ジャケット先端部140とジャケット基端部138との接続部136から先端にかけて徐々に、具体的には一定の割合で太さが減少する円筒状の形状を有する(図4(a)及び図4(d)参照。)。
【0063】
ジャケット134は、図示による詳しい説明は省略するが、ジャケット基端部138の基端側に蓋部側ねじ部122と対応するジャケット側ねじ部を有する。
ナノ繊維製造装置1においては、蓋部側ねじ部122とジャケット側ねじ部との嵌合により蓋部123とジャケット134とが結合されている。
【0064】
第2センサー142は、ポリマー溶液回収経路120におけるポリマー溶液の液面高さを測定する。具体的には、第2センサー142は溝部124の壁面に配置されており、溝部124に溜まったポリマー溶液の液面高さを測定する。第2センサー124は、例えば、光ファイバーセンサーからなる。
【0065】
コレクター150は、ノズルブロック110よりも上方に配置されている。コレクター150は、導電体からなり、図2に示すように、絶縁部材152を介して筐体100に取り付けられている。
【0066】
電界紡糸装置20は、複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸する。
【0067】
電源装置160は、複数の上向きノズル126とコレクター150との間に高電圧を印加する。電源装置160の正極は、コレクター150に接続され、電源装置160の負極は、筐体100を介してノズルブロック110に接続されている。
【0068】
補助ベルト装置170は、長尺シートWの搬送速度に同期して回転する補助ベルト172と、補助ベルト172の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー174とを有する。5つの補助ベルト用ローラー174のうち1つ又は2以上の補助ベルト用ローラーが駆動ローラーであり、残りの補助ベルト用ローラーが従動ローラーである。コレクター150と長尺シートWとの間に補助ベルト172が配設されているため、長尺シートWは、正の高電圧が印加されているコレクター150に引き寄せられることなくスムーズに搬送されるようになる。
【0069】
原料タンク200は、ナノ繊維の原料となるポリマー溶液を貯蔵する。原料タンク200は、ポリマー溶液の分離や凝固を防ぐための撹拌装置201を内部に有する。原料タンク200には、第2移送装置210のパイプ212が接続されている。
【0070】
第2移送装置210は、原料タンク200又は再生タンク270,272から中間タンク230へポリマー溶液を移送する。第2移送装置210は、原料タンク200と中間タンク230とを接続するパイプ212と、再生タンク270,272と中間タンク230とを接続するパイプ214とを有する。なお、パイプ212の末端は第1貯蔵部236(後述。)に接続されており、パイプ214の末端はパイプ212に接続されている。
【0071】
第2移送制御装置220は、第2移送装置210の移送動作を制御する。第2移送制御装置220は、バルブ222,224,226,228を有する。
バルブ222は、原料タンク200からのポリマー溶液の移送を制御する。
バルブ224は、原料タンク200及び再生タンク270,272から中間タンク230へ流入するポリマー溶液の量を制御する。バルブ224による制御は、後述する第1センサー239で計測された液面高さに応じて行われる。
バルブ226は、再生タンク270からのポリマー溶液の移送を制御する。
バルブ228は、再生タンク272からのポリマー溶液の移送を制御する。
【0072】
第2移送制御装置220は、上記したバルブ222,224,226,228により、ポリマー溶液を、原料タンク200及び再生タンク270,272のうちいずれのタンクから中間タンク230へ移送するかについて制御する。また、第2移送制御装置220は、バルブ224により、第1センサー239で計測された液面高さに応じて、第2移送装置210の移送動作を制御する。また、第2移送制御装置220は、バルブ226,228により、ポリマー溶液を再生タンク270,272から中間タンク230へ移送する場合には、ポリマー溶液を複数の再生タンク270,272のうちいずれの再生タンクから移送するかについても制御する。
【0073】
中間タンク230は、原料タンク200又は再生タンク270,272から供給されたポリマー溶液を貯蔵する。中間タンク230は、当該中間タンク230の下端が各上向きノズル126の上端よりも上方に位置するように配置されている。
中間タンク230は、隔壁232と、気泡除去フィルター234と、第1センサー239とを有する。
【0074】
隔壁232は、ポリマー溶液が供給される供給部位を覆う。
気泡除去フィルター234は、隔壁232の底部に配設され、通過するポリマー溶液から気泡を除去する。気泡除去フィルター234は、例えば、0.1mm程度の目を有する網状の構造を有する。
【0075】
中間タンク230においては、隔壁232及び気泡除去フィルター234により、気泡除去フィルター234によって気泡が除去される前のポリマー溶液を貯蔵する第1貯蔵部236と、気泡除去フィルター234によって気泡が除去された後のポリマー溶液を貯蔵する第2貯蔵部238とが画成されている。
第2貯蔵部238は、供給経路240によりポリマー溶液供給経路114と接続されており、これにより、ナノ繊維製造装置1においては、第2貯蔵部238に貯蔵されたポリマー溶液がノズルブロック110のポリマー溶液供給経路114に供給される。
【0076】
第1センサー239は、第2貯蔵部238におけるポリマー溶液の液面高さを測定する。第1センサーは、例えば、光ファイバーセンサーからなる。
【0077】
供給装置240は、1本のパイプからなり、中間タンク230の第2貯蔵部238に貯蔵されたポリマー溶液をノズルブロック110のポリマー溶液供給経路114に供給する。なお、供給装置は、1つのノズルブロックにつき最低1本あればよい。
供給制御装置242は、供給装置240に設けられた1つのバルブからなり、供給装置240の供給動作を制御する。
【0078】
第1移送装置250は、パイプ252及びポンプ254を有し、ノズルブロック110のポリマー溶液回収経路120から再生タンク270,272へポリマー溶液を移送する。
ポンプ254は、ノズルブロック110近辺より上方にある再生タンク270,272へポリマー溶液を移送する動力を発生させる。ポンプ254は、例えば、エアダイヤフラムポンプからなる。
第1移送制御装置260は、第1移送装置250の移送動作を制御する。第1移送制御装置260は、バルブ264,266及びポンプ254の制御装置(図示せず。)を備える。
バルブ264は、ポリマー溶液回収経路から再生タンク270へのポリマー溶液の移送動作を制御する。
バルブ266は、ポリマー溶液回収経路から再生タンク272へのポリマー溶液の移送動作を制御する。
【0079】
第1移送制御装置260は、上記バルブ264,266により、ポリマー溶液を、複数の再生タンク270,272のうちいずれの再生タンクへ移送するかについて制御する。
また、第1移送制御装置260は、上記バルブ264,266及びポンプ254の制御装置により、第2センサー142で測定されたポリマー溶液の液面高さに応じて、第1移送装置250の移送動作を制御する。
【0080】
複数の再生タンク270,272は、回収されたポリマー溶液を再生するための再生タンクであって、再生されたポリマー溶液を貯蔵する。再生タンク270,272は、ポリマー溶液の分離や凝固を防ぐための撹拌装置271,273をそれぞれ内部に有する。
【0081】
上記構成要素により、実施形態に係るナノ繊維製造装置1は、複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することを可能としたナノ繊維製造装置となる。
【0082】
2.実施形態に係るナノ繊維製造装置1を用いたナノ繊維製造方法
実施形態に係るナノ繊維製造方法は、複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するとともに、複数の上向きノズル126の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することを可能とするナノ繊維製造方法である。
【0083】
まず、ポリマー溶液を、第2移送装置210のパイプ212を用いて、原料タンク200から中間タンク230へ移送する。次に、中間タンク230内で気泡除去フィルター234を通って第1貯蔵部232から第2貯蔵部234に移動したポリマー溶液を、供給装置240を通じてポリマー溶液供給経路114に供給する。ナノ繊維製造装置1は、当該ポリマー溶液供給経路114に供給された複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸する。
【0084】
また、ナノ繊維製造装置1は、オーバーフローしたポリマー溶液をポリマー溶液回収経路120で回収する。ポリマー溶液がポリマー溶液回収経路120の溝部124にある程度溜まったところで第1移送装置250を用いて再生タンク270へ移送し、回収する。
【0085】
再生タンク270に所定の量のポリマー溶液が溜まった後に、第1移送制御装置260により第1移送装置250による移送先を再生タンク272に切り替える。これにより、オーバーフローしたポリマー溶液は再生タンク272に回収されることとなり、再生タンク270で後の工程を行っているときに、再生タンク270にオーバーフローしたポリマー溶液が入ってしまうことがない。
【0086】
次に、回収したポリマー溶液における溶媒及び添加剤の含有率を測定する。当該測定は、再生タンク270中のポリマー溶液の一部をサンプルとして抜き取り、当該サンプルを分析することにより行うことができる。ポリマー溶液の分析は、既知の方法で行うことができる。
【0087】
次に、当該測定結果に基づいて、必要な量の溶媒及び添加剤その他の成分をポリマー溶液に添加する。これにより、回収されたポリマー溶液が再生される。その後に、当該再生タンク270内のポリマー溶液を第2移送装置210のパイプ212を用いて中間タンク230へ移送する。再生タンク270内のポリマー溶液を原料タンク200内のポリマー材料に代えて、又は原料タンク200内のポリマー材料とともに電界紡糸に用いることにより、再生タンク270内のポリマー溶液をナノ繊維の原料として再利用することができる。
【0088】
なお、再生タンク272に所定の量のポリマー溶液が溜まった後には、再生タンク270に所定の量のポリマー溶液が溜まった後にしたのと同様の方法により再生タンク272内のポリマー溶液をナノ繊維の原料として再利用することができる。
【0089】
以下に、実施形態に係るナノ繊維製造方法における紡糸条件を例示的に示す。
【0090】
長尺シートとしては、各種材料からなる不織布、織物、編物、フィルムなどを用いることができる。長尺シートの厚さは、例えば5μm〜500μmのものを用いることができる。長尺シートの長さは、例えば10m〜10kmのものを用いることができる。
【0091】
ナノ繊維の原料となるポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサンなどを用いることができる。
【0092】
ポリマー溶液に用いる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THFなどを用いることができる。複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。ポリマー溶液には、導電性向上剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0093】
製造するナノ繊維不織布の通気度は、例えば0.15cm/cm/s〜200cm/cm/sに設定することができる。搬送速度は、例えば0.2m/分〜100m/分に設定することができる。ノズルブロック110とコレクター150とに印加する電圧は、10kV〜80kVに設定することができ、50kV付近に設定することが好ましい。
【0094】
紡糸区域の温度は、例えば25℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば30%に設定することができる。
【0095】
3.実施形態に係るナノ繊維製造装置1の効果
【0096】
実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、従来のナノ繊維製造装置の場合と同様に、複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するため、従来の下向きノズルを用いたナノ繊維製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象が発生することがなく、高品質なナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、従来のナノ繊維製造装置の場合と同様に、複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながらナノ繊維を電界紡糸するため、常に十分な量のポリマー溶液が上向きノズルに供給され、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、従来のナノ繊維製造装置の場合と同様に、複数の上向きノズル126の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することが可能であるため、原料の使用料を減らすことが可能となる結果、安価な製造コストでナノ繊維を製造することが可能となる。また、このことは省資源化の流れにも沿うものとなる。
【0097】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、ノズル先端部132が、円筒を当該円筒の軸と斜めに交わる平面に沿って切断した形状を有するため、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液が、ノズル先端部132の部分で滞留することなく速やかに流れ落ちるようになる。このため、電界紡糸する過程でポリマー溶液から溶媒が揮発する量を極めて少なくするとともに、上向きノズル126の吐出口の近傍において生成するポリマー固化物の量を極めて少なくすることが可能となる。その結果、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら電界紡糸する場合であっても、ポリマー固化物がナノ繊維に付着してナノ繊維の品質を低下させてしまうという問題を解決することが可能となる。
【0098】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、円筒の軸と、平面とのなす角度は、15°〜60°の範囲内にあるため、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液がノズル先端部132の部分で滞留することなくより一層速やかに流れ落ちるようになり、また、上向きノズル126の斜面の長さが長くなりすぎることに起因して電界紡糸条件がばらついてしまうということもなくなる。
【0099】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、上向きノズル126の側面を覆うジャケット134の働きにより、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となる。
【0100】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、ジャケット先端部140はジャケット基端部138よりも細いため、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となる。
【0101】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、ジャケット基端部138は、太さが一定の筒状の形状を有し、ジャケット先端部140は、当該ジャケット先端部140とジャケット基端部138との接続部136から先端にかけて徐々に太さが減少する筒状の形状を有するため、単純な形状のジャケット134を用いて、ポリマー溶液から溶媒が揮発する量を低減することが可能となる。
【0102】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、ノズル先端部132の先端側に形成された斜面部133の先端は、ジャケット134の先端よりも上方に位置するため、上向きノズル126とコレクター150との間に形成される電界が安定するため、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
【0103】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、間隔d1は、0.1mm〜2.0mmの範囲内にあるため、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となり、また、上向きノズル126とコレクター150との間に形成される電界が安定するため、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
【0104】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、ノズル先端部132の先端側に形成された斜面部133の基端は、ジャケット134の先端よりも下方に位置するため、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となる。
【0105】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、間隔d2は、0.1mm〜1.0mmの範囲内にあるため、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となり、かつ、ポリマー溶液が上向きノズル126の吐出口からコレクター150に向かって安定して吐出されるようになり、均一な品質を有するナノ繊維を製造することが可能となる。
【0106】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、「S2≦S1−S2≦4×S2」の関係を満たすため、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液から溶媒が揮発する量をより一層低減することが可能となり、また、上向きノズル126の吐出口からオーバーフローするポリマー溶液が上向きノズル126とジャケット134との隙間で淀むことがなくなる。
【0107】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、蓋部側ねじ部122とジャケット側ねじ部との嵌合により蓋部123とジャケット134とが結合されているため、ジャケット134の着脱が容易となり、製造及びメンテナンスが容易なナノ繊維製造装置となる。
【0108】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、ポリマー溶液供給経路側ねじ部118と上向きノズル側ねじ部との嵌合によりポリマー溶液供給経路114と上向きノズル126とが結合されているため、上向きノズル126の着脱が容易となり、製造及びメンテナンスが容易なナノ繊維製造装置となる。
【0109】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、上向きノズル126の基端部(ノズル基端部130)が六角形の筒状形状からなるため、レンチ等の工具を用いて上向きノズル126を容易に着脱することが可能となり、製造及びメンテナンスがより一層容易なナノ繊維製造装置となる。
【0110】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、原料タンク200と、再生タンク270,272と、中間タンク230と、第1移送装置250と、第1移送制御装置260と、第2移送装置210と、第2移送制御装置220とを備えるため、回収したポリマー溶液を再生タンク270,272に移送した後、当該ポリマー溶液の組成を測定するとともに、当該測定結果に応じてポリマー溶液に溶媒その他の必要な成分を添加することで、当該ポリマー溶液を元のポリマー溶液の組成と同じか極めて近い組成を有するポリマー溶液に再生することが可能となる。このため、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、オーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用可能としながら、電界紡糸過程における紡糸条件(この場合ポリマー溶液の組成)を長時間にわたって一定に保つことが可能となり、均一な品質を有するナノ繊維を大量生産することが可能となる。
【0111】
また、実施形態に係るナノ繊維製造装置1によれば、長尺シートWを搬送する搬送装置10をさらに備えるとともに、ノズルブロック110とコレクター150とを少なくとも備え、長尺シートWの表面にナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置として、長尺シートWの搬送方向に沿って直列に配置された複数の電界紡糸装置20を備えるため、ナノ繊維をより一層高い生産性で大量生産することが可能となる。また、ナノ繊維を厚く堆積させた製品や、多種類のナノ繊維を堆積させた製品等を大量生産することも可能となる。
【0112】
[実験例]
実施形態に係るナノ繊維製造装置1を用いて、複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら複数の上向きノズル126の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するとともに、複数の上向きノズル126の吐出口からオーバーフローしたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用した。具体的には、回収したポリマー溶液を再生タンク270,272に移送した後、当該ポリマー溶液の組成を測定するとともに、当該測定結果に応じてポリマー溶液に溶媒その他の必要な成分を添加することによりポリマー溶液を再生した。
【0113】
表1は、原料となるポリマー溶液の組成を示す表である。表2は、回収したポリマー溶液の組成を示す表である。表3は、再生したポリマー溶液の組成を示す表である。なお、表1〜表3における「相対重量」は、ポリウレタンの重量を100としたときにおける各物質の相対重量を表している。
【0114】
[表1]
物質名 相対重量
ポリウレタン(ポリマー) 100.0
ジメチルホルムアミド(溶媒) 240.0
メチルエチルケトン(溶媒) 160.0
【0115】
[表2]
物質名 相対重量
ポリウレタン(ポリマー) 100.0
ジメチルホルムアミド(溶媒) 199.2
メチルエチルケトン(溶媒) 85.4
【0116】
[表3]
物質名 相対重量
ポリウレタン(ポリマー) 100.0
ジメチルホルムアミド(溶媒) 240.0
メチルエチルケトン(溶媒) 160.0
【0117】
表1〜表3に示すように、実験例によれば、当該ポリマー溶液を元のポリマー溶液の組成と同じか極めて近い組成を有するポリマー溶液に再生することができた。
【0118】
なお、実験例においては、回収したポリマー溶液に、ポリウレタン100g当たり40.8gのジメチルホルムアミド及び74.6gのメチルエチルケトンを添加することにより、ポリマー溶液を再生した。
【0119】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0120】
(1)上記実施形態における各構成要素の数、位置関係、大きさは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0121】
(2)上記実施形態においては、円筒の軸と平面とのなす角度が50°であるナノ繊維製造装置1を例にとって本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、円筒の軸と平面とのなす角度が15°〜60°の範囲内にあるナノ繊維製造装置に本発明を適用することができる。
【0122】
(3)上記実施形態においては、斜面部の先端とジャケットの先端との円筒の軸に沿った間隔d1が0.5mmであるナノ繊維製造装置1を例にとって本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、斜面部の先端とジャケットの先端との円筒の軸に沿った間隔d1が0.1mm〜2.0mmの範囲内にあるナノ繊維製造装置に本発明を適用することができる。
【0123】
(4)上記実施形態においては、ノズル先端部の先端側に形成された斜面部の基端がジャケットの先端よりも下方に位置するナノ繊維製造装置1を例にとって本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ノズル先端部の先端側に形成された斜面部の基端がジャケットの先端と同じ高さ又はジャケットの先端よりも上方に位置するナノ繊維製造装置に本発明を適用することができる。
【0124】
(5)上記実施形態においては、斜面部の基端とジャケットの先端との円筒の軸に沿った間隔d2が0.5mmであるナノ繊維製造装置1を例にとって本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、斜面部の基端とジャケットの先端との円筒の軸に沿った間隔d2が0.1mm〜1.0mmの範囲内にあるナノ繊維製造装置に本発明を適用することができる。
【0125】
(6)上記実施形態においては、ジャケットの内周に囲まれる領域の面積をS1とし、ノズル先端部の外周に囲まれる領域の面積をS2とするとき、「S1−S2=3.3×S2」の関係を満たすナノ繊維製造装置1を例にとって本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、「S2≦S1−S2≦4×S2」の関係を満たすナノ繊維製造装置に本発明を適用することができる。
【0126】
(7)上記実施形態においては、電界紡糸装置として2台の電界紡糸装置20を備えるナノ繊維製造装置1を例にとって本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1台又は3台以上の電界紡糸装置を備えるナノ繊維製造装置に本発明を適用することもできる。
【0127】
(8)上記実施形態においては、電源装置160の正極がコレクター150に接続され、電源装置160の負極がノズルブロック110に接続された電界紡糸装置を用いて本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電源装置の正極がノズルブロックに接続され、電源装置の負極がコレクターに接続された電界紡糸装置を備えるナノ繊維製造装置に本発明を適用することもできる。
【0128】
(9)上記実施形態においては、原料タンク200と、再生タンク270,272と、中間タンク230と、第1移送装置250と、第1移送制御装置260と、第2移送装置210と、第2移送制御装置220とを備えるナノ繊維製造装置1を例にとって本発明のナノ繊維製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。他のナノ繊維製造装置に本発明を適用することもできる。
【0129】
(10)上記実施形態においては、1つの電界紡糸装置に1つのノズルブロックが配設されたナノ繊維製造装置を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの電界紡糸装置に2つのノズルブロックが配設されたナノ繊維製造装置に本発明を適用することもできるし、2つ以上のノズルブロックが配設されたナノ繊維製造装置に本発明を適用することもできる。
【0130】
この場合、全てのノズルブロックでノズル配列ピッチを同一にすることもできるし、各ノズルブロックでノズル配列ピッチを異ならせることもできる。また、すべてのノズルブロックでノズルブロックの高さ位置を同一にすることもできるし、各ノズルブロックでノズルブロックの高さ位置を異ならせることもできる。
【0131】
(11)本発明のナノ繊維製造装置においては、長尺シートの幅方向に沿ってノズルブロックを所定の往復運動周期で往復運動させる機構を備えていてもよい。当該機構を用いてノズルブロックを所定の往復運動周期で往復運動させながら電界紡糸を行うことにより、長尺シートの幅方向に沿ったポリマー繊維の堆積量を均一化することができる。この場合、ノズルブロックの往復運動周期や往復距離を、電界紡糸装置毎又はノズルブロック毎に独立して制御可能としてもよい。このような構成とすることにより、すべてのノズルブロックを同じ周期で往復運動させることもできるし、各ノズルブロックを異なる周期で往復運動させることもできる。また、すべてのノズルブロックで往復運動の往復距離を同一にすることもできるし、各ノズルブロックで往復運動の往復距離を異ならせることもできる。
【符号の説明】
【0132】
1…ナノ繊維製造装置、10…搬送装置、11…繰り出しローラー、13…巻き取りローラー、12…補助ローラー、20,22…電界紡糸装置、30…加熱装置、40…通気度計測装置、100…筐体、110,910…ノズルブロック、112…ノズルブロック本体部、114…ポリマー溶液供給経路、116…供給装置との接続部、118…供給経路側ノズル接続部、120…ポリマー溶液回収経路、121…受部、122…回収経路側ジャケット取付部、123…蓋部、124…溝部、125…第1移送装置との接続部、126…上向きノズル、128…ノズル中間部、130…ノズル基端部、132…ノズル先端部、134…ジャケット、136…ジャケット先端部とジャケット基端部との接続部、138…ジャケット基端部、140…ジャケット先端部、150…コレクター、152…絶縁体、160…電源装置、170…補助ベルト装置、172…補助ベルト、174…補助ベルト用ローラー、200…原料タンク、201,271,273…撹拌装置、210…第2移送装置、212,213,214…パイプ、220…第2供給制御装置、222,224,226,228,264…バルブ、230…中間タンク、232…隔壁、234…気泡除去フィルター、236…第1貯蔵部、238…第2貯蔵部、240…供給装置、242…供給制御装置、250…第1移送装置、254…ポンプ、260…第1移送制御装置、270,272…再生タンク、W…長尺シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する複数の上向きノズル、当該複数の上向きノズルに前記ポリマー溶液を供給するポリマー溶液供給経路及び前記複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローした前記ポリマー溶液を回収するポリマー溶液回収経路を有するノズルブロックと、
前記ノズルブロックよりも上方に配置されたコレクターと、
前記複数の上向きノズルと前記コレクターとの間に高電圧を印加する電源装置とを備え、
前記複数の上向きノズルの吐出口からポリマー溶液をオーバーフローさせながら前記複数の上向きノズルの吐出口から前記ポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するとともに、前記複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローした前記ポリマー溶液を回収して前記ナノ繊維の原料として再利用することを可能としたナノ繊維製造装置であって、
前記上向きノズルの先端部(以下、ノズル先端部という。)は、円筒を当該円筒の軸と斜めに交わる平面に沿って切断した形状を有することを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ繊維製造装置において、
前記円筒の軸と、前記平面とのなす角度は、15°〜60°の範囲内にあることを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナノ繊維製造装置において、
前記ポリマー溶液回収経路は、前記複数の上向きノズルの吐出口からオーバーフローした前記ポリマー溶液を受ける受部と、前記受部を覆うとともに各上向きノズルを通す複数のノズル用孔を有する蓋部と、前記複数のノズル用孔から突出する各上向きノズルの側面を覆う複数のジャケットから形成されてなり、
前記ジャケットの基端側をジャケット基端部とし、前記ジャケットの先端側をジャケット先端部とするとき、前記ジャケット先端部は、前記ジャケット基端部よりも細いことを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナノ繊維製造装置において、
前記ジャケット基端部は、太さが一定の筒状の形状を有し、
前記ジャケット先端部は、当該ジャケット先端部と前記ジャケット基端部との接続部から先端にかけて徐々に太さが減少する筒状の形状を有することを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のナノ繊維製造装置において、
前記ノズル先端部の先端側に形成された斜面部の先端は、前記ジャケットの先端よりも上方に位置することを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のナノ繊維製造装置において、
前記斜面部の先端と前記ジャケットの先端との前記円筒の軸に沿った間隔d1は、0.1mm〜2.0mmの範囲内にあることを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のナノ繊維製造装置において、
前記ノズル先端部の先端側に形成された斜面部の基端は、前記ジャケットの先端よりも下方に位置することを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載のナノ繊維製造装置において、
前記斜面部の基端と前記ジャケットの先端との前記円筒の軸に沿った間隔d2は、0.1mm〜1.0mmの範囲内にあることを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載のナノ繊維製造装置において、
前記上向きノズル及び前記ジャケットを前記上向きノズルの上方から前記円筒の軸に沿って見たとき、前記ジャケットの内周に囲まれる領域の面積をS1とし、前記ノズル先端部の外周に囲まれる領域の面積をS2とするとき、「S2≦S1−S2≦4×S2」の関係を満たすことを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれかに記載のナノ繊維製造装置において、
前記蓋部は、前記ノズル用孔の周囲に蓋部側ねじ部をさらに有し、
前記ジャケットは、前記ジャケット基端部の基端側に前記蓋部側ねじ部と対応するジャケット側ねじ部をさらに有し、
前記蓋部側ねじ部と前記ジャケット側ねじ部との嵌合により前記蓋部と前記ジャケットとが結合されていることを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のナノ繊維製造装置において、
前記ポリマー溶液供給経路は、ポリマー溶液供給経路側ねじ部をさらに有し、
前記上向きノズルは、前記上向きノズルの基端側に前記ポリマー溶液供給経路側ねじ部と対応する上向きノズル側ねじ部をさらに有し、
前記ポリマー溶液供給経路側ねじ部と前記上向きノズル側ねじ部との嵌合により前記ポリマー溶液供給経路と前記上向きノズルとが結合され、
前記上向きノズルの基端部は、多角形の筒状形状からなることを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のナノ繊維製造装置において、
前記ナノ繊維の原料となる前記ポリマー溶液を貯蔵する原料タンクと、
回収された前記ポリマー溶液を再生するための再生タンクであって、再生された前記ポリマー溶液を貯蔵する再生タンクと、
前記原料タンク又は前記再生タンクから供給された前記ポリマー溶液を貯蔵する中間タンクと、
前記ノズルブロックの前記ポリマー溶液回収経路から前記再生タンクへ前記ポリマー溶液を移送する第1移送装置と、
前記第1移送装置の移送動作を制御する第1移送制御装置と、
前記原料タンク及び前記再生タンクから前記中間タンクへ前記ポリマー溶液を移送する第2移送装置と、
前記第2移送装置の移送動作を制御する第2移送制御装置とをさらに備えることを特徴とするナノ繊維製造装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のナノ繊維製造装置において、
長尺シートを搬送する搬送装置をさらに備えるとともに、
前記ノズルブロックと前記コレクターとを少なくとも備え、前記長尺シートの表面にナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置として、前記長尺シートの搬送方向に沿って直列に配置された複数の電界紡糸装置を備えることを特徴とするナノ繊維製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−122149(P2012−122149A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272073(P2010−272073)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】