ナノ薄膜ヤング率測定デバイスおよび測定デバイス設計方法
【課題】ナノ薄膜のヤング率を高精度で測定できることを目指し、基板ヤング率の誤差を低減した形状パラメータを備えた共振デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスにおいて、支持部の幅(w)と厚み(t)との第1比率(w/t)を0.5〜3の範囲とし、支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)を5〜20の範囲とし、第2比率/第1比率(L/w)を5以上とした条件下で、支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法が決定される。これにより、共振デバイス単独のヤング率算出誤差を8%以内にできる。
【解決手段】本発明の共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスにおいて、支持部の幅(w)と厚み(t)との第1比率(w/t)を0.5〜3の範囲とし、支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)を5〜20の範囲とし、第2比率/第1比率(L/w)を5以上とした条件下で、支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法が決定される。これにより、共振デバイス単独のヤング率算出誤差を8%以内にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズの厚さのナノ薄膜ヤング率を測定する測定デバイス(以下、共振デバイスと称する。)および共振デバイスの設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、成膜した材料の機械物性、特にヤング率や硬さについて、高精度の計測が求められている。特に、ナノの厚みを持つナノ薄膜材料のヤング率を高精度に計測する技術が求められているものの、現在のところ、ナノ薄膜材料のヤング率を簡便かつ精度良く計測できる技術は見当たらない。
そこで、発明者らは、ヤング率計測のためのシリコンマイクロ共振器を設計・製作し、駆動システムや信号計測機器を開発した。ナノ薄膜材料のヤング率を簡便かつ精度良く計測できることを実証し、既に、計測に用いる共振デバイスを提案している(特許文献1)。かかる共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成されたものである。
【0003】
しかしながら、この共振デバイスを用いてナノ薄膜のヤング率を測定する場合には、共振デバイスの形状寸法パラメータが測定精度に大きく影響するということが様々な思考錯誤の実験により判明した。本発明者らは、鋭意研究を重ねて、測定精度を向上させるべく、共振デバイスの形状寸法パラメータをトライ・アンド・エラーにより特定したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−197085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ナノ薄膜のヤング率を精度よく求めるためには、ナノ薄膜を形成させる基板自体のヤング率を精度よく求める必要があると考えた。
すなわち、本発明は、ナノ薄膜のヤング率を高精度で測定できることを目指し、基板ヤング率の算出誤差を低減した形状寸法パラメータを備えた共振デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した如く、共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成されたものである。
本発明者らは、扇形の外形形状自体のサイズ、基板の厚みに対する支持部の幅と長さをいろいろと変化させ、基板のヤング率を正しく算出できる共振デバイスの形状寸法パラメータを求めた。そして、支持部の形状が基板のヤング率の算出誤差低減に大きく寄与できることを見出した。また、その傾向として、基板厚みに対して支持部の幅が小さく、支持部の長さが長いほど、ヤング率の算出誤差を低減できることがわかった。
【0007】
すなわち、上記目的を達成すべく、本発明の共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスにおいて、下記1)〜3)の条件下で、支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法が決定されるものである。
1)支持部の幅(w)と厚み(t)との第1比率(w/t)を0.5〜3の範囲とする。
2)支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)を5〜20の範囲とする。
3)第2比率/第1比率(L/w)を5以上とする。
【0008】
かかる寸法条件の支持部を備える共振デバイスによれば、共振デバイス単独のヤング率の算出誤差を8%以内にでき、ナノ薄膜を形成させる基板自体のヤング率を精度よく求めることができる。
ここで、共振デバイスの支持部の下端は完全に固定されていると仮定する。また、共振周波数(f)は、バネ定数(k)と慣性モーメント(J)の2変数パラメータを用いることにより下記式1から算出できる。ここで、Eは共振デバイスの基板ヤング率、wは共振デバイスの支持部の幅、lは共振デバイスの支持部の長さ、ρは共振デバイスの密度、θは共振デバイスの振動子の角度、共振デバイスの振動子の半径である。
【0009】
【数1】
【0010】
バネ定数(k)は、支持部の静的な曲げ特性から決定する。慣性モーメント(J)は、略扇形に形成された外形の動的な振動特性とし、面外振動およびねじり振動は無視して、面内振動のみから決定する。共振周波数(f)は、面内振動解析から求める。
そして、上記式1を用いて、静的な曲げ特性から決定されるバネ定数(k)からヤング率を算出したものと、動的な振動特性から求めた共振周波数(f)からヤング率を算出したものの両方で、誤差8%以内に入る支持部の寸法範囲を決定する。
この場合、ヤング率の算出誤差は、静的な曲げ特性から得られたヤング率と、動的な振動特性から得られたヤング率とで、同じ傾向、すなわち、アスペクト比の逆数(1/a)が大きくなるほど減少する傾向にあった。その上、同一の1/aの値での誤差を比較すると、動的な振動特性から得られたヤング率の誤差よりも静的な曲げ特性から得られたヤング率の誤差の方が小さいことがわかった。このことから、ヤング率を算出誤差を小さくするためには、動的な振動特性から得られたヤング率の誤差結果から、支持部の寸法形状を設計する。
すなわち、ヤング率算出誤差は、振動解析から得た共振周波数を用いてヤング率誤差が算出されるのが好ましいのである。
また、扇形の中心端部と支持部の端部との接合部において、中心端部の幅が端部の幅よりも大きく段差が設けられる方が中心端部の幅と端部の幅とが略同等もしくは滑らかに接合する場合よりもヤング率の算出誤差の更なる低減を図ることが可能である。
【0011】
また、上記の1)支持部の幅(w)と厚み(t)は、支持部を直方体に見立てたものであり、支持部が円柱や楕円柱の場合は、直径や長径・短径に相当する。また、第1比率(w/t)は、0.5〜3の範囲に入るのが好ましいがその理由は以下の通りである。第1比率(w/t)が0.5未満になると、支持部の幅が狭く曲げ強度が低下して共振デバイスの破損リスクが増大する。第1比率(w/t)が3より大きくなると、ヤング率の算出誤差が大きく増大する。また、更にヤング率の算定精度向上を図るべく、さらに好ましくは、第1比率(w/t)は0.8〜2の範囲になるように支持部の幅と厚みを決定する。
【0012】
次に、上記の2)支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)は、5〜20の範囲に入るのが好ましいがその理由は以下の通りである。第2比率(L/t)が5未満になるとヤング率の算出誤差が大きく増大する。また、第2比率(L/t)が20より大きくなると、支持部の幅と厚みに対して長さが極端に大きくなり、支持部形状が細長くなり共振デバイスの破損リスクが増大する。また、更にヤング率の算定精度向上を図るべく、さらに好ましくは、第2比率(L/t)は10〜15の範囲になるように支持部の長さと厚みを決定する。
【0013】
そして、上記の3)第2比率/第1比率(L/w)は、第2比率(L/t)を第1比率(w/t)で割ったものであり、結果的に、第2比率(L/t)÷第1比率(w/t)=L/t×t/w=L/wとなる。これを5以上とするように、支持部の長さ(L)と幅(w)を決定する。更にヤング率の算定精度向上を図るためには、第2比率/第1比率(L/w)は10以上になるように支持部の長さ(L)と幅(w)を決定する。
【0014】
また本発明の他の観点によれば、上記の共振デバイスを複数備え、櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源ラインが、少なくとも設けられた共振デバイスシートが提供される。
かかる共振デバイスシートに対して、計測対象であるナノ薄膜材料と同じ薄膜作製工程を施すことにより、共振デバイスシート上の共振デバイスの扇形の面上にナノ薄膜を形成させる。共振デバイスシート上には櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源ラインが設けられていることから、振動用電圧を該電源ラインに周波数を変化させながら供給することにより、ナノ薄膜の形成前に事前に計測した共振デバイス単独の共振周波数と、ナノ薄膜が形成された後の共振デバイスの共振周波数とから、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、ナノ薄膜のヤング率を測定する。通常、この共振デバイスシートには、同じ形状寸法パラメータの共振デバイスが複数個搭載される。そして、シートから個々のの共振デバイスを切り離して使用することが可能である。
また、共振デバイスシートに、複数種類の第1比率(w/t)と第2比率(L/t)を有する共振デバイスを複数備えることにより、様々な寸法条件でナノ薄膜のヤング率を計測し、それらの計測結果を総合的に判断することで、ナノ薄膜のヤング率の算出精度を高めることができる。
【0015】
また本発明の他の観点によれば、以下の1)〜4)を備えた薄膜特性測定装置が提供される。
1)上記の共振デバイスシート
2)櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源
3)共振デバイス単独及び共振デバイスにナノ薄膜を成膜した状態で、周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から共振デバイス単独及びナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段
4)共振デバイス単独の共振周波数と、ナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段
【0016】
かかる構成の薄膜特性測定装置によれば、上記2)の周波数可変電圧を上記1)の共振デバイスシートに供給したとき、共振デバイスシート上の共振デバイスが扇形の要付近の位置の垂直な軸の回りに振動する。周波数可変電圧の周波数を変化させていくと、特定の周波数で共振する。共振デバイス単独の場合と、ナノ薄膜が形成された共振デバイスの場合とでは共振周波数が異なる。これら異なる2つの共振周波数と、形成されたナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとには特定の関係があり、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち1つが未知の場合、これを算出することができる。例えば密度及び厚さが既知であれば、ナノ薄膜のヤング率を算出できる。
【0017】
また本発明の他の観点によれば、以下のa)〜d)を備える薄膜特性測定装置に使用する共振デバイスの設計方法であって、下記、工程1)〜工程3)を備えた共振デバイス設計方法が提供される。
工程1)支持部の幅(w)と厚み(t)の第1比率(w/t)を所定範囲内に決定する工程
工程2)支持部の長さ(L)と厚み(t)の第2比率(L/t)を所定範囲内に決定する工程
工程3)第2比率/第1比率(L/w)を所定閾値以上として前記支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法を決定する工程
【0018】
a)基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイス
b)櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源
c)共振デバイス単独及び共振デバイスにナノ薄膜が形成された状態で、周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から共振デバイス単独及びナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段
d)共振デバイス単独の共振周波数と、ナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段
【発明の効果】
【0019】
本発明の共振デバイス、共振デバイスシート、薄膜特性測定装置および共振デバイス設計方法によれば、共振デバイス自体のヤング率の算出誤差を低減でき、共振デバイスを構成する基板上に形成させるナノ薄膜のヤング率を高い精度で計測できる。といった効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】共振デバイスの構造模式図
【図2】共振デバイスの扇形部と支持部の模式図
【図3】共振デバイスの形状寸法の解析フロー図
【図4】(1)共振デバイスの曲げ解析を行うための解析モデル、(2)ヤング率算出手順の説明図
【図5】共振デバイスの曲げ解析結果を示す図、(1)アスペクト比aとヤング率の相関グラフ、(2)アスペクト比aとヤング率の算出誤差の相関グラフ
【図6】共振デバイスの振動解析において共振デバイスのR部、固定条件、回転中心のヤング率誤差に与える影響についての説明図
【図7】共振デバイスの振動解析において回転中心の特定を行うために検討した内容の説明図
【図8】共振デバイスの振動解析において共振デバイスの回転中心および扇中心位置の影響についての説明図
【図9】共振デバイスの振動解析において共振デバイスの物性値の影響についての説明図
【図10】共振デバイスの曲げ解析結果と振動解析結果を示す図
【図11】共振デバイスシートの構造図
【図12】共振デバイスシートを用いた計測システム構成図
【図13】共振デバイス単独のヤング率の算出誤差を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0022】
(共振デバイスの構造)
先ず、共振デバイスの構造について、図1を参照して説明する。図1に示すように、共振デバイス2は、シリコンウェハ基板4上に薄膜によって形成された扇形で、その要となる支持部6はシリコンウェハ基板4に対して垂直の回転軸を有し回転可能に構成される。扇形の共振デバイス2の両辺には、櫛歯電極8の複数の可動側電極8aが辺の外側に向かって突出するように、扇形の弧側から要側に向けて一列に間隔を置いて櫛状に形成されている。可動側電極8aは、扇形の弧側から要側に向かって少しずつ突出する長さが短くなっている。
そして、可動側櫛歯電極8aの間の隙間には、櫛歯電極8の複数の固定側櫛歯電極8bの先端が扇形の辺の内側に向かって突出するように、扇形の弧側から要側に向けて一列に間隔を置いて櫛状にシリコンウェハ基板4の固定部10側に形成されている。
【0023】
また、共振デバイス2の弧側には、共振デバイス2が振動した際の振幅を測定するためのゲージ14がシリコンウェハ基板4側に設けられ、指針16が共振デバイス2側に設けられている。共振デバイスの振動の様子をカメラやビデオ等で撮影し、撮影画像のゲージ14と指針16の位置関係から共振周波数を求める。
【0024】
共振デバイス2は、交流電圧が供給されると、シリコンウェハ基板4の面に対して垂直の回転軸の回りに振動する。共振デバイスの振動をカメラ等によって撮影する。共振デバイスの共振周波数を決定するため、交流電圧の周波数を変化させながら撮影を行う。撮影された画像上の指針とゲージ14を用いて、最も振幅が大きくなったときを決定する。そして最大振幅の周波数を共振周波数と決定する。
【0025】
薄膜を形成した共振デバイス2において、同様に共振周波数を求める。薄膜が形成されている共振デバイスと薄膜が形成されていない共振デバイスでは共振周波数が異なる。薄膜が形成されていない共振デバイス単独の場合の共振周波数をf1、薄膜が形成されている共振デバイスの共振周波数をf2とし、共振デバイス単独のヤング率をE1、厚さをt1、密度をρ1とし、薄膜のヤング率をE2、厚さをt2、密度をρ2とすると、ヤング率E2は、下記式2によって求められる。
【0026】
(数2)
E2=E1{(f2/f1)2(t1/t2+ρ1/ρ2)−(t1/t2)}
・・・(式2)
【0027】
従って、共振デバイス単独のヤング率E1、厚さt1、密度ρ1、薄薄膜の密度ρ2、厚さt2が既知であれば、上記の式1より共振デバイス上に形成された薄膜のヤング率を求めることができることになる。
共振デバイスによれば、精度よく、サブミクロンからナノの厚みを有する薄膜のヤング率を測定できる。共振デバイス2は、支持部6の回りに回転可能であるので、共振デバイス2は、交流電圧が印加されたときシリコンウェは基板4の垂直な軸回りに振動することから、圧縮残留応力を持つ薄膜材料であっても、変形が振動特性に大きく影響を及ぼすことがないという利点がある。
【0028】
(共振デバイスの設計工程)
図2は、共振デバイスの扇形部分と支持部6の模式図である。図2(1)の示すように、共振デバイスは、扇形部分の面に垂直な回転軸を有する面内振動と、扇形部分の面に沿って回転軸を有し団扇のように振動する面外振動と、さらに支持部6自体を回転軸として振動するねじり振動が、低次共振モード(代表的な振動モード)になる。ここで、求めたい共振周波数は面内振動に関するものであり、面外振動やねじり振動は考慮しない。
図2(2)に示すように、共振デバイスの支持部6を直方体に見立てて、厚み(t)、幅(w)、長さ(L)を定義する。また、以下の説明ならびに図面中の表記に関して、比率(w/t)をアスペクト比(a)、比率(L/t)を長さ比(λ)と定義する。
【0029】
図3は、共振デバイスの寸法形状の決定工程を示すフローである。上記の共振デバイス単独のヤング率の算出誤差を小さくするために、共振デバイスの形状に関して図3のフローに従って寸法を決定する。
先ず、曲げ解析を用いて共振デバイス単独の基板ヤング率を正しく求められる支持部の寸法範囲を導出する(ステップS1)。具体的には、支持部の厚み(t)に対する支持部の幅(w)と厚み(t)の比率(w/t)、支持部の厚み(t)に対する支持部の長さ(L)と厚み(t)との比率(L/t)をパラメータとする。
【0030】
次に、共振解析を用いて共振デバイス単独の基板ヤング率を正しく求められる支持部を含む振動子の寸法範囲と形状を導出する(ステップS2)。具体的には、比率(w/t)が0.6〜1.2の範囲、より好ましくは1.0〜1.2の範囲になるように、共振デバイスの支持部の幅と厚みを設計する。具体的には、支持部の厚み(t)に対する支持部の幅(w)と厚み(t)の比率(w/t)、支持部の厚み(t)に対する支持部の長さ(L)と厚み(t)との比率(L/t)をパラメータとする。
そして、曲げの寸法範囲と共振の寸法範囲がオーバラップする寸法範囲で共振デバイス寸法形状を決定する(ステップS3)。
【0031】
図4(1)は、共振デバイスの曲げ解析を行うための解析モデルを示している。また図4(2)は、ヤング率算出手順の説明図である。支持部の幅(w)や長さ(L)によって、曲り易さが異なり、その結果、面内振動に影響がでることが予想される。
そこで、支持部の幅(w)や長さ(L)のパラメータを変えて、曲げ解析を行った。
解析条件は、ヤング率が168.9(GPa),ポアソン比が0.064,密度が2330(kg/m3),厚みtが2(μm),支持部の長さLが10,20,40(μm),支持部の幅wが0.6,1,1.4,2,4,6(μm)である。
【0032】
また、ヤング率の算出手順は、先ず荷重Pを負荷とし、先端部位の変位を計測する(図4(2)の測定点を参照)。そして、先端のたわみを計測してヤング率を算出する。
【0033】
図5(1)はアスペクト比の逆数(1/a)とヤング率の関係を示している。また図5(2)はアスペクト比の逆数(1/a)と基板ヤング率の算出誤差を示している。図5(2)のグラフから、以下の範囲でヤング率の算出誤差が8%以内であったことがわかる。
・長さ比(λ)=5 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>1
・長さ比(λ)=7.5 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.5
・長さ比(λ)=10 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.4
・長さ比(λ)=15 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.25
・長さ比(λ)=20 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.18
【0034】
次に、共振デバイスの扇形の中心端部と支持部の端部との接合部の形状が、ヤング率の計測誤差に与える影響について説明する。図6(1)に示すように、扇形外形と支持部との接合部にR部が無い方とR部が有る方と、どちらがヤング率の計測誤差が小さいかについて説明する。
これについては、接合部にR部が無い方が基板ヤング率の算出誤差が改善されることがわかった。R部が無い方が高精度に導出できる理由は、導出に用いる材料力学式(曲げと共振)とモデル形状との間に矛盾がないためである。R部を考慮しない材料力学式を用いることにより、計算を簡略化できるメリットがある。
従って、共振デバイスの設計においては、扇形の中心端部と支持部の端部との接合部にはR部が無いように、支持部の幅、扇部の要のサイズを決定する。
【0035】
また、図6(2)に示すように共振デバイスの支持部の固定条件の影響について説明する。
これについては、支持部の固定部である土台四辺固定した方は、理想的な条件の完全固定した場合よりも基板ヤング率の算出誤差が10%程度まで誤差が増大することがわかった。従って、支持部の下端は完全に固定されていると仮定して、基板ヤング率を算出する。
【0036】
さらに、図6(3)に示すように共振デバイスの回転中心の影響について説明する。すなわち、扇中心が支持部の固定端(下端)と中心(中央)と上端のどの位置にあるとした場合にヤング率の算出誤差が大きくなるかについて説明する。
図7に回転中心の特定を行うために検討した内容を示す。図7(1)は扇中心が支持部の固定端(下端)と中心(中央)と上端にある場合の支持部と扇部の形状の様子と位置関係を図示したものである。図7(2)は慣性モーメントの算出に要する回転中心を示している。
ここで、慣性モーメントについては、略扇形に形成された外形の面内振動のみを考慮し、面外振動、ねじり振動は考慮しないことにしている。
【0037】
図8は、共振デバイスの回転中心および扇中心位置の影響についての解析結果を示す図である。図8(1)〜(3)は扇中心が支持部の固定端(下端)と中心(中央)と上端にある場合を図示しているものであり、図8(4)〜(6)はそれぞれ図8(1)〜(3)の場合における基板ヤング率の算出誤差の結果のグラフを示している。図8(4)〜(6)のグラフから、回転中心および扇中心位置によらず、基板ヤング率の算出誤差は略同様であることが確認できる。このことから、ヤング率の算出誤差は共振デバイスの回転中心および扇中心位置にはあまり影響しないことがわかる。
扇中心の位置によるヤング率の算出誤差の差は少ないので、扇中心を接合部の中心に持ってくることに問題はない。図8(1)〜(3)のいずれの場合でも(但し、λ=5を除く)、支持部下端の固定端と支持部中央との間に基板ヤング率の理想値(破線:168.9GPa)が存在している。これから、回転中心はそれらの間に存在すると考えられる。従って、慣性モーメントを実験で求める際には、何らかの方法で回転中心位置を特定する必要がある。
【0038】
図9は、共振デバイスの振動について異なる物性値の解析結果を示す図である。図9(1)〜(3)の結果から、物性値によらず同様の基板ヤング率の算出誤差が確認できる。このことから、基板ヤング率は、基板の素材が何であっても、基板ヤング率の算出誤差の傾向は変わらないことがわかる。この傾向は素材には関係なく、共振デバイスの形状のみが影響を及ぼしていることになる。従って、共振デバイスをシリコン以外で作った場合でも、この形状寸法設計の結果を適用できることがわかる。
図8と図9の結果から、ヤング率の算出誤差は共振デバイスの形状のみに依存することがわかる。
【0039】
図10は支持部の寸法決定のための解析結果を示す図である。図10(1)は曲げ解析結果を示しており、図10(2)は振動解析結果を示している。図10(2)から、支持部の長さ比(λ)が5,10,15と大きくなるに従い、ヤング率の算出誤差(%)が小さくなることがわかる。また、アスペクト比(a)が1に近づくほどヤング率の算出誤差(%)が小さくなることがわかる。なお、図10(2)は共振デバイスの回転中心を支持部の中心として計算したものである。
これらの結果を踏まえて、最適な共振デバイスの形状設計を行う。
【0040】
図11は共振デバイスシートの構造図を示している。1枚の共振デバイスシートには、共振デバイスが64個搭載されている。櫛歯電極に交流電源を供給するための電源ラインを構築すべく、2個の共振デバイスが要を中心対象として配置されている。また、1枚の共振デバイスシートには、アスペクト比(a)と長さ比(λ)が異なる条件のものが形成されている。
【0041】
図12は、共振デバイスシートを用いた計測システム構成を示している。図12に示す計測システムは、共振デバイス2をシート上に複数設けたものと、駆動用の交流電圧となる周波数可変電源18と増幅器26と、櫛歯電極に電圧を付与するリード棒と、共振デバイスの振幅を測定するためのマイクロシステムアナライザ28で構成されるものである。
シート上の共振デバイス2の櫛歯電極には、リード棒により駆動用の交流電圧が供給される。駆動用の交流電圧は、例えば、電圧が40Vで周波数が20KHz〜40KHzである。
【0042】
図13は、共振デバイス単独のヤング率の算出誤差について纏めたものである。それぞれ1枚の共振デバイスシートに、アスペクト比(a)と長さ比(λ)が異なる8条件の共振デバイスが形成されている。アスペクト比(a)が小さいほど、長さ比(λ)が大きいほど、共振デバイス単独のヤング率の算出誤差が低減できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、銅薄膜やメタン系及びフッ素系ガスに基づく各種カーボン膜などのナノ薄膜のヤング率測定デバイスとして有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 共振デバイスシート
2 共振デバイス
4 シリコンウェハ基板
6 支持部
8,12 櫛歯電極
8a,12a 可動側櫛歯電極
8b,12b 固定側櫛歯電極
10 固定部
18 周波数可変電源
24 演算装置
26 増幅器
28 マイクロシステムアナライザ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズの厚さのナノ薄膜ヤング率を測定する測定デバイス(以下、共振デバイスと称する。)および共振デバイスの設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、成膜した材料の機械物性、特にヤング率や硬さについて、高精度の計測が求められている。特に、ナノの厚みを持つナノ薄膜材料のヤング率を高精度に計測する技術が求められているものの、現在のところ、ナノ薄膜材料のヤング率を簡便かつ精度良く計測できる技術は見当たらない。
そこで、発明者らは、ヤング率計測のためのシリコンマイクロ共振器を設計・製作し、駆動システムや信号計測機器を開発した。ナノ薄膜材料のヤング率を簡便かつ精度良く計測できることを実証し、既に、計測に用いる共振デバイスを提案している(特許文献1)。かかる共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成されたものである。
【0003】
しかしながら、この共振デバイスを用いてナノ薄膜のヤング率を測定する場合には、共振デバイスの形状寸法パラメータが測定精度に大きく影響するということが様々な思考錯誤の実験により判明した。本発明者らは、鋭意研究を重ねて、測定精度を向上させるべく、共振デバイスの形状寸法パラメータをトライ・アンド・エラーにより特定したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−197085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ナノ薄膜のヤング率を精度よく求めるためには、ナノ薄膜を形成させる基板自体のヤング率を精度よく求める必要があると考えた。
すなわち、本発明は、ナノ薄膜のヤング率を高精度で測定できることを目指し、基板ヤング率の算出誤差を低減した形状寸法パラメータを備えた共振デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した如く、共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成されたものである。
本発明者らは、扇形の外形形状自体のサイズ、基板の厚みに対する支持部の幅と長さをいろいろと変化させ、基板のヤング率を正しく算出できる共振デバイスの形状寸法パラメータを求めた。そして、支持部の形状が基板のヤング率の算出誤差低減に大きく寄与できることを見出した。また、その傾向として、基板厚みに対して支持部の幅が小さく、支持部の長さが長いほど、ヤング率の算出誤差を低減できることがわかった。
【0007】
すなわち、上記目的を達成すべく、本発明の共振デバイスは、基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスにおいて、下記1)〜3)の条件下で、支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法が決定されるものである。
1)支持部の幅(w)と厚み(t)との第1比率(w/t)を0.5〜3の範囲とする。
2)支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)を5〜20の範囲とする。
3)第2比率/第1比率(L/w)を5以上とする。
【0008】
かかる寸法条件の支持部を備える共振デバイスによれば、共振デバイス単独のヤング率の算出誤差を8%以内にでき、ナノ薄膜を形成させる基板自体のヤング率を精度よく求めることができる。
ここで、共振デバイスの支持部の下端は完全に固定されていると仮定する。また、共振周波数(f)は、バネ定数(k)と慣性モーメント(J)の2変数パラメータを用いることにより下記式1から算出できる。ここで、Eは共振デバイスの基板ヤング率、wは共振デバイスの支持部の幅、lは共振デバイスの支持部の長さ、ρは共振デバイスの密度、θは共振デバイスの振動子の角度、共振デバイスの振動子の半径である。
【0009】
【数1】
【0010】
バネ定数(k)は、支持部の静的な曲げ特性から決定する。慣性モーメント(J)は、略扇形に形成された外形の動的な振動特性とし、面外振動およびねじり振動は無視して、面内振動のみから決定する。共振周波数(f)は、面内振動解析から求める。
そして、上記式1を用いて、静的な曲げ特性から決定されるバネ定数(k)からヤング率を算出したものと、動的な振動特性から求めた共振周波数(f)からヤング率を算出したものの両方で、誤差8%以内に入る支持部の寸法範囲を決定する。
この場合、ヤング率の算出誤差は、静的な曲げ特性から得られたヤング率と、動的な振動特性から得られたヤング率とで、同じ傾向、すなわち、アスペクト比の逆数(1/a)が大きくなるほど減少する傾向にあった。その上、同一の1/aの値での誤差を比較すると、動的な振動特性から得られたヤング率の誤差よりも静的な曲げ特性から得られたヤング率の誤差の方が小さいことがわかった。このことから、ヤング率を算出誤差を小さくするためには、動的な振動特性から得られたヤング率の誤差結果から、支持部の寸法形状を設計する。
すなわち、ヤング率算出誤差は、振動解析から得た共振周波数を用いてヤング率誤差が算出されるのが好ましいのである。
また、扇形の中心端部と支持部の端部との接合部において、中心端部の幅が端部の幅よりも大きく段差が設けられる方が中心端部の幅と端部の幅とが略同等もしくは滑らかに接合する場合よりもヤング率の算出誤差の更なる低減を図ることが可能である。
【0011】
また、上記の1)支持部の幅(w)と厚み(t)は、支持部を直方体に見立てたものであり、支持部が円柱や楕円柱の場合は、直径や長径・短径に相当する。また、第1比率(w/t)は、0.5〜3の範囲に入るのが好ましいがその理由は以下の通りである。第1比率(w/t)が0.5未満になると、支持部の幅が狭く曲げ強度が低下して共振デバイスの破損リスクが増大する。第1比率(w/t)が3より大きくなると、ヤング率の算出誤差が大きく増大する。また、更にヤング率の算定精度向上を図るべく、さらに好ましくは、第1比率(w/t)は0.8〜2の範囲になるように支持部の幅と厚みを決定する。
【0012】
次に、上記の2)支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)は、5〜20の範囲に入るのが好ましいがその理由は以下の通りである。第2比率(L/t)が5未満になるとヤング率の算出誤差が大きく増大する。また、第2比率(L/t)が20より大きくなると、支持部の幅と厚みに対して長さが極端に大きくなり、支持部形状が細長くなり共振デバイスの破損リスクが増大する。また、更にヤング率の算定精度向上を図るべく、さらに好ましくは、第2比率(L/t)は10〜15の範囲になるように支持部の長さと厚みを決定する。
【0013】
そして、上記の3)第2比率/第1比率(L/w)は、第2比率(L/t)を第1比率(w/t)で割ったものであり、結果的に、第2比率(L/t)÷第1比率(w/t)=L/t×t/w=L/wとなる。これを5以上とするように、支持部の長さ(L)と幅(w)を決定する。更にヤング率の算定精度向上を図るためには、第2比率/第1比率(L/w)は10以上になるように支持部の長さ(L)と幅(w)を決定する。
【0014】
また本発明の他の観点によれば、上記の共振デバイスを複数備え、櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源ラインが、少なくとも設けられた共振デバイスシートが提供される。
かかる共振デバイスシートに対して、計測対象であるナノ薄膜材料と同じ薄膜作製工程を施すことにより、共振デバイスシート上の共振デバイスの扇形の面上にナノ薄膜を形成させる。共振デバイスシート上には櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源ラインが設けられていることから、振動用電圧を該電源ラインに周波数を変化させながら供給することにより、ナノ薄膜の形成前に事前に計測した共振デバイス単独の共振周波数と、ナノ薄膜が形成された後の共振デバイスの共振周波数とから、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、ナノ薄膜のヤング率を測定する。通常、この共振デバイスシートには、同じ形状寸法パラメータの共振デバイスが複数個搭載される。そして、シートから個々のの共振デバイスを切り離して使用することが可能である。
また、共振デバイスシートに、複数種類の第1比率(w/t)と第2比率(L/t)を有する共振デバイスを複数備えることにより、様々な寸法条件でナノ薄膜のヤング率を計測し、それらの計測結果を総合的に判断することで、ナノ薄膜のヤング率の算出精度を高めることができる。
【0015】
また本発明の他の観点によれば、以下の1)〜4)を備えた薄膜特性測定装置が提供される。
1)上記の共振デバイスシート
2)櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源
3)共振デバイス単独及び共振デバイスにナノ薄膜を成膜した状態で、周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から共振デバイス単独及びナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段
4)共振デバイス単独の共振周波数と、ナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段
【0016】
かかる構成の薄膜特性測定装置によれば、上記2)の周波数可変電圧を上記1)の共振デバイスシートに供給したとき、共振デバイスシート上の共振デバイスが扇形の要付近の位置の垂直な軸の回りに振動する。周波数可変電圧の周波数を変化させていくと、特定の周波数で共振する。共振デバイス単独の場合と、ナノ薄膜が形成された共振デバイスの場合とでは共振周波数が異なる。これら異なる2つの共振周波数と、形成されたナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとには特定の関係があり、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち1つが未知の場合、これを算出することができる。例えば密度及び厚さが既知であれば、ナノ薄膜のヤング率を算出できる。
【0017】
また本発明の他の観点によれば、以下のa)〜d)を備える薄膜特性測定装置に使用する共振デバイスの設計方法であって、下記、工程1)〜工程3)を備えた共振デバイス設計方法が提供される。
工程1)支持部の幅(w)と厚み(t)の第1比率(w/t)を所定範囲内に決定する工程
工程2)支持部の長さ(L)と厚み(t)の第2比率(L/t)を所定範囲内に決定する工程
工程3)第2比率/第1比率(L/w)を所定閾値以上として前記支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法を決定する工程
【0018】
a)基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイス
b)櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源
c)共振デバイス単独及び共振デバイスにナノ薄膜が形成された状態で、周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から共振デバイス単独及びナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段
d)共振デバイス単独の共振周波数と、ナノ薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、ナノ薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段
【発明の効果】
【0019】
本発明の共振デバイス、共振デバイスシート、薄膜特性測定装置および共振デバイス設計方法によれば、共振デバイス自体のヤング率の算出誤差を低減でき、共振デバイスを構成する基板上に形成させるナノ薄膜のヤング率を高い精度で計測できる。といった効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】共振デバイスの構造模式図
【図2】共振デバイスの扇形部と支持部の模式図
【図3】共振デバイスの形状寸法の解析フロー図
【図4】(1)共振デバイスの曲げ解析を行うための解析モデル、(2)ヤング率算出手順の説明図
【図5】共振デバイスの曲げ解析結果を示す図、(1)アスペクト比aとヤング率の相関グラフ、(2)アスペクト比aとヤング率の算出誤差の相関グラフ
【図6】共振デバイスの振動解析において共振デバイスのR部、固定条件、回転中心のヤング率誤差に与える影響についての説明図
【図7】共振デバイスの振動解析において回転中心の特定を行うために検討した内容の説明図
【図8】共振デバイスの振動解析において共振デバイスの回転中心および扇中心位置の影響についての説明図
【図9】共振デバイスの振動解析において共振デバイスの物性値の影響についての説明図
【図10】共振デバイスの曲げ解析結果と振動解析結果を示す図
【図11】共振デバイスシートの構造図
【図12】共振デバイスシートを用いた計測システム構成図
【図13】共振デバイス単独のヤング率の算出誤差を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0022】
(共振デバイスの構造)
先ず、共振デバイスの構造について、図1を参照して説明する。図1に示すように、共振デバイス2は、シリコンウェハ基板4上に薄膜によって形成された扇形で、その要となる支持部6はシリコンウェハ基板4に対して垂直の回転軸を有し回転可能に構成される。扇形の共振デバイス2の両辺には、櫛歯電極8の複数の可動側電極8aが辺の外側に向かって突出するように、扇形の弧側から要側に向けて一列に間隔を置いて櫛状に形成されている。可動側電極8aは、扇形の弧側から要側に向かって少しずつ突出する長さが短くなっている。
そして、可動側櫛歯電極8aの間の隙間には、櫛歯電極8の複数の固定側櫛歯電極8bの先端が扇形の辺の内側に向かって突出するように、扇形の弧側から要側に向けて一列に間隔を置いて櫛状にシリコンウェハ基板4の固定部10側に形成されている。
【0023】
また、共振デバイス2の弧側には、共振デバイス2が振動した際の振幅を測定するためのゲージ14がシリコンウェハ基板4側に設けられ、指針16が共振デバイス2側に設けられている。共振デバイスの振動の様子をカメラやビデオ等で撮影し、撮影画像のゲージ14と指針16の位置関係から共振周波数を求める。
【0024】
共振デバイス2は、交流電圧が供給されると、シリコンウェハ基板4の面に対して垂直の回転軸の回りに振動する。共振デバイスの振動をカメラ等によって撮影する。共振デバイスの共振周波数を決定するため、交流電圧の周波数を変化させながら撮影を行う。撮影された画像上の指針とゲージ14を用いて、最も振幅が大きくなったときを決定する。そして最大振幅の周波数を共振周波数と決定する。
【0025】
薄膜を形成した共振デバイス2において、同様に共振周波数を求める。薄膜が形成されている共振デバイスと薄膜が形成されていない共振デバイスでは共振周波数が異なる。薄膜が形成されていない共振デバイス単独の場合の共振周波数をf1、薄膜が形成されている共振デバイスの共振周波数をf2とし、共振デバイス単独のヤング率をE1、厚さをt1、密度をρ1とし、薄膜のヤング率をE2、厚さをt2、密度をρ2とすると、ヤング率E2は、下記式2によって求められる。
【0026】
(数2)
E2=E1{(f2/f1)2(t1/t2+ρ1/ρ2)−(t1/t2)}
・・・(式2)
【0027】
従って、共振デバイス単独のヤング率E1、厚さt1、密度ρ1、薄薄膜の密度ρ2、厚さt2が既知であれば、上記の式1より共振デバイス上に形成された薄膜のヤング率を求めることができることになる。
共振デバイスによれば、精度よく、サブミクロンからナノの厚みを有する薄膜のヤング率を測定できる。共振デバイス2は、支持部6の回りに回転可能であるので、共振デバイス2は、交流電圧が印加されたときシリコンウェは基板4の垂直な軸回りに振動することから、圧縮残留応力を持つ薄膜材料であっても、変形が振動特性に大きく影響を及ぼすことがないという利点がある。
【0028】
(共振デバイスの設計工程)
図2は、共振デバイスの扇形部分と支持部6の模式図である。図2(1)の示すように、共振デバイスは、扇形部分の面に垂直な回転軸を有する面内振動と、扇形部分の面に沿って回転軸を有し団扇のように振動する面外振動と、さらに支持部6自体を回転軸として振動するねじり振動が、低次共振モード(代表的な振動モード)になる。ここで、求めたい共振周波数は面内振動に関するものであり、面外振動やねじり振動は考慮しない。
図2(2)に示すように、共振デバイスの支持部6を直方体に見立てて、厚み(t)、幅(w)、長さ(L)を定義する。また、以下の説明ならびに図面中の表記に関して、比率(w/t)をアスペクト比(a)、比率(L/t)を長さ比(λ)と定義する。
【0029】
図3は、共振デバイスの寸法形状の決定工程を示すフローである。上記の共振デバイス単独のヤング率の算出誤差を小さくするために、共振デバイスの形状に関して図3のフローに従って寸法を決定する。
先ず、曲げ解析を用いて共振デバイス単独の基板ヤング率を正しく求められる支持部の寸法範囲を導出する(ステップS1)。具体的には、支持部の厚み(t)に対する支持部の幅(w)と厚み(t)の比率(w/t)、支持部の厚み(t)に対する支持部の長さ(L)と厚み(t)との比率(L/t)をパラメータとする。
【0030】
次に、共振解析を用いて共振デバイス単独の基板ヤング率を正しく求められる支持部を含む振動子の寸法範囲と形状を導出する(ステップS2)。具体的には、比率(w/t)が0.6〜1.2の範囲、より好ましくは1.0〜1.2の範囲になるように、共振デバイスの支持部の幅と厚みを設計する。具体的には、支持部の厚み(t)に対する支持部の幅(w)と厚み(t)の比率(w/t)、支持部の厚み(t)に対する支持部の長さ(L)と厚み(t)との比率(L/t)をパラメータとする。
そして、曲げの寸法範囲と共振の寸法範囲がオーバラップする寸法範囲で共振デバイス寸法形状を決定する(ステップS3)。
【0031】
図4(1)は、共振デバイスの曲げ解析を行うための解析モデルを示している。また図4(2)は、ヤング率算出手順の説明図である。支持部の幅(w)や長さ(L)によって、曲り易さが異なり、その結果、面内振動に影響がでることが予想される。
そこで、支持部の幅(w)や長さ(L)のパラメータを変えて、曲げ解析を行った。
解析条件は、ヤング率が168.9(GPa),ポアソン比が0.064,密度が2330(kg/m3),厚みtが2(μm),支持部の長さLが10,20,40(μm),支持部の幅wが0.6,1,1.4,2,4,6(μm)である。
【0032】
また、ヤング率の算出手順は、先ず荷重Pを負荷とし、先端部位の変位を計測する(図4(2)の測定点を参照)。そして、先端のたわみを計測してヤング率を算出する。
【0033】
図5(1)はアスペクト比の逆数(1/a)とヤング率の関係を示している。また図5(2)はアスペクト比の逆数(1/a)と基板ヤング率の算出誤差を示している。図5(2)のグラフから、以下の範囲でヤング率の算出誤差が8%以内であったことがわかる。
・長さ比(λ)=5 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>1
・長さ比(λ)=7.5 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.5
・長さ比(λ)=10 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.4
・長さ比(λ)=15 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.25
・長さ比(λ)=20 の時は、アスペクト比の逆数(1/a)>0.18
【0034】
次に、共振デバイスの扇形の中心端部と支持部の端部との接合部の形状が、ヤング率の計測誤差に与える影響について説明する。図6(1)に示すように、扇形外形と支持部との接合部にR部が無い方とR部が有る方と、どちらがヤング率の計測誤差が小さいかについて説明する。
これについては、接合部にR部が無い方が基板ヤング率の算出誤差が改善されることがわかった。R部が無い方が高精度に導出できる理由は、導出に用いる材料力学式(曲げと共振)とモデル形状との間に矛盾がないためである。R部を考慮しない材料力学式を用いることにより、計算を簡略化できるメリットがある。
従って、共振デバイスの設計においては、扇形の中心端部と支持部の端部との接合部にはR部が無いように、支持部の幅、扇部の要のサイズを決定する。
【0035】
また、図6(2)に示すように共振デバイスの支持部の固定条件の影響について説明する。
これについては、支持部の固定部である土台四辺固定した方は、理想的な条件の完全固定した場合よりも基板ヤング率の算出誤差が10%程度まで誤差が増大することがわかった。従って、支持部の下端は完全に固定されていると仮定して、基板ヤング率を算出する。
【0036】
さらに、図6(3)に示すように共振デバイスの回転中心の影響について説明する。すなわち、扇中心が支持部の固定端(下端)と中心(中央)と上端のどの位置にあるとした場合にヤング率の算出誤差が大きくなるかについて説明する。
図7に回転中心の特定を行うために検討した内容を示す。図7(1)は扇中心が支持部の固定端(下端)と中心(中央)と上端にある場合の支持部と扇部の形状の様子と位置関係を図示したものである。図7(2)は慣性モーメントの算出に要する回転中心を示している。
ここで、慣性モーメントについては、略扇形に形成された外形の面内振動のみを考慮し、面外振動、ねじり振動は考慮しないことにしている。
【0037】
図8は、共振デバイスの回転中心および扇中心位置の影響についての解析結果を示す図である。図8(1)〜(3)は扇中心が支持部の固定端(下端)と中心(中央)と上端にある場合を図示しているものであり、図8(4)〜(6)はそれぞれ図8(1)〜(3)の場合における基板ヤング率の算出誤差の結果のグラフを示している。図8(4)〜(6)のグラフから、回転中心および扇中心位置によらず、基板ヤング率の算出誤差は略同様であることが確認できる。このことから、ヤング率の算出誤差は共振デバイスの回転中心および扇中心位置にはあまり影響しないことがわかる。
扇中心の位置によるヤング率の算出誤差の差は少ないので、扇中心を接合部の中心に持ってくることに問題はない。図8(1)〜(3)のいずれの場合でも(但し、λ=5を除く)、支持部下端の固定端と支持部中央との間に基板ヤング率の理想値(破線:168.9GPa)が存在している。これから、回転中心はそれらの間に存在すると考えられる。従って、慣性モーメントを実験で求める際には、何らかの方法で回転中心位置を特定する必要がある。
【0038】
図9は、共振デバイスの振動について異なる物性値の解析結果を示す図である。図9(1)〜(3)の結果から、物性値によらず同様の基板ヤング率の算出誤差が確認できる。このことから、基板ヤング率は、基板の素材が何であっても、基板ヤング率の算出誤差の傾向は変わらないことがわかる。この傾向は素材には関係なく、共振デバイスの形状のみが影響を及ぼしていることになる。従って、共振デバイスをシリコン以外で作った場合でも、この形状寸法設計の結果を適用できることがわかる。
図8と図9の結果から、ヤング率の算出誤差は共振デバイスの形状のみに依存することがわかる。
【0039】
図10は支持部の寸法決定のための解析結果を示す図である。図10(1)は曲げ解析結果を示しており、図10(2)は振動解析結果を示している。図10(2)から、支持部の長さ比(λ)が5,10,15と大きくなるに従い、ヤング率の算出誤差(%)が小さくなることがわかる。また、アスペクト比(a)が1に近づくほどヤング率の算出誤差(%)が小さくなることがわかる。なお、図10(2)は共振デバイスの回転中心を支持部の中心として計算したものである。
これらの結果を踏まえて、最適な共振デバイスの形状設計を行う。
【0040】
図11は共振デバイスシートの構造図を示している。1枚の共振デバイスシートには、共振デバイスが64個搭載されている。櫛歯電極に交流電源を供給するための電源ラインを構築すべく、2個の共振デバイスが要を中心対象として配置されている。また、1枚の共振デバイスシートには、アスペクト比(a)と長さ比(λ)が異なる条件のものが形成されている。
【0041】
図12は、共振デバイスシートを用いた計測システム構成を示している。図12に示す計測システムは、共振デバイス2をシート上に複数設けたものと、駆動用の交流電圧となる周波数可変電源18と増幅器26と、櫛歯電極に電圧を付与するリード棒と、共振デバイスの振幅を測定するためのマイクロシステムアナライザ28で構成されるものである。
シート上の共振デバイス2の櫛歯電極には、リード棒により駆動用の交流電圧が供給される。駆動用の交流電圧は、例えば、電圧が40Vで周波数が20KHz〜40KHzである。
【0042】
図13は、共振デバイス単独のヤング率の算出誤差について纏めたものである。それぞれ1枚の共振デバイスシートに、アスペクト比(a)と長さ比(λ)が異なる8条件の共振デバイスが形成されている。アスペクト比(a)が小さいほど、長さ比(λ)が大きいほど、共振デバイス単独のヤング率の算出誤差が低減できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、銅薄膜やメタン系及びフッ素系ガスに基づく各種カーボン膜などのナノ薄膜のヤング率測定デバイスとして有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 共振デバイスシート
2 共振デバイス
4 シリコンウェハ基板
6 支持部
8,12 櫛歯電極
8a,12a 可動側櫛歯電極
8b,12b 固定側櫛歯電極
10 固定部
18 周波数可変電源
24 演算装置
26 増幅器
28 マイクロシステムアナライザ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスにおいて、
前記支持部の幅(w)と厚み(t)との第1比率(w/t)を0.5〜3の範囲とし、
前記支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)を5〜20の範囲とし、
第2比率/第1比率(L/w)を5以上とした条件下で、
前記支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法が決定され、
共振デバイス単独のヤング率算出誤差を8%以内としたことを特徴とする共振デバイス。
【請求項2】
前記支持部の下端は完全に固定されていると仮定し、
前記ヤング率算出誤差は、振動解析から得た共振周波数を用いてヤング率誤差が算出されたことを特徴とする請求項1に記載の共振デバイス。
【請求項3】
請求項1の共振デバイスを複数備え、
前記櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源ラインが、
少なくとも設けられた共振デバイスシート。
【請求項4】
請求項3の共振デバイスシートと、
前記櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源と、
共振デバイス単独及び共振デバイスに薄膜を形成した状態で、前記周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から、共振デバイス単独及び薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段と、
共振デバイス単独の共振周波数と、薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする薄膜特性測定装置。
【請求項5】
基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスと、
前記櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源と、
共振デバイス単独及び共振デバイスに薄膜を形成した状態で、前記周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から共振デバイス単独及び薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段と、
共振デバイス単独の共振周波数と、薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段と、
を備える薄膜特性測定装置に使用する共振デバイスの設計方法であって、
前記支持部の幅(w)と厚み(t)の第1比率(w/t)を所定範囲内に決定する工程と、
前記支持部の長さ(L)と厚み(t)の第2比率(L/t)を所定範囲内に決定する工程と、
第2比率/第1比率(L/w)を所定閾値以上として前記支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法を決定する工程と、
を備えたことを特徴とする共振デバイス設計方法。
【請求項1】
基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスにおいて、
前記支持部の幅(w)と厚み(t)との第1比率(w/t)を0.5〜3の範囲とし、
前記支持部の長さ(L)と厚み(t)との第2比率(L/t)を5〜20の範囲とし、
第2比率/第1比率(L/w)を5以上とした条件下で、
前記支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法が決定され、
共振デバイス単独のヤング率算出誤差を8%以内としたことを特徴とする共振デバイス。
【請求項2】
前記支持部の下端は完全に固定されていると仮定し、
前記ヤング率算出誤差は、振動解析から得た共振周波数を用いてヤング率誤差が算出されたことを特徴とする請求項1に記載の共振デバイス。
【請求項3】
請求項1の共振デバイスを複数備え、
前記櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源ラインが、
少なくとも設けられた共振デバイスシート。
【請求項4】
請求項3の共振デバイスシートと、
前記櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源と、
共振デバイス単独及び共振デバイスに薄膜を形成した状態で、前記周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から、共振デバイス単独及び薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段と、
共振デバイス単独の共振周波数と、薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする薄膜特性測定装置。
【請求項5】
基板上に外形が略扇形に形成され、かつ扇形の要となる支持部上において基板に垂直な軸周りに回転可能に設けられ、扇形の一方の辺が静電引力付与用の櫛歯電極に形成された共振デバイスと、
前記櫛歯電極に振動用の電圧を供給する周波数可変電源と、
共振デバイス単独及び共振デバイスに薄膜を形成した状態で、前記周波数可変電源から周波数を変化させた電圧が共振デバイスに供給されたときの振幅の変化から共振デバイス単独及び薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数をそれぞれ測定する共振周波数測定手段と、
共振デバイス単独の共振周波数と、薄膜が形成された共振デバイスの共振周波数と、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち2つの既知のものと、共振デバイス単独のヤング率、密度及び厚さとに基づいて、薄膜のヤング率、密度及び厚さのうち未知のものを算出する算出手段と、
を備える薄膜特性測定装置に使用する共振デバイスの設計方法であって、
前記支持部の幅(w)と厚み(t)の第1比率(w/t)を所定範囲内に決定する工程と、
前記支持部の長さ(L)と厚み(t)の第2比率(L/t)を所定範囲内に決定する工程と、
第2比率/第1比率(L/w)を所定閾値以上として前記支持部の幅(w)、長さ(L)および厚み(t)の寸法を決定する工程と、
を備えたことを特徴とする共振デバイス設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−208008(P2012−208008A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73745(P2011−73745)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【出願人】(800000057)公益財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【出願人】(800000057)公益財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】
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