説明

ナノ薄膜熱物性測定方法および測定装置

【課題】
数十〜数百ナノメートルオーダーの金属膜あるいは有機膜の薄膜の熱物性測定を容易にかつ簡便に行うことができるナノ薄膜熱物性測定方法および測定装置を提供する。
【解決手段】
対象励起用パルス光として、tpulse<1/3t1/2でtpulse>1nsで、かつ
rep>15t1/2であり、
ここで、tpulse:レーザのパルス幅
1/2:ハーフタイム(レーザフラッシュ法で測定される最大温度上昇の2分の1に達するまでの時間)
rep:測定対象励起用パルス光の照射間隔時間
としたパルス光を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルスレーザを用いたナノ薄膜熱物性測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Easeley等によって超短パルスにより試料表面を加熱し、その温度変化をサーモリフレクタンス法で測定する方法が提案され、従来にない時間分解能で試料の熱物性値が得られることが報告されている。報告の内容は、非特許文献1,2に詳述されている。
【0003】
Easeleyらが開発した方法は、表面状態の影響やノイズの影響を受け、測定結果が変化するという問題があった。竹歳らは定量性の確保をするため次の改良を加えた。
【0004】
裏面加熱,表面測温により信号を測定することで、試料の表面状態に影響を受けにくい手法を開発した。位相成分に注目することで信号のS/N比を向上させた。解析方法を開発し定量性を向上した。定量性の確保以外にも、電気遅延という手法を用いることで測定の時間領域を広げより厚いものも測定できるようになった。
【0005】
特開2003−322628号公報には測定対象励起用パルス光を測定対象に照射する一方、プローブパルス光を該測定対象に照射して、励起パルス光による該測定対象の状態変化に対応したプローブ光の該測定対象照射後の変化を観測する高速パルス高速時間応答測定方法において、測定対象励起用パルス光としてパルス光が周期的に発振される光源を用意し、別個にプローブパルス光として励起光と等しい周期で発振するパルス光源を用意し、励起パルス光の測定対象照射時に対するプローブ用パルス光の測定対象照射時刻の差を電気的に制御することにより、励起パルス光とプローブパルス光の時間差に依存して変化する信号を検出する高速パルス高速時間応答測定方法が記載されている。
【0006】
そして、前記2台の光源のそれぞれに、周期的にパルス光が発振するレーザを用いることが記載され前記2台の光源のパルス幅が1ナノ秒未満であることが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−322628号
【非特許文献1】ピコ秒サーモリフレクタンス法を用いた薄膜熱物性計測技術,慶應義塾大学大学院理工学研究科博士学位審査公聴会資料,2003年12月19日
【非特許文献2】Development of a thermal diffusivity measurement system for metal thin films using a picosecond thermoreflectance technique, Institute of Physics Publishing, Published 6 November 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薄膜の熱物性はバルクと違い製造条件で変化することがあるため、薄膜の熱物性を測定したいというニーズがあった。そのようなニーズにこたえるために、竹歳らによりピコ秒サーモリフレクタンス法が開発された。しかし、ピコ秒サーモリフレクタンス法では、観測可能時間が短いため、数百ナノメートルオーダーの金属膜あるいは有機薄膜の熱物性測定は難しい。また、短パルスレーザは高価で扱いが難しいという問題点もあった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑み、数百ナノメートルオーダーの金属膜あるいは有機薄膜の熱物性測定を容易にかつ簡便に行うことができるナノ薄膜熱物性測定方法および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の熱物性状態変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定方法および測定装置において、
前記対象励起用パルス光として、tpulse<1/3t1/2でtpulse>1nsで、かつ照射間隔が1測定対象励起用パルス光による温度変化の実質的に完結する時間よりも大きく設定され、
ここで、tpulse:レーザのパルス幅
1/2:ハーフタイム(レーザフラッシュ法で測定される最大温度上昇の2分の1に達するまでの時間)
rep:測定対象励起用パルス光の照射間隔時間
としたパルス光を用いるナノ薄膜熱物性測定方法および測定装置を提供する。
【0011】
前記測定パルス光のパルス幅を前記測定対象励起用パルス光のパルス幅と実質的に同一にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
数百ナノメートルオーダーの金属膜あるいは有機膜の薄膜の熱物性測定を容易にかつ簡便に行うことができるナノ薄膜熱物性測定方法および測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例は、測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の熱物性状態変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定方法および装置において、
前記対象励起用パルス光として、tpulse<1/3t1/2でtpulse>1nsで、かつtrep>15t1/2
とした、パルス光を発振する加熱用パルス発生ユニット、および前記パルス光と同一のパルス幅を有し、遅延されたパルス光を発振する検出用パルス発生ユニットを用いるナノ薄膜熱物性測定方法および装置を構成する。
【0014】
測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の温度変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定方法および装置において、
モリブデン(熱拡散率54×10-62-1)1500nm以上
チタン(熱拡散率9.3×10-62-1)700nm以上
あるいは、
ポリイミド(熱拡散率0.17×10-62-1)100nm以上
の薄膜試料に対して、実用的に励起用パルス光のパルス幅が1ナノ秒以上であり、照射時間が照射間隔内で生じる1パルスに起因する薄膜試料の温度変化よりも短い時間以内に設定されたパルス光を用いるナノ薄膜熱物性測定方法及び装置を構成する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例であるナノ薄膜熱物性測定装置をブロック図で示す。ナノ薄膜熱物性測定装置100は、加熱側系統に加熱用パルス発生ユニット1,光ファイバとコリメートヘッド4,5,ライトチョッパ6,加熱光位置調整ミラー7,Zステージ8によってZ方向の位置が調整されるレンズ9,試料(薄膜試料)10を保持し、XYZ方向の位置を調整する試料ホルダー及びXYZステージ11を有し、測定側系統に検出用パルス発生ユニット2,加熱用パルス検出ユニット1との間に設けた遅延パルス発生器3,ビームスプリッタ21,照明22とセットにされた可動ミラー23,ミラー25,レンズ26,CCDカメラ27と一体化された可動ミラー28,レンズ29,差動受光ディテクタ30,差動受光調整モータ31およびミラー32を備える。制御ソフトウエアを内蔵したパソコン(PC)41は、ライトチョッパ6および差動受光ディテクタ30に接続されたロックインアンプ42,試料ホルダー及びXYZステージ11,CCDカメラ27,差動受光調整モータ31および遅延パルス発生器3を制御する。
【0017】
遅延パルス発生器3が発生するトリガ信号に同期した測定対象励起用パルス(加熱光パルス)が加熱用パルス発生ユニット1から繰返し発振される。発振した加熱光パルスは、光ファイバとコリメートヘッド4により平行光となる。この平行光はライトチョッパ6により周期的な変調が与えられる。加熱光パルスは、加熱光位置ミラー7で調整され、試料10にレンズ9を通して集光される。試料10の温度変化は繰返し照射されるパルス光による温度変化とライトチョッパ6による周期的な温度変化が組み合わされたものとなる。この温度変化に比例して、例えば、試料10の表面のモリブデン膜の反射率変化が起こる。
【0018】
一方、遅延パルス発生器3が発振するトリガ信号に同期したパルス(検出光パルスすなわち測定パルス)が検出用パルス発生ユニット2から繰返し発振される。発振した検出光パルスは光ファイバとコリメートヘッド5により平行光となる検出光パルスは、試料10の反対側にレンズ26を通して集光される。集光位置は加熱パルスの裏面である。試料面で反射した検出光パルスは差動受光ディテクタ30の信号側から受光される。このパルスは加熱光パルスに対して時間遅れを持って発振する。時間遅れを変えつつ反射光の強度を測定することで、加熱光パルスに対する試料の温度上昇の時間変化が測定される。反射光の強度はロックインアンプ42により位相及び振幅として計測される。なお、検出光パルスは試料10に照射される前にビームスプリッタ21で分割される。これを、差動受光ディテクタ30の参照側に入射することで、検出光パルスに含まれる出力変動とノイズを低減する。
【0019】
加熱用パルス発生ユニット1に固体レーザあるいはレーザダイオードを用いることができる。
【0020】
検出用パルス発生ユニット2として、出力の弱い検出用レーザ、例えばレーザダイオードを用い、差動受光ディテクタ30の増幅度を上げることによって高価な高出力レーザを使用したのと同等の効果を得ることができる。レーザダイオードに代えて固体レーザを使用してもよい。検出用パルス発生ユニット2から照射するパルスに加熱用パルス発生ユニットから照射されるパルスの100分の1以下とされ照射影響がないようにされる。パルス幅が2nsのパルスレーザを加熱光源および検出光源とし、電気遅延方式により加熱パルスと検出パルスの間隔を0〜30μsまで遅延可能である。
【0021】
ライトチョッパ6を用いることで、効率よく安価に、短パレスレーザの変調を行うことができる。
【0022】
回転濃度フィルタを用い、PC41のデータ取得手段を用いて、差動受光ディテクタ30の光量調整を自動、あるいは電圧出力を観察しながら調整を行うことができる。
【0023】
光ファイバを用いることによって光学系とレーザを分離して、光学系をコンパクトにすると共に、装置全体を立体構造とし、占有面積を小さくすることができる。すなわち、加熱用パルス発生ユニット1および検出用パルス発生ユニット2の出力側に光ファイバとコリメートヘッド4,5を設けて、加熱用パルス発生ユニット1および検出用パルス発生ユニット2を含む測定系側の接続線に光ファイバを用いることができる。
【0024】
図2は、温度上昇曲線を示す。金属薄膜を測定しようとした場合、従来法によれば図2(a)に示すようにピコ秒サーモリフレクタンス法による測定が行われることになり、ピコ秒パルス幅を持つパルスレーザが採用されるが、温度上昇が遅い薄膜の測定を実現するピコ秒レーザは現在のところ存在しない。有機薄膜を測定しようとした場合、繰返し周波数が高いため、観測領域が不足する。パルスあたりのエネルギーが小さいため信号が小さい。
【0025】
本実施例は、有機薄膜を測定する場合に、図2(b)に示すように下段のナノ秒サーモリフレクタンス法において、2nsのパルス幅を採用する。この場合のt1/2は約100nsである。
【0026】
図3に、2nsのパルス幅を用いたナノ秒サーモリフレクタンス法による温度上昇曲線を示す。2nsのパルス幅の加熱光を使用すると、有機薄膜であっても充分に温度が上昇し、観測(計測)し得ることが判る(図3(a))。これに対して、ナノ秒サーモリフレクタンス法で測定した同じ膜厚の試料をレーザフラッシュ法で測定する場合に、温度上昇に比べパルス幅が長いため、パルスのエネルギーの上昇と試料の温度上昇の区別が困難である(図3(b))。すなわち、観測が不可となる。
【0027】
図4に測定の模式図を示す。
【0028】
薄膜(測定対象)の一方の面から加熱光パルスが与えられる。その反対の面から検出光パルスが与えられる。パルス幅はパルス強度の最大値の1/2のときの幅で定義される。
【0029】
図5に観測時間の模式図を示す。
【0030】
加熱パルスが発振するたびに、試料の温度上昇が繰返し起きる。加熱パルスの照射(発振)間隔より長い試料の温度変化で生じる場合には、次のパルスによる温度上昇が先の温度上昇中に起こることから加熱パルスの照射間隔は試料の温度変化が実質的に完結した時間よりも長くすることになる。よって、加熱パルスが発振される間隔で観測時間がきまる。
【0031】
薄膜試料によって測定対象および試料厚みを示すと次のようになる。
【0032】
(1)測定対象
測定可能物質
プラスチック,ガラス,セラミックス,金属,合金などの固体材料
測定可能製品
光・光磁気ディスク用記録材料,相変化メモリ,半導体素子,透明導電膜
【0033】
(2)厚み
モリブデン(熱拡散率54×10-62-1):1500nm以上
チタン(熱拡散率9.3×10-62-1):700nm以上
ポリイミド(熱拡散率0.17×10-62-1):100nm以上
採用される加熱パルス光の実用範囲、効果顕著な範囲を示せば次のようである。
【0034】
(3)実用範囲
実用範囲としては、tpulse<1/3t1/2でtpulse>1nsが採用される。また、trep>15t1/2を同時に満たす必要がある。
pulse:レーザのパルス幅
1/2:ハーフタイム(レーザフラッシュ法で測定される最大温度上昇の2分の1に達するまでの時間。)
rep:照射(発振)間隔
【0035】
(4)効果顕著な範囲
効果顕著な範囲としては、tpulse<1/3t1/2でtpulse≧2nsである。また、trep>15t1/2を同時に満たす必要がある。
次に、測定レーザの選定方法について述べる。
【0036】
(5)パルス幅の選定方法(検出光パルス)
パルス幅により観測の分解能が決まる。
パルス幅が短いほど時間分解能が高い。
試料は加熱レーザのパルス幅の間加熱される事から、加熱レーザのパルス幅より長い時間で温度が上昇する。加熱レーザのパルス幅より短い時間分解能は不要である。
よって、最も適した検出光のパルス幅は加熱光のパルス幅と等しくなるように選択する。
【0037】
pump≒tprobe
pulse:加熱光のパルス幅(Tpump
probe:検出光のパルス幅
以上、まとめるとナノ秒サーモリフレクタンス法における加熱パルス光であるレーザの選定方法は図6に示すようになる。
【0038】
図6において、ハーフタイムの1/3以下のパルス幅tpulseを持つレーザを使用する。
【0039】
1/2=0.1388d2/α
pulse<1/3×t1/2
照射間隔時間である観測可能時間trepがハーフタイムの15倍以上である。
【0040】
1/2=0.1388d2/α
rep>15×t1/2
観察可能周波数はパルスの繰返し周波数により決まる。
【0041】
実施例にあっては、パルス幅tpulse 2nsを採用した。パルス幅tpulseは1ns≦tpulse<2nsで充分に実用に供し得る。
【0042】
実施例にあっては、30kHzのレーザを選定した。そして、実用範囲と効果顕著な範囲は図に示す通りである。
【0043】
以上まとめると図6に示したようになる。図6において実用範囲として
1ns<tpulse<1/3×t1/2
1パルスによる温度変化完結時間<trep
となり、
効果顕著な範囲として
2ns≦tpulse
15×t1/2<trep
が採用される。
【0044】
このようにすることによって、結果として、1ナノ秒以上のエネルギーをパルス状に負荷することができ、試料の裏面で温度が上昇する。試料裏面温度上昇を生起させることができ、この試料裏面温度上昇を効率よく観測することができる。
【0045】
図7は、モリブデン厚さ3μmの場合の測定例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図。
【図2】実施例による試料の温度上昇を示す曲線図。
【図3】実施例の有効性を示す温度上昇曲線図。
【図4】照射時間間隔と温度変化を示す図。
【図5】測定模式図。
【図6】本発明についてのまとめ図。
【図7】側定例図。
【符号の説明】
【0047】
1…加熱用パルス発生ユニット、2…検出用パルス発生ユニット、3…遅延パルス発生器、4,5…光ファイバとコリメートヘッド、6…ライトチョッパ、10…試料(薄膜試料)、11…試料ホルダー及びXYZステージ、27…CCDカメラ、30…差動受光ディテクタ、41…パーソナルコンピュータ(PC)、42…ロックインアンプ(Lock in Amplifier)、100…ナノ薄膜熱物性測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の温度変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定方法において、
前記対象励起用パルス光として、tpulse<1/3t1/2でtpulse>1ns、かつ照射間隔が1測定対象励起用パルス光による温度変化の実質的に完結する時間よりも大きく設定され、
ここで、tpulse:レーザのパルス幅
1/2:ハーフタイム(レーザフラッシュ法で測定される最大温度上昇の2
分の1に達するまでの時間)
rep:測定対象励起用パルス光の照射間隔時間
としたパルス光を用いることを特徴としたナノ薄膜熱物性測定方法。
【請求項2】
測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の温度変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定方法において、
前記対象励起用パルス光として、tpulse≧2nsでかつ1パルス光による温度変化完結時間<15t1/2<trepであるパルス光を用いることを特徴としたナノ薄膜熱物性測定方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記測定パルス光のパルス幅を前記測定対象励起用パルス光のパルス幅と実質的に同一としたことを特徴とするナノ薄膜熱物性測定方法。
【請求項4】
測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の温度変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定方法において、
モリブデン(熱拡散率54×10−6−1)1500nm以上
チタン(熱拡散率9.3×10−6−1)700nm以上、あるいは
ポリイミド(熱拡散率0.17×10−6−1)100nm以上
の薄膜試料に対して、1ナノ秒以上のエネルギーをパルス状に負荷させて温度変化について試料裏面の温度上昇を生起させ、該現象を観測することを特徴とするナノ薄膜熱物性測定方法。
【請求項5】
測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の熱物性状態変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定装置において、
前記対象励起用パルス光として、tpulse<1/3t1/2でtpulse>1ns、かつ照射間隔を1パルス光による温度変化が完結する時間よりも大きく設定されるパルス光を発振する加熱用パルス発生ユニットおよび前記パルス光と同一のパルス幅を有し、遅延されたパルス光を発振する検出用パルス発生ユニットを用いることを特徴としたナノ薄膜熱物性測定装置。
【請求項6】
測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の熱物性状態変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定装置において、
前記対象励起用パルス光として、tpulse≧2nsで、かつ1パルス光による温度変化完結時間<15t1/2<trepであるパルス光を発振する加熱用パルス発生ユニットおよび前記パルス光と同一のパルス幅を有し、遅延されたパルス光を発振する検出用パルス発生ユニットを用いることを特徴としたナノ薄膜熱物性測定装置。
【請求項7】
測定対象励起用パルス光を薄膜試料に照射し、測定パルス光を該薄膜試料に照射して、前記測定対象励起用パルス光による該薄膜試料の熱物性状態変化に対応した前記測定パルス光の照射後の変化を測定するナノ薄膜熱物性測定装置において、
モリブデン(熱拡散率54×10−6−1)1500nm以上
チタン(熱拡散率9.3×10−6−1)700nm以上、あるいは
ポリイミド(熱拡散率0.17×10−6−1)100nm以上
の薄膜試料に対して、1ナノ秒以上のエネルギーをパルス状に負荷させて温度変化について試料裏面温度上昇を生起させる測定対象励起用パルス光照射手段を備えることを特徴とするナノ薄膜熱物性測定装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかにおいて、前記検出用パルス発生ユニットとして、固体レーザもしくはレーザダイオードを使用することを特徴とするナノ薄膜熱物性測定装置。
【請求項9】
請求項5から7のいずれかにおいて、前記加熱用パルス発生ユニットから発振される前記測定対象励起用パルスをライトチョッパに入射して、短パルスレーザの変調を行うことを特徴とするナノ薄膜熱物性測定装置。
【請求項10】
請求項5から7のいずれかにおいて、前記加熱用パルス発生ユニットおよび検出用パルス発生ユニットの出力側に光ファイバとコリメートヘッドを設けて、前記加熱用パルス発生ユニットおよび検出用パルス発生ユニットを含む測定系側の接続線に光ファイバを使用したことを特徴とするナノ薄膜熱物性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−71424(P2006−71424A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254590(P2004−254590)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度経済産業省委託研究 中小企業支援型研究開発「光パルス加熱サーモリフレクタンス法薄膜熱物性測定装置の実用化」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000136941)株式会社ベテル (10)
【Fターム(参考)】