説明

ナノ複合材料を製造する方法

脱保護性ポリマー、活性化剤、および層状ケイ酸塩を合わせ、脱保護性ポリマーを少なくとも部分的に脱保護して複合材料を形成する。複合材料をポリマー樹脂と合わせて、ナノ複合材料を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
例えば、繊維または粒状材料などの不溶性材料で強化されたポリマー材料は一般に、「ポリマー複合材料」、または単に「複合材料」と呼ばれる。近年、「ナノ複合材料」と呼ばれる種類の複合材が広く普及してきている。定義によって、ナノ複合材料は、ナノメートルのオーダーの1つまたは複数の寸法を有する強化材を有する。ある種類のナノ複合材料は、強化材として層間剥離層状ケイ酸塩を有し、その層状構造は分割されており、かつ個々のケイ酸塩小板はポリマー樹脂全体に分散されている。
【0002】
層状ケイ酸塩は一般に、積重ねられたケイ酸塩小板で構成される。個々のケイ酸塩小板は通常、厚さ約1ナノメートルおよびアスペクト比少なくとも約100を有する。ケイ酸塩小板間の間隔は、「ギャラリー・スペース(gallery space)」と呼ばれる。適切な条件下にて、ギャラリー・スペースは、例えばポリマーなどの材料で充填され得る。その材料は、層状ケイ酸塩を膨潤し、「層間挿入(intercalation)」と呼ばれるプロセスにおいてケイ酸塩小板間の距離が増加する。個々のケイ酸塩小板の少なくとも一部がもはやスタック(stack)へと構成されないように十分に、層状ケイ酸塩が膨潤した場合には、その個々のケイ酸塩小板は、「層間剥離(exfoliated)」されていると言われる。
【0003】
ポリマーが層間挿入および/または層間剥離する程度は通常、そのポリマーの層状ケイ酸塩との相溶性に依存する。例えば、層状ケイ酸塩と相溶性である基を有するポリマーは、層状ケイ酸塩を層間挿入および/または層間剥離することができる。一方、例えば、非極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)などの一部のポリマーは、層状ケイ酸塩との相溶性を欠いているために、層状ケイ酸塩を容易に層間挿入または層間剥離することができない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
一態様において、本発明は、
脱保護性ポリマー、活性化剤、および層状ケイ酸塩を含む成分を合わせる工程であって、脱保護性ポリマーが、骨格と、骨格から懸垂する複数の保護極性基とを有する工程、および
少なくとも1つの保護極性基を脱保護して、N原子、O原子、またはS原子に共有結合する水素原子を有する極性基、またはその塩を形成し、それによって、脱保護ポリマーを得る工程、および
複合材料を形成する工程であって、層状ケイ酸塩が少なくとも部分的に脱保護ポリマーで層間挿入されているか、または層状ケイ酸塩が少なくとも部分的に層間剥離されているか、あるいはその両方である工程、
を含む、複合材料を製造する方法を提供する。
【0005】
一部の実施形態において、この方法はさらに、保護極性基を有する少なくとも1種類のモノマーを含むモノマーを重合し、脱保護性ポリマーを提供することを含む。
【0006】
一部の実施形態において、この方法はさらに、複合材料をポリマー樹脂と混合し、ナノ複合材料を提供することを含む。
【0007】
本発明による方法は、例えば、それらが層状ケイ酸塩を層間挿入および/または層間剥離することができる、層状ケイ酸塩と十分に相溶性であるポリマーを製造するのに有用である。かかる方法は、N原子、O原子、またはS原子に共有結合する水素原子を有する極性基の存在が重合を妨げない条件下にて、アニオン重合によって製造される、例えば、ポリ(α−オレフィン)ポリマーなどのポリマーからナノ複合材料を形成するのに特に有用である。
【0008】
本明細書で使用される場合、
基に適用される「脱保護性」および「保護(された)」という用語は、同義である。
「脱保護ポリマー」という用語は、少なくとも部分的に脱保護されて、N原子、O原子、またはS原子に共有結合した水素原子を有する少なくとも1つの極性基が形成されているポリマーを意味する。
「(メタ)アクリル」という用語は、アクリルおよび/またはメタクリルを包含する。
ポリマーに適用される「ペンダント基」という用語は、末端基を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(詳細な説明)
有用な層状ケイ酸塩としては、例えば、天然フィロケイ酸塩、合成フィロケイ酸塩、有機変性フィロケイ酸塩(例えば、有機粘土)、およびその組み合わせが挙げられる。
【0010】
天然フィロケイ酸塩の例としては、スメクタイトおよびスメクタイト型粘土、例えばモンモリロナイト、ノントロナイト、ベントナイト、バイデライト(beidellite)、ヘクトライト(hectorite)、サポナイト、ソーコナイト(sauconite)、フルオロヘクトライト、ステベンサイト(stevensite)、ヴォルコンスキー石(volkonskoite)、マガディアイト(magadiite)、ケニヤアイト(kanyaite)、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、およびその組み合わせが挙げられる。
【0011】
合成フィロケイ酸塩の例としては、米国特許第3,252,757号明細書(グランクイスト(Granquist));同第3,666,407号明細書(オールマン(Orlemann));同第3,671,190号明細書(ノイマン(Neumann));同第3,844,978号明細書(ヒクソン(Hickson));同第3,844,979号明細書(ヒクソン(Hickson));同第3,852,405号明細書(グランクイスト(Granquist));同第3,855,147号明細書(グランクイスト(Granquist))に開示されている水熱プロセスによって製造されるフィロケイ酸塩が挙げられる。多くの合成フィロケイ酸塩が市販されており;例えば、商品名「ラポナイト(LAPONITE)」でテキサス州ゴンザレスのサザン・クレイ・プロダクツ社(Southern Clay Products,Inc.,Gonzales,Texas)によって販売されている。例としては、「ラポナイト(LAPONITE)B」(合成層状フルオロケイ酸塩)、「ラポナイト(LAPONITE)D」(合成層状ケイ酸マグネシウム)および「ラポナイト(LAPONITE)RD」(合成層状ケイ酸塩)が挙げられる。
【0012】
有機粘土は一般に、1種または複数種の適切な層間化合物(intercalant)と粘土を相互作用させることによって製造されるスメクタイトまたはスメクタイト型粘土である。これらの層間化合物は一般に、中性であってもイオン性であってもよい有機化合物である。中性有機層間化合物の例としては、アミド、エステル、ラクタム、ニトリル、尿素、カーボネート、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、ニトロ化合物等の極性化合物が挙げられる。中性有機層間化合物は、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの化合物であり得、元の電荷平衡イオンを完全に置換することなく、水素結合によって粘土の層中に層間挿入することができる。適切なイオン性層間化合物としては、カチオン界面活性剤、例えば脂肪族、芳香族または脂肪族のアミン、ホスフィンおよびスルフィドのアンモニウム(第1級、第2級、第3級および第4級)、ホスホニウムまたはスルホニウム誘導体などのオニウム化合物が挙げられる。オニウム化合物は、例えば、第4級窒素原子に結合する少なくとも1つの長鎖脂肪族基(例えば、オクタデシル、ミリスチル、またはオレイル)を有する第4級アンモニウムイオンを含む。有機粘土に関する更なる詳細およびその製造方法は、例えば、米国特許第4、469,639号明細書(トンプソン(Thompson)ら);同第6,036,765号明細書(ファロー(Farrow)ら);および同第6,521,678B1号明細書(チャイコ(Chaiko))に記載されている。
【0013】
様々な有機粘土が供給元から入手可能である。例えば、サザン・クレイ・プロダクツ社(Southern Clay Products)は、「クレイトン(CLAYTONE)HY」、「クレイトン(CLAYTONE)AF」、「クロイサイト(CLOISITE)6A」(改質剤濃度140ミリ当量/100g)、「クロイサイト(CLOISITE)15A」(改質剤濃度125ミリ当量/100g)、および「クロイサイト(CLOISITE)20A」(改質剤濃度95ミリ当量/100g)を含む、商品名「クロイサイト(CLOISITE)」(層状ケイ酸アルミニウムマグネシウムから誘導される)および商品名「クレイトン(CLAYTONE)」(天然ナトリウムベントナイトから誘導される)で種々の有機粘土を提供している。有機粘土は、例えば、商品名「ナノマー(NANOMER)」でイリノイ州アーリントンハイツのナノコー社(Nanocor,Arlington Heights,Illinois)からも市販されている。
【0014】
一般に、層状ケイ酸塩は、X線回折(XRD)および/または透過型電子顕微鏡(TEM)などの周知の技術によって決定することができるd層間隔を示す。本発明に従って、層が層間剥離されているとみなされ、かつd層間隔がXRDまたはTEMによって観察できないほど、層が広く分離された状態になるまで、d層間隔は一般に、脱保護ポリマーによる個々のケイ酸塩層間の層間挿入が進行するにしたがって増加する。
【0015】
脱保護性ポリマーは、それに共有結合したペンダント保護極性基を有する骨格を有する。脱保護されると、その保護極性基は、N原子、O原子、またはS原子に結合した水素原子を有する極性基を形成する。例えば、t−ブチルエステルは、酸触媒の存在下で脱保護され得、相当するカルボン酸およびイソブテンが形成される。N原子、O原子、またはS原子に共有結合した水素原子を有する極性基の例としては、−SH、−OH、−COH、−NHOR、−NROH、−NHNHR、−SOH、−SOH、−OSOH、−OSOH、−POH、−POH、−C(=S)OH、−C(=O)NHR、および−SONHR(式中、Rは、Hまたは任意に置換されるアルキル基、アリール基、アルアリール基、またはアラルキル基を表す)が挙げられる。当然のことながら、使用することができる、N原子、O原子、またはS原子に共有結合した水素原子を有する、その他の多くの極性基がある。かかる極性基の塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩)は、例えば適切な塩基と反応させることによって容易に得らることができる。
【0016】
保護極性基は、例えば、脱保護性カルボキシル基、脱保護性スルフヒドリル基、脱保護性チオカルボキシル基、脱保護性スルホニル基、脱保護性スルフェニル基、脱保護性ヒドロキシル基、脱保護性アミノ基、脱保護性アミド基、またはその組み合わせを含み得る。
【0017】
脱保護性ポリマーは、例えば、相当するポリマー上の極性基を保護することなどによる、任意の適切な方法によって調製することができる。一般に、N原子、O原子、またはS原子に結合した1つまたは複数の水素原子を有する極性基は、極性基と反応し(つまり、保護し)、かつN原子、O原子、またはS原子に結合した水素原子を含まない形態またはその塩にそれを変換する、適切な試薬と反応させることによって、脱保護性形態(つまり、保護されている)に変換することができる。その後の脱保護によって、元の極性基が再生される。N原子、O原子、またはS原子に結合した1つまたは複数の水素原子を有する極性基を保護し、相当する保護極性基を脱保護する方法は広く知られており、例えばP.J.コシエンスキー(Kocienski)によってProtecting Groups第3版、シュトゥットガルト(Stuttgart):ティーメ(Thieme)、c2004、およびT.W.グリーン(Greene)およびP.G.M.ウッツ(Wuts)によってProtective Groups in Organic Synthesis、第2版、ニューヨーク(New York):ウィリー−インターサイエンス(Wiley−Interscience)、c1991に記載されている。
【0018】
保護ヒドロキシル基を有する化合物の例としては:例えば、t−ブチルエーテル、ベンジルエーテル、p−メトキシベンジルエーテル、3,4−ジ−メトキシベンジルエーテル、トリチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル、アルコキシメチルエーテル、メトキシメチルエーテル、2−メトキシエトキシメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p−メトキシベンジルオキシメチルエーテル、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、t−ブチルジメチルシリルエーテル、t−ブチルジフェニルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、テキシルジメチルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、ジ−t−ブチルメチルシリルエーテル、および2−(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテル)、テトラヒドロピラニルエーテル、およびメチルチオメチルエーテルなどのエーテル;例えば、酢酸エステル、安息香酸エステル、ピバル酸エステル、メトキシ酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、およびレブリン酸エステルなどのエステル;例えば、ベンジルカーボネート、p−ニトロベンジルカーボネート、t−ブチルカーボネート、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート、2−(トリメチルシリル)エチルカーボネート、およびアリルカーボネートなどのカーボネートが挙げられる。ヒドロキシル基のための有用な保護性基としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシ、t−ブチルカルバメート、およびトリアルキルシロキシ基が挙げられる。t−ブチル誘導体(例えば、t−ブチルエステル、t−ブチルカーボネート)は、一般に容易に除去され得る気体副生成物(イソブチレン)を生成することから、多くの場合で特に有用である。
【0019】
保護ジオール基を有する化合物の例としては、O,O−アセタール、例えば、イソプロピリデンアセタール、シクロペンチリデンアセタール、シクロヘキシリデンアセタール、アリールメチレンアセタール、メチレンアセタール、およびジフェニルメチレンアセタール;1,2−ジアセタール、例えば、シクロヘキサン−1,2−ジアセタールおよびブタン−2,3−ジアセタール;例えば、1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサニリデン誘導体などのシリレン誘導体が挙げられる。
【0020】
保護チオール基を有する化合物の例としては:例えば、t−ブチルチオエーテル、ベンジルおよび置換ベンジルチオエーテル(例えば、トリチルチオエーテル)などのチオエーテル;2−(トリメチルシリル)エチルチオエーテル;2−シアノエチルチオエーテル;9−フルオレニルメチルチオエーテル;およびチオカーボネート誘導体が挙げられる。
【0021】
保護カルボキシル基を有する化合物の例としては:例えば、C−Cアルカン酸無水物誘導体などの無水物;例えば、メチルエステル、t−ブチルエステル、ベンジルエステル、アリルエステル、フェナシルエステル、アルコキシアルキルエステル、エステル、2,2,2−トリクロロエチルエステル、2−(トリメチルシリル)エチルエステル、2−p−トルエンスルホニルエチルエステル、トリアルキルシリルエステルなどのエステル;および2−置換−1,3−オキサゾリンが挙げられる。
【0022】
保護リン酸基を有する化合物の例としては:例えば、メチルエステル、イソプロピルエステル、およびt−ブチルエステル;ベンジルエステルなどのアルキルエステル;アリルエステル;p−ヒドロキシフェナシルエステル;2−シアノエチルエステル;9−フルオレニルメチルエステル;2−(トリメチルシリル)エチルエステル;2−(メチルスルホニル)エチルエステル;および2,2,2−トリクロロエチルエステルが挙げられる。
【0023】
保護アミノ基を有する化合物の例としては:例えば、フタロイルおよびテトラクロロフタロイルイミド、ジチアスクシニルイミド、およびトリフルオロアセトアミドなどのイミドおよびアミド;例えば、メチルカルバメート、エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、アリルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート、2−(トリメチルシリル)エチルカルバメート、および2,2,2−トリクロロエチルカルバメートなどのカルバメート;例えば、アリールスルホンアミド(例えば、p−トルエンスルホンアミド)などのスルホニル誘導体;N−スルフェニル誘導体;例えば、メトキシメチルアミンなどのN,O−アセタール;例えば、1,3−ジメチル−1,3,5−トリアジナン−2−オンなどのトリアジナノン(triazinanone);例えば、N−トリメチルシリルアミン誘導体、2,2,5,5,−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン誘導体などのN−シリル誘導体;例えば、N−ビス(メチルチオ)メチレンイミンおよびN−ジフェニルメチレンアミンなどのイミンおよびエナミン誘導体が挙げられる。
【0024】
さらに一般的には、脱保護性ポリマーは、そのモノマーのうちの少なくとも1種類が保護極性基を有する、1種または複数種の重合性モノマーを重合させることによって調製することができる。上述のような1つまたは複数の保護極性基を有する重合性モノマーを製造するための多くの簡単な、明確な合成方法がある。例えば、1つまたは複数の保護極性基を有する部位を重合性部位に結合させることができる。この技術は、その極性基が重合性部位と不相溶性であるモノマーに特に有用である。他の例示的な方法では、極性基含有重合性モノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)の極性基が直接保護され得る。
【0025】
少なくとも1つの保護極性基を有するフリーラジカル重合性モノマーの例としては:例えば、(メタ)アクリル酸のt−ブチルもしくはトリアルキルシリルエステルおよびテトラヒドロピラニルエステルなどの保護カルボキシル基を有するフリーラジカル重合性モノマー;例えば、ビニルトリフルオロアセテートおよびシリルエーテル、t−アルキルエーテル、t−ブチルカーボネート、およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのt−ブチルもしくはアルコキシアルキルエーテルなどの保護ヒドロキシル基を有するフリーラジカル重合性モノマー;例えば、t−ブチルカルバメートプロピル(メタ)アクリレートおよびN−ビニル−t−ブチルカルバメートなどの保護アミノ基を有するフリーラジカル重合性モノマー;例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)(メタ)アクリルアミド、N−アルキル−N−トリメチルシリル(メタ)アクリルアミド、および関連する化合物などの保護アミド基を有するフリーラジカル重合性モノマー;例えば、メルカプトアルキル(メタ)アクリレートから誘導される、シリルチオエーテル、t−アルキルチオエーテル、およびアルコキシアルキルチオエーテルなどの保護スルフヒドリル基を有するフリーラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0026】
少なくとも1つの保護極性基を有するアニオン重合性モノマーの例としては:例えば、(メタ)アクリル酸のt−ブチルエステル、トリアルキルシリルエステル、およびテトラヒドロピラニルエステルなどの保護カルボキシル基を有するアニオン重合性モノマー;例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのシリルエーテル、t−アルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルなどの保護ヒドロキシル基を有するアニオン重合性モノマー;例えば、t−ブチルカルバメートアルキル(メタ)アクリレートおよびN−ビニル−t−ブチルカルバメートなどの保護アミノ基を有するアニオン重合性モノマー;例えば、N,N−ビス(トリアルキルシリル)(メタ)アクリルアミド、N−アルキル−N−トリアルキルシリル(メタ)アクリルアミド、および関連する化合物などの保護アミド基を有するアニオン重合性モノマー;例えば、スルフヒドリルアルキル(メタ)アクリレートのシリルチオエーテル、t−アルキルチオエーテル、およびアルコキシアルキルチオエーテルなどの保護スルフヒドリル基を有するアニオン重合性モノマーが挙げられる。
【0027】
少なくとも1つの保護極性基を有するカチオン重合性モノマーの例としては:例えば、t−ブチル、トリアルキルシリル、およびテトラヒドロピラニルビニルエーテルなどの保護ヒドロキシル基を有するカチオン重合性モノマー;ビニルエステル(例えば、ビニルベンゾエート);ビニレンカーボネート;およびアルキルビニルカーボネートが挙げられる。保護スルフヒドリル基を有するカチオン重合性モノマーの例としては:t−ブチル、トリアルキルシリル、およびテトラヒドロピラニルビニルチオエーテル、ビニルチオエステル(例えば、ビニルチオベンゾエート)、およびアルキルビニルチオカーボネートが挙げられる。
【0028】
脱保護性ポリマーは一般に、1種または複数種の脱保護性モノマーを含むモノマーを重合することによって調製され得るが、脱保護性ポリマーは、例えば、N、S、またはO原子に結合した水素原子を有する1つまたは複数のペンダント基またはその塩を有するポリマーなどのポリマー上のペンダント基を保護することによって調製することもできる。
【0029】
保護モノマーは、更なる保護モノマーを含む、1種または複数種の更なるモノマーと単独重合または共重合することができる。このような更なるモノマーの例としては、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン)、ビニルエステル、ビニルエーテル、脂肪族1,3−ジエン、スチレン系モノマー、(メタ)アクリレートモノマー(例えば、C1−C8アルキル(メタ)アクリレートエステル)、アクリロニトリル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、二フッ化ビニリデン、シクロシロキサン、エポキシド、[n]−メタロセノファン(metallocenophane)、およびその組み合わせが挙げられる。
【0030】
適切な重合方法としては、例えば、カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、メタセシス重合、および縮合重合法、およびその組み合わせが挙げられる。これらの重合技術の多くでは、アミノ基、ヒドロキシ基、またはスルフヒドリル基を含有するモノマーを含ませることによって、例えば、Michael付加、連鎖移動、および/または停止などの望ましくない副反応が生じ得る。例えば、アニオン重合の場合には、重合は一般に、開始剤および/または成長ポリマーによって水素原子を引き抜くことによって停止されることから、N原子、O原子、またはS原子に結合した1つまたは複数の水素原子を有するモノマーを重合または共重合することは難しい、または不可能である場合がある。
【0031】
脱保護性ポリマーを製造する他の方法および装置が、例えば、米国特許出願公開第2004/0024130A1号明細書(ネルソン(Nelson)ら)に記載されている。例えば、脱保護性ポリマーは、バッチ式またはセミバッチ式の反応器;連続攪拌タンク反応器;管型反応器;攪拌管型反応器;栓流反応器;例えば米国特許出願公開第2004/0024130A1号明細書(Cernohousら)および同第2003/0035756A1号明細書(ネルソン(Nelson)ら)に記載の温度制御攪拌管型反応器;静的ミキサー;連続ループ反応器;押出機;米国特許第5,814,278号明細書(マイストロヴィッチ(Maistrovich)ら)に記載のシュラウド付き(shrouded)押出機;国際特許出願、国際公開第96/07522号パンフレット(ハマー(Hamer)ら)および米国特許第5,902,654号明細書(ダビッドソン(Davidson)ら)に記載の袋型(pouched)反応器;で行われるプロセスで合成され得る。重合は、バルク状、溶液、懸濁液、エマルジョンで、および/またはイオン性もしくは超臨界流体で行うことができる。脱保護性ポリマーシステムを製造するための具体的な方法としては、原子移動ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、およびニトロキシルまたはニトロキシド(安定性フリーラジカルまたは持続性ラジカル)仲介重合が挙げられる。
【0032】
一般に、脱保護性ポリマーは溶融加工可能であるべきであるが、これは必要条件ではない。例えば、脱保護性ポリマーがある溶媒に可溶性である場合、成分をその溶媒中で合わせることができる。脱保護性ポリマーは、溶融加工性でもなく溶媒可溶性でもない、三次元高分子網状構造を形成するように共有結合で架橋されていない限り、例えば、直鎖状または分岐状のホモポリマー、ランダムコポリマー、テーパード(tapered)コポリマーまたはグラジエントコポリマー、またはその直鎖型、櫛型、はしご型、および星型を含むブロックコポリマー(例えば、ジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマー)などのいずれかの形態を有する。
【0033】
脱保護性ポリマーは、ヘテロ原子(例えば、N、S、O)に共有結合した水素原子を含有しなくてもよいが、脱保護性ポリマーは、ヘテロ原子に共有結合された水素原子を含有することができる。
【0034】
脱保護方法は一般に、選択される特定の保護基によって異なり、例えば、1つまたは複数の保護極性基の酸もしくは塩基触媒による脱保護および/または加水分解を含み得る。かかる方法は一般に、例えば、水および/または酸触媒もしくは塩基触媒または酸化剤もしくは還元剤などの活性化剤を要する。活性化剤の具体的な化学組成がどうであろうと、それは一般に、保護極性基の脱保護が起こる率を高める役割を果たす。活性化剤の性質は、例えば、脱保護性ポリマー上の具体的な保護極性基に応じて異なり得る。熱および/または光を活性化剤と組み合わせて用いることができる。保護極性基の脱保護に続いて、その後の反応が行われ得る。例えば、ポリメタクリル酸を形成するためのポリ(メタ)アクリルエステルの酸触媒脱エステル化または修飾反応に続いて、ポリメタクリル酸無水物を形成するための縮合反応が行われ得るか、あるいは次いで、例えば、脱保護極性基に部位をグラフト化することによって、脱保護反応により露出された基をさらに反応させて、誘導体生成物が形成され得る。
【0035】
一部の実施形態において、活性化剤は、例えば、ブレンステッド酸およびブレンステッド塩基を含むルイス酸またはルイス塩基などの触媒であることができる。本明細書で使用される、「ブレンステッド酸」という用語は、陽子供与体として働くことができる、あらゆる分子またはイオン種を意味し;「ルイス酸」とは、電子対受容体として働くことができる、あらゆる分子またはイオン種を意味し;「ブレンステッド塩基」とは、陽子供与体として働くことができる、あらゆる分子またはイオン種を意味し;「ルイス酸」とは、電子対供与体として働くことができる、あらゆる分子またはイオン種を意味する。
【0036】
ルイス酸の例としては、H、任意の正に荷電した金属イオン(例えばTi3+、Fe2+、Ni2+、Pt4+、Na、K)、BH、BF、BCl、AlCl、およびすべてのブレンステッド酸が挙げられる。ブレンステッド酸の例としては、鉱酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、およびその部分中和された塩)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トルエンスルホン酸、ジクロロ酢酸、フェニルホスホン酸、エチルホスフィン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびパラ−トルエンスルホン酸)、およびその組み合わせが挙げられる。
【0037】
一部の実施形態において、ルイス酸触媒は、例えば、溶融押出機のガラスポートを通して、適切な前駆物質を化学線にさらすことによってその場で生成され得る。かかる前駆物質の例としては、例えば、米国特許第4,318,766号明細書(スミス(Smith));同第4,173,476号明細書(スミス(Smith)ら);同第4,378,277号明細書(スミス(Smith))に記載のオニウム塩(例えば、ジアリールヨードニウム塩またはトリアリールスルホニウム塩)が挙げられる。
【0038】
ルイス塩基の例としては、PF;PCl;任意の負に荷電したイオン(例えば、Br、Cl、F、またはSO2−)、およびすべてのブレンステッド塩基が挙げられる。ブレンステッド塩基の例としては、Br;Cl;F;OH;OCCO2−;NH;第1級、第2級、および第3級の有機アミン(1O, 2O,and 3O organic amine)(ポリアミンなど);フェノキシド;およびその組み合わせが挙げられる。
【0039】
一般に、保護極性基の迅速かつ/または均一な脱保護を確実にするために、活性化剤は、脱保護性ポリマーおよび層状ケイ酸塩とよく混合すべきであるが、これは、必要条件ではない。
【0040】
活性化剤は一般に、成分が合わせられた場合に脱保護性ポリマーの保護極性基の少なくとも一部の脱保護を促進するのに有効な量で、層状ケイ酸塩および脱保護性ポリマーと合わせられる。例えば、成分が溶融押出機において合わせられた場合、活性化剤の量は一般に、押出機での成分の滞留時間中に脱保護性ポリマーの所望の程度の脱保護が得られるように選択される。
【0041】
一般に、活性化剤は、脱保護性ポリマーを基準にして0.001〜10重量部の量で層状ケイ酸塩および脱保護性ポリマーと合わせられるが、それより多い量、または少ない量を使用することができる。さらに一般的には、活性化剤は、脱保護性ポリマーを基準にして0.01〜5重量部の量で層状ケイ酸塩および脱保護性ポリマーと合わせられる。
【0042】
脱保護性ポリマーを少なくとも部分的に脱保護し、かつ層状ケイ酸塩を層間挿入および/または層間剥離する前または後に、脱保護性ポリマー、層状ケイ酸塩、および活性化剤は、1種または複数種の更なるポリマー(例えば、更なる脱保護性ポリマーなど)と合わせられ得る。したがって、脱保護ポリマー、層間挿入および/または層間剥離層状ケイ酸塩、および活性化剤を含有する混合物は、単一ポリマーにおける希釈に適している、またはポリマー材料のスペクトルにわたって適している、マスターバッチを含み得る。かかるマスターバッチは一般に、比較的高い含有量の層間挿入および/または層間剥離層状ケイ酸塩を有する。例えば、層間挿入ケイ酸塩および層間剥離ケイ酸塩の小板の総量は、複合材料を基準にして少なくとも30、40、50、60重量%またはそれ以上を含み得る。複合材料をポリマー樹脂に落として(つまり、ポリマー樹脂と合わせる)、ナノ複合材料を形成することができる。
【0043】
脱保護性ポリマー、活性化剤、および層状ケイ酸塩は、あらゆる順序で合わせることができる(1度にすべて合わせることを含む)。一般に、成分は、同時に合わせられるが、場合によっては、種々の成分の添加の間に時間を経過させることが望ましい場合がある(例えば、脱保護性ポリマーと活性化剤を合わせ、層状ケイ酸塩および/または他の任意の成分とそれらを合わせる前に、それらを反応させて脱保護ポリマーを生成することによって)。
【0044】
一般に、特に溶媒が存在しない場合には、脱保護性ポリマー、層状ケイ酸塩、および活性化剤は、高せん断速度条件下で合わせられる(例えば、ニーダーまたは押出機において)。任意に、脱保護性ポリマー、層状ケイ酸塩、および活性化剤は、周囲温度と比較して高温または低温で(例えば、30℃〜160℃の温度で)合わせられ得る。高温は一般に、脱保護の率を増加し、混合を促進し、かつ揮発性成分の除去を助け得るが、高温は、ポリマー成分の劣化を高める傾向がある場合がある。
【0045】
例えば、溶媒が、脱保護性ポリマー、層状ケイ酸塩、および活性化剤と共に存在するような実施形態では、脱保護性ポリマー、層状ケイ酸塩、および活性化剤を合わせるために使用する混合装置に通気孔を取り付けることが望ましい場合がある。かかる通気孔は、揮発性成分の除去を促進するために減圧で維持され得る。例えば、かかる手順は、2004年9月27日出願の米国特許出願第10/950,834号明細書(ネルソン(Nelson)ら)に記載されている。
【0046】
任意の溶媒を除去した後、得られた複合材料は一般に、複合材料の全重量を基準にして、溶媒を5重量%以下含有する。例えば、複合材料は、複合材料の全重量を基準にして、溶媒を4、3、2、1重量%以下、またはさらには0.1重量%未満含有し得る。
【0047】
脱保護の程度に応じて、脱保護ポリマーは一般に、層状ケイ酸塩を少なくとも部分的に層間挿入し、かつ/または少なくとも部分的に層間剥離する。一般に、脱保護の程度が高くなると、少なくとも部分的に脱保護されたポリマー上のN−H、O−H、および/またはS−H結合を有する極性基の数が多くなり、その結果、一般に層状ケイ酸塩の層間挿入および/または層間剥離の率および/または程度が増加する傾向がある。層間挿入および/または層間剥離の率および/または程度は、溶媒の存在、温度、せん断条件、成分(例えば、脱保護性ポリマー、層状ケイ酸塩、および/または活性化剤)の化学的性質および/または濃度、混合の程度、および混合時間などの変動要素によっても影響を受け得る。
【0048】
したがって、層間挿入および/または層間剥離層状ケイ酸塩の総量は、複合材の少なくとも30、40、50、またはさらには60重量%以上を占め得る。同様に、層状ケイ酸塩は少なくとも30、40、50、60、70、80、またはさらには90%以上層間剥離され得る。
【0049】
複合材料とポリマー樹脂との混合は、一般にポリマー樹脂の性質に応じて、適切な手段によって行うことができる。かかる技術としては、例えば、任意に溶媒の存在下での、押出し、攪拌、および混練が挙げられる。
【0050】
本発明により形成された複合材料は、スクリュー押出機の本体内で液体ポリマー樹脂と合わせられ得、その結果、押出機から抜き取った後に固化され得る(例えば、冷却または硬化によって)液体(例えば、溶融)複合材料が形成される。一般に、押出機の温度は、100℃〜180℃の範囲であり得るが、この範囲外の温度も用いることができる。
【0051】
複合材料およびポリマー樹脂は、例えば上述のような逐次工程で合わせられ得るが、ポリマー樹脂、層状ケイ酸塩、脱保護性ポリマー、および活性化剤もまた合わせられ得、層状ケイ酸塩は、単一工程で層間剥離される。かかる単一工程プロセスは、例えば本明細書に記載のように、脱保護性ポリマー、活性化剤、および層状ケイ酸塩を混合するのに適している方法を使用して行うことができる。
【0052】
例えば、得られるナノ複合材料の目的の物理的性質に応じて、任意の量の複合材料(例えば、マスターバッチ)を任意の量のポリマー樹脂中に落とすことができる。ポリマー樹脂と層間剥離ケイ酸塩小板との重量比は、20〜200の範囲(両端を含む)である。
【0053】
本発明の実施において、有機ポリマー樹脂を使用することができる。例えば、有用なポリマー樹脂は、熱可塑性、熱硬化性、またはその組み合わせであることができる。一般に、本発明による方法は、熱可塑性ポリマー樹脂との使用によく適している。
【0054】
有用な熱可塑性ポリマー樹脂としては、例えば:例えば、ポリ(ピバロラクトン)およびポリ(カプロラクトン)などのポリラクトン;ポリウレタン、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート、または4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンと、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(2,3−ブチレンスクシネート)、ポリエーテルジオール等の直鎖状長鎖ジオールとの反応から誘導されるポリウレタン;ポリ(メタンビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−エーテルビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(ジフェニルメタンビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−シクロヘキサンビス(4−フェニル)カーボネート)、またはポリ(2,2−(ビス4−ヒドロキシフェニル)プロパン)カーボネートなどのポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;例えば、ポリ(4−アミノ酪酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジポアミド)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)、ポリ(m−キシレンアジポアミド)、ポリ(p−キシレンセバクアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、およびポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)などのポリアミド;例えば、ポリ(エチレンアゼレート)、ポリ(エチレン−1,5−ナフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)、ポリ(パラ−ヒドロキシベンゾエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(シス)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(トランス)、ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)およびポリ(2,6−ジフェニル−1,1−フェニレンオキシド)などのポリ(アリーレンオキシド);例えば、ポリフェニレンスルフィドなどのポリ(アリーレンスルフィド);ポリエーテルイミド;例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラル、ポリ塩化ビニリデン、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマーおよびそのコポリマー;例えば、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマーなどのアクリルポリマー;アクリロニトリルコポリマー(例えば、ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン−co−スチレン)およびポリ(スチレン−co−アクリロニトリル));例えば、ポリスチレン、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)ポリマーおよびその誘導体、メチルメタクリレート−スチレンコポリマー、およびメタクリル化ブタジエン−スチレンコポリマーなどのスチレン系ポリマー;例えば、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリプロピレン、塩素化低密度ポリエチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのポリオレフィン;イオノマー;ポリ(エピクロロヒドリン);例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンのナトリウム塩の反応生成物などのポリスルホン;例えば、ポリ(フラン)などのフラン樹脂;例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、およびプロピオン酸セルロースなどのセルロースエステルプラスチック;タンパク質プラスチック;例えば、ポリフェニレンオキシドなどのポリアリーレンエーテル;ポリイミド;ポリビニリデンハロゲン化物;ポリカーボネート;芳香族ポリケトン;ポリアセタール;ポリスルホネート;ポリエステルイオノマー;およびポリオレフィンイオノマーが挙げられる。コポリマーおよび/またはこれらの前述のポリマーの組み合わせも使用することができる。
【0055】
有用なエラストマーポリマー樹脂(つまり、エラストマー)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、スルホン化エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリクロロプレン、ポリ(2,3−ジメチルブタジエン)、ポリ(ブタジエン−co−ペンタジエン)、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリスルフィドエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリ(ブタジエン−co−ニトリル)、水素化ニトリル−ブタジエンコポリマー、アクリルエラストマー、エチレン−アクリレートコポリマーなどの熱可塑性および熱硬化性エラストマーポリマー樹脂が挙げられる。
【0056】
有用な熱可塑性エラストマーポリマー樹脂としては、ポリスチレン、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(t−ブチルスチレン)、およびポリエステルなどのガラス質または結晶質ブロック、およびポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブチレンコポリマー、ポリエーテルエステルなどのエラストマーブロックで構成されたブロックコポリマー、例えば、テキサス州ヒューストンのシェル・ケミカル社(Shell Chemical Company,Houston,Texas)によって商品名「クラトン(KRATON)」で販売されているポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)ブロックコポリマーが挙げられる。これらの前述のエラストマーポリマー樹脂のコポリマーおよび/または混合物もまた使用することができる。
【0057】
有用なポリマー樹脂としては、少なくとも部分的にフッ素化されたポリマーである、フルオロポリマーも挙げられる。有用なフルオロポリマーとしては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、2−クロロペンタフルオロプロペン、3−クロロペンタフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペン、1,1−ジクロロフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、過フッ素化ビニルエーテル(例えば、CFOCFCFCFOCF=CFなどのパーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)、またはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)またはパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル))、例えばニトリル含有モノマー(例えば、CF=CFO(CFCN、CF=CFO[CFCF(CF)O](CFO)CF(CF)CN、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFCN、またはCF=CFO(CFOCF(CF)CN(式中、L=2〜12;q=0〜4;r=1〜2;y=0〜6;t=1〜4;u=2〜6))、臭素含有モノマー(例えば、Z−R−O−CF=CF(式中、Zは、BrまたはIであり、Rは、過フッ素化され得、かつ1つまたは複数のエーテル酸素原子を含有し得る、置換または非置換C−C12フルオロアルキレンであり、xは、0または1である))などの硬化部位モノマー;またはその組み合わせを含むモノマーから、任意に、例えば、エチレンまたはプロピレンなどの更なる非フッ素化モノマーと併せて、調製可能である(例えば、ラジカル重合によって)フルオロポリマーが挙げられる。かかるフルオロポリマーの具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのコポリマー;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、およびフッ化ビニリデンのコポリマー;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー;テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー(例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(プロピルビニルエーテル));およびその組み合わせが挙げられる。
【0058】
市販の有用な熱可塑性フルオロポリマーとしては、例えば、ミネソタ州オークデールのダイニオン社(Dyneon LLC,Oakdale,Minnesota)によって商品名「THV」(例えば、「THV220」、「THV400G」、「THV500G」、「THV815」、および「THV610X」)、「PVDF」、「PFA」、「HTE」、「ETFE」、および「FEP」で市販されているフルオロポリマー;ペンシルバニア州フィラデルフィアのアトフィナ・ケミカルズ社(Atofina Chemicals,Philadelphia,Pennsylvania)によって商品名「カイナー(KYNAR)」(例えば、「カイナー(KYNAR)740」)で市販されているフルオロポリマー;ニュージャージー州ソロフェアのソルベイ・ソレクシス社(Solvay Solexis,Thorofare,New Jersey)によって商品名「ハイラー(HYLAR)」(例えば、「ハイラー(HYLAR)700」)および「ハイラー(HALAR)ECTFE」で市販されているフルオロポリマーが挙げられる。
【0059】
有用な熱硬化性ポリマー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、一液型および二液型のウレタン樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、およびその組み合わせが挙げられる。熱硬化性が使用される場合、その樹脂に適している硬化剤(例えば、熱硬化剤および/または光硬化剤)も、ポリマー樹脂と共に含まれ得る。
【0060】
任意に、複合材料および/またはナノ複合材料はさらに、例えば、界面活性剤、防炎剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着付与剤樹脂、着色剤、芳香、または抗菌剤などの1種または複数種の添加剤を含有し得る。
【0061】
本発明による方法は、バッチプロセスまたは連続プロセスで行われ得る。
【0062】
本発明に従って調製された複合材料およびナノ複合材料は分散液であり、一般に、ポリマー樹脂中の、層間挿入され、かつ/またはより一般的には層間剥離されたケイ酸塩小板の等方性分散液である。本発明による複合材料およびナノ複合材料中の層間剥離ケイ酸塩小板の量は、あらゆる量であることができるが、ナノ複合材料の場合には、ナノ複合材料の全重量を基準にして、一般に0.1〜10重量%の範囲、さらに一般的には0.5〜7重量%の範囲、さらに一般的には1〜5重量%の範囲である。同様に、一部の実施形態において、複合材料またはナノ複合材料中の層間剥離ケイ酸塩小板と層状ケイ酸塩との重量比は、少なくとも1、2、3、4、5、10、50以上であり得るが、それより低い重量比も使用することができる。
【0063】
本発明による複合材料(ナノ複合材料を含む)は一般に、液体状態で(例えば、溶融物として、または任意の溶媒中で)調製かつ処理されるが、例えば、冷却後および/または任意の溶媒を除去した後に、固体として使用することもできる。
【0064】
ナノ複合材料中のポリマー樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂の場合には冷却することによって、あるいは熱硬化性ポリマー樹脂の場合には少なくとも一部硬化することによって、固化または硬化することができる。
【0065】
本発明により調製された組成物は、例えば、バリアフィルムまたはボトル、および難燃性材料の製造において有用である。
【0066】
本発明の方法は、例えば、米国特許第6,448,353B1号明細書(ネルソン(Nelson)ら)および2004年9月1日出願の米国特許出願第10/931,732号明細書(マルクス(Marx)ら)に記載の反応器などの連続攪拌管型反応器を使用して、合成されたポリマーと共に使用するのに特に有利である。例えば、ポリマー合成および混合装置は、脱保護性ポリマーが、層状ケイ酸塩および活性剤と合わせられる混合装置内に直接供給されるように連続して設定することができる。
【0067】
本発明による方法は、非連続式または連続式で行うことができる。
【0068】
本発明の目的および利点は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例に記載の特定の材料およびその量、ならびに他の条件、および詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0069】
別段の指定がない限り、実施例および明細書の他の箇所におけるすべての部、パーセンテージ、比等は重量により、実施例で使用されるすべての試薬は、例えばミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ社(Sigma−Aldrich Company,Saint Louis,Missouri)などの一般の化学製品供給業者から入手されたか、または入手可能であり、あるいは従来の方法によって合成することができる。
【0070】
以下の略語が、実施例全体を通して使用される:
【0071】
【表1】


【0072】
(試験法)
(分子量および多分散性)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって、平均分子量および多分散性を決定した。試料約25ミリグラム(mg)をテトラヒドロフラン(THF)10ミリリットル(mL)に溶解し、混合物を形成した。孔径0.2μmポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルターを使用して、混合物を濾過した。次いで、マサチューセッツ州アマーストのポリマー・ラボラトリー社(PolymerLabs,Amherst,Massachusetts)から商品名「PLGEL−MIXED B」で市販されており、かつオートサンプラーおよびポンプを備えたGPCシステムの一部である、長さ25cm×直径1cmのゲル充填カラムに、濾過した溶液約150マイクロリットルを注入した。GPCシステムは、流量約0.95mL/分で移動するTHF溶離剤を使用して室温で操作された。屈折率検出器を使用して、濃度の変化を検出した。数平均分子量(M)および多分散性指数(PDI)の計算値は、分子量範囲7.5×10〜580g/モルの狭い多分散性のポリスチレン対照を使用して較正した。実際の計算は、ソフトウェア(ポリマー・ラボラトリー社(PolymerLabs)から商品名「キャリバー(CALIBER)」で市販されている)を使用して行った。
【0073】
(NMR分光法)
各ブロックの相対濃度および脱離(elimination)または転位(rearrangement)の確認は、H核磁気共鳴(NMR)分光分析法によって決定した。試験片を濃度約10重量%で重水素化クロロホルムに溶解し、カリフォルニア州パロアルトのバリアン社(Varian,Inc.,Palo Alto,California)から商品名「UNITY 500MHz NMR分光計」で市販されている500MHz H NMR分光計に入れた。固有のブロック成分スペクトルの相対面積からブロック濃度を計算した。
【0074】
バリアン社(Varian,Inc)から商品名「INOVA NMR分光計」で市販されている400MHzワイドボアNMR分光計を使用して、29Siマジック角度回転(29Si MAS)NMR分析を行った。
【0075】
(X線回折(XRD))
4軸形回折計(商品名「HUBER(424/511.1)」でフーバー・ディフラクチオンステヒニークGmbH(Huber Diffraktionstechnik GmbH)、D83253 リムスティング(Rimsting)、ドイツ(Germany)から市販されている)、銅K−α線および散乱放射線のシンチレーション検出器登録を用いて、反射配置X線散乱データを収集した。0.70ミリメートルの円形アパーチャに入射ビームをコリメートした。ステップサイズ0.05度および静止時間10秒を用いて、0.5〜10度(2θ)から反射配置でスキャンを行った。40キロボルトおよび20ミリアンペアの密閉管X線源およびX線発生器のセッティングを使用した。カリフォルニア州ライブモアのMDI社(MDI,Inc.,Livermore,California)から商品名「JADE」で市販されているX線回折分析ソフトウェアを使用して、データ分析およびピーク位置定義を決定した。
【0076】
(赤外分光法)
フーリエ変換赤外分光計(マサチューセッツ州ウォルサムのサーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corp.,Waltham,Massachusetts)から商品名「ニコレット・マグナ(NICOLET MAGNA)750フーリエ変換赤外分光計」で市販されている)を使用して、各試料からの薄い削りくず(shaving)について、透過モードで赤外スペクトルを記録した。サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)から商品名「GRAMS」で市販されている分光法ソフトウェアパッケージの機能を用いて、各スペクトルの複雑なカルボニル領域を解析した。
【0077】
(マスターバッチ調製の一般手順)
マスターバッチの調製は、マサチューセッツ州アクトンのリストAG社(List AG,Acton,Massachusetts)から商品名「LIST DISCOTHERM B6 HIGH VISCOSITY PROCESSOR」で市販されている高粘度プロセッサー(HVP)を使用して行われる。HVPは、撹拌機同心軸を有する、水平な円筒部を有する。角を成す周辺混合−混練棒を有するディスク要素、およびそれらが回転すると軸およびディスク要素と相互作用し、軸およびディスク要素をきれいにする、ハウジングの内部に取り付けられた固定鉤形棒が、軸に(軸に垂直に伸びて)取り付けられる。HVPは、材料の除去のための二軸スクリュー吐出を有する。HVPの総容積は、17.5Lであり、作業容積は12Lである。ハウジング、軸、およびディスク要素は、熱油加熱システムによってすべて加熱される。反応器における伝熱面積は、0.67mである。温度は、HVP内の3つの位置:(1)反応器入口領域(領域1)、(2)反応器中間領域(領域2)、(3)反応器出口領域(領域3)で制御され、モニターされる。可変速電動機は、撹拌機軸を最大トルク1200Nmで駆動する。真空ポンプは、蒸気除去のために領域2の上部で反応器に取り付けられる。
【0078】
(連続二軸スクリュー押出し成形の一般手順)
二軸スクリュー押出し成形は、ニュージャージー州ラムゼーのコペリオン社(Coperion Corp.,Ramsey,New Jersey)から商品名「コペリオン(COPERION)ZSK−25 WORLD LAB押出機」で市販されているL/D41:1を有する同時回転25mm二軸スクリュー押出機(TSE)を使用して行われる。押出機のバレル領域は長さ4D(100mm)である。すべての実施例において、押出機は、スクリュー回転数300rpm、320°F(160℃)で操作される。
【0079】
TSEは、バレル領域3において押出機にそれを加えた後に、溶融PS樹脂にLS1および/またはP(S−VP)を組み込むためのバレル領域4の混練セクションを有する。この混練セクションは長さ3Dであり、分散混合のための高せん断強度および中せん断強度の前進混練要素、および溶融目止めおよび分配混合を生じさせるための低せん断強度の逆進混練要素が組み込まれている。バレル領域5の始まりにある、長さ1Dの小さな空気口(atmospheric vent)を使用して、バレル領域3における粉末添加から閉じ込められた空気を逃がす。3つの下流混合セクションが、分散および分配混合のためにせん断エネルギーを加えるため組み込まれる。3.5D混合セクションはバレル領域5および6にわたり、2.5D混合セクションがバレル領域7で用いられ、3D混合セクションは、バレル領域8および9にわたる。すべての場合において、中せん断強度ないし低せん断強度の前進混練要素および狭いパドル付きの低せん断強度の逆進混練要素が用いられ、適切な分散および分配混合が得られる。揮発物を除去するために、バレル領域9における2D(50mm)真空孔で52トル(6.9kPa)の真空吸引を行う。温度均一性および更なる分配混合を達成するために、コペリオン社(Coperion Corp)から商品名「ZME」で市販されている歯車式混合要素が、真空孔の下流で用いられる。バレル領域4および6それぞれにおける混練セクションにわたって、浸漬熱電対によって、溶融ストリームの温度をモニターし、記録する。TSEの領域1への溶融樹脂の連続押出し成形は、24フライトを有する3.0:1圧縮汎用スクリューを備えた1.25インチ(3.12cm)一軸スクリュー押出機(SSE)(コネチカット州ポーカタックのデイビススタンダード社(Davis−Standard;Pawcatuck,Connecticut)から商品名「KILLION KTS−125一軸スクリュー押出機」で市販されている)によって行われる。二軸スクリュー押出機のバレル領域3における大気に開かれた2D(50mm)入口(port)へのLS1および/またはP(S−VP)の供給は、ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20」で市販されている二軸オーガースクリューを備えた重量測定フィーダー(gravimetric feeder)を使用して行われる。TSEからの押出し物は、ノースカロライナ州ヒッコリーのダイニスコ・エクストルージョン社(Dynisco Extrusion,Hickory,North Carolina)から商品名「NORMAG」で市販されている10.3mL/回転歯車ポンプによって計量され、直径1/2インチ(1.3cm)パイプを通して押出され、ストランドが形成される。そのストランドを水浴中で8℃にて冷却し、ペレット化する。
【0080】
(実施例1〜2)
購入したままのLS1のXRD分析によって、d層間隔2.42ナノメートル(nm)が示された。供給溶液は、P(S−t−BMA)をTHFに溶解し、次いでLS1を添加することによって、THF中のLS1およびP(S−t−BMA)の量(表1に示される)を変化させて調製した。
【0081】
マスターバッチ調製の一般手順に記載されているように、各P(S−t−BMA)/LS1供給溶液を高粘度プロセッサーに0.48l/分で歯車ポンプを介して供給した。HVPを178℃および真空設定90トルで加熱した。主要撹拌機軸を速度63rpmで攪拌し、吐出スクリューを155rpmで動作させた。HVP内の温度を各実施例に対して一定に維持した:領域1=132℃、領域2=182℃、領域3=175℃。
【0082】
得られたP(S−MAn)/LS1複合材料をXRDによって分析し、分散特性を決定し、赤外分光法によってメタクリル酸および無水物の合成を検証した。どちらの複合材料もd層間隔3.7nmの層状ケイ酸塩を有することが判明し、二次および三次の回折パターンを示した。得られた複合材料の赤外分析によって、酸および無水物が存在することが示された。
【0083】
次いで、実施例1のP(S−MAn)/LS1 3:1のマスターバッチを連続二軸スクリュー押出し成形の一般手順に従ってPSに落とした:PSを溶融し、速度5.4kg/時(12ポンド/時)で一軸スクリュー押出機を介して二軸スクリュー押出機に供給し、ペレット化されたマスターバッチを速度1.4kg/時(3ポンド/時)で領域3に供給した。得られた押出し物は、PS:P(S−MAn):LS1の重量比80:15:5を有した。処理量は6.8kg/時(15ポンド/時)であった。押出し物の一部をプレスしてフィルムにし、XRDによって分析し、押出し物中の層状ケイ酸塩がd層間隔3.7nmを有することが示された。
【0084】
【表2】

【0085】
(実施例3)
IKAラボールテヒニクGmbh & Co.KG(IKA Labortechnik Gmbh & Co.KG)、D−79219 シュタウフェン(Staufen)、ドイツ(Germany)から商品名「MKD 0,6−H60 IKAVISC MEASURING KNEADER」で市販されているバッチ真空プロセッサー(Batch Vacuum Processor)(BVP)を120℃で加熱した。BVPは、600mLを保持する混練槽(kneading trough)を有し、作業容積300mLを有した。槽の底は、熱油サーキュレーターを介してバッチを加熱することが可能となる二重壁である。混練は、水平にも垂直にも混合する、モーターに固定された2つの混練パドルで行われた。パドルは壁および互いを絶えず拭う。そこから真空が確立され得、液体が導入され得る、入口(port)がBVPの蓋にある。トルク60Nmを伝達してパドルを駆動することができる歯車アセンブリから下流に、定電力出力160ワットを有するDCモーターを取り付けた。
【0086】
P(I)−DVB−tBDMS(100g)をボウルに加えた。この混合物を溶融し、次いでLS1 100gをボウルに加えた。パドルを速度63rpmで攪拌した。複合材料を30分間混合し、アリコート(試料3A)を採取した。この時点で、PTSA1.0gを混合物に添加した。ボウルを密閉し、真空レベル60トルで維持した。得られた複合材料を63rpmでさらに30分間混合した。30分後、アリコート(試料3B)を採取した。XRD分析を試料3Aおよび3Bについて行った。試料3Aは、d層間隔2.9nmを有すると決定され、試料4Bは、d層間隔3.3nmを有すると決定された。試料3Aおよび3Bからの複合材料について29Si MAS NMR分析もまた行い、トリアルキルシリル保護ヒドロキシル基、t−ブチル−Si(CH−O−の少なくとも部分的な脱保護が確認された。脱保護は、11.7%(3A)から10.9%(3B)の保護末端基と関連する共鳴の相対強度(+17.5ppm)の減少によって確認された。
【0087】
(比較例A〜Bおよび実施例4〜5)
表2に示す組成を有する比較例A〜Bおよび実施例4〜5を調製した。P(I)−DVB−tBDMSが完全に溶解するまで、P(I)−DVB−tBDMSおよびTHFを混合した。次いで、層状ケイ酸塩(LS2またはLS3)を溶液に添加し、それが溶液に分散するまで、振盪機上で1時間混合した。指示されている場合には、TBAFを粘土含有溶液に添加し、この最終溶液を振盪機上で24時間混合した。得られた溶液のアリコート試料を抜き取り、溶媒を真空オーブン内で除去した。比較例A〜Bおよび実施例4〜5をXRDおよび29Si MAS NMRによって分析した。XRD分析の結果を表2に示す。
【0088】
29Si MAS NMR分析から、トリアルキルシラン保護ヒドロキシル基、t−ブチル−Si(CH−O−の存在の減少によって判断されるように、少なくとも部分的な脱保護が比較例A〜Bおよび実施例4〜5から生じたことが確認された。トリアルキルシラン保護ヒドロキシル基と関連する、+17.5ppmでの29Si MAS NMR共鳴の相対強度を表2(以下の)に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
(比較例C〜Dおよび実施例6〜7)
表3に示す組成を有する比較例C〜Dおよび実施例6〜7を調製した。P(I)−BPTMDSCPが完全に溶解するまで、P(I)−BPTMDSCPおよび溶媒(THFおびトルエン)を混合した。次いで、層状ケイ酸塩(LS1またはLS4)を溶液に添加し、振盪機上で1時間混合し、その後にそれは溶液中に分散された。指示されている場合には、HClを粘土含有溶液に添加し、この最終溶液を振盪機上で72時間混合した。得られた溶液のアリコート試料を抜き取り、溶媒を真空オーブン内で除去した。
【0091】
比較例C〜Dおよび実施例6〜7をXRDによって分析し、結果を表3(以下の)に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者によって本発明の種々の変更および改変を加えることができ、本発明は、本明細書に記載の例示となる実施形態に不当に限定されるものではないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱保護性ポリマー、活性化剤、および層状ケイ酸塩を含む成分を合わせる工程であって、前記脱保護性ポリマーが、骨格と、その骨格から懸垂する複数の保護極性基とを有する工程、および
少なくとも1つの保護極性基を脱保護して、N原子、O原子、またはS原子に共有結合する水素原子を有する極性基、またはその塩を形成し、それによって、脱保護ポリマーを提供する工程、および
複合材料を形成する工程であって、層状ケイ酸塩が少なくとも部分的に、脱保護ポリマーで層間挿入されているか、または層状ケイ酸塩が少なくとも部分的に層間剥離されているか、あるいはその両方である工程、
を含む、複合材料を製造する方法。
【請求項2】
前記層状ケイ酸塩が、第1d層間隔を有し、かつ脱保護ポリマーで少なくとも部分的に層間挿入されている層状ケイ酸塩が、第1d層間隔よりも大きい第2d層間隔を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱保護ポリマーがさらに反応して、誘導体生成物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脱保護ポリマーがさらに反応して、無水物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱保護性ポリマーが、ヘテロ原子に共有結合する水素原子を含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活性化剤が、触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記活性化剤が、ブレンステッド酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記活性化剤が、ブレンステッド塩基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記極性基が、ヒドロキシル基、アミノ基、またはカルボキシル基のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
保護極性基の脱保護によって、気体が発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記保護極性基が、保護カルボキシル基、保護スルフヒドリル基、保護チオカルボキシル基、保護スルホニル基、保護スルフェニル基、保護ヒドロキシル基、保護アミノ基、保護アミド基、またはその組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記保護極性基が、t−ブトキシカルボニルオキシ基、t−ブチルカルバメート基、またはトリアルキルシロキシ基のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記脱保護性ポリマーが、α−オレフィン、ビニルエステル、ビニルエーテル、脂肪族1,3−ジエン、スチレン系モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、アクリロニトリル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、二フッ化ビニリデン、シクロシロキサン、エポキシド、[n]−メタロセノファン、およびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類のモノマーを含むモノマーを重合することによって調製可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記層状ケイ酸塩が、モンモリロナイト、ノントロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、フルオロヘクトライト、ステベンサイト、ヴォルコンスキー石、マガディアイト、ケニヤアイト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、合成層状ケイ酸塩、有機粘土、またはその組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記層状ケイ酸塩が、90重量%を超えて層間剥離される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記複合材料が、複合材料の全重量を基準にして、溶媒を1重量%以下含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
複合材料の形成が、層状ケイ酸塩と少なくとも部分的に脱保護されたポリマーを素練りすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
層間挿入層状ケイ酸塩の総量が、複合材料の少なくとも30重量%を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
層間挿入ケイ酸塩と層間剥離ケイ酸塩小板との総量が、複合材料の少なくとも60重量%を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、連続式で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記層状ケイ酸塩が、有機粘土を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記複合材料とポリマー樹脂とを混合して、ナノ複合材料を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマー樹脂が、熱可塑性樹脂を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリルコポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、芳香族ポリケトン、またはその組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマー樹脂が、熱硬化性樹脂を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマー樹脂と前記層間剥離ケイ酸塩小板の重量比が、20〜200の範囲(両端を含む)である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記層間剥離ケイ酸塩小板が、ナノ複合材料の全重量を基準にして1〜5重量%の量(両端を含む)でナノ複合材料中に含有される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
保護極性基を有する少なくとも1種類のモノマーを含むモノマーを重合して、脱保護性ポリマーを提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2008−522949(P2008−522949A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546656(P2007−546656)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/038586
【国際公開番号】WO2006/065357
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】