説明

ナビゲーションシステム、および、電子地図データのデータ構造

【課題】 3次元表示可能な電子地図データにおいて、リアリティを損ねることなく、視覚的に情報提供を行う。
【解決手段】 電子地図データ供給装置は、ナビゲーション装置に、建物や道路などの固定物を3次元的に表示するための固定物データと、車両や立て看板などの可動物を3次元的に表示するための可動物データと、電子地図データの閲覧者に可動物の少なくとも一部と一体化された状態で視覚的に提供されるべき付加情報を記憶した付加情報データとを備えるデータ構造を有する3次元表示可能な電子地図データを配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステム、および、電子地図データのデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品やサービスの宣伝・広告の手法は多様化している。商品等の宣伝・広告は、一般に、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等の媒体を介して、あるいは、広告看板を用いて行われる。近年では、インターネットの普及に伴い、電子データを用いた宣伝・広告も普及している。電子データを用いた宣伝・広告としては、例えば、Webページ上に表示される文字広告や、いわゆるバナー広告や、動画広告や、コンピュータグラフィックスを用いた3次元画像による広告などが挙げられる。
【0003】
ところで、3次元画像は、空間を立体的に表現することができるので、仮想空間を表現したり、現実の空間をシミュレーションしたりするのに用いられる。特に、3次元画像は、コンピュータゲームの画像や、バーチャル・リアリティを利用した各種シミュレーション用の画像等に応用されている。3次元画像は、また、コンピュータで利用可能に電子化された電子地図にも利用されている。電子地図に3次元画像を用いることによって、街の鳥瞰や立体交差をリアルに表現することができる。3次元画像を用いた電子地図は、このリアリティに基づき、地図の把握がし易いという利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、3次元画像を用いた電子地図上で宣伝・広告を行うことが検討されている。この宣伝・広告では、電子地図上に広告看板を設けることが考えられる。しかし、現実とは異なる看板を建物に取り付けるなど、無制限に広告看板を設けることは、表示される街の景観や、リアリティを損ねてしまうという課題があった。特に、経路探索や経路誘導を行うナビゲーション装置で利用される電子地図データにおいては、看過できない課題であった。ユーザは、ナビゲーション装置に表示される画像と、現実に自分の目で見る光景とが異なると、違和感を覚えたり、経路が間違っているのではないかという不安感を感じたりするからである。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、3次元表示可能な電子地図データにおいて、リアリティを損ねることなく、視覚的に情報提供を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、以下の構成を採用した。
本発明の電子地図データのデータ構造は、
3次元表示可能な電子地図データのデータ構造であって、
固定物を3次元的に表示するための固定物データと、
可動物を3次元的に表示するための可動物データと、
電子地図データの閲覧者に前記可動物の少なくとも一部と一体化された状態で視覚的に提供されるべき付加情報を記憶した付加情報データと、
を備えることを要旨とする。
【0007】
ここで、「電子地図データ」とは、現実の世界に基づいて生成された地図データを意味しており、コンピュータゲーム等における完全に仮想的な世界の地図は含まない。電子地図データには、全国地図や、市街地図など、広い領域を表す地図データの他、建物の内部の地図や、地下街の地図など、狭い領域を表す地図データが含まれる。「固定物」とは、容易に移動、変更されないものを意味している。固定物には、例えば、道路、建物、建物に取り付けられた看板、河川、橋などが含まれる。この固定物は、主として現実の世界に実際に存在するものである。「可動物」とは、容易に移動可能なもの、あるいは、動くものを意味している。可動物には、例えば、人間、動物、走行中あるいは駐車中の車両、立て看板、航空機、船、アドバルーン、雲などが含まれる。この可動物は、現実の世界には実際には配置されていない仮想的なものであってもよい。
【0008】
本発明の電子地図データには、固定物データの他に、可動物を3次元的に表すための可動物データと、付加情報データとが含まれる。3次元的に表示される電子地図において、固定物は、地図の閲覧者が最も着目するものであり、リアリティに大きな影響を及ぼす。これに対し、可動物は、一般に、固定物ほどリアリティに影響を及ぼさない。つまり、3次元的に表示される電子地図データにおいて、現実と異なる可動物が表示されたとしても、地図のリアリティを損ねない。本発明では、この可動物の少なくとも一部と一体化された状態で、付加情報が提供される。
【0009】
こうすることによって、電子地図データの閲覧者に対して、リアリティを損ねることなく、視覚的に付加情報の提供を行うことができる。なお、付加情報データと可動物データとは、別個に用意されていてもよいし、それぞれ識別可能に一体的に用意されていてもよい。また、付加情報データと可動物データとは、必ずしも1対1に対応していなくてもよい。例えば、1つの付加情報データが複数の可動物データと対応していてもよいし、複数の付加情報データが1つの可動物データと対応していてもよい。
【0010】
上記データ構造において、地図の表示に直接的に寄与しない付加情報としては、建物等の名称や、地形(標高、河川の長さ等)、天候(天気予報、気温、紫外線情報、花粉情報等)に関する情報など、種々の情報が挙げられるが、例えば、
前記付加情報は、宣伝・広告のための情報であるものとすることができる。
【0011】
こうすることによって、リアリティを損ねることなく宣伝・広告を行うことができる。
【0012】
また、本発明のデータ構造において、
前記可動物データおよび付加情報データの少なくとも一方には、該データに基づく表示を行うために満足すべき表示条件が対応付けられているものとすることが好ましい。
【0013】
こうすることによって、表示条件に応じて、可動物データや付加情報データを容易に抽出して、情報提供、例えば、宣伝・広告を効果的に行うことができる。表示条件としては、例えば、表示すべき地域、縮尺、電子地図データを利用する時間、ユーザからの付加情報データの要否などが挙げられる。
【0014】
本発明は、電子地図データ供給装置の発明として構成することもできる。
即ち、本発明の電子地図データ供給装置は、
電子地図の表示装置に対し、3次元表示可能な電子地図データを供給する電子地図データ供給装置であって、
固定物を3次元的に表示するための固定物データを記憶する固定物データ記憶部と、
可動物を3次元的に表示するための可動物データを記憶する可動物データ記憶部と、
前記表示装置からの前記電子地図の表示要求を入力する入力部と、
該表示要求に基づいて、前記可動物の表示の可否、および前記電子地図データに基づいて生成される3次元仮想空間内における位置を特定する可動物表示制御部と、
前記特定された結果および前記表示要求に基づいて、前記固定物データおよび可動物データを前記表示装置に出力する出力部と、
を備えることを要旨とする。
【0015】
こうすることによって、表示装置からの表示要求に基づいて、可動物を表示するか否か、および、可動物を地図上のどこに表示させるかを特定し、固定物データおよび可動物データを表示装置に供給することができる。なお、可動物データは、上述した付加情報データを伴っていてもよいし、伴っていなくてもよい。可動物の形状自体が宣伝・広告等、付加情報としての機能を有していてもよい。
【0016】
上記電子地図データ供給装置において、
前記表示装置は、例えば、目的地までの経路を表示の基準位置に応じて表示する経路表示装置であり、
前記電子地図において表示すべき経路を予め記憶する経路記憶部を備え、
前記表示要求には、前記基準位置が含まれ、
前記可動物表示制御部は、前記基準位置および前記経路に基づいて、前記表示位置を特定するものとすることができる。
【0017】
ここで、「表示の基準位置」とは、いわゆる表示時の視点に相当し、任意に設定可能である。例えば、表示装置がナビゲーション装置である場合には、表示装置の現在地や、目的地へ向かう出発地が基準位置に相当する。経路記憶部は、予め手動で指定された経路を記憶していてもよいし、経路探索を行った結果を記憶してもよい。本発明では、表示装置からの表示要求には、基準位置が含まれており、可動物表示制御部が、基準位置および経路に基づいて、可動物の表示位置を特定する。従って、経路表示装置に固定物および可動物を基準位置に応じた適切な位置に表示させることができる。例えば、表示装置がいわゆるカーナビゲーション装置の場合、車両の移動とともに可動物が視野から外れずに表示されるように制御することができる。
【0018】
なお、本発明における可動物としては、目的地までの経路誘導を行う先導車や、行き先表示などが挙げられる。例えば、目的地が動物園である場合、動物園までの経路誘導を、車両や、動物が行うようにしてもよい。また、経路上の交差点ごとに立て看板を立てたり、アドバルーンを設置したりして、行き先表示するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明は、地図表示装置の発明として構成することもできる。即ち、
本発明の地図表示装置は、
3次元表示可能な電子地図データに基づいて、電子地図を3次元表示する地図表示装置であって、
前記電子地図データは、
固定物を3次元的に表示するための固定物データと、
可動物を3次元的に表示するための可動物データと、
電子地図データの閲覧者に前記可動物の少なくとも一部と一体化された状態で視覚的に提供されるべき付加情報を記憶した付加情報データと、を備え、
前記電子地図データを参照する参照部と、
前記付加情報データが前記可動物データと一体化された状態で、前記電子地図データを3次元的に表示する表示部と、
を備えることを要旨とする。
【0020】
こうすることによって、地図のリアリティを維持しつつ、固定物、可動物、付加情報を含む電子地図データを3次元的に表示することができる。なお、参照部が参照する電子地図データは、先に説明した本発明の電子地図データ供給装置から供給されるデータであってもよいし、先に説明した本発明の電子地図データを記録した記録媒体から供給されるデータであってもよい。
【0021】
上記地図表示装置において、更に、
前記付加情報の表示可否に関するユーザの指示を入力する指示入力部を備え、
前記表示部は、前記指示に基づいて、前記付加情報の表示可否を切り換えるようにすることができることが好ましい。
【0022】
こうすることによって、地図表示装置の利便性を向上させることができる。なお、地図表示装置は、インターネットなどのネットワークを介して、所定のサーバから電子地図データをダウンロードするものとしてもよい。このような地図表示装置では、例えば、地図表示装置が付加情報として宣伝・広告のための情報をダウンロードする場合には、通信料金がディスカウントされる等の特典が得られるようにしたり、ユーザに有益な情報をダウンロードする場合には、別途課金されるようにしたりするなどの情報提供の態様が考えられる。
【0023】
本発明は、上述の電子地図データのデータ構造、電子地図データ供給装置、地図表示装置としての構成の他、電子地図データの供給方法、電子地図の表示方法の発明として構成することもできる。また、これらを実現するコンピュータプログラム、およびそのプログラム、電子地図データを記録した記録媒体、そのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
【0024】
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラム、電子地図データを記録した記録媒体等として構成する場合には、電子地図データ供給装置、地図表示装置を駆動するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順で説明する。
A.ナビゲーションシステム:
B.地図配信サーバ:
C.ナビゲーション装置:
D.地図配信サーバでの処理:
E.第2実施例:
F.変形例:
【0026】
A.ナビゲーションシステム:
図1は、実施例としてのナビゲーションシステム1000の概略構成を示す説明図である。本実施例のナビゲーションシステム1000は、地図配信サーバ100とナビゲーション装置200とから構成されている。地図配信サーバ100とナビゲーション装置200とは、インターネットINTを介して接続され、各種データのやり取りを行う。地図配信サーバ100は、3次元表示可能な電子地図データをナビゲーション装置200に配信する。ナビゲーション装置200は、地図配信サーバ100から受信した電子地図データに基づいて、電子地図を3次元的に表示する。本実施例では、ナビゲーション装置200は、車両に搭載されるタイプのいわゆるカーナビゲーション装置であるものとした。ナビゲーション装置200は、車両の移動とともに中継局ST1,ST2,ST3,...と無線通信を行う中継局を切換えつつインターネットINTに接続される。なお、地図配信サーバ100は、本発明の電子地図データ供給装置に相当する。ナビゲーション装置200は、本発明の地図表示装置に相当する。
【0027】
B.地図配信サーバ:
図2は、地図配信サーバ100の構成を示す説明図である。地図配信サーバ100は、制御部110と、通信部120と、固定物データ記憶部130と、可動物データ記憶部140と、付加情報データ記憶部150と、経路データ記憶部160とを備えている。これらの各機能ブロックは、ソフトウェア的に構築されている。
【0028】
制御部110は、地図配信サーバ100内の各部の制御を行う。制御部110は、また、ナビゲーション装置200からの表示要求や目的地までの経路に基づいて、後述する可動物の表示の可否および表示位置を特定する。ナビゲーション装置200からの表示要求には、ナビゲーション装置200(車両)の現在地や、目的地、付加情報の表示を要求するか否かなどの指示が含まれる。制御部110は、本発明の可動物表示制御部に相当する。
【0029】
通信部120は、ナビゲーション装置200と各種データのやり取りを行う。通信部120は、例えば、ナビゲーション装置200からの表示要求を受信し、これに基づいて抽出された電子地図データをナビゲーション装置200に送信する。電子地図データには、後述する固定物データと可動物データと付加情報データとが含まれ得る。
【0030】
固定物データ記憶部130は、固定物を3次元的に表示するための固定物データを記憶している。固定物には、例えば、道路、建物、建物に取り付けられた看板、河川、橋などが含まれる。
【0031】
可動物データ記憶部140は、可動物を3次元的に表示するための可動物データを記憶している。可動物には、例えば、人間、動物、走行中あるいは駐車中の車両、立て看板、航空機、船、アドバルーン、雲などが含まれる。この可動物は、現実の世界には実際には配置されていない仮想的なものであってもよい。
【0032】
付加情報データ記憶部150は、付加情報を記憶している。本実施例では、付加情報は、宣伝・広告のための情報であるものとした。付加情報データは、可動物データと対応付けられ、可動物の少なくとも一部と一体化された状態で表示されるように提供される。付加情報には、宣伝・広告のための情報の他に、建物等の名称や、地形(標高、河川の長さ等)、天候(天気予報、気温、紫外線情報、花粉情報等)などに関する情報なども含まれ得る。なお、付加情報データと可動物データとは、必ずしも1対1に対応していなくてもよい。例えば、1つの付加情報データが複数の可動物データと対応していてもよいし、複数の付加情報データが1つの可動物データと対応していてもよい。
【0033】
また、付加情報は、付加情報に基づく表示を行うために満足すべき表示条件が対応付けられている。表示条件としては、例えば、表示すべき地域、縮尺、電子地図データを利用する時間、ユーザからの付加情報データの要否などが挙げられる。このようにすることによって、例えば、ナビゲーション装置200の現在地や目的地、あるいは経路に応じて、その地域に対応した宣伝・広告、観光案内などを行うことができる。また、時間に応じた情報提供も可能である。例えば、時間が食事時であれば、レストランや食堂等の宣伝・広告を行うことができる。
【0034】
図3は、可動物データ記憶部140に記憶される可動物データ、および、付加情報データ記憶部150に記憶される付加情報データの一例を示す説明図である。図3(a)に示すように、可動物データには、各可動物を識別するためのインデックスや、可動物の形状を表すデータや、付加情報との対応付けの可否等に関するデータが記憶されている。また、図3(b)に示すように、付加情報データには、各付加情報を識別するためのインデックスや、表示内容や、対応付けの対象となる可動物等に関するデータが記憶されている。例えば、可動物データのインデックス「M1」の「車両」は、後に図6に示すように、先導車であり、付加情報との対応付けがなされていない。インデックス「M2」の「車両」は、新発売の車両であり、その形状自体が宣伝・広告機能を有しているので、付加情報との対応付けがなされていない。また、付加情報データのインデックス「AD1」の表示内容「○○○」は、複数の可動物、インデックス「M3」の可動物「飛行船」およびインデックス「M5」の可動物「バス」と対応付けられている。
【0035】
なお、固定物データと可動物データと付加情報データとが、本発明の電子地図データのデータ構造に相当する。
【0036】
経路データ記憶部160(図2)は、ナビゲーション装置200の現在地から目的地までの経路データを記憶している。経路データは、ナビゲーション装置200の出発地および目的地に基づいてなされた経路探索の結果であり、経路誘導を行うためのデータである。この経路探索は、地図配信サーバ100で行われる。
【0037】
なお、固定物データ記憶部130、可動物データ記憶部140、付加情報データ記憶部150、および経路データ記憶部160は、地図配信サーバ100の内部に備えられているものとしたが、外部に備えられるようにしてもよい。
【0038】
C.ナビゲーション装置:
図4は、第1実施例のナビゲーション装置200の構成を示す説明図である。ナビゲーション装置200は、表示パネル210と、操作パネル220と、制御ユニット230とを備えている。表示パネル210は、地図や文字情報やメニュー画面や経路探索の結果などを表示する。操作パネル220は、表示パネル210に表示された地図上のカーソルの移動や、縮尺の設定・変更、画面のスクロール、目的地に関する情報の入力や、上述した付加情報の表示の可否を含むメニュー画面での各種設定等、ユーザの指示を入力するためのものである。このユーザの指示の入力は、リモート・コントローラ(リモコン)225を用いて行うことも可能である。
【0039】
制御ユニット230は、CPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、制御部231と、通信部232と、現在地検出部233と、コマンド入力部234と、表示制御部235とを備えている。これらの各機能ブロックは、ソフトウェア的に構成されている。
【0040】
制御部231は、制御ユニット230内の各部の制御を行う。通信部232は、中継局(図1参照)と無線通信を行い、インターネットINTを介して、地図配信サーバ100と各種データのやり取りを行う。現在地検出部233は、図示しないGPSアンテナが受信する人工衛星からの電波に基づいて現在位置を検出する。コマンド入力部234は、操作パネル220やリモコン225の操作によるユーザの指示や経路探索における目的地などを入力する。目的地は、例えば、目的地の住所や、名称や、電話番号などによって特定することができる。表示制御部235は、表示パネル210に表示すべき画面を制御する。
【0041】
図5は、付加情報データの要否、表示の可否の指示を入力するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェースの一例を示す説明図である。付加情報のON/OFF、および付加情報の種類を選択するためのボタンが表示される。本実施例のナビゲーションシステム1000では、付加情報データとして、「広告」、「有料情報」、「行き先案内」が提供され得る。
【0042】
付加情報データとして「広告」が提供される場合には、通信料金が安くなるように設定されている。図示したグラフィカル・ユーザ・インタフェースにおいて、「広告」の項目が選択された場合には、地図配信サーバ100では、通信料金のディスカウント処理が行われる。「有料情報」の項目が選択された場合には、地図配信サーバ100では、課金処理が行われる。また、「行き先案内」の項目が選択された場合には、経路誘導を行う可動物を表示させることもできる。この可動物としては、目的地までの経路誘導を行う先導車や、行き先表示などが挙げられる。例えば、目的地が動物園である場合、動物園までの経路誘導を車両や、動物が行うようにすることができる。また、経路上の交差点ごとに立て看板を立てるなどして、行き先表示するようにしてもよい。
【0043】
なお、本実施例では、表示パネル210に表示されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースによって、付加情報データの要否、表示の可否の指示を入力するものとしたが、操作パネル220のボタンによって入力するものとしてもよい。また、図示は省略したが、他の各種設定の入力画面もグラフィカル・ユーザ・インタフェースで提供される。
【0044】
図6、図7および図8は、表示パネル210に表示される3次元電子地図データの一例を示す説明図である。表示パネル210には、固定物としての建物や、道路の他に、可動物が表示される。
【0045】
図6には、可動物として、車両M1,M2と、飛行船M3と、アドバルーンM4とを示した。進行方向を示す矢印PA1も表示させている。車両M1は、経路誘導を行う先導車である。車両M2は、新発売の車両である。図3に示したように、車両M2には付加情報が対応付けられていないが、車両M2の形状自体が車両の宣伝・広告の機能を有している。飛行船M3の領域R3、アドバルーンM4の垂れ幕の領域R4には、付加情報としての商品やサービスにかかる商標や、店の名称などが表示されている。
【0046】
図7には、可動物として、バスM5と、立て看板M6とを示した。進行方向を示す矢印PA1も表示させている。バスM5の側面の領域R5には、付加情報としての商品やサービスにかかる商標や、店の名称などが表示されている。立て看板M6の領域R6には、行き先が表示されている。
【0047】
なお、図6および図7には、現実的に存在しうる可動物を電子地図データ中に表示させた例を示したが、非現実的な可動物を表示させるようにしてもよい。例えば、ハンバーガー等の食品が空から降ってくるように表示させてもよいし、また、車両M1(先導車)の代わりに、アニメのキャラクタなどを表示させてもよい。
【0048】
図8には、地図を斜め上方から鳥瞰した様子を示した。図示するように、現在地から目的地までの経路における分岐点(交差点)に、目印となる可動物を表示するようにすることもできる。
【0049】
D.地図配信サーバでの処理:
図9は、地図配信サーバ100における電子地図データの配信の流れを示すフローチャートである。まず、ナビゲーション装置200から出発地や目的地、図5に示した付加情報データの要否など各種設定データを取得する(ステップS100)。次に、ナビゲーション装置200の出発地および目的地に基づいて固定物データの抽出を行う(ステップS110)。次に、付加情報の表示の可否、付加情報の要否を判断する(ステップS120)。付加情報の表示が不可である場合には、固定物データを配信して(ステップS200)、処理を終了する。なお、本実施例では、付加情報データの要求がない場合には、可動物データは配信しないものとしたが、付加情報データの配信を行うことなく、可動物データの配信を行うようにしてもよい。
【0050】
ステップS120において、付加情報の表示が可である場合には、広告表示の可否を判断する(ステップS130)。広告表示が可であれば、通信料金のディスカウント処理を実行する(ステップS140)。ここでは、ディスカウント処理に先立ち、図示しないユーザの認証が行われる。広告表示が不可である場合には、ディスカウント処理を実行せずに、次のステップ150に進む。
【0051】
次に、有料情報の要否を判断する(ステップS150)。有料情報が要求されている場合には、課金処理を実行する(ステップS160)。先述した認証処理がまだなされていない場合、課金処理に先立ち、ユーザの認証が行われる。有料情報が要求されていない場合には、課金処理を実行せずに、次のステップS170に進む。
【0052】
次に、要求された付加情報に応じて可動物データの抽出(ステップS170)、および付加情報データの抽出(ステップS180)を行う。そして、固定物データを参照して可動物データの表示位置を決定する(ステップS190)。例えば、車両(ナビゲーション装置200)の移動とともに可動物が固定物に隠れずに、また、視野から外れずに表示されるように、表示位置を決定する。そして、上述したステップで抽出された固定物データ、可動物データ、付加情報データを配信する(ステップS200)。
【0053】
本実施例の電子地図データには、固定物データの他に、可動物を3次元的に表すための可動物データと、付加情報データとが含まれる。3次元的に表示される電子地図において、固定物は、地図の閲覧者が最も着目するものであり、リアリティに大きな影響を及ぼす。これに対し、可動物は、一般に、固定物ほどリアリティに影響を及ぼさない。つまり、3次元的に表示される電子地図において、現実と異なる可動物が表示されたとしても、地図のリアリティを損ねない。本発明では、この可動物の少なくとも一部と一体化された状態で、付加情報が提供される。こうすることによって、電子地図データの閲覧者に対して、リアリティを損ねることなく、視覚的に付加情報の提供を行うことができる。
【0054】
E.第2実施例:
第1実施例では、地図配信サーバ100からナビゲーション装置200へ電子地図データを配信した。第2実施例では、ナビゲーション装置200Aが予め電子地図データを保持している。
【0055】
図6は、第2実施例のナビゲーションシステム1000A(ナビゲーション装置200A)の構成を示す説明図である。ナビゲーション装置200Aは、第1実施例のナビゲーション装置200と同様に、表示パネル210と、操作パネル220と、制御ユニット230Aとを備えている。
【0056】
制御ユニット230Aは、CPU、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータとして構成されており、第1実施例における制御ユニット230の構成の他に、電子地図データ記憶部236と、電子地図データ参照部237と、経路探索部238とを備えている。これらの各機能ブロックは、ソフトウェア的に構成されている。
【0057】
電子地図データ記憶部236は、CD−ROMや、DVD−ROMなどの記録媒体によって提供される電子地図データを記憶している。この電子地図データには、上述した固定物データ、可動物データ、付加データや、経路探索に用いられる通路データが含まれる。通路データには、いわゆるリンクデータ、ノードデータ、コストデータが含まれる。電子地図データ参照部237は、電子地図データ記憶部236に記憶されている電子地図データを参照する。経路探索部238は、周知のダイクストラ法によって、通路データを用いて現在地あるいは出発地から目的地までの経路探索を行う。
【0058】
第2実施例のナビゲーション装置200Aは、電子地図データを保持しているので、地図配信サーバ100と通信を行わなくても、電子地図データの閲覧者に対して、リアリティを損ねることなく、視覚的に付加情報の提供を行うことができる。ただし、第1実施例のナビゲーションシステム1000では、常に最新の電子地図データを利用することができる点で利用性か高い。
【0059】
F.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形例が可能である。
【0060】
F1.変形例1:
上記実施例では、経路探索における出発地を、ナビゲーション装置200が備える現在位置検出部233が検出した地点としたが、目的地と同様に、ユーザが操作パネル220やリモコン225の操作によって入力するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施例では、現在位置検出部233は、GPSアンテナが受信する人工衛星からの電波に基づいて現在位置を検出するものとしたが、DGPS(ディファレンシャルGPS)を利用した方法や、携帯電話、PHS等の無線基地局の電波を利用した方法や、ジャイロセンサを利用もしくは併用した方法などによって現在位置を検出するものとしてもよい。
【0062】
F2.変形例2:
上記実施例では、ナビゲーション装置200側で、付加情報の表示の可否を選択できるものとしたが、この選択をできないものとしてもよい。この場合、ナビゲーション装置200には、常時、可動物データおよび付加情報データが提供される。
【0063】
F3.変形例3:
上記第1実施例では、地図配信サーバ100が固定物データと、可動物データと、付加情報データとを配信するものとしたが、これに限られない。本発明は、一般に、地図表示装置において利用される電子地図データが、固定物データと、可動物データと、付加情報データとを備えていればよい。従って、例えば、ナビゲーション装置200が予め可動物データを保持しており、地図配信サーバ100は、固定物データと付加情報データとを配信するようにしてもよい。
【0064】
F4.変形例4:
上記実施例では、本発明を車両に搭載される、いわゆるカーナビゲーション装置に適用した場合について説明したが、これに限られない。例えば、電子地図の表示を行うことが可能なパーソナルコンピュータや、携帯情報端末や、携帯用のナビゲーション装置や、携帯電話に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例としてのナビゲーションシステム1000の概略構成を示す説明図である。
【図2】地図配信サーバ100の構成を示す説明図である。
【図3】可動物データ記憶部140に記憶される可動物データ、および、付加情報データ記憶部150に記憶される付加情報データの一例を示す説明図である。
【図4】第1実施例のナビゲーション装置200の構成を示す説明図である。
【図5】付加情報データの要否、表示の可否の指示を入力するためのグラフィカル・ユーザ・インタフェースの一例を示す説明図である。
【図6】表示パネル210に表示される3次元電子地図データの一例を示す説明図である。
【図7】表示パネル210に表示される3次元電子地図データの一例を示す説明図である。
【図8】表示パネル210に表示される3次元電子地図データの一例を示す説明図である。
【図9】地図配信サーバ100における電子地図データの配信の流れを示すフローチャートである。
【図10】第2実施例のナビゲーションシステム1000A(ナビゲーション装置200A)の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
100...地図配信サーバ
110...制御部
120...通信部
130...固定物データ記憶部
140...可動物データ記憶部
150...付加情報データ記憶部
160...経路データ記憶部
200、200A...ナビゲーション装置
210...表示パネル
220...操作パネル
225...リモート・コントローラ(リモコン)
230、230A...制御ユニット
231...制御部
232...通信部
233...現在地検出部
234...コマンド入力部
235...表示制御部
236...電子地図データ記憶部
237...電子地図データ参照部
238...経路探索部
1000、1000A...ナビゲーションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地まで経路誘導するナビゲーションシステムであって、
電子地図を表示する表示部と、
前記電子地図上に実在する固定物を前記電子地図上に3次元的に表示するための固定物データを記憶した固定物データ記憶部と、
前記電子地図上の経路における分岐点に仮想的な可動物を配置するとともに3次元的に表示するための可動物データを記憶した可動物データ記憶部と、
前記電子地図の閲覧者に対して経路誘導するための付加情報を前記可動物の少なくとも一部と一体化された状態で表示するための付加情報データを記憶した付加情報記憶部と、を備え、
前記可動物データおよび前記付加情報データの少なくとも一方には、前記付加情報に基づく表示を行うために満足すべき表示条件が対応付けられている、
ナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーションシステムであって、
前記付加情報の表示可否に関するユーザの指示を入力する指示入力部と、
前記指示に基づいて、前記可動物の表示の可否を特定する制御部と、
を備えることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項3】
目的地まで経路誘導するナビゲーションシステムの表示装置に電子地図を表示するために用いられる電子地図データのデータ構造であって、
前記電子地図上に実在する固定物を前記電子地図上に3次元的に表示するための固定物データと、
前記電子地図上の経路における分岐点に仮想的な可動物を配置するとともに3次元的に表示するための可動物データと、
前記電子地図の閲覧者に対して経路誘導するための付加情報を前記可動物の少なくとも一部と一体化された状態で表示するための付加情報データとを備え、
前記可動物データおよび前記付加情報データの少なくとも一方には、前記付加情報に基づく表示を行うために満足すべき表示条件が対応付けられている、
データ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−31308(P2009−31308A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278978(P2008−278978)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【分割の表示】特願2001−397465(P2001−397465)の分割
【原出願日】平成13年12月27日(2001.12.27)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【出願人】(502002186)株式会社ジオ技術研究所 (23)
【Fターム(参考)】