説明

ナビゲーションシステム、ナビゲーションプログラム、及びナビゲーション方法

【課題】サーバー装置とクライアント装置との通信量を抑制しつつ、クライアント装置において最新の地図データに基づく経路案内を迅速に行う。
【解決手段】サーバー装置は、サーバー側地図データベースを用いて案内経路を探索し、クライアント装置から受信したクライアント側地図データベースのバージョン特定情報に基づいて、サーバー側地図データベースとクライアント側地図データベースとの案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出し、クライアント装置における案内情報の生成のために不足する情報を案内用不足情報として生成し、案内経路を特定可能な経路特定情報と案内用不足情報を含む探索結果情報をクライアント装置に送信する。クライアント装置は、クライアント側地図データベースに含まれる情報と案内用不足情報とを用いて案内情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベースを有するクライアント装置と、前記クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを有するサーバー装置と、を備えるナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車載のナビゲーションシステムは、車両に搭載された地図データベースを用いて経路探索を行うスタンドアローンタイプのシステムである。これに対して、ナビゲーションに関する各種情報の配信サービスを行うサーバー装置と、地図データベースに基づいて経路探索を行う車載端末(クライアント装置)とが相互に通信可能に接続された協調型のナビゲーションシステムもある。このような協調型のナビゲーションシステムでは、例えば車載端末がサーバー装置側から最新の地図データや、最新の地図データと車載端末の地図データとの差分データをダウンロードして地図データベースを更新することができる。しかし、地図データは通常データ容量が大きく、差分データであっても地図全体の差分が集積すると比較的容量が大きくなる。このため、通信量も増大し、通信料金も高くなる傾向があるので、サーバー装置から車載端末に送信するデータの容量を抑制することが望まれる。
【0003】
特開2004−77254号公報(特許文献1)には、このような課題に鑑みたナビゲーションシステムが開示されている。このナビゲーションシステムは、サーバー装置において車載端末で使用している現状の地図データをベースとして探索した第1のルートと、サーバー上の最新の地図データをベースとして探索した第2のルートとを比較する。そして、このナビゲーションシステムは、第1のルートと第2のルートとの差異部分を検出した際に、最新の地図データの中からその差異部分に該当するブロック単位の地図データのみを抽出して、地図差分データとしてサーバー装置から車載端末へ配信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−77254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたナビゲーションシステムは、サーバー装置から車載端末へ送信されるデータの容量を従来に対して抑制可能である。しかし、ブロック単位ではあっても、地図データの容量は大きいのでさらなるデータ容量の抑制が望まれる。
【0006】
上記背景に鑑みて、サーバー装置が有する最新の地図データを用いて経路探索が可能なサーバー−クライアント型のナビゲーションシステムにおいて、サーバー装置とクライアント装置との通信量を抑制しつつ、クライアント装置において最新の地図データに基づく経路案内を行うことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みた本発明に係るナビゲーションシステムの特徴構成は、
少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベースを有するクライアント装置と、前記クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを有するサーバー装置と、を備えるナビゲーションシステムであって、
前記サーバー装置は、
少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及び前記クライアント側地図データベースのバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報を受信する探索情報受信部と、
前記探索情報に基づき前記サーバー側地図データベースを用いて前記案内開始地点から前記目的地点までの案内経路を探索する経路探索部と、
前記バージョン特定情報に基づき、前記サーバー側地図データベースと前記クライアント側地図データベースとの前記案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する差分情報抽出部と、
前記差分情報に基づいて、前記クライアント装置における案内情報の生成のために不足する情報を案内用不足情報として生成する案内用不足情報生成部と、
前記案内経路を特定可能な情報である経路特定情報と前記案内用不足情報とを含む探索結果情報を前記クライアント装置に送信する探索結果情報送信部と、を備え、
前記クライアント装置は、
前記探索情報及び前記バージョン特定情報を前記サーバー装置に送信する探索情報送信部と、
前記探索結果情報を前記サーバー装置から受信する探索結果情報受信部と、
前記クライアント側地図データベース及び前記探索結果情報に基づき、前記クライアント側地図データベースに含まれる情報と前記案内用不足情報とを用いた前記案内情報を生成する案内情報生成部と、を備える点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、案内開始地点から目的地点までの案内経路は、クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを用いて探索される。従って、常にナビゲーションシステムにおける最新の情報を含む地図データベースを用いて案内経路が探索されることになる。クライアント装置において、ユーザーを案内するためには、この案内経路に沿った情報が、最新の情報であれば充分である。本特徴構成によれば、クライアント側地図データベースのバージョンを特定可能なバージョン特定情報がサーバー装置に提供される。そして、サーバー装置の差分情報抽出部は、探索された案内経路に沿って、サーバー側地図データベースとクライアント側地図データベースとの差分を示す差分情報を抽出する。つまり、ごく限られた範囲において両地図データベースの差分情報が抽出されることになるので、演算負荷並びに差分情報のデータ量は抑制される。
【0009】
ところで、実際にユーザーを案内するための案内情報を生成する際に用いられるのは、クライアント側地図データベースである。従って、案内経路に沿った範囲に差分情報が存在する場合、クライアント装置は、案内情報の生成を適切に実施できない可能性がある。本特徴構成によれば、差分情報に基づいて、クライアント装置が案内情報を生成する際に不足する情報が、案内用不足情報として生成される。そして、この案内用不足情報と、案内経路を特定可能な情報である経路特定情報とが、探索結果情報としてサーバー装置からクライアント装置に送信される。クライアント装置は、クライアント側地図データベースに含まれる情報と、案内用不足情報を含む探索結果情報とを用いることによって、最新の情報を含む地図データベースを用いて案内情報の生成を行うことが可能となる。このように、本特徴構成によれば、サーバー装置とクライアント装置との通信量を抑制しつつ、クライアント装置において最新の地図データに基づく経路案内を行うことが可能となる。
【0010】
上述したように、地図データベースには、道路ネットワーク情報が含まれる。案内経路は、道路ネットワーク情報に基づいて探索されるから、それぞれの地図データベースに含まれるそれぞれの道路ネットワーク情報の案内経路に沿った差分を抽出することで、好適に差分情報を抽出することが可能となる。即ち、1つの態様として、本発明に係るナビゲーションシステムの前記差分情報抽出部は、前記サーバー側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報と、前記バージョン特定情報に示されるバージョンの前記クライアント側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報との前記案内経路に沿った差分を、前記差分情報として抽出すると好適である。
【0011】
道路ネットワーク情報に基づいて探索される案内経路は、道路ネットワーク情報を構成する道路リンクの配列であるリンク列によって表すことが可能である。従って、サーバー側地図データベースを用いて探索された案内経路を構成するリンク列を、クライアント側地図データベースの道路ネットワーク情報に当てはめることで、好適に差分情報を抽出することが可能となる。即ち、1つの態様として、本発明に係るナビゲーションシステムの前記差分情報抽出部は、前記サーバー側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報に基づいて前記経路探索部により探索された前記案内経路を構成する道路リンクの配列を示すリンク列を生成し、当該リンク列を前記クライアント側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報に当てはめた際の不一致箇所の情報を前記差分情報として抽出すると好適である。
【0012】
ユーザーは、案内経路の途上にある交差点や分岐点などの案内地点において、拡大図を示されることによって、正確に交差点や分岐点などを通過することが容易となる。また、ユーザーは、このような案内地点において、目印となる施設や、道路の進行方向の地名、案内地点の地名を知ることができれば、正確に交差点や分岐点などを通過する上で有益である。従って、1つの態様として、本発明に係るナビゲーションシステムは、前記案内用不足情報が、案内地点拡大図、案内地点周辺の施設情報、案内用名称情報の少なくとも1つを含むと好適である。
【0013】
クライアント側地図データベースのバージョンに対して、サーバー側地図データベースのバージョンが新しい場合、サーバー側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報には、クライアント側地図データベースの道路ネットワーク情報には存在しない新規道路が含まれる場合がある。このような新規道路は、探索された案内経路を構成する道路として適用される場合や、案内経路を構成することはないが案内経路に接続する接続道路となる場合がある。新規道路が案内経路を構成する道路として適用されるか、単に案内経路に対する接続道路であるかなど、新規道路の利用形態に応じて、案内用不足情報に含める新規道路の情報を異ならせると、案内用不足情報のデータ量を抑制することができる。1つの態様として、本発明に係るナビゲーションシステムの前記案内用不足情報生成部は、前記差分情報として前記案内経路を構成する道路の情報が含まれている場合には、当該差分情報に含まれている道路における前記案内経路を構成する部分の全体を示す情報を含めて前記案内用不足情報を生成すると好適である。一方、前記差分情報として前記案内経路を構成する道路に接続する接続道路が存在することを示す情報が含まれている場合には、前記案内用不足情報生成部は、当該接続道路における前記案内経路から所定の範囲内の部分を示す情報を含めて前記案内用不足情報を生成すると好適である。
【0014】
上述した本発明に係るナビゲーションシステムの種々の技術的特徴は、ナビゲーションプログラムや、ナビゲーション方法にも適用可能である。従って、本発明は、そのようなナビゲーションプログラムや、ナビゲーション方法も権利の対象とすることができる。例えば、本発明に係るナビゲーションプログラムは、上述したナビゲーションシステムの特徴を備えた各種の機能をコンピュータに実行させることが可能である。以下にその代表的な態様を例示する。当然ながらこのようなナビゲーションプログラムも、上述したナビゲーションシステムの作用効果を奏することができる。さらに、ナビゲーションシステムの好適な態様として例示した種々の付加的特徴をこのナビゲーションプログラムに組み込むことも可能であり、当該プログラムはそれぞれの付加的特徴に対応する作用効果も奏することができる。本発明に係るナビゲーション方法についても同様である。
【0015】
その場合における、本発明に係るナビゲーションプログラムの特徴構成は、
少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベースを有するクライアント装置と、前記クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを有するサーバー装置と、を複数のコンピュータに実現させるナビゲーションプログラムであって、
少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及び前記クライアント側地図データベースのバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報を受信する探索情報受信機能と、
前記探索情報に基づき前記サーバー側地図データベースを用いて前記案内開始地点から前記目的地点までの案内経路を探索する経路探索機能と、
前記バージョン特定情報に基づき、前記サーバー側地図データベースと前記クライアント側地図データベースとの前記案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する差分情報抽出機能と、
前記差分情報に基づいて、前記クライアント装置における案内情報の生成のために不足する情報を案内用不足情報として生成する案内用不足情報生成機能と、
前記案内経路を特定可能な情報である経路特定情報と前記案内用不足情報とを含む探索結果情報を前記クライアント装置に送信する探索結果情報送信機能と、を前記サーバー装置を構成するコンピュータに実現させ、
前記探索情報及び前記バージョン特定情報を前記サーバー装置に送信する探索情報送信機能と、
前記探索結果情報を前記サーバー装置から受信する探索結果情報受信機能と、
前記クライアント側地図データベース及び前記探索結果情報に基づき、前記クライアント側地図データベースに含まれる情報と前記案内用不足情報とを用いた前記案内情報を生成する案内情報生成機能と、を前記クライアント装置を構成するコンピュータに実現させる点にある。
【0016】
また、本発明に係るナビゲーション方法の特徴構成は、
少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベースを有するクライアント装置と、前記クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを有するサーバー装置と、を用いたナビゲーション方法であって、
少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及び前記クライアント側地図データベースのバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報を受信する探索情報受信ステップと、
前記探索情報に基づき前記サーバー側地図データベースを用いて前記案内開始地点から前記目的地点までの案内経路を探索する経路探索ステップと、
前記バージョン特定情報に基づき、前記サーバー側地図データベースと前記クライアント側地図データベースとの前記案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する差分情報抽出ステップと、
前記差分情報に基づいて、前記クライアント装置における案内情報の生成のために不足する情報を案内用不足情報として生成する案内用不足情報生成ステップと、
前記案内経路を特定可能な情報である経路特定情報と前記案内用不足情報とを含む探索結果情報を前記クライアント装置に送信する探索結果情報送信ステップと、を前記サーバー装置に実行させ、
前記探索情報及び前記バージョン特定情報を前記サーバー装置に送信する探索情報送信ステップと、
前記探索結果情報を前記サーバー装置から受信する探索結果情報受信ステップと、
前記クライアント側地図データベース及び前記探索結果情報に基づき、前記クライアント側地図データベースに含まれる情報と前記案内用不足情報とを用いた前記案内情報を生成する案内情報生成ステップと、を前記クライアント装置に実行させる点にある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ナビゲーションシステムの構成を模式的に示すブロック図
【図2】ナビゲーションシステムの動作の一例を示すフローチャート
【図3】地図データベースの構造の一例を示す図
【図4】経路案内のための画面表示の一例を示す図
【図5】経路案内のための画面表示の一例を示す図
【図6】経路案内のための画面表示の一例を示す図
【図7】分岐の無いノードとそのノードに接続されるリンクの例を示す図
【図8】分岐の有るノードとそのノードに接続されるリンクの例を示す図
【図9】案内経路をノードとリンクにより示す図
【図10】案内用不足情報を用いた経路案内のための画面表示の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のナビゲーションシステム1は、サーバー装置2とクライアント装置3とを備えて構成されている。両装置は、それぞれサーバー側の通信インターフェース部28と、クライアント側の通信インターフェース部38と介して通信可能に構成され、相互に協調してナビゲーションを実行する。クライアント装置3は、利用者と共に移動する装置であり、サーバー装置2は、基本的に所定の場所に固定的に設置されている装置である。例えば、クライアント装置3は、車両に搭載されている車載ナビゲーション端末である。
【0019】
クライアント装置3は、少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベース30(図面においては、データベースを“DB”と表す。)を有して構成されている。一方、サーバー装置2は、クライアント側地図データベース30と同じ、又はクライアント側地図データベース30よりも新しいバージョンのサーバー側地図データベース20を有して構成されている。サーバー側地図データベース20も、少なくとも道路ネットワーク情報を含んで構成されている。サーバー側地図データベース20は、クライアント側地図データベース30と同じ、又はクライアント側地図データベース30よりも新しいバージョンの道路ネットワーク情報を含んで構成される。
【0020】
図1に示すように、サーバー装置2は、さらに、サーバー側のナビゲーション演算部22を備えて構成されている。サーバー側のナビゲーション演算部22は、探索情報受信部23と、経路探索部24と、差分情報抽出部25と、案内用不足情報生成部26と、探索結果情報送信部27とを備えて構成されている。クライアント装置3は、さらに、自位置特定部31と、クライアント側のナビゲーション演算部32と、ユーザーインタフェース部39とを備えて構成されている。クライアント側のナビゲーション演算部32は、目的地点設定部33と、探索情報送信部34と、探索結果情報受信部35と、案内情報生成部36と、案内部37とを備えて構成されている。
【0021】
以下、図2のフローチャートも利用して、ナビゲーションシステム1によるナビゲーション機能について説明する。図2における#2はサーバー装置2において実行される機能群(ステップ群)を示し、#3はクライアント装置3において実行される機能群(ステップ群)示す。
【0022】
クライアント側のナビゲーション演算部32の目的地点設定部33は、探索開始地点及び目的地点を設定する機能部である。例えば、目的地点設定部33は、モニター装置5に設けられたタッチパネルなどで受け付けられたユーザーの指示を、ユーザーインタフェース部39を介して受け取って目的地点を設定する(#33)。つまり、目的地点設定部33は、ユーザーの指示に基づいて目的地点を設定する。また、一例として、目的地点設定部33は、車両の現在位置(後述する自位置特定部31により特定される自位置)を、探索開始地点として設定する。尚、目的地と同様に、ユーザーの指示に基づいて探索開始地点が設定される構成であってもよい。当然ながら、探索開始地点として、自位置とユーザーによる設定地点とが選択可能に構成されていてもよい。これら目的地点及び探索開始地点を含む情報は、探索情報送信部34によりサーバー装置2に送信される。より詳しくは、探索情報送信部34は、少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及びクライアント側地図データベース30のバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報をサーバー装置2に送信する(#34)。この際、クライアント装置3はサーバー装置2に対して、経路探索の要求を行うと好適である。あるいは、クライアント装置3からサーバー装置2に対して通信要求を行ってもよい。
【0023】
サーバー装置2は、クライアント装置3からの経路探索の要求や通信要求があった場合(#28)には、クライアント装置3から送信された探索情報及びバージョン特定情報を受信する(#23)。もちろん、自動的に受信するように設定されていてもよい。これら探索情報及びバージョン特定情報は、サーバー側のナビゲーション演算部22の探索情報受信部23により受信される。つまり、探索情報受信部23は、少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及びクライアント側地図データベース30のバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報を受信する機能部である。探索情報受信部23が受信した探索情報及びバージョン特定情報は、それぞれ経路探索部24及び差分情報抽出部25において利用される。経路探索部24は、受信された探索情報に基づき、サーバー側地図データベース20を用いて案内開始地点から目的地点までの案内経路を探索する(#24)。また、差分情報抽出部25は、受信されたバージョン特定情報に基づき、サーバー側地図データベース20とクライアント側地図データベース30との案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する(#25)。尚、ここでは、サーバー側地図データベース20のバージョンが、クライアント側地図データベース30のバージョンよりも進んでおり、ステップ#25に先行するステップ#25aにおいて、“No”と判定されたものとして説明する。
【0024】
上述したように、本実施形態のナビゲーションシステム1は、サーバー装置2とクライアント装置3とが協調してナビゲーションを行う。具体的には、サーバー装置2の経路探索部24において探索された案内経路に基づいて、クライアント装置3が案内情報を生成してユーザーを案内する(詳細は後述する。)。但し、サーバー側地図データベース20がクライアント側地図データベース30よりも新しいバージョンの場合には、サーバー装置2において探索された案内経路に対応する情報がクライアント装置3に存在せず、クライアント装置が適切に案内情報を生成できない可能性がある。そこで、上述したように、差分情報抽出部25によって、案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報が抽出される。
【0025】
差分情報抽出部25によって差分情報が抽出されると、サーバー側のナビゲーション演算部22の案内用不足情報生成部26は、この差分情報に基づいて、案内用不足情報を生成する(#26)。ここで、案内用不足情報とは、クライアント装置3における案内情報の生成のために不足する情報である(詳細は後述する。)。この案内用不足情報は、探索結果情報送信部27により、クライアント装置3へ送信される。具体的には、探索結果情報送信部27は、この案内用不足情報と、経路探索部24によって探索された案内経路を特定可能な情報である経路特定情報と、を含む探索結果情報をクライアント装置3へ送信する(#27)。この際、サーバー装置2はクライアント装置3に対して、経路探索完了の通知や、通信要求を行うと好適である。
【0026】
尚、ステップ#25による差分情報の抽出に先だって、差分情報抽出部25あるいは他の機能部により、サーバー側地図データベース20とクライアント側地図データベース30とのバージョン、特に道路ネットワーク情報のバージョンが同一であるか否かが判定されると好適である(#25a)。サーバー側地図データベース20のバージョンは、クライアント側地図データベース30のバージョンと同じ、あるいはクライアント側地図データベース30よりも新しいバージョンである。このため、サーバー側地図データベース20とクライアント側地図データベース30とのバージョンが同一でない場合には、サーバー側地図データベース20の方がクライアント側地図データベース30よりも新しいバージョンである。従って、この場合にのみ、差分情報が抽出されると好適である。サーバー側地図データベース20とクライアント側地図データベース30とのバージョンが同一である場合には、ステップ#25において差分情報を抽出する必要はない。また、この場合には、差分情報が抽出されないので、ステップ#26において案内用不足情報を生成する必要もない。従って、ステップ#25aにおいて地図データベースのバージョンが同じであると判定された場合には、ステップ#25及びステップ#26をスキップして、ステップ#27に移行し、経路特定情報を含む探索結果情報がクライアント装置3へ送信される。
【0027】
クライアント側のナビゲーション演算部32の探索結果情報受信部35は、サーバー装置2からの経路探索完了の通知や、通信要求があった場合(#38)には、サーバー装置2から送信された探索結果情報を受信する(#35)。もちろん、自動的に受信するように設定されていてもよい。受信された探索結果情報は、案内情報生成部36によって利用される。案内情報生成部36は、この探索結果情報及びクライアント側地図データベース30に基づいて、案内情報を生成する機能部である。具体的には、案内情報生成部36は、クライアント側地図データベース30及び探索結果情報に基づき、クライアント側地図データベース30に含まれる情報と案内用不足情報とを用いた案内情報を生成する(#36)。案内部37は、この案内情報を用いてユーザーを案内する(#37)。例えば、案内部37は、自位置特定部31により特定された位置情報に対応する案内情報に基づいて、ユーザーインタフェース部39を介して、スピーカーや表示部を備えたモニター装置5に案内音声や案内画像などを出力する。
【0028】
自位置特定部31は、ナビゲーション演算部32が目的地までの経路案内や自位置における種々の情報提供を実施するために、自位置を特定する機能部である。自位置特定部13は、GPS受信器41、方位センサ42、距離センサ43などにより取得された情報を用いて、GPS(global positioning system)による測量やデッドレコニング(Dead-Reckoning)による自律制御を利用して自位置を演算して取得する。車両にカメラが搭載されているような場合には、自位置特定部31は、位置精度を高めるために、路面に設けられた道路標示(ペイント)などの地物を撮影して画像認識する機能をさらに付加されていてもよい。
【0029】
尚、本実施形態において、サーバー装置2及びクライアント装置3は、マイクロコンピュータやDSP(digital signal processor)などの演算処理装置を中核部材として構成されている。つまり、上述したナビゲーションシステム1(サーバー装置2及びクライアント装置3)の各機能部は、演算処理装置をはじめ、メモリやディスク装置などの記憶媒体、周辺回路などのハードウェアと、当該ハードウェア上で用いられるプログラムやパラメータなどのソフトウェアとの協働によって実現される。従って、各機能部は、本発明のナビゲーションシステムにおける機能部に相当すると共に、本発明のナビゲーションプログラムにおける“機能”に相当し、本発明のナビゲーション方法における“ステップ”の実行部に相当する。
【0030】
例えば、図2におけるステップ#33は、本発明のナビゲーションプログラムにおける目的地点設定機能に相当すると共に、目的地点設定部33によって実行される本発明のナビゲーション方法における目的地点設定ステップに相当する。同様に、ステップ#34は、探索情報送信機能に相当すると共に、探索情報送信ステップに相当する。尚、ステップ#34では、探索情報及びバージョン特定情報が送信されるが、探索情報送信部34と同様に、機能及びステップの名称としては簡略化している。また、ステップ#23は、探索情報受信機能及び探索情報受信ステップに相当し、ステップ#24は、経路探索機能及び経路探索ステップに相当する。また、ステップ#25は、差分情報抽出機能及び差分情報抽出ステップに相当する。尚、ステップ#25aとステップ#25とを合わせて、差分情報抽出機能及び差分情報抽出ステップに対応させてもよい。また、ステップ#26は、案内用不足情報生成機能及び案内用不足情報生成ステップに相当し、ステップ#27は、探索結果情報送信機能及び探索結果情報送信ステップに相当する。また、ステップ#35は、探索結果情報受信機能及び探索結果情報受信ステップに相当し、ステップ#36は、案内情報生成機能及び案内情報生成ステップに相当し、ステップ#37は、案内機能及び案内ステップに相当する。
【0031】
ここで、図3を参照して地図データベース(20,30)の構造について説明する。サーバー側地図データベース20と、クライアント側地図データベース30とは、バージョンが異なる場合はあるが、その構造は共通であるから、以下、単に地図データベースと称して、その構造を説明する。地図データベースは、所定の領域毎に分けられた地図情報Mと、この地図情報Mに関連付けられた複数の地物情報Fとが格納されたデータベースである。図3に示すように、地図データベースは、道路ネットワークレイヤm1、道路形状レイヤm2、地物レイヤm3を有して構成されている。
【0032】
道路ネットワークレイヤm1は、道路の接続形態を示す道路ネットワーク情報を含むレイヤである。具体的には、緯度及び経度で表現された地図上の位置情報を有する多数のノードNの情報と、2つのノードNを連結して道路を構成する多数のリンクK(道路リンク)の情報とを有して構成されている。また、各リンクKは、そのリンク情報として、道路の種別(高速道路、有料道路、国道、県道等の種別)やリンク長さ等の情報を有している。また、道路形状レイヤm2は、道路ネットワークレイヤm1に関連付けられ、道路の形状を示すレイヤである。具体的には、2つのノードNの間(リンクK上)に配置されて緯度及び経度で表現された地図上の位置情報を有する多数の道路形状補完点Sの情報や道路幅の情報等を有して構成されている。これらの道路ネットワークレイヤm1及び道路形状レイヤm2に格納された情報により、地図情報Mが構成される。
【0033】
地物レイヤm3は、道路ネットワークレイヤm1及び道路形状レイヤm2に関連付けられて構成され、道路上や道路周辺に設けられた各種の地物の情報、すなわち地物情報Fが格納されているレイヤである。この地物レイヤm3に地物情報Fが格納される地物には、道路の路面に設けられた道路標示が含まれている。このような道路標示には、車線を分ける車道中央線、車道境界線、及び車道外側線等やゼブラゾーン等のレーン区画標示が含まれている。また、道路標示には、例えば、横断歩道、停止線、交差点形状標示(十字マーク、T字マーク等)、各レーンの進行方向別通行区分を表す矢印状の道路標示、制限速度を表す速度標示等の各種のペイント標示が含まれる。尚、地物情報Fが格納される地物としては、道路標示などの平面物の他、信号機、標識、陸橋、トンネル等の各種の立体物も含めることができる。
【0034】
ところで、上述したように、クライアント装置3の案内情報生成部36は、サーバー装置2から受け取った探索結果情報及びクライアント側地図データベース30に基づいて、案内情報を生成する。そして、案内部37は、この案内情報を用い、ユーザーインタフェース部39を介して、スピーカーや表示部を備えたモニター装置5に案内音声や案内画像などを出力してユーザーを案内する。ここで、案内部37による案内の例を示す。
【0035】
図4は、モニター装置5に表示される画面の一例を示している。ユーザーが搭乗した車両を示す車両アイコン90の進行方向には、信号機のある交差点が存在する。この交差点において車両が通行する道路には3つの通行区分(レーン)が設けられている。ナビゲーションシステム1は、この交差点において直進する進路を案内する場合、3つのレーンの内、通行可能なレーンをユーザーに報知する。図4に示す例では、信号機のある交差点であることを示す信号機アイコン81が交差点上に表示され、その近傍に3つの通行区分を示すレーンアイコン82が表示される。そして、車両が通行可能なレーンとして、直進方向を含む2つのレーンアイコン82a及び83bが協調表示される。信号機アイコン81、レーンアイコン82などは案内画像の一例である。さらに、音声案内として、「左側2レーンを通行してください。」等の案内メッセージがユーザーに提供されると好適である。
【0036】
このような信号機の存在を示す情報は、例えば、地図データベースの地物レイヤm3に格納されている。また、通行区分の種類や態様を示す情報は、地図データベースの道路形状レイヤm2や地物レイヤm3に格納されている。また、信号機アイコン81や、レーンアイコン82、案内メッセージの情報は、道路形状レイヤm2や地物レイヤm3に格納されていてもよいし、これらとは別に設けられた不図示のアイコンレイヤ等に格納されていてもよい。
【0037】
図5及び図6は、モニター装置5の画面を分割して2画面を表示させ、交差点等の拡大図を一方の画面に表示させる例を示している。本例では、モニター装置5の画面を左右に2分割しており、左側画面に道路地図を表示させ、右側画面に案内地点(交差点)の道路の拡大図と各種アイコンを表示させている。図5は、複雑な構造の交差点における右折を案内する場合の例である。ここでは、信号機アイコン81と、進路案内アイコン83が表示される例を示している。図6は、例えば高速道路の本線から一般道路や料金所へ向かう減速車線への進路変更を案内する例を示している。
【0038】
図4〜図6を用いて例示したような案内は、道路が分岐しており、車両が複数の進路を採り得る場合に、案内経路に沿って車両を誘導できるように実施される。つまり、車両が単一の進路しか採り得ない場合には、案内経路を外れる可能性がほとんどないために、このような案内は行われない。例えば、図7に示すように、リンクKaを走行中の車両が、ノードNaを経由してリンクKbへ進む経路が案内経路として設定されている場合、ノードNaにおいて車両は単一の経路しか採り得ない。このような場合には、車両がノードNaに近づく際に、図4〜図6に例示したような案内は実施されない。一方、図8に示すように、リンクKaを走行する車両がノードNaを経由して、リンクKb,Kc,Kdの複数の進路を選択可能な場合には、案内経路に沿ったリンクKbへ進行できるように、図4〜図6に例示したような案内が実施される。
【0039】
以下、サーバー側地図データベース20のバージョンが、クライアント側地図データベース30のバージョンよりも新しい場合に、サーバー装置2で探索された案内経路をクライアント装置3が案内する具体的な例を示す。サーバー装置2の経路探索部24により探索された案内経路は、例えば図9に示すように、ノードNとリンクKとによって表される。中抜きの丸印によってノードN(N0〜N8)を表し、各ノードNを結ぶ線分によってリンクKを表している。ここでは、ノードNの番号を用い、例えばノードN1とノードN2との間のリンクKをリンクK12として表している。また、図9では、黒丸によって案内開始地点Q、目的地点Pを表している。案内開始地点Q及び目的地点Pも、ノードNと同様に緯度及び経度で表現された地図上の位置情報を有している。案内開始地点Q及び目的地点Pは、本例ではリンクKの途中に設定されている。図9において、太線で示すリンクKは、サーバー装置2の経路探索部24により探索された案内開始地点Qと目的地点Pとを結ぶ案内経路を示している。
【0040】
ところで、上述したように、サーバー側地図データベース20のバージョンは、クライアント側地図データベース30のバージョン以上である。つまり、サーバー側地図データベース20は、クライアント側地図データベース30が有していない新しい道路ネットワーク情報を有している場合を例として説明する。
【0041】
具体的には、図9に示すリンクK35、リンクK28、リンクK59は、新しく開通した道路(新規道路)であり、クライアント側地図データベース30は、その新しい道路ネットワーク情報や関連した地物情報などを有していない。従って、仮にクライアント側地図データベース30と同じバージョンの地図データベースを用いて案内経路が探索された場合には、図9に細い実線で示すように、ノードN3からノードN4を経由してノードN5へ至る経路が案内経路として探索されることになる。また、クライアント側地図データベース30に格納された情報では、ノードN2においては道路の分岐はない。また、クライアント側地図データベース30には、破線で示すリンクK28の情報や、ノードN2における道路形状の情報や地物情報も格納されていない。従って、ノードN2の近傍における案内情報が不足し、ユーザーに対する利便性が低下する可能性がある。また、案内経路を構成する新規道路であるリンクK35については、クライアント側地図データベース30の情報を用いて案内情報を生成することはできない。このため、最新の道路ネットワーク情報を用いて探索された探索結果を有効に活用することができない。
【0042】
本実施形態のナビゲーションシステム1では、このような利便性の低下を抑制するために、サーバー装置2の差分情報抽出部25が、サーバー側地図データベース20とクライアント側地図データベース30との案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する。つまり、図2のフローチャートを用いて上述したように、まず、サーバー側地図データベース20とクライアント側地図データベース30との地図バージョンが同じであるか否かが判定される(#25a)。バージョンが異なる場合には、サーバー側地図データベース20の方が新しいバージョンであるから、差分情報抽出部25により差分情報が抽出される(#25)。
【0043】
以下、差分情報抽出部25が差分情報を抽出する手順の一例について説明する。経路探索部24により探索された案内経路は、例えば以下に示すようなリンク列として表すことができる。リンク列は、サーバー側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報に基づいて経路探索部24により探索された案内経路を構成する道路リンクの配列を示すものである。リンク列は、経路探索部24あるいは差分情報抽出部25によって生成される。リンク列は、図9に示す案内経路を例として、最も単純には、“K01−K12−K23−K35−K56−K67”というように、案内開始地点Qから目的地点Pへ至るリンクKの配列によって示される。リンク列は、このような基本配列に、例えば分岐のあるノードNをリンク列に追加して構成されてもよい。例えば、分岐のあるノードNを加えて、“K01−K12−N2−K23−N3−K35−N5−K56−K67”というようにリンク列が構成される。このようなリンク列は、経路特定情報として、サーバー装置2からクライアント装置3へ送信され、クライアント装置3の案内情報生成部36で利用される。案内情報生成部36は、リンク列から、ノードN2,N3,N5において進路案内が必要であると判定して、案内情報を生成する。
【0044】
一方、差分情報抽出部25は、クライアント側地図データベース30のバージョンを特定するバージョン特定情報に基づき、このようなリンク列を評価する。つまり、リンク列をクライアント側地図データベース30に含まれる道路ネットワーク情報に当てはめた際の不一致箇所の情報を差分情報として抽出する。例えば、サーバー側地図データベース20のバージョン番号が3.0であり、クライアント側地図データベース30のバージョン番号が1.2であったとする。ここで、バージョン番号の整数部はメジャーアップデート(大規模な更新)のバージョンを示し、小数点以下はマイナーアップデート(小規模な更新)のバージョンを示す。そして、小数点以下を含めてバージョン番号が大きいほど、新しいバージョンであることを示す。リンク列の評価に利用するために、各ノードNやリンクKの付属情報として、各ノードN及びリンクKの情報が更新されたバージョン情報が付加されて地図データベースに格納されていると好適である。あるいは、各バージョンにおけるノードN及びリンクKがリスト化された差分データベースがサーバー装置2に備えられていてもよい。
【0045】
差分情報抽出部25は、リンク列に含まれるノードN及びリンクKが、クライアント側地図データベース30に含まれているか否かを判定する。本実施形態では、新しい道路であるリンクK35が、クライアント側地図データベース30に含まれていないと判定される。例えば、リンクK35の付属情報として、リンクK35が道路ネットワーク情報に追加されたバージョン番号2.0が格納されていたとする。このバージョン番号2.0は、クライアント側地図データベース20のバージョン番号1.2よりも大きいので、リンクK35は新規道路であると判定される。また、ノードN2,N3,N5は、クライアント側地図データベース30においては、当該ノードNに2つのリンクKが接続されるノードNであるが、案内経路のリンク列では3つ以上のリンクKが接続される分岐のあるノードNである。従って、これらN2,N3,N5も、クライアント側地図データベース30とは接続情報の異なるノードNと判定される。
【0046】
次に、差分情報抽出部25は、クライアント側地図データベース30から更新されているノードN、及びリンクKについての情報を差分情報として抽出する。例えば、リンクK35は、当該リンクKに対応する道路そのものが、クライアント側地図データベース30に存在しない。従って、差分情報抽出部25は、少なくとも案内経路を構成する部分の全体を示す情報を含めて案内用不足情報を生成する。つまり、リンクK35は、当該新規に開通した道路において、案内経路を構成する部分の全体であるから、リンクK35の全体を示す情報を含めて案内用不足情報が生成される。一方、同様に新しい道路であるリンクK59は、案内経路を構成するリンクK35に含まれるノードN5に接続する接続道路(リンクK)であって、案内経路を構成する道路ではない。従って、接続道路であるリンクK59においては、案内経路から所定の範囲内(ノードN5から所定の範囲内)の部分を示す情報を含めて案内用不足情報が生成される。
【0047】
尚、この所定の範囲は、モニター装置5に通常の縮尺で表示される地図に違和感なく接続道路が表示可能な範囲とすると好適である。例えばモニター装置5に表示される地図上に、例えば16×9個などの正方形状のグリッドを設ける場合の各グリッドの一辺の長さが、50m〜500m程度の場合に、接続道路が途中で途切れることなく、モニター装置5の表示面に、表示される範囲とすることができる。
【0048】
ところで、ノードN3,N5は、それぞれクライアント側地図データベース30に道路ネットワーク情報が格納された後に、新規に開通した道路(リンクK35)が接続されるノードNとなっており、分岐を有するノードNとなっている。また、ノードN2には、案内経路を構成しない新規の道路(破線で示すリンクK28)が接続道路として接続されている。このため、ノードN2も、分岐を有するノードNとなっている。このため、これらのノードN2,N3,N5における分岐の情報や、分岐における案内地点の拡大図、案内地点周辺の施設情報(地物情報)、案内用名称情報などが案内用不足情報として生成される。接続道路であるリンクK28については、案内経路から所定の範囲内(ノードN2から所定の範囲内)の部分を示す情報を含めて案内用不足情報が生成される。
【0049】
このように、案内用不足情報生成部26は、差分情報として案内経路を構成する道路の情報が含まれている場合には、当該差分情報に含まれている道路における案内経路を構成する部分の全体を示す情報を含めて案内用不足情報を生成する。また、案内用不足情報生成部26は、差分情報として案内経路を構成する道路に接続する接続道路が存在することを示す情報が含まれている場合には、当該接続道路における案内経路から所定の範囲内の部分を示す情報を含めて案内用不足情報を生成する。尚、案内用不足情報とは、案内地点拡大図、案内地点周辺の施設情報、案内用名称情報の少なくとも1つを含む情報である。これらの具体的な例については、モニター装置5の表示画面の例と共に後述する。
【0050】
生成された案内用不足情報及び案内経路は、上述したように、探索結果情報送信部27からクライアント装置3に送信され、探索結果情報受信部35が受信する。案内情報生成部36は、受信された案内用不足情報及び案内経路に基づいて、案内情報を生成する。例えば、案内情報生成部36は、ノードN2の近傍において、右側の道に進行するような分岐案内を行うための案内情報を生成する。また、モニター装置5に表示される道路地図において、ノードN2に対する接続道路であるリンクK28の少なくとも一部を表示する。
【0051】
図10は、図5や図6に例示した表示画面と同様に、モニター装置5の画面を分割して左側画面に道路地図を表示させ、右側画面に案内地点(交差点)の道路の拡大図と各種アイコンを表示させている例である。案内情報生成部36は、クライアント側地図データベース30に含まれる情報の他、案内用不足情報を用いて案内情報を生成する。左側画面の道路地図において、リンクK28に対応する道路の描画情報は案内用不足情報として提供されており、案内部37は、この描画情報を用いてモニター装置5に道路地図を表示する。これにより、ユーザーは実際の風景と道路地図とを違和感なく対応させることができる。また、右側画面には、ノードN2における拡大図が表示される。この拡大図、つまり案内地点拡大図は、案内用不足情報として提供されたものである。また、右側画面に表示される信号機アイコン81、レーンアイコン82、スーパーマーケットを示す施設アイコン84は、案内地点周辺の施設情報に相当する案内用不足情報として提供されたものである。また、分岐における行き先を示す行き先表示アイコン85は、案内用名称情報に相当する案内用不足情報として提供されたものである。尚、案内用名称情報には、交差点名や、道路の名称等も含まれる。
【0052】
案内情報生成部36は、案内用不足情報にレーンアイコン82などの動的に表示可能なアイコンが含まれる場合には、探索経路に沿った進行方向に応じたレーンをユーザーに報知するような案内情報を生成する。例えば、リンクK23に対応する道路へ進行するために、右折レーンを示すレーンアイコン82dを強調表示させると好適である。また、これに合わせて、「右レーンを進み、右折してください。」等の音声メッセージを案内情報として生成すると好適である。
【0053】
ノードN3、ノードN5の近傍における案内用不足情報や、その案内用不足情報を用いた案内情報の生成、モニター装置5への表示形態等についても同様であるので、詳細な説明は省略する。また、案内経路に含まれる新規の道路であるリンクK35については、リンクK35の全ての情報が案内用不足情報として提供されている。従って、道路地図は、現実の風景に合った状態で表示され、リンクK35に対応する道路の周辺の施設や地名等も、モニター装置5に表示可能であるから、ユーザーは違和感なくナビゲーションシステム1を利用することができる。
【0054】
上述したように、ナビゲーションシステム1は、サーバー側地図データベース20とクライアント側地図データベース30とのバージョンが異なっている場合に、両地図データベースの差分を求めて、地図データベースの差分を解消させるものではない。従って、サーバー装置2において地図データベース全体の差分を求めるための演算を行う必要はない。また、クライアント装置3においても、差分を解消させるためにクライアント側地図データベース30を更新するための演算を行う必要はない。一方、ナビゲーションシステム1においては、案内開始地点と目的地点とを結ぶ案内経路に沿った範囲において、クライアント側地図データベース30を用いて案内情報を生成するために不足する情報が案内用不足情報として生成され、転送される。従って、サーバー装置2における演算負荷は、地図全体の差分を求める場合に比べて大幅に抑制される。また、案内用不足情報も、案内経路に沿った範囲における情報であるから、その容量は比較的小さく、地図全体の差分を転送する場合に比べて通信量も大幅に抑制される。また、クライアント装置3においても、クライアント側地図データベース30を更新するための演算を必要しない。そして、クライアント装置3は、案内情報を生成する際に、クライアント側地図データベース30に加えて、案内用不足情報を参照するに過ぎないから、ほとんど演算負荷を増加させることがない。
【0055】
また、上述した実施形態においては、経路探索部24が、サーバー側地図データベース20のみを用いて案内経路を探索する。つまり、差分情報の抽出に際して、サーバー装置はクライアント側地図データベースに基づく案内経路の探索を必ずしも行う必要はないので、演算負荷は抑制され、迅速な経路探索が可能となる。例えば、特許文献1のように、サーバー装置が、第1のルート(案内経路)と第2のルート(案内経路)との2つのルート(案内経路)を探索すると、演算負荷が大きくなり、経路探索の時間が長くなる可能性がある。しかし、上述した実施形態においては、探索された案内経路に沿ってサーバー側地図データベース20から取得可能な情報と、当該案内経路に沿ってクライアント側地図データベース30から取得可能とバージョン特定情報に基づいて判定される情報との差分を示す差分情報が抽出されるに過ぎない。つまり、第2のルート(案内経路)は探索されないので、演算負荷は抑制され、迅速な経路探索が可能となる。つまり、ナビゲーションシステム1は、サーバー装置2とクライアント装置3との通信量を抑制しつつ、クライアント装置3において最新の地図データに基づく経路案内を迅速に行うことが可能である。
【0056】
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0057】
上記実施形態においては、経路探索部24が、サーバー側地図データベース20のみを用いて案内経路を探索し、差分情報抽出部25が、バージョン特定情報に基づいて、この探索経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する形態を例示した。しかし、この形態に限定されることなく、経路探索部24は、さらに、バージョン特定情報に基づき、クライアント側地図データベース20に対応する道路ネットワーク情報を用いて比較対象となる第2案内経路を探索してもよい。そして、差分情報抽出部25は、サーバー側地図データベース20を用いて探索した案内経路と、第2案内経路とを比較して、差分情報を抽出してもよい。当然ながら、この形態では、サーバー装置2が2つの案内経路を探索するので、サーバー装置2の演算負荷は大きくなる。しかし、演算負荷の増大が許容される場合には、この形態も取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、サーバー装置が有する最新の地図データを用いて経路探索が可能なサーバー−クライアント型のナビゲーションシステムに適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 :ナビゲーションシステム
2 :サーバー装置
3 :クライアント装置
20 :サーバー側地図データベース
23 :探索情報受信部
24 :経路探索部
25 :差分情報抽出部
26 :案内用不足情報生成部
27 :探索結果情報送信部
30 :クライアント側地図データベース
34 :探索情報送信部
35 :探索結果情報受信部
36 :案内情報生成部
37 :案内部
38 :通信インターフェース部
39 :ユーザーインタフェース部
K :リンク(道路リンク)
P :目的地点
Q :案内開始地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベースを有するクライアント装置と、前記クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを有するサーバー装置と、を備えるナビゲーションシステムであって、
前記サーバー装置は、
少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及び前記クライアント側地図データベースのバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報を受信する探索情報受信部と、
前記探索情報に基づき前記サーバー側地図データベースを用いて前記案内開始地点から前記目的地点までの案内経路を探索する経路探索部と、
前記バージョン特定情報に基づき、前記サーバー側地図データベースと前記クライアント側地図データベースとの前記案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する差分情報抽出部と、
前記差分情報に基づいて、前記クライアント装置における案内情報の生成のために不足する情報を案内用不足情報として生成する案内用不足情報生成部と、
前記案内経路を特定可能な情報である経路特定情報と前記案内用不足情報とを含む探索結果情報を前記クライアント装置に送信する探索結果情報送信部と、を備え、
前記クライアント装置は、
前記探索情報及び前記バージョン特定情報を前記サーバー装置に送信する探索情報送信部と、
前記探索結果情報を前記サーバー装置から受信する探索結果情報受信部と、
前記クライアント側地図データベース及び前記探索結果情報に基づき、前記クライアント側地図データベースに含まれる情報と前記案内用不足情報とを用いた前記案内情報を生成する案内情報生成部と、を備えるナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記差分情報抽出部は、前記サーバー側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報と、前記バージョン特定情報に示されるバージョンの前記クライアント側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報との前記案内経路に沿った差分を、前記差分情報として抽出する請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記差分情報抽出部は、前記サーバー側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報に基づいて前記経路探索部により探索された前記案内経路を構成する道路リンクの配列を示すリンク列を生成し、当該リンク列を前記クライアント側地図データベースに含まれる道路ネットワーク情報に当てはめた際の不一致箇所の情報を前記差分情報として抽出する請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記案内用不足情報は、案内地点拡大図、案内地点周辺の施設情報、案内用名称情報の少なくとも1つを含む請求項1から3の何れか一項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記案内用不足情報生成部は、前記差分情報として前記案内経路を構成する道路の情報が含まれている場合には、当該差分情報に含まれている道路における前記案内経路を構成する部分の全体を示す情報を含めて前記案内用不足情報を生成し、前記差分情報として前記案内経路を構成する道路に接続する接続道路が存在することを示す情報が含まれている場合には、当該接続道路における前記案内経路から所定の範囲内の部分を示す情報を含めて前記案内用不足情報を生成する請求項1から4の何れか一項に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベースを有するクライアント装置と、前記クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを有するサーバー装置と、を複数のコンピュータに実現させるナビゲーションプログラムであって、
少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及び前記クライアント側地図データベースのバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報を受信する探索情報受信機能と、
前記探索情報に基づき前記サーバー側地図データベースを用いて前記案内開始地点から前記目的地点までの案内経路を探索する経路探索機能と、
前記バージョン特定情報に基づき、前記サーバー側地図データベースと前記クライアント側地図データベースとの前記案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する差分情報抽出機能と、
前記差分情報に基づいて、前記クライアント装置における案内情報の生成のために不足する情報を案内用不足情報として生成する案内用不足情報生成機能と、
前記案内経路を特定可能な情報である経路特定情報と前記案内用不足情報とを含む探索結果情報を前記クライアント装置に送信する探索結果情報送信機能と、を前記サーバー装置を構成するコンピュータに実現させ、
前記探索情報及び前記バージョン特定情報を前記サーバー装置に送信する探索情報送信機能と、
前記探索結果情報を前記サーバー装置から受信する探索結果情報受信機能と、
前記クライアント側地図データベース及び前記探索結果情報に基づき、前記クライアント側地図データベースに含まれる情報と前記案内用不足情報とを用いた前記案内情報を生成する案内情報生成機能と、を前記クライアント装置を構成するコンピュータに実現させるナビゲーションプログラム。
【請求項7】
少なくとも道路ネットワーク情報を含むクライアント側地図データベースを有するクライアント装置と、前記クライアント側地図データベースと同じ又はそれより新しいバージョンのサーバー側地図データベースを有するサーバー装置と、を用いたナビゲーション方法であって、
少なくとも案内開始地点及び目的地点を含む探索情報、及び前記クライアント側地図データベースのバージョンを特定可能な情報であるバージョン特定情報を受信する探索情報受信ステップと、
前記探索情報に基づき前記サーバー側地図データベースを用いて前記案内開始地点から前記目的地点までの案内経路を探索する経路探索ステップと、
前記バージョン特定情報に基づき、前記サーバー側地図データベースと前記クライアント側地図データベースとの前記案内経路に沿った情報の差分を示す差分情報を抽出する差分情報抽出ステップと、
前記差分情報に基づいて、前記クライアント装置における案内情報の生成のために不足する情報を案内用不足情報として生成する案内用不足情報生成ステップと、
前記案内経路を特定可能な情報である経路特定情報と前記案内用不足情報とを含む探索結果情報を前記クライアント装置に送信する探索結果情報送信ステップと、を前記サーバー装置に実行させ、
前記探索情報及び前記バージョン特定情報を前記サーバー装置に送信する探索情報送信ステップと、
前記探索結果情報を前記サーバー装置から受信する探索結果情報受信ステップと、
前記クライアント側地図データベース及び前記探索結果情報に基づき、前記クライアント側地図データベースに含まれる情報と前記案内用不足情報とを用いた前記案内情報を生成する案内情報生成ステップと、を前記クライアント装置に実行させるナビゲーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−50413(P2013−50413A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189363(P2011−189363)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】