説明

ナビゲーションシステム、経路探索サーバおよび候補経路表示方法

【課題】同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が過剰にユーザに提示されることを回避することで、ユーザによる候補経路選択の迅速性及び利便性の向上を図ること。
【解決手段】出発地と目的地とを含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した区間を含む候補経路を探索する経路探索手段33を有する経路探索サーバ30と、前期候補経路を表示する表示手段25を有する端末装置20と、を備えたナビゲーションシステム10において、交通機関を利用する場合に選出される出発地付近又は目的地付近の最寄駅が、同一交通路線上に規定数を超えて選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅を特定する有効最寄駅特定手段(31,38)を備え、それにより、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が規定数を超えて表示されることを制限するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は出発地から目的地に至る候補経路を探索してユーザに提示するナビゲーションシステムに関するものであり、特に、交通機関を利用した複数の候補経路を提示する際、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が規定数を超えて提示されないようにしたナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図データ、道路データを用いて、所望の出発地から目的地までの経路を探索して候補経路をユーザに提示するナビゲーション装置、ナビゲーションシステムが知られている。例えば、候補経路の提示のみならず、自動車に搭載して運転者を目的地まで誘導案内するカーナビゲーション装置や、携帯端末を利用して経路探索サーバに経路探索要求を送り、その結果を受信して目的地に至るまでの誘導案内を受ける通信型のナビゲーションシステムなどがすでに実用化されている。
【0003】
特に、通信型のナビゲーションシステムとしては、携帯電話やPDA等を携帯端末として利用することにより歩行者用のナビゲーションシステムとしたものが広く知られている。近年では、この歩行者用のナビゲーションシステムにあっては、交通機関を含めた候補経路の提示が要求されることから、経路探索サーバに交通機関の交通路線データや運行時刻データを蓄積して所望の出発駅から所望の目的駅までの交通機関経路を、徒歩経路を含めて探索する機能を有するナビゲーションシステムが多数提案されている。
【0004】
一般的なナビゲーション装置、ナビゲーションシステムに使用される経路探索装置、経路探索方法としては、例えば、下記の特許文献1(特開2001−165681号公報)に開示されているものが知られている。このナビゲーションシステムは、携帯ナビゲーション端末から出発地と目的地の情報を含む検索条件を情報配信サーバに送り、情報配信サーバで道路網や交通網のデータから経路探索条件に合致した経路を探索するように構成されている。経路探索条件としては、出発地から目的地までの移動手段、例えば、徒歩、自動車、鉄道、バス、及びこれらの併用などがあり、これを経路探索条件の1つとして経路探索を行う。
【0005】
情報配信サーバは、地図データの道路(経路)をその結節点、屈曲点の位置をノードとし、各ノードを結ぶ経路をリンクとし、全てのリンクのコスト情報(距離や所要時間)をデータベースとして備えている。そして、情報配信サーバは、データベースを参照して、出発地のノードから目的地のノードに至るリンクを順次探索し、リンクのコスト情報が最小となるノード、リンクをたどって案内経路とすることによって最短の経路を携帯ナビゲーション端末に案内することができる。このような経路探索の手法としてはラベル確定法あるいはダイクストラ法と言われる手法が用いられる。上記特許文献1には、このダイクストラ法を用いた経路探索方法も開示されている。
【0006】
交通機関を利用する経路を探索する経路探索システムは、徒歩経路や自動車による移動経路を探索するための道路ネットワークデータに加え、各交通機関の運行時刻データをデータベース化した運行時刻データベースとこれに基づいて交通ネットワークをデータベース化した交通ネットワークデータを備えている。経路探索システムは、ユーザが指定する出発日時、出発地、目的地、到着時刻等の経路探索条件に基づいて、これらのデータベースを参照して、乗り継ぎ(乗換え)を含めて出発地と目的地を結ぶ利用可能な各交通手段(個々の電車や交通路線バス)を経路として順次たどり、経路探索条件に合致する案内経路(出発地駅、目的地駅、交通路線、列車などの交通手段)の候補を1つまたは複数提示するように構成される。経路探索条件としては更に、所要時間、乗り継ぎ回数、運賃などを指定できるようにされているのが一般的である。
【0007】
ところで、交通機関を利用した経路を探索するナビゲーションシステムにあっては、より多くの候補経路をユーザに提示して利用価値を高めるという趣旨に鑑み、交通機関利用の始点となる乗車起点駅や終点となる最終降車駅(最寄駅)は複数提示されるのが好ましいとされる。かかる観点から、例えば特許文献2に示されるナビゲーションシステムにおいては、出発地から一定範囲内に存在する乗車起点駅(最寄駅)が複数提示される構成が採用されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−165681号公報
【特許文献2】特開2004−118539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような構成を採用すると、出発地や目的地から一定範囲内に同一交通路線上の駅が多数存在するような場合には、それらを最寄駅とする候補経路がユーザにすべからく提示されるケースが生じ得る。かかる現象は、たとえば東京や大阪等の交通機関が密集した地域では特に顕著となる。
【0010】
とりわけ交通機関の密集する地域では、同一路線上の複数駅が最寄駅として提示されることは、この種のユーザのニーズに合致したものであるものの、この場合、以下の問題が生じることが知見されている。
(1)候補経路の端末装置への表示数が制限されるナビゲーションシステムの場合、最寄駅が異なるだけで実質的には同一経路を利用した多数の候補経路が優先的に表示されてしまう場合があり、他の交通路線を利用した候補経路が提示されなくなってしまう。
(2)候補経路の表示数が制限されていない場合でも、実質的に同一経路を利用した多数の候補経路が表示されてしまうことにより、候補経路全体の一見把握、比較参照が困難となり、所望の候補経路の選別に時間がかかってしまう等の不具合が生じる。
【0011】
一方で、この種のナビゲーションシステムを利用するユーザは、一般に、交通機関を利用した候補経路を選別するに際しては、異なる交通路線(鉄道、バス等)を利用した経路を比較した上で最適なものを選別することを所望するものであるから、上述のように、最寄駅こそ異なるものの実質的には同一の路線を利用する候補経路の過剰提示は一般には不要と考えられる。
【0012】
この発明は、上記の問題点およびユーザのニーズに着目してなされたものであり、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が過剰にユーザに提示されることを回避することで、ユーザによる候補経路選択の迅速性及び利便性の向上を図ったナビゲーションシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
出発地と目的地とを含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した区間を含む候補経路を探索する経路探索手段を有する経路探索サーバと、前記候補経路を表示する表示手段を有する端末装置と、を備えたナビゲーションシステムであって、
交通機関を利用する場合に選出される出発地付近又は目的地付近の最寄駅が、同一交通路線上に規定数を超えて選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅を特定する有効最寄駅特定手段を備え、
それにより、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が規定数を超えて表示されることを制限するようにしたナビゲーションシステムである。
【0014】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数が、経路探索要求毎に決定される、ことを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1または2にかかるナビゲーションシステムにおいて、有効最寄駅特定手段より特定される有効最寄駅の規定数が、出発地、目的地または利用交通路線のいずれかの属性に基づいて決定されることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項3にかかるナビゲーションシステムにおいて、出発地又は目的地の属性が、あらかじめ定められた地域属性であることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項5にかかる発明は、請求項1ないし4のいずれかにかかるナビゲーションシステムにおいて、経路探索手段は、有効最寄駅の特定後に、当該有効最寄駅を交通機関の始点又は終点とする候補経路の探索処理を行うことを特徴とすることを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項6にかかる発明は、
出発地から目的地に至る候補経路を探索して提示するナビゲーションシステムにおける経路探索サーバであって、
出発地と目的地とを含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した区間を含む候補経路を探索する経路探索手段と、
交通機関を利用する場合に選出される出発地付近又は目的地付近の最寄駅が、同一交通路線上に規定数を超えて選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅を特定する有効最寄駅特定手段と、を備え、
それにより、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が規定数を超えてユーザに提示されることを制限するようにしたことを特徴とするナビゲーションシステムにおける経路探索サーバである。
【0019】
また、請求項7にかかる発明は、請求項6にかかる経路探索サーバにおいて、有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数が、経路探索要求毎に決定されることを特徴とする。
【0020】
また、請求項8にかかる発明は、請求項6または7にかかる経路探索サーバにおいて、有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数が、出発地、目的地または利用交通路線のいずれかの属性に基づいて決定される ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項9にかかる発明は、請求項8にかかる経路探索サーバにおいて、出発地又は目的地の属性が、あらかじめ定められた地域属性であることを特徴とする。
【0022】
また、請求項10にかかる発明は、請求項6ないし9のいずれかの経路探索サーバにおいて、経路探索手段は、有効最寄駅の決定後に、当該有効最寄駅を交通機関の始点とする候補経路の探索処理を行うことを特徴とする。
【0023】
また、請求項11にかかる発明は、
経路探索要求に応じた出発地から目的地に至る候補経路を探索して提示するナビゲーションシステムにおける候補経路表示方法であって、
出発地付近又は目的地付近の最寄駅を選出するステップと、
同一交通路線上に規定数を超えて最寄駅が選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅を特定するステップと、
決定された有効最寄駅に基づいて候補経路を探索するステップと、
探索された候補経路を提示するステップと、
を有することを特徴とする候補経路表示方法である。
【0024】
また、請求項12にかかる発明は、請求項11にかかる候補経路表示方法において、規定数の有効最寄駅を特定するステップには、経路探索要求毎に適宜の規定数を決定する処理が含まれることを特徴とする。
【0025】
また、請求項13にかかる発明は、請求項11または12に記載の候補経路表示方法において、規定数の有効最寄駅を特定するステップには、出発地、目的地または利用交通路線のいずれかの属性に基づいて規定数を決定する処理が含まれることを特徴とする。
【0026】
また、請求項14にかかる発明は、請求項13にかかる候補経路表示方法において、出発地又は目的地の属性が、あらかじめ定められた地域属性であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1にかかる発明によれば、交通機関を利用する場合に選出される出発地付近又は目的地付近の最寄駅が、同一交通路線上に規定数を超えて選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅が特定されるから、それにより、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が規定数を超えて表示されることを制限することができる。その結果、
(1)候補経路の端末装置への表示数が制限されるナビゲーションシステムの場合、
最寄駅が異なるだけで実質的には同一経路を利用した多数の候補経路が優先的に表示されてしまうことにより、他の交通路線を利用した候補経路が提示されなくなってしまう、という不具合を解消することができる。
(2)また、候補経路の表示数が制限されていない場合でも、実質的には同一経路を利用した多数の候補経路が表示されてしまうことにより、候補経路の一見把握、比較参照が困難となって所望の候補経路の選別に時間がかかってしまう等の不具合を解消することができる。
【0028】
請求項2にかかる発明によれば、有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数を経路探索要求毎に決定することができる。その結果、例えば経路探索要求ごとのユーザからの任意指定に基づいて当該規定数を都度変更可能にするなど、経路探索要求に応じた柔軟な表示制限を行うことができる。
【0029】
請求項3にかかる発明よれば、有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数を、出発地、目的地または利用交通路線のいずれかの属性(これらの組み合わせを含む)に基づいて決定することができる。したがって、出発地、目的地または交通路線によりあらかじめ定められた規定数を自動的に設定することが可能となる。このため、ユーザに規定数選択の意義を解説したり、当該選択の負担を負わせるといった煩雑さを省略でき、出発地、目的地や利用交通路線の個別事情等に対応した柔軟な表示制限をすることが可能となる。
【0030】
請求項4にかかる発明によれば、出発地又は目的地で特定される地域属性に基づいて、有効最寄駅数を自動的に決定することができる。したがって、例えば、鉄道交通路線が密集していて候補経路が比較的多数選ばれることが予想される地域とそうでない地域とで、規定数に差別化を図る等、地域実情を考慮したよりユーザフレンドリーな表示制限を行うことが可能となる。
【0031】
請求項5にかかる発明によれば、有効最寄駅の決定後に、当該有効最寄駅を交通機関の始点又は終点とする候補経路の探索が行われる。したがって、ダイクストラ法等により候補経路を算出するのに先んじて最寄駅が特定され、有効とされない最寄駅に基づく候補経路の算出が不要となり、経路探索時間が削減される。
【0032】
請求項6ないし請求項10にかかる発明によれば、それぞれ請求項1ないし5にかかるナビゲーションシステムを構成する経路探索サーバを提供することができ、請求項11ないし14の発明よれば、それぞれ請求項1ないし4にかかるナビゲーションシステムにおける経路表示方法を提供することができるようになる
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するためのナビゲーションシステムを例示するものであって、本発明をこのナビゲーションシステムに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他のナビゲーションシステムにも等しく適用し得るものである。尚、本発明は、出発地付近の乗車起点駅に基づく候補経路の制限的提示のみならず、最終降車駅に基づく候補経路の制限的提示にも同様に適用できるものであるが、いずれの場合も同様の技術的思想を用いて具現化されるものであるから、重複説明を回避するため、以下の説明では制限表示対象の最寄駅として乗車起点駅のみを適用したものを例示する。
【実施例】
【0034】
図1は、本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの構成を示す図である。本実施例にかかるナビゲーションシステム10は、図1に示すように、携帯電話やPDA、ミュージックプレーヤーなどの携帯機器を採用した端末装置20と経路探索サーバ30とがインターネットなどのネットワーク12を介して接続される構成になっている。経路探索サーバ30は、経路探索のための道路ネットワークのデータを蓄積したデータベース(DB1)、時刻表データに基づく交通ネットワークのデータを交通ネットワークデータとして蓄積したデータベース(DB2)、交通機関の各電車等の運行ダイヤに基づく時刻表や運賃を蓄積した時刻表・運賃データのデータベース(DB3)、誘導案内に際しての表示用の地図データなどを蓄積したデータベース(DB4)を備えている。尚、この例では、時刻表・運賃データは、ネットワーク上に配置された情報配信サーバ50から定期的に取得するようにされている。
【0035】
更に、本実施例では、本発明の要部となる最寄駅ノード採用制限用データを蓄積したデータベース(DB5)を備えている。このデータベースには、誘導案内に先立って実行される経路探索の際に同一交通路線上の乗車起点駅(最寄駅ノード)が複数選出された場合に、それら各最寄駅ノードに基づく複数の候補経路が一定数を越えて表示されないように制限するために必要とされるデータが格納されている。詳細内容については図9を用いて後述する。
【0036】
尚、本発明にかかるナビゲーションシステム10は、上記の構成に限られるものではなく、経路探索サーバ30には、ナビゲーションサービス機能とともにPOI(Point of Interest(レジャー施設、飲食店、イベント会場当の種々の興味対象場所)、以下同様)の所在場所の地図を配信する地図配信サーバの機能を具備させることが可能である。この場合にも、端末装置20には、携帯電話やPDAや音楽プレイヤーや携帯ゲーム機などの携帯機器を採用することができる。
【0037】
図2は、図1に示すナビゲーションシステム10の詳細構成を示すブロック図である。経路探索サーバ30は、制御手段31、誘導案内データ編集手段32、経路探索手段33、通信手段34、道路ネットワークデータ35、交通ネットワークデータ36、地図データ37、最寄駅ノード採用制限用データ38などを備えて構成されている。制御手段31は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有する所謂マイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各構成要素32〜38の動作を制御する。そして、この制御プログラムには、上述の最寄駅採用制限用データを参照して、同一交通路線上の各最寄駅ノードに基づく複数の候補経路が一定数を越えて表示されないように制限するための専用プログラムが含まれる。すなわち、この専用プログラムが格納された制御手段31と最寄駅採用制限用データ38とにより、本発明にかかる有効最寄駅特定手段が実現されることとなる。詳細内容については図8のフローチャートを参照しつつ後述する。尚、通信手段34はネットワーク12を介して端末装置20等と通信データを送受信するための通信インターフェースを示している。
【0038】
尚、誘導案内データ編集手段32は、本発明の要部となる候補経路の提示と、続くユーザによる一の経路の選択後に開始される誘導案内を実行する際、端末装置20に現在地付近の地図データ等を付加して誘導案内情報を表示するための誘導案内データを編集するものである。
【0039】
一方、端末装置20は、制御手段21、通信手段22、位置検出手段23、経路探索サーバ30から受信した誘導案内データを記憶する経路記憶手段24、表示手段25、表示制御手段26、誘導案内が実行される際に経路探索サーバから受信した地図データなどのダウンロードデータを一時記憶する一時記憶手段27、操作入力手段28等を備えて構成されている。
【0040】
端末装置20において、制御手段21は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有する所謂マイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各構成要素22〜28の動作を制御する。通信手段22はネットワーク12を介して経路探索サーバ30等と通信データを送受信するための通信インターフェースである。位置検出手段23は、GPS受信手段などから構成され、GPS衛星信号を受信して現在位置および現在時刻を算出する。
【0041】
尚、位置検出手段23は、もっぱら誘導案内に際して現在地を特定するために使用される。地下鉄などGPS衛星信号を受信できない交通機関に乗車中にも現在位置確認が可能となるように、停車駅における携帯電話基地局との通信あるいは加速度センサ等による発・停車検出や速度検出、路線情報等を介して現在位置を特定できるように構成することが可能である。
【0042】
次に、本実施例にかかるナビゲーションシステムの使用態様について、端末装置20に表示される画面内容の一例を示しつつその概略を説明する。尚、上述までの説明からも明らかなように、本実施例のナビゲーションシステムは、候補経路の探索のみならず、ユーザを目的地まで誘導案内する機能を有するものであるが、本発明の要旨は、誘導案内に先立って実行される候補経路探索にかかるものであるから、誘導案内についての詳細説明は省略するものとする。
【0043】
図3は、端末装置20の表示手段25に表示される経路探索条件設定のためのメニュー画面の一例を示す図である。同図に示される経路探索条件設定画面310には、出発地入力欄302、目的地入力欄303、時刻条件入力欄304、候補経路ソート条件を設定するためのソート条件入力欄305、探索開始ボタン308が設けられている。
【0044】
出発地と目的地の設定は、出発地入力欄302、目的地入力欄303に住所や電話番号あるいは駅名称、ビル名称などの地点名称、緯度・経度などを入力して設定する。この入力欄は、原則としてフリーワード入力が可能であるが、住所、電話番号、POI(Point of interest)の名称などで設定することできる。また、プルダウンボタンを操作して、過去に端末装置20に入力した経路探索履歴や登録地点を呼び出して設定することもできる。
時刻条件入力欄304には出発日時や目的地到着日時などの時刻条件を入力する。時刻条件の設定が必要ない場合には設定を省略することができる。図3には、出発地として「##ビル」が、目的地として「**ホテル」が設定され、時刻条件として目的地到着時刻「15:35」が設定された例が示されている。
【0045】
ソート条件入力欄305は、複数の候補経路の探索処理を要求する場合に使用される。このソート条件入力欄305には、探索された複数の候補経路を端末装置20に優先順位をつけて表示する際の条件を入力する。この例では、『乗換え回数の少ない順』、『総所要時間が短い順』、『交通運賃の安い順』、『最寄駅までの距離が近い順』等の項目がプルダウンメニューとして予め用意されており、これらの中から任意のものを適宜選択入力する。図3には、当該ソート条件として『総所要時間が短い順』が選択された例が示されている。尚、本実施例では、候補経路のソート条件を指定しないことも可能であり、この場合にはいわゆる最適経路(所要時間の最も短い経路)の探索要求となり、経路探索サーバ30においては、1の候補経路の探索のみが実行されることとなる。
【0046】
これらの必要な条件設定を終え、探索開始ボタン308を操作すると、端末装置20から経路探索サーバ30に経路探索条件データが送信され、これにより経路探索サーバ30において経路探索要求が受け付けられることとなる。
【0047】
経路探索サーバ30は、端末装置20からの経路探索条件データを受信すると、経路探索手段33が道路ネットワークデータ35、交通ネットワークデータ36、最寄駅ノード採用制限用データ38を参照して現在位置から目的地までの候補経路を探索し、当該候補経路を端末装置20に一覧表示するための候補経路データを作成する。
【0048】
候補経路データは経路探索サーバ30から通信手段34を介して端末装置20に送信される。端末装置20は、候補経路データに基づいて、候補経路一覧を表示手段25に表示する。
【0049】
候補経路一覧画面の内容の概略を図4に示す。同図に示される例は、図3に示した経路探索条件設定メニュー画面において、出発地としてGPS機能を介して特定される『現在地』、目的地として『AAタワー』、時刻条件として『出発時刻12:00』、候補経路ソート条件として『総所要時間が短い順』が設定された場合のものである。
【0050】
同図に示されるように、本実施例では、ユーザにより指定された経路探索条件を満たす複数の候補経路が特定された後、それらが候補経路ソート条件に従って順番に表示される。なお、この例では候補経路が3つ(経路1〜3)しか図示されていないが、本実施例では候補経路が上限5個(あくまでデフォルト値であり、設定変更可能)まで端末装置20に表示されるように構成されており、画面をスクロールすることにより、第4経路以下の経路を表示参照することができる。
【0051】
また、同図に示される『経路1』と『経路2』の内容から明らかであるように、本実施例では、最初に利用する交通機関が同一路線(鉄道X)であっても、複数の最寄駅(a駅、b駅)が探索される状況下にあっては、各々の駅を乗車起点とする候補経路が探索され提示されるようになっている。
【0052】
尚、図4では省略されているが、この候補経路一覧には、さらに出発地から最寄駅(乗車起点駅)までの徒歩経路情報(所要時間等)、目的地の最寄駅(最終降車駅)から目的地までの徒歩経路情報(所要時間等)と、出発地の最寄駅から目的地の最寄駅までに利用する電車やバスなどの交通手段の時刻、乗換駅が含まれる場合には乗換えにかかる所要時間、乗換駅で乗換えるべき電車やバスなどの交通手段の詳細な情報等が表示されるように構成されている。
【0053】
上述のように、本実施例のナビゲーションシステムでは、原則として複数の候補経路が提示される。さらには、最初に利用する交通機関が同一路線(鉄道X)であっても、複数の最寄駅(a駅、b駅)がある場合には、それらを乗車起点とする候補経路がそれぞれ探索され提示されるため、ユーザは、最寄駅の選択も含め、提示される複数の候補経路を比較参照して所望の1の候補経路を選択可能に構成されている。
【0054】
そして、上記候補経路一覧の中からユーザが所望の1の経路を選択すると、経路探索サーバ30から地図画像等を含む誘導案内情報が適宜送信され、出発地から目的地までの誘導案内が実行されることとなる。誘導案内情報は一時記憶手段27に記憶され、必要に応じて読み出され、表示手段25に表示される。
【0055】
次に、経路探索サーバ30における経路探索の概念について図5を参照しつつ説明する。経路探索用のネットワークデータとしては、図2に示したように徒歩や自動車による移動経路を探索するための道路ネットワークデータ35と公共交通機関を利用した移動経路を探索するための交通ネットワークデータ36が蓄積されている。経路探索手段33は、この経路探索用ネットワークデータを参照して、徒歩や自動車による経路あるいは徒歩と交通機関を併用した経路を探索する。
【0056】
道路ネットワークデータ35は、以下のように構成されている。例えば、道路が、図5に示すように道路A、B、Cからなる場合、道路A、B、Cの端点、交差点、屈曲点などをノードとし、各ノード間を結ぶ道路を有向性のリンクで表し、ノードデータ(ノードの緯度・経度)、リンクデータ(リンク番号)と各リンクのリンクコスト(リンクの距離またはリンクを走行するのに必要な所要時間)をデータとしたリンクコストデータとで構成される。
【0057】
図5において、Nn(○印)、Nm(◎印)がノードを示し、Nm(◎印)は道路の交差点を示している。また、各ノード間を結ぶ有向性のリンクは矢印線(実線、点線、2点鎖線)で示されている。実際には、道路の上り、下りそれぞれの方向を向いた矢印で示されるリンクが存在するが、図6では図示を簡略化するため一方向のみの矢印として図示している。
【0058】
このような道路ネットワークのデータを経路探索用のデータベースとして経路探索を行う場合、出発地のノードから目的地のノードまで連結されたリンクをたどりそのリンクコストを累積し、累積リンクコストが最少になる経路を探索する。すなわち、図5において出発地をノードAX、目的地をノードCYとして経路探索を行う場合、ノードAXから道路Aを走行して、ノードNm、Nnを経て2つ目の交差点ノードNmで右折して道路Cに入り、ノードNnを通過してノードCYにいたるリンクを順次たどり、各リンクコストを累積し、リンクコストの累積値が最少になる経路を探索する。
【0059】
図5ではノードAXからノードCYに至る経路が1通りしか図示されていないが、実際にはそのような経路が他にも存在するため、ノードAXからノードCYに至ることが可能な複数の経路を同様にして探索し、それらの経路のうちリンクコストが最少になる経路を最適経路として決定するものである。この手法は、例えば、ダイクストラ法と呼ばれる周知の手法によって行われる。もっとも、本実施例では、候補経路を複数探索するため、提示されるのは必ずしも最適経路のみではないことは、先に説明した通りである。
【0060】
これに対して、交通機関の経路探索のための交通ネットワークデータ36は以下のように構成されている。例えば、図6に示すように交通路線A(実線)、B(破線)、C(点線)が存在する場合、各交通路線A、B、Cに設けられた各駅(航空機の交通路線においては各空港)をノードとし、各ノード間を結ぶ区間を有向性のリンクで表し、ノードデータ(緯度・経度)、リンクデータ(リンク番号)をネットワークデータとしている。図6において、Nn(○印)、Nm(◎印)はノードを示し、更にNm(◎印)は交通路線の乗り継ぎ点(乗換え駅など)を示し、矢印線(実線、点線、2点鎖線)は各ノード間を結ぶ有向性のリンクをそれぞれ示している。リンク(矢印線)には、交通路線の上り、下りそれぞれの方向を同時に示すものが存在するが、図6では図示を簡略化するため一方向のリンクのみを図示している。
【0061】
ところで、交通ネットワークは道路ネットワークと比べリンクコストに対する取り扱いが若干異なる。すなわち、道路ネットワークではリンクコストは固定的、静的なものであるのに対し、交通ネットワークでは、図6に示すように交通路線を運行する列車や航空機(以下個々の列車や航空機などの各経路を交通手段と称する)が複数あるうえに、交通手段毎にノードを出発する時刻と次のノードに到着する時刻(時刻表データ、運行データで規定される)とが定まっており、かつ、個々の経路が必ずしも隣接するノードに直接リンクしないため、リンクコストが動的なものとなりやすい。例えば、同一路線上に急行と各駅停車とが運行されているような場合には同じ交通路線上に異なる複数のリンクが存在することになり、ノード間の所要時間も異なることとなる。
【0062】
図7に例示する交通ネットワークにおいては、交通路線Aの同じリンクに複数の交通手段(経路)Aa〜Ac・・・、交通路線Cに複数の交通手段(経路)Ca〜Cc・・・が存在する。従って、交通機関の運行ネットワークは、比較的単純な道路ネットワークと異なり、ノード、リンク、リンクコストの各データは交通手段(個々の航空機や列車などの経路)の総数に比例したデータ量になる。
【0063】
このような交通ネットワークデータ36を用いて、ある出発地からある目的地までの経路を探索するためには、出発地から目的地まで到達する際に利用できる全ての交通手段を探索して経路探索条件に合致する交通手段を特定する必要がある。
【0064】
例えば、図7において、出発地を交通路線AのノードAXとしてある特定の出発時刻を指定して、交通路線CのノードCYを目的地とする経路探索を行う場合、交通路線A上を運行する交通手段Aa〜Ac・・・のうちの出発時刻以降の全ての交通手段を順次出発時の経路として選出する。そして交通路線Cへの乗り継ぎノードへの到着時刻に基づいて、交通路線C上を運行する各交通手段Ca〜Cc・・・のうち、乗り継ぎノードにおいて乗車可能な時刻以降の交通手段の全ての組み合わせを網羅した上で各経路の所要時間や乗り換え回数などを累計して候補経路を探索することになる。
【0065】
経路探索サーバ30は、上述のようにして経路探索条件に合致する複数の候補経路を探索し、その結果を候補経路データとして端末装置20に送信する。この際、経路探索条件として出発地の出発時刻が指定されている場合には目的地への到着時刻が、また、目的地への到着時刻が指定されている場合には、目的地に指定時刻に到着するための出発地の出発時刻が候補経路データに含まれ、端末装置20にはこれらを表示手段25に経路の詳細が表示される。さらに、経路に乗換駅が含まれる場合には、当該乗換駅での乗り換え所要時間等も表示される。
【0066】
移動の手段として徒歩と交通機関を用いる場合の経路探索においては、道路ネットワークデータ35と交通ネットワークデータ36とを結合して総合的なネットワークデータを編集し経路探索を行う。徒歩経路の特定には道路ネットワークデータ35が参照され、交通機関を用いる経路の特定には交通ネットワークデータ36が参照される。尚、本実施例では、原則としてトータルコストが低いものから順に上位5に入る経路が候補経路としてユーザに提示される。したがって、徒歩経路区間が最小にならない経路が優先的に提示されることもあるが、これらは、デフォルト値を変更することで、例えば乗換え回数が少ない候補経路を優先的に提示したり、交通機関を利用した経路区間の運賃が小さいものを優先的に提示するように構成することもできる。これらの設定は、この種の交通機関を用いたナビゲーションシステムにおいては一般的なものである。
【0067】
図7は端末装置20における動作手順を示すフローチャートである。まず、ステップ101において操作入力手段29がユーザからの経路探索条件(出発地・目的地等(図3参照))の入力が受け付けられる。次いで現在時刻、現在位置が取得される(ステップ102)。尚、現在時刻・現在位置の取得は、位置検出手段23が有するGPS受信機を用いて行うことができる。もちろん、端末装置20が備える時計手段などにより現在時刻を取得してもよいし、もしくは、経路探索サーバ装置30側で現在時刻の取得を行うことも可能である。同様に、現在位置についても、端末装置20の中継基地局等との通信を介して、サーバ装置30の側で行うように構成することも可能である。
【0068】
ステップ103の処理では、ステップ101で受け付けた経路探索条件データと、ステップ102で取得した時刻データと、現在位置データとが、通信手段22を介して経路探索サーバ30へ送信される。これにより、経路探索サーバ30において、これら経路探索条件に合致する候補経路の探索が行われ、その結果として経路探索サーバ30から候補経路データが受信され(ステップ104)、候補経路探索結果として一時記憶手段27に格納する(ステップ105)。
【0069】
次いで、一時記憶手段27に格納した候補経路データの情報が読み出されて表示手段25に表示される(ステップ106(図3参照))。そして、ユーザによる複数候補経路からの一の所望経路の所定の選択入力や、利用終了相当の操作入力があるまでは一時待機状態となり(ステップ108)、それら入力処理が受け付けられることにより処理は一端終了される。尚、一の所望経路の選択があった場合には、引き続き当該経路に基づく所謂誘導案内のための処理が実行されるのであるが、本発明の要部とは直接関連しないため、説明は省略する。
【0070】
一方、本発明の要部となる経路探索サーバ30において実行される候補経路探索のための動作手順を図9のフローチャートに示す。
経路探索サーバ30は、通信手段34を介して端末装置20から経路探索条件データを受信すると(ステップ201)、経路探索処理の実行にあたって、まず、最寄駅ノードの選出を行う(ステップ202)。ここでは、GPS機能を介して特定される現在位置データや経路探索条件として指定された出発地データにより出発地点の位置情報を取得した後、当該出発地点からの直線距離が一定範囲内(例えば1km以内等)にある駅(バス停を含む)を、最寄駅ノードとしてすべて選出する。
【0071】
次いで、これら選出された最寄駅ノードの中に同一路線上の2以上の最寄駅ノードが選出されているか否かが判別され(ステップ203)、2以上選出された路線がないときには(ステップ203NO)、ステップ202において選出されたすべての最寄駅ノードに基づいて、経路探索手段33を通じて経路探索条件に合致した最適経路を含む候補経路の探索処理を行い(ステップ208)、トータルコストが低いものから順に上位5に入る経路についての候補経路データを作成して端末装置20に送信して(ステップ209)、処理は一端終了する。
【0072】
一方、同一路線上に2以上の最寄駅ノードが選出されていると判定されたときには(ステップ203YES)、同一路線上の複数の最寄駅ノードのうち有効とすべき最寄駅ノードの個数(同一路線有効最寄駅ノード)を確認する(ステップ204)。この処理は、最寄駅ノード採用制限用データ38(図2参照)を参照して、出発地が、予め定められた域属性のいずれに属するかの判定を通じて実行される。
【0073】
最寄駅ノード採用制限用データの内容の概略を図9に示す。同図に示されるように、本実施例では、同一路線有効最寄駅ノード数は、地域属性(地域A、地域B、地域C…)に基づいて一意に定められる規定数とされており、最寄駅ノード採用制限用データには、この地域属性毎に予め定められた規定数が、鉄道とバスのそれぞれについて書き込まれている。尚、図9中、『−』であらわされる表示は、その地域属性については規定数が設定されていないこと(制限がないこと)を意味している。
【0074】
図8に戻り、ステップ204において有効最寄駅ノードの規定数が、鉄道、バスのいずれにも設定されていないことが確認された場合には(ステップ205NO)、ステップ202において選出されたすべての最寄駅ノードに基づいて、経路探索手段33を通じて経路探索条件に合致した最適経路を含む候補経路の探索処理を行い(ステップ208)、トータルコストが低いものから順に上位5に入る候補経路についての候補経路データを作成して端末装置20に送信して(ステップ209)、処理は一端終了する。
【0075】
一方、最寄駅ノード採用制限用データに規定数が設定されている場合には(ステップ205YES)、2以上の最寄駅ノードが選出された路線毎に、出発地からの直線距離が近い順に規定数内の同一路線有効最寄駅ノードとして特定し、これに、他の路線(1の最寄駅ノードのみ取得された路線)の最寄駅ノードを加えたものを有効最寄駅ノードとして取得する(ステップ206)。尚、ステップ204で特定された規定数が、同一路線上に選出された最寄駅ノードの数を超える場合には、それら同一路線上の最寄駅はすべて有効最寄駅ノードとなる。
【0076】
次いで、ステップ206で取得された有効最寄駅ノードに基づいて、経路探索手段33を通じて経路探索条件に合致した最適経路を含む候補経路の探索処理を行い(ステップ208)、トータルコストが低いものから順に上位5位に入る候補経路についての候補経路データを作成して端末装置20に送信して(ステップ209)、処理は一端終了する。
【0077】
次に、図8のフローチャート中、ステップ202に示した最寄駅ノード選出の基本概念について図10に基づいて説明する。
【0078】
同図は、出発地近辺の交通機関(鉄道路線、バス路線)および各交通機関の乗車駅を示すものであり、同図中、実線は鉄道路線Xを、一点鎖線は鉄道路線Yを、二点鎖線はバス路線Zを、a〜jは各交通機関の乗車駅(バス停を含む)を、点線は出発地から乗車駅までの直線距離をそれぞれ示している。また、各点線に付された符号(R1〜R10)は、出発地からの直線距離の短い順番(最短:R1〜最長R10)を示しており、すべての乗車駅a〜jが直線距離にして500m以内にあるものとする。
【0079】
図10に示されるような交通機関がある環境下においては、図8中ステップ202で示される最寄駅ノード選出では、図11に示すように、直線距離の近いものから順(番号(1)〜(10))にすべての最寄駅ノードが選出される。具体的には、鉄道路線Xについては最寄駅ノードとして4個(図11中、番号(1),(2),(5),(6)で示される)が、鉄道路線Yについては最寄駅ノードとして4個(同図番号(3),(4),(7),(8))が、バス路線Zについては最寄駅ノードとして2個(同図番号(9),(10))がそれぞれ選出される。
【0080】
このような場合、図8中ステップ203〜207で示したような同一路線有効最寄駅ノード特定の概念を採用しなかった従来のナビゲーションシステムであれば、これら選出されたすべての最寄駅ノードに基づいて候補経路の探索処理が実行され、トータルコストの低いものから順に上位5位に入る候補経路がユーザに提示されることとなる。このような場合にユーザに提示される候補経路についての乗車起点駅の例を図12(a)に示す。この例は、鉄道路線Xのa駅、b駅、c駅と鉄道路線e駅とf駅とを乗車起点駅とした候補経路がトータルコストの低い上位5位と算出された場合に提示される候補経路(図12(a)中、1.〜5.)の乗車起点駅を例示したものである。
【0081】
一方、同一路線有効最寄駅ノード特定の概念を採用した本実施例のナビゲーションシステムにおいては、同様の条件下にあっても、図12(b)に示されるような乗車起点駅が提示されることとなる。すなわち、この例では、図示は省略するが、出発地の地域属性で特定される規定数が鉄道について『2』とされていることから、同一路線上の最寄駅ノードは2個までしか有効とされない。その結果、直線距離が鉄道路線Xについて3番目に該当するC駅についての最寄駅ノードは無効となっており、このC駅を乗車起点駅とする候補経路の探索およびユーザへの提示は行われておらず、代わって、従来であれば候補経路として提示されなかったバス路線Zのi停留所を乗車起点とする候補経路(図12(b)中、10.)が提示されている。
【0082】
上述の図12(a)、(b)の比較から明らかなように、本実施例のナビゲーションシステムによれば、候補経路の端末装置20への表示数が5個と制限されていることから、乗車起点駅(a駅、b駅、c駅)が異なるだけで、実質的には同一経路(鉄道路線X)を利用した3つもの候補経路が優先的に表示されてしまうことにより他の交通機関(バス路線Z)を利用した候補経路が提示されなくなってしまうといった不具合を解消することができる。
【0083】
また、本実施例では候補経路の端末装置20への表示数が制限したが、このような制限がない場合にも、本発明の技術的思想を採用すれば、実質的には同一経路を利用した多数の候補経路が提示されてしまうことにより候補経路の一見把握、比較参照が困難となって所望の候補経路の選別に時間がかかってしまう等の不具合を解消することができる。
【0084】
尚、上述の実施例においては、この種のナビゲーションシステムにおいては既に一般的となっている誘導案内機能が付加されたものを示したが、本発明の要部は、交通機関を利用した候補経路の探索およびその提示に関するものであるから、誘導案内を行わずに候補経路の提示のみを行うナビゲーションシステムにも適用できることは言うまでもない。
【0085】
また、上述の実施例においては、最寄駅ノード採用制限用データに同一路線有効最寄駅ノードの規定数を予め設定するものとしたが、当該規定数は例えば経路探索要求ごとのユーザからの任意指定に基づいて当該規定数を都度変更可能にして経路探索要求に応じた柔軟な表示制限を行うようにすることができる。
【0086】
また、上述の実施例においては地域属性に対応して規定数を予め設定するものとしたが、利用交通路線の属性に基づいて決定すれば、利用交通路線の個別事情等に対応した柔軟な表示制限をすることも可能である。
【0087】
上記説明では、最寄駅として乗車起点駅のみを示したが、本発明は最終降車駅の制限的提示、或いは乗車起点駅と最終降車駅の双方の制限的提示にも等しく適用できるものである。このような場合のナビゲーションシステムの構成は、上記実施例を参照することで当業者であれば容易に実施することが可能であるから、ここでの説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、携帯端末を用いた通信型のナビゲーションシステムに限ることなく、パーソナルコンピュータを端末装置としたナビゲーションシステム、交通路線情報(経路情報)提供システムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】経路探索条件の設定メニュー画面の一例を示す図である。
【図4】候補経路一覧画面の一例を示す図である。
【図5】道路ネットワークのデータの概念を示す模式図である。
【図6】交通ネットワークのデータの概念を示す模式図である。
【図7】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムを構成する端末装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムを構成する経路探索サーバの動作手順を示すフローチャートである。
【図9】最寄駅選出制限用データの内容の概略を説明するための図である。
【図10】最寄駅ノード選出の概念を説明するための図である。
【図11】選出された最寄駅ノードの一例を示す図である。
【図12】提示される経路候補についての乗車起点駅の例を示す図であり、図12(a)は従来提示される乗車起点駅の例を示す図、図12(b)は本実施例で提示される乗車起点駅の例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10・・・・ナビゲーションシステム
12・・・・ネットワーク
20・・・・端末装置
21・・・・制御手段
22・・・・通信手段
23・・・・位置検出手段
24・・・・経路記憶手段
25・・・・表示手段
26・・・・表示制御手段
27・・・・一時記憶手段
28・・・・操作入力手段
30・・・・経路探索サーバ
31・・・・制御手段
32・・・・誘導案内データ編集手段
33・・・・経路探索手段
34・・・・通信手段
35・・・・道路ネットワークデータ
36・・・・交通ネットワークデータ
37・・・・地図データ
38・・・・最寄駅ノード採用制限用データ
50・・・・情報配信サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地と目的地とを含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した区間を含む候補経路を探索する経路探索手段を有する経路探索サーバと、前記候補経路を表示する表示手段を有する端末装置と、を備えたナビゲーションシステムであって、
交通機関を利用する場合に選出される出発地付近又は目的地付近の最寄駅が、同一交通路線上に規定数を超えて選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅を特定する有効最寄駅特定手段を備え、
それにより、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が規定数を超えて表示されることを制限するようにした、
ことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数が、経路探索要求毎に決定される、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
有効最寄駅特定手段より特定される有効最寄駅の規定数が、出発地、目的地または利用交通路線のいずれかの属性に基づいて決定される、ことを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
出発地又は目的地の属性が、あらかじめ定められた地域属性である、ことを特徴とする請求項3に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
経路探索手段は、有効最寄駅の特定後に、当該有効最寄駅を交通機関の始点又は終点とする候補経路の探索処理を行う、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
出発地から目的地に至る候補経路を探索して提示するナビゲーションシステムにおける経路探索サーバであって、
出発地と目的地とを含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した区間を含む候補経路を探索する経路探索手段と、
交通機関を利用する場合に選出される出発地付近又は目的地付近の最寄駅が、同一交通路線上に規定数を超えて選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅を特定する有効最寄駅特定手段と、を備え、
それにより、同一交通路線上の異なる最寄駅に基づく候補経路が規定数を超えてユーザに提示されることを制限するようにした、
ことを特徴とするナビゲーションシステムにおける経路探索サーバ。
【請求項7】
有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数が、経路探索要求毎に決定される、ことを特徴とする請求項6に記載の経路探索サーバ。
【請求項8】
有効最寄駅特定手段により特定される有効最寄駅の規定数が、出発地、目的地または利用交通路線のいずれかの属性に基づいて決定される、ことを特徴とする請求項6または7に記載の経路探索サーバ。
【請求項9】
出発地又は目的地の属性が、あらかじめ定められた地域属性である、ことを特徴とする請求項8に記載の経路探索サーバ。
【請求項10】
経路探索手段は、有効最寄駅の決定後に、当該有効最寄駅を交通機関の始点とする候補経路の探索処理を行う、ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の経路探索サーバ。
【請求項11】
経路探索要求に応じた出発地から目的地に至る候補経路を探索して提示するナビゲーションシステムにおける候補経路表示方法であって、
出発地付近又は目的地付近の最寄駅を選出するステップと、
同一交通路線上に規定数を超えて最寄駅が選出されたときには、当該選出されたものの中から、規定数の有効最寄駅を特定するステップと、
決定された有効最寄駅に基づいて候補経路を探索するステップと、
探索された候補経路を提示するステップと、
を有することを特徴とする候補経路表示方法。
【請求項12】
規定数の有効最寄駅を特定するステップには、経路探索要求毎に適宜の規定数を決定する処理が含まれる、ことを特徴とする請求項11に記載の候補経路表示方法。
【請求項13】
規定数の有効最寄駅を特定するステップには、出発地、目的地または利用交通路線のいずれかの属性に基づいて規定数を決定する処理が含まれる、ことを特徴とする請求項11または12に記載の候補経路表示方法。
【請求項14】
出発地又は目的地の属性が、あらかじめ定められた地域属性である、ことを特徴とする請求項13に記載の候補経路表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−101668(P2010−101668A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271570(P2008−271570)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】