説明

ナビゲーションシステム、経路探索サーバおよび経路探索方法ならびに端末装置

【課題】交通機関を利用した経路を案内する際に、探索した候補経路ごとに、通り抜け不能な車両位置を案内する。
【解決手段】ナビゲーションシステム10は、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベース36と、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベース37と、特定車両抽出手段33と、案内経路データ編集手段32と、経路探索用ネットワークデータベース35と、を備え、交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する。経路探索要求に特定車両経路探索モードが設定されている場合、特定車両抽出手段33は、車両編成データベース37と運行時刻データベース36を参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、案内経路データ編集手段32は、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を前記案内経路データに付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、徒歩や自動車あるいは公共交通機関を利用して、任意の出発地から目的地に至る経路のうちから最適経路や候補経路を探索して案内するナビゲーションシステムに関するものであり、特に、公共交通機関を利用した移動区間について、候補経路を案内する際に、経路ごとに通り抜けできない車両位置を案内できるようにしたナビゲーションシステム、経路探索サーバおよび経路探索方法ならびに端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図データ、道路データを用いて、所望の出発地から目的地までの経路を探索して利用者を案内するナビゲーション装置、ナビゲーションシステムが知られており、このようなナビゲーション装置、ナビゲーションシステムとしては、自動車に搭載して運転者に経路を案内するカーナビゲーション装置、携帯電話をナビゲーション端末として利用して経路探索サーバに経路探索要求を送り、その結果を受信して経路案内を受ける通信型のナビゲーションシステムなどが実用化されている。
【0003】
特に、通信型のナビゲーションシステムは、携帯電話などの携帯端末をナビゲーション端末として利用したシステムであって、歩行者用のナビゲーションシステムとしても用いられるものである。歩行者用のナビゲーションシステムとしては、交通機関を含めた経路案内機能を付加することが好ましく、徒歩経路の探索と案内に加えて、経路探索サーバに交通機関の路線や運行時刻データを蓄積し、所望の出発駅から所望の目的駅までの経路(乗車候補列車)を、徒歩経路の探索と案内に加えて案内する機能を有するナビゲーションシステムも存在する。また、徒歩経路の経路探索を伴わずに情報配信サーバから交通機関の路線や時刻表、乗車可能な列車などの情報の配信を受けて表示する交通案内システムも存在する。
【0004】
一般的なナビゲーション装置、通信ナビゲーションシステムに使用される経路探索装置、経路探索方法は、例えば、下記の特許文献1(特開2001−165681号公報)に開示されている。このナビゲーションシステムは、携帯ナビゲーション端末から出発地と目的地の情報を情報配信サーバに送り、情報配信サーバで道路網や交通網のデータから探索条件に合致した経路を探索して案内するように構成されている。探索条件としては、出発地から目的地までの移動手段、例えば、徒歩、自動車、鉄道と徒歩の併用などがあり、これを探索条件の1つとして経路探索する。
【0005】
情報配信サーバは、地図データの道路(経路)をその結節点、屈曲点の位置をノードとし、各ノードを結ぶ経路をリンクとし、全てのリンクのコスト情報(距離や所要時間)をデータベースとして備えている。そして、情報配信サーバは、データベースを参照して、出発地のノードから目的地のノードに至るリンクを順次探索し、リンクのコスト情報が最小となるノード、リンクをたどって案内経路とすることによって最短の経路を携帯ナビゲーション端末に案内することができる。このような経路探索の手法としてはラベル確定法あるいはダイクストラ法と言われる手法が用いられる。上記特許文献1には、このダイクストラ法を用いた経路探索方法も開示されている。
【0006】
交通機関を利用する経路を探索する経路探索システムは、ユーザが指定する出発日時、出発地、目的地、到着時刻等の経路探索条件に基づいて、各交通機関の運行時刻データをデータベース化した運行時刻データベースと、これに基づいて交通ネットワークをデータベース化したデータを備えている。そして、これらのデータベースを参照して、乗り継ぎ(乗り換え)を含めて出発地と目的地を結ぶ、利用可能な各交通手段(個々の電車や路線バス)を経路として順次たどり、経路探索条件に合致する案内経路(出発地駅、目的地駅、路線、列車などの交通手段)の候補を1つまたは複数提示するように構成される。経路探索条件としては更に、所要時間、乗り継ぎ回数、運賃などの条件を指定できるようにされているのが一般的である。
【0007】
また、交通機関に関する検索、案内を行うシステムとして、携帯電話などの端末装置から交通機関の路線情報や時刻表情報を案内する情報配信サーバに接続して所望の出発駅、出発時刻、目的駅などを指定して、乗車可能な路線や列車、電車などの交通手段の情報配信を受け、端末装置に表示することができる案内システムも提供されている。一般に端末装置からこのような利用を行う場合には、ダウンロードしたい情報の存在する場所を特定するためのURL(Uniform Resource Locator)やドメイン名などのアドレス情報を端末装置に入力して当該アドレスにより特定される情報配信サーバ(情報サイト)にアクセスして所望の情報をダウンロードする構成がとられている。
【0008】
交通機関を利用した経路探索、経路案内をするナビゲーションシステムなどにおける経路探索用のデータは、車載用ナビゲーションシステムや歩行者用ナビゲーションシステムにおける道路ネットワークのデータと同様に交通路線の各駅をノードとし、駅間を双方向リンクとしてネットワーク化したデータの他に、各交通路線上を運行される交通手段ごとに各リンクの運行時刻、所要時間がリンクコストのデータとして加えられる。更に、運賃データが加えられ、探索した案内経路の運賃が合わせて案内されるシステムも存在する。
【0009】
徒歩経路に加えて交通機関を用いた経路を探索するナビゲーションシステムは、例えば、下記の特許文献2(特開2000−258184号公報)に開示されている。この特許文献2に開示されたナビゲーションシステムは、出発地点から目的地点までの経路を、地点をノード、地点間をリンクとして交通ネットワークを表現し、コンピュータを用いてラベル確定法により最短コスト条件下で探索する交通ネットワーク経路探索方法を用いるものである。
【0010】
そして、出発地点および目的地点から利用する交通機関の駅までの経路として、出発地点および目的地点から利用する交通機関の駅までの直線距離、および目的地点から利用する交通機関の駅までの直線距離を緯度経度情報を用いて求め、該直線距離を変数として平均コストを算出し、前記平均コストが指定したコストの範囲内に含まれるすべての利用交通機関の駅を求め、歩行経路を決定し、求められた歩行経路を交通機関の交通ネットワーク経路に組み込んで総合交通ネットワークを表現し、コンピュータを用いてラベル確定法により求めるコスト条件下で探索するように構成されている。
【0011】
従って端末装置に配信される案内経路データには、利用者が指定した経路探索条件である出発地から目的地までの路線経路や乗車を案内するバス、電車、列車およびその時刻が含まれ、運行時刻表や駅に掲示されるいわゆる駅貼り時刻表などがそのまま、あるいは必要部分が画面表示できる表示データなどの形式に加工されて端末装置に配信される。端末装置では案内経路のデータや運行時刻表あるいは駅貼り時刻表を表示して経路や乗車すべき交通手段を確認することができる。
【0012】
交通機関を利用した経路案内においては、各駅の構造、すなわち、ホームの階段や駅改札口の位置と、運行される電車の編成とをデータベースに蓄積しており、経路案内において乗車車両の位置やドアの位置を案内するようにしたナビゲーションシステムも提案されている。例えば、下記の特許文献3(特開2003−182579号公報)、特許文献4(特開平10−134108号公報)に開示された発明がある。
【0013】
特許文献3に開示された最適経路探索装置の発明は、路線網データに、路線間の乗換駅につき、入線側路線及び入線方向と、出線側路線及び出線方向の組み合わせ別に、入線側路線での最適乗換車両位置情報を含めておき、指定探索条件に応じて出発地から目的地まで最短時間で移動できる最適な経路を探索し、最適経路上で乗換えを行うべき駅があるとき、路線網データから最適な経路上での当該乗換え駅での入線側路線及び入線方向と、出線側路線及び出線方向を判別したのち入線側路線での最適乗換車両位置情報を検索し、最適経路情報に付加するように構成したものである。
【0014】
また、特許文献4に開示された鉄道乗換ナビゲーションシステムは、駅構内の情報を登録する駅構内情報テーブルを設け、改札や乗換口に近い位置に停車する車両番号を登録しておき、乗車車両位置決定部は、乗換駅または降車駅で最も都合のよい位置で、降車できるよう、駅構内の情報基づいて、最適乗車位置を決定するように構成したものである。
【0015】
【特許文献1】特開2001−165681号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開2000−258184号公報(図3、図4)
【特許文献3】特開2003−182579号公報(図4、図6)
【特許文献4】特開平10−134108号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、交通機関を用い区間を含む経路を探索し、案内するナビゲーションシステムにおいて、案内された最適経路や候補経路で移動する場合、乗車駅において十分な時間があれば、案内された経路(電車や列車)の最適乗車位置までホームを移動して乗車することができる。ところが、乗車駅で十分な時間が無い場合には、取り敢えず案内された経路(電車や列車)に乗車し、案内された最適乗車位置(最適乗車車両)まで移動する場合がある。このような状況は多々経験するところである。
【0017】
しかしながら、電車や列車の編成によっては通り抜けできない車両が途中にあり、電車や列車内の移動ができない場合がある。例えば、車両の途中にグリーン車や貨物車が連結され、一般車両からの通り抜けが制限されている場合がある。また、通勤時間帯に女性専用車両を設けた車両が運行されるケースが増えている。この場合、物理的には通り抜け可能であるが、男性乗客は心理的に通り抜けできない。
【0018】
また、他の例は、行き先の異なる2つの車両編成の電車や列車が併結して運行される場合である。このような車両が運行される併結区間においては、運転・車掌室を有する最後尾車両と先頭車両とが連結されて運行され、連結部は通行できない場合が多い。
【0019】
上記特許文献3や特許文献4に開示された技術を用いれば、駅構内の情報を登録するデータベースに改札や乗換口に近い位置に停車する車両番号を登録しておき、経路探索の結果により得られた経路において乗換駅または降車駅で最も都合のよい位置で降車できるように最適乗車位置(最適乗車車両番号など)を案内することができる。しかしながら、この技術を適用したとしても、前述したように案内された電車や列車に通り抜けできない車両があるか否かを案内することはできないという問題点があった。
【0020】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、公共交通機関を利用した移動区間について、交通ネットワークの各路線を運行する各電車、列車の車両編成を蓄積したデータベースを備え、探索した候補経路ごとに、通り抜け不能な車両位置を抽出して案内するようになせば、上記の問題点を解消し得ることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0021】
すなわち、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、交通機関を利用した経路を案内する際に、探索した候補経路ごとに、通り抜け不能な車両位置を案内することができるナビゲーションシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
出発地と目的地を含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と、前記経路探索手段が探索した候補経路を表示する表示手段と、を備えたナビゲーションシステムにおいて、
前記ナビゲーションシステムは、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
前記経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段は、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、前記案内経路データ編集手段は、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を案内経路データに付加することを特徴とする。
【0023】
本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、前記特定車両は女性専用車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に女性専用車両がある場合、当該候補経路が女性専用車両として運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする。
【0024】
本願の請求項3にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、前記特定車両は運転席を有する車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に運転席を有する車両がある場合、当該候補経路が運転席を有する車両を併結して運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする。
【0025】
本願の請求項4にかかる発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項にかかるナビゲーションシステムにおいて、前記経路探索要求に特定車両の安定を要求する特定車両経路探索モードが設定され、前記特定車両抽出手段が前記特定車両に該当する車両を抽出した場合、前記案内経路データ編集手段は、前記案内経路データに前記特定車両の種別に応じた特定車両案内情報を付加することを特徴とする。
【0026】
また、本願の請求項5にかかる発明は、
出発地と目的地を含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と備え、前記経路探索手段が探索した候補経路を表示する表示手段を有する端末装置にネットワークを介して接続される経路探索サーバにおいて、
前記経路探索サーバは、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
前記経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段は、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、前記案内経路データ編集手段は、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を案内経路データに付加し、前記端末装置に送信することを特徴とする。
【0027】
本願の請求項6にかかる発明は、請求項5にかかる経路探索サーバにおいて、前記特定車両は女性専用車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に女性専用車両がある場合、当該候補経路が女性専用車両として運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする。
【0028】
本願の請求項6にかかる発明は、請求項5にかかる経路探索サーバにおいて、前記特定車両は運転席を有する車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に運転席を有する車両がある場合、当該候補経路が運転席を有する車両を併結して運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする。
【0029】
本願の請求項8にかかる発明は、請求項5ないし請求項7の何れか1項にかかるナビゲーションシステムにおいて、前記経路探索要求に特定車両の安定を要求する特定車両経路探索モードが設定され、前記特定車両抽出手段が前記特定車両に該当する車両を抽出した場合、前記案内経路データ編集手段は、前記案内経路データに前記特定車両の種別に応じた特定車両案内情報を付加することを特徴とする。
【0030】
また、本願の請求項9にかかる発明は、
出発地と目的地を含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と備え、前記経路探索手段が探索した候補経路を表示する表示手段を有する端末装置にネットワークを介して接続される経路探索サーバを用いた経路探索方法において、
前記経路探索サーバは、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
前記経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段が、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して、各候補経路ごとに、特定車両の情報を抽出するステップと、前記案内経路データ編集手段が、当該車両位置を案内経路データに付加し、前記端末装置に送信するステップとを有することを特徴とする。
【0031】
本願の請求項10にかかる発明は、請求項9にかかる経路探索方法において、前記特定車両は女性専用車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に女性専用車両がある場合、前記特定車両の情報を抽出するステップは、当該候補経路が女性専用車両として運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別する処理を含むことを特徴とする。
【0032】
本願の請求項11にかかる発明は、請求項9にかかる経路探索方法において、前記特定車両は運転席を有する車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に運転席を有する車両がある場合、前記特定車両の情報を抽出するステップは、当該候補経路が運転席を有する車両を併結して運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別する処理を含むことを特徴とする。
【0033】
本願の請求項12にかかる発明は、請求項9ないし請求項11の何れか1項にかかる経路探索方法において、前記経路探索要求に特定車両の安定を要求する特定車両経路探索モードが設定され、前記案内経路データ編集手段が前記特定車両案内情報を案内経路データに付加するステップは、前記特定車両の種別に応じた特定車両案内情報を付加する処理を含むことを特徴とする。
【0034】
また、本願の請求項13にかかる発明は、
経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段が、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、前記案内経路データ編集手段が、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を案内経路データに付加する経路探索サーバに接続される端末装置であって、
前記端末装置は、経路探索サーバに送信する経路探索要求に、特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードを設定する手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
請求項1にかかる発明においては、ナビゲーションシステムは、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、前記経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段は、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、前記案内経路データ編集手段は、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を案内経路データに付加する。
【0036】
このような構成によれば、特定車両検索モードを設定した経路探索要求に対して、交通機関を利用した経路を案内する際に、通り抜けできない特定車両の有無、その車両位置を案内することができる。利用車は、案内に従って乗車した電車内で乗換えや降車に最適な乗車位置の車両に移動できるか否かを判断することができるようになる。
【0037】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、前記特定車両は女性専用車両であり、前記特定車両抽出手段は車両編成データベースを参照し前記候補経路に女性専用車両の有無を判別し、女性専用車両があれば運行時刻データベースを参照して当該候補経路が女性専用車両として運行される時間帯であるか否かを判定し、時刻条件が合致すれば特定車両として抽出する。
【0038】
このような構成によれば、通行禁止の特定車両の有無を含む特定車両案内情報が付加された案内経路データを表示することができるから、利用者は、表示された車両が通行できない女性専用車両であることがわかる。また、利用者が男性であった場合、最適乗車位置に乗車できなかった時、経路の移動中に最適乗車位置に車両を移動することができるか否かを予め知ることができるようになる。
【0039】
請求項3にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、前記特定車両は運転席を有する車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に運転席を有する車両がある場合、当該候補経路が運転席を有する車両を併結して運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別する。
【0040】
このような構成によれば、端末装置は、通行禁止の特定車両の有無を含む特定車両案内情報が付加された案内経路データを表示することができ、利用者は、表示された車両が通行できない運転席を有する車両であることがわかる。また、利用者が最適乗車位置に乗車できなかった時、経路の移動中に最適乗車位置に車両を移動することができるか否かを予め知ることができるようになる。
【0041】
請求項4にかかる発明においては、請求項1ないし請求項3の何れかにかかるナビゲーションシステムにおいて、前記経路探索要求に特定車両の安定を要求する特定車両経路探索モードが設定され、前記特定車両抽出手段が前記特定車両に該当する車両を抽出した場合、前記案内経路データ編集手段は、前記案内経路データに前記特定車両の種別に応じた特定車両案内情報を付加する。
【0042】
このような構成によれば、特定車両検索モードを設定した経路探索要求に対して、交通機関を利用した経路を案内する際に、通り抜けできない特定車両の有無と車両位置およびその種別に応じた案内をするから、利用者は、案内に従って乗車した電車内で乗換えや降車に最適な乗車位置の車両に移動できるか否かを判断することができるようになる。また、特定車両が女性専用車両である場合、利用者が男性であればこの車両を避けて乗車することができるようになる。
【0043】
また、請求項5ないし請求項8にかかる発明においては、それぞれ請求項1ないし請求項4にかかるナビゲーションシステムを構成する経路探索サーバを提供することができ、請求項9ないし請求項12にかかる発明においては、それぞれ請求項5ないし請求項8にかかる発明の経路探索サーバを実現する経路探索方法を提供することができるようになる。また、請求項13にかかる発明においては請求項1ないし請求項4にかかるナビゲーションシステムを構成する端末装置を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのナビゲーションシステムを例示するものであって、本発明をこのナビゲーションシステムに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のナビゲーションシステムにも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0045】
図1は、本発明にかかるナビゲーションシステム10の構成を示すシステム構成図である。図1に示すようにナビゲーションシステム10は、ネットワーク12を介して接続される端末装置20と経路探索サーバ30を備えて構成されている。このナビゲーションシステム10は、各種カテゴリに属するPOIの所在地やサービス内容などの詳細情報を提供するPOI情報配信サーバ50、音楽や各種画像などのコンテンツその他の情報を提供する各種の情報配信サーバ51などを備えて構成されている。
【0046】
経路探索サーバ30はPOI情報配信サーバ50や他の情報配信サーバ51からネットワーク12を経由して必要なデータを取得して自身のデータベースに追加することができる。また、同様にしてPOI情報配信サーバ50や他の情報配信サーバ51に検索要求を送信して所望の検索結果を取得することもできる。
【0047】
本発明にかかるナビゲーションシステム10は、上記の構成に限られるものではなく、経路探索サーバ30はナビゲーションサービス機能とともにPOI所在場所の地図を配信する地図配信サーバの機能を有していてもよい。また、端末装置20も携帯電話を用いることができ、またPDAや音楽プレイヤーや携帯ゲーム機などの携帯機器、あるいは、パーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。
【0048】
図1に示す経路探索サーバ30は、地図データベース34、経路探索用ネットワークデータベース35を備え、端末装置20から経路探索要求があると、探索用ネットワークデータベース35を参照して経路探索する。そして経路探索の結果により得た案内経路(推奨経路)を端末装置20に送信する一般的なナビゲーション機能を有している。また、端末装置20から所望の地点やPOIを指定して地図データの取得要求があると、地図データベース34を参照して該当する地図データを読み出して端末装置20に配信する。
【0049】
また、本発明の実施例にかかる経路探索サーバ30は、交通機関の路線を運行する各移動体(電車、列車)の運行時刻を蓄積した運行時刻データベース36と各移動体の車両編成を記憶した車両編成データベース37とを備えている。一方、端末装置20は、経路探索サーバ30に通り抜けできない(通行禁止の)特定車両位置の案内を要求する特定車両経路探索モードの指定をすることができる。この特定車両経路探索モードが設定されない場合は、通常の経路探索の要求になる。
【0050】
経路探索サーバ30は、端末装置20から、特定車両経路探索モードを設定した経路探索要求があると、先ず、通常の経路探索と同様にして複数の候補経路を探索する。次いで、経路探索サーバ30は、各移動体の車両編成を記憶した車両編成データベース37を参照して各候補経路を構成する電車の車両編成の情報を抽出し、通行禁止の特定車両の有無、車両位置を抽出する。次いで運行時刻データベース36を参照して特定車両を有する電車の時刻条件を参照して案内すべき特定車両を有する電車か否かを判定する。
【0051】
時刻条件とは、例えば、特定車両が女性専用車両のように通勤時間帯のみ女性専用車両として運行される場合である。この時刻条件に従って候補経路にかかる電車および運行時間が女性専用車両として運行される時間帯に属するものであるか否かを判定し、特定車両の案内をすべき経路に該当するか否かを判定する。特定の時間帯のみグリーン車として運行される場合も同様である。
【0052】
経路探索サーバ30は、このような処理を各候補経路について行った後、端末装置20に送信する案内経路データに特定車両が存在する場合、特定車両に関するメッセージを付加する編集を行って、案内経路データを端末装置20に送信する。特定車両に関するメッセージは、例えば、「3両目は女性専用で運行中です。男性は通行できません」、「5両目と6両目は運転席車両で連結されているため通行できません」のような案内メッセージである。
【0053】
このようにすれば、特定車両検索モードを設定した経路探索要求に対して、交通機関を利用した経路を案内する際に、通り抜けできない特定車両の有無、その車両位置を案内することができる。利用車と案内に従って乗車した電車内で乗換えや降車に最適な乗車位置の車両に移動できるか否かを判断することができるようになる。
【0054】
以下、具体例に基づいて本発明を説明するが、その前に本発明にかかるナビゲーションシステム10の詳細な構成を説明する。図2は、図1のナビゲーションシステム10の詳細な構成を示す図である。端末装置20は、ナビゲーションサービスを受けることができる端末であり、制御手段201、通信手段21、GPS受信手段22、探索要求手段23、条件設定手段24、案内経路データ記憶手段25、表示手段26、操作入力手段27を備えて構成される。
【0055】
一方、経路探索サーバ30は、制御手段301、通信手段31、案内経路データ編集手段32、特定車両抽出手段33、地図データベース34、経路探索用ネットワークデータベース35、運行時刻データベース36、車両編成データベース37、探索要求記憶手段38、経路探索手段39を備えて構成される。
【0056】
端末装置20において、制御手段201は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有するマイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。通信手段21はネットワーク12を介して経路探索サーバ30などと通信データを送受信するための通信インターフェースである。
【0057】
GPS受信手段22はGPS衛星からの信号を受信して現在位置を緯度・経度で算出する。操作入力手段27は、キー、ダイヤル等からなり、端末装置20を操作するための入力を行い、また、出発地、目的地などの入力機能としても用いられる。表示手段26は液晶表示パネル等からなり、経路探索サーバ30から配信(送信)された案内経路や推奨経路あるいは地図の表示に使用されるものである。また、表示手段26はメニュー画面を表示し端末装置20を操作するための入力手段としても機能する。
【0058】
経路探索サーバ30から端末装置20に送信される案内経路、推奨経路などの案内データは地図データとともに案内データ記憶手段25に記憶され、案内経路データ記憶手段25に記憶された案内経路などの案内データや地図データは、必要に応じて読み出され、表示手段26に表示される。
【0059】
図3、図4は、経路探索条件入力画面の一例を示す図である。探索要求手段23は、操作入力手段27により入力された条件や操作に基づいて経路探索要求を経路探索サーバ30に送信する。経路探索サーバ30に経路探索要求する場合には、一般的な端末装置20と同様に、図3、図4に示すように表示手段26に表示されたメニューから、あるいは、操作入力手段から所望の出発地、目的地を設定して経路探索サーバ30に送信する。
【0060】
図3、図4に示す経路探索条件入力画面301には、出発地入力欄302、目的地入力303、時刻条件入力欄304、通行禁止車両案内、すなわち、特定車両経路探索モードを設定するかしないかをチェックするチェックボックス305、306、探索開始ボタン308が設けられている。経路探索サーバ30に特定車両経路探索モードを設定して経路探索を要求する場合には、通行禁止車両案内「あり」のチェックボックス305にチェックを入れる。このモードを設定しない場合は通行禁止車両案内「なし」のチェックボックス306にチェックを入れる。図3は特定車両経路探索モードを設定した例を示し、図4は特定車両経路探索モードを設定しない例を示している。何れのチェックボックスにもチェックを入れない場合には、通常の経路探索要求になる。
【0061】
出発地と目的地の設定は、出発地入力欄302、目的地入力欄303に住所や電話番号あるいは駅名称、ビル名称などの地点名称、緯度・経度などを入力して設定する。すなわち、この入力欄は、原則としてフリーワード入力が可能であるが、住所、電話番号、POI(Point of Interest)の名称などで設定することできる。
【0062】
また、プルダウンボタンを操作して、これまでに端末装置20に登録した経路探索履歴や登録地点を呼び出して設定することもできる。時刻条件入力欄304には出発日時や目的地到着日時などの時刻条件を入力する。時刻条件の設定が必要ない場合には設定を省略することができる。必要な条件設定を終え、探索開始ボタン308を操作すると、経路探索要求が端末装置20から経路探索サーバ30に送信される。
【0063】
経路探索サーバ30は、端末装置20から経路探索要求があると、これを探索要求記憶手段38に一時記憶する。そして経路探索手段39は、探索要求記憶手段38に記憶した経路探索要求に従って経路探索用ネットワークデータベース35を参照して出発地から目的地までの複数の候補経路を探索する。経路探索要求が通常の経路探索の要求である場合、経路探索の結果得られた案内経路のデータを地図データベース34から読み出した地図データとともに端末装置20に送信する。この経路探索の方法は通常のナビゲーションシステムにおける経路探索サーバと同様の方法である。
【0064】
一方、経路探索要求が特定車両経路探索モードを設定した経路探索の要求である場合、先ず、通常の経路探索と同様にして複数の候補経路を探索する。次いで、特定車両抽出手段33は、各候補経路データ(乗車すべき電車や列車、乗換え駅や降車駅)に基づいて、各移動体(電車や列車)の車両編成を記憶した車両編成データベース37を参照して各候補経路を構成する電車の車両編成の情報を抽出し、通行禁止の特定車両の有無、車両位置を抽出する。次いで運行時刻データベース36を参照して特定車両を有する電車の時刻条件を参照して案内すべき特定車両を有する電車か否かを判定する。
【0065】
時刻条件とは、前述したように、特定車両が女性専用車両のように通勤時間帯のみ女性専用車両として運行される場合である。すなわち、特定車両抽出手段33は、この時刻条件に従って候補経路にかかる電車および運行時間が女性専用車両として運行される時間帯に属するものであるか、否かを判定し、特定車両の案内をすべき経路に該当するか否かを判定する。案内経路データ編集手段32は、特定車両抽出手段33が特定車両を抽出した場合、当該特定車両の種別、車両位置などの特定車両に関するメッセージ(特定車両案内情報)を付加する編集を行って、端末装置20に案内経路データを送信する。
【0066】
特定車両に関するメッセージは、前述したように、例えば、「3両目は女性専用で運行中です。男性は通行できません」、「5両目と6両目は運転席車両で連結されているため通行できません」のような案内メッセージである。
【0067】
図5は、運行時刻データベース36と車両編成データベース37に蓄積する特定車両位置と車両編成のデータを説明するための模式図である。図5においては上り、下りの車両編成において、3両目が女性専用車両41であり、5両目と6両目が運転席を有する通り抜けできない車両45で併結された構成の電車の構成が示されている。車両編成データベース37には、鉄道路線上を運行される全ての電車や列車について、少なくとも特定車両とその種別および車両位置のデータが蓄積される。
【0068】
一方、運行時刻データベース36には、鉄道路線上を運行される全ての電車や列車についてその運行時刻のデータが蓄積され、女性専用車両がある場合の運行時間帯のデータが属性データ等に記憶される。通行禁止のグリーン車についても同様である。併結された電車については、分岐駅までの運行時刻に基づいて、特定車両の運行時間帯を記録しておくことにより、併結して運行される区間が案内経路にある場合に特定車両案内をすることができるようになる。
【0069】
なお、本実施例においては、運行時刻データベース36と車両編成データベース37をそれぞれ別個に設けているが、これに限ることなく、運行時刻データベース36と車両編成データベース37を同一のデータベースに前述の特定車両に関する情報と運行時刻データとを合わせて蓄積した構成にすることもできる。
【0070】
端末装置20は経路探索サーバ30から案内経路データを受信すると、案内経路データ記憶手段25に記憶し、必要に応じて案内経路データを読み出して図6、図7に示すような案内画面を表示手段26に表示する。図6は経路探索サーバ30に特定車両経路探索モードの経路探索を要求した場合の案内画面401を示している。図6においては通行禁止車両案内表示402に「ON」が表示される。案内経路表示欄403には、候補経路が所要時間の短い順から、第1経路〜第N経路の順に表示される。コメント表示欄404には地図、経路表示の操作のしかたがコメントとして表示される。案内経路表示欄404の表示は必要に応じてスクロールすることができ、第1経路以外の経路を参照することができる。
【0071】
そして、案内経路表示欄403には、候補経路ごとに特定車両が抽出された場合には、その特定車両の種別、車両などの特定車両の情報が案内のメッセージとして表示される。例えば、第1経路には「3両目は女性専用で運行中です。男性は通行できません」というメッセージが表示される。第2経路以下についても同様である。端末装置20の利用者はこのメッセージに従って、表示された車両が通行できないことがわかる。また、最適乗車位置に乗車できなかった時、経路の移動中に最適乗車位置に車両を移動することができるか否かを予め知ることができるようになる。更に、図6のように特定車両が女性専用車両である場合、利用者が男性であればこの車両を避けて乗車することができる。
【0072】
図7は、特定車両経路探索モードの経路探索をした場合の他の案内画面の例を示す図である。図7においては、図6と同様に、通行禁止車両案内表示402に「ON」が表示され、案内経路表示欄403には、候補経路が所要時間の短い順から、第1経路〜第N経路の順に表示される。
【0073】
そして、案内経路表示欄403には、候補経路ごとに特定車両が抽出された場合には、その特定車両の種別、車両などの特定車両の情報が案内のメッセージとして表示される。例えば、第1経路には「5両目と6両目は運転席車両で連結されているため通行できません」というメッセージが表示される。第2経路以下についても同様である。
【0074】
次に、経路探索サーバ30における経路探索の概念について説明する。経路探索用ネットワークデータベース35には、徒歩や自動車による移動経路を探索するための道路ネットワークデータと公共交通機関を利用した移動経路を探索するための交通ネットワークデータが蓄積されている。経路探索手段39は、この経路探索用ネットワークデータベース35を参照して、徒歩や自動車による経路あるいは徒歩と交通機関を併用した経路を探索する。
【0075】
道路ネットワークデータは、以下のように構成されている。例えば、道路が図8に示すように道路A、B、Cからなる場合、道路A、B、Cの端点、交差点、屈曲点などをノードとし、各ノード間を結ぶ道路を有向性のリンクで表し、ノードデータ(ノードの緯度・経度)、リンクデータ(リンク番号)と各リンクのリンクコスト(リンクの距離またはリンクを走行するのに必要な所要時間)をデータとしたリンクコストデータとで構成される。
【0076】
すなわち、図8において、Nn(○印)、Nm(◎印)がノードを示し、Nm(◎印)は道路の交差点を示している。各ノード間を結ぶ有向性のリンクを矢印線(実線、点線、2点鎖線)で示している。リンクは、道路の上り、下りそれぞれの方向を向いたリンクが存在するが、図8では図示を簡略化するため矢印の向きのリンクのみを図示している。
【0077】
このような道路ネットワークのデータを経路探索用のデータベースとして経路探索を行う場合、出発地のノードから目的地のノードまで連結されたリンクをたどりそのリンクコストを累積し、累積リンクコストの最少になる経路を探索して案内する。すなわち、図8において出発地をノードAX、目的地をノードCYとして経路探索を行う場合、ノードAXから道路Aを走行して2つ目の交差点で右折して道路Cに入りノードCYにいたるリンクを順次たどりリンクコストを累積し、リンクコストの累積値が最少になる経路を探索して案内する。
【0078】
図8ではノードAXからノードCYに至る他の経路は図示されていないが、実際にはそのような経路が他にも存在するため、ノードAXからノードCYに至ることが可能な複数の経路を同様にして探索し、それらの経路のうちリンクコストが最少になる経路を最適経路として決定するものである。この手法は、例えば、ダイクストラ法と呼ばれる周知の手法によって行われる。
【0079】
これに対して、交通機関の経路探索のための交通ネットワークデータは以下のように構成されている。例えば、図9に示すように交通路線A、B、Cからなる場合、各交通路線A、B、Cに設けられた各駅(航空機の路線においては各空港)をノードとし、各ノード間を結ぶ区間を有向性のリンクで表し、ノードデータ(緯度・経度)、リンクデータ(リンク番号)をネットワークデータとしている。図9において、Nn(○印)、Nm(◎印)がノードを示し、Nm(◎印)は交通路線の乗り継ぎ点(乗換え駅など)を示し、各ノード間を結ぶ有向性のリンクを矢印線(実線、点線、2点鎖線)で示している。リンクは、交通路線の上り、下りそれぞれの方向を向いたリンクが存在するが、図9では図示を簡略化するため矢印の向きのリンクのみを図示している。
【0080】
しかしながら、交通ネットワークは道路ネットワークと比べリンクコストが基本的に異なる。すなわち、道路ネットワークではリンクコストは固定的、静的なものであったが、交通ネットワークでは、図9に示すように交通路線を運行する列車や航空機(以下個々の列車や航空機などの各経路を交通手段と称する)が複数ある。各交通手段毎にあるノードを出発する時刻と次のノードに到着する時刻とが定まっており(時刻表データ、運行データで規定される)、かつ、個々の経路が必ずしも隣接するノードにリンクしない場合がある。例えば、急行と各駅停車の列車のような場合である。このような場合には同じ交通路線上に異なる複数のリンクが存在することになり、またノード間の所要時間が交通手段により異なる場合もある。
【0081】
図9に例示する交通ネットワークにおいては、交通路線Aの同じリンクに複数の交通手段(経路)Aa〜Ac・・・、交通路線Cに複数の交通手段(経路)Ca〜Cc・・・が存在することになる。従って、交通機関の運行ネットワークは、単純な道路ネットワークと異なり、ノード、リンク、リンクコストの各データは交通手段(個々の航空機や列車などの経路)の総数に比例したデータ量になる。このため交通ネットワークのデータは道路ネットワークのデータ量に比べて膨大なデータ量になる。従って、それに応じて、経路探索に要する時間も多くの時間が必要になる。
【0082】
このような交通ネットワークデータを用いて、ある出発地からある目的地までの経路を探索するためには、出発地から目的地まで到達する際に使用(乗車)できる全ての交通手段を探索して探索条件に合致する交通手段を特定する必要がある。
【0083】
例えば、図9において、出発地を交通路線AのノードAXとしてある特定の出発時刻を指定して、交通路線CのノードCYを目的地とする経路探索を行う場合、交通路線A上を運行する交通手段Aa〜Ac・・・のうち出発時刻以降の全ての交通手段を順次出発時の経路として選択する。そして交通路線Cへの乗り継ぎノードへの到着時刻に基づいて、交通路線C上を運行する各交通手段Ca〜Cc・・・のうち、乗り継ぎノードにおいて乗車可能な時刻以降の交通手段の全ての組み合わせを探索して各経路の所要時間や乗り換え回数などを累計して案内することになる。
【0084】
このようなネットワークデータを利用して経路探索サーバ30は経路探索条件に従って、出発地から目的地までの複数の候補経路を探索し、その結果を案内経路データとして端末装置20に送信する。経路探索条件に出発地の出発時刻が指定されている場合には目的地への到着時刻が、また、目的地への到着時刻が指定されている場合には、目的地に指定時刻に到着するための出発地の出発時刻が案内経路データに含まれ、端末装置20はこれらを表示手段26に経路の詳細とともに表示することができる。案内経路に乗換え駅が含まれる場合には、当該乗換え駅で乗り換えるべき電車やその出発時刻も同様にして表示することができる。
【0085】
次に、本発明の実施例にかかる経路探索サーバにおける経路探索の動作手順を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。先ず、経路探索サーバ30はステップS101の処理において端末装置20から経路探索要求を受信する。ステップS102の判定処理において通常の経路探索要求であるか否かを判定し、通常の経路探索要求であればステップS120の処理に進み、通常の経路探索、案内を行って処理を終了する。
【0086】
ステップS102の判定処理において通常の経路探索要求でないと判定された場合は、経路探索手段39は、ステップS103の処理において、通常の経路探索と同様に出発地から目的地までの候補経路を複数探索する。一般には第3経路ないし第5経路までの候補経路を探索するが、設定により候補経路数は適宜、増減することもできる。
次いで、ステップS104の処理に進み、特定車両抽出手段33は車両編成データベース37を参照し、ステップS105の処理において第N経路(最初は第1経路)の乗車電車の車両編成の情報を取得する。取得する車両情報は、通行禁止の特定車両の有無、種別、車両位置の情報である。
【0087】
そして、ステップS106の処理において、特定車両抽出手段33は、ステップS105の処理において抽出した特定車両について運行時刻データベース36を参照して時刻条件を調べる。ここで調べる時刻条件は、例えば、通勤時間帯に限定して運行される女性専用車両のような場合である。そこで抽出した特定車両が一定の限られた時間帯に運行されるものか否かを判断する。候補経路の運行時刻が特定車両の運行時間帯に該当すれば、当該特定車両はその候補経路においては通行禁止であり、特定車両の時間帯に該当しなければ、当該特定車両はその候補経路においては通行禁止にはならない。
【0088】
そしてステップS106の処理において時刻条件に該当するか否かを判断すると、ステップS107の判定処理において特定車両抽出手段33は、全ての候補経路についてステップS104からステップS106の処理を終えたかを判定する。処理すべき候補経路が残っていればステップS104の処理に戻り、上記の処理を繰り返す。
【0089】
全候補経路について上記の処理が完了していれば、案内経路データ編集手段32は、ステップS108において、全ての候補経路について、時刻条件に該当する特定車両があるか否かを判定する。特定車両が抽出されていた場合は、ステップS109の処理に進み、特定車両の情報を案内する特定車両用のメッセージを付加して案内経路のデータを編集する。案内経路のデータに付加するメッセージは、例えば前述したように「3両目は女性専用で運行中です。男性は通行できません」のようなものである。
【0090】
特定車両が無い場合、ステップS110の処理に進み、案内経路データ編集手段32は、通常の案内経路データを編集する。この場合、案内経路には通行禁止の特定車両が無い旨のメッセージを付加してもよい。最後に経路探索サーバ30は、ステップS111の処理において案内経路データ編集手段32が編集した案内経路のデータを端末装置20に送信して処理を終了する。
【0091】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかるナビゲーションシステムによれば、案内経路に通行禁止の特定車両があるか、その車両が何両目であるかを案内することができるから、利用者はその案内経路移動中に車両間の移動ができるか否かを予め知ることができるようになる。
なお、上記実施例においては経路探索サーバ30を用いたシステムを説明したが、このような構成によらず、経路探索サーバ30はインターネットから端末(パーソナルコンピュータ)アクセスが可能な地図情報提供サイトとして構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明を用いれば、例えば、女性専用車両を案内することで男性であれば誤って女性専用車両に進入して変質者に間違われることもなく、女性であれば安心して変質者に遭遇することのない女性専用車両に移動することもでき、犯罪抑止に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】端末装置において経路探索条件を入力するための入力画面の一例を示す図であり、特定車両経路探索モードを設定して経路探索条件を入力した例を示す図である。
【図4】端末装置において経路探索条件を入力するための入力画面の一例を示す図であり、特定車両経路探索モードを設定せずに経路探索条件を入力した例を示す図である。
【図5】運行時刻データベースと車両編成データベースに蓄積する特定車両位置と車両編成のデータを説明するための模式図である。
【図6】端末装置において、案内経路データを表示する案内画面の一例を示す図であり、特定車両経路探索モードの経路探索をした場合の一例を示す図である。
【図7】端末装置において、案内経路データを表示する案内画面の一例を示す図であり、特定車両経路探索モードの経路探索をした場合の他の例を示す図である。
【図8】道路ネットワークのデータの概念を示す模式図である。
【図9】交通ネットワークのデータの概念を示す模式図である。
【図10】本発明の実施例にかかる経路探索サーバにおける動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
10・・・・ナビゲーションシステム
12・・・・ネットワーク
20・・・・端末装置
201・・・制御手段
21・・・・通信手段
22・・・・GPS受信手段
23・・・・探索要求手段
24・・・・条件設定手段
25・・・・案内データ記憶手段
26・・・・表示手段
27・・・・操作入力手段
30・・・・経路探索サーバ
301・・・制御手段
31・・・・通信手段
32・・・・案内経路データ編集手段
33・・・・特定車両抽出手段
34・・・・地図データベース
35・・・・経路探索用ネットワークデータベース
36・・・・運行時刻データベース
37・・・・車両編成データベース
38・・・・探索要求記憶手段
39・・・・経路探索手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地と目的地を含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と、前記経路探索手段が探索した候補経路を表示する表示手段と、を備えたナビゲーションシステムにおいて、
前記ナビゲーションシステムは、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
前記経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段は、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、前記案内経路データ編集手段は、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を案内経路データに付加することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記特定車両は女性専用車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に女性専用車両がある場合、当該候補経路が女性専用車両として運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記特定車両は運転席を有する車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に運転席を有する車両がある場合、当該候補経路が運転席を有する車両を併結して運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記経路探索要求に特定車両の安定を要求する特定車両経路探索モードが設定され、前記特定車両抽出手段が前記特定車両に該当する車両を抽出した場合、前記案内経路データ編集手段は、前記案内経路データに前記特定車両の種別に応じた特定車両案内情報を付加することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項にかかるナビゲーションシステム。
【請求項5】
出発地と目的地を含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と備え、前記経路探索手段が探索した候補経路を表示する表示手段を有する端末装置にネットワークを介して接続される経路探索サーバにおいて、
前記経路探索サーバは、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
前記経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段は、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、前記案内経路データ編集手段は、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を案内経路データに付加し、前記端末装置に送信することを特徴とする経路探索サーバ。
【請求項6】
前記特定車両は女性専用車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に女性専用車両がある場合、当該候補経路が女性専用車両として運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする請求項5に記載の経路探索サーバ。
【請求項7】
前記特定車両は運転席を有する車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に運転席を有する車両がある場合、当該候補経路が運転席を有する車両を併結して運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別することを特徴とする請求項5に記載の経路探索サーバ。
【請求項8】
前記経路探索要求に特定車両の安定を要求する特定車両経路探索モードが設定され、前記特定車両抽出手段が前記特定車両に該当する車両を抽出した場合、前記案内経路データ編集手段は、前記案内経路データに前記特定車両の種別に応じた特定車両案内情報を付加することを特徴とする請求項5ないし請求項7の何れか1項にかかる経路探索サーバ。
【請求項9】
出発地と目的地を含む経路探索要求に基づいて、経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と備え、前記経路探索手段が探索した候補経路を表示する表示手段を有する端末装置にネットワークを介して接続される経路探索サーバを用いた経路探索方法において、
前記経路探索サーバは、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
前記経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段が、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して、各候補経路ごとに、特定車両の情報を抽出するステップと、前記案内経路データ編集手段が、当該車両位置を案内経路データに付加し、前記端末装置に送信するステップとを有することを特徴とする経路探索方法。
【請求項10】
前記特定車両は女性専用車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に女性専用車両がある場合、前記特定車両の情報を抽出するステップは、当該候補経路が女性専用車両として運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別する処理を含むことを特徴とする請求項9に記載の経路探索方法。
【請求項11】
前記特定車両は運転席を有する車両であり、前記特定車両抽出手段は前記候補経路に運転席を有する車両がある場合、前記特定車両の情報を抽出するステップは、当該候補経路が運転席を有する車両を併結して運行される時間帯であるか否かを判定し、前記特定車両の有無を判別する処理を含むことを特徴とする請求項9に記載の経路探索方法。
【請求項12】
前記経路探索要求に特定車両の安定を要求する特定車両経路探索モードが設定され、前記案内経路データ編集手段が前記特定車両案内情報を案内経路データに付加するステップは、前記特定車両の種別に応じた特定車両案内情報を付加する処理を含むことを特徴とする請求項9ないし請求項11の何れか1項にかかる経路探索方法。
【請求項13】
経路探索用のネットワークデータを参照して交通機関を利用した経路を含む複数の候補経路を探索する経路探索手段と、通行禁止または通行できない特定車両の種別および車両の位置を含む車両編成の情報を蓄積した車両編成データベースと、車両の運行時刻データを蓄積した運行時刻データベースと、特定車両抽出手段と、案内経路データ編集手段と、を備え、
経路探索要求に特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードが設定されている場合、前記特定車両抽出手段が、前記車両編成データベースと運行時刻データベースを参照して各候補経路ごとに特定車両の情報を抽出し、前記案内経路データ編集手段が、当該特定車両の車両位置を含む特定車両案内情報を案内経路データに付加する経路探索サーバに接続される端末装置であって、
前記端末装置は、経路探索サーバに送信する経路探索要求に、特定車両の案内を要求する特定車両経路探索モードを設定する手段を有することを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−151704(P2008−151704A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341636(P2006−341636)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】