説明

ナビゲーションシステム

【課題】ナビゲーションシステムにおいて、GPS電波が利用できないときでも、誤差の少ない経路案内ができるようにする。
【解決手段】本ナビゲーションシステムは、案内経路上におけるユーザの推定位置を算出する位置推定手段212aと、モード切替手段214を有する。位置推定手段212aは、前記推定位置を、GPSを利用するGPSモードと、歩数計と地磁気センサの出力に基づき前記推定位置を算出する自律航法モードと、前記歩数計のみに基づき前記推定位置を算出する歩数計モード、のいずれかのモードで算出する。前記モード切替手段214は、GPSが利用できるときは常にGPSモードに、GPSが利用できないときは前記自律航法モードに切り替え、但し、地磁気センサの動作に異常があれば更に前記歩数計モードに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーションシステムに関し、とくに、地下街などGPS(Global Positioning System)を用いた現在位置の測定ができない場所において、経路案内を精度よく実施するためのナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムは自動車などにおいて広く普及しているが、近年では携帯電話機などの携帯端末装置に搭載して歩行者などが利用するものも普及してきている。このようなナビゲーションシステムでは、地上に限らず地下街などにおいても経路案内を行っている。
ところで、ナビゲーションシステムによる経路案内では現在位置を把握することが前提になる。現在位置の把握は、ビルの陰などの例外を除き通常地上であればGPSシステムが利用できる。GPS電波を直接受信できない地下街などにおいては、GPSによる位置認識ができない。そこで、GPSに代えて、位置が既知の基準地点からの移動距離を測定することで、大凡の位置を推定するナビゲーションシステムが用いられている。
【0003】
一例として、特許文献1に記載された歩行者用経路誘導装置では、予め設定された特定経路に沿って案内を行う際に、ユーザの歩数計のカウント値及び歩幅を基に歩行区間の始点からの移動距離を算出し、その歩行距離を特定経路上における移動距離と推定して、歩行者の推定現在位置を把握し、表示された地図情報に重ねて表示された特定経路でその位置を表示するようにしている。
しかしながら、この従来の歩行者用経路誘導装置では、歩数センサの測定結果のみを利用して経路案内をしているため、利用者(歩行者)がどの方向に進んでいるのか迄は分からず、利用者が特定経路とは別の方向に進んで、前記装置で推定した現在位置と実際の歩行者の現在位置が大幅にずれる可能性があるという問題がある。
【0004】
これに対し、歩数計(歩数センサ)に加えて地磁気センサを備え、歩数計で、「歩数×歩幅」の演算で移動位置を検出し、移動方向は地磁気センサを用いて検出する、いわゆる自律航法でユーザの移動位置を認識し、歩行したときの実際の位置と、前記装置が認識する位置とのズレを抑制する個人用の携帯用位置検出装置も知られている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、この自律航法を利用する装置(携帯用位置検出装置)においても、地磁気センサは、例えば、進行方向に対して傾けたり、或いは地磁気センサを持った手を振っただけでも方位測定が正確に行えず、また、歩行環境によっても磁性体などの影響を受けて容易に方位測定に狂いが生じるため、実際の位置と前記装置が認識する経路上の位置が大幅にずれる虞がある。
つまり、地磁気センサは、携帯の仕方や地磁気以外の磁気の影響を受けて正しい方向が検知できないことがある。そのため、ナビゲーションシステムに地磁気センサを搭載したとしても、常に正しい経路案内ができるとは限らない。
【0006】
即ち、地磁気センサは持ち方や回りの磁気に影響されてその動作が異常になることがあり、動作が異常であると、地磁気センサを備えたナビゲーションシステムの案内にしたがって歩行した場合、設定された経路とかけ離れた歩行軌跡となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−170300号公報
【特許文献2】特開平11−194033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来のナビゲーションシステムにおける前記問題に鑑みてなされたものであって、例えば、地下街などにおいてGPS電波が利用できないときでも、最適な処理モードに切り替えて誤差の少ない経路案内ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はナビゲーションシステムであって、表示手段で表示した所定の経路上のユーザの推定位置を表示して経路案内するナビゲーションシステムであって、前記推定位置を、GPS測位情報に基づき前記推定位置を算出するGPSモードと、歩数計から取得したユーザの進行距離情報と地磁気センサから取得した方位情報に基づき前記推定位置を算出する自律航法モードと、前記進行距離情報のみに基づき前記推定位置を算出する歩数計モード、のいずれかのモードで算出する位置推定手段と、前記推定位置の算出時に前記GPS測位情報が取得可能であるときはGPSモードに、GPS測位情報が取得できないときは前記自律航法モードに、さらに、GPS測位情報が取得できずかつ地磁気センサの動作が異常であるときは前記歩数計モードに前記モードを切り替えるモード切替手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、経路案内のために予め用意した複数の処理モードを適宜切り替えることにより、経路案内のための処理を周囲の状況に応じて最適なモードで実行することができる。つまり、如何なる場合においても経路案内における誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムのシステム構成図である。
【図2】測位点から経路上における自己位置を推定する方法を説明するための説明図であり、図2AはGPSを利用する場合、図2Bは自律航法を利用する場合、図2Cは歩数計を利用する場合を示す。
【図3】地磁気センサ判断手段による判断手法を説明するための説明図である。
【図4】本実施形態におけるモードの切り替え及び各モード毎の処理の手順を示すフロー図である。
【図5】推定位置補正手段による位置補正処理の手順を示すフロー図である。
【図6】推定位置補正手段による別の推定位置補正処理の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のナビゲーションシステムの一実施形態について添付図面を参照して説明する。
本実施形態に係るナビゲーションシステムはGPS受信機、歩数計及び地磁気センサを備えており、自己位置の認識にGPSが利用できる場合は必ずこれを利用することを前提に、GPSを利用して経路案内を行うGPSモードと、GPSが利用できない状況下における地磁気センサと歩数計の出力(センサ出力)を利用した自律航法モードと、歩数計の出力(センサ出力)のみに基づき経路案内処理を行う歩数計モードの三種類の処理モードを備え、これらも各処理モードを状況に応じて使い分けることで、常に最適な処理モードで経路案内を行えるようにしたものである。
【0013】
つぎに、本実施形態に係るナビゲーションシステムの構成について説明する。
図1は、本ナビゲーションシステムのシステム構成図である。
本ナビゲーションシステムは、例えばインターネットや商用ネットワークなどの任意のネットワーク1を介して通信可能なナビゲーションサーバ10と、携帯端末装置20を備えて構成されている。
携帯端末装置20は基地局2を介してネットワーク1に接続されており、制御部21と、それぞれ制御部21に接続された位置測定部22、操作部23、表示部24、音声出力部25、通信部26及び記憶部27を備えている。
【0014】
制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備えたコンピュータである。
制御部21は、ROMや記憶部27に記憶されているプログラムをCPUがRAMをワークエリアとして実行することにより実現される機能実現手段として、探索要求手段211、経路案内手段212、モード切替手段214及び地磁気センサ判断手段213を備えている。
【0015】
位置測定部22は、GPS受信機22a、歩数計22b及び地磁気センサ22cを備えており、GPS受信機22aは、複数のGPS衛星から送信されるGPS電波に基づき現在位置(緯度、経度)を演算して位置情報を生成する。歩数計22bは、加速度センサや万歩計(登録商標)などから成り携帯端末装置20のユーザの歩幅と検知した歩数に基づき算出した移動(歩行)距離情報を生成する。地磁気センサ22cは、例えば3軸地磁気センサであって、人間の動きに伴う移動の向きを検出し方向情報を生成する。
【0016】
操作部23は、ユーザが携帯端末装置20を使用するときに各種指令の入力を行うための手段であり、表示部24の画面上のタッチパネル、図示しない装置筺体上の操作ボタン或いはそれらの組み合わせから成る。表示部24は、液晶、EL(Electroluminescence)などのディスプレイから成り、ナビゲーションサーバ10から送信される地図、経路(ルートとも云う)、自己位置(現在位置)などを表示する。音声出力部25はスピーカを備え経路案内に関する音声メッセージを出力する。
【0017】
通信部26は、ネットワーク1を介してナビゲーションサーバ10と通信を行うための手段である。記憶部27は、フラッシュメモリなどの不揮発メモリから成り、ナビゲーションサーバ10からダウンロードした地図データ、経路案内の履歴情報、ユーザ登録した各種画像情報などを保存することができる。
【0018】
制御部21の探索要求手段211は、ナビゲーションサーバ10に送信するための経路探索要求信号を生成する。この経路探索要求信号は出発地情報及び目的地情報から成る位置情報を含む。出発地情報及び目的地情報はユーザが操作部23から入力する。ここで、GPS電波が受信できるときは、GPS電波を受信したGPS受信機22aが生成した現在位置情報を出発地情報とすることもできる。
【0019】
経路案内手段212は、探索要求手段211からの経路探索要求に応じてナビゲーションサーバ10から提供された地図データ及び経路データを用いて経路案内を行う。つまり、ナビゲーションサーバ10から送信された地図データ及び経路データから、地図画像上に経路を重畳した表示画像データを作成して表示部24に送出する。経路案内手段212は、さらに位置推定手段212a及び推定位置補正手段212bを備えている。
【0020】
ナビゲーションサーバ10は、制御部11、制御部11に接続された通信部12、地図DB(データベース)13、及び経路DB14を備えている。通信部12は、ネットワーク1を介して携帯端末装置20と通信を行うための手段である。制御部11は、図示しないCPU、ROM及びRAMを有したコンピュータであり、ROMに記憶されているプログラムをCPUがRAMをネットワークエリアとして実行することにより実現される機能実現手段として、地図検索手段111、経路探索手段112及び送信データ生成手段113を備えている。
【0021】
地図DB13には、携帯端末装置20の表示部24に地図画像を表示するための地図データが格納されている。地図データは経度及び緯度を用いて構成されており、道路、河川、建物、地下街の出入口等の図形データが含まれる。また、地下街が存在する場所には地下街の地図データも存在し、地下街の地図データには、地下街に関する図形データと、地下街内に存在する各種店舗などの施設データ等が含まれる。
【0022】
経路DB14には、地図データが表す地図画像に対応した領域に存在する道路ネットワークデータが格納されている。道路ネットワークデータには、道路のノード(交差点)を表すノード情報、及びノード間のリンクを表すリンク情報、リンクの評価値であるリンクコスト情報(渋滞情報など)が含まれる。
【0023】
制御部11の地図検索手段111は、携帯端末装置20から送信された経路探索要求信号に含まれている出発地情報及び目的地情報に基づいて、その出発地から目的地までの地図データを地図DB13で検索する。経路探索手段112は、経路探索要求信号に含まれている出発地情報及び目的地情報に基づいて、その出発地から目的地までの経路のノード情報及びリンク情報を経路DB14で探索する。
【0024】
送信データ生成手段113は、地図検索手段111により検索された地図データ及び経路探索手段112により探索された経路データから、携帯端末装置20に送信するための送信データを作成する。ここで、送信データは、地図検索手段111により検索された地図データ及び経路探索手段112により探索された経路データのうち、携帯端末装置20の出発地付近の所定の範囲の部分の地図データ及び経路データである。この送信データ(地図データ及び経路データ)は、携帯端末装置20が移動するにしたがってなされる送信要求に応じて更新される。
【0025】
以上は、本実施形態に係るナビゲーションシステムの概略構成である。次に、携帯端末装置20における経路案内手段212(とくにその位置推定手段212a)、地磁気センサ判断手段213、モード切替手段214について説明する。
【0026】
経路案内手段212の位置推定手段212aは、例えば予め定めた一定時間毎に携帯端末装置20を所持しているユーザの経路上における自己位置を推定する処理を行う。
即ち、携帯端末装置20による経路案内の際の自己位置を推定する処理において、GPSを利用するGPSモードにおいては、図2Aに示すように、GPS電波に基づき演算した位置(測位点という)M(M、M・・・)から経路R上に垂線L(L、L・・・)を引きその垂線と経路Rとが交わる地点C(C、C・・・)をユーザの移動位置(自己位置)として推定する。
【0027】
自律航法モードにおいては、図2Bに示すように基準位置(出発位置或いは前の測位位置)から次の測位点までのユーザの歩数計から取得した歩数の情報と歩幅(予め設定しておいても、或いは、距離の分かっている2地点を歩行したときの歩数から算出してもよい)から算出した移動(歩行)距離と、(出発位置或いは前の測位点Mでの)地磁気センサの方角から測位点Mを取得し、測位点Mから経路Rに対して垂線L(L、L・・・)を引き、経路Rと垂線Lとが交わる地点C(C、C・・・)を移動位置(現在位置)として推定する。
【0028】
さらに、歩数計のみを利用する歩数計モードにおいては、図2Cに示すように、歩数計(加速度センサ、万歩計(登録商標)(歩行による振動を検出するセンサ))により歩数をカウントし、予め定められている「歩幅」から、「距離:d」(=歩数×歩幅)を算出し、その算出した歩行距離dをそのまま経路上Rにおけるユーザの自己位置と推定する。
【0029】
なお、歩数計を用いる場合、例えば、経路中に階段、エレベータ、動く歩道などがあると、その部分では歩行を行わないにも拘わらず、ユーザが移動することがある。この場合は、ユーザが操作部を操作して推定位置補正手段212bにより経路上における位置を修正する。
また、携帯端末装置20から目標物が目の前にあるかないかをユーザに問合せ、その応答によって自己位置を自動的に補正することもできる。
【0030】
地磁気センサ判断手段213は、GPSモードから自律航法モードに切り替わった状態において、地磁気センサの動作の異常を判断する。
ここで、地磁気センサ判断手段213は、例えば、以下(i)〜(iii)に示す状態を検知したときは、地磁気センサは異常(又は正常でない)と判断して、異常信号をモード切替手段214に送る。
なお、異常信号を受信したモード切替手段214は、携帯端末装置20の経路案内のための処理モードを、より優先度の低い歩数計モードに切り替える。
【0031】
(i)携帯端末装置20をユーザが手に持って振っていると判断したとき
(ユーザが携帯端末装置20を手に持って振りながら歩行すると、加速度センサは「手を振る周期の信号」と「歩行そのものの信号」の2種類の周期の信号を検出する。つまり検出信号が重なるため、手を振っていると判断することができる。)
【0032】
(ii)3軸地磁気センサにおいて異常な地磁気を検出した場合。即ち、具体的には、例えば、互いに直交する3軸方向における、地磁気ベクトルの各ベクトル成分を検出し、ベクトル成分から地磁気ベクトルの絶対値を算出する。地磁気ベクトルの絶対値から、予め定められた値よりも周波数が高い磁気高周波数成分を抽出する。次に、抽出した磁気高周波数成分を調べ、磁気高周波数成分が予め定められた許容範囲を超えた場合に、3軸地磁気センサが異常な磁気を検出したと判断する(例えば、特開2010−266214号公報参照)。
【0033】
(iii)予め定めた経路から予め定めた所定距離以上ずれていると判断したとき
(ア)既に述べたように、自律航法モードにおいては、歩数計(加速度センサなど)からの歩数の情報と地磁気センサからの方角の情報とに基づき、例えば一定時間毎に測位点Mを取得する。その測位点Mから経路Rに対し、垂線を引き、経路と垂線とが交わる地点Cを移動位置(現在位置)とし、経路上における自己位置を推定する(図2B参照)。
ここで、図3Aに示すように、予め案内表示されている経路に対し歩数で算出した移動距離(例えば歩幅80cm×歩数)dと、移動位置(測位点)に対応した経路R上での移動距離(基準位置から自己位置迄の距離)dとが、所定距離d以上離れている(d−d≧d)とき、地磁気センサ判断手段213は予め定めた経路からずれていると判断する。
【0034】
(イ)予め案内されている経路に対する測位点Mから推定した経路上の自己位置Cが既に推定された自己位置Cとの間に所定回数検出されたとき。
図3Bは、この異常検知を説明するための図である。
既に説明したように、例えば一定時間毎に測位点Mを決めてその時点における経路R上におけるユーザの位置を推定する。一般には、経路に沿って歩行するユーザが同じ経路を逆戻りすること、或いはそのような経路を設定することはあまりない。そこでそのユーザの推定位置が図3Bに示すように、測位点Mのうち前後に連続する測位点とMn−1、Mから推定された自己位置(Cn−1、C)の間に、その後自己位置(Cn+1、Cn+2・・・、C)が検出される現象が予め定めた一定回数を超えたときは、正常でないと判断する。
【0035】
(ウ)予め案内されている経路の角度(例えば移動時に変位する角度)と実際の測位点間の角度の合計値とが所定値以上離れているとき、即ち、図3Cに示すように、各測位点における地磁気センサで検知した方角(画面の水平方向に対する角度)の合計と実際の測位点間の角度の合計値との差が所定値以上であると判断したとき。即ち図示例ではθ+θ−θ≧θのとき。
【0036】
(エ)予め表示案内されている経路の画像と実際の移動経路の画像とが一致しないとき。この場合はユーザが携帯端末装置20の表示画面の画像と実際に見ている周りの建物などが相違している場合であり、ユーザが操作ボタンを操作するなどにより操作部23から地磁気センサ判断手段213に異常を通知することになる。
【0037】
モード切替手段214は、GPSが利用できるときは優先的にGPSモードに切り替えるが、GPS電波を常に監視し、GPSが利用できる間、つまりGPS受信機22aがGPS電波を受信できる間は、携帯端末装置20の経路案内処理を常にGPSモードで行うように制御し、GPS電波が受信できないときは、歩数計22bと地磁気センサ22cに基づく自律航法モードに切り替えるようにしてもよい。
また、自律航法モードに切り替えたときは、地磁気センサ判断手段213は、地磁気センサが正常に動作しているか否かを前記基準で判断し、地磁気センサの動作が正常でない(つまり、異常または地磁気情報が取得できない)と判断したときは、モード切替手段214に通知して歩数計モードに切り替える。
【0038】
ナビゲーションシステムの動作
次に、以上で説明した本ナビゲーションシステムの動作をまとめて説明する。
図4は、本実施形態における各モードにおける処理の手順を示すフロー図である。
まず、ユーザは、本ナビゲーションシステムにおいて、携帯端末装置20で目的地を選択或いは指定して現在地からの経路(ルート)検索を行う(S101)、続いてモード切替手段214は自動でモードを設定する(GPSモード、自律航法モード、歩数計モードを優先順に設定する)と(S102)、地図上に経路を表示した経路案内初期画面つまり確認用画面が表示される(S103)。ここでユーザが経路の確認を行い例えば操作ボタンを押すと、携帯端末装置20は経路案内の処理を開始し(S104)、既に設定されたモードにしたがった経路案内処理が実行される(S105)。
【0039】
ここで、モード切替手段214は、GPS情報が取得できる場合はGPSモードに最優先で切り替え、また、GPS情報が取得できない場合は、前記自律航法モードに切り替え、前記自律航法モードに切り替えた状態で、地磁気センサが使用できない場合は歩数計モードに切り替える(S105)。
ここでは、順序が逆になるが、まず歩数計モードに切り替えたときの処理から説明する。即ち、GPS及び地磁気センサが使用できず、モード切替手段214により歩数計モードに切り替えられたときは(S105、歩数計モード)、位置推定手段212aは、歩数計の情報(歩数情報)を取得して(S106)、既に述べたように、歩数情報から移動距離を算出してその移動距離を経路上で推定し(S107)、それによって自己位置(現在位置)が前記検索された経路上に描画される(S108)。
【0040】
ここで、目的地に到達する(即ち、経路上におけるユーザの推定位置が目的地に到達し、かつユーザが確認操作を行ったとき、以下同じ)か又はユーザが終了操作を行ったときは(S109、YES)、経路案内処理を終了する。終了操作を行わず或いは目的地に到達しないとき(即ち、ユーザが確認操作を行わないとき、以下同じ)は(S109、NO)、位置補正処理を行う(S110)。また、GPS測位が可能か否かを判断する(S111)。GPS測位が可能であれば(S111、YES)、モード切替手段214はGPSモード設定処理を行い(S114)ステップS105に戻る。
【0041】
ステップS111において、GPS測位が不可能であり(S111、NO)、かつ地磁気センサ判断手段213が地磁気センサ22cの動作が異常と判断したときは(S112、NO)、そのままステップS105から再度歩数計モードを繰り返す。
ステップS112において、地磁気センサ判断手段213が地磁気センサが異常でない、つまりモード切り替え可と判断したときは(S112、YES)、モード切替手段214は自律航法モード設定処理を行い(S113)、ステップS105において自律航法モードに切り替える(S105)。
【0042】
モード切替手段214が処理モードを歩数計モードから自律航法モードに切り替えたときは、まず、位置推定手段212aは地磁気センサの方位情報及び歩数計の歩数情報を取得し(S115)、既に述べた手法で経路上の自己位置(現在位置)を推定する(S116)、ここで地磁気センサ判断手段213が地磁気センサの動作に異常がないと判断すれば(S117、NO)、地図上に重ねて表示された経路上に前記自己位置が表示される(この場合、音声出力部25から音声で案内してもよい)(S118)。ここで目的地に到達するか又は経路案内の終了処理を行うと(S119)、経路案内処理が終了する。
【0043】
ステップS117で、地磁気センサ判断手段213が地磁気センサの動作に異常があると判断すると(S117、YES)、モード切替手段214は、歩数計モードの設定処理を行い(S122)、ステップS105に戻って、歩数計モードに切り替える。
【0044】
ステップS119で目的地に到達せずかつ経路案内の終了処理を行わないときは(S119、NO)、モード切替手段214は、地磁気センサ判断手段213の判断結果に基づき、GPSモードへの切り替えができるかどうか判断し(S120)、切り替え不可と判断したときは(S120、NO)、ステップS105に戻って、再度自動航法モードの処理を繰り返す(S105:自動航法モード)。
【0045】
ステップS120で、モード切替手段214がGPSモードへの切り替えが可能と判断したときは(S120、YES)、モード切替手段214はGPSモード設定処理を行い(S121)、ステップS105でGPSモードに切り替える(S105、GPSモード)。
【0046】
GPSモードでは、位置推定手段212aは、GPS電波から現在位置情報を算出して現在地情報を取得し(S123)、測位点を算出し自己位置(現在位置)を推定する(S124)。それによって表示画面に表示された地図に重ねて表示された経路上の自己位置を表示する(音声出力部25から音声で案内してもよい)(S125)。目的地に到達するか又は経路案内の終了処理が行われたときは(S126、YES)、経路案内を終了する。
ステップS126において、目的地に到達せず経路案内の終了処理も行われないときは、モード切替手段214はモード切替の要・不要を判断し(つまり、引き続きGPS情報が取得できるか否か)判断し(S127)、不要と判断したとき(S127、NO)、ステップS105に戻り、そのままGPSモードでの処理を行う。
【0047】
ステップS127において、GPS測位が不可能で、モード切替手段214がモード切替が必要と判断したときは(S127、YES)、自律航法モードの設定処理を行い(S128)、ステップS105に戻り、自律航法モードでの処理を行う。
【0048】
次に、推定位置補正手段212bで行う推定位置補正処理の手順について、補正対象施設が(i)エスカレータ、動く歩道、エレベータである場合と、(ii)階段である場合について分けて説明する。
図5は推定位置補正手段212bによる位置補正処理の手順を示すフロー図である。
まず、到達した施設がエスカレータ又は動く歩道又はエレベータであるか否かを判断する(S201)。本実施形態では、補正処理の対象施設をエスカレータ、動く歩道及びエレベータに設定しているため、エスカレータ又は動く歩道又はエレベータ以外の施設(階段)に対しては(S201、NO)、補正を行わず処理を終了する。
【0049】
一方、到達した施設がエスカレータ又は動く歩道又はエレベータである場合は(S201、YES)、歩数計22bのカウントが一定時間停止したか否かを判断する(S202)。
【0050】
ユーザがエスカレータ又は動く歩道又はエレベータを通過するときは、それらの施設より移送されている間、それらの施設上で歩行を停止し、それらの施設の終点(経路上の移動方向先端)まで移送されたとき歩行を再開すると考えられる。したがって、それらの施設の長さを移送速度で割った時間を基に、一定時間を定めておけば、歩数計22bのカウント値が前記一定時間停止したか否かを基にユーザがエスカレータ又は動く歩道又はエレベータ上にいるか否かを判断することができる。
【0051】
そこで、歩数計22bのカウントが前記一定時間停止したと判断したとき(S202、YES)、現在の自己位置を施設の終点位置(経路上の移動方向先端)に補正する(S203)。これにより、ユーザがエスカレータ又は動く歩道又はエレベータの終点に到達し、歩行を再開するときの自己位置をエスカレータ又は動く歩道又はエレベータの終点位置に正確に合わせることができる。前記一定時間停止していないと判断したときは(S202、NO)、そのまま処理を終了する。
【0052】
なお、ここでは、ステップS202で施設(階段、エスカレータ、動く歩道、エレベータ)に到達したか否かを判断し、ステップS201で施設がエスカレータ又は動く歩道又はエレベータであるか否かを判断しているが、ステップS202において、エスカレータ又は動く歩道又はエレベータに到達したか否かを判断し、ステップS201を省略するよう構成することもできる。
【0053】
次に、階段における移動距離の補正について説明する。
図6は本実施形態における推定位置補正手段212bによる別の推定位置補正処理の手順を示すフローチャートである。
まず到達した施設が階段であるか否かを判断する(ステップS301)。階段ではないと判断した場合(ステップS301、NO)、即ちエスカレータ又は動く歩道又はエレベータである場合は、歩数計22bのカウントが一定時間停止したか否かを判断する(ステップS302)。停止したと判断したときは(ステップS302、YES)、推定現在位置を施設の終点位置に補正し(ステップS303)、この補正処理のフローを終える。一方、停止しないと判断した場合は(ステップS302、NO)、そのままこの補正処理のフローを終える。ステップS302、S303は、それぞれ図5のステップS202、S203と同じである。
【0054】
一方、到達した施設が階段であった場合は(ステップS301、YES)、「階段の段数×80cm(歩幅)−階段(ステップ)の長さ」を基準地点からの移動距離から減算し(ステップS304)、推定自己位置(現在位置)の地点情報を更新する(ステップS305)。
このように、階段を通過したときの歩数計22bで測定した歩行距離による移動距離を実際の移動距離に補正し、経路上の自己位置を補正することができる。
前記推定位置補正手段212bにより、経路上の推定位置を経路上の所定の位置に合わせて補正することができるため、精度の高い経路案内ができる。
【0055】
なお、図6では、階段の長さ(水平方向の長さ)を段数で割ることで一段当たりの長さを算出し、それを歩幅としているが、階段の属性情報に一段当たりの長さを含めておき、それを歩幅とするように構成することもできる。
【0056】
以上述べたように、本実施形態のナビゲーションシステムによれば、各処理モードの内最も精度の高いGPSモードを最優先に活用し、GPSモードが使用出来ない場合には、自律航法モードに切り替えて経路案内精度を出来るだけ高く維持する。しかし、同時に地磁気センサの動作の異常を判断して、異常と判断されたときは直ちに歩数計モードに切り替えることで、地磁気センサの動作の異常で経路案内が完全に出来なくなる事態に陥ることが防止できる。
【0057】
また、歩数計モード又は自律航法モードからGPSモードへの切替は、自動で行うことができるため、ユーザは安心して経路案内に従うことができる。
また、自己位置を経路上の所定の位置に合わせる補正を適宜行うことができると共に、地磁気センサの異常が解消されたときは、歩数計モードから自律航法モードへモード、更にGPS測位が可能であればGPSモードに変更するができるため、より精度の高い経路案内ができる。
【0058】
なお、以上の説明では携帯端末装置20が、出発地と目的地を入力してネットワーク1を通じてナビゲーションサーバ10から地図情報と経路情報の提供を受けるものとして説明したが、必ずしもこれに限定されない。携帯端末装置20の記憶部27の容量を増大させて、ここに地図情報と経路情報を格納しておくこともできる。その場合は、携帯端末装置20側に地図検索手段と経路探索手段とを備えればよい。
また、地磁気センサは、ここでは、磁気センサを備えた機器、例えば電子コンパスであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・ネットワーク、2・・・基地局、10・・・ネットワークサーバ、20・・・携帯端末装置、21・・・制御部、211・・・探索要求手段、212・・・経路案内手段、212a・・・位置推定手段、212b・・・推定位置補正手段、213・・・地磁気センサ判断手段、214・・・モード切替手段、22・・・位置測定部、22a・・・GPS受信機、22b・・・歩数計、22c・・・地磁気センサ、23・・・操作部、24・・・表示部、25・・・音声出力部、26・・・通信部、27・・・記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段で表示した所定の経路上のユーザの推定位置を表示して経路案内するナビゲーションシステムであって、
前記推定位置を、GPS測位情報に基づき前記推定位置を算出するGPSモードと、歩数計から取得したユーザの進行距離情報と地磁気センサから取得した方位情報に基づき前記推定位置を算出する自律航法モードと、前記進行距離情報のみに基づき前記推定位置を算出する歩数計モード、のいずれかのモードで算出する位置推定手段と、
前記推定位置の算出時に前記GPS測位情報が取得可能であるときはGPSモードに、GPS測位情報が取得できないときは前記自律航法モードに、さらに、GPS測位情報が取得できずかつ地磁気センサの動作が異常であるときは前記歩数計モードに前記モードを切り替えるモード切替手段と、を有するナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載されたナビゲーションシステムにおいて、
前記自律航法モードに切り替えられた状態における前記地磁気センサの動作の異常を判断する地磁気センサ判断手段を有し、
前記地磁気センサ判断手段が地磁気センサの動作が異常と判断したとき、前記モード切替手段は、前記GPSが利用不可であることを条件に前記モードを歩数計モードに切り替えるナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項2に記載されたナビゲーションシステムにおいて、
前記歩数計モード時に地磁気センサの動作の異常が解消されたとき、前記モード切替手段は、前記GPS測位情報が取得不可であることを条件に、前記処理モードを歩数計モードから自律航法モードに切り替えるナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたナビゲーションシステムにおいて、
前記モード切替手段は、前記GPS測位情報が取得可能であるとき、前記各モードをGPSモードに切り替えるナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたナビゲーションシステムにおいて、
表示手段で表示した所定の経路上のユーザの推定位置の表示は、画面表示または音声表示であるナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたナビゲーションシステムにおいて、
携帯端末装置と、前記携帯端末装置とネットワークを介して接続され地図情報、及び経路情報を備えたナビゲーションサーバとを有して構成され、
前記携帯端末装置は前記位置推定手段と、前記地磁気センサ判断手段と、前記モード切替手段と、を有するナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項6に記載されたナビゲーションシステムにおいて、
前記位置推定手段で算出した推定位置を、経路上の所定の位置に合わせて補正する推定位置補正手段を有するナビゲーションシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−230092(P2012−230092A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100234(P2011−100234)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】