説明

ナビゲーション信号送信装置、ナビゲーション信号送信方法および位置情報提供装置

【課題】屋内でマルチパスフェーディングの大きい環境においても精度を低下させることなく位置情報を提供する位置情報提供システムを提供する。
【解決手段】
位置情報提供装置100は、屋内送信機200から送信される、異なったPRNコードでスペクトラム拡散符号化され、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2から各々送信される測位信号を、受信アンテナRX−ANTにより受信する。位置情報提供装置100は、送信信号のPRNコードをそれぞれ独立で非同期でサーチする。始めに一つ目のPRNコードが捕捉できた場合、その同期ループを用いて他チャネルにて他のPRNコードの捕捉を試みる。2つのチャネルで同期捕捉ができた場合は、一方のチャネルの信号を選択して、測位の処理が実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置情報を提供する技術に関し、ナビゲーション信号を送信するナビゲーション信号送信装置、ナビゲーション信号送信方法に関する。本発明は、より特定的には、測位信号を発信する衛星から発信された信号が届かない環境下においても位置情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の測位システムとしてGPS(Global Positioning System)が知られている。G
PSに用いられる信号(以下、「GPS信号」)を発信するための衛星(以下、GPS衛星)は、地上から約2万kmの高度で飛行している。利用者は、GPS衛星から発信された信号を受信し、復調することにより、GPS衛星と利用者との間の距離を計測することができる。したがって、地上とGPS衛星との間に障害がない場合には、GPS衛星から発信された信号を用いた測位が可能である。しかし、たとえば、都市部においてGPSを利用する場合、林立する建物が障害となって、利用者の位置情報提供装置が、GPS衛星から発信された信号を受信できないことが多い。また、建物による信号の回折あるいは反射により、信号を用いた距離の測定に誤差が生じ、結果として、測位の精度が悪化することが多かった。
【0003】
また、壁や屋根を貫通した微弱なGPS信号を室内において受信する技術もあるが、受信状況は不安定であり、測位の精度も低下する。
【0004】
以上、測位についてGPSを例にとって説明したが、上述した現象は衛星を用いた測位システムについて一般的に言えることである。なお、衛星測位システムは、GPSに限られず、たとえば、ロシア共和国におけるGLONASS(GLObal NAvigation Satellite
System)、欧州におけるGalileo等のシステムを含むものとする。
【0005】
ここで、位置情報の提供に関する技術は、たとえば、特開2006−67086号公報(特許文献1)に開示されている。
【0006】
しかしながら、特開2006−67086号公報に開示された技術によれば、リーダあるいはライタは、位置情報を提供するシステムに固有のものであり、汎用性にかけるという問題点がある。また、干渉を避けるため、送信出力を抑える必要があり、位置情報を受信可能な範囲が限定され、連続した位置情報の取得ができないほか、広い範囲をカバーするためには極めて多数の送信機が必要となるという問題点があった。
【0007】
また、位置情報の取得あるいは通知に関し、たとえば、固定電話であれば設置場所が予め知られているため、固定電話から発信された電話によって、その発信場所を特定することができる。しかしながら、携帯電話の普及に伴い、移動体通信が一般的になっているため、固定電話のようにして発信者の位置情報を通知することができない場合が増えている。一方、緊急時の通報に関し、携帯電話からの通報に位置情報を含めることについての法整備も進められている。
【0008】
従来の測位機能を有する携帯電話の場合、衛星からの信号を受信できる場所では位置情報が取得されるため、携帯電話の位置を通知することが可能である。しかしながら、屋内、地下街のように電波が受信できない場所においては、従来の測位技術によっては、位置情報を取得できないという問題点があった。
【0009】
そこで、たとえば、GPS信号に類似する信号を発信できる複数の送信機を室内に配置し、GPSと同様の3辺測量による原理に基づき位置を求めるという技術も考えられる(たとえば、特許文献2を参照)。しかしながら、この場合、各送信機の時刻が同期していることが必要になり、送信機が高価になるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に開示された発明では、電波の遮蔽物・反射物の配置が、測位のための受信端末の移動する方向について、一定の配置となっていることを利用して、マルチパス等の影響を軽減しようとする技術である。
【0011】
さらに、特許文献3には、屋内において、送信電力を制御し、かつ、屋内では、上記のような3辺測量ではなく、単に、位置情報をGPS信号と互換なフォーマットで送信することで、屋内での測位におけるシステム構成を簡易化しつつ、かつ、測位の精度を向上させるための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−67086号公報
【特許文献2】特開2000−180527号公報
【特許文献3】特開2007−278756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、一般的には、測位のための受信端末は、屋内等において任意の方向に移動するものであり、室内での反射等により電波の伝搬が複雑になることから、特許文献2に記載のような高価な送信機を設置したとしても、数10m程度の誤差が容易に発生するという問題がある。
【0014】
また、特許文献3に記載の技術では、屋内送信機の構成を大幅に簡略化しつつ、測位精度を維持できるものの、マルチパスの影響が大きい環境では、信号受信の安定性が劣化するおそれがある、という問題があった。
【0015】
すなわち、マルチパス環境下では、信号の捕捉までの速度が劣化したり、一度、捕捉した信号についても、ヌルポイントの影響のために、ロック状態を維持するのが困難である等の問題があった。
【0016】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、測位のための信号を発信する衛星からの電波が受信できない場所であって、マルチパスフェーディングの大きい環境においても、信号受信の安定性を向上させて位置情報を提供する位置情報提供システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の1つの局面に従うと、衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナと、ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージ信号を生成するメッセージ生成手段と、ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を生成する変調手段とを備え、変調手段は、受信機の各受信時刻において、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号のうちいずれか一方を復調対象とするように変調処理を実行し、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を、それぞれ第1および第2の送信アンテナから送信する送信手段をさらに備える。
【0018】
好ましくは、変調手段は、同一系列の拡散コードのうちの第1のコードを生成するための第1のコード生成手段と、メッセージ信号に対して第1のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第1のナビゲーション信号を生成するための第1の拡散処理手段と、同一系列の拡散コードのうちの第1のコードとは異なる第2のコードを生成するための第2のコード生成手段と、メッセージ信号に対して第2のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第2のナビゲーション信号を生成するための第2の拡散処理手段とを含む。
【0019】
好ましくは、変調手段は、同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するための拡散コード生成手段と、メッセージ信号に対して特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第1のナビゲーション信号を生成するための第1の拡散処理手段と、メッセージ信号を所定時間だけ遅延させる遅延手段と、遅延手段からの出力に対して特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第2のナビゲーション信号を生成するための第2の拡散処理手段とを含む。
【0020】
好ましくは、変調手段は、同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するための拡散コード生成手段と、メッセージ信号に対して特定のコードでスペクトラム拡散処理を行うための拡散処理手段とを備え、送信手段は、拡散処理手段の出力を、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号として、第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナのいずれか一方から、順次、排他的に送信させる。
【0021】
好ましくは、位置情報は、少なくとも緯度、経度、高さを表すデータを含む。
この発明の他の局面に従うと、衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置される送信機のナビゲーション信号送信方法であって、ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージ信号を生成するステップと、送信機に予め割り当てられた、衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を生成するステップとを備え、変調処理は、受信機の各受信時刻において、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号のうちいずれか一方を復調対象とする処理であり、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を、それぞれ第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから送信するステップとを備える。
【0022】
好ましくは、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を生成するステップは、同一系列の拡散コードのうちの第1のコードを生成するステップと、メッセージ信号に対して第1のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第1のナビゲーション信号を生成するステップと、同一系列の拡散コードのうちの第1のコードとは異なる第2のコードを生成するステップと、メッセージ信号に対して第2のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第2のナビゲーション信号を生成するステップとを含む。
【0023】
好ましくは、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を生成するステップは、同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するステップと、メッセージ信号に対して特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第1のナビゲーション信号を生成するステップと、メッセージ信号を所定時間だけ遅延させるステップと、遅延されたメッセージ信号に対して特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第2のナビゲーション信号を生成するステップとを含む。
【0024】
好ましくは、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を生成するステップは、同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するステップと、疑似乱数の系列を発生するステップと、メッセージ信号に対して特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第1のナビゲーション信号を生成するステップと、メッセージ信号に対して特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、第2のナビゲーション信号を生成するステップとを含み、送信するステップは、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を、疑似乱数に基づいて、第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナのいずれか一方から、順次、排他的に送信させるステップを含む。
【0025】
好ましくは、位置情報は、少なくとも緯度、経度、高さを表すデータを含む。
この発明のさらに他の局面に従うと、衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能であり、かつ、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置からのスペクトラム拡散信号であってダイバーシティ送信される複数の測位信号を用いて、位置情報を提供する位置情報提供装置であって、スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、測位信号についての衛星測位信号と同一系列の複数の拡散コードのパターンを格納する記憶手段と、並列に設けられ、かつ複数の拡散コードのパターンについて共通に並行して相関処理を行い、ダイバーシティ送信された複数の測位信号を識別して復調するための復調手段と、複数の測位信号を識別して復調できた場合、識別された複数の測位信号のうちのいずれか1つにより位置情報を算出する判断手段とを備える。
【0026】
好ましくは、復調手段は、同一系列の拡散コードのうちの第1のコードでの相関処理を実行するための第1のコリレータ手段と、同一系列の拡散コードのうちの第1のコードとは異なる第2のコードでの相関処理を実行するための第2のコリレータ手段と、第1および第2のコリレータ手段のうち、先に同期ループが確立した方の同期タイミングで他方の同期処理を行うように制御する制御手段とを含む。
【0027】
好ましくは、復調手段は、受信したスペクトラム拡散信号を指定された時間だけ遅延させる遅延手段と、同一系列の拡散コードのうちの第1のコードでの相関処理を実行するための第1のコリレータ手段と、同一系列の拡散コードのうちの第2のコードでの相関処理を実行するための第2のコリレータ手段と、第1および第2のコリレータ手段のうち、先に同期ループが確立した方の拡散コードで、遅延手段により所定の時間だけ遅延された信号について、他方の相関処理を行うように制御する制御手段とを含む。
【0028】
好ましくは、位置情報は、少なくとも緯度、経度、高さを表すデータを含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、測位のための信号を発信する衛星からの電波が受信できない場所であって、マルチパスフェーディングの影響が大きい場所においても精度を低下させることなく位置情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】位置情報提供システム10の構成を表わす図である。
【図2】実施の形態1の屋内送信機200からの測位信号を受信する位置情報提供装置100の受信状態を説明するための概念図である。
【図3】実施の形態1の位置情報提供装置100の構成の概略と動作を説明するための概念図である。
【図4】実施の形態1の屋内送信機200−1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】屋内送信機200−1が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。
【図6】変調器245aの構成を説明するための機能ブロック図である。
【図7】GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号500の構成を表わす図である。
【図8】位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図9】制御部414,判断部416および屋内測位部434の実行する処理を説明するための図である。
【図10】図9で説明した「位置特定データの統合」の処理を説明するための概念図である。
【図11】実施の形態2の屋内送信機200から送信される測位信号について説明するための概念図である。
【図12】実施の形態2の位置情報提供装置100´の構成の概略と動作を説明するための概念図である。
【図13】実施の形態2の屋内送信機200−1´のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図14】変調器245a´の構成を説明するための機能ブロック図である。
【図15】制御部414,判断部416および屋内測位部434の実行する処理を説明するための図である。
【図16】実施の形態3の屋内送信機200´´からの測位信号を受信する位置情報提供装置100´´の受信状態を説明するための概念図である。
【図17】実施の形態3の屋内送信機200−1´´のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図18】変調器245a´´の構成を説明するための機能ブロック図である。
【図19】実施の形態3の位置情報提供装置100において、積算器412.1〜412.nに積算される信号レベルの経時的な変化を説明するための図である。
【図20】図19に示した例において、積算器412.1〜412.nの5回のインテグレーションで得られた信号電力の例を示す図である。
【図21】排他的かつ間欠的に送信信号の出力を交替の周期と、その場合の利点と欠点とをまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
<実施の形態1>
図1は、位置情報提供システム10の構成を表わす図である。図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供システム10について説明する。位置情報提供システム10は、地上の上空約2万メートルの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「測位信号」と表わす。)を発信するGPS(Global Positioning System)衛星110,111,112,113と、位置情報を提供する装置として機能する位置情報提供装置100−1〜100−4とを備える。すなわち、位置情報提供装置は、測位信号を受信してユーザに対して位置情報を提供するナビゲーション信号受信装置として動作する。位置情報提供装置100−1〜100−4を総称するときは、位置情報提供装置100と表わす。位置情報提供装置100は、たとえば、携帯電話、カーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、従来の測位装置を有する端末である。つまり、位置情報提供装置100は、測位信号を受信して、受信した測位信号に含まれる情報に基づいて、位置情報提供装置100の現在の位置を算出する。
【0033】
ここで、測位信号は、いわゆるスペクトラム拡散された信号であり、たとえば、いわゆるGPS信号である。しかしながら、その信号はGPS信号に限られない。なお、以下では説明を簡単にするために、測位のシステムをGPSを一例として説明するが、本発明は、他の衛星測位システム(Galileo,GLONASS等)にも適用可能である。
【0034】
測位信号の中心周波数は、たとえば、1575.42MHzである。測位信号の拡散周波数は、たとえば1.023MHzである。この場合、測位信号の周波数は、既存のGPSのL1帯におけるC/A(Coarse and Access)信号の周波数と同一となる。したがって、既存の測位信号受信回路(たとえばGPS信号受信回路)のフロントエンドが流用できるため、位置情報提供装置100は、新たなハードウェアの回路を追加することなく、フロントエンドからの信号処理を行うソフトウェアを変更するのみで、測位信号を受信することができる。
【0035】
測位信号は、1.023MHzの矩形波によって変調されていてもよい。この場合、たとえば、L1帯において新たな送信が計画される測位信号のデータチャネルと同一であれば、利用者は、新しいGPSの信号を受信、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。なお、矩形波の周波数は、1.023MHzに限られない。他の周波数で変調する場合は、変調のための周波数は、既存のC/A信号、および/または、他の信号との干渉を回避するためのスペクトラム分離とのトレードオフによって定められ得る。
【0036】
GPS衛星110には、測位信号を発信する送信機120が搭載されている。GPS衛星111,112,113にも、同様の送信機121,122,123がそれぞれ搭載されている。
【0037】
位置情報提供装置100−1と同様の機能を有する位置情報提供装置100−2,100−3,100−4は、以下に説明するように、ビル130その他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。すなわち、ビル130は、ビル130の1階の天井には、屋内送信機200−1が取り付けられている。すなわち、屋内送信機は、位置情報を含む測位信号を受信側に送信するためのナビゲーション信号送信装置として動作する。位置情報提供装置100−4は、屋内送信機200−1から発信される測位信号を受信する。同様に、ビル130の2階および3階の各フロアの天井にも、それぞれ屋内送信機200−2,200−3が取り付けられている。ここで、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星110,111,112,113の時刻(「衛星時刻」という。)とは、互いに独立したものでよく、同期している必要はない。ただし、各衛星時刻は、それぞれ同期している必要がある。したがって、各衛星時刻は、各衛星に搭載された原子時計により制御されている。また、必要に応じて、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻である地上時刻も、相互に同期していることが好ましい。
【0038】
GPS衛星の各送信機から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって航法メッセージを変調することにより生成される。航法メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データ等を含む。各送信機120〜123は、さらに、それぞれ、当該送信機120〜123自身、あるいは送信機120〜123が搭載されるGPS衛星を識別するためのデータ(PRN−ID(Identification))を保持している。
【0039】
位置情報提供装置100は、各擬似雑音符号を発生するためのデータおよびコード発生器を有している。位置情報提供装置100は、測位信号を受信すると、各衛星の送信機または各屋内送信機ごとに割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、後述する復調処理を実行し、受信された信号がどの衛星またはどの屋内送信機から発信されたものであるかを特定することができる。また、新しいGPS信号では、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉・追尾を防ぐことができる。
【0040】
(GPS衛星に搭載される送信機)
GPS衛星に搭載される送信機の構成については、周知であるので、以下では、GPS衛星に搭載される送信機の構成の概略について説明する。送信機120,121,122,123は、それぞれ、原子時計と、データを格納する記憶装置と、発振回路と、測位信号を生成するための処理回路と、処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナ等を有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データ等を有する航法メッセージと、PRN−IDとを格納している。
【0041】
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
【0042】
ここで、各送信機120〜123毎に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機ごと(すなわちGPS衛星ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散する。送信機120〜123の各々は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して、宇宙空間に発信する。
【0043】
上述のように、送信機120〜123は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで、「有害な干渉をおこさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、たとえばL1帯と称される搬送波によって送信されている。各送信機120,121,122,123は、たとえば、同一の周波数を有する測位信号を拡散スペクトル通信方式にしたがって発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が、同一の位置情報提供装置100−1に受信される場合にも、各々の測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。
【0044】
なお、地上の屋内送信機からの測位信号についても、衛星から送信された信号と同様に、複数の屋内送信機からの信号は、互いに混信を受けることなく受信されることができる。
【0045】
[屋内送信機200の構成]
図2は、本実施の形態1の屋内送信機200(屋内送信機200−1〜200−3を総称するときには、屋内送信機200と総称する)からの測位信号を受信する位置情報提供装置100(位置情報提供装置100−1〜100−4を総称するときには、位置情報提供装置100と総称する)の受信状態を説明するための概念図である。
【0046】
屋内送信機200は、建物などの天井面・側面等の固定された場所に設置される。一方、位置情報提供装置100は、ユーザ端末として常に屋内を移動すると想定される。
【0047】
通常、通信システムでは特に屋内壁面構造物等に電波が反射し、フェーディング現象により通信が安定しない。そこで、屋内送信装置200は、以下に説明するような構成とすることで、1つの効果としてマルチパスによるシステムの不安定性を軽減する。
【0048】
屋内送信機200は、2つの送信アンテナTX−ANT1,TX−ANT2を備え、いわゆる空間ダイバーシティ方式の中でも送信ダイバーシティを用いている。アンテナTX−ANT1,TX−ANT2は、物理的に離れた地点に配置される。2つのアンテナ間の距離は、数10cmから1m程度が好ましい。
【0049】
以下に説明するように、アンテナTX−ANT1,TX−ANT2から送信される信号は、同じ内容のデータを伝送するものではあるが、受信機100において、識別可能な構成となっている。屋内送信機200では、いわゆる符号分割多重接続(Code Division Multiple Access)方式を採用している。したがって、それぞれのアンテナから送信される信号周波数が同一である。
【0050】
ただし、たとえば、実施の形態1の屋内送信機200では、アンテナTX−ANT1,TX−ANT2から送信される信号について異なった符号を使用することにより、受信機100において一方のアンテナからの信号を選択することが可能である。
【0051】
なお、屋内送信機200においては、一般的には、送信ダイバーシティに限らずダイバーシティシステムに、受信ダイバーシティ法も用いることが可能である。ただし、実施の形態1の屋内送信機200は、受信ダイバーシティについては、採用していない。それは、受信ダイバーシティシステムは受信端末側に複数のアンテナを実装する必要があり、送信ダイバーシティの方が、コスト・運用面・携帯性において、より有利だからである。
【0052】
なお、送信ダイバーシティにおけるアンテナの本数は、2本に限られる訳ではなく、より一般には、2本以上の複数本でよい。
【0053】
実施の形態1の屋内送信機200が採用する送信ダイバーシティ法は、送信側に複数のアンテナを実装し、受信側には単に1つのアンテナのみ実装される。屋内送信機200は、複数の送信信号を区別するために、スペクトラム拡散のための拡散コードである擬似ランダム雑音(PRN : Pseudo Random Noise)符号(以下、「PRNコード」と呼ぶ)の相互相関性を利用し高度な信号選択性を実現する。
【0054】
図3は、実施の形態1の位置情報提供装置100の構成の概略と動作を説明するための概念図である。
【0055】
図3を参照して、位置情報提供装置100は、屋内送信機200から送信される、異なった符号(ここでは、符号PRN180と符号PRN181)でスペクトラム拡散符号化され、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2から各々送信される測位信号を、受信アンテナRX−ANTにより受信する。なお、屋内送信機200からの拡散符号に何番目の拡散符号を割り当てるかについては、特に、図3の例に限定される訳ではなく、システムを設計する際に、衛星からの測位信号と屋内送信機200からの測位信号を判別できるように、異なる符号が割り当てられる構成であればよい。
【0056】
受信アンテナRX−ANTにより受信された測位信号は、フロントエンド102により、ベースバンド信号にまで変換される。ここでフロントエンド102には、高周波受信信号を抽出するフィルタや高周波信号を増幅するための増幅回路やダウンコンバータ、A/D変換器等が含まれる。
【0057】
フロントエンド102からの信号は、相関器110.1〜110.nにより、拡散コードのレプリカ信号との間の相関が検出される。拡散コードとして使用されるPRNコードについては、受信する側である位置情報提供装置100に予め記憶されているので、位置情報提供装置100は、屋内送信機200から送信される可能性のある複数のPRNコードについて並列に相関処理を行う。なお、図3に示した構成では、符号PRN180についての相関器110.1と符号PRN181についての相関器110.2のみを代表的に記載している。実際には、たとえば、屋外から屋内に位置情報提供装置100が移動した場合に、シームレスに測位を実施できるように、相関器110.1〜110.nは、屋内送信機200に予め割当てられている拡散コードについてだけではなく、GPS衛星に割当てられている拡散コードについても、並列に相関処理を行うことが可能な個数だけ設けられている。望ましくは、屋内送信機200に予め割当てられうる拡散コードの総数と、地球上空を周回しているGPS衛星に予め割りあてられうる拡散コードの総数との総和に相当する個数だけ、相関器110.1〜110.nが設けられ、それらが並行に相関処理を行うことが望ましい。
【0058】
なお、たとえば、1つの相関器110.1には、対応する拡散符号(PRNコード)PRN180について、時間遅れとして標本化されうる個数(mチップの信号であれば、1/2チップごとの2mチップ分)だけ、コリレータが設けられ、各時間遅れについて、並行して相関処理が実行される。
【0059】
すなわち、位置情報提供装置100は、送信信号のPRNコードをそれぞれ独立で非同期でサーチする。始めに一つ目のPRNコードが捕捉できた場合、その同期ループを用いて他の相関器(コリレータ)にて他のPRNコードの捕捉を試みる。もし、同期したダイバーシティ信号が存在するならば非常に高速に捕捉できる。
【0060】
また、相関器110.1〜110.nに対応してビットデコーダ414.1〜414.nが設けられる。
【0061】
もし、PRNコードが捕捉された場合は、相関器110.1〜110.nからの信号は、続いて、相関器110.1〜110.nにそれぞれ対応して設けられているビットデコーダ414.1〜414.nにより、デコードされる。捕捉された測位信号に基づいて、判断部416が、位置情報提供装置100が現在、屋内にあるのか屋外にあるのかについての判断を行なう。また、判断部416は、受信した信号がダイバーシティ方式により送信されたものであるか否かについても判断を行う。その後、測位のために実行される処理の詳細については、後述する。
【0062】
したがって、位置情報提供装置100は、極めて短時間で、i)受信した測位信号がいずれの拡散符号に対応したものであるかの判断と、ii)受信した信号がGPS衛星からの測位信号であるのか、あるいは、屋内送信機200からの測位信号であるのかについての判断とを実行することができる。
【0063】
追跡制御部414.mは、ビットデコーダ414.1〜414.nからの信号に基づいて、同期ループを確立し、維持するための制御を行なう。
【0064】
ここでは、屋内送信機200からの測位信号は、符号PRN180と符号PRN181とで拡散処理されているとしているので、短時間で、これらの符号に対応している相関器110.1と相関器110.2からの測位信号が同期捕捉され、同期が確立される。初めのデータパケットが完全に受信され、パリティーチェックでO.K.と判定された場合、O.K.判定のデータパケットをもう一つのチャネル(他のコリレータに対応)のパケットデータと比較する。このデータが同一である場合、ダイバーシティチャネルにそれぞれのPRN番号を割り当てる。
【0065】
その結果、位置情報提供装置100は、同期が確立された2つのチャネルからの信号のうち、一方を選択することで測位を実施する。
【0066】
[屋内送信機200−1のハードウェア構成]
図4は、実施の形態1の屋内送信機200−1のハードウェア構成を示すブロック図である。以下、図4を参照して、屋内送信機200−1について説明する。
【0067】
屋内送信機200−1は、無線インタフェース(以下、「無線I/F」と称す)210と、デジタル処理ブロック240と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されて、各回路部分の動作のための基準クロックを供給するための基準クロック入出力ブロック(以下、「基準クロックI/Oブロック」と称す)230と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されているアナログ処理ブロック250と、アナログ処理ブロック250に電気的に接続されて、測位のための信号を送出するアンテナTX−ANT1およびTX−ANT2(図示せず)と、屋内送信機200−1の各部への電源電位の供給を行うための電源(図示せず)とを備える。
【0068】
なお、電源は、屋内送信機200−1に内蔵されてもよいし、外部からの電力の供給を受け付ける態様であってもよい。
【0069】
(無線通信インタフェース)
無線I/F210は、無線通信のインタフェースであり、近距離無線通信、たとえば、ブルートゥース(Bruetooth)などや、PHS(Personal Handyphone System)や携帯電話網のような無線通信により、外部からのコマンドを受信したり、外部との間で設定パラメータやプログラム(ファームウェア等)のデータを受信したり、あるいは、必要に応じて外部にデータを送信するためのものである。
【0070】
このような無線I/F210を備えることにより、屋内送信装置200−1については、屋内の天井等に設置した後であっても、設定パラメータ、たとえば、屋内送信装置200−1が送信する位置データ(屋内送信機200−1が設置されている場所を表わすデータ)を変更したり、あるいは、ファームウェアの変更により、異なる通信方式への対応を可能としたりすることができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、無線でのインタフェースを想定しているが、設置場所への配線の敷設や設置の手間等を考慮しても、有線インタフェースとすることができる場合には、有線とすることも可能である。
【0072】
(デジタル処理ブロック)
デジタル処理ブロック240は、無線I/F210からのコマンドに応じて、あるいは、プログラムに従って、屋内送信機200−1の動作を制御するプロセッサ241と、プロセッサ241に搭載され、プロセッサ241の実行するプログラムを記憶するRAM(Random Access Memory)242と、無線I/F210からのデータのうち、設定パラメータ等を記憶するためのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)243と、プロセッサ241の制御のもとに、屋内送信機200−1の送出するベースバンド信号を生成するフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:以下、「FPGA」と称す)245と、無線I/F210からのデータのうち、FPGA245のファームウェアを記憶するためのEEPROM244と、FPGA245から出力されるベースバンド信号をアナログ信号に変更してアナログ処理ブロック250に与えるデジタル/アナログコンバータ(以下、「D/Aコンバータ」と称す)247.1および247.2とを含む。
【0073】
すなわち、デジタル処理ブロック240は、測位のための信号として屋内送信機200−1によって送信される信号の源泉となるデータを生成する。この源泉となるデータについては、上述のとおり、アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2について、異なる拡散符号により拡散処理がなされている。デジタル処理ブロック240は、アナログ処理ブロック250に対して、生成したデータを2つのビットストリームとして送出する。
【0074】
特に限定されないが、たとえば、EEPROM244に格納されているファームウェアプログラムは、FPGA245に電源が投入されると、FPGA245にロードされる。このファームウェアプログラム情報(ビットストリームデータ)は、FPGA245内のSRAM(Static Random Access Memory)246で構成されているコンフィグレーションメモリにロードされる。ロードされたビットストリームデータの個々のビットデータがFPGA245上で実現する回路の情報元となり、FPGA245に装備されているリソースをカスタマイズしてファームウェアプログラムで特定される回路を実現する。FPGA245では、このようにハードウェアに依存せず、コンフィグレーションデータを外部に持つことで、高い汎用性とフレキシビリティを実現できることになる。
【0075】
また、プロセッサ241は、無線I/F210から受け取る外部コマンドに応じて、EEPROM243に格納されるデータに基づいて、FPGA245のSRAM246(レジスタ)に、当該屋内送信機200−1に設定されるパラメータとして、以下のものを格納させる。
【0076】
1)擬似拡散符号(PRNコード)
2)送信機ID
3)送信機座標
4)メッセージ(これは、FPGA245内で衛星からの航法メッセージと同一のフォーマットに整形される)
なお、プロセッサ241の動作のためのプログラムも、EEPROM243に予め格納されており、当該プログラムは、屋内送信機200−1が起動する時に、EEPROM243から読み出され、RAM242に転送される。
【0077】
なお、プログラムあるいはデータを格納するための記憶装置は、EEPROM243または244に限られない。少なくとも、データを不揮発的に保存できる記憶装置、または電源オフにおいても記憶データを保持できるバッテリーバックアップRAM(Random Access Memory)などであればよい。また、外部からのデータが入力される場合には、データを書き込むことができる記憶装置であればよい。EEPROM243に格納されるデータのデータ構造については後述する。
【0078】
(アナログ処理ブロック)
アナログ処理ブロック250は、デジタル処理ブロック240から出力された2つのビットストリームを用いて、1.57542GHzの搬送波を変調して送信信号を生成し、2つのアンテナTX−ANT1およびTX−ANT2にそれぞれ送出する。その信号は、アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2よりダイバーシティ信号として発信される。
【0079】
すなわち、デジタル処理ブロック240のD/Aコンバータ247から出力された2つの信号は、アップコンバータ252.1および252.2でアップコンバートされ、バンドパスフィルタ(BPF)253.1および253.2を、アンプ254.1および254.2を通過して所定の周波数帯域の信号のみが増幅された後、再度、アップコンバータ255.1および255.2でアップコンバートされて、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ256.1および256.2により所定の帯域の信号が取り出された後に、アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2から送出される。
【0080】
なお、アップコンバータ252.1,252.2およびアップコンバータ255.1,255.2で使用されるクロックは、基準クロックI/Oブロック230からFPGA245に供給されるクロックが、さらに、てい倍器251において、てい倍されたものが使用される。
【0081】
このようにして、衛星からの測位のための信号と同様の構成を有する信号が、ダイバーシティ方式で、屋内送信機200−1から発信される。この場合、信号の内容は、衛星から発信された測位信号に含まれる内容とは、全く同一ではない。屋内送信機200−1から発信される信号の構成の一例は、後述する。
【0082】
以上の説明においては、デジタル処理ブロック240におけるデジタル信号処理を実現するための演算処理装置としてFPGA245が用いられたが、ソフトウェアにより無線装置の変調機能を変更可能な装置であれば、その他の演算処理装置が使用されてもよい。
【0083】
また、図4においては、クロック信号(Clk)がデジタル処理ブロック240からアナログ処理ブロック250に供給されているが、基準クロックI/Oブロック230からアナログ処理ブロック250に直接に供給されてもよい。
【0084】
さらに、説明を明確にするために、本実施の形態においては、デジタル処理ブロック240とアナログ処理ブロック250とが別個に示されているが、物理的には、1つのチップに混載されてもよい。
【0085】
(基準クロックI/Oブロック)
基準クロックI/Oブロック230は、デジタル処理ブロック240の動作を規定するクロック信号、あるいは搬送波を生成するためのクロック信号を、デジタル処理ブロック210に供給する。
【0086】
基準クロックI/Oブロック230は、「外部同期モード」では、外部同期リンクポート220へ外部のクロック生成器から与えられる同期用信号に基づいて、ドライバ234がクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0087】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「外部クロックモード」では、外部クロックポート221へ与えられる外部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL(Phase Locked Loop)回路233から出力されるクロック信号と外部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0088】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「内部クロックモード」では、内部クロック生成器231が生成する内部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL(Phase Locked Loop)回路233から出力されるクロック信号と内部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0089】
なお、無線I/F210から、プロセッサ241により出力される信号により、送信機の内部状態(たとえば、「PLL制御」信号)を監視することができる。あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200−1から発信されるべき他のデータの入力も受け付けることができる。当該他のデータは、たとえば、屋内送信機200−1が設置されている場所を表わすデータ(位置データ)であり、例えば、テキストデータである。あるいは、屋内送信機200−1がデパートその他の商業施設に設置されている場合には、宣伝広告用のデータが、当該他のデータとして屋内送信機200−1に入力可能である。
【0090】
擬似拡散符号(PRNコード)の符号パターンは、屋内送信機200−1に入力されると、EEPROM243において予め規定された領域に書き込まれる。その後は、その書き込まれたPRN−IDが、測位のための信号に含められる。その他のデータも、EEPROM243において、そのデータの種類に応じて予め確保された領域に書き込まれる。
【0091】
なお、以上の説明では、2つの送信アンテナから送信される2つの信号については、送信側で同期しているものとして説明した。このように、送信される信号の周波数およびコードピリオド、多重されるデータのタイミングは完全に同期されることが望ましい。なぜなら、受信機側で信号を捕捉する際の同期追跡が容易となるからである。どちらか一方の信号同期が確立できたら、そのタイミングおよび周波数でもう一方の信号を高速に捕捉することができる。マルチパスによる信号断から同期復帰する際も、これらの同期は優位に機能する。ただし、この2つの信号のタイミングが同期することは、必ずしも必須ではなく、仮にずれが存在するとしても、受信側で、2つのチャネルで同期を取ることは可能である。
【0092】
(EEPROM243に格納されるデータのデータ構造)
図5を参照して、屋内送信機200−1のEEPROM243に格納されるデータのデータ構造について説明する。
【0093】
図5は、屋内送信機200−1が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。EEPROM243は、データを格納するための領域310〜340を含む。
【0094】
領域300には、送信機を識別するための番号として、送信機IDが格納されている。送信機IDは、たとえば当該送信機の製造時にメモリに不揮発的に書き込まれる数字および/または英文字その他の組み合わせである。
【0095】
当該送信機に割り当てられた擬似拡散符号のPRN-IDは、領域310に格納されている。送信機の名称は、例えば、テキストデータとして、領域320に格納されている。
【0096】
当該送信機に割り当てられた2つの擬似拡散符号の符号パターンは、領域330に格納されている。擬似拡散符号の符号パターンは、衛星用の擬似拡散符号と同一の系列に属する符号パターンのうちから、本発明の実施の形態に係る位置情報提供システム用に予め割り当てられた有限個の複数の符号パターンのうちから選択されたものであり、衛星ごとに割り当てられる擬似拡散符号の符号パターンとは異なる符号パターンである。
【0097】
本位置情報提供システム用に割り当てられる擬似拡散符号の符号パターンは、有限個であるが、屋内送信機の数は、各送信機の設置場所の広さ、あるいは設置場所の構成(ビル
の階数等)に応じて異なり、符号パターンの数よりも多い複数の屋内送信機が使用される場合もある。したがって、同一の擬似拡散符号の符号パターンを有する複数の送信機が存在し得る。この場合は、同一の符号パターンを有する送信機の設置場所を、信号の出力を考慮して決定すればよい。そうすることにより、同一の擬似拡散符号の符号パターンを用いる複数の測位信号が同一の位置情報提供装置によって同時期に受信されることは、防止し得る。
【0098】
屋内送信機200−1が設置されている場所を特定するための位置データは、領域340に格納されている。位置データは、たとえば、緯度、経度、高さの組み合わせとして表わされる。領域320において、当該位置データに加えて、もしくは位置データに代えて、住所、建物の名称などが格納されてもよい。本発明では、「緯度、経度、高さの組み合わせ」、「住所、建物の名称」、「高さ、経度、高度の組み合わせと住所、建物の名称」のように、そのデータのみで送信機200−1の設置場所を特定可能なデータを総称して「位置特定データ」と呼ぶ。
【0099】
ここで、前述のように、PRN−ID、通信機名称、擬似拡散符号の符号パターン、位置特定データは、無線インタフェース210を介して入力される他のデータに変更可能である。
【0100】
(FPGA245の構成)
以下では、図4に示したFPGA245により実現される回路について説明する。
【0101】
図6は、FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号の搬送波のL1帯(1575.42MHz)に乗せられる測位用の信号であるC/A(coarse/access)コードのベースバンド信号に対して、その信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245aの構成を説明するための機能ブロック図である。
【0102】
なお、FPGA245は、新しい測位衛星システム(たとえば、日本の準天頂衛星システム)のL1帯で使用される測位用の信号であるL1Cコードのベースバンド信号に従った変調を行なう際には、直交変調される2つの相(I相とQ相)の信号変調に対応した構成を有するようにプログラムされる。したがって、図6では、測位用のコードが1つの系統の場合について例示的に示しているが、上述した「新しい測位衛星システム」では、2つの系統を直交変調する。本発明は、このような複数系統の場合にも適用できるものである。
【0103】
ここで、たとえば、C/Aコードに対しては、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調が行われ、L1Cコードに対しては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調が行われるものとする。なお、以下の説明で明らかになるように、デジタル値をアナログ信号に変換する変調方式としては、BPSK変調やQPSK変調に限られず、FPGA245で実現できる他の方式でもよい。
【0104】
ここで、以下の説明では、C/Aコードのベースバンド信号を生成する構成を例示的に説明することとし、図6に示した構成では、基本的には、BPSK変調器の構成となっている。ただし、変調器245aが可変的に実現する変調方式に従って、各方式で独立な回路をプログラムしてもよい。
【0105】
図6を参照して、変調器245aは、EEPROM243内に格納されているPRNコードを受けて格納するPRNコードレジスタ2462および2464と、EEPROM243内に格納されている位置データに基づいて、メッセージデータ生成装置(図示せず)からのC/Aコードの信号フォーマットに従ったメッセージデータを受けて格納するメッセージコードレジスタ2466を備える。
【0106】
ここで、PRNコードレジスタ2462および2464には、外部からEEPROM243内に設定されたPRNコードが入力され、メッセージコードレジスタ2466および2468には、それぞれ、異なる拡散コード(PRNコード)のデータが格納される。
【0107】
変調器245aは、さらに、PRNコードレジスタ2462から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2466から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2452と、PRNコードレジスタ2464から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2468から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2454と、乗算器2452からの出力に対してバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2460と、乗算器2454からの出力に対してバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2462とを備える。
【0108】
変調器245aは、さらに、基準クロックI/Oブロック230からのクロック信号に基づいて、信号フォーマットに従った変調基準クロックを生成するクロックマネージャ回路2472と、クロックマネージャ回路2472からの信号に同期して、予め設定されたサイン波に対応するデータを出力するルックアップテーブル2474と、ルックアップテーブル2474から出力されたサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2460からの信号とを乗算する乗算器2464と、ルックアップテーブル2574から出力されたサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2462からの信号とを乗算する乗算器2466と、乗算器2464および2466からの信号をバッファリングしてD/Aコンバータ247.1および247.2にそれぞれ出力するための出力バッファ2470.1および2470.2とを備える。
【0109】
ここで、たとえば、以上のような変調器245aを、FPGA245のファームウェアにより、現行のGPS信号とコンパチブルな信号(L1 C/Aコードとコンパチブルな信号:L1 C/A互換信号)を出力する回路構成とした場合には、変調器245aは、送信機の「緯度・経度・高さ」の情報をメッセージとして変調することで、BPSK変調された信号を生成する。ここで、「コンパチブルな信号」とは、共通の信号フォーマットを有するために受信機としてはフロントエンド部を共通にして受信可能な信号を意味する。また、「高さの情報」とは、屋内送信機200の設置される場所の高さの情報であり、たとえば、標高についてのデータでもよいし、あるいは、建物の階数や、地下の階数を表すデータでもよい。あるいは、「高さの情報」とは、建物の階数を識別するためのデータ(Floor-ID)でもよい。
【0110】
(屋内送信機200−1から送信される信号のデータ構造)
以下では、例として、メッセージデータ生成装置245bで生成されるメッセージを乗せたL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
【0111】
(L1 C/A互換信号)
図7を参照して、送信機から送信される測位信号について説明する。図7は、GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号500の構成を表わす図である。信号500は、300ビットの5つのサブフレーム、すなわち、サブフレーム510〜550から構成される。サブフレーム510〜550は、当該送信機によって、繰り返し送信される。サブフレーム510〜550は、たとえば、それぞれ300ビットであり、50bps(bit per second)のビット率で送信される。したがって、この場合、各サブフレームは、6秒で送信される。
【0112】
第1番目のサブフレーム510は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド511と、30ビットの時刻情報512と、240ビットのメッセージデータ513とを含む。時刻情報512は、詳細には、サブフレーム510が生成される際に取得された時刻情報と、サブフレームIDとを含む。ここで、サブフレームIDとは、他のサブフレームから第1のサブフレーム510を区別するための識別番号である。メッセージデータ513は、GPS週番号、クロック情報、当該GPS衛星のヘルス情報、軌道精度情報等を含む。
【0113】
第2番目のサブフレーム520は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド521と、30ビットの時刻情報522と、240ビットのメッセージデータ523とを含む。時刻情報522は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ523は、エフェメリスを含む。ここで、エフェメリス(ephemeris、放送暦)とは、測位信号を発信する衛星の軌道情報をいう。エフェメリスは、
当該衛星の航行を管理する管制局によって逐次更新される、高精度な情報である。
【0114】
第3番目のサブフレーム530は、第2番目のサブフレーム520と同様の構成を有する。すなわち、第3番目のサブフレーム530は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド531と、30ビットの時刻情報532と、240ビットのメッセージデータ533とを含む。時刻情報532は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ533は、エフェメリスを含む。
【0115】
第4番目のサブフレーム540は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド541と、30ビットの時刻情報542と、240ビットのメッセージデータ543とを含む。メッセージデータ543は、他のメッセージデータ513,523,533と異なり、アルマナック情報、衛星ヘルス情報のサマリ、電離層遅延情報、UTC(Coordinated Universal Time )パラメータ等を含む。
【0116】
第5番目のサブフレーム550は、30ビットのトランスポートオーバーヘッド551と、30ビットの時刻情報552と、240ビットのメッセージデータ553とを含む。メッセージデータ553は、アルマナック情報と、衛星ヘルス情報のサマリとを含む。メッセージデータ543,553は、各々25ページからの構成されており、ページ毎に、上記の異なる情報が定義されている。ここで、アルマナック情報とは、衛星の概略軌道を表わす情報であり、当該衛星だけでなく、全てのGPS衛星についての情報を含む。サブフレーム510〜550の送信が25回繰り返されると、1ページ目に戻って、同じ情報が発信される。
【0117】
サブフレーム510〜550は、送信機120,121,122からそれぞれ送信される。サブフレーム510〜550が位置情報提供装置100によって受信されると、位置情報提供装置100の位置は、トランスポートオーバーヘッド511〜551に含まれる各保守・管理情報と、時刻情報512〜552と、メッセージデータ513〜553とに基づいて、計算される。
【0118】
信号560は、サブフレーム510〜550に含まれる各メッセージデータ513〜553と同じデータ長を有する。信号560は、エフェメリス(メッセージデータ523,533)として表わされる軌道情報に代えて、信号560の発信源の位置を表わすデータ
を有する点で、サブフレーム510〜550と異なる。
【0119】
すなわち、信号560は、6ビットのPRN−ID561と、15ビットの送信機ID562と、X座標値563と、Y座標値564と、Z座標値565と、高度補正係数(Zhf)566と、アドレス567と、リザーブ568とを含む。信号560は、サブフレーム510〜550に含まれるメッセージデータ513〜553に代わって、屋内送信機200−1,200−2,200−3から送信される。
【0120】
PRN−ID561は、信号560の発信源である送信機(たとえば、屋内送信機200−1,200−2,200−3)に対して予め割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号である。PRN−ID561は、各GPS衛星に搭載されるそれぞれの送信機に対して割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号とは異なるが、同じ系列の符号列から生成される符号パターンに対して割り当てられた番号である。位置情報提供装置が、受信した信号560から、屋内送信機用に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンのいずれかを取得することで、その信号が、衛星から送信されたサブフレーム510〜550であるのか、あるいは、屋内送信機から送信された信号560であるのかが特定される。
【0121】
X座標値563、Y座標値564およびZ座標値565は、屋内送信機200−1が取り付けられている位置を表わすデータである。X座標値563、Y座標値564、Z座標値565は、たとえば緯度、経度、高さとして表わされる。高度補正係数566は、Z座標値565によって特定される高度を補正するために用いられる。なお、高度補正係数566は、必須のデータ項目ではない。したがって、Z座標値565によって特定される高さ以上の精度が要求されない場合には、その係数は用いられなくてもよい。この場合、高度補正係数566のために割り当てられる領域には、たとえば「NULL」を表わすデータが格納される。
【0122】
リザーブ領域568には、「住所、建物の名称」「宣伝広告用のデータ」「交通情報」「気象情報」「災害情報」が割り当てられる。
【0123】
なお、上述したように、屋内送信機200から送信される信号は、新しい測位衛星からの測位信号に対応した「L1C互換信号」とすることも可能である。
【0124】
[位置情報提供装置100−1(受信機)の構成]
図8を参照して、位置情報提供装置100について説明する。図8は、位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0125】
位置情報提供装置100は、アンテナ402と、アンテナ402に電気的に接続されているRF(Radio Frequency)フロント回路404と、RFフロント回路404に電気的に接続されているダウンコンバータ406と、ダウンコンバータ406に電気的に接続されているA/D(Analog to Digital)コンバータ408と、A/Dコンバータ408からの信号を受けて、相関処理を行うベースバンドプロセッサ412と、ベースバンドプロセッサ412に電気的に接続されているメモリ420と、ベースバンドプロセッサ412に電気的に接続されているナビゲーションプロセッサ430と、ナビゲーションプロセッサ430に電気的に接続されているディスプレイ440とを備える。
【0126】
ベースバンドプロセッサ412は、A/Dコンバータ408に電気的に接続されているコリレータ410.1〜410.nと、コリレータ410.1〜410.nの相関処理のタイミングの基準となるクロックをそれぞれ供給するための数値制御発信器(NCO:Numerically Controlled Oscillators)411.1〜411.nと、コリレータ410.1〜410.nからの信号をそれぞれ受けて、所定期間について積算処理を行う積算器412.1〜412.nとを含む。
【0127】
ベースバンドプロセッサ412は、さらに、メモリ420に格納されたソフトウェアに基づいて、積算器412.1〜412.nからの信号をデコードするとともに、コリレータ410.1〜410.n、NCO411.1〜411.nおよび積算器412.1〜412.nの動作を制御する制御部414を含む。
【0128】
ここで、一般には、ベースバンドプロセッサ412は、受信信号のドップラー効果の影響を考慮して相関処理を行い、PRNコードおよびその遅延成分についてのサーチだけでなく、制御部414の制御にしたがって、NCO411.1〜411.nの周波数を制御して、周波数についてのサーチも行なう。
【0129】
なお、図8に示した例では、コリレータ410.1〜410.nと、積算器412.1〜412.nとは、ベースバンドプロセッサ412とは独立したハードウェアとする構成としてもよい。あるいは、コリレータ410.1〜410.nと、積算器412.1〜412.nとの機能は、ソフトウェアとして実現することも可能である。
【0130】
メモリ420は、測位信号の各発信源を識別するためのデータである、PRNコードの符号パターンを格納する複数の領域を含む。一例として、ある局面において、48個の符号パターンが用いられる場合には、メモリ420は、図8に示されるように、領域421−1〜421−48を含む。また、他の局面において、それ以上の符号パターンが使用される場合には、さらに多くの領域がメモリ420に確保される。逆に、メモリ420に確保された領域の数よりも少ない符号パターンが使用される場合もあり得る。
【0131】
一例として48個の符号パターンが用いられる場合において、たとえば、24個の衛星が衛星測位システムに用いられる場合、各衛星を識別する24個の識別データと、12個の予備のデータとが、領域421−1〜421−36に格納される。このとき、たとえば、領域421−1には、第1の衛星についての擬似雑音符号の符号パターンが格納されている。ここから、符号パターンを読み出して、受信信号との相互相関処理を行なうことにより、信号の追跡や、信号に含まれる航法メッセージの解読を行なうことができる。なお、ここでは、符号パターンを格納して読み出す方法を例示的に示したが、符号パターン生成器により符号パターンを生成する方法も可能である。符号パターン生成器は、たとえば、2つのフィードバックシフトレジスタを組み合わせることにより実現される。なお、符号パターン生成器の構成および動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは、それらの詳細な説明は、繰り返さない。
【0132】
同様に、測位信号を発信する屋内送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域421−37〜421−48に格納される。たとえば、第1の屋内送信機についての割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域432−37および領域432−38に格納されている。なお、メモリ420中には、1つの屋内送信機について、どの拡散コード(PRNコード)が組となって割当てられるかが、予め記憶されていることが望ましい。このような割り当てが予め記憶されている場合は、2つのチャネルについての同期捕捉が、より短縮されることになる。
【0133】
この場合、本実施の形態においては、12個の符号パターン有する屋内送信機が使用可能となるが、同一の位置情報提供装置が受信可能な範囲に同一の符号パターンを使用する屋内送信機がないように、各屋内送信機をそれぞれ配置してもよい。このようにすることによって、6台以上の屋内送信機を、たとえばビル130の同一のフロアに設置することも可能になる。
【0134】
ナビゲーションプロセッサ430は、制御部414から出力されるデータに基づいて測位信号の発信源を判断するとともに、受信された測位信号がダイバーシティ送信されたものであるかを判断し制御部414の動作を制御する判断部416と、メモリ420に格納されたソフトウェアに基づいて、判断部416から出力される信号に基づいて屋外における位置情報提供装置100の位置を測定するための屋外測位部432と、判断部416から出力されるデータに基づいて屋内における位置情報提供装置100の位置を表わす情報を導出するための屋内測位部434とを含む。
【0135】
アンテナ402は、GPS衛星110,111,112からそれぞれ発信された測位信号および屋内送信機200−1から発信された測位信号をそれぞれ受信することができる。また、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、アンテナ402は、前述の信号に加えて、無線電話のための信号あるいはデータ通信のための信号を送受信することもできる。
【0136】
RFフロント回路404のフィルタおよびLNA(Low Noise Amplifier)回路は、アンテナ402によって受信された信号を受けて、ノイズの除去あるいは予め規定された帯域幅の信号のみを出力するフィルタ処理などを行なう。RFフロント回路404から出力される信号は、ダウンコンバータ406に入力される。
【0137】
ダウンコンバータ406は、RFフロント回路404から出力される信号を増幅し、中間周波数として出力する。この信号は、A/Dコンバータ408に入力される。A/Dコンバータ408は、入力された中間周波数信号をデジタル変換処理し、デジタルデータに変換する。デジタルデータは、コリレータ410.1〜410.nに入力される。
【0138】
コリレータ410.1〜410.nは、制御部414がメモリ420から読み出した符号パターンと、受信信号との相関処理を行なう。
【0139】
コリレータ410.1〜410.nの各コリレータは、制御部414から出力される制御信号に基づいて、受信された測位信号と測位信号を復調するために生成されたコードパターンとのマッチングを同時に実行する。
【0140】
具体的には、制御部414は、各コリレータ410.1〜410.nの各々に対して、擬似雑音符号において生じ得る遅延を反映させた(符号位相をずらした)符号パターン(レプリカパターン)を生成する指令を与える。この指令は、たとえば、現行GPSでは、衛星の数×2×1023(用いられる擬似雑音符号の符号パターンの長さ)となる。各コリレータ410.1〜410.nは、各々に与えられた指令に基づいて、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンを用いて符号位相の異なる符号パターンを生成する。そうすると、生成された全ての符号パターンの中には、受信された測位信号の変調に使用された擬似雑音符号の符号パターンに一致するものが1つ存在する。そこで、各符号パターンを用いたマッチング処理を行なうために必要な数のコリレータを並列なコリレータ410.1〜410.nとして予め構成することにより、極く短時間で、擬似雑音符号の符号パターンを特定することができる。この処理は、位置情報提供装置100が屋内送信機からの信号を受信する場合にも同様に適用できる。したがって、位置情報提供装置100の使用者が屋内にいる場合でも、その位置情報を、極く短時間に取得することができる。
【0141】
つまり、並列なコリレータ410.1〜410.nは、最大で、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンと各屋内送信機について規定された擬似雑音符号の符号パターンとのすべてについて、並列して、マッチングをとることが可能である。また、コリレータの個数と、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンの個数との関係により、各衛星と各屋内送信機とについて規定された擬似雑音符号の符号パターンのすべてについて、一括して、マッチングを採らない場合でも、複数のコリレータによる並列処理により、大幅に、位置情報の取得に要する時間を短縮できる。
【0142】
ここで、衛星および屋内送信機は、同一の通信方式であるスペクトラム拡散方式で信号を送信しており、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンが同一系列のものを使用できるので、並列のコリレータについては、衛星からの信号および屋内送信機からの送信の双方について共用することができ、受信処理は、両者について特段に区別することなく、並行して行うことができる。
【0143】
並列なコリレータ410.1〜410.nは、各コードパターンを用いて、位置情報提供装置100が受信した測位信号を追跡し、当該測位信号のビット配列に一致する配列を有するコードパターンを特定するための処理を行う。これにより、判断部416は、擬似雑音符号の符号パターンが特定されるため、位置情報提供装置100は、受信された測位信号がどの衛星から送信されたものか、あるいは、屋内送信機から送信されたかを判別できる。さらに、判断部416は、受信された測位信号が屋内送信機から送信されたものである場合、その測位信号がダイバーシティ送信されたものか否かについても判断する。また、位置情報提供装置100は、特定された符号パターンを用いて、復調とメッセージの解読とをすることができる。
【0144】
具体的には、判断部416は、上述のような判断を行ない、その判断の結果に応じたデータをナビゲーションプロセッサ430に送出する。判断部416は、受信された測位信号に含まれるPRN−IDがGPS衛星に搭載される送信機以外の屋内送信機200−1等に割り当てられたPRN−IDであるか否かを判断する。
【0145】
ここで、一例として、24個のGPS衛星が測位システムに使用される場合について説明する。この場合、予備のコードを含めると、たとえば、36個の擬似雑音符号が使用される。この時、PRN−01〜PRN−24が、各GPS衛星を識別する番号(PRN−ID)として使用され、PRN−25〜PRN−36が、予備の衛星を識別する番号として使用される。予備の衛星とは、当初打ち上げられた衛星以外に改めて打ち上げられる衛星である。すなわち、このような衛星は、GPS衛星あるいはGPS衛星に搭載された送信機等の故障に備えて打ち上げられる。
【0146】
さらに、仮に、12個の擬似雑音符号の符号パターンがGPS衛星に搭載される送信機以外の屋内送信機200−1等に割り当てられる。この時、衛星に割り当てられたPRN−IDとは異なる番号、たとえばPRN−37からPRN−48が、各送信機ごとに割り当てられる。したがって、この例では、48個のPRN−IDが存在することになる。ここで、PRN−ID〜PRN−48は、たとえば各屋内送信機の配置に応じて当該屋内送信機に割り当てられる。したがって、仮に、各屋内送信機から発信される信号が干渉しない程度の送信出力が使用される場合には、同一のPRN−IDが異なる屋内送信機に用いられてもよい。このような配置により、地上用の送信機のために割り当てられたPRN−IDの数よりも多くの数の送信機が、使用可能となる。
【0147】
そこで、判断部416は、メモリ420に格納されている擬似雑音符号の符号パターン422を参照して、受信された測位信号から取得された符号パターンが、屋内送信機に割り当てられている符号パターンに一致するか否かを判断する。これらの符号パターンが一致する場合には、判断部416は、その測位信号が屋内送信機から発信されたものであると判断する。そうでない場合には、判断部416は、その信号がGPS衛星から発信されたものと判断し、その取得された符号パターンが、どの衛星に割り当てられた符号パターンであるかを、メモリ420に格納されている符号パターンを参照して決定する。なお、判断の態様として、符号パターンが使用される例が示されているが、その他のデータの比較によって、上記の判断が行なわれてもよい。たとえば、PRN−IDを用いた比較が、その判断に使用されてもよい。
【0148】
そして、受信された信号が各GPS衛星から発信されたものである場合には、判断部416は、特定された信号から取得されるデータを屋外測位部432に送出する。信号から取得されるデータには、航法メッセージが含まれる。一方、受信された信号が屋内送信機200−1などから発信されたものである場合には、判断部416は、その信号から取得されるデータを屋内測位部434に送出する。このデータは、すなわち屋内送信機200−1の位置を特定するためのデータとして予め設定された座標値である。あるいは、別の局面において、当該送信機を識別する番号が用いられてもよい。
【0149】
ナビゲーションプロセッサ430において、屋外測位部432は、判断部416から送出されたデータに基づいて位置情報提供装置100の位置を算出するための処理を実行する。具体的には、屋外測位部432は、3つ以上のGPS衛星(好ましくは、4つ以上)から発信された信号に含まれるデータを用いて、各信号の伝播時間を計算し、その計算結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を算出する。この処理は、公知の衛星測位の手法を用いて実行される。この処理は、当業者にとっては容易に理解できるものである。したがって、ここではその説明の詳細は繰り返さない。
【0150】
一方、ナビゲーションプロセッサ430において、屋内測位部434は、判断部416から出力されたデータに基づいて位置情報提供装置100が屋内に存在する場合における測位処理を実行する。後述するように、屋内送信機200−1は、場所を特定するためのデータ(位置特定データ)が含まれる測位信号を発信する。そこで、位置情報提供装置100がそのような信号を受信した場合には、その信号に含まれるデータを取り出し、そのデータを用いて位置情報提供装置100の位置とすることができる。屋内測位部434は、この処理を行なう。屋外測位部432あるいは屋内測位部434によって算出されたデータは、ディスプレイ440における表示のために用いられる。具体的には、これらのデータは、画面を表示するためのデータに組み込まれ、計測された位置を表わす画像あるいは屋内送信機200−1が設置されている場所を表示するための画像が生成され、ディスプレイ440によって表示される。
【0151】
また、位置情報提供装置100は、制御部414の制御の下に、外部との間、たとえば、位置情報提供サーバ(図示せず)との間で、データを授受するための通信部450を備える。
【0152】
図8に示した構成において、特に限定されないが、測位信号受信からディスプレイに表示される情報の生成までの信号処理において、アンテナ402、RFフロント回路404、ダウンコンバータ406、A/Dコンバータ408は、ハードウェアにより構成され、ベースバンドプロセッサ412およびナビゲーションプロセッサ430の処理は、メモリ420に格納されたプログラムにより実行することができる。なお、コリレータ410.1〜410.nと積算器412.1〜412.nとの処理については、ハードウェアの代わりにソフトウェアにより実現される構成とすることもできる。
【0153】
(屋内測位の処理フロー)
図9は、制御部414,判断部416および屋内測位部434の実行する処理を説明するための図である。
【0154】
判断部416が、同期捕捉された測位信号の拡散コードが予め屋内送信機200に割当てられうるコードのうちのいずれかであると判断した場合は、屋内測位部434が、図9に示した処理のうち測位演算の処理を行なう。
【0155】
なお、判断部416が、同期捕捉された測位信号の拡散コードが予めGPS衛星に割当てられうるコードのうちのいずれかであると判断した場合は、屋外測位部432が、通常のGPS測位と同じ処理により、位置情報提供装置100の現在位置の測位を行なう。この通常のGPS信号の処理を行う分岐については、図9には図示していない。
【0156】
図9を参照して、受信処理が開始されると(ステップS100)、制御部414の制御にしたがって、コリレータ410.1〜410.nが、可能な拡散コード(PRNコード)について相関処理を行うことで、制御部414は、並列的に捕捉および同期処理を行う。たとえば、本実施の形態では、屋内送信機200が、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2から送信する信号に対応する、2つのチャネルCH1およびCH2について、並行的に、かつ非同期で、サーチおよび捕捉処理が行われる(ステップS102,S104)。ここで、「チャネル」とは、1つの送信アンテナと位置情報提供装置100との間での通信路のことを指し、これにコリレータが対応するものとする。また、「非同期」とは、1つの拡散コードについての追跡捕捉処理における受信タイミングについての情報と他の拡散コードについての追跡捕捉処理における受信タイミングについての情報とを特に連動させることなく、受信処理をおこなうことをいう。
【0157】
このようなサーチおよび捕捉処理は、制御部414の制御により、各チャネルのうち、いずれかについて捕捉が完了して同期ループが確立されるまで続行される(ステップS106,S108)。
【0158】
チャネルCH1またはCH2のうち、いずれか一方について、早く同期ループが確立しており、かつ、判断部416が、この一方のチャネルが屋内送信機200からの測位信号であると判断している場合には、制御部414は、他方のチャネルCH2については、この同期タイミングに合わせて、サーチと捕捉処理を行う(ステップS110)。すなわち、一方のチャネルで同期ループを確立するのに使用されている拡散コードの受信タイミングの情報を用いて、他方のチャネルの拡散コードもこれに相当する受信タイミングだけ時間遅れが生じているものとして追跡・捕捉処理を行う。
また、位置情報提供装置100で、どの拡散コードが1つの屋内送信機について組となっているかを予め記憶している場合は、一方のチャネルについて同期捕捉できれば、他方のチャネルについては、どのPRNコードが対応しているかがわかることになる。このことにより、他方のチャネルについても、一層、早期に同期捕捉が可能となる。
【0159】
続いて、判断部416は、同期が確立したチャネルが屋内送信機200からの測位信号であると判断している場合には、2つのチャネルについて同期が、たとえば、所定時間以内に確立しているか否かを判断する(ステップS112)。
【0160】
判断部416が、2つのチャネルについて同期が確立していると判断した場合は、処理は次のステップSS114およびS116に移行する。
【0161】
判断部416が、2つのチャネルについて同期が確立していないと判断した場合は、制御部414は、さらに、他のチャネルについては、すでに同期が確立したチャネルとは独立に、つまり、同期が確立しているチャネルの受信タイミングの情報に依存することなく、他の拡散コードについての追跡と捕捉のための処理を行う(ステップS118)。このようにして他方のチャネルについて同期が確立した場合、または、所定時間内に他方のチャネルについて同期が確率しない場合は、処理は次のステップSS114およびS116に移行する。
【0162】
次に、制御部414は、同期捕捉されたチャネルについて、1パケット分の信号をそれぞれのチャネルについて独立にデコードする(ステップS114,S116)。制御部414は、デコードされた信号についてパリティチェックを行い(ステップS122,S124)、2つのチャネルについて同期ループが確立している場合は、双方のチャネルについてパリティチェックがO.K.となるまで、1パケット分の信号の受信とデコード処理を継続する。
【0163】
2つのチャネルについて同期ループが確立している場合に、双方のチャネルについてパリティチェックがO.K.となると、判断部416は、2つのチャネルで受信されたパケット内のデータの内容を比較する(ステップS126)。
【0164】
双方のチャネルについてパケット内のデータの内容が同一であれば、判断部416は、これが屋内送信機200からダイバーシティ送信されたものを別々のチャネルで受信したものと判断し、屋内測位部434に通知する。一方、パケット内のデータの内容が一致しないときは、2つの異なる屋内送信機からの測位信号を受信したものとして、屋内測位部434に通知する。
【0165】
屋内測位部434は、ダイバーシティ送信された信号を受信したときには、2つのチャネルのうちのいずれかを選択して、選択したチャネルで受信した測位信号に基づいて、そのメッセージ内の位置特定データにより位置情報を取得して(ステップS128)、測位結果を出力する(ステップS132)。このとき、「チャネルの選択」においては、たとえば、2つのチャネルのうち、強度の強い方のチャネルを選択する。さらに、特に、限定されないが、たとえば、屋内送信機200からの測位信号の強度を送信機に応じて異なるレベルに設定した場合は、屋内送信機200から送信される信号には、送信器側で設定した電波強度のランク(たとえば、4段階のいずれかのランク)を示す情報(強度情報)を含ませる構成とすることもできる。このときは、受信した電波強度をこの強度情報に基づいて正規化し、正規化された信号について、より強いと判断されるチャネルの方の信号を選択する構成とすることもできる。
【0166】
あるいは、「チャネルの選択」は、特に限定されないが、たとえば、受信した信号の誤り率の低い方のチャネルを選択することにより行なわれることとしてもよい。
【0167】
一方、屋内測位部434は、独立した別々の屋内送信機から送信された信号を受信したときには、2つのチャネルの位置特定データを統合して(ステップS130)、測位結果を出力する(ステップS132)。
【0168】
ここで、位置特定データの統合は、特に限定されないが、2つの屋内送信機の位置データについて、その中間地点の位置を算出することにより行なっても良い。
【0169】
なお、データの比較は、必ずしも1パケット分のデコードされた信号に基づく必要はなく、より小さいデータの単位で比較を行なっても良い。たとえば、パケット先頭から特定のビット数以降の特定範囲のビットについて比較を行なっても良い。
【0170】
図10は、図9で説明した「位置特定データの統合」の処理を説明するための概念図である。
【0171】
まず、図10(a)に示すように、位置情報提供装置(受信機)100が2つの屋内送信機200.1と200.2とから、双方ともに所定のレベル以上の強度で測位信号を受信する状態であるものとする。
【0172】
このとき、図10(b)は、図8に示した構成のおいて、コリレータ410.1〜410.nと、判断部416および屋内測位部434との行う処理を示す。
【0173】
まず、並列に動作するコリレータ410.1〜410.nにおいて、2つの屋内送信機200.1と200.2からのダイバーシチ信号を受信していると判断すると、ステップS128での処理と同様にして、それぞれの屋内送信機からの測位信号について、強度の強い方の信号を選択する。このときも、信号強度は正規化した上で選択してもよい。
【0174】
次に、屋内測位部434は、2つの屋内送信機200.1と200.2からの測位信号により、それぞれ位置を特定する。その上で、2つの屋内送信機200.1と200.2の位置を、強度比で案分した位置に、位置情報提供装置100が存在するものと判断する。すなわち、2つの位置について、信号強度がより強い側の位置に、この案分点がより近く存在することになるように、たとえば、逆比例により案分した位置に位置情報提供装置100が存在するものと判断する。このときも、信号強度は、正規化したものを使用してもよい。
【0175】
以上のような処理により、屋内における信号の安定な受信が確保される。また、屋内においても、数m程度の安定した精度によって位置情報の提供が可能になる。
【0176】
また、地上時刻(屋内送信機200−1等の送信機の時刻)と衛星時刻とは、互いに独立でよく、同期している必要はない。したがって、屋内送信機を製造するためのコストの増加を抑制することができる。また、位置情報提供システムが運用された後も、屋内送信機の時刻を同期させる必要がないため運用も容易になる。
【0177】
各屋内送信機から発信される各々の信号には、当該送信機が設置されている場所を特定するための情報そのものが含まれているため、複数の衛星から発信された各信号に基づいて位置情報を算出する必要がなく、したがって、単一の送信機から発信された信号に基づいて位置情報を短時間で導出することができる。
【0178】
また、単一の屋内送信機から発信された信号を受信することにより、その信号の受信場所の位置が特定できるため、GPSその他の従来の測位システムよりも、位置を提供するためのシステムを容易に実現することができる。
【0179】
この場合、位置情報提供装置100は、屋内送信機200によって発信される信号を受信するための専用のハードウェアを必要とせず、従来の測位システムを実現するハードウェアを用いて、信号処理についてはソフトウェアを変更することで実現可能である。したがって、本実施の形態に係る技術を適用するためのハードウェアをゼロから設計する必要がないため、位置情報提供装置100のコストの増加が抑制され、普及し易くなる。また、たとえば回路規模の増大化あるいは複雑化が防止される位置情報提供装置が提供される。
【0180】
具体的には、位置情報提供装置100のメモリ420は、屋内送信機および/または衛星について予め規定されたPRN−IDを保持している。位置情報提供装置100は、受信した電波が衛星から発信されたものであるか、屋内送信機から発信されたものであるかをそのPRN−IDに基づいて判断するための処理をプログラムに基づいて動作する。このプログラムは、ベースバンドプロセッサのような演算処理装置によって実現される。もっとも、判断のための回路素子を、当該プログラムによって実現される機能を含む回路素子に変更することによっても、位置情報提供装置100が構成され得る。
【0181】
さらに、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、その取得した情報をフラッシュメモリのような不揮発性のメモリ420に保持しておいてもよい。そして、携帯電話の発信が行なわれた際に、メモリ420に保持されたデータを発信先に送信するようにしてもよい。このようにすると、発信元の位置情報、すなわち携帯電話としての位置情報提供装置100が屋内送信機から取得した位置情報が、通話を中継する基地局に送信される。基地局は、その位置情報を受信日時とともに通話記録として保存する。また、発信先が緊急連絡先(たとえば、日本における110番)である場合には、発信元の位置情報がそのまま通知されてもよい。これにより、従来の固定電話からの緊急連絡時における発信元の通知と同様に、移動体からの発信元の通知が実現される。
【0182】
本実施の形態に係る位置情報提供システムは、測位のための信号としてスペクトラム拡散信号を用いる。この信号の送信によれば、周波数あたりの電力を下げることができるため、たとえば、従来のRFタグに比べて、電波の管理が容易になると考えられる。その結果、位置情報提供システムの構築が容易になる。
【0183】
また、屋内送信装置200−1は、設置後において、無線I/F210により、設定パラメータを変更できる。このため、メッセージとして送信する情報のうち、「宣伝広告用のデータ」「交通情報」「気象情報」「災害情報」などをリアルタイムに書き換えて、受信機に提供できるので、さまざまなサービスを実現できる。それのみならず、屋内送信装置200−1は、信号処理を行うためのFPGA245のファームウェア自体を書き換えることが可能である。このため、同一のハードウェアをさまざまな測位システムの通信方式(変調方式等)において使用することが可能である。
【0184】
<実施の形態2>
図11は、本実施の形態2の屋内送信機200´から送信される測位信号について説明するための概念図である。
【0185】
実施の形態2の屋内送信機200´は、2つの送信アンテナTX−ANT1とTX−ANT2について同一のPRNコードを用いて、そのコードの自己相関特性を利用し、信号を選択する方式である。
【0186】
すなわち、2つの送信アンテナTX−ANT1とTX−ANT2からの、それぞれの信号の周波数および送信タイミングの同期性を維持し、一方の送信チャネルのコードピリオドを2チップ以上遅延させる。この遅延量はシステムとして予め規定しておき、固定する必要がある。この制約は送信システム側・受信システム側において共通である必要がある。
【0187】
以下では、この遅延量としては、最低遅延量である2チップ(たとえば、2μs)と設定されているものとして説明する。
【0188】
通常、同一コードの送信が行われると、受信側ではマルチパスフェーディングの様な現象として現れる。しかしながら、受信端末上において、2つの信号が1チップ以上遅延していると、相関器には独立した2つの相関ピークがあらわれる。通常、マルチパスの場合は数nsオーダの遅延量であり、この相関ピークを分離することが困難である。実施の形態2の屋内送信機200´は、この遅延量を2チップ以上とし、この相関ピークを分離可能にする。
【0189】
図12は、実施の形態2の位置情報提供装置100´の構成の概略と動作を説明するための概念図である。
【0190】
図3に示した実施の形態1の位置情報提供装置100の構成と異なる点は、主として以下のとおりである。
【0191】
まず、実施の形態2の位置情報提供装置100´では、追跡制御部414.mが、相関器110.1に比べて相関器110.2において相関処理のために生成される拡散符号のレプリカ信号を、所定の遅延量だけ、遅延させる制御を行う点である。追跡制御部414.mは、その他の拡散符号に対応する相関器のペア(組)についても同様の遅延の処理を行う。
【0192】
さらに、実施の形態2の位置情報提供装置100´では、最初に拡散コードを補足する際には、相関器110.1〜110.nが、それぞれ異なる拡散コードについての捕捉処理を行い、1つの拡散コードを捕捉し同期ループが確立すると、2つの相関器ごとに組みとなって、この組については、同一のPRNコードの追跡・捕捉のために使用される構成となっている点である。たとえば、相関器110.1と110.2とは、同一の拡散コードPRN180についての追跡および捕捉のために使用される。
【0193】
ただし、組となる2つの相関器のうちの一方(相関器110.1)は、他方(相関器110.2)に対して、上述したようにシステムで予め規定された遅延量、たとえば、2チップ分だけ遅延した信号について追跡・同期を行なうように、追跡制御部414.mが、遅延量を設定する。
【0194】
この場合、一方のチャネルの同期ループが確立すると、他方のチャネルに対して、PRNコードと、信号をロックするための同期ループの周波数(拡散符号の同期したレプリカ信号を作成するなどために使用される局部発信器、たとえば、PLL発信器の周波数)の情報が引き渡される。これにより、2つのチャネルの高速同期ができる。
【0195】
その他の点では、実施の形態2の位置情報提供装置100´の構成は、実施の形態1の位置情報提供装置100の構成と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0196】
実施の形態2の屋内送信機200´のハードウェア構成は、FPGA245内の構成を除いては、図4に示した実施の形態1の屋内送信機200−1のハードウェア構成と同様である。
【0197】
図13は、このような実施の形態2において、FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号のC/Aコードのベースバンド信号に対して、その信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245a´の第1の構成例を説明するための機能ブロック図である。
【0198】
図6に示した実施の形態1の変調器245aの構成と異なる点は、第1には、PRNコードレジスタ2462および2464とは、EEPROM243内に格納されている同一のPRNコードを受けて格納する点である。さらに、図6に示した実施の形態1の変調器245aの構成と異なる点は、第2には、上述したような遅延量だけ出力バッファ2470.2に出力される信号を遅延させるための遅延器2467が設けられる構成となっている点である。
【0199】
それ以外の構成については、実施の形態1の変調器245aの構成と同様であるので、説明は繰り返さない。
【0200】
図14は、実施の形態2において、FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号のC/Aコードのベースバンド信号に対して、その信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245a´の第2の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0201】
図14を参照して、図13に示した第1の構成例と異なる点は、PRNコードレジスタ2464と乗算器2454とを省略し、乗算器2452の出力が、遅延器2467へ入力される構成となっている点である。
【0202】
その他の構成は、図13と同様であるので、説明は省略する。
また、実施の形態2の位置情報提供装置100´の構成は、基本的に、図8で説明した実施の形態1の位置情報提供装置100の構成と同様であり、ただ、図12において説明したとおり、追跡制御にあたり、コリレータ410.1〜410.nにおけるレプリカ信号の発生タイミングの制御が異なる。
【0203】
(屋内測位の処理フロー)
図15は、制御部414,判断部416および屋内測位部434の実行する処理を説明するための図であり、実施の形態1の図9に対応する図である。
【0204】
図15を参照して、受信処理が開始されると(ステップS200)、制御部414の制御にしたがって、コリレータ410.1〜410.nが、可能な拡散コード(PRNコード)について相関処理を行うことで、制御部414は、並列的に捕捉および同期処理を行う。たとえば、本実施の形態では、屋内送信機200が、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2から送信する信号に対応する、2つのチャネルCH1およびCH2について、並行的に、かつ非同期で、サーチおよび捕捉処理が行われる(ステップS202,S204)。
【0205】
このようなサーチおよび捕捉処理は、制御部414の制御により、各チャネルのうち、いずれかについて捕捉が完了して同期ループが確立されるまで続行される(ステップS206,S208)。
【0206】
チャネルCH1またはCH2のうち、いずれか一方について、早く同期ループが確立しており、かつ、判断部416が、この一方のチャネルが屋内送信機200からの測位信号であると判断している場合には、制御部414は、他方のチャネルCH2については、この同期が確立したPRNコードと同一のPRNコードについて、可変遅延器409.1〜409.nのうちの対応する遅延器の遅延時間を所定のタイミングだけ遅延するように設定して、サーチと捕捉処理を行う(ステップS210)。すなわち、一方のチャネルで同期ループを確立するのに使用されている拡散コードの受信タイミングの情報とPRNコードの情報を用いて、他方のチャネルの拡散コードについては、これからさらに所定のタイミングだけ受信タイミングだけ時間遅れが生じているものとして追跡・捕捉処理を行う。
【0207】
一方のチャネルの同期ループが確立すると、他方のチャネルに対して、PRNコードと、信号をロックするための同期ループの周波数(拡散符号の同期したレプリカ信号を作成するなどために使用される局部発信器、たとえば、PLL発信器の周波数)の情報も引き渡される。これにより、2つのチャネルの高速同期ができる。また、位置情報提供装置100で、この所定の遅延量を予め記憶しているので、一方のチャネルについて同期捕捉できれば、他方のチャネルについては、早期に同期捕捉が可能となる。
【0208】
続いて、判断部416は、同期が確立したチャネルが屋内送信機200からの測位信号であると判断している場合には、2つのチャネルについて同期が、たとえば、所定時間以内に確立しているか否かを判断する(ステップS212)。
【0209】
その後のステップS214〜S232の処理については、実施の形態1の処理ステップS114〜S132と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0210】
以上のような処理により、屋内における信号の安定な受信が確保される。また、屋内においても、数m程度の安定した精度によって位置情報の提供が可能になる。
【0211】
さらに、その他、実施の形態1と同様の効果が奏されることになる。
<実施の形態3>
図16は、実施の形態3の屋内送信機200´´からの測位信号を受信する位置情報提供装置100´´の受信状態を説明するための概念図である。
【0212】
屋内送信機200´´において、送信アンテナTX−ANT1およびTXANT2は物理的に離れた地点に配置される。その距離は数10cmから1mが好ましい。なお、本実施の形態でも、送信アンテナの本数は、2本に限られるものではなく、より一般には、複数本が設けられていればよい。
【0213】
実施の形態3の屋内送信機200´´では、送信される測位信号の周波数、搬送波のコヒーレント性、PRNコード、コードタイミングなどにおいて同一の信号を2つのアンテナから送信する。ただし、2つのアンテナから送信される信号は、排他的かつ間欠的に送信される。
【0214】
一方、受信システムはこのシステムの特性を享受するためには、たとえば、図8に指名した実施の形態1の位置情報提供装置100と同一のハードウェア構成を有していればよい。ただし、制御部414および判断部416における処理は、後述するような処理を行うことになる。
【0215】
実施の形態3の屋内送信機200´´では、屋内壁面構造物等に電波が反射し、フェーディング現象により通信が安定しないという問題点を、主として、このような送信機側の構成の変更により解決することが可能である。
【0216】
図17は、実施の形態3の屋内送信機200−1´´のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0217】
実施の形態3の屋内送信機200−1´´の構成が、実施の形態2の屋内送信機200´と主として異なる点は以下のとおりである。
【0218】
まず、実施の形態3の屋内送信機200−1´´では、FPGA245から、1つのPRNコードにより拡散処理されたビットストリームが出力されるだけでなく、上述したような「排他的かつ間欠的」な送信を制御するための信号Sigswと信号/Sigswとが出力される構成となっている点である。なお、ここで、信号Sigswと信号/Sigswとは、互いに相補な信号である。
【0219】
さらに、実施の形態3の屋内送信機200−1´´では、SAW256.1から出力された信号は、信号Sigswと信号/Sigswによりそれぞれ制御されるスイッチ回路258.1および258.2により、排他的かつ間欠的に、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2から、それぞれ送信される。
【0220】
それ以外の構成については、実施の形態2の屋内送信機200´の構成と同様であるので、説明は繰り返さない。
【0221】
図18は、図17に示したFPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号のC/Aコードのベースバンド信号に対して、その信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245a´´の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0222】
実施の形態3の変調器245a´´の構成が、図14に示した実施の形態2の変調器245a´の構成と異なるのは、EEPROM243から拡散処理に使用するのとは異なる擬似雑音符号(PNコードと呼ぶ)の初期値を読み出し格納して、順次、時系列にPNコードのビット信号を信号Sigswとして出力するPNコードレジスタ2476と、PNコードレジスタ2476の出力を受け取って、反転して出力するインバータ2478とを備えている点である。
【0223】
PNコードは、拡散処理に使用されるPRNコードの2チップ単位のビットクロックで動作し、これにより送信アンテナへの出力がスイッチされる。このような構成により、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2から同時に測位信号が送信されることはなく、またどのような時間においてもどちらかのアンテナによって信号が送信されることになる。
【0224】
アンテナからの送信を制御する信号/SigSwと信号Sigswとは、同じタイムレシオで反転する交番信号であればよい。ただし、より望ましくは、アンテナからの送信を制御する信号/SigSwと信号Sigswは、上述のようにPNコードにより生成され、このPNコードは、ランダムなコードであるとともに、生成されるビット1,0を、それぞれ−1,1に対応させるとすると、コードの値の積算値の平均は0となるものである。ただし、スイッチ回路258.1および258.2を制御する信号は、拡散処理に使用されるPRNコードとの相互相関性が弱いものが好ましい。PNコードのこのような特性により、送信アンテナTX−ANT1から測位信号が送信される送信頻度と送信アンテナTX−ANT2から測位信号が送信される頻度は等しくなる。
【0225】
変調器245a´´も、FPGA245のファームウェアにより、現行のGPS信号とコンパチブルな信号(L1 C/Aコードとコンパチブルな信号:L1 C/A互換信号)を出力する。すなわち、変調器245aは、送信機の「緯度・経度・高さ」の情報をメッセージとして変調することで、BPSK変調された信号を生成する。
【0226】
なお、スイッチ回路258.1および258.2は、信号Sigswと信号/Sigswが、たとえば、”H”レベルであるときに、SAW256.1からの信号を対応するアンテナTX−ANT1またはTX−ANT2に出力し、”L”レベルであるときには、遮断する。
【0227】
図19は、実施の形態3において、位置情報提供装置100において、積算器412.1〜412.nに積算される信号レベルの経時的な変化を説明するための図である。
【0228】
位置情報提供装置100は、マルチパスフェーディングの影響を受け、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2からの信号を不安定に受信する。図中、濃いラインは送信アンテナTX−ANT1からの信号、薄いラインは送信アンテナTX−ANT2からの信号を意味する。また、ラインの幅は受信信号強度を意味する。空白部分(欠落部分)はフェーディング等により受信不能であったことを意味する。
【0229】
図19の例では、位置情報提供装置100が移動し、受信環境が大幅に変化しており、積算器412.1〜412.nの、いくつかのインテグレーション(積算)の機会では受信不能の場合も想定している。
【0230】
図20は、図19に示した例において、積算器412.1〜412.nの5回のインテグレーションで得られた信号電力の例を示す図である。
【0231】
また、図21は、排他的かつ間欠的に送信信号の出力を交替の周期と、その場合の利点と欠点とをまとめた図である。
【0232】
2つの送信アンテナから送信されてくる測位信号は同一の信号であるので、インテグレーションは、送信アンテナTX−ANT1およびTX−ANT2の信号に区別なく行うことができる。
【0233】
このような構成では、送信されるC/Aコードに対して電力の片寄りが発生しない。図18に示すように、MSGコード生成器2466から乗算器2452を経て生成されるC/Aコードは、2つのアンテナから送信される際の相関性を考慮する必要がある。ここで、MSGコード生成器2466からの信号は、C/Aコードに対して非常に低速であり、相関性の影響も非常に低い。
【0234】
一方、PNコードは、あくまで、2つのアンテナからの送信電力を制御しているに過ぎない。一般に、位置情報提供装置100で受信される信号電力は複数の反射パスの繰り返し周期の複合(位相合成された)結果である。移動すればこのパスの数や電力も変化する。よって、位置情報提供装置100の受信端で現れる電力は周期性とランダム性を含んだ非常に複雑なものになる。このようなランダム性及び周期性に対しても相関が弱くなるように、擬似雑音符号により、スイッチ回路258.1および258.2を制御している。
【0235】
ここで、積算器412.1〜412.nの、インテグレーションの処理は、一般のGPS受信機ですでに行われているものである。よって、実施の形態3のシステムでは、基本的に受信システム側に改修が必要ないというメリットがある。
【0236】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0237】
10 位置情報提供システム、110,111,112 GPS衛星、120,121
,122 送信機、100,100−1,100−2,100−3,100−4 位置情報提供装置、130 ビル、200,200−1,200−2,200−3,1110 屋内送信機、210 無線I/F、220 外部リンク同期ポート、221 外部クロックポート、230 基準クロックI/Oブロック、240 デジタル処理ブロック、241 プロセッサ、242 RAM、243,244 EEPROM、245 FPGA、250 アナログ処理ブロック、TX−ANT1,TX−ANT2 送信アンテナ、RX−ANT 受信アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、
第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナと、
前記ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージ信号を生成するメッセージ生成手段と、
前記ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、前記衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、前記メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を生成する変調手段とを備え、
前記変調手段は、前記受信機の各受信時刻において、前記第1のナビゲーション信号および前記第2のナビゲーション信号のうちいずれか一方を復調対象とするように前記変調処理を実行し、
前記第1のナビゲーション信号および前記第2のナビゲーション信号を、それぞれ前記第1および第2の送信アンテナから送信する送信手段をさらに備える、ナビゲーション信号送信装置。
【請求項2】
前記変調手段は、
前記同一系列の拡散コードのうちの第1のコードを生成するための第1のコード生成手段と、
前記メッセージ信号に対して前記第1のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第1のナビゲーション信号を生成するための第1の拡散処理手段と、
前記同一系列の拡散コードのうちの前記第1のコードとは異なる第2のコードを生成するための第2のコード生成手段と、
前記メッセージ信号に対して前記第2のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第2のナビゲーション信号を生成するための第2の拡散処理手段とを含む、請求項1記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項3】
前記変調手段は、
前記同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するための拡散コード生成手段と、
前記メッセージ信号に対して前記特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第1のナビゲーション信号を生成するための第1の拡散処理手段と、
前記メッセージ信号を所定時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段からの出力に対して前記特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第2のナビゲーション信号を生成するための第2の拡散処理手段とを含む、請求項1記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項4】
前記変調手段は、
前記同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するための拡散コード生成手段と、
前記メッセージ信号に対して前記特定のコードでスペクトラム拡散処理を行うための拡散処理手段とを備え、
前記送信手段は、前記拡散処理手段の出力を、前記第1のナビゲーション信号および前記第2のナビゲーション信号として、前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナのいずれか一方から、順次、排他的に送信させる、請求項1記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項5】
前記位置情報は、少なくとも緯度、経度、高さを表すデータを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項6】
衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置される送信機のナビゲーション信号送信方法であって、
前記ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージ信号を生成するステップと、
前記送信機に予め割り当てられた、前記衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、前記メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を生成するステップとを備え、
前記変調処理は、前記受信機の各受信時刻において、前記第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号のうちいずれか一方を復調対象とする処理であり、
前記第1のナビゲーション信号および前記第2のナビゲーション信号を、それぞれ第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから送信するステップとを備える、ナビゲーション信号送信方法。
【請求項7】
前記第1のナビゲーション信号および前記第2のナビゲーション信号を生成するステップは、
前記同一系列の拡散コードのうちの第1のコードを生成するステップと、
前記メッセージ信号に対して前記第1のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第1のナビゲーション信号を生成するステップと、
前記同一系列の拡散コードのうちの前記第1のコードとは異なる第2のコードを生成するステップと、
前記メッセージ信号に対して前記第2のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第2のナビゲーション信号を生成するステップとを含む、請求項6記載のナビゲーション信号送信方法。
【請求項8】
前記第1のナビゲーション信号および前記第2のナビゲーション信号を生成するステップは、
前記同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するステップと、
前記メッセージ信号に対して前記特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第1のナビゲーション信号を生成するステップと、
前記メッセージ信号を所定時間だけ遅延させるステップと、
前記遅延されたメッセージ信号に対して前記特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第2のナビゲーション信号を生成するステップとを含む、請求項6記載のナビゲーション信号送信方法。
【請求項9】
前記第1のナビゲーション信号および前記第2のナビゲーション信号を生成するステップは、
前記同一系列の拡散コードのうちの特定のコードを生成するステップと、
疑似乱数の系列を発生するステップと、
前記メッセージ信号に対して前記特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第1のナビゲーション信号を生成するステップと、
前記メッセージ信号に対して前記特定のコードでスペクトラム拡散処理を行い、前記第2のナビゲーション信号を生成するステップとを含み、
前記送信するステップは、前記第1のナビゲーション信号および第2のナビゲーション信号を、前記疑似乱数に基づいて、前記第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナのいずれか一方から、順次、排他的に送信させるステップを含む、請求項6記載のナビゲーション信号送信方法。
【請求項10】
前記位置情報は、少なくとも緯度、経度、高さを表すデータを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載のナビゲーション信号送信方法。
【請求項11】
衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能であり、かつ、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置からのスペクトラム拡散信号であってダイバーシティ送信される複数の測位信号を用いて、位置情報を提供する位置情報提供装置であって、
前記スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、
前記測位信号についての前記衛星測位信号と同一系列の複数の拡散コードのパターンを格納する記憶手段と、
並列に設けられ、かつ前記複数の拡散コードのパターンについて共通に並行して相関処理を行い、ダイバーシティ送信された前記複数の測位信号を識別して復調するための復調手段と、
複数の前記測位信号を識別して復調できた場合、識別された前記複数の測位信号のうちのいずれか1つにより前記位置情報を算出する判断手段とを備える、位置情報提供装置。
【請求項12】
前記復調手段は、
同一系列の拡散コードのうちの第1のコードでの相関処理を実行するための第1のコリレータ手段と、
前記同一系列の拡散コードのうちの前記第1のコードとは異なる第2のコードでの相関処理を実行するための第2のコリレータ手段と、
前記第1および第2のコリレータ手段のうち、先に同期ループが確立した方の同期タイミングで他方の同期処理を行うように制御する制御手段とを含む、請求項11記載の位置情報提供装置。
【請求項13】
前記復調手段は、
受信した前記スペクトラム拡散信号を指定された時間だけ遅延させる遅延手段と、
同一系列の拡散コードのうちの第1のコードでの相関処理を実行するための第1のコリレータ手段と、
前記同一系列の拡散コードのうちの第2のコードでの相関処理を実行するための第2のコリレータ手段と、
前記第1および第2のコリレータ手段のうち、先に同期ループが確立した方の拡散コードで、前記遅延手段により所定の時間だけ遅延された信号について、他方の相関処理を行うように制御する制御手段とを含む、請求項11記載の位置情報提供装置。
【請求項14】
前記位置情報は、少なくとも緯度、経度、高さを表すデータを含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の位置情報提供装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図21】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−237386(P2011−237386A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111337(P2010−111337)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(503107484)測位衛星技術株式会社 (15)
【Fターム(参考)】