ナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置
【課題】屋内測位送信機からの測位信号による測位時間の短縮を実現することが可能なナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置を提供する。
【解決手段】情報提供サーバ1230は、携帯電話機1200から送られてくる送信機1210の送信機IDを認識すると、送信機IDに関連付けられているデータベースを参照して、そのIDに関連するSVG地図情報(地図を表示する情報と送信機IDと送信機の当該地図上の位置との対応関係の情報とを含む)を読み出す。情報提供サーバ1230が、SVG地図情報のデータを基地局1240に対して送信すると、基地局1240は、そのSVG地図情報のデータを無線発信する。携帯電話1200は、そのデータの着信を検知すると、携帯電話1200の使用者による閲覧操作に従って、そのデータから、送信機1210の位置を取得することができる。
【解決手段】情報提供サーバ1230は、携帯電話機1200から送られてくる送信機1210の送信機IDを認識すると、送信機IDに関連付けられているデータベースを参照して、そのIDに関連するSVG地図情報(地図を表示する情報と送信機IDと送信機の当該地図上の位置との対応関係の情報とを含む)を読み出す。情報提供サーバ1230が、SVG地図情報のデータを基地局1240に対して送信すると、基地局1240は、そのSVG地図情報のデータを無線発信する。携帯電話1200は、そのデータの着信を検知すると、携帯電話1200の使用者による閲覧操作に従って、そのデータから、送信機1210の位置を取得することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置情報を提供する技術に関し、ナビゲーション信号を送信するナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置に関する。本発明は、より特定的には、測位信号を発信する衛星から発信された信号が届かない環境下においても位置情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の測位システムとしてGPS(Global Positioning System)が知られている。GPSに用いられる信号(以下、「GPS信号」)を発信するための衛星(以下、GPS衛星)は、地上から約2万kmの高度で飛行している。利用者は、GPS衛星から発信された信号を受信し、復調することにより、GPS衛星と利用者との間の距離を計測することができる。したがって、地上とGPS衛星との間に障害がない場合には、GPS衛星から発信された信号を用いた測位が可能である。しかし、たとえば、都市部においてGPSを利用する場合、林立する建物が障害となって、利用者の位置情報提供装置が、GPS衛星から発信された信号を受信できないことが多い。また、建物による信号の回折あるいは反射により、信号を用いた距離の測定に誤差が生じ、結果として、測位の精度が悪化することが多かった。
【0003】
また、壁や屋根を貫通した微弱なGPS信号を室内において受信する技術もあるが、受信状況は不安定であり、測位の精度も低下する。
【0004】
以上、測位についてGPSを例にとって説明したが、上述した現象は衛星を用いた測位システムについて一般的に言えることである。なお、衛星測位システムは、GPSに限られず、たとえば、ロシア共和国におけるGLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、欧州におけるGalileo等のシステムを含むものとする。
【0005】
ここで、位置情報の提供に関する技術は、たとえば、特開2006−67086号公報(特許文献1)に開示されている。
【0006】
しかしながら、特開2006−67086号公報に開示された技術によれば、リーダあるいはライタは、位置情報を提供するシステムに固有のものであり、汎用性にかけるという問題点がある。また、干渉を避けるため、送信出力を抑える必要があり、位置情報を受信可能な範囲が限定され、連続した位置情報の取得ができないほか、広い範囲をカバーするためには極めて多数の送信機が必要となるという問題点があった。
【0007】
また、位置情報の取得あるいは通知に関し、たとえば、固定電話であれば設置場所が予め知られているため、固定電話から発信された電話によって、その発信場所を特定することができる。しかしながら、携帯電話の普及に伴い、移動体通信が一般的になっているため、固定電話のようにして発信者の位置情報を通知することができない場合が増えている。一方、緊急時の通報に関し、携帯電話からの通報に位置情報を含めることについての法整備も進められている。
【0008】
従来の測位機能を有する携帯電話の場合、衛星からの信号を受信できる場所では位置情報が取得されるため、携帯電話の位置を通知することが可能である。しかしながら、屋内、地下街のように電波が受信できない場所においては、従来の測位技術によっては、位置情報を取得できないという問題点があった。
【0009】
そこで、たとえば、GPS信号に類似する信号を発信できる複数の送信機を室内に配置し、GPSと同様の3辺測量による原理に基づき位置を求めるという技術も考えられる(たとえば、特許文献2を参照)。しかしながら、この場合、各送信機の時刻が同期していることが必要になり、送信機が高価になるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に開示された発明では、電波の遮蔽物・反射物の配置が、測位のための受信端末の移動する方向について、一定の配置となっていることを利用して、マルチパス等の影響を軽減しようとする技術である。
【0011】
さらに、特許文献3には、屋内において、送信電力を制御し、かつ、屋内では、上記のような3辺測量ではなく、単に、位置情報をGPS信号と互換なフォーマットで送信することで、屋内での測位におけるシステム構成を簡易化しつつ、かつ、測位の精度を向上させるための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−67086号公報
【特許文献2】特開2000−180527号公報
【特許文献3】特開2007−278756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、一般には、屋内での位置情報を提供するためには、単に、屋内送信機から受信機の位置(または、特許文献3に記載の技術では、屋内送信機の位置)を特定できるだけでは、不十分であり、当該屋内についての地図も、受信機側で記憶しておくことが必要になる。
【0014】
一方で、地図をスケーラブルに表示可能な技術として、SVG(Scalable Vector Graphics)技術が知られている。SVG技術を用いた地図としては、たとえば、日本の市街地の地図については、国土地理院からも情報が開示されている。SVG技術は、以下のような特徴がある。
1)SVGは、W3CやOMA等のグローバルな標準化団体において国際標準化が行われている「オープン・スタンダード」なフォーマットである。
2)デバイスやプラットフォームに依存しないサービスの実現や、データの継続的な利用が担保される。
3)SVGは「意味情報を持ったXMLデータ」であり、コンテンツの組合わせに際し、利用者側のコンテクストに即しクライアント側で表示内容の動的制御が可能である。
4)SVGはベクター形式の画像フォーマットであり、地図画像の高品質な拡大/縮小/回転が可能である。
【0015】
そして、SVGのようなスケーラブルな地図情報であって、相互に参照可能な地図情報を用いて、複数の地理情報サーバを連携して地図の表示を行う技術としては、たとえば、特許第3503397号公報などに開示がある。
【0016】
ただし、屋内における地図として、上述したSVGのように、スケーラブルな地図データを使用した場合に、このような屋内地図と屋内送信機との配置の情報を適切に受信機側で処理できなければ、現在位置の表示が遅れてしまう等の問題が生じてしまう。
【0017】
さらに、屋内での測位を行っている状態から屋外での測位の状態への遷移した場合には、屋外における測位のために必要な情報、たとえば、測位衛星の軌道情報などについて、最新の情報を受信機側で保持していない場合には、やはり、現在位置の表示が遅れてしまう等の問題が生じてしまう。
【0018】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、屋内測位送信機からの測位信号による測位時間の短縮を実現することが可能なナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置を提供することである。
【0019】
この発明の他の目的は、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度の向上と測位時間の短縮を実現することが可能なナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明の1つの局面に従うと、 複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上の施設内に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、送信アンテナと 施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置のうち、ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報と、施設内の地図情報を取得するための外部機器のネットワーク上での位置を特定するための資源識別情報とを記憶するための記憶装置と、ナビゲーション信号に含まれる識別情報と資源識別情報のメッセージ信号を生成するメッセージ生成手段と、ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、ナビゲーション信号を生成する変調手段と、ナビゲーション信号を、送信アンテナから送信する送信手段をさらに備える。
【0021】
好ましくは、ナビゲーション信号の信号フォーマットは、衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである。
【0022】
好ましくは、メッセージ生成手段は、衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである複数の信号フォーマットのうち、信号の繰り返し周期がもっとも短い信号フォーマットで、識別情報を含むメッセージ信号を生成する。
【0023】
この発明の他の局面に従うと、複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能であり、かつ、地上の施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置からのスペクトラム拡散信号であって、施設内において当該ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報を各々含む複数のナビゲーション信号を用いて、位置情報を提供する位置情報提供装置であって、スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、ネットワーク上の外部機器と通信するための通信手段と、ナビゲーション信号についての衛星測位信号と同一系列の複数の拡散コードのパターンを格納する記憶手段と、並列に設けられ、かつ複数の拡散コードのパターンについて並行して相関処理を行い、複数のナビゲーション信号を識別して復調するための復調手段と、ナビゲーション信号を識別して復調できた場合、所定のナビゲーション信号送信装置からのナビゲーション信号から外部機器のネットワーク上の位置を特定するための資源識別情報を取得するとともに、識別された複数のナビゲーション信号のうちのいずれか1つにより識別情報を抽出する抽出手段と、通信手段により、資源識別情報に基づいて、外部機器から、施設内の地図を表示するための地図情報および施設内のナビゲーション信号送信装置の位置と識別情報との対応関係を示す対応情報とを取得し、施設内の地図において識別情報を受信したナビゲーション信号送信装置の位置を示す地図画像を表示するための画像信号を生成する地図描画処理手段とを備える。
【0024】
好ましくは、ナビゲーション信号の信号フォーマットは、衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである。
【0025】
好ましくは、地図情報は、SVG(Scalable Vector Graphics)形式のデータであり、対応情報は、SVG形式のデータとして記述される。
【0026】
好ましくは、対応情報は、地図情報内に含まれる複数のナビゲーション信号送信装置の位置と複数の識別情報との対応関係とを一括して含み、
復調手段は、対応情報に基づいて、選択される拡散コードを用いて相関処理を実行する。
【0027】
好ましくは、抽出手段は、地図情報を外部機器から取得する際に、測位衛星についての衛星軌道データを併せて外部機器から取得し、位置情報提供装置は、複数の測位衛星からの衛星測位信号を受信して測位する際に、外部機器から取得した衛星軌道データを使用して、測位を実行する屋外測位手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0028】
この発明のナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置によれば、受信機側において、屋内測位送信機からの測位信号による測位時間の短縮可能である。
【0029】
また、この発明のナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置によれば、受信機側において、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度の向上と測位時間の短縮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】位置情報提供システム10の構成を表わす図である。
【図2】屋内送信機200のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】屋内送信機200が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。
【図4】FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号の搬送波のL1帯(1575.42MHz)に乗せられる測位用の信号であるC/A(Coarse and Acquisition)コードのベースバンド信号、または、新しい測位衛星システム(たとえば、日本の準天頂衛星システム)のL1帯で使用される測位用の信号であるL1Cコードのベースバンド信号に対して、それぞれの信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245aの構成を説明するための機能ブロック図である。
【図5】L1 C/Aコードの信号と、L1Cコードの信号のスペクトル強度分布を示す図である。
【図6】FPGA245のファームウェアをL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245bの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】FPGA245のファームウェアをL1Cコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245cの構成を示す機能ブロック図である。
【図8】GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号500の構成を表わす図である。
【図9】L1C互換信号の第1の構成を表わす図である。
【図10】L1C互換信号の第2の構成を表わす図である。
【図11】3ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図12】4ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図13】ショートIDを含むL1C/A信号3200のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図14】ミディアムIDを含むL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図15】ワード数に応じて構成されるフレーム構成を表わす図である。
【図16】ショートIDと、位置情報とを含むフレーム3500を概念的に表わす図である。
【図17】位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図18】本実施の形態に係る位置情報提供装置100の使用態様を表わす図である。
【図19】SVG地図情報のデータ(SVGコンテナ)と、当該SVG地図情報のデータで表示される地図画像とを対比して示す図である。
【図20】位置情報提供装置100のベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
【図21】図20の屋内測位処理(S630)において、送信機ID(SID)とサーバからのSVG地図情報データとに基づいて、位置情報の提示を行う場合の処理を概念的に示す図である。
【図22】屋内送信機からの当該屋内送信機の識別子とサーバからのSVG地図情報データとに基づいた、屋内測位の処理と、SVG地図情報データと併せて受信する軌道情報を用いた屋外測位処理とを概念的に示す図である。
【図23】実施の形態2の位置情報提供装置100における屋内測位処理(図20のステップS630)の処理を説明するための第1のフローチャートである。
【図24】図23における測位処理を説明するためのフローチャートである。
【図25】図24におけるベースバンドプロセッサ412の動作(GPS衛星からの測位モジュールへの測位リクエスト)の処理のフローを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供システム10について説明する。図1は、位置情報提供システム10の構成を表わす図である。位置情報提供システム10は、地上の上空約2万kmの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「測位信号」と表わす。)を発信するGPS衛星110,111,112,113と、位置情報を提供する装置として機能する位置情報提供装置100−1〜100−4とを備える。位置情報提供装置100−1〜100−4を総称するときは、位置情報提供装置100と表わす。位置情報提供装置100は、たとえば、携帯電話、カーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、ハードウェアの構成としては、従来の測位装置を有する端末と同様の構成を有するが、ファームウェアその他のソフトウェアを変更することにより、本発明の実施の形態に係る位置情報提供装置100が、屋内でも測位可能な端末装置として、実現される。
【0033】
ここで、測位信号は、いわゆるスペクトラム拡散された信号であり、たとえば、いわゆるGPS信号である。しかしながら、その信号はGPS信号に限られない。なお、以下では説明を簡単にするために、測位のシステムをGPSを一例として説明するが、本発明は、他の衛星測位システム(たとえば、Galileo、準天頂衛星システムQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等)にも適用可能である。
【0034】
測位信号の中心周波数は、たとえば、1575.42MHzである。測位信号の拡散周波数は、たとえば1.023MHzである。この場合、測位信号の周波数は、既存のGPSのL1帯におけるC/A(Coarse and Acquisition)信号またはL1C信号の周波数と同一となる。したがって、既存の測位信号受信回路(たとえばGPS信号受信回路)のフロントエンドが流用できるため、位置情報提供装置100は、新たなハードウェアの回路を追加することなく、フロントエンドからの信号処理を行うソフトウェアを変更するのみで、測位信号を受信することができる。
【0035】
他の局面において、測位信号は、1.023MHzの矩形波によって変調されていてもよい。この場合、たとえば、L1帯において新たな送信が計画される測位信号のデータチャネルと同一であれば、利用者は、新しいGPSの信号を受信、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。なお、矩形波の周波数は、1.023MHzが好ましい。変調のための周波数は、既存のC/A信号、および/または、他の信号との干渉を回避するためのスペクトラム分離とのトレードオフによって定められ得る。なお、変調の態様はこれに限られない。
【0036】
GPS衛星110には、測位信号を発信する送信機120が搭載されている。GPS衛星111,112,113にも、同様の送信機121,122,123がそれぞれ搭載されている。
【0037】
位置情報提供装置100−1と同様の機能を有する位置情報提供装置100−2,100−3,100−4は、以下に説明するように、ビル130その他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。すなわち、ビル130の1階の天井には、屋内送信機200−1が取り付けられている。位置情報提供装置100−4は、屋内送信機200−1から発信される測位信号を受信する。同様に、ビル130の2階および3階の各フロアの天井にも、それぞれ屋内送信機200−2,200−3が取り付けられている。ここで、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星110,111,112,113の時刻(以下、「衛星時刻」という。)とは、互いに独立したものでよく、必ずしも同期している必要はない。ただし、各衛星時刻は、それぞれ同期している必要がある。したがって、各衛星時刻は、各衛星に搭載された原子時計により制御されている。また、必要に応じて、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻である地上時刻も、相互に同期していることが好ましい。
【0038】
もっとも、本発明では、屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻と、衛星時刻との同期を比較的簡単な装置構成でとることが可能なため、システムの構成として、衛星時刻と地上時刻とを同期させる必要がある場合には、このような同期に対応することが可能である。
【0039】
GPS衛星の各送信機から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって航法メッセージを変調することにより生成される。航法メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データ等を含む。各送信機120〜123は、さらに、それぞれ、当該送信機120〜123自身、あるいは送信機120〜123が搭載される各GPS衛星を識別するためのデータ(たとえば、PRN−ID(Identification))を保持している。
【0040】
位置情報提供装置100は、各擬似雑音符号を発生するためのデータおよびコード発生器を有している。位置情報提供装置100は、測位信号を受信すると、各衛星の送信機または各屋内送信機ごとに割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、後述する復調処理を実行し、受信された信号がどの衛星またはどの屋内送信機から発信されたものであるかを特定することができる。また、測位信号の1つであるL1C信号には、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉・追尾を防ぐことができる。
【0041】
[GPS衛星に搭載される送信機]
GPS衛星に搭載される送信機の構成については、周知であるので、以下では、GPS衛星に搭載される送信機の構成の概略について説明する。送信機120,121,122,123は、それぞれ、原子時計と、データを格納する記憶装置と、発振回路と、測位信号を生成するための処理回路と、処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナ等を有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データ等を有する航法メッセージとを格納している。各送信機がL1C/A信号を送信する場合、処理回路は、PRN−IDとなり得る符号パターンによって測位信号を生成する。したがって、受信した測位信号の符号パターンが特定されれば、その測位信号を送信した送信機が識別される。
【0042】
一方、各送信機がL1C信号を送信する場合、記憶装置は、PRN−IDを格納している。この場合、処理回路は、PRN−IDを含む測位信号を生成する。したがって、L1C信号として生成された測位信号が受信されると、その測位信号からPRN−IDが取得される。
【0043】
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
【0044】
ここで、各送信機120〜123毎に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機ごと(すなわちGPS衛星ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散する。送信機120〜123の各々は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して、宇宙空間に発信する。
【0045】
上述のように、送信機120〜123は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで、「有害な干渉をおこさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、たとえばL1帯と称される搬送波によって送信されている。各送信機120,121,122,123は、たとえば、同一の周波数を有する測位信号を拡散スペクトル通信方式にしたがって発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が、同一の位置情報提供装置100−1に受信される場合にも、各々の測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。
【0046】
なお、地上の屋内送信機からの測位信号についても、衛星から送信された信号と同様に、複数の屋内送信機からの信号は、互いに混信を受けることなく受信されることができる。
【0047】
[屋内送信機200のハードウェア構成]
図2を参照して、屋内送信機200について説明する。図2は、屋内送信機200のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、屋内送信機200は、屋内送信機200−1,200−2,200−3の総称である。
【0048】
屋内送信機200は、無線インタフェース(以下、「無線I/F」と称す)210と、デジタル処理ブロック240と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されて、各回路部分の動作のための基準クロックを供給するための基準クロック入出力ブロック(以下、「基準クロックI/Oブロック」と称す)230と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されているアナログ処理ブロック250と、アナログ処理ブロック250に電気的に接続されて、測位のための信号を送出するアンテナ(図示せず)と、屋内送信機200の各部への電源電位の供給を行うための電源(図示せず)とを備える。
【0049】
なお、電源は、屋内送信機200に内蔵されてもよいし、外部からの電力の供給を受け付ける態様であってもよい。
【0050】
[無線通信インタフェース]
無線I/F210は、無線通信のインタフェースであり、近距離無線通信、たとえば、ブルートゥース(Bluetooth)などや、PHS(Personal Handy-phone System)や携帯電話網のような無線通信により、外部からのコマンドを受信したり、外部との間で設定パラメータやプログラム(ファームウェア等)のデータを受信したり、あるいは、必要に応じて外部にデータを送信するためのものである。
【0051】
このような無線I/F210を備えることにより、屋内送信機200については、屋内の天井等に設置した後であっても、設定パラメータ、たとえば、屋内送信機200が送信する位置データ(屋内送信機200が設置されている場所を表わすデータ)を変更したり、あるいは、ファームウェアの変更により、異なる通信方式への対応を可能としたりすることができる。
【0052】
なお、無線I/F210を介した屋内送信機200へのアクセスは、IDおよびパスワードによって保護されていることが好ましい。このようにすると、屋内送信機200の管理者以外の第三者によるデータあるいはプログラムの改変を防止することができる。
【0053】
なお、本実施例では、無線でのインタフェースを想定しているが、設置場所への配線の敷設や設置の手間等を考慮しても、有線インタフェースとすることができる場合には、有線とすることも可能である。
【0054】
また、通信は、公衆回線、LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)シリアル配信等により実現されるが、特に限定されない。
【0055】
[デジタル処理ブロック]
デジタル処理ブロック240は、無線I/F210からのコマンドに応じて、あるいは、プログラムに従って、屋内送信機200の動作を制御するプロセッサ241と、プロセッサ241に搭載され、プロセッサ241の実行するプログラムを記憶するRAM(Random Access Memory)242と、無線I/F210からのデータのうち、設定パラメータ等を記憶するためのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)243と、プロセッサ241の制御のもとに、屋内送信機200の送
出するベースバンド信号を生成するフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:以下、「FPGA」と称す)245と、無線I/F210からのデータのうち、FPGA245のファームウェアを記憶するためのEEPROM244と、FPGA245から出力されるベースバンド信号をアナログ信号に変更してアナログブロック250に与えるデジタル/アナログコンバータ(以下、「D/Aコンバータ」と称す)247とを含む。
【0056】
すなわち、デジタル処理ブロック240は、測位のための信号として屋内送信機200によって送信される信号の源泉となるデータを生成する。デジタル処理ブロック240は、アナログ処理ブロック250に対して、生成したデータをビットストリームとして送出する。
【0057】
特に限定されないが、たとえば、EEPROM244に格納されているファームウェアプログラムは、FPGA245に電源が投入されると、FPGA245にロードされる。このファームウェアプログラム情報(ビットストリームデータ)は、FPGA245内のSRAM(Static Random Access Memory)246で構成されているコンフィグレーションメモリにロードされる。ロードされたビットストリームデータの個々のビットデータがFPGA245上で実現する回路の情報元となり、FPGA245に装備されているリソースをカスタマイズしてファームウェアプログラムで特定される回路を実現する。FPGA245では、このようにハードウェアに依存せず、コンフィグレーションデータを外部に持つことで、高い汎用性とフレキシビリティを実現できることになる。
【0058】
また、プロセッサ241は、無線I/F210から受け取る外部コマンドに応じて、EEPROM243に格納されるデータに基づいて、FPGA245のSRAM246(レジスタ)に、当該屋内送信機200に設定されるパラメータとして、以下のものを格納させる。
【0059】
1)擬似雑音符号(PRNコード)
2)送信機ID
3)送信機座標
4)メッセージ(これは、FPGA245内で衛星からの航法メッセージと同一のフォーマットに整形される)
5)デジタルフィルタの選択パラメータ
6)屋内送信機200の設置場所に応じて、SVGにより表現された屋内地図情報(SVG地図情報)を供給するウェブサーバのURL(Uniform Resource Locator:統一資源位置指定子)
ここで、このようなURL情報を格納するのは、屋内送信機200が設置される建物等の施設への屋外からの入り口付近の屋内送信機のみとしてもよい。
【0060】
なお、ここで、ウェブサーバ上で上記SVG地図情報の存在する位置を特定するための情報は、より一般的には、URI(Uniform Resource Identifier:統一資源識別子)であってよい。以下、上記URIを単に「資源識別情報」とも呼ぶ。ただし、説明の簡単のため、この資源識別情報は、以下、URL情報であるものとして説明を行う。
【0061】
なお、後に説明するように、FPGA245内には、たとえば、1MHz、2MHz、4MHz(中心周波数:1575.42MHz)についてのバンドパスフィルタが予めプログラムされており、「デジタルフィルタの選択パラメータ」とは、このいずれのバンドパスフィルタを選択するかのパラメータである。
【0062】
なお、プロセッサ241の動作のためのプログラムも、EEPROM243に予め格納されており、当該プログラムは、屋内送信機200が起動する時に、EEPROM243から読み出され、RAM242に転送される。
【0063】
なお、プログラムあるいはデータを格納するための記憶装置は、EEPROM243または244に限られない。少なくとも、データを不揮発的に保存できる記憶装置であればよい。また、後述するように、外部からのデータが入力される場合には、データを書き込むことができる記憶装置であればよい。EEPROM243に格納されるデータのデータ構造については後述する。
【0064】
(アナログ処理ブロック)
アナログ処理ブロック250は、デジタル処理ブロック240から出力されたビットストリームを用いて、1.57542GHzの搬送波に変調して送信信号を生成し、アンテナに送出する。その信号は、アンテナより発信される。
【0065】
すなわち、デジタル処理ブロック240のD/Aコンバータ247から出力された信号は、アップコンバータ252でアップコンバートされ、バンドパスフィルタ(BPF)253をアンプ254を通過して所定の周波数帯域の信号のみが増幅された後、再度、アップコンバータ255でアップコンバートされて、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタにより所定の帯域の信号が取り出された後に、可変アッテネータ257およびRFスイッチ258により、設定された強度の信号に変換されて、アンテナから送出される。
【0066】
なお、信号生成の態様は上述のものに限られない。たとえば、上記の例では、2段階の変調が行なわれる例が示されているが、1段階の変調が用いられてもよく、あるいは、信号変換が直接行なわれるものであってもよい。
【0067】
なお、アップコンバータ252およびアップコンバータ255で使用されるクロックは、基準クロックI/Oブロック230からFPGA245に供給されるクロックが、さらに、てい倍器251において、てい倍されたものが使用される。
【0068】
また、可変アッテネータ257とRFスイッチ258のレベルの設定は、FPGA245をスルーしたプロセッサ241からの制御信号により制御される。信号強度の変更は、可変アッテネータ257によって行なわれる。可変アッテネータ257もRFスイッチ258も、後に説明する「IQ変調振幅の個別可変機能」の一部として動作する。
【0069】
このようにして、衛星からの測位のための信号と同様の構成(同一の信号フォーマット)を有する信号が、屋内送信機200から発信される。この場合、信号の内容は、衛星から発信された測位信号に含まれる内容とは、全く同一ではないものの、両者の信号は、受信機側からみれば相互にコンパチブルであるといえる。屋内送信機200から発信される信号の構成の一例は、後述する(図8)。
【0070】
以上の説明においては、デジタル処理ブロック240におけるデジタル信号処理を実現するための演算処理装置としてFPGA245が用いられたが、ソフトウェアにより無線装置の変調機能を変更可能な装置であれば、その他の演算処理装置が使用されてもよい。
【0071】
また、図2においては、クロック信号(Clk)がデジタル処理ブロック240からアナログ処理ブロック250に供給されているが、基準クロックI/Oブロック230からアナログ処理ブロック250に直接に供給されてもよい。
【0072】
さらに、説明を明確にするために、本実施の形態においては、デジタル処理ブロック240とアナログ処理ブロック250とが別個に示されているが、物理的には、1つのチップに混載されてもよい。
【0073】
(基準クロックI/Oブロック)
基準クロックI/Oブロック230は、デジタル処理ブロック240の動作を規定するクロック信号、あるいは搬送波を生成するためのクロック信号を、デジタル処理ブロック240に供給する。
【0074】
基準クロックI/Oブロック230は、「外部同期モード」では、外部同期リンクポート220へ外部のクロック生成器から与えられる同期用信号に基づいて、ドライバ234がクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。この「外部同期モード」での動作については、後にさらに詳しく説明する。
【0075】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「外部クロックモード」では、外部クロックポート220へ与えられる外部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL(Phase Locked Loop)回路233から出力されるクロック信号と外部クロックとの
同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0076】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「内部クロックモード」では、内部クロック生成器231が生成する内部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL回路233から出力されるクロック信号と内部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0077】
なお、無線I/F210から、プロセッサ241により出力される信号により、送信機の内部状態(たとえば、「PLL制御」信号)を監視することができる。あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200から発信される信号を拡散変調するための擬似雑音符号の符号パターンの入力を、あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200から発信されるべき他のデータの入力も受け付けることができる。当該他のデータは、たとえば、屋内送信機200が設置されている場所を表わすテキストデータ(位置データ)である。あるいは、屋内送信機200がデパートその他の商業施設に設置されている場合には、宣伝広告用のデータが、当該他のデータとして屋内送信機200に入力可能である。
【0078】
擬似雑音符号(PRNコード)の符号パターンは、屋内送信機200に入力されると、EEPROM243において予め規定された領域に書き込まれる。その後は、その書き込まれたPRN−IDが、測位のための信号に含められる。その他のデータも、EEPROM243において、そのデータの種類に応じて予め確保された領域に書き込まれる。
【0079】
[EEPROM243に格納されるデータのデータ構造]
図3を参照して、屋内送信機200のEEPROM243に格納されるデータのデータ構造について説明する。
【0080】
図3は、屋内送信機200が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。EEPROM243は、データを格納するための領域300〜350を含む。
【0081】
領域300には、送信機を識別するための番号として、送信機IDが格納されている。送信機IDは、たとえば当該送信機の製造時にあるいは設置時にメモリに不揮発的に書き込まれる数字および/または英文字その他の組み合わせである。あるいは、他の局面において、送信機IDは、一意なIDとして、当該送信機が設置されている位置(地理的位置情報、住所その他の人為的に定められた位置情報など)に関連付けられている。
【0082】
当該送信機に割り当てられた擬似雑音符号のPRN-IDは、領域310に格納されて
いる。送信機の名称は、テキストデータとして、領域320に格納されている。
【0083】
当該送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域330に格納されている。擬似雑音符号の符号パターンは、衛星用の擬似雑音符号と同一の系列に属する符号パターンのうちから、本発明の実施の形態に係る位置情報提供システム用に予め割り当てられた有限個の複数の符号パターンのうちから選択されたものであり、衛星ごとに割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンとは異なる符号パターンである。
【0084】
本位置情報提供システム用に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンは、有限個であるが、屋内送信機の数は、各送信機の設置場所の広さ、あるいは設置場所の構成(ビルの階数等)に応じて異なり、符号パターンの数よりも多い複数の屋内送信機が使用される場合もある。したがって、同一の擬似雑音符号の符号パターンを有する複数の送信機が存在し得る。この場合は、同一の符号パターンを有する送信機の設置場所を、信号の出力を考慮して決定すればよい。そうすることにより、同一の擬似雑音符号の符号パターンを用いる複数の測位信号が同一の位置情報提供装置によって同時期に受信されることは、防止し得る。
【0085】
屋内送信機200が設置されている場所を特定するための位置データは、領域340に格納されている。位置データは、たとえば、緯度、経度、高度の組み合わせとして表わされる。領域340において、当該位置データに加えて、もしくは位置データに代えて、住所、建物の名称などが格納されてもよい。本発明では、「緯度、経度、高度の組み合わせ」、「識別子」、「住所、建物の名称」、「緯度、経度、高度の組み合わせと識別子と住所、建物の名称」のように、そのデータのみで送信機200−1の設置場所を特定可能なデータを総称して「位置特定データ」と呼ぶ。
【0086】
また、領域342には、後に詳しく説明するように、SVG地図情報を供給するウェブサーバ(情報提供サーバ)のURL情報が格納されている。
【0087】
さらに、領域350には、フィルタ選択のためのフィルタ選択パラメータが格納される。特に限定されないが、たとえば、フィルタ選択パラメータ「0」「1」「2」にそれぞれ対応して、バンドパスフィルタの帯域幅として、それぞれ「1MHz」「2MHz」「4MHz」が選択されるものとする。
【0088】
ここで、前述のように、PRN−ID、通信機名称、擬似雑音符号の符号パターン、位置特定データ、URL情報、フィルタ選択パラメータは、無線インタフェース210を介して入力される他のデータに変更可能である。
【0089】
[FPGA245の構成]
以下では、図2に示したFPGA245により実現される回路について説明する。
【0090】
まず、図4は、FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号の搬送波のL1帯(1575.42MHz)に乗せられる測位用の信号であるC/A(Coarse and Acquisition)コードのベースバンド信号、または、新しい測位衛星システム(たとえば、日本の準天頂衛星システム)のL1帯で使用される測位用の信号であるL1Cコードのベースバンド信号に対して、それぞれの信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245aの構成を説明するための機能ブロック図である。
【0091】
ここで、たとえば、C/Aコードに対しては、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調が行われ、L1Cコードに対しては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調が行われるものとする。なお、以下の説明で明らかになるように、デジタル値をアナログ信号に変換する変調方式としては、BPSK変調やQPSK変調に限られず、FPGA245で実現できる他の方式でもよい。
【0092】
ここで、図4に示した構成では、基本的には、QPSK変調器の構成となっているものの、I相に乗せる信号とQ相に乗せる信号とを同一の信号とすれば、結果として、BPSK変調と等価となることを利用して、BPSK変調とQPSK変調の双方を実現できる回路構成としている。ただし、変調器245aが実現する変調方式に従って、各方式で独立な回路をプログラムしてもよい。
【0093】
図4を参照して、変調器245aは、EEPROM243内に格納されているPRNコードを受けて格納するPRNコードレジスタ2462および2464と、後に説明するようなメッセージデータ生成装置245bまたはメッセージデータ生成装置245cからのC/AコードまたはL1Cコードの信号フォーマットに従ったメッセージデータを受けて格納するメッセージコードレジスタ2466および2468とを備える。
【0094】
ここで、PRNコードレジスタ2462および2464には、外部からEEPROM243内に設定されたPRNコードが入力されるとともに、上述したように、BPSK変調では、メッセージコードレジスタ2466および2468ならびにPRNコードレジスタ2462,2464のそれぞれに同一のデータが格納される。一方、QPSK変調の場合には、メッセージコードレジスタ2466および2468ならびにPRNコードレジスタ2462,2464には、それぞれ、I相用のデータとQ相用のデータの異なるデータが格納される。
【0095】
変調器245aは、さらに、PRNコードレジスタ2462から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2466から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2452と、PRNコードレジスタ2464から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2468から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2454と、プロセッサ241からのレベルコントロール信号LVC1により制御され、乗算器2452から入力された信号の強度を変更するレベルコントロール回路2456と、プロセッサ241からのレベルコントロール信号LVC2により制御され、乗算器2454から入力された信号の強度を変更するレベルコントロール回路2458と、レベルコントロール回路2456からの出力に対してフィルタ選択パラメータにより選択される帯域幅のバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2460と、レベルコントロール回路2458からの出力に対してフィルタ選択パラメータにより選択される帯域幅のバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2462とを備える。
【0096】
変調器245aは、さらに、基準クロックI/Oブロック230からのクロック信号に基づいて、信号フォーマットに従った変調基準クロックを生成するクロック回路2472と、クロック回路2472からの信号に同期して、予め設定されたサイン波およびコサイン波に対応するデータをそれぞれI相用変調信号とQ相用変調信号として出力するルックアップテーブル2474と、ルックアップテーブル2574から出力されたサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2460からの信号とを乗算する乗算器2464と、ルックアップテーブル2574から出力されたコサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2462からの信号とを乗算する乗算器2466と、乗算器2464および2466からの信号を加算する加算器2468と、加算器2368からの出力をバッファリングしてD/Aコンバータ247に出力するための出力バッファ2470とを備える。
【0097】
以上のような変調器245aからD/Aコンバータ247へ出力される信号に含まれるデータについては、以下のようになる。
【0098】
[現行GPS信号とコンパチブルな信号を出力する場合]
FPGA245のファームウェアにより、現行のGPS信号とコンパチブルな信号(L1 C/Aコードとコンパチブルな信号:L1 C/A互換信号)を出力する回路構成とした場合には、変調器245aは、Q相信号、I相信号とも、送信機の「緯度・経度・高さ」の情報をメッセージとして変調することで、BPSK変調された信号を生成する。ここで、「コンパチブルな信号」とは、共通の信号フォーマットを有するために受信機としてはフロントエンド部を共通にして受信可能な信号を意味する。
【0099】
[L1C信号とコンパチブルな信号を出力する場合:L1C互換信号]
次に、FPGA245のファームウェアにより、L1C信号とコンパチブルな信号を出力する回路構成とする場合について、以下説明する。
【0100】
まず、前提として、衛星からのL1C信号について簡単に説明する。
衛星からのL1C信号は、上述のとおり、QPSK変調されており、Q相の信号には、受信機の捕捉用のパイロット信号が変調されて乗っている。Q相の信号は、I相の信号よりも3dBレベルが高い。一方、I相の信号には、航法メッセージ等が乗っている。
【0101】
なお、ここで、Q相の信号に捕捉用のパイロット信号がのっているのは、以下のような理由による。
【0102】
すなわち、現行のGPS信号のC/Aコードは、1023チップの信号で1msec周期であり、20周期について、同じ信号が続くので、インテグレーションでS/Nを上げることができるのに対して、L1C信号は、10230チップで10msec周期であるため、同じ信号が1周期しかないので、インテグレーションでS/Nを上げるということができない。そのため、衛星からの信号のQ相信号を捕捉用として用いることが必要となる。
【0103】
これに対して、屋内送信機200からのL1C信号にコンパチブルな信号については、Q相信号には、送信機IDを乗せることができる。屋内送信機200によって発信される信号の強度が、GPS衛星から送信される信号の強度よりも強いため、捕捉用の信号が必要ないからである。これは、GPS衛星からの信号は地上に伝播する時点では微弱になっているため捕捉用の信号が必要である一方、屋内送信機の場合は、マルチパスあるいは不安定な伝播を防ぐために信号強度を高める必要がある、という事情に基づく。一方、I相の信号には、位置特定データ、たとえば、緯度・経度・高さのデータが乗せられる。
【0104】
図5は、L1 C/Aコードの信号と、L1Cコードの信号のスペクトル強度分布を示す図である。なお、図5においては、L1帯で、C/Aコードとともに衛星から送信される軍事用のコードであるPコードと、L1C信号とともに衛星から送信される主として軍事用途であるMコードの信号についても、スペクトル強度を合わせて示している。
【0105】
図5に示すように、C/Aコードについては、中心周波数1575.42MHzにメインのピークとその周りにサイドローブの信号が存在する。一方、L1Cコードは、C/Aコードとの干渉を抑えるために、中心周波数1575.42MHzにはヌル点が存在し、その両側にメインピークが2つあり、さらにその外側にサイドローブの信号が存在する。
【0106】
このため、C/Aコードについては、1MHz帯域幅のバンドパスフィルタにより、メインピークのみを取り出すことができ、L1Cコードは、2MHz帯域幅のバンドパスフィルタにより、メインピークのみを取り出すことができる。
【0107】
上述のとおり、屋内送信機200から送信される信号が受信される地点での当該信号の強度は、GPS衛星から送信された信号が地上で受信される場合の信号強度に比べて大きいので、これにより目的の周波数成分のみを送信することとなり、他の信号との干渉を抑制することが可能となる。
【0108】
[メッセージデータ生成装置245b]
図6は、FPGA245のファームウェアをL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245bの構成を示す機能ブロック図である。
【0109】
以下に説明するとおり、メッセージデータ生成装置245bは、L1帯のC/Aコード内の航法メッセージに相当する部分に、外部から与えられた位置特定データ等を信号フォーマットに従って、乗せる処理を行うものである。
【0110】
メッセージデータ生成装置245bは、プロセッサ241からのコマンド2480を受付けるコマンドインタフェース2482と、コマンドインタフェース2482から与えられるコマンドに基づいて、L1帯のC/Aコード内のTOW(Time Of Week)の情報を読み取るTOWコマンド解釈器2484と、TOWコマンド以外のコマンドの内容を読み取るコマンド解釈器2488と、TOWコマンド解釈器2484からの信号をもとに、TOW情報を生成するTOW生成器2486と、TOW生成器2486からのTOW情報とコマンド解釈器2488からのメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2490とを備える。
【0111】
メッセージバンク2490は、TOW情報を格納するための各30ビットの容量のバンク01および02と、メッセージ情報を格納するための各30ビットの容量のバンク03〜10とを備える。各バンク01〜10は、それぞれ24ビット分の情報を格納する領域2490aを有するとともに、CRC生成器2492は、この24ビット分のデータからエラー検出用のCRCコード(6ビット)を生成して、各バンクの領域2490aに続く領域2490bに格納する。
【0112】
シーケンスカウンタ2494は、基準クロックI/Oブロック230からのクロックに基づくMSGクロックMSGClockに同期して、順次、バンク01〜10に読み出し信号を与え、これに応じて、バンク01〜10からのデータが読み出されて、メッセージレジスタ2496に格納される。
【0113】
メッセージレジスタ2496のデータが、メッセージコードレジスタ2466および2468の双方に書き込まれる。以後の処理は、図4の変調器245aの動作として説明したとおりである。
【0114】
[メッセージデータ生成装置245c]
図7は、FPGA245のファームウェアをL1Cコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245cの構成を示す機能ブロック図である。
【0115】
以下に説明するとおり、メッセージデータ生成装置245cは、L1Cコード内の航法メッセージとパイロット信号に相当する部分に、外部から与えられた位置特定データ等や送信機ID等を信号フォーマットに従って、乗せる処理を行うものである。
【0116】
メッセージデータ生成装置245cは、プロセッサ241からのコマンド2500を受付けるコマンドインタフェース2502と、コマンドインタフェース2502から与えられるコマンドに基づいて、メッセージとして送信するデータの内容を解釈するためのメッセージコマンド解釈器2504と、メッセージコマンド解釈器2504からのI相用のメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2506と、メッセージコマンド解釈器2504からのQ相用のメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2508とを備える。
【0117】
メッセージバンク2506は、I相用の情報を格納するための各150ビットの容量のバンクI00〜I10を含む。メッセージバンク2508は、Q相用の情報を格納するための各48ビットの容量のバンクQ00〜Q02と、Q相用の情報を格納するための各63ビットの容量のバンクQ03〜Q05と、Q相用の情報を格納するための各75ビットの容量のバンクQ06〜Q08とを含む。なお、Q相用の各バンクの容量は、これらの値に限定されるものではなく、たとえば、バンクQ00〜Q08の容量をすべてI相用のバンクと同じ容量である150ビットとすることもできる。
【0118】
ここで、Q相用のメッセージバンク2508には、たとえば、送信機IDが格納される。一方、I相用のメッセージバンク2506には、上述した「位置特定データ」だけでなく、たとえば、無線I/F210を介して屋内送信機200の外部から与えられる「宣伝広告用のデータ」「交通情報」「気象情報」「災害情報」も格納され得る。災害情報は、たとえば、地震予知、地震発生情報等を含む。ここで、上記の「外部」には、上記の各情報を提供する事業者、官公庁などによって運営されるサーバ装置等を含む。これらの情報は、リアルタイムで当該外部のサーバ装置から送られる場合もあれば、定期的にアップデートされるものであってもよい。あるいは、当該屋内送信機200の運営管理者が随時データを更新するものであってもよい。たとえば、各屋内送信機200がデパートに設置されている場合には、デパートの営業活動の1つとして、宣伝広告用のデータが当該運営管理者によって屋内送信機200に与えられてもよい。
【0119】
特に限定されないが、バンクQ00〜Q08に格納されるデータついては、BCHの誤り訂正符号が付加されており、バンクI00〜I10に格納されるデータについては、誤り検出符号が付加される構成とすることができる。これにより、データ長の短い送信機IDが繰り返し含まれているバンクQ00〜Q08のデータについては、この短い周期で受信するごとに正しいデータが得られることで、早期に受信データを確定できる。これにより、Q位相側ではI位相側よりも早期に受信データを確定して、後に説明するような位置情報の取得処理(サーバへの問い合わせ)に移ることができる。
【0120】
メッセージデータ生成装置245cは、さらに、コマンドインタフェース2502からのコマンドに応じたシーケンスで、I相信号に含ませるデータについてバンクI00〜I10からデータを読み出すシーケンスマネージャ2510と、コマンドインタフェース2502からのコマンドに応じたシーケンスで、Q相信号に含ませるデータについてバンクQ00〜Q08からデータを読み出すシーケンスマネージャ2512とを備える。
【0121】
メッセージデータ生成装置245cは、さらに、基準クロックI/Oブロック230からのクロックに基づくMSGクロックMSGClockに同期して、順次、シーケンスマネージャ2510およびシーケンスマネージャ2512からデータを読み出し、それぞれ別々に、メッセージコードレジスタ2466および2468に書き込むメッセージレジスタ2514を備える。
【0122】
メッセージレジスタ2514のデータが、メッセージコードレジスタ2466および2468の双方に書き込まれる。以後の処理は、図4の変調器245aの動作として説明したとおりである。
【0123】
なお、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号が屋内送信機200から送信される場合、受信機側(位置情報提供装置側)でも、I相用の送信機側の150ビットのメッセージバンクI00〜I10にそれぞれ対応して、I00〜I10で区別される記憶領域が設けられており、また、Q相用のメッセージバンクQ00〜Q08にそれぞれ対応して、Q00〜Q08で区別される記憶領域が設けられているものとする。このようにすることで、新しく、バンクI00〜I10またはバンクQ00〜Q08に格納されたデータのいずれかを受信するごとに、受信機側の記憶領域の内容が更新される。このために、バンクI00〜I10、Q00〜Q08に格納されるデータには、いずれのバンクのデータであるかを識別可能な識別子が含まれているものとする。
【0124】
以上、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号を屋内送信機200から送信されるメッセージについて、まとめると以下のようである。なお、以下では、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号を「L1C互換メッセージ」と呼ぶ。
【0125】
L1C互換メッセージは、I相信号とQ相信号とによって構成されている。I相信号とQ相信号には、独立の別個のメッセージがそれぞれ変調されている。詳しくは、Q相信号には、たとえば、送信機IDのような短い情報が変調されている。Q相信号のデータ長はI相信号のそれよりも短いため、受信機は、Q相信号を速やかに捕捉することができ、当該IDをすぐに取得することができる。しかしながら、当該IDは、それ自身で意味(たとえば位置情報)を有さないため、受信機は送信機IDのみで位置を知ることはできない。そこで、受信機は、たとえば携帯電話網を介して位置情報を提供するサーバ装置のサイトにアクセスし、当該送信機IDをサーバ装置に送信し、当該送信機IDに関連付けられている位置情報を当該サーバ装置から取得することになる。
【0126】
一方、I相信号には、位置特定データが変調されている。さらに、ある局面において、I相信号に含まれるメッセージを可変とする構成が可能である。たとえば、I相信号には、位置情報のほかに、交通情報、気象情報、災害情報などの可変メッセージを変調することができる。これにより、屋内送信機200と外部ネットワークとが接続された場合に、当該可変メッセージをリアルタイムに更新し、受信機の使用者に、適切な情報を提供することができる。I相信号は位置情報自身を含むため、受信機の使用者は、当該受信機をネットワークに接続することなく、自己の位置を知ることができる。したがって、たとえば、災害が発生した場合であって通信回線が輻輳しているときにも、L1C互換メッセージを受信できれば当該受信機の位置を特定可能である。この場合、当該受信機が携帯電話機として当該位置を発信できれば、信号の受信者は、その信号の発信者(すなわち被災者)の位置を特定しやすくなる。
【0127】
このように、I相信号とQ相信号とは、変調される情報自体の相違点と、信号の長さのような構成上の相違点とを有する。受信機が、位置情報を取得するためには、少なくともいずれかの信号を受信できればよい。したがって、受信機の使用者は、必要に応じて、I相信号およびQ相信号のいずれを受信するかを選択することができる。この選択は、いずれの信号を受信するかを規定する設定を使用者が受信機に入力することにより、実現される。あるいは、通信回線の輻輳により通信回線によるサーバへの接続がタイムアウトにより失敗した場合などに、受信機において、I相信号の受信モードからQ相信号の受信モードへと自動的に切り替える構成としてもよい。
【0128】
なお、C/A信号は、PRN−IDとメッセージ(たとえば、位置情報)とを含む。そして、メッセージをリアルタイムで更新することも可能であるため、C/A信号に最新のメッセージを含めることができる。
【0129】
[屋内送信機200から送信される信号のデータ構造]
まず、メッセージデータ生成装置245bで生成されるメッセージを乗せたL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
【0130】
[L1 C/A互換信号]
図8を参照して、送信機から送信される測位信号について説明する。図8は、GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号500の構成を表わす図である。信号500は、300ビットの5つのサブフレーム、すなわち、サブフレーム510〜550から構成される。サブフレーム510〜550は、当該送信機によって、繰り返し送信される。サブフレーム510〜550は、たとえば、それぞれ300ビットであり、50bps(bit per second)のビット率で送信される。したがって、この場合、各サブフレームは、6秒で送信される。
【0131】
第1番目のサブフレーム510は、30ビットのTOH511と、30ビットの時刻情報512と、240ビットのメッセージデータ513とを含む。時刻情報512は、詳細には、サブフレーム510が生成される際に取得された時刻情報と、サブフレームIDとを含む。ここで、サブフレームIDとは、他のサブフレームから第1のサブフレーム510を区別するための識別番号である。メッセージデータ513は、GPS週番号、クロック情報、当該GPS衛星のヘルス情報、軌道精度情報等を含む。
【0132】
第2番目のサブフレーム520は、30ビットのTOH521と、30ビットの時刻情報522と、240ビットのメッセージデータ523とを含む。時刻情報522は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ523は、エフェメリス(ephemeris、放送暦)を含む。ここで、エフェメリスとは
、測位信号を発信する衛星の軌道情報をいう。エフェメリスは、当該衛星の航行を管理する管制局によって逐次更新される、高精度な情報である。
【0133】
第3番目のサブフレーム530は、第2番目のサブフレーム520と同様の構成を有する。すなわち、第3番目のサブフレーム530は、30ビットのTOH531と、30ビットの時刻情報532と、240ビットのメッセージデータ533とを含む。時刻情報532は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ533は、エフェメリスを含む。
【0134】
第4番目のサブフレーム540は、30ビットのTOH541と、30ビットの時刻情報542と、240ビットのメッセージデータ543とを含む。メッセージデータ543は、他のメッセージデータ513,523,533と異なり、アルマナック情報、衛星ヘルス情報のサマリ、電離層遅延情報、UTC(Coordinated Universal Time )パラメータ等を含む。
【0135】
第5番目のサブフレーム550は、30ビットのTOH551と、30ビットの時刻情報552と、240ビットのメッセージデータ553とを含む。メッセージデータ553は、アルマナック情報と、衛星ヘルス情報のサマリとを含む。メッセージデータ543,553は、各々25ページからの構成されており、ページ毎に、上記の異なる情報が定義されている。ここで、アルマナック情報とは、衛星の概略軌道を表わす情報であり、当該衛星だけでなく、全てのGPS衛星についての情報を含む。サブフレーム510〜550の送信が25回繰り返されると、1ページ目に戻って、同じ情報が発信される。
【0136】
サブフレーム510〜550は、送信機120,121,122からそれぞれ送信される。サブフレーム510〜550が位置情報提供装置100によって受信されると、位置情報提供装置100の位置は、TOH511〜551に含まれる各保守・管理情報と、時刻情報512〜552と、メッセージデータ513〜553とに基づいて、計算される。
【0137】
信号560は、サブフレーム510〜550に含まれる各メッセージデータ513〜553と同じデータ長を有する。信号560は、エフェメリス(メッセージデータ523,533)として表わされる軌道情報に代えて、信号560の発信源の位置を表わすデータを有する点で、サブフレーム510〜550と異なる。
【0138】
すなわち、信号560は、6ビットのPRN−ID561と、15ビットの送信機ID562と、X座標値563と、Y座標値564と、Z座標値565と、高度補正係数(Zhf)566と、アドレス567と、リザーブ568とを含む。信号560は、サブフレーム510〜550に含まれるメッセージデータ513〜553に代わって、屋内送信機200−1,200−2,200−3から送信される。
【0139】
PRN−ID561は、信号560の発信源である送信機(たとえば、屋内送信機200−1,200−2,200−3)に対して予め割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号である。PRN−ID561は、各GPS衛星に搭載されるそれぞれの送信機に対して割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号とは異なるが、同じ系列の符号列から生成される符号パターンに対して割り当てられた番号である。位置情報提供装置が、受信した信号560から、屋内送信機用に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンのいずれかを取得することで、その信号が、衛星から送信されたサブフレーム510〜550であるのか、あるいは、屋内送信機から送信された信号560であるのかが特定される。
【0140】
X座標値563、Y座標値564およびZ座標値565は、屋内送信機200が取り付けられている位置を表わすデータである。X座標値563、Y座標値564、Z座標値565は、たとえば緯度、経度、高度として表わされる。高度補正係数566は、Z座標値565によって特定される高度を補正するために用いられる。なお、高度補正係数566は、必須のデータ項目ではない。したがって、Z座標値565によって特定される高度以上の精度が要求されない場合には、その係数は用いられなくてもよい。この場合、高度補正係数566のために割り当てられる領域には、たとえば「NULL」を表わすデータが格納される。
【0141】
リザーブ領域568には、「住所、建物の名称」、「宣伝広告用のデータ」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」(たとえば地震情報)が割り当てられる。
【0142】
[L1C互換信号]
次に、メッセージデータ生成装置245cで生成されるメッセージを乗せたL1Cコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
【0143】
以下、I相信号のデータ構造について説明する。
[I相信号の構成1]
図9は、L1C互換信号の第1の構成を表わす図である。図9においては、6つのサブフレームが送信される。第1番目のサブフレームとして、信号810が送信機によって送信される。信号810は、30ビットのTOH811と、30ビットの時刻情報812と、6ビットのPRN−ID813と、15ビットの送信機ID814と、X座標値815と、Y座標値816と、Z座標値817とを含む。信号810の最初の60ビットは、GPS衛星が発信するサブフレーム510〜550の各々の最初の60ビットと同一である。
【0144】
リザーブ領域818には、「住所、建物の名称」、「宣伝広告用のデータ」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」(たとえば地震情報)が割り当てられる。
【0145】
第2番目のサブフレームとして、信号820が送信機によって送信される。信号820は、6ビットのサブフレームID821と、高度補正係数822と、送信機位置アドレス823とを含む。信号820のサブフレームIDから後方の144ビット(信号820では、高度補正係数822と、送信機位置アドレス823)に、別情報を予め定義することにより、第3番目〜第6番目のサブフレームも同様に送信される。各サブフレームに含まれる情報は、上記のものに限られない。たとえば,位置情報に関する広告、インターネットサイトのURL(Uniform Resource Locators)等が、各サブフレームにおいて予め
定義された領域に格納されてもよい。
【0146】
信号830〜870は、上記の信号810,820および信号820と同じ構造を有する第3〜第6番目のサブフレームの送信例を示す。すなわち、信号830は、第1のサブフレーム831と、第2のサブフレーム832とを含む。第1のサブフレーム831は、GPS衛星から送信されるサブフレーム510〜550と同じヘッダを持つ。第2のサブフレーム832は、信号820に対応するフレームである。
【0147】
信号840は、第1のサブフレーム831と、第3のサブフレーム842とを含む。第1のサブフレーム831は、第1のサブフレーム831と同一である。第3のサブフレームは、信号820と同じ構造を有する。
【0148】
このような構成は、第6番目のサブフレーム872を送信するための信号870まで繰り返される。信号870は、第1のサブフレーム831と、第6のサブフレーム872とを含む。
【0149】
送信機が、信号830から信号870を繰り返し送信すると、第1のサブフレーム831は、各信号の送信毎に送信される。第1のサブフレーム831が送信された後に、他のいずれかのサブフレームが内挿される。すなわち、各サブフレームの送信の順序は、第1のサブフレーム831→第2のサブフレーム832→第1のサブフレーム831→第3のサブフレーム842→第1のサブフレーム→・・・→第6のサブフレーム872→第1のサブフレーム831→第2のサブフレーム832・・・となる。
【0150】
[I相信号の第2の構成]
図10は、L1C互換信号の第2の構成を表わす図である。メッセージデータの構造は、サブフレーム510〜550とは独立に定義されてもよい。
【0151】
図10は、L1C互換信号910の第2の構成を概念的に表わす図である。図10を参照して、信号910は、TOH911と、プリアンブル912と、PRN−ID913と、送信機ID914と、第1の変数915と、X座標値916と、Y座標値917と、Z座標値918と、パリティ/CRC919とを含む。信号920は、信号910と同様の構成を有する。ここで、信号910における第1の変数915に代えて、第2の変数925を含む。
【0152】
各信号は、150ビット長を有する。同じ構造を有する信号が6つ発信される。このような構成を有する信号を、屋内送信機から発信される信号として構成してもよい。
【0153】
図10に示される各信号も、PRN−IDをそれぞれ有するため、位置情報提供装置100は、そのPRN−IDに基づいて、受信した信号の送信源を特定することができる。送信源が屋内送信機であれば、その信号には、X座標値とY座標値とZ座標値とが含まれる。したがって、位置情報提供装置100は、屋内の位置を表示することができる。
【0154】
<信号フォーマット>
本実施の形態に係る屋内送信機200あるいはGPS衛星が送信する信号のフォーマットは、上述の態様に限られない。そこで、図11〜図16を参照して、他のフォーマットについて説明する。
【0155】
[メッセージタイプ=0]
図11は、3ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号は、第1ワード3010と、第2ワード3020と、第3ワード3030とを含む。各ワードの長さは30ビットである。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「0」である。
【0156】
第1ワード3010は、8ビットのプリアンブル3011と、3ビットのメッセージタイプID3012と、8ビットの階データ3013と、2ビットの緯度(LSB)3014と、3ビットの経度(LSB)3015と、6ビットのパリティ3016とを含む。メッセージタイプID3012のビットパターンは、たとえば、000(=タイプ「0」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
【0157】
第2ワード3020は、3ビットのCNT3021と、21ビットの緯度(MSB)3022と、6ビットのパリティ3023とを含む。第3ワード3030は、3ビットのCNT3031と、21ビットの緯度(MSB)3032と、6ビットのパリティ3033とを含む。
【0158】
[メッセージタイプ=1]
図12は、4ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号は、第1ワード3110と、第2ワード3120と、第3ワード3130と、第4ワード3140とを含む。各ワードの長さは30ビットである。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「1」である。
【0159】
第1ワード3110は、8ビットのプリアンブル3111と、3ビットのメッセージタイプID3112と、9ビットの階データ3113と、4ビットのリザーブ3114と、6ビットのパリティ3115とを含む。メッセージタイプID3112のビットパターンは、たとえば、001(=タイプ「1」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
【0160】
第2ワード3120は、3ビットのCNT3121と、21ビットの緯度(MSB)3122と、6ビットのパリティ3123とを含む。第3ワード3130は、3ビットのCNT3131と、21ビットの緯度(MSB)3132と、6ビットのパリティ3133とを含む。第4ワード3140は、3ビットのCNT3141と、12ビットの高度3142と、2ビットのリザーブ3143と、3ビットの緯度(LSB)3144と、3ビットの経度(LSB)3145と、6ビットのパリティ3146とを含む。
【0161】
[メッセージタイプ=3]
図13は、ショートIDを含むL1C/A信号3200のフォーマットを概念的に表わす図である。信号3200のメッセージタイプは、たとえば、「3」である。
【0162】
信号3200は、8ビットのプリアンブル3220と、3ビットのメッセージタイプID3220と、12ビットのショートID(SID)3230と、1ビットのBD3240と、6ビットのパリティ3250を含む。メッセージタイプID3220のビットパターンは、たとえば、011(=タイプ「3」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
【0163】
[メッセージタイプ=4]
図14は、ミディアムIDを含むL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「4」である。
【0164】
この信号は、第1ワード3310と、第2ワード3320とを含む。第1ワード3310は、8ビットのプリアンブル3311と、3ビットのメッセージタイプID3312と、12ビットのショートID(IDM)(MSB)3313と、1ビットのBD3314と、6ビットのパリティ3315とを含む。メッセージタイプID3312のビットパターンは、たとえば、100(=タイプ「4」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。第2ワード3320は、3ビットのCNT3321と、21ビットのミディアムID(MID)(LSB)3322と、6ビットのパリティ3323とを含む。
【0165】
図15を参照して、フレーム構成の一例について説明する。図15は、ワード数に応じて構成されるフレーム構成を表わす図である。各ワードの長さは、30ビットである。
【0166】
フレーム3410は、1ワードからなる。フレーム3410は、8ビットのプリアンブル3411と、3ビットのメッセージタイプID3412と、13ビットのデータビット3413と、6ビットのパリティ3414とを含む。
【0167】
フレーム3420は、2ワードからなる。フレーム3420の第1ワードは、8ビットのプリアンブル3421と、3ビットのメッセージタイプID3422と、13ビットのデータビット3423と、6ビットのパリティ3424とを含む。フレーム3420の第2ワードは、3ビットのCNT3425と、21ビットのデータビット3426と、6ビットのパリティ3427とを含む。
【0168】
フレーム3430は、3ワードからなる。フレーム3430の第1ワードは、8ビットのプリアンブル3431と、3ビットのメッセージタイプID3432と、13ビットのデータビット3433と、6ビットのパリティとを含む。フレーム3430の第2ワードは、3ビットのCNT3435と、21ビットの3436と、6ビットのパリティ3437とを含む。フレーム3430の第3ワードは、3ビットのCNT3438と、21ビットのデータビット3439と、6ビットのパリティ3440とを含む。
【0169】
図16を参照して、フレーム構成の他の例について説明する。図16は、ショートIDと、位置情報とを含むフレーム3500を概念的に表わす図である。
【0170】
フレーム3500の第1ワードは、プリアンブル3510と、メッセージタイプID3512と、データビット3512と、パリティ3513とを含む。第2ワードは、プリアンブル3514と、メッセージタイプID3515と、階データ3516と、パリティ3517とを含む。第3ワードは、CNT3518と、緯度データ3519と、パリティ3520とを含む。第4ワードは、CNT3521と、経度データ3522と、パリティ3523とを含む。位置情報は、第2〜第4ワードによって構成される。
(実施の形態1)
(実施の形態1のシステムの概要)
以上説明したとおり、屋内送信機200から送信される信号のフォーマットは、1つのものに限定される訳ではなく、種々のフォーマットでありうる。
【0171】
ただし、以下の説明では、屋内送信機200の位置を識別するための識別子である送信機IDをショートID(以下、SID)として送信するものとして説明する。もっとも、屋内送信機200の位置を識別するための識別子を送信するデータフォーマットとしては、SIDに限定されるものではなく、たとえば、ミディアムID等を使用する構成とすることも可能である。
【0172】
ただし、SIDを識別子として使用した場合、屋内送信機から送信される信号フォーマットのうち、SIDがもっとも短い周期で繰り返し送信されるものであるので、最短の時間で、受信機である位置情報提供装置100側で獲得可能と期待される。
【0173】
実施の形態1における屋内送信機200と位置情報提供装置100により、屋内測位が実行される概要を説明すると、以下のとおりである。
【0174】
1)SIDは単独では場所解決が不可能な間接参照識別子であり、またビット数の制約によりグローバル識別子としての配布利用は不可能である。そこで、SIDをローカル識別子として、実際の送信機の設置/管理単位である個別の「施設単位」(たとえば、建物単位)で一意性が保証されるように、予め発行/管理しておく。
【0175】
2)次に、施設単位で発行/管理されるSIDと各々の屋内送信機の設置場所を、SVGで生成される屋内地図データ上のID基盤を媒介として関連付けを行い(つまり、変換テーブルを作成しておき)、位置情報提供装置100に提供されるSVG地図情報に重畳/内包する(以下、このような変換テーブルを含むSVG地図情報を「SVGコンテナ」と呼ぶ)。
【0176】
3)施設入口/内部で、メッセージタイプが4の信号を用いて、短縮URLを発信し、当該SVGコンテナ(屋内地図+情報レイヤ+SID変換テーブル)を利用者の位置情報提供装置100に送信する(位置情報提供装置100上で屋内地図上の現在地表示及びSID変換テーブルを格納する)。
【0177】
4)当該SVGコンテナを位置情報提供装置100のローカルに取得後は、ローカルに格納した変換テーブルを用い、屋内送信機と端末側にて外部サーバ参照せずに端末のみで場所解決を行い、屋内地図の現在地更新及び近傍情報の更新を行うことで、移動体である人間などの移動速度(たとえば、歩行速度)に追従した高速な連続測位/情報配信を実現する。
[位置情報提供装置100−1(受信機)の構成]
図17を参照して、利用者に位置情報を提示するための位置情報提供装置100について説明する。図17は、位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0178】
位置情報提供装置100は、アンテナ402と、アンテナ402に電気的に接続されているRF(Radio Frequency)フロント回路404と、RFフロント回路404に電気的に接続されているダウンコンバータ406と、ダウンコンバータ406に電気的に接続されているA/D(Analog to Digital)コンバータ408と、A/Dコンバータ408からの信号を受けて、相関処理を行うベースバンドプロセッサ412と、ベースバンドプロセッサ412に電気的に接続されているメモリ420と、ベースバンドプロセッサ412に電気的に接続されているナビゲーションプロセッサ430と、ナビゲーションプロセッサ430に電気的に接続されているディスプレイ440とを備える。
【0179】
ベースバンドプロセッサ412は、A/Dコンバータ408に電気的に接続されているコリレータ410.1〜410.nと、コリレータ410.1〜410.nの相関処理のタイミングの基準となるクロックをそれぞれ供給するための数値制御発信器(NCO:Numerically Controlled Oscillators)411.1〜411.nと、コリレータ410.1〜410.nからの信号をそれぞれ受けて、所定期間について積算処理を行う積算器412.1〜412.nとを含む。
【0180】
ベースバンドプロセッサ412は、さらに、メモリ420に格納されたソフトウェアに基づいて、積算器412.1〜412.nからの信号をデコードするとともに、コリレータ410.1〜410.n、NCO411.1〜411.nおよび積算器412.1〜412.nの動作を制御する制御部414を含む。
【0181】
ここで、一般には、ベースバンドプロセッサ412は、受信信号のドップラー効果の影響を考慮して相関処理を行い、PRNコードおよびその遅延成分についてのサーチだけでなく、制御部414の制御にしたがって、NCO411.1〜411.nの周波数を制御して、周波数についてのサーチも行なう。
【0182】
なお、図8に示した例では、コリレータ410.1〜410.nと、積算器412.1〜412.nとは、ベースバンドプロセッサ412とは独立したハードウェアとする構成としてもよい。あるいは、コリレータ410.1〜410.nと、積算器412.1〜412.nとの機能は、ソフトウェアとして実現することも可能である。
【0183】
メモリ420は、測位信号の各発信源を識別するためのデータである、PRNコードの符号パターンを格納する複数の領域を含む。一例として、ある局面において、48個の符号パターンが用いられる場合には、メモリ420は、図8に示されるように、領域421−1〜421−48を含む。また、他の局面において、それ以上の符号パターンが使用される場合には、さらに多くの領域がメモリ420に確保される。逆に、メモリ420に確保された領域の数よりも少ない符号パターンが使用される場合もあり得る。
【0184】
一例として48個の符号パターンが用いられる場合において、たとえば、24個の衛星が衛星測位システムに用いられる場合、各衛星を識別する24個の識別データと、12個の予備のデータとが、領域421−1〜421−36に格納される。このとき、たとえば、領域421−1には、第1の衛星についての擬似雑音符号の符号パターンが格納されている。ここから、符号パターンを読み出して、受信信号との相互相関処理を行なうことにより、信号の追跡や、信号に含まれる航法メッセージの解読を行なうことができる。なお、ここでは、符号パターンを格納して読み出す方法を例示的に示したが、符号パターン生成器により符号パターンを生成する方法も可能である。符号パターン生成器は、たとえば、2つのフィードバックシフトレジスタを組み合わせることにより実現される。なお、符号パターン生成器の構成および動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは、それらの詳細な説明は、繰り返さない。
【0185】
同様に、測位信号を発信する屋内送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域421−37〜421−48に格納される。たとえば、第1の屋内送信機についての割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域432−37および領域432−38に格納されている。なお、メモリ420中には、1つの屋内送信機について、どの拡散コード(PRNコード)が組となって割当てられるかが、予め記憶されていることが望ましい。このような割り当てが予め記憶されている場合は、2つのチャネルについての同期捕捉が、より短縮されることになる。
【0186】
この場合、本実施の形態においては、12個の符号パターン有する屋内送信機が使用可能となるが、同一の位置情報提供装置が受信可能な範囲に同一の符号パターンを使用する屋内送信機がないように、各屋内送信機をそれぞれ配置してもよい。このようにすることによって、6台以上の屋内送信機を、たとえばビル130の同一のフロアに設置することも可能になる。
【0187】
ナビゲーションプロセッサ430は、制御部414から出力されるデータに基づいて測位信号の発信源を判断するとともに、受信された測位信号がダイバーシティ送信されたものであるかを判断し制御部414の動作を制御する判断部416と、メモリ420に格納されたソフトウェアに基づいて、判断部416から出力される信号に基づいて屋外における位置情報提供装置100の位置を測定するための屋外測位部432と、判断部416から出力されるデータに基づいて屋内における位置情報提供装置100の位置を表わす情報を導出するための屋内測位部434とを含む。
【0188】
アンテナ402は、GPS衛星110,111,112からそれぞれ発信された測位信号および屋内送信機200−1から発信された測位信号をそれぞれ受信することができる。また、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、アンテナ402は、前述の信号に加えて、無線電話のための信号あるいはデータ通信のための信号を送受信することもできる。
【0189】
RFフロント回路404のフィルタおよびLNA(Low Noise Amplifier)回路は、アンテナ402によって受信された信号を受けて、ノイズの除去あるいは予め規定された帯域幅の信号のみを出力するフィルタ処理などを行なう。RFフロント回路404から出力される信号は、ダウンコンバータ406に入力される。
【0190】
ダウンコンバータ406は、RFフロント回路404から出力される信号を増幅し、中間周波数として出力する。この信号は、A/Dコンバータ408に入力される。A/Dコンバータ408は、入力された中間周波数信号をデジタル変換処理し、デジタルデータに変換する。デジタルデータは、コリレータ410.1〜410.nに入力される。
【0191】
コリレータ410.1〜410.nは、制御部414がメモリ420から読み出した符号パターンと、受信信号との相関処理を行なう。
【0192】
コリレータ410.1〜410.nの各コリレータは、制御部414から出力される制御信号に基づいて、受信された測位信号と測位信号を復調するために生成されたコードパターンとのマッチングを同時に実行する。
【0193】
具体的には、制御部414は、各コリレータ410.1〜410.nの各々に対して、擬似雑音符号において生じ得る遅延を反映させた(符号位相をずらした)符号パターン(レプリカパターン)を生成する指令を与える。この指令は、たとえば、現行GPSでは、衛星の数×2×1023(用いられる擬似雑音符号の符号パターンの長さ)となる。各コリレータ410.1〜410.nは、各々に与えられた指令に基づいて、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンを用いて符号位相の異なる符号パターンを生成する。そうすると、生成された全ての符号パターンの中には、受信された測位信号の変調に使用された擬似雑音符号の符号パターンに一致するものが1つ存在する。そこで、各符号パターンを用いたマッチング処理を行なうために必要な数のコリレータを並列なコリレータ410.1〜410.nとして予め構成することにより、極く短時間で、擬似雑音符号の符号パターンを特定することができる。この処理は、位置情報提供装置100が屋内送信機からの信号を受信する場合にも同様に適用できる。したがって、位置情報提供装置100の使用者が屋内にいる場合でも、その位置情報を、極く短時間に取得することができる。
【0194】
つまり、並列なコリレータ410.1〜410.nは、最大で、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンと各屋内送信機について規定された擬似雑音符号の符号パターンとのすべてについて、並列して、マッチングをとることが可能である。また、コリレータの個数と、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンの個数との関係により、各衛星と各屋内送信機とについて規定された擬似雑音符号の符号パターンのすべてについて、一括して、マッチングを採らない場合でも、複数のコリレータによる並列処理により、大幅に、位置情報の取得に要する時間を短縮できる。
【0195】
ここで、衛星および屋内送信機は、同一の通信方式であるスペクトラム拡散方式で信号を送信しており、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンが同一系列のものを使用できるので、並列のコリレータについては、衛星からの信号および屋内送信機からの送信の双方について共用することができ、受信処理は、両者について特段に区別することなく、並行して行うことができる。
【0196】
並列なコリレータ410.1〜410.nは、各コードパターンを用いて、位置情報提供装置100が受信した測位信号を追跡し、当該測位信号のビット配列に一致する配列を有するコードパターンを特定するための処理を行う。これにより、判断部416は、擬似雑音符号の符号パターンが特定されるため、位置情報提供装置100は、受信された測位信号がどの衛星から送信されたものか、あるいは、屋内送信機から送信されたかを判別できる。さらに、判断部416は、受信された測位信号が屋内送信機から送信されたものである場合、その測位信号がダイバーシティ送信されたものか否かについても判断する。また、位置情報提供装置100は、特定された符号パターンを用いて、復調とメッセージの解読とをすることができる。
【0197】
具体的には、判断部416は、上述のような判断を行ない、その判断の結果に応じたデータをナビゲーションプロセッサ430に送出する。判断部416は、受信された測位信号に含まれるPRN−IDがGPS衛星に搭載される送信機以外の屋内送信機200−1等に割り当てられたPRN−IDであるか否かを判断する。
【0198】
ここで、一例として、24個のGPS衛星が測位システムに使用される場合について説明する。この場合、予備のコードを含めると、たとえば、36個の擬似雑音符号が使用される。この時、PRN−01〜PRN−24が、各GPS衛星を識別する番号(PRN−ID)として使用され、PRN−25〜PRN−36が、予備の衛星を識別する番号として使用される。予備の衛星とは、当初打ち上げられた衛星以外に改めて打ち上げられる衛星である。すなわち、このような衛星は、GPS衛星あるいはGPS衛星に搭載された送信機等の故障に備えて打ち上げられる。
【0199】
さらに、仮に、12個の擬似雑音符号の符号パターンがGPS衛星に搭載される送信機以外の屋内送信機200−1等に割り当てられる。この時、衛星に割り当てられたPRN−IDとは異なる番号、たとえばPRN−37からPRN−48が、各送信機ごとに割り当てられる。したがって、この例では、48個のPRN−IDが存在することになる。ここで、PRN−ID〜PRN−48は、たとえば各屋内送信機の配置に応じて当該屋内送信機に割り当てられる。したがって、仮に、各屋内送信機から発信される信号が干渉しない程度の送信出力が使用される場合には、同一のPRN−IDが異なる屋内送信機に用いられてもよい。このような配置により、地上用の送信機のために割り当てられたPRN−IDの数よりも多くの数の送信機が、使用可能となる。
【0200】
そこで、判断部416は、メモリ420に格納されている擬似雑音符号の符号パターン422を参照して、受信された測位信号から取得された符号パターンが、屋内送信機に割り当てられている符号パターンに一致するか否かを判断する。これらの符号パターンが一致する場合には、判断部416は、その測位信号が屋内送信機から発信されたものであると判断する。そうでない場合には、判断部416は、その信号がGPS衛星から発信されたものと判断し、その取得された符号パターンが、どの衛星に割り当てられた符号パターンであるかを、メモリ420に格納されている符号パターンを参照して決定する。なお、判断の態様として、符号パターンが使用される例が示されているが、その他のデータの比較によって、上記の判断が行なわれてもよい。たとえば、PRN−IDを用いた比較が、その判断に使用されてもよい。
【0201】
そして、受信された信号が各GPS衛星から発信されたものである場合には、判断部416は、特定された信号から取得されるデータを屋外測位部432に送出する。信号から取得されるデータには、航法メッセージが含まれる。一方、受信された信号が屋内送信機200−1などから発信されたものである場合には、判断部416は、その信号から取得されるデータを屋内測位部434に送出する。このデータは、すなわち屋内送信機200−1の位置を特定するためのデータとして予め設定された座標値である。あるいは、別の局面において、当該送信機を識別する番号が用いられてもよい。
【0202】
ナビゲーションプロセッサ430において、屋外測位部432は、判断部416から送出されたデータに基づいて位置情報提供装置100の位置を算出するための処理を実行する。具体的には、屋外測位部432は、3つ以上のGPS衛星(好ましくは、4つ以上)から発信された信号に含まれるデータを用いて、各信号の伝播時間を計算し、その計算結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を算出する。この処理は、公知の衛星測位の手法を用いて実行される。この処理は、当業者にとっては容易に理解できるものである。したがって、ここではその説明の詳細は繰り返さない。
【0203】
一方、ナビゲーションプロセッサ430において、屋内測位部434は、判断部416から出力されたデータに基づいて位置情報提供装置100が屋内に存在する場合における測位処理を実行する。前述したように、屋内送信機200−1は、場所を特定するためのデータ(位置特定データ)が含まれる測位信号を発信する。そこで、位置情報提供装置100がそのような信号を受信した場合には、その信号に含まれるデータを取り出し、そのデータを用いて位置情報提供装置100の位置を導出することができる。屋内測位部434は、この処理を行なう。屋外測位部432あるいは屋内測位部434によって算出されたデータを用いるとともに、メモリ420中にすでに格納されているSVG地図情報または通信部450を介して受信したSVG地図情報に基づいて、地図描画処理部436は、ディスプレイ440において、位置情報提供装置100の現在位置を表示するための画像信号を生成して出力する。具体的には、これらのデータは、画面を表示するためのデータに組み込まれ、計測された位置を表わす画像あるいは屋内送信機200−1が設置されている場所を表示するための画像が生成され、ディスプレイ440によって表示される。
【0204】
したがって、地図描画処理部436は、SVG地図情報から地図を表示するためのブラウザとしての機能を有している。
【0205】
また、位置情報提供装置100は、制御部414の制御の下に、外部との間、たとえば、位置情報提供サーバ(図示せず)との間で、データを授受するための通信部450を備える。
【0206】
図17に示した構成において、特に限定されないが、測位信号受信からディスプレイに表示される情報の生成までの信号処理において、アンテナ402、RFフロント回路404、ダウンコンバータ406、A/Dコンバータ408は、ハードウェアにより構成され、ベースバンドプロセッサ412およびナビゲーションプロセッサ430の処理は、メモリ420に格納されたプログラムにより実行することができる。なお、コリレータ410.1〜410.nと積算器412.1〜412.nとの処理については、ハードウェアの代わりにソフトウェアにより実現される構成とすることもできる。
【0207】
図18は、本実施の形態に係る位置情報提供装置100の使用態様を表わす図である。ここで、位置情報提供装置は、携帯電話1200として実現される。携帯電話1200は、屋内送信機1210によって発信された測位信号を受信できる。屋内送信機1210は、インターネット1220に接続されている。インターネット1220には、屋内送信機1210の情報を提供可能な情報提供サーバ1230が接続されている。情報提供サーバ1230には、複数の送信機IDとこれらにそれぞれ対応するSVG地図情報とがデータベースに登録されているものとする。インターネット1220には、携帯電話1200との通信を行なう基地局1240も接続されている。
【0208】
携帯電話1200が、屋内送信機1210によって発信された信号を受信すると、その信号の中から、屋内送信機1210を識別するための送信機IDを取得する。送信機IDは、たとえば、前述のPRN−IDに対応付けられている。携帯電話1200は、その送信機IDを(あるいはPRN−IDとともに)情報提供サーバ1230に対して送信する。具体的には、携帯電話1200は基地局1240との間で通信を開始し、取得した送信機IDが含まれるパケットデータを、情報提供サーバ1230に送出する。
【0209】
情報提供サーバ1230は、その送信機IDを認識すると、送信機IDに関連付けられているデータベースを参照して、そのIDに関連するSVG地図情報を読み出す。情報提供サーバ1230が、そのSVG地図情報のデータを基地局1240に対して送信すると、基地局1240は、そのSVG地図情報のデータを無線発信する。携帯電話1200は、そのデータの着信を検知すると、携帯電話1200の使用者による閲覧操作に従って、そのデータから、送信機1210の位置を取得することができる。
【0210】
図19は、SVG地図情報のデータ(SVGコンテナ)と、当該SVG地図情報のデータで表示される地図画像とを対比して示す図である。
【0211】
図19に示した例では、ある建物の特定のフロアをSVG地図情報のデータが表現している場合を例として示している。SVG地図情報のデータには、以下の情報が含まれる。
【0212】
1)当該SVG地図情報のデータと地理座標との関連付けを示す図面の属性情報。すなわち、一般に、屋外を表している地図と当該フロアを有する建物との位置関係を特定するための情報である。
【0213】
2)フロアの外郭の形状を示す情報。
3)フロア内の区画の形状を示す情報。
【0214】
4)当該フロア内に設置された各屋内送信機の属性情報。当該屋内送信機のIDとフロア内の屋内送信機の位置情報(屋内地図内の位置識別子および位置座標)。この情報が、SIDと屋内送信機の位置との変換テーブルに相当する。
【0215】
図20を参照して、位置情報提供装置100の制御処理について説明する。図20は、位置情報提供装置100のベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
【0216】
ステップS610にて、位置情報提供装置100は、測位信号を取得(追尾、捕捉)する。具体的には、ベースバンドプロセッサ410は、A/Dコンバータ408から、受信された測位信号(デジタル変換処理後のデータ)の入力を受け付ける。ベースバンドプロセッサ410は、擬似雑音符号のレプリカとして、可能な遅延が反映された符号位相が異なる符号パターンを生成し、その符号パターンと受信された測位信号との相関の有無をそれぞれ検出する。生成される符号パターンの数は、たとえば、符号パターンのビット数の2倍である。一例として、たとえば、チップレートが1023ビットである場合、2分の1ビットずつの遅延、すなわち符号位相差を有する2046個の符号パターンが生成され得る。そして、各符号パターンを用いて、受信された信号との相関を取る処理が、並列に実行される。ベースバンドプロセッサ410は、当該相関処理において、予め規定された強度以上の出力が検出された場合に、その符号パターンをロックし、当該符号パターンによって、その測位信号を発信した衛星を特定することができる。当該符号パターンのビット配列を有する擬似雑音符号は、1つしか存在しない。これにより、受信された測位信号をスペクトラム拡散符号化するために使用された擬似雑音符号が特定される。
【0217】
ステップS612にて、ベースバンドプロセッサ410は、その測位信号の発信源を特定する。具体的には、判断部416が、その信号を生成するために変調時に使用された擬似雑音符号の符号パターンを使用する送信機に対応付けられるPRN−IDに基づいて、その信号の発信源を特定する。その測位信号が屋外から発信されたものである場合には、制御はステップS620に移される。その測位信号が屋内において発信されたものである場合には、制御はステップS630に移される。受信した複数の信号が屋外および屋内のそれぞれから発信されたものを含む場合には、制御はステップS640に移される。
【0218】
ステップS620にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、ナビゲーションプロセッサ430の屋外測位部432は、その測位信号に対して、メモリ420に一時的に保存されていた符号パターン(前述の「ロック」が行なわれた符号パターン、以下「ロックした符号パターン」)を用いて重畳することにより、その信号を構成するサブフレームから、航法メッセージを取得する。ステップS622にて、屋外測位部432は、取得した4つ以上の航法メッセージを用いて位置を算出するための通常の航法メッセージ処理を実行する。
【0219】
ステップS624にて、屋外測位部432は、その処理の結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を計算するための処理を実行する。たとえば、位置情報提供装置100が、4つ以上の衛星から発信された各測位信号を受信している場合には、距離の算出は、各信号から復調された航法メッセージに含まれる各衛星の軌道情報、時刻情報等を用いて行なわれる。
【0220】
また、他の局面において、ステップS612において、位置情報提供装置100が、衛星によって発信された測位信号(屋外信号)と屋内発信機からの信号(屋内信号)とを受信している場合には、ステップS640にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋外測位部432は、ベースバンドプロセッサ410によって送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレーム中のデータを取得する。この場合、位置情報提供装置100は、衛星からの信号および屋内送信機からの信号を受信していることになるため、いわば「ハイブリッド」モードとして作動していることになる。したがって、各衛星からの信号については、時刻データを有する航法メッセージが取得され、屋内送信機からの信号については、上記座標値その他の位置情報を有するデータが取得される。すなわち、ステップS642にて、屋内測位部434は、屋内送信機200−1によって発信された測位信号から、X座標値563、Y座標値564、Z座標値565を取得する処理を行ない、また、GPS衛星によって発信された測位信号から航法メッセージを取得し、処理を行なう。その後、制御は、ステップS624に移される。この場合、ステップS624では、位置の算出に用いる信号を決定するための振り分けが、たとえば、屋内信号および屋外信号の強度に基づいて行なわれる。一例として、屋内信号の強度が屋外信号の強度よりも大きい場合には、屋内信号が選択され、当該屋内信号に含まれる座標値が、位置情報提供装置100の位置とされる。
【0221】
一方、ステップS612にて、測位信号の発信源が屋内である場合、たとえば、屋内信号の強度が所定のレベル以上である場合に、続いて、ステップS630にて、屋内測位処理が行われる。
たとえば、屋内測位処理では、Q相信号の受信モードとなっているかを判断部414が判断する。Q相信号の受信モーでない場合(たとえば、L1 C/Aの受信モードまたはL1CのI相信号の受信モード)は、続いて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋内測位部434は、ベースバンドプロセッサ410から送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレームから、メッセージデータを取得する。このメッセージデータは、衛星から送信される測位信号に含まれる航法メッセージに代えて、屋内送信機によって発信される測位信号に含まれるものである。メッセージデータのフォーマットは、したがって、航法メッセージのフォーマットと同じフォーマットであることが好ましい。屋内測位部434は、そのデータから座標値(すなわち、屋内送信機の設置場所を特定するためのデータ(たとえば、信号560におけるX座標値563、Y座標値564、Z座標値565))を取得する。なお、このような座標値に代えて、設置場所あるいは設置場所の住所を表わすテキスト情報がフレームに含まれている場合には、当該テキスト情報が取得される。
【0222】
一方、ステップS630において、Q相信号の受信モーである場合は、続いて、ステップS636において、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータ(送信機ID)を取得する。ステップS638において、位置情報提供装置100は、この送信機IDをネットワークを介して送信することで、サーバ(図示せず)から、当該送信機IDに対応するSVG地図情報データを受信する。
【0223】
ステップS650にて、地図描画処理部436は、位置の算出結果に基づいてディスプレイ440に位置情報を表示させるための処理を実行する。具体的には、取得された座標を表示するための画像データあるいは屋内送信機200−1の設置場所を表示するためのデータを生成し、ディスプレイ440に送出する。ディスプレイ440は、そのようなデータに基づいて表示領域に位置情報提供装置100の位置情報を表示する。
【0224】
図21は、図20の屋内測位処理(S630)において、送信機ID(SID)とサーバからのSVG地図情報データとに基づいて、位置情報の提示を行う場合の処理を概念的に示す図である。図21では、位置情報提供装置100は、携帯電話機などのモバイル機器であるものとして説明する。
【0225】
図21を参照して、屋内送信機200は、屋内施設に入る際に、施設入口/内部で、メッセージタイプが4の信号を用いて、短縮URLを発信し、当該SVGコンテナ(屋内地図+情報レイヤ+SID変換テーブル)を利用者の位置情報提供装置100に送信する。
【0226】
位置情報提供装置100では、屋内施設に入った後に、現在の測位信号の発信源が屋内発信機200であると判断した場合は、まず、位置情報提供装置100において、屋内測位モジュールとして機能する屋内測位部434は、屋内送信機から送信された識別子を判別して、地図描画処理部436内の識別子・軌道情報モジュールに通知する。地図描画処理部436内のウェブブラウザモジュールは、識別子・軌道情報モジュールから通知された識別子(送信機ID(SID))に基づいて、上記URLで特定される情報提供サーバ1230上のデータから、識別子と当該識別子に対応した屋内送信機の属性情報との変換テーブルを含むSVG地図情報をネットワーク(たとえば、インターネット)経由で受信する。
【0227】
ウェブブラウザモジュールは、ウェブブラウザとしてSVG地図をディスプレイ440表示するとともに、SVG地図上に、識別子を受信した屋内送信機の位置も表示する。
【0228】
以上のような構成とすることで、SVG地図情報を位置情報提供装置100のローカルに取得後は、ローカルに格納した変換テーブルを用い、屋内送信機と端末側にて外部サーバ参照せずに端末のみで場所解決を行い、屋内地図の現在地更新及び近傍情報の更新を行うことで、移動体である人間などの移動速度(たとえば、歩行速度)に追従した高速な連続測位/情報配信が実現される。
【0229】
なお、SVG地図情報の中に含まれる、屋内送信機から送信される屋内送信機の識別子と屋内送信機の位置情報との変換テーブルにおいて、さらに、各屋内送信機の識別子に対応して、屋内送信機におけるスペクトラム拡散変調時のPRNコード(拡散コード)を識別するための情報も含ませることとすることも可能である。このPRNコード(拡散コード)を識別するための情報としては、たとえば、PRNコードのID情報とすることができる。このようにすると、地図をダウンロードするということは、設備の入り口近傍の屋内送信機の識別子だけでなく、その周辺の屋内送信機(たとえば、同じフロアに存在する複数の屋内送信機)の識別子も、受信機側で一括して事前に情報として把握できることになる。この場合、受信機側で測位信号を捕捉する際に、いずれの拡散コードを使用して補足すればよいのかアシストされることにもなり、一層、高速で測位信号を捕捉することが可能となる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、SVG地図情報の中に、屋内送信機から送信される屋内送信機の識別子と屋内送信機の位置情報との変換テーブルを含める構成であった。
【0230】
実施の形態2では、位置情報提供装置100が、SVG地図情報を取得する際に、さらに、屋外測位の際に使用する測位衛星の軌道情報をも取得する構成とする。
【0231】
すなわち、たとえば、位置情報提供装置100が、軌道情報を持たない状態からスタートする場合(コールドスタート)などでは、屋内から屋外へのハンドオーバー時の衛星データ取得に相応の時間を要するためスムーズな測位の受け渡しが困難となる。しかし、屋内において地図情報を獲得する際に、併せて、測位衛星の軌道情報をダウンロードしておくことが可能となれば、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度を向上させるとともに測位時間を短縮することができる。
【0232】
図22は、屋内送信機からの当該屋内送信機の識別子とサーバからのSVG地図情報データとに基づいた、屋内測位の処理と、SVG地図情報データと併せて受信する軌道情報を用いた屋外測位処理とを概念的に示す図である。図22でも、位置情報提供装置100は、携帯電話機などのモバイル機器であるものとして説明する。
【0233】
図22を参照して、実施の形態2の測位システムにおいては、屋内から屋外へと移動する際に劣化する測位精度及び測位時間の問題を解決するため、実施の形態1のSVGコンテナデータ配信の際に、衛星軌道データも併せて配信する。
【0234】
まず、インターネット上には、測位衛星の軌道情報を提供するための軌道情報データベースが設けられている。情報提供サーバ(ウェブサーバ)は、配信しようとするSVG地図の示す場所と現在時刻とで決定される軌道情報を、軌道情報データベースから取得するものとする。
【0235】
すなわち、実施の形態1と同様にして、屋内送信機100は、屋内施設に入る際に、施設入口/内部で、メッセージタイプが4の信号を用いて、短縮URLを発信し、当該SVGコンテナ(屋内地図+情報レイヤ+SID変換テーブル)を利用者の位置情報提供装置100に送信する。
【0236】
位置情報提供装置100では、屋内施設に入った後に、現在の測位信号の発信源が屋内発信機200であると判断した場合は、まず、位置情報提供装置100において、屋内測位モジュールとして機能する屋内測位部434は、屋内送信機から送信された識別子を判別して、地図描画処理部436内の識別子・軌道情報モジュールに通知する。地図描画処理部436内のウェブブラウザモジュールは、識別子・軌道情報モジュールから通知された識別子(送信機ID(SID))に基づいて、上記URLで特定される情報提供サーバ1230上のデータから、識別子と当該識別子に対応した屋内送信機の属性情報との変換テーブルを含むSVG地図情報をネットワーク(たとえば、インターネット)経由で受信する。
ここで、取得対象となる建物のSVGコンテナ(URL)が確定することにより、併せて、屋内測位の対象となる施設の位置(施設代表点の緯度経度座標など)及び時刻が特定され、衛星測位に必要な衛星軌道情報も確定する。URLを参照して、SVGコンテナを取得する時に当該エリア/時刻の衛星軌道データも併せて情報提供サーバ1230から送信し、位置情報提供装置100にローカルに(メモリ420内に)識別子と対応づけて保存する。具体的には、SVGコンテナのURL(屋内送信機のメッセージタイプが4である信号による短縮URLとして送信)を参照/取得する際のHTTP通信のヘッダ情報に当該識別子に対応した衛星軌道データ埋め込み送信し、ブラウザのCookieに格納する方式を用いる(Cookieに格納することでサーバ側からの有効期限の制御が可能となる)。
【0237】
ウェブブラウザモジュールは、ウェブブラウザとしてSVG地図をディスプレイ440表示するとともに、SVG地図上に、識別子を受信した屋内送信機の位置も表示する。
【0238】
さらに、位置情報提供装置100においては、屋内から屋外に出た際に、屋外測位部432は、蓄積されている衛星軌道情報のうちから最適な(たとえば、もっとも新しく情報提供サーバ1230から受信した衛星軌道情報)を選択して、GPS衛星からの測位信号に含まれる衛星軌道情報を用いるのではなく当該衛星軌道情報を用いて、GPS衛星からの測位信号の受信までの時間遅れに基づいて、現在位置を計算する。
【0239】
以上のような構成とすることで、SVG地図情報を位置情報提供装置100のローカルに取得後は、ローカルに格納した変換テーブルを用い、屋内送信機と端末側にて外部サーバ参照せずに端末のみで場所解決を行い、屋内地図の現在地更新及び近傍情報の更新を行うことで、移動体である人間などの移動速度(たとえば、歩行速度)に追従した高速な連続測位/情報配信が実現される。しかも、屋内から屋外に出た場合にも、最適な軌道衛星情報を用いて屋外測位を行うことが可能となる。
【0240】
図23は、実施の形態2の位置情報提供装置100における屋内測位処理(図20のステップS630)の処理を説明するための第1のフローチャートである。
【0241】
まず、位置情報提供装置100において、屋内測位用のソフトウェアの動作が起動すると、メッセージタイプが4である信号により受信した短縮URLにより、地図描画処理部436は、屋内地図についてのSVG地図情報のURLを特定する(ステップS6000)。
【0242】
次に、地図描画処理部436は、上記URLで特定される情報提供サーバ1230上のデータからSVG地図情報を取得する(ステップS6002)。そして、地図描画処理部436は、SVG地図情報から屋内送信機の識別情報と当該屋内送信機の位置情報とを対応づけた変換テーブルを抽出し(S6012)、メモリ420に場所識別子情報(場所識別子変換テーブル)として格納する。さらに、地図描画処理部436は、SVG地図情報のHTTPヘッダより衛星軌道情報を取得して(S6022)、ブラウザのCookieとして衛星軌道データをメモリ420に格納する(S6024)。
【0243】
地図描画処理部436は、SVG地図情報に対応する地図をブラウザ上に表示し(S6030)、ユーザの操作に応じて、以後も連続して測位処理を行う(S6032)か、あるいは、測位の停止または再開を行う(S6034)。
【0244】
図24は、図23における測位処理を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、屋外地図もSVG技術を用いた地図情報としてメモリ420内に格納されているものとする。屋外地図については、事前に、所定の媒体からメモリ420にロードしておいてもよいし、あるいは、通信部450により情報提供サーバ1230からダウンロードしてメモリ420に格納しておいてもよい。
【0245】
図24を参照して、まず、ベースバンドプロセッサ412の動作(GPS衛星からの測位モジュールへの測位リクエスト)により位置情報が取得されると(S6100)、判断部416は、取得した情報を判定し(S6102)、取得された情報が、緯度経度座標である場合は、当該緯度経度座標に対応する位置を中心点に設定して(S6112)、SVG地図情報により表示される地図を更新して表示する(S6114)。
【0246】
一方、判断部416が、取得されたのは屋内送信機の識別情報(送信機ID(SID))であると判定した場合は(S6102)、地図描画処理部436は、屋内測位部434から受け取った当該識別子を、メモリ420に格納されている場所識別子情報(場所識別子変換テーブル)と照合する(S6120)。地図描画処理部436が、照合に成功すると(S6122)、地図描画処理部436は、当該識別子に対応する位置を地図の中心点に設定し(S6124)、SVG地図情報による地図の表示を更新する(S6126)。さらに、地図描画処理部436は、照合に成功した識別子に対応するSVG地図情報と同時に取得された衛星軌道データが存在すれば(S6128)、当該衛星軌道データを有効化し(S6130)、上記SVG地図情報と同時に取得された衛星軌道データが存在しなければ(S6128)、当該衛星軌道データを無効化する(S6132)。
【0247】
一方、ステップS6102において、場所と関連付いた識別子が取得されていないと判定された場合は、地図描画処理部436は、所定のエラー処理やSVG地図情報の再取得・部分変更などの予め定められている処理を実行する(S6150)。
【0248】
図25は、図24におけるベースバンドプロセッサ412の動作(GPS衛星からの測位モジュールへの測位リクエスト)の処理のフローを説明するためのフローチャートである。
【0249】
図25を参照して、まず、ベースバンドプロセッサ412と判断部416との協働により、屋内測位信号の受信が試みられ(S6200)、かつ、屋内測位信号の受信が成功した場合には(S6202)、受信した屋内送信機の識別子(あるいは、屋内送信機の設定によっては、屋内送信機の設置された場所の緯度経度情報)を、地図描画処理部436に返す(S6212)。
【0250】
一方、屋内測位信号の受信が成功しない場合には(S6202)、続いて、判断部416は、有効な衛星軌道データが存在するか否かを判断し(S6220)、有効な衛星軌道データが存在する場合は、当該データを屋外測位のための衛星軌道データとして設定する(S6222)。
【0251】
続いて、ベースバンドプロセッサ412と屋外測位部432との協働により、屋外の測位衛星からの測位信号が受信され(S6224)、緯度経度情報の取得に成功すると(S6226)、取得した緯度経度情報(あるいは、さらに高さに関する情報)が地図描画処理部436に返される(S6228)。一方、屋外測位部432が、屋外の測位衛星からの測位信号による緯度経度情報の取得に失敗した場合は、エラー情報が地図描画処理部436に返される(S6230)。
【0252】
なお、ステップS6220で有効な衛星軌道データが存在しない場合は、コールドスタートとなり、屋外の測位衛星からの測位信号から衛星軌道データの抽出が行われる。
【0253】
したがって、実施の形態1のSVGコンテナの参照/取得と併せ、当該エリア/時刻の衛星軌道データを非同期/バックグラウンドで取得しておくことで、事後に建物内部から屋外に出る際の測位のハンドオーバー時にタイムロス少なく衛星測位が可能となる。
【0254】
すなわち、以上の構成により、実施の形態1の位置情報提供装置100が奏する効果に加えて、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度を向上させるとともに測位時間を短縮することができる。
【0255】
なお、以上の説明では、地図情報は、SVG技術を用いて表示データが表現されるものとし、かつ、この地図表示のためのSVGデータ内に、屋内送信機から送信される屋内送信機の識別子と屋内送信機の位置情報との変換テーブルを含める構成として説明した。このような構成(SVGコンテナ)とすることで、地図情報と変換テーブルを一体として管理し、かつ配信できるため、位置情報サーバでの管理と処理が容易となるという利点がある。
【0256】
ただし、地図情報と変換テーブルとは、このような構成に限定されるものではない。たとえば、以下のような構成とすることができる。
【0257】
1)地図情報は、数値地図であってスケーラブルに地図を表示できるベクトルデータとし、変換テーブルは、別個のデータとして配信する構成としてもよい。
【0258】
2)屋内の地図情報は、CADデータとして配信し、変換テーブルは、このCADデータ上の位置と識別子との対応を示す変換テーブルを別のデータとして配信してもよい。このとき、CADデータは、ベクトル画像であってもよいし、ラスタ画像であってもよいものの、地図の拡大・縮小等の簡便さからは、ベクトル画像が望ましい。
【0259】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0260】
10 位置情報提供システム、110,111,112 GPS衛星、120,121,122 送信機、100,100−1,100−2,100−3,100−4 位置情報提供装置、130 ビル、200,200−1,200−2,200−3 屋内送信機、210 無線I/F,220 外部同期リンクポート,221 外部クロックポート,230 基準クロックI/Oブロック,240 デジタル処理ブロック,250 アナログブロック,1220 インターネット。
【技術分野】
【0001】
本発明は位置情報を提供する技術に関し、ナビゲーション信号を送信するナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置に関する。本発明は、より特定的には、測位信号を発信する衛星から発信された信号が届かない環境下においても位置情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の測位システムとしてGPS(Global Positioning System)が知られている。GPSに用いられる信号(以下、「GPS信号」)を発信するための衛星(以下、GPS衛星)は、地上から約2万kmの高度で飛行している。利用者は、GPS衛星から発信された信号を受信し、復調することにより、GPS衛星と利用者との間の距離を計測することができる。したがって、地上とGPS衛星との間に障害がない場合には、GPS衛星から発信された信号を用いた測位が可能である。しかし、たとえば、都市部においてGPSを利用する場合、林立する建物が障害となって、利用者の位置情報提供装置が、GPS衛星から発信された信号を受信できないことが多い。また、建物による信号の回折あるいは反射により、信号を用いた距離の測定に誤差が生じ、結果として、測位の精度が悪化することが多かった。
【0003】
また、壁や屋根を貫通した微弱なGPS信号を室内において受信する技術もあるが、受信状況は不安定であり、測位の精度も低下する。
【0004】
以上、測位についてGPSを例にとって説明したが、上述した現象は衛星を用いた測位システムについて一般的に言えることである。なお、衛星測位システムは、GPSに限られず、たとえば、ロシア共和国におけるGLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、欧州におけるGalileo等のシステムを含むものとする。
【0005】
ここで、位置情報の提供に関する技術は、たとえば、特開2006−67086号公報(特許文献1)に開示されている。
【0006】
しかしながら、特開2006−67086号公報に開示された技術によれば、リーダあるいはライタは、位置情報を提供するシステムに固有のものであり、汎用性にかけるという問題点がある。また、干渉を避けるため、送信出力を抑える必要があり、位置情報を受信可能な範囲が限定され、連続した位置情報の取得ができないほか、広い範囲をカバーするためには極めて多数の送信機が必要となるという問題点があった。
【0007】
また、位置情報の取得あるいは通知に関し、たとえば、固定電話であれば設置場所が予め知られているため、固定電話から発信された電話によって、その発信場所を特定することができる。しかしながら、携帯電話の普及に伴い、移動体通信が一般的になっているため、固定電話のようにして発信者の位置情報を通知することができない場合が増えている。一方、緊急時の通報に関し、携帯電話からの通報に位置情報を含めることについての法整備も進められている。
【0008】
従来の測位機能を有する携帯電話の場合、衛星からの信号を受信できる場所では位置情報が取得されるため、携帯電話の位置を通知することが可能である。しかしながら、屋内、地下街のように電波が受信できない場所においては、従来の測位技術によっては、位置情報を取得できないという問題点があった。
【0009】
そこで、たとえば、GPS信号に類似する信号を発信できる複数の送信機を室内に配置し、GPSと同様の3辺測量による原理に基づき位置を求めるという技術も考えられる(たとえば、特許文献2を参照)。しかしながら、この場合、各送信機の時刻が同期していることが必要になり、送信機が高価になるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に開示された発明では、電波の遮蔽物・反射物の配置が、測位のための受信端末の移動する方向について、一定の配置となっていることを利用して、マルチパス等の影響を軽減しようとする技術である。
【0011】
さらに、特許文献3には、屋内において、送信電力を制御し、かつ、屋内では、上記のような3辺測量ではなく、単に、位置情報をGPS信号と互換なフォーマットで送信することで、屋内での測位におけるシステム構成を簡易化しつつ、かつ、測位の精度を向上させるための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−67086号公報
【特許文献2】特開2000−180527号公報
【特許文献3】特開2007−278756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、一般には、屋内での位置情報を提供するためには、単に、屋内送信機から受信機の位置(または、特許文献3に記載の技術では、屋内送信機の位置)を特定できるだけでは、不十分であり、当該屋内についての地図も、受信機側で記憶しておくことが必要になる。
【0014】
一方で、地図をスケーラブルに表示可能な技術として、SVG(Scalable Vector Graphics)技術が知られている。SVG技術を用いた地図としては、たとえば、日本の市街地の地図については、国土地理院からも情報が開示されている。SVG技術は、以下のような特徴がある。
1)SVGは、W3CやOMA等のグローバルな標準化団体において国際標準化が行われている「オープン・スタンダード」なフォーマットである。
2)デバイスやプラットフォームに依存しないサービスの実現や、データの継続的な利用が担保される。
3)SVGは「意味情報を持ったXMLデータ」であり、コンテンツの組合わせに際し、利用者側のコンテクストに即しクライアント側で表示内容の動的制御が可能である。
4)SVGはベクター形式の画像フォーマットであり、地図画像の高品質な拡大/縮小/回転が可能である。
【0015】
そして、SVGのようなスケーラブルな地図情報であって、相互に参照可能な地図情報を用いて、複数の地理情報サーバを連携して地図の表示を行う技術としては、たとえば、特許第3503397号公報などに開示がある。
【0016】
ただし、屋内における地図として、上述したSVGのように、スケーラブルな地図データを使用した場合に、このような屋内地図と屋内送信機との配置の情報を適切に受信機側で処理できなければ、現在位置の表示が遅れてしまう等の問題が生じてしまう。
【0017】
さらに、屋内での測位を行っている状態から屋外での測位の状態への遷移した場合には、屋外における測位のために必要な情報、たとえば、測位衛星の軌道情報などについて、最新の情報を受信機側で保持していない場合には、やはり、現在位置の表示が遅れてしまう等の問題が生じてしまう。
【0018】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、屋内測位送信機からの測位信号による測位時間の短縮を実現することが可能なナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置を提供することである。
【0019】
この発明の他の目的は、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度の向上と測位時間の短縮を実現することが可能なナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明の1つの局面に従うと、 複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上の施設内に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、送信アンテナと 施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置のうち、ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報と、施設内の地図情報を取得するための外部機器のネットワーク上での位置を特定するための資源識別情報とを記憶するための記憶装置と、ナビゲーション信号に含まれる識別情報と資源識別情報のメッセージ信号を生成するメッセージ生成手段と、ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、ナビゲーション信号を生成する変調手段と、ナビゲーション信号を、送信アンテナから送信する送信手段をさらに備える。
【0021】
好ましくは、ナビゲーション信号の信号フォーマットは、衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである。
【0022】
好ましくは、メッセージ生成手段は、衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである複数の信号フォーマットのうち、信号の繰り返し周期がもっとも短い信号フォーマットで、識別情報を含むメッセージ信号を生成する。
【0023】
この発明の他の局面に従うと、複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能であり、かつ、地上の施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置からのスペクトラム拡散信号であって、施設内において当該ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報を各々含む複数のナビゲーション信号を用いて、位置情報を提供する位置情報提供装置であって、スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、ネットワーク上の外部機器と通信するための通信手段と、ナビゲーション信号についての衛星測位信号と同一系列の複数の拡散コードのパターンを格納する記憶手段と、並列に設けられ、かつ複数の拡散コードのパターンについて並行して相関処理を行い、複数のナビゲーション信号を識別して復調するための復調手段と、ナビゲーション信号を識別して復調できた場合、所定のナビゲーション信号送信装置からのナビゲーション信号から外部機器のネットワーク上の位置を特定するための資源識別情報を取得するとともに、識別された複数のナビゲーション信号のうちのいずれか1つにより識別情報を抽出する抽出手段と、通信手段により、資源識別情報に基づいて、外部機器から、施設内の地図を表示するための地図情報および施設内のナビゲーション信号送信装置の位置と識別情報との対応関係を示す対応情報とを取得し、施設内の地図において識別情報を受信したナビゲーション信号送信装置の位置を示す地図画像を表示するための画像信号を生成する地図描画処理手段とを備える。
【0024】
好ましくは、ナビゲーション信号の信号フォーマットは、衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである。
【0025】
好ましくは、地図情報は、SVG(Scalable Vector Graphics)形式のデータであり、対応情報は、SVG形式のデータとして記述される。
【0026】
好ましくは、対応情報は、地図情報内に含まれる複数のナビゲーション信号送信装置の位置と複数の識別情報との対応関係とを一括して含み、
復調手段は、対応情報に基づいて、選択される拡散コードを用いて相関処理を実行する。
【0027】
好ましくは、抽出手段は、地図情報を外部機器から取得する際に、測位衛星についての衛星軌道データを併せて外部機器から取得し、位置情報提供装置は、複数の測位衛星からの衛星測位信号を受信して測位する際に、外部機器から取得した衛星軌道データを使用して、測位を実行する屋外測位手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0028】
この発明のナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置によれば、受信機側において、屋内測位送信機からの測位信号による測位時間の短縮可能である。
【0029】
また、この発明のナビゲーション信号送信装置および位置情報提供装置によれば、受信機側において、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度の向上と測位時間の短縮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】位置情報提供システム10の構成を表わす図である。
【図2】屋内送信機200のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】屋内送信機200が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。
【図4】FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号の搬送波のL1帯(1575.42MHz)に乗せられる測位用の信号であるC/A(Coarse and Acquisition)コードのベースバンド信号、または、新しい測位衛星システム(たとえば、日本の準天頂衛星システム)のL1帯で使用される測位用の信号であるL1Cコードのベースバンド信号に対して、それぞれの信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245aの構成を説明するための機能ブロック図である。
【図5】L1 C/Aコードの信号と、L1Cコードの信号のスペクトル強度分布を示す図である。
【図6】FPGA245のファームウェアをL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245bの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】FPGA245のファームウェアをL1Cコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245cの構成を示す機能ブロック図である。
【図8】GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号500の構成を表わす図である。
【図9】L1C互換信号の第1の構成を表わす図である。
【図10】L1C互換信号の第2の構成を表わす図である。
【図11】3ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図12】4ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図13】ショートIDを含むL1C/A信号3200のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図14】ミディアムIDを含むL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。
【図15】ワード数に応じて構成されるフレーム構成を表わす図である。
【図16】ショートIDと、位置情報とを含むフレーム3500を概念的に表わす図である。
【図17】位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【図18】本実施の形態に係る位置情報提供装置100の使用態様を表わす図である。
【図19】SVG地図情報のデータ(SVGコンテナ)と、当該SVG地図情報のデータで表示される地図画像とを対比して示す図である。
【図20】位置情報提供装置100のベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
【図21】図20の屋内測位処理(S630)において、送信機ID(SID)とサーバからのSVG地図情報データとに基づいて、位置情報の提示を行う場合の処理を概念的に示す図である。
【図22】屋内送信機からの当該屋内送信機の識別子とサーバからのSVG地図情報データとに基づいた、屋内測位の処理と、SVG地図情報データと併せて受信する軌道情報を用いた屋外測位処理とを概念的に示す図である。
【図23】実施の形態2の位置情報提供装置100における屋内測位処理(図20のステップS630)の処理を説明するための第1のフローチャートである。
【図24】図23における測位処理を説明するためのフローチャートである。
【図25】図24におけるベースバンドプロセッサ412の動作(GPS衛星からの測位モジュールへの測位リクエスト)の処理のフローを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供システム10について説明する。図1は、位置情報提供システム10の構成を表わす図である。位置情報提供システム10は、地上の上空約2万kmの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「測位信号」と表わす。)を発信するGPS衛星110,111,112,113と、位置情報を提供する装置として機能する位置情報提供装置100−1〜100−4とを備える。位置情報提供装置100−1〜100−4を総称するときは、位置情報提供装置100と表わす。位置情報提供装置100は、たとえば、携帯電話、カーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、ハードウェアの構成としては、従来の測位装置を有する端末と同様の構成を有するが、ファームウェアその他のソフトウェアを変更することにより、本発明の実施の形態に係る位置情報提供装置100が、屋内でも測位可能な端末装置として、実現される。
【0033】
ここで、測位信号は、いわゆるスペクトラム拡散された信号であり、たとえば、いわゆるGPS信号である。しかしながら、その信号はGPS信号に限られない。なお、以下では説明を簡単にするために、測位のシステムをGPSを一例として説明するが、本発明は、他の衛星測位システム(たとえば、Galileo、準天頂衛星システムQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等)にも適用可能である。
【0034】
測位信号の中心周波数は、たとえば、1575.42MHzである。測位信号の拡散周波数は、たとえば1.023MHzである。この場合、測位信号の周波数は、既存のGPSのL1帯におけるC/A(Coarse and Acquisition)信号またはL1C信号の周波数と同一となる。したがって、既存の測位信号受信回路(たとえばGPS信号受信回路)のフロントエンドが流用できるため、位置情報提供装置100は、新たなハードウェアの回路を追加することなく、フロントエンドからの信号処理を行うソフトウェアを変更するのみで、測位信号を受信することができる。
【0035】
他の局面において、測位信号は、1.023MHzの矩形波によって変調されていてもよい。この場合、たとえば、L1帯において新たな送信が計画される測位信号のデータチャネルと同一であれば、利用者は、新しいGPSの信号を受信、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。なお、矩形波の周波数は、1.023MHzが好ましい。変調のための周波数は、既存のC/A信号、および/または、他の信号との干渉を回避するためのスペクトラム分離とのトレードオフによって定められ得る。なお、変調の態様はこれに限られない。
【0036】
GPS衛星110には、測位信号を発信する送信機120が搭載されている。GPS衛星111,112,113にも、同様の送信機121,122,123がそれぞれ搭載されている。
【0037】
位置情報提供装置100−1と同様の機能を有する位置情報提供装置100−2,100−3,100−4は、以下に説明するように、ビル130その他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。すなわち、ビル130の1階の天井には、屋内送信機200−1が取り付けられている。位置情報提供装置100−4は、屋内送信機200−1から発信される測位信号を受信する。同様に、ビル130の2階および3階の各フロアの天井にも、それぞれ屋内送信機200−2,200−3が取り付けられている。ここで、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星110,111,112,113の時刻(以下、「衛星時刻」という。)とは、互いに独立したものでよく、必ずしも同期している必要はない。ただし、各衛星時刻は、それぞれ同期している必要がある。したがって、各衛星時刻は、各衛星に搭載された原子時計により制御されている。また、必要に応じて、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻である地上時刻も、相互に同期していることが好ましい。
【0038】
もっとも、本発明では、屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻と、衛星時刻との同期を比較的簡単な装置構成でとることが可能なため、システムの構成として、衛星時刻と地上時刻とを同期させる必要がある場合には、このような同期に対応することが可能である。
【0039】
GPS衛星の各送信機から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって航法メッセージを変調することにより生成される。航法メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データ等を含む。各送信機120〜123は、さらに、それぞれ、当該送信機120〜123自身、あるいは送信機120〜123が搭載される各GPS衛星を識別するためのデータ(たとえば、PRN−ID(Identification))を保持している。
【0040】
位置情報提供装置100は、各擬似雑音符号を発生するためのデータおよびコード発生器を有している。位置情報提供装置100は、測位信号を受信すると、各衛星の送信機または各屋内送信機ごとに割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、後述する復調処理を実行し、受信された信号がどの衛星またはどの屋内送信機から発信されたものであるかを特定することができる。また、測位信号の1つであるL1C信号には、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉・追尾を防ぐことができる。
【0041】
[GPS衛星に搭載される送信機]
GPS衛星に搭載される送信機の構成については、周知であるので、以下では、GPS衛星に搭載される送信機の構成の概略について説明する。送信機120,121,122,123は、それぞれ、原子時計と、データを格納する記憶装置と、発振回路と、測位信号を生成するための処理回路と、処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナ等を有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データ等を有する航法メッセージとを格納している。各送信機がL1C/A信号を送信する場合、処理回路は、PRN−IDとなり得る符号パターンによって測位信号を生成する。したがって、受信した測位信号の符号パターンが特定されれば、その測位信号を送信した送信機が識別される。
【0042】
一方、各送信機がL1C信号を送信する場合、記憶装置は、PRN−IDを格納している。この場合、処理回路は、PRN−IDを含む測位信号を生成する。したがって、L1C信号として生成された測位信号が受信されると、その測位信号からPRN−IDが取得される。
【0043】
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
【0044】
ここで、各送信機120〜123毎に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機ごと(すなわちGPS衛星ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散する。送信機120〜123の各々は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して、宇宙空間に発信する。
【0045】
上述のように、送信機120〜123は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで、「有害な干渉をおこさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、たとえばL1帯と称される搬送波によって送信されている。各送信機120,121,122,123は、たとえば、同一の周波数を有する測位信号を拡散スペクトル通信方式にしたがって発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が、同一の位置情報提供装置100−1に受信される場合にも、各々の測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。
【0046】
なお、地上の屋内送信機からの測位信号についても、衛星から送信された信号と同様に、複数の屋内送信機からの信号は、互いに混信を受けることなく受信されることができる。
【0047】
[屋内送信機200のハードウェア構成]
図2を参照して、屋内送信機200について説明する。図2は、屋内送信機200のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、屋内送信機200は、屋内送信機200−1,200−2,200−3の総称である。
【0048】
屋内送信機200は、無線インタフェース(以下、「無線I/F」と称す)210と、デジタル処理ブロック240と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されて、各回路部分の動作のための基準クロックを供給するための基準クロック入出力ブロック(以下、「基準クロックI/Oブロック」と称す)230と、デジタル処理ブロック240に電気的に接続されているアナログ処理ブロック250と、アナログ処理ブロック250に電気的に接続されて、測位のための信号を送出するアンテナ(図示せず)と、屋内送信機200の各部への電源電位の供給を行うための電源(図示せず)とを備える。
【0049】
なお、電源は、屋内送信機200に内蔵されてもよいし、外部からの電力の供給を受け付ける態様であってもよい。
【0050】
[無線通信インタフェース]
無線I/F210は、無線通信のインタフェースであり、近距離無線通信、たとえば、ブルートゥース(Bluetooth)などや、PHS(Personal Handy-phone System)や携帯電話網のような無線通信により、外部からのコマンドを受信したり、外部との間で設定パラメータやプログラム(ファームウェア等)のデータを受信したり、あるいは、必要に応じて外部にデータを送信するためのものである。
【0051】
このような無線I/F210を備えることにより、屋内送信機200については、屋内の天井等に設置した後であっても、設定パラメータ、たとえば、屋内送信機200が送信する位置データ(屋内送信機200が設置されている場所を表わすデータ)を変更したり、あるいは、ファームウェアの変更により、異なる通信方式への対応を可能としたりすることができる。
【0052】
なお、無線I/F210を介した屋内送信機200へのアクセスは、IDおよびパスワードによって保護されていることが好ましい。このようにすると、屋内送信機200の管理者以外の第三者によるデータあるいはプログラムの改変を防止することができる。
【0053】
なお、本実施例では、無線でのインタフェースを想定しているが、設置場所への配線の敷設や設置の手間等を考慮しても、有線インタフェースとすることができる場合には、有線とすることも可能である。
【0054】
また、通信は、公衆回線、LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)シリアル配信等により実現されるが、特に限定されない。
【0055】
[デジタル処理ブロック]
デジタル処理ブロック240は、無線I/F210からのコマンドに応じて、あるいは、プログラムに従って、屋内送信機200の動作を制御するプロセッサ241と、プロセッサ241に搭載され、プロセッサ241の実行するプログラムを記憶するRAM(Random Access Memory)242と、無線I/F210からのデータのうち、設定パラメータ等を記憶するためのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)243と、プロセッサ241の制御のもとに、屋内送信機200の送
出するベースバンド信号を生成するフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:以下、「FPGA」と称す)245と、無線I/F210からのデータのうち、FPGA245のファームウェアを記憶するためのEEPROM244と、FPGA245から出力されるベースバンド信号をアナログ信号に変更してアナログブロック250に与えるデジタル/アナログコンバータ(以下、「D/Aコンバータ」と称す)247とを含む。
【0056】
すなわち、デジタル処理ブロック240は、測位のための信号として屋内送信機200によって送信される信号の源泉となるデータを生成する。デジタル処理ブロック240は、アナログ処理ブロック250に対して、生成したデータをビットストリームとして送出する。
【0057】
特に限定されないが、たとえば、EEPROM244に格納されているファームウェアプログラムは、FPGA245に電源が投入されると、FPGA245にロードされる。このファームウェアプログラム情報(ビットストリームデータ)は、FPGA245内のSRAM(Static Random Access Memory)246で構成されているコンフィグレーションメモリにロードされる。ロードされたビットストリームデータの個々のビットデータがFPGA245上で実現する回路の情報元となり、FPGA245に装備されているリソースをカスタマイズしてファームウェアプログラムで特定される回路を実現する。FPGA245では、このようにハードウェアに依存せず、コンフィグレーションデータを外部に持つことで、高い汎用性とフレキシビリティを実現できることになる。
【0058】
また、プロセッサ241は、無線I/F210から受け取る外部コマンドに応じて、EEPROM243に格納されるデータに基づいて、FPGA245のSRAM246(レジスタ)に、当該屋内送信機200に設定されるパラメータとして、以下のものを格納させる。
【0059】
1)擬似雑音符号(PRNコード)
2)送信機ID
3)送信機座標
4)メッセージ(これは、FPGA245内で衛星からの航法メッセージと同一のフォーマットに整形される)
5)デジタルフィルタの選択パラメータ
6)屋内送信機200の設置場所に応じて、SVGにより表現された屋内地図情報(SVG地図情報)を供給するウェブサーバのURL(Uniform Resource Locator:統一資源位置指定子)
ここで、このようなURL情報を格納するのは、屋内送信機200が設置される建物等の施設への屋外からの入り口付近の屋内送信機のみとしてもよい。
【0060】
なお、ここで、ウェブサーバ上で上記SVG地図情報の存在する位置を特定するための情報は、より一般的には、URI(Uniform Resource Identifier:統一資源識別子)であってよい。以下、上記URIを単に「資源識別情報」とも呼ぶ。ただし、説明の簡単のため、この資源識別情報は、以下、URL情報であるものとして説明を行う。
【0061】
なお、後に説明するように、FPGA245内には、たとえば、1MHz、2MHz、4MHz(中心周波数:1575.42MHz)についてのバンドパスフィルタが予めプログラムされており、「デジタルフィルタの選択パラメータ」とは、このいずれのバンドパスフィルタを選択するかのパラメータである。
【0062】
なお、プロセッサ241の動作のためのプログラムも、EEPROM243に予め格納されており、当該プログラムは、屋内送信機200が起動する時に、EEPROM243から読み出され、RAM242に転送される。
【0063】
なお、プログラムあるいはデータを格納するための記憶装置は、EEPROM243または244に限られない。少なくとも、データを不揮発的に保存できる記憶装置であればよい。また、後述するように、外部からのデータが入力される場合には、データを書き込むことができる記憶装置であればよい。EEPROM243に格納されるデータのデータ構造については後述する。
【0064】
(アナログ処理ブロック)
アナログ処理ブロック250は、デジタル処理ブロック240から出力されたビットストリームを用いて、1.57542GHzの搬送波に変調して送信信号を生成し、アンテナに送出する。その信号は、アンテナより発信される。
【0065】
すなわち、デジタル処理ブロック240のD/Aコンバータ247から出力された信号は、アップコンバータ252でアップコンバートされ、バンドパスフィルタ(BPF)253をアンプ254を通過して所定の周波数帯域の信号のみが増幅された後、再度、アップコンバータ255でアップコンバートされて、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタにより所定の帯域の信号が取り出された後に、可変アッテネータ257およびRFスイッチ258により、設定された強度の信号に変換されて、アンテナから送出される。
【0066】
なお、信号生成の態様は上述のものに限られない。たとえば、上記の例では、2段階の変調が行なわれる例が示されているが、1段階の変調が用いられてもよく、あるいは、信号変換が直接行なわれるものであってもよい。
【0067】
なお、アップコンバータ252およびアップコンバータ255で使用されるクロックは、基準クロックI/Oブロック230からFPGA245に供給されるクロックが、さらに、てい倍器251において、てい倍されたものが使用される。
【0068】
また、可変アッテネータ257とRFスイッチ258のレベルの設定は、FPGA245をスルーしたプロセッサ241からの制御信号により制御される。信号強度の変更は、可変アッテネータ257によって行なわれる。可変アッテネータ257もRFスイッチ258も、後に説明する「IQ変調振幅の個別可変機能」の一部として動作する。
【0069】
このようにして、衛星からの測位のための信号と同様の構成(同一の信号フォーマット)を有する信号が、屋内送信機200から発信される。この場合、信号の内容は、衛星から発信された測位信号に含まれる内容とは、全く同一ではないものの、両者の信号は、受信機側からみれば相互にコンパチブルであるといえる。屋内送信機200から発信される信号の構成の一例は、後述する(図8)。
【0070】
以上の説明においては、デジタル処理ブロック240におけるデジタル信号処理を実現するための演算処理装置としてFPGA245が用いられたが、ソフトウェアにより無線装置の変調機能を変更可能な装置であれば、その他の演算処理装置が使用されてもよい。
【0071】
また、図2においては、クロック信号(Clk)がデジタル処理ブロック240からアナログ処理ブロック250に供給されているが、基準クロックI/Oブロック230からアナログ処理ブロック250に直接に供給されてもよい。
【0072】
さらに、説明を明確にするために、本実施の形態においては、デジタル処理ブロック240とアナログ処理ブロック250とが別個に示されているが、物理的には、1つのチップに混載されてもよい。
【0073】
(基準クロックI/Oブロック)
基準クロックI/Oブロック230は、デジタル処理ブロック240の動作を規定するクロック信号、あるいは搬送波を生成するためのクロック信号を、デジタル処理ブロック240に供給する。
【0074】
基準クロックI/Oブロック230は、「外部同期モード」では、外部同期リンクポート220へ外部のクロック生成器から与えられる同期用信号に基づいて、ドライバ234がクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。この「外部同期モード」での動作については、後にさらに詳しく説明する。
【0075】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「外部クロックモード」では、外部クロックポート220へ与えられる外部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL(Phase Locked Loop)回路233から出力されるクロック信号と外部クロックとの
同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0076】
一方、基準クロックI/Oブロック230は、「内部クロックモード」では、内部クロック生成器231が生成する内部クロック信号をマルチプレクサ232で選択し、PLL回路233から出力されるクロック信号と内部クロックとの同期をとって、同期の取られたクロック信号をデジタル処理ブロック240等に供給する。
【0077】
なお、無線I/F210から、プロセッサ241により出力される信号により、送信機の内部状態(たとえば、「PLL制御」信号)を監視することができる。あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200から発信される信号を拡散変調するための擬似雑音符号の符号パターンの入力を、あるいは、無線I/F210は、屋内送信機200から発信されるべき他のデータの入力も受け付けることができる。当該他のデータは、たとえば、屋内送信機200が設置されている場所を表わすテキストデータ(位置データ)である。あるいは、屋内送信機200がデパートその他の商業施設に設置されている場合には、宣伝広告用のデータが、当該他のデータとして屋内送信機200に入力可能である。
【0078】
擬似雑音符号(PRNコード)の符号パターンは、屋内送信機200に入力されると、EEPROM243において予め規定された領域に書き込まれる。その後は、その書き込まれたPRN−IDが、測位のための信号に含められる。その他のデータも、EEPROM243において、そのデータの種類に応じて予め確保された領域に書き込まれる。
【0079】
[EEPROM243に格納されるデータのデータ構造]
図3を参照して、屋内送信機200のEEPROM243に格納されるデータのデータ構造について説明する。
【0080】
図3は、屋内送信機200が備えるEEPROM243におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。EEPROM243は、データを格納するための領域300〜350を含む。
【0081】
領域300には、送信機を識別するための番号として、送信機IDが格納されている。送信機IDは、たとえば当該送信機の製造時にあるいは設置時にメモリに不揮発的に書き込まれる数字および/または英文字その他の組み合わせである。あるいは、他の局面において、送信機IDは、一意なIDとして、当該送信機が設置されている位置(地理的位置情報、住所その他の人為的に定められた位置情報など)に関連付けられている。
【0082】
当該送信機に割り当てられた擬似雑音符号のPRN-IDは、領域310に格納されて
いる。送信機の名称は、テキストデータとして、領域320に格納されている。
【0083】
当該送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域330に格納されている。擬似雑音符号の符号パターンは、衛星用の擬似雑音符号と同一の系列に属する符号パターンのうちから、本発明の実施の形態に係る位置情報提供システム用に予め割り当てられた有限個の複数の符号パターンのうちから選択されたものであり、衛星ごとに割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンとは異なる符号パターンである。
【0084】
本位置情報提供システム用に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンは、有限個であるが、屋内送信機の数は、各送信機の設置場所の広さ、あるいは設置場所の構成(ビルの階数等)に応じて異なり、符号パターンの数よりも多い複数の屋内送信機が使用される場合もある。したがって、同一の擬似雑音符号の符号パターンを有する複数の送信機が存在し得る。この場合は、同一の符号パターンを有する送信機の設置場所を、信号の出力を考慮して決定すればよい。そうすることにより、同一の擬似雑音符号の符号パターンを用いる複数の測位信号が同一の位置情報提供装置によって同時期に受信されることは、防止し得る。
【0085】
屋内送信機200が設置されている場所を特定するための位置データは、領域340に格納されている。位置データは、たとえば、緯度、経度、高度の組み合わせとして表わされる。領域340において、当該位置データに加えて、もしくは位置データに代えて、住所、建物の名称などが格納されてもよい。本発明では、「緯度、経度、高度の組み合わせ」、「識別子」、「住所、建物の名称」、「緯度、経度、高度の組み合わせと識別子と住所、建物の名称」のように、そのデータのみで送信機200−1の設置場所を特定可能なデータを総称して「位置特定データ」と呼ぶ。
【0086】
また、領域342には、後に詳しく説明するように、SVG地図情報を供給するウェブサーバ(情報提供サーバ)のURL情報が格納されている。
【0087】
さらに、領域350には、フィルタ選択のためのフィルタ選択パラメータが格納される。特に限定されないが、たとえば、フィルタ選択パラメータ「0」「1」「2」にそれぞれ対応して、バンドパスフィルタの帯域幅として、それぞれ「1MHz」「2MHz」「4MHz」が選択されるものとする。
【0088】
ここで、前述のように、PRN−ID、通信機名称、擬似雑音符号の符号パターン、位置特定データ、URL情報、フィルタ選択パラメータは、無線インタフェース210を介して入力される他のデータに変更可能である。
【0089】
[FPGA245の構成]
以下では、図2に示したFPGA245により実現される回路について説明する。
【0090】
まず、図4は、FPGA245により実現される回路のうち、現行GPS信号の搬送波のL1帯(1575.42MHz)に乗せられる測位用の信号であるC/A(Coarse and Acquisition)コードのベースバンド信号、または、新しい測位衛星システム(たとえば、日本の準天頂衛星システム)のL1帯で使用される測位用の信号であるL1Cコードのベースバンド信号に対して、それぞれの信号フォーマットに従った変調を行うための変調器245aの構成を説明するための機能ブロック図である。
【0091】
ここで、たとえば、C/Aコードに対しては、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調が行われ、L1Cコードに対しては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調が行われるものとする。なお、以下の説明で明らかになるように、デジタル値をアナログ信号に変換する変調方式としては、BPSK変調やQPSK変調に限られず、FPGA245で実現できる他の方式でもよい。
【0092】
ここで、図4に示した構成では、基本的には、QPSK変調器の構成となっているものの、I相に乗せる信号とQ相に乗せる信号とを同一の信号とすれば、結果として、BPSK変調と等価となることを利用して、BPSK変調とQPSK変調の双方を実現できる回路構成としている。ただし、変調器245aが実現する変調方式に従って、各方式で独立な回路をプログラムしてもよい。
【0093】
図4を参照して、変調器245aは、EEPROM243内に格納されているPRNコードを受けて格納するPRNコードレジスタ2462および2464と、後に説明するようなメッセージデータ生成装置245bまたはメッセージデータ生成装置245cからのC/AコードまたはL1Cコードの信号フォーマットに従ったメッセージデータを受けて格納するメッセージコードレジスタ2466および2468とを備える。
【0094】
ここで、PRNコードレジスタ2462および2464には、外部からEEPROM243内に設定されたPRNコードが入力されるとともに、上述したように、BPSK変調では、メッセージコードレジスタ2466および2468ならびにPRNコードレジスタ2462,2464のそれぞれに同一のデータが格納される。一方、QPSK変調の場合には、メッセージコードレジスタ2466および2468ならびにPRNコードレジスタ2462,2464には、それぞれ、I相用のデータとQ相用のデータの異なるデータが格納される。
【0095】
変調器245aは、さらに、PRNコードレジスタ2462から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2466から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2452と、PRNコードレジスタ2464から読み出される時系列データとメッセージコードレジスタ2468から読み出される時系列データとを乗算する乗算器2454と、プロセッサ241からのレベルコントロール信号LVC1により制御され、乗算器2452から入力された信号の強度を変更するレベルコントロール回路2456と、プロセッサ241からのレベルコントロール信号LVC2により制御され、乗算器2454から入力された信号の強度を変更するレベルコントロール回路2458と、レベルコントロール回路2456からの出力に対してフィルタ選択パラメータにより選択される帯域幅のバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2460と、レベルコントロール回路2458からの出力に対してフィルタ選択パラメータにより選択される帯域幅のバンドパスフィルタとして機能するFIRフィルタ2462とを備える。
【0096】
変調器245aは、さらに、基準クロックI/Oブロック230からのクロック信号に基づいて、信号フォーマットに従った変調基準クロックを生成するクロック回路2472と、クロック回路2472からの信号に同期して、予め設定されたサイン波およびコサイン波に対応するデータをそれぞれI相用変調信号とQ相用変調信号として出力するルックアップテーブル2474と、ルックアップテーブル2574から出力されたサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2460からの信号とを乗算する乗算器2464と、ルックアップテーブル2574から出力されたコサイン波に相当する信号とFIRフィルタ2462からの信号とを乗算する乗算器2466と、乗算器2464および2466からの信号を加算する加算器2468と、加算器2368からの出力をバッファリングしてD/Aコンバータ247に出力するための出力バッファ2470とを備える。
【0097】
以上のような変調器245aからD/Aコンバータ247へ出力される信号に含まれるデータについては、以下のようになる。
【0098】
[現行GPS信号とコンパチブルな信号を出力する場合]
FPGA245のファームウェアにより、現行のGPS信号とコンパチブルな信号(L1 C/Aコードとコンパチブルな信号:L1 C/A互換信号)を出力する回路構成とした場合には、変調器245aは、Q相信号、I相信号とも、送信機の「緯度・経度・高さ」の情報をメッセージとして変調することで、BPSK変調された信号を生成する。ここで、「コンパチブルな信号」とは、共通の信号フォーマットを有するために受信機としてはフロントエンド部を共通にして受信可能な信号を意味する。
【0099】
[L1C信号とコンパチブルな信号を出力する場合:L1C互換信号]
次に、FPGA245のファームウェアにより、L1C信号とコンパチブルな信号を出力する回路構成とする場合について、以下説明する。
【0100】
まず、前提として、衛星からのL1C信号について簡単に説明する。
衛星からのL1C信号は、上述のとおり、QPSK変調されており、Q相の信号には、受信機の捕捉用のパイロット信号が変調されて乗っている。Q相の信号は、I相の信号よりも3dBレベルが高い。一方、I相の信号には、航法メッセージ等が乗っている。
【0101】
なお、ここで、Q相の信号に捕捉用のパイロット信号がのっているのは、以下のような理由による。
【0102】
すなわち、現行のGPS信号のC/Aコードは、1023チップの信号で1msec周期であり、20周期について、同じ信号が続くので、インテグレーションでS/Nを上げることができるのに対して、L1C信号は、10230チップで10msec周期であるため、同じ信号が1周期しかないので、インテグレーションでS/Nを上げるということができない。そのため、衛星からの信号のQ相信号を捕捉用として用いることが必要となる。
【0103】
これに対して、屋内送信機200からのL1C信号にコンパチブルな信号については、Q相信号には、送信機IDを乗せることができる。屋内送信機200によって発信される信号の強度が、GPS衛星から送信される信号の強度よりも強いため、捕捉用の信号が必要ないからである。これは、GPS衛星からの信号は地上に伝播する時点では微弱になっているため捕捉用の信号が必要である一方、屋内送信機の場合は、マルチパスあるいは不安定な伝播を防ぐために信号強度を高める必要がある、という事情に基づく。一方、I相の信号には、位置特定データ、たとえば、緯度・経度・高さのデータが乗せられる。
【0104】
図5は、L1 C/Aコードの信号と、L1Cコードの信号のスペクトル強度分布を示す図である。なお、図5においては、L1帯で、C/Aコードとともに衛星から送信される軍事用のコードであるPコードと、L1C信号とともに衛星から送信される主として軍事用途であるMコードの信号についても、スペクトル強度を合わせて示している。
【0105】
図5に示すように、C/Aコードについては、中心周波数1575.42MHzにメインのピークとその周りにサイドローブの信号が存在する。一方、L1Cコードは、C/Aコードとの干渉を抑えるために、中心周波数1575.42MHzにはヌル点が存在し、その両側にメインピークが2つあり、さらにその外側にサイドローブの信号が存在する。
【0106】
このため、C/Aコードについては、1MHz帯域幅のバンドパスフィルタにより、メインピークのみを取り出すことができ、L1Cコードは、2MHz帯域幅のバンドパスフィルタにより、メインピークのみを取り出すことができる。
【0107】
上述のとおり、屋内送信機200から送信される信号が受信される地点での当該信号の強度は、GPS衛星から送信された信号が地上で受信される場合の信号強度に比べて大きいので、これにより目的の周波数成分のみを送信することとなり、他の信号との干渉を抑制することが可能となる。
【0108】
[メッセージデータ生成装置245b]
図6は、FPGA245のファームウェアをL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245bの構成を示す機能ブロック図である。
【0109】
以下に説明するとおり、メッセージデータ生成装置245bは、L1帯のC/Aコード内の航法メッセージに相当する部分に、外部から与えられた位置特定データ等を信号フォーマットに従って、乗せる処理を行うものである。
【0110】
メッセージデータ生成装置245bは、プロセッサ241からのコマンド2480を受付けるコマンドインタフェース2482と、コマンドインタフェース2482から与えられるコマンドに基づいて、L1帯のC/Aコード内のTOW(Time Of Week)の情報を読み取るTOWコマンド解釈器2484と、TOWコマンド以外のコマンドの内容を読み取るコマンド解釈器2488と、TOWコマンド解釈器2484からの信号をもとに、TOW情報を生成するTOW生成器2486と、TOW生成器2486からのTOW情報とコマンド解釈器2488からのメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2490とを備える。
【0111】
メッセージバンク2490は、TOW情報を格納するための各30ビットの容量のバンク01および02と、メッセージ情報を格納するための各30ビットの容量のバンク03〜10とを備える。各バンク01〜10は、それぞれ24ビット分の情報を格納する領域2490aを有するとともに、CRC生成器2492は、この24ビット分のデータからエラー検出用のCRCコード(6ビット)を生成して、各バンクの領域2490aに続く領域2490bに格納する。
【0112】
シーケンスカウンタ2494は、基準クロックI/Oブロック230からのクロックに基づくMSGクロックMSGClockに同期して、順次、バンク01〜10に読み出し信号を与え、これに応じて、バンク01〜10からのデータが読み出されて、メッセージレジスタ2496に格納される。
【0113】
メッセージレジスタ2496のデータが、メッセージコードレジスタ2466および2468の双方に書き込まれる。以後の処理は、図4の変調器245aの動作として説明したとおりである。
【0114】
[メッセージデータ生成装置245c]
図7は、FPGA245のファームウェアをL1Cコードにコンパチブルな信号を送信するように設定した場合のメッセージデータ生成装置245cの構成を示す機能ブロック図である。
【0115】
以下に説明するとおり、メッセージデータ生成装置245cは、L1Cコード内の航法メッセージとパイロット信号に相当する部分に、外部から与えられた位置特定データ等や送信機ID等を信号フォーマットに従って、乗せる処理を行うものである。
【0116】
メッセージデータ生成装置245cは、プロセッサ241からのコマンド2500を受付けるコマンドインタフェース2502と、コマンドインタフェース2502から与えられるコマンドに基づいて、メッセージとして送信するデータの内容を解釈するためのメッセージコマンド解釈器2504と、メッセージコマンド解釈器2504からのI相用のメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2506と、メッセージコマンド解釈器2504からのQ相用のメッセージ情報を受けて格納するメッセージバンク2508とを備える。
【0117】
メッセージバンク2506は、I相用の情報を格納するための各150ビットの容量のバンクI00〜I10を含む。メッセージバンク2508は、Q相用の情報を格納するための各48ビットの容量のバンクQ00〜Q02と、Q相用の情報を格納するための各63ビットの容量のバンクQ03〜Q05と、Q相用の情報を格納するための各75ビットの容量のバンクQ06〜Q08とを含む。なお、Q相用の各バンクの容量は、これらの値に限定されるものではなく、たとえば、バンクQ00〜Q08の容量をすべてI相用のバンクと同じ容量である150ビットとすることもできる。
【0118】
ここで、Q相用のメッセージバンク2508には、たとえば、送信機IDが格納される。一方、I相用のメッセージバンク2506には、上述した「位置特定データ」だけでなく、たとえば、無線I/F210を介して屋内送信機200の外部から与えられる「宣伝広告用のデータ」「交通情報」「気象情報」「災害情報」も格納され得る。災害情報は、たとえば、地震予知、地震発生情報等を含む。ここで、上記の「外部」には、上記の各情報を提供する事業者、官公庁などによって運営されるサーバ装置等を含む。これらの情報は、リアルタイムで当該外部のサーバ装置から送られる場合もあれば、定期的にアップデートされるものであってもよい。あるいは、当該屋内送信機200の運営管理者が随時データを更新するものであってもよい。たとえば、各屋内送信機200がデパートに設置されている場合には、デパートの営業活動の1つとして、宣伝広告用のデータが当該運営管理者によって屋内送信機200に与えられてもよい。
【0119】
特に限定されないが、バンクQ00〜Q08に格納されるデータついては、BCHの誤り訂正符号が付加されており、バンクI00〜I10に格納されるデータについては、誤り検出符号が付加される構成とすることができる。これにより、データ長の短い送信機IDが繰り返し含まれているバンクQ00〜Q08のデータについては、この短い周期で受信するごとに正しいデータが得られることで、早期に受信データを確定できる。これにより、Q位相側ではI位相側よりも早期に受信データを確定して、後に説明するような位置情報の取得処理(サーバへの問い合わせ)に移ることができる。
【0120】
メッセージデータ生成装置245cは、さらに、コマンドインタフェース2502からのコマンドに応じたシーケンスで、I相信号に含ませるデータについてバンクI00〜I10からデータを読み出すシーケンスマネージャ2510と、コマンドインタフェース2502からのコマンドに応じたシーケンスで、Q相信号に含ませるデータについてバンクQ00〜Q08からデータを読み出すシーケンスマネージャ2512とを備える。
【0121】
メッセージデータ生成装置245cは、さらに、基準クロックI/Oブロック230からのクロックに基づくMSGクロックMSGClockに同期して、順次、シーケンスマネージャ2510およびシーケンスマネージャ2512からデータを読み出し、それぞれ別々に、メッセージコードレジスタ2466および2468に書き込むメッセージレジスタ2514を備える。
【0122】
メッセージレジスタ2514のデータが、メッセージコードレジスタ2466および2468の双方に書き込まれる。以後の処理は、図4の変調器245aの動作として説明したとおりである。
【0123】
なお、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号が屋内送信機200から送信される場合、受信機側(位置情報提供装置側)でも、I相用の送信機側の150ビットのメッセージバンクI00〜I10にそれぞれ対応して、I00〜I10で区別される記憶領域が設けられており、また、Q相用のメッセージバンクQ00〜Q08にそれぞれ対応して、Q00〜Q08で区別される記憶領域が設けられているものとする。このようにすることで、新しく、バンクI00〜I10またはバンクQ00〜Q08に格納されたデータのいずれかを受信するごとに、受信機側の記憶領域の内容が更新される。このために、バンクI00〜I10、Q00〜Q08に格納されるデータには、いずれのバンクのデータであるかを識別可能な識別子が含まれているものとする。
【0124】
以上、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号を屋内送信機200から送信されるメッセージについて、まとめると以下のようである。なお、以下では、メッセージデータ生成装置245cで生成された信号を「L1C互換メッセージ」と呼ぶ。
【0125】
L1C互換メッセージは、I相信号とQ相信号とによって構成されている。I相信号とQ相信号には、独立の別個のメッセージがそれぞれ変調されている。詳しくは、Q相信号には、たとえば、送信機IDのような短い情報が変調されている。Q相信号のデータ長はI相信号のそれよりも短いため、受信機は、Q相信号を速やかに捕捉することができ、当該IDをすぐに取得することができる。しかしながら、当該IDは、それ自身で意味(たとえば位置情報)を有さないため、受信機は送信機IDのみで位置を知ることはできない。そこで、受信機は、たとえば携帯電話網を介して位置情報を提供するサーバ装置のサイトにアクセスし、当該送信機IDをサーバ装置に送信し、当該送信機IDに関連付けられている位置情報を当該サーバ装置から取得することになる。
【0126】
一方、I相信号には、位置特定データが変調されている。さらに、ある局面において、I相信号に含まれるメッセージを可変とする構成が可能である。たとえば、I相信号には、位置情報のほかに、交通情報、気象情報、災害情報などの可変メッセージを変調することができる。これにより、屋内送信機200と外部ネットワークとが接続された場合に、当該可変メッセージをリアルタイムに更新し、受信機の使用者に、適切な情報を提供することができる。I相信号は位置情報自身を含むため、受信機の使用者は、当該受信機をネットワークに接続することなく、自己の位置を知ることができる。したがって、たとえば、災害が発生した場合であって通信回線が輻輳しているときにも、L1C互換メッセージを受信できれば当該受信機の位置を特定可能である。この場合、当該受信機が携帯電話機として当該位置を発信できれば、信号の受信者は、その信号の発信者(すなわち被災者)の位置を特定しやすくなる。
【0127】
このように、I相信号とQ相信号とは、変調される情報自体の相違点と、信号の長さのような構成上の相違点とを有する。受信機が、位置情報を取得するためには、少なくともいずれかの信号を受信できればよい。したがって、受信機の使用者は、必要に応じて、I相信号およびQ相信号のいずれを受信するかを選択することができる。この選択は、いずれの信号を受信するかを規定する設定を使用者が受信機に入力することにより、実現される。あるいは、通信回線の輻輳により通信回線によるサーバへの接続がタイムアウトにより失敗した場合などに、受信機において、I相信号の受信モードからQ相信号の受信モードへと自動的に切り替える構成としてもよい。
【0128】
なお、C/A信号は、PRN−IDとメッセージ(たとえば、位置情報)とを含む。そして、メッセージをリアルタイムで更新することも可能であるため、C/A信号に最新のメッセージを含めることができる。
【0129】
[屋内送信機200から送信される信号のデータ構造]
まず、メッセージデータ生成装置245bで生成されるメッセージを乗せたL1帯のC/Aコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
【0130】
[L1 C/A互換信号]
図8を参照して、送信機から送信される測位信号について説明する。図8は、GPS衛星に搭載される送信機によって発信される信号500の構成を表わす図である。信号500は、300ビットの5つのサブフレーム、すなわち、サブフレーム510〜550から構成される。サブフレーム510〜550は、当該送信機によって、繰り返し送信される。サブフレーム510〜550は、たとえば、それぞれ300ビットであり、50bps(bit per second)のビット率で送信される。したがって、この場合、各サブフレームは、6秒で送信される。
【0131】
第1番目のサブフレーム510は、30ビットのTOH511と、30ビットの時刻情報512と、240ビットのメッセージデータ513とを含む。時刻情報512は、詳細には、サブフレーム510が生成される際に取得された時刻情報と、サブフレームIDとを含む。ここで、サブフレームIDとは、他のサブフレームから第1のサブフレーム510を区別するための識別番号である。メッセージデータ513は、GPS週番号、クロック情報、当該GPS衛星のヘルス情報、軌道精度情報等を含む。
【0132】
第2番目のサブフレーム520は、30ビットのTOH521と、30ビットの時刻情報522と、240ビットのメッセージデータ523とを含む。時刻情報522は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ523は、エフェメリス(ephemeris、放送暦)を含む。ここで、エフェメリスとは
、測位信号を発信する衛星の軌道情報をいう。エフェメリスは、当該衛星の航行を管理する管制局によって逐次更新される、高精度な情報である。
【0133】
第3番目のサブフレーム530は、第2番目のサブフレーム520と同様の構成を有する。すなわち、第3番目のサブフレーム530は、30ビットのTOH531と、30ビットの時刻情報532と、240ビットのメッセージデータ533とを含む。時刻情報532は、第1番目のサブフレーム510における時刻情報512と同様の構成を有する。メッセージデータ533は、エフェメリスを含む。
【0134】
第4番目のサブフレーム540は、30ビットのTOH541と、30ビットの時刻情報542と、240ビットのメッセージデータ543とを含む。メッセージデータ543は、他のメッセージデータ513,523,533と異なり、アルマナック情報、衛星ヘルス情報のサマリ、電離層遅延情報、UTC(Coordinated Universal Time )パラメータ等を含む。
【0135】
第5番目のサブフレーム550は、30ビットのTOH551と、30ビットの時刻情報552と、240ビットのメッセージデータ553とを含む。メッセージデータ553は、アルマナック情報と、衛星ヘルス情報のサマリとを含む。メッセージデータ543,553は、各々25ページからの構成されており、ページ毎に、上記の異なる情報が定義されている。ここで、アルマナック情報とは、衛星の概略軌道を表わす情報であり、当該衛星だけでなく、全てのGPS衛星についての情報を含む。サブフレーム510〜550の送信が25回繰り返されると、1ページ目に戻って、同じ情報が発信される。
【0136】
サブフレーム510〜550は、送信機120,121,122からそれぞれ送信される。サブフレーム510〜550が位置情報提供装置100によって受信されると、位置情報提供装置100の位置は、TOH511〜551に含まれる各保守・管理情報と、時刻情報512〜552と、メッセージデータ513〜553とに基づいて、計算される。
【0137】
信号560は、サブフレーム510〜550に含まれる各メッセージデータ513〜553と同じデータ長を有する。信号560は、エフェメリス(メッセージデータ523,533)として表わされる軌道情報に代えて、信号560の発信源の位置を表わすデータを有する点で、サブフレーム510〜550と異なる。
【0138】
すなわち、信号560は、6ビットのPRN−ID561と、15ビットの送信機ID562と、X座標値563と、Y座標値564と、Z座標値565と、高度補正係数(Zhf)566と、アドレス567と、リザーブ568とを含む。信号560は、サブフレーム510〜550に含まれるメッセージデータ513〜553に代わって、屋内送信機200−1,200−2,200−3から送信される。
【0139】
PRN−ID561は、信号560の発信源である送信機(たとえば、屋内送信機200−1,200−2,200−3)に対して予め割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号である。PRN−ID561は、各GPS衛星に搭載されるそれぞれの送信機に対して割り当てられた一群の擬似雑音符号の符号パターンの識別番号とは異なるが、同じ系列の符号列から生成される符号パターンに対して割り当てられた番号である。位置情報提供装置が、受信した信号560から、屋内送信機用に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンのいずれかを取得することで、その信号が、衛星から送信されたサブフレーム510〜550であるのか、あるいは、屋内送信機から送信された信号560であるのかが特定される。
【0140】
X座標値563、Y座標値564およびZ座標値565は、屋内送信機200が取り付けられている位置を表わすデータである。X座標値563、Y座標値564、Z座標値565は、たとえば緯度、経度、高度として表わされる。高度補正係数566は、Z座標値565によって特定される高度を補正するために用いられる。なお、高度補正係数566は、必須のデータ項目ではない。したがって、Z座標値565によって特定される高度以上の精度が要求されない場合には、その係数は用いられなくてもよい。この場合、高度補正係数566のために割り当てられる領域には、たとえば「NULL」を表わすデータが格納される。
【0141】
リザーブ領域568には、「住所、建物の名称」、「宣伝広告用のデータ」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」(たとえば地震情報)が割り当てられる。
【0142】
[L1C互換信号]
次に、メッセージデータ生成装置245cで生成されるメッセージを乗せたL1Cコードにコンパチブルな信号の構造について説明する。
【0143】
以下、I相信号のデータ構造について説明する。
[I相信号の構成1]
図9は、L1C互換信号の第1の構成を表わす図である。図9においては、6つのサブフレームが送信される。第1番目のサブフレームとして、信号810が送信機によって送信される。信号810は、30ビットのTOH811と、30ビットの時刻情報812と、6ビットのPRN−ID813と、15ビットの送信機ID814と、X座標値815と、Y座標値816と、Z座標値817とを含む。信号810の最初の60ビットは、GPS衛星が発信するサブフレーム510〜550の各々の最初の60ビットと同一である。
【0144】
リザーブ領域818には、「住所、建物の名称」、「宣伝広告用のデータ」、「交通情報」、「気象情報」、「災害情報」(たとえば地震情報)が割り当てられる。
【0145】
第2番目のサブフレームとして、信号820が送信機によって送信される。信号820は、6ビットのサブフレームID821と、高度補正係数822と、送信機位置アドレス823とを含む。信号820のサブフレームIDから後方の144ビット(信号820では、高度補正係数822と、送信機位置アドレス823)に、別情報を予め定義することにより、第3番目〜第6番目のサブフレームも同様に送信される。各サブフレームに含まれる情報は、上記のものに限られない。たとえば,位置情報に関する広告、インターネットサイトのURL(Uniform Resource Locators)等が、各サブフレームにおいて予め
定義された領域に格納されてもよい。
【0146】
信号830〜870は、上記の信号810,820および信号820と同じ構造を有する第3〜第6番目のサブフレームの送信例を示す。すなわち、信号830は、第1のサブフレーム831と、第2のサブフレーム832とを含む。第1のサブフレーム831は、GPS衛星から送信されるサブフレーム510〜550と同じヘッダを持つ。第2のサブフレーム832は、信号820に対応するフレームである。
【0147】
信号840は、第1のサブフレーム831と、第3のサブフレーム842とを含む。第1のサブフレーム831は、第1のサブフレーム831と同一である。第3のサブフレームは、信号820と同じ構造を有する。
【0148】
このような構成は、第6番目のサブフレーム872を送信するための信号870まで繰り返される。信号870は、第1のサブフレーム831と、第6のサブフレーム872とを含む。
【0149】
送信機が、信号830から信号870を繰り返し送信すると、第1のサブフレーム831は、各信号の送信毎に送信される。第1のサブフレーム831が送信された後に、他のいずれかのサブフレームが内挿される。すなわち、各サブフレームの送信の順序は、第1のサブフレーム831→第2のサブフレーム832→第1のサブフレーム831→第3のサブフレーム842→第1のサブフレーム→・・・→第6のサブフレーム872→第1のサブフレーム831→第2のサブフレーム832・・・となる。
【0150】
[I相信号の第2の構成]
図10は、L1C互換信号の第2の構成を表わす図である。メッセージデータの構造は、サブフレーム510〜550とは独立に定義されてもよい。
【0151】
図10は、L1C互換信号910の第2の構成を概念的に表わす図である。図10を参照して、信号910は、TOH911と、プリアンブル912と、PRN−ID913と、送信機ID914と、第1の変数915と、X座標値916と、Y座標値917と、Z座標値918と、パリティ/CRC919とを含む。信号920は、信号910と同様の構成を有する。ここで、信号910における第1の変数915に代えて、第2の変数925を含む。
【0152】
各信号は、150ビット長を有する。同じ構造を有する信号が6つ発信される。このような構成を有する信号を、屋内送信機から発信される信号として構成してもよい。
【0153】
図10に示される各信号も、PRN−IDをそれぞれ有するため、位置情報提供装置100は、そのPRN−IDに基づいて、受信した信号の送信源を特定することができる。送信源が屋内送信機であれば、その信号には、X座標値とY座標値とZ座標値とが含まれる。したがって、位置情報提供装置100は、屋内の位置を表示することができる。
【0154】
<信号フォーマット>
本実施の形態に係る屋内送信機200あるいはGPS衛星が送信する信号のフォーマットは、上述の態様に限られない。そこで、図11〜図16を参照して、他のフォーマットについて説明する。
【0155】
[メッセージタイプ=0]
図11は、3ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号は、第1ワード3010と、第2ワード3020と、第3ワード3030とを含む。各ワードの長さは30ビットである。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「0」である。
【0156】
第1ワード3010は、8ビットのプリアンブル3011と、3ビットのメッセージタイプID3012と、8ビットの階データ3013と、2ビットの緯度(LSB)3014と、3ビットの経度(LSB)3015と、6ビットのパリティ3016とを含む。メッセージタイプID3012のビットパターンは、たとえば、000(=タイプ「0」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
【0157】
第2ワード3020は、3ビットのCNT3021と、21ビットの緯度(MSB)3022と、6ビットのパリティ3023とを含む。第3ワード3030は、3ビットのCNT3031と、21ビットの緯度(MSB)3032と、6ビットのパリティ3033とを含む。
【0158】
[メッセージタイプ=1]
図12は、4ワードからなるL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号は、第1ワード3110と、第2ワード3120と、第3ワード3130と、第4ワード3140とを含む。各ワードの長さは30ビットである。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「1」である。
【0159】
第1ワード3110は、8ビットのプリアンブル3111と、3ビットのメッセージタイプID3112と、9ビットの階データ3113と、4ビットのリザーブ3114と、6ビットのパリティ3115とを含む。メッセージタイプID3112のビットパターンは、たとえば、001(=タイプ「1」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
【0160】
第2ワード3120は、3ビットのCNT3121と、21ビットの緯度(MSB)3122と、6ビットのパリティ3123とを含む。第3ワード3130は、3ビットのCNT3131と、21ビットの緯度(MSB)3132と、6ビットのパリティ3133とを含む。第4ワード3140は、3ビットのCNT3141と、12ビットの高度3142と、2ビットのリザーブ3143と、3ビットの緯度(LSB)3144と、3ビットの経度(LSB)3145と、6ビットのパリティ3146とを含む。
【0161】
[メッセージタイプ=3]
図13は、ショートIDを含むL1C/A信号3200のフォーマットを概念的に表わす図である。信号3200のメッセージタイプは、たとえば、「3」である。
【0162】
信号3200は、8ビットのプリアンブル3220と、3ビットのメッセージタイプID3220と、12ビットのショートID(SID)3230と、1ビットのBD3240と、6ビットのパリティ3250を含む。メッセージタイプID3220のビットパターンは、たとえば、011(=タイプ「3」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。
【0163】
[メッセージタイプ=4]
図14は、ミディアムIDを含むL1C/A信号のフォーマットを概念的に表わす図である。この信号のメッセージタイプは、たとえば、「4」である。
【0164】
この信号は、第1ワード3310と、第2ワード3320とを含む。第1ワード3310は、8ビットのプリアンブル3311と、3ビットのメッセージタイプID3312と、12ビットのショートID(IDM)(MSB)3313と、1ビットのBD3314と、6ビットのパリティ3315とを含む。メッセージタイプID3312のビットパターンは、たとえば、100(=タイプ「4」を示す)であるが、タイプに応じてその他のビットパターンも用いられ得る。この信号と、他の信号とが識別されるビットパターンであればよい。第2ワード3320は、3ビットのCNT3321と、21ビットのミディアムID(MID)(LSB)3322と、6ビットのパリティ3323とを含む。
【0165】
図15を参照して、フレーム構成の一例について説明する。図15は、ワード数に応じて構成されるフレーム構成を表わす図である。各ワードの長さは、30ビットである。
【0166】
フレーム3410は、1ワードからなる。フレーム3410は、8ビットのプリアンブル3411と、3ビットのメッセージタイプID3412と、13ビットのデータビット3413と、6ビットのパリティ3414とを含む。
【0167】
フレーム3420は、2ワードからなる。フレーム3420の第1ワードは、8ビットのプリアンブル3421と、3ビットのメッセージタイプID3422と、13ビットのデータビット3423と、6ビットのパリティ3424とを含む。フレーム3420の第2ワードは、3ビットのCNT3425と、21ビットのデータビット3426と、6ビットのパリティ3427とを含む。
【0168】
フレーム3430は、3ワードからなる。フレーム3430の第1ワードは、8ビットのプリアンブル3431と、3ビットのメッセージタイプID3432と、13ビットのデータビット3433と、6ビットのパリティとを含む。フレーム3430の第2ワードは、3ビットのCNT3435と、21ビットの3436と、6ビットのパリティ3437とを含む。フレーム3430の第3ワードは、3ビットのCNT3438と、21ビットのデータビット3439と、6ビットのパリティ3440とを含む。
【0169】
図16を参照して、フレーム構成の他の例について説明する。図16は、ショートIDと、位置情報とを含むフレーム3500を概念的に表わす図である。
【0170】
フレーム3500の第1ワードは、プリアンブル3510と、メッセージタイプID3512と、データビット3512と、パリティ3513とを含む。第2ワードは、プリアンブル3514と、メッセージタイプID3515と、階データ3516と、パリティ3517とを含む。第3ワードは、CNT3518と、緯度データ3519と、パリティ3520とを含む。第4ワードは、CNT3521と、経度データ3522と、パリティ3523とを含む。位置情報は、第2〜第4ワードによって構成される。
(実施の形態1)
(実施の形態1のシステムの概要)
以上説明したとおり、屋内送信機200から送信される信号のフォーマットは、1つのものに限定される訳ではなく、種々のフォーマットでありうる。
【0171】
ただし、以下の説明では、屋内送信機200の位置を識別するための識別子である送信機IDをショートID(以下、SID)として送信するものとして説明する。もっとも、屋内送信機200の位置を識別するための識別子を送信するデータフォーマットとしては、SIDに限定されるものではなく、たとえば、ミディアムID等を使用する構成とすることも可能である。
【0172】
ただし、SIDを識別子として使用した場合、屋内送信機から送信される信号フォーマットのうち、SIDがもっとも短い周期で繰り返し送信されるものであるので、最短の時間で、受信機である位置情報提供装置100側で獲得可能と期待される。
【0173】
実施の形態1における屋内送信機200と位置情報提供装置100により、屋内測位が実行される概要を説明すると、以下のとおりである。
【0174】
1)SIDは単独では場所解決が不可能な間接参照識別子であり、またビット数の制約によりグローバル識別子としての配布利用は不可能である。そこで、SIDをローカル識別子として、実際の送信機の設置/管理単位である個別の「施設単位」(たとえば、建物単位)で一意性が保証されるように、予め発行/管理しておく。
【0175】
2)次に、施設単位で発行/管理されるSIDと各々の屋内送信機の設置場所を、SVGで生成される屋内地図データ上のID基盤を媒介として関連付けを行い(つまり、変換テーブルを作成しておき)、位置情報提供装置100に提供されるSVG地図情報に重畳/内包する(以下、このような変換テーブルを含むSVG地図情報を「SVGコンテナ」と呼ぶ)。
【0176】
3)施設入口/内部で、メッセージタイプが4の信号を用いて、短縮URLを発信し、当該SVGコンテナ(屋内地図+情報レイヤ+SID変換テーブル)を利用者の位置情報提供装置100に送信する(位置情報提供装置100上で屋内地図上の現在地表示及びSID変換テーブルを格納する)。
【0177】
4)当該SVGコンテナを位置情報提供装置100のローカルに取得後は、ローカルに格納した変換テーブルを用い、屋内送信機と端末側にて外部サーバ参照せずに端末のみで場所解決を行い、屋内地図の現在地更新及び近傍情報の更新を行うことで、移動体である人間などの移動速度(たとえば、歩行速度)に追従した高速な連続測位/情報配信を実現する。
[位置情報提供装置100−1(受信機)の構成]
図17を参照して、利用者に位置情報を提示するための位置情報提供装置100について説明する。図17は、位置情報提供装置100のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0178】
位置情報提供装置100は、アンテナ402と、アンテナ402に電気的に接続されているRF(Radio Frequency)フロント回路404と、RFフロント回路404に電気的に接続されているダウンコンバータ406と、ダウンコンバータ406に電気的に接続されているA/D(Analog to Digital)コンバータ408と、A/Dコンバータ408からの信号を受けて、相関処理を行うベースバンドプロセッサ412と、ベースバンドプロセッサ412に電気的に接続されているメモリ420と、ベースバンドプロセッサ412に電気的に接続されているナビゲーションプロセッサ430と、ナビゲーションプロセッサ430に電気的に接続されているディスプレイ440とを備える。
【0179】
ベースバンドプロセッサ412は、A/Dコンバータ408に電気的に接続されているコリレータ410.1〜410.nと、コリレータ410.1〜410.nの相関処理のタイミングの基準となるクロックをそれぞれ供給するための数値制御発信器(NCO:Numerically Controlled Oscillators)411.1〜411.nと、コリレータ410.1〜410.nからの信号をそれぞれ受けて、所定期間について積算処理を行う積算器412.1〜412.nとを含む。
【0180】
ベースバンドプロセッサ412は、さらに、メモリ420に格納されたソフトウェアに基づいて、積算器412.1〜412.nからの信号をデコードするとともに、コリレータ410.1〜410.n、NCO411.1〜411.nおよび積算器412.1〜412.nの動作を制御する制御部414を含む。
【0181】
ここで、一般には、ベースバンドプロセッサ412は、受信信号のドップラー効果の影響を考慮して相関処理を行い、PRNコードおよびその遅延成分についてのサーチだけでなく、制御部414の制御にしたがって、NCO411.1〜411.nの周波数を制御して、周波数についてのサーチも行なう。
【0182】
なお、図8に示した例では、コリレータ410.1〜410.nと、積算器412.1〜412.nとは、ベースバンドプロセッサ412とは独立したハードウェアとする構成としてもよい。あるいは、コリレータ410.1〜410.nと、積算器412.1〜412.nとの機能は、ソフトウェアとして実現することも可能である。
【0183】
メモリ420は、測位信号の各発信源を識別するためのデータである、PRNコードの符号パターンを格納する複数の領域を含む。一例として、ある局面において、48個の符号パターンが用いられる場合には、メモリ420は、図8に示されるように、領域421−1〜421−48を含む。また、他の局面において、それ以上の符号パターンが使用される場合には、さらに多くの領域がメモリ420に確保される。逆に、メモリ420に確保された領域の数よりも少ない符号パターンが使用される場合もあり得る。
【0184】
一例として48個の符号パターンが用いられる場合において、たとえば、24個の衛星が衛星測位システムに用いられる場合、各衛星を識別する24個の識別データと、12個の予備のデータとが、領域421−1〜421−36に格納される。このとき、たとえば、領域421−1には、第1の衛星についての擬似雑音符号の符号パターンが格納されている。ここから、符号パターンを読み出して、受信信号との相互相関処理を行なうことにより、信号の追跡や、信号に含まれる航法メッセージの解読を行なうことができる。なお、ここでは、符号パターンを格納して読み出す方法を例示的に示したが、符号パターン生成器により符号パターンを生成する方法も可能である。符号パターン生成器は、たとえば、2つのフィードバックシフトレジスタを組み合わせることにより実現される。なお、符号パターン生成器の構成および動作は、当業者にとって容易に理解できるものである。したがって、ここでは、それらの詳細な説明は、繰り返さない。
【0185】
同様に、測位信号を発信する屋内送信機に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域421−37〜421−48に格納される。たとえば、第1の屋内送信機についての割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンは、領域432−37および領域432−38に格納されている。なお、メモリ420中には、1つの屋内送信機について、どの拡散コード(PRNコード)が組となって割当てられるかが、予め記憶されていることが望ましい。このような割り当てが予め記憶されている場合は、2つのチャネルについての同期捕捉が、より短縮されることになる。
【0186】
この場合、本実施の形態においては、12個の符号パターン有する屋内送信機が使用可能となるが、同一の位置情報提供装置が受信可能な範囲に同一の符号パターンを使用する屋内送信機がないように、各屋内送信機をそれぞれ配置してもよい。このようにすることによって、6台以上の屋内送信機を、たとえばビル130の同一のフロアに設置することも可能になる。
【0187】
ナビゲーションプロセッサ430は、制御部414から出力されるデータに基づいて測位信号の発信源を判断するとともに、受信された測位信号がダイバーシティ送信されたものであるかを判断し制御部414の動作を制御する判断部416と、メモリ420に格納されたソフトウェアに基づいて、判断部416から出力される信号に基づいて屋外における位置情報提供装置100の位置を測定するための屋外測位部432と、判断部416から出力されるデータに基づいて屋内における位置情報提供装置100の位置を表わす情報を導出するための屋内測位部434とを含む。
【0188】
アンテナ402は、GPS衛星110,111,112からそれぞれ発信された測位信号および屋内送信機200−1から発信された測位信号をそれぞれ受信することができる。また、位置情報提供装置100が携帯電話として実現される場合には、アンテナ402は、前述の信号に加えて、無線電話のための信号あるいはデータ通信のための信号を送受信することもできる。
【0189】
RFフロント回路404のフィルタおよびLNA(Low Noise Amplifier)回路は、アンテナ402によって受信された信号を受けて、ノイズの除去あるいは予め規定された帯域幅の信号のみを出力するフィルタ処理などを行なう。RFフロント回路404から出力される信号は、ダウンコンバータ406に入力される。
【0190】
ダウンコンバータ406は、RFフロント回路404から出力される信号を増幅し、中間周波数として出力する。この信号は、A/Dコンバータ408に入力される。A/Dコンバータ408は、入力された中間周波数信号をデジタル変換処理し、デジタルデータに変換する。デジタルデータは、コリレータ410.1〜410.nに入力される。
【0191】
コリレータ410.1〜410.nは、制御部414がメモリ420から読み出した符号パターンと、受信信号との相関処理を行なう。
【0192】
コリレータ410.1〜410.nの各コリレータは、制御部414から出力される制御信号に基づいて、受信された測位信号と測位信号を復調するために生成されたコードパターンとのマッチングを同時に実行する。
【0193】
具体的には、制御部414は、各コリレータ410.1〜410.nの各々に対して、擬似雑音符号において生じ得る遅延を反映させた(符号位相をずらした)符号パターン(レプリカパターン)を生成する指令を与える。この指令は、たとえば、現行GPSでは、衛星の数×2×1023(用いられる擬似雑音符号の符号パターンの長さ)となる。各コリレータ410.1〜410.nは、各々に与えられた指令に基づいて、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンを用いて符号位相の異なる符号パターンを生成する。そうすると、生成された全ての符号パターンの中には、受信された測位信号の変調に使用された擬似雑音符号の符号パターンに一致するものが1つ存在する。そこで、各符号パターンを用いたマッチング処理を行なうために必要な数のコリレータを並列なコリレータ410.1〜410.nとして予め構成することにより、極く短時間で、擬似雑音符号の符号パターンを特定することができる。この処理は、位置情報提供装置100が屋内送信機からの信号を受信する場合にも同様に適用できる。したがって、位置情報提供装置100の使用者が屋内にいる場合でも、その位置情報を、極く短時間に取得することができる。
【0194】
つまり、並列なコリレータ410.1〜410.nは、最大で、各衛星について規定された擬似雑音符号の符号パターンと各屋内送信機について規定された擬似雑音符号の符号パターンとのすべてについて、並列して、マッチングをとることが可能である。また、コリレータの個数と、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンの個数との関係により、各衛星と各屋内送信機とについて規定された擬似雑音符号の符号パターンのすべてについて、一括して、マッチングを採らない場合でも、複数のコリレータによる並列処理により、大幅に、位置情報の取得に要する時間を短縮できる。
【0195】
ここで、衛星および屋内送信機は、同一の通信方式であるスペクトラム拡散方式で信号を送信しており、衛星および屋内送信機に割り当てられる擬似雑音符号の符号パターンが同一系列のものを使用できるので、並列のコリレータについては、衛星からの信号および屋内送信機からの送信の双方について共用することができ、受信処理は、両者について特段に区別することなく、並行して行うことができる。
【0196】
並列なコリレータ410.1〜410.nは、各コードパターンを用いて、位置情報提供装置100が受信した測位信号を追跡し、当該測位信号のビット配列に一致する配列を有するコードパターンを特定するための処理を行う。これにより、判断部416は、擬似雑音符号の符号パターンが特定されるため、位置情報提供装置100は、受信された測位信号がどの衛星から送信されたものか、あるいは、屋内送信機から送信されたかを判別できる。さらに、判断部416は、受信された測位信号が屋内送信機から送信されたものである場合、その測位信号がダイバーシティ送信されたものか否かについても判断する。また、位置情報提供装置100は、特定された符号パターンを用いて、復調とメッセージの解読とをすることができる。
【0197】
具体的には、判断部416は、上述のような判断を行ない、その判断の結果に応じたデータをナビゲーションプロセッサ430に送出する。判断部416は、受信された測位信号に含まれるPRN−IDがGPS衛星に搭載される送信機以外の屋内送信機200−1等に割り当てられたPRN−IDであるか否かを判断する。
【0198】
ここで、一例として、24個のGPS衛星が測位システムに使用される場合について説明する。この場合、予備のコードを含めると、たとえば、36個の擬似雑音符号が使用される。この時、PRN−01〜PRN−24が、各GPS衛星を識別する番号(PRN−ID)として使用され、PRN−25〜PRN−36が、予備の衛星を識別する番号として使用される。予備の衛星とは、当初打ち上げられた衛星以外に改めて打ち上げられる衛星である。すなわち、このような衛星は、GPS衛星あるいはGPS衛星に搭載された送信機等の故障に備えて打ち上げられる。
【0199】
さらに、仮に、12個の擬似雑音符号の符号パターンがGPS衛星に搭載される送信機以外の屋内送信機200−1等に割り当てられる。この時、衛星に割り当てられたPRN−IDとは異なる番号、たとえばPRN−37からPRN−48が、各送信機ごとに割り当てられる。したがって、この例では、48個のPRN−IDが存在することになる。ここで、PRN−ID〜PRN−48は、たとえば各屋内送信機の配置に応じて当該屋内送信機に割り当てられる。したがって、仮に、各屋内送信機から発信される信号が干渉しない程度の送信出力が使用される場合には、同一のPRN−IDが異なる屋内送信機に用いられてもよい。このような配置により、地上用の送信機のために割り当てられたPRN−IDの数よりも多くの数の送信機が、使用可能となる。
【0200】
そこで、判断部416は、メモリ420に格納されている擬似雑音符号の符号パターン422を参照して、受信された測位信号から取得された符号パターンが、屋内送信機に割り当てられている符号パターンに一致するか否かを判断する。これらの符号パターンが一致する場合には、判断部416は、その測位信号が屋内送信機から発信されたものであると判断する。そうでない場合には、判断部416は、その信号がGPS衛星から発信されたものと判断し、その取得された符号パターンが、どの衛星に割り当てられた符号パターンであるかを、メモリ420に格納されている符号パターンを参照して決定する。なお、判断の態様として、符号パターンが使用される例が示されているが、その他のデータの比較によって、上記の判断が行なわれてもよい。たとえば、PRN−IDを用いた比較が、その判断に使用されてもよい。
【0201】
そして、受信された信号が各GPS衛星から発信されたものである場合には、判断部416は、特定された信号から取得されるデータを屋外測位部432に送出する。信号から取得されるデータには、航法メッセージが含まれる。一方、受信された信号が屋内送信機200−1などから発信されたものである場合には、判断部416は、その信号から取得されるデータを屋内測位部434に送出する。このデータは、すなわち屋内送信機200−1の位置を特定するためのデータとして予め設定された座標値である。あるいは、別の局面において、当該送信機を識別する番号が用いられてもよい。
【0202】
ナビゲーションプロセッサ430において、屋外測位部432は、判断部416から送出されたデータに基づいて位置情報提供装置100の位置を算出するための処理を実行する。具体的には、屋外測位部432は、3つ以上のGPS衛星(好ましくは、4つ以上)から発信された信号に含まれるデータを用いて、各信号の伝播時間を計算し、その計算結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を算出する。この処理は、公知の衛星測位の手法を用いて実行される。この処理は、当業者にとっては容易に理解できるものである。したがって、ここではその説明の詳細は繰り返さない。
【0203】
一方、ナビゲーションプロセッサ430において、屋内測位部434は、判断部416から出力されたデータに基づいて位置情報提供装置100が屋内に存在する場合における測位処理を実行する。前述したように、屋内送信機200−1は、場所を特定するためのデータ(位置特定データ)が含まれる測位信号を発信する。そこで、位置情報提供装置100がそのような信号を受信した場合には、その信号に含まれるデータを取り出し、そのデータを用いて位置情報提供装置100の位置を導出することができる。屋内測位部434は、この処理を行なう。屋外測位部432あるいは屋内測位部434によって算出されたデータを用いるとともに、メモリ420中にすでに格納されているSVG地図情報または通信部450を介して受信したSVG地図情報に基づいて、地図描画処理部436は、ディスプレイ440において、位置情報提供装置100の現在位置を表示するための画像信号を生成して出力する。具体的には、これらのデータは、画面を表示するためのデータに組み込まれ、計測された位置を表わす画像あるいは屋内送信機200−1が設置されている場所を表示するための画像が生成され、ディスプレイ440によって表示される。
【0204】
したがって、地図描画処理部436は、SVG地図情報から地図を表示するためのブラウザとしての機能を有している。
【0205】
また、位置情報提供装置100は、制御部414の制御の下に、外部との間、たとえば、位置情報提供サーバ(図示せず)との間で、データを授受するための通信部450を備える。
【0206】
図17に示した構成において、特に限定されないが、測位信号受信からディスプレイに表示される情報の生成までの信号処理において、アンテナ402、RFフロント回路404、ダウンコンバータ406、A/Dコンバータ408は、ハードウェアにより構成され、ベースバンドプロセッサ412およびナビゲーションプロセッサ430の処理は、メモリ420に格納されたプログラムにより実行することができる。なお、コリレータ410.1〜410.nと積算器412.1〜412.nとの処理については、ハードウェアの代わりにソフトウェアにより実現される構成とすることもできる。
【0207】
図18は、本実施の形態に係る位置情報提供装置100の使用態様を表わす図である。ここで、位置情報提供装置は、携帯電話1200として実現される。携帯電話1200は、屋内送信機1210によって発信された測位信号を受信できる。屋内送信機1210は、インターネット1220に接続されている。インターネット1220には、屋内送信機1210の情報を提供可能な情報提供サーバ1230が接続されている。情報提供サーバ1230には、複数の送信機IDとこれらにそれぞれ対応するSVG地図情報とがデータベースに登録されているものとする。インターネット1220には、携帯電話1200との通信を行なう基地局1240も接続されている。
【0208】
携帯電話1200が、屋内送信機1210によって発信された信号を受信すると、その信号の中から、屋内送信機1210を識別するための送信機IDを取得する。送信機IDは、たとえば、前述のPRN−IDに対応付けられている。携帯電話1200は、その送信機IDを(あるいはPRN−IDとともに)情報提供サーバ1230に対して送信する。具体的には、携帯電話1200は基地局1240との間で通信を開始し、取得した送信機IDが含まれるパケットデータを、情報提供サーバ1230に送出する。
【0209】
情報提供サーバ1230は、その送信機IDを認識すると、送信機IDに関連付けられているデータベースを参照して、そのIDに関連するSVG地図情報を読み出す。情報提供サーバ1230が、そのSVG地図情報のデータを基地局1240に対して送信すると、基地局1240は、そのSVG地図情報のデータを無線発信する。携帯電話1200は、そのデータの着信を検知すると、携帯電話1200の使用者による閲覧操作に従って、そのデータから、送信機1210の位置を取得することができる。
【0210】
図19は、SVG地図情報のデータ(SVGコンテナ)と、当該SVG地図情報のデータで表示される地図画像とを対比して示す図である。
【0211】
図19に示した例では、ある建物の特定のフロアをSVG地図情報のデータが表現している場合を例として示している。SVG地図情報のデータには、以下の情報が含まれる。
【0212】
1)当該SVG地図情報のデータと地理座標との関連付けを示す図面の属性情報。すなわち、一般に、屋外を表している地図と当該フロアを有する建物との位置関係を特定するための情報である。
【0213】
2)フロアの外郭の形状を示す情報。
3)フロア内の区画の形状を示す情報。
【0214】
4)当該フロア内に設置された各屋内送信機の属性情報。当該屋内送信機のIDとフロア内の屋内送信機の位置情報(屋内地図内の位置識別子および位置座標)。この情報が、SIDと屋内送信機の位置との変換テーブルに相当する。
【0215】
図20を参照して、位置情報提供装置100の制御処理について説明する。図20は、位置情報提供装置100のベースバンドプロセッサ410およびナビゲーションプロセッサ430が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
【0216】
ステップS610にて、位置情報提供装置100は、測位信号を取得(追尾、捕捉)する。具体的には、ベースバンドプロセッサ410は、A/Dコンバータ408から、受信された測位信号(デジタル変換処理後のデータ)の入力を受け付ける。ベースバンドプロセッサ410は、擬似雑音符号のレプリカとして、可能な遅延が反映された符号位相が異なる符号パターンを生成し、その符号パターンと受信された測位信号との相関の有無をそれぞれ検出する。生成される符号パターンの数は、たとえば、符号パターンのビット数の2倍である。一例として、たとえば、チップレートが1023ビットである場合、2分の1ビットずつの遅延、すなわち符号位相差を有する2046個の符号パターンが生成され得る。そして、各符号パターンを用いて、受信された信号との相関を取る処理が、並列に実行される。ベースバンドプロセッサ410は、当該相関処理において、予め規定された強度以上の出力が検出された場合に、その符号パターンをロックし、当該符号パターンによって、その測位信号を発信した衛星を特定することができる。当該符号パターンのビット配列を有する擬似雑音符号は、1つしか存在しない。これにより、受信された測位信号をスペクトラム拡散符号化するために使用された擬似雑音符号が特定される。
【0217】
ステップS612にて、ベースバンドプロセッサ410は、その測位信号の発信源を特定する。具体的には、判断部416が、その信号を生成するために変調時に使用された擬似雑音符号の符号パターンを使用する送信機に対応付けられるPRN−IDに基づいて、その信号の発信源を特定する。その測位信号が屋外から発信されたものである場合には、制御はステップS620に移される。その測位信号が屋内において発信されたものである場合には、制御はステップS630に移される。受信した複数の信号が屋外および屋内のそれぞれから発信されたものを含む場合には、制御はステップS640に移される。
【0218】
ステップS620にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、ナビゲーションプロセッサ430の屋外測位部432は、その測位信号に対して、メモリ420に一時的に保存されていた符号パターン(前述の「ロック」が行なわれた符号パターン、以下「ロックした符号パターン」)を用いて重畳することにより、その信号を構成するサブフレームから、航法メッセージを取得する。ステップS622にて、屋外測位部432は、取得した4つ以上の航法メッセージを用いて位置を算出するための通常の航法メッセージ処理を実行する。
【0219】
ステップS624にて、屋外測位部432は、その処理の結果に基づいて位置情報提供装置100の位置を計算するための処理を実行する。たとえば、位置情報提供装置100が、4つ以上の衛星から発信された各測位信号を受信している場合には、距離の算出は、各信号から復調された航法メッセージに含まれる各衛星の軌道情報、時刻情報等を用いて行なわれる。
【0220】
また、他の局面において、ステップS612において、位置情報提供装置100が、衛星によって発信された測位信号(屋外信号)と屋内発信機からの信号(屋内信号)とを受信している場合には、ステップS640にて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋外測位部432は、ベースバンドプロセッサ410によって送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレーム中のデータを取得する。この場合、位置情報提供装置100は、衛星からの信号および屋内送信機からの信号を受信していることになるため、いわば「ハイブリッド」モードとして作動していることになる。したがって、各衛星からの信号については、時刻データを有する航法メッセージが取得され、屋内送信機からの信号については、上記座標値その他の位置情報を有するデータが取得される。すなわち、ステップS642にて、屋内測位部434は、屋内送信機200−1によって発信された測位信号から、X座標値563、Y座標値564、Z座標値565を取得する処理を行ない、また、GPS衛星によって発信された測位信号から航法メッセージを取得し、処理を行なう。その後、制御は、ステップS624に移される。この場合、ステップS624では、位置の算出に用いる信号を決定するための振り分けが、たとえば、屋内信号および屋外信号の強度に基づいて行なわれる。一例として、屋内信号の強度が屋外信号の強度よりも大きい場合には、屋内信号が選択され、当該屋内信号に含まれる座標値が、位置情報提供装置100の位置とされる。
【0221】
一方、ステップS612にて、測位信号の発信源が屋内である場合、たとえば、屋内信号の強度が所定のレベル以上である場合に、続いて、ステップS630にて、屋内測位処理が行われる。
たとえば、屋内測位処理では、Q相信号の受信モードとなっているかを判断部414が判断する。Q相信号の受信モーでない場合(たとえば、L1 C/Aの受信モードまたはL1CのI相信号の受信モード)は、続いて、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータを取得する。具体的には、屋内測位部434は、ベースバンドプロセッサ410から送出された測位信号に対して、当該ロックした符号パターンを重畳することにより、測位信号を構成するサブフレームから、メッセージデータを取得する。このメッセージデータは、衛星から送信される測位信号に含まれる航法メッセージに代えて、屋内送信機によって発信される測位信号に含まれるものである。メッセージデータのフォーマットは、したがって、航法メッセージのフォーマットと同じフォーマットであることが好ましい。屋内測位部434は、そのデータから座標値(すなわち、屋内送信機の設置場所を特定するためのデータ(たとえば、信号560におけるX座標値563、Y座標値564、Z座標値565))を取得する。なお、このような座標値に代えて、設置場所あるいは設置場所の住所を表わすテキスト情報がフレームに含まれている場合には、当該テキスト情報が取得される。
【0222】
一方、ステップS630において、Q相信号の受信モーである場合は、続いて、ステップS636において、位置情報提供装置100は、測位信号の復調を行なうことにより、その信号に含まれるデータ(送信機ID)を取得する。ステップS638において、位置情報提供装置100は、この送信機IDをネットワークを介して送信することで、サーバ(図示せず)から、当該送信機IDに対応するSVG地図情報データを受信する。
【0223】
ステップS650にて、地図描画処理部436は、位置の算出結果に基づいてディスプレイ440に位置情報を表示させるための処理を実行する。具体的には、取得された座標を表示するための画像データあるいは屋内送信機200−1の設置場所を表示するためのデータを生成し、ディスプレイ440に送出する。ディスプレイ440は、そのようなデータに基づいて表示領域に位置情報提供装置100の位置情報を表示する。
【0224】
図21は、図20の屋内測位処理(S630)において、送信機ID(SID)とサーバからのSVG地図情報データとに基づいて、位置情報の提示を行う場合の処理を概念的に示す図である。図21では、位置情報提供装置100は、携帯電話機などのモバイル機器であるものとして説明する。
【0225】
図21を参照して、屋内送信機200は、屋内施設に入る際に、施設入口/内部で、メッセージタイプが4の信号を用いて、短縮URLを発信し、当該SVGコンテナ(屋内地図+情報レイヤ+SID変換テーブル)を利用者の位置情報提供装置100に送信する。
【0226】
位置情報提供装置100では、屋内施設に入った後に、現在の測位信号の発信源が屋内発信機200であると判断した場合は、まず、位置情報提供装置100において、屋内測位モジュールとして機能する屋内測位部434は、屋内送信機から送信された識別子を判別して、地図描画処理部436内の識別子・軌道情報モジュールに通知する。地図描画処理部436内のウェブブラウザモジュールは、識別子・軌道情報モジュールから通知された識別子(送信機ID(SID))に基づいて、上記URLで特定される情報提供サーバ1230上のデータから、識別子と当該識別子に対応した屋内送信機の属性情報との変換テーブルを含むSVG地図情報をネットワーク(たとえば、インターネット)経由で受信する。
【0227】
ウェブブラウザモジュールは、ウェブブラウザとしてSVG地図をディスプレイ440表示するとともに、SVG地図上に、識別子を受信した屋内送信機の位置も表示する。
【0228】
以上のような構成とすることで、SVG地図情報を位置情報提供装置100のローカルに取得後は、ローカルに格納した変換テーブルを用い、屋内送信機と端末側にて外部サーバ参照せずに端末のみで場所解決を行い、屋内地図の現在地更新及び近傍情報の更新を行うことで、移動体である人間などの移動速度(たとえば、歩行速度)に追従した高速な連続測位/情報配信が実現される。
【0229】
なお、SVG地図情報の中に含まれる、屋内送信機から送信される屋内送信機の識別子と屋内送信機の位置情報との変換テーブルにおいて、さらに、各屋内送信機の識別子に対応して、屋内送信機におけるスペクトラム拡散変調時のPRNコード(拡散コード)を識別するための情報も含ませることとすることも可能である。このPRNコード(拡散コード)を識別するための情報としては、たとえば、PRNコードのID情報とすることができる。このようにすると、地図をダウンロードするということは、設備の入り口近傍の屋内送信機の識別子だけでなく、その周辺の屋内送信機(たとえば、同じフロアに存在する複数の屋内送信機)の識別子も、受信機側で一括して事前に情報として把握できることになる。この場合、受信機側で測位信号を捕捉する際に、いずれの拡散コードを使用して補足すればよいのかアシストされることにもなり、一層、高速で測位信号を捕捉することが可能となる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、SVG地図情報の中に、屋内送信機から送信される屋内送信機の識別子と屋内送信機の位置情報との変換テーブルを含める構成であった。
【0230】
実施の形態2では、位置情報提供装置100が、SVG地図情報を取得する際に、さらに、屋外測位の際に使用する測位衛星の軌道情報をも取得する構成とする。
【0231】
すなわち、たとえば、位置情報提供装置100が、軌道情報を持たない状態からスタートする場合(コールドスタート)などでは、屋内から屋外へのハンドオーバー時の衛星データ取得に相応の時間を要するためスムーズな測位の受け渡しが困難となる。しかし、屋内において地図情報を獲得する際に、併せて、測位衛星の軌道情報をダウンロードしておくことが可能となれば、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度を向上させるとともに測位時間を短縮することができる。
【0232】
図22は、屋内送信機からの当該屋内送信機の識別子とサーバからのSVG地図情報データとに基づいた、屋内測位の処理と、SVG地図情報データと併せて受信する軌道情報を用いた屋外測位処理とを概念的に示す図である。図22でも、位置情報提供装置100は、携帯電話機などのモバイル機器であるものとして説明する。
【0233】
図22を参照して、実施の形態2の測位システムにおいては、屋内から屋外へと移動する際に劣化する測位精度及び測位時間の問題を解決するため、実施の形態1のSVGコンテナデータ配信の際に、衛星軌道データも併せて配信する。
【0234】
まず、インターネット上には、測位衛星の軌道情報を提供するための軌道情報データベースが設けられている。情報提供サーバ(ウェブサーバ)は、配信しようとするSVG地図の示す場所と現在時刻とで決定される軌道情報を、軌道情報データベースから取得するものとする。
【0235】
すなわち、実施の形態1と同様にして、屋内送信機100は、屋内施設に入る際に、施設入口/内部で、メッセージタイプが4の信号を用いて、短縮URLを発信し、当該SVGコンテナ(屋内地図+情報レイヤ+SID変換テーブル)を利用者の位置情報提供装置100に送信する。
【0236】
位置情報提供装置100では、屋内施設に入った後に、現在の測位信号の発信源が屋内発信機200であると判断した場合は、まず、位置情報提供装置100において、屋内測位モジュールとして機能する屋内測位部434は、屋内送信機から送信された識別子を判別して、地図描画処理部436内の識別子・軌道情報モジュールに通知する。地図描画処理部436内のウェブブラウザモジュールは、識別子・軌道情報モジュールから通知された識別子(送信機ID(SID))に基づいて、上記URLで特定される情報提供サーバ1230上のデータから、識別子と当該識別子に対応した屋内送信機の属性情報との変換テーブルを含むSVG地図情報をネットワーク(たとえば、インターネット)経由で受信する。
ここで、取得対象となる建物のSVGコンテナ(URL)が確定することにより、併せて、屋内測位の対象となる施設の位置(施設代表点の緯度経度座標など)及び時刻が特定され、衛星測位に必要な衛星軌道情報も確定する。URLを参照して、SVGコンテナを取得する時に当該エリア/時刻の衛星軌道データも併せて情報提供サーバ1230から送信し、位置情報提供装置100にローカルに(メモリ420内に)識別子と対応づけて保存する。具体的には、SVGコンテナのURL(屋内送信機のメッセージタイプが4である信号による短縮URLとして送信)を参照/取得する際のHTTP通信のヘッダ情報に当該識別子に対応した衛星軌道データ埋め込み送信し、ブラウザのCookieに格納する方式を用いる(Cookieに格納することでサーバ側からの有効期限の制御が可能となる)。
【0237】
ウェブブラウザモジュールは、ウェブブラウザとしてSVG地図をディスプレイ440表示するとともに、SVG地図上に、識別子を受信した屋内送信機の位置も表示する。
【0238】
さらに、位置情報提供装置100においては、屋内から屋外に出た際に、屋外測位部432は、蓄積されている衛星軌道情報のうちから最適な(たとえば、もっとも新しく情報提供サーバ1230から受信した衛星軌道情報)を選択して、GPS衛星からの測位信号に含まれる衛星軌道情報を用いるのではなく当該衛星軌道情報を用いて、GPS衛星からの測位信号の受信までの時間遅れに基づいて、現在位置を計算する。
【0239】
以上のような構成とすることで、SVG地図情報を位置情報提供装置100のローカルに取得後は、ローカルに格納した変換テーブルを用い、屋内送信機と端末側にて外部サーバ参照せずに端末のみで場所解決を行い、屋内地図の現在地更新及び近傍情報の更新を行うことで、移動体である人間などの移動速度(たとえば、歩行速度)に追従した高速な連続測位/情報配信が実現される。しかも、屋内から屋外に出た場合にも、最適な軌道衛星情報を用いて屋外測位を行うことが可能となる。
【0240】
図23は、実施の形態2の位置情報提供装置100における屋内測位処理(図20のステップS630)の処理を説明するための第1のフローチャートである。
【0241】
まず、位置情報提供装置100において、屋内測位用のソフトウェアの動作が起動すると、メッセージタイプが4である信号により受信した短縮URLにより、地図描画処理部436は、屋内地図についてのSVG地図情報のURLを特定する(ステップS6000)。
【0242】
次に、地図描画処理部436は、上記URLで特定される情報提供サーバ1230上のデータからSVG地図情報を取得する(ステップS6002)。そして、地図描画処理部436は、SVG地図情報から屋内送信機の識別情報と当該屋内送信機の位置情報とを対応づけた変換テーブルを抽出し(S6012)、メモリ420に場所識別子情報(場所識別子変換テーブル)として格納する。さらに、地図描画処理部436は、SVG地図情報のHTTPヘッダより衛星軌道情報を取得して(S6022)、ブラウザのCookieとして衛星軌道データをメモリ420に格納する(S6024)。
【0243】
地図描画処理部436は、SVG地図情報に対応する地図をブラウザ上に表示し(S6030)、ユーザの操作に応じて、以後も連続して測位処理を行う(S6032)か、あるいは、測位の停止または再開を行う(S6034)。
【0244】
図24は、図23における測位処理を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、屋外地図もSVG技術を用いた地図情報としてメモリ420内に格納されているものとする。屋外地図については、事前に、所定の媒体からメモリ420にロードしておいてもよいし、あるいは、通信部450により情報提供サーバ1230からダウンロードしてメモリ420に格納しておいてもよい。
【0245】
図24を参照して、まず、ベースバンドプロセッサ412の動作(GPS衛星からの測位モジュールへの測位リクエスト)により位置情報が取得されると(S6100)、判断部416は、取得した情報を判定し(S6102)、取得された情報が、緯度経度座標である場合は、当該緯度経度座標に対応する位置を中心点に設定して(S6112)、SVG地図情報により表示される地図を更新して表示する(S6114)。
【0246】
一方、判断部416が、取得されたのは屋内送信機の識別情報(送信機ID(SID))であると判定した場合は(S6102)、地図描画処理部436は、屋内測位部434から受け取った当該識別子を、メモリ420に格納されている場所識別子情報(場所識別子変換テーブル)と照合する(S6120)。地図描画処理部436が、照合に成功すると(S6122)、地図描画処理部436は、当該識別子に対応する位置を地図の中心点に設定し(S6124)、SVG地図情報による地図の表示を更新する(S6126)。さらに、地図描画処理部436は、照合に成功した識別子に対応するSVG地図情報と同時に取得された衛星軌道データが存在すれば(S6128)、当該衛星軌道データを有効化し(S6130)、上記SVG地図情報と同時に取得された衛星軌道データが存在しなければ(S6128)、当該衛星軌道データを無効化する(S6132)。
【0247】
一方、ステップS6102において、場所と関連付いた識別子が取得されていないと判定された場合は、地図描画処理部436は、所定のエラー処理やSVG地図情報の再取得・部分変更などの予め定められている処理を実行する(S6150)。
【0248】
図25は、図24におけるベースバンドプロセッサ412の動作(GPS衛星からの測位モジュールへの測位リクエスト)の処理のフローを説明するためのフローチャートである。
【0249】
図25を参照して、まず、ベースバンドプロセッサ412と判断部416との協働により、屋内測位信号の受信が試みられ(S6200)、かつ、屋内測位信号の受信が成功した場合には(S6202)、受信した屋内送信機の識別子(あるいは、屋内送信機の設定によっては、屋内送信機の設置された場所の緯度経度情報)を、地図描画処理部436に返す(S6212)。
【0250】
一方、屋内測位信号の受信が成功しない場合には(S6202)、続いて、判断部416は、有効な衛星軌道データが存在するか否かを判断し(S6220)、有効な衛星軌道データが存在する場合は、当該データを屋外測位のための衛星軌道データとして設定する(S6222)。
【0251】
続いて、ベースバンドプロセッサ412と屋外測位部432との協働により、屋外の測位衛星からの測位信号が受信され(S6224)、緯度経度情報の取得に成功すると(S6226)、取得した緯度経度情報(あるいは、さらに高さに関する情報)が地図描画処理部436に返される(S6228)。一方、屋外測位部432が、屋外の測位衛星からの測位信号による緯度経度情報の取得に失敗した場合は、エラー情報が地図描画処理部436に返される(S6230)。
【0252】
なお、ステップS6220で有効な衛星軌道データが存在しない場合は、コールドスタートとなり、屋外の測位衛星からの測位信号から衛星軌道データの抽出が行われる。
【0253】
したがって、実施の形態1のSVGコンテナの参照/取得と併せ、当該エリア/時刻の衛星軌道データを非同期/バックグラウンドで取得しておくことで、事後に建物内部から屋外に出る際の測位のハンドオーバー時にタイムロス少なく衛星測位が可能となる。
【0254】
すなわち、以上の構成により、実施の形態1の位置情報提供装置100が奏する効果に加えて、屋内から屋外へと測位のハンドオーバーを行う際に、測位精度を向上させるとともに測位時間を短縮することができる。
【0255】
なお、以上の説明では、地図情報は、SVG技術を用いて表示データが表現されるものとし、かつ、この地図表示のためのSVGデータ内に、屋内送信機から送信される屋内送信機の識別子と屋内送信機の位置情報との変換テーブルを含める構成として説明した。このような構成(SVGコンテナ)とすることで、地図情報と変換テーブルを一体として管理し、かつ配信できるため、位置情報サーバでの管理と処理が容易となるという利点がある。
【0256】
ただし、地図情報と変換テーブルとは、このような構成に限定されるものではない。たとえば、以下のような構成とすることができる。
【0257】
1)地図情報は、数値地図であってスケーラブルに地図を表示できるベクトルデータとし、変換テーブルは、別個のデータとして配信する構成としてもよい。
【0258】
2)屋内の地図情報は、CADデータとして配信し、変換テーブルは、このCADデータ上の位置と識別子との対応を示す変換テーブルを別のデータとして配信してもよい。このとき、CADデータは、ベクトル画像であってもよいし、ラスタ画像であってもよいものの、地図の拡大・縮小等の簡便さからは、ベクトル画像が望ましい。
【0259】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0260】
10 位置情報提供システム、110,111,112 GPS衛星、120,121,122 送信機、100,100−1,100−2,100−3,100−4 位置情報提供装置、130 ビル、200,200−1,200−2,200−3 屋内送信機、210 無線I/F,220 外部同期リンクポート,221 外部クロックポート,230 基準クロックI/Oブロック,240 デジタル処理ブロック,250 アナログブロック,1220 インターネット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上の施設内に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、
送信アンテナと、
前記施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置のうち、前記ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報と、前記施設内の地図情報を取得するための外部機器のネットワーク上での位置を特定するための資源識別情報とを記憶するための記憶装置と、
前記ナビゲーション信号に含まれる前記識別情報と前記資源識別情報のメッセージ信号を生成するメッセージ生成手段と、
前記ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、前記衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、前記メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、前記ナビゲーション信号を生成する変調手段と、
前記ナビゲーション信号を、前記送信アンテナから送信する送信手段をさらに備える、ナビゲーション信号送信装置。
【請求項2】
前記ナビゲーション信号の信号フォーマットは、前記衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである、請求項1記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項3】
前記メッセージ生成手段は、前記衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである複数の信号フォーマットのうち、信号の繰り返し周期がもっとも短い信号フォーマットで、前記識別情報を含むメッセージ信号を生成する、請求項2記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項4】
複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能であり、かつ、地上の施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置からのスペクトラム拡散信号であって、前記施設内において当該ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報を各々含む複数のナビゲーション信号を用いて、位置情報を提供する位置情報提供装置であって、
前記スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、
ネットワーク上の外部機器と通信するための通信手段と、
前記ナビゲーション信号についての前記衛星測位信号と同一系列の複数の拡散コードのパターンを格納する記憶手段と、
並列に設けられ、かつ前記複数の拡散コードのパターンについて並行して相関処理を行い、前記複数のナビゲーション信号を識別して復調するための復調手段と、
前記ナビゲーション信号を識別して復調できた場合、所定の前記ナビゲーション信号送信装置からの前記ナビゲーション信号から前記外部機器の前記ネットワーク上の位置を特定するための資源識別情報を取得するとともに、識別された前記複数のナビゲーション信号のうちのいずれか1つにより前記識別情報を抽出する抽出手段と、
前記通信手段により、前記資源識別情報に基づいて、前記外部機器から、前記施設内の地図を表示するための地図情報および前記施設内の前記ナビゲーション信号送信装置の位置と前記識別情報との対応関係を示す対応情報とを取得し、前記施設内の地図において前記識別情報を受信した前記ナビゲーション信号送信装置の位置を示す地図画像を表示するための画像信号を生成する地図描画処理手段とを備える、位置情報提供装置。
【請求項5】
前記ナビゲーション信号の信号フォーマットは、前記衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである、請求項4記載の位置情報提供装置。
【請求項6】
前記地図情報は、SVG(Scalable Vector Graphics)形式のデータであり、前記対応情報は、前記SVG形式のデータとして記述される、請求項5記載の位置情報提供装置。
【請求項7】
前記対応情報は、前記地図情報内に含まれる前記複数のナビゲーション信号送信装置の位置と複数の前記識別情報との対応関係とを一括して含み、
前記復調手段は、前記対応情報に基づいて、選択される前記拡散コードを用いて前記相関処理を実行する、請求項5記載の位置情報提供装置。
【請求項8】
前記抽出手段は、前記地図情報を前記外部機器から取得する際に、前記測位衛星についての衛星軌道データを併せて前記外部機器から取得し、
前記複数の測位衛星からの前記衛星測位信号を受信して測位する際に、前記外部機器から取得した前記衛星軌道データを使用して、測位を実行する屋外測位手段をさらに備える、請求項6記載の位置情報提供装置。
【請求項1】
複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上の施設内に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、
送信アンテナと、
前記施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置のうち、前記ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報と、前記施設内の地図情報を取得するための外部機器のネットワーク上での位置を特定するための資源識別情報とを記憶するための記憶装置と、
前記ナビゲーション信号に含まれる前記識別情報と前記資源識別情報のメッセージ信号を生成するメッセージ生成手段と、
前記ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、前記衛星測位信号と同一系列の拡散コードに基づいて、前記メッセージ信号をスペクトラム拡散処理を含む変調処理により変調して、前記ナビゲーション信号を生成する変調手段と、
前記ナビゲーション信号を、前記送信アンテナから送信する送信手段をさらに備える、ナビゲーション信号送信装置。
【請求項2】
前記ナビゲーション信号の信号フォーマットは、前記衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである、請求項1記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項3】
前記メッセージ生成手段は、前記衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである複数の信号フォーマットのうち、信号の繰り返し周期がもっとも短い信号フォーマットで、前記識別情報を含むメッセージ信号を生成する、請求項2記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項4】
複数の測位衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能であり、かつ、地上の施設内に設置される複数のナビゲーション信号送信装置からのスペクトラム拡散信号であって、前記施設内において当該ナビゲーション信号送信装置を特定するための識別情報を各々含む複数のナビゲーション信号を用いて、位置情報を提供する位置情報提供装置であって、
前記スペクトラム拡散信号を受信する受信手段と、
ネットワーク上の外部機器と通信するための通信手段と、
前記ナビゲーション信号についての前記衛星測位信号と同一系列の複数の拡散コードのパターンを格納する記憶手段と、
並列に設けられ、かつ前記複数の拡散コードのパターンについて並行して相関処理を行い、前記複数のナビゲーション信号を識別して復調するための復調手段と、
前記ナビゲーション信号を識別して復調できた場合、所定の前記ナビゲーション信号送信装置からの前記ナビゲーション信号から前記外部機器の前記ネットワーク上の位置を特定するための資源識別情報を取得するとともに、識別された前記複数のナビゲーション信号のうちのいずれか1つにより前記識別情報を抽出する抽出手段と、
前記通信手段により、前記資源識別情報に基づいて、前記外部機器から、前記施設内の地図を表示するための地図情報および前記施設内の前記ナビゲーション信号送信装置の位置と前記識別情報との対応関係を示す対応情報とを取得し、前記施設内の地図において前記識別情報を受信した前記ナビゲーション信号送信装置の位置を示す地図画像を表示するための画像信号を生成する地図描画処理手段とを備える、位置情報提供装置。
【請求項5】
前記ナビゲーション信号の信号フォーマットは、前記衛星測位信号の信号フォーマットとコンパチブルである、請求項4記載の位置情報提供装置。
【請求項6】
前記地図情報は、SVG(Scalable Vector Graphics)形式のデータであり、前記対応情報は、前記SVG形式のデータとして記述される、請求項5記載の位置情報提供装置。
【請求項7】
前記対応情報は、前記地図情報内に含まれる前記複数のナビゲーション信号送信装置の位置と複数の前記識別情報との対応関係とを一括して含み、
前記復調手段は、前記対応情報に基づいて、選択される前記拡散コードを用いて前記相関処理を実行する、請求項5記載の位置情報提供装置。
【請求項8】
前記抽出手段は、前記地図情報を前記外部機器から取得する際に、前記測位衛星についての衛星軌道データを併せて前記外部機器から取得し、
前記複数の測位衛星からの前記衛星測位信号を受信して測位する際に、前記外部機器から取得した前記衛星軌道データを使用して、測位を実行する屋外測位手段をさらに備える、請求項6記載の位置情報提供装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図23】
【図24】
【図25】
【図19】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図23】
【図24】
【図25】
【図19】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−63274(P2012−63274A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208442(P2010−208442)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(503107484)測位衛星技術株式会社 (15)
【出願人】(505014672)インディゴ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(503107484)測位衛星技術株式会社 (15)
【出願人】(505014672)インディゴ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]