説明

ナビゲーション装置、その方法及びプログラム

【課題】エンターテイメント性を維持しつつユーザーに高い安心感と満足感を与えることができ、これにより安全性、信頼性の向上を図ったナビゲーション装置、その方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】制限判定部32は、残り分計算部30の計算した残り時間Taと、予想分計算部31の計算した予想時間Tbとを比較し、予想時間Tbが残り時間Taを超過すれば、制限設定部26の設定した制限について時間オーバーになると判定する。経路変更部33は、制限判定部32が制限オーバーの判定を下す時、候補地抽出部25の抽出した候補地の中から残り分計算部30の計算した残り時間又は残金の範囲以内で到達可能な経路を検索し、これに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地をユーザーには明示しないまま経路案内を実施することで娯楽性を発揮するナビゲーション技術に係り、特に、ユーザーに安心感を与えつつもユーザーの遊び心を刺激するナビゲーション装置、その方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナビゲーション装置では、予め用意した地図情報を大容量のハードディスクドライブ(以下、HDD)などに格納しておき、格納された地図情報を利用して道路地図を液晶ディスプレイの表示画面に表示する。また、ナビゲーション装置は、GPS機能などを用いて道路地図上の自車位置を把握し、その位置に自車アイコンを重ねて表示する。
【0003】
さらに、ナビゲーション装置では、ユーザーが所望の目的地を選択し、所定の出発地(通常は自車位置)から前記目的地までの最適な経路を探索する。そして、探索した経路に関して、矢印などの誘導用表示や誘導用音声を出力しながら、自車両を目的地まで的確に誘導案内することができる。
【0004】
近年では、ナビゲーション装置の普及に伴い、ユーザーニーズが多様化しており、画像表示に工夫を凝らすなど娯楽性を高めたものも提案されている。中でも、目的地を伏せたまま経路案内を行うナビゲーション装置は、エンターテイメント性が高く、注目を集めている。
【0005】
例えば、特許文献1のナビゲーション装置では、ユーザーが目的地を選ぶのでなく、ナビゲーション装置の制御部側が目的地を決めて、この目的地をユーザーには教えないまま経路案内を行う。そのため、ユーザーは、未知の目的地に到着するまで、期待感を持ってドライブを楽しむことができる。
【0006】
ただし、完全に無作為に選出した目的地ではなく、HDDなどの目的地データベースに複数の推奨目的地を予め格納しておき、ユーザーが所望する条件を満たすように、推奨目的地の中から、制御部側が目的地を選び出すようになっている。
【0007】
ユーザーが設定する条件例としては、主に時間的な制約条件や料金的な制約条件がある。時間的な制約条件としては、目的地までの所要時間や目的地への到着時刻などである。また、料金的な制約条件としては、目的地に到着するまでに必要とされる有料道路の通行料金の上限や、燃費から導かれる予想ガソリン代の上限などである。
【0008】
さらに、ユーザーによって設定される条件としては、同乗者についての人的情報(家族連れ向き、カップル向き、友達同士向きなど)、嗜好関連情報(観光向き、買い物向き、アトラクション向きなど)、どの方面に行きたいか(西方向、南方向など)等がある。
【0009】
以上のように、目的地を伏せたまま経路案内を行うナビゲーション装置では、最低限のユーザーの要求を考慮した上で目的地を決定するので、ユーザーは、到着した目的地がたとえ知らない場所であっても、不満に感じることはなく、ゲーム性を楽しむことができる。
【特許文献1】特開2004−317135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、以上の従来技術には、次のような課題が指摘されていた。すなわち、目的地を伏せて道路案内を行うナビゲーション装置が、ゲームのようなエンターテイメント性を持つとしても、ナビゲーション装置は、あくまでも現実の実社会で利用されるものである。
【0011】
そのため、渋滞や事故の発生などによって交通状況が悪化したり、あるいは車両状態が変化したり、さらにはユーザーの急な都合などで長時間停車した場合、目的地への到着が遅れて、ユーザーが希望した到着予定時刻をオーバーすることになる。また、走行時間が長くなったり、燃費が悪くなったりすると、当然ながらガソリン代も増えるため、料金的な制約条件に関しても、ユーザーの設定した上限を大幅に超えてしまうこともある。
【0012】
具体的には、ドライブ中のユーザーが、昼食を食べようとして、特定の施設を目的地として選ぶのではなく、「13時10分までに着くこと」を条件として設定したとする。この場合に、ナビゲーション装置がそれに該当する施設を選び出し、この施設に向かったとする。
【0013】
ところが、経路の途中で渋滞が発生すると、当該施設への到着時刻が遅れてしまい、ゆっくり食事ができなかったり、ランチタイムに間に合わなかったといった事態が起こり得る。上記のような場合、ユーザーからしてみれば、最低限の要求を無視されたと感じることになり、ナビゲーション装置に対する不満感が生じやすい。
【0014】
また、目的地に向かうにつれて交通状況が悪化していっても、ユーザーは目的地に関する情報を全く持っていないので、回り道や抜け道を利用するといった対処を実行し難い。このような状況に置かれたユーザーは、期待感というよりもむしろ不安感が募ることになりかねない。
【0015】
ナビゲーション装置による経路案内において、目的地を知らせないことで発揮されるエンターテイメント性とは、ユーザー自身が選択しないような目的地に到着することからも感じられるが、その醍醐味は、目的地に到着するまでの期待感にある。
【0016】
したがって、目的地を知らせないことが却って、不安感や不満感を惹起するようでは、エンターテイメント性を獲得しているとは言えない。また、上述したように、ナビゲーション装置はあくまでも現実の実社会で利用するものなので、ユーザーの心理的ストレスの原因となる不安感や不満感の排除は、安全面から言っても急務である。
【0017】
本発明は、以上の状況に鑑みて提案されたものであり、その目的は、エンターテイメント性を維持しつつユーザーに高い安心感と満足感を与えることができ、これにより安全性、信頼性の向上を図ったナビゲーション装置、その方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、自車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、道路地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、前記道路地図上から複数の候補地を抽出する候補地抽出手段と、前記自車位置から各候補地までの経路を探索する経路探索手段と、前記経路の終点を除外して前記経路を案内する経路案内手段、が設けられたナビゲーション装置において、自車両が前記経路の終点に到着するまでの時間的制限及び料金的制限のうちの少なくとも一方を設定する制限設定手段と、前記経路探索手段の探索した経路の中から前記制限設定手段の設定した前記制限の範囲内となる前記経路のリストを作成する経路リスト作成手段と、前記経路リストを保存する経路リスト保存手段と、前記経路リストから任意の経路を選択する経路選択手段と、前記自車位置検出手段の検知した自車位置を取得し、その自車位置での前記制限に関する残り分を計算する残り分計算手段と、前記残り分計算手段が前記残り分を計算した地点での自車位置から、前記経路の終点に到着するまでに必要とする予想分を計算する予想分計算手段と、前記残り分計算手段の計算した前記残り分と、前記予想分計算手段の計算した前記予想分とを比較し、前記予想分が前記残り分を超過した場合に、前記制限設定手段の設定した前記制限について制限オーバーとなると判定する制限判定手段と、前記制限判定手段が前記制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、前記候補地抽出手段の抽出した候補地の中から、前記残り分計算手段の計算した前記残り分の範囲以内で到達可能な候補地を検索して、検索した候補地へと向かう経路に変更する経路変更手段、が設けられたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項5の発明は、上記請求項1の発明を方法の観点から捉えたものであって、自車両の現在位置を検出する自車位置検出ステップと、道路地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶ステップと、前記道路地図上から複数の候補地を抽出する候補地抽出ステップと、前記自車位置から各候補地までの経路を探索する経路探索ステップと、前記経路の終点を除外して前記経路を案内する経路案内ステップ、を含むナビゲーション方法において、自車両が前記経路の終点に到着するまでの時間的制限及び料金的制限のうちの少なくとも一方を設定する制限設定ステップと、前記経路探索ステップにて探索した経路の中から前記制限設定ステップにて設定した前記制限の範囲内となる前記経路のリストを作成する経路リスト作成ステップと、前記経路リストを保存する経路リスト保存ステップと、前記経路リストから任意の経路を選択する経路選択ステップと、前記自車位置検出ステップにて検知した自車位置を取得し、その自車位置での前記制限に関する残り分を計算する残り分計算ステップと、前記残り分計算ステップにて前記残り分を計算した地点での自車位置から、前記経路の終点に到着するまでに必要とする予想分を計算する予想分計算ステップと、前記残り分計算ステップにて計算した前記残り分と、前記予想分計算ステップにて計算した前記予想分とを比較し、前記予想分が前記残り分を超過した場合に、前記制限設定ステップにて設定した前記制限について制限オーバーとなると判定する制限判定ステップと、前記制限判定ステップにて前記制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、前記候補地抽出ステップにて抽出した候補地の中から、前記残り分計算ステップにて計算した前記残り分の範囲内で到達可能な候補地を検索して、検索した候補地へと向かう経路に変更する経路変更ステップ、を含むことを特徴としている。
【0020】
請求項7の発明は、上記請求項1、6の発明をプログラムの観点から捉えたものであって、コンピュータを利用することにより、自車両の現在位置を検出する自車位置検出機能と、道路地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶機能と、前記道路地図上から複数の候補地を抽出する候補地抽出機能と、前記自車位置から各候補地までの経路を探索する経路探索機能と、前記経路の終点を除外して前記経路を案内する経路案内機能、をコンピュータに実現させるナビゲーションプログラムにおいて、自車両が前記経路の終点に到着するまでの時間的制限及び料金的制限のうちの少なくとも一方を設定する制限設定機能と、前記経路探索機能にて探索した経路の中から、前記制限設定機能にて設定した前記制限の範囲内となる前記経路のリストを作成する経路リスト作成機能と、前記経路リストを保存する経路リスト保存機能と、前記経路リストから任意の経路を選択する経路選択機能と、前記自車位置検出機能にて検知した自車位置を取得し、その自車位置での前記制限に関する残り分を計算する残り分計算機能と、前記残り分計算機能にて前記残り分を計算した地点での自車位置から、前記経路の終点に到着するまでに必要とする予想分を計算する予想分計算機能と、前記残り分計算機能にて計算した前記残り分と、前記予想分計算機能にて計算した前記予想分とを比較し、前記予想分が前記残り分を超過した場合に、前記制限設定機能にて設定した前記制限について制限オーバーとなると判定する制限判定機能と、前記制限判定機能にて前記制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、前記候補地抽出機能にて抽出した候補地の中から、前記残り分計算機能にて計算した前記残り分の範囲内で到達可能な候補地を検索して、検索した候補地へと向かう経路に変更する経路変更機能、をコンピュータに実現させることを特徴とするものである。
【0021】
以上のような本発明においては、候補地抽出手段が道路地図上から複数の候補地を抽出し、経路探索手段が出発地から各候補地までの経路を探索する。このとき、探索される経路は候補地に対応して複数である。また、制限設定手段では、自車両が候補地経路を通って候補地に到着するまでの時間的制限又は料金的制限もしくはその両方を設定する。
【0022】
こうした制限に基づいて、経路リスト作成手段は、経路探索手段の探索した経路の中から、制限した所要時間又は所要料金もしくはその両方の範囲内となる経路を選び出し、選び出した経路をリスト化して経路リストを作成する。また、経路リスト保存手段はこの経路リストを保存し、経路選択手段が経路リストから任意の経路を選択する。ここで、経路選択手段にて選択された経路の終点がユーザーに伏せられた目的地となり、経路案内手段は、経路選択手段の選択した経路について、経路の終点である目的地を除外して経路を案内する。
【0023】
さらに、残り分計算手段は、自車位置検出手段の検知した自車位置を取得して、その自車位置での前記制限に関する残り時間又は残金あるいはその両方を計算する。また、予想分計算手段は、残り分を計算した時点で、その時の自車位置を起点として経路終点に至るまでに実際にかかると考えられる予想時間又は予想料金あるいはその両方を計算する。
【0024】
そして、制限判定手段は、残り時間と予想時間、残金と予想料金とをそれぞれ比較し、予想時間が残り時間を超過した場合に、又は、予想料金が残金を超過した場合に、前記制限が制限オーバーになると、判定する。
【0025】
制限判定手段の判定結果に基づいて、経路変更手段は、候補地抽出手段の抽出した候補地の中から、前記残り分を計算した時点での自車位置を起点として、残り分計算手段の計算した残り時間又は残金あるいはその両方の範囲内で到達可能な候補地を検索し、検索した候補地へと向かう経路に変更する。
【0026】
このため、候補地を再度抽出するといった手間を省くことができ、迅速な経路変更が可能である。したがって、ユーザーに目的地を知らせない経路案内が中断されることがない。その結果、経路の終点に達するまで、エンターテイメント性を維持することが可能である。
【0027】
以上述べたように、本発明では、経路選択手段の選択した経路を自車両が走行している途中で、制限設定手段にて設定した制限について、制限判定手段が随時、制限オーバーか否かの判定を実施しており、前記制限の範囲内で経路の終点まで到着できるかどうかを確認可能である。
【0028】
そして、走行している経路の途中で、制限判定手段が、このまま走行を続けると制限はオーバーとなると判断すれば、経路変更手段が、候補地の中から制限の範囲以内で到着可能な候補地を新たに選び直し、その候補地が終点となる経路について経路案内を行う。こうした経路の変更により、経路及びその終点である目的地を変えてまでも、自車両の走行スタート時に設定した制限を維持することができる。
【0029】
自車両の走行スタート時に設定した制限とは、ユーザーの入力操作による設定を前提とするため、そこにユーザーの要求や意志を反映していることになる。したがって、ユーザーの希望した時間的や料金的な制限が、経路の終点に至るまで厳守されることになる。
【0030】
これにより、目的地を知らされていないユーザーに対して大きな安心感を与えることが可能となる。しかも、時間的な遅れや料金的な増大を回避することができ、ユーザーが不利益や不快感を蒙ることがない。つまり、ユーザーは、目的地を知らない経路であっても、安心してこれに従うことができ、未知の目的地に向かうドライブを、心理的なゆとりを持って楽しむことが可能である。
【0031】
また、目的地を知らされていないユーザーにとっては、自車位置から先の経路についても不明なので、経路を変更したとしても、ユーザーは経路の変更を意識することがない。したがって、ユーザーがナビゲーション装置に不信感や不安感を持つことはなく、自車両スタート時の期待感を最後まで保持可能である。
【0032】
請求項2の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、外部から渋滞情報もしくは事故情報を含む交通情報を受信する交通情報受信手段が設けられ、前記予想分計算手段は、前記交通情報受信手段の受信した前記交通情報を取得し、この交通情報に基づいて、前記経路の終点に到着するまでに要する予想時間及び予想料金の少なくとも一方を計算するように構成されたことを特徴としている。
【0033】
このような請求項2の発明では、予想分計算手段が、交通情報受信手段の受信した交通情報に基づき渋滞や事故による交通状況の変化を取り込むことにより、経路終点までに要する予想時間や予想料金を正確に計算することが可能である。したがって、制限判定手段は優れた判定精度を発揮することができる。
【0034】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のナビゲーション装置において、前記候補地抽出手段はユーザーの入力操作により指定条件を設定した上で候補地を抽出するように構成されたことを特徴としている。
【0035】
請求項3の発明に係る候補地抽出手段においては、候補地の抽出に際してユーザーの入力操作により指定条件を設定するので、ユーザーの意図を汲んだ候補地の抽出が可能となる。このため、目的地を明示しない経路案内として娯楽性をユーザーにもたらすだけではなく、ユーザーが不案内の地域にあって、目的地の選択支援としても有効である。
【0036】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、前記制限判定手段の判定結果を報知する判定結果報知手段が設けられたことを特徴とする。
【0037】
渋滞や事故などにより自車両の走行状況が大きく変化した場合には、目的地を知らないまま経路を案内されるユーザーは、車両のスタート時に設定された制限の範囲内で、経路の終点に着けるのかどうかといった不安を抱くことが多い。
【0038】
そこで、請求項4の発明においては、判定結果報知手段によって制限判定手段の判定結果を報知することで、経路の変更に伴って、多少不自然な経路案内があったとしても、判定結果を知らされているユーザーならば、安心して経路案内に従うことができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のナビゲーション装置、その方法及びプログラムによれば、経路に対する時間的又は料金的な制限がオーバーすると判定された時、前記制限を堅持するように経路変更を行うことによって、エンターテイメント性を維持しつつ高い安心感と満足感をユーザーに与えることが可能であり、これにより安全性、信頼性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係る代表的な実施形態の一例について、図1〜図6を参照して具体的に説明する。図1は本実施形態の概要を示す構成図、図2は本実施形態の制御部を仮想的ブロックにて示した構成図、図3〜図5は本実施形態の動作を説明するためのフローチャート、図6は本実施形態の作用効果を説明するための説明図である。
【0041】
(1)本実施形態の構成
本実施形態は、目的地を伏せたまま経路案内を行うナビゲーション装置に適用するものであるが、基本的なハードウェア構成は、通常のナビゲーション装置と同様である。
【0042】
[概要]
まず、図1を用いて、ナビゲーション装置の概要について説明する。図1に示すように、車両に搭載されたナビゲーション装置1には、渋滞情報もしくは事故情報を含む交通情報をFM放送波から取り出すFM多重受信及び処理部2と、光ビーコンや電波ビーコンから各ビーコンの識別情報や前記交通情報を取り出すビーコン受信及び処理部3が設置されている。
【0043】
また、ナビゲーション装置1には、メインCPU及びその周辺回路からなりシステム全体の制御を司る制御部4、メインプログラムをロードするDRAM5、不揮発性のメモリでバッテリーバックアップ機能の付いたSRAM6、制御部4よりアクセスされるROM7、後述するディスプレイ11にてビデオ表示を行うためのVRAM10が設けられている。
【0044】
さらに、ナビゲーション装置1にはHDD制御部8及び測位部9が設置されている。HDD制御部8は、HDD19に記録されたナビゲーションプログラムなど各種データを、HDD19のデータベースから読み出す手段である。
【0045】
HDD19は、データベースに経路探索用の道路データを含む地図情報や施設情報などが格納されている。なお、地点及び施設情報には、地点及び施設に関して、その名称を始めとして、経度・緯度の各座標にて示される位置情報、住所、電話番号、ジャンルなどの検索リスト用のデータなどが含まれている。
【0046】
また、施設情報に含まれるジャンルとは、検索用に予め分類されたデータ群であって、具体的には「食べる/和食」、「お店/書店」、「遊ぶ/レジャー」などがある。さらに、施設情報に包含されるデータとしては、住所や電話番号といった施設の基本的なデータ以外に、各施設の営業時間や平均予算などが包含されている。これらの時間的要素又は料金的な要素を持つデータは、本実施形態の特徴である制限設定部26(後述)において利用される。
【0047】
測位部9は、ナビゲーション装置1が搭載された自車両の自車位置を検出する部分である。より詳しくは、次のようにして、絶対的及び相対的な方位と自車速度を把握することにより、自車の挙動に関する航法情報を獲得し、自車位置を検出している。
【0048】
すなわち、GPS衛星から送られてくるGPS電波をアンテナやレシーバなどで受信し、地表での絶対的な位置座標や方位を計算する。また、ジャイロや地磁気センサーなどを使って自車位置の相対的な方位を検出する。さらに、自車より車速パルスを取り込むことで自車速度を計算している。
【0049】
さらに、ナビゲーション装置1には、ユーザーからの設定要求などの操作を受けるために、入力部が設けられている。具体的には、タッチパネル式ディスプレイ11のタッチパネル部分、リモコン受光機12とこれに対し制御信号を送るリモコン13、さらにはユーザーの音声を受け取るためのマイク14が設置されている。
【0050】
また、ナビゲーション装置1における出力部としては、視覚的な情報をユーザーに提示するディスプレイ11の表示パネルや、誘導案内時の音声を出力するためのスピーカー15が配置されている。なお、ディスプレイ11内部にはビデオ表示を行うためのVRAM10が組み込まれている。
【0051】
[制御部4の構成]
続いて、図2を参照して、ナビゲーション装置1の制御部4の構成について説明する。制御部4には、仮想的ブロックとして、自車位置取得部20、出発地設定部21、目的地設定部22、経路探索部23、案内制御部24、候補地抽出部25、制限設定部26、経路リスト作成部27、経路リスト保存部28、経路選択部29、残り分計算部30、予想分計算部31、制限判定部32、経路変更部33が設置されている。
【0052】
以上のような仮想的ブロックのうち、自車位置取得部20は、測位部9の検出した自車位置に基づいて自車位置情報を取得する部分である。出発地設定部21は、ユーザーによる特段の設定が無い限り、自車位置検出部20の取得した自車位置情報を取り込み、その時の自車位置を出発地として設定するようになっている。
【0053】
本実施形態は目的地を伏せたまま経路案内を行うナビゲーション装置に適用するものとして説明するため、ユーザー操作による目的地設定は、行わないことを前提とする。すなわち、目的地設定部22は、候補地抽出部25の抽出した候補地のうちの1つを目的地として受け付ける部分である。また、経路探索部23は、設定された出発地から任意の目的地までの経路に関して、道路リンクを抽出した上で経路探索を行う部分である。
【0054】
案内制御部24は、経路探索部23にて探索した経路、経路選択部29にて選択した経路、あるいは経路変更部33にて変更した経路に関して、経路の誘導案内を制御する部分であって、具体的には経路のうちの表示する部分や点滅強調などの表示態様の決定や、合成音声の併用等を制御している。また、本実施形態において目的地を伏せたまま経路案内を行う場合には、案内制御部24は、経路の終点を除外した上で経路案内を行うようになっている。
【0055】
[本実施形態の構成上の特徴部分]
候補地抽出部25、制限設定部26、経路リスト作成部27、経路リスト保存部28、経路選択部29、残り分計算部30、予想分計算部31、制限判定部32、経路変更部33は、本実施形態の構成上の特徴部分である。
【0056】
[候補地抽出部25]
候補地抽出部25は、ユーザーには知らせない目的地として、候補地を抽出する部分である。
【0057】
より詳しくは、候補地抽出部25は、自車位置取得部20から自車位置情報を受け取ると共に、ディスプレイ11のタッチパネル部分やリモコン13などの入力部から、指定条件としてユーザーが指定したジャンル情報などを受け取り、この指定条件に該当する候補地に関して、HDD19に格納された施設情報などから、自車位置から一定の範囲内に存在する候補地について、近い順に抽出するようになっている。
【0058】
[制限設定部26]
制限設定部26は、ディスプレイ11のタッチパネル部分やリモコン13などの入力部を用いたユーザーの入力操作により、自車両が経路の終点に到着するまでの制限を設定する部分である。制限としては、制限時間T及び制限料金Fが設定される。制限時間Tとしては、候補地までの所要時間や候補地への到着時刻、候補地が営業時間を有する施設である場合にはその営業時間などがある。
【0059】
また、制限料金Fとしては、候補地に到着するまでに必要とされる有料道路の通行料金や、候補地までの距離と単位距離当たりの予想燃費から計算される予想ガソリン代、さらには候補地にて使われる平均的な費用(典型的にはレストランなどの予算)などに関する上限がある。これらの制限は、ユーザーの希望により適宜組み合わせることが可能である。
【0060】
[経路リスト作成部27]
経路リスト作成部27は、次の2種類の経路リストA、Bを作成する。すなわち、経路リストAとは、候補地抽出部25にて抽出した候補地までの経路をリスト化したものである。また、経路リストBは、制限設定部26にて設定した制限範囲内に収まることを条件として、この条件に該当する経路をリスト化したものである。
【0061】
経路リスト作成部27は、まず、経路リストAを作成し、この経路リストAの各経路について、制限設定部26にて設定した制限に該当するかどうかで、経路を絞り込むことにより、該当経路による経路リストBを作成するようになっている。
【0062】
すなわち、経路リスト作成部27は、経路リストAを作成した後、経路リストA上の各経路について、所要時間及び所要料金を計算する。そして、計算した時間及び料金が、制限設定部26にて設定した時間的制限及び料金的制限よりも小さくなる経路をリストアップして、経路リストBを作成する。
【0063】
[経路リスト保存部28]
経路リスト保存部28は、候補地抽出部25の抽出した候補地の情報や、その候補地までの所要時間及び所要料金も含めて、前記経路リストA、Bに関するデータを保存する部分である。これらの保存データは、条件判定部30などが動作中は、所定の作業領域に記憶される。
【0064】
[経路選択部29]
経路選択部29は、経路リスト保存部28の保存した経路リストBから任意の経路を無作為に選択する部分である。
【0065】
[残り分計算部30]
残り分計算部30は、自車位置取得部20から自車位置情報を取得し、その自車位置での時間的及び料金的制限に関して、経路終点までの残り時間又は残金を計算する部分である。
【0066】
経路選択部29にて選択された経路上の任意の時点では、制限設定部26により設定される制限時間Tは、自車両がスタートしてから経過時間を差し引いた制限時間までの残り時間Taとなる。また、制限料金Fに関しても、車両の走行状況に応じて料金が積み重なっていくので、経路選択部29にて選択された経路上の任意の時点では、設定された料金までの残金Faとなる。つまり、残り分計算部30は、残り時間Ta及び残金Faを計算する部分である。
【0067】
[予想分計算部31]
予想分計算部31は、残り分計算部30が残り時間Ta及び残金Faを計算した時点で、自車位置取得部20から自車位置情報を、FM多重受信及び処理部2及びビーコン受信及び処理部3から交通情報をそれぞれ取得し、これらの情報に基づいて、残り分計算部30が残り時間Ta及び残金Faを計算した地点での自車位置から、経路終点に到着するまでに必要とされる予想時間Tb及び予想料金Fbを計算する部分である。
【0068】
[制限判定部32]
制限判定部32とは、残り分計算部30の計算した残り時間Taと、予想分計算部31の計算した予想時間Tbとを比較して、予想時間Tbが残り時間Taを超過した場合に(Ta<Tb)、制限設定部26の設定した制限について時間オーバーになると判定する部分である。
【0069】
また、制限判定部32は、残り分計算部30の計算した残金Faと、予想分計算部31の計算した予想料金Fbとを比較して、予想料金Fbが残金Faを超過した場合に(Fa<Fb)、制限設定部26の設定した制限について料金オーバーとなると判定するようになっている。
【0070】
なお、制限判定部32が制限に関する判定を行うタイミングは、渋滞情報や事故情報などの交通情報を、FM多重受信及び処理部2やビーコン受信及び処理部3から取得した時点でも良いし、任意に設定された間隔で定期的に判定を行うようにしても良い。
【0071】
以下、具体的な数値を挙げて、制限判定部32による判定について説明する。まず、制限設定部26により、「経路の終点までの時間的制限を180分、料金的制限を5000円」と設定し、経路選択部29が、上記制限を満たす経路を経路リストBより選択して、走行を開始したとする。
【0072】
車両の走行開始後から120分が経過し、通行料金やガソリン代として3000円を使ったとすると、残り分計算部30は「残り時間は60分、残金は2000円」という計算結果を得る。この計算を行った時点で、予想分計算部31が、走行中経路の終点に到達するまでの「予想時間が70分、予想料金は2500円」と、計算したとする。このようなケースでは、経路終点への到達予想時間Tb及び予想料金Fbは共に、残り時間Ta及び残金Faを超えるので(60分<70分、2000円<2500円)、制限判定部32は、10分の時間オーバー及び500円の料金オーバーとなる旨の判定を下すことになる。
【0073】
ただし、経路終点までの予想時間Tbと残り時間Taとの比較、並びに経路終点までの予想料金Fbと残金Faとの比較を行う場合に、僅かな差で制限オーバーと判定されると、経路変更の頻度が高くなり、実際的ではない。そこで、残り時間Ta及び残金Fa側に、例えば、制限の10%程度の重みを付けておいても良い。
【0074】
上記のケースに則して説明すると、時間的制限である180分の10%である18分、料金的制限である5000円の10%である500円が、残り時間Ta及び残金Fa側に加算されるとする。したがって、「残り時間は78分、残金は2500円」となる。
【0075】
この結果を、「予想時間が70分、予想料金は2500円」と比較すると、予想時間Tb及び予想料金Fbは共に、残り時間Ta及び残金Faの範囲内となり(78分>70分、2500円=2500円)、制限判定部32は時間オーバー及び料金オーバーとなる旨の判定を下すことにない。
【0076】
[経路変更部33]
経路変更部33は、制限判定部32が制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、候補地抽出部25の抽出した候補地の中から、つまり経路リストAの中から、残り分計算部30の計算した残り時間又は残金の範囲以内で到達可能な経路を検索して、検索した経路に変更する部分である。
【0077】
(2)本実施形態の制御処理
続いて、本実施形態において、目的地をユーザーに伏せたまま経路案内を行う際の制御処理について、図3〜図5のフローチャートを参照して説明する。
【0078】
[制御処理全体]
はじめに、図3のフローチャートを用いて、制御処理全体の流れについて述べる。まず、ディスプレイ11のタッチパネル部分やリモコン13などの入力部を使用して、ユーザーが施設のジャンル指定を行い(S101)、指定されたジャンルの情報を、候補地を抽出する際の指定条件として候補地抽出部25に送る。また、同じく入力部を用いて、制限時間T及び制限料金Fを、ユーザーが入力し(S102)、これらの制限T、Fを制限設定部26に送る。
【0079】
経路リスト作成部27は、候補地抽出部25にて抽出した候補地までの経路をリスト化して経路リストAを作成する(S103、経路リストAの作成処理に関しては後段にて述べる)。S104では経路リストAに経路が存在するかどうかを確認し、経路リストAに経路が存在する場合(S104のYes)、経路リスト作成部27は、経路リストAの中から制限設定部26にて設定した制限の範囲内となる経路かどうかで、経路を絞り込んで経路リストBを作成する(S105、経路リストBの作成処理に関しては後段にて述べる)。
【0080】
続いてS106では経路リストBに経路が存在するかどうかを確認し、経路リストBに経路が存在する場合(S106のYes)、経路選択部29が経路リストBから無作為に経路を選択し(S107)、選択した経路について、案内制御部24が経路案内を開始する(S108)。ここで、経路選択部29にて選択された経路の終点がユーザーに伏せられた目的地となり、経路案内部24は、経路選択部29の選択した経路について、経路の終点である目的地を除外した上で経路案内を実施する。
【0081】
また、ユーザーが指定したジャンルの施設が、自車位置から一定の範囲内に存在せず、候補地抽出部25にて候補地が抽出されなかったときは、経路リストAに経路が全く存在しないことになり(S104のNo)、この場合には目的地を伏せた経路案内を行うことなく、処理は終了する。
【0082】
また、経路リストAに経路が存在する場合でも、制限設定部26にて設定した制限の範囲内となる経路が無ければ、経路リストBに経路が存在しないことになり(S106のNo)、この場合にも目的地を伏せた経路案内を行うことなく、処理は終了する。
【0083】
案内制御部24による経路案内の開始後、任意のタイミングで、残り分計算部30が、自車位置取得部20から自車位置情報を取得し、その自車位置での経路終点までの残り時間Ta及び残金Faを計算する(S109)。
【0084】
続いて、予想分計算部31が、自車位置や交通情報などに基づいて、残り分計算部30が残り時間Ta及び残金Faを計算した地点での自車位置から、経路終点に到着するまでに予想される予想時間Tb及び予想料金Fbを計算する(S110)。
【0085】
さらに、制限判定部32が、残り分計算部30の計算した残り時間Taと、予想分計算部31の計算した予想時間Tbとを比較し、予想時間Tbが残り時間Taを超過した場合に(S111のYes)、制限設定部26の設定した制限について時間オーバーになると判定する(S112)。予想時間Tbが残り時間Taを超過していなければ(S111のNo)、S109に戻る。
【0086】
また、制限判定部32が、残り分計算部30の計算した残金Faと、予想分計算部31の計算した予想料金Fbとを比較し、予想料金Fbが残金Faを超過した場合に(S113のYes)、制限設定部26の設定した制限について料金オーバーになると判定する(S114)。予想料金Fbが残金Faを超過していなければ(S113のNo)、S109に戻る。
【0087】
制限判定部32が時間オーバー又は料金オーバーとなる旨の判定を下したことを受けて、経路変更部33は、候補地抽出部25の抽出した施設の中から、残り分計算部30の計算した残り時間又は残金の範囲以内で到達可能な施設を検索して、検索した候補地へと向かう経路に変更する(S115)。したがって、経路変更部33による新たな経路の終点がユーザーに伏せられた目的地となり、経路案内部24は、変更後の経路について、経路の終点である目的地を除外した上で経路案内を行う(S116)。
【0088】
[経路リストA作成]
図4のフローチャートは、経路リストAを作成する際の処理の流れを示している。すなわち、自車位置取得部20は自車位置情報を取得し(S201)、候補地抽出部25は、自車位置取得部20の取得した自車位置情報に基づいて、HDD19に格納された施設情報から、指定ジャンルに該当する候補地として施設情報を抽出する(S202)。
【0089】
指定ジャンルに該当する施設情報がある場合(S203のYes)、自車位置から近い順に並べ(S204)、自車位置から候補地抽出部25の抽出した候補地に至るまでの経路を、経路探索部23にて探索する(S205)。そして、経路リスト作成部27は探索した経路をリスト化して経路リストAを作成し(S206)、これを経路リスト保存部28に保存する(S207)。このような処理を、抽出された施設の数だけ繰り返す。
【0090】
[経路リストB作成]
図5のフローチャートは、経路リストBを作成する際の処理の流れを示している。これは、上記経路リストAと燃費を料金的制限として、ユーザーの設定した制限に適った経路を絞り込み、保存する処理の例である。
【0091】
まず、経路リスト作成部27では、経路リストAの経路があるかどうかを確認して(S301)、経路が無ければ終了する(S301のNo)。一方、経路リストに経路があれば(S301のYes)、経路終点までの走行距離を算出し(S302)、算出した走行距離に単位距離当たりの燃費を掛けて、経路終点までの予想ガソリン代を算出する(S303)。
【0092】
また、経路リスト作成部27は、経路が有料道路を通るかどうかを確認し(S304)、有料道路がある場合には(S304のYes)、有料道路の通行料金を加算する(S305)。有料道路が無い場合には(S304のNo)、S306に移行する。このようにして求めた料金が、制限設定部26の設定した制限料金F以下であれば(S306のYes)、経路リストBに追加する(S307)。以上の処理を経路リストA上の全ての経路に関して実施する。
【0093】
(3)本実施形態の作用効果
以上のような構成を有する本実施形態においては、制限設定部26の設定した時間的あるいは料金的な制限に関して、制限判定部32が判定しており、この制約が、経路の終点に至るまで厳守されるかどうかを常に確認している。このため、判定交通状況の変化などが原因となって、制限がオーバーとなる事態を的確に把握することができる。
【0094】
そして、経路の終点に到着するまで、設定された制限がオーバーとなる経路を走り続けることを止め、経路変更部33にて前記制限が制約条件として成立可能な経路を検索し、この経路に変更することができる。
【0095】
具体的なケースを図6に示す。ここでは、現在時刻が12時10分として、ユーザーが「制限時間1時間で着ける施設、すなわち13時10分までに着ける施設」を条件とした設定して、終点に施設R1がある経路Xを選択した走行を開始したとする(図6の(A)の状態)。
【0096】
そして、40分経過後、残り時間Tbが20分の時点で、経路前方で渋滞が発生し、経路終点の施設までに到着するまでの予想時間Taが40分かかり、到着予定時刻は13時30分となると予想される。つまり、ユーザーが条件として設定した13時10分を20分過ぎて、施設R1に到着することになる(図6の(B)の状態)。
【0097】
この場合には、12時50分の時点で、残り時間Tbである20分以内に到着可能な施設R2を経路リストAから検索し、この施設R2を終点とした経路Yに、経路Xから変更する(図6の(C)の状態)。このように、経路及びその終点である施設を変えることにより、自車両の走行スタート時に設定した制限時間を厳守することができる。
【0098】
自車両の走行スタート時に目的地をユーザーに知らせない経路案内を実施するに当たり、スタート時に設定される制限は、ユーザーにとって唯一の拠り所であり、この制限そのものが変わるようでは、経路案内をされる意味がないことになる。本実施形態では、ユーザーの設定した時間的や料金的な制限が、経路の終点に至るまで必ず守られるので、ユーザーに対して大きな安心感を与えることができる。
【0099】
また、時間的な遅れや料金的な増大もないので、ユーザーが不利益や不快感を蒙ることがない。特に、目的地にこだわりのないユーザーにとっては、どのような種類の施設に着くかということよりも、設定した時間内に確実に施設に着くことの方が重要であり、本実施形態においては、このようなニーズに確実に対応可能である。
【0100】
以上のような本実施形態によれば、未知の目的地に向かうことでエンターテイメント性を確保しつつ、高い安心感と満足感をユーザーに与えることが可能であり、これにより安全性、信頼性の向上が図れる。しかも、FM多重受信及び処理部2及びビーコン受信及び処理部3を用いて交通情報を得ているため、渋滞や事故による交通状況の変化を正確に把握でき、ユーザーが設定した時間的又は料金的な制限に関して、判定精度を高めることができる。
【0101】
さらに、本実施形態では、候補地抽出部25によりユーザーの指定したジャンルの施設を抽出するので、目的地を明示しない経路案内として娯楽性をユーザーにもたらすだけではなく、ユーザーが不案内の地域であっても目的地の選択支援として有効である。
【0102】
(4)他の実施形態
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、各部の構成などは適宜選択可能であり、例えば、制限判定手段の判定結果をディスプレイ11上に表示するようにしてもよい。
【0103】
この実施形態によれば、制限判定手段の判定結果をディスプレイ11に表示するので、ユーザーの設定した制限に限界が来たことをユーザー自身が理解している。したがって、経路変更に伴う多少不自然な経路案内があった場合でもユーザーは常に安心して経路案内に従うことができる。また、制限判定手段の判定結果に関して、制限オーバーの時間や料金の数値を放置した上で、目的地を伏せたままの経路案内を続けるかいなかの判断をユーザーに仰ぐようにしても良い。
【0104】
さらに、上記実施形態の経路変更部33は、制限判定部32が制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、経路リストAを検索しているが、仮に、経路リストAに、残り分計算部30の計算した残り時間又は残金の範囲以内で到達可能な経路が見つからなければ、候補地抽出部25が再度、自車位置取得部20から自車位置情報を取得して、ユーザーの入力操作により指定したジャンル情報などをそれぞれ受け取り、これらの情報に基づいて指定ジャンルに該当する施設を、HDD19に格納された施設情報から抽出することも可能である。
【0105】
さらに、このような候補地抽出部25による再抽出を行った後、該当する施設が見つからなかった場合には、見つからなかった旨をユーザーに報告し、ユーザーの新たな指示を仰ぐことを、要求するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る代表的な実施形態の概要を示す構成図。
【図2】本実施形態における制御部を仮想的ブロックにて示した構成図。
【図3】本実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】本実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】本実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図6】本実施形態の作用効果を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0107】
1…ナビゲーション装置
2…FM多重受信及び処理部
3…ビーコン受信及び処理部
4…制御部
5…DRAM
6…SRAM
7…ROM
8…HDD制御部
9…測位部
10…VRAM
11…タッチパネル式ディスプレイ
12…リモコン受光機
13…リモコン
14…マイク
15…スピーカー
19…HDD
20…自車位置取得部
21…出発地設定部
22…目的地設定部
23…経路探索部
24…案内制御部
25…候補地抽出部
26…制限設定部
27…経路リスト作成部
28…経路リスト保存部
29…経路選択部
30…残り分計算部
31…予想分計算部
32…制限判定部
33…経路変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、道路地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、前記道路地図上から複数の候補地を抽出する候補地抽出手段と、前記自車位置から各候補地までの経路を探索する経路探索手段と、前記経路の終点を除外して前記経路を案内する経路案内手段、が設けられたナビゲーション装置において、
自車両が前記経路の終点に到着するまでの時間的制限及び料金的制限のうちの少なくとも一方を設定する制限設定手段と、
前記経路探索手段の探索した経路の中から前記制限設定手段の設定した前記制限の範囲内となる前記経路のリストを作成する経路リスト作成手段と、
前記経路リストを保存する経路リスト保存手段と、
前記経路リストから任意の経路を選択する経路選択手段と、
前記自車位置検出手段の検知した自車位置を取得し、その自車位置での前記制限に関する残り分を計算する残り分計算手段と、
前記残り分計算手段が前記残り分を計算した地点での自車位置から、前記経路の終点に到着するまでに必要とする予想分を計算する予想分計算手段と、
前記残り分計算手段の計算した前記残り分と、前記予想分計算手段の計算した前記予想分とを比較し、前記予想分が前記残り分を超過した場合に、前記制限設定手段の設定した前記制限について制限オーバーとなると判定する制限判定手段と、
前記制限判定手段が前記制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、前記候補地抽出手段の抽出した候補地の中から、前記残り分計算手段の計算した前記残り分の範囲内で到達可能な候補地を検索して、検索した候補地へと向かう経路に変更する経路変更手段、が設けられたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
外部から渋滞情報もしくは事故情報を含む交通情報を受信する交通情報受信手段が設けられ、
前記予想分計算手段は、前記交通情報受信手段の受信した前記交通情報を取得し、この交通情報に基づいて、前記経路の終点に到着するまでに要する予想時間及び予想料金の少なくとも一方を計算するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記候補地抽出手段は、ユーザーの入力操作により指定条件を設定した上で候補地を抽出するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制限判定手段の判定結果を報知する判定結果報知手段が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
自車両の現在位置を検出する自車位置検出ステップと、道路地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶ステップと、前記道路地図上から複数の候補地を抽出する候補地抽出ステップと、前記自車位置から各候補地までの経路を探索する経路探索ステップと、前記経路の終点を除外して前記経路を案内する経路案内ステップ、を含むナビゲーション方法において、
自車両が前記経路の終点に到着するまでの時間的制限及び料金的制限のうちの少なくとも一方を設定する制限設定ステップと、
前記経路探索ステップにて探索した経路の中から前記制限設定ステップにて設定した前記制限の範囲内となる前記経路のリストを作成する経路リスト作成ステップと、
前記経路リストを保存する経路リスト保存ステップと、
前記経路リストから任意の経路を選択する経路選択ステップと、
前記自車位置検出ステップにて検知した自車位置を取得し、その自車位置での前記制限に関する残り分を計算する残り分計算ステップと、
前記残り分計算ステップにて前記残り分を計算した地点での自車位置から、前記経路の終点に到着するまでに必要とする予想分を計算する予想分計算ステップと、
前記残り分計算ステップにて計算した前記残り分と、前記予想分計算ステップにて計算した前記予想分とを比較し、前記予想分が前記残り分を超過した場合に、前記制限設定ステップにて設定した前記制限について制限オーバーとなると判定する制限判定ステップと、
前記制限判定ステップにて前記制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、前記候補地抽出ステップにて抽出した候補地の中から、前記残り分計算ステップにて計算した前記残り分の範囲内で到達可能な候補地を検索して、検索した候補地へと向かう経路に変更する経路変更ステップ、を含むことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項6】
コンピュータを利用することにより、自車両の現在位置を検出する自車位置検出機能と、道路地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶機能と、前記道路地図上から複数の候補地を抽出する候補地抽出機能と、前記自車位置から各候補地までの経路を探索する経路探索機能と、前記経路の終点を除外して前記経路を案内する経路案内機能、をコンピュータに実現させるナビゲーションプログラムにおいて、
自車両が前記経路の終点に到着するまでの時間的制限及び料金的制限のうちの少なくとも一方を設定する制限設定機能と、
前記経路探索機能にて探索した経路の中から、前記制限設定機能にて設定した前記制限の範囲内となる前記経路のリストを作成する経路リスト作成機能と、
前記経路リストを保存する経路リスト保存機能と、
前記経路リストから任意の経路を選択する経路選択機能と、
前記自車位置検出機能にて検知した自車位置を取得し、その自車位置での前記制限に関する残り分を計算する残り分計算機能と、
前記残り分計算機能にて前記残り分を計算した地点での自車位置から、前記経路の終点に到着するまでに必要とする予想分を計算する予想分計算機能と、
前記残り分計算機能にて計算した前記残り分と、前記予想分計算機能にて計算した前記予想分とを比較し、前記予想分が前記残り分を超過した場合に、前記制限設定機能にて設定した前記制限について制限オーバーとなると判定する制限判定機能と、
前記制限判定機能にて前記制限オーバーとなる旨の判定を下した時点で、前記候補地抽出機能にて抽出した候補地の中から、前記残り分計算機能にて計算した前記残り分の範囲内で到達可能な候補地を検索して、検索した候補地へと向かう経路に変更する経路変更機能、をコンピュータに実現させることを特徴とするナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−139466(P2010−139466A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318145(P2008−318145)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】