説明

ナビゲーション装置、ナビゲーションシステムおよびナビゲーション方法

【課題】車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制できるナビゲーション装置、ナビゲーションシステムおよびナビゲーション方法を提供する。
【解決手段】推奨経路の演算に際し、推奨経路の候補となる道路についてのリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出し、算出したリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように推奨経路を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーションシステムおよびナビゲーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置では、出発地点から目的地点までの経路を探索し、探索した経路をドライバに提示することができる。その経路探索では、通常、道路リンクごとに何らかのコスト(以下、リンクコストという)を設定しておき、出発地点から目的地点までのとり得る経路について、そのリンクコストに基づくコスト関数の値を計算し、そのコスト関数の値が最小になる経路を抽出する。
【0003】
ナビゲーション装置においては、コスト関数として、出発地点から目的地点までの経路の走行所要時間やその経路の延長距離(経路長)を用いるのが一般的である。その場合、各道路リンクには、リンクコストとして、その道路リンクのリンク旅行時間やリンク長が設定される。そして、所定のアルゴリズムにしたがって、コスト関数の値が最小になる経路として、最小所要時間経路(最短時間経路)や最小走行距離経路(最短距離経路)が探索される。
【0004】
経路探索のコスト関数として、燃料消費量を用いることもできる。その場合、リンクコストには、車両がその道路リンクを走行するときの燃料消費量を設定しておく必要がある。燃料消費量のリンクコストが設定されれば、ナビゲーション装置は、その燃料消費量のリンクコストに基づき、燃料消費量を最小化する経路(以下、燃費最小経路という)を探索することができる。
【0005】
燃料消費量は、路面の勾配の影響を大きく受ける。そこで、路面勾配を考慮して、燃費最小経路を探索する経路探索装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−198293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料消費量、すなわち車両におけるエネルギーの消費量は、車両の空調装置の稼働状態の影響も受ける。たとえば、夏季に日陰の多い道路を通行する場合と、日陰の少ない道路を通行する場合とでは、車両の空調装置の負荷が異なるため空調装置の稼働状態が異なり、エネルギーの消費量も異なる。しかし、上述した特許文献に記載の装置では、走行する道路によって異なる可能性がある車両の空調負荷までは考慮していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 請求項1の発明によるナビゲーション装置は、少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を演算する推奨経路演算手段と、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、推奨経路演算手段によって演算された推奨経路に沿って経路誘導する経路誘導手段と、推奨経路の候補となる道路についてのリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出する道路状況算出手段とを備え、推奨経路演算手段は、道路状況算出手段で算出したリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように前記推奨経路を演算することを特徴とする。
(2) 請求項3の発明によるナビゲーションシステムは、ナビゲーション装置と、ナビゲーション装置と通信可能な通信センタとを含むナビゲーションシステムであって、ナビゲーション装置は、経路誘導のための出発地および目的地の情報を通信センタへ送信する出発地/目的地情報送信手段と、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、通信センタより送信される推奨経路の情報を受信する推奨経路情報受信手段と、推奨経路情報受信手段によって受信した推奨経路の情報に基づいて経路誘導する経路誘導手段とを備え、通信センタは、出発地/目的地情報送信手段により送信された出発地および目的地の情報を受信する出発地/目的地情報受信手段と、出発地/目的地情報受信手段により受信した出発地および目的地の情報と、少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を演算する推奨経路演算手段と、推奨経路演算手段で演算された推奨経路の情報をナビゲーション装置に対して送信する推奨経路情報送信手段と推奨経路の候補となる道路についてのリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出する道路状況算出手段とを備え、推奨経路演算手段は、道路状況算出手段で算出したリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように推奨経路を演算することを特徴とする。
(3) 請求項5の発明によるナビゲーション方法は、少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの車両の推奨経路を演算するナビゲーション方法において、推奨経路の候補となる道路についてのリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出し、算出したリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように推奨経路を演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態のナビゲーション装置を含む車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ナビゲーション装置において実行される処理のフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態のナビゲーションシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜3を参照して、本発明によるナビゲーション装置、ナビゲーションシステムおよびナビゲーション方法の第1の実施の形態を説明する。本実施の形態によるナビゲーション装置1を含む車載システムの構成を図1のブロック図に示す。図1において、EV(Electric Vehicle)である車両100には、ナビゲーション装置1、車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4、電気モータ5、通信装置6、インバータ7およびコンプレッサ8が搭載されている。
【0012】
バッテリ3は、電気モータ5を駆動するための電力を供給する。バッテリ3から供給される電力を用いて電気モータ5が駆動することにより、車両100は走行する。また、車両100の減速時には電気モータ5が発電機として作用し、回生発電による電力が発生する。この回生発電によって得られた電力は、バッテリ3において蓄積される。電力変換装置4は、バッテリ3と電気モータ5との間で授受されるこれらの電力を相互に利用可能な形式に変換する。たとえば、バッテリ3から供給される直流電力を所望の交流電力ともにして電気モータ5へ出力するとともに、電気モータ5において回生発電により得られた交流電力を所望の直流電力に変換してバッテリ3へ出力する。
【0013】
車両制御装置2は、車両100の走行状態や、バッテリ3の状態、電気モータ5の状態などを監視し、その監視結果に基づいて電力変換装置4の動作を制御する。この車両制御装置2の制御により電力変換装置4が動作することで、車両100の走行状態に応じてバッテリ3と電気モータ5との間で適切に電力の授受が行われる。これにより、バッテリ3に蓄積された電気エネルギーを消費して、車両100が走行するための運動エネルギーを電気モータ5による発生することができる。また、車両100の運動エネルギーの少なくとも一部を電気モータ5により回収して、再利用可能な回生エネルギーとしての電気エネルギーをバッテリ3に蓄積することができる。
【0014】
ナビゲーション装置1は、地図データに基づいて地図を表示するとともに、設定された目的地までの推奨ともに探索し、車両100をその目的地まで案内することができる。さらに、車両制御装置2からバッテリ3の残量を示すバッテリ残量情報を取得し、そのバッテリ残量情報に基づいて、バッテリ3の残量、すなわち車両100における電気エネルギーの残量を求めることができる。バッテリ3の残量は、たとえば、完全放電状態である0%から満充電状態である100%までのいずれかの値をとるSOC(State Of Charge)によって表すことができる。
【0015】
通信装置6は、たとえば携帯電話機などの無線通信装置であり、外部の通信網やインターネット接続網に接続して各種の情報を送受信する。コンプレッサ8は、車両100の空調(冷房および暖房)用のコンプレッサであり、不図示のモータによって駆動される。このモータは、インバータ7によって駆動が制御される。
【0016】
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスク(HDD)13、GPS(Global Positioning System)受信部14、情報受信部15、表示モニタ16、スピーカ17および入力装置18を備えている。
【0017】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、目的地を設定する際の目的地の検索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、車両100の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などが制御部10によって実行される。
【0018】
振動ジャイロ11は、車両100の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、車両100の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサにより車両100の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、制御部10において車両100の移動方向および移動量が求められる。
【0019】
HDD13は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD13に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0020】
HDD13に記録された地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。道路データにおいて、各道路は後述するようにノードや形状補間点と呼ばれる点を複数繋げることによって構成されている。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。また、背景データには、道路に隣接した各種構造物の位置、形状、大きさなどに関するデータや、山などの地形に関するデータも含まれている。
【0021】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。なお、道路データにおいて各リンクの両端には、座標情報がそれぞれ設定されたノードと呼ばれる点が設けられている。また、各リンクの途中には形状補間点と呼ばれる点が必要に応じて設けられている。各形状補間点には、ノードと同様に座標情報がそれぞれ設定されている。これらの点を順に繋げることにより、道路データにおいて道路の形状が表される。
【0022】
一方、経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両100が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、ナビゲーション装置1において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0023】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD13に記録されている例を説明したが、これらをHDD以外の記録媒体に記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録された地図データを用いることができる。すなわち、本実施の形態によるナビゲーション装置では、どのような記録媒体を用いてこれらのデータを記憶してもよい。
【0024】
GPS受信部14は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、車両100の現在位置を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、車両100の現在位置を制御部10において算出することができる。このGPS信号に基づく車両100の現在位置の算出結果と、前述の振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果に基づく移動方向および移動量の算出結果とにより、制御部10において所定時間ごとに車両100の現在位置を検出するための位置検出処理が実行され、車両100の現在位置が検出される。
【0025】
情報受信部15は、外部の通信網やインターネット接続網に接続した通信装置6から各種の情報を受信する。たとえば、情報受信部15は、後述するように外部の通信網やインターネット接続網に接続した通信装置6から探索する推奨経路に係る地域の気象情報を受信する。情報受信部15により受信された各種情報は、制御部10に出力され、推奨経路の探索などに利用される。
【0026】
表示モニタ16は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ16により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ16に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ16は、たとえば車両100のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0027】
スピーカ17は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って車両100を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ17から出力される。
【0028】
入力装置18は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置18を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置18を表示モニタ16と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0029】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された車両100の現在位置を出発地として、制御部10により、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算による経路探索処理を行う。この処理により、出発地から目的地まで至る推奨経路を探索する。さらにナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ16に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ16やスピーカ17から出力することにより経路誘導を行うことで車両100を目的地まで案内する。
【0030】
次に、ナビゲーション装置1において制御部10により実行される処理について説明する。上述したように、ナビゲーション装置1では、リンクコストに基づいて推奨経路の探索が行われる。このとき、車両100における消費電力削減の観点から、次のような道路の通行を避けることが望ましい。たとえば、路面の勾配が上り勾配となる道路では、車両100の位置エネルギーを増やすための消費電力が大きくなるので、通行を避けることが望ましい。
【0031】
夏季であれば日陰が少ない(直射日光が当たる区間の割合が大きい)道路では、直射日光により車室内温度が上昇して冷房に要するコンプレッサ8の駆動電力が増大するので、通行を避けることが望ましい。冬季であれば日陰が多い(直射日光が当たる区間の割合が小さい)道路では、直射日光による車室内温度の維持または上昇が期待できず、車室内温度が低下して暖房に要するコンプレッサ8の駆動電力が増大するので、通行を避けることが望ましい。
【0032】
そこで、本実施の形態では、推奨経路の候補となる道路のリンクのそれぞれについて、後述するリンクコストの補正値を算出し、すでに設定されているリンクコストを増加または減少させることで、車両100における消費電力を抑制できる推奨経路を算出するようにしている。具体的には、本実施形態のナビゲーション装置1では、地図データにおいて設定されている複数の地図メッシュのうち出発地から目的地までの各地図メッシュについて、当該地図メッシュ内の各リンクに対するリンクコストに対して、後述するリンクコストの補正値△Lcを付加する。こうして補正されたリンクコストを用いて推奨経路を探索することにより、車両100における消費電力を抑制できる推奨経路の探索を実現する。
【0033】
−−−リンクコストの補正値△Lc−−−
本実施の形態では、リンクコストの補正値△Lcを、たとえば、次の(1)式により算出する。
△Lc = f(△h)+g(s)×k ・・・(1)
【0034】
ここで、f(△h)は、リンクコストの補正値のうち、リンクの高低差△hをパラメータとする値である。f(△h)は、リンクに対応する道路の路面勾配が上り勾配であれば正の値をとり、下り勾配であれば負の値をとる。また、f(△h)の絶対値は、勾配が大きくなるほど大きな値となる。
【0035】
g(s)は、リンクコストの補正値のうち、リンクに対応する道路における直射日光が当たる区間の割合(以下、単に「日なたの割合」と呼ぶ)sをパラメータとする値である。g(s)は、日なたの割合sが大きくなるほど大きな値となる。なお、日なたの割合sの算出方法については後に詳述する。
【0036】
kは、季節や時刻、天候に応じて、リンクコストの補正値△Lcに対するg(s)の影響度合いを変更するための係数である。たとえば、雨天時、曇天時など、昼間であっても日照のない状態では、日なたの割合sの大小によって空調装置の負荷が変化しないため、係数kはゼロとなる。たとえば、夏季には、日なたの割合sが大きくなるほど空調装置の負荷(冷房負荷)が増えるため、係数kは正の値となる。また、冬季には、日なたの割合sが大きくなるほど空調装置の負荷(暖房負荷)が減るため、係数kは負の値となる。
【0037】
係数kの算出に際して、リンクに対応する道路の通過予定日時は、公知の方法で算出可能である。なお、現在の時刻については、GPS衛星から送信されるGPS信号から得られる。また、リンクに対応する道路の通過予定日時における当該道路の周辺の天候については、たとえば、通信装置6を介して接続したインターネット接続網より、気象情報のサイトにアクセスすることで取得することが考えられる。
【0038】
−−−日なたの割合sの求め方−−−
日なたの割合s、すなわち、リンクに対応する道路における直射日光が当たる区間の割合は、次のようにして求める。まず、制御部10は、日なたの割合sを求める対象となるリンクについて、地図データを参照して緯度および経度を読み込む。ここで、緯度および経度を求めるリンク上の地点としては、次のようにして求める太陽の位置の算出精度に悪影響を与えることがないので、リンクの端点であってもよく、リンク上の任意の地点であてもよい。また、制御部10は、当該リンクを車両100が通過する予定日時を公知の方法で算出する。そして、制御部10は、当該リンクの緯度および経度と、当該リンクの通過予定日時とに基づいて、当該リンクに対応する道路における太陽の位置、すなわち、太陽が観察される方位および仰角(太陽高度)を算出する。
【0039】
そして、制御部10は、地図データ(背景データ)を参照して、当該リンクの周囲の建物やトンネル、高架橋などの構造物、山などの地形が当該リンクの日照に対してどのように影響するのかを算出する。たとえば、当該リンクの周囲の建物の位置、大きさ、高さと太陽の位置とから、当該リンクに対応する道路上で建物によって日照が遮られない範囲を算出する。また、たとえば、当該リンクの周囲の地形と太陽の位置とから、当該リンクに対応する道路上で周囲の地形によって日照が遮られない範囲を算出する。そして制御部10は、上述のようにして算出した当該リンクに対応する道路上で日照が遮られない範囲から、その道路における直射日光が当たる区間の割合(日なたの割合s)を算出する。
【0040】
図3は、上記のような動作を実現するためにナビゲーション装置1において実行される処理のフローチャートである。このフローチャートは、ナビゲーション装置1において制御部10により実行されるものである。
【0041】
ステップS10において、制御部10は、自車両の目的地を設定する。ここでは前述のように、たとえばユーザが入力装置18の操作により目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力すると、それに該当する施設等を地図データから探索し、自車両の目的地に設定することができる。あるいは、予め登録された登録地の中からユーザに選択されたものや、地図上でユーザに指定された地点を目的地に設定してもよい。
【0042】
ステップS20において、制御部10は、現在の自車位置の情報を取得する。なお、制御部10は前述のように、所定時間ごとに位置検出処理を実行して自車位置を検出する。ステップS20では、この位置検出処理によって直前に検出された自車位置の情報を現在の自車位置の情報として取得する。こうして取得された現在の自車位置が出発地として設定される。
【0043】
ステップS30において、制御部10は、ステップS10で設定した目的地、およびステップS20で取得した現在の自車位置に基づいて、リンクコストの補正値△Lcを付加する対象となるリンクに係る地図メッシュ(以下、対象地図メッシュという)を特定する。なお、HDD13に記録されている地図データには、所定の地図範囲にそれぞれ対応する複数の地図メッシュが設定されている。たとえば、10km四方の地図範囲が地図メッシュとして設定されている。
【0044】
上記のステップS30では、たとえば目的地を含む地図メッシュと自車位置を含む地図メッシュとを地図データにおいてそれぞれ特定し、これらの地図メッシュを対角線上の両端の位置にそれぞれ配置して形成される矩形領域内の各地図メッシュを対象地図メッシュとすることができる。なお、こうした矩形領域よりもさらに広い、または狭い範囲の地図メッシュを対象地図メッシュとしてもよい。あるいは、自車位置から目的地までの直線上に存在する地図メッシュを対象地図メッシュとしたり、ユーザが地図上で任意に選択した範囲の地図メッシュを対象地図メッシュとしたりしてもよい。これらの方法のうちいずれかを用いて、出発地から目的地までの各地図メッシュを対象地図メッシュとして設定することができる。
【0045】
ステップS40において、制御部10は、ステップS30で特定した対象地図メッシュ内の各リンクに対して、上述したリンクコストの補正値△Lcを算出する。
【0046】
ステップS50において、制御部10は、ステップS20で取得した現在の自車位置からステップS10で設定した目的地までの推奨経路を探索する。このとき、地図データにおいて設定されている各リンクのリンクコストに加えて、ステップS40で対象地図メッシュ内の各リンクに対して算出されたリンクコストの補正値△Lcを加算して、通過所要時間の合計が最小となる経路が推奨経路として探索される。これにより、路面の勾配や日照の状態に応じて補正された各リンクのリンクコストに基づいて、出発地である自車位置から目的地までの推奨経路を探索することができる。
【0047】
ステップS50を実行したら、制御部10は図3のフローチャートを終了する。その後は、探索された推奨経路にしたがって前述のような経路誘導が開始され、車両100が目的地まで誘導される。
【0048】
上述した第1の実施の形態では、次の作用効果を奏する。
(1) 路面の勾配や日照の状態を加味して推奨経路を探索するように構成した。これにより、車両100の位置エネルギーを増やすための消費電力の増加を抑制するとともに、コンプレッサ8の駆動電力を低減できるので、車両100が出発地から目的地まで移動する際の消費電力を削減できる。これにより、車両100の航続可能距離を延長できる。
【0049】
(2) 路面の勾配や日照の状態を加味するにあたり、リンクコストの補正値△Lcを算出し、地図データにおいて設定されている各リンクのリンクコストに対して、算出したリンクコストの補正値△Lcで補正するように構成した。これにより、推奨経路を探索する際のアルゴリズムの変更が少なくて済むので、プログラムの開発や修正などのコストを抑制できる。また、機器構成についても大幅な変更を要しないので、コスト増を抑制できる。
【0050】
(3) 日なたの割合sを求める対象となるリンクについて、地図データを参照して緯度および経度を読み込み、当該リンクの緯度および経度と、当該リンクの通過予定日時とに基づいて、当該リンクに対応する道路における太陽の位置を算出するように構成した。そして、地図データ(背景データ)を参照して、当該リンクの周囲の建物や山などの地形が当該リンクの日照に対してどのように影響するのかを算出するように構成した。これにより、地図データの追加、変更を抑制でき、従来から存在する地図データを利用できるので、地図データの整備に要するコスト増を抑制できる。
【0051】
−−−第2の実施の形態−−−
図4を参照して、本発明によるナビゲーション装置、ナビゲーションシステムおよびナビゲーション方法の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、外部の通信センタ200で推奨経路の探索を行う点で、第1の実施の形態と異なる。
【0052】
第2の実施の形態における構成を図4に示す。図4に示す第2の実施の形態はナビゲーションシステムに関するものである。このナビゲーションシステムは、車両100に搭載されたナビゲーション装置1および通信装置6と、車両100の車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4、電気モータ5、インバータ7およびコンプレッサ8と、通信回線網300と、通信センタ200とを含む。ナビゲーション装置1は、通信装置6および通信回線網300を介して通信センタ200と無線接続することができる。通信センタ200は、複数のナビゲーション装置1と接続することができる。
【0053】
通信装置6は、ナビゲーション装置1の制御により、必要に応じて通信回線網300と無線接続を行う。通信装置6と通信回線網300が無線接続する際には、通信回線網300が有する不図示の無線基地局が用いられる。この無線基地局は、その周囲の所定の通信エリア内にある通信装置6と無線通信することが可能であり、全国各地に散在している。なお、通信装置6は、たとえば携帯電話などである。また、通信回線網300は、たとえば携帯電話回線網やインターネットなどにより構築される。
【0054】
ナビゲーション装置1は、第1の実施の形態のナビゲーション装置1と同様に、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスク(HDD)13、GPS(Global Positioning System)受信部14、情報受信部15、表示モニタ16、スピーカ17および入力装置18を備えている。ナビゲーション装置8のHDD13は、経路計算データを記憶していなくてもよい。
【0055】
本実施の形態では、制御部10は、自車両の目的地を設定するとともに、現在の自車位置の情報を取得する。自車両の目的地の設定および現在の自車位置の情報の取得については、第1の実施の形態と同様である。そして、制御部10は、設定した目的地および取得した自車位置の情報を、通信装置6および通信回線網300を介して通信センタ200に送信する。
【0056】
車両100から目的地および自車位置の情報を受信した通信センタ200では、探索誘導サーバ201が、第1の実施の形態におけるリンクコストの補正値△Lcの算出処理や経路探索処理と同様の処理を行って、第1の実施の形態と同様に、路面の勾配や日照の状態に応じて補正された各リンクのリンクコストに基づいて、出発地である自車位置から目的地までの推奨経路を探索する。なお、通信センタ200では、たとえば、通信回線網300を介して、外部の気象情報のサイトにアクセスして、リンクに対応する道路の通過予定日時における当該道路の周辺の天候の情報を取得する。
【0057】
通信センタ200は、探索された推奨経路の情報を通信回線網300および通信装置6を介してナビゲーション装置1に送信する。通信センタ200で探索された推奨経路の情報を受信したナビゲーション装置1は、推奨経路にしたがって前述のような経路誘導を開始して、車両100を目的地まで誘導する。
【0058】
上述した第2の実施の形態では、第1の実施の形態の作用効果に加えて、次の作用効果を奏する。
(1) 路面の勾配や日照の状態を加味した推奨経路の探索を通信センタ200側で行うように構成した。これにより、ナビゲーション装置1側では、プログラムの修正や機器の追加・変更等が不要となるので、ナビゲーション装置1のコスト増を抑制できる。また、処理能力の高い通信センタ200側の探索誘導サーバ201で路面の勾配や日照の状態を加味した推奨経路の探索を行うので、路面の勾配や日照の状態を加味した推奨経路の探索が短時間で完了し、経路誘導開始までの時間を短縮でき、利便性の高いナビゲーションシステムを提供できる。
【0059】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、対象地図メッシュ内の各リンクに対して、上述したリンクコストの補正値△Lcを算出するように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、リンクコストの補正値△Lcを考慮することなく推奨経路の探索を行い、推奨経路の候補となった複数の経路に係るリンクに対してのみ、上述したリンクコストの補正値△Lcを算出し、当該複数の経路について再度リンクコストの補正値△Lcを考慮して推奨経路の探索を行うようにしてもよい。
【0060】
(2) リンクコストの補正値△Lcを算出するに際し、上述した(1)式を用いているが、(1)式は一例であり、リンクコストの補正値△Lcの算出方法は、上述した方法に限定されない。
【0061】
(3) 上述の説明では、車両100がEV(Electric Vehicle)であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ガソリン等の燃料を使用して走行する車両や、ガソリン等の燃料によるエネルギーと電気エネルギーとを併用して走行するHEV(Hybrid Electric Vehicle)など、他のエネルギーを利用して走行する様々な車両においても本発明を適用可能である。
【0062】
(4) 上述の説明では、路面の勾配や日照の状態を加味した推奨経路の探索を行うように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、路面の勾配を加味せず、日照の状態を加味した推奨経路の探索を行うように構成してもよく、日照の状態を加味せず、路面の勾配を加味した推奨経路の探索を行うように構成してもよい。
(5) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を演算する推奨経路演算手段と、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、推奨経路演算手段によって演算された推奨経路に沿って経路誘導する経路誘導手段と、推奨経路の候補となる道路についてのリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出する道路状況算出手段とを備え、推奨経路演算手段は、道路状況算出手段で算出したリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように前記推奨経路を演算することを特徴とする各種構造のナビゲーション装置を含むものである。
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、ナビゲーション装置と、ナビゲーション装置と通信可能な通信センタとを含むナビゲーションシステムであって、ナビゲーション装置は、経路誘導のための出発地および目的地の情報を通信センタへ送信する出発地/目的地情報送信手段と、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、通信センタより送信される推奨経路の情報を受信する推奨経路情報受信手段と、推奨経路情報受信手段によって受信した推奨経路の情報に基づいて経路誘導する経路誘導手段とを備え、通信センタは、出発地/目的地情報送信手段により送信された出発地および目的地の情報を受信する出発地/目的地情報受信手段と、出発地/目的地情報受信手段により受信した出発地および目的地の情報と、少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を演算する推奨経路演算手段と、推奨経路演算手段で演算された推奨経路の情報をナビゲーション装置に対して送信する推奨経路情報送信手段と推奨経路の候補となる道路についてのリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出する道路状況算出手段とを備え、推奨経路演算手段は、道路状況算出手段で算出したリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように推奨経路を演算することを特徴とする各種のナビゲーションシステムを含むものである。
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの車両の推奨経路を演算するナビゲーション方法において、推奨経路の候補となる道路についてのリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出し、算出したリンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように推奨経路を演算することを特徴とする各種のナビゲーション方法を含むものである。
【符号の説明】
【0064】
1 ナビゲーション装置 3 バッテリ
8 コンプレッサ 10 制御部
100 車両 200 通信センタ
201 探索誘導サーバ 300 通信回線網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を演算する推奨経路演算手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
前記推奨経路演算手段によって演算された前記推奨経路に沿って経路誘導する経路誘導手段と、
前記推奨経路の候補となる道路についての前記リンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出する道路状況算出手段とを備え、
前記推奨経路演算手段は、前記道路状況算出手段で算出した前記リンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、前記車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように前記推奨経路を演算することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記道路状況算出手段は、前記車両と太陽との位置関係を算出し、算出した前記位置関係と、前記道路地図データに含まれる道路の周囲の状況を表す情報とに基づいて前記リンクに対応する道路の日照の状況を算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
ナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置と通信可能な通信センタとを含むナビゲーションシステムであって、
前記ナビゲーション装置は、
経路誘導のための出発地および目的地の情報を前記通信センタへ送信する出発地/目的地情報送信手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
前記通信センタより送信される推奨経路の情報を受信する推奨経路情報受信手段と、
前記推奨経路情報受信手段によって受信した前記推奨経路の情報に基づいて経路誘導する経路誘導手段とを備え、
前記通信センタは、
前記出発地/目的地情報送信手段により送信された前記出発地および目的地の情報を受信する出発地/目的地情報受信手段と、
前記出発地/目的地情報受信手段により受信した前記出発地および目的地の情報と、少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、前記出発地から前記目的地までの推奨経路を演算する推奨経路演算手段と、
前記推奨経路演算手段で演算された前記推奨経路の情報をナビゲーション装置に対して送信する推奨経路情報送信手段と
前記推奨経路の候補となる道路についての前記リンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出する道路状況算出手段とを備え、
前記推奨経路演算手段は、前記道路状況算出手段で算出した前記リンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、前記車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように前記推奨経路を演算することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記道路状況算出手段は、前記車両と太陽との位置関係を算出し、算出した前記位置関係と、前記道路地図データに含まれる道路の周囲の状況を表す情報とに基づいて前記リンクに対応する道路の日照の状況を算出することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項5】
少なくとも道路に関するノードとリンクとの情報を有する道路地図データに基づいて、出発地から目的地までの車両の推奨経路を演算するナビゲーション方法において、
前記推奨経路の候補となる道路についての前記リンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を算出し、
算出した前記リンクに対応する道路の日照の状況および勾配の状況を加味して、前記車両が出発地から目的地まで移動する際に消費するエネルギーを抑制するように前記推奨経路を演算することを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項6】
請求項5に記載のナビゲーション方法において、
前記車両と太陽との位置関係を算出し、算出した前記位置関係と、前記道路地図データに含まれる道路の周囲の状況を表す情報とに基づいて前記リンクに対応する道路の日照の状況を算出することを特徴とするナビゲーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−230067(P2012−230067A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99784(P2011−99784)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】