説明

ナビゲーション装置、ナビゲーションシステム

【課題】地図データの差分更新において、車両の誘導を開始するまでに要する時間を短縮化する。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、配信サーバより配信される更新地図データを通信端末2により受信して取得する。この更新地図データに基づいて、HDD13に記憶されている地図データを部分的に更新する。このとき、経路に関連する更新対象道路に対する地図データの更新を、推奨経路に関連しない他の更新対象に対する地図データの更新よりも優先して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるナビゲーション装置と、このナビゲーション装置を有するナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、更新地図データをサーバ等から受信して地図データの差分更新を行うナビゲーション装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−165639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような地図データの差分更新に要する時間は、更新地図データの量に応じて変動し、データ量が多いと数分から数十分程度かかる場合がある。したがって、車両の走行開始前や走行中に地図データの差分更新を開始すると、これが完了するまでの間は地図データを利用することができないため、車両の誘導を行うことができない。このような状況から、地図データの差分更新において、車両の誘導を開始するまでに要する時間を短縮化することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるナビゲーション装置は、車両に搭載されており、地図データを記憶する記憶手段と、所定の更新範囲に対応する更新対象道路のうち少なくとも車両の経路に関連する更新対象道路について配信サーバより配信される更新地図データを取得する取得手段と、更新地図データに基づいて地図データを部分的に更新する更新手段とを備える。更新手段は、経路に関連する更新対象道路に対する地図データの更新を、他の更新対象道路に対する地図データの更新よりも優先して行う。
本発明によるナビゲーションシステムは、上記のナビゲーション装置と、更新地図データをナビゲーション装置へ配信する配信サーバとを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地図データの差分更新において、車両の誘導を開始するまでに要する時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーションシステムの構成図である。
【図2】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】更新範囲および更新対象道路の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による地図データ更新時のフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態による地図データ更新時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
本発明の一実施の形態によるナビゲーションシステムの構成を図1に示す。このシステムは、車両100に搭載されているナビゲーション装置1および通信端末2と、通信回線網3と、配信サーバ4とによって構成される。なお、ナビゲーション装置1と通信端末2は、有線あるいは無線接続によって接続されている。
【0009】
ナビゲーション装置1は、車両100の位置を検出し、地図を表示して検出した車両100の位置をその地図上に示す。また、ユーザに車両100の目的地が設定されると、その目的地までの推奨経路を探索し、探索した推奨経路に従って車両100を目的地まで誘導する。ナビゲーション装置1には、このような処理を実行するために用いる地図データが記憶されている。
【0010】
ナビゲーション装置1において記憶されている地図データは、部分的に更新することができる。地図データを更新する際、ナビゲーション装置1は、元の地図データと最新の地図データとの差分を、更新地図データとして取得する。この更新地図データは、通信端末2および通信回線網3を介して配信サーバ4からナビゲーション装置1に配信される。あるいは、配信サーバ4から配信された更新地図データを、パーソナルコンピュータ等を用いて、DVD5またはUSB(Universal Serial Bus)メモリ6に記録しておき、これをナビゲーション装置1において読み込むこととしてもよい。ナビゲーション装置1は、上記のようにして取得した更新地図データに基づいて元の地図データの内容を書き換えることで、地図データの更新を行う。
【0011】
通信端末2は、ナビゲーション装置1の制御により、必要に応じて通信回線網3と無線接続を行う。通信回線網3には、配信サーバ4が接続されている。すなわちナビゲーション装置1は、通信端末2と通信回線網3を介して配信サーバ4に接続する。通信端末2と通信回線網3が無線接続する際には、通信回線網3が有する不図示の無線基地局が用いられる。この無線基地局は、その周囲の所定の通信エリア内にある通信端末2と無線通信することが可能であり、全国各地に散在している。なお、通信端末2は、たとえば携帯電話などである。また、通信回線網3は、たとえば携帯電話回線網やインターネットなどにより構築される。
【0012】
配信サーバ4は、全国各地の最新の地図データを記憶している。配信サーバ4を管理している管理者は、地図データの元となる地図の内容に変更が生じると、その変更を所定のタイミングで配信サーバ4の地図データに反映し、地図データの更新を行う。こうして配信サーバ4の地図データが更新されると、その更新内容ごとに更新日の情報が配信サーバ4において記録される。
【0013】
ナビゲーション装置1から通信端末2および通信回線網3を介して更新地図データの配信要求があると、配信サーバ4は、その配信要求に応じて更新地図データを配信する。あるいは、配信サーバ4において更新地図データの配信が可能となったときに、配信サーバ4からナビゲーション装置1へ自動的に更新地図データを配信するようにしてもよい。こうして配信サーバ4から配信された更新地図データは、通信回線網3を介して通信端末2へと送信され、通信端末2からナビゲーション装置1へ出力される。これにより、ナビゲーション装置1において更新地図データがダウンロードされる。
【0014】
DVD5とUSBメモリ6は、いずれも更新地図データが記録されている記録媒体である。ナビゲーション装置1は、DVD5とUSBメモリ6のいずれか一方がユーザによってセットされると、そこから更新地図データを読み込むことができる。DVD5とUSBメモリ6には、たとえば、ユーザが図示しないパーソナルコンピュータを用いてダウンロードした更新地図データが記録されている。この場合、DVD5には、DVD−Rなどの記録型DVDが用いられる。あるいは、ナビゲーション装置1の製造メーカ等がDVD5やUSBメモリ6を郵送などでユーザに配布してもよい。この場合、DVD5は、記録型DVDでなくともよい。なお、DVD5やUSBメモリ6の代わりに、他の種類の記録媒体、たとえばCDやメモリカード等を用いてもよい。
【0015】
次にナビゲーション装置1の構成について説明する。図2は、ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。図2に示すように、ナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスク(HDD)13、ディスクドライブ14、USBインタフェース(I/F)15、GPS(Global Positioning System)受信部16、表示モニタ17および入力装置18を備えている。
【0016】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。この制御部10により、自車両すなわち車両100を目的地まで案内するための様々な処理が実行される。たとえば、目的地を設定する際の目的地の探索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、車両100の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、ルート案内時の音声出力処理などが実行される。制御部10には通信端末2が接続されており、制御部10によって通信端末2を制御することで、ナビゲーション装置1から図1の配信サーバ4に対して更新地図データの配信要求が行われる。この配信要求に応じて配信サーバ4から配信された更新地図データは、通信端末2を経由して制御部10へ出力される。
【0017】
振動ジャイロ11は、車両100の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、車両100の車速を検出するためのセンサである。これらのセンサの検出結果に基づいて、制御部10において車両100の運動状態を所定の時間間隔ごとに算出することにより、車両100の移動量が求められ、それによって車両100の現在位置が検出される。
【0018】
HDD13は、記録されている情報を書き換え可能な不揮発性の記録媒体である。このHDD13には、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどの情報が記録されている。HDD13に記録されている地図データでは、地図が所定の距離単位で複数の区画に分割されて表されている。この区画のそれぞれはメッシュと呼ばれる。すなわち、ナビゲーション装置1において、地図データはメッシュ単位で管理されている。
【0019】
HDD13に記録されている地図データにおいて、各道路は所定の道路区間ごとに分割されて表されている。この道路区間のそれぞれは、リンクと呼ばれる。すなわち、地図データにおいて、各道路は複数のリンクにより構成されている。このリンクのそれぞれには、車両が通過するときの所要時間に関するリンクコストと呼ばれる値が設定されている。リンク同士を接続している点はノードと呼ばれる。ノードのそれぞれは、地図の座標を用いて表現された位置情報を有している。このノードの位置情報に基づいて、地図上に表される各道路の位置や形状が決定される。
【0020】
HDD13に記録されている地図データは、配信サーバ4から配信される更新地図データ、あるいはDVD5またはUSBメモリ6から読み込まれる更新地図データにより、全体または設定された更新範囲について更新することができる。たとえば、新しい道路が開通した場合や、新しい施設が設置された場合などに、その道路や施設の情報が更新地図データとして提供される。この更新地図データにより、更新前の地図データのうち該当する部分の内容が書き換えられることで、地図データが更新される。なお、更新範囲の設定は、後で説明するような方法により、車両の推奨経路に応じて、前述のメッシュ単位で行われる。
【0021】
新しく開通した道路が更新範囲のメッシュを通過して他のメッシュまで到達している場合、更新地図データにおいてその道路の情報は、更新範囲のメッシュ内の部分だけでなく、他の道路に接続する地点までを含めて提供される。すなわち、既存の道路と接続されている地点までの情報が更新地図データとして提供される。これにより、更新後の地図データにおいて追加された道路が途中で途切れてしまったり、既存の道路との間で不整合が生じたりするのを避けるようにしている。
【0022】
なお、配信サーバ4から更新地図データを配信する場合と、DVD5またはUSBメモリ6から更新地図データを読み込む場合とで、異なる更新範囲を設定してもよい。たとえば、配信サーバ4から更新地図データを配信する場合は、通信端末2による無線通信の費用や時間を抑えるために、比較的狭い範囲のメッシュが更新範囲とされる。その一方で、DVD5またはUSBメモリ6から更新地図データを読み込む場合は、ユーザがパーソナルコンピュータを用いて更新地図データをダウンロードする際に、比較的広い範囲、たとえば都道府県単位で更新範囲のメッシュが設定される。さらにこの場合、更新範囲内の道路や施設以外の情報、たとえば新たなアイコンの情報などを更新地図データに含めることもできる。
【0023】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD13に記録されている例を説明したが、書き換え可能な記録媒体であればHDD以外のものであってもよい。たとえば、HDDの代わりにフラッシュメモリなどを用いてもよい。
【0024】
ディスクドライブ14は、DVD5に記録されている更新地図データを読み出すための部分であり、ディスク駆動機構やピックアップ機構などを有している。ディスクドライブ14にDVD5がセットされると、DVD5に記録されている更新地図データがディスクドライブ14によって読み出され、制御部10に出力される。これにより、ナビゲーション装置1においてDVD5から更新地図データが読み込まれる。
【0025】
USBインタフェース15は、USBメモリ6を装填するためのスロット部を有している。このスロット部にUSBメモリ6が装填されると、USBメモリ6に記録されている更新地図データがUSBインタフェース15によって読み出され、所定のインタフェース処理が行われた後、制御部10に出力される。これにより、ナビゲーション装置1においてUSBメモリ6から更新地図データが読み込まれる。
【0026】
GPS受信部16は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、車両100の位置と現在時刻を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて車両100の現在位置と現在時刻を算出することができる。このGPS受信部16によって受信されたGPS信号に基づいて算出された車両100の現在位置と、前述の振動ジャイロ11および車速センサ12の検出結果に基づいて算出された車両100の現在位置とに基づいて、最終的な車両100の現在位置が求められる。
【0027】
表示モニタ17は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ17により、地図画面の表示などが行われる。表示モニタ17に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ17は、たとえば車両100のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0028】
入力装置18は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは入力装置18を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、表示モニタ17と一体化されたタッチパネルにより入力装置18を実現してもよい。
【0029】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、地図データにおいて設定された前述のリンクコストに基づいて、たとえばリンクコストの合計が最小となる目的地までの経路を探索し、その経路を推奨経路として設定する。こうして設定された推奨経路は、他の道路と区別可能な表示形態により地図上に示される。その後ナビゲーション装置1は、現在地周辺の地図を表示し、設定された推奨経路に従って車両100を目的地まで誘導する。
【0030】
次に、本実施形態のナビゲーション装置1において地図データを更新する方法について説明する。なお、以降の説明では、ナビゲーション装置1は配信サーバ4から更新地図データをダウンロードして地図データの更新を行うものとする。すなわち、DVD5またはUSBメモリ6から更新地図データを読み込んで地図データを更新する場合を除外して説明する。
【0031】
本実施形態のナビゲーション装置1は、配信サーバ4に対して更新地図データの配信要求を行う際、地図データのバージョン情報と共に、車両100の現在位置と目的地の情報を配信サーバ4に対して送信する。配信サーバ4は、これらの情報に基づいて、最新の地図データに基づく車両100の推奨経路を探索し、その推奨経路に応じた更新範囲を設定する。そして、設定した更新範囲内で地図データの更新が必要な更新対象道路を決定し、その更新対象道路について更新地図データをナビゲーション装置1へ配信する。
【0032】
配信サーバ4から配信された更新地図データを受信すると、ナビゲーション装置1は、その更新地図データに基づいて、HDD13に記録されている地図データを部分的に更新する。このときナビゲーション装置1は、推奨経路に関連する更新対象道路に対する地図データの更新を優先して行い、その後、推奨経路に関連しない更新対象道路に対する地図データの更新を行う。
【0033】
なお、推奨経路に関連する更新対象道路とは、配信された更新地図データにその道路データが含まれる更新対象道路のうち、推奨経路に繋がる道路、または推奨経路に対して予想される逸脱範囲内に含まれる道路のことである。この逸脱範囲は、配信サーバ4において推奨経路の探索時に決定してもよいし、ナビゲーション装置1において地図データの更新開始前に決定してもよい。たとえば、推奨経路を中心に所定の範囲を逸脱範囲とすることができる。この逸脱範囲は、推奨経路の長さ、車両100の走行速度、道路の密度、渋滞状況などに応じて変化させてもよい。
【0034】
配信サーバ4において決定される更新範囲および更新対象道路の一例を図3に示す。ナビゲーション装置1より更新地図データの配信要求時に現在地21と目的地22の情報が送信されると、配信サーバ4は、この現在地21と目的地22を結ぶ推奨経路23を探索する。推奨経路23が探索されると、この推奨経路23に対してメッシュ41〜44を地図データの更新範囲として設定する。なお、メッシュ41、42および43は、推奨経路23が通過するメッシュである。またメッシュ44は、推奨経路23が通過するメッシュ41〜43のうちいずれか二つ以上のメッシュ(ここではメッシュ42、43)に隣接するメッシュである。こうして推奨経路23に応じた地図データの更新範囲が設定される。なお、以上に述べた更新範囲の設定方法は一例であり、他の方法により更新範囲を設定してもよい。
【0035】
上記のようにして推奨経路23に応じた更新範囲を設定したら、配信サーバ4は、ナビゲーション装置1より更新地図データの配信要求時に送信された地図データのバージョン情報に基づいて、その更新範囲に対応する更新地図データを抽出する。すなわち、ナビゲーション装置1が有する地図データのバージョンと、配信サーバ4が有する最新地図データのバージョンとを更新範囲内について比較し、これらの差分に該当する道路の地図データを更新地図データとして抽出する。図3の例では、符号31〜39に示す各道路のデータが更新地図データとして抽出されるものとする。なお、図3に示すように、道路31〜35は推奨経路23と繋がっており、道路36〜39は推奨経路23と繋がっていない。
【0036】
配信サーバ4は、抽出した道路31〜39のデータを更新地図データとしてナビゲーション装置1へ配信する。なお、このとき推奨経路23のデータを合わせて送信してもよい。配信サーバ4から配信された更新地図データがナビゲーション装置1において受信されると、ナビゲーション装置1により地図データの更新が開始される。
【0037】
ナビゲーション装置1は、配信サーバ4により更新地図データが配信された道路31〜39のうち、推奨経路23に関連する更新対象道路のデータ、ここでは前述したように推奨経路23と繋がる道路31〜35について、優先的に地図データの更新を行う。なお、推奨経路23に関連しない更新対象道路のデータ、すなわち推奨経路23と繋がらない道路36〜39については、まだ地図データの更新を開始しない。
【0038】
道路31〜35についての地図データの更新が完了すると、ナビゲーション装置1は、推奨経路23に従って車両100の誘導を開始する。たとえば、配信サーバ4から更新地図データの配信時に推奨経路23の情報を受信しておくことで、ナビゲーション装置1において推奨経路23を決定することができる。あるいは、上記のように道路31〜35について更新が完了したHDD13の地図データに基づいて、ナビゲーション装置1が推奨経路23を探索してもよい。
【0039】
車両100の誘導開始後、ナビゲーション装置1は残りの更新地図データ、すなわち推奨経路23と繋がらない道路36〜39について、地図データの更新を開始する。この道路36〜39についての地図データの更新が完了したら、ナビゲーション装置1は地図データの更新を完了する。
【0040】
以上説明した処理のフローチャートを図4に示す。図4において、左側のフローチャートはナビゲーション装置1の処理内容を示しており、右側のフローチャートは配信サーバ4の処理内容を示している。ユーザが入力装置18を用いて所定の操作を行うことにより、ナビゲーション装置1に対して地図データの更新を指示すると、図4の左側に示すフローチャートの実行が制御部10において開始される。
【0041】
ステップS10において、制御部10は、前述のように振動ジャイロ11、車速センサ12およびGPS受信部14からの各出力に基づいて、現在地すなわち車両100の現在位置を検出する。
【0042】
ステップS20において、制御部10は、車両100の目的地を設定する。ここでは、ユーザが入力装置18を用いて所定の操作を行うことにより、目的地に設定する施設の種類、名称、住所などを指定すると、HDD13に記録されている地図データに基づいて該当する施設が検索され、その施設が目的地に設定される。あるいは、予め登録された登録地の中から目的地に設定するものを選択してもよいし、地図上で目的地に設定する地点を指定してもよい。
【0043】
ステップS30において、制御部10は、配信サーバ4に対して地図データの更新要求を送信する。この更新要求は、ナビゲーション装置1から通信端末2および通信回線網3を介して配信サーバ4に送信される。このとき前述のように、HDD13に記録されている地図データのバージョン情報、ステップS10で検出した現在地の情報、およびステップS20で設定した目的地の情報が、更新要求と共に配信サーバ4へ送信される。なお、過去にHDD13の地図データを部分的に更新済みである場合は、その更新内容を表す情報を地図データのバージョン情報に含めることが好ましい。
【0044】
ステップS30においてナビゲーション装置1から更新要求が送信されると、それに応じて、配信サーバ4により図4の右側に示すフローチャートの実行が開始される。ステップS110において、配信サーバ4は、ステップS30で送信されたナビゲーション装置1からの更新要求を受信する。このとき同時に、更新要求と共に送信された目的地および現在地の情報も合わせて受信する。
【0045】
ステップS120において、配信サーバ4は、ステップS110で更新要求と共に受信した目的地および現在地の情報に基づいて、最新の地図データに基づく車両100の推奨経路を探索する。
【0046】
ステップS130において、配信サーバ4は、ステップS120で探索した推奨経路に基づいて更新地図データの抽出を行う。ここでは前述のような方法により、推奨経路に応じた更新範囲を設定し、その更新範囲に対応する全ての更新対象道路のデータを更新地図データとして抽出する。すなわち、推奨経路に関連する各更新対象道路のデータと、推奨経路に関連しない各更新対象道路のデータを、設定された更新範囲に対して抽出する。なお、このとき更新対象道路以外のデータ、たとえば施設データなどを合わせて抽出してもよい。
【0047】
ステップS140において、配信サーバ4は、ステップS130で抽出した更新地図データをナビゲーション装置1へ配信する。この更新地図データは、配信サーバ4から通信回線網3および通信端末2を介してナビゲーション装置1へ送信される。このとき、前述のように推奨経路のデータを合わせて送信してもよい。ステップS140を実行したら、配信サーバ4は図4右側のフローチャートを終了する。
【0048】
ステップS140で配信サーバ4から更新地図データが配信されると、制御部10はその更新地図データをステップS40において受信する。なお、更新地図データと共に推奨経路のデータが配信サーバ4から送信された場合、この推奨経路のデータも合わせて受信する。これにより、ナビゲーション装置1において更新地図データが取得される。
【0049】
ステップS50において、制御部10は、ステップS40で受信した更新地図データに基づいて、推奨経路に関連する更新対象道路についての地図データの更新を開始する。この推奨経路に関連する更新対象道路に対する地図データの更新は、他の更新対象道路に対する地図データの更新よりも優先して行われる。
【0050】
ステップS60において、制御部10は、ステップS50で開始した地図データの更新が完了したか否かを判定する。未完了の場合はステップS50へ戻って地図データの更新を継続し、完了した場合はステップS70へ進む。
【0051】
ステップS70において、制御部10は、車両100の誘導を開始する。ここでは前述のように、ステップS40において配信サーバ4から更新地図データと共に受信した推奨経路の情報に基づいて、車両100の誘導に用いる推奨経路を決定することができる。あるいは、配信サーバ4から推奨経路の情報を受信せずに、ナビゲーション装置1において推奨経路を探索してもよい。
【0052】
ステップS80において、制御部10は、ステップS40で受信した更新地図データに基づいて、推奨経路に関連しない更新対象道路についての地図データの更新を行う。ステップS80による地図データの更新が完了したら、制御部10は図4左側のフローチャートを終了する。
【0053】
以上説明した第1の実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0054】
(1)ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、ステップS140で配信サーバ4により配信される更新地図データを取得し(ステップS40)、その更新地図データに基づいて、HDD13に記憶されている地図データを部分的に更新する(ステップS50、S80)。このとき、推奨経路に関連する更新対象道路に対する地図データの更新(ステップS50)を、推奨経路に関連しない他の更新対象道路に対する地図データの更新(ステップS80)よりも優先して行う。このようにしたので、車両の誘導に必要な地図データの更新を優先して行い、その後直ちに車両の誘導を開始できるため、地図データの差分更新において、車両の誘導を開始するまでに要する時間を短縮化することができる。
【0055】
(2)配信サーバ4は、設定した更新範囲に対応する全ての更新対象道路に対して更新地図データを抽出し(ステップS130)、これをナビゲーション装置1へ配信する(ステップS140)。ナビゲーション装置1は、こうして配信サーバ4から配信された更新地図データを用いて、経路に関連する更新対象道路に対する地図データの更新をステップS50で行い、これが完了した後にステップS80の処理を開始して、推奨経路に関連しない更新対象道路に対する地図データの更新を行う。このようにしたので、車両の誘導に必要のない、推奨経路に関連しない更新対象道路についても、後で地図データの更新を行うことができる。
【0056】
(3)ナビゲーション装置1は、ステップS50において経路に関連する更新対象道路に対する地図データの更新を完了した後、ステップS80において推奨経路に関連しない更新対象道路に対する地図データの更新を行うのに先立って、推奨経路に基づく車両の誘導を開始する(ステップS70)。このようにしたので、車両の誘導に必要な推奨経路に関連する更新対象道路について地図データの更新が完了した後、直ちに車両の誘導を開始することができる。
【0057】
(4)ナビゲーション装置1は、車両100の現在位置を検出し(ステップS10)、車両100の目的地を設定して(ステップS20)、この目的地および現在位置の情報を配信サーバ4へ更新要求と共に送信する(ステップS30)。配信サーバ4は、こうして送信された目的地および現在位置の情報に基づいて車両100の推奨経路を探索し(ステップS120)、探索した推奨経路に基づいて、ステップS130で更新範囲および更新対象道路を決定して、配信する更新地図データの抽出を行う。このようにしたので、配信サーバ4に記憶されている最新の地図データを用いて、設定された目的地に対する最適な推奨経路を探索することができる。
【0058】
(5)配信サーバ4は、ステップS140において、推奨経路に関連する更新対象道路として、推奨経路に繋がる更新対象道路、または推奨経路から所定の逸脱範囲内に存在する更新対象道路について、更新地図データをナビゲーション装置1へ配信する。ナビゲーション装置1は、この更新地図データをステップS40において取得する。このようにしたので、推奨経路に関連する更新対象道路を適切に決定し、更新地図データを配信することができる。
【0059】
−第2の実施の形態−
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態では、配信サーバ4に対して更新地図データの配信要求を行う際に、ナビゲーション装置1から配信サーバ4へ車両100の現在位置と目的地の情報を送信し、これらの情報に基づいて、配信サーバ4において推奨経路を探索して更新範囲を設定する例を説明した。これに対して本実施の形態では、ナビゲーション装置1において更新範囲の設定を行う例を説明する。なお、本実施形態のナビゲーションシステムの構成およびナビゲーション装置1の構成は、図1、2で説明した第1の実施の形態のものと同じである。したがって、これらの説明については省略する。
【0060】
本実施形態においてナビゲーション装置1および配信サーバ4によりそれぞれ実行される処理のフローチャートを図5に示す。図5のフローチャートでは、図4に示した第1の実施の形態によるフローチャートと同じ内容の処理ステップについて、図4と同一のステップ番号としている。以下では、この図4と同一ステップ番号の処理については、特に必要のない限り説明を省略する。
【0061】
ナビゲーション装置1の制御部10は、ステップS21において、ステップS10で検出した現在地およびステップS20で設定した目的地に基づいて、HDD13に記憶されている更新前の地図データを用いた推奨経路の探索を行う。なお、ここで探索される推奨経路は、更新前の地図データに基づいたものであるため、最適な経路ではない可能性がある。したがって、ここでは仮の推奨経路として探索を行い、推奨経路に関連する更新対象道路について地図データの更新が完了したら、その更新後の地図データを用いて推奨経路を更新する。この推奨経路の更新については後で説明する。
【0062】
ステップS22において、制御部10は、ステップS10で検出した現在地およびステップS20で設定した目的地に基づいて、地図上に更新範囲を設定する。ここでは、ステップS21で探索した仮の推奨経路に基づいて、第1の実施の形態と同様にして更新範囲を設定する。あるいは、ステップS21の探索結果を用いずに、現在地と目的地の位置のみに基づいて更新範囲を設定してもよい。
【0063】
ステップS30において、制御部10は、図4と同様に配信サーバ4に対して地図データの更新要求を送信する。本実施の形態では、HDD13に記録されている地図データのバージョン情報と、ステップS22で設定した更新範囲の情報とが、更新要求と共に配信サーバ4へ送信される。
【0064】
ステップS130において、配信サーバ4は、図4と同様に更新地図データの抽出を行う。ここでは、ナビゲーション装置1より更新要求と共に送信された更新範囲の情報に基づいて、更新地図データが抽出される。すなわち、ナビゲーション装置1においてステップS22で設定された更新範囲に対応する更新対象道路のデータを更新地図データとして抽出する。こうして抽出された更新地図データが、続くステップS140において配信サーバ4からナビゲーション装置1へ配信される。
【0065】
ステップS61において、ナビゲーション装置1の制御部10は、ステップS50で更新したHDD13の地図データ、すなわち推奨経路に関連する更新対象道路について部分的に更新された地図データに基づいて、ステップS21で探索した仮の推奨経路を更新する。こうして仮の推奨経路を更新したら、その更新後の推奨経路に基づいて、ステップS70において車両100の誘導を開始する。そして、続くステップS80において、推奨経路に関連しない更新対象道路についての地図データの更新を行う。
【0066】
以上説明した第2の実施の形態によれば、ナビゲーション装置1は、車両100の現在位置を検出し(ステップS10)、車両100の目的地を設定して(ステップS20)、これらに基づいて更新範囲を設定する(ステップS22)。この更新範囲の情報を配信サーバ4へ更新要求と共に送信する(ステップS30)。配信サーバ4は、こうしてナビゲーション装置1より送信された更新範囲の情報に基づいて、更新対象道路を決定し、配信する更新地図データの抽出を行う(ステップS130)。このようにしたので、配信サーバ4により推奨経路を探索しなくても、ナビゲーション装置1において最適な更新範囲を設定することができる。
【0067】
−変形例−
なお、以上説明した第1および第2の各実施形態において、更新範囲に対応する更新対象道路のうち推奨経路に関連する更新対象道路のみについて、配信サーバ4からナビゲーション装置1へ更新地図データを配信するようにしてもよい。すなわち、経路に関連する更新対象道路に対しては更新地図データを配信し、経路に関連しない更新対象道路に対しては更新地図データを配信しないことができる。この場合、図4および5の各フローチャートにおいて、ステップS80の処理が省略される。このようにしても、上記各実施の形態と同様に、車両の誘導に必要な地図データの更新を優先して行い、その後直ちに車両の誘導を開始できる。したがって、地図データの差分更新において、車両の誘導を開始するまでに要する時間を短縮化することができる。
【0068】
また、以上説明した各実施の形態では、更新前の地図データと最新の地図データとの差分を更新地図データとしてナビゲーション装置1に提供することで、ナビゲーション装置1の地図データを更新する例を説明した。しかし、このようにはせず、更新前の地図データと重複する部分を更新地図データに含めてナビゲーション装置1に提供し、HDD13において記録してもよい。
【0069】
以上説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記各実施の形態と変形例とを適宜組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1:ナビゲーション装置、2:通信端末、3:通信回線網、4:配信サーバ、
5:DVD、6:USBメモリ、10:制御部、11:振動ジャイロ、
12:車速センサ、13:HDD、14:ディスクドライブ、
15:USBインタフェース、16:GPS受信部、17:表示モニタ、
18:入力装置、100:車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるナビゲーション装置であって、
地図データを記憶する記憶手段と、
所定の更新範囲に対応する更新対象道路のうち少なくとも前記車両の経路に関連する更新対象道路について配信サーバより配信される更新地図データを取得する取得手段と、
前記更新地図データに基づいて前記地図データを部分的に更新する更新手段とを備え、
前記更新手段は、前記経路に関連する更新対象道路に対する前記地図データの更新を、他の更新対象道路に対する前記地図データの更新よりも優先して行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記配信サーバは、前記更新範囲に対応する全ての更新対象道路に対して前記更新地図データを配信し、
前記更新手段は、前記経路に関連する更新対象道路に対する前記地図データの更新が完了した後に、前記経路に関連しない更新対象道路に対する前記地図データの更新を行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記更新手段が前記経路に関連する更新対象道路に対する前記地図データの更新を完了した後、前記経路に関連しない更新対象道路に対する前記地図データの更新を行うのに先立って、前記経路に基づいて前記車両の誘導を開始する車両誘導手段をさらに備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記配信サーバは、前記更新範囲に対応する更新対象道路のうち前記経路に関連する更新対象道路に対しては前記更新地図データを配信し、前記経路に関連しない更新対象道路に対しては前記更新地図データを配信しないことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記車両の目的地を設定する目的地設定手段と、
前記車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
前記目的地および前記現在位置の情報を前記配信サーバへ送信する送信手段とをさらに備え、
前記配信サーバにおいて、前記送信手段により送信された前記目的地および前記現在位置の情報に基づいて前記経路が探索されると共に、前記探索された経路に基づいて前記更新範囲および前記更新対象道路が決定されることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記車両の目的地を設定する目的地設定手段と、
前記車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
前記目的地および前記現在位置に基づいて前記更新範囲を設定する更新範囲設定手段と、
前記更新範囲の情報を前記配信サーバへ送信する送信手段とをさらに備え、
前記配信サーバにおいて、前記送信手段により送信された前記更新範囲の情報に基づいて前記更新対象道路が決定されることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記取得手段は、前記車両の経路に関連する更新対象道路として、前記経路に繋がる更新対象道路または前記経路から所定範囲内に存在する更新対象道路について、前記配信サーバより配信される更新地図データを取得することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のナビゲーション装置と、
前記更新地図データを前記ナビゲーション装置へ配信する配信サーバとを有することを特徴とするナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163951(P2011−163951A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27366(P2010−27366)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】