説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法およびナビゲーションプログラム

【課題】 運転者向けのメインディスプレイおよび同乗者向けのサブディスプレイを備えるナビゲーション装置において、より適切な表示対象に対し、適切なタイミングで、先行して経路案内画面を表示する。
【解決手段】 ナビゲーション装置の制御部10は、運転者については土地勘があるか否か、同乗者については土地勘があるか又は運転者への道案内に慣れているか否かという案内適性情報を取得する。そして、自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、案内適性情報に基づいて、経路案内画面を先行して表示する表示対象を判定する。また、判定された表示対象に対し、自車両が分岐点に到達する予想時刻から遡り経路案内画面を表示する表示タイミングを設定する。これにより、より適切な案内対象に対し、適切なタイミングで経路案内をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のナビゲーション装置、ナビゲーション方法およびナビゲーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者向けに経路案内画面を表示するメインディスプレイに加え、後部座席の同乗者向けのサブディスプレイを備えるナビゲーション装置が知られている。サブディスプレイが同乗者に対して経路案内画面を表示することにより、例えば、分岐点での右折案内を認知した同乗者が、「次の交差点、右に行って!」と運転者に伝達することができる。
特許文献1には、メインディスプレイの表示内容とサブディスプレイの表示内容を異ならせる表示制御方式が開示されている。例えば、運転者に対する表示内容は簡略化して必要最小限の情報のみを伝え、同乗者に対しては、より細かい文字情報を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−43652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術では、分岐点案内時に運転者および同乗者に対して同じタイミングで案内が表示される。ところが、同乗者が案内を認知して運転者に伝える場合、運転者自身が直接案内を認知する場合に比べて同乗者が発話する時間分の遅れが生じる。すると、例えば分岐点で右折する場合、「右ウインカーを出し、減速し、分岐点に到達したら右折する」といった運転者の一連の右折行動が間に合わなくなるおそれがある。
【0005】
この遅れ時間は、同乗者の、「走行中の道路に関する土地勘があるか、道案内に慣れているか」といった「案内適性」の程度によって影響される。また、運転者および同乗者のいずれが土地勘があるか、すなわち、いずれの案内対象の案内適性が高いかによって、より適切な案内対象が変わってくる。しかしながら、特許文献1の従来技術では、このような運転者および同乗者の案内適性情報に基づいた柔軟な制御をすることができない。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者向けのメインディスプレイおよび同乗者向けのサブディスプレイを備えるナビゲーション装置において、案内適性情報に基づいて判定されたより適切な表示対象に対し、適切なタイミングで、先行して経路案内画面を表示することである。また、このナビゲーション装置に対応するナビゲーション方法およびナビゲーションプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のナビゲーション装置は、現在位置から目的地までの経路情報を取得する経路取得手段と、運転者および同乗者の道路案内に関する案内適性情報を取得する案内適性情報取得手段と、経路取得手段が取得した経路を案内する経路案内画面を運転者に対して表示する第1表示部と、経路案内画面を運転者以外の同乗者に対して表示する第2表示部と、自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、案内適性情報取得手段が取得した案内適性情報に基づいて、第1表示部および第2表示部のいずれを先行して経路案内画面の表示対象とするか判定する表示対象判定手段と、表示対象判定手段によって判定された表示対象に対し、自車両が分岐点に到達する予想時刻から遡り経路案内画面を表示するタイミングを設定する表示タイミング設定手段と、を備える。
これにより、運転者または同乗者の案内適性情報に基づいて、より適切な案内対象に対して先行して経路案内をすることができる。
【0008】
請求項2に記載のナビゲーション装置では、案内適性情報は、自車両の運転者または同乗者の住所、年齢、性別、運転免許取得期間、走行中の道路についての走行経験、および道路案内経験のうちいずれか1つ以上の情報である。
これにより、運転者または同乗者の案内適性情報を具体的に取得することができる。
【0009】
請求項3に記載のナビゲーション装置では、表示対象判定手段によって判定された表示対象が第2表示部のとき、表示タイミング設定手段は、表示対象判定手段によって判定された表示対象が第1表示部のときに経路案内画面を表示するタイミングよりも早いタイミングで経路案内画面を表示する。
これにより、表示対象に応じてより適切なタイミングで経路案内をすることができる。
【0010】
さらに、上記のナビゲーション装置の発明は、ナビゲーション方法やナビゲーションプログラムとして実現することもできる。
請求項4に記載のナビゲーション方法は、現在位置から目的地までの経路情報を取得する経路取得段階と、
運転者および同乗者の道路案内に関する案内適性情報を取得する案内適性情報取得段階と、自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、案内適性情報取得段階で取得した案内適性情報に基づいて、経路取得段階において取得した経路を案内する経路案内画面を運転者に対して表示する第1表示部、及び、経路案内画面を運転者以外の同乗者に対して表示する第2表示部のいずれを先行して経路案内画面の表示対象とするか判定する表示対象判定段階と、表示対象判定段階において判定された表示対象に対し、自車両が分岐点に到達する予想時刻から遡り経路案内画面を表示するタイミングを設定する表示タイミング設定段階と、を含む。
このような方法により、請求項1に記載のナビゲーション装置と同様の効果を奏する。
【0011】
請求項5に記載のナビゲーションプログラムは、
現在位置から目的地までの経路情報を取得する経路取得手段、運転者および同乗者の道路案内に関する案内適性情報を取得する案内適性情報取得手段、自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、案内適性情報取得手段が取得した案内適性情報に基づいて、経路取得手段が取得した経路を案内する経路案内画面を運転者に対して表示する第1表示部、及び、経路案内画面を運転者以外の同乗者に対して表示する第2表示部のいずれを先行して経路案内画面の表示対象とするか判定する表示対象判定手段、表示対象判定手段によって判定された表示対象に対し、自車両が分岐点に到達する予想時刻から遡り経路案内画面を表示するタイミングを設定する表示タイミング設定手段、としてコンピュータを機能させるナビゲーションプログラム。
このようなプログラムを実行することで、請求項1に記載のナビゲーション装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】案内適性情報入力画面を示す説明図である。
【図3】優先表示対象選択画面を示す説明図である。
【図4】分岐点案内処理を示すフローチャートである。
【図5】表示対象判定および表示タイミング設定処理を示すフローチャートである。
【図6】先行案内対象が(a)運転者の場合、(b)同乗者の場合の分岐点案内フローを説明する説明図である。
【図7】先行案内対象が(a)運転者の場合、(b)案内適性が高い同乗者の場合、(c)案内適性が低い同乗者の場合の表示タイミングを説明する説明図である。
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置は制御部10を中心に構成されている。制御部10には、入力部20、地図データ記憶部30、現在位置算出部40、通信部50、メインディスプレイ61、メインスピーカ62、及び第1通信機11が接続されている。第1通信機11と第2通信機12とは双方向に通信可能である。第2通信機12には、サブディスプレイ71およびサブスピーカ72が接続されている。また、第1通信機11は、携帯電話80からの入力が可能である。
【0014】
本実施形態における制御部10は、「経路取得手段、案内適性情報取得手段、表示対象判定手段、表示タイミング設定手段」に相当する。メインディスプレイ61は、「第1表示部」に相当し、サブディスプレイ71は、「第2表示部」に相当する。
【0015】
制御部10は、内部にCPU、ROM、I/O、及びこれらを接続するバスライン等が備えられており、ナビゲーション装置全体の制御を行う。制御部10は、ユーザーによって入力部20に目的地が設定されたとき、現在位置算出部40が算出した現在位置から目的地までの経路情報を、地図データ記憶部30の地図情報DB31に基づいて取得する。
【0016】
また、制御部10は、運転者および同乗者の案内適性情報を取得する。そして、自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、取得した案内適性情報に基づいて、先行して案内する案内対象を運転者とするか同乗者とするか判定する。また、それに対応し、経路案内画面を先行して表示する表示対象をメインディスプレイ61とするかサブディスプレイ71とするか判定する。さらに、制御部10は、判定された表示対象に対し、自車両が分岐点に到達する予想時刻から遡り経路案内画面を表示する表示タイミングを設定する。
【0017】
ここで、「案内適性情報」について図2、図3を参照して説明する。案内適性情報は、図2に示す案内適性入力画面にて、ユーザーが該当する項目に予めチェックすることにより取得される。チェック項目は、運転者については「走行経験あり」であり、同乗者については「走行経験あり」および「案内慣れ」である。
【0018】
「走行経験あり」とは、自車両が走行中の道路を運転したか又は同乗した経験があることをいい、自動車で走行した場合に限らず、自転車または徒歩で通った経験まで拡張して解釈してもかまわない。「走行経験あり」は、「土地勘がある」とほぼ同義である。
「走行経験あり」にチェックした運転者または同乗者は、経路案内画面を見て案内内容を瞬時に認知することができる「案内適性の高い者」と見なされる。一方、図2(a)に示す運転者Aのように「走行経験あり」にチェックしなかった運転者または同乗者は、経路案内画面を見てから案内内容を認知するまでに若干の時間を要するか、案内内容を誤認するおそれのある「案内適性の低い者」と見なされる。
【0019】
「案内慣れ」とは、自身が認知した案内内容を他人である運転者に口頭で正確かつ迅速に伝達することができるかどうかという適性である。具体的には、話すスピード、声の大きさ、発音の正確さなどの特性が適切である場合、「案内慣れ」に該当する。
「案内慣れ」にチェックした同乗者は、運転者に案内内容を正確かつ迅速に伝達することができる「案内適性の高い者」と見なされる。一方、「案内慣れ」にチェックしなかった同乗者は、運転者への伝達が遅れたり、運転者が伝達を聞き逃したり聞き違えたりするおそれのある「案内適性の低い者」と見なされる。
【0020】
すなわち、同乗者については、土地勘があって自身が経路案内画面の案内内容を瞬時に認知できる適性と、案内内容を運転者に正確かつ迅速に伝達する適性とが総合的に要求される。例えば、図2(b)に示す同乗者Bは、「走行経験あり」、「案内慣れ」の両方にチェックがあり、図2(c)に示す同乗者Cは、「走行経験あり」のみにチェックがあるため、同乗者Bは、同乗者Cに比べ相対的に案内適性が高いと判断される。
なお、仮に、「走行経験あり」のみにチェックした同乗者と「案内慣れ」のみにチェックした同乗者がいた場合、これらの案内適性を対等に判断するか、あるいは、いずれか一方に重みを置いて判断するかについて適宜設定可能としてもよい。
【0021】
また、例えば、運転者と同乗者がいずれも「走行経験あり」にチェックした場合や運転者と同乗者がいずれも「走行経験あり」にチェックしなかった場合、すなわち運転者と同乗者の案内適性が同等の場合にいずれの案内対象を優先するかを、図3に示す優先表示対象選択画面にてユーザーが選択することとしてもよい。例えば、同乗者の案内適性の程度に関わらず運転者が自分で経路案内画面を見ることを好む場合は、メインディスプレイ61を優先表示対象として選択し、逆に運転者が同乗者に道案内されることを好む場合は、サブディスプレイ71を優先表示対象として選択することができる。
【0022】
図1のブロック図に戻り、入力部20は、通常の押しボタン式スイッチ等で構成される操作スイッチ21、及びタッチ入力が可能なタッチパネル22を備えている。入力部20は、制御部10に対する指示を行う。
地図データ記憶部30は、例えば、ハードディスク装置(HDD)、DVD−ROM、メモリカード等の記憶媒体として実現される記憶装置である。地図データ記憶部30は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、及び、経路を探索するための地図データを記憶している。
地図データには目的地データが含まれる。具体的には、目的地を特定するIDと関連付けられるPOI(Point Of Interest)情報が記憶されている。POI情報の各々のデータには、施設名称、住所、ジャンル等を示すデータが含まれており、ユーザーは、これらのデータに基づいて目的地データを検索することができる。
【0023】
現在位置算出部40は、GPS受信機41および自律測位手段42を備え、自車両の現在位置を算出する。GPS受信機41は、衛星からの電波を受信して自車両の絶対位置および方位を算出する。自律測位手段42は、自車両の加速度を検出する加速度センサや、回転角度を検出するジャイロスコープにより、自車両の相対位置および方位を算出する。
通信部50は、外部との情報通信を行うための構成である。外部のセンタ装置(不図示)との通信を行うことで、センタ装置から種々の情報を取得する。
【0024】
メインディスプレイ(またはカーナビディスプレイ)61は、液晶等を用いて構成されるカラーディスプレイ装置である。メインディスプレイ61は、運転席近傍に設置され、運転者に対して経路案内のための地図や目的地設定画面等を表示する他、運転者の選択によりテレビ画面等を表示可能である。
また、メインディスプレイ61は、案内適性情報入力画面を表示する。ユーザーは、上述の案内適性情報を入力部20または携帯電話80から入力することができる。
メインスピーカ62は、音声を出力するものであり、メインディスプレイ61の表示に対応して、経路案内を音声出力する他、テレビ音声等を出力可能である。
【0025】
第1通信機11と第2通信機12とは、有線または無線により双方向に通信可能である。これにより、サブディスプレイ71は、制御部10、第1通信機11および第2通信機12を経由してメインディスプレイ61と連動する。
サブディスプレイ71は、後部座席近傍に設置され、経路案内画面を同乗者に対して表示する。また、リアシートエンターテインメント(RSE)として、テレビ、DVD、ゲーム等の画面を表示可能である。あるいは、電子ペーパーをサブディスプレイ71として用いてもよい。電子ペーパーは、持ち運びが可能であり、反射が少ないため目に対する負担が少なく、消費電力が低いという特長を有する。
サブスピーカ72は、サブディスプレイ71の表示に対応して、経路案内を音声出力する他、テレビ音声等を出力可能である。
【0026】
次に、一実施形態のナビゲーション装置1が実行する分岐点案内処理について、図4、図5のフローチャートおよび図6、図7を参照して説明する。図4は、分岐点案内処理のメインフローを示し、図5は、メインフロー中の「表示対象判定および表示タイミング設定処理」についてのサブフローを示す。なお、以下のフローチャートの説明で、記号Sは「ステップ」を示す。
【0027】
図4のS10において、ナビゲーション装置1は、経路案内を実行中である。
S20では、自車両が進行方向前方の分岐点に接近したか否かを判断する。NOの場合、S10の前に戻る。S20でYESの場合、S30で、メインディスプレイ61およびサブディスプレイ71のいずれも経路案内画面を表示していないか否かを判断する。ここで、「経路案内画面を表示していない」とは、テレビ画面等を表示している場合をいう。
メインディスプレイ61またはサブディスプレイ71のいずれかが経路案内画面を表示している場合(S30:NO)、運転者または同乗者は既に経路案内画面を見ていると考えられるため、S10の前に戻り経路案内を続行する。
【0028】
一方、メインディスプレイ61およびサブディスプレイ71のいずれも経路案内画面を表示していない場合(S30:YES)、進行方向前方の分岐点でいずれの方向に進行するかを案内する必要が生じる。そこで、S40に移行し、「表示対象判定および表示タイミング設定」処理を実行する。
【0029】
図5のS41では、予め制御部10に取得された運転者および同乗者の案内適性情報に基づいて、先行して案内する案内対象を運転者とするか同乗者とするか選択する。
例えば、運転者が「走行経験あり」に該当し、同乗者が「走行経験あり」に該当しない場合、先行案内対象を運転者とする。あるいは、運転者が「走行経験あり」に該当せず、同乗者が「走行経験あり」または「案内慣れ」の少なくとも一方に該当する場合、先行案内対象を同乗者とする。
【0030】
先行案内対象を運転者とする場合、図6(a)に示すように、メインディスプレイ61が後述の表示タイミングでテレビ画面等から経路案内画面Dnに切り替わる。運転者は、自ら経路案内画面Dnを見てナビゲーション装置の案内内容を認知する。
一方、先行案内対象を同乗者とする場合、図6(b)に示すように、サブディスプレイ71が後述の表示タイミングでテレビ画面等から経路案内画面Dnに切り替わる。同乗者は、経路案内画面Dnを見て案内内容を認知し、運転者に「その交差点、右に行って!」と口頭で伝達する。運転者は、同乗者の言葉を聞くことにより、自らメインディスプレイ61を見ることなく、ナビゲーション装置の案内内容を認知する。
【0031】
S42では、S41で選択された先行案内対象が運転者であるか否かを判断する。選択された先行案内対象が運転者である場合(S42:YES)、S43にて、運転者向けの表示タイミングを設定する。
運転者が自ら経路案内画面Dnを見る場合、案内内容を認知してすぐに行動に移ることができる。例えば、「次の交差点右です」との案内を認知した後、「右ウインカーを出し、減速し、交差点に到達したら右折する」といった一連の右折行動を短時間に実行することができる。そこで、運転者への表示タイミングは、表示タイミング設定可能範囲のうち、分岐点に到達する予想時刻に最も近いタイミング、すなわち最も遅いタイミングに設定する。このとき、図7(a)に示すように、表示タイミングに対応する自車両Mと分岐点Nとの距離は距離X0である。
続いて、S44で表示対象をメインディスプレイ61に設定し、「表示対象判定および表示タイミング設定」処理のサブフローを終了する。
【0032】
一方、選択された先行案内対象が運転者でなく同乗者である場合(S42:NO)、S45にて、同乗者の案内適性に応じて同乗者向けの表示タイミングを設定する。ここで、同乗者の案内適性は、上述のように、「走行経験あり」および「案内慣れ」に該当するか否かが総合的に判断される。
【0033】
制御部10は、例えば、図5(b)に示すように「走行経験あり」、「案内慣れ」の両方にチェックした同乗者Bに対する表示タイミングを、運転者に対する表示タイミングより早く、かつ、同乗者に対する表示タイミングのうちでは比較的遅く設定する。すなわち、同乗者Bが運転者に案内を伝達するための発話時間の分、運転者に対する表示タイミングより早く案内を開始する。ただし、この同乗者Bは、案内適性が相対的に高いと判断され、案内内容を正確かつ迅速に運転者に伝達することが期待されるため、比較的遅く案内してもよいと判断する。このとき、図7(b)に示すように、表示タイミングに対応する自車両Mと分岐点Nとの距離X1は、運転者に対する距離X0よりも長い。
【0034】
また、例えば、図5(c)に示すように「走行経験あり」のみにチェックした同乗者Cに対する表示タイミングを、同乗者Bに対する表示タイミングより早く設定する。「案内慣れ」にチェックしなかった同乗者Cは、運転者への伝達適性が相対的に低いため、運転者に伝達するための時間が同乗者Bに比べて長くかかると考えられるからである。このとき、図7(c)に示すように、表示タイミングに対応する自車両Mと分岐点Nとの距離X2は、同乗者Bに対する距離X1よりも長い。
続いて、S46で表示対象をサブディスプレイ71に設定し、「表示対象判定および表示タイミング設定処理」のサブフローを終了する。
【0035】
「表示対象判定および表示タイミング設定処理」のサブフローの終了後、図4のS50に移行する。S50では、表示対象と判定されたメインディスプレイ61またはサブディスプレイ71に設定された表示タイミングで先行して経路案内画面Dnを表示するとともに、メインスピーカ62またはサブスピーカ72から案内音声を出力する。
以上で、分岐点案内処理を終了する。
【0036】
その後、表示対象と判定されなかったディスプレイに対し、遅れて経路案内画面Dnを表示してもよく、あるいは、表示しないままでもよい。また、遅れて表示する場合、表示対象への案内出力とは異なる案内出力をしてもよい。例えば、表示対象がサブディスプレイ71の場合、メインディスプレイ61には同じ経路案内画面Dnを表示し、メインスピーカ62には音声出力しないようにしてもよい。
【0037】
この分岐点案内処理により、本実施形態のナビゲーション装置は以下の効果を奏する。
(1)運転者または同乗者の案内適性情報に基づいて、経路案内画面Dnの表示対象をメインディスプレイ61とするかサブディスプレイ71とするか判定することで、より適切な案内対象に対して先行して経路案内をすることができる。具体的には、土地勘のある同乗者が同乗しているにも関わらず、土地勘の無い運転者自身がメインディスプレイ61の経路案内を瞬時に認知できないために分岐点Nを通り過ぎてしまうケース等を回避することができる。
【0038】
(2)制御部10は、運転者については「走行経験あり」に該当するか否か、同乗者については、「走行経験あり」および「案内慣れ」に該当するか否かという案内特性情報を取得する。これにより、運転者は土地勘があるか、あるいは、同乗者は土地勘があるか又は運転者への道案内に慣れているか否かを簡易的に判断することができる。
【0039】
(3)表示対象がサブディスプレイ71の場合の表示タイミングは、表示対象がメインディスプレイ61の場合の表示タイミングよりも早く設定される。すなわち、先行案内対象が同乗者の場合、同乗者が運転者に案内を伝達するための発話時間の分、早く案内を開始する。これにより、表示対象に応じてより適切なタイミングで経路案内をすることができる。具体的には、同乗者が運転者に案内を伝達した時点で運転者の右折行動が間に合わず、やむを得ず分岐点Nを通り過ぎてしまうケース等を回避することができる。
【0040】
以上、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
(ア)上記実施形態のサブディスプレイ71は後部座席近傍に設置される。その他、助手席の同乗者に対し、例えば、本体がメインディスプレイと一体に形成され画面のみが独立したサブディスプレイが助手席近傍に設置されてもよい。また、電子ペーパー等の持ち運び可能でフレキシブルな表示手段を、後部座席または助手席の同乗者が自分の手元に持って見ることもできる。
【0041】
(イ)上記実施形態での案内適正入力方法は、「走行経験あり」または「案内慣れ」にチェックするかしないかの二択である。その他、例えば「非常に慣れている(レベル5)」、「やや慣れている(レベル4)」、「普通(レベル3)」、「あまり慣れていない(レベル2)」、「全く慣れていない(レベル1)」の5段階入力など、多様な入力方法があり得る。
【0042】
(ウ)案内適正情報として、運転者または同乗者の住所、年齢、性別、運転免許取得期間等を取得してもよい。制御部10は、例えば、住所と現在位置とが一定距離以内である場合に「土地勘がある」と判断したり、年齢および性別と案内適正の相関を統計的に求めたマップを予め作成しておき、そのマップを参照することで「案内慣れ」のレベルを判断したりしてもよい。
「走行経験あり」や「案内慣れ」にチェックを入れる場合、チェックするかしないかの判断基準に運転者または同乗者の主観が加わる。それに対し、住所、年齢、性別、運転免許取得機関等の客観的情報を根拠とすることで、画一的な判定をすることができる。
また、これらの案内適性情報は、ユーザーが入力部20または携帯電話80から入力する方法に加え、IC運転免許証を読み取ることで制御部10が取得することもできる。
【0043】
(エ)上記実施形態では、図5のフローチャートのS43において、運転者に対する表示タイミングを一定としている。これに対し、運転者が「走行経験あり」に該当するか否かによって表示タイミングを変更してもよい。例えば、運転者、同乗者ともに「走行経験あり」に該当せず、かつ、優先表示対象選択画面が「メインディスプレイ」の場合(図3参照)には、案内適性の低い運転者に対して経路案内画面Dnが表示される場合があり得る。この場合、「走行経験あり」に該当する運転者に対する表示タイミングよりも表示タイミングを早く設定することで、案内適性の低い運転者が案内内容を認知するための時間的余裕を与えることができる。
【0044】
(オ)図5のフローチャートにおいて、先行案内対象が運転者の場合の表示タイミング設定(S43)と表示対象設定(S44)、及び、先行案内対象が同乗者の場合の表示タイミング設定(S45)と表示対象設定(S46)の実行順序は、それぞれ逆でもよい。
【符号の説明】
【0045】
10・・・制御部(経路取得手段、案内適性情報取得手段、表示対象判定手段、表示タイミング設定手段)
61・・・メインディスプレイ(カーナビディスプレイ、第1表示部)、
71・・・サブディスプレイ(第2表示部)、
M ・・・自車両、
N ・・・分岐点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置から目的地までの経路情報を取得する経路取得手段と、
運転者および同乗者の道路案内に関する案内適性情報を取得する案内適性情報取得手段と、
前記経路取得手段が取得した経路を案内する経路案内画面を運転者に対して表示する第1表示部と、
前記経路案内画面を運転者以外の同乗者に対して表示する第2表示部と、
自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、前記案内適性情報取得手段が取得した案内適性情報に基づいて、前記第1表示部および前記第2表示部のいずれを先行して前記経路案内画面の表示対象とするか判定する表示対象判定手段と、
前記表示対象判定手段によって判定された表示対象に対し、自車両が前記分岐点に到達する予想時刻から遡り前記経路案内画面を表示するタイミングを設定する表示タイミング設定手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記案内適性情報は、自車両の運転者または同乗者の住所、年齢、性別、運転免許取得期間、走行中の道路についての走行経験、および道路案内経験のうちいずれか1つ以上の情報であることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記表示対象判定手段によって判定された表示対象が前記第2表示部のとき、
前記表示タイミング設定手段は、
前記表示対象判定手段によって判定された表示対象が前記第1表示部のときに前記経路案内画面を表示するタイミングよりも早いタイミングで前記経路案内画面を表示することを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
現在位置から目的地までの経路情報を取得する経路取得段階と、
運転者および同乗者の道路案内に関する案内適性情報を取得する案内適性情報取得段階と、
自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、前記案内適性情報取得段階で取得した案内適性情報に基づいて、前記経路取得段階において取得した経路を案内する経路案内画面を運転者に対して表示する第1表示部、及び、前記経路案内画面を運転者以外の同乗者に対して表示する第2表示部のいずれを先行して前記経路案内画面の表示対象とするか判定する表示対象判定段階と、
前記表示対象判定段階において判定された表示対象に対し、自車両が前記分岐点に到達する予想時刻から遡り前記経路案内画面を表示するタイミングを設定する表示タイミング設定段階と、
を含むことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項5】
現在位置から目的地までの経路情報を取得する経路取得手段、
運転者および同乗者の道路案内に関する案内適性情報を取得する案内適性情報取得手段、
自車両が進行方向前方の分岐点に接近したとき、前記案内適性情報取得手段が取得した案内適性情報に基づいて、前記経路取得手段が取得した経路を案内する経路案内画面を運転者に対して表示する第1表示部、及び、前記経路案内画面を運転者以外の同乗者に対して表示する第2表示部のいずれを先行して前記経路案内画面の表示対象とするか判定する表示対象判定手段、
前記表示対象判定手段によって判定された表示対象に対し、自車両が前記分岐点に到達する予想時刻から遡り前記経路案内画面を表示するタイミングを設定する表示タイミング設定手段、
としてコンピュータを機能させるナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−150082(P2012−150082A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10866(P2011−10866)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】