説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びナビゲーションプログラム

【課題】 目的地までの経路中に、正確な渋滞情報が得られない道路が含まれている場合であっても、より正確な所要時間を求めることができる有用性の高いナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 予め備える道路地図データに基づき、出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置に、所定の交通情報を外部から受信する交通情報受信部と、この交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定する渋滞度推定部とを設け、この渋滞度推定部を、対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、対象外リンクの渋滞度を推定するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、移動体の移動経路を誘導案内するナビゲーション装置において、目的地までの経路中に、正確な渋滞情報が得られない道路が含まれている場合であっても、より正確な所要時間を求めることができるように改良を施したナビゲーションの技術すなわちナビゲーション装置、方法及びナビゲーションプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の一般化と情報処理技術の発達に伴い、車載用に代表されるナビゲーション装置が急速に普及している。このナビゲーション装置は、地磁気センサ、車速センサ及びGPSセンサ等により逐次検出する自車の現在位置(緯度、経度等)を、DVDやHDD等に格納された道路地図データを用いて、表示装置の画面上に表示するとともに、道路地図データに含まれる経路データに基づいて、現在位置から指定された目的地への最適な誘導経路を計算して、特定の表示や音声合成などで誘導案内するものである。
【0003】
このようなナビゲーション装置には、道路交通情報通信システム(VICS;Vehicle Information and Communication System )が提供する渋滞情報や事故/規制情報等の道路交通情報を受信して、これらをリアルタイムにディスプレイ画面上に表示する機能や、渋滞情報や規制情報を加味して最適な経路を自動探索する経路計算機能がある(特許文献1等)。
【0004】
また、上記のような道路交通情報をディスプレイ画面上へ表示する方法としては、「レベル1」〜「レベル3」の方法があり、状況や目的に応じて所望のレベルで道路交通情報を表示できるようになっている。例えば、「レベル1」は、文字情報表示モードであり、ディスプレイ画面に、文字で旅行時間情報、障害情報、サービス情報等を表示している。
【0005】
また、「レベル2」は、簡易図形表示モードであり、デフォルメされた簡易地図上に、渋滞・障害情報などを表示している。また、「レベル3」は、地図表示モードであり、渋滞情報に含まれる渋滞度(渋滞、混雑、順調の3種類)を色別した矢印で表示すると共に、事故/規制の種別を異なるランドマークで、地図上にリアルタイムに表示している。
【0006】
また、経路計算機能では、渋滞情報に含まれるリンク旅行時間情報と規制情報に含まれる通行止めの情報等を、目的地までの所要時間の計算や、最短時間で到着できる経路の探索に利用している。
【特許文献1】特開平10−318771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、道路交通情報には、VICSサービスの対象となる道路(以下、対象リンクという)毎に渋滞情報が含まれているが、全ての道路がVICSサービスの対象となっているわけではなく、幹線道路(高速道、都市高速道、幹線一般道)が対象リンクとなっているだけで、その他の道路は、VICSサービスの対象外となる道路(以下、対象外リンクという)である。
【0008】
このため、従来は、対象リンクについて渋滞情報が出されている場合に、経路計算処理においては、目的地まで経由するリンクの中で、対象リンクについては、渋滞情報に含まれるリンク旅行時間を使用し、対象外リンクについては、予め固定値としてもっている平均速度とリンク長からリンク旅行時間を求めていた。このため、対象外リンクが多い経路では、目的地までの所要時間が不正確で、より時間がかかる経路を最適経路として選択する場合があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、目的地までの経路中に、正確な渋滞情報が得られない道路が含まれている場合であっても、より正確な所要時間を求めることができる有用性の高いナビゲーション装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、コンピュータ又は電子回路を用いて、予め備える道路地図データに基づき、出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置において、所定の交通情報を外部から受信する交通情報受信部と、前記交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定する渋滞度推定部とを有し、前記渋滞度推定部が、前記対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する前記交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明を方法の観点から捉えたものであり、コンピュータ又は電子回路が、予め備える道路地図データに基づき、出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション方法において、所定の交通情報を外部から受信するステップと、前記交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定するステップとを含み、前記渋滞度を推定する処理が、前記対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する前記交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項1及び請求項6に記載の発明をコンピュータプログラムの観点から捉えたものであり、コンピュータを制御することにより、予め備える道路地図データに基づき、出発地から目的地までの経路案内を行わせるナビゲーションプログラムにおいて、このプログラムは、前記コンピュータに、所定の交通情報を外部から受信させ、前記交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定させ、前記渋滞度を推定させる処理が、前記対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する前記交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定させるものであることを特徴とする。
【0013】
以上のような請求項1、請求項7及び請求項10に記載の発明によれば、交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、その対象外リンクの渋滞度を推定することができるので、ユーザにより正確な情報を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記渋滞度推定部が、前記所定エリア内に存在する道路種別毎に、その道路種別に属するすべての対象リンクの渋滞度を数値化して表し、その平均値に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の発明を方法の観点から捉えたものであり、請求項6に記載のナビゲーション方法において、前記渋滞度を推定する処理が、前記所定エリア内に存在する道路種別毎に、その道路種別に属するすべての対象リンクの渋滞度を数値化して表し、その平均値に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するものであることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項2及び請求項7に記載の発明をコンピュータプログラムの観点から捉えたものであり、請求項10に記載のナビゲーションプログラムにおいて、前記渋滞度を推定させる処理が、前記所定エリア内に存在する道路種別毎に、その道路種別に属するすべての対象リンクの渋滞度を数値化して表し、その平均値に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定させるものであることを特徴とする。
【0017】
以上のような請求項2、請求項7及び請求項11に記載の発明によれば、交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定する場合に、所定エリア内に存在する道路種別毎に、その道路種別に属するすべての対象リンクの渋滞度を数値化して表し、その平均値に基づいて、対象外リンクの渋滞度を推定することができるので、ユーザにより正確な情報を提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置において、前記渋滞度推定部により推定した渋滞度を、前記対象外リンクに対応させて表示する表示制御部をさらに有することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項3に記載の発明を方法の観点から捉えたものであり、請求項6又は請求項7に記載のナビゲーション方法において、前記推定した渋滞度を、前記対象外リンクに対応させて表示するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項3及び請求項8に記載の発明をコンピュータプログラムの観点から捉えたものであり、請求項10又は請求項11に記載のナビゲーションプログラムにおいて、前記推定した渋滞度を、前記対象外リンクに対応させて表示させる処理をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
以上のような請求項3、請求項8及び請求項12に記載の発明によれば、対象外リンクについて推定した渋滞度を、その対象外リンクに対応させて表示することができるので、ユーザは、対象リンクの渋滞度情報と同様に、対象外リンクについてもその渋滞度情報をディスプレイ画面から得ることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のナビゲーション装置において、前記渋滞度推定部により推定した渋滞度を、出発地から目的地までの経路計算に用いることを特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明をより具体的に示したものであって、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のナビゲーション装置において、出発地から目的地までの経路中に含まれるすべてのリンクを検出する手段と、検出されたすべてのリンクの中から、前記対象リンクを判別する手段と、前記対象リンクのそれぞれについて、前記交通情報からそのリンク旅行時間を取得する手段と、検出された全リンクの中の前記対象外リンクのそれぞれについて、前記渋滞度推定部により推定された渋滞度を用いてそのリンク旅行時間を算出する手段と、前記すべてのリンクについてのリンク旅行時間を合算することにより、全所要時間を算出する手段とをさらに有することを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の発明を方法の観点から捉えたものであり、請求項6乃至請求項8のいずれか一に記載のナビゲーション方法において、出発地から目的地までの経路中に含まれるすべてのリンクを検出するステップと、検出されたすべてのリンクの中から、前記対象リンクを判別するステップと、前記対象リンクのそれぞれについて、前記交通情報からそのリンク旅行時間を取得するステップと、検出された全リンクの中の前記対象外リンクのそれぞれについて、前記推定された渋滞度を用いてそのリンク旅行時間を算出するステップと、前記すべてのリンクについてのリンク旅行時間を合算することにより、全所要時間を算出するステップとをさらに含むことを特徴とする。
【0025】
請求項13に記載の発明は、請求項5及び請求項9に記載の発明をコンピュータプログラムの観点から捉えたものであり、請求項10乃至請求項12のいずれか一に記載のナビゲーションプログラムにおいて、出発地から目的地までの経路中に含まれるすべてのリンクを検出させ、検出されたすべてのリンクの中から、前記対象リンクを判別させ、前記対象リンクのそれぞれについて、前記交通情報からそのリンク旅行時間を取得させ、検出された全リンクの中の前記対象外リンクのそれぞれについて、前記推定された渋滞度を用いてそのリンク旅行時間を算出させ、前記すべてのリンクについてのリンク旅行時間を合算させることにより、全所要時間を算出させる処理をさらに含むことを特徴とする。
【0026】
以上のような請求項4,請求項5,請求項9及び請求項13に記載の発明によれば、外部より受信した対象リンクの渋滞度から、対象外リンクの渋滞度を推定して補完することで、より正確な目的地までの所要時間を求めることができるので、真に最短時間で到着できる経路をユーザに提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上のような本発明によれば、目的地までの経路中に、正確な渋滞情報が得られない道路が含まれている場合であっても、より正確な所要時間を求めることができる有用性の高いナビゲーション装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態は、周辺装置を備えたコンピュータをプログラムで制御することで実現できるが、この場合のハードウェアやプログラムの実現態様は各種変更可能である。また、本発明は、ナビゲーション装置及び方法に加え、上記のようなプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記憶媒体としても把握できる。従って、以下の説明では、本発明及び本実施形態の各機能を実現する仮想的回路ブロックを用いる。
【0029】
(1)構成
〔1−1.全体構成〕
まず、本実施形態におけるナビゲーション装置(以下「本装置」と呼ぶ)は、概略としては、対象外リンクの渋滞度を、周辺にある対象リンクの渋滞度から推定して求め、その渋滞度を用いて対象外リンクのリンク旅行時間を算出し、このリンク旅行時間を利用することで、目的地までの所要時間の精度を高め、真に最短時間の経路を探索できるようにすることにより、ユーザにとって優れた有用性を確保するものであり、図1の機能ブロック図に示す下記の各要素を備えている。
【0030】
すなわち、絶対位置・方位検出部1は、本装置が搭載された自動車(自車と呼ぶ)の現在位置すなわち自車位置について、地表での絶対的な位置座標や方位を計算するために、例えば、GPS衛星から送られてくるGPS電波をアンテナやレシーバなどで受信するための部分である。相対方位検出部2は、ジャイロなどを使って自車の相対的な方位を検出するための部分である。車速検出部3は、自動車より得られる車速パルスを処理することで自車の速度を計算する部分である。
【0031】
また、メインCPU及びその周辺回路4は、本装置全体を制御する制御回路の役割を果たす部分である。また、メモリ群Mは、本装置の動作に必要な各種のメモリであり、例えば、プログラム格納用のROM5は本装置の起動時にメインCPUによりアクセスされる。また、ワークエリアなどを提供するダイナミックRAM(DRAM)6には、メインプログラムがロードされる。
【0032】
また、SRAM(スタティックRAM)7は、現在位置、目的地、経路等の各種設定や道路地図データに含まれる情報等を取得し、記憶する記憶手段であり、メイン電源がオフになっている間もバッテリーでバックアップされ、オンになったときにメモリ内容を提供するが、フラッシュメモリやハードディスクドライブなど、他の記憶手段によっても置換可能である。また、表示用のVRAM(ビデオRAM)8は、表示部10に表示すべき画像のビットマップデータを格納する。
【0033】
また、表示部10は、地図、操作メニュー、検索リスト及び地点情報など各種の情報を、図示しない液晶表示画面に表示する部分である。音声出力手段により、合成音声による案内と併用させることもできる。また、入力部11は、ユーザがスイッチなどから命令などの情報を入力するための部分であり、タッチセンサ機能、リモコンユニット、赤外線送受信ユニットなどを備えるが、タッチパネルとして表示部10と一体に構成したり、フロントパネルのスイッチとして構成することも可能である。ユーザインタフェース部9は、I/O制御回路やデバイスドライバなどを使って、表示部10及び入力部11と、メインCPU及びその周辺回路4とを結ぶユーザインタフェースである。
【0034】
また、HDD制御部12は、ハードディスク(大容量記憶装置)に記録されたナビゲーションプログラムなど各種データをデータベースから読み出す手段であり、データベースには、各種縮尺の地図データ、道路又は道路の区間のネットワーク構造を表した道路地図データが格納される。この道路地図データには、地図上の地点に関する各種地点情報が含まれている。この地点情報には、例えば、地点の座標、地点の名称、地点の種類、住所、電話番号等の検索リスト用のデータ、その地点が接している道路の種別等も含まれている。また、ナビゲーションプログラムに必要なインタフェース用のデータ、例えば、メニュー、リスト、ボタン、案内表示(方位、距離、時刻等)、各種マーク(ランドマーク、アイコン、現在位置、走行軌跡等)を含めてもよい。
【0035】
上述のプログラムやデータの格納場所は、種々の記憶媒体により実現可能であり、一部若しくは全部をどの記憶媒体に格納するかは、自由に設計可能である。従って、メインプログラムばかりでなく、ナビゲーションのインタフェース用のデータの一部をROM5にあらかじめ格納しておいてもよい。また、ハードディスクではなく、CD−ROM制御部、DVD−ROM制御部等が、CD−ROM、DVD−ROMから読み出したデータを利用する構成としてもよい。
【0036】
また、FM多重受信及び処理部13は、FM放送波を受信しこの放送波からVICSサービスの交通情報など所望のデータを取り出す処理を行う部分であり、交通情報は渋滞情報を含む。また、光/電波ビーコン受信及び処理部14は、路肩などに設置された光ビーコンや電波ビーコンから、各ビーコンの識別情報やVICSサービスの交通情報などの情報を受信及び処理する部分である。
【0037】
〔1−2.メインCPU及びその周辺回路の役割〕
さらに、メインCPU及びその周辺回路4は、上記のようなプログラムの作用によって、図1に示す下記の各部分としての役割を実現するように構成されている。すなわち、現在位置検出部40は、自車位置を逐次計算するための手段であり、具体的には、GPS航法測位と自律航法測位とを組み合わせることで自車位置を計算するように構成される。
【0038】
ここで、GPS航法測位は、人工衛星からの電波に基づいて絶対位置・方位検出部1で得られる情報を使って現在位置を計算するものである。また、自律航法測位は、地磁気及び自車の速度に基づいて相対方位検出部2及び車速検出部3から得られる情報を使って現在位置を計算するものである。
【0039】
また、目的地指定部41は、前記道路地図データを記録したデータベースからの施設検索や地図上でのカーソル指定などにより、目的地の指定すなわち入力を受け付ける手段である。経路設定部42は、現在位置検出部40により検出される現在位置から、目的地指定部41により指定された目的地に到達するまでの経路を、道路地図データに基づいて計算し、結果として得られた経路を設定する手段である。
【0040】
地図表示部43は、算出された自車位置、経路及び道路地図データに基づいて、自車位置周辺の地図あるいは広域表示した地図を、表示部10に三次元表示又は他の態様で表示する手段である。また、案内制御部44は、経路のうち表示する部分や点滅強調などの要素を決めたり、合成音声の併用などにより誘導案内を制御する手段である。
【0041】
候補ルート検出部45は、目的地指定部41により目的地が指定された場合に、現在地(出発地)からその目的地に至るまでの候補ルートを検出する手段であり、全リンク検出部46は、検出された各候補ルートについて、そのルートに含まれる全リンクを検出する手段である。なお、ここで検出された「全リンク」には、後述する「対象リンク」と「対象外リンク」とが含まれている。
【0042】
また、交通情報受信部47は、前記FM多重受信及び処理部13を介してVICSサービスの道路交通情報を受信する手段である。
なお、道路交通情報通信システムセンターは、エリアを約100km2のサービスエリア(2次メッシュ)毎に区分し、各メッシュの渋滞情報を順に送信している。また、各メッシュの渋滞情報には、(a)メッシュ内の各リンクのリンク旅行時間、(b)メッシュ内の各リンクの渋滞度(渋滞、混雑、順調の別)、(c)メッシュ内の各リンクのリンク種別(都市間高速道、都市内高速道、一般道の別)等が含まれている。
【0043】
また、対象リンク判別部48は、前記全リンク検出部46により検出された各リンクが、「対象リンク」又は「対象外リンク」のいずれであるかを判別する手段である。なお、「対象リンク」とは、上述したように、「VICSサービスの対象となる道路」を意味し、前記交通情報受信部47により、そのリンクの渋滞情報を取得することができる道路である。
【0044】
これに対して、「対象外リンク」とは、「VICSサービスの対象外となる道路」を意味し、前記交通情報受信部47により、そのリンクの渋滞情報を取得することができない道路である。本発明は、以下の処理により、この「対象外リンク」の渋滞度を、高精度に推定するものである。
【0045】
また、対象リンク旅行時間取得部49は、対象リンク判別部48において「対象リンク」と判別されたリンクについて、渋滞情報に含まれるそのリンクの「リンク旅行時間」を取得する手段である。なお、「リンク旅行時間」とは、VICS情報の一つであって、上記「レベル3」で提供される情報であり、交差点間(リンク)の通過所要時間をいう。
【0046】
対象外リンク渋滞度推定部50は、対象リンク判別部48において「対象外リンク」と判別されたリンクについて、リンク毎にその渋滞度を推定して補完する手段である。なお、この渋滞度の推定方法としては、例えば、後述する図2に示すフローチャートに示す方法が用いられる。
【0047】
対象外リンク旅行時間算出部51は、対象外リンクのそれぞれについて、推定された渋滞度を用いて、リンク毎にそのリンク旅行時間を算出する手段である。また、全所要時間算出部52は、前記対象リンク旅行時間取得部49で取得された各対象リンクのリンク旅行時間と、対象外リンク旅行時間算出部51で算出された各対象外リンクのリンク旅行時間のすべてを合算することにより「全所要時間」を算出する手段であり、その計算結果を前記経路設定部42に送り、経路設定部42において、目的地までの所要時間が最短の経路を選択できるようにするものである。
【0048】
また、対象外リンク渋滞度表示制御部53は、各対象外リンクについて推定された渋滞度を、そのリンクに対応づけて表示する手段である。この表示方法としては、対象リンクの渋滞度の表示態様と同様に、「渋滞」「混雑」「順調」等の状況により、色を変えたり、強調して表示する方法を用いることができる。
【0049】
(2)作用
以上のような本実施形態による処理の詳細を、図2及び図3のフローチャートを参照して説明する。なお、本発明により最適な経路が設定された後、現在位置から目的地への経路誘導案内が行われることは、通常のナビゲーション装置と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
(2−1)対象外リンク渋滞度推定部における処理
対象外リンク渋滞度推定部50では、あるメッシュ内に含まれる対象リンクの渋滞度の平均値を算出し、その値をそのメッシュ内に含まれる対象外リンクの渋滞度と推定する。図2は、対象外リンクの渋滞度を推定する処理の流れを示すフローチャートである。なお、図2に示すフローチャートにおいては、前記候補ルート検出部45において検出された各候補ルートについて、同様の処理がなされる。
【0051】
まず、交通情報受信部47により渋滞情報を受信してメモリに記憶し(ステップ201)、目的地までのルートに含まれるメッシュから1つのメッシュを選択する(ステップ202)。続いて、そのメッシュ内に含まれる全対象リンクの道路種別の中から1つの種別を選択する(ステップ203)。例えば、都市間高速道、都市内高速道、幹線一般道の3種類の中から、都市間高速道が選択される。
【0052】
続いて、その種別に含まれる全対象リンクの渋滞度の総和を求める(ステップ204)。なお、渋滞度の総和を求める場合には、渋滞度を数値化し、渋滞=3、混雑=2、順調=1として計算する。また、ステップ205において、その種別に含まれる全対象リンクの総数を求め、ステップ204で求めた「渋滞度の総和」をステップ205で求めた「リンク総数」で除算(四捨五入)し、この値を、そのメッシュ内の当該道路種別の対象外リンクの渋滞度と推定する(ステップ206)。
【0053】
続いて、ステップ207において、すべての道路種別についての処理が終了したか否かを判断し、終了していない場合には、ステップ203に戻り、そのメッシュ内に含まれる全対象リンクの道路種別の中から別の種別(例えば、幹線一般道)を選択し、ステップ203〜ステップ207の処理を繰り返す。
【0054】
一方、ステップ207において、すべての道路種別についての処理が終了した場合には、ステップ208に進み、すべてのメッシュについての処理が終了したか否かを判断し、終了していない場合には、ステップ202に戻り、目的地までのルートに含まれるメッシュから別のメッシュを1つ選択し、ステップ202〜ステップ208の処理を繰り返す。
【0055】
なお、上記のようにして求められた各対象外リンクの渋滞度(推定渋滞度)は、メモリ等に保存され、後述する目的地までの所要時間の計算や、渋滞情報を画面に表示する際に用いることができるように構成されている。
【0056】
(2−2)全所要時間算出部における処理
全所要時間算出部52では、現在地点から目的地までの間で通過する全リンクのリンク旅行時間の総和を求めて、これを目的地までの所要時間とする。図3は、図2に示したフローチャートに従って求められた対象外リンクの渋滞度を利用して、目的地までの全所要時間を求める処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
なお、図3に示すフローチャートにおいても、前記候補ルート検出部45において検出された各候補ルートについて、同様の処理がなされる。また、図3に示す処理においては、図4に示すような「渋滞度−平均速度変換表」が用いられる。
【0058】
まず、ステップ301において、現在地から目的地までに経由する全リンクを検出し、その経由リンクの中から1つのリンクを選択する(ステップ302)。続いて、そのリンクが対象リンクか否かを判断し(ステップ303)、対象リンクの場合には、ステップ304に進み、交通情報受信部47によって受信された渋滞情報から、そのリンクのリンク旅行時間を取得する。
【0059】
一方、ステップ303において、そのリンクが対象リンクではない、言い換えれば、渋滞情報が得られない対象外リンクであると判断した場合には、ステップ305に進み、図2の処理で求めた対象外リンクの渋滞度(推定渋滞度)とそのリンクの道路種別とに基づいて、図4に示す「渋滞度−平均速度変換表」から平均速度を求め、そのリンク長をその平均速度で除算して、そのリンクのリンク旅行時間とする。
【0060】
例えば、その対象外リンクの渋滞度が「混雑」と推定されており、そのリンクの道路種別が「一般道」である場合には、図4に示す「渋滞度−平均速度変換表」から、その対象外リンクにおける平均速度は「時速15km」とされる。
【0061】
続いて、ステップ304又はステップ305で求められたそのリンクのリンク旅行時間を、順次加算する(ステップ306)。そして、ステップ307において、経由リンクのすべてについてリンク旅行時間の計算が終了したか否かを判断し、終了していない場合には、ステップ302に戻り、経由リンクの中から別のリンクを1つ選択し、ステップ302〜ステップ307の処理を繰り返す。
【0062】
一方、ステップ307において、経由リンクのすべてについてリンク旅行時間の計算が終了している場合には、ステップ306で得られた「順次加算されたリンク旅行時間」を、目的地までの全所要時間とする。
【0063】
なお、全所要時間算出部52では、目的地までの複数の候補ルートのそれぞれについて上記の処理を行い、それぞれの候補ルートの全所要時間を求め、その計算結果を前記経路設定部42に送り、経路設定部42において、目的地までの所要時間が最短である経路を最適な経路としてユーザに提供することができるように構成されている。
【0064】
(3)効果
以上のような本実施形態によれば、ナビゲーション装置において、外部より受信した対象リンクの渋滞度から、対象外リンクの渋滞度を推定して補完することで、より正確な目的地までの所要時間を求めることができるので、真に最短時間で到着できる経路をユーザに提供することが可能となる。
【0065】
(4)他の実施形態
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、車内にナビゲーション用のデータを置く、いわゆるオンボード型ではなく、無線通信ネットワークを介して最新のデータの提供を受けることができる、いわゆるオフボード型のナビゲーションシステムにも適用可能である。この場合、通信ネットワークを介して接続される車外のサーバ等が、上記の処理の全部若しくは一部を行うことができ、処理結果を車内のコンピュータが取得することにより、車内における処理負担を軽減させることができる。なお、本発明は、車載用には限定されず、他の移動手段や携帯用のナビゲーションにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置の構成を示す機能ブロック図。
【図2】対象外リンク渋滞度推定部における処理の流れを示すフローチャート。
【図3】全所要時間算出部における処理の流れを示すフローチャート。
【図4】渋滞度−平均速度変換表の一例を示す図。
【符号の説明】
【0067】
1…絶対位置・方位検出部
2…相対方位検出部
3…車速検出部
4…メインCPU及びその周辺回路
5…ROM
6…DRAM
7…SRAM
8…VRAM
9…ユーザインタフェース部
10…表示部
11…入力部
12…HDD制御部
13…FM多重受信及び処理部
14…光/電波ビーコン受信及び処理部
40…現在位置検出部
41…目的地指定部
42…経路設定部
43…地図表示部
44…案内制御部
45…候補ルート検出部
46…全リンク検出部
47…交通情報受信部
48…対象リンク判別部
49…対象リンク旅行時間取得部
50…対象外リンク渋滞度推定部
51…対象外リンク旅行時間算出部
52…全所要時間算出部
53…対象外リンク渋滞度表示制御部
M…メモリ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ又は電子回路を用いて、予め備える道路地図データに基づき、出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置において、
所定の交通情報を外部から受信する交通情報受信部と、
前記交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定する渋滞度推定部とを有し、
前記渋滞度推定部が、前記対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する前記交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するように構成されていることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記渋滞度推定部が、前記所定エリア内に存在する道路種別毎に、その道路種別に属するすべての対象リンクの渋滞度を数値化して表し、その平均値に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記渋滞度推定部により推定した渋滞度を、前記対象外リンクに対応させて表示する表示制御部をさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記渋滞度推定部により推定した渋滞度を、出発地から目的地までの経路計算に用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
出発地から目的地までの経路中に含まれるすべてのリンクを検出する手段と、
検出されたすべてのリンクの中から、前記対象リンクを判別する手段と、
前記対象リンクのそれぞれについて、前記交通情報からそのリンク旅行時間を取得する手段と、
検出された全リンクの中の前記対象外リンクのそれぞれについて、前記渋滞度推定部により推定された渋滞度を用いてそのリンク旅行時間を算出する手段と、
前記すべてのリンクについてのリンク旅行時間を合算することにより、全所要時間を算出する手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
コンピュータ又は電子回路が、予め備える道路地図データに基づき、出発地から目的地までの経路案内を行うナビゲーション方法において、
所定の交通情報を外部から受信するステップと、
前記交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定するステップとを含み、
前記渋滞度を推定する処理が、前記対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する前記交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するものであることを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項7】
前記渋滞度を推定する処理が、前記所定エリア内に存在する道路種別毎に、その道路種別に属するすべての対象リンクの渋滞度を数値化して表し、その平均値に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定するものであることを特徴とする請求項6に記載のナビゲーション方法。
【請求項8】
前記推定した渋滞度を、前記対象外リンクに対応させて表示するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のナビゲーション方法。
【請求項9】
出発地から目的地までの経路中に含まれるすべてのリンクを検出するステップと、
検出されたすべてのリンクの中から、前記対象リンクを判別するステップと、
前記対象リンクのそれぞれについて、前記交通情報からそのリンク旅行時間を取得するステップと、
検出された全リンクの中の前記対象外リンクのそれぞれについて、前記推定された渋滞度を用いてそのリンク旅行時間を算出するステップと、
前記すべてのリンクについてのリンク旅行時間を合算することにより、全所要時間を算出するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一に記載のナビゲーション方法。
【請求項10】
コンピュータを制御することにより、予め備える道路地図データに基づき、出発地から目的地までの経路案内を行わせるナビゲーションプログラムにおいて、
このプログラムは、前記コンピュータに、
所定の交通情報を外部から受信させ、
前記交通情報の提供対象外とされている対象外リンクについて、その渋滞度を推定させ、
前記渋滞度を推定させる処理が、前記対象外リンクを含む所定のエリア内に存在する前記交通情報の提供対象とされている対象リンクの渋滞度に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定させるものであることを特徴とするナビゲーションプログラム。
【請求項11】
前記渋滞度を推定させる処理が、前記所定エリア内に存在する道路種別毎に、その道路種別に属するすべての対象リンクの渋滞度を数値化して表し、その平均値に基づいて、前記対象外リンクの渋滞度を推定させるものであることを特徴とする請求項10に記載のナビゲーションプログラム。
【請求項12】
前記推定した渋滞度を、前記対象外リンクに対応させて表示させる処理をさらに含むことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のナビゲーションプログラム。
【請求項13】
出発地から目的地までの経路中に含まれるすべてのリンクを検出させ、
検出されたすべてのリンクの中から、前記対象リンクを判別させ、
前記対象リンクのそれぞれについて、前記交通情報からそのリンク旅行時間を取得させ、
検出された全リンクの中の前記対象外リンクのそれぞれについて、前記推定された渋滞度を用いてそのリンク旅行時間を算出させ、
前記すべてのリンクについてのリンク旅行時間を合算させることにより、全所要時間を算出させる処理をさらに含むことを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか一に記載のナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−284230(P2006−284230A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101548(P2005−101548)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】