説明

ナビゲーション装置およびその地図表示方法

【課題】 本発明の目的は、車両の状態に応じて、地図の表示を制御するナビゲーション装置の技術を提供することにある。
【解決手段】
移動体に搭載されるナビゲーション装置であって、現在位置を特定する現在位置特定手段を備え、前記現在位置に応じて移動可能な範囲である移動範囲を特定する移動可能範囲特定手段と、前記移動範囲内に、前記移動範囲を拡張可能な所定の設備が存在する場合に、前記移動範囲を拡張する移動範囲拡張手段と、前記移動範囲に応じて地図の表示範囲を設定し、前記移動範囲内の所定の位置の周囲の前記表示範囲内の地図を表示する地図表示手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置では、ディスプレイにタッチパネルを設けて、タッチ位置の方向に、所定の速度で画面中心位置をスクロールさせて表示させる。特許文献1には、このようなナビゲーション装置についての技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−108475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなナビゲーション装置では、車両の状態が地図の表示に反映されることはない。例えば、バッテリーに蓄積した電気を動力源とする電気自動車では、航続可能距離が不足すると、バッテリーの充電が必要となるが、内燃エンジンの燃料補給に比べて、バッテリーの充電には時間がかかるため、遠方の地図の表示時には、車両の状態が反映されて注意が喚起されるのが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、車両の状態に応じて、地図の表示を制御するナビゲーション装置の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係るナビゲーション装置は、移動体に搭載されるナビゲーション装置であって、現在位置を特定する現在位置特定手段を備え、前記現在位置に応じて移動可能な範囲である移動範囲を特定する移動可能範囲特定手段と、前記移動範囲内に、前記移動範囲を拡張可能な所定の設備が存在する場合に、前記移動範囲を拡張する移動範囲拡張手段と、前記移動範囲に応じて地図の表示範囲を設定し、前記移動範囲内の所定の位置の周囲の前記表示範囲内の地図を表示する地図表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る移動体に搭載されるナビゲーション装置の地図表示方法では、前記ナビゲーション装置は、現在位置を特定する現在位置特定手段を備え、前記現在位置に応じて移動可能な範囲である移動範囲を特定する移動可能範囲特定ステップと、前記移動範囲内に、前記移動範囲を拡張可能な所定の設備が存在する場合に、前記移動範囲を拡張する移動範囲拡張ステップと、前記移動範囲に応じて地図の表示範囲を設定し、前記移動範囲内の所定の位置の周囲の前記表示範囲内の地図を表示する地図表示ステップと、を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、車両の状態に応じて、地図の表示を制御するナビゲーション装置の技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】図2は、リンクテーブルの構成を示す図である。
【図3】図3は、スクロール量テーブルの構成を示す図である。
【図4】図4は、充電施設テーブルの構成を示す図である。
【図5】図5は、演算処理部の機能構成図である。
【図6】図6は、スクロール処理のフロー図である。
【図7】図7は、スクロール処理実施前に表示される画面の例を示す図である。
【図8】図8は、スクロール処理実施中の画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の第一の実施形態を適用したナビゲーション装置について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に、ナビゲーション装置100の全体構成図を示す。ナビゲーション装置100は、地図情報を表示して、ナビゲーション装置100の現在位置を示す地点と、設定された目的地までの経路を誘導する情報とを示すことが可能ないわゆるナビゲーション装置である。なお、本実施形態においては、ナビゲーション装置100は、バッテリーから取り出した電力を動力源とする移動体、例えば電気自動車等、に搭載されるものとする。
【0012】
ナビゲーション装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4(音声入力装置としてマイクロフォン41、音声出力装置としてスピーカ42を備える)と、入力装置5と、ROM装置6と、車速センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9と、FM多重放送受信装置10と、ビーコン受信装置11と、車載ネットワーク通信装置12と、を備えている。
【0013】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ7,8やGPS受信装置9、FM多重放送受信装置10等から出力される情報に基づいて現在位置を検出する。また、得られた現在位置情報に基づいて、表示に必要な地図データを記憶装置3あるいはROM装置6から読み出す。
【0014】
また、演算処理部1は、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在位置を示すマークを重ねてディスプレイ2へ表示する。また、記憶装置3あるいはROM装置6に記憶されている地図データ等を用いて、操作者から指示された出発地または現在位置と、目的地、経由地または立ち寄り地と、を結ぶ最適な経路となる推奨経路を探索する。また、スピーカ42やディスプレイ2を用いて操作者を誘導する。
【0015】
また、演算処理部1は、後述するように、移動可能範囲を特定し、移動可能範囲に応じた範囲を地図表示する。また、演算処理部1は、移動可能範囲内に、移動範囲を拡張可能な設備が存在する場合には、移動範囲を拡張する。なお、演算処理部1は、移動可能範囲を、バッテリーにより移動可能な範囲とする。
【0016】
ナビゲーション装置100の演算処理部1は、各デバイス間をバス25で接続した構成である。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、記憶装置3から読み出した地図データ、演算データなどを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、各種ハードウェアを演算処理部1と接続するためのI/F(インターフェイス)24と、を有する。
【0017】
ディスプレイ2は、演算処理部1等で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ2は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで構成される。
【0018】
記憶装置3は、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性メモリカードといった、少なくとも読み書きが可能な記憶媒体で構成される。
【0019】
この記憶媒体には、通常の経路探索装置に必要な地図データ(地図上の道路を構成するリンクのリンクデータを含む)であるリンクテーブル200と、バッテリー残量に応じてスクロール移動量(単位は、ピクセル/ミリ秒)を対応付けるスクロール量テーブル300と、充電施設の情報を格納する充電施設テーブル400と、が記憶されている。
【0020】
図2は、リンクテーブル200の構成を示す図である。リンクテーブル200は、地図上の区画された領域であるメッシュの識別コード(メッシュID)201ごとに、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータ202を含んでいる。
【0021】
リンクデータ202は、リンクの識別子であるリンクID211ごとに、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報222、リンクを含む道路の種別を示す道路種別223、リンクの長さを示すリンク長224、予め記憶されたリンク旅行時間225、当該リンクの開始ノードに接続するリンクである開始接続リンクと、当該リンクの終了ノードに接続するリンクである終了接続リンクと、を特定する開始接続リンク、終了接続リンク226、リンクを含む道路の制限速度を示す制限速度227を含んでいる。
【0022】
なお、ここでは、リンクを構成する2つのノードについて開始ノードと終了ノードとを区別することで、同じ道路の上り方向と下り方向とを、それぞれ別のリンクとして管理するようにしている。
【0023】
図3は、スクロール量テーブル300の構成を示す図である。スクロール量テーブル300は、バッテリー残量301と、バッテリー残量に応じたスクロール移動量302と、を含んでいる。
【0024】
バッテリー残量301は、ナビゲーション装置100が搭載される移動体の駆動力となるバッテリーから取り出すことのできる電力量の満量に対する、残量の割合もについての所定の範囲で表される。例えば、バッテリー残量301には、「20%以上」、「20%未満」等の所定の範囲が格納される。
【0025】
また、スクロール移動量302は、画面上の地図表示の中心点の位置を二次元平面で移動させる際のスクロール速度を特定する、所定時間あたりの移動量の情報である。例えば、スクロール移動量302は、ミリ秒あたりの中心点の位置の移動量を、4ピクセル移動させるのに相当する速度である、等の情報である。スクロール移動量302は、バッテリー残量301に応じてあらかじめ関連付けられて定められている。
【0026】
すなわち、スクロール量テーブル300には、バッテリーの残量に対して、スクロール速度が対応付けられて記憶されているといえる。
【0027】
図4は、充電施設テーブル400の構成を示す図である。充電施設テーブル400は、充電施設を特定する充電施設識別子401と、充電施設識別子401で特定される充電施設の充電能力を特定する情報である充電速度402と、充電施設識別子401で特定される充電施設の位置を特定する情報である座標情報等を格納する位置403と、を含んでいる。
【0028】
充電速度402には、充電施設識別子401にて特定される充電設備について、ナビゲーション装置100に搭載される移動体の駆動力となるバッテリーを充電する能力が、所定の区分に従って格納される。本実施例においては、充電速度402は、「急速充電」、「一般充電」、「低速充電」、に区分されている。なお、ここで、本実施形態における充電速度とは、バッテリーを充電するのにかかる速さをいうものとする。すなわち、急速充電であれば、一般充電よりも急速に充電することができるため、充電速度は速いといえる。逆に、低速充電であれば、一般充電よりも充電時間は遅いため、充電能力は遅いといえる。また、充電速度402には、より具体的な所定の充電性能指標(例えば、「急速充電」に相当する「30キロワット以上」、「一般充電」に相当する「30キロワット未満10キロワット以上」等の指標単位上の値)を含む。
【0029】
位置403には、充電施設識別子401で特定される充電施設の位置を特定する情報が格納される。例えば、位置403には、充電施設識別子401で特定される充電施設の緯度経度を特定する情報が格納される。あるいは、位置403には、充電施設識別子401で特定される充電施設の住所を特定する情報が格納されるものであってもよい。
【0030】
すなわち、充電施設テーブル400には、充電施設と、その充電能力と、施設の位置を特定する情報と、が対応付けられて記憶されているといえる。
【0031】
図1に戻って説明する。音声入出力装置4は、音声入力装置としてマイクロフォン41と、音声出力装置としてスピーカ42と、を備える。マイクロフォン41は、使用者やその他の搭乗者が発した声などのナビゲーション装置100の外部の音声を取得する。
【0032】
スピーカ42は、演算処理部1で生成された使用者へのメッセージを音声として出力する。マイクロフォン41とスピーカ42は、車両の所定の部位に、別個に配されている。ただし、一体の筐体に収納されていても良い。ナビゲーション装置100は、マイクロフォン41及びスピーカ42を、それぞれ複数備えることができる。
【0033】
入力装置5は、使用者からの指示を使用者による操作を介して受け付ける装置である。入力装置5は、タッチパネル51と、ダイヤルスイッチ52と、その他のハードスイッチであるスクロールキー、縮尺変更キーなどで構成される。
【0034】
タッチパネル51は、ディスプレイ2の表示面側に搭載され、表示画面を透視可能である。タッチパネル51は、ディスプレイ2に表示された画像のXY座標と対応したタッチ位置を特定し、タッチ位置を座標に変換して出力する。タッチパネル51は、感圧式または静電式の入力検出素子などにより構成される。
【0035】
ダイヤルスイッチ52は、時計回り及び反時計回りに回転可能に構成され、所定の角度の回転ごとにパルス信号を発生し、演算処理部1に出力する。演算処理部1では、パルス信号の数から、回転角度を求める。
【0036】
ROM装置6は、CD-ROMやDVD-ROM等のROM(Read Only Memory)や、IC(Integrated Circuit)カードといった、少なくとも読み取りが可能な記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、例えば、動画データや、音声データなどが記憶されている。
【0037】
車速センサ7,ジャイロセンサ8およびGPS受信装置9は、ナビゲーション装置100で現在位置(自車位置)を検出するために使用されるものである。車速センサ7は、車速を算出するのに用いる値を出力するセンサである。ジャイロセンサ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体の回転による角速度を検出するものである。GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率とを3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在位置、進行速度および進行方位を測定するものである。
【0038】
FM多重放送受信装置10は、FM多重放送局から送られてくるFM多重放送信号を受信する。FM多重放送には、VICS(Vehicle Information Communication System:登録商標)情報の概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報などやFM多重一般情報としてラジオ局が提供する文字情報などがある。
【0039】
ビーコン受信装置11は、VICS情報などの概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報や緊急警報などを受信する。例えば、光により通信する光ビーコン、電波により通信する電波ビーコン等の受信装置である。
【0040】
車載ネットワーク通信装置12は、ナビゲーション装置100を、図示しない車両の制御ネットワーク規格であるCAN(Controller Area Network)等に対応するネットワークに接続させ、ネットワークに接続された他の車両制御装置であるECU(Electronic control unit)とCANメッセージをやり取りすることで通信を行う装置である。
【0041】
図5は、演算処理部1の機能ブロック図である。図示するように、演算処理部1は、基本制御部101と、入力受付部102と、出力処理部103と、スクロール指示特定部104と、バッテリー情報取得部105と、充電施設特定部106と、表示範囲特定部107と、スクロール処理部108と、を有する。
【0042】
基本制御部101は、様々な処理を行う中心的な機能部であり、処理内容に応じて、他の処理部を制御する。また、各種センサ、GPS受信装置9等の情報を取得し、マップマッチング処理等を行って現在位置を特定する。また、随時、走行した日付および時刻と、位置と、を対応付けて、リンクごとに走行履歴を記憶装置3に記憶する。さらに、各処理部からの要求に応じて、現在時刻を出力する。
【0043】
また、基本制御部101は、操作者から指示された出発地(現在位置)と目的地とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索する。当該経路探索においては、ダイクストラ法等の経路探索ロジックを用いて、道路の所定の区間(リンク)に対して予め設定されたリンクコストに基づいて経路を探索する。
【0044】
また、基本制御部101は、車両の現在位置が推奨経路から逸脱しないよう、スピーカ42やディスプレイ2を用いて操作者を誘導する。
【0045】
また、基本制御部101は、入力受付部102がタッチ入力を検出すると、そのタッチ位置に相当する地図上の位置の座標(緯度経度)を特定する。
【0046】
入力受付部102は、入力装置5またはマイクロフォン41を介して入力された使用者からの指示を受け付け、その要求内容に対応する処理を実行するように演算処理部1の各部を制御する。例えば、使用者が推奨経路の探索を要求したときは、目的地を設定するため、地図をディスプレイ2に表示する処理を出力処理部103に要求する。
【0047】
出力処理部103は、例えば地図情報やポリゴン情報等の表示させる画面情報を受け取り、ディスプレイ2に描画するための信号に変換してディスプレイ2に対して描画する指示を行う。
【0048】
スクロール指示特定部104は、入力受付部102にて受け付けた指示のうち、スクロール指示について、指示の詳細を特定する。具体的には、スクロール指示特定部104は、入力受付部102が受け付けたタッチについて、タッチパネル51上の位置(XY座標)を入力受付部102から取得する。また、スクロール指示特定部104は、入力受付部102が受け付けたタッチについて、タッチパネル51の中心位置からの方向(角度)を、スクロールする方向として特定する。また、スクロール指示特定部104は、入力受付部102が受け付けたタッチについて、地図上の位置(緯度経度)を基本制御部101から取得する。そして、スクロール指示特定部104は、当該位置に到着した状態におけるバッテリーの残量を予測し、当該バッテリーの残量に応じてスクロールする速度を特定する。
【0049】
バッテリー情報取得部105は、バッテリーに関する情報を取得する。具体的には、バッテリー情報取得部105は、他の処理部からバッテリーの残量情報の要求を受け付けると、残量を示す情報を当該要求元に出力する。なお、本実施形態においては、バッテリー情報取得部105は、バッテリーの残量の情報を、バッテリーに付属するバッテリー管理モジュール(図示せず)から百分率で取得し、残量の情報とする。また、バッテリー情報取得部105は、所定の電圧を維持してバッテリーから電力を取り出せる電力量によって走行できる距離(以降、「満充電走行可能距離」という)および所定の距離あたりの平均的な電力の消費量(以降、「平均電力消費量」という)を予め設定値として保持している。そして、バッテリー情報取得部105は、他の処理部から満充電走行可能距離または平均電力消費量の情報の開示要求を受け付けると、これらの情報を当該要求元に出力する
【0050】
充電施設特定部106は、所定の地図上の座標を受け付けると、現在位置から当該座標の位置へ到るためにバッテリーの充電が必要であれば、現在位置に応じて、充電するための施設を特定する。例えば、充電施設特定部106は、所定の地図上の座標を受け付けて、現在位置と、受け付けた当該座標と、を結ぶ直線を特定し、当該直線上の、バッテリー残量が所定量以下となる位置を特定する。すなわち、現在位置と受け付けた座標との間を結ぶ直線と、現在位置を中心とする同心円と、の交点を求める。そして、求めた交点付近にある充電施設を探索し、充電するための施設として特定する。
【0051】
表示範囲特定部107は、ディスプレイ2上に表示する地図上の範囲を特定する。具体的には、表示範囲特定部107は、現在位置を中心として、バッテリーの残量に応じて表示範囲を設定する。例えば、表示範囲特定部107は、現在位置を中心として、バッテリーの残量に応じた同心円状の表示範囲を設定する。また、表示範囲特定部107は、さらに、充電施設特定部106により特定された充電施設を中心として、バッテリーの残量に応じた同心円状の表示範囲を設定する。表示範囲特定部107は、充電施設を中心とする同心円状の表示範囲が設定される際には、現在位置を中心とする同心円状の表示範囲と、充電施設を中心とする同心円状の表示範囲と、を一体的に結合させて、表示範囲を設定する。例えば、表示範囲特定部107は、当該表示範囲外の地図上の領域を暗転表示するように設定してもよい。
【0052】
スクロール処理部108は、スクロール指示特定部104により特定されたスクロール方向と、スクロール速度に基づき、地図をスクロール表示させる。その際、表示範囲特定部107が設定した表示範囲について、地図情報を表示させる。表示範囲外の領域については、地図情報を暗転または明度を下げて表示を制限するよう、出力処理部103に依頼する。
【0053】
上記した演算処理部1の各機能部、すなわち基本制御部101、入力受付部102、出力処理部103、スクロール指示特定部104、バッテリー情報取得部105、充電施設特定部106、表示範囲特定部107、スクロール処理部108は、CPU21が所定のプログラムを読み込み実行することにより構築される。そのため、RAM22には、各機能部の処理を実現するためのプログラムが記憶されている。
【0054】
なお、上記した各構成要素は、ナビゲーション装置100の構成を、理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。そのため、構成要素の分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。ナビゲーション装置100の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0055】
また、各機能部は、ハードウェア(ASIC、GPUなど)により構築されてもよい。また、各機能部の処理が一つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0056】
[動作の説明]次に、ナビゲーション装置100が実施するスクロール処理の動作について説明する。図6は、ナビゲーション装置100が実施するスクロール処理を示すフロー図である。このフローは、ナビゲーション装置100が稼働している状態において、所定の間隔(例えば、百分の一秒に一度)で開始される。
【0057】
まず、入力受付部102は、タッチパネル上のタッチを検出する(ステップS001)。具体的には、入力受付部102は、タッチパネル51上のいずれかの位置に対する入力を受け付ける。なお、タッチパネル上のタッチを検出しなかった場合には、検出を継続する。
【0058】
次に、入力受付部102は、タッチパネル上のタッチ位置を特定する(ステップS002)。具体的には、入力受付部102は、検出したタッチについて、タッチパネル51上の位置(XY座標)を特定する。
【0059】
スクロール指示特定部104は、入力受付部102が受け付けたタッチについて、タッチパネル中心からのタッチ位置の方向をスクロール方向として特定する(ステップS003)。具体的には、スクロール指示特定部104は、タッチパネル51上のタッチされた位置(XY座標)を入力受付部102から取得する。そして、スクロール指示特定部104は、入力受付部102が受け付けたタッチについて、タッチパネル51の中心位置からの方向(角度)を、スクロールする方向として特定する。
【0060】
次に、スクロール指示特定部104は、入力受付部102が受け付けたタッチについて、タッチ位置に相当する地図上の位置におけるバッテリー残量を予測する(ステップS004)。具体的には、スクロール指示特定部104は、タッチ位置について、地図上の位置(緯度経度)を基本制御部101から取得する。そして、スクロール指示特定部104は、当該地図上の位置に到着した状態におけるバッテリーの残量を予測する。なお、バッテリーの予測残量は、本実施形態においては、バッテリー情報取得部105から取得した現在位置における現在のバッテリーの残量に基づいて、スクロール指示特定部104が予測する。当該予測の処理においては、スクロール指示特定部104は、平均電力消費量に従ってバッテリーの残量が消費されるとした場合の直線距離での移動可能距離を求める。そして、スクロール指示特定部104は、当該地図上の位置までの直線距離での移動距離を移動可能距離から減ずることで、当該地図上のタッチ位置におけるバッテリーの残量を予測する。
【0061】
次に、スクロール指示特定部104は、タッチされた位置における予測されたバッテリー残量に応じて、スクロール移動量を特定する(ステップS005)。具体的には、スクロール指示特定部104は、スクロール量テーブル300を参照して、該当するバッテリーの予測残量に応じてスクロールする速度(中心位置の単位時間当たりの移動量)を特定する。すなわち、スクロール指示特定部104は、タッチされた位置におけるバッテリーの残量が所定以下である場合には、使用者が気づきやすいよう、スクロールさせる速度を遅くする、といえる。
【0062】
スクロール指示特定部104は、タッチされた位置における予測されたバッテリー残量が、所定量以下であるか否かを判定する(ステップS006)。具体的には、スクロール指示特定部104は、ステップS004にて予測されたバッテリー残量が、所定量(例えば、20%)以下であるか否かを判定する。所定量以下ではない場合(ステップS006にて「No」の場合)には、スクロール指示特定部104は、後述するステップS009に処理を進める。
【0063】
バッテリー残量が所定量以下である場合(ステップS006にて「Yes」の場合)には、充電施設特定部106は、タッチされた位置付近の急速充電施設を特定する(ステップS007)。具体的には、充電施設特定部106は、現在位置からタッチされた地図上の座標の位置へ到るためにバッテリーの充電が必要であると判定し、現在位置と、タッチされた座標と、を結ぶ直線を特定し、当該直線上の、バッテリー残量が所定量(例えば、20%)となる位置を特定する。すなわち、現在位置と受け付けた座標との間を結ぶ直線と、現在位置を中心とするバッテリー残量20%となる同心円と、の交点を求める。そして、求めた交点付近(例えば、所定距離の範囲内)に存在する、充電速度が「急速充電」の充電施設(例えば、交点からの直線距離が最も近い「急速充電」の施設)を探索し、充電するための施設として特定する。なお、充電施設特定部106は、「急速充電」の施設が当該交点から所定の範囲内に存在しない場合には、「一般充電」の施設を探索して充電するための施設として特定する。すなわち、充電施設特定部106は、所定のエネルギー補充能力を上回る設備を特定する。補充(充電)に係る時間は、なるべく短い方が時間のロスが少なく済むからである。
【0064】
そして、表示範囲特定部107は、特定した急速充電施設を基準とする移動可能範囲だけ、地図表示範囲を拡張する(ステップS008)。具体的には、表示範囲特定部107は、ステップS007にて特定した充電するための充電施設を始点として、満充電走行可能距離内の範囲を特定し、特定した範囲を表示範囲に追加するために、暗転等の表示の制限を解除する。
【0065】
次に、スクロール処理部108は、スクロール方向へ、スクロール移動量に基づいて地図をスクロールさせる(ステップS009)。具体的には、スクロール処理部108は、ステップS003で特定したスクロール方向へ、ステップS005にて特定したスクロール移動量に相当する量だけ、地図の表示位置を移動させて地図情報を構成する。
【0066】
そして、スクロール処理部108は、スクロール先の周辺の地図について、拡張した範囲で明度等を調整して地図表示を行うよう出力処理部103に指示する(ステップS010)。具体的には、スクロール処理部108は、ステップS009でスクロールさせた地図の表示範囲について、ステップS008で表示範囲の拡張が行われていれば当該拡張を反映させて地図表示を行うよう、出力処理部103に指示する。そして、スクロール処理部108は、ステップS001へ制御を戻す。
【0067】
以上が、スクロール処理の処理内容である。上記のスクロール処理を行う事によって、ナビゲーション装置100は、車両の状態、例えばバッテリーの予測残量に応じて、地図の表示を制御することが可能となる。すなわち、バッテリーの予測残量が比較的多い地域をスクロールする際には、スクロール速度を大きく設定して表示し、バッテリーの予測残量が比較的少ない地域をスクロールする際には、スクロール速度を小さく設定して表示することができるといえる。また、バッテリーの残量が不足する地域については、地図を暗転させる等の表示を行って、使用者にその旨を明示することができる。また、バッテリーの残量が不足する地域であっても、途中にある急速充電施設によりバッテリーの充電を行うことができる地域については、地図の暗転を行わず、通常通りの明度で地図情報を表示するといえる。
【0068】
図7は、スクロール処理のステップS001開始時点において表示されている画面500の例を示す図である。画面500には、地図と、自車位置を示す自車位置マーク501と、バッテリー残量が20%となると予測される範囲を示す同心円530と、バッテリー残量が0%となると予測される範囲を示す同心円531と、が表示されている。なお、画面500に表示されないが、充電施設510がバッテリー残量が20%となると予測される通常範囲を示す同心円530と、バッテリー残量が0%となると予測される要注意範囲を示す同心円531と、の間の地域に充電施設510が存在し、スクロール操作のタッチ検出位置は、タッチ検出位置520であるものとする。
【0069】
図8は、図7に示した画面に対するスクロール指示があった場合において、スクロール処理のステップS010において表示される画面600の例を示す図である。画面600には、地図と、自車位置を示す自車位置マーク601と、バッテリー残量が20%となると予測される拡張された範囲を示す通常領域620と、バッテリー残量が0%となると予測される拡張された範囲を示す要注意領域621と、が表示されている。なお、充電施設610は、図7における充電施設510に相当する施設であるが、これが明示的に表示される。
【0070】
以上、本発明の第一の実施形態について説明した。本発明の第一の実施形態によると、ナビゲーション装置100は、車両の状態、例えばバッテリーの予測残量に応じて、地図の表示を制御することできる。
【0071】
本発明は、上記第一の実施形態に制限されない。上記第一の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、上記第一の実施形態においては、バッテリーが不足すると考えられる領域ではスクロールの速度が遅くなるが、これに限られず、音声出力による注意喚起を併用するようにしてもよい。
【0072】
また、例えば、上記第一の実施形態においては、スクロール時の地図の表示を制限しているだけであるが、これに限らず、拡張された範囲内の地点に目的地が設定された場合には、基本制御部101は、当該目的地へ到る経路探索の処理において、あらためて、充電施設を経由する経路探索を行うようにしてもよい。このようにすることで、移動可能な距離および充電による移動可能距離の拡大を考慮した最適な経路探索を行うことができるようになる。
【0073】
また、例えば、上記第一の実施形態においては、充電施設が高速道路沿いにある、あるいは一般道沿いにある等のアクセス経路を特に配慮していないが、これに限られず、すでに推奨経路が存在する場合には、当該経路上にある施設を優先して特定するようにしてもよい。また、推奨経路が存在しない場合であっても、使用者が予め設定した道路種別(高速道路/一般道路の別等)の条件に応じて、充電施設を優先して特定するようにしてもよい。
【0074】
上記した実施形態の変形は、単独で適用されてもよいし、複数組み合わされて適用されるようにしてもよい。
【0075】
以上、本発明について、実施形態を中心に説明した。なお、上記の実施形態では、本発明をナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明はナビゲーション装置に限らず、移動体の経路案内を行う装置全般に適用することができる。また、上記の実施形態では、移動体の駆動エネルギーとして電力を想定しているが、これに限らず、他のエネルギーであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1・・・演算処理部、2・・・ディスプレイ、3・・・記憶装置、4・・・音声出入力装置、5・・・入力装置、6・・・ROM装置、7・・・車速センサ、8・・・ジャイロセンサ、9・・・GPS受信装置、10・・・FM多重放送受信装置、11・・・ビーコン受信装置、12・・・車載ネットワーク通信装置、21・・・CPU、22・・・RAM、23・・・ROM、24・・・I/F、25・・・バス、41・・・マイクロフォン、42・・・スピーカ、51・・・タッチパネル、52・・・ダイヤルスイッチ、100・・・ナビゲーション装置、101・・・基本制御部、102・・・入力受付部、103・・・出力処理部、104・・・出力処理部、105・・・バッテリー情報取得部、106・・・充電施設特定部、107・・・表示範囲特定部、108・・・スクロール処理部、200・・・リンクテーブル、300・・・スクロール量テーブル、400・・・充電施設テーブル400

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されるナビゲーション装置であって、
現在位置を特定する現在位置特定手段を備え、
前記現在位置に応じて移動可能な範囲である移動範囲を特定する移動可能範囲特定手段と、
前記移動範囲内に、前記移動範囲を拡張可能な所定の設備が存在する場合に、前記移動範囲を拡張する移動範囲拡張手段と、
前記移動範囲に応じて地図の表示範囲を設定し、前記移動範囲内の所定の位置の周囲の前記表示範囲内の地図を表示する地図表示手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、さらに、
前記移動可能範囲特定手段は、前記移動範囲を、前記移動体の駆動用エネルギーにより移動可能な範囲とする、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のナビゲーション装置であって、
前記移動範囲拡張手段は、前記移動体の駆動用エネルギーを補充する設備を、前記移動範囲を拡張可能な設備とする、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置であって、
前記移動範囲拡張手段は、前記移動体の駆動用エネルギーを補充する設備のうち、所定の補充能力を上回る設備を、前記移動範囲を拡張可能な設備とする、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、さらに、
前記移動範囲内の地図をスクロールさせるスクロール手段を備え、
前記移動体の駆動用エネルギーを補充する設備のうち、スクロールさせる方向にあり、前記所定の位置における前記駆動用エネルギーの残量が所定以下となる範囲内にある設備を、前記移動範囲を拡張可能な所定の設備とする、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、さらに、
前記移動範囲内の地図をスクロールさせるスクロール手段を備え、
前記移動範囲拡張手段は、前記スクロール手段が行うスクロール処理において、前記移動範囲を拡張可能な所定の設備が存在するか否かを判定し、存在する場合には前記移動範囲の拡張を行う、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のナビゲーション装置であって、
前記スクロール手段は、前記所定の位置における前記駆動用エネルギーの残量が所定以下である場合に、前記地図をスクロールさせる速度を遅くする、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、
前記移動範囲拡張手段は、前記移動範囲を拡張可能な設備の位置に基づき、前記移動体の駆動用エネルギーにより移動可能な範囲を拡張する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、さらに、
前記移動範囲拡張手段により拡張された範囲に含まれる地点が目的地として指定されると、前記現在位置から該目的地へ到る経路を探索する経路探索手段を備え、
前記経路探索手段は、前記移動範囲を拡張可能な設備を経由するよう前記経路を構成する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項10】
移動体に搭載されるナビゲーション装置の地図表示方法であって、
前記ナビゲーション装置は、
現在位置を特定する現在位置特定手段を備え、
前記現在位置に応じて移動可能な範囲である移動範囲を特定する移動可能範囲特定ステップと、
前記移動範囲内に、前記移動範囲を拡張可能な所定の設備が存在する場合に、前記移動範囲を拡張する移動範囲拡張ステップと、
前記移動範囲に応じて地図の表示範囲を設定し、前記移動範囲内の所定の位置の周囲の前記表示範囲内の地図を表示する地図表示ステップと、
を実施することを特徴とする地図表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132822(P2012−132822A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286072(P2010−286072)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】