ナビゲーション装置およびナビゲーション装置用のプログラム
【課題】ナビゲーション装置において、目的地を推定して当該目的地までの経路を算出し、その経路の表示を行わない場合であっても、ユーザにとって有益な情報を提示する技術を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、車両の走行開始から走行終了までの走行時における、曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路、および目的地(走行終了地点)を、走行の度に走行履歴データとして記録する。そして、ユーザによって目的地が設定されずに走行するときには、現在の走行における曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路と、走行履歴データの曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路との一致度に基づいて、目的地を推定して目的地候補を抽出し(ステップ230)、それら抽出された目的地候補までの経路表示も案内も行わないまま、目的地候補までの到着予想時刻等を、画像表示装置に表示させる(ステップ250)。
【解決手段】ナビゲーション装置は、車両の走行開始から走行終了までの走行時における、曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路、および目的地(走行終了地点)を、走行の度に走行履歴データとして記録する。そして、ユーザによって目的地が設定されずに走行するときには、現在の走行における曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路と、走行履歴データの曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路との一致度に基づいて、目的地を推定して目的地候補を抽出し(ステップ230)、それら抽出された目的地候補までの経路表示も案内も行わないまま、目的地候補までの到着予想時刻等を、画像表示装置に表示させる(ステップ250)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置およびナビゲーション装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置のユーザは、よく知っている目的地に対しては目的地設定をしない場合がある。そのような場合にも、ユーザの目的地を推定し、目的地までの経路を表示する技術が、特許文献1に記載されている。また、特許文献1には、ユーザはその目的地までの経路をよく知っていることが多いと考えられるので、目的地や経路は必ずしも表示する必要がない旨も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、目的地への経路の表示は抑制するとしても、ユーザにとって表示された方が便利な情報もある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、目的地を推定して当該目的地までの経路を算出し、その経路の表示を行わない場合であっても、ユーザにとって有益な情報を提示する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)と、前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)と、を備えたナビゲーション装置である。
【0007】
このように、ナビゲーション装置が、抽出された目的地候補への経路表示を行わないまま、当該目的地候補までの到着予想時刻(または残り時間)を画像表示装置に表示させる。
【0008】
ユーザは普段行く目的地は設定や案内されることへの煩わしさから目的地設定を行わないケースがほとんどである。しかしながら、あとどれくらいで目的地に到着するのか知りたいことがよくある。
【0009】
本発明のナビゲーション装置は、ユーザが目的地を設定していないにも関わらず移動を開始しているという、知っている道を走っている状態を検出して、目的地候補を推定し、当該目的地候補の到着予想時刻を表示することで、当該目的地候補への経路の表示を行わない場合であっても、ユーザにとって有益な情報を提示することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記表示制御手段(250)は、前記推定手段(230)が複数の目的地候補を抽出した場合、前記複数の目的地候補のうち1つへの到着予想時刻を前記画像表示装置に表示させ、ユーザが操作部を用いて所定の操作を行ったことに基づいて、前記1つの目的地候補への到着予想時刻に代えて、前記複数の目的地候補のうち他の目的地候補への到着予想時刻を、前記画像表示装置に表示させることを特徴とする。このようになっていることで、ユーザに利便性の高い目的地候補表示を行うことができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、ナビゲーション装置に用いられるプログラムであって、ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)、および、前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)、として、前記ナビゲーション装置の制御回路を機能させるプログラムである。このように、本発明の特徴は、プログラムとして実現することもできる。
【0012】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置1の構成図である。
【図2】制御回路が実行する走行履歴保存処理のフローチャートである。
【図3】走行履歴データの構成を示す図である。
【図4】目的地推定表示処理のフローチャートである。
【図5】目的地候補への到着予想時刻の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、車両に搭載され、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、交通情報受信機15、地図データ取得部16、および制御回路17を有している。
【0015】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路17に出力する。
【0016】
画像表示装置12は、制御回路17から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0017】
操作部13は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置12の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路17に出力する。
【0018】
交通情報受信機15は、FMラジオ放送局または道路沿いに設置された路上機から無線送信された各地点の天候情報、渋滞情報、交通規制情報等を受信して制御回路17に出力する無線受信機である。
【0019】
地図データ取得部16は、DVD、CD、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出し(および可能ならば書き込み)を行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路17が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0020】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、複数のノード(交差点、分岐点等)のそれぞれについて、個々のノードを識別するためのノードID、ノードの位置情報、ノードの名称(交差点名称、インターチェンジ名称等)、およびノードの種別情報を含んでおり、また、複数のリンク(ノード間を繋ぐ道路区間)のそれぞれについて、個々のリンクを識別するためのリンクID、リンクの位置情報、ノードの名称(国道名称、高速道路名称、県道名称等)、およびノードの種別情報を含んでおり、また、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称の情報、所在位置範囲の情報、土地地番の情報、施設種類情の情報等を示すデータを有している。
【0021】
制御回路(コンピュータに相当する)17は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部16から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部16から情報を読み出し、RAM、フラッシュメモリ、および(可能であれば)地図データ取得部16の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、および交通情報受信機15と信号の授受を行う。
【0022】
制御回路17がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、地図表示処理、誘導経路算出処理、経路案内処理等がある。
【0023】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。以降で特定する車両の現在位置は、この現在位置特定処理によって特定されるものとする。
【0024】
地図表示処理は、車両の現在位置の周辺等の特定の領域の地図を、画像表示装置12に表示させる処理である。この際、地図表示のために用いる情報は、地図データから取得する。
【0025】
誘導経路算出処理は、操作部13からユーザによる目的地の設定を受け付け、設定された目的地をRAM中に設定目的地データとして記録し、現在位置から当該設定目的地データ中の目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。なお、設定目的地データは、操作部13に対してユーザが目的地設定をキャンセルする旨の操作をした場合、車両が設定目的地データ中の目的地に到達した場合、車両用ナビゲーション装置1の電源がオフになった場合等に、RAM中から消去される。
【0026】
経路案内処理は、誘導経路上の右左折交差点等の案内ポイントの手前に自車両が到達したときに、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させ、当該案内ポイントの拡大図を画像表示装置12に表示させることで、誘導経路に沿った車両の運転を案内する処理である。
【0027】
制御回路17は、これら処理に加え、所定のプログラムを実行することで、走行履歴保存処理および目的地推定表示処理を行うようになっている。
【0028】
まず、走行履歴保存処理について説明する。走行履歴保存処理は、車両の出発地から目的地までの走行時における各種条件(曜日、時間、天気、途中経路)を、当該目的地と関連付けて蓄積する処理である。図2に、この走行履歴保存処理のフローチャートを示す。
【0029】
制御回路17は、車両用ナビゲーション装置1の作動開始と共に図2の処理を実行し始め、まずステップ110で、車両が走行を開始したか否かを判定する。具体的には、車両の始動スイッチ(すなわち、イグニッションスイッチ、または主電源スイッチ)がオンとなったときに、車両が走行を開始したと判定し、そうでない場合に、車両が走行を開始していないと判定する。車両が走行を開始していない場合は、再度ステップ110を実行し、走行を開始したと判定した場合は、続いてステップ120以降を実行する。
【0030】
走行開始後のステップ120では、車両が走行位置記録ポイントに到達するまで待ち、走行位置記録ポイントに到達した時点で、その時点の車両の現在位置に相当するノードID(または現在位置の緯度および経度)をRAMに記録する。車両が走行位置記録ポイントに到達したか否かは、車両が地図データ中のいずれかのノードに到達したか否かで判定する。この場合、各ノードが走行位置記録ポイントに相当する。
【0031】
続いてステップ130では、車両の走行が終了したか否かを判定する。具体的には、車両の始動スイッチがオフとなったときに、車両が走行を終了したと判定し、そうでない場合に、車両が走行を終了していないと判定する。車両が走行を終了していない場合は、再度ステップ120を実行する。
【0032】
したがって、車両が走行を開始してから終了するまで、制御回路17は、車両が走行位置記録ポイントに到達する度に、その時点の車両の現在位置をRAMに記録する。したがって、RAM中には、車両が通過した複数の走行位置記録ポイントが、走行順に蓄積されていく。
【0033】
そして、ステップ130で走行を終了したと判定した場合は、続いてステップ140で、走行履歴データをフラッシュメモリまたは地図データ取得部16の記憶媒体に記録する。図3に、ここで記録する走行履歴データの構成を示す。
【0034】
この図に示す通り、走行履歴データには、曜日、時間帯、天候、途中経路、目的地という、5つの項目の情報を含める。曜日、時間帯の項目の情報としては、それぞれ、ステップ110で走行開始したと判定した時点(または、ステップ130で走行終了したと判定した時点)の属する曜日、時間帯の情報を採用する。ここで、時間帯とは、1日の期間を複数個(例えば6個)に分割した結果できる各期間(例えば、18時から21時まで)をいう。
【0035】
天候の項目の情報としては、ステップ110で走行開始したと判定した時点(または、ステップ130で走行終了したと判定した時点)の、車両の現在位置における天候の情報を採用する。この情報は、交通情報受信機15から取得する。途中経路の情報としては、ステップ110で走行開始したと判定してからステップ130で走行終了したと判定するまでにRAMに蓄積された複数の走行位置記録ポイントの情報を採用する。目的地の情報としては、ステップ130で走行終了したと判定した時点における車両の現在位置を採用する。ステップ140の終了後は、RAMに蓄積された複数の走行位置記録ポイントをすべて削除し、ステップ110に戻り、次の走行開始を待つ。
【0036】
このような制御回路が実行する走行履歴保存処理を実行することで、車両用ナビゲーション装置1は、車両が走行を開始して終了する度に、走行開始から走行終了までの走行時における曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路を、その走行における目的地(すなわち走行終了地点)と関連付けて、走行履歴データとしてフラッシュメモリまたは地図データ取得部16の記憶媒体に記録する。
【0037】
次に、目的地推定表示処理について説明する。目的地推定表示処理は、走行履歴保存処理によって記録された複数の走行履歴データに基づいて、ユーザの目的地設定操作を受けることなく、自発的に目的地を推定し、推定した目的地への到着予想時刻をユーザに通知する処理である。図4に、この目的地推定表示処理のフローチャートを示す。
【0038】
制御回路17は、車両用ナビゲーション装置1の作動開始と共に、図4の処理を実行し始める。したがって、制御回路17は、上述した走行履歴保存処理と同時に、この目的地推定表示処理を行うことになる。
【0039】
この目的地推定表示処理において制御回路17は、まずステップ210で、車両が走行を開始したか否かを、図2のステップ110と同様に判定し、走行し始めていない場合は再度ステップ210を実行し、走行し始めた場合はステップ220を実行する。
【0040】
ステップ220では、ユーザによって目的地設定がされているか否かを、RAM中に設定目的地データが記録されているか否かで判定する。目的地設定がされていれば再度ステップ210に戻り、目的地設定がされていなければ、続いてステップ230に進む。
【0041】
ステップ230では、走行履歴保存処理によって保存された走行履歴データに基づいて、車両の目的地を推定する。
【0042】
具体的には、ステップ210で走行開始と判定した時点(または現時点)の属する曜日および時間帯を特定し、また、当該時点における車両位置の天候を特定する。これら特定した曜日、時間帯、天候を、現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候という。
【0043】
また、ステップ210で走行開始と判定した時点から現在までに車両が通過した走行位置記録ポイントを、現在の途中経路として特定する。この現在の途中経路としては、その時点で走行履歴保存処理によってRAMに蓄積されている複数の走行位置記録ポイントを使用する。
【0044】
そして、これら特定した現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候、現在の途中経路と、フラッシュメモリまたは地図データ取得部16の記憶媒体に記録された各走行履歴データとを比較し、一致度Pを算出する。
【0045】
現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候、現在の途中経路と1つの走行履歴データとの一致度Pは、以下のような式で算出する。
【0046】
P=k1×T1+k2×T2+k3×T3+k4×T4
ここで、k1、k2、k3、k4は、所定の係数である。またT1の値は、現在走行曜日と、当該1つの走行履歴データ中の曜日とが一致すれば1とし、一致しなければゼロとする。またT2の値は、現在走行時間帯と、当該1つの走行履歴データ中の時間帯とが一致すれば1とし、一致しなければゼロとする。またT3の値は、現在走行時天候と、当該1つの走行履歴データ中の天候とが一致すれば1とし、一致しなければゼロとする。またT4の値は、現在の途中経路中の走行位置記録ポイントと、当該1つの走行履歴データ中の複数の走行位置記録ポイントとを比較したときに一致するポイントの数とする。
【0047】
したがって、係数k1は、曜日の一致に割り当てられる重み点数に相当し、係数k2は、時間帯の一致に割り当てられる重み点数に相当し、係数k3は、天候の一致に割り当てられる重み点数に相当し、係数k4は、1つの走行位置記録ポイントの一致に割り当てられる重み点数に相当する。本実施形態では、各係数の値として、k1=100、k2=100、k3=20、k4=3を採用する。
【0048】
そして、各走行履歴データについて算出した一致度Pに基づいて、一致度Pが基準値Pt(例えば、250から280までの範囲内の特定の値)よりも高い走行履歴データ中の目的地を、目的地候補として抽出する。このようにして、目的地推定が終了する。なお、ここで抽出される目的地候補の数は、1つとなる場合もあれば、複数となる場合もあれば、ゼロとなる場合もある。
【0049】
続いてステップ240では、ステップ230で採用された目的地候補のそれぞれについて、現在位置から当該目的地候補までの経路を算出し、算出した経路に沿った現在位置から当該目的地候補までの走行時間を算出し、その走行時間に基づいて、当該目的地候補への到着予想時刻を算出する。
【0050】
なお、ここで算出する現在位置から当該目的地候補までの経路は、当該目的地候補を抽出した走行履歴データ中の途中経路とは無関係に、ダイクストラ法等を用いて算出してもよいし、あるいは、当該途中経路を利用して、現在位置から当該目的地候補までの経路を算出してもよい。
【0051】
当該途中経路を利用する方法としては、例えば、現在位置が当該途中経路上にあれば(すなわち、途中経路上のノード上またはそれらノードを両端に有するリンク上にあれば)、当該途中経路のうち、現在位置から目的地までの部分を、現在位置から当該目的地候補までの経路としてもよい。また、現在位置が当該途中経路上になければ、現在位置から最も近い途中経路上の位置までの第1経路を、ダイクストラ法等を用いて算出し、当該途中経路のうち、第1経路の端点から目的地までの部分を第2経路とし、これら第1経路と第2経路を繋げたものを、現在位置から当該目的地候補までの経路としてもよい。
【0052】
また、算出した経路に沿った現在位置から当該目的地候補までの走行時間としては、例えば、車両が所定の一定速度(例えば時速30キロメートル)で走行すると仮定して算出するようになっていてもよい。
【0053】
続いてステップ250では、ステップ240で算出した各目的地候補への到着予想時刻のうち、一致度Pが最も高い1つを画像表示装置12に表示させる。
【0054】
図5に、目的地候補への到着予想時刻の表示例を示す。この図の例では、画像表示装置12の表示画面20上に、自車位置マーク21を含む地図が表示され、その地図に、到着予想時刻表示22が重畳されている。
【0055】
この到着予想時刻表示22は、地図表示の邪魔にならないよう、表示画面20の中央部から離れて端部近くに配置される。そして到着予想時刻表示22は、当該目的地候補の名称と、当該目的地候補への到着予想時刻と、上記経路に沿った現在位置から当該目的地候補までの残り距離と、を表示するようになっている。
【0056】
なお、当該目的地候補の名称については、地図データの施設データ中に、当該目的地候補の位置を所在範囲に含む施設があれば、当該施設の名称を当該目的地候補の名称として採用する。また、地図データの施設データ中に、当該目的地候補の位置を所在範囲に含む施設がなければ、当該目的地候補の位置の緯度および経度を当該目的地候補の名称として表示してもよい。
【0057】
あるいは、地図データの施設データ中に、当該目的地候補の位置を所在範囲に含む施設がなければ、当該目的地候補を抽出した走行履歴データに基づいて、当該走行履歴データ中の情報のうち、現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候、現在の途中経路中の走行位置記録ポイントと一致した項目の情報を用いて、当該目的地候補の名称を作成し、その作成した名称を表示するようになっていてもよい。
【0058】
例えば、当該走行履歴中の曜日および時間帯の項目の情報が、現在走行曜日および現在走行時間帯と一致していれば、「○曜日の△時からX時に行ったことのある場所」という文字列を作成し、当該文字列を、当該目的地候補の名称として採用して表示してもよい。
【0059】
なお、これらのように作成した文字列と、当該目的地候補の位置の緯度および経度の両方を含めたものを、当該目的地候補の名称として採用して表示してもよい。
【0060】
また、到着予想時刻表示22中の、当該目的地候補への到着予想時刻の表示は、アナログ時計形式の表示とデジタル時計形式の表示の両方を含むようになっている。
【0061】
また、到着予想時刻表示22には、さらに、ユーザが操作部13を用いて選択可能に表示された次候補ボタン22a、削除ボタン22b、および確定ボタン22cが表示されている。
【0062】
次候補ボタン22aは、表示対象の目的地候補をトグルするためのボタンである。ユーザが操作部13を用いて次候補ボタン22aを選択するための所定の操作を行うと、制御回路17は、現在表示している目的地候補に代えて、当該目的地候補の次に一致度Pが高い目的地候補の名称、到着予想時刻、残り距離を、到着予想時刻表示22中に表示させる。
【0063】
ただし、現在表示している目的地候補が最も一致度Pの低い目的地候補である場合、制御回路17は、現在表示している目的地候補に代えて、一致度Pが最も高い目的地候補の名称、到着予想時刻、残り距離を、到着予想時刻表示22中に表示させる。このようにすることで、ユーザによる次候補ボタン22aの選択に応じて、目的地候補が一致度Pの順に1つずつ巡回的に表示される。
【0064】
削除ボタン22bは、到着予想時刻表示22を消去するためのボタンである。ユーザが操作部13を用いて削除ボタン22bを選択するための所定の操作を行うと、制御回路17は、到着予想時刻表示22の表示を消去する。
【0065】
確定ボタン22cは、現在表示されている目的地候補を目的地として確定するためのボタンである。ユーザが操作部13を用いて確定ボタン22cを選択するための所定の操作を行うと、制御回路17は、目的地推定表示処理を終了し、その後、現在表示されている目的地候補を目的地として確定し、現在位置から当該目的地までの経路を算出し、画像表示装置12を制御して当該経路を地図中に表示させ、当該経路に沿った右左折の案内を開始する。
【0066】
ステップ250に続いては、ステップ260で、図2のステップ130と同様の方法で、車両の走行が終了したか否かを判定する。車両が走行を終了していない場合は、処理を再度ステップ230に戻り、目的地を再度推定する。このようにすることで、車両の進行と共に、目的地推定が繰り返し行われ、その都度抽出された最新の目的地候補を、ユーザに提示することができる。ステップ260で走行終了したと判定した場合は、目的地推定表示処理を終了する。
【0067】
ここで、目的地推定処理の実行時の車両用ナビゲーション装置1の作動例を示す。この例においては、一致度Pの算出式において、係数k1、k2、k3、k4は、それぞれ100、100、20、3とし、閾値Ptは、250とする。
【0068】
まず、目的地の設定がされていない状況で車両が走行し始めると、制御回路17は目的地推定を繰り返し行い、それによって抽出された目的地候補の名称、到着予想時刻、残り距離を表示するようになる(ステップ230〜260参照)。
【0069】
車両が走行を開始した直後は、RAMに記録される現在の途中経路中の走行位置記録ポイントの数は少ないので、ステップ230で算出される各走行履歴データの一致度Pにおいて、k4×T4の値は、k1×T1+k2×T2+k3×T3の値に比べて小さい。したがって、走行時の曜日、時間帯、天候が現在の走行と一致するか否かが、走行履歴データの一致度Pにより大きく寄与する。
【0070】
しかし、走行時の曜日、時間帯、天候が現在の走行と一致したとしても、k1×T1+k2×T2+k3×T3の値は220なので、閾値Pt=250に届かない。したがって、走行開始後暫くは、抽出される目的地候補の数はゼロであり、従って、目的地候補が画像表示装置12に表示されることはない。
【0071】
走行開始から車両がある程度(例えば、走行位置記録ポイント30個分)走行すると、k4×T4の項がある程度大きくなった結果、閾値Pt=250を超える走行履歴データも現れるようになる。ただし、k4×T4の項単独では、閾値Pt=250に届かないので、走行時の曜日、時間帯が現在の走行と一致する走行履歴データのいずれかから、目的地候補が抽出されることになる。例えば、現在が平日の朝6時〜9時の時間帯である場合、その曜日およびその時間帯によく行く勤務先施設と同じ経路を走行位置記録ポイントを17個分辿ると、当該勤務施設を目的地とする走行履歴の一致度が閾値Ptを超え、当該勤務施設への到着予想時刻が表示されるようになる。
【0072】
走行開始から車両が十分に(例えば、走行位置記録ポイント100個分)走行すると、k4×T4の項単独でも閾値Pt=250を超える走行履歴データが現れ得るようになる。
【0073】
このような状況では、例えば、ユーザが土曜日、日曜日の午後に行ったことのある大型商業施設に、偶々平日の朝6時〜9時に向かうような場合であっても、
走行距離が短い間は、平日の当該時間帯によく行く勤務先施設の到着予想時刻が表示されるが、走行距離がある距離を超えると、当該大型商業施設を目的地とする走行履歴の一致度が、勤務先施設を目的地とする走行履歴の一致度よりも高くなり、到着予想時刻等が優先的に表示される目的地が、勤務先施設から当該大型商業施設に切り替わる。
【0074】
以上説明した通り、本実施形態の車両用ナビゲーション装置1は、車両の走行開始から走行終了までの走行時における、曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路、および目的地(走行終了地点)を、走行の度に走行履歴データとして記録する。
【0075】
そして、ユーザによって目的地が設定されずに走行するときには、現在の走行と走行履歴データとの一致度Pに基づいて、目的地を推定して目的地候補を抽出し、それら抽出された目的地候補までの経路表示も案内(音声案内、交差点拡大表示等)も行わないまま、目的地候補までの到着予想時刻等を、画像表示装置12に表示させる。
【0076】
ユーザは普段行く目的地は設定や案内されることへの煩わしさから目的地設定を行わないケースがほとんどである。しかしながら、あとどれくらいで到着するのか知りたいことがよくある。
【0077】
本実施形態では、ナビゲーション装置1が、車両の走行パターンを記憶する機能と、目的地までの経路計算ならびに目的地到着予想時刻を計算する機能を併せ持ち、過去に言ったことのある目的地に対しては、ユーザが目的地設定操作をしなくても、到着予想時刻をユーザへ提供する。
【0078】
このように、本実施形態の車両用ナビゲーション装置1は、ユーザが目的地を設定していないにも関わらず運転を開始しているという、知っている道を走っている状態を検出して、過去の走行履歴データから推定される目的地の到着予想時刻を表示することで、当該目的地への経路の表示を行わない場合であっても、ユーザにとって有益な情報を提示することができる。
【0079】
なお、上記実施形態において、制御回路17がステップ230を実行することで推定手段として機能し、ステップ250を実行することで表示制御手段として機能する。
【0080】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0081】
例えば、上記実施形態においては、図4のステップ250では、ステップ240で算出した各目的地候補のうち、一致度Pが最も高い1つについての到着予想時刻を画像表示装置12に表示させる。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、目的地候補のうち、一致度Pが最も高いものから上位5位までの目的地候補名称および到着予想時刻を、同時に画像表示装置12に表示させるようになっていてもよい。その場合、表示形式としては、例えばリスト表示形式を採用してもよい。
【0082】
その際、同時に表示している目的地候補の到着予想時刻のそれぞれに付随して、削除ボタンを表示させるようになっていてもよい。この場合、ユーザが操作部13を用いて、ある目的地候補の到着予想時刻に付随して表示された削除ボタンを選択すると、制御回路17は、当該目的地候補の到着予想時刻の表示を消去し、その代わりに、次に一致度の高い当該目的地候補の到着予想時刻を表示させるようになっていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態において、車両用ナビゲーション装置1は、車両の走行開始から走行終了までの走行時における、曜日、時間帯、天候、途中経路、および目的地(走行終了地点)を、走行の度に走行履歴データとして記録するようになっているが、記録する走行履歴データとして、これら以外にも、走行開始地点から目的地(走行終了地点)までの方角(東西南北についての方向)を含めるようになっていてもよい。
【0084】
その場合、車両用ナビゲーション装置1は、ユーザによって目的地が設定されずに走行するときには、現在の走行と走行履歴データとの一致度Pの算出において、P=k1×T1+k2×T2+k3×T3+k4×T4という式を採用してもよい。このときT2の値は、現在の走行における走行開始地点から現在位置までの方角と、当該1つの走行履歴データ中の方角との差が所定の誤差以内であれば1とし、所定の誤差以上に離れていればゼロとする。
【0085】
また、図2のステップ120では、車両用ナビゲーション装置1は、車両が走行位置記録かのノードに到達したか否かで判定している。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、車両が走行位置記録ポイントに到達したか否かは、車両が所定距離(例えば50メートル)走行したか否かで判定してもよい。この場合、途中経路として記録する走行位置記録ポイントは、当該走行位置記録ポイントの属するノードIDであってもよいし、当該走行位置記録ポイントの位置座標であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、目的地を推定するときに使用する情報項目として、現在の移動時における曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路を用いているが、これら情報項目のうちの1つのみ(あるいは任意の2つまたは3つ)について、各移動履歴データと比較し、それらの一致度Pに基づいて、目的地候補を推定してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、目的地を推定するとき、現在の移動時における曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路を、各移動履歴データの曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路と比較し、それらの一致度Pに基づいて、目的地候補を推定しているが、目的地を推定する方法は、このような方法に限るわけではない。
【0088】
例えば、特許文献1に記載のように、ユーザ情報(年齢、職業)と、短期的に変化する状況情報(時間帯、曜日、同乗者の有無)とを、ベイジアンネットモデルに入力して、各目的の尤度を決定し、さらに、目的および状況情報をベイジアンネットモデルに入力して各目的地の尤度を決定し、決定した各目的地の尤度に基づいて、目的地候補を設定するようになっていてもよい。
【0089】
あるいはもっと単純に、地図データに基づいて、自車両の現在位置から所定距離内(例えば、20km)以内の所定の大規模施設(駅、大型商業施設、大型行楽地等)を、目的地候補とするようになっていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態において、目的地候補までの到着予想時刻の表示を、当該到着予想時刻までの現在からの残り時間に置き換えても、同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、上記の実施形態において、制御回路17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【0092】
また、本発明のナビゲーション装置は、必ずしも車載用のものなくともよい。例えば、ナビゲーション装置は、ユーザが携帯するタイプのものであってもよい。ナビゲーション装置が車両に搭載されずに用いられる場合は、上記実施形態における「走行」は、「移動」に置き換えればよい。その際、移動開始したか否かは、ユーザによる移動開始操作があったか否かで判定すればよく、また、移動終了したか否かは、ユーザによる移動終了操作があったか否かで判定すればよい。
【符号の説明】
【0093】
1 車両用ナビゲーション装置
11 位置検出器
12 画像表示装置
13 操作部
14 スピーカ
15 交通情報受信機
16 地図データ取得部
17 制御回路
20 表示画面
21 自車位置マーク
22 予想到着時刻表示
22a 次候補ボタン
22b 削除ボタン
22c 確定ボタン
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置およびナビゲーション装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置のユーザは、よく知っている目的地に対しては目的地設定をしない場合がある。そのような場合にも、ユーザの目的地を推定し、目的地までの経路を表示する技術が、特許文献1に記載されている。また、特許文献1には、ユーザはその目的地までの経路をよく知っていることが多いと考えられるので、目的地や経路は必ずしも表示する必要がない旨も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、目的地への経路の表示は抑制するとしても、ユーザにとって表示された方が便利な情報もある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、目的地を推定して当該目的地までの経路を算出し、その経路の表示を行わない場合であっても、ユーザにとって有益な情報を提示する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)と、前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)と、を備えたナビゲーション装置である。
【0007】
このように、ナビゲーション装置が、抽出された目的地候補への経路表示を行わないまま、当該目的地候補までの到着予想時刻(または残り時間)を画像表示装置に表示させる。
【0008】
ユーザは普段行く目的地は設定や案内されることへの煩わしさから目的地設定を行わないケースがほとんどである。しかしながら、あとどれくらいで目的地に到着するのか知りたいことがよくある。
【0009】
本発明のナビゲーション装置は、ユーザが目的地を設定していないにも関わらず移動を開始しているという、知っている道を走っている状態を検出して、目的地候補を推定し、当該目的地候補の到着予想時刻を表示することで、当該目的地候補への経路の表示を行わない場合であっても、ユーザにとって有益な情報を提示することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記表示制御手段(250)は、前記推定手段(230)が複数の目的地候補を抽出した場合、前記複数の目的地候補のうち1つへの到着予想時刻を前記画像表示装置に表示させ、ユーザが操作部を用いて所定の操作を行ったことに基づいて、前記1つの目的地候補への到着予想時刻に代えて、前記複数の目的地候補のうち他の目的地候補への到着予想時刻を、前記画像表示装置に表示させることを特徴とする。このようになっていることで、ユーザに利便性の高い目的地候補表示を行うことができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、ナビゲーション装置に用いられるプログラムであって、ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)、および、前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)、として、前記ナビゲーション装置の制御回路を機能させるプログラムである。このように、本発明の特徴は、プログラムとして実現することもできる。
【0012】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置1の構成図である。
【図2】制御回路が実行する走行履歴保存処理のフローチャートである。
【図3】走行履歴データの構成を示す図である。
【図4】目的地推定表示処理のフローチャートである。
【図5】目的地候補への到着予想時刻の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、車両に搭載され、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、交通情報受信機15、地図データ取得部16、および制御回路17を有している。
【0015】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路17に出力する。
【0016】
画像表示装置12は、制御回路17から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0017】
操作部13は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置12の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路17に出力する。
【0018】
交通情報受信機15は、FMラジオ放送局または道路沿いに設置された路上機から無線送信された各地点の天候情報、渋滞情報、交通規制情報等を受信して制御回路17に出力する無線受信機である。
【0019】
地図データ取得部16は、DVD、CD、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出し(および可能ならば書き込み)を行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路17が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0020】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、複数のノード(交差点、分岐点等)のそれぞれについて、個々のノードを識別するためのノードID、ノードの位置情報、ノードの名称(交差点名称、インターチェンジ名称等)、およびノードの種別情報を含んでおり、また、複数のリンク(ノード間を繋ぐ道路区間)のそれぞれについて、個々のリンクを識別するためのリンクID、リンクの位置情報、ノードの名称(国道名称、高速道路名称、県道名称等)、およびノードの種別情報を含んでおり、また、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称の情報、所在位置範囲の情報、土地地番の情報、施設種類情の情報等を示すデータを有している。
【0021】
制御回路(コンピュータに相当する)17は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部16から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部16から情報を読み出し、RAM、フラッシュメモリ、および(可能であれば)地図データ取得部16の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、および交通情報受信機15と信号の授受を行う。
【0022】
制御回路17がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、地図表示処理、誘導経路算出処理、経路案内処理等がある。
【0023】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。以降で特定する車両の現在位置は、この現在位置特定処理によって特定されるものとする。
【0024】
地図表示処理は、車両の現在位置の周辺等の特定の領域の地図を、画像表示装置12に表示させる処理である。この際、地図表示のために用いる情報は、地図データから取得する。
【0025】
誘導経路算出処理は、操作部13からユーザによる目的地の設定を受け付け、設定された目的地をRAM中に設定目的地データとして記録し、現在位置から当該設定目的地データ中の目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。なお、設定目的地データは、操作部13に対してユーザが目的地設定をキャンセルする旨の操作をした場合、車両が設定目的地データ中の目的地に到達した場合、車両用ナビゲーション装置1の電源がオフになった場合等に、RAM中から消去される。
【0026】
経路案内処理は、誘導経路上の右左折交差点等の案内ポイントの手前に自車両が到達したときに、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させ、当該案内ポイントの拡大図を画像表示装置12に表示させることで、誘導経路に沿った車両の運転を案内する処理である。
【0027】
制御回路17は、これら処理に加え、所定のプログラムを実行することで、走行履歴保存処理および目的地推定表示処理を行うようになっている。
【0028】
まず、走行履歴保存処理について説明する。走行履歴保存処理は、車両の出発地から目的地までの走行時における各種条件(曜日、時間、天気、途中経路)を、当該目的地と関連付けて蓄積する処理である。図2に、この走行履歴保存処理のフローチャートを示す。
【0029】
制御回路17は、車両用ナビゲーション装置1の作動開始と共に図2の処理を実行し始め、まずステップ110で、車両が走行を開始したか否かを判定する。具体的には、車両の始動スイッチ(すなわち、イグニッションスイッチ、または主電源スイッチ)がオンとなったときに、車両が走行を開始したと判定し、そうでない場合に、車両が走行を開始していないと判定する。車両が走行を開始していない場合は、再度ステップ110を実行し、走行を開始したと判定した場合は、続いてステップ120以降を実行する。
【0030】
走行開始後のステップ120では、車両が走行位置記録ポイントに到達するまで待ち、走行位置記録ポイントに到達した時点で、その時点の車両の現在位置に相当するノードID(または現在位置の緯度および経度)をRAMに記録する。車両が走行位置記録ポイントに到達したか否かは、車両が地図データ中のいずれかのノードに到達したか否かで判定する。この場合、各ノードが走行位置記録ポイントに相当する。
【0031】
続いてステップ130では、車両の走行が終了したか否かを判定する。具体的には、車両の始動スイッチがオフとなったときに、車両が走行を終了したと判定し、そうでない場合に、車両が走行を終了していないと判定する。車両が走行を終了していない場合は、再度ステップ120を実行する。
【0032】
したがって、車両が走行を開始してから終了するまで、制御回路17は、車両が走行位置記録ポイントに到達する度に、その時点の車両の現在位置をRAMに記録する。したがって、RAM中には、車両が通過した複数の走行位置記録ポイントが、走行順に蓄積されていく。
【0033】
そして、ステップ130で走行を終了したと判定した場合は、続いてステップ140で、走行履歴データをフラッシュメモリまたは地図データ取得部16の記憶媒体に記録する。図3に、ここで記録する走行履歴データの構成を示す。
【0034】
この図に示す通り、走行履歴データには、曜日、時間帯、天候、途中経路、目的地という、5つの項目の情報を含める。曜日、時間帯の項目の情報としては、それぞれ、ステップ110で走行開始したと判定した時点(または、ステップ130で走行終了したと判定した時点)の属する曜日、時間帯の情報を採用する。ここで、時間帯とは、1日の期間を複数個(例えば6個)に分割した結果できる各期間(例えば、18時から21時まで)をいう。
【0035】
天候の項目の情報としては、ステップ110で走行開始したと判定した時点(または、ステップ130で走行終了したと判定した時点)の、車両の現在位置における天候の情報を採用する。この情報は、交通情報受信機15から取得する。途中経路の情報としては、ステップ110で走行開始したと判定してからステップ130で走行終了したと判定するまでにRAMに蓄積された複数の走行位置記録ポイントの情報を採用する。目的地の情報としては、ステップ130で走行終了したと判定した時点における車両の現在位置を採用する。ステップ140の終了後は、RAMに蓄積された複数の走行位置記録ポイントをすべて削除し、ステップ110に戻り、次の走行開始を待つ。
【0036】
このような制御回路が実行する走行履歴保存処理を実行することで、車両用ナビゲーション装置1は、車両が走行を開始して終了する度に、走行開始から走行終了までの走行時における曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路を、その走行における目的地(すなわち走行終了地点)と関連付けて、走行履歴データとしてフラッシュメモリまたは地図データ取得部16の記憶媒体に記録する。
【0037】
次に、目的地推定表示処理について説明する。目的地推定表示処理は、走行履歴保存処理によって記録された複数の走行履歴データに基づいて、ユーザの目的地設定操作を受けることなく、自発的に目的地を推定し、推定した目的地への到着予想時刻をユーザに通知する処理である。図4に、この目的地推定表示処理のフローチャートを示す。
【0038】
制御回路17は、車両用ナビゲーション装置1の作動開始と共に、図4の処理を実行し始める。したがって、制御回路17は、上述した走行履歴保存処理と同時に、この目的地推定表示処理を行うことになる。
【0039】
この目的地推定表示処理において制御回路17は、まずステップ210で、車両が走行を開始したか否かを、図2のステップ110と同様に判定し、走行し始めていない場合は再度ステップ210を実行し、走行し始めた場合はステップ220を実行する。
【0040】
ステップ220では、ユーザによって目的地設定がされているか否かを、RAM中に設定目的地データが記録されているか否かで判定する。目的地設定がされていれば再度ステップ210に戻り、目的地設定がされていなければ、続いてステップ230に進む。
【0041】
ステップ230では、走行履歴保存処理によって保存された走行履歴データに基づいて、車両の目的地を推定する。
【0042】
具体的には、ステップ210で走行開始と判定した時点(または現時点)の属する曜日および時間帯を特定し、また、当該時点における車両位置の天候を特定する。これら特定した曜日、時間帯、天候を、現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候という。
【0043】
また、ステップ210で走行開始と判定した時点から現在までに車両が通過した走行位置記録ポイントを、現在の途中経路として特定する。この現在の途中経路としては、その時点で走行履歴保存処理によってRAMに蓄積されている複数の走行位置記録ポイントを使用する。
【0044】
そして、これら特定した現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候、現在の途中経路と、フラッシュメモリまたは地図データ取得部16の記憶媒体に記録された各走行履歴データとを比較し、一致度Pを算出する。
【0045】
現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候、現在の途中経路と1つの走行履歴データとの一致度Pは、以下のような式で算出する。
【0046】
P=k1×T1+k2×T2+k3×T3+k4×T4
ここで、k1、k2、k3、k4は、所定の係数である。またT1の値は、現在走行曜日と、当該1つの走行履歴データ中の曜日とが一致すれば1とし、一致しなければゼロとする。またT2の値は、現在走行時間帯と、当該1つの走行履歴データ中の時間帯とが一致すれば1とし、一致しなければゼロとする。またT3の値は、現在走行時天候と、当該1つの走行履歴データ中の天候とが一致すれば1とし、一致しなければゼロとする。またT4の値は、現在の途中経路中の走行位置記録ポイントと、当該1つの走行履歴データ中の複数の走行位置記録ポイントとを比較したときに一致するポイントの数とする。
【0047】
したがって、係数k1は、曜日の一致に割り当てられる重み点数に相当し、係数k2は、時間帯の一致に割り当てられる重み点数に相当し、係数k3は、天候の一致に割り当てられる重み点数に相当し、係数k4は、1つの走行位置記録ポイントの一致に割り当てられる重み点数に相当する。本実施形態では、各係数の値として、k1=100、k2=100、k3=20、k4=3を採用する。
【0048】
そして、各走行履歴データについて算出した一致度Pに基づいて、一致度Pが基準値Pt(例えば、250から280までの範囲内の特定の値)よりも高い走行履歴データ中の目的地を、目的地候補として抽出する。このようにして、目的地推定が終了する。なお、ここで抽出される目的地候補の数は、1つとなる場合もあれば、複数となる場合もあれば、ゼロとなる場合もある。
【0049】
続いてステップ240では、ステップ230で採用された目的地候補のそれぞれについて、現在位置から当該目的地候補までの経路を算出し、算出した経路に沿った現在位置から当該目的地候補までの走行時間を算出し、その走行時間に基づいて、当該目的地候補への到着予想時刻を算出する。
【0050】
なお、ここで算出する現在位置から当該目的地候補までの経路は、当該目的地候補を抽出した走行履歴データ中の途中経路とは無関係に、ダイクストラ法等を用いて算出してもよいし、あるいは、当該途中経路を利用して、現在位置から当該目的地候補までの経路を算出してもよい。
【0051】
当該途中経路を利用する方法としては、例えば、現在位置が当該途中経路上にあれば(すなわち、途中経路上のノード上またはそれらノードを両端に有するリンク上にあれば)、当該途中経路のうち、現在位置から目的地までの部分を、現在位置から当該目的地候補までの経路としてもよい。また、現在位置が当該途中経路上になければ、現在位置から最も近い途中経路上の位置までの第1経路を、ダイクストラ法等を用いて算出し、当該途中経路のうち、第1経路の端点から目的地までの部分を第2経路とし、これら第1経路と第2経路を繋げたものを、現在位置から当該目的地候補までの経路としてもよい。
【0052】
また、算出した経路に沿った現在位置から当該目的地候補までの走行時間としては、例えば、車両が所定の一定速度(例えば時速30キロメートル)で走行すると仮定して算出するようになっていてもよい。
【0053】
続いてステップ250では、ステップ240で算出した各目的地候補への到着予想時刻のうち、一致度Pが最も高い1つを画像表示装置12に表示させる。
【0054】
図5に、目的地候補への到着予想時刻の表示例を示す。この図の例では、画像表示装置12の表示画面20上に、自車位置マーク21を含む地図が表示され、その地図に、到着予想時刻表示22が重畳されている。
【0055】
この到着予想時刻表示22は、地図表示の邪魔にならないよう、表示画面20の中央部から離れて端部近くに配置される。そして到着予想時刻表示22は、当該目的地候補の名称と、当該目的地候補への到着予想時刻と、上記経路に沿った現在位置から当該目的地候補までの残り距離と、を表示するようになっている。
【0056】
なお、当該目的地候補の名称については、地図データの施設データ中に、当該目的地候補の位置を所在範囲に含む施設があれば、当該施設の名称を当該目的地候補の名称として採用する。また、地図データの施設データ中に、当該目的地候補の位置を所在範囲に含む施設がなければ、当該目的地候補の位置の緯度および経度を当該目的地候補の名称として表示してもよい。
【0057】
あるいは、地図データの施設データ中に、当該目的地候補の位置を所在範囲に含む施設がなければ、当該目的地候補を抽出した走行履歴データに基づいて、当該走行履歴データ中の情報のうち、現在走行曜日、現在走行時間帯、現在走行時天候、現在の途中経路中の走行位置記録ポイントと一致した項目の情報を用いて、当該目的地候補の名称を作成し、その作成した名称を表示するようになっていてもよい。
【0058】
例えば、当該走行履歴中の曜日および時間帯の項目の情報が、現在走行曜日および現在走行時間帯と一致していれば、「○曜日の△時からX時に行ったことのある場所」という文字列を作成し、当該文字列を、当該目的地候補の名称として採用して表示してもよい。
【0059】
なお、これらのように作成した文字列と、当該目的地候補の位置の緯度および経度の両方を含めたものを、当該目的地候補の名称として採用して表示してもよい。
【0060】
また、到着予想時刻表示22中の、当該目的地候補への到着予想時刻の表示は、アナログ時計形式の表示とデジタル時計形式の表示の両方を含むようになっている。
【0061】
また、到着予想時刻表示22には、さらに、ユーザが操作部13を用いて選択可能に表示された次候補ボタン22a、削除ボタン22b、および確定ボタン22cが表示されている。
【0062】
次候補ボタン22aは、表示対象の目的地候補をトグルするためのボタンである。ユーザが操作部13を用いて次候補ボタン22aを選択するための所定の操作を行うと、制御回路17は、現在表示している目的地候補に代えて、当該目的地候補の次に一致度Pが高い目的地候補の名称、到着予想時刻、残り距離を、到着予想時刻表示22中に表示させる。
【0063】
ただし、現在表示している目的地候補が最も一致度Pの低い目的地候補である場合、制御回路17は、現在表示している目的地候補に代えて、一致度Pが最も高い目的地候補の名称、到着予想時刻、残り距離を、到着予想時刻表示22中に表示させる。このようにすることで、ユーザによる次候補ボタン22aの選択に応じて、目的地候補が一致度Pの順に1つずつ巡回的に表示される。
【0064】
削除ボタン22bは、到着予想時刻表示22を消去するためのボタンである。ユーザが操作部13を用いて削除ボタン22bを選択するための所定の操作を行うと、制御回路17は、到着予想時刻表示22の表示を消去する。
【0065】
確定ボタン22cは、現在表示されている目的地候補を目的地として確定するためのボタンである。ユーザが操作部13を用いて確定ボタン22cを選択するための所定の操作を行うと、制御回路17は、目的地推定表示処理を終了し、その後、現在表示されている目的地候補を目的地として確定し、現在位置から当該目的地までの経路を算出し、画像表示装置12を制御して当該経路を地図中に表示させ、当該経路に沿った右左折の案内を開始する。
【0066】
ステップ250に続いては、ステップ260で、図2のステップ130と同様の方法で、車両の走行が終了したか否かを判定する。車両が走行を終了していない場合は、処理を再度ステップ230に戻り、目的地を再度推定する。このようにすることで、車両の進行と共に、目的地推定が繰り返し行われ、その都度抽出された最新の目的地候補を、ユーザに提示することができる。ステップ260で走行終了したと判定した場合は、目的地推定表示処理を終了する。
【0067】
ここで、目的地推定処理の実行時の車両用ナビゲーション装置1の作動例を示す。この例においては、一致度Pの算出式において、係数k1、k2、k3、k4は、それぞれ100、100、20、3とし、閾値Ptは、250とする。
【0068】
まず、目的地の設定がされていない状況で車両が走行し始めると、制御回路17は目的地推定を繰り返し行い、それによって抽出された目的地候補の名称、到着予想時刻、残り距離を表示するようになる(ステップ230〜260参照)。
【0069】
車両が走行を開始した直後は、RAMに記録される現在の途中経路中の走行位置記録ポイントの数は少ないので、ステップ230で算出される各走行履歴データの一致度Pにおいて、k4×T4の値は、k1×T1+k2×T2+k3×T3の値に比べて小さい。したがって、走行時の曜日、時間帯、天候が現在の走行と一致するか否かが、走行履歴データの一致度Pにより大きく寄与する。
【0070】
しかし、走行時の曜日、時間帯、天候が現在の走行と一致したとしても、k1×T1+k2×T2+k3×T3の値は220なので、閾値Pt=250に届かない。したがって、走行開始後暫くは、抽出される目的地候補の数はゼロであり、従って、目的地候補が画像表示装置12に表示されることはない。
【0071】
走行開始から車両がある程度(例えば、走行位置記録ポイント30個分)走行すると、k4×T4の項がある程度大きくなった結果、閾値Pt=250を超える走行履歴データも現れるようになる。ただし、k4×T4の項単独では、閾値Pt=250に届かないので、走行時の曜日、時間帯が現在の走行と一致する走行履歴データのいずれかから、目的地候補が抽出されることになる。例えば、現在が平日の朝6時〜9時の時間帯である場合、その曜日およびその時間帯によく行く勤務先施設と同じ経路を走行位置記録ポイントを17個分辿ると、当該勤務施設を目的地とする走行履歴の一致度が閾値Ptを超え、当該勤務施設への到着予想時刻が表示されるようになる。
【0072】
走行開始から車両が十分に(例えば、走行位置記録ポイント100個分)走行すると、k4×T4の項単独でも閾値Pt=250を超える走行履歴データが現れ得るようになる。
【0073】
このような状況では、例えば、ユーザが土曜日、日曜日の午後に行ったことのある大型商業施設に、偶々平日の朝6時〜9時に向かうような場合であっても、
走行距離が短い間は、平日の当該時間帯によく行く勤務先施設の到着予想時刻が表示されるが、走行距離がある距離を超えると、当該大型商業施設を目的地とする走行履歴の一致度が、勤務先施設を目的地とする走行履歴の一致度よりも高くなり、到着予想時刻等が優先的に表示される目的地が、勤務先施設から当該大型商業施設に切り替わる。
【0074】
以上説明した通り、本実施形態の車両用ナビゲーション装置1は、車両の走行開始から走行終了までの走行時における、曜日、時間帯、自装置周辺の天候、途中経路、および目的地(走行終了地点)を、走行の度に走行履歴データとして記録する。
【0075】
そして、ユーザによって目的地が設定されずに走行するときには、現在の走行と走行履歴データとの一致度Pに基づいて、目的地を推定して目的地候補を抽出し、それら抽出された目的地候補までの経路表示も案内(音声案内、交差点拡大表示等)も行わないまま、目的地候補までの到着予想時刻等を、画像表示装置12に表示させる。
【0076】
ユーザは普段行く目的地は設定や案内されることへの煩わしさから目的地設定を行わないケースがほとんどである。しかしながら、あとどれくらいで到着するのか知りたいことがよくある。
【0077】
本実施形態では、ナビゲーション装置1が、車両の走行パターンを記憶する機能と、目的地までの経路計算ならびに目的地到着予想時刻を計算する機能を併せ持ち、過去に言ったことのある目的地に対しては、ユーザが目的地設定操作をしなくても、到着予想時刻をユーザへ提供する。
【0078】
このように、本実施形態の車両用ナビゲーション装置1は、ユーザが目的地を設定していないにも関わらず運転を開始しているという、知っている道を走っている状態を検出して、過去の走行履歴データから推定される目的地の到着予想時刻を表示することで、当該目的地への経路の表示を行わない場合であっても、ユーザにとって有益な情報を提示することができる。
【0079】
なお、上記実施形態において、制御回路17がステップ230を実行することで推定手段として機能し、ステップ250を実行することで表示制御手段として機能する。
【0080】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0081】
例えば、上記実施形態においては、図4のステップ250では、ステップ240で算出した各目的地候補のうち、一致度Pが最も高い1つについての到着予想時刻を画像表示装置12に表示させる。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、目的地候補のうち、一致度Pが最も高いものから上位5位までの目的地候補名称および到着予想時刻を、同時に画像表示装置12に表示させるようになっていてもよい。その場合、表示形式としては、例えばリスト表示形式を採用してもよい。
【0082】
その際、同時に表示している目的地候補の到着予想時刻のそれぞれに付随して、削除ボタンを表示させるようになっていてもよい。この場合、ユーザが操作部13を用いて、ある目的地候補の到着予想時刻に付随して表示された削除ボタンを選択すると、制御回路17は、当該目的地候補の到着予想時刻の表示を消去し、その代わりに、次に一致度の高い当該目的地候補の到着予想時刻を表示させるようになっていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態において、車両用ナビゲーション装置1は、車両の走行開始から走行終了までの走行時における、曜日、時間帯、天候、途中経路、および目的地(走行終了地点)を、走行の度に走行履歴データとして記録するようになっているが、記録する走行履歴データとして、これら以外にも、走行開始地点から目的地(走行終了地点)までの方角(東西南北についての方向)を含めるようになっていてもよい。
【0084】
その場合、車両用ナビゲーション装置1は、ユーザによって目的地が設定されずに走行するときには、現在の走行と走行履歴データとの一致度Pの算出において、P=k1×T1+k2×T2+k3×T3+k4×T4という式を採用してもよい。このときT2の値は、現在の走行における走行開始地点から現在位置までの方角と、当該1つの走行履歴データ中の方角との差が所定の誤差以内であれば1とし、所定の誤差以上に離れていればゼロとする。
【0085】
また、図2のステップ120では、車両用ナビゲーション装置1は、車両が走行位置記録かのノードに到達したか否かで判定している。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、車両が走行位置記録ポイントに到達したか否かは、車両が所定距離(例えば50メートル)走行したか否かで判定してもよい。この場合、途中経路として記録する走行位置記録ポイントは、当該走行位置記録ポイントの属するノードIDであってもよいし、当該走行位置記録ポイントの位置座標であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、目的地を推定するときに使用する情報項目として、現在の移動時における曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路を用いているが、これら情報項目のうちの1つのみ(あるいは任意の2つまたは3つ)について、各移動履歴データと比較し、それらの一致度Pに基づいて、目的地候補を推定してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、目的地を推定するとき、現在の移動時における曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路を、各移動履歴データの曜日、時間帯、車両位置の天候、途中経路と比較し、それらの一致度Pに基づいて、目的地候補を推定しているが、目的地を推定する方法は、このような方法に限るわけではない。
【0088】
例えば、特許文献1に記載のように、ユーザ情報(年齢、職業)と、短期的に変化する状況情報(時間帯、曜日、同乗者の有無)とを、ベイジアンネットモデルに入力して、各目的の尤度を決定し、さらに、目的および状況情報をベイジアンネットモデルに入力して各目的地の尤度を決定し、決定した各目的地の尤度に基づいて、目的地候補を設定するようになっていてもよい。
【0089】
あるいはもっと単純に、地図データに基づいて、自車両の現在位置から所定距離内(例えば、20km)以内の所定の大規模施設(駅、大型商業施設、大型行楽地等)を、目的地候補とするようになっていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態において、目的地候補までの到着予想時刻の表示を、当該到着予想時刻までの現在からの残り時間に置き換えても、同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、上記の実施形態において、制御回路17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【0092】
また、本発明のナビゲーション装置は、必ずしも車載用のものなくともよい。例えば、ナビゲーション装置は、ユーザが携帯するタイプのものであってもよい。ナビゲーション装置が車両に搭載されずに用いられる場合は、上記実施形態における「走行」は、「移動」に置き換えればよい。その際、移動開始したか否かは、ユーザによる移動開始操作があったか否かで判定すればよく、また、移動終了したか否かは、ユーザによる移動終了操作があったか否かで判定すればよい。
【符号の説明】
【0093】
1 車両用ナビゲーション装置
11 位置検出器
12 画像表示装置
13 操作部
14 スピーカ
15 交通情報受信機
16 地図データ取得部
17 制御回路
20 表示画面
21 自車位置マーク
22 予想到着時刻表示
22a 次候補ボタン
22b 削除ボタン
22c 確定ボタン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)と、
前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示制御手段(250)は、前記推定手段(230)が複数の目的地候補を抽出した場合、前記複数の目的地候補のうち1つへの到着予想時刻を前記画像表示装置に表示させ、ユーザが操作部を用いて所定の操作を行ったことに基づいて、前記1つの目的地候補への到着予想時刻に代えて、前記複数の目的地候補のうち他の目的地候補への到着予想時刻を、前記画像表示装置に表示させることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
ナビゲーション装置に用いられるプログラムであって、
ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)、および
前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)、として、前記ナビゲーション装置の制御回路を機能させるプログラム。
【請求項1】
ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)と、
前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示制御手段(250)は、前記推定手段(230)が複数の目的地候補を抽出した場合、前記複数の目的地候補のうち1つへの到着予想時刻を前記画像表示装置に表示させ、ユーザが操作部を用いて所定の操作を行ったことに基づいて、前記1つの目的地候補への到着予想時刻に代えて、前記複数の目的地候補のうち他の目的地候補への到着予想時刻を、前記画像表示装置に表示させることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
ナビゲーション装置に用いられるプログラムであって、
ユーザによって目的地が設定されずに移動する際、その移動の目的地を推定して目的地候補を抽出する推定手段(230)、および
前記推定手段(230)が抽出した目的地候補への経路表示を行わないまま、前記目的地候補までの到着予想時刻または前記到着予想時刻までの残り時間を画像表示装置に表示させる表示制御手段(250)、として、前記ナビゲーション装置の制御回路を機能させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2011−214939(P2011−214939A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82218(P2010−82218)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]