説明

ナビゲーション装置およびプログラム

【課題】経路計算処理において、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算する。
【解決手段】特定経路としての経路Aが遠回りと判断した場合には(S150:Y)、経路Aの計算時に参照した推奨用コストテーブルについて、代替経路としての経路Bに含まれる道路種別のうち経路Aに含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する距離補正係数を「普通」から「通りやすい」へ変更し、その変更後の推奨用コストテーブルを参照して経路Aを再計算する(S190、S120)。つまり、経路計算処理において特定経路としての経路Aを代替経路としての経路Bが有する傾向を反映させるように再計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路計算処理において利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行に伴って移動していく現在位置をモニタ上に道路地図と共に表示したり、現在地から目的地までの適切な経路を設定し、経路案内を行うナビゲーション装置が知られており、より円滑なドライブに寄与している。なお、上述の経路計算処理においては、地図データおよび予め設定されたリンクコストテーブルを参照して出発地から目的地までの経路を計算する。
【0003】
また、このようなナビゲーション装置の中には、経路計算処理において、計算される経路が適否となることを避けるため、利用者によって選択されたリンクコストテーブルを参照して特定の経路を計算するとともに、特定リンクコストテーブル以外のリンクコストテーブルを参照して代替経路を計算し、これら特定経路と代替経路とで重複するリンクに対して重み付けを行うものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−130669号公報(第7,8頁、図21)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなナビゲーション装置においては、次のような理由により、計算した経路が遠回りとなることを避けるために利用者が好む経路とはならないおそれがある。すなわち、上述のようなナビゲーション装置においては、特定経路と代替経路とでは高速道路や一般道路などの様々な種別の道路について重複することが予想される。このような場合には、高速道路や有料道路などの特定の種別の道路を好んで利用する利用者にとっては、重複するリンクについての重み付けが様々な種別の道路について行われるため、特定の種別の道路について重点的に重み付けがなされるとは限らず、利用者が好む特定の種別の道路をあまり含まない経路が計算されることがある。
【0005】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、経路計算処理において、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る経路計算装置は、「経路計算処理において、特定経路を代替経路が有する傾向を反映させるように再計算すること」を特徴とする。
【0007】
具体的には、地図データ取得手段(6:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)が、道路に関する情報を含む地図データを取得可能であり、リンクコストテーブル記憶手段が、複数のリンクコストテーブルを記憶する。なお、リンクコストテーブルとは、各リンクに設定されたリンクコストに重み付けを行うための付加倍率を一覧形式にしたものであり、各リンクコストテーブルについては、例えば走行距離を優先させることや、有料道路を優先させることなどそれぞれが異なる傾向を有しているが考えられる。さらに、経路計算手段が、出発地設定手段によって設定された出発地から目的地設定手段によって設定された目的地までの特定経路を、地図データ取得手段によって取得された地図データおよびリンクコストテーブル記憶手段が記憶するリンクコストテーブルの一つである特定リンクコストテーブルを参照して計算する。また、代替経路計算手段が、上述の出発地から目的地までの代替経路を、地図データおよび特定リンクコストテーブルとは異なる傾向を有する他のリンクコストテーブルを参照して計算する。
【0008】
さらに、適否判断手段が、上述の特定経路が適当であるか否かを代替経路のコスト値に対する特定経路のコスト値の比率により判断する。一例を挙げると、代替経路のコスト値に対する特定経路のコスト値の比率が規定値以上である場合には、特定経路が適当ではないと判断し、一方、代替経路のコスト値に対する特定経路のコスト値の比率が規定値未満である場合には、特定経路が適当であると判断するといった具合である。適否判断手段によって前記特定経路が適当であると判断された場合には、経路計算結果決定手段が、その特定経路を経路計算結果とする。また、経路案内手段が、経路計算結果決定手段によって決定された経路計算結果を案内する。
【0009】
一方、適否判断手段によって特定経路が適当ではないと判断された場合には、経路再計算手段が、次のような経路再計算処理を実行する。すなわち、(イ)経路再計算手段が、特定リンクコストテーブルについて、代替経路に含まれる道路種別のうち特定経路に含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する付加倍率をより小さい値に補正し、経路計算手段によって補正後の特定リンクコストテーブルを参照して前記特定経路を再計算させる。(ロ)または、経路再計算手段が、上述の他のリンクコストテーブルについて、特定経路に含まれる道路種別のうち代替経路に含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する付加倍率をより大きい値に補正し、代替経路計算手段によって補正後の他のリンクコストテーブルを参照して代替経路を再計算させる。
【0010】
なお、上述のように経路再計算手段によって経路の再計算が行われた場合には、適否判断手段が、上述の特定経路が適当であるか否かを再び判断する。経路再計算手段によって経路の再計算が行われたのちに適否判断手段によって特定経路が適当であると判断された場合には、経路計算結果決定手段が、その特定経路を経路計算結果とし、一方、適否判断手段によって特定経路が適当ではないと判断された場合には、経路再計算手段が、経路再計算処理を再び実行する。
【0011】
従来のナビゲーション装置においては、特定経路と代替経路とで重複するリンクについての重み付けが様々な種別の道路について行われるため、特定の種別の道路について重点的に重み付けがなされるとは限らず、利用者が好む特定の種別の道路をあまり含まない経路が計算されることがあり、計算した経路が遠回りとなることを避けるために利用者が好む経路とはならないおそれがある。これに対して本発明によれば、経路計算処理において特定経路を代替経路が有する傾向を反映させるように再計算するので、特定経路を計算する際に用いた特定リンクコストテーブルの特徴を活かしながら、代替経路を計算する際に用いた他のリンクコストテーブルの特徴を取り入れた経路に修正することができ、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算することができる。
【0012】
なお、上述の出発地については、例えば利用者からの入力に従って設定することが考えられる。また、現在位置を出発地として設定することが考えられる。具体的には、出発地設定手段が、位置特定手段によって特定された現在位置を出発地として設定することが考えられる。
【0013】
また、上述の特定リンクコストテーブルについては、利用者の好みを反映したリンクコストテーブルが望ましく、その具体例としては、予め想定される複数の経路すべてが適当となるように設定されたリンクコストテーブルや、経路の総延長距離を短くする傾向を有するリンクコストテーブル、経路を移動するのに要する時間を短くする傾向を有するリンクコストテーブル、などが考えられる。なお、特定リンクコストテーブルとは異なる傾向を有するリンクコストテーブルについても同様である。
【0014】
また、上述の適否判断手段については、次のように構成することが考えられる。すなわち、(ハ)経路の総延長距離を短くする傾向を有するリンクコストテーブルを用いて代替経路が計算された場合には、適否判断手段が、特定経路が遠回りであるか否かを判断する。(ニ)また、経路を移動するのに要する時間を短くする傾向を有するリンクコストテーブルを用いて代替経路が計算された場合には、適否判断手段が、特定経路の移動に時間がかかるか否かを判断する。
【0015】
ところで、上述の最適な経路に含まれる道路の種別のうち代替経路に含まれる道路の種別とは重複しない道路種別については、複数存在する場合がある。そこで、請求項2のように、経路計算手段によって特定経路を再計算させる際または代替経路計算手段によって代替経路を再計算させる際に、補正対象となる付加倍率の候補が複数存在するときには、経路再計算手段が、特定経路または代替経路の何れかにおける付加倍率に対応する道路種別の道路長が長い付加倍率を優先的に補正することが考えられる(請求項2)。このようにすれば、再計算の効果が大きくなるので、より少ない再計算の回数で、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算することができる。
【0016】
また、経路計算手段が、特定経路を何度も再計算を行った場合でも、適否判断手段によって特定経路が適当ではないと判断される可能性もある。そこで、請求項3のように、特定経路の再計算を所定回数実行した場合において適否判断手段によって特定経路が適当ではないと判断されたときには、経路計算結果決定手段が、経路計算手段によって過去に計算された特定経路のうちそのコスト値が最も小さい特定経路を経路計算結果として決定することが考えられる。このようにすれば、所定回数内の再計算で、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算することができ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0017】
なお、請求項4に示すように、請求項1〜請求項3の何れかに記載のナビゲーション装置における経路計算手段、代替経路計算手段、適否判断手段、経路計算結果決定手段および経路再計算手段は、コンピュータを機能させるプログラムとして実現できる。したがって、本発明は、プログラムの発明として実現できる。また、このようなプログラムの場合、例えば、FD、MO、DVD−ROM、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として本プログラムを記録しておき、ROMあるいはバックアップRAMをコンピュータに組み込んで用いても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明が適用された実施例について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0019】
図1は、実施例のナビゲーション装置の構成を表す構成図である。また、図2(a)は、推奨用コストテーブルを示す説明図であり、図2(b)は有料道路優先用コストテーブルを示す説明図であり、図2(c)は距離優先用コストテーブルを示す説明図である。
【0020】
[ナビゲーション装置100の構成の説明]
図1に示すように、ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、これらに接続された制御回路8、制御回路8に接続された外部メモリ9、表示装置10、外部情報入出力装置11およびリモコンセンサ12を備えている。なお、制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。
【0021】
[位置検出器1の構成の説明]
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ(車速センサ)4、および衛星からの電波に基づいて車両の位置や方位(車両の走行方向)を検出するGPSのためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2、3、4、5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補間しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては上述した内の一部で構成してもよく、更にステアリングの回転センサ、各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。なお、位置検出器1は位置特定手段に該当する。
【0022】
[地図データ入力器6の構成の説明]
地図データ入力器6は、位置特定の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、地図データ、施設データを含む各種データを入力するための装置である。また、地図データには、リンク情報が含まれている。これらのデータの記録媒体としては、DVDやCD−ROM、ハードディスクなどの磁気記憶装置やメモリカード等の他の媒体を用いても良い。なお、地図データ入力器6は、地図データ取得手段に該当する。
【0023】
[外部メモリ9の構成の説明]
外部メモリ9は、不揮発性メモリで構成され、各種データを記憶するのに利用される。また、外部メモリ9は、図2に例示するような推奨用コストテーブル、有料道路優先用コストテーブル、距離優先用コストテーブルなどの各種リンクコストテーブルを記憶するのにも利用される。上述のリンクコストテーブルは、各リンクに設定されたリンクコストに重み付けを行うための距離補正係数(付加倍率)を一覧形式にしたものであり、それぞれが異なる傾向を有している。具体的には、各リンクコストテーブルは、各道路種別について、その道路種別を通りやすくするための距離補正係数「通りやすい」、その道路種別を通りにくくするための距離補正係数「通りにくい」、および通常の距離補正係数「普通」の各距離補正係数から構成されている。このうち、推奨用コストテーブルは、図2(a)に例示するように、高速道路、有料道路または一般道路のうち高速道路および有料道路を優先し、且つ道路種別間の距離補正係数の差が小さく設定されている。また、有料道路優先用コストテーブルは、図2(b)に例示するように、高速道路、有料道路または一般道路のうち高速道路および有料道路を優先し、且つ高速道路および有料道路と一般道路との距離補正係数の差が大きく設定されている。また、距離優先用コストテーブルは、図2(c)に例示するように、高速道路、有料道路および一般道路の距離補正係数が同一に設定されている。
【0024】
[表示装置10の構成の説明]
表示装置10はカラー表示装置であり、表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両現在位置マークと、地図データ入力器6より入力された地図データと、更に地図上に表示する誘導経路やタッチスイッチ等の付加データとを重ねて表示することができる。
【0025】
[外部情報入出力装置11の構成の説明]
外部情報入出力装置11は、図示しないラジオアンテナを介してFM放送信号を受信したり、道路近傍に配置されたVICSサービス用の固定局から、電波ビーコン信号および光ビーコン信号を受信する。この受信した情報は制御回路8へ送られて処理される。また、図示しない携帯電話と接続され、情報センターから情報を取得したり、インターネットに接続しインターネット上のサーバから情報を取得する機能を備える。
【0026】
[リモートコントロール端末13、操作スイッチ群7などの構成の説明]
また、ナビゲーション装置100は、リモートコントロール端末(以下リモコンと称する)13を介してリモコンセンサ12から、あるいは操作スイッチ群7により目的地の位置を入力すると、現在位置からその目的地までの最適な経路を自動的に選択して誘導経路を形成し表示する、いわゆる経路案内機能も備えている。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。操作スイッチ群7は、例えば表示装置10と一体になったタッチスイッチ、およびメカニカルなスイッチ群が用いられ、各種入力に使用される。
【0027】
[制御回路8の構成の説明]
制御回路8は、CPU,ROM,RAM,I/Oおよびこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROMおよびRAMに記憶されたプログラムに基づいて、位置検出器1からの各検出信号に基づき座標および走行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器6を介して読み出した現在位置付近の地図等を表示装置10に表示する地図表示処理や、地図データ入力器6に格納された地点データおよび外部メモリ9に記憶された各種データに基づき、操作スイッチ群7やリモコン13等の操作に従って目的地となる施設を選択し、現在位置から目的地までの最適な経路を自動的に求める経路計算処理を行う。このように自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。
【0028】
また、制御回路8は、経路計算処理によって求めた誘導経路に基づいて経路案内を行う経路案内処理を行う。この経路案内は、経路計算の結果と地図データ内に格納されている道路の形状データや、交差点の位置情報、踏切の位置情報等から、案内に必要なポイントを算出したり、どのような案内(右に曲がるか左に曲がるかの指示等、すなわち、いわゆるナビゲーション)が必要なのかを算出し、その算出結果に基づき、例えば現在位置の地図や、高速道路の略図や、交差点付近では交差点付近の拡大図等を描画して表示装置10に表示したりする。また、図示しない音声出力装置からの音声出力も併用する。
【0029】
なお、制御回路8は、目的地設定手段、経路計算手段、代替経路計算手段、適否判断手段、経路計算結果決定手段および経路再計算手段に該当する。また、制御回路8は、表示装置10とともに経路案内手段に該当する。
【0030】
[経路計算処理の説明]
次に、ナビゲーション装置100の制御回路8が実行する経路計算処理を、図3のフローチャートおよび図4の経路計算処理を説明する説明図を参照して説明する。
【0031】
本処理は、図示しないアクセサリ電源がオンとなりナビゲーション装置100に電源供給された場合に、地図表示処理や経路案内処理など他の処理からは独立して実行される。
まず、最初のステップS110では、出発地を設定する。位置検出器1からの各検出信号に基づき、座標及び走行方向の組として現在位置を算出し、その算出した現在位置を出発地として設定する(図4の出発地「S」を参照。)。
【0032】
続くS120では、目的地を設定する。具体的には、地図データ入力器6から入力された地点データおよび外部メモリ9に記憶された各種データに基づき、操作スイッチ群7やリモコン13等の操作に従って目的地となる施設を選択する(図4の目的地「E」を参照。)。
【0033】
続くS130では、推奨用コストテーブルを用いて出発地から目的地までの経路を探索する。具体的には、地図データ入力器6から入力された道路データに基づいて出発地から目的地へ向かう途中に通過するノードの組み合わせを算出し、その算出した組み合わせについて、推奨用コストテーブルを用いてコスト値を算出する。そして、経路のうち最もコスト値が小さい経路(特定経路)を選択する。以下、本S130にて探索した経路を経路Aとする(図4参照)。
【0034】
続くS140では、距離優先用コストテーブルを用いて出発地から目的地までの経路を探索する。具体的には、先のS130と同様に、地図データ入力器6から入力された道路データに基づいて出発地から目的地へ向かう途中に通過するノードの組み合わせを算出し、その算出した組み合わせについて、距離優先用コストテーブルを用いてコスト値を算出する。そして、経路のうち最もコスト値が小さい経路(代替経路)を選択する。以下、本S140にて探索した経路を経路Bとする(図4参照)。
【0035】
続くS150では、経路Aが遠回りであるか否かを判断する。具体的には、経路Bのコスト値に対する経路Aのコスト値の比率が規定値以上であるか否かを判断する。なお、規定値については予め実験的に設定しておくことが考えられ、本実施例では、規定値を1.5に設定している。経路Bのコスト値に対する経路Aのコスト値の比率が規定値未満である場合には(S150:N)、経路Aが遠回りではないと判断し、その経路Aを経路計算結果として決定し(S200)、本処理を終了する。一方、経路Bのコスト値に対する経路Aのコスト値の比率が規定値以上である場合には(S150:Y)、経路Aが遠回りであると判断してS160に移行する。
【0036】
S160では、後述するS190による距離補正係数の変更回数が規定回数以上であるか否かを判断する。なお、規定回数については予め実験的に設定しておくことが考えられ、本実施例では、規定回数を10に設定している。また、本S160を実行するのが一回目である場合にはそのままS170に移行する。S190による距離補正係数の変更回数が規定回数未満であると判断した場合には(S160:N)、S170に移行する。
【0037】
続くS170では、上述の経路Aを道路種別ごとにリンク単位で分類する。
続くS180では、上述の経路Bを同様に道路種別ごとにリンク単位で分類する。
続くS190では、経路計算に用いられたコストテーブルに含まれる距離補正係数を補正する。具体的には、経路Aを計算する際に用いた推奨用コストテーブルについて、経路Bに含まれる道路種別のうち経路Aに含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する距離補正係数を、「普通」から「通りやすい」へ変更する。そして、S130に移行する。その後、経路Aが遠回りではないと判断されるか(S150:N)、S190による距離補正係数の変更回数が規定回数以上であると判断されるまで(S160:Y)、S130〜S190の処理を繰り返し実行する。なお、S130への移行が2回目以降である場合には、本S130では、距離補正係数を変更した後の推奨用コストテーブルを用いて出発地から目的地までの経路について経路を再び探索する(図4の「再計算後の経路A」を参照。)。また、S190への移行が2回目以降である場合には、本S190では、先にS190を実行した際に変更していない距離補正係数を「普通」から「通りやすい」へ変更する。
【0038】
そして、S150において、経路Bのコスト値に対する経路Aのコスト値の比率が規定値未満であると判断した場合には(S150:N)、経路Aが遠回りではないと判断し、経路Aについて経路計算を実行して本処理を終了する。また、S160において、S190による距離補正係数の変更回数が規定回数以上であると判断した場合には(S190:Y)、これまで計算した経路Aのうちそのコスト値が最小である経路を経路計算結果として決定し(S210)、本処理を終了する。
【0039】
なお、上述のように経路計算処理によって計算された経路計算結果については、経路案内処理などにて利用される。経路案内処理については、公知技術に従っているのでここでは詳細な説明は省略する。
【0040】
[効果]
このように実施例のナビゲーション装置100によれば、経路Aが遠回りであると判断した場合には(S150:Y)、経路Aの計算時に参照した推奨用コストテーブルについて、経路Bに含まれる道路種別のうち特定経路に含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する距離補正係数を「普通」から「通りやすい」へ変更し、その変更後の推奨用コストテーブルを参照して経路Aを再計算する(S190、S120)。つまり、経路計算処理において特定経路としての経路Aを代替経路としての経路Bが有する傾向を反映させるように再計算するので、経路Aを計算する際に用いた推奨用コストテーブルの特徴を活かしながら、経路Bを計算する際に用いた距離優先用コストテーブルの特徴を取り入れた経路に修正することができ、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算することができる。
【0041】
また、実施例のナビゲーション装置100によれば、経路Aが遠回りであると判断された場合において経路Aの再計算を規定回数実行したときには(S150:Y、S160:Y)、これまで計算した経路Aのうちそのコスト値が最小である経路を経路計算結果として決定するので(S200)、所定回数内の再計算で、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算することができ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0042】
[別実施例]
(1)上記実施例では、制御回路8が、位置検出器1からの各検出信号に基づき座標及び走行方向の組として車両の現在位置を算出し、その算出した現在位置を出発地として経路計算に利用しているが、これには限られず、リモコン13を介してリモコンセンサ12から、あるいは操作スイッチ群7により入力された地点を出発地として利用するようにしてもよい。なおこの場合、制御回路8は出発地設定手段に該当する。
【0043】
(2)上記実施例の各リンクコストテーブルについては、各道路種別について3段階の距離補正係数が含まれているが、これには限られず、例えば各道路種別について2段階の距離補正係数が含まれるようにしてもよいし、各道路種別について4段階以上の距離補正係数が含まれるようにしてもよい。
【0044】
(3)上記実施例では、推奨用コストテーブルを参照して経路Aを計算しているが、これには限られず、利用者の好みを反映したリンクコストテーブルであれば、例えば有料道路優先用コストテーブルや距離優先用コストテーブルなどの他のリンクコストテーブルを参照して経路Aを計算してもよい。なお、経路Bを計算するために参照するリンクコストテーブルについても同様である。
【0045】
(4)上記実施例の経路計算処理では、経路Bを計算するために距離優先用コストテーブルを参照し、経路Aが遠回りであるか否かを判断することにより経路Aが適当であるか否かを判断しているが(S150)、これには限られず、経路Bを計算するために距離優先用コストテーブル以外のリンクコストテーブルを参照した場合には、他の基準によって経路Aが適当であるか否かを判断するようにしてもよい。一例を挙げると、有料道路優先用コストテーブルを参照して経路Bを計算した場合には、経路Aを移動するのに要する時間が長いか否かを判断することにより経路Aが適当であるか否かを判断するといった具合である。このようにしても上記実施例と同様の作用効果を奏する。
【0046】
(5)また、上記実施例では3種類のリンクコストテーブルを用意しているが、これには限られず、2種類のリンクコストテーブルを用意してもよいし、4種類以上のリンクコストテーブルを用意してもよい。
【0047】
(6)上記実施例の経路計算処理では、2種類の経路(経路Aおよび経路B)を比較しているが、これには限られず、3種類以上の経路を比較するようにしてもよい。このようにしても上記実施例と同様の作用効果を奏する。
【0048】
(7)上記実施例の経路計算処理では、経路Aが遠回りであるか否かを判断するための「規定値」、およびS190による距離補正係数の変更回数を判断するための「規定回数」を予め設定しているが、これには限られず、リモコン13を介してリモコンセンサ12から、あるいは操作スイッチ群7により入力された値を規定値や規定回数として利用するようにしてもよい。
【0049】
(8)上記実施例の経路計算処理におけるステップS190において、補正対象となる距離補正係数が複数存在するときには、経路Aまたは経路Bの何れかにおける距離補正係数に対応する道路種別の道路長が長い距離補正係数を優先的に補正することが考えられる。このようにすれば、再計算の効果が大きくなるので、より少ない再計算の回数で、利用者の好みを取り入れながら適当な経路を計算することができる。
【0050】
(9)また、上述の経路計算処理において、ステップS190への移行が2回目以降である場合には、本S190では、先にS190を実行した際に変更していない距離補正係数を「普通」から「通りやすい」へ変更しているが、これには限られず、先にS190を実行した際に変更した距離補正係数を再度変更してもよい。一例を挙げると、一回目には、「通りにくい」から「普通」へ変更し、二回目には、「普通」から「通りやすい」へ変更するといった具合である。このようにしても上記実施例と同様の作用効果を奏する。
【0051】
(10)上記実施例の経路計算処理におけるステップS190では、経路Aを計算する際に用いた推奨用コストテーブルについて、経路Bに含まれる道路種別のうち経路Aに含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する距離補正係数を、「普通」から「通りやすい」へ変更しているが、これには限られず、経路Bを計算する際に用いた距離優先用コストテーブルについて、経路Aに含まれる道路種別のうち経路Bに含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する距離補正係数を、「普通」から「通りにくい」へ変更してもよい。ただし、このように距離優先用コストテーブルの距離補正係数を変更した場合には、その後に移行するS140において、距離補正係数を変更した後の距離優先用コストテーブルを用いて経路Bを再び計算する。このようにしても上記実施例と同様の作用効果を奏する。
【0052】
(11)上記実施例では、位置検出器1にて検出されるデータに基づき、制御回路8が車両現在位置の誤差を補間しながら車両現在位置を特定した。しかし、現在位置を特定するためには、必ずしも位置検出器1が必要なわけではない。例えば、外部情報入出力装置11を介して路側ビーコンなどから位置情報を取得し、それに基づいて現在位置を特定するようにしてもよい。また、携帯電話やPHS等をナビゲーション装置100に接続し、その携帯電話やPHS等が持つ位置特定機能によって現在地を特定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例のナビゲーション装置の構成を表す構成図である。
【図2】(a)は推奨用コストテーブルを示す説明図であり、(b)は有料道路優先用コストテーブルを示す説明図であり、(c)は距離優先用コストテーブルを示す説明図である。
【図3】経路計算処理を説明するフローチャートである。
【図4】経路計算処理を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1…位置検出器、2…地磁気センサ、3…ジャイロスコープ、4…距離センサ、5…GPS受信機、6…地図データ入力器、7…操作スイッチ群、8…制御回路、9…外部メモリ、10…表示装置、11…外部情報入出力装置、100…ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地を設定する出発地設定手段と、
目的地を設定する目的地設定手段と、
リンクに関する情報を含む地図データを取得可能な地図データ取得手段と、
各リンクに設定されたリンクコストに重み付けを行うための付加倍率を一覧形式にしたリンクコストテーブルを複数記憶するリンクコストテーブル記憶手段と、
前記出発地設定手段によって設定された出発地から前記目的地設定手段によって設定された目的地までの特定経路を、前記地図データ取得手段によって取得された地図データおよび前記リンクコストテーブル記憶手段が記憶するリンクコストテーブルの一つである特定リンクコストテーブルを参照して計算する経路計算手段と、
前記出発地設定手段によって設定された出発地から前記目的地設定手段によって設定された目的地までの代替経路を、前記地図データ取得手段によって取得された地図データおよび前記リンクコストテーブル記憶手段が記憶するリンクコストテーブルのうち特定リンクコストテーブルとは異なる傾向を有する他のリンクコストテーブルを参照して計算する代替経路計算手段と、
前記特定経路が適当であるか否かを前記代替経路のコスト値に対する前記特定経路のコスト値の比率により判断する適否判断手段と、
前記適否判断手段によって前記特定経路が適当であると判断された場合には、その特定経路を経路計算結果とする経路計算結果決定手段と、
前記適否判断手段によって前記特定経路が適当ではないと判断された場合には、前記特定リンクコストテーブルについて前記代替経路に含まれる道路種別のうち前記特定経路に含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する付加倍率をより小さい値に補正し、前記経路計算手段によって補正後の特定リンクコストテーブルを参照して前記特定経路を再計算させること、または、前記他のリンクコストテーブルについて前記特定経路に含まれる道路種別のうち前記代替経路に含まれる道路種別とは重複しない道路種別に対応する付加倍率をより大きい値に補正し、前記代替経路計算手段によって補正後の他のリンクコストテーブルを参照して前記代替経路を再計算させることの少なくとも何れかを行う経路再計算処理を実行する経路再計算手段と、
前記経路計算結果決定手段によって決定された経路計算結果を案内する経路案内手段と、
を備えるナビゲーション装置であって、
前記適否判断手段は、前記経路再計算手段によって経路の再計算が行われた場合には、前記特定経路が適当であるか否かを再び判断し、
前記経路計算結果決定手段は、前記経路再計算手段によって経路の再計算が行われたのちに前記適否判断手段によって前記特定経路が適当であると判断された場合には、その特定経路を経路計算結果とし、
前記経路再計算手段は、前記経路再計算手段によって経路の再計算が行われたのちに前記適否判断手段によって前記特定経路が適当ではないと判断された場合には、前記経路再計算処理を再び実行すること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記経路再計算手段は、前記経路計算手段によって前記特定経路を再計算させる際または前記代替経路計算手段によって前記代替経路を再計算させる際に、補正対象となる付加倍率が複数存在するときには、前記特定経路または前記代替経路の何れかにおける前記付加倍率に対応する道路種別の道路長が長い付加倍率を優先的に補正することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記経路計算結果決定手段は、前記特定経路の再計算を所定回数実行した場合において前記適否判断手段によって前記特定経路が適当ではないと判断されたときには、前記経路計算手段によって過去に計算された特定経路のうちそのコスト値が最も小さい特定経路を経路計算結果として決定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のナビゲーション装置における経路計算手段、代替経路計算手段、適否判断手段、経路計算結果決定手段および経路再計算手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−23174(P2006−23174A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200909(P2004−200909)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】