説明

ナビゲーション装置および方法、並びにナビゲーションプログラム

ユーザが表示画面等に視線を移すことなく安全に経路を事前に確認することができるナビゲーション装置および方法、並びにナビゲーションプログラムを提供する。 ナビゲーション装置は、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部(22)、探索された経路に基づいて音声により誘導する音声処理制御部(23)、および誘導前に報知する経路の概略を作成する経路概略作成部(25)を備える。音声処理制御部(23)は、音声処理部(19)およびスピーカ(6)を介して、誘導前に音声で経路概略を報知する。ユーザは、運転中等で視線を移せない状況においても安全に経路を事前認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置および方法、並びにナビゲーションプログラムに関し、より特定的には、音声を用いて経路誘導を行うナビゲーション装置および方法、並びにナビゲーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地までの経路を計算した結果を実際に経路案内を行う前に画面上に表示して、ユーザが当該経路を事前確認できるナビゲーション装置が知られている。また、設定された経路をユーザが事前確認するために、仮想車両を誘導経路に沿って移動させ、実際の実車両が経路に沿って移動した時と同様の案内情報をディスプレイ上に表示するドライブシミュレーション方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−218048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来のナビゲーション装置や方法では、計算した経路を事前確認するために当該経路を画面上に表示している。したがって、ユーザが車両前方に注意をはらって運転を行う状況においては、計算結果の経路を確認するために画面上へユーザの視線を移動させることになり、運転の集中を妨げる可能性がある。
【0004】
それ故に、本発明の目的は、ユーザが表示画面等に視線を移すことなく安全に経路を事前に確認することができるナビゲーション装置および方法、並びにナビゲーションプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
第1の発明は、設定された経路に基づいて、音声を用いて経路誘導するナビゲーション装置である。ナビゲーション装置は、地図情報取得部、現在位置検出部、経路探索部、経路概略作成部、および音声処理制御部を備える。地図情報取得部は、地図情報を取得する。現在位置検出部は、現在位置を検出する。経路探索部は、地図情報取得部が取得した地図情報を用いて、出発地から目的地までの経路探索を行って経路を設定する。経路概略作成部は、経路探索部が設定した経路に関する地図情報を取捨選択してその経路の概略データを作成する。音声処理制御部は、経路探索部が設定した経路に対する現在位置に基づいて、音声によってその経路を誘導する。音声処理制御部は、現在位置に基づいて経路を誘導する前に、経路概略作成部が作成した経路の概略データに基づいて、音声を用いてその経路の概略を報知する。
【0006】
第2の発明は、上記第1の発明において、経路概略作成部は、音声処理制御部が音声を用いてその経路の概略を報知する際の音声再生時間が所定の長さ以内になるように経路の概略データを作成する。
【0007】
第3の発明は、上記第1の発明において、経路概略作成部は、情報の種類に対してそれぞれ優先順位を付与し、それら優先順位に基づいて情報の取捨選択を行って経路の概略データを作成する。
【0008】
第4の発明は、上記第3の発明において、経路概略作成部は、経路探索部が設定した経路の全長距離に応じて、情報の種類に対してそれぞれ付与する優先順位を変更する。
【0009】
第5の発明は、上記第4の発明において、経路概略作成部は、経路探索部が設定した経路の全長距離が相対的に短いとき、経路中で曲がる交差点および付近のランドマークに関する情報に対して付与する優先順位を高く設定する。
【0010】
第6の発明は、上記第4の発明において、経路概略作成部は、経路探索部が設定した経路の全長距離が相対的に長いとき、経路の距離、予想走行時間、および道路名称に関する情報に対して付与する優先順位を高く設定する。
【0011】
第7の発明は、上記第3の発明において、経路概略作成部は、経路探索部が設定した経路を所定数に分割し、それぞれ分割されたエリアに属する情報の種類に対してそれぞれ付与する優先順位を変更する。
【0012】
第8の発明は、上記第7の発明において、経路概略作成部は、出発地を含むエリアに属する情報の種類に付与する優先順位を、他のエリアに属する同じ情報の種類に付与する優先順位より高く設定する。
【0013】
第9の発明は、設定された経路に基づいて、音声を用いて経路誘導するナビゲーション装置のコンピュータで実行されるナビゲーションプログラムである。ナビゲーションプログラムは、地図情報取得ステップ、現在位置検出ステップ、経路探索ステップ、経路概略作成ステップ、および音声処理制御ステップを、コンピュータに実行させる。地図情報取得ステップは、地図情報を取得する。現在位置検出ステップは、現在位置を検出する。経路探索ステップは、地図情報取得ステップが取得した地図情報を用いて、出発地から目的地までの経路探索を行って経路を設定する。経路概略作成ステップは、経路探索ステップが設定した経路に関する地図情報を取捨選択してその経路の概略データを作成する。音声処理制御ステップは、経路探索ステップが設定した経路に対する現在位置に基づいて、音声によってその経路を誘導する。音声処理制御ステップは、現在位置に基づいて経路を誘導する前に、経路概略作成ステップが作成した経路の概略データに基づいて、音声を用いてその経路の概略を報知する。
【0014】
第10の発明は、設定された経路に基づいて、音声を用いて経路誘導するナビゲーション方法である。ナビゲーション方法は、地図情報取得ステップ、現在位置検出ステップ、経路探索ステップ、経路概略作成ステップ、および音声処理制御ステップを含む。地図情報取得ステップは、地図情報を取得する。現在位置検出ステップは、現在位置を検出する。経路探索ステップは、地図情報取得ステップが取得した地図情報を用いて、出発地から目的地までの経路探索を行って経路を設定する。経路概略作成ステップは、経路探索ステップが設定した経路に関する地図情報を取捨選択してその経路の概略データを作成する。音声処理制御ステップは、経路探索ステップが設定した経路に対する現在位置に基づいて、音声によってその経路を誘導する。音声処理制御ステップは、現在位置に基づいて経路を誘導する前に、経路概略作成ステップが作成した経路の概略データに基づいて、音声を用いてその経路の概略を報知する。
【発明の効果】
【0015】
上記第1の発明によれば、経路を設定して実際の経路誘導を開始する前に、音声によって経路の概略をユーザに報知することことができる。これによって、ユーザは、運転中等で視線を移せない状況においても安全に経路を事前認識することができる。その際、ユーザにとって経路が理解しやすくなる経路概略が案内されるため、ユーザが要領よく案内される経路を認識することができる。
【0016】
上記第2の発明によれば、経路の概略をユーザに報知する音声の再生時間が長時間となることによってユーザが煩わしさを感じることなく、適切な長さの再生時間で経路概略を案内できる。
【0017】
上記第3の発明によれば、経路概略案内に適した情報に対して優先順位を高く設定することによって、設定した経路の特徴を捉えて簡潔に案内することが可能となり、ユーザが経路の概略を理解しやすいものになる。
【0018】
上記第4の発明によれば、一般的に、設定された経路の全体距離によってユーザが必要とする情報の種類が異なるため、その全体距離に応じて適切な情報を経路概略案内することができる。
【0019】
上記第5の発明によれば、出発地に対して目的地が相対的に近くにあるような経路では、一般的に設定された経路の距離や予想走行時間より経路中の曲がる交差点名や曲がる地点のランドマーク等が必要な情報となる。このような要求に対して、適切な情報を経路概略案内することができる。
【0020】
上記第6の発明によれば、出発地に対して目的地が相対的に遠くにあるような経路では、一般的に詳細な交差点情報や主要道以外の道路名称に関する情報より経路全体が把握できる情報を必要とする。このような要求に対して、適切な情報を経路概略案内することができる。
【0021】
上記第7の発明によれば、概略として必要とされる情報は、一般的に経路におけるエリアによってそれぞれ異なることがある。このような要求に対して、適切な情報を経路概略案内することができる。
【0022】
上記第8の発明によれば、目的地が相対的に遠くにある経路でも、出発地近くで曲がる交差点に関する情報等は重要な情報となる。このような要求に対して、適切な情報を経路概略案内することができる。
【0023】
また、本発明のナビゲーションプログラムおよびナビゲーション方法によれば、上述したナビゲーション装置と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[図1]図1は、本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の外観構成を示す概略斜視図
[図2]図2は、図1のナビゲーション装置の内部構成を示すブロック図
[図3]図3は、図1のナビゲーション装置におけるナビゲーション動作を示すフローチャート
[図4]図4は、図3におけるステップS5の経路概略案内処理の詳細な動作を示すサブルーチン
[図5]図5は、経路探索された出発地および目的地の第1の例を示す図
[図6]図6は、経路探索された出発地および目的地の第2の例を示す図
[図7]図7は、経路探索された出発地および目的地の第3の例を示す図
[図8]図8は、経路距離に応じて音声案内する項目を決定するための優先順位表の一例
[図9]図9は、図4におけるステップS12の経路概略案内データ作成の詳細な動作を示すサブルーチン
【符号の説明】
【0025】
1…装置本体
2…電源LED
3…測位精度LED
4…SDカードスロット
5…リモコン受光部
6…スピーカ
11…方位センサ
12…車速センサ
13…センサ信号処理部
14…GPS受信部
15…システム制御部
16…操作部
17…地図情報取得部
18…SDカード
19…音声処理部
20…点灯処理部
21…現在位置検出部
22…経路探索部
23…音声処理制御部
24…測位精度検出部
25…経路概略作成部
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置について説明する。図1は、当該ナビゲーション装置の外観構成を示す概略斜視図である。当該ナビゲーション装置は、主に車両等に車載されて用いられる。
【0027】
図1において、本発明のナビゲーション装置は、装置本体1を有している。装置本体1は、その内部にナビゲーション装置の現在位置を検出するためのGPS(Global Positioning System)受信機、方位センサ、ROM等の記憶部を備えたコンピュータ等が組み込まれている。なお、後述により明らかとなるが、ナビゲーション装置は、搭載される車両の車速および方位の変化情報を取得することができ、高架下やトンネル内等GPS電波が受信できない場所でも正確なルート案内が可能となる、いわゆる「GYRO内蔵」タイプの装置である。装置本体1の筐体表面には、電源LED2、測位精度LED3、SDカード(Secure Digital memory card)スロット4、リモコン受光部5、およびスピーカ6が設けられる。なお、本実施形態のナビゲーション装置は、ディスプレイのような表示部が設けられておらず、後述により明らかとなるが経路案内が音声によって行われる。
【0028】
電源LED2は、ナビゲーション装置における電源のオン/オフ状態を表示する。測位精度LED3は、現在の測位精度を発光動作により通知する測位精度通知手段である。SDカードスロット4は、地図情報を格納する外部補助記憶媒体として用いられるSDカードを挿入するスロットである。なお、本発明のナビゲーション装置に用いる外部補助記憶媒体は、SDカードでなくてもCDやDVD等の他の形式の記憶媒体でもかまわない。この場合、SDカードスロット4は、外部補助記憶媒体として用いられる他の形式に合わせたスロットとなる。リモコン受光部5は、ナビゲーション装置への操作や設定をユーザが行うためのリモコン信号を受ける。スピーカ6は、ユーザに対して経路案内を行うための音声出力部である。
【0029】
図2は、本実施形態におけるナビゲーション装置の内部構成を示すブロック図である。図2において、ナビゲーション装置は、方位センサ11、車速センサ12、およびセンサ信号処理部13により構築される車両の自立航法システムを有している。方位センサ11は、搭載される車両の角速度を検出する角速度センサ等により構成される。車速センサ12は、搭載される車両の車速や移動距離を検出する。センサ信号処理部13は、方位センサ11および車速センサ12からの信号を受け取り、当該信号を処理する。
【0030】
ナビゲーション装置は、上述した構成部の他に、GPS受信部14、システム制御部15、操作部16、地図情報取得部17、音声処理部19、および点灯処理部20を有している。GPS受信部14は、複数のGPS衛星からの電波を受信して演算を行い、ナビゲーション装置の緯度・経度・高度・進行方位のデータや受信している衛星の個数等の受信状況を生成してシステム制御部15へ出力する。システム制御部15は、ナビゲーション装置の動作に必要な演算や制御等の各種処理を行う。操作部16は、ユーザがシステム制御部15へ指示入力するためのキーボードやリモコン等で構成され、リモコンで構成される場合、リモコン受光部5(図1)を介してリモコン信号がナビゲーション装置へ入力する。SDカードスロット4に装着されたSDカード18には地図情報が格納されており、地図情報取得部17は、SDカード18から必要に応じて地図情報を取得し、システム制御部15へ送る。ここで、地図情報を格納する外部補助記憶手段としては、SDカード18の他にCDやDVDなど各種の記憶媒体を用いることもできる。上記地図情報は、距離情報、走行時間情報、有料道路の利用料金情報、道路名称、交差点名称、ランドマーク等、一般的なナビゲーション動作に用いられる各種情報を含んでいる。音声処理部19は、システム制御部15の制御に応じて音声による経路案内を行うための音声処理を行い、スピーカ6へ音声メッセージ信号を出力する。点灯処理部20は、システム制御部15からの測位精度検出信号に基づいて、測位精度LED3に発光表示させて、ユーザに現在の測位精度の状態を通知する。
【0031】
システム制御部15は、現在位置検出部21、経路探索部22、音声処理制御部23、測位精度検出部24、および経路概略作成部25を備えている。例えば、システム制御部15は、ROM等の記憶部(図示せず)を備えたコンピュータによって構成され、当該記憶部に格納されたナビゲーションプログラムをコンピュータが実行することによって、システム制御部15内の各部が機能する。現在位置検出部21は、センサ信号処理部13で処理された信号およびGPS受信部14からの検出信号に基づいて、ナビゲーション装置が搭載される車両の現在位置を検出する測位手段である。経路探索部22は、操作部16からの指示入力に応じて、出発地から目的地までの経路を探索する。経路概略作成部25は、経路探索部22で探索された経路の概略を作成する。音声処理制御部23は、ナビゲーション装置の動作中における経路案内や経路概略作成部25で作成された経路概略の説明を音声により行うための音声処理制御を行う。測位精度検出部24は、現在位置検出部21で検出された測位精度が良好であるか否かを検出する。
【0032】
図3〜図9を参照して、本実施形態のナビゲーション装置の動作について説明する。なお、図3は、当該ナビゲーション装置におけるナビゲーション動作を示すフローチャートである。図4は、図3におけるステップS5の経路概略案内処理の詳細な動作を示すサブルーチンである。図5〜図7は、経路探索された出発地および目的地の具体例を示す図である。図8は、経路距離に応じて音声案内する項目を決定するための優先順位表の一例である。図9は、図4におけるステップS12の経路概略案内データ作成の詳細な動作を示すサブルーチンである。
【0033】
図3において、ナビゲーション装置の電源がオンされると、コンピュータが上記記憶部に格納されたナビゲーションプログラムを実行してシステム制御部15が起動する。そして、システム制御部15のコントロール動作により、地図情報取得部17がSDカード18から地図情報を取り込んでデータを保持する。一方、方位センサ11および車速センサ12は、自立航法演算に必要なそれぞれの信号を取得し、当該信号がセンサ信号処理部13で処理される。また、GPS受信部14は、GPS衛星からの受信データを取得する。現在位置検出部21は、センサ信号処理部13が処理したデータから所定の演算を行って自車位置および進行方位を算出し、当該算出情報とGPS受信部14からの情報とを比較して互いの誤差を調整し、車両の現在位置を検出する(ステップS1)。ここで、検出された現在位置は、出発地として設定される。
【0034】
次に、ユーザが操作部16を用いて経路案内を行う目的地を入力し、経路探索部22が用いる目的地が設定される(ステップS2)。目的地が設定されると、経路探索部22は、出発地から目的地までの経路探索を行う(ステップS3)。経路探索としては、一般的なダイクストラ法等により計算することができる。次に、上記ステップS1と同様にして、現在位置検出部21は、車両の現在位置を再度取得する(ステップS4)。そして、上記ステップS3で探索された経路データに基づいて経路概略作成部25が動作し、経路概略案内処理が行われる(ステップS5)。この経路概略案内処理の詳細については、後述する。
【0035】
次に、現在位置検出部21において上記ステップS4で検出された現在位置データが音声処理制御部23へ送られ、音声処理制御部23は、上記ステップS3で探索された経路データに基づいて、現在の車両位置に対する経路案内処理を行う(ステップS6)。例えば、音声処理部19を介してスピーカ6からは、「もうすぐ○○通りを通過します。」とか、「もうすぐ△△橋に到達します。」とか、「次の交差点を右に曲がってください。」といった音声メッセージが再生される。さらに、目的地等が変更されると経路探索部22により再度経路探索が行なわれ、更新された経路に基づいて経路案内処理が行われる。上述したように本実施形態に係るナビゲーション装置は、音声のみによって経路案内が行われディスプレイ等を用いた表示情報を用いない。したがって、上記経路案内のための音声メッセージには、経路案内の内容をディスプレイに表示する情報量と同等の詳細な内容が含まれる。
【0036】
次に、システム制御部15は、車両が設置した目的地に到着したか否かをチェックする(ステップS7)。そして、システム制御部15は、車両が目的地に到着していない場合、上記ステップS4に戻って処理を繰り返す。一方、システム制御部15は、車両が目的地に到着した場合、当該フローチャートによる処理を終了する。
【0037】
なお、ステップS7の処理としては、車両が目的地に到着したか否かのチェックでなくてもかまわない。例えば、システム制御部15が「経路案内の中断指示があったか否か」をチェックするようにしてもよく、これら両方のチェック処理を相前後して実行してもよい。
【0038】
次に、図4を参照して、上記ステップS5の経路概略案内処理の詳細な動作について説明する。
【0039】
まず、システム制御部15は、経路概略を案内する必要があるか否かを判断する(ステップS11)。ここで、経路概略とは、これからユーザに対して経路案内するための経路を簡潔に説明するためのものであり、これから経路案内されるルートをユーザに事前認識させるために行われる。そして、ユーザは、経路概略を音声で案内されることによって事前に目的地までルートを知り、その経路概略が示すルートで走行していいのか等を判断する。例えば、システム立ち上げ後、設定された経路に対して一度も経路概略案内をしていない場合や、経路が変更されて、変更された経路に対して一度も経路概略案内をしていない場合の様に、ユーザに対して設定された経路に対する概略案内をしていない場合に、システム制御部15は、経路概略案内の必要があると判断する。一方、ユーザに対して既に経路概略案内を実行済みの場合、同じ経路について何度も概略案内をしてもユーザにとって煩わしいだけなので、システム制御部15は、経路概略を案内する必要がないと判断する。上記ステップS11において、システム制御部15は、経路概略案内が必要であると判断した場合、処理を次のステップS12に進める。一方、システム制御部15は、経路概略案内が不要と判断した場合、当該サブルーチンによる処理を終了する。
【0040】
ステップS12において、経路概略作成部25は、経路探索部22で作成された経路データに基づいて、経路概略案内データを作成する。なお、この経路概略案内データの作成処理の詳細については、後述する。そして、上記ステップS12で作成された経路概略案内データが音声処理制御部23へ送られ、音声処理制御部23は、当該経路概略案内データに基づいて、音声で経路概略案内を行う(ステップS13)。そして、当該サブルーチンによる処理を終了する。
【0041】
ここで、経路概略案内について説明する。上述したように、本実施形態のナビゲーション装置は、ディスプレイを有していない。したがって、従来のディスプレイを有するナビゲーション装置の様に、ディスプレイに表示された地図上に探索された経路を重畳してユーザに提示したり、出発地から目的地までの経路で経由する地点ごとに名称や距離などを詳細に表示したりして、事前の経路案内を行うことはできない。それらを、単に音声で案内するとしても膨大な情報が音声で長時間案内されるだけで、ユーザにとって煩わしいだけになる。そのため、本実施形態のナビゲーション装置における経路概略案内では、探索された経路について長々と経由地の名称、道路名、距離、交差点の右左折等を案内するのではなく、経路概略作成部25において情報が取捨選択された簡潔な経路(経路概略)で音声案内される。
【0042】
例えば、音声を用いて経路概略で案内する情報は、経路の距離、経路の予想走行時間、経路の料金、経路の道路名称、経路中に曲がる交差点、および経路中に曲がる地点付近のランドマーク等があり、地図情報取得部17が取得した地図情報等に含まれる情報である。具体的には、経路概略として経路の距離を案内する音声は、「走行距離は、30kmです。」と発声する。経路概略として経路の予想走行時間を案内する音声は、「予想走行時間は、1時間20分です。」と発声する。経路概略として経路の料金を案内する音声は、「料金は、1250円です。」と発声する。経路概略として経路の道路名称を案内する音声は、「国道1号線、東名高速道路を使うルートです。」と発声する。経路概略として経路中の曲がる交差点を案内する音声は、「銀座一丁目を左折するルートです。」と発声する。そして、経路概略として経路中の曲がる地点付近のランドマークを案内する音声は、「池袋サンシャイン60の手前を右折するルートです。」と発声する。
【0043】
上述したように、経路概略案内は、設定した経路に関して全ての情報を単純に羅列して案内すると、案内が長時間になり全体的な経路の特徴が示すことができないため、ユーザが混乱してしまう。したがって、経路概略案内では、設定した経路の特徴を捉えて簡潔に案内することによって、ユーザが経路を理解しやすいものにしなければならない。本実施形態では、設定した経路の特徴を捉えて簡潔にするために、経路概略案内に適した情報を取捨選択する。この経路概略案内で用いられる情報の選択方法としては、予め情報に重み付け(優先度)することが考えられる。例えば、道路名称の中では高速道路>国道>県道の順に重み付けされ、経由地の中では駅や名所等のランドマークや道路情報がよく提供される有名な交差点を重み付けを高く設定しておき、探索された経路の中で、重み付けの高い上位のいくつかの情報を選択して、音声案内すればよい。また、この場合、重み付けの高い情報が1ヶ所に偏ってしまう可能性があるため、出発地近辺エリア、目的地近辺エリア、および両エリアに挟まれた中間エリアに分割して、各エリア毎に最も重み付けが高い情報を所定数ずつ選択すれば、選択される情報が1ヶ所に偏ることを防ぐことができる。
【0044】
図5〜図9を参照して、上述したような経路概略案内を行うための経路概略案内データの作成手順について説明する。本実施形態における経路概略案内では、音声で案内する全体時間が時間Tmax以内になるように経路概略案内データを作成する。そして、案内する情報に優先順位を付与して当該優先順位に応じて音声情報を選択して追加し、音声情報の追加を時間Tmax以内とする。
【0045】
案内する情報に付与される優先順位は、設定された経路全体の距離(出発地から目的地までの距離;以下、経路距離dと記載する)や出発点や目的地に対する距離に応じて変化する。例えば、出発地Xから目的地Y1までの経路距離dが距離A未満となる経路(図5参照)、出発地Xから目的地Y2までの経路距離dが距離A以上距離B未満となる経路(図6参照)、および出発地Xから目的地Y3までの経路距離dが距離B以上となる経路(図7参照)の3つに設定された経路を分類する。
【0046】
例えば、図5に示した出発地Xから目的地Y1までの経路距離dが距離A未満となる経路の場合、出発地Xに対して目的地Y1が相対的に近くにある。この場合、ユーザは、一般的に設定された経路の距離や予想走行時間より経路中の曲がる交差点名や曲がる地点のランドマーク等が必要な情報となる。したがって、案内する情報に付与される優先順位は、経路中に曲がる交差点や経路中に曲がる地点付近のランドマークに関する情報に対して高く設定する。
【0047】
例えば、図7に示した出発地Xから目的地Y3までの経路距離dが距離B以上となる経路の場合、出発地Xに対して目的地Y3が相対的に遠くにある。この場合、ユーザは、一般的に詳細な交差点情報や主要道以外の道路名称に関する情報より経路全体が把握できる情報を必要とする。したがって、案内する情報に付与される優先順位は、経路の距離、経路の予想走行時間、および経路の道路名称に関する情報に対して高く設定する。しかしながら、目的地が相対的に遠くにある経路でも、出発地近くで曲がる交差点に関する情報等は重要な情報となる。そこで、図7に示すように経路全体を距離で3等分して、出発地Xに近いエリアをエリアn、目的地Y3に近いエリアをエリアf、エリアnおよびエリアfの中間エリアをエリアmに設定する。そして、出発地Xに近いエリアnに属する交差点情報に付与する優先順位を、他のエリアに対して高く設定する。このように優先順位を設定することによって、図7に示すエリアfに属する交差点Hに対してエリアnに属する交差点Gに関する情報が経路概略案内データに追加される可能性が高くなる。なお、図6に示すような出発地Xから目的地Y2までの経路距離dが距離A以上距離B未満となる経路の場合、経路全体を距離で2等分して同様に優先順位が設定される。
【0048】
図8は、上述した優先順位を付与する法則に従って作成した優先順位表の一例である。図8に示すように、経路距離dおよび設定された経路中のエリアに応じて、情報に優先順位が付与されている。なお、図8の優先順位表では、数値が小さいほど優先順位が高いことを示している。
【0049】
図9を参照して、図4におけるステップS12の経路概略案内データ作成の詳細な動作を説明する。経路概略作成部25は、経路探索部22が探索して設定された経路(ステップS3参照)に対して、経路距離dを算出し、当該経路距離dに応じて優先順位表を選択する(ステップS31)。そして、経路概略作成部25は、案内時間TをT=0に設定し、優先順位iをi=1に設定して、当該サブルーチンで用いる一時変数を初期化する(ステップS32)。
【0050】
次に、経路概略作成部25は、上記ステップS31で選択した優先順位表(図8参照)を参照して優先順位iに対応する情報を抽出して音声案内Viを作成する(ステップS33)。そして、経路概略作成部25は、上記ステップS33で作成した音声案内Viを音声で案内するために要する音声時間Tiを算出する(ステップS34)。
【0051】
次に、経路概略作成部25は、案内時間Tに音声時間Tiを加算した時間が予め設定された最大音声案内時間Tmax以上であるか否かを判断する(ステップS35)。そして、経路概略作成部25は、最大音声案内時間Tmax未満の場合に処理を次のステップS36に進め、最大音声案内時間Tmax以上の場合に当該サブルーチンによる処理を終了する。
【0052】
ステップS36において、経路概略作成部25は、案内時間Tに音声時間Tiを加算して案内時間Tを更新する(ステップS36)。そして、経路概略作成部25は、上記ステップS33で作成された音声案内Viを経路概略案内データに追加する(ステップS37)。
【0053】
次に、経路概略作成部25は、優先順位iが予め設定された最低優先順位imax以下か否かを判断する(ステップS38)。そして、経路概略作成部25は、最低優先順位imax以下の場合、優先順位iに1を加算して優先順位iを更新し(ステップS39)、上記ステップS33に戻って処理を繰り返す。一方、経路概略作成部25は、優先順位iが最低優先順位imaxより大きい場合、当該サブルーチンによる処理を終了する。
【0054】
このように、本実施形態のナビゲーション装置は、経路を設定して実際の経路誘導を開始する前に、音声によって経路の概略をユーザに報知することことができる。これによって、ユーザは、運転中等で視線を移せない状況においても安全に経路を事前認識することができる。その際、スピーカから「国道○△号線を使用のあと、○○高速道路を使うルートで高速料金は××です。」というようなユーザにとって経路が理解しやすい簡潔な経路概略が案内されるため、ユーザが要領よく案内される経路を認識することができる。
【0055】
なお、ユーザが今まで走行した道路や地点等の頻度を記憶しておき、当該頻度が高いエリアに対する情報に付与される優先順位を低く設定してもかまわない。これによって、ユーザが熟知しているエリアに対しては経路概略案内で選択される情報を少なくし、ユーザが走行していないエリアに対しては経路概略案内で選択される情報を多くすることができるため、ユーザの走行経験地域に応じた経路概略案内を行うことができる。
【0056】
また、上記優先順位は、ユーザによって変更可能にしてもかまわない。例えば、有料道路の利用に注目するユーザが、設定された経路中に高速道路が含まれる場合、当該高速道路の利用料金の情報に関する優先順位を高くすることが考えられる。また、ユーザが経路概略案内して欲しい情報だけが選択されるようにしてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るナビゲーション装置および方法、並びにナビゲーションプログラムは、経路誘導前の経路概略案内を音声により行うことができ、表示装置を備えていない装置を用いてナビゲーション動作するナビゲーション装置および方法、並びにナビゲーションプログラムとして有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された経路に基づいて、音声を用いて経路誘導するナビゲーション装置であって、
地図情報を取得する地図情報取得部と、
現在位置を検出する現在位置検出部と、
前記地図情報取得部が取得した地図情報を用いて、出発地から目的地までの経路探索を行って経路を設定する経路探索部と、
前記経路探索部が設定した経路に関する地図情報を取捨選択して当該経路の概略データを作成する経路概略作成部と、
前記経路探索部が設定した経路に対する前記現在位置に基づいて、音声によって当該経路を誘導する音声処理制御部とを備え、
前記音声処理制御部は、前記現在位置に基づいて経路を誘導する前に、前記経路概略作成部が作成した経路の概略データに基づいて、音声を用いて当該経路の概略を報知することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路概略作成部は、前記音声処理制御部が音声を用いて当該経路の概略を報知する際の音声再生時間が所定の長さ以内になるように前記経路の概略データを作成することを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記経路概略作成部は、情報の種類に対してそれぞれ優先順位を付与し、当該優先順位に基づいて情報の取捨選択を行って前記経路の概略データを作成することを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記経路概略作成部は、前記経路探索部が設定した経路の全長距離に応じて、前記情報の種類に対してそれぞれ付与する優先順位を変更することを特徴とする、請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記経路概略作成部は、前記経路探索部が設定した経路の全長距離が相対的に短いとき、前記経路中で曲がる交差点および付近のランドマークに関する情報に対して付与する優先順位を高く設定することを特徴とする、請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記経路概略作成部は、前記経路探索部が設定した経路の全長距離が相対的に長いとき、前記経路の距離、予想走行時間、および道路名称に関する情報に対して付与する優先順位を高く設定することを特徴とする、請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記経路概略作成部は、前記経路探索部が設定した経路を所定数に分割し、それぞれ分割されたエリアに属する情報の種類に対してそれぞれ付与する優先順位を変更することを特徴とする、請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記経路概略作成部は、前記出発地を含むエリアに属する情報の種類に付与する優先順位を、他のエリアに属する同じ情報の種類に付与する優先順位より高く設定することを特徴とする、請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
設定された経路に基づいて、音声を用いて経路誘導するナビゲーション装置のコンピュータで実行されるナビゲーションプログラムであって、
前記コンピュータに、
地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
現在位置を検出する現在位置検出ステップと、
前記地図情報取得ステップが取得した地図情報を用いて、出発地から目的地までの経路探索を行って経路を設定する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップが設定した経路に関する地図情報を取捨選択して当該経路の概略データを作成する経路概略作成ステップと、
前記経路探索ステップが設定した経路に対する前記現在位置に基づいて、音声によって当該経路を誘導する音声処理制御ステップとを実行させ、
前記音声処理制御ステップは、前記現在位置に基づいて経路を誘導する前に、前記経路概略作成ステップが作成した経路の概略データに基づいて、音声を用いて当該経路の概略を報知することを特徴とする、ナビゲーションプログラム。
【請求項10】
設定された経路に基づいて、音声を用いて経路誘導するナビゲーション方法であって、
地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
現在位置を検出する現在位置検出ステップと、
前記地図情報取得ステップが取得した地図情報を用いて、出発地から目的地までの経路探索を行って経路を設定する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップが設定した経路に関する地図情報を取捨選択して当該経路の概略データを作成する経路概略作成ステップと、
前記経路探索ステップが設定した経路に対する前記現在位置に基づいて、音声によって当該経路を誘導する音声処理制御ステップとを含み、
前記音声処理制御ステップは、前記現在位置に基づいて経路を誘導する前に、前記経路概略作成ステップが作成した経路の概略データに基づいて、音声を用いて当該経路の概略を報知することを特徴とする、ナビゲーション方法。

【国際公開番号】WO2005/038404
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514832(P2005−514832)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015442
【国際出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】