説明

ナビゲーション装置及びその地図表示制御プログラム

【目的】地図の縮尺変更をズーム的に行いアニメーション効果を加えビジュアル性の高いナビゲーション装置及び画面表示制御プログラムを提供。
【構成】(a)装置が起動すると、(b)データベースの地図データに基づくルート案内が開始され、(c)表示地図の案内ルートにおける次の案内地点が画面上の予め定めた広域表示判定枠の外又は詳細表示判定枠の中にあるかを判定し、(d)NOの場合は現在の表示画面を維持し、YESの場合は現在地点と次の案内地点が画面内に収まる最大の縮尺値を算出し、(e)現在の画面表示縮尺値と算出された算出縮尺値との間に中間縮尺値1/N1、1/N2、・・を設定し、(f)算出縮尺の詳細地図または広域地図になるまで前記分割したそれぞれの縮尺で縮小化の順又は拡大化の順に所定時間間隔τで順次描画し、(g)算出縮尺の地図をズーム的なアニメーション効果を伴って表示する処理をコンピュータで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のナビゲーション装置の技術分野に属し、特に、表示装置の画面上に表示された案内ルートを示す地図の縮尺を変化させる自動縮尺変更手段を備えた車載用のナビゲーション装置の地図表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車載用のナビゲーション装置では、液晶或いはCRTなどの表示装置の画面上に表示した地図(2次元表示が一般であるが、よりビジュアルな3次元的表示のものもある。)上に、現在地点やユーザーが音声或いはデジタイザ等により入力した目的地点を表示しつつ目的地点に至るルート案内を音声を交えて視覚、聴覚両面から行っている。
【0003】
そして、目的地点が現在地点から遠い場合は、広域地図(=拡大縮尺)にて現在地点と目的地点を同時に表示するようにして大まかなルートを示したり、曲がるべき交差点に近づいたらより詳細な地図(=縮小縮尺)に縮尺を切り換えて現在地点付近のルートを表示したりして案内ルートを分かりやすく表示する機能を備えるものがある。なお、次に曲がるべき交差点や重要な目印となる地点、その他警告の必要な危険な地点など、ナビゲーションの際に確実に案内すべき重要地点はマニューバポイントと称されているが、本発明では案内地点と総称する。
【0004】
ところで、ナビゲーション装置における表示装置に画面表示される地図の縮尺を変化させる(切り換える)手段に関する技術については、既に幾つかの特徴を備えたものが公知文献として開示されている。
【0005】
下記[特許文献1]には、自車の現在地点の変化に対応して自動的に地図の表示縮尺を変更して運転者に適切なナビゲーション情報を提供する目的で、自車が右折左折を行う交差点に接近すると、自車位置と交差点が画面内に入る縮尺で、地図を詳細に表示する機能の技術が示されている。
【0006】
また、下記[特許文献2]には、出発地点と目的地点が同時に画面内に入る縮尺で地図を広域表示し、その画面上でさらに経路を選択できる機能の技術が示されている。
【0007】
さらに、下記[特許文献3]には、目的地点までの経路中の地点リストから、ある目標地点をユーザーが選択し、自車位置とその目的地点までの範囲が常に画面内に含まれる縮尺で表示して、接近することにより自動的に地図をより詳細に表示する機能の技術が示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平07−332993号公報
【0009】
【特許文献2】特開2001−74481号公報
【特許文献3】特開2002−148058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記[特許文献1]に記載されたナビゲーション装置の技術においては、案内する目的地点が遠くに存在して進路がほぼ直線でしばらく続くような場合、自車の広域表示による経路把握ができなくなる。
【0011】
上記[特許文献2]に記載されたナビゲーション装置の技術においては、出発地点と目的地点が画面内に入る縮尺での表示機能であり、対象とする右折/左折地点などの案内地点での詳細表示や広域表示はなされない。
【0012】
上記[特許文献3]に記載されたナビゲーション装置の技術においては、ユーザーが選択した特定の地点に対する表示地図の自動縮尺変更機能であり、右折/左折等の案内地点での詳細表示や広域表示はなされない。
【0013】
また、前記特許文献1〜3を含めて従来の自動縮尺変更手段では、画面表示されたある縮尺の地図から次の異なる縮尺の地図(広域地図から詳細地図へ、或いはその逆)へと瞬間的な切換が行われており、視覚的に縮尺の変化の程度が把握しずらく、且つ「交差点を曲がった途端にいきなり詳細地図から広域地図に切り換わってしまった」というような違和感を伴う。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ルート案内時において、例えば案内地点である次の右折/左折地点がどこであるのかを、現在地点と次の案内地点を含む詳細表示或いは広域表示を行い、次の案内地点への案内ルートを完全且つ容易に把握できるようにし、且つ、変更する縮尺値の地図を瞬時に切り換えて表示するのではなく、変更する縮尺の地図まで時間間隔を空けて徐々に段階的に縮尺値を上げる(下げる)ことにより、ズーム感覚のアニメーション効果(段階的に縮尺値を変化させてズーム的に変化させることで、どの程度表示されている地図の縮尺が変更された(ズームした)かをビジュアルに認識できるとともに、心地よい動的なフィーリングが得られる視覚効果。)を加えてビジュアル性を高めるようにしたナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
(1) データベース5に記憶された地図データを基に、表示装置6の画面上に表示される現在地点Aから目的地点Xに至る案内ルートを示す地図の縮尺を変化させる自動縮尺変更手段15を備えるナビゲーション装置において、
前記自動縮尺変更手段15が、
前記案内ルート上に設定された複数の案内地点のうちの1つの案内地点通過後に次の案内地点Bが前記画面上の予め定めた広域表示判定枠F1の外または予め定めた詳細表示判定枠F2の中にあるかの判定を行う案内地点判定手段11と、
前記案内地点判定手段11の判定結果に応じて現在地点Aと前記次の案内地点Bとが前記画面内に収まる地図の最大の縮尺値を算出する適正縮尺算出手段12と、
前記画面上に表示している現在の地図の画面表示縮尺値1/Naと前記適正縮尺算出手段12によって算出された算出縮尺値1/Nb(1/Nc)との間に所定数の中間縮尺値1/N1、1/N2、・・を設定する中間縮尺値設定手段13と、
前記算出縮尺値1/Nbの地図になるまで前記中間縮尺値1/N1、1/N2、・・における縮小化の順或いは拡大化の順に所定時間間隔τで前記地図データに基づく地図を前記表示装置6の画面上に描画表示させる縮尺順次切換手段14と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置20を提供することにより、上記課題を解決する。
(2) 前記自動縮尺変更手段15における画面表示の縮尺順次切換手段14は、前記データベース5から読み出された前記表示装置6に表示させるための一画面分の地図データを一時記憶する第1及び第2の記憶手段M1、M2と、この第1及び第2の記憶手段M1、M2を制御し、前記中間縮尺値1/N1、1/N2、・・に従った前記表示装置6の画面上の描画の切り換えを行う描画自動切換手段17と、を備え、
前記描画自動切換手段17は、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1を読み出して前記表示装置6の画面上に描画するとともに、次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2に書き込み、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1の描画開始から所定時間τ経過後に表示対象を切り換えて前記次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2から読み出して前記画面上に描画を開始するようにし、以後、次画面の地図データDxを順次に前記第1又は第2の記憶手段M1、M2に交互に書き込みつつ、その書き込み順に前記表示装置6の画面上に表示する地図データを所定時間間隔τで切り換えて描画させることを特徴とする上記(1)に記載のナビゲーション装置20を提供することにより、上記課題を解決する。
(3) コンピュータを、データベース5に記憶された地図データを基に、表示装置6の画面上に表示される現在地点Aから目的地点Xに至る案内ルートを示す地図の縮尺を変化させる自動縮尺変更手段15として機能させるナビゲーション装置20用の地図表示制御プログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記案内ルート上に設定された複数の案内地点のうちの1つの案内地点通過後に次の案内地点Bが前記画面上の予め定めた広域表示判定枠F1の外または予め定めた詳細表示判定枠F2の中にあるかの判定を行う案内地点判定手段11と、
前記案内地点判定手段11の判定結果に応じて現在地点Aと前記次の案内地点Bとが前記画面内に収まる地図の最大の縮尺値を算出する適正縮尺算出手段12と、
前記画面上に表示している現在の地図の画面表示縮尺値1/Naと前記適正縮尺算出手段12によって算出された算出縮尺値1/Nbとの間に所定数の中間縮尺値1/N1、1/N2、・・を設定する中間縮尺値設定手段13と、
前記算出縮尺値1/Nbの地図になるまで前記中間縮尺値1/N1、1/N2、・・における縮小化の順或いは拡大化の順に所定時間間隔τで前記地図データに基づく地図を前記表示装置6の画面上に描画表示させる縮尺順次切換手段14と、
を備えた自動縮尺変更手段15として機能させるための地図表示制御プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(4) 前記(3)に記載の地図表示制御プログラムにおいて、
前記縮尺順次切換手段14は、前記データベース5から読み出された前記表示装置6に表示させるための一画面分の地図データD1、D2、・・Dx・・を一時記憶する第1及び第2の記憶手段M1、M2を制御し、前記中間縮尺値1/N1、1/N2、・・に従った前記表示装置6の画面上の描画の切り換えを行う描画自動切換手段17を備えた手段としてコンピュータに実現されるものであり、
前記描画自動切換手段17は、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1を読み出して前記表示装置6の画面上に描画するとともに、次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2に書き込み、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1の描画開始から所定時間τ経過後に表示対象を切り換えて前記次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2から読み出して前記画面上に描画を開始するようにし、以後、次画面の地図データDxを順次に前記第1又は第2の記憶手段M1、M2に交互に書き込みつつ、その書き込み順に前記表示装置6の画面上に表示する地図データを所定時間間隔τで切り換えて描画させる手段であることを特徴とする地図表示制御プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るナビゲーション装置及びそのコンピュータを本発明に係る各処理手段として機能させるための地図表示制御プログラムは、上記のように構成されているため、
(1)現在地点から目的地点に至るルートのナビゲーション時において、現在地点と次の案内地点(例えば、次の右折/左折地点)を含む詳細表示或いは広域表示を行うので、案内ルートを正確且つ容易に把握できる。
(2)ナビゲーション時の画面表示された地図の縮尺を切り換える場合に、変更する縮尺値の地図へ瞬時に切り換えて表示するのではなく、変更する縮尺値の地図まで段階的に縮尺値を変化させてアニメーション的にズーム表示することで、どの程度縮尺したか(ズームしたか)をビジュアルに把握できるとともに、心地よい動的なフィーリングが得られる視覚効果(アニメーション効果)が加わったビジュアル性の高いナビゲーションが実現する。
(3)データベースから読み出した段階的に縮尺値を変化させた所望の地図データを順次に表示装置の画面上に描画する場合に、2つの記憶手段に対して次画面の地図データを交互に記憶させつつ順次に、一画面の地図データ量の大小に係らず(表示装置の画面上に一画面の地図データが完全に描画されていなくても)、所定時間間隔で次画面に切り換えるので、スムーズなズーム表示が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るナビゲーション装置及びその地図表示制御プログラムの実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係るナビゲーション装置の全体ブロック構成図である。図2は本発明に係るナビゲーション装置の自動縮尺変更手段の構成を説明するための機能ブロック図である。図3は本発明に係るナビゲーション装置の案内地点判定手段を説明するための画面表示された地図の例である。図4は本発明に係るナビゲーション装置の自動縮尺変更手段中に描画自動切換手段を有する構成を説明するための機能ブロック図である。図5は描画自動切換手段を備える画面表示の縮尺順次切換手段の行う処理を説明するためのブロック図である。図6は本発明に係るナビゲーション装置の処理装置を自動縮尺変更手段として機能させる地図表示制御プログラムの処理の全体フローチャートである。図7は描画自動切換手段の行う処理のフローチャートである。図8は本発明に係るナビゲーション装置における広域地図から次の左折する案内地点の詳細地図への縮尺の変更過程の例を説明するための概念図である。図9は本発明に係るナビゲーション装置における詳細地図から次の案内地点の右折する交差点が含まれる広域地図への縮尺の変更過程の例を説明するための概念図である。
【0019】
本発明のナビゲーション装置20のブロック回路構成は、従来のナビゲーション装置と同様な構成となっている。即ち、図1において、GPS(Global Positioning System)受信機1は、複数の人工衛星から送信されてくる信号を受信して所定の信号に変換して自車の緯度及び経度を演算して求める装置であり、衛星航法システムによる自己の絶対位置検出を実現すべく設けられている。
【0020】
方位センサ2は、地磁気を検出して自車の進行方向の方位を検出するものであり、車速センサ3は自車の走行速度を検出し、且つ走行距離を検出することができるセンサである。なお、図示されないステアリングセンサなどの他のセンサが配備されることもある。
【0021】
操作装置8は、ナビゲーション装置20に対して運転者が目的地点の入力などの各種入力(指タッチによるデジタイジング等)を実行するためのものである。
【0022】
データベース5には、CD−ROMやDVD或いはハードディスク(HD)などを記録媒体とする記憶装置に、広域地図(=拡大縮尺)から例えば交差点近傍を詳しく表示する詳細地図(=縮小縮尺)まで各種縮尺に対応可能な地図データが格納されている。
【0023】
処理装置4は、データベース5の前記地図データを読み出し、液晶或いはCRTなどの表示装置6に地図を表示するとともに、前記GPS受信機1及び方位センサ2や車速センサ3などのセンサ出力に応答して自車の現在位置を地図上に表示する。さらに、前記操作装置8にて入力された目的地点に対して探索した好ましい案内ルートを地図上に表示しつつ音声合成回路を備える音声ガイド装置7を用いて案内地点(マニューバポイント)などの音声ガイドを運転中に行うための処理を実行するマイクロコンピュータを主体とした制御処理回路で構成される。
【0024】
さて、本発明のナビゲーション装置20は、運転者に対する的確な分かりやすいガイドを実現すべく、案内ルート上の或る案内地点の通過後に際して、次の案内地点或いは目的地点(これも案内地点として含まれる。)が必ず地図上に表示されるように地図の縮尺を自動的に切り換える点、及び地図の縮尺の切り換えが違和感なくどの程度の縮尺値の変更が行われたかをビジュアルに、アニメーション効果を伴ってズーム的に変更する点に特徴を有している。以下、上記地図の表示手段とアニメーション効果を伴う地図の自動縮尺変更手段について専ら詳述する。
【0025】
図1における本発明のナビゲーション装置20の処理装置4において、図2の機能ブロック図に示されるように、前記処理装置4内の自動縮尺変更手段15が、前記案内ルート上に設定された複数の案内地点のうちの1つの案内地点通過後に表示装置6の画面に表示された図3のような案内の地図の案内ルート(黒太線)における次の案内地点Bが前記画面上の予め定めた広域表示判定枠F1(白の大きな破線枠)の外または予め定めた詳細表示判定枠F2(白の小さな破線枠)の中にあるかの判定を行う案内地点判定手段11と、前記案内地点判定手段11の判定結果に応じて中央下方に位置する現在地点Aと前記次の案内地点Bとが前記画面内に収まるような地図の最大の縮尺値を算出する適正縮尺算出手段12と、前記画面上に表示している現在の地図の画面表示縮尺値1/Naと前記適正縮尺算出手段12によって算出された算出縮尺値1/Nbとの間に所定数の中間縮尺値1/N1、1/N2、・・を設定する中間縮尺値設定手段13と、前記算出縮尺値1/Nbの地図になるまで前記中間縮尺値1/N1、1/N2、・・における縮小化の順或いは拡大化の順に所定時間間隔τで前記地図データに基づく地図を前記表示装置6の画面上に描画表示させる縮尺順次切換手段14と、を備える構成となっている。
【0026】
上記案内地点判定手段11は、処理装置4のマイクロコンピュータを後述の地図表示制御プログラムにて機能される機能ブロックであり、前記データベース5の地図データを基に画面表示された地図の座標データと次の案内地点Bの位置座標及び判定枠F1、F2の座標から演算処理にて判定結果が出力される。
【0027】
上記適正縮尺算出手段12は、処理装置4のマイクロコンピュータを後述の地図表示制御プログラムにて機能される機能ブロックであり、前記広域表示判定枠F1と前記詳細表示判定枠F2との間の領域に次の案内地点Bが位置するような画面上で画面対角線の長さの1/2乃至4/5程度の距離となる最大の縮尺値(換言すれば、一般に画面上に位置が固定された現在地点Aと次の案内地点Bとを同時に画面上に可及的に離しつつ案内ルートを分かりやすく表示するに適正な最大の縮尺値)を演算処理にて算出して切り換えるべき算出縮尺値を出力する。
【0028】
上記縮尺分割手段13は、処理装置4のマイクロコンピュータを後述の地図表示制御プログラムにて機能される機能ブロックであり、現在の画面表示縮尺1/Naの縮尺値と、前記適正縮尺算出手段12で算出された算出縮尺1/Nbとの間に所定数(例えば5個、10個等)の中間縮尺値を設定する演算処理を行い、結果を出力する。
【0029】
上記縮尺順次切換手段14は、処理装置4のマイクロコンピュータを後述の地図表示制御プログラムにて機能される機能ブロックであり、前記データベース5の地図データを基に表示装置6の画面に前記縮尺分割手段13で求められた現在の縮尺1/Naの地図から切り換えるべき算出縮尺1/Nbの地図に至る分割された各縮尺の地図を順次表示する。この表示の切り換えは0.1〜0.5秒程度の所定時間間隔τで行われ、切換に要するズーム時間は中間縮尺値の設定数に依存するが概ね1〜2秒が好ましい。設定数を多くすれば、滑らかなアニメーション効果の高いズームが実現でき、ビジュアル性の高い地図の縮尺切換が得られることになる。
【0030】
この点、前記データベース5から読み出された段階的に縮尺値を変化させた所望の一画面の地図データD1、D2、D3、D4、・・Dx・・が順次に表示装置6の画面上に描画される場合に、一画面の地図データ量の大小に係らず、前記表示装置6の画面上に一画面の地図データ(例えば、上記地図データD1)が完全に描画されていなくても、所定時間間隔τ(一定)で次画面の地図データ(例えば、上記地図データD2)の描画に切り換わるようにすることが望ましい。
【0031】
蓋し、中間縮尺値の設定数を多くし(例えば9)、且つ、ズーム時間を好ましい値(例えば1秒間)に抑えようとすると、一画面の地図データが画面上に表示される時間は短く(0.1秒)しなければならないが、マニューバポイントその他の情報が多く表示されるデータ量が大きい詳細地図のような地図データでは、前記データベース5からこれを読み出して一時記憶するための記憶手段としての表示用メモリ装置に書き込む時間が長くなり(0.2秒ほど要する場合も有り得る。)、これを前記表示装置6の画面上に完全に描画した後に、次画面の地図データの表示に切り換えるのでは、ズーム時の表示時間間隔がチグハグとなってスムーズなズーム表示が困難となる。
【0032】
思考するに、ズーム途中の中間縮尺値の地図データD1、D2、D3、D4、・・Dx・・の表示は過渡的なものであるので、前記表示装置6の画面上に完全に描画する必要性は高くないといえる。
【0033】
そこで、最良の実施の形態として、ズーム途中の中間縮尺値の地図データD1、D2、D3、D4、・・Dx・・の表示は、所定時間間隔τ(0.1秒〜0.5秒の一定値)で(前の一画面分の地図データの画面上への描画が未完であっても、完了を待たずに)画面上に表示することを優先させた処理とするのが望ましい。
【0034】
このような観点から、本発明のナビゲーション装置20では、図4、図5に示されるように、前記自動縮尺変更手段15における画面表示の縮尺順次切換手段14は、前記データベース5から読み出された前記表示装置6に表示させるための一画面分の地図データを一時記憶する第1及び第2の記憶手段M1、M2(処理装置4で制御されるDRAMなどのマイクロコンピュータ内蔵或いは外付けのメモリ装置)と、この第1及び第2の記憶手段M1、M2を制御し、前記中間縮尺値1/N1、1/N2、・・に従った前記表示装置6の画面上の描画の切り換えを行う描画自動切換手段17と、を備えており、前記描画自動切換手段17は、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1を読み出して前記表示装置6の画面上に描画するとともに、次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2に書き込み、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1の描画開始から所定時間τ経過後に表示対象を切り換えて前記次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2から読み出して前記画面上に描画を開始するようにし、以後、次画面の地図データDxを順次に前記第1又は第2の記憶手段M1、M2に交互に書き込みつつ、その書き込み順に前記表示装置6の画面上に表示する地図データを所定時間間隔τで切り換えて描画させる構成となっている。
【0035】
即ち、一方の記憶手段(例えば第1の記憶手段M1)が表示に使用されている時に、他方の記憶手段(例えば第2の記憶手段M2)を次縮尺の地図データのデータベース5からの検索、書き込みのために使用されるのである。
【0036】
なお、上記描画自動切換手段17は、機能的には前記縮尺順次切換手段14内に設けられ、前記処理装置4のマイクロコンピュータを後述の図7のフローチャートに従った制御プログラムにて機能される機能ブロックである。
【0037】
次に、図6に示される本発明に係るナビゲーション装置20の処理装置4を自動縮尺変更手段として機能させる地図表示制御プログラムの処理の全体フローチャートにおいて、本発明の地図表示制御プログラムの処理内容は以下の(a)〜(g)のステップの手順で実行される。
【0038】
(a)ナビゲーション装置20が起動し、ユーザーが操作装置8を用いて目的地点Xが入力されると、(b)処理装置4のデータベース5の地図データに基づく表示装置6の画面表示及び音声ガイド7によるルート案内が開始され、(c)現在画面上に表示されている地図の案内ルートにおける次の案内地点Bが画面上の予め定めた広域表示判定枠F1の外または予め定めた詳細表示判定枠F2の中にあるかの判定を行う案内地点判定手段11を機能させるステップを実行し、(d)前記判定でNOの場合は現在の表示画面を維持し、YESの場合は現在地点Aと前記次の案内地点Bとが前記表示装置6の画面内に収まる地図の適正な最大の縮尺値1/Nbを算出する適正縮尺算出手段12を機能させるステップを実行し、(e)前記画面上に表示している現在の画面表示縮尺値1/Naと前記適正縮尺算出手段12によって算出された算出縮尺値1/Nbとの間に所定数(2〜15程度)の中間縮尺値を設定する中間縮尺値設定手段13を機能させるステップを実行し、(f)前記算出縮尺値1/Nbの詳細地図または広域地図になるまで前記設定した中間縮尺値1/N1、1/N2、・・における縮小化の順或いは拡大化の順に所定時間間隔τで前記地図データに基づくそれぞれの縮尺の地図を前記表示装置6の画面上に描画表示させる縮尺順次切換手段14を機能させるステップを実行し、(g)最終的に前記算出縮尺値1/Nbの地図を前記表示装置6の画面上に表示する処理制御をマイクロコンピュータで行う。
【0039】
上記(a)〜(g)のステップは地図の自動縮尺変更手段15による1回のルーチン処理であり、案内地点Bを通過して新たな次の案内地点B′が現れる度に実行され、最終的に目的地点X(=最後の案内地点)の詳細地図の表示で終了する。
【0040】
また、特に、図6の(f)から(g)の地図を表示装置6の画面上に描画表示させる前記縮尺順次切換手段14を機能させるコンピュータの地図表示制御プログラムについて、前述のスムーズなズーム表示を実現させるための描画自動切換手段17の構成に基づいて、図5に示される前記データベース5から読み出された前記表示装置6に表示させるための一画面分の地図データD1、D2、・・Dx・・を一時記憶する第1及び第2の記憶手段M1、M2に対して、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1を読み出して前記表示装置6の画面上に描画するとともに、次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2に書き込み、前記第1の記憶手段M1に書き込んだ地図データD1の描画開始から所定時間τ経過後に表示対象を切り換えて前記次画面の地図データD2を前記第2の記憶手段M2から読み出して前記画面上に描画を開始するようにし、以後、次画面の地図データDxを順次に前記第1又は第2の記憶手段M1、M2に交互に書き込みつつ、その書き込み順に前記表示装置6の画面上に表示する地図データDxを所定時間間隔τで切り換えて描画させる描画自動切換手段17の制御を行う前記縮尺順次切換手段14として機能させる。
【0041】
即ち、図7のフローチャートに示されるように、(イ)前記表示装置6に表示する地図データの切換をスタートすると、(ロ)次画面の中間縮尺値の地図データを前記データベース5から読み出して次画面用の第1又は第2の記憶手段M1又はM2への書き込みを開始し、(ハ)所定時間間隔τ待って、(ニ)表示対象を前記次画面用の第1又は第2の記憶手段M1又はM2に書き込まれた地図データDxに切換え、(ホ)その表示対象がズーム切換の最終である算出縮尺値1/Nbの地図データか否かを判定し、(ヘ)YESの場合は縮尺順次切換の処理を終了し、地図切換えを終了し、NOの場合は前記(ロ)の前に戻る制御フローとなっている。
【0042】
簡単な例として、図8において、(イ)の画面表示の地図のように、現在地点Aと次の案内地点Bである左折すべき交差点の双方を含む広域地図21(現在地点Aと案内地点Bは直線距離でかなり長い距離がある。)において、自車が直線案内ルートを直進して現在地点Aが案内地点Bに近づいて、詳細表示判定枠F2内に入ると(現在地点A′)、(イ)の広域地図21の縮尺(1/Na)から(ニ)の前記詳細表示判定枠F2を画面一杯に表示したと同等な詳細地図24の縮尺(算出縮尺1/Nb)に変化するが、この切り換えにおいて、(イ)の広域地図21の縮尺1/Naと(ニ)の詳細地図24の縮尺1/Nbとの間に所定数(図8では2つ)の中間縮尺値である(ロ)の1/N1の縮尺地図22と(ハ)の1/N2の縮尺地図23を順次に所定時間間隔τ(τ=0.1秒〜0.5秒)で表示して段階的に(中間縮尺値の設定数が多ければ殆ど連続的でスムーズなズーム的拡大、縮小となる。)表示することにより、アニメーション効果を伴った縮尺変更の表示地図切り換えが実現する。
【0043】
なお、図8の(イ)の広域地図21においては、現在地点Aが時間の経過とともにA′に画面上に固定された地図上を進んでいくイメージであるが、実際のナビゲーション装置では、現在位置Aを画面上に固定しておいて、次の案内地点Bが表示されている地図とともに現在地点Aへ近づいてくるイメージの方式が多く採用されている。勿論、この場合でも上記と同様のアニメーション効果を伴った縮尺変更の表示地図切り換えを実現することができる。
【0044】
次に、前記案内地点Bの交差点を案内に従って左折した直後には、図9の(ホ)のような現在地点A″を含む縮尺1/Nbの詳細地図25のままであるが、次の案内地点Cが画面に入っていないので、図6のフローチャートにおける(c)以降のフローの実行によって次の案内地点Cと現在地点A″が含まれる(リ)の縮尺1/Ncの広域地図29に切り換えられるが、その詳細地図25から広域地図29に切り換わる際には、両者の縮尺の中間のそれぞれ異なる縮尺値の地図である(へ)の縮尺1/N3の地図、(ト)の縮尺1/N4の地図、(チ)の縮尺1/N5の地図が所定時間間隔τ(0.1〜0.5秒)で広域地図化の方向に順次に表示することにより、前述と同様にアニメーション効果を伴った縮尺変更の表示地図切り換えが実現する。
【0045】
以上のように、本発明のナビゲーション装置20では、表示装置の画面に表示された地図の縮尺を変化させる自動縮尺変更手段15によって、案内地点を通過すると必ず現在地点と次の案内地点が含まれるような縮尺の広域地図に切り換わり、次の案内地点に近づくと詳細地図となるように表示される地図の縮尺が変更するので、ユーザーは容易且つ確実に案内ルートを認識することができることになる。
【0046】
また、縮尺が切り換わる際には、アニメーション効果を伴うズーム切換で所定時間間隔で徐々に表示される地図が拡大或いは縮小するので、どの程度の縮尺の変更となったかが容易にビジュアルに把握することが可能になり、ユーザーにとって違和感の少ない快適なルート案内が実現するのである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置の全体ブロック構成図である。
【図2】本発明に係るナビゲーション装置の自動縮尺変更手段の構成を説明するための機能ブロック図である。
【図3】本発明に係るナビゲーション装置の案内地点判定手段を説明するための画面表示された地図の例である。
【図4】本発明に係るナビゲーション装置の自動縮尺変更手段中に描画自動切換手段を有する構成を説明するための機能ブロック図である。
【図5】描画自動切換手段を備える画面表示の縮尺順次切換手段の行う処理を説明するためのブロック図である。
【図6】本発明に係るナビゲーション装置の処理装置を自動縮尺変更手段として機能させる地図表示制御プログラムの処理の全体フローチャートである。
【図7】描画自動切換手段の行う処理のフローチャートである。
【図8】本発明に係るナビゲーション装置における広域地図から詳細地図への縮尺の変更過程の例を説明するための概念図である。
【図9】本発明に係るナビゲーション装置における詳細地図から広域地図への縮尺の変更過程の例を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0048】
1 GPS受信機
2 方位センサ
3 車速センサ
4 処理装置
5 データベース
6 表示装置
7 音声ガイド装置
8 操作装置
11 案内地点判定手段
12 適正縮尺算出手段
13 中間縮尺値設定手段
14 縮尺順次切換手段
15 自動縮尺変更手段
17 描画自動切換手段
20 ナビゲーション装置
21、29 広域地図
22、23、26、27、28 縮尺地図
24、25 詳細地図
A、A′、A″ 現在地点
B、B′、C 次の案内地点
D1、D2、D3、D4、Dx 中間縮尺値の地図データ
X 目的地点
F1 広域表示判定枠
F2 詳細表示判定枠
1/Na 現在の画面表示縮尺の縮尺値
1/Nb 算出縮尺値
M1 第1の記憶手段
M2 第2の記憶手段
τ 所定時間間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースに記憶された地図データを基に、表示装置の画面上に表示される現在地点から目的地点に至る案内ルートを示す地図の縮尺を変化させる自動縮尺変更手段を備えるナビゲーション装置において、
前記自動縮尺変更手段が、
前記案内ルート上に設定された複数の案内地点のうちの1つの案内地点通過後に次の案内地点が前記画面上の予め定めた広域表示判定枠の外または予め定めた詳細表示判定枠の中にあるかの判定を行う案内地点判定手段と、
前記案内地点判定手段の判定結果に応じて現在地点と前記次の案内地点とが前記画面内に収まる地図の最大の縮尺値を算出する適正縮尺算出手段と、
前記画面上に表示している現在の地図の画面表示縮尺値と前記適正縮尺算出手段によって算出された算出縮尺値との間に所定数の中間縮尺値を設定する中間縮尺値設定手段と、
前記算出縮尺値の地図になるまで前記中間縮尺値における縮小化の順或いは拡大化の順に所定時間間隔で前記地図データに基づく地図を前記表示装置の画面上に描画表示させる縮尺順次切換手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記自動縮尺変更手段における画面表示の縮尺順次切換手段は、前記データベースから読み出された前記表示装置に表示させるための一画面分の地図データを一時記憶する第1及び第2の記憶手段と、この第1及び第2の記憶手段を制御し、前記中間縮尺値に従った前記表示装置の画面上の描画の切り換えを行う描画自動切換手段と、を備え、
前記描画自動切換手段は、前記第1の記憶手段に書き込んだ地図データを読み出して前記表示装置の画面上に描画するとともに、次画面の地図データを前記第2の記憶手段に書き込み、前記第1の記憶手段に書き込んだ地図データの描画開始から所定時間経過後に表示対象を切り換えて前記次画面の地図データを前記第2の記憶手段から読み出して前記画面上に描画を開始するようにし、以後、次画面の地図データを順次に前記第1又は第2の記憶手段に交互に書き込みつつ、その書き込み順に前記表示装置の画面上に表示する地図データを所定時間間隔で切り換えて描画させることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
コンピュータを、データベースに記憶された地図データを基に、表示装置の画面上に表示される現在地点から目的地点に至る案内ルートを示す地図の縮尺を変化させる自動縮尺変更手段として機能させるナビゲーション装置用の地図表示制御プログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記案内ルート上に設定された複数の案内地点のうちの1つの案内地点通過後に次の案内地点が前記画面上の予め定めた広域表示判定枠の外または予め定めた詳細表示判定枠の中にあるかの判定を行う案内地点判定手段と、
前記案内地点判定手段の判定結果に応じて現在地点と前記次の案内地点とが前記画面内に収まる地図の最大の縮尺値を算出する適正縮尺算出手段と、
前記画面上に表示している現在の地図の画面表示縮尺値と前記適正縮尺算出手段によって算出された算出縮尺値との間に所定数の中間縮尺値を設定する中間縮尺値設定手段と、
前記算出縮尺値の地図になるまで前記中間縮尺値における縮小化の順或いは拡大化の順に所定時間間隔で前記地図データに基づく地図を前記表示装置の画面上に描画表示させる縮尺順次切換手段と、
を備えた自動縮尺変更手段として機能させるための地図表示制御プログラム。
【請求項4】
請求項3記載の地図表示制御プログラムにおいて、
前記縮尺順次切換手段は、前記データベースから読み出された前記表示装置に表示させるための一画面分の地図データを一時記憶する第1及び第2の記憶手段を制御し、前記中間縮尺値に従った前記表示装置の画面上の描画の切り換えを行う描画自動切換手段を備えた手段としてコンピュータに実現されるものであり、
前記描画自動切換手段は、前記第1の記憶手段に書き込んだ地図データを読み出して前記表示装置の画面上に描画するとともに、次画面の地図データを前記第2の記憶手段に書き込み、前記第1の記憶手段に書き込んだ地図データの描画開始から所定時間経過後に表示対象を切り換えて前記次画面の地図データを前記第2の記憶手段から読み出して前記画面上に描画を開始するようにし、以後、次画面の地図データを順次に前記第1又は第2の記憶手段に交互に書き込みつつ、その書き込み順に前記表示装置の画面上に表示する地図データを所定時間間隔で切り換えて描画させる手段であることを特徴とする地図表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−23712(P2006−23712A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149902(P2005−149902)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】