説明

ナビゲーション装置及び地図更新システム

【課題】車両とサーバーとの間の通信トラフィック量を低減させることでサーバーの負担を軽減しつつ、ユーザに有用な無駄のない地図更新を実現すること。
【解決手段】ナビゲーション装置3aは、自機にて設定された目的地の位置情報を、他機であるナビゲーション装置3bに車車間通信装置10を介して送信する。ナビゲーション装置3bは自車位置からその目的地までの経路を探索し、経路探索結果を返す。ナビゲーション装置3aは、他機の経路探索結果と、自機の備える地図データ21に基づいて探索された経路とに不一致部分があるかを判定し、不一致部分が生じた場合には、自機の地図データ21を更新する必要があると判定する。そして、情報センター1に地図データ21の更新を要求し、経路における不一致部分を含む部分の地図データのみをダウンロードし、地図データ21を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置が備える地図データが最新であるか否かを判定して地図更新を行うナビゲーション装置及び地図更新システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在位置から目的地に至る経路に基づいてユーザを目的地まで案内する車載型、あるいは携帯型もしくは可搬型のナビゲーション装置が知られている。現在位置から目的地に至る経路は地図データに基づいて探索されるため、例えば、新設された道路等が地図データに記憶されていない場合、あるいは廃止になった道路がある場合、これらの状況を考慮した経路の探索は不可能である。
【0003】
そのため、従来、車両側のナビゲーション装置の地図データが最新であるかどうかを地図データのバージョン情報等に基づいて判定し、最新でないと判定された場合には、サーバーから最新の地図データを無線通信によりダウンロードし、車両側の地図データを更新する地図更新システムが知られている。ところが、車両側のナビゲーション装置にとっては、サーバーからダウンロードする最新の地図データを必ずしも全て必要としない場合が多い。例えば、愛知県内やその周辺を主として走行するユーザにとっては、北海道地域の最新の地図道路情報を取得しても無用であり、更新の際に要した時間やコストが無駄になってしまう。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1に記載の技術では、車両側のナビゲーション装置の地図データに基づいて探索された目的地に至る経路と、地図配信センターのサーバーにおける最新の地図データに基づいて探索された目的地に至る経路とに差分が生じた場合に、ナビゲーション装置の地図データの更新が必要であると判定し、ナビゲーション装置は、経路に差分の生じた部分が含まれる地図データのみをサーバーからダウンロードし、更新するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−77254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、車両側のナビゲーション装置は、自機の備える地図データが最新であるか否かを判定するために、目的地を設定する毎に車両の現在位置情報、及び、目的地の位置情報等をサーバーに送信する必要がある。一方、地図配信センターのサーバーはその受信した情報に基づいて経路を探索し、各車両に対し探索結果を送信する。そのため、各車両とサーバー間における通信トラフィック量は大きく、通信情報が集中するサーバーの通信負荷は大きい。また、サーバーは、各車両から情報を受信する毎に、経路探索処理を実行する必要があるため、その処理のための計算負荷も大きい。これらのように、特許文献1に記載の技術においては、サーバーの負荷が極めて大きくなるといった問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ナビゲーション装置とサーバーとの間の通信トラフィック量を低減させることでサーバーの負担を軽減しつつ、ユーザに有用な無駄のない地図更新を実現するためのナビゲーション装置及び地図更新システムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、他のナビゲーション装置を利用することにより、サーバーとの通信、およびサーバーの負荷を抑制することができるナビゲーション装置及び地図更新システムを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、車両に搭載された車車間通信機能を利用して他のナビゲーション装置と通信することにより、サーバーとの通信、およびサーバーの負荷を抑制することができるナビゲーション装置及び地図更新システムを提供することにある。

本発明のさらに他の目的は、他のナビゲーション装置との通信の無駄を抑制することができるナビゲーション装置及び地図更新システムを提供することにある。
【0010】
本発明のさたに他の目的は、複数の他のナビゲーション装置から、地図データの更新の必要性を判定するために適した他のナビゲーション装置を選択することにより、他のナビゲーション装置との通信の無駄を抑制することができるナビゲーション装置及び地図更新システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、地図データを複数に分割できる状態で記憶し、地図データの一部のみを独立して更新可能であるナビゲーション装置であって、通信手段が、自機において設定された目的地の位置情報を他機に送信し、他機の地図データに基づいて、他機が探索した目的地までの経路の情報を受信し、判定手段が、通信により受信した経路が、自機の地図データに基づき探索される経路と不一致であることを判定し、地図更新手段が、不一致が判定されると、自機の地図データを更新することを特徴とする。本発明によれば、ユーザにとって有用な無駄のない地図更新を実現しながら、各ナビゲーション装置とサーバーとの間の通信トラフィック量を低減させ、さらに、サーバーに経路探索の計算負荷を与えないために、サーバーの負担を大幅に軽減させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、判定手段は、通信により受信した経路が、自機の地図データに基づき探索される経路と不一致である箇所を判定し、地図更新手段は、自機の地図データのうち、不一致である箇所の存在する部分の地図データを更新する。この発明は、地図データが部分的に更新される。従って、ナビゲーション装置とサーバーとの間の通信トラフィック量を低減させる。
【0013】
また、請求項3に記載のナビゲーション装置は、地図更新手段が、自機の地図データのうち、不一致である箇所の存在する部分の地図データを更新する際、自機の地図データにおいて、更新された部分の地図データと、更新された部分の周辺の地図データとが整合されない場合は、整合されない部分の地図データを併せて更新することを特徴とする。これにより、部分的な地図更新を実行した場合においても、既存の地図との整合がとれなくなり経路探索処理等に支障をきたすことを防ぐことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、通信手段は、複数の他機のうち、地図の差分を有する可能性の高い他機との通信を優先する優先処理手段を備える。この発明は、複数の他機との通信が可能である場合に、地図データの更新の必要性を判定できる可能性を高める。
【0015】
請求項5に記載の発明では、優先処理手段は、自機および他機を区域によって特徴付けており、複数の他機のうち、自機を特徴付ける区域とは異なる区域によって特徴付けられている他機との通信を優先する。この発明は、地図データの更新の必要性を判定できる可能性を、他機を特徴付けている区域へ積極的に拡大する。
【0016】
請求項6に記載の発明では、優先処理手段は、自機および他機を、基準位置が含まれる区域によって特徴付けており、複数の他機のうち、自機の基準位置が含まれる区域とは異なる区域に基準位置をもつ他機との通信を優先する。この発明は、地図データの更新の必要性を判定できる可能性を、他機の基準位置が含まれる区域へ積極的に拡大する。
【0017】
請求項7に記載の発明では、優先処理手段は、自機および他機を、通常の行動範囲を示す区域によって特徴付けており、複数の他機のうち、自機の行動範囲を示す区域とは異なる区域を行動範囲とする他機との通信を優先する。この発明は、地図データの更新の必要性を判定できる可能性を、他機の通常の行動範囲を示す区域へ積極的に拡大する。
【0018】
請求項8に記載された発明は、最新の地図データベースを保有するサーバーと、地図データを複数に分割できる状態で記憶し、地図データの一部のみを独立して更新可能であるナビゲーション装置との間で通信して、地図データの未更新部分を更新する地図更新システムであって、ナビゲーション装置は、自機において設定された目的地の位置情報を他機に送信し、他機の地図データに基づいて、他機が探索した目的地までの経路の情報を受信する通信手段と、通信により受信した経路が、自機の地図データに基づき探索される経路と不一致である箇所を判定する判定手段と、自機の地図データのうち、不一致である箇所の存在する部分の地図データを更新する地図更新手段とを備えることを特徴とする。本発明によれば、ユーザにとって有用な無駄のない地図更新を実現しながら、各ナビゲーション装置とサーバー間の通信トラフィック量を低減させ、さらに、サーバーに経路探索の計算負荷を与えないために、サーバーの負担を大幅に軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した第1実施形態の地図更新システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態のナビゲーション装置3aの制御部にて実行される地図更新処理を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態のナビゲーション装置3bの制御部にて実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の情報センターの制御部にて実行される地図データ配信処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明を適用した第2実施形態の作動を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した第3実施形態の地図更新システムのナビゲーション装置3aの制御部にて実行される地図更新処理を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態のナビゲーション装置3aの制御部にて実行される地図更新処理を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態の優先処理の他の例における自機と他機との地図上の関係を示す平面図である。
【図9】第3実施形態の優先処理のひとつの例における自機と他機との地図上の関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0021】
以下において、本発明を適用した実施形態を添付の図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を車載型のナビゲーション装置を含む地図更新システムに適用した例について説明する。また、本発明は下記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。実施形態の構成、作用、および効果は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の地図更新システムの全体構成を示すブロック図である。第1実施形態の地図更新システムは、情報センター1と、多数のナビゲーション装置3a、3bとにより構成されている。図には、説明を簡単にするために、2つのナビゲーション装置3a、3bが図示されている。これら2つのナビゲーション装置3a、3bは、車車間通信装置10、10によって相互に通信が可能な範囲内に位置している。4つ以上のナビゲーション装置が通信可能範囲に位置することもある。以下、この実施形態では、ナビゲーション装置3aを自機とし、ナビゲーション装置3bを他機として説明する。なお、ナビゲーション装置3bは便宜上構成を簡略化して図示したが、ナビゲーション装置3aと同等の構成を備える。
【0022】
情報センター1は、随時情報を更新可能な地図を記憶する地図データベース14と、ネットワーク(広域通信網)2を介してナビゲーション装置3a、3bと通信を行うネットワーク通信装置15と、通信やデータ授受を制御する制御部16とを備える。ネットワーク(広域通信網)2は、携帯電話通信網のネットワークシステムを利用する。制御部16は、CPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0023】
ナビゲーション装置3a、3bは、車両に搭載されたカーナビゲーション装置である。ナビゲーション装置3a、3bのそれぞれは、ナビゲーション装置3aに代表的に図示されるように、車車間通信装置10、情報記憶部20、ネットワーク通信装置30、自車位置検出部40、表示装置50、操作スイッチ群60、音声出力装置70、及び、制御部80を備える。
【0024】
車車間通信装置10は、送信装置、受信装置を含む通信機器であり、ミリ波(周波数30〜300GHzの電磁波)を無線通信メディアとする。車車間通信が可能な最大通信距離は、周辺環境にも依存するが、100〜200メートルである。車車間通信は、情報を受信することを要求する側の装置(例えば、自機装置)がリクエスト信号を送信し、このリクエスト信号を受信した情報提供側の装置(例えば、他機装置)が情報信号を送信することでなされる。リクエスト信号を受信した情報提供側の装置は、通信可能な状態である場合(例えば、システムリソースに余裕がある場合)に限り、要求された情報信号を送信する。
【0025】
情報記憶部20には、地図データ21が記憶され、また、図示されない、案内用の画像や音声データ等が記憶されている。なお、記憶媒体としては、書き換え可能なROM(Read Only Memory)、若しくは、読み書き可能なハードディスク、メモリ等を用いることができる。
【0026】
地図データ21は、表示装置50に地図を描画するために地図情報をユニット化した描画データ21aと、経路探索を実行するための経路データ21bとを含む。また、地図データ21は、メッシュと呼ばれる所定の大きさの矩形範囲(例えば、2キロ四方)を最小単位として、それらメッシュ毎に分割して格納されている。従って、地図データ21は、メッシュ単位で部分的に更新することが可能である。なお、各メッシュには、メッシュを一意に識別するためのID番号が付与されており、そのID番号には地図データの新旧を示すバージョン情報も含まれている。このように、ナビゲーション装置3a、3bは、地図データを複数に分割できる状態で記憶している。さらに、ナビゲーション装置3a、3bは、地図データの一部のみを独立して更新可能である。
【0027】
描画データ21aは、各道路に対応する緯度および経度情報、ノード番号、リンク番号、道路種別等のデータを格納する道路データと、道路や線路、建造物、私有地等といった施設や、海、河川等の地形を描画するための背景データと、地名や施設名等の文字データ等からなる。
【0028】
経路データ21bには、道路地図情報が、接続地点を示すノードとこのノード間を接続するリンク、からなるネットワーク情報として記憶されている。各道路、及び交差点に該当するリンク、及びノードには、例えば、各リンクやノードに付与された識別番号や、高速道路、有料道路、主要幹線道路、細街路等の道路種別、右左折禁止、一方通行、制限速度等の交通規制、リンク長、幅員の広狭、車線数の多寡数、勾配等の情報が付与されている。そして、これら情報に基づき各リンク、及びノードにはコストが設定されている。この経路データ21bに記憶されるネットワーク情報とコストに基づいて、制御部80は、コストの積和値が最小となるように周知のダイクストラ法等を用いて、現在の自車位置から目的地までの最適な経路計算を行う。
【0029】
ネットワーク通信装置30は、送信装置、受信装置を含む通信機器であり、ネットワーク2を介して情報センター1と情報の送受信を行う。
【0030】
自車位置検出部40は、GPS(Global Positioning System)からの送信電波を、GPSアンテナを介して受信することで自車位置と現在時刻を検知するGPS受信機41と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロセンサ42と、車両の速度を検出するための車速度センサ43とを備えている。自車位置検出部40は、これらの各検出信号に基づき位置座標及び進行方向の組として車両の現在の自車位置を算出する。そして、これらセンサ等41乃至43は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら自車位置の検出を行うように構成されている。なお、自車位置検出部40は、上述したうちの一部のセンサで構成してもよい。また、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサや、ステアリングの回転角センサ等を加えて構成してもよい。
【0031】
表示装置50は、カラー表示可能な液晶ディスプレイからなる。表示装置50の表示画面には、描画データ21に記憶されている道路や施設といった背景データ等から構成される地図と、車両の現在位置を示すマークや、目的地までの誘導経路等が地図に重ねて表示される。なお、各種施設の記号データや名称、目印、渋滞情報等を地図に重ねて表示させてもよい。表示装置としては、液晶ディスプレイ以外にも、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)等があるが、その何れを用いてもよい。
【0032】
操作スイッチ群60は、表示装置50と一体に構成され、表示画面上に設置されるタッチパネル及び表示装置50の周囲に設けられた釦スイッチ等が用いられる。なおタッチパネルと表示装置50とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式、電磁誘導方式、静電容量方式、あるいはこれらを組み合わせた方式などがあるが、何れを用いてもよい。
【0033】
音声出力装置70は、スピーカーからなり、情報記憶部20に記憶されている案内用の画像や音声データに基づいて各種案内の音声を出力する。
【0034】
制御部80は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて、操作スイッチ群60による操作によって指示された範囲の地図等を表示装置50に表示する地図表示処理、探索された経路に基づいてユーザを目的地まで案内する案内処理、及び、地図データ21を更新するための地図更新処理等を実行する。制御部80は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御部80によって実行されることによって、制御部80をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御部80を機能させる。制御部80が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0035】
なお、車車間通信装置10は、本発明の通信手段に、制御部80は、本発明の判定手段、及び、地図更新手段に相当する。
【0036】
続いて、ナビゲーション装置3aにおける制御部80において実行される地図更新処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。なお、本フローチャートに示す処理は、制御部80に記憶されているコンピュータプログラムに従って実行される。
【0037】
始めに、図2におけるステップS10において、自車位置を検出する。ステップS20では、ユーザが操作スイッチ群60を介して入力した目的地を経度および緯度情報として検出する。ステップS30では、他車のナビゲーション装置に車車間通信を要求するリクエスト信号を自車の周辺に送信する。
【0038】
ステップS40では、車車間通信が可能なナビゲーション装置3bを検出したか否かを判定する。他機のナビゲーション装置3bから信号を受信することで、車車間通信が可能なナビゲーション装置3bを検出した場合は(ステップS40:YES)、ステップS50に移行し、車車間通信が可能なナビゲーション装置を検出できない場合は(ステップS40:NO)、ステップS30に戻る。
【0039】
ステップS50では、車車間通信にて、ステップS20にて検出された目的地の位置情報(経度・緯度情報)を通信可能な他車のナビゲーション装置に対して送信する。
【0040】
ステップS60では、他車のナビゲーション装置において計算された目的地までの経路探索結果を、車車間通信にて受信したか否かを判定する。経路探索結果としては、目的地に至るまでの経路のリンク列、及び、その経路が存在するメッシュのID番号を受信する。リンク列、及びメッシュのID番号はテキスト情報なので、通信量はごく小さい。経路探索結果を受信した場合は(ステップS60:YES)、ステップS70に移行する。ステップS60は、経路探索結果を受信するまで自己遷移を繰り返す。
【0041】
ステップS70では、ステップS60にて受信した経路探索結果と、自機のナビゲーション装置で探索される経路とが一致するか否かを判定する。具体的には、経路探索結果として受信したリンク列のリンク番号と、自車のナビゲーション装置3aの地図データ21に基づいて探索された経路のリンク列のリンク番号とが、一致するか否かを判定する。リンク番号が一致しない部分が存在する場合、道路が新しく新設された状況や、既存の道路が取り壊された状況である可能性がある。受信した経路探索結果と、自機にて探索された経路とが一致した場合は(ステップS70:YES)、地図更新の必要はないと判断され、本処理を終了する。受信した経路探索結果と、自機にて探索された経路とが一致しない場合は(ステップS70:NO)、ステップS72に移行する。
【0042】
ステップS72では、目的地に至る経路が含まれるメッシュのうち、自機の方がバージョンが古いメッシュが存在するか否かを判定する。自機の方が古いメッシュが存在するか否かは、ステップS60にて受信したメッシュのID番号と自機の備える地図データのメッシュのID番号とを比較することにより、検出可能である。自機の方がバージョンが古いメッシュが存在する場合(ステップS72:YES)、ステップS74に移行し、自機の方がバージョンが古いメッシュが存在しない場合(ステップS72:NO)、地図更新の必要はないと判断され、本処理を終了する。
【0043】
ステップS74では、ステップS72にて、自機の方がバージョンが古いと判定されたメッシュのID番号を検出する。ステップS80では、ステップS74にて検出されたID番号に該当するメッシュ部分の地図データのダウンロードを要求する信号を、ネットワーク2を介して情報センター1に送信する。ステップS90では、情報センター1から送信される地図データ(該当するメッシュ部分のみ)のダウンロードを開始する。
【0044】
ステップS100では、メッシュのダウンロードが完了したか否かを判定する。ダウンロードが完了した場合は(ステップS100:YES)、ステップS110に移行する。ステップS100は、ダウンロードが完了するまで自己遷移を繰り返す。
【0045】
ステップS110では、ダウンロードした最新バージョンのメッシュを自機の情報記憶部20の地図データ21に格納させることで、地図データ21を更新する。このようにして、地図更新手段は、サーバーと通信して、地図データの未更新部分だけを部分的に更新する。
【0046】
続いて、ナビゲーション装置3bにおける制御部80において実行される処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。なお、本フローチャートに示す処理は、制御部80に記憶されているコンピュータプログラムに従って実行される。
【0047】
始めに、図3におけるステップS200では、他車のナビゲーション装置から車車間通信を要求するリクエスト信号を受信したかを判定する。他車のナビゲーション装置から送信されたリクエスト信号を受信した場合は(ステップS200:YES)、ステップS210に移行する。ステップS200は、他車のナビゲーション装置から送信されたリクエスト信号を受信するまで自己遷移を繰り返す。
【0048】
ステップS210では、自車のナビゲーション装置が車車間通信を可能な状態であるかどうかを判定する。システムリソースに余裕があり、車車間通信が可能な状態なら(ステップS210:YES)、ステップS220に移行し、車車間通信が不可能な状態なら(ステップS210:NO)、ステップS200に戻る。
【0049】
ステップS220では、車車間通信にて、他車にて設定された目的地の位置情報を受信する。ステップS230では、自車位置からステップS220で受信した目的地までの経路を自車の情報記憶部20に記憶される地図データに基づいて探索する。ステップS240ではステップS230にて探索された経路探索結果(リンク列、及び、経路が含まれるメッシュのID番号)を車車間通信にて他車のナビゲーション装置に送信して、本処理を終了する。
【0050】
続いて、情報センター1の制御部16において実行される処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。なお、本フローチャートに示す処理は、制御部16に記憶されているコンピュータプログラムに従って実行される。
【0051】
始めに、図4におけるステップS300では、ナビゲーション装置3aから地図データのダウンロードを要求する信号を、ネットワーク2を介して受信したか否かを判定する。ナビゲーション装置3aから送信される信号には、地図更新を要求するメッシュのID番号を含む。ナビゲーション装置3aからダウンロードを要求する信号を受信した場合は(ステップS300:YES)、ステップS310に移行する。ステップS300は、ナビゲーション装置3aからダウンロードを要求する信号を受信するまで自己遷移を繰り返す。
【0052】
ステップS310では、ステップS300にて受信した情報に含まれるID番号に該当するメッシュ部分のみの地図データを、ネットワーク2を介してナビゲーション装置3aに送信する。
【0053】
ステップS320では、ナビゲーション装置3aへの地図データの送信が完了したか否かを判定する。地図データの送信が完了した場合は(ステップS320:YES)、本処理を終了する。ステップS320は、地図データの送信が完了するまで自己遷移を繰り返す。
【0054】
以上のように、第1実施形態によれば、自機の地図データを更新する必要があるか否かを、他車のナビゲーション装置3bにおける経路探索結果を車車間通信にて受信し、その結果に基づいて判定するため、各ナビゲーション装置3a、3bと、情報センター1間における通信トラフィック量を軽減させ、さらに、情報センター1に経路探索の計算負荷を与えることもない。従って、情報センター1の負担を大幅に軽減させることができる。また、ナビゲーション装置3aにて設定された目的地までの経路において、他機にて探索された経路と自機にて探索された経路とが不一致であり、且つ、自機の備える地図データのバージョンが古い場合に地図更新を行う。従って、無用な地図更新をすることないため、ユーザに負担される通信費用や通信時間を軽減させることが可能である。
【0055】
(第2実施形態)
第1実施形態を変形した第2実施形態を、図5を参照して説明する。第2実施形態では、ナビゲーション装置3aが要求したメッシュ部分の地図データを更新する際、そのメッシュと、自機の地図データ21におけるその周囲のメッシュとが整合されるか否かを判定し、整合されない場合には、整合されないメッシュ部分の地図データを併せて更新する。図5(a)に示すように、更新されるメッシュに新規の道路が存在し、その新規道路が隣のメッシュに跨っている場合、更新されるメッシュには新規道路が存在するが、地図データに格納されているメッシュには新規道路が存在しない。従って、更新されるメッシュと、地図データに格納されているメッシュとの境界において、新規道路のリンクが中断され整合されない。整合されない場合、メッシュの境界において、新規道路に該当するリンク等のネットワーク情報を正確に構築することができず、経路探索の計算が不可能になる恐れがあるといった問題がある。そこで、第2実施形態においては、更新されるメッシュと地図データに格納されているメッシュとの境界において、それらメッシュが整合されるか否かを判定する。整合されるか否かは、例えば、更新されるメッシュに存在するリンクのうち、メッシュの境界を跨ぐリンクが、地図データに格納されているメッシュに存在するノードに確実に接続されているか否かで判定することが可能である。メッシュの境界を跨ぐリンクが地図データに格納されているメッシュに存在するノードに接続されない場合、メッシュの境界において、経路データ21bのネットワーク情報を構築することができず、メッシュの境界は整合されないと判定される。整合されないと判定された場合には、図5(b)に示すように、整合されないメッシュ部分の地図データとを併せて更新する。これにより、上記問題を発生させることなく、部分的な地図更新を実行した場合においても、既存の地図と整合されなくなり経路探索処理等に支障をきたすことを防ぐことができる。
【0056】
(第3実施形態)
第1実施形態を変形した第3実施形態を、図6ないし図9を参照して説明する。第3実施形態では、自機から通信可能な範囲内に、地図更新のための通信および処理を実行可能な複数の他機が存在する場合に、ひとつの他機を選び出して、その選ばれた他機との通信を優先する。より具体的には、複数の他機から、地図の更新された差分を有する可能性の高い他機を選択する。言い換えると、自機の地図データとは異なる新しい地図データを保有している可能性が高い他機を選択する。さらに、その選択された他機との通信を、選択されなかった他機に比べて優先して実行する。これにより、自機と他機との間の通信により地図データの更新の必要性が検出される可能性が高くなる。言い換えると、地図データの差分をもたない他機との通信の割合が減る。
【0057】
以下の説明では、ナビゲーション装置3aは自機3aとも呼ばれる。また、複数の他機には、第1他機としてのナビゲーション装置3b1と、第2他機としてのナビゲーション装置3b2とが少なくとも含まれる。ナビゲーション装置3b1は、第1他機3b1とも呼ばれる。ナビゲーション装置3b2は、第2他機3b2とも呼ばれる。
【0058】
図6は、この実施形態の地図更新システムのナビゲーション装置3aの制御部にて実行される地図更新処理を示すフローチャートである。まず、ステップS2010では、車車間通信装置10の通信可能範囲内に位置する他機を探索する。例えば、自機が搭載された車両が交差点において信号待ちのために停車した場合を考える。この場合、自機から通信可能な範囲内には、複数の車両が停車する場合がある。さらに、それら複数の車両には、自機と通信可能な複数の他機が搭載されている場合がある。ステップS2020では、通信可能な他機が存在するか否かを判定する。ここでは、地図更新のための通信および処理が可能な他機が存在するか否かも判定される。この判定における具体的な判定条件として、例えば、自機と他機との地図データに互換性があることを示す互換性条件を用いることができる。例えば、アプリロジックが同じであること、言い換えるとアプリソフトのバージョンが同じであること、ナビゲーション装置の型番が同じであることなどを用いることができる。さらに、地図データに差分が見出される可能性を示す差分条件を用いることができる。例えば、地図データのバージョンが異なることなどを用いることができる。ナビゲーション装置3aは、通信可能な他機が現れるまで、ステップS2010およびS2020を繰り返す。
【0059】
通信可能な他機が現れるとステップS2030に進む。ここでは、通信可能な複数の他機3b1、3b2が現れた場合を想定する。ステップS2030では、車車間通信装置10によって他機3b1、3b2と通信する。ステップS2030には、優先処理手段としてのステップS2040が含まれている。ステップS2040では、通信可能な複数の他機3b1、3b2から、地図の差分を有する可能性が高い他機を選択する。そして、その選択された他機と車車間通信装置10によって通信する。この通信においては、自機において設定された目的地の位置情報を他機に送信する送信処理と、他機の地図データに基づいて他機が探索した目的地までの経路の情報を受信する受信処理とが実行される。
【0060】
地図の差分を有する可能性が高い他機は、種々の情報に基づいて選択することができる。例えば、区域を示す情報に基づいて選択することができる。優先処理のために、自機および他機は、区域によって特徴付けられる。優先処理手段においては、複数の他機のうち、自機を特徴付ける区域とは異なる区域によって特徴付けられている他機との通信を優先する。自機と同じ区域によって特徴付けられた他機は、自機と同じ地図データを獲得している可能性が高い。これに対して、自機とは異なる他の区域によって特徴付けられ、他の区域との関連性をもつ他機は、自機の地図データと異なる新しい地図データを有する可能性が高い。そのような他機との通信を優先することにより、自機の地図データの更新が必要であることを判定できる機会を増やすことができる。優先処理の具体例は後述する。
【0061】
次に、ステップS2050では、自機3aが有する地図データに基づいて出発地から目的地までの経路を探索する計算を実行する。ステップS2060では、車車間通信により他機から受信した他機探索経路Rbが、自機の地図データに基づき探索された自機探索経路Raと不一致であること、すなわち相違があることを判定し、その不一致である箇所を特定する。ステップS2060は、判定手段を提供する。不一致箇所は、その不一致箇所が含まれる地図上の一定範囲によって示される。この範囲は、地図データの部分的な書き換えを許容する単位範囲とすることができる。例えば、地図上の所定範囲に相当し、地図データを更新するための最小単位であるメッシュを不一致箇所を特定するために利用することができる。他機探索経路Rbと、自機探索経路Raとに相違がない場合、ステップS2010に戻る。一方、他機探索経路Rbと、自機探索経路Raとに相違がある場合、ステップS2070へ進む。
【0062】
ステップS2070では、自機の地図データを更新する。ステップS2070は、地図更新手段を提供する。図7は、地図データを更新するための処理を示すフローチャートである。ステップS2072では、自機の識別番号をサーバーである情報センター1に送信する。サーバーは、サーバー内に記録されている更新履歴に基づいて、識別番号で特定されたナビゲーション装置3aの地図データの更新の有無を調べる。サーバーは、さらなる更新の必要性の有無を識別番号で特定されるナビゲーションン装置3aへ送信する。ステップS2074では、地図データの更新が有るか否かを判定する。更新が無い場合、ステップS2080へ進む。更新が有る場合、ステップS2076へ進む。ステップS2076では、更新版の地図データをサーバーから受信する。ここで、サーバーから提供され、自機3aが受信する更新版の地図データには、少なくとも不一致箇所を含むメッシュが少なくとも含まれている。受信される地図データには、不一致箇所を含むメッシュだけを含むことができる。これにより、ナビゲーション装置とサーバーとの通信時間および通信量を抑制することができる。また、受信される地図データには、不一致箇所を含むメッシュのほかに、そのメッシュの周辺に位置する複数のメッシュを含むことができる。この場合であっても、この実施形態では車車間通信によって地図データの更新の必要性が判定されるから、ナビゲーション装置とサーバーとの間の通信時間および通信量を抑制することができる。
【0063】
図6に戻り、ステップS2080では、地図データの更新が無事に完了したか否かを判定する。地図データの更新が完了していない場合には、ステップS2070へ戻る。地図データの更新が完了した場合には、一連の処理を終了する。
【0064】
ステップS2040に戻り、優先処理の具体的な例を説明する。より具体的なひとつの例においては、自機および他機を、自機および他機の基準位置が含まれる区域によって特徴付ける。優先処理手段は、複数の他機のうち、自機の基準位置が含まれる区域とは異なる区域に基準位置をもつ他機との通信を優先する。
【0065】
図8は、優先処理のひとつの例における自機3aと他機3b1、3b2との地図上の関係を示す平面図である。自機3aが搭載された車両の車車間通信装置10の通信可能範囲COM内には、2つの他機3b1、3b2を搭載した2台の車両が位置している。自機3aは、地図上のA区域Maに常駐位置としての自宅Haをもつ車両に搭載されている。第1他機3b1は、A区域Maに自宅Hb1をもつ車両に搭載されている。第2他機3b2は、B区域Mbに自宅Hb2をもつ車両に搭載されている。A区域Ma、BMbは、地図更新手段によって更新される地図データの部分の最小更新単位であるメッシュに対応している。自機3aおよび第1他機3b1は、区域Maによって特徴付けられているといえる。また、第2他機3b2は、区域Mbによって特徴付けられているといえる。この場合、優先処理手段は、自機3aと同じA区域Maに自宅Hb1を有する第1他機3b1との通信よりも、自機3aとは異なるB区域Mbに自宅Hb2を有する第2他機3b2との通信を優先して実行する。
【0066】
ここで、自機3aはA区域Maに自宅Hb1を有しているから、地図データ上のAメッシュMaのデータは高い頻度で更新されていると考えることができる。同様の理由から、第1他機3b1も、AメッシュMaのデータは高い頻度で更新されていると考えることができる。一方、BメッシュMbに関しては、第1他機3b1が最新の地図データを有している可能性は不明である。しかし、第2他機3b2は、B区域Mbに自宅Hb2を有しているから、BメッシュMbの地図データは高い頻度で更新されていると考えることができる。よって、自機3aは、第1他機3b1より第2他機3b2との通信を優先して実行することで、BメッシュMbにおける地図データの差分を検出できる可能性を高めることができる。言い換えると、第1他機3b1と通信しても地図データの差分が検出される可能性は低いから、通信の結果によって地図データの差分が検出されない割合を減らすことができる。
【0067】
図には、自機探索経路Raと他機探索経路Rbとの一例が図示されている。図示の状態において車車間通信を実行した場合、自機3aは、目的地Dsまでの経路として、自機探索経路Raを算出する。しかし、B区域Mbの更新された最新の地図データを有する第2他機3b2は、目的地Dsまでの経路として、他機探索経路Rbを算出することができる。この場合、自機探索経路Raと他機探索経路Rbとは相違しているから、自機3aはB区域Mbにおける地図データの更新の必要性を検出することができる。
【0068】
また、第1他機3b1の自宅が位置する区域と、第2他機3b2の自宅が位置する区域とが、共に自機3aの自宅が位置する区域と異なる場合には、第1他機3b1と第2他機3b2とのうち、地図データの差分が得られる可能性の高い他機を選択し、選択された他機との通信を優先する。例えば、自機3aを特徴づける区域から、より遠いほうの区域によって特徴付けられた他機との通信を優先して実行することができる。また、2つの他機3b1、3b2の間での順位付けは、それら他機3b1、3b2の走行履歴を示すリンクID、それら他機3b1、3b2の進行方向などに基づいて、地図データの差分が得られる可能性の高い他機との通信が優先されるように設定することができる。
【0069】
基準位置としては、ナビゲーション装置の所有者の自宅の位置、ナビゲーション装置を搭載する車両の所有者の自宅の位置、ナビゲーション装置が属する組織の事務所の位置、ナビゲーション装置を搭載する車両の登録位置、ナビゲーション装置の出発地、ナビゲーション装置の目的地など、固有のナビゲーション装置に関連する位置情報を用いることができる。
【0070】
例えば、自機および他機を搭載する車両の登録位置を用いる場合には、自機の登録位置を示す地域名称と異なる地域名称の登録位置を有する他機との通信を優先する。具体的には、自機を搭載する車両が三河地域で登録されている場合、同じ三河地域で登録された車両に搭載された第1他機3b1よりも、地域名称が異なる名古屋地域で登録されている車両に搭載された第2他機3b2を選択し、第2他機3b2と優先して通信する。
【0071】
より具体的な他のひとつの例においては、自機および他機を、通常の行動範囲を示す区域によって特徴付ける。優先処理手段は、複数の他機のうち、自機の行動範囲を示す区域とは異なる区域を行動範囲とする他機との通信を優先する。
【0072】
図9は、優先処理の他のひとつの例における自機3aと他機3b1、3b2との地図上の関係を示す平面図である。自機3aが搭載された車両の車車間通信装置10の通信可能範囲COM内には、2つの他機3b1、3b2を搭載した2台の車両が位置している。自機3aは、地図上のA区域Maを通常の行動範囲とする車両に搭載されている。第1他機3b1は、A区域Maを通常の行動範囲とする車両に搭載されている。第2他機3b2は、B区域Mbを通常の行動範囲とする車両に搭載されている。区域Ma、Mbは、複数のメッシュを含む地域あるいは地区と呼べる広さをもっている。自機3aおよび第1他機3b1は、A区域Maによって特徴付けられているといえる。また、第2他機3b2は、B区域Mbによって特徴付けられているといえる。この場合、優先処理手段は、自機3aと同じA区域Maを通常の行動範囲とする第1他機3b1との通信よりも、自機3aとは異なるB区域Mbを通常の行動範囲とする第2他機3b2との通信を優先して実行する。
【0073】
通常の行動範囲は、そのナビゲーション装置が高い頻度で位置している区域ともいうことができる。このような通常の行動範囲は、ナビゲーション装置に記録された履歴データに基づいて特定することができる。例えば、履歴データには、滞在期間、移動経路、通過場所などのデータが含まれている。これらの履歴データから、そのナビゲーション装置またはナビゲーション装置が搭載された車両が繰り返して通過する場所などの行動範囲を特定し、その行動範囲が高い頻度で分布している区域を、そのナビゲーション装置の通常の行動範囲とすることができる。
【0074】
自機3aはA区域Maを通常の行動範囲としているから、A区域Ma内のメッシュの地図データは高い頻度で更新されていると考えることができる。同様の理由から、第1他機3b1も、A区域Ma内のメッシュの地図データは高い頻度で更新されていると考えることができる。一方、B区域Mb内のメッシュに関しては、第1他機3b1が最新の地図データを有している可能性は不明である。しかし、第2他機3b2は、B区域Mbを通常の行動範囲としているから、B区域Mbの地図データは高い頻度で更新されていると考えることができる。よって、自機3aは、第1他機3b1より第2他機3b2との通信を優先して実行することで、B区域Mbにおける地図データの差分を検出できる可能性を高めることができる。言い換えると、第1他機3b1と通信しても地図データの差分が検出される可能性は低いから、通信の結果によって地図データの差分が検出されない割合を減らすことができる。
【0075】
また、第1他機3b1の通常の行動範囲を示す区域と、第2他機3b2の通常の行動範囲を示す区域とが、共に自機3aの通常の行動範囲を示す区域と異なる場合には、第1他機3b1と第2他機3b2とのうち、地図データの差分が得られる可能性の高い他機を選択し、選択された他機との通信を優先する。例えば、自機3aを特徴づける区域から、より遠いほうの区域によって特徴付けられた他機との通信を優先して実行することができる。また、2つの他機3b1、3b2の間での順位付けは、それら他機3b1、3b2の走行履歴を示すリンクID、それら他機3b1、3b2の進行方向などに基づいて、地図データの差分が得られる可能性の高い他機との通信が優先されるように設定することができる。
【0076】
さらに、上述の自宅位置などの基準位置に依存する区域に基づいて優先処理の順位を設定する手法と、繰り返して通過する場所などの通常の行動範囲に依存する区域に基づいて優先処理の順位を設定する手法とを組み合わせてもよい。
【0077】
この実施形態によると、通信可能範囲内に単独の他機が位置しているときにはその他機との通信によって地図データの更新の必要性を判定することができる。この結果、サーバーとの間の通信時間、通信量を抑制しながら、地図データを更新することができる。さらに、通信可能範囲内に複数の他機が位置しているときには、自機とは異なる区域によって特徴付けられる他機との通信を優先するなどすることによって、地図の差分を有する可能性の高い他機との通信を優先するから、他機との無駄な通信を抑制することができる。また、更新対象とする範囲を積極的に広げて、地図データの更新の必要性を判定することができる。
【0078】
(他の実施形態)
上記実施形態では、車載型のナビゲーション装置に本発明を適用した。これに代えて、携帯型のナビゲーション装置に本発明を適用してもよい。例えば、車車間通信装置に代えて、ナビゲーション装置自体に内蔵通信装置を設け、複数のナビゲーション装置の間で通信するように構成することができる。
【0079】
制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 情報センター(サーバー)
14 地図データベース
15 ネットワーク通信装置
16 制御部
2 ネットワーク
3a ナビゲーション装置(自機)
3b ナビゲーション装置(他機)
3b1、3b2 ナビゲーション装置(他機)
10 車車間通信装置
20 情報記憶部
30 ネットワーク通信装置
80 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを複数に分割できる状態で記憶し、該地図データの一部のみを独立して更新可能であるナビゲーション装置であって、
自機において設定された目的地の位置情報を他機に送信し、他機の地図データに基づいて、他機が探索した前記目的地までの経路の情報を受信する通信手段と、
前記通信により受信した経路が、自機の地図データに基づき探索される経路と不一致であることを判定する判定手段と、
前記不一致が判定されると、前記自機の地図データを更新する地図更新手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
通信により受信した経路が、自機の地図データに基づき探索される経路と不一致である箇所を判定し、
前記地図更新手段は、
前記自機の地図データのうち、前記不一致である箇所の存在する部分の地図データを更新することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記地図更新手段は、
前記自機の地図データのうち、前記不一致である箇所の存在する部分の地図データを更新する際、該自機の地図データにおいて、更新される部分の地図データと、該更新される部分の周辺の地図データとが整合されない場合は、前記整合されない部分の地図データを併せて更新することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記通信手段は、
複数の他機のうち、地図の差分を有する可能性の高い他機との通信を優先する優先処理手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記優先処理手段は、
自機および他機を区域によって特徴付けており、
複数の他機のうち、自機を特徴付ける区域とは異なる区域によって特徴付けられている他機との通信を優先することを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記優先処理手段は、
自機および他機を、基準位置が含まれる区域によって特徴付けており、
複数の他機のうち、自機の基準位置が含まれる区域とは異なる区域に基準位置をもつ他機との通信を優先することを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記優先処理手段は、
自機および他機を、通常の行動範囲を示す区域によって特徴付けており、
複数の他機のうち、自機の行動範囲を示す区域とは異なる区域を行動範囲とする他機との通信を優先することを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のナビゲーション装置と、
最新の地図データベースを保有するサーバーとを備え、
前記地図更新手段は、前記サーバーと通信して、前記地図データの未更新部分を更新することを特徴とする地図更新システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−2445(P2011−2445A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102568(P2010−102568)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】