説明

ナビゲーション装置

【課題】 道路の傾斜角を正確に算出して車両の現在位置を補正する動作を実行可能な「ナビゲーション装置」を提供する。
【解決手段】 車両の走行速度及び走行距離を検出する車速センサ103と、車両の進行方向の加速度を測定する加速度センサ101と、ナビゲーションコントローラ115とを有し、ナビゲーションコントローラ115が、車速センサ103から検出される走行速度に基づいて車速加速度Gpを算出し、車速加速度Gpと加速度センサ101で測定されたセンサ加速度Gcとに基づいて車両の傾斜角θを算出し、その後、車速加速度Gpとセンサ加速度Gcと傾斜角θとに基づいて車両の現在位置を補正することを特徴とするナビゲーション装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車搭載用のナビゲーション装置に関し、特に、常に車両位置の補正を実行しつつ案内動作するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のナビゲーション装置は、常に車両の現在位置を検出して案内動作を実行している。この場合、車両の現在位置を正確に把握する手段として、距離センサ及び角度センサを用いて移動距離を算出して車両位置を特定する自立航法と、人工衛星からの電波信号を受信して地図上の現在位置を把握するGPS(全地球測位システム)航法とが知られている。自立航法は、センサ出力を微分又は積分する演算処理が必要なため、車両内外の因子による誤差の影響を受けやすく、精度が低くなってしまうという欠点がある。また、GPS航法は、トンネル内や森林の中等のGPS電波信号が届きにくい環境に車両が存在する場合に、正確な現在位置を把握できないという欠点がある。そこで、近年では、上述の自立航法とGPS航法との欠点を相互に補完する、いわゆるハイブリッド型ナビゲーション装置が用いられている。
【0003】
また、近年では、道路網の発達に伴い、立体交差や地下道路等の高低差が設けられた道路が増加している。これに対して、従来のナビゲーション装置では、ナビゲーション装置に設けられた表示装置に表示される地図等の画像が、基本的には平面的に描画及び表示されるため、上り坂又は下り坂を走行する際に、車両が実際に移動する距離は地図上の平面的な移動距離より長くなってしまい、結果として、自立航法を用いて案内動作を実行している場合、地図上の車両の表示位置と車両の現在位置との間に誤差が生じて正確な誘導ができなくなるという問題点があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、特許文献1に示すように、移動体の傾斜による影響、例えば重力による影響を除去して精度よく移動体の加速度、速度、移動距離等を求めることができる移動体位置速度算出装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−96533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された移動体位置速度算出装置1は、図1に示すように、移動体の進行方向に対する傾斜角を検出する傾斜角検出手段2と、傾斜角の角度変化を検出する角速度検出手段3と、移動体の進行方向の加速度を検出する加速度検出手段4と、例えばGPSシステムを用いた絶対位置及び絶対速度検出手段5とを有し、絶対角速度算出手段6において、傾斜角検出手段2及び角速度検出手段3からの入力に基づいて絶対傾斜角を算出し、傾斜補正手段7において、加速度検出手段4と絶対位置及び絶対速度検出手段5との入力並びに絶対傾斜角算出手段6からの算出結果に基づいて傾斜角の補正を実行し、加速度補正手段8において、絶対位置及び絶対速度検出手段5と傾斜補正手段7での補正された傾斜角とに基づいて測定した加速度に含まれる重力成分の影響を除去する装置である。このような装置によれば、絶対位置及び絶対速度検出手段6すなわちGPSシステムから絶対速度及び絶対位置の情報が入手できない場合であっても、傾斜角検出手段2と角速度検出手段3とを組み合わせて用いることによって、絶対傾斜角を精度よく算出しかつ加速度の傾斜による影響を除去することが可能となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された移動体位置速度算出装置1では、傾斜補正手段7の補正において、絶対傾斜角算出手段6で算出された絶対傾斜角と絶対位置及び絶対速度検出手段5で得られる速度ベクトルから導かれる推定傾斜角のうち精度の良い方を採用している。また、加速度補正手段8の補正において、絶対位置及び絶対速度検出手段5で測定された現在の速度から得られる加速度と1つ前の算出時刻で得られた加速度との差分から補正量を算出し、傾斜補正手段7で補正された加速度に対して補正を実行している。このような補正では、絶対位置及び絶対速度検出手段5の現在のデータが得られない場合には、1つ前の算出時刻でのデータを用いるしかなく、最新の補正に対して誤差が大きくなってしまう場合があった。また、このように補正された加速度に積分演算を2回繰り返すことによって現在位置を算出するため、誤差がさらに大きくなってしまうという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、道路の傾斜角を正確に算出して車両の現在位置を補正する動作を実行可能なナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、請求項1記載のように、車両の走行速度及び走行距離を検出する第1のセンサと、車両の進行方向の加速度を測定する第2のセンサと、ナビゲーションコントローラとを有し、前記ナビゲーションコントローラは、前記第1のセンサから検出される走行速度に基づいて第1の加速度を算出し、前記第1の加速度と前記第2のセンサで測定された第2の加速度とに基づいて前記車両の傾斜角を算出し、前記ナビゲーションコントローラは、前記第1の加速度と前記第2の加速度と前記傾斜角とに基づいて前記車両の現在位置を補正することを特徴とするナビゲーション装置として構成される。このような構成によれば、車両が坂道を走行している場合に、ナビゲーションコントローラが車速センサからの出力に基づいて車速加速度を算出し、加速度センサでセンサ加速度を測定して、これらの加速度に基づいて車両の傾斜角を算出し、続いて坂道が上り坂か下り坂かを判別して、その判別結果に応じた車両の現在位置の補正動作を実行するため、道路の傾斜角を正確に算出して車両の現在位置を補正する動作を実行することができる。
【0010】
請求項1記載のナビゲーション装置は、例えば請求項2記載のように、前記ナビゲーションコントローラは、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差が所定の閾値を超えた場合に、前記傾斜角を算出するように構成することもできる。
【0011】
請求項1又は2記載のナビゲーション装置は、例えば請求項3記載のように、前記ナビゲーションコントローラは、前記第1の加速度と前記第2の加速度との大小関係に応じて、現在前記車両が走行しているのが上り坂か下り坂かを判別するように構成することもできる。
【0012】
請求項1から3のうちいずれか1つに記載のナビゲーション装置は、例えば請求項4記載のように、前記ナビゲーションコントローラは、前記閾値を任意に設定できる機能を有するように構成することもできる。
【0013】
請求項1記載のナビゲーション装置は、例えば請求項5記載のように、前記第1のセンサは、回転をパルス信号に変換して出力し、前記ナビゲーションコントローラは、前記第1のセンサから入力した前記パルス信号におけるパルスのサンプリング数を算出し、前記サンプリング数が所定数に達した場合に、前記第1の加速度を算出するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、道路の傾斜角を正確に算出して車両の現在位置を補正する動作を実行可能なナビゲーション装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、本発明の実施例1について説明する。図2は、本実施例1によるナビゲーション装置100の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置100は、加速度センサ101、角速度センサ102、車速センサ103等の外部センサからの出力を変換する入力インターフェース111と、GPS信号受信手段112と、電波受信手段113と、操作入力手段114と、ナビゲーションコントローラ115と、メモリ116と、データベース117と、画像情報表示部118と、音声情報出力部119とを有する。加速度センサ101は、車両の発信又は停止、並びに加速時又は減速時における車両に加わる進行方向の実際の加速度を検出する1軸型センサであり、車両に対して水平かつ進行方向に対して平行に車両に設けられる。角速度センサ102は、車両の方向変換時の角速度及び相対方位を検出する。車速センサ103は、駆動軸又はタイヤの回転に対応して回転信号をパルス波形で出力するセンサであり、車速データとともに移動距離データを得ることもできる。加速度センサ101、角速度センサ102及び車速センサ103からの出力は、入力インターフェース111で例えばAD変換されて、ナビゲーションコントローラ115に入力される。
【0017】
GPS信号受信手段112は、GPS衛星からの車両の位置情報を受信する受信機である。電波受信手段113は、VICS(道路交通情報通信システム)センターからの信号電波情報(以下VICS情報と称する)、又は例えばFM多重放送やデジタル放送等の電波を受信する受信機である。操作入力手段114は、ナビゲーション装置100を操作することができる各種操作キー等が設けられた操作部であり、ナビゲーション装置100の表面に設けられていても良い。GPS信号受信手段112及び電波受信手段113は、ナビゲーションコントローラ115と電気的に接続されている。操作入力手段114は、装置表面に設けられる場合の他に、独立した操作部としてナビゲーションコントローラ111と有線又は無線で通信可能に接続されても良い。
【0018】
ナビゲーションコントローラ115は、メモリ116、データベース117、画像情報表示部118、及び音声情報出力部119と接続されており、ナビゲーション装置100全体の動作を制御する。メモリ116は、入力インターフェースから送られる各種センサの出力データと、GPS信号受信手段112及び電波受信手段113で受信した情報との他に、ナビゲーション装置100の制御に必要な情報等を一時的に保存する。また、メモリ116は、ナビゲーションコントローラ111が動作する各種プログラム等も保存している。データベース117は、例えば、ハードディスク、DVD−RW(DVD Rewritable)等により構成され、経路誘導に必要な、例えば地図情報を格納した地図データファイル、交差点に関する情報を格納した交差点データファイル、道路種別や各道路の始点・終点等の道路に関する情報及び各道路の通行方向等の情報を格納した道路データファイル、道路上の1地点における東経・北緯座標を格納したノードデータファイル、ガソリンスタンドやコンビニエンスストア等のジャンルに分類された利用目的に応じた施設等の特徴物の位置座標や特徴物に関する案内情報等を格納した案内地点データファイル等を記憶している。
【0019】
また、ナビゲーションコントローラ115は、データベース117に記憶されているデータとGPS信号による車両位置情報とVICS情報とに基づいて、自車周辺の地図画像、車両位置マーク、出発地マーク、目的地マーク、誘導経路、目的地設定画面等の画像情報と文字情報とを生成し、同時にこれら画像情報及び文字情報に対応する音声情報を生成する。また、ナビゲーションコントローラ115は、画像情報及び文字情報を画像情報表示部118に送付するとともにこれらの情報を出力する指令を発し、一方で、音声情報を音声情報出力部119に送付するとともに音声情報を出力する指令を発する。画像情報表示部118は、例えば液晶モニタ等で構成されており、ナビゲーションコントローラ115の指令に基づいて画像情報及び文字情報を表示する。音声情報出力部119は、例えばスピーカ等であり、ナビゲーションコントローラ115の指令に基づいて様々な音声情報を出力する。
【0020】
次に、本実施例1において斜面の角度すなわち車両の傾斜角を算出する原理について説明する。図3は、車両の傾斜角を算出する原理を説明する模式図であり、図3(a)は平坦道路を走行している場合、図3(b)は斜面道路を走行している場合を示している。車両120は、上述のように、車両に対して水平かつ進行方向に対して平行に設けられた加速度センサ101と、駆動軸又はタイヤに設けられかつ駆動軸又はタイヤの回転に対応して回転信号をパルス波形で出力する車速センサ103(図示せず)とを有している。車速センサ103からは車両の現在速度が得られる。以後、この現在速度を微分演算処理することによって得られる加速度を車速加速度Gpと定義し、加速度センサ101から得られる車両の進行方向の加速度をセンサ加速度Gcと定義する。また、車両120に定常的に負荷されている重力加速度をGgとする。図3(a)に示すように、車両120が平坦道路を走行している場合、車両120の走行方向すなわち加速度ベクトルの方向は、重力加速度Ggの方向と直交しているため、センサ加速度Gc及び車速加速度Gpは、方向と大きさが一致する。
【0021】
これに対して、図3(b)に示すように、車両120が斜面道路を走行している場合、重力加速度Ggの影響を受けるため、センサ加速度Gcは、車速加速度Gpと重力加速度Ggの進行方向成分Gdとのベクトル和として得られる。すなわち、ベクトルGdはベクトルGp及びGcとは逆方向で、大きさはGpとGcとの絶対値の差に等しくなる。このとき、斜面の角度すなわち車両の傾斜角をθとすると、傾斜角θは、以下の式により算出できる。
θ=sin−1(|Gd|/|Gg|)
上記式は、例えば車両120が斜面道路を下り走行している場合であっても、センサ加速度Gcが車速加速度Gpと重力加速度Ggの進行方向成分Gdとのベクトル和で表されるため、同様に適用することが可能である。
【0022】
次に、図4に、ナビゲーションコントローラ115が実行する本実施例1による傾斜補正誘導動作ルーチンのフローチャートを示す。ここで、この傾斜補正誘導動作ルーチンは、車両がナビゲーション装置100を用いて走行中に車両の傾斜を検知した場合に実行される動作であり、通常の経路誘導動作中であっても平行して動作し、現在継続中の経路誘導動作の補正をすることができる。傾斜補正誘導動作ルーチンにおいて、ナビゲーションコントローラ115は、まず車速センサ103から車速パルス信号を所定の時間だけ入力する(ステップS101)。続いて、ナビゲーションコントローラ115は、入力した車速パルス信号からパルスの立ち上がりの1周期分のデータを抽出し(ステップS102)、車速加速度Gpを算出する(ステップS103)。ここで、ステップS102で抽出した1周期分の信号データは、時間情報とともに駆動軸又はタイヤの回転に応じた1周期分の移動距離も含まれるため、微分演算処理を1回だけ実行することによって加速度データとすることができる。次に、ナビゲーションコントローラ115は、加速度センサ101でセンサ加速度Gcを測定し(ステップS104)、図3(b)に示すように、車速加速度Gpとセンサ加速度Gcの絶対値の差Gdを算出する(ステップS105)。
【0023】
次に、ナビゲーションコントローラ115は、ステップS105で算出したGdが所定の閾値より大きいか否かを判別する(ステップS106)。ここで判別する閾値とは、車両の車種、タイヤの種別又は傾斜の大きさ等のパラメータから任意に設定される加速度の絶対値の差Gdの上限値である。従って、Gdが閾値を超えないと判別した場合、例えば傾斜がほとんどないと判断して、そのままルーチンを終了する。これに対して、Gdが閾値より大きいと判別した場合は、上述の式を用いて傾斜角θを算出する(ステップS107)。続いて、ナビゲーションコントローラ115は、センサ加速度Gcの絶対値が車速加速度Gpの絶対値より大きいか否かを判別する(ステップS108)。この判別は、現在走行している傾斜が上り坂か下り坂かを判断するために実行される。すなわち、図3(b)に示すように、車両120が上り坂を走行している場合、センサ加速度Gcは重力加速度Ggの進行方向成分Gdと逆向きのベクトルとなるため、センサ加速度Gcの絶対値は車速加速度Gpの絶対値より小さくなる。一方、車両120が下り坂を走行している場合、センサ加速度Gcは重力加速度Ggの進行方向成分Gdと同じ向きのベクトルとなるため、センサ加速度Gcの絶対値は車速加速度Gpの絶対値より大きくなる。従って、ステップS108でGcの絶対値がGpの絶対値より大きいと判別した場合、ナビゲーションコントローラ115は、現在車両が走行しているのは下り坂であると判断し(ステップS109)、下り坂用に車両の現在位置を補正する(ステップS110)。その後、補正後の車両位置を含む画像を出力する指令を画像情報表示部に発して(ステップS111)、ルーチンを終了する。
【0024】
これに対して、ステップS108でGcの絶対値がGpの絶対値より大きくないと判別した場合、ナビゲーションコントローラ115は、現在車両が走行しているのは上り坂であると判断し(ステップS112)、上り坂用に車両の現在位置を補正する(ステップS113)。その後、ステップS111に進んで補正後の車両位置を含む画像を出力する指令を画像情報表示部に発し、ルーチンを終了する。
【0025】
以上説明したように、傾斜補正誘導動作動作ルーチンは、車速センサ103からの出力データから車速加速度Gpを算出し、加速度センサ101で測定されるセンサ加速度Gcとの絶対値の差Gdを算出し、Gdが所定の閾値を超えたと判別した場合に、車両の傾斜角を算出し、更に上り坂又は下り坂における車両の現在位置を補正して誘導動作を実行する。
【0026】
また、本実施例1による傾斜補正誘導動作ルーチンは、ステップS102で車速パルス信号の1周期分のデータを抽出した後に、1周期に要した時間の長さが所定時間以上か否かを判別するステップが追加されても良い。このようなステップによって、例えば車両が上り坂を非常に低速で走行しているような場合、車速センサ103から所定時間内に出力される車速パルス信号に含まれるパルス数が非常に少なくなり、加速度を算出する微分演算処理で大きな誤差が含まれる可能性が高くなるため、1周期に要した時間の長さが所定時間以上である場合、ルーチンを終了させることができる。
【0027】
次に、図4で示された傾斜補正誘導動作ルーチンを適用して補正する場合の例を説明する。図5は、傾斜補正誘導ルーチンによる補正動作の様子を説明する図であり、図5(a)は車両が下り坂を走行している場合、図5(b)は車両は上り坂を走行している場合を示している。図5(a)に示すように、車両が下り坂を走行している場合、上述のように、加速度センサ101で測定されるセンサ加速度Gcは、車速センサ103の出力データから算出される車速加速度Gpよりも大きくなる。このとき、ナビゲーション装置100は、車速センサ103の出力に基づいて車両の現在位置はP1であると認識するが、実際の車両の現在位置はP2となる。そこで、本実施例1による傾斜補正誘導動作ルーチンを用いると、ナビゲーションコントローラ115は、ステップS107の動作を実行して車両の傾斜角θを算出した後、ステップS108の判別により下り坂と判断し、車両の現在位置をP1からP2へ距離L1だけ進ませるように補正して、誘導動作を継続する。
【0028】
これに対して、図5(b)に示すように、車両が上り坂を走行している場合、上述のように、加速度センサ101で測定されるセンサ加速度Gcは、車速センサ103の出力データから算出される車速加速度Gpよりも小さくなる。よって、ナビゲーション装置100は、車速センサ103の出力に基づいて車両の現在位置はP1まで進んでいると認識するが、実際の車両の現在位置はP2となる。そこで、本実施例1による傾斜補正誘導動作ルーチンを用いると、ナビゲーションコントローラ115は、ステップS107の動作を実行して車両の傾斜角θを算出した後、ステップS108の判別により上り坂と判断し、車両の現在位置をP1からP2へ距離L2だけ戻すように補正して、誘導動作を継続する。
【0029】
以上のような構成及び動作とすることによって、本実施例1によるナビゲーション装置100は、車両が坂道を走行している場合に、車速センサ103の出力から車速加速度Gpを算出し、加速度センサ101でセンサ加速度Gcを測定して、これらの加速度に基づいて坂道の斜度すなわち車両の傾斜角を算出し、続いて坂道が上り坂であるか下り坂であるかを判別して、その判別結果に応じた車両の現在位置の補正動作を実行することが可能となる。
【0030】
また、本実施例1によるナビゲーション装置100は、例えば、予め車両の車種やタイヤ径等の走行速度や走行距離を算出するための因子を入力しておき、車両が平坦な道路を走行中に所定時間の車速パルス信号を入力し、その車速パルス信号の波形から1周期のサンプリング数を求め、1周期あたりの平均の車速加速度を算出し、この車速加速度と加速度センサで測定されるセンサ加速度の実測値とに基づいて上述の閾値を決定する機能を有しても良い。
【0031】
以上の実施例から、本発明によれば、車両が坂道を走行している場合に、ナビゲーションコントローラが車速加速度Gpを算出し、センサ加速度Gcを測定して、これらの加速度に基づいて車両の傾斜角を算出し、続いて坂道が上り坂か下り坂かを判別して、その判別結果に応じた車両の現在位置の補正動作を実行するため、道路の傾斜角を正確に算出して車両の現在位置を補正する動作を実行可能なナビゲーション装置を提供することが可能となる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来技術における移動体位置速度算出装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例1によるナビゲーション装置100の構成を示すブロック図である。
【図3】車両の傾斜角を算出する原理を説明する模式図であり、図3(a)は平坦道路を走行している場合、図3(b)は斜面道路を走行している場合を示している。
【図4】本実施例1による傾斜補正誘導動作ルーチンのフローチャートである。
【図5】傾斜補正誘導ルーチンによる補正動作の様子を説明する図であり、図5(a)は車両が下り坂を走行している場合、図5(b)は車両は上り坂を走行している場合を示している。
【符号の説明】
【0034】
100 ナビゲーション装置
101 加速度センサ
103 車速センサ
111 入力インターフェース
112 GPS信号受信手段
114 操作入力手段
115 ナビゲーションコントローラ
117 データベース
118 画像情報表示部
119 音声情報出力部
120 車両
Gp 車速加速度
Gc センサ加速度
θ 車両の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行速度及び走行距離を検出する第1のセンサと、
車両の進行方向の加速度を測定する第2のセンサと、
ナビゲーションコントローラとを有し、
前記ナビゲーションコントローラは、前記第1のセンサから検出される走行速度に基づいて第1の加速度を算出し、前記第1の加速度と前記第2のセンサで測定された第2の加速度とに基づいて前記車両の傾斜角を算出し、
前記ナビゲーションコントローラは、前記第1の加速度と前記第2の加速度と前記傾斜角とに基づいて前記車両の現在位置を補正することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記ナビゲーションコントローラは、前記第1の加速度と前記第2の加速度との差が所定の閾値を超えた場合に、前記傾斜角を算出することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記ナビゲーションコントローラは、前記第1の加速度と前記第2の加速度との大小関係に応じて、現在前記車両が走行しているのが上り坂か下り坂かを判別することを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記ナビゲーションコントローラは、前記閾値を任意に設定できる機能を有することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記第1のセンサは、回転をパルス信号に変換して出力し、前記ナビゲーションコントローラは、前記第1のセンサから入力した前記パルス信号におけるパルスのサンプリング数を算出し、前記サンプリング数が所定数に達した場合に、前記第1の加速度を算出することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−10657(P2006−10657A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192335(P2004−192335)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】