説明

ナビゲーション装置

【課題】通信機の現状における通信状態を案内に反映することができないこと。
【解決手段】HDD12には、案内処理に必要な一般的な処理をCPU14に実行させるためのプログラムの他に、通信機19の通信状態に対応する通信状態データとGPSデータとを対応付けてHDD12に記憶させる制御部としてCPU14を機能させるためのプログラムが記憶されている。HDD12には、案内音声に対応する音声データ、案内画像に対応する画像データ、地図画像に対応する地図画像データ、GPSデータとリンクデータとの対応を示すリンクテーブルやリンクとコストとの対応を示すリンクコストテーブル、電力値データと通信機19の通信状態との対応を示す通信状態テーブルなどが記憶されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路を案内するナビゲーション装置に関するものであって、より詳しくは、ナビゲーション機能を有するマルチメディア端末などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、通信可能地域外の地点を含まない経路をCD−ROMなどに記憶された通信地域データファイルを用いて探索するナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、通話可能なエリアを優先的に走行するような経路をCD−ROMなどに記憶された通話エリア情報を用いて探索するナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開平10−89984号公報(第4−5頁、第5図)
【特許文献2】特開2000−227339号公報(第3−4頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載のものにおいて、通信地域や通話エリアなどに係る最新のデータを固定するCD−ROMなどが流通するまで、通信地域や通話エリアなどに係る古いデータが経路探索に反映されてしまう。例えば、一の地域が実際には通信可能な地域であり、かつ、前述の古いデータでは通信不可能な地域であると定義されている場合、一の地域を迂回する経路が探索される。つまり、迂回する必要がない場合であっても、迂回経路が案内されてしまうので、ユーザに対して最適な案内を行うことができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るナビゲーション装置は、通信機の通信状態を案内に反映するナビゲーション装置であって、通信機の通信状態に対応する通信状態データと現在位置に対応する位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させる制御部を備えるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0006】
「通信機の通信状態を案内に反映する」とは、通信機の通信状態を経路の探索に反映させることおよび通信機の通信状態を経路表示または音声案内に反映させることを含む概念である。
【0007】
「通信機」とは、無線で通信するための装置である。「通信機」の一例として、アンテナ部品や携帯電話機などがある。
【0008】
「通信状態」の一例として、いわゆる通信圏外か否かという状態などがある。
【0009】
「通信状態データ」とは、通信機で出力されるデータおよび通信機で出力されるデータを処理してなるデータを含む概念である。
【0010】
「位置データ」とは、GPS受信機で出力されるデータおよびGPS受信機で出力されるデータを処理してなるデータならびにGPS受信機、速度センサ、距離センサおよびこれらに類する各種センサで出力されるデータを組み合わせて得られるデータを含むものである。
【0011】
本発明に係るナビゲーション装置において、「制御部」は、好ましくは、前記位置データが変化する場合に、前記通信状態データと前記位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させるものである。本発明における字句の解釈は、前述の解釈のほか、次のとおりである。
【0012】
「前記位置データが変化する場合」とは、後の時刻における位置データと先の時刻における位置データとが異なる場合である。
【0013】
本発明に係るナビゲーション装置において、「制御部」は、好ましくは、前記位置データに係るリンクデータが変化する場合に、前記通信状態データと前記位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させるものである。本発明における字句の解釈は、前述の解釈のほか、次のとおりである。
【0014】
「リンクデータ」とは、第N番目の分岐点と第N+1番目の分岐点とを結ぶ道路に対応するデータであって、1または複数の位置データに対応するデータである。
【0015】
「前記位置データに係るリンクデータが変化する場合」とは、後の時刻における位置データに係るリンクデータと先の時刻における位置データに係るリンクデータとが異なる場合である。例えば、現在位置が交差点を通過した場合が「前記位置データに係るリンクデータが変化する場合」に該当する。
【0016】
「前記通信状態データと前記位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させる」処理は、「前記通信状態データと前記リンクデータとを対応付けて記憶媒体に記憶させる」処理に代えられてもよい。
【0017】
本発明に係るナビゲーション装置において、「制御部」は、好ましくは、前記位置データに対応付けられた前記通信状態データを通信機に送信させるものである。本発明における字句の解釈は、前述の解釈のほか、次のとおりである。
【0018】
「送信」する先として、センタ側に設けられたサーバや他のナビゲーション装置などがある。
【0019】
「前記位置データに対応付けられた前記通信状態データを通信機に送信させる」処理は、「前記リンクデータに対応付けられた前記通信状態データを通信機に送信させる」処理に代えられてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、通信機の通信状態に対応する通信状態データと現在位置に対応する位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させることによって、通信機の現状における通信状態を案内に反映することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るナビゲーション装置を実施するための最良の形態について、図1ないし図8を参照しながら説明する。
<構成について>図1を参照しながら本実施の形態に係るナビゲーション装置1の構成を説明する。
【0022】
図1に示すように、ナビゲーション装置1は、各種データを入出力するI/O11と、各種プログラムや各種データなどを記憶するHDD12(「制御部」に相当する)と、基本プログラムを格納するROM13と、HDD12やROM13などに格納されたプログラムを解釈し実行するCPU14(「制御部」に相当する)と、I/O11やCPU14などからのデータを保持するRAM15と、CPU14からのデータに応じて音声出力を制御する音声プロセッサ16と、CPU14からのデータに応じて画像出力を制御する画像プロセッサ17と、画像データを保持するVRAM18と、データを送受信する通信機19とを備え、これらはバスで接続されている。
【0023】
I/O11には、衛星からのGPSデータ(「位置データ」に相当する)を受信するGPS受信機21と、方位に対応する方位データを出力する方位センサ22と、速度に対応する速度データを出力する速度センサ23と、物体との接触に応じて接触座標に係るデータを出力するタッチパネル24とが接続されている。GPSデータには、位置や時刻などが要素として含まれる。
【0024】
また、I/O11には、音声データに対応する音声を出力するスピーカ31と、画像データに対応する画像を表示するディスプレイ32とが接続されている。ディスプレイ32は、、タッチパネル24の接触座標をディスプレイ32の表示座標に一致させるようにタッチパネル24の背面に位置している。
【0025】
HDD12には、案内処理に必要な一般的な処理をCPU14に実行させるためのプログラムの他に、通信機19の通信状態に対応する通信状態データとGPSデータとを対応付けてHDD12に記憶させる制御部としてCPU14を機能させるためのプログラムが記憶されている。
【0026】
HDD12には、案内音声に対応する音声データ、案内画像に対応する画像データ、地図画像に対応する地図画像データ、GPSデータとリンクデータとの対応を示すリンクテーブル、リンクとコストとの対応を示すリンクコストテーブルや電力値データと通信機19の通信状態との対応を示す通信状態テーブルなどが記憶されている。
<全体的な処理について>以上のように構成されたナビゲーション装置1について、図2ないし図4を参照しながらその全体的な処理を説明する。図2に示すように、CPU14は、HDD12に記憶されたプログラムをRAM15に展開し、通信状態記憶処理、通信状態受信処理、通信状態送信処理、経路探索処理および経路案内処理を実行する。
【0027】
通信状態記憶処理とは、通信機19の通信状態に対応する通信状態データとGPSデータとを対応付けてHDD12に記憶させる処理である。例えば、図3に示すように、通信機19の通信状態が、リンク番号101に対応するリンク、リンク番号102に対応するリンクおよびリンク番号103に対応するリンクにおいて、それぞれ「可」、「圏外」および「良」であれば、これらの通信状態に対応する通信状態データがHDD12に記憶される。
【0028】
通信状態受信処理とは、ナビゲーション装置1以外の装置で送信され通信機の通信状態に対応する通信状態データを通信機19に受信させる処理である。例えば、図3に示すように、通信機19の通信状態が、リンク番号101に対応するリンク、リンク番号102に対応するリンクおよびリンク番号103に対応するリンクにおいて、それぞれ「可」、「圏外」および「良」であれば、これらの通信状態に対応する通信状態データが通信機19によって受信される。
【0029】
通信状態送信処理とは、通信状態記憶処理でHDD12に記憶された通信状態データを通信機19に送信させる処理である。通信機19は、公衆回線などを介して、通信状態データをセンタに設けられたサーバ装置や他のナビゲーション装置などに送信する。
【0030】
経路探索処理とは、通信状態記憶処理または通信状態受信処理で得られた通信状態データやHDD12に記憶されたリンクコストテーブルなどを用いて経路を探索し、その結果に係る探索データをRAM15に保持させる処理である。例えば、通信機19の通信状態が、リンク番号101に対応するリンク、リンク番号102に対応するリンクおよびリンク番号103に対応するリンクにおいて、それぞれ「可」、「圏外」および「良」であれば、リンク番号101に係るリンクコスト、リンク番号102に係るリンクコストおよびリンク番号103に係るリンクコストは、本来のリンクコストをそれぞれ「1倍」、「30倍」および「1倍」した値として評価される。したがって、リンク番号102に対応するリンクを迂回する経路が探索されうる。
【0031】
経路案内処理とは、経路探索処理で得られた探索データ、案内音声に対応する音声データや案内画像に対応する画像データなどを用いて案内をスピーカ31およびディスプレイ32に出力させる処理である。例えば、通信機19の通信状態が、リンク番号101に対応するリンク、リンク番号102に対応するリンクおよびリンク番号103に対応するリンクにおいて、それぞれ「可」、「圏外」および「良」であれば、リンク番号102に対応するリンクを迂回する経路が案内される(図4(a)を参照)。他方、迂回する経路がそもそも探索されない場合、リンク番号101に係る道路およびリンク番号103に係る道路とリンク番号102に係る道路とが異なる出力態様で出力される(図4(b)を参照)。
<通信状態記憶処理について>図5ないし図8を参照しながら通信状態記憶処理の流れを説明する。図5に示すように、CPU14は、RAM15に保持されたGPSデータおよびHDD12に記憶されたリンクテーブルを用いてGPSデータに係るリンクデータを特定する(ステップS1)。例えば、GPSデータがリンク番号102に係るリンクデータに含まれている場合、リンク番号102に係るリンクデータが特定される。
【0032】
ステップS1でGPSデータに係るリンクデータが特定されると、CPU14は、RAMに保持されているリンクデータとステップS1で特定されたリンクデータとが異なるか否かを判定する。すなわち、リンクデータが変化したか否かが判定される(ステップS2)。
【0033】
ステップS2でリンクデータが変化したとの判定がなされると(S2のYes)、CPU14は、RAM15に保持されているリンクデータを削除して、ステップS1で特定されたリンクデータをRAM15に保持させる(ステップS3)。ステップS3で保持されたリンクデータは、通信状態記憶処理が再び実行された場合、ステップS2で用いられる。
【0034】
ステップS3でリンクデータがRAM15に保持されると、CPU14は、通信機19で出力される電力値データおよびHDD12に記憶された通信状態テーブルを用いて通信機19の通信状態を求める(ステップS4)。ここで、電力値データは、基地局で送信される電波に応じて通信機19で出力されるデータである。本実施の形態では、リンク番号102に対応するリンクにおいて、実際には、通信機19の通信状態が「優」であったとする(図6を参照)。
【0035】
ステップS4で通信機19の通信状態が求められると、CPU14は、ステップS4で求められ通信機19の通信状態に対応する通信状態データとステップ3でRAM15に保持されたリンクデータとを対応付けてHDD12に記憶させる(ステップS5)。図7に示すように、本実施の形態では、リンク番号101に係るリンクデータ、リンク番号102に係るリンクデータおよびリンク番号103に係るリンクデータは、それぞれ、通信状態「可」、「優」および「良」に対応付けれられる。
【0036】
以上の処理によれば、図8に示すように、リンク番号102に対応するリンクを含む経路が案内される(図8(a)を参照)。他方、迂回する経路がそもそも探索されない場合、リンク番号101に係る道路およびリンク番号103に係る道路とリンク番号102に係る道路とが同一の出力態様で出力される(図8(b)を参照)。
<本実施の形態における効果>以上本実施の形態によれば、リンク番号102に対応するリンクにおいて、通信機19の通信状態が改善した場合、ユーザがリンク番号102に対応するリンクを通過すれば、改善後の通信状態に係る通信状態データがHDD12に記憶される。したがって、通信機19の現状における通信状態を案内に反映することができる。
【0037】
本実施の形態によれば、通信状態データがリンクデータに対応付けられてるので、通信状態データが位置データに対応付けられている場合に比して、HDD12の使用容量を節約することができる。
【0038】
本実施の形態によれば、通信状態データが通信機19によって送信されるので、他のユーザに対して最新の通信状態データを利用させることができる。
<変形例>ナビゲーション装置1のハードウエア構成では、「記憶媒体」がHDDで構成された例について説明したが、「記憶媒体」がSDカード(登録商標)などの可搬型メモリカードであってもよい。また、ステップS2では、リンクデータが変化したか否かが判定されているが、GPSデータが変化したか否かが判定されてもよい。さらに、ステップS5では、通信状態データがリンクデータに対応付けられているが、通信状況データは位置データに対応付けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明は、通信機の現状における通信状態を案内に反映することができるという効果を有し、ナビゲーション機能を有する車載マルチメディア端末などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置を実施するための最良の形態の構成を示すハードウエア構成図
【図2】本実施の形態における全体的な処理の構成を示すソフトウエア構成図
【図3】本実施の形態における一の時に係るリンクと通信状態との対応を示す図
【図4】(a)本実施の形態における一の時に係る経路の表示例を示す図(b)本実施の形態における一の時に係る経路案内の表示例を示す図
【図5】本実施の形態における通信状態記憶処理の流れを示すフロー図
【図6】本実施の形態における他の時に係るリンクと通信状態との対応を示す図
【図7】本実施の形態における他の時に係るリンク番号と通信状態との対応を示す図
【図8】(a)本実施の形態における他の時に係る経路の表示例を示す図(b)本実施の形態における他の時に係る経路案内の表示例を示す図
【符号の説明】
【0041】
1 ナビゲーション装置
12 HDD(制御部、記憶媒体)
14 CPU(制御部)
19 通信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機の通信状態を案内に反映するナビゲーション装置であって、
通信機の通信状態に対応する通信状態データと現在位置に対応する位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させる制御部を備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記位置データが変化する場合に、前記通信状態データと前記位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記位置データに係るリンクデータが変化する場合に、前記通信状態データと前記位置データとを対応付けて記憶媒体に記憶させることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記位置データに係るリンクデータが変化する場合に、前記通信状態データと前記リンクデータとを対応付けて記憶媒体に記憶させることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記位置データに対応付けられた前記通信状態データを通信機に送信させることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記リンクデータに対応付けられた前記通信状態データを通信機に送信させることを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−329856(P2006−329856A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155271(P2005−155271)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】