説明

ナビゲーション装置

【課題】ソフトウェアの処理を複雑化することなく、案内経路を設定することができるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】コスト値が各々異なる複数の道路データを記憶した地図DB群6を備え、コスト計算を行う際に用いる道路データをユーザに選択させ、その選択した道路データに切り替えてコスト計算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載のナビゲーション装置のように、目的地までの案内経路を設定する場合、例えば、ダイクストラ法による評価値(コスト)計算を行って設定する。
【特許文献1】特許第3722108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したコスト計算において、例えば、交通渋滞を回避することのできる案内経路を設定する場合、渋滞区間の道路のコストを高いコスト値に変更したうえでコスト計算を行うことで、渋滞区間を回避した案内経路が設定されるようになる。
【0004】
ところで、例えば、渋滞区間を回避しつつ、幹線道路を走行する案内経路を設定する等、設定すべき案内経路をユーザの希望する経路により近づけようとする場合、コスト値の変更やコスト計算等のソフトウェアの処理が複雑化する。そして、この複雑化に伴ってソフトウェアの処理速度が低下し、ソフトウェアの処理時間が長くなる問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、ソフトウェアの処理を複雑化することなく、案内経路を設定することができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載のナビゲーション装置は、
道路に予め付与されたコスト値が各々異なる複数の道路データを記憶する道路データベース記憶手段と、
コスト計算を行う際に用いる道路データを指定する指定手段と、
道路データベース記憶手段の記憶する複数の道路データのうち、コスト計算を行う際に用いる道路データを指定手段によって指定された道路データに切り替える道路データ切り替え手段と、
道路データ切り替え手段の切り替えた道路データの道路に付与されたコスト値によるコスト計算を行って、出発地から目的地までの案内経路を設定する経路設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように、本発明のナビゲーション装置は、コスト値が各々異なる複数の道路データを記憶した道路データベースを備えており、コスト計算を行う際に用いる道路データを指定手段の指定した道路データに切り替えてコスト計算を行う。
【0008】
これにより、コスト値の変更を行うことなく、道路データの道路に付与されたコスト値を用いたコスト計算を行うことによって、所望の案内経路を設定することができるようになる。従って、ソフトウェアの処理を複雑化することなく、案内経路を設定することができる。
【0009】
請求項2に記載のナビゲーション装置によれば、道路データベース記憶手段は、日付、時間帯、曜日、道路種別、道路幅、道路形状、道路の制限速度、及び道路に敷設される信号機の有無の少なくとも1つの条件に基づいてコスト値を付与した複数の道路データを記憶するものであり、
指定手段は、
日付、時間帯、曜日、道路種別、道路幅、道路形状、道路の制限速度、及び道路に敷設される信号機の有無の少なくとも1つの条件を選択する選択手段を備え、
コスト計算を行う際に用いる道路データとして、選択手段の選択した条件に対応する道路データを指定することを特徴とする。
【0010】
これにより、ユーザは、日付、時間帯、曜日、道路種別、道路幅、道路形状、道路の制限速度、及び道路に敷設される信号機の有無の少なくとも1つの条件を選択することで、その指定した条件に基づいてコスト値が付与された道路データを用いて、コスト計算をナビゲーション装置に実行させることができる。その結果、選択した条件を優先した案内経路を設定することができるようになる。
【0011】
請求項3に記載のように、経路設定手段の設定した案内経路を案内する経路案内手段を備えることが好ましい。これいより、ユーザに対して案内経路を案内することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示す本実施形態のナビゲーション装置は、自動車等の車両に搭載して使用されるもので、位置検出器1、地図DB群6、操作スイッチ群7、送受信機11、これらに接続された制御回路8、制御回路8に接続された外部メモリ9、表示装置10、音声入出力装置12を備えている。制御回路8は、通常のコンピュータとして構成されており、その内部には周辺のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。
【0013】
位置検出器1は、いずれも周辺の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらのセンサは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては上述した内の一部で構成してもよく、更にステアリングの回転センサ、各転動輪の車両センサ等を用いてもよい。
【0014】
地図DB群6は、複数の道路データと、共通して用いられる背景データ及び目印データからなる地図データとによって構成されるデータベース(DB)である。この地図DB群6は、例えば、ハードディスク等の大記憶容量の記憶媒体が用いられる。ここで、道路データを構成するリンクデータ及びノードデータについて説明する。
【0015】
先ず、リンクとは、地図上の各道路を交差、分岐、及び合流する点等の複数のノードにて分割し、それぞれのノード間をリンクとして規定されるものであり、リンクを接続することにより道路が構成される。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端と終端の座標、高速道路、有料道路、一般道路等の道路種別、道路幅、リンクの曲率半径(道路半径)を示す道路形状、リンクの走行制限速度等の各データから構成されている。
【0016】
また、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、及び分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類、及び道路に敷設される信号機の有無等の各データから構成されている。
【0017】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、各種入力に使用される。外部メモリ9は、例えば、データの書き込みや読み出しが可能な不揮発性の記憶媒体で構成される。表示装置10はカラー表示装置であり、表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両現在位置マークと、地図DB群6より入力された地図データと、更に地図上に表示する案内経路等の付加データとを重ねて表示することが出来る。
【0018】
送受信機11は、VICS(Vehicle Information and Communication System)等の交通情報システムから提供される渋滞情報、通行規制情報、工事情報等を含む道路交通情報を取得するVICSセンサ(図示しない)を備えるもので、車両の外部から情報を受信したり、車両の外部へ情報を送信したりする。
【0019】
音声入出力装置12は、図示しないマイクを介して、ユーザの発話を電気信号に変換する。この電気信号は制御回路8に取り込まれ、制御回路8では、電気信号を分析し発話内容を解析する。また、音声入出力装置12は、図示しないスピーカから音声等を出力する。
【0020】
本ナビゲーション装置は、操作スイッチ群7により目的地の位置が設定されると、現在地を出発地(若しくは、任意な地点)とし、その出発地からその目的地までの最適な経路を自動的に選択して案内経路を形成し表示する、いわゆる経路案内機能も備えている。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、例えば、周知のダイクストラ法によるコスト計算を用いて、最小のコストで出発地から目的地へ到達することのできる経路を計算する方法が採用される。すなわち、出発地から目的地までをカバーする道路データを地図DB群6から読み出し、制御回路8の記憶部に記憶する。そして、この記憶された道路データを用いて、出発地から目的地までのコスト値の合計が最小となる経路を計算する。
【0021】
これらの機能は、主に制御回路8によって各種の演算処理がなされることによって実行される。すなわち、制御回路8は目的地が指定されると地図DB群6の道路データを用いて案内経路を計算し、その案内経路を表示装置10へ表示させるとともに、分岐地点や右左折すべき交差点において地図の拡大や音声案内を行う。
【0022】
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。上述したように、地図DB群6には、複数の道路データが記憶されている。この複数の道路データは、カバーしている道路は同じであるものの、その道路に予め付与されたコスト値が各々異なったものとなっている。
【0023】
すなわち、図2に示す1日単位で(日付毎に)道路のコスト値がチューニングされた365日分の道路データと、図3に示す1時間単位(時間帯毎に)道路のコスト値がチューニングされた24時間分の道路データと、幹線道路のコスト値がチューニングされた道路データ(図示せず)と、標準的なコスト値にチューニングされた道路データ(図示せず)を備えている。
【0024】
図2及び図3に示す道路データは、1日又は1時間毎の交通情報(渋滞情報や通行規制情報)等を反映してコスト値がチューニングされたものである。なお、交通情報については、送受信機11から受信した道路交通情報をさらに反映させることもできるようになっている。
【0025】
また、幹線道路のコスト値がチューニングされた道路データは、案内経路を構成する道路として幹線道路が含まれ易くなるように、幹線道路のコスト値がそれ以外の道路に対してチューニングされている。このほか、標準的なコスト値にチューニングされた道路データは、最短時間で到着することのできる案内経路が設定されるように、道路種別、道路幅、道路形状、道路の制限速度、道路に敷設される信号機の有無等を総合してコスト値がチューニングされている。
【0026】
また、経路案内機能では、図6に示すように、時間帯、日付、幹線道路、おまかせ、の各条件の中から1つの条件をユーザに選択させる。そして、地図DB群6に記憶された複数の道路データのうち、コスト計算を行う際に用いる道路データを、その選択した条件に基づいてコスト値がチューニングされた道路データに切り替えて最適な経路のコスト計算を行う。
【0027】
これにより、ユーザの選択した日付、時間帯、幹線道路、おまかせ、の条件に基づいてコスト値が付与された道路データを用いて、コスト計算を行うことができる。その結果、選択した条件を優先した案内経路を設定することができるようになる。
【0028】
続いて、ナビゲーション装置における経路案内処理について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、ステップS10では現在地を検出し、ステップS20では、現在地とその周辺の地図を表示する。ステップS30では、コスト計算に用いる道路データを切り替えるための地図DB切り替え処理を実行する。この地図DB切り替え処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0029】
図5に示すステップS110では、図6に示した指定画面を表示し、ステップS120では、日付、時間帯、幹線道路、おまかせ、の項目から何れか1つを指定する。ステップS130では、「時間帯で選択」が指定されたかどうかを判定する。ここで、肯定判定される場合には、ステップS140にて現在時刻を取得し、ステップS150にて現在時刻の時間帯に対応する道路データに切り替える。
【0030】
一方、ステップS130にて否定判定された場合、ステップS160では、「日付で選択」が指定されたかどうかを判定する。ここで、肯定判定される場合には、ステップS170にて現在の日付を取得し、ステップS180にて現在の日付に対応する道路データに切り替える。
【0031】
ステップS160にて否定判定された場合、ステップS190では、「幹線道路優先」が指定されたかどうかを判定する。ここで、肯定判定される場合には、ステップS200にて、幹線道路のコスト値がそれ以外の道路に対してチューニングされた道路データに切り替える。
【0032】
ステップS190にて否定判定された場合、ステップS210では、「おまかせ」が指定されたかどうかを判定する。ここで、肯定判定される場合には、ステップS220にて、標準的なコスト値にチューニングされた道路データに切り替える。一方、否定判定される場合には、ステップS40の目的地設定を行う画面に処理を移行する。
【0033】
図4に示すステップS40では目的地を設定し、ステップS50では、ステップS30にて切り替えた道路データを用いたコスト計算を行って案内経路を設定する。案内経路が設定されると、ステップS60では経路案内を開始する。ステップS70では、目的地に到着したかどうかを判定し、目的地に到着した場合には本処理を終了し、目的地に到着していない場合には、ステップS60の経路案内を継続して行う。
【0034】
このように、本実施形態のナビゲーション装置は、コスト値が各々異なる複数の道路データを記憶した地図DB群6を備えており、コスト計算を行う際に用いる道路データをユーザに選択させ、その選択した道路データに切り替えてコスト計算を行う。
【0035】
これにより、コスト値の変更を行うことなく、道路データの道路に付与されたコスト値を用いたコスト計算を行うことによって、所望の案内経路を設定することができるようになる。従って、ソフトウェアの処理を複雑化することなく、案内経路を設定することができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0037】
例えば、本実施形態の地図DB群6は、1日単位で(日付毎に)道路のコスト値がチューニングされた365日分の道路データと、1時間単位(時間帯毎に)道路のコスト値がチューニングされた24時間分の道路データと、幹線道路のコスト値がチューニングされた道路データ(図示せず)と、標準的なコスト値にチューニングされた道路データ(図示せず)を備えているが、以下のような道路データを備えるようにしてもよい。
【0038】
例えば、曜日単位で道路のコスト値をチューニングした道路データや、細街路(細い道路)でも最短時間で目的地に到達できるように、道路種別に基づいてコスト値をチューニングした道路データを備えるようにしてもよい。
【0039】
また、例えば、車両の幅員にしたがって案内経路が設定されるように、所定の道路幅以上の道路のコスト値をチューニングした道路データや、車両の重量、高さ等にしたがって案内経路が設定されるように、道路の重量制限や高さ制限に基づいて道路のコスト値をチューニングした道路データを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】1日単位で経路コストをチューニングした地図DB群を示す図である。
【図3】1時間単位で経路コストをチューニングした地図DB群を示す図である。
【図4】ナビゲーション装置における経路案内処理の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】地図DB切り替え処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】地図DB選択方法の指定画面を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・位置検出器、6・・・地図DB群、7・・・操作スイッチ群、8・・・制御回路、9・・・外部メモリ、10・・・表示装置、11・・・送受信機、12・・・音声入出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に予め付与されたコスト値が各々異なる複数の道路データを記憶する道路データベース記憶手段と、
コスト計算を行う際に用いる道路データを指定する指定手段と、
前記道路データベース記憶手段の記憶する複数の道路データのうち、前記コスト計算を行う際に用いる道路データを前記指定手段によって指定された道路データに切り替える道路データ切り替え手段と、
前記道路データ切り替え手段の切り替えた道路データの道路に付与されたコスト値によるコスト計算を行って、出発地から目的地までの案内経路を設定する経路設定手段と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記道路データベース記憶手段は、日付、時間帯、曜日、道路種別、道路幅、道路形状、道路の制限速度、及び道路に敷設される信号機の有無の少なくとも1つの条件に基づいてコスト値を付与した複数の道路データを記憶するものであり、
前記指定手段は、
日付、時間帯、曜日、道路種別、道路幅、道路形状、道路の制限速度、及び道路に敷設される信号機の有無の少なくとも1つの条件を選択する選択手段を備え、
前記コスト計算を行う際に用いる道路データとして、前記選択手段の選択した条件に対応する道路データを指定することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記経路設定手段の設定した案内経路を案内する経路案内手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−163379(P2007−163379A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362214(P2005−362214)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】