説明

ナビゲーション装置

【課題】急加減速操作が行われたことを検出して報知する運転支援機能を備え、移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき急加減速操作が行われたことを検出する。
【解決手段】ナビゲーション装置10は、経路探索部113と、車両の走行状況を検出するセンサ部15と、現在位置を測位するGPS受信部12と、地図情報を記憶した地図記憶部13と、出力手段と、加速度判定部111と、車両の移動速度に関連する複数の区分ごとに閾値を設定した閾値テーブル112と、急加減速情報記録部18と、を備え、加速度判定部111は、車両の移動速度に関連する区分に応じて閾値テーブル112から該当する閾値を取得するとともに、センサ部15またはGPS受信部12の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部18に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃費を考慮して省エネルギー運転を支援する省エネルギー運転支援機能を有する車載用のナビゲーション装置に関するものであり、特に、ナビゲーション装置が各種センサや測位手段から取得する情報に基づいて急な加速、減速を識別し、走行中の道路における車両の位置により急な加速、減速が適切な操作か否かを識別するようにしたナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図データや道路データを用いて、所望の出発地から目的地までの経路を探索して利用者を案内するナビゲーション装置、ナビゲーションシステムが知られており、このようなナビゲーション装置、ナビゲーションシステムとしては自動車に搭載して運転者に経路を案内するカーナビゲーション装置、携帯電話をナビゲーション端末として利用して経路探索サーバに経路探索要求を送り、その結果を受信して経路案内を受ける通信型のナビゲーションシステムなどが実用化されている。
【0003】
上記カーナビゲーション装置は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を利用したものであり、地球上を周回している複数のGPS衛星から送信されるGPS信号をGPSアンテナで受信し、該GPS信号に含まれる衛星位置や時計情報等を解析して位置の特定化を行うものである。該複数のGPS衛星の個数は少なくとも4個以上必要である。GPSの単独測位精度は一般的に10m強であるが、DGPS(Differential GPS:ディファレンシャルGPS)を採用することにより5m以下に向上する。
【0004】
ナビゲーション装置は経路探索のために道路ネットワークのデータベースを備えている。この道路ネットワークのデータベースは、地図データの道路(経路)を、その結節点、屈曲点などの位置をノードとするノードデータ、各ノードを結ぶ経路をリンクとするリンクデータ、全てのリンクのコスト情報(距離や所要時間)を有するリンクコストデータを蓄積したものである。ナビゲーション装置は、このデータベースを参照して、出発地のノードから目的地のノードに至るリンクを順次探索し、リンクのコスト情報が最小となるノード、リンクをたどって案内経路とすることによって最短の経路を探索して案内する。このようなデータベースを用いた経路探索の手法としてはラベル確定法あるいはダイクストラ法と言われる手法が用いられる。
【0005】
また、最近では、地球環境、エネルギー資源を有効に活用することが大きな課題になっており、自動車の走行に伴う排気ガスによる地球環境の悪化を抑制し、エネルギー資源の不適切な消費を防止するためのシステムが考慮されている。このような機能は省エネルギー運転支援機能ということができ、例えば、車両から運転の状況を示すデータを収集して、燃料などのエネルギーの消費が不適切になるような運転状況があった場合に、統計的にあるいはリアルタイムに報知するシステムが提案されている。
【0006】
このような省エネルギー運転支援機能を有するシステムは、例えば、下記の特許文献1(特開2003−316864号公報)に車両の運行管理システムとして開示されている。この特許文献1に開示された車両の運行管理システムは、車両から運転状況を示すデータを収集する情報センタを備えて構成されている。また、各車両には制御回路が備えられ、この制御回路により各種センサから速度やエンジン回転数などの車両情報を取得し、情報センタに送信する。情報センタは、車両情報から現在の車両の運転状態を分析して省エネ運転が実行されていない場合には、省エネ運転を守るように指示を出す。制御回路は情報センタからの指示を表示器に表示する。
【0007】
例えば、省エネ運転をしていないとして定められる条件としては、次のような項目を設定している。すなわち、速度に比べてエンジン回転数が高い場合、つまり低速走行しているにも関わらず、エンジン回転数が高い、または速度変化が小さいにもかかわらずエンジン回転数が頻繁に高くなるという事象が発生した場合、走行距離が増加しないにもかかわらず、エンジン回転数が高い、またはアイドリング状態に長期間ある場合、速度に適したシフトポジションが選択されていない場合、急な加減速が頻繁に発生している場合、車速が高い場合、短時間のうちにシフトポジションが頻繁に変わる場合、アクセル開度が短時間のうちに頻繁に大小変化している場合などの条件に当てはまる場合である。同様にして安全運転を支援する機能を盛り込むこともできる。
【特許文献1】特開2003−316864号公報(図1、段落[0015]、[0016])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された運行管理システムは、運転状況に関するデータを収集して情報センタに送信する車載機器を車両に設置し、また、その車載機器に情報センタからの情報を表示する機能を備える必要があり、設置のためのコストが必要になるという問題点がある。また、運行管理、運転支援のための情報センタを設置するため設備投資が必要であり、多くの一般ドライバを対象とする支援装置として提供可能なシステムには不適切であるという問題点がある。
【0009】
自動車において不適切に燃料を消費するケースとしては、急激な加減速操作を行った場合があげられる。しかしながら、上記特許文献1に開示された運行管理、運転支援システムにおいては、急激な加減速が頻繁に繰り返されたことを検出して車載機器に報知するものではあるが、車載装置を持つ車両がどのような経路を走行しているかを分析するものではないので、一定の基準で画一的に加減速操作の適否を判断せざるを得ないという問題点がある。
【0010】
自動車は、様々な形状の道路を走行するものであり、カーブなどでは走行の安全上やむを得ずブレーキ操作して減速する必要がありこの場合の急激な減速操作は適切な操作である。また、高速道路、一般道路など属性の異なる道路を走行することもある。高速道路は通常の走行速度が速く、ランプやインターチェンジではカーブがあり、急減速して所望の道路に分岐する場合がある。この場合の減速操作も適切な操作である。逆にカーブから高速道路に入る場合には遅い速度から高速に急加速する場合もある。この場合の急加速も適切な運転操作である。
【0011】
また、単に加速度を単一の閾値と比較して急加減速操作を判定しただけでは、きめ細かい判定をすることができない。例えば、高速道路を走行している場合、移動速度が速いため、空気抵抗などの要因により急加減速操作を行っても加速度の変動が小さく、閾値が適切に設定されていないと急加減速操作の判定ができないという問題点もある。
【0012】
すなわち、上記特許文献1に開示された運行管理、運転支援システムにおいては、車両が実際に走行している道路の状況を知ることができないので、上記のように急激な加速、減速が行われても、それが適切な運転操作であるか、不適切な運転操作であるのかをきめ細かく識別できず、有効な省エネルギー運転支援をすることができないという問題点があった。
【0013】
本願の発明者は上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、運転を支援するための既存の車載装置として、所望の出発地から目的地までの経路を探索して目的地までの距離や所要時間が最も小さい最適経路を案内するナビゲーション装置が普及している点に着目し、ナビゲーション装置が各種センサや測位手段から取得する情報、あるいは、走行中の道路を含む地図情報に基づいて、移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき、急激な加減速操作が適切な操作であるか、不適切な操作であるかを識別して省エネルギー運転支援を行うようになせば上記問題点を解消し得ることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、急加減速操作が行われたことを検出して報知する運転支援機能を備え、移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき急加減速操作が行われたことを検出するようにしたナビゲーション装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に関連する複数の区分ごとに閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に関連する区分に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とする。
【0016】
本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記閾値テーブルにおける移動速度の区分は、速度制限情報を含む道路属性に基づいて区分され、道路属性ごとに閾値が設定されていることを特徴とする。
【0017】
本願の請求項3にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記閾値テーブルにおける移動速度の区分は、車両から取得する移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに閾値が設定されていることを特徴とする。
【0018】
本願の請求項4にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記急加減速情報は、不適切な急加減速操作が行われた場所、時間、回数を含むことを特徴とする。
【0019】
本願の請求項5にかかる発明は、請求項1ないし請求項4の何れか1項にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知することを特徴とする。
【0020】
本願の請求項6にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とする。
【0021】
本願の請求項7にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が所定の曲率以上の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1にかかる発明においては、
ナビゲーション装置は、経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、加速度判定部と、車両の移動速度に関連する複数の区分ごとに閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に関連する区分に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録する。
【0023】
このような構成によれば、車両の移動速度に応じて適切に設定された閾値と加速度を比較することにより、空気抵抗などに影響されることなく、急激な加速操作または減速操作が行われたことをきめ細かく識別することができるようになる。このため、有効な省エネルギー運転支援機能を有するナビゲーション装置を提供することができるようになる。
【0024】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記閾値テーブルにおける移動速度の区分は、速度制限情報を含む道路属性に基づいて区分され、道路属性ごとに閾値が設定されている。このような構成によれば、走行中の道路属性を識別して、その移動速度に応じて適切に設定された閾値と加速度を比較することにより、空気抵抗などに影響されることなく、急激な加速操作または減速操作が行われたことをきめ細かく識別することができるようになる。
【0025】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記閾値テーブルにおける移動速度の区分は、車両から取得する移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに閾値が設定されている。このような構成によれば、走行中の車両の移動速度を検出して、その移動速度の区分に応じて適切に設定された閾値と加速度を比較することにより、空気抵抗などに影響されることなく、急激な加速操作または減速操作が行われたことをきめ細かく識別することができるようになる。
【0026】
また、請求項4にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、急加減速情報は、不適切な急加減速操作が行われた場所、時間、回数を含む。このような構成によれば、急加減速操作が行われた状況を記録し、きめ細かい運転支援を行うことができるようになる。
【0027】
また、請求項5にかかる発明においては、請求項1ないし請求項4の何れか1項にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知する。このような構成によれば、不適切な急加減速操作が行われた場合に利用者に報知し、省エネルギー運転を促すことができるようになる。
【0028】
また、請求項6にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する。このような構成によれば、急加減速操作の適否を識別することができ、きめ細かい省エネルギー運転支援を行うことができるようになる。
【0029】
また、請求項7にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が所定の曲率以上の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定する。このような構成によれば、急加減速操作の適否を識別することができ、きめ細かい省エネルギー運転支援を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のナビゲーション装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、制御部11、GPS受信部12、地図記憶部13、表示部14、センサ部15、入力部16、経路記憶部17、急加減速情報記録部18、音声出力部19などを備えて構成されている。
【0032】
GPS受信部12は、複数のGPS衛星から送信されている信号を受信し、現在の位置を緯度・経度で算出する測位手段であり、ナビゲーション装置10が搭載された自動車の現在位置を所定の時間間隔で測位するものである。地図記憶部13には地図および経路探索のためのネットワークデータ(ノード、リンク、リンクコスト)が蓄積されている。
【0033】
表示部14は、液晶表示ユニットなどで構成される表示手段であり、地図や案内経路が表示される。表示部14に表示される地図や案内経路は、GPS受信部12で測位した現在位置を中心にして表示され、現在位置が経路上を進行するに従ってスクロール表示される。現在位置が案内経路上の交差点などの手前(所定の距離)になると、当該交差点の進行方向(直進、右折、左折)などのガイダンスを表示部14に表示したり、スピーカなどで構成された音声出力部19を介して出力したりする。
【0034】
入力部16はテンキーや文字入力キー、機能キー、タッチパネルなどを備えた入力手段であり、また、入力部16は表示部14に表示されたメニュー画面の項目を選択するための選択キー、カーソルキーを備えている。
【0035】
制御部11はマイクロプロセッサからなる制御回路であり、図示していないROM、RAMを備えている。ROMには各部動作を制御するプログラムを記憶している。例えば、制御部11が経路探索するためのプログラム、ナビゲーション装置10が搭載された車両の加速度を検出して所定の閾値と比較し、急激な加減速を生じる運転操作がなされたか否かを判定するとともに、車両が走行中の案内経路とGPS受信部12から取得する情報に基づいて、急激な加減速が適切な操作か不適切な操作かを判定するプログラムが記憶されている。従って、制御部11は加速度判定部111、経路探索部113が含まれて構成されたものとなっている。
【0036】
表示部14に表示される地図は、現在位置を中心とした所定の範囲の地図情報か地図記憶部13から取得(読み出し)され、表示画面の中央を現在位置として表示される。経路探索部が経路探索をして案内経路が求められている場合には、表示部14に表示された地図上に表示色を異なる色としたりして案内経路が重ね合わせて表示される。
【0037】
一般に、日常的に走行している自宅と職場などの経路はその都度ナビゲーション機能を用いて経路探索することはなく、地図と現在位置だけが表示部14に表示され、ガイダンスを受けないで使用することが殆どであり、ナビゲーション機能が使用されるのは、行楽地や観光地に出かける場合やドライブなどで経路の不案内な場所に出かける場合である。
【0038】
経路探索部113は、入力部16から入力された出発地、目的地などの経路探索条件に応じて地図記憶部13に記憶された経路探索用のネットワークデータを参照して最適な経路を案内経路として探索する。経路探索部113が探索した案内経路の情報や交差点ノードごとのガイダンスの情報は経路記憶部17に記憶され、表示部14に案内経路を表示し、音声出力部19を介して音声ガイドを行う。
【0039】
センサ部15は、車速センサ、舵角センサ、エンジン回転数センサ、タイマなどから構成され、車両の走行状態を検出するものであり、各センサ出力を連続的に計測することにより、走行軌跡を取得することができる。加速度判定部111は、センサ部15の車速センサ出力に基づいて加速度を算出する。また、加速度は後述するように、GPS受信部12が所定の間隔で測位した現在位置と測位の時間間隔から求めた速度をもとに算出することもできる。
【0040】
また、制御部11には加速度を比較するための閾値テーブル112を備えている。閾値テーブル112には、図2に示すように道路属性に応じた閾値が設定されている。すなわち、閾値テーブル112には、加速時の加速度閾値(m/sec2)と、減速時の加速度閾値(m/sec2)の値が、道路属性ごとに設定されている。道路属性は、制限速度40Km未満の一般道路と、制限速度40Km以上の一般道路と、側道・合流車線と、高速道路にわけてそれぞれの加速度閾値が設定されている。
【0041】
また、閾値テーブル112に加速時の加速度(加速度の値はプラスの値になる)と減速時の加速度(加速度の値はマイナスの値になる)を比較するための閾値を、異なる値として設定している。この理由は、減速時にはわずかなブレーキ操作で所望の加速度を生じるのに対して、加速時には所望の加速度を生じさせるためには、かなりアクセルを踏み込む必要がある。このため、加速時と減速時とでは閾値をそれぞれに応じた値とするためである。
【0042】
加速度判定部111は、センサ部15の車速センサ出力に基づいて加速度を算出する。また、加速度はGPS受信部12が所定の間隔で測位した現在位置と測位の時間間隔から求めた速度をもとに算出することもできる。GPS受信部12の測位データにより加速度を算出する場合は、例えば、1秒毎に位置を測位し、A−B間、B−C間の速度が夫々5m/sec、10m/secだとすると、加速度a=(V−Vo)/t=10−5/1=5m/sec2 」となる。そして、算出した加速度が閾値以上(急加減速が行われた)か否かを判別する。そして加速度が所定の閾値を下回ったらば1回の急加減速操作が行われたものとして回数をカウントする。
【0043】
この判定を行うため、実施例1においては道路属性に応じて閾値テーブル112に設定された閾値から該当する閾値を読み出して比較する。車両がどの道路属性を持つ道路を走行しているかは、GPS受信部12で測位した現在位置に基づいて地図記憶部13から読み出した地図情報の道路のデータ、あるいは、経路探索部113が探索した案内経路のデータから識別することができる。
【0044】
例えば、車両が高速道路を走行中で加速度判定部111が加速時の加速度を検出した場合には該当する閾値である「3」(図2参照)を閾値として比較し、加速度がこの閾値以上であるか否かにより、急激な加速操作の有無を判定する。減速時の加速度を検出した場合も同様の処理を行う。このように車両の移動速度に応じて適切に設定された閾値と加速度を比較することにより、空気抵抗などに影響されることなく、急激な加速操作または減速操作が行われたことをきめ細かく識別することができる。
【0045】
以上のようにして加速度判定部111が急激な加減速操作を検出し、不適切な操作であると判定した場合には、急加減速情報としてその操作が行われた場所や時間、回数を記憶する。そして、表示部14や音声出力部19を介して利用者に報知する。
【0046】
加速度判定部111は上記のようにして、車速センサまたはGPS受信部12の出力に基づいて算出した加速度と、道路属性に基づく移動速度に応じた閾値とを比較して不適切な急加減速の操作が行われたかを判定する。この判定に際して加速度判定部111は、GPS受信部12で測位した現在位置の情報(緯度・経度)と、現在位置に基づいて地図記憶部13から得た地図情報に基づいて、または、経路探索部113が探索した案内経路の情報とに基づいて、車両の走行状態を加味して急激な加減速操作が適切な操作であるか、不適切な操作であるかを判定するようにしてもよい。
【0047】
例えば、ここでは、現在位置がカーブした道路上である場合は適切な操作と判定し、直線道路である場合には不適切な操作と判定する。カーブした道路と直線道路の判別は道路属性情報に基づいて所定の曲率以下である場合にカーブと判定し、所定の曲率以上の場合直線道路と判定すればよい。加速度判定部111が不適切な操作であると判定した場合には、急加減速情報としてその操作が行われた場所や時間、回数を記憶する。そして、表示部14や音声出力部19を介して利用者に報知する。
【0048】
カーブと直線道路の識別のための道路の曲率としては、例えば、高速道路では「半径300m」以下をカーブ、それ以上を直線道路、一般道路では「半径150m」以下をカーブ、それ以上を直線道路と判定するように設定する。
【0049】
このように、本発明においては、道路属性に基づく移動速度に応じて設定した閾値と加速度とを比較することにより、高速移動時の空気抵抗などの影響による加速度変化に追随してきめ細かく不適切な急加減速の操作を識別することかできるようになる。
【0050】
次に、上記実施例1のナビゲーション装置の動作手順について、図3のフローチャートに基づいて説明する。先ず、加速度判定部111は、経路探索部113が探索した案内経路の情報あるいはGPS受信部12が測位した現在位置の情報に基づいて地図記憶部13から読み取った地図情報の道路データから走行中の道路を識別し、その道路属性を取得する。次いでステップS12の処理において道路属性に変化があったか否かを判定する。
【0051】
道路属性に変化があった場合は、ステップS13の処理において、閾値テーブル112から該当する道路属性に対して設定されている閾値を読み出す。道路属性に変化がなければ、それまでの道路属性に従って閾値テーブル112から既に読み出された閾値が使用される。そして、ステップS14の処理において加速度判定部111はセンサ部15またはGPS受信部12のセンサ出力に基づいて加速度を算出し、これを閾値と比較して閾値以上であるかを判定する。この判定において加速度が閾値以上でなければステップS11の処理に戻る。
【0052】
ステップS15の処理において、加速度が閾値以下になったかを判定する。加速度が閾値以下になっていなければステップS15の処理を繰り返し、加速度が閾値以下になったならば1回の急加減速操作が行われたものと判定してステップS16の処理に進む。
【0053】
ステップS16の処理において、加速度判定部111は、経路探索部113が探索した案内経路の情報あるいはGPS受信部12が測位した現在位置の情報に基づいて地図記憶部13から読み取った地図情報の道路データと現在位置とから車両が交差点またはカーブを走行中であるか否かを判定する。車両が交差点またはカーブ上を走行中であれば、適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS11の処理に戻る。
【0054】
車両が交差点またはカーブを走行中でなければ、不適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS17の処理において急加減速情報を急加減速情報記録部18に記憶し、ステップS18の処理において表示部14あるいは音声出力部19などの出力手段を介して、利用者に報知する。
【実施例2】
【0055】
以上説明した実施例1のナビゲーション装置10においては、道路属性に応じて閾値を設定した閾値テーブル112を備えた構成であったが、GPS受信部12の出力から算出した車両の移動速度またはセンサ部15の車速センサで検出した車両の実際の移動速度を何段階かの移動速度区分に分け、移動速度区分ごとに閾値を設定した図4に示す閾値テーブルを備えた構成であってもよい。実施例2にかかるナビゲーション装置10は閾値テーブル114を除く他の構成は図1に示す実施例1にかかるナビゲーション装置10と同様であり、説明の重複を避けるため各構成要素の説明は省略する。
【0056】
図4に示す閾値テーブルは、車両の移動速度を20Km/h以下、20〜40Km/h、40〜60Km/h、60〜80Km/h、80Km以上の5つの移動速度区分に分けてある。各移動速度区分ごとに、加速時の加速度閾値(m/sec2)と、減速時の加速度閾値(m/sec2)の値が、道路属性ごとに設定されている。例えば、80Km以上の移動速度で加速時の加速度閾値は4(m/sec2)である。
【0057】
次に、実施例2にかかるナビゲーション装置10の動作手順を、図5のフローチャートを参照して説明する。先ず、加速度判定部111は、ステップS21の処理においてセンサ部15の車速センサ出力またはGPS受信部12の出力から車両の移動速度を検出する。次いで、ステップS22の処理において移動速度に基づいて閾値テーブル(図4参照)を参照し、該当する移動速度区分に設定してある閾値(加速度閾値)を読み出す。
【0058】
ステップS23の処理において、加速度判定部111はセンサ部15のセンサ出力またはGPS受信部12の出力に基づいて加速度を算出し、これをステップS22の処理で読み出した閾値と比較して閾値以上であるかを判定する。この判定において加速度が閾値以上でなければステップS21の処理に戻る。
【0059】
ステップS24の処理において、加速度が閾値以下になったかを判定する。加速度が閾値以下になっていなければステップS24の処理を繰り返し、加速度が閾値以下になったならば1回の急加減速操作が行われたものと判定してステップS25の処理に進む。
【0060】
ステップS25の処理において、加速度判定部111は、経路探索部113が探索した案内経路の情報あるいはGPS受信部12が測位した現在位置の情報に基づいて地図記憶部13から読み取った地図情報の道路データと現在位置とから車両が交差点またはカーブを走行中であるか否かを判定する。車両が交差点またはカーブ上を走行中であれば、適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS21の処理に戻る。
【0061】
車両が交差点またはカーブを走行中でなければ、不適切な急加減速の操作であると判定し、ステップS26の処理において急加減速情報を急加減速情報記録部18に記憶し、ステップS27の処理において表示部14あるいは音声出力部19などの出力手段を介して、利用者に報知する。
【0062】
以上、説明したように、本発明によれば、急加減速操作が行われたことを検出して報知する運転支援機能を備えたナビゲーション装置において、移動速度に関連して適切な閾値を設定しておき急加減速操作が行われたことを検出するので、有効な省エネルギー運転支援機能を有するナビゲーション装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置に備えられる閾値テーブルの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置における動作手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例2にかかるナビゲーション装置に備えられる閾値テーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施例2にかかるナビゲーション装置における動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10・・・・ナビゲーション装置
11・・・・制御部
111・・・加速度判定部
112・・・閾値テーブル
113・・・経路探索部
12・・・・GPS受信部
13・・・・地図記憶部
14・・・・表示部
15・・・・センサ部
16・・・・入力部
17・・・・経路記憶部
18・・・・急加減速情報記録部
19・・・・音声出力部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部と、車両の走行状況を検出するセンサ部と、現在位置を測位するGPS受信部と、地図情報を記憶した地図記憶部と、出力手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、更に、加速度判定部と、車両の移動速度に関連する複数の区分ごとに閾値を設定した閾値テーブルと、急加減速情報記録部と、を備え、前記加速度判定部は、車両の移動速度に関連する区分に応じて前記閾値テーブルから該当する閾値を取得するとともに、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて加速度を算出して前記取得した閾値と比較し、急加減速が行われたか否かを判定し、急加減速情報を前記急加減速情報記録部に記録することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記閾値テーブルにおける移動速度の区分は、速度制限情報を含む道路属性に基づいて区分され、道路属性ごとに閾値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記閾値テーブルにおける移動速度の区分は、車両から取得する移動速度に応じて区分され、移動速度の区分ごとに閾値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記急加減速情報は、不適切な急加減速操作が行われた場所、時間、回数を含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記加速度判定部は、前記不適切な急加減速を判定した場合には、前記出力手段にその旨を報知することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が直線道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記加速度判定部は、前記センサ部またはGPS受信部の出力に基づいて算出した加速度が所定の閾値を超えたことを判定した場合、前記GPS受信部が測位した現在位置の情報および現在位置に基づいて地図記憶部から得た地図情報に基づいて、現在位置が所定の曲率以上の道路上である場合に不適切な急加減速操作と判定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−303857(P2007−303857A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129934(P2006−129934)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】