説明

ナビゲーション装置

【課題】 最新の交通情報を使用する原則があるナビゲーション装置であっても、簡便な方法で、取得した交通情報の中から、精度が高い交通情報を抽出しナビゲーション処理に使用する。
【解決手段】 本発明のナビゲーション装置は、取得した交通情報のうち最新の交通情報を用いてナビゲーション処理を行うナビゲーション手段とを備えている。ただし、ナビゲーション手段は、取得した交通情報の中に、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、当該プローブカー起源交通情報を取得した後に取得した交通情報であってプローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とが含まれている場合で、かつ当該プローブカー起源交通情報が所定期間内に取得されたものである場合には、当該プローブカー起源交通情を最新か否かに関らずナビゲーション処理に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通情報センタの保持する交通情報(リンク旅行時間や渋滞度)を、ビーコン、FM多重放送又はネットワークを介して取得し、取得した交通情報をナビゲーション処理に使用する車載用ナビゲーション装置がある(非特許文献1等参照)。このような車載用ナビゲーション装置は、高い精度を確保するために、なるべく最新の交通情報を用いて、表示や経路探索のナビゲーション処理を行うように設計されている。
【0003】
【非特許文献1】特許庁、標準技術集、カーナビゲーション装置のユーザーインターフェイス、主分類:6-C-5 道路交通情報通信システム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
将来、交通情報の精度が益々重要視される。しかし、特許文献1の技術では、必ずしも現状に即しない精度の低い交通情報がナビゲーション処理に使用される場合がある。
【0005】
本発明の目的は、最新の交通情報を使用する原則があるナビゲーション装置であっても、取得した交通情報の中から、簡便な方法で、精度が高い交通情報を抽出しナビゲーション処理に使用する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
交通情報の基となる情報は一律ではない。交通情報には、道路上に設置された交通量センサにより収集された情報(時間当たりに通過する車両の台数、車両の密度、車両の速度など)を基に生成された交通情報(「設置センサ起源交通情報」という)と、プローブカーにより実際に道路を走行して収集された情報(車両の速度など)を用いて生成された交通情報(「プローブカー起源交通情報)という)がある。プローブカー起源交通情報は、実際の走行に基づいているので、通常、精度がよい。しかし、その反面、プローブカー起源交通情報は、全ての道路を定期的にプローブカーが走行するとは限らないので、情報量に限度がある。一方、設置センサ起源交通情報は、道路の所定位置に設置された、24時間休むことなく稼動する交通量センサの出力に基づいているので、情報量に優れる。しかし、その反面、設置センサ起源交通情報は、センサの故障やセンサの前の障害物を原因とした、誤った交通情報である場合もある。従来の車載用ナビゲーション装置は、図12に示すように、取得した最新の交通情報をナビゲーション処理に使用する。すなわち、誤った交通情報であっても、それが最新であれば、ナビゲーション処理に使用する。これでは、精度のよいナビゲーション処理を行うことができない。本願発明者は、これら点に留意し、以下の本願発明をするに至った。
【0007】
すなわち、本発明のナビゲーション装置は、所定の条件を満たす場合、最新でなくてもプローブカー起源交通情報を用いてナビゲーション処理を行うようにする。
【0008】
例えば、本発明のナビゲーション装置は、交通情報を取得する交通情報取得手段と、前記交通情報取得手段により取得した交通情報のうち最新の交通情報を用いてナビゲーション処理を行うナビゲーション手段とを備えている。そして、前記ナビゲーション手段は、前記交通情報取得手段により取得した交通情報の中に、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、当該プローブカー起源交通情報を取得した後に取得した交通情報であってプローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とが含まれている場合には、前記プローブカー起源交通情報を最新か否かに関らずナビゲーション処理に用いる。
【0009】
前記ナビゲーション手段は、前記交通情報取得手段により取得した交通情報の中に、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、当該プローブカー起源交通情報を取得した後に取得した交通情報であってプローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とが含まれている場合で、かつ当該プローブカー起源交通情報が所定期間内に取得されたものである場合には、当該プローブカー起源交通情を最新か否かに関らずナビゲーション処理に用いるようにしてもよい。
【0010】
また、前記交通情報には、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とを区別するためのフラグ情報が含まれていてもよい。そして、前記ナビゲーション手段は、前記フラグ情報を用いて、前記交通情報取得手段が取得した交通情報の中に、所定期間内に受信したプローブカー起源交通情報が含まれているか否か判定し、含まれている場合は、そのプローブカー起源交通情報の中の最新のものを使用してナビゲーション処理を行い、含まれていない場合は、前記プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報の中の最新のものを使用してナビゲーション処理を行うようにしてもよい。
【0011】
また、前記ナビゲーション装置は、交通情報を補正するための補正情報を記憶する手段を備えていても良い。そして、前記ナビゲーション手段は、前記交通情報が、プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報である場合、前記補正情報で補正した後、ナビゲーション処理に用いるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかるナビゲーションシステムの概略構成図である。図示するように、本実施形態のナビゲーションシステムは、車載用ナビゲーション装置100と、交通情報配信サーバ203とを有する。交通情報センタ200より提供される交通情報は、交通情報配信サーバ203に送られる。車載用ナビゲーション装置100と交通情報配信サーバ203とは、無線基地局401とネットワーク400を介して接続される。また、交通情報センタ200の交通情報は、FM多重放送局201、ビーコン202によっても車載用ナビゲーション装置100に送信される。
【0014】
交通情報配信サーバ203は、演算装置(CPU)とメモリと通信インターフェースなどからなる既存のコンピュータシステムで構成される。交通情報配信サーバ203は、自身の記憶装置に交通情報210を格納する。
【0015】
図2は、かかる交通情報210の構成を示す図である。図示するように、交通情報210には、地図上の区画されたメッシュ領域の識別コード(メッシュID)211ごとに、そのメッシュに含まれる道路を構成するリンクの識別コード(リンクID)、そのリンクのリンク旅行時間213、渋滞度214、交通情報の生成日時215、プローブカー起源交通情報か否かを判別するためのフラグ216とが格納されている。
【0016】
なお、本実施形態では、上述のように、「プローブカー起源交通情報」とは、プローブカーで収集された情報を用いて生成された交通情報(リンク旅行時間や渋滞度)のことである。一方、「設置センサ起源交通情報」とは、道路上に設置された交通量センサなどにより、実際に走行することなく収集された情報に基づいて生成された交通情報(リンク旅行時間や渋滞度)のことである。また、道路上に配置されたセンサで収集した情報に基づいて生成された交通情報であっても、プローブカーで収集した情報により修正された交通情報は、「設置センサ起源交通情報」ではなく、「プローブカー起源交通情報」であるとする。なお、(財)道路交通情報通信システムセンターが提供するVICS(Vehicle Information and Communication System)情報を「設置センサ起源交通情報」として、その他のプローブカーで収集した情報により生成された交通情報を「プローブカー起源交通情報」としてもよい。
【0017】
図3は、車載用ナビゲーション装置100の概略構成図である。図示するように、車載用ナビゲーション装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4と、入力装置5と、車輪速センサ6と、地磁気センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9と、FM多重放送受信装置11と、ビーコン受信装置12と、ネットワーク通信装置13とを備えている。
【0018】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ6〜8やGPS受信装置9から出力される情報を基にして現在地を検出する。また、得られた現在地情報に基づいて、表示に必要な地図データを記憶装置3から読み出す。また、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在地を示すマークを重ねてディスプレイ2へ表示する。また、記憶装置3に記憶されている地図データおよび交通情報配信サーバ203等から受信した交通情報を用いて、ユーザから指示された目的地と現在地(出発地)とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索する。また、音声入出力装置4やディスプレイ2を用いてユーザを誘導する。
【0019】
ディスプレイ2は、演算処理部1で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ2は、CRTや液晶ディスプレイなどで構成される。
【0020】
記憶装置3は、CD-ROMやDVD-ROMやHDDやICカードといった記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、地図データが記憶されている。地図データには、メッシュIDごとに、そのメッシュ領域に含まれる各リンクのリンクデータが格納されている。リンクデータには、リンクIDごとに、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報、リンクを含む道路の種別情報、リンクの長さを示すリンク長情報、2つのノードにそれぞれ接続するリンクのリンクID(接続リンクID)などが格納されている。
【0021】
音声入出力装置4は、演算処理部1で生成したユーザへのメッセージを音声信号に変換し出力する。また、ユーザが発した声を認識し演算処理部1にその内容を転送する処理を行う。
【0022】
入力装置5は、ユーザからの指示を受け付けるユニットである。入力装置5は、スクロールキー、縮尺変更キーなどのハードスイッチ、ジョイスティック、ディスプレイ上に貼られたタッチパネルなどで構成される。
【0023】
センサ6〜8およびGPS受信装置9は、車載用ナビゲーション装置100で現在地(自車位置)を検出するために使用されるものである。車輪速センサ6は、車輪の円周と計測される車輪の回転数の積から距離を測定し、さらに対となる車輪の回転数の差から移動体が曲がった角度を計測する。地磁気センサ7は、地球が保持している磁場を検知し、移動体が向いている方角を検出する。ジャイロ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体が回転した角度を検出するものである。GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在位置、進行速度および進行方位を測定する。
【0024】
FM多重放送受信装置11は、FM多重放送信号としてFM多重放送局201から送られてくる交通情報を受信する。
【0025】
ビーコン受信装置12は、ビーコン202から送られてくる交通情報を受信する。
【0026】
ネットワーク通信装置13は、車載用ナビゲーション装置100と、交通情報配信サーバ203との間の情報の授受を仲介する。
【0027】
図4は、演算処理部1の機能構成を示す図である。
【0028】
図示するように、演算処理部1は、ユーザ操作解析部41と、現在位置算出部42と、経路探索部43と、経路誘導部44と、通信処理部45と、受信情報記憶部46と、表示処理部47とを有する。
【0029】
ユーザ操作解析部41は、入力装置5に入力されたユーザからの要求を受け、その要求内容を解析して、その要求内容に対応する処理が実行されるように演算処理部1の各部を制御する。例えば、ユーザが推奨経路の探索を要求したときは、目的地を設定するため、地図をディスプレイ2に表示する処理を表示処理部47に要求する。また、受信した交通情報を表示するように表示処理部47に要求する。
【0030】
現在位置算出部42は、車輪速センサ6で計測される距離パルスデータS5およびジャイロ8で計測される角加速度データS7を各々積分した結果得られる距離データおよび角度データを用い、そのデータを時間軸で積分していくことにより、初期位置(X,Y)から自車走行後の位置である現在地(X′,Y′)を定期的に演算する。また、演算結果を用いて、マップマッチ処理することにより、形状の相関が最も高い道路(リンク)上に、現在地を合わせ込む。また、定期的に、GPS受信装置9の出力により現在地を修正する。
【0031】
経路探索部43は、ダイクストラ法等を用いて、指定された2地点(現在地、目的地)間を結ぶ経路のコスト(例えば、旅行時間)が最少となる経路を探索する。経路探索の際は、受信した交通情報に含まれているリンク旅行時間を用いる。また、渋滞度の高い道路を回避する経路を探索する。経路誘導部44は、経路探索部43で探索された経路を用いて経路誘導を行う。
【0032】
通信処理部45は、交通情報のダウンロード要求を受け付けると、ネットワーク通信装置13を介して、交通情報配信サーバ203に接続し、交通情報のダウンロードを要求する。そして、ダウンロードした交通情報を受信情報記憶部46に記憶させる。また、通信処理部45は、FM多重放送局201やビーコン202から受信した交通情報を受信情報記憶部46に記憶させる。なお、記憶装置3が、書換え可能なHDD、フラッシュROMなどで構成される場合は、通信処理部45は、受信した情報を、記憶装置3に記憶させるようにしてもよい。
【0033】
表示処理部47は、ディスプレイ2への表示が要求される領域にある地図データを記憶装置3から受け取り、指定された縮尺、描画方式で、道路、その他の地図構成物や、現在地、目的地、誘導経路のための矢印といったマークを描画するように地図描画コマンドを生成する。そして、生成したコマンドを、ディスプレイ2に送信する。
【0034】
図5は、演算処理部1のハードウェア構成例を示す図である。
【0035】
図示するように、演算処理部1は、各デバイス間をバス32で接続した構成としてある。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、記憶装置3から読み出した地図データ、演算データなどを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、メモリ間およびメモリと各デバイスとの間のデータ転送を実行するDMA(Direct Memory Access)24と、グラフィックス描画を実行し且つ表示制御を行う描画コントローラ25と、グラフィックスイメージデータを蓄えるVRAM(Video Random Access Memory)26と、イメージデータをRGB信号に変換するカラーパレット27と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器28と、シリアル信号をバスに同期したパラレル信号に変換するSCI(Serial Communication Interface)29と、パラレル信号をバスに同期させてバス上にのせるPIO(Parallel Input/Output)30と、パルス信号を積分するカウンタ31と、を有する。
【0036】
[動作の説明]次に、上記のように構成される車載用ナビゲーション装置100の動作について説明する。
【0037】
上述のように、通信処理部45は、定期的にあるいはユーザからの要求にしたがって、ネットワークを介して交通情報配信サーバ203から交通情報を受信し、受信情報記憶部46に記憶させる。また、FM多重放送局201やビーコン202を介して、交通情報センタ200から配信される交通情報を受信し、受信情報記憶部46に記憶させる。
【0038】
図7は、こうして受信情報記憶部46に記憶された交通情報460の構成を示す図である。交通情報460の構成は、基本的に、図2で示した交通情報210と同様である。ただし、通信処理部45は、受信した交通情報に、受信日時467を付加して、受信情報記憶部46に格納する。したがって、交通情報460には、受信日時467ごとに、受信した交通情報のレコード468が格納される。なお、通信処理部45は、定期的に、受信日時467から所定期間(例えば、2時間)経たレコード468を削除する処理を行う。
【0039】
経路探索部43は、こうして記憶された交通情報460を用いて経路探索を行う。図7は、かかる経路探索処理の流れを示すフロー図である。
【0040】
ユーザ操作解析部41は、ユーザから入力装置5を介して、目的地の設定を受け付ける(S110)。
【0041】
次に、経路探索部43は、現在位置から目的地までの経路に関連するメッシュを特定する。例えば、経路探索部43は、地図データを参照して、各リンクの距離(又は距離を所定時速で除して求めた仮のリンク旅行時間)をコストとして、総コストが最少の経路を仮に探索する。そして、その仮に探索した経路を含むメッシュを関連メッシュとする(S120)。
【0042】
次に、経路探索部43は、関連メッシュ内の各リンクの経路探索のためのコストを設定する(S130)。ここでは、リンク旅行時間をコストに設定することとする。経路探索部43は、各リンクのリンク旅行時間を、受信情報記憶部46に記憶されている交通情報460の中から抽出する。
【0043】
図8は、各リンクの交通情報(リンク旅行時間)抽出処理の流れを示すフロー図である。経路探索部43は、関連メッシュに含まれるリンクの中から、一つずつリンクを選択し、各リンクについてこのフローを行う。
【0044】
まず、経路探索部43は、交通情報460の中に、選択されたリンクに関するリンク旅行時間463を含むレコード468があるか否か判定する(S131)。
【0045】
該当するレコード468がない場合(S131でNo)、経路探索部43は、そのリンクに関して使用できる交通情報はないものとして、そのリンクに関する交通情報抽出処理を終了する。
【0046】
一方、該当するレコード468がある場合(S131でYes)、経路探索部43は、該当するレコード468の中から、受信日時467が最新のレコード468を抽出する(S132)。
【0047】
次に、経路探索部43は、S132で抽出したレコード468に含まれている、そのリンクのリンク旅行時間463が、プローブカー起源交通情報か否か判定する。具体的には、フラグ466に基づいて、プローブカー起源交通情報か否か判定する(S133)。
【0048】
そのリンクのリンク旅行時間463がプローブカー起源交通情報である場合(S133でYes)、経路探索部43は、そのリンク旅行時間463を経路探索において用いるコストと設定する(S135)。
【0049】
一方、そのリンクのリンク旅行時間463がプローブカー起源交通情報でない場合(S133でNo)、経路探索部43は、所定時間内(例えば、現在から30分以内)に受信した交通情報の中に、そのリンクに関するプローブカー起源交通情報があるか否か判定する。具体的には、交通情報460の中から、受信日時467が所定時間内であるレコード468を抽出し、抽出したレコード468の中に、そのリンクのリンク旅行時間463がプローブカー起源交通情報であるレコード468があるか否を判定する。
【0050】
所定時間内に受信した交通情報の中に、そのリンクに関するプローブカー起源交通情報がある場合(S134でYes)、経路探索部43は、その中の受信日時が最新のプローブカー起源交通情報を用いてコストを設定する。具体的には、経路探索部43は、まず、受信日時467が所定時間内であり、かつそのリンクのリンク旅行時間463がプローブカー起源交通情報であるレコード468の中から、受信日時467が最新のレコードを抽出する。そして、抽出したレコード468に含まれているそのリンクのリンク旅行時間463を経路探索におけるコストと設定する(S135)。
【0051】
一方、所定時間内に受信した交通情報の中に、そのリンクに関するプローブカー起源交通情報がなかった場合(S134でNo)、経路探索部43は、S132で抽出された交通情報(すなわち、最新の設置センサ起源交通情報)を用いてコストを設定する。具体的には、S132で抽出された受信日時467が最新のレコード468に含まれている、そのリンクのリンク旅行時間463を経路探索におけるコストと設定する。
【0052】
経路探索部43は、以上の処理(S131〜S136)を、関連メッシュに含まれている各リンクについて行う。その後、経路探索部43は、図7のS140に処理を移行する。
【0053】
次に、経路探索部43は、目的地までの総コストが最少となる経路を探索する。なお、S130でリンク旅行時間が特定できなかったリンクについては、リンクデータのリンク長から所定の平均速度で除することによりリンク旅行時間を定め、そのリンクのコストとする(S140)。
【0054】
こうして、目的地までの経路が探索されると、経路探索部43は、表示処理部47を介して、探索した経路をディスプレイ2に表示する。
【0055】
図9は、ディスプレイ2の表示画面310の例である。図示するように、地図上に、推奨経路(太実線)が表示される。
【0056】
表示処理部47は、表示されているリンクのリンク旅行時間(または、特定の区間を構成するリンクの旅行時間)を表示するようにしてもよい。また、そのリンクの渋滞度とともに表示するようにしてもよい。
【0057】
表示に用いる交通情報は、図8で示したフローと同様にして、交通情報460の中から、フラグ416の有無及び受信日時417に基づいて抽出するようにする。
【0058】
また、表示処理部47は、図9の符号311、312に示すように、表示された交通情報がプローブカー起源交通情報であるか否かが分かるように表示するようにしてもよい。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0060】
なお、上記実施形態では、主に、取得した交通情報460の中から、経路探索の際に用いる交通情報を選択する例について説明した。これに限らず、取得した交通情報460の中から、表示に用いる交通情報を選択する場合でも、図8に示したフローにより行うことができる。
【0061】
上記実施形態によれば、取得した最新の交通情報が、プローブカーで収集した情報を加味していない設置センサ起源交通情報である場合でも、所定時間内に、プローブカー起源交通情報を受信している場合は、そのプローブカー起源交通情報が優先的に使用される。
【0062】
すなわち、道路上に設置した交通量センサで収集した情報を基に生成された交通情報は、センサの故障や、センサの前の障害物などにより、誤った情報である場合があるが、図12に示すように、原則、最新の交通情報を使用するように設計された車載用ナビゲーション装置の場合、誤った交通情報でも最新であればナビゲーション処理に使用されてしまう。本実施形態によれば、この原則に反して、最新でなくてもプローブカー起源交通情報が使用されるので、精度がよい交通情報の使用が確保される。
【0063】
また、受信日時が所定時間内であるプローブカー起源交通情報を用いられるようにしたので、あまりに古い情報が用いられてしまうことがない。
【0064】
<変形例> 本発明は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変形が可能である。
【0065】
例えば、使用しようとする交通情報が、設置センサ起源交通情報である場合、その交通情報を補正してから用いるようにしてもよい。
【0066】
図10は、かかる場合における、使用する交通情報の抽出処理の流れを示すフロー図である。なお、経路探索部43は、設置センサ起源交通情報を補正するための情報(補正情報)を、予め保持しているものとする。ここで、補正情報は、例えば、リンク旅行時間に係数を乗じて補正する場合は、補正係数である。リンク旅行時間に所定値を加算(または減算)して補正する場合は、加算値(又は減算値)である。
【0067】
図8に示したフローと同様に、経路探索部43は、S136にて最新の交通情報である設置センサ起源交通情報を抽出したとする。そして、その交通情報に含まれているリンク旅行時間463を特定したとする。そうすると、次に、経路探索部43は、特定したリンク旅行時間436を補正情報を用いて補正する(S137)。
【0068】
具体的には、補正情報がリンク旅行時間を補正するための補正係数である場合、経路探索部43は、特定したリンク旅行時間に、補正係数を乗じて、リンク旅行時間を求め直す。そして、求めたリンク旅行時間を、そのリンクのコストとする。
【0069】
なお、交通情報配信サーバ203が、補正情報を保持するようにして、例えば定期的に、更新された補正情報を配信するようにしてもよい。そして、車載用ナビゲーション装置100は、配信された補正情報を受信する。このように、交通情報配信サーバ203が、設置センサ起源交通情報を精度よく補正するための補正情報を配信するようにすれば、車載用ナビゲーション装置100は、リアルタイムに精度よく設置センサ起源交通情報を補正することができる。
【0070】
また、車載用ナビゲーション装置100は、補正情報を自ら生成するようにしてもよい。例えば、経路探索部43は、これまでに取得した交通情報の中の、プローブカー起源交通情報と設置センサ起源交通情報との相違から、補正情報を生成する。具体的には、交通情報460の中から、同一リンクに関するリンク旅行時間を、フラグ466に基づいて、設置センサ起源交通情報と、プローブカー起源交通情報とに分類する。そして、両者のリンク旅行時間の差の平均を算出する。そして、その差分を補正情報として格納しておく。そして、S137にて、設置センサ起源交通情報のリンク旅行時間に、その差分を足す(または引く)ことにより補正する。また、車載用ナビゲーション装置100は、配信を受けた設置センサ起源交通情報と、自車両により過去に測定されたプローブ情報から補正情報を生成するようにしてもよい。具体的には、リンクごとに、設置センサ起源交通情報のリンク旅行時間と、過去に走行して得たプローブ情報のリンク旅行時間を比較して、その差分の平均を補正情報とする。
【0071】
また、補正情報は、リンクを構成する道路の種別などに応じて異ならせてもよい。かかる場合、補正情報は、道路の種別ごとに、設定されているものとする。そして、経路探索部43は、設置センサ起源交通情報のリンク旅行時間を補正する際、そのリンクの道路種別に応じて定められた補正情報を用いるようにする。
【0072】
また、補正情報は、日時に応じて変化させてもよい。図11は、日時に応じて、異なる補正情報を用いる場合の補正情報250の構成を示す。補正情報250は、日の種類251、季節252、時間帯253ごとに、補正値254が定められている。補正値は、例えば、リンク旅行時間に乗ずる係数である。経路探索部43は、リンク旅行時間を補正する際、現在の日時と対応する、日の種類251、季節252、時間帯253における補正値254を用いるようにする。こうすれば、より精度よく設置センサ起源交通情報のリンク旅行時間を補正することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、交通情報640が最新か否かを受信日時467で判断したが、生成日時465で判断するようにしてもよい。
【0074】
なお、本発明を車載用ナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は車載用以外のナビゲーション装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかるナビゲーションシステムの概略構成図である。
【図2】図2は、交通情報配信サーバが保持する交通情報の構成例である。
【図3】図3は、車載用ナビゲーション装置100の概略構成図である。
【図4】図4は、演算処理部1の機能構成を示す図である。
【図5】図5は、演算処理部1のハードウェア構成を示す図である。
【図6】図6は、車載用ナビゲーション装置が記憶する交通情報の構成例である。
【図7】図7は、経路探索処理のフロー図である。
【図8】図8は、使用する交通情報の抽出処理(図6のS130)のフロー図である。
【図9】図9は、表示画面の例である。
【図10】図10は、使用する交通情報の抽出処理(図6のS130)のフロー図である。
【図11】図11は、補正情報の構成例である。
【図12】図12は、通常の車載用ナビゲーション装置が使用する交通情報を説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
100…車載用ナビゲーション装置、200…交通情報センタ、203…交通情報配信サーバ、400…ネットワーク、
1…演算処理部、2…ディスプレイ、3…記憶装置、4…音声出入力装置、5…入力装置、6…車輪速センサ、7…地磁気センサ、8…ジャイロ、9…GPS受信機、11…FM多重放送受信装置、12…ビーコン受信装置、13…ネットワーク通信装置、21…CPU、22…RAM、23…ROM、24…DMA、25…描画コントローラ、26…VRAM、27…カラーパレット、28…A/D変換器、29…SCI、30…PIO、31…カウンタ、41…ユーザ操作解析部、42…現在位置算出部、43…経路探索部、44…経路誘導部、45…通信処理部、46…受信情報記憶部、47…表示処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置であって、
交通情報を取得する交通情報取得手段と、
前記交通情報取得手段により取得した交通情報のうち最新の交通情報を用いてナビゲーション処理を行うナビゲーション手段とを備え、
前記ナビゲーション手段は、
前記交通情報取得手段により取得した交通情報の中に、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、当該プローブカー起源交通情報を取得した後に取得した交通情報であってプローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とが含まれている場合には、前記プローブカー起源交通情報を最新か否かに関らずナビゲーション処理に用いる
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
ナビゲーション装置であって、
交通情報を取得する交通情報取得手段と、
前記交通情報取得手段により取得した交通情報のうち最新の交通情報を用いてナビゲーション処理を行うナビゲーション手段とを備え、
前記ナビゲーション手段は、
前記交通情報取得手段により取得した交通情報の中に、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、当該プローブカー起源交通情報を取得した後に取得した交通情報であってプローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とが含まれている場合で、かつ
当該プローブカー起源交通情報が所定期間内に取得されたものである場合には、
当該プローブカー起源交通情を最新か否かに関らずナビゲーション処理に用いる
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
ナビゲーション装置であって、
交通情報を取得する交通情報取得手段と、
前記交通情報取得手段により取得した交通情報のうち最新の交通情報を用いてナビゲーション処理を行うナビゲーション手段とを備え、
前記交通情報には、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とを区別するためのフラグ情報が含まれており
前記ナビゲーション手段は、
前記フラグ情報を用いて、前記交通情報取得手段が取得した交通情報の中に、所定期間内に受信したプローブカー起源交通情報が含まれているか否か判定し、
含まれている場合は、そのプローブカー起源交通情報の中の最新のものを使用してナビゲーション処理を行い、
含まれていない場合は、前記プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報の中の最新のものを使用してナビゲーション処理を行う
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
ナビゲーション装置であって、
交通情報を補正するための補正情報を記憶する手段と、
交通情報を取得する交通情報取得手段と、
前記交通情報取得手段により取得した交通情報を用いてナビゲーション処理を行うナビゲーション手段とを備え、
前記ナビゲーション手段は、
前記交通情報が、プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報である場合、前記補正情報で補正した後、ナビゲーション処理に用いる
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記補正情報を外部のサーバ装置から取得する手段を備える
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記交通情報取得手段で取得した交通情報の中の、プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報との相違に基づいて、前記補正情報を生成する補正情報生成手段を備える
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項4において、
前記補正情報は、
日の種類、季節、時間帯の少なくとも1つにより分類されており、
前記ナビゲーション手段は、
現在日時に対応する補正情報を用いて、交通情報を補正する
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
ナビゲーション装置に交通情報を配信するサーバ装置であって、
前記交通情報には、
プローブカーにより収集された情報を用いて生成されたプローブカー起源交通情報と、プローブカーにより収集された情報を用いずに生成された交通情報とを区別するためのフラグ情報が含まれている
ことを特徴とするサーバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−85898(P2007−85898A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275228(P2005−275228)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】