ナビゲーション装置
【課題】従来のナビゲーション装置は、経路の高低差に関する情報を、標高のみに着目した表示画面によって提供するので、経路が描画された地図表示画面からは、経路の高低差に関する情報を読み取ることができない。
【解決手段】地図表示画面への推奨経路の描画を、経路の標高ごとに異なる描画色で行う。さらに、勾配の大きさ、勾配の長さおよび路面状態などの情報に基づいて、滑りやすい区間を強調表示する。これにより、経路選択や運転を行う際に、これらの情報を活用することが可能となる。
【解決手段】地図表示画面への推奨経路の描画を、経路の標高ごとに異なる描画色で行う。さらに、勾配の大きさ、勾配の長さおよび路面状態などの情報に基づいて、滑りやすい区間を強調表示する。これにより、経路選択や運転を行う際に、これらの情報を活用することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
探索した経路の標高差情報を表示する車両用ナビゲーション装置が知られている(特許文献1)。このようなナビゲーション装置では、目的地から出発地までの標高差を二次元の折れ線グラフとして画面に表示し、グラフ上に自車位置を合わせて表示する。
【0003】
【特許文献1】特開平9−159479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した既存のナビゲーション装置では、経路の高低差に関する情報は、標高差のみに着目した表示画面によって提供される。したがってユーザは、経路が描画された地図表示画面から経路の標高を読み取ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、出発地から目的地に至る経路を探索する探索手段と、地図を表示モニタに表示し、前記探索手段により探索された経路を前記地図上に描画する表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、前記経路を、標高に応じて異なる色で描画することを特徴とするナビゲーション装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記表示制御手段は、前記経路の中で標高が所定値未満の部分を、他の部分とは異なる色で描画することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、出発地から目的地に至る複数の区間よりなる経路を探索する探索手段と、前記経路の各区間の勾配を求める勾配算出手段と、前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間を報知する報知手段と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のナビゲーション装置において、道路環境情報を取得する道路環境情報取得手段と、前記道路環境情報取得手段により取得された情報に基づいて、前記経路のうちで所定の環境であるかどうかを区間ごとに判断する判断手段とを更に備え、前記表示制御手段は、前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間のうち、前記判断手段により所定の環境であると判断された前記経路の区間を報知することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のナビゲーション装置において、前記所定の道路環境情報は、天候,気温,路面凍結の有無,積雪量,カーブの曲率,周囲の地形,および舗装の有無のいずれか少なくとも1つを表す情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ユーザが経路の標高を読み取ることができるように地図表示画面に経路を描画することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
――第1の実施の形態――
図1は、本実施形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【0008】
ナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、スピーカ17、入力装置18、VICS(登録商標)(道路交通情報通信システム)情報受信部19およびディスクドライブ21を有している。ディスクドライブ21には、地図データが記憶されたDVD−ROM22が装填されている。
【0009】
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行して各種の制御を行う。この制御回路11がDVD−ROM22に記憶された地図データに基づいて所定の経路探索(後述)処理を行うと、その処理結果が推奨経路(後述)として表示モニタ16に表示される。
【0010】
現在地検出装置14は車両の現在地を検出する装置である。現在地検出装置14は、振動ジャイロ14a、車速センサ14b、GPS(Global Positioning System)センサ14cなどからなる。振動ジャイロ14aは車両の進行方向を検出し、車速センサ14bは車速を検出し、GPSセンサ14cはGPS衛星からのGPS信号を検出する。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、地図の表示範囲や経路探索を開始する地点、即ち出発地点などを決定するとともに、地図上にその現在地を表示する。
【0011】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを格納する。この画像データは道路地図描画用データや各種の図形データからなり、それらはDVD−ROM22に記憶された地図データに基づいて、適宜生成される。ナビゲーション装置1は、このようにして生成された画像データを用いることによって地図表示などを行うことができる。
【0012】
ディスクドライブ21は、DVD−ROM22から地図データを読み出す。地図データは、地図表示用データ、経路探索用データなどを含む。地図表示用データおよび経路探索用データには、地図データに格納されている道路のリンク情報およびノード情報が含まれている。リンク情報には、各リンクの旅行時間(以下、リンク旅行時間)および標高の情報が含まれている。地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有する。ナビゲーション装置1は、ユーザの要求にしたがって使用する地図表示用データの縮尺を切り替えることで、表示地図の縮尺を変更することができる。なお、DVD−ROM22以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより地図データを読み出してもよい。
【0013】
表示モニタ16は、地図データなどの各種情報に基づいて、自車位置付近の道路地図などの各種情報を画面表示としてユーザに提供する。スピーカ17は、各種入力操作をユーザに指示したり、経路誘導したりするための音声を出力する。入力装置18は、ユーザが各種コマンドを設定するための入力スイッチを有し、操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16の表示画面の指示やスピーカ17からの音声指示にしたがって入力装置18を操作することにより、目的地を設定する。
【0014】
目的地がユーザにより設定されると、ナビゲーション装置1はGPSセンサ14cにより検出された現在地を出発地として目的地までの経路演算を所定の制御プログラムに基づいて行う。たとえば、出発地から目的地までの間の旅行時間(リンク旅行時間の合計)が最小になるような経路を演算する制御プログラムで経路演算が行われる。このような経路演算を以下、経路探索と呼ぶ。このようにして求められた経路(以下、推奨経路という)は、表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、ほかの道路とは区別して画面表示される。これにより、ユーザは地図上の推奨経路を画面上で認識することができる。ナビゲーション装置1は、推奨経路にしたがって車両が走行できるように、ユーザに対して画面や音声などによる進行方向指示を行い、経路誘導する。
【0015】
VICS情報受信部19は、図示しないVICS情報センタから提供される渋滞情報などのVICS情報を受信し、制御回路11に出力する。このVICS情報は主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって送信される。電波ビーコンや光ビーコンは設置地付近を通過する車両に対してVICS情報を送信し、FM多重放送はそれらよりも広域の通信エリアをカバーする。ナビゲーション装置1は、これらによって送信されたVICS情報をVICS情報受信部19により受信する。VICS情報受信部19で受信したVICS情報は、経路探索に反映される。たとえば、渋滞している区間のリンク旅行時間に、渋滞の程度に応じて重み付けを行う。したがって、重み付けしたリンク旅行時間で経路探索が行われる。
【0016】
次に、ナビゲーション装置1における、標高および勾配に基づく推奨経路表示について述べる。図2は、推奨経路が表示された表示モニタ16の画面の例である。表示画面30には、出発地を地点31、目的地を地点36に設定して得られた、地点32,33,34,35を経由する推奨経路が表示されている。
【0017】
表示画面30に表示されている推奨経路は、標高に応じて異なる描画色で描画されている。例えば、地点31から地点32までの道路と、地点33から地点34までの道路とでは、標高が異なるため、描画色が異なっている。
【0018】
図3は、標高に基づいて推奨経路の描画色を決定するための描画色テーブルである。前述の通り、道路リンクは標高情報を保持している。ナビゲーション装置1は、推奨経路を描画する際、描画対象の道路リンクが保持する標高情報と、図3に示す描画色テーブルとを用いて、推奨経路中の道路の描画色を決定する。
【0019】
なお、図3に示す描画色テーブルでは、標高10m間隔で描画色を変化させているが、描画色を変化させる標高の間隔は、等間隔でなくてもよい。また、標高の区分は、任意の数にしてよい。例えば、標高0m未満の地点のみを判別できるよう描画したければ、「0m未満」と「0m以上」の2つの区分を用意すればよい。
【0020】
標高に基づいた推奨経路の描画の、具体的な処理内容を説明する。図4は、標高に基づいた推奨経路の描画処理を示したフローチャートである。まずステップS11において、推奨経路中に含まれる未選択の道路リンクのうち、もっとも出発地に近いものを選択する。ステップS12では、選択した道路リンクの標高を取得し、描画色テーブルから標高に対応する描画色を選択する。ステップS13では、ステップS11で選択した道路リンクを、ステップS12で選択した描画色を用いて描画する。ステップS14では、推奨経路に含まれるすべての道路リンクを選択し終わったか否かを判定する。未選択の道路リンクが残っている場合、ステップS14により否定判定がなされ、ステップS11へ戻る。他方、ステップS14により肯定判定がなされた場合には、処理を終了する。
【0021】
本実施形態におけるナビゲーション装置1は、以上で述べた標高に基づく描画色の選択に加えて、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示を行う。道路勾配は、道路の道のりに対する標高の変化の比である。例えば、ある道路を100m進んだとき標高が1m高くなった場合、その道路の道路勾配は1%である。
【0022】
ナビゲーション装置1は、推奨経路中に道路勾配が5%を超えている道路が存在する場合、その道路を破線で囲って表示する。図2の推奨経路中では、地点34から地点35の道路が破線37で囲まれている。
【0023】
次に、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示の、具体的な処理内容を説明する。図5は、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示したフローチャートである。まずステップS21において、推奨経路中に含まれる道路リンクのうち、もっとも出発地に近い1つを選択済みとする。ステップS22では、推奨経路中に含まれる未選択の道路リンクのうち、もっとも出発地に近いものを選択する。ステップS23では、ステップS22で選択した道路リンクと、その道路リンクの1つ隣に存在する、出発地側の道路リンクとの標高差を算出する。ステップS24では、ステップS23で標高差を検出した道路リンク同士で、互いの中心位置の距離を算出する。ステップS25では、ステップS23で算出した標高差と、ステップS24で算出した距離を用いて、道路勾配を求める。道路勾配は標高差を距離で除算すれば求まる。ステップS26では、ステップS25で算出した道路勾配が、しきい値(本実施形態では5%)を超えているか否かを判定する。道路勾配が5%以下である場合、ステップS26により否定判定がなされ、ステップS28へ進む。他方、ステップS26により肯定判定がなされた場合には、ステップS27へ進み、ステップS23で使用した2つの道路リンクそれぞれに対して、強調表示フラグをセットしてステップS28へ進む。ステップS28では、推奨経路中に含まれる道路リンクを、ステップS22ですべて選択し終わったか否かを判定する。推奨経路中に未選択の道路リンクが未だ残っていた場合は、ステップS28により否定判定がなされ、ステップS22へ戻る。他方、ステップS28により肯定判定がなされた場合には、処理を終了する。なお、道路リンクの標高差と距離から勾配を求めるのではなく、道路リンクにあらかじめ設定された勾配データを用いるようにしてもよい。
【0024】
上記の処理がすべて終わった後、強調表示フラグがセットされている道路リンクを囲む破線を描画する。隣接する複数の道路リンクに強調表示フラグがセットされている場合は、それら全ての道路リンクを囲むように破線を描画する。これにより、勾配が所定以上の部分をユーザに報知する。なお、道路勾配に基づいた強調表示は、破線の囲み以外の方法で行ってもよい。例えば、当該道路を点滅表示したり、道路勾配を報告する内容の吹き出しを表示してもよい。また、道路勾配が一定以上の道路が一定距離以上続いた場合に、上述の場合とは別の強調表示を行ってもよい。更に、複数の強調表示パターンを用意しておき、強調表示の対象となる道路の道路種別に応じて異なる強調表示を適用してもよい。
【0025】
以上に述べた推奨経路の描画方法は、推奨経路を画面に描画するすべての処理に対して適用される。例えば、複数の推奨経路が画面に表示され、ナビゲーションに用いる推奨経路を1つだけ選択する状況においては、すべての推奨経路について前述の描画方法が適用される。また、走行中に自車位置から目的地までの推奨経路を描画する場合についても同様である。
【0026】
次に、図2とは別の例により、推奨経路の描画方法を説明する。図6は、推奨経路を描画する前の地図の例である。出発地から道路41,42,43,44,45,46,47を経て目的地に到着する経路が推奨経路である。各道路の下部に書かれている数値は、それぞれの道路の距離および標高を表している。以下、図6に示した地図へ推奨経路の描画を行っていく。
【0027】
始めに、各道路を図3に示した描画色テーブルに基づいて描画する。図7は、図3の描画色テーブルを用いて図6の推奨経路を描画した結果である。各道路の標高に基づいて、描画色テーブルの描画色を適用している。
【0028】
次に、推奨経路中の各道路の道路勾配を調べ、一定以上の道路勾配を持つ道路を強調表示する処理を行う。図8は、道路勾配の算出方法を説明するための図である。各道路を、図6で示した標高に比例した割合で、縦方向にずらして描いている。標高は道路リンクに割り当てられているため、道路勾配は各道路リンク間について算出する。まず隣接している2つの道路リンクについて、標高差を算出する。次にこの標高差を、2つの道路リンクの中心位置の距離で除算すれば、道路勾配を算出できる。このようにして道路勾配を求めた結果、図8に示すように、道路45と46の間の道路勾配のみがしきい値である5%を超えている。そこで、道路45と道路46を破線で囲む。
【0029】
図9は、図7に加えて急勾配の道路の強調表示を行った地図である。以上のようにして、図6に示した地図へ図9のように推奨経路が描画される。
【0030】
上述した第1の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)平面地図の表示画面に描画される推奨経路が、標高に基づいて異なる描画色となる。これにより、地図情報と同時に標高情報を視認することができる。
(2)急勾配の区間が強調表示される。これにより、運転に注意を要する箇所をあらかじめ認識することができる。
(3)複数の推奨経路を選択する際、それぞれの推奨経路について、標高と勾配に基づいた描画が行われる。これにより、標高や勾配に応じた推奨経路の選択が可能となる。
(4)標高に基づいた描画色の選択は、相対的な標高ではなく絶対的な標高(海抜)によって決定される。これにより、例えば水害発生時や荒天時に低地を避ける、等の活用が可能となる。
【0031】
――第2の実施の形態――
上述した第1の実施の形態では、推奨経路の強調表示の有無は道路勾配のみによって決定されていた。しかし、道路勾配の大きさが運転に及ぼす影響は、道路環境に応じて変化する。例えば、道路勾配が5%以上であっても、晴天であれば滑りにくい。逆に、道路勾配が5%以下でも、路面が凍結していたり、降雪がある場合は滑りやすい。そこで、以下に詳述する第2の実施の形態では、道路勾配に加えて道路環境を考慮し、強調表示を行うか否かを決定する。
【0032】
図10は、第2の実施形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置101は、第1の実施形態におけるナビゲーション装置1に加えて、通信装置23を備えている。通信装置23はナビゲーション装置に接続された携帯電話である。ナビゲーション装置101は、通信装置23を用いて情報センター24と通信を行うことができる。
【0033】
制御回路111は、経路探索を行う機能を持たない。代わりに、経路探索は情報センター24が行う。制御回路111は、経路探索を実行する必要が生じると、通信装置23を用いて経路探索に必要な情報(現在地、目的地、探索条件など)を情報センター24へ送信する。情報センター24は、受信した情報を基に経路探索を行い、推奨経路をナビゲーション装置101へ送信する。このようにして、あたかも制御回路111が経路探索を実行しているように、推奨経路を取得することができる。
【0034】
情報センター24は、前述のように、経路探索を実行する機能を有する。それに加えて、情報センター24には、各地の気象情報が集積されている。経路探索の結果である推奨経路をナビゲーション装置101へ送信する際、情報センター24は、推奨経路に含まれる各区間の気象情報もあわせてナビゲーション装置101へ送信する。
【0035】
図11は、第2の実施形態におけるナビゲーション装置の、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示すフローチャートである。まずステップS31において、推奨経路中に含まれる道路リンクのうち、もっとも出発地に近い1つを選択済みとする。ステップS32では、推奨経路中に含まれる未選択の道路リンクのうち、もっとも出発地に近いものを選択する。ステップS33では、ステップS32で選択した道路リンクと、その道路リンクの1つ隣に存在する、出発地側の道路リンクとの標高差を算出する。ステップS34では、ステップS33で標高差を検出した道路リンク同士で、互いの中心位置の距離を算出する。ステップS35では、ステップS33で算出した標高差と、ステップS34で算出した距離を用いて、道路勾配を求める。ステップS36では、ステップS35で算出した道路勾配が、しきい値(本実施形態では3%)を超えているか否かを判定する。道路勾配が3%以下である場合、ステップS36により否定判定がなされ、ステップS41へ進む。他方、ステップS36により肯定判定がなされた場合には、ステップS37へ進み、ステップS32で選択した道路リンクが存在する道路環境情報を取得してステップS38へ進む。ここで道路環境情報とは、天候、気温、路面凍結の有無および積雪量など、路面のスリップしやすさに関わる情報である。なお、道路環境情報には路面の舗装状態や周囲の砂浜等の有無も含まれる。ステップS38では、ステップS35で求めた道路勾配の大きさとステップS37で取得した気象情報から、スリップしやすいか否かを判断する。例えば、気温が0℃以下の場合や、路面が凍結している場合、勾配に応じて予め設定されたしきい値を積雪量が上回っている場合などは、スリップしやすいと判断する。ステップS39では、ステップS38での判断結果を判定する。ステップS39により否定判定がなされた場合には、ステップS41へ進む。他方、ステップS39により肯定判定がなされた場合には、ステップS40へ進み、ステップS33で使用した2つの道路リンクそれぞれに対して、強調表示フラグをセットしてステップS41へ進む。ステップS41では、推奨経路中に含まれる道路リンクをステップS32ですべて選択し終わったか否かを判定する。未選択の道路リンクが残っている場合、ステップS41により否定判定がなされ、ステップS32へ戻る。他方、ステップS41により肯定判定がなされた場合には、処理を終了する。
【0036】
上述した第2の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、第1の実施の形態によるナビゲーション装置で得られる作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
(1)強調表示の有無の判定に道路環境情報を用いて、道路勾配が比較的緩やかであってもスリップしやすい道路であれば注意を促すようにした。これにより、推奨経路の選択や走行の際に、判断材料となる情報が増し、より適切な運転を行うことができる。
(2)経路探索を、ナビゲーション装置ではなく情報センターが行うようにした。これにより、ナビゲーション装置のコストを削減することができる。
【0037】
次のような変形も本発明の範囲内である。
(1)第2の実施形態では、ナビゲーション装置101が地図表示用データを用意しているが、これを全て情報センターが備えるようにしてよい。この場合、ナビゲーション装置は、画面表示に必要なあらゆる情報を情報センターから受信する。また、標高及び勾配に基づく推奨経路表示処理についても、情報センターによって実行される。
(2)第2の実施形態におけるナビゲーション装置101が、情報センターから気象情報のみを受け取るようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置101は、第1の実施形態におけるナビゲーション装置1と同様に経路探索を行う。
(3)道路勾配に基づく強調表示に加えて、音声による報知を行ってもよい。また、強調表示が行われている道路に接近したとき、その旨を表示や音声で報知してもよい。
(4)車両が取得する路面情報もしくはユーザが入力する路面情報を、ナビゲーション装置が情報センターに送信するようにしてもよい。この場合、車両の位置情報および時刻情報も同時に送信される。これらの情報を受信した情報センターは、これらの情報を他の車両に対して配信してもよい。
【0038】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
なお、以上説明した実施の形態におけるナビゲーション装置の各構成要素と特許請求の範囲の各構成要素との対応関係は以下の通りである。本発明の探索手段および表示制御手段は制御回路11に対応する。
【0040】
なお、以上の対応関係の説明は一例であり、権利解釈に際して何ら拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施の形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】推奨経路が表示された画面の例である。
【図3】標高に基づいて推奨経路の描画色を決定するための描画色テーブルである。
【図4】標高に基づいた推奨経路の描画処理を示したフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態における、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示したフローチャートである。
【図6】推奨経路を描画する前の地図の例である
【図7】第1の実施の形態において、図6の推奨経路を、図3の描画色テーブルを用いて描画した結果である。
【図8】道路勾配の算出方法を説明するための図である。
【図9】第1の実施の形態において、図7に加えて、急勾配の道路の強調表示を行った地図である。
【図10】第2の実施の形態における、ナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図11】第2の実施の形態における、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1,101 ナビゲーション装置
11,111 制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
探索した経路の標高差情報を表示する車両用ナビゲーション装置が知られている(特許文献1)。このようなナビゲーション装置では、目的地から出発地までの標高差を二次元の折れ線グラフとして画面に表示し、グラフ上に自車位置を合わせて表示する。
【0003】
【特許文献1】特開平9−159479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した既存のナビゲーション装置では、経路の高低差に関する情報は、標高差のみに着目した表示画面によって提供される。したがってユーザは、経路が描画された地図表示画面から経路の標高を読み取ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、出発地から目的地に至る経路を探索する探索手段と、地図を表示モニタに表示し、前記探索手段により探索された経路を前記地図上に描画する表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、前記経路を、標高に応じて異なる色で描画することを特徴とするナビゲーション装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記表示制御手段は、前記経路の中で標高が所定値未満の部分を、他の部分とは異なる色で描画することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、出発地から目的地に至る複数の区間よりなる経路を探索する探索手段と、前記経路の各区間の勾配を求める勾配算出手段と、前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間を報知する報知手段と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のナビゲーション装置において、道路環境情報を取得する道路環境情報取得手段と、前記道路環境情報取得手段により取得された情報に基づいて、前記経路のうちで所定の環境であるかどうかを区間ごとに判断する判断手段とを更に備え、前記表示制御手段は、前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間のうち、前記判断手段により所定の環境であると判断された前記経路の区間を報知することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のナビゲーション装置において、前記所定の道路環境情報は、天候,気温,路面凍結の有無,積雪量,カーブの曲率,周囲の地形,および舗装の有無のいずれか少なくとも1つを表す情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ユーザが経路の標高を読み取ることができるように地図表示画面に経路を描画することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
――第1の実施の形態――
図1は、本実施形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【0008】
ナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、スピーカ17、入力装置18、VICS(登録商標)(道路交通情報通信システム)情報受信部19およびディスクドライブ21を有している。ディスクドライブ21には、地図データが記憶されたDVD−ROM22が装填されている。
【0009】
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行して各種の制御を行う。この制御回路11がDVD−ROM22に記憶された地図データに基づいて所定の経路探索(後述)処理を行うと、その処理結果が推奨経路(後述)として表示モニタ16に表示される。
【0010】
現在地検出装置14は車両の現在地を検出する装置である。現在地検出装置14は、振動ジャイロ14a、車速センサ14b、GPS(Global Positioning System)センサ14cなどからなる。振動ジャイロ14aは車両の進行方向を検出し、車速センサ14bは車速を検出し、GPSセンサ14cはGPS衛星からのGPS信号を検出する。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、地図の表示範囲や経路探索を開始する地点、即ち出発地点などを決定するとともに、地図上にその現在地を表示する。
【0011】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを格納する。この画像データは道路地図描画用データや各種の図形データからなり、それらはDVD−ROM22に記憶された地図データに基づいて、適宜生成される。ナビゲーション装置1は、このようにして生成された画像データを用いることによって地図表示などを行うことができる。
【0012】
ディスクドライブ21は、DVD−ROM22から地図データを読み出す。地図データは、地図表示用データ、経路探索用データなどを含む。地図表示用データおよび経路探索用データには、地図データに格納されている道路のリンク情報およびノード情報が含まれている。リンク情報には、各リンクの旅行時間(以下、リンク旅行時間)および標高の情報が含まれている。地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有する。ナビゲーション装置1は、ユーザの要求にしたがって使用する地図表示用データの縮尺を切り替えることで、表示地図の縮尺を変更することができる。なお、DVD−ROM22以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより地図データを読み出してもよい。
【0013】
表示モニタ16は、地図データなどの各種情報に基づいて、自車位置付近の道路地図などの各種情報を画面表示としてユーザに提供する。スピーカ17は、各種入力操作をユーザに指示したり、経路誘導したりするための音声を出力する。入力装置18は、ユーザが各種コマンドを設定するための入力スイッチを有し、操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16の表示画面の指示やスピーカ17からの音声指示にしたがって入力装置18を操作することにより、目的地を設定する。
【0014】
目的地がユーザにより設定されると、ナビゲーション装置1はGPSセンサ14cにより検出された現在地を出発地として目的地までの経路演算を所定の制御プログラムに基づいて行う。たとえば、出発地から目的地までの間の旅行時間(リンク旅行時間の合計)が最小になるような経路を演算する制御プログラムで経路演算が行われる。このような経路演算を以下、経路探索と呼ぶ。このようにして求められた経路(以下、推奨経路という)は、表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、ほかの道路とは区別して画面表示される。これにより、ユーザは地図上の推奨経路を画面上で認識することができる。ナビゲーション装置1は、推奨経路にしたがって車両が走行できるように、ユーザに対して画面や音声などによる進行方向指示を行い、経路誘導する。
【0015】
VICS情報受信部19は、図示しないVICS情報センタから提供される渋滞情報などのVICS情報を受信し、制御回路11に出力する。このVICS情報は主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって送信される。電波ビーコンや光ビーコンは設置地付近を通過する車両に対してVICS情報を送信し、FM多重放送はそれらよりも広域の通信エリアをカバーする。ナビゲーション装置1は、これらによって送信されたVICS情報をVICS情報受信部19により受信する。VICS情報受信部19で受信したVICS情報は、経路探索に反映される。たとえば、渋滞している区間のリンク旅行時間に、渋滞の程度に応じて重み付けを行う。したがって、重み付けしたリンク旅行時間で経路探索が行われる。
【0016】
次に、ナビゲーション装置1における、標高および勾配に基づく推奨経路表示について述べる。図2は、推奨経路が表示された表示モニタ16の画面の例である。表示画面30には、出発地を地点31、目的地を地点36に設定して得られた、地点32,33,34,35を経由する推奨経路が表示されている。
【0017】
表示画面30に表示されている推奨経路は、標高に応じて異なる描画色で描画されている。例えば、地点31から地点32までの道路と、地点33から地点34までの道路とでは、標高が異なるため、描画色が異なっている。
【0018】
図3は、標高に基づいて推奨経路の描画色を決定するための描画色テーブルである。前述の通り、道路リンクは標高情報を保持している。ナビゲーション装置1は、推奨経路を描画する際、描画対象の道路リンクが保持する標高情報と、図3に示す描画色テーブルとを用いて、推奨経路中の道路の描画色を決定する。
【0019】
なお、図3に示す描画色テーブルでは、標高10m間隔で描画色を変化させているが、描画色を変化させる標高の間隔は、等間隔でなくてもよい。また、標高の区分は、任意の数にしてよい。例えば、標高0m未満の地点のみを判別できるよう描画したければ、「0m未満」と「0m以上」の2つの区分を用意すればよい。
【0020】
標高に基づいた推奨経路の描画の、具体的な処理内容を説明する。図4は、標高に基づいた推奨経路の描画処理を示したフローチャートである。まずステップS11において、推奨経路中に含まれる未選択の道路リンクのうち、もっとも出発地に近いものを選択する。ステップS12では、選択した道路リンクの標高を取得し、描画色テーブルから標高に対応する描画色を選択する。ステップS13では、ステップS11で選択した道路リンクを、ステップS12で選択した描画色を用いて描画する。ステップS14では、推奨経路に含まれるすべての道路リンクを選択し終わったか否かを判定する。未選択の道路リンクが残っている場合、ステップS14により否定判定がなされ、ステップS11へ戻る。他方、ステップS14により肯定判定がなされた場合には、処理を終了する。
【0021】
本実施形態におけるナビゲーション装置1は、以上で述べた標高に基づく描画色の選択に加えて、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示を行う。道路勾配は、道路の道のりに対する標高の変化の比である。例えば、ある道路を100m進んだとき標高が1m高くなった場合、その道路の道路勾配は1%である。
【0022】
ナビゲーション装置1は、推奨経路中に道路勾配が5%を超えている道路が存在する場合、その道路を破線で囲って表示する。図2の推奨経路中では、地点34から地点35の道路が破線37で囲まれている。
【0023】
次に、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示の、具体的な処理内容を説明する。図5は、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示したフローチャートである。まずステップS21において、推奨経路中に含まれる道路リンクのうち、もっとも出発地に近い1つを選択済みとする。ステップS22では、推奨経路中に含まれる未選択の道路リンクのうち、もっとも出発地に近いものを選択する。ステップS23では、ステップS22で選択した道路リンクと、その道路リンクの1つ隣に存在する、出発地側の道路リンクとの標高差を算出する。ステップS24では、ステップS23で標高差を検出した道路リンク同士で、互いの中心位置の距離を算出する。ステップS25では、ステップS23で算出した標高差と、ステップS24で算出した距離を用いて、道路勾配を求める。道路勾配は標高差を距離で除算すれば求まる。ステップS26では、ステップS25で算出した道路勾配が、しきい値(本実施形態では5%)を超えているか否かを判定する。道路勾配が5%以下である場合、ステップS26により否定判定がなされ、ステップS28へ進む。他方、ステップS26により肯定判定がなされた場合には、ステップS27へ進み、ステップS23で使用した2つの道路リンクそれぞれに対して、強調表示フラグをセットしてステップS28へ進む。ステップS28では、推奨経路中に含まれる道路リンクを、ステップS22ですべて選択し終わったか否かを判定する。推奨経路中に未選択の道路リンクが未だ残っていた場合は、ステップS28により否定判定がなされ、ステップS22へ戻る。他方、ステップS28により肯定判定がなされた場合には、処理を終了する。なお、道路リンクの標高差と距離から勾配を求めるのではなく、道路リンクにあらかじめ設定された勾配データを用いるようにしてもよい。
【0024】
上記の処理がすべて終わった後、強調表示フラグがセットされている道路リンクを囲む破線を描画する。隣接する複数の道路リンクに強調表示フラグがセットされている場合は、それら全ての道路リンクを囲むように破線を描画する。これにより、勾配が所定以上の部分をユーザに報知する。なお、道路勾配に基づいた強調表示は、破線の囲み以外の方法で行ってもよい。例えば、当該道路を点滅表示したり、道路勾配を報告する内容の吹き出しを表示してもよい。また、道路勾配が一定以上の道路が一定距離以上続いた場合に、上述の場合とは別の強調表示を行ってもよい。更に、複数の強調表示パターンを用意しておき、強調表示の対象となる道路の道路種別に応じて異なる強調表示を適用してもよい。
【0025】
以上に述べた推奨経路の描画方法は、推奨経路を画面に描画するすべての処理に対して適用される。例えば、複数の推奨経路が画面に表示され、ナビゲーションに用いる推奨経路を1つだけ選択する状況においては、すべての推奨経路について前述の描画方法が適用される。また、走行中に自車位置から目的地までの推奨経路を描画する場合についても同様である。
【0026】
次に、図2とは別の例により、推奨経路の描画方法を説明する。図6は、推奨経路を描画する前の地図の例である。出発地から道路41,42,43,44,45,46,47を経て目的地に到着する経路が推奨経路である。各道路の下部に書かれている数値は、それぞれの道路の距離および標高を表している。以下、図6に示した地図へ推奨経路の描画を行っていく。
【0027】
始めに、各道路を図3に示した描画色テーブルに基づいて描画する。図7は、図3の描画色テーブルを用いて図6の推奨経路を描画した結果である。各道路の標高に基づいて、描画色テーブルの描画色を適用している。
【0028】
次に、推奨経路中の各道路の道路勾配を調べ、一定以上の道路勾配を持つ道路を強調表示する処理を行う。図8は、道路勾配の算出方法を説明するための図である。各道路を、図6で示した標高に比例した割合で、縦方向にずらして描いている。標高は道路リンクに割り当てられているため、道路勾配は各道路リンク間について算出する。まず隣接している2つの道路リンクについて、標高差を算出する。次にこの標高差を、2つの道路リンクの中心位置の距離で除算すれば、道路勾配を算出できる。このようにして道路勾配を求めた結果、図8に示すように、道路45と46の間の道路勾配のみがしきい値である5%を超えている。そこで、道路45と道路46を破線で囲む。
【0029】
図9は、図7に加えて急勾配の道路の強調表示を行った地図である。以上のようにして、図6に示した地図へ図9のように推奨経路が描画される。
【0030】
上述した第1の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)平面地図の表示画面に描画される推奨経路が、標高に基づいて異なる描画色となる。これにより、地図情報と同時に標高情報を視認することができる。
(2)急勾配の区間が強調表示される。これにより、運転に注意を要する箇所をあらかじめ認識することができる。
(3)複数の推奨経路を選択する際、それぞれの推奨経路について、標高と勾配に基づいた描画が行われる。これにより、標高や勾配に応じた推奨経路の選択が可能となる。
(4)標高に基づいた描画色の選択は、相対的な標高ではなく絶対的な標高(海抜)によって決定される。これにより、例えば水害発生時や荒天時に低地を避ける、等の活用が可能となる。
【0031】
――第2の実施の形態――
上述した第1の実施の形態では、推奨経路の強調表示の有無は道路勾配のみによって決定されていた。しかし、道路勾配の大きさが運転に及ぼす影響は、道路環境に応じて変化する。例えば、道路勾配が5%以上であっても、晴天であれば滑りにくい。逆に、道路勾配が5%以下でも、路面が凍結していたり、降雪がある場合は滑りやすい。そこで、以下に詳述する第2の実施の形態では、道路勾配に加えて道路環境を考慮し、強調表示を行うか否かを決定する。
【0032】
図10は、第2の実施形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置101は、第1の実施形態におけるナビゲーション装置1に加えて、通信装置23を備えている。通信装置23はナビゲーション装置に接続された携帯電話である。ナビゲーション装置101は、通信装置23を用いて情報センター24と通信を行うことができる。
【0033】
制御回路111は、経路探索を行う機能を持たない。代わりに、経路探索は情報センター24が行う。制御回路111は、経路探索を実行する必要が生じると、通信装置23を用いて経路探索に必要な情報(現在地、目的地、探索条件など)を情報センター24へ送信する。情報センター24は、受信した情報を基に経路探索を行い、推奨経路をナビゲーション装置101へ送信する。このようにして、あたかも制御回路111が経路探索を実行しているように、推奨経路を取得することができる。
【0034】
情報センター24は、前述のように、経路探索を実行する機能を有する。それに加えて、情報センター24には、各地の気象情報が集積されている。経路探索の結果である推奨経路をナビゲーション装置101へ送信する際、情報センター24は、推奨経路に含まれる各区間の気象情報もあわせてナビゲーション装置101へ送信する。
【0035】
図11は、第2の実施形態におけるナビゲーション装置の、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示すフローチャートである。まずステップS31において、推奨経路中に含まれる道路リンクのうち、もっとも出発地に近い1つを選択済みとする。ステップS32では、推奨経路中に含まれる未選択の道路リンクのうち、もっとも出発地に近いものを選択する。ステップS33では、ステップS32で選択した道路リンクと、その道路リンクの1つ隣に存在する、出発地側の道路リンクとの標高差を算出する。ステップS34では、ステップS33で標高差を検出した道路リンク同士で、互いの中心位置の距離を算出する。ステップS35では、ステップS33で算出した標高差と、ステップS34で算出した距離を用いて、道路勾配を求める。ステップS36では、ステップS35で算出した道路勾配が、しきい値(本実施形態では3%)を超えているか否かを判定する。道路勾配が3%以下である場合、ステップS36により否定判定がなされ、ステップS41へ進む。他方、ステップS36により肯定判定がなされた場合には、ステップS37へ進み、ステップS32で選択した道路リンクが存在する道路環境情報を取得してステップS38へ進む。ここで道路環境情報とは、天候、気温、路面凍結の有無および積雪量など、路面のスリップしやすさに関わる情報である。なお、道路環境情報には路面の舗装状態や周囲の砂浜等の有無も含まれる。ステップS38では、ステップS35で求めた道路勾配の大きさとステップS37で取得した気象情報から、スリップしやすいか否かを判断する。例えば、気温が0℃以下の場合や、路面が凍結している場合、勾配に応じて予め設定されたしきい値を積雪量が上回っている場合などは、スリップしやすいと判断する。ステップS39では、ステップS38での判断結果を判定する。ステップS39により否定判定がなされた場合には、ステップS41へ進む。他方、ステップS39により肯定判定がなされた場合には、ステップS40へ進み、ステップS33で使用した2つの道路リンクそれぞれに対して、強調表示フラグをセットしてステップS41へ進む。ステップS41では、推奨経路中に含まれる道路リンクをステップS32ですべて選択し終わったか否かを判定する。未選択の道路リンクが残っている場合、ステップS41により否定判定がなされ、ステップS32へ戻る。他方、ステップS41により肯定判定がなされた場合には、処理を終了する。
【0036】
上述した第2の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、第1の実施の形態によるナビゲーション装置で得られる作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
(1)強調表示の有無の判定に道路環境情報を用いて、道路勾配が比較的緩やかであってもスリップしやすい道路であれば注意を促すようにした。これにより、推奨経路の選択や走行の際に、判断材料となる情報が増し、より適切な運転を行うことができる。
(2)経路探索を、ナビゲーション装置ではなく情報センターが行うようにした。これにより、ナビゲーション装置のコストを削減することができる。
【0037】
次のような変形も本発明の範囲内である。
(1)第2の実施形態では、ナビゲーション装置101が地図表示用データを用意しているが、これを全て情報センターが備えるようにしてよい。この場合、ナビゲーション装置は、画面表示に必要なあらゆる情報を情報センターから受信する。また、標高及び勾配に基づく推奨経路表示処理についても、情報センターによって実行される。
(2)第2の実施形態におけるナビゲーション装置101が、情報センターから気象情報のみを受け取るようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置101は、第1の実施形態におけるナビゲーション装置1と同様に経路探索を行う。
(3)道路勾配に基づく強調表示に加えて、音声による報知を行ってもよい。また、強調表示が行われている道路に接近したとき、その旨を表示や音声で報知してもよい。
(4)車両が取得する路面情報もしくはユーザが入力する路面情報を、ナビゲーション装置が情報センターに送信するようにしてもよい。この場合、車両の位置情報および時刻情報も同時に送信される。これらの情報を受信した情報センターは、これらの情報を他の車両に対して配信してもよい。
【0038】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
なお、以上説明した実施の形態におけるナビゲーション装置の各構成要素と特許請求の範囲の各構成要素との対応関係は以下の通りである。本発明の探索手段および表示制御手段は制御回路11に対応する。
【0040】
なお、以上の対応関係の説明は一例であり、権利解釈に際して何ら拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施の形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】推奨経路が表示された画面の例である。
【図3】標高に基づいて推奨経路の描画色を決定するための描画色テーブルである。
【図4】標高に基づいた推奨経路の描画処理を示したフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態における、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示したフローチャートである。
【図6】推奨経路を描画する前の地図の例である
【図7】第1の実施の形態において、図6の推奨経路を、図3の描画色テーブルを用いて描画した結果である。
【図8】道路勾配の算出方法を説明するための図である。
【図9】第1の実施の形態において、図7に加えて、急勾配の道路の強調表示を行った地図である。
【図10】第2の実施の形態における、ナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図11】第2の実施の形態における、道路勾配に基づいた推奨経路の強調表示処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1,101 ナビゲーション装置
11,111 制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地に至る経路を探索する探索手段と、
地図を表示モニタに表示し、前記探索手段により探索された経路を前記地図上に描画する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記経路を、標高に応じて異なる色で描画することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記表示制御手段は、前記経路の中で標高が所定値未満の部分を、他の部分とは異なる色で描画することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
出発地から目的地に至る複数の区間よりなる経路を探索する探索手段と、
前記経路の各区間の勾配を求める勾配算出手段と、
前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置において、
道路環境情報を取得する道路環境情報取得手段と、
前記道路環境情報取得手段により取得された情報に基づいて、前記経路のうちで所定の環境であるかどうかを区間ごとに判断する判断手段とを更に備え、
前記表示制御手段は、前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間のうち、前記判断手段により所定の環境であると判断された前記経路の区間を報知することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4に記載のナビゲーション装置において、
前記所定の道路環境情報は、天候,気温,路面凍結の有無,積雪量,カーブの曲率,周囲の地形,および舗装の有無のいずれか少なくとも1つを表す情報であることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項1】
出発地から目的地に至る経路を探索する探索手段と、
地図を表示モニタに表示し、前記探索手段により探索された経路を前記地図上に描画する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記経路を、標高に応じて異なる色で描画することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記表示制御手段は、前記経路の中で標高が所定値未満の部分を、他の部分とは異なる色で描画することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
出発地から目的地に至る複数の区間よりなる経路を探索する探索手段と、
前記経路の各区間の勾配を求める勾配算出手段と、
前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置において、
道路環境情報を取得する道路環境情報取得手段と、
前記道路環境情報取得手段により取得された情報に基づいて、前記経路のうちで所定の環境であるかどうかを区間ごとに判断する判断手段とを更に備え、
前記表示制御手段は、前記勾配算出手段により算出された勾配が所定以上の大きさである前記経路の区間のうち、前記判断手段により所定の環境であると判断された前記経路の区間を報知することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4に記載のナビゲーション装置において、
前記所定の道路環境情報は、天候,気温,路面凍結の有無,積雪量,カーブの曲率,周囲の地形,および舗装の有無のいずれか少なくとも1つを表す情報であることを特徴とするナビゲーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−2362(P2010−2362A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162894(P2008−162894)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]