説明

ナビゲーション装置

【課題】電気自動車の充電によるロスを考慮して目的地に早期に到達できる経路を提案するナビゲーション装置を提供すること。
【解決手段】目的までの距離とバッテリ残量から求めた航続可能距離とを比較して目的地まで充電なしで到達できるか否かを判定する判定手段32と、車両が前記第2の候補経路を走行して充電場所に到達した際、充電場所で充電すべき充電量を算出する充電量算出手段34と、充電量を前記充電場所で充電するために必要な充電時間を算出する充電時間算出手段35と、前記充電時間を加えて、第2の候補経路を走行した場合の第1の所要時間を算出する所要時間算出手段35と、自車両以外の交通機関を利用して所定位置から目的地まで到達する第3の候補経路及び第2の所要時間を取得する他交通経路取得手段37と、第1の所要時間と第2の所要時間の比較結果に基づき、第2の候補経路又は前記第3の候補経路を提案する経路提案手段38と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2地点間の経路を探索可能なナビゲーション装置に関し、特に、充電スタンドを経由した経路の探索が可能なナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は車両の現在位置と目的地までの距離や走行速度に基づき目的地への到達時刻を算出する機能を有する。目的地までの距離が長い場合でも、無給油で走行可能な航続可能距離が比較的長いガソリン車やハイブリッド車であれば給油の必要性が低く、給油が必要でも燃料の給油時間はそれほど長くないので到達時刻への影響は軽微であった。
【0003】
しかしながら、普及が進みつつある電気自動車は航続可能距離が短く、また、充電時間も長いため目的地への到達前に車両が充電すると到達時刻への影響を無視できない(充電スタンドが急速充電しても80%まで充電するのに30分程度必要とする)。このため、電気自動車のナビゲーション装置は、充電時間を考慮して行動予定を立てることが好ましいと言える(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、現在位置から充電施設に到達するまでに消費する電力量を算出して、現在蓄電量から該電力量を減算した到着時蓄電量に基づいて充電時間を算出する充電施設予約システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−230499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された充電施設予約システムのように目的地に到達する前の充電時間を考慮すれば、到達時刻をより精度よく予測することが可能になる。しかしながら、特許文献1に開示された充電施設予約システムは車両以外の交通機関による到着時刻を算出しないため、充電時間が到達時刻に加算された結果、電気自動車よりも目的地への到達時刻が早い他の交通機関を提案できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、電気自動車の充電によるロスを考慮して目的地に早期に到達できる経路を提案するナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、電力を動力源に走行する車両が目的地まで走行する際の経路を提案するナビゲーション装置であって、所定位置から目的地までの第1の候補経路及び第1の距離、並びに、充電場所を経由して所定位置から目的地まで到達する第2の候補経路及び第2の距離を求める経路探索手段と、現在の第1のバッテリ残量を検出するバッテリ状態検出手段と、前記第1のバッテリ残量により走行可能な航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、前記第1の距離と前記航続可能距離とを比較して前記目的地まで充電なしで到達できるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が前記目的地まで充電なしで到達できないと判定した場合、車両が前記第2の候補経路を走行して前記充電場所に到達した際の第2のバッテリ残量を予測するバッテリ残量予測手段と、前記第2の候補経路を前記充電場所から目的地まで走行するために必要な電力量と前記第2のバッテリ残量から、前記充電場所で充電すべき充電量を算出する充電量算出手段と、前記充電量を前記充電場所で充電するために必要な充電時間を算出する充電時間算出手段と、前記第2の距離を走行する走行時間に前記充電時間を加えて、前記第2の候補経路を走行した場合の第1の所要時間を算出する所要時間算出手段と、自車両以外の交通機関を利用して所定位置から目的地まで到達する第3の候補経路及び第2の所要時間を取得する他交通経路取得手段と、前記第1の所要時間と前記第2の所要時間の比較結果に基づき、前記第2の候補経路又は前記第3の候補経路を提案する経路提案手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
電気自動車の充電によるロスを考慮して目的地に早期に到達できる経路を提案するナビゲーション装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ナビゲーション装置が充電による時間的な遅れを考慮して最適な経路を選択する手順を模式的に説明する図の一例である。
【図2】ナビゲーションシステムの概略構成図の一例である。
【図3】情報処理制御部の機能ブロック部の一例である。
【図4】第1候補経路の近くの充電スタンドの探索を説明する図の一例である。
【図5】交通機関情報の一例を示す図である。
【図6】第3の候補経路の一例を示す図である。
【図7】ディスプレイに表示される提案画面の一例を示す図である。
【図8】ナビゲーション装置が目的地までの経路を提案する手順を示すフローチャート図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、ナビゲーション装置が充電による時間的な遅れを考慮して他の交通機関を含め最適な経路を選択する手順を模式的に説明する図の一例である。
(1)まず、ナビゲーション装置は現在地と目的地に基づき目的地までの第1候補経路を探索する。
(2)ナビゲーション装置は第1候補経路の距離と、SOC(State of Charge)から求められる航続可能距離を比較して、第1候補経路を走行して無充電で目的地に到達できるか否かを判定する。無充電で目的地に到達できる場合、第1候補経路を提案経路とすればよい。
(3)無充電で目的地に到達できない場合、ナビゲーション装置は第1候補経路の近くにある充電スタンドを検索し、該充電スタンドを経由する第2候補経路を探索する。
(4)そして、充電スタンドで充電に必要な最小充電時間を計算し、第2候補経路を走行して目的地に到達した場合の走行時間に最小充電時間を加えた時間を第1所要時間とする。
(5)次に、ナビゲーション装置は自動車以外の公共の交通機関(電車、飛行機、バス及び徒歩等)を組み合わせた候補経路を探索し、現在地から目的地までの所要時間(第2所要時間)が最も短い第3候補経路を探索する。
(6)ナビゲーション装置は第1所要時間が第2所要時間以下であれば第2候補経路を運転者に提案し、第2所要時間が第1所要時間未満であれば第3候補経路を運転者に提案する。
【0011】
したがって、本実施形態のナビゲーション装置は、充電場所を考慮して、充電時間が含まれた第1所要時間を他の交通機関を利用した場合の第2所要時間と比較するので、充電のための時間ロス(距離的ロス、充電時間によるロス)を考慮して最も到達時刻の早い経路を提案することができる。
【0012】
〔構成〕
図2は、ナビゲーションシステム300の概略構成図の一例を示す。ナビゲーションシステム300は、ナビゲーション装置100及びセンター200を有する。ナビゲーション装置100は、車両専用の据え置き型、取り外して自転車等にも搭載可能な可搬型、又は、スマートフォンや携帯電話などの端末型のいずれであってもよい。また、センター200は例えばサーバであり、自車両に道路地図データや交通機関情報などの種々の情報を提供する。また、センター200が、人が自車両以外の交通機関を利用して任意の2地点間を移動した場合の第3候補経路及び第2所要時間を算出できるとしてもよい。この人は自車両の運転者となりうる者であるが以下では区別せずに単に運転者という。
【0013】
ナビゲーション装置100は、電力を動力源とする電気自動車の経路を案内する場合に好適に効果を奏するが、電力を動力源の一部とするハイブリッド車や内燃機関のみを有する車両の経路案内に用いても不都合はない。特にプラグインハイブリッド車には本実施形態のナビゲーション装置100が有効である。
【0014】
ナビゲーション装置100は、情報処理制御部15により動作の全体が制御され、情報処理制御部15には操作入力部11、ディスプレイ12、データ取得部13、位置検出部16、経路計算部17、経路案内部18、描画処理部19、通信制御部21及び車両情報検出部23が接続されている。図では省略されているが、ナビゲーション装置100は、CPU、RAM、ROM、HDD(又はSSD)、入出力I/O、各種のIC等を備えたコンピュータを実体としている。図の機能ブロックはCPUがプログラムを実行したり、プログラムとICが協働して実現されている。
【0015】
情報処理制御部15は、操作入力部11から入力された操作情報に基づき、必要であればデータ取得部13が取得したデータを使用し、位置検出部16〜車両情報検出部23などに処理を要求し、処理結果をディスプレイ12に表示する。この他、一般的なAV機能(ラジオ、テレビ等)を有していてもよい。
【0016】
操作入力部11は、運転者がナビゲーション装置100を操作するためのハードキー、リモコン、音声入力装置等である。ディスプレイ12に表示されるソフトキーも操作入力部11の一形態になる。ディスプレイ12は、液晶や有機EL等のフラットパネルディスプレイ、又は、HUD(Head Up Display)等である。
【0017】
データ取得部13はローカルDB14と接続され、ローカルDB14から各種のデータを読み出し、また、書き込む。ローカルDB14には道路地図データ、交通機関情報、及び、ナビゲーション装置100が実行するプログラム等が記憶されている。なお、道路地図データは出荷時にナビゲーション装置100に記憶されていてもよいし、不図示のサーバからダウンロードされたものでもよい。また、道路地図データには充電スタンドの位置や仕様が登録されており、交通機関情報には鉄道・バスなどの公共交通機関の路線図、時刻表、駅間の時間情報(旅行時間)、料金情報等が登録されている。なお、交通機関情報はナビゲーション装置100がローカルDB14に記憶していなくてもよく、センター200からダウンロードすることができる。
【0018】
位置検出部16は、車両の現在位置を検出する。位置検出部16は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機により衛星を補足して自車位置の座標を定期的に測位する。そして、ジャイロセンサにより検出した車両の走行方向に、車速センサにより検出した走行距離を累積して自車位置を連続的に検出する。さらに、位置検出部16は自車位置を道路地図データの道路上にマッピングするマップマッチングにより車両の位置を道路上に特定する。位置検出部16が検出した自車位置は情報処理制御部15に出力される。
【0019】
経路計算部17は、現在地(又は出発地)から目的地までの第1候補経路及び第2候補経路を例えばダイクストラ法などの計算方法で求める。ダイクストラ法は、道路地図データからリンクとノードを抽出し、リンクコストの積算が最も小さくなるような経路を選択する計算方法である。リンクコストとしては、リンク長や右左折コスト等が用いられる。経路計算部17が計算した第1候補経路及び第2候補経路、並びに、各候補経路の距離は情報処理制御部15に出力される。
【0020】
情報処理制御部15は、データ取得部13に自車位置周辺の道路地図データの取得を要求し、描画処理部19に道路地図画面の生成を要求する。描画処理部19は道路地図画面を生成して情報処理制御部15に出力するので、情報処理制御部15は道路地図画面をディスプレイ12に表示する。道路地図画面には、自車位置と進行方向を示すマーク(アイコン)、及び、目的地までの経路が強調して表示される。
【0021】
経路案内部18は、経路計算部17が計算した経路を運転者に案内する。例えば、右左折の所定距離手前で「この先を右折(左折)です」などの音声メッセージを出力し、交差点の進行方向を矢印で表示する。
【0022】
通信制御部21は、通信機器22を用いてセンター200と通信する。通信機器22は、CDMA、PDC、GSM、無線LAN等の通信規格に従い基地局を介してセンター200と通信する。より具体的には、通信機器22は運転者が契約している通信事業者の基地局を介して、通信事業者のサーバと通信し、サーバからゲートウェイを介してWWWネットワークまたはVPN(Virtual Private Network)に接続されたセンター200と通信する。
【0023】
車両情報検出部23は、各種のセンサやECU(electronic control unit)が取得した車両の各種の車両情報を検出する。車両情報は、例えば、SOCや車速である。
【0024】
図3は、情報処理制御部15の機能ブロック部の一例を示す。情報処理制御部15は、航続可能距離算出部31、再探索判定部32、残電力予測部33、必要電力算出部34、充電時間算出部35、所要時間算出部36、マルチモーダル処理部37、及び、経路提案部38を有する。
【0025】
航続可能距離算出部31は、車両情報検出部23が検出したSOC(単位は〔%〕)に基づき航続可能距離を算出する。航続可能距離は、アクセルペダルの増減の頻度などの運転操作などによって変わってくるが、平均的な運転操作であればSOCに定数を掛けることで求められる。また、航続可能距離は車速や温度に影響されうるので、これらに応じて補正することでより正確な航続可能距離が得られる。
【0026】
再探索判定部32は、航続可能距離が第1候補経路における目的地までの距離(以下、目的地距離という)よりも十分に(例えば、目的地距離の1.2倍以上)大きいか否かを判定する。航続可能距離が目的地距離よりも十分に大きい場合、車両は目的地まで第1候補経路を走行して無充電で到達できる。航続可能距離が目的地距離よりも十分に大きくない場合、再探索判定部32は経路の再探索が必要であると判定して、経路計算部17に第1候補経路の近くの充電スタンドを経路に含む第2候補経路を探索するよう要求する。第1候補経路上に充電スタンドがあれば、第1候補経路と第2候補経路がほぼ等しくなる場合もある。
【0027】
また、再探索判定部32は、航続可能距離が目的地距離よりも十分に大きくない場合、マルチモーダル処理部37に現在地から目的地までの第3候補経路を探索するように要求する。第3候補経路の探索については後述する。
【0028】
図4は、第1候補経路の近くの充電スタンドの探索を説明する図の一例である。まず、必要な条件として、充電スタンドは航続可能距離内でなければならない。次に、第1候補経路を大きく外れることは時間と距離のロスが大きくなるので、充電スタンドは第1候補経路に近い方が好ましい。一方、現在地に近い充電スタンドで充電すると、目的地が遠い場合などは目的地に到達する前に再度の充電が必要になるおそれがある。以上から、経路計算部17は、
・航続可能距離内の第1候補経路上に充電スタンドがある場合、第1候補経路上で目的地に最も近い充電スタンドを実際に車両が充電する充電スタンド(以下、立ち寄りスタンドという)に決定する。
・航続可能距離内の第1候補経路上に充電スタンドがない場合、航続可能距離内で目的地から最も近い充電スタンドを立ち寄りスタンドに決定する。
【0029】
図では航続距離内の充電スタンドA〜Cのうち目的地に最も近い充電スタンドCが立ち寄りスタンドに選択される。経路計算部17は立ち寄りスタンドを経由する第2候補経路、及び、立ち寄りスタンド位置情報を残電力予測部33に通知する。
【0030】
なお、運転者は、立ち寄りスタンドに求める充電スタンドの仕様などを予めナビゲーション装置100に設定しておくこともできる。この仕様とは充電速度や付帯施設(トイレ、売店、食堂等)等である。経路計算部17は設定された仕様を満たす充電スタンドのみから立ち寄りスタンドを決定する。
【0031】
また、経路計算部17は航続可能距離内の充電スタンドを道路地図画面に表示するよう描画処理部19に要求し、操作入力部11を介して運転者から立ち寄りスタンドの選択を受け付けてもよい。この場合、運転者は複数の充電スタンドの中から所望の立ち寄りスタンドを選択できる。
【0032】
図3に戻り、残電力予測部33は、現在地から第2候補経路を走行して立ち寄りスタンドに到達するまでの距離に基づき消費電力量を算出する。残電力予測部33は消費電力量をSOC(以下、消費SOCという)に変換し、現在のバッテリ残量である残SOCから減じる。これにより得られるSOCは、立ち寄りスタンドにおいて予測されるSOC(以下、予測SOCという。)である。
予測SOC=残SOC−消費SOC
なお、車両が回生エネルギーを回収できる場合、道路地図データから第2候補経路の下り坂を検出して回収分の電力量を考慮することで予測SOCをより正確に算出できる。また、この場合、最小充電時間を短く予測する効果も得られる。
【0033】
そして、必要電力算出部34は、立ち寄りスタンドから目的地に到達するためには、予測SOCにどのくらいの電力量が足りないかを算出する。すなわち、第2候補経路を走行して立ち寄りスタンドから目的地に到達するまでの距離から、必要な電力量を算出しSOC(以下、必要SOCという)に変換する。必要SOCは予測SOCよりも大きいはずなので、足りない電力量(以下、最小充電SOCという)は以下のように算出される。
最小充電SOC=必要SOC−予測SOC
そして、充電時間算出部35は、最小充電SOCを充電するために必要な最小充電時間を、立ち寄りスタンドの仕様に基づき算出する。立ち寄りスタンドは、充電量と最小充電時間の目安を公開しており、道路地図データの立ち寄りスタンドの仕様に充電量と充電時間の目安が登録されている。このような仕様が登録されていない場合、立ち寄りスタンドの型番をセンター200に送信するなどして、充電時間の目安を取得してもよい。
【0034】
なお、最小充電時間しか充電しない場合、車両が目的地に到達した時にSOCが約0〔%〕になってしまう。目的地に充電施設があればよいが、目的地に充電施設がない場合は不都合が生じる。そこで、充電時間算出部35は、目的地に充電施設があるか否かを判定し、バッテリをフル充電するか否かを判定する。目的地に充電施設があるか否かは、充電スタンドの有無はもちろん、目的地が住宅地か否か、商業施設か否か等により判定される。また、運転者が目的地における充電施設の有無を把握している場合はナビゲーション装置100に充電施設の有無を設定することが好ましい。目的地の充電施設の有無を判定することで、目的地に充電施設がある場合、ナビゲーション装置100は最小充電SOCの分だけ充電すればよく、運転者は目的地に早く到達することができる。また、目的地に充電施設がない場合、ナビゲーション装置100はフル充電すべきであると判断できるので、目的地でSOCが約0〔%〕になることを防止できる。
【0035】
所要時間算出部36は、現在地から立ち寄りスタンドまでの所要時間、立ち寄りスタンドにおける最小充電時間(又はフル充電までの充電時間)、及び、立ち寄りスタンドから目的地までの所要時間を合計して第1所要時間を算出する。
第1所要時間=第2候補経路の走行時間+立ち寄りスタンドにおける最小充電時間(またはフル充電までの充電時間)
<第3候補経路の探索>
続いて第3候補経路の探索について説明する。マルチモーダル処理部37は、自車両以外の交通機関を使用して目的地までの第3候補経路を探索する。ローカルDB14の交通機関情報39には、主要な交通機関の時刻表、乗り換え情報、駅間(バス停間)の旅行時間、料金情報等が登録されている。また、運転者は、マルチモーダル処理部37が経路探索に使用する交通機関として、新幹線や有料列車の使用の有無、タクシーの使用有無等を設定できるようになっている。
【0036】
図5は交通機関情報39の一例を示す図である。鉄道であればJR各線や私鉄各線の駅毎に上り及び下りの列車の出発時刻が登録されており、バスであれば各バス会社のバス停毎に各方面のバスの出発時刻が登録されている。駅やバス停間の移動に必要な時間は時刻表に登録されているが、駅又はバス停を進行方向に従って出発時刻を辿ることで算出することもできる。
【0037】
また、駅やバス停から他の路線又は他のバス路線に乗り換え可能な場合には、その駅に乗り換え可能な路線名やバス路線名が登録されている。図の例では例えば123線のC駅からバスA線の1バス停に乗り換えが可能であることが分かる。また、列車がC駅に12:10に到着した場合、バスA線の1バス停から向こう方面にバスが発車する最も近い時刻は13:00であることがわかる。この2つの時間の差分は運転者の待ち時間になる。
【0038】
マルチモーダル処理部37による第3候補経路の探索方法は種々考案されているので、一例を説明する。マルチモーダル処理部37は、現在地に最も近い駅及びバス停、並びに、目的地に最も近い駅及びバス停を道路地図データから特定する。優先的には駅を利用する設定になっており、マルチモーダル処理部37は、現在地に最も近い駅の鉄道を最初の交通機関に採用する。一方、例えば、現在地に最も近い駅までの距離が所定値以上の場合、徒歩で到達することは困難であるとして現在地に最も近いバス停のバス路線を最初の交通機関に採用する。目的地においても同様に、駅を優先しながら、目的地に最も近い駅と目的地までの距離が所定値以上の場合、目的地に最も近いバス停を仮目的地に採用する。
【0039】
なお、現在地又は目的地の周辺にバス路線がない場合、運転者の設定によっては、マルチモーダル処理部37はタクシーを提案する。
【0040】
次に、マルチモーダル処理部37は、目的地付近の駅又はバス停から仮目的地までの第3候補経路を交通機関情報39を利用して探索する。交通機関情報39の乗り換え情報を利用して、試行錯誤的に仮目的地まで到達可能な1つの路線、1つのバス路線、複数の路線の組合せ、複数のバス路線の組合せ、又は、路線とバス路線の組合せを特定する。目的地付近の駅又はバス停から仮目的地まで到達可能な第3候補経路が複数、特定された場合は、その複数の第3候補経路のうち、乗り換え数が少ない順に数個の複数の第3候補経路を特定する。
【0041】
図6は、第3候補経路の一例を示す図である。マルチモーダル処理部37は、交通機関情報39を用いて複数の第3候補経路についてそれぞれの所要時間を算出する。例えば、第3候補経路が次のように特定されている場合、所要時間は以下のように計算される。
「現在地→(徒歩1)→A駅→(123線)→C駅→(徒歩2)→1バス停→(バスA線)→3バス停→(徒歩3)→目的地」
マルチモーダル処理部37はまず現在時刻を情報処理制御部15から取得する。現在時刻を取得することで、時刻表から現在の時間帯の出発時刻を読み出すことができる。運転者がこれからすぐに出発しない場合、マルチモーダル処理部37は予定されている出発時刻の入力を受け付ける。
(i)徒歩1:現在地からA駅までの距離を例えば80m当たり1分に換算し、これを徒歩1時間とする。
【0042】
また、123線の時刻表を参照し、現在時刻(又は予定の出発時刻)に徒歩1時間を加算した時刻よりも遅く、かつ、該時刻に最も近い123線の列車がA駅を出発する出発時刻を特定する。現在時刻に徒歩1時間を加算した時刻からA駅の出発時刻までの時間は待ち時間1となる。
(ii)123線:交通機関情報39から123線のA駅からC駅までの移動に必要な時間を読み出し積算する。この時間を123線時間とする。
(iii)徒歩2:C駅から1バス停までの距離が既知の場合は80m当たり1分に換算し、既知でない場合は所定時間(例えば数分)を見積もる。この時間を徒歩2時間とする。
【0043】
また、バスA線の時刻表を参照し、C駅の出発時刻(又は到着時刻でもよい)に徒歩2時間を加算した時刻よりも遅く、かつ、該時刻に最も近いバスA線のバスが1バス停を出発する出発時刻を特定する。C駅の出発時刻に徒歩2時間を加算した時刻から1バス停の出発時刻までの時間は待ち時間2となる。
(iv)バスA線:交通機関情報39からバスA線の1バス停から3バス停までの移動に必要な時間を読み出し積算する。この時間をバスA線時間とする。
(v))徒歩3:3バス停から目的地までの距離を例えば80m当たり1分に換算し、これを徒歩3時間とする。
【0044】
したがって、以上から、車両以外の交通機関を使用した場合の第3候補経路において、現在地から目的地までの移動に必要な第2所要時間を算出できる。
第2所要時間=徒歩1時間+待ち時間1+123線時間+徒歩2時間+待ち時間2+バスA線時間+徒歩3時間
マルチモーダル処理部37は、複数の第3候補経路のそれぞれについて第2所要時間を算出し、第2所要時間が最も小さい経路を最終的に第3候補経路に決定する。
【0045】
なお、ナビゲーション装置100が第3候補経路の探索や第2所要時間を算出するのでなく、センター200にこれらの処理を依頼してもよい。この場合、ナビゲーション装置100は、現在地と目的地をセンター200に送信し、センター200から第3候補経路や第2所要時間を取得する。
【0046】
<候補経路の提案>
経路提案部38は、第2所要時間と第1所要時間を比較して、差を算出するとともに目的地に早く到着できる第2又は第3候補経路を運転者に提案する。
【0047】
図7は、ディスプレイ12に表示される提案画面の一例を示す図である。第3候補経路の方が第2候補経路よりも運転者が早く目的地に到達できる場合、経路提案部38は、ディスプレイ12に例えば「自動車よりも公共の交通機関を利用した方が○分早く到達できます。」というメッセージ、第3候補経路及び第2所要時間を表示する。運転者はこのメッセージを見て、自動車で赴くか、提案された交通機関を利用して赴くかを決定することができる。
【0048】
また、車両が第2候補経路を走行することで、運転者が第3候補経路を移動する場合より同程度以上に早く目的地に到達できる場合、経路提案部38はディスプレイ12に例えば「自動車が公共の交通機関よりも○分早く到達できます。」というメッセージ、第2候補経路及び第1所要時間を表示する。運転者はこのメッセージを見て、途中で充電しても自動車で赴いた方が早く目的地に到達できると認識し、第2候補経路をナビゲーション装置100に設定する。
【0049】
なお、第3候補経路又は第2候補経路のいずれを表示する場合も、それぞれの候補経路の料金情報を表示することが好ましい。第2候補経路の料金は、現在地から立ち寄りスタンドを経由して目的地に到達する第2候補経路の距離を走行するための電力量と一般的な電気代(例えば22円/1kWh)及び有料道路代から算出できる。第3候補経路の料金は、123線をA駅からC駅まで利用した料金と、バスA線を1バス停から3バス停まで利用した場合の料金の合計金額である。
【0050】
また、経路提案部38は第2候補経路及び第1所要時間、並びに、第3候補経路及び第2所要時間をそれぞれディスプレイ12に表示して、ユーザの選択を受け付けてもよい。この表示の際も、それぞれの候補経路の料金情報を表示することが好ましい。この場合、運転者は第2候補経路と第3候補経路の所要時間だけでなく、それぞれの候補経路の料金を含め総合的にどちらの経路を採用するかを判断することができる。
【0051】
〔動作手順〕
図8は、ナビゲーション装置100が目的地までの経路を提案する手順を示すフローチャート図の一例である。
【0052】
まず、経路計算部17が設定された目的地までの第1候補経路を探索し、また、第1候補経路を走行した場合の目的地距離を算出する(S10)。
【0053】
次に、航続可能距離算出部31がSOCに基づき航続可能距離を算出する(S20)。
【0054】
そして、再探索判定部32は航続可能距離が目的地距離よりも十分に大きいか否かを判定する(S30)。航続可能距離が目的地距離よりも十分に大きい場合、車両は第1候補経路を走行して無充電で目的地に到達できるので、図8の処理は終了する。この場合、ナビゲーション装置100の経路案内部18は第1候補経路を経路に設定し、運転者を目的地まで案内する。
【0055】
航続可能距離が目的地距離よりも十分に大きくない場合、車両は目的地に到達するまでに充電する必要があるので、経路計算部17は、航続可能距離内で目的地から最も近い立ち寄りスタンドを決定し、立ち寄りスタンドを経由する第2候補経路を探索する(S40)。
【0056】
次に、残電力予測部33は、立ち寄りスタンドにおけるSOCである予測SOCを算出する(S50)。
【0057】
必要電力算出部34は、立ち寄りスタンドから目的地までの距離に基づき、目的地に到達するために必要な最小充電SOCを算出する(S60)。必要電力算出部34は、この前に目的地に充電スタンドがあるか否かを判定しており、充電スタンドがない場合は、最小充電SOCでなくフル充電または目的地周囲の充電スタンドまで必要な電力量を充電すると判定する。
【0058】
次に、充電時間算出部35は、例えば、道路地図データに登録されている立ち寄りスタンドの仕様に基づき、最小充電SOCを充電するための最小充電時間を算出する(S70)。
【0059】
次に、所要時間算出部36は、最小充電時間に、第2候補経路を走行して現在地から目的地まで到達するために必要な走行時間を加えて第1所要時間を算出する(S80)。
【0060】
また、ステップS30で航続可能距離が目的地距離よりも十分に大きくないと判定された場合、マルチモーダル処理部37は車両以外の交通機関を利用した第3候補経路を探索し、第2所要時間を算出する(S90)。
【0061】
そして、経路提案部38は第2所要時間が第1所要時間よりも小さいか否かを判定して(S100)、第2所要時間が第1所要時間よりも小さい場合、第3候補経路と第2所要時間を表示する(S110)。第2所要時間が第1所要時間よりも小さくない場合、第2候補経路と第1所要時間を表示する(S120)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のナビゲーション装置100は、充電時間を目的地までの所要時間に含めて他の交通機関の所要時間と比較するので、充電のための時間ロスを考慮して最も到達時刻の早い経路を提案することができる。
【符号の説明】
【0063】
11 操作入力部
12 ディスプレイ
13 データ取得部
14 ローカルDB
15 情報処理制御部
16 位置検出部
17 経路計算部
18 経路案内部
19 描画処理部
21 通信制御部
22 通信機器
23 車両情報検出部
31 航続可能距離算出部
32 再探索判定部
33 残電力予測部
34 必要電力算出部
36 所要時間算出部
37 マルチモーダル処理部
38 経路提案部
39 交通機関情報
100 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を動力源に走行する車両が目的地まで走行する際の経路を提案するナビゲーション装置であって、
所定位置から目的地までの第1の候補経路及び第1の距離、並びに、充電場所を経由して所定位置から目的地まで到達する第2の候補経路及び第2の距離を求める経路探索手段と、
現在の第1のバッテリ残量を検出するバッテリ状態検出手段と、
前記第1のバッテリ残量により走行可能な航続可能距離を算出する航続可能距離算出手段と、
前記第1の距離と前記航続可能距離とを比較して前記目的地まで充電なしで到達できるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記目的地まで充電なしでは到達できないと判定した場合、車両が前記第2の候補経路を走行して前記充電場所に到達した際の第2のバッテリ残量を予測するバッテリ残量予測手段と、
前記第2の候補経路を前記充電場所から目的地まで走行するために必要な電力量と前記第2のバッテリ残量から、前記充電場所で充電すべき充電量を算出する充電量算出手段と、
前記充電量を前記充電場所で充電するために必要な充電時間を算出する充電時間算出手段と、
前記第2の距離を走行する走行時間に前記充電時間を加えて、前記第2の候補経路を走行した場合の第1の所要時間を算出する所要時間算出手段と、
自車両以外の交通機関を利用して所定位置から目的地まで到達する第3の候補経路及び第2の所要時間を取得する他交通経路取得手段と、
前記第1の所要時間と前記第2の所要時間の比較結果に基づき、前記第2の候補経路又は前記第3の候補経路を提案する経路提案手段と、
を有するナビゲーション装置。
【請求項2】
前記充電量算出手段は、前記電力量から前記第2のバッテリ残量を減じた値を前記充電量として算出する、
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記充電量算出手段は、目的地周辺に充電施設があるか否かを判定し、前記充電施設がない場合、バッテリを満充電するための電力量を前記充電量として算出する、
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記経路探索手段は、所定位置から前記航続可能距離内かつ前記目的地から最も近い前記充電場所を経由する前記第2の候補経路を探索する、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記経路提案手段は、前記第2の所要時間が前記第1の所要時間より小さい場合、前記第1の所要時間と第2の所要時間の差を表示すると共に前記第3の候補経路を提案し、
前記第1の所要時間が前記第2の所要時間以下の場合、前記第1の所要時間と第2の所要時間の差を表示すると共に前記第2の候補経路を提案する、
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記経路提案手段は、前記第2の所要時間及び前記第1の所要時間、並びに、前記第2の候補経路及び前記第3の候補経路を表示し、前記第2の候補経路又は前記第3の候補経路の選択を受け付ける、
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記経路提案手段は、前記第2の候補経路及び前記第3の候補経路を利用した場合のそれぞれのコストを表示する、
ことを特徴とする請求項6記載のナビゲーション装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202751(P2012−202751A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65905(P2011−65905)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】