説明

ナビゲーション装置

【課題】目的地周辺の道路から目的地へ到達するのが困難な場合においても、適切な推奨経路を探索する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、目的地20の位置30から最も近い道路21、22上に目的地対応地点31、32をそれぞれ設定し、位置30と目的地対応地点31、32とをそれぞれつなぐ線分33、34を地図上に設定する。この線分33、34の長さと、線分33、34が地図上で通る地図要素の種類とに基づいて、目的地対応地点31、32に対して追加コストをそれぞれ算出し、各道路に対して予め設定されたリンクコストと算出した追加コストとに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地に設定したい施設等をユーザが指定すると、その施設等に隣接する道路上に経路の終了地点を設定し、設定した終了地点までの推奨経路を探索するナビゲーション装置が周知である(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−184736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたナビゲーション装置では、目的地に隣接する道路上に経路の終了地点が設定される。そのため、たとえば障害物が存在するなどの理由で当該地点から目的地へ到達するのが困難な場合であっても、当該地点までの推奨経路が探索される。このように従来のナビゲーション装置では、目的地周辺の道路から目的地へ到達するのが困難な場合に適切な推奨経路を探索することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるナビゲーション装置は、地図上に目的地を設定する目的地設定手段と、目的地の周辺の道路の中から複数の対象道路を選択する道路選択手段と、道路選択手段により選択された各対象道路上に目的地に対応する目的地対応地点をそれぞれ設定する目的地対応地点設定手段と、目的地対応地点設定手段により設定された各目的地対応地点に対して、そこから目的地への到達の困難度合いに応じた追加コストをそれぞれ算出する追加コスト算出手段と、各道路に対して予め設定されたリンクコストと、追加コスト算出手段により算出された追加コストとに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する経路探索手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、目的地周辺の道路から目的地へ到達するのが困難な場合においても、適切な推奨経路を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による推奨経路の探索方法を説明するための地図例を示す図である。
【図3】本発明による推奨経路の探索方法を説明するための図である。
【図4】本発明による推奨経路の探索方法を実現するための処理のフローチャートである。
【図5】本発明による別の推奨経路の探索方法を説明するための図である。
【図6】本発明による別の推奨経路の探索方法を実現するための処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
本発明の一実施形態によるナビゲーション装置は、車両に搭載されて利用される。このナビゲーション装置の構成を図1のブロック図に示す。図1に示すように、ナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスクドライブ(HDD)13、GPS(Global Positioning System)受信部14、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)情報受信部15、表示モニタ16、スピーカ17および入力装置18を備えている。
【0009】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、目的地を設定する際の目的地の検索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、自車両の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などが制御部10によって実行される。
【0010】
振動ジャイロ11は、自車両の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、自車両の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサにより自車両の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、制御部10において自車両の移動方向および移動量が求められる。
【0011】
HDD13は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD13に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0012】
HDD13に記録された地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。
【0013】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、ナビゲーション装置1において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0014】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD13に記録されている例を説明したが、これらをHDD以外の記録媒体に記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録された地図データを用いることができる。すなわち、本実施の形態によるナビゲーション装置では、どのような記録媒体を用いてこれらのデータを記憶してもよい。
【0015】
GPS受信部14は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、自車両の現在位置を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、自車両の現在位置を制御部10において算出することができる。このGPS信号に基づく自車両の現在位置の算出結果と、前述の振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果に基づく移動方向および移動量の算出結果とにより、制御部10において所定時間ごとに自車両の現在位置を検出するための位置検出処理が実行され、自車両の現在位置が検出される。
【0016】
VICS情報受信部15は、図示しないVICSセンターからナビゲーション装置1に対して送信されるVICS情報を受信する。このVICS情報をVICS情報受信部15が受信することにより、渋滞情報を始めとする様々な道路交通情報がナビゲーション装置1において取得される。VICS情報受信部15により受信されたVICS情報は、制御部10に出力され、渋滞情報の表示や推奨経路の探索などに利用される。
【0017】
なお、VICSセンターからナビゲーション装置1へのVICS情報の送信は、主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって行われる。電波ビーコンや光ビーコンは、その設置地点付近を通過する車両に対して、電波あるいは光(赤外線)により局所的にVICS情報を送信するものである。これに対して、FM多重放送では比較的広い地域に対してVICS情報を送信することができる。
【0018】
表示モニタ16は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ16により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ16に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ16は、たとえば自車両のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0019】
スピーカ17は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ17から出力される。
【0020】
入力装置18は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置18を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置18を表示モニタ16と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0021】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された自車両の現在位置を出発地として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算による経路探索処理を行う。この処理により、出発地から目的地まで至る推奨経路を探索する。さらにナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ16に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ16やスピーカ17から出力することにより、自車両を目的地まで案内する。
【0022】
ところで、従来のナビゲーション装置は、道路上の地点以外の場所が目的地に設定された場合、その目的地から最も近い道路上の地点を経路の終了地点として推奨経路を探索していた。しかし、実際の地形では、車両や歩行者の通行を妨げる様々な障害物が存在する。こうした障害物は、たとえば河川、高低差のある地形、鉄道、垣根や塀等の囲い、道幅の広い道路、自動車専用道路などである。これらの障害物が経路終了地点から目的地までの間に存在した場合、従来のナビゲーション装置では、自車両の案内終了後にユーザが目的地へ到達するのが困難となってしまうという不都合が生じていた。
【0023】
上記のような不都合を回避するため、本発明の一実施形態によるナビゲーション装置1は、道路上の地点以外の場所が目的地に設定された場合、その目的地の周辺に存在する複数の道路を経路探索の対象道路として設定する。そして、各対象道路上で目的地に最も近い地点を目的地に対応する地点(目的地対応地点)とし、各目的地対応地点について、そこから目的地への到達の困難度合いに応じた追加コストをそれぞれ設定する。この追加コストを前述のリンクコストと共に用いて推奨経路の探索を行うことで、障害物によって目的地周辺の道路から目的地へ到達するのが困難な場合においても、適切な推奨経路を探索するようにしている。
【0024】
以上説明した推奨経路の探索方法について、図2および図3を参照して以下に詳しく説明する。図2は、施設20の周辺に道路21および22が存在している地図例を示している。施設20と道路21の間には障害物である河川23が存在しており、施設20と道路22の間には駐車場24が存在している。
【0025】
図3は、図2の地図例において施設20を目的地に設定した場合の本実施形態による推奨経路の探索方法を示している。ユーザから施設20が目的地として指定されると、ナビゲーション装置1は、HDD13に記録されている地図データから施設20の位置情報を取得し、その位置情報に基づいて施設20の位置30を特定する。そして、位置30から最も近い道路21上の地点31と、位置30から最も近い道路22上の地点32とを、前述の目的地対応地点としてそれぞれ設定する。
【0026】
こうして目的地20に対応する目的地対応地点31、32を道路21、22上にそれぞれ設定したら、続いてナビゲーション装置1は、目的地20の位置30と目的地対応地点31、32とをそれぞれつなぐ線分33、34を地図上に設定する。この線分33、34の長さは、道路21、22から目的地20までの距離をそれぞれ表している。また、線分33、34が地図上で通る地図要素の種類は、道路21、22から目的地20までの間における障害物の有無およびその障害物の種類をそれぞれ表している。したがって、これらに基づいて、目的地対応地点31、32から目的地20への到達の困難度合いに応じた追加コストをそれぞれ以下で説明するようにして算出することができる。
【0027】
ここで、目的地対応地点に対する追加コストの算出式の一例を以下の式(1)に示す。式(1)において、Cは追加コストの値を、Lは目的地と目的地対応地点とをつなぐ線分の長さをそれぞれ表している。また、Cは追加コストの基準値を、Lは長さの基準値をそれぞれ表しており、これらの基準値は予め定められている。さらに、Kは目的地と目的地対応地点とをつなぐ線分が通る地図要素の種類に応じて決定される到達係数であり、0〜100のいずれかの値である。なお、到達係数Kの値は地図要素の種類ごとに予め定められており、目的地への到達が困難な地図要素、すなわち通行が困難な地図要素であるほど、小さな値が設定されている。
【0028】
C=(L/L)・(100/K)・C ・・・(1)
【0029】
図3において、たとえば線分33が地図上で20mに相当する長さであり、線分34が地図上で50mに相当する長さであるとする。また、線分33が通っている河川23に対する到達係数Kが0であり、線分34が通っている駐車場24に対する到達係数Kが80であるとする。このような場合、目的地対応地点31の追加コストをC、目的地対応地点32の追加コストをCとすると、式(1)からC=Cmax、C=6Cとそれぞれ求められる。ただし、式(1)において、Lが10mであり、Cが取り得る値の最大値、すなわちK=0である場合のCの値がCmaxであるとする。
【0030】
ナビゲーション装置1は、以上説明したようにして算出された追加コストC、Cを用いて、出発地から目的地である施設20までの推奨経路を探索する。具体的には、出発地から目的地対応地点31までの経路と、出発地から目的地対応地点32までの経路とをそれぞれ探索し、各経路のリンクコストの合計値に対して追加コストC、Cをそれぞれ加えた合算値同士を比較する。そして、より合算値が低い方の経路を施設20までの推奨経路とする。その結果、出発地から施設20までの推奨経路として、たとえば目的地対応地点32を終了地点とする経路が探索される。
【0031】
以上説明したような本実施形態による推奨経路の探索方法を実現するための処理のフローチャートを図4に示す。このフローチャートは、ナビゲーション装置1において制御部10により実行されるものである。
【0032】
ステップS10において、制御部10は、入力装置18によるユーザからの入力操作に基づいて、地図上に目的地を設定する。ここでは前述のように、たとえばユーザに入力された名称から検索された施設、ユーザに選択された登録地、地図上でユーザに指定された地点などを目的地として設定する。
【0033】
ステップS20において、制御部10は、ステップS10で設定した目的地の周辺の道路の中から経路探索の対象道路を選択する。ここでは、たとえば目的地から所定範囲内にある全ての道路を対象道路として選択する。あるいは、目的地から近い順に所定数の道路を対象道路として選択してもよい。これにより、目的地の周辺にある複数の対象道路が選択される。
【0034】
ステップS30において、制御部10は、ステップS20で選択した各対象道路上に目的地対応地点をそれぞれ設定する。ここでは前述のように、ステップS10で設定した目的地から最も近い各対象道路上の地点を目的地対応地点に設定する。
【0035】
ステップS40において、制御部10は、ステップS10で設定した目的地とステップS30で設定した各目的地対応地点とをそれぞれつなぐ線分を地図上に設定する。これにより、目的地対応地点ごとに、そこから目的地との間に線分が設定される。
【0036】
ステップS50において、制御部10は、ステップS40で設定した各線分の長さをそれぞれ算出する。ステップS60において、制御部10は、ステップS40で設定した各線分が地図上で通る地図要素をそれぞれ検出する。
【0037】
ステップS70において、制御部10は、ステップS50で算出した各線分の長さと、ステップS60で検出した各線分が通る地図要素の種類とに基づいて、ステップS30で設定した各目的地対応地点に対する追加コストをそれぞれ算出する。ここでは前述のように、たとえば式(1)を用いて追加コストの算出を行うことができる。これにより、各目的地対応地点に対して、そこから目的地への到達の困難度合いに応じた追加コストがそれぞれ算出される。
【0038】
ステップS80において、制御部10は、ステップS70で算出した追加コストを用いて、出発地からステップS10で設定した目的地までの推奨経路を探索する。ここでは前述のように、出発地から各目的地対応地点までの経路をそれぞれ探索し、その各経路のリンクコストの合計値と対応する追加コストとの合算値がより低い方の経路を推奨経路として求める。これにより、地図データにおいて各道路に対して予め設定されたリンクコストと、ステップS70で算出した各目的地対応地点の追加コストとに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路が探索される。
【0039】
ステップS80を実行したら、制御部10は図4のフローチャートを終了する。その後制御部10は、自車両が目的地またはいずれかの目的地対応地点へ到達するまでの間、探索した推奨経路に基づいて自車両の案内を行う。
【0040】
以上説明した本発明の第1の実施の形態によれば、次の(1)、(2)の作用効果を奏することができる。
【0041】
(1)ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、地図上に目的地を設定し(ステップS10)、その目的地の周辺の道路の中から複数の対象道路を選択する(ステップS20)。そして、選択した各対象道路上に目的地に対応する目的地対応地点をそれぞれ設定し(ステップS30)、各目的地対応地点に対して、そこから目的地への到達の困難度合いに応じた追加コストをそれぞれ算出する(ステップS70)。こうして追加コストを算出したら、各道路に対して予め設定されたリンクコストと算出した追加コストとに基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する。このようにしたので、目的地周辺の道路から目的地へ到達するのが困難な場合においても、適切な推奨経路を探索することができる。
【0042】
(2)制御部10は、目的地と各目的地対応地点とをそれぞれつなぐ線分を地図上に設定し(ステップS40)、各線分の長さを算出する(ステップS50)と共に、各線分が地図上で通る地図要素の種類を検出する(ステップS60)。ステップS70では、この各線分の長さと、各線分が地図上で通る地図要素の種類とに基づいて、追加コストを算出するようにした。これにより、各目的地対応地点に対して、そこから目的地への到達の困難度合いに応じた適切な追加コストを容易かつ確実に算出することができる。
【0043】
−第2の実施の形態−
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。既に説明した第1の実施の形態では、目的地と目的地対応地点とをつなぐ各線分が地図上で通る地図要素の種類に応じて、式(1)の到達係数Kの値を決定し、追加コストを算出する例を説明した。これに対し、以下に説明する第2の実施の形態では、地図データに含まれる各種施設等について、その各方向に対する基準係数を地図データにおいて予め設定しておき、これを用いて到達係数Kの値を決定する例を説明する。
【0044】
図5は、図2の地図例において施設20を目的地に設定した場合の本実施形態による推奨経路の探索方法を示している。ここでは図5に示すように、施設20から東西南北の各方向に対して、K=50、K=0、K=80、K=0の各基準係数が地図データにおいてそれぞれ設定されているとする。なお、これらの各基準係数は、施設20から見て障害物が存在する方向に対しては、その障害物の種類に応じた値が予め設定される。たとえば、河川23が存在する北方向には基準係数K=0が設定されている。
【0045】
ナビゲーション装置1は、以上説明した各基準係数と、線分33、34が施設20の位置30からそれぞれ延びる方向とに基づいて、線分33、34に対して到達係数Kの値をそれぞれ決定する。たとえば、線分33、34にそれぞれ最も近い方向の基準係数の値をそのまま到達係数Kとして用いることができる。この場合、線分33の方向は北方向に最も近いため、線分33に対してはK=0が到達係数Kの値として用いられる。一方、線分34の方向は南方向に最も近いため、線分34に対してはK=80が到達係数Kの値として用いられる。
【0046】
あるいは、東と南の間の方向に向かって延びる線分34については、その2方向の基準係数を重み付けして加算することで到達係数Kの値を決定してもよい。すなわち、線分34の方向はやや南寄りの南東方向であるため、南方向の基準係数Kに対する重み付けを東方向の基準係数Kよりもやや大きくしてこれらを加算することで、線分34に対する到達係数Kの値を算出する。これにより、たとえば線分34に対する到達係数Kの値は、0.6K+0.4K=68と算出される。なお、線分33はほぼ真北方向に向かって延びているため、線分33については、北方向の基準係数Kに対する重み付けが1となり、他の方向の基準係数に対する重み付けは0となる。したがって、前述の場合と同様に到達係数Kの値は0である。
【0047】
ナビゲーション装置1は、以上説明したようにして線分33、34に対してそれぞれ決定される到達係数Kの値を前述の式(1)において用いることで、目的地対応地点31の追加コストCと、目的地対応地点32の追加コストCとを算出することができる。追加コストC、Cを算出したら、第1の実施の形態と同様にして、出発地から目的地である施設20までの推奨経路を探索する。
【0048】
以上説明したような本実施形態による推奨経路の探索方法を実現するための処理のフローチャートを図6に示す。このフローチャートは、ナビゲーション装置1において制御部10により実行されるものである。なお、図4に示した第1の実施形態による処理フローと同じ処理ステップは、図6のフローチャートでも共通のステップ番号としている。
【0049】
ステップS10〜S50では、図4で説明した第1の実施の処理と同じ内容の各処理をそれぞれ実行する。続くステップS61において、制御部10は、上記で説明したような方法により、ステップS40で設定した各線分の方向に応じた到達係数をそれぞれ決定する。すなわち、ステップS10で目的地として設定した施設等の各方向に対して予め設定された基準係数と、各線分が当該施設等から延びる方向とに基づいて、各線分に対して目的地への到達係数をそれぞれ決定する。
【0050】
ステップS70において、制御部10は、各目的地対応地点に対する追加コストの算出を行う。ここでは、ステップS50で算出した各線分の長さと、ステップS60で決定した各線分に対する目的地への到達係数とに基づいて、たとえば式(1)を用いることにより、各目的地対応地点に対する追加コストをそれぞれ算出する。こうして算出した追加コストに基づいて、制御部10はステップS80において推奨経路の探索を行い、図6のフローチャートを終了する。
【0051】
以上説明した本発明の第2の実施の形態によれば、ナビゲーション装置1の制御部10は、目的地と各目的地対応地点とをそれぞれつなぐ線分を地図上に設定し(ステップS40)、目的地の各方向に対して予め設定された基準係数と、各線分が目的地からそれぞれ延びる方向とに基づいて、各線分に対して目的地への到達係数をそれぞれ決定する(ステップS61)。ステップS70では、各線分の長さと、ステップS61で決定した目的地への到達係数とに基づいて、追加コストを算出する。こうして算出された追加コストを用いて出発地から目的地までの推奨経路を探索するようにしたので、第1の実施の形態と同様に、目的地周辺の道路から目的地へ到達するのが困難な場合においても、適切な推奨経路を探索することができる。
【0052】
さらに本発明の第2の実施の形態によれば、地図上の各施設等について方向ごとの基準係数を地図データにおいて予め設定しておくこととしたので、目的地に対応する各目的地対応地点について、そこから目的地への到達の困難度合いに応じた適切な追加コストを容易かつ確実に算出することができる。特に、地図には通常表されていない地形の高低差や囲いなどの障害物についても、その障害物に応じた追加コストを算出することができる。
【0053】
−変形例−
以上説明した各実施の形態によるナビゲーション装置1は、次のように変形することもできる。
【0054】
(変形例1)図4、6のステップS70において、前述の式(1)以外を用いて追加コストを算出してもよい。各目的地対応地点について、そこから目的地への到達の困難度合いに応じた追加コストを算出できるのであれば、どのような方法で追加コストを算出してもよい。
【0055】
(変形例2)図4、6のステップS30において、目的地から最も近い各対象道路上の地点とは異なる地点を目的地対応地点に設定してもよい。たとえば、目的地と対象道路との間に障害物が存在しており、目的地より所定範囲内にその障害物を通過するための施設(障害物通過施設)が設置されている場合は、当該障害物通過施設から最も近い対象道路上の地点を目的地対応地点に設定することができる。ここでいう障害物通過施設には、たとえば、河川に架けられた橋、高低差のある地形に設置された階段、垣根や塀等の囲いに設けられた出入口、鉄道や道路を通過するための歩道橋、地下通路、踏切、横断歩道などが該当する。これらの障害物通過施設が目的地より所定範囲内に存在していれば、そこから最も近い対象道路上の地点を目的地対応地点として設定することができる。なお、こうして障害物通過施設に対して設定された目的地対応地点については、その障害物通過施設の種類に応じて式(1)の到達係数Kの値を決定することが好ましい。あるいは、目的地から最も近い各対象道路上の地点と、目的地より所定範囲内にある障害物通過施設から最も近い各対象道路上の地点とを、それぞれ目的地対応地点に設定してもよい。
【0056】
(変形例3)図5では施設20に対して東西南北の各方向にそれぞれ基準係数が設定されている例を示したが、基準係数を設定する方向はこれに限定されない。任意の方向に対して基準係数を設定し、地図データに記録しておくことができる。
【0057】
なお、以上説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
1:ナビゲーション装置、10:制御部、11:振動ジャイロ、12:車速センサ、
13:HDD、14:GPS受信部、15:VICS情報受信部、16:表示モニタ、
17:スピーカ、18:入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上に目的地を設定する目的地設定手段と、
前記目的地の周辺の道路の中から複数の対象道路を選択する道路選択手段と、
前記道路選択手段により選択された各対象道路上に前記目的地に対応する目的地対応地点をそれぞれ設定する目的地対応地点設定手段と、
前記目的地対応地点設定手段により設定された各目的地対応地点に対して、そこから前記目的地への到達の困難度合いに応じた追加コストをそれぞれ算出する追加コスト算出手段と、
各道路に対して予め設定されたリンクコストと、前記追加コスト算出手段により算出された追加コストとに基づいて、出発地から前記目的地までの推奨経路を探索する経路探索手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記目的地と前記各目的地対応地点とをそれぞれつなぐ線分を前記地図上に設定する線分設定手段をさらに備え、
前記追加コスト算出手段は、前記線分設定手段により設定された各線分の長さと、前記各線分が前記地図上で通る地図要素の種類とに基づいて、前記追加コストを算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記目的地と前記各目的地対応地点とをそれぞれつなぐ線分を前記地図上に設定する線分設定手段と、
前記目的地の各方向に対して予め設定された基準係数と、前記線分設定手段により設定された各線分が前記目的地からそれぞれ延びる方向とに基づいて、前記各線分に対して前記目的地への到達係数をそれぞれ決定する到達係数決定手段とをさらに備え、
前記追加コスト算出手段は、前記線分設定手段により設定された各線分の長さと、前記到達係数決定手段により決定された前記目的地への到達係数とに基づいて、前記追加コストを算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記目的地対応地点設定手段は、前記目的地から最も近い前記各対象道路上の地点、および/または前記目的地より所定範囲内にある障害物通過施設から最も近い前記各対象道路上の地点を、前記目的地対応地点に設定することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−98178(P2012−98178A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246582(P2010−246582)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】