説明

ナビゲーション装置

【課題】 充電時間の短縮を図り、目的地までの到達時間を短縮する「ナビゲーション装置」を提供する。
【解決手段】 本発明のナビゲーション装置は、バッテリーの残量を検出する残量検出部50と、目的地までの経路を探索する経路探索プログラムとを備える。経路探索プログラムはさらに、検出されたバッテリー残量から自車が走行可能な距離を算出する走行距離算出部130と、走行可能距離と目的地までの走行距離とを比較し、目的地に到達するためにはバッテリーの充電が必要か否かを判定する充電判定部140と、バッテリーの充電が必要であると判定された場合に、走行可能距離内にある充電スタンドを選択する充電スタンド選択部160と、選択された充電スタンドを経由地とする目的地までの経路を決定するルート決定部170とを有する。充電判定部140はさらに、充電スタンドが選択された場合に、急速充電可能な充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づき充電が必要か否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、特に、バッテリーを動力源に利用した電気自動車用のナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン等の燃料を動力源に用いた自動車用のナビゲーション装置では、ガソリンスタンドを経由地に設定したり、自車位置周辺のガソリンスタンドを検索する機能を備えている。一方、電気自動車は、バッテリーの性能上、一回の充電による走行距離がガソリン車と比べて短く、長距離を走行しようとする場合には、何回もバッテリーの充電を行わなければならない。従って、電気自動車用のナビゲーション装置では、バッテリーの充電を考慮した経路探索や経路案内をすることが望まれる。
【0003】
特許文献1は、電気自動車の航続力を考慮して目的地までの最適な経路探索をするナビゲーション装置を開示している。特許文献1は、バッテリーが満充電状態に近いほど時間当たりの充電量(充電可能電力量)が小さく、空状態に近いほど時間当たりの充電量が多いことに着目し、できる限りバッテリーが空状態に近くなるまで走行してから満充電で走行させ、充電の間隔をできるだけ長くし、目的地までの充電回数を減らすように、充電ステーションを選択するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−170293号公報(段落0010および図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電気自動車に用いられるバッテリーの充電特性は、ある充電率までは急速充電が可能であり、それを越える充電には、比較的長い時間がかかる。図1は、超高速充電器を用いて充電可能なバッテリーの充電特性を示すグラフである。こうしたバッテリーでは、例えば、充電率70%までは約5分で急速充電することができ、充電率70%から100%までの充電には数時間またはそれ以上の時間を要する。これは、充電率70%までは大電流による急速充電が行われ、70%以上は、バッテリーを保護するために小電流による充電が行われることによる。特許文献1のナビゲーション装置は、できる限りから状態近くまで走行してからバッテリーを満充電したときの走行可能な距離内の充電スタンドを選択する手法を用いるため、1回のバッテリー充電に要する時間が長くなり、結果的に目的地までの到達時間も長くなってしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決し、充電時間の短縮を図り、目的地までの到達時間を短縮するナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るナビゲーション装置は、移動体の動力源に利用されるバッテリーの残量を検出する残量検出手段と、目的地までの経路を探索する経路探索手段と、経路探索手段により探索された経路を提示する提示手段とを備え、前記経路探索手段はさらに、前記残量検出手段により検出されたバッテリー残量から自車が走行可能な距離を算出し、当該走行可能な距離と目的地までの探索経路の距離とを比較し、目的地に到達するためにはバッテリーの充電が必要か否かを判定する判定手段と、前記判定手段によりバッテリーの充電が必要であると判定された場合に、充電スタンドを選択する選択手段と、前記選択手段で選択された充電スタンドを経由地とする目的地までの経路を決定する決定手段とを有し、前記判定手段はさらに、前記選択手段により充電スタンドが選択された場合に、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づきバッテリーの充電が必要か否かを判定する。
【0008】
好ましくは前記選択手段は、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づき充電スタンドを選択する。好ましくは前記急速充電が可能となる充電率は、予め決め設定される。好ましくは前記急速充電が可能となる充電率は、ユーザ入力により設定される。好ましくは前記選択手段は、複数の充電スタンドの候補があるとき、急速充電に対応している充電スタンドと急速充電に対応していない充電スタンドを区別して表示し、前記選択手段は、ユーザ入力に基づき充電スタンドを選択する。
【0009】
本発明に係るナビゲーション装置が実行する経路探索プログラムは、目的地までの経路を探索するステップと、移動体の動力源に利用されるバッテリーの残量を検出するステップとを含み、前記探索するステップはさらに、検出されたバッテリー残量から自車が走行可能な距離を算出し、当該走行可能な距離と目的地までの探索経路の距離とを比較し、目的地に到達するためにはバッテリーの充電が必要か否かを判定するステップと、バッテリーの充電が必要であると判定された場合に、充電スタンドを選択するステップと、前記選択された充電スタンドを経由地とする目的地までの経路を決定するステップとを有し、前記判定するステップはさらに、充電スタンドが選択された場合に、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づきバッテリーの充電が必要か否かを判定する。
【0010】
本発明に係るナビゲーション装置が実行する経路探索方法は、目的地までの経路を探索するステップと、移動体の動力源に利用されるバッテリーの残量を検出するステップとを含み、前記探索するステップはさらに、検出されたバッテリー残量から自車が走行可能な距離を算出し、当該走行可能な距離と目的地までの探索経路の距離とを比較し、目的地に到達するためにはバッテリーの充電が必要か否かを判定するステップと、バッテリーの充電が必要であると判定された場合に、充電スタンドを選択するステップと、前記選択された充電スタンドを経由地とする目的地までの経路を決定するステップとを有し、前記判定するステップはさらに、充電スタンドが選択された場合に、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づきバッテリーの充電が必要か否かを判定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、急速充電が可能な充電率でバッテリーが充電されたときの走行可能距離に基づき充電スタンドを選択するようにしたので、充電時間の短縮が図られ、目的地までの到着時間を短縮した経路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】急速充電に対応する一般的なバッテリーの充電特性を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る経路探索プログラムの機能ブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る経路探索動作を示すフローチャートである。
【図5】本実施例の充電スタンドの選択動作を示すフローチャートである。
【図6】本実施例の急速充電可能な充電率を説明するグラフである。
【図7】本実施例による経路探索例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施例による充電スタンドの選択例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置は、好ましくは電気自動車において利用される。但し、機能切替などを行うことによって、ガソリン等を燃料とするナビゲーション装置においても適切に利用することが可能である。さらに本発明のナビゲーション装置は、車両に恒久的に取り付け可能なもの、車両に持ち込むことができるポータブルタイプのもの、スマートフォン、ノート型パソコン等の携帯型情報端末に搭載されたナビゲーション機能であることができる。
【0014】
図2は、本発明の実施例に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。本実施例のナビゲーション装置10は、ユーザインターフェースを構成する入力部20と、自車位置を算出する自車位置算出部30と、自車に搭載されているバッテリーの残量を検出する残量検出部40と、外部のネットワークやその他の電子機器と有線または無線によりデータ通信を可能とするデータ通信部50と、表示部60と、音声出力部70と、プログラムやデータ等を記憶する記憶部80と、各部を制御する制御部90とを含んで構成される。
【0015】
自車位置算出部40は、車速センサ、方位センサ、加速度センサを利用して自車の相対的な位置変化を算出するもの、およびGPS衛星からの電波を受信して自車の絶対位置等を算出するものを含む。また、自車位置算出部40は、データ通信部50を介して外部ネットワークやその他の電子機器から自車位置算出のための位置情報を取得するものであってもよい。自車位置算出部40により算出された自車位置情報は、制御部90へ提供される。
【0016】
残量検出部40は、自車に搭載された1つ若しくは複数のバッテリーの残量を検出する。例えば、車内バスを介してバッテリーの残量情報を取得することができる。取得された残量情報は、制御部90へ提供され、目的地までの経路探索時に参照される。データ通信部50は、無線LAN、公衆無線回線網、近距離無線、赤外線通信、車内バス、その他の通信手段を含み、外部との間で双方向のデータ通信を可能にする。データ通信部50を介して、自車位置周辺の道路地図データを配信サーバから受け取ることもできるし、リアルタイムな道路交通情報を配信サーバ等から受け取ることもできる。
【0017】
記憶部80は、好ましくは、ナビゲーション装置10の機能を制御するためのプログラムやデータを記憶する。1つの例では、記憶部80は、道路地図データをメモリに格納し、必要に応じて自車位置周辺の道路地図データを読出しこれを制御部90へ提供する。他の例では、記憶部80は、データ通信部50を介して自車位置周辺の道路地図データを格納し、これを制御部90へ提供する。
【0018】
また、記憶部80は、施設情報を含むことができ、施設情報は、バッテリーの充電を行うことができる充電スタンドに関する情報を含む。充電スタンドに関する情報には、位置情報(緯度、経度)、種別情報(急速充電に対応する否か)、営業時間、料金などが含まれている。この充電スタンドに関する情報は、データ通信部50を介して外部から取得するものであってもよい。充電スタンドに関する情報は、目的地までの経路を探索するときに参照される。
【0019】
制御部90が実行するプログラムは、経路探索プログラムを含み、図3に、経路探索プログラムの機能ブロック図を示す。同図に示すように、経路探索プログラム100は、目的地設定部110と、ルート探索部120と、走行距離算出部130と、充電判定部140と、充電スタンド検索部150と、充電スタンド選択部160と、ルート決定部170とを含んで構成される。これらの各部は必要な情報を相互に提供し合う。
【0020】
目的地設定部110は、入力部20を介してユーザが目的地を設定することを可能にする。目的地の設定は、施設データベースの検索や道路地図上のポインティングなどを利用して行われる。設定された目的地の情報は、ルート探索部120へ提供され、ルート探索部120は、自車位置算出部30から提供された自車位置から目的地までの最適なルートを探索する。ルート探索は、必ずしも自車位置をスタート地点とせず、ユーザが設定した位置をスタート地点としてもよい。また、最適なルートは、1つのみならず、種々の最適条件を変更して得られた複数のルート候補であってもよい。複数のルート候補が探索された場合には、この中からユーザ選択により、またはデフォルト設定により1つのルートが選択される。探索されたルートは、メモリに一時的に保存され、ルート決定部170により最終的にルートが決定される。
【0021】
走行距離算出部130は、好ましくは、目的地の設定が成されたとき、残量検出部40により検出されたバッテリーの残容量に基づき自車が走行可能な距離を算出する。走行可能な距離の算出は、単純に、バッテリーの残容量と予め用意された係数とから算出することができる。この係数は、昼間と夜間では自車の電力消費量が異なるで、異なるようにしてもよい。また、季節等によっても空調機の使用の有無等があるので、係数を異ならせてもよい。さらに、ルート探索部120で探索されたルートの高低差や道路種別などから負荷を予想し、係数を異ならせても良い。走行距離算出部130で算出された走行可能距離は、充電判定部140へ提供される。
【0022】
充電判定部140は、ルート探索部120で探索されたルート上の走行距離と、バッテリー残量から算出された走行可能距離とを比較し、目的地に到達するためには充電が必要となるか否かを判定する。もし、充電が必要であるとした場合には、当該充電は、急速充電できる充電率まで充電されるものとする。充電判定部140は、充電が必要と判定された場合には、急速充電可能な充電率までバッテリーが充電されたときの走行可能距離と、充電後の目的地までのルート上の残距離とを比較し、さらなる充電が必要になるか否かを判定する。なお、急速充電可能な充電率は、予め設定される値あるいはユーザ入力によって設定される値であり、充電率に対応する走行可能距離は一義的に決定される。急速充電可能な値は、好ましくはメモリに保存される。こうして、充電判定部140は、目的地までの探索ルートを走行する場合に、充電が必要であるか否か、必要である場合には何回の充電が必要になるかを判定する。
【0023】
充電スタンド検索部150は、充電判定部140で充電が必要と判定されたとき、施設データベースを参照して充電スタンドを検索する。これらの充電スタンドは、目的地まで走行するときの経由地候補である。検索された結果は、充電スタンド選択部160に提供される。
【0024】
充電スタンド選択部160は、検索された充電スタンドの中から、バッテリー残量から算出された走行可能距離に基づき、経由地に該当する最適な充電スタンドを選択する。この選択結果は、ルート決定部170へ提供される。ルート決定部170は、ルート探索部120で探索されたルート、および充電スタンド選択部160で選択された充電スタンドに基づき、経由地を含む最終的なルートを決定する。
【0025】
次に、本実施例の経路探索動作について図4のフローチャートを参照して説明する。入力部20から目的地に関する情報が入力されると、目的地設定部110は、入力された情報に基づき目的地の設定を行う(S101)。開始地点は、自車位置またはユーザにより指定された地点であるが、ここでは便宜上、自車位置を開始地点とする。
【0026】
次に、ルート探索部120は、自車位置から目的地までの経路を探索する(S102)。探索される経路は、距離優先、時間優先、高速道路優先などの条件に従い複数の候補が探索されてもよく、複数の候補が探索された場合、ユーザは、いずれか1つの経路を選択することができる。ルート探索部120で1つの経路が選択されると、次に、走行距離算出部130は、残量検出部40からバッテリーの残容量の情報を受け取り、当該残容量に基づき自車が走行可能な走行可能距離Baを算出する(S103)。
【0027】
次に、充電判定部140は、走行距離算出部130で算出された走行可能距離Baと、選択された経路を走行するときの目的地までの距離Dとを比較し(S104)、自車が目的地に到達するのに充電が必要か否かを判定する(S105)。目的地までの距離Dが走行可能距離Baよりも大きいとき(D>Ba)、充電が必要であると判定され、その反対に走行可能距離Baが目的地までの距離Dよりも大きいとき(Ba>D)、充電が不要であると判定される。充電が不要であると判定された場合には、ルート決定部170は、ルート探索部120で探索または選択された経路を最終経路に決定し(S106)、最終決定された経路を表示部60および/または音声出力部70に提示する。以後、最終経路に基づく経路案内が開始される(S109)。
【0028】
一方、充電が必要であると判定された場合には、充電を行うための充電スタンドが経由地として選択され(S107)、ルート決定部170は、選択された充電スタンドを経由地に含む経路を最終経路と決定し(S108)、この最終経路を表示部60および/または音声出力部70に提示し、以後、最終経路に基づく経路案内が開始される。
【0029】
次に、充電スタンドを経由地に選択する方法について図5のフローチャートを参照して説明する。図4のステップS105において、充電判定部140により充電が必要であると判定されると(S201)、充電スタンド検索部150は、施設データベースを参照しそこから充電スタンドを検索する(S202)。次に、充電スタンド選択部160は、走行可能距離Ba内であって、選択された経路上に存在するもしくは経路から近接する充電スタンドを選択する(S203)。複数の充電スタンドが存在する場合には、それらを道路地図上に表示し、いずれかの充電スタンドをユーザに選択させるようにしてもよいし、最適な充電スタンド、例えば、経路からもっとも近い充電スタンドを自動的に選択するようにしてもよい。
【0030】
経由地としての充電スタンドが選択されると、次いで、充電判定部140は、目的地までの経路上の残距離(D−Ba’)と、急速充電可能な充電率までバッテリーが充電されたときの走行可能距離Bcとを比較し(S204)、さらなるバッテリーの充電が必要か否かを判定する(S205)。ここで、Ba’は、自車位置から選択された充電スタンドまでの距離(Ba’<Ba)である。充電判定部140は、(D−Ba’)>Bcであるとき、さらなる充電が必要であると判定し、(D−Ba’)<Bcであるとき、充電が不要であると判定する。ステップS203からステップS205のサブリーチンは、充電が不要と判定されるまで繰り返される。バッテリーの充電が必要でないと判定されると、ルート決定部170は、選択された1つもしくは複数の充電スタンドを経由地に含む最終経路を決定する(S206)。
【0031】
次に、急速充電可能な充電率について説明する。図6は、典型的なバッテリーの充電特性を示し、横軸が時間、縦軸が充電率である。バッテリーの充電は、その特性上、一定の充電率Sまではほぼ線形な急速充電が行われ、充電率Sを越えると、充電速度が徐々に低下し、受電率100%に近づく漸近線となる。つまり、充電率Sまでの充電時間Taは、比較的短時間であるが、充電率Sから100%までの充電時間Tbは、比較的長い時間となる。充電率Sは、好ましくは、バッテリーを充電する充電施設側の仕様に応じて決定することができ、例えば、充電施設において充電電流が大電流から小電流に切り換えられるときの充電率とすることができる。あるいは、バッテリーの特性から、充電率Sが一定の値に決定されてもよい。例えば、バッテリーの特性から、充電率Sは、70%あるいは80%と定義されてもよい。
【0032】
好ましい態様では、充電判定部140は、充電率Sと充電時間Taとの線形関係を示す急速充電情報を記憶する。また、充電判定部140は、充電率Sに対応する走行可能距離Bcを記憶し、あるいは一定の計算式から走行可能距離Bcを算出するようにしてもよい。また、急速充電可能な充電率Sは、充電施設の仕様やバッテリーの特性に応じて異なることが予想される。例えば、ある充電施設では、充電率80%を充電時間10分で急速充電を行うものであったり、他の充電施設では、充電率70%を充電時間5分で急速充電行うものもある。これに対処するため、充電判定部140が記憶する急速充電情報は、入力部20を介してユーザが変更することができるようにすることが望ましい。この場合、ユーザは、充電率Sと充電時間Taと急速充電情報として入力する。
【0033】
次に、本実施例による経路探索例を従来の方法と比較して説明する。図7(a)は、特許文献1に開示される方法で経路探索を行った例を示している。ここで、図1に示すようにバッテリーの急速充電可能な充電率を70%、自車位置から目的地までの距離Dを208Km、自車のバッテリー残容量を50%、残容量が50であるときの走行可能距離Baを80Kmとしている。
【0034】
特許文献1では、できる限りバッテリーが空状態になるまで走行してから満充電で走行させるものである。その結果、自車の走行可能距離Baが80Kmであるため、おおよそ80Kmを走行した状態で充電施設Aが経由地に選択される。そして、充電施設Aから目的地までの残距離が128Kmであり、この距離を走行するためには、少なくともバッテリーを80%まで充電させる必要がある。80%の充電率は、急速充電可能な充電率70%を越え、80%の充電に必要な時間は、約30分(図1を参照)となる。その結果、自車位置から目的地までの合計旅行時間(走行時間60分+充電時間30分+走行時間96分)は、186分となる。
【0035】
上記と同様の条件で、本実施例による経路探索を行った結果を図7(b)に示している。特許文献1のときと同様に、自車位置からの走行可能距離Baの範囲で、充電施設Aが選択される。本実施例では、急速充電可能な充電率までの充電しか行わないため、充電施設Aでは、充電率70%の充電が行われ、その充電時間は5分である(図1を参照)。次に、充電率70としたときの走行可能距離Bcは112Kmであるため、目的地までの残距離126Kmを走行することができないので、もう1回の充電が必要であると判定される。このため、走行可能距離Bcの範囲内で次の充電施設Bが選択される。充電施設Bから目的地までの残距離は16Kmであり、これは走行可能距離Bcの範囲内であるため、次の充電は不要であると判定される。図の例では、残距離16Kmを走行するためには、10%の充電が必要であり、その充電時間に1分を要することを示している。その結果、自車位置から目的地までの合計旅行時間(走行時間60分+充電時間5分+走行時間84分+充電時間1分+走行時間12分)は、162分となり、特許文献1よりも24分到着時間を短縮することができる。
【0036】
このように、本実施例では、急速充電可能な充電率を上限にバッテリーを充電することを前提として、経由地である充電スタンドを選択するようにしたので、充電時間を短縮することができ、その結果、目的地までの旅行時間を短縮した最適な経路を提供することができる。なお、上記の例では、残距離16Kmに合わせて、充電施設Bにおけるバッテリーの充電率を10%としたが、この充電率は70%まで行うものであってもよい。その場合でも、合計旅行時間は、特許文献1の方法に比べて十分に短縮される。
【0037】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、施設データに含まれる充電スタンドに関する情報において、急速充電に対応する充電スタンドであれば、フラグ「1」を設定し、急速充電に対応していない充電スタンドであれば、フラグ「0」を設定する。このようなフラグを設定することにより、充電スタンドを検索するとき、フラグ「1」に該当する充電スタンドのみを検索することができ、検索速度を向上させることができる。また、実際に経由地である充電スタンドに立ち寄った際に、急速充電をすることができない事態を未然に防止することができる。他方、本実施例にいうような急速充電可能な充電率でバッテリーを充電することを望まない場合には、フラグ「0」、「1」の双方の充電スタンドが検索されるようにしてもよい。
【0038】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図5のステップS203において、走行可能距離内に該当する複数の充電スタンドが存在し、いずれかの充電スタンドをユーザに選択させる場合、表示部60には、図8に示すような道路地図上に複数の充電スタンドを表示される。道路地図上には、誘導経路Yと、複数の充電スタンド200、210が表示されるが、第3の実施例では、急速充電に対応する施設とそうでない施設とがユーザによって認識されるようにする。同図において、充電スタンド200は、急速充電に対応する施設を示しており、充電スタンド210は、急速充電に対応していない施設を示している。ユーザは、急速充電可能か否かを確認し、入力部20から所望の充電スタンドを選択する。これにより、ユーザは、急速充電に対応する充電スタンド200を容易に選択することができる。また、変形例として、急速充電に対応していない充電スタンド210は、表示しないようにしても良く、その表示/非表示は、ユーザ設定で行うようにしてもよい。
【0039】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。本実施例では、バッテリーが急速充電可能な充電率まで充電されることを前提に、充電スタンドを経由地に含む経理探索を行うものであるが、そのようなことがユーザに認識されていない場合がある。つまり、ユーザは、100%のバッテリーの充電を想定していることがある。そこで、第4の実施例では、最終決定された経路を提示するとき、または、誘導案内において経由地である充電スタンドに到着したとき、バッテリーは、急速充電可能な充電率で充電されることを通知する。これにより、ユーザは、バッテリーを満充電することなく、想定された急速充電を行うことを認識させられる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
100:経路探索プログラム 110:目的地設定部
120:ルート探索部 130:走行距離算出部
140:充電判定部 150:充電スタンド検索部
160:充電スタンド選択部 170:ルート決定部170
200:急速充電可能な充電スタンド 210:急速充電不可能な充電スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の動力源に利用されるバッテリーの残量を検出する残量検出手段と、
目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
経路探索手段により探索された経路を提示する提示手段とを備え、
前記経路探索手段はさらに、
前記残量検出手段により検出されたバッテリー残量から自車が走行可能な距離を算出し、当該走行可能な距離と目的地までの探索経路の距離とを比較し、目的地に到達するためにはバッテリーの充電が必要か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によりバッテリーの充電が必要であると判定された場合に、充電スタンドを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された充電スタンドを経由地とする目的地までの経路を決定する決定手段とを有し、
前記判定手段はさらに、前記選択手段により充電スタンドが選択された場合に、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づきバッテリーの充電が必要か否かを判定する、ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記選択手段は、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づき充電スタンドを選択する、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記急速充電が可能となる充電率は、予め決め設定される、請求項1または2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記急速充電が可能となる充電率は、ユーザ入力により設定される、請求項1または2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記選択手段は、複数の充電スタンドの候補があるとき、急速充電に対応している充電スタンドと急速充電に対応していない充電スタンドを区別して表示し、前記選択手段は、ユーザ入力に基づき充電スタンドを選択する、請求項1ないし4いずれか1つに記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
ナビゲーション装置が実行する経路探索プログラムであって、
目的地までの経路を探索するステップと、
移動体の動力源に利用されるバッテリーの残量を検出するステップとを含み、
前記探索するステップはさらに、
検出されたバッテリー残量から自車が走行可能な距離を算出し、当該走行可能な距離と目的地までの探索経路の距離とを比較し、目的地に到達するためにはバッテリーの充電が必要か否かを判定するステップと、
バッテリーの充電が必要であると判定された場合に、充電スタンドを選択するステップと、
前記選択された充電スタンドを経由地とする目的地までの経路を決定するステップとを有し、
前記判定するステップはさらに、充電スタンドが選択された場合に、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づきバッテリーの充電が必要か否かを判定する、経路探索プログラム。
【請求項7】
ナビゲーション装置が実行する経路探索方法であって、
目的地までの経路を探索するステップと、
移動体の動力源に利用されるバッテリーの残量を検出するステップとを含み、
前記探索するステップはさらに、
検出されたバッテリー残量から自車が走行可能な距離を算出し、当該走行可能な距離と目的地までの探索経路の距離とを比較し、目的地に到達するためにはバッテリーの充電が必要か否かを判定するステップと、
バッテリーの充電が必要であると判定された場合に、充電スタンドを選択するステップと、
前記選択された充電スタンドを経由地とする目的地までの経路を決定するステップとを有し、
前記判定するステップはさらに、充電スタンドが選択された場合に、急速充電が可能となる充電率でバッテリーが充電されたと仮定したときの走行可能距離に基づきバッテリーの充電が必要か否かを判定する、経路探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−15424(P2013−15424A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148751(P2011−148751)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】