説明

ナビゲーション装置

【課題】広域地図画面中の子画面として表示された拡大地図を高速で任意に移動させる。
【解決手段】ナビゲーション装置は、広域地図を示す広域地図画面を表示するとともに、広域地図の一部の領域を拡大した部分拡大地図を示す拡大地図画面を、一部の領域の表示位置で広域地図画面に重畳して表示する地図表示手段と、拡大地図画面の移動に関する速度を算出する速度算出手段と、広域地図を拡大した詳細地図のベクトルデータに基づき、広域地図のうちの一部の領域を含む所定領域を拡大した拡大地図を生成する拡大地図生成手段と、移動に関する速度が基準速度以上のときは、広域地図の一部の領域を部分拡大地図として選択し、移動に関する速度が基準速度未満のときは、拡大地図のうちで、一部の領域に対応する領域を部分拡大地図として選択する選択手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域地図画面上の一部に表示された詳細画面を任意に移動させることが可能な、ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広域地図表示画面の中に子画面を表示し、その子画面にその表示位置の拡大された詳細地図を表示する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。その装置によれば、上記子画面は表示画面中を移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−72233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の装置は、子画面の表示位置を指の動きに追従して移動させようとすると、子画面が移動中には子画面の拡大地図の表示内容が更新されず、移動中の拡大地図を確認することができない。従って、地図上の目標物を探すために子画面を移動させる場合、移動した後に子画面を止めて表示内容を確認し、目標物が表示されなければまた子画面の位置を移動して停止した後、子画面の表示内容が更新されてから再度確認するという操作を繰り返し行う必要がある。従って、目標とする移動先に子画面をスムーズに移動できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のナビゲーション装置は、広域地図を示す広域地図画面を表示するとともに、広域地図の一部の領域を拡大した部分拡大地図を示す拡大地図画面を、一部の領域の表示位置で広域地図画面に重畳して表示する地図表示手段と、拡大地図画面の移動に関する速度を算出する速度算出手段と、広域地図を拡大した詳細地図のベクトルデータに基づき、広域地図のうちの一部の領域を含む所定領域を拡大した拡大地図を生成する拡大地図生成手段と、移動に関する速度が基準速度以上のときは、広域地図の一部の領域を部分拡大地図として選択し、移動に関する速度が基準速度未満のときは、拡大地図のうちで、一部の領域に対応する領域を部分拡大地図として選択する選択手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、子画面が所定の速度を越えた速度で移動中は、広域地図の画像を拡大して表示するので、子画面に表示される拡大地図の範囲を確認しつつ子画面を移動させることができる。広域地図の画像の拡大処理はベクトル地図生成処理に比べて高速処理が可能なため、子画面の高速移動を可能としている。また、子画面が目標とする場所に近づいて、その移動速度が所定値よりも小さくなると、詳細情報の表示が可能なベクトル地図による生成画像が表示されるため、目標物の確認を行うことが可能になる。この方法により、子画面の表示位置をスムーズに目標とする場所に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態に係るナビゲーション装置の機能的な構成を示した図である。
【図2】子画面の移動中の表示例を示した図である。
【図3】子画面を表示することで広域地図画面にも子画面にも表示されない領域を説明する図である。
【図4】子画面の表示を開始する時の表示例を示した図である。
【図5】拡大地図表示機能の詳細を示したブロック図である。
【図6】拡大地図を表示する処理フローである。
【図7】子画面の移動速度を判定する閾値の処理フローである。
【図8】子画面を任意の形状にするための変形例の機能ブロック図である。
【図9】子画面を任意の形状にするための変形例の処理フローである。
【図10】広域地図をスクロールする時の子画面表示を行う変形例の機能構成図である。
【図11】広域地図をスクロールする時の子画面表示を行う変形例の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施の形態に係るナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
一般的なナビゲーション装置の画面は、紙による地図に比べて表示面積が小さいため、詳細でかつ広範囲の地図を表示することが苦手である。そこで、これまでは表示画面を2分割して広域地図と詳細地図を同時に表示する方法が採られてきた。しかしこの方法では詳細地図と広域地図の対応関係が直感的に分かりづらく、また、それぞれの表示面積の大きさが自由に変更できないという課題があった。そこで本発明は、広域地図の表示画面の中に、詳細地図を子画面で表示し、その子画面を広域地図表示画面中の任意の位置に自由にしかも高速で移動できる方法とした。当該ナビゲーション装置は、上記表示画面に装着されたタッチパネル等が検知した指の高速な動きに追従して、上記子画面の表示位置を変更できるものである。このようにすることによって、広域地図画面と詳細画面の位置関係が直感的で分かりやすく、しかも、子画面の位置を自由で高速に移動できるため、任意の地点で広域地図と詳細地図の表示を変更することが可能となる。ここで、広域地図とは表示画面に表示される地図のことであり、表示画面内の子画面で表示される詳細地図の縮尺よりも広域縮尺になっている状態を示すものである。
【0010】
図1は、本発明を実施するためのナビゲーション装置の機能構成図を示したものである。ナビゲーション装置5は、広域地図を示す広域地図表示画面(広域地図画面)中に、子画面として、その広域地図のうちの一部の領域の詳細な部分拡大地図を示す拡大地図画面を表示し、その子画面は広域地図の表示画面(広域地図画面)の中を任意に移動することが可能であり、以下の構成から成る。広域地図を表示するための構成として、ベクトルデータで表現される広域地図データ40、そのデータを用いて地図を生成する広域地図生成処理部50、その生成結果をラスタデータで保存する広域地図生成バッファ60、広域地図と詳細地図の表示を合成する重ね合わせ処理部70、その合成結果を保存するフレームバッファ80、そのフレームバッファ80のデータに基づき、後述する広域地図画面95と子画面97とを表示画面に表示させる表示処理部90を持つ。
【0011】
子画面を表示する場合、子画面が高速で移動すれば、拡大地図生成処理部101のベクトル生成処理が子画面の移動に間に合わない恐れがある。そこで本発明では、子画面が所定の速度よりも高速で移動する場合は、広域地図生成バッファ60に生成されているラスタ地図を拡大して表示することにより、指の動きに子画面が追従できるようにしている。そのための拡大地図表示処理部10の構成として、タッチパネル等のセンサが感知した操作が拡大地図を移動させることを検知する拡大地図画面移動検出処理部20、その検出結果に基づいてベクトルデータから成る詳細地図データ30を用いて拡大地図を生成する拡大地図生成処理部101、広域地図生成バッファ60の一部のラスタ画像を拡大するラスタ画像拡大処理部102、拡大地図画面移動検出処理部20が検出した子画面の移動の際の子画面の移動速度を算出する底度算出処理部103、拡大地図生成処理部101が生成した詳細な地図とラスタ画像拡大処理部102が拡大した地図を上記速度算出処理部103の結果に応じて選択する選択処理部104から成る。
【0012】
図2は、広域地図を表示した広域地図画面95の中の一部の領域の表示位置において、広域地図画面95に重畳して表示される子画面(拡大地図画面)97の表示例である。ユーザが子画面97に接触した指96を動かすことにより指96の接触位置を広域地図画面95の中で変化させると、その指96の動きに追従して子画面97が移動する。拡大地図画面移動検出処理部20はこの子画面97の移動を検出する。高速で移動中の子画面97−1には広域地図生成バッファ60のラスタ画像の拡大図が表示される。その後、移動速度が遅くなった子画面97−2では拡大地図生成処理部101が生成した詳細な地図が表示される。
【0013】
ところで、広域地図画面の中に子画面が表示されると、子画面と広域地図画面の両方に表示されない領域が生じる。図3は、広域地図画面95に表示されない部分が存在することを説明するための図であり、画面を断面から見たものである。実際には子画面97が浮いている訳ではないが、ここでは表示されない部分を強調するために、子画面97が浮いた図にしている。表示されない領域が生じる理由は、子画面の縮尺が広域地図画面よりも詳細縮尺であるために、子画面97で表示できる地図領域と、子画面の後ろになる広域地図画面95が示す広域地図領域に違いが生じるためである。子画面の詳細度を上げると(広域地図と詳細地図の縮尺の差が大きくなると)、表示されない領域が増えてしまう。この結果、子画面の移動先の周辺が見えなくなり、子画面の移動先の目標がつけにくくなる。そこで、子画面97の移動先とする目標位置を素早く見つけるために、本発明では、子画面97の移動速度が所定の速度以下になり子画面97の移動が停止する前に、広域地図生成バッファ60のラスタ画像の拡大地図から、詳細地図データ30のベクトルデータを生成した地図に切り替える。こうすることにより、子画面97を高速で移動させる必要がある時は、ラスタ画像拡大処理によって拡大した広域地図の画像の表示で拡大地図の表示範囲が明示され、子画面97の移動速度が遅くなると子画面97には詳細な情報が表示されて、子画面97の移動先の目標を見つけやすくすることができる。
【0014】
図4は、拡大地図の表示を開始する時の操作例である。拡大地図を表示する前は、図4(a)のように、画面上の操作ボタン98の表示が「拡大図ON」となっており、指96でここを触る。次に、拡大地図を表示させたい場所を触ると、図4(b)のように、その場所の子画面97が、その場所に表示され、操作ボタン98の表示が「拡大図OFF」に変更される。この時、拡大地図生成処理部101が、拡大地図の生成を開始する。その生成が終了するまで時間がかかる場合は、ラスタ画像拡大処理部102が広域地図生成バッファ60内のその場所の画像を拡大して表示し、その後、拡大地図生成処理部101の生成が終了したら図4(c)のように、その生成画像に切り替える。これにより、操作が開始されてから拡大地図を表示するまでの時間が短縮されるため、操作性が向上する。子画面97の表示を終了する場合は、操作ボタン98の「拡大図OFF」を触る。
【0015】
図5は、拡大地図表示処理部10の詳細な機能構成図を示したものである。拡大地図領域管理処理部105は、表示画面内の位置と地理座標との対応を管理する。地理座標とは例えば緯度経度や、地図のメッシュ番号とそのメッシュ内のXY座標等のように、地理上の点を一意に決めるものである。拡大地図画面移動検出処理部20は、拡大地図の表示開始位置や拡大地図画面の移動量を地理座標で出力する。移動量とは、例えば1/30秒間隔で指96の動きを検出し、その1/30秒間の指96の移動量を地理座標に変換する。これは、広域地図生成処理部50が生成した広域地図の縮尺で表示される地理座標の範囲を表示画面の画素数で除算すれば、1画素当たりの地理座標間隔が求まるため、指96の動いた画素数に上記の1画素当たりの地理座標間隔を乗算することで求まる。
【0016】
拡大地図生成処理部101は、拡大地図領域管理処理部105が出力した地理座標の拡大地図を詳細地図データ30のベクトルデータを用いて、拡大率設定処理部35が設定した拡大率106に従って拡大地図を生成する。その生成されたデータはラスタデータとして拡大地図生成バッファ109に格納されることとしてもよい。選択処理部104が拡大地図生成処理部101により生成された拡大地図データを選択する際には、選択処理部104がその拡大地図データを直接選択してもよいが、後述するように、選択処理部104が、生成バッファ109に格納されているラスタデータを選択することとしてもよい。以下の説明では、拡大地図生成処理部101により生成された拡大地図データはラスタデータとして拡大地図生成バッファ109に格納されることとして説明する。上記拡大地図生成バッファ109のサイズは、上記子画面97の表示範囲を含んで子画面97の表示範囲よりも大きく、かつ表示画面サイズ以下の所定領域を拡大した拡大地図のデータ量に対応したサイズが望ましい。子画面97の移動速度が所定の速度以下になった時に上記拡大地図生成処理部が拡大地図の生成を開始するため、その生成処理を行っている間も子画面97の移動が続いている。従って生成を開始した時と子画面97が停止した時の位置がずれている。このずれの範囲を含めて拡大地図生成バッファ109に拡大地図が生成されていることが必要だからである。しかし、拡大地図生成バッファ109は、大きすぎると生成処理時間が大きくなってしまうため、子画面97が停止するまでに生成が終了しない恐れが出てくる。
【0017】
拡大地図画面表示領域はみ出し検出処理部107と拡大地図画面位置管理処理部108は、子画面97の表示が開始された時や移動した結果、その子画面97で表示する領域が拡大地図生成バッファ109に生成されている拡大地図の領域(上述した所定領域)からはみ出すかどうかを検出する。この領域判定も地理座標を用いて行う。すなわち、子画面97が移動した後の領域(広域地図の一部の領域が変更された後の領域)が拡大地図生成バッファ109に生成されている地理座標の領域に包含されていれば、はみ出しは「なし」として判定することができる。もし、はみ出しが検出されたら、拡大地図生成処理部101が当該領域の拡大地図の生成を開始し、その生成期間中は、ラスタ画像拡大処理部102が当該領域のラスタデータを広域地図生成バッファ60から読み出して拡大処理し、ラスタ拡大バッファ110に格納する。その結果は、選択処理部104で選択され、重ね合わせ処理部70で子画面97として広域地図を示す広域地図画面95と合成処理され表示画面に表示される。この状態は図4(b)である。その後拡大地図生成処理部101の生成が終了した後は、選択処理部104は拡大地図生成バッファ109のデータを選択し、重ね合わせ処理部70に出力する。この状態は図4(c)である。また、子画面97が移動している時は、速度算出処理部103が、指96の1/30秒単位の移動距離を1/30秒で除算することで、子画面97移動速度が求まる。その結果、基準速度1040よりも速い場合は、選択処理部104はラスタ拡大バッファ110の画像を選択し(図2の97−1の状態)、それ以外の場合は拡大地図生成バッファ109の画像を選択して(図2の97−2の状態)重ね合わせ処理部70に出力する。
【0018】
図6は、上記の動作をフローにしたものである。最初に、広域地図画面95に表示されている操作ボタン98の「拡大図ON」が押され、拡大地図の表示が開始されるまで待つ(ステップS100)。次に、子画面97の位置と、拡大地図生成バッファ109内の拡大地図の範囲を比較し、移動した子画面(拡大地図画面)97が示す広域地図の一部の領域を拡大した部分拡大地図が、拡大地図生成バッファ109に生成されている拡大地図の領域(所定領域)に含まれているか否か、拡大地図画面表示領域はみ出し検出処理部107と拡大地図画面位置管理処理部108が判定する(ステップS110)。その結果、表示すべき部分拡大地図(変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図)が拡大地図生成バッファ内に生成されている拡大地図の領域(所定領域)に含まれていることが検出された場合(ステップS120にてYes)は、処理はステップS150へ進む。選択手段104により、変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図の画像が拡大地図生成バッファ109から読み出され(選択され)、重ね合わせ処理部70により、広域地図と合成される(ステップS150)。変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図が上記所定領域に含まれていないことが検出された場合(ステップS120のNo)、広域地図生成バッファ60から、広域地図内の当該場所の部分(変更後の一部の領域)の画像を読み出して、ラスタ画像拡大処理部102で拡大した画像を選択処理部104が選択し、これを部分拡大画像とする。この部分拡大画像が重ね合わせ処理部70によって広域地図に重畳されることにより合成処理される(ステップS130)。すなわち、拡大地図画面が広域地図画面に重畳されて表示される。その処理と並行して、当該場所(変更後の一部の領域)を含む別の所定領域を拡大した別の拡大地図を拡大地図生成処理部101で生成する(ステップS140)。
【0019】
上記生成が終了した後、拡大地図生成バッファ109から、選択手段104によって当該場所の部分地図(上記別の拡大地図)の画像のラスタデータが読み出される(選択される)。ラスタデータが読み出された拡大地図が重ね合わせ処理部70によって広域地図に重畳されることにより広域地図と合成される(ステップS150)。この状態は図4(c)の表示となる。すなわち、拡大地図画面(子画面97)が広域地図画面95に重畳されて表示されている。その後、操作ボタン98の操作によって、子画面97の表示終了の操作が行われたかどうかを判定し(ステップS160),Noであれば、子画面97が移動されたかどうかを判定する(ステップS170)。この判定は1/30秒単位で行われる。もし、移動が検出されたら、速度算出処理部103が、移動前の位置と移動後の位置から、速度算出処理部で拡大地図画面の移動速度を算出する(ステップS180)。その結果、上記移動速度が、基準速度1040である閾値以上かどうかを判定し(ステップS190)、もし閾値以上(基準速度1040以上)であれば、広域地図生成バッファ60から、当該場所の部分地図の画像を読み出して、ラスタ画像拡大処理部102で拡大した画像を重ね合わせ処理部70で広域地図と合成(拡大地図画面を広域地図画面に重畳)(ステップS200)してステップS110に戻り、閾値未満(基準速度1040未満)ならそのままステップS110に戻る。
【0020】
図7は、子画面97が高速から低速になる場合と低速から高速になる場合で移動速度の基準速度1040を変更する方法を示したフローである。子画面97が基準速度1040の速度付近で移動している時には、この閾値に対して上下の速度を頻繁に繰り返すことが想定される。このような場合、子画面97の表示は、ラスタ拡大バッファ110の画像(図2の97−1)と拡大地図生成バッファ109の画像(図2の97−2)を交互に繰り返して表示画面がちらつくことになり、見づらい表示になってしまう。そこで、移動速度が基準速度1040よりも下から上になる(上回る)際に用いられる第1閾値と、基準速度1040よりも上から下になる(下回る)際に用いられる第2閾値とを相異ならせて、表示画面のちらつきを抑えようとするものである。この図7の処理は、図6のステップS190の直前で処理する。まず初めに、直前の(1/30秒前の)移動速度と、今回の移動速度を比較する。直前よりも今回が遅くない場合は(ステップS315)、第1閾値を基準速度1040とする(ステップS320)。直前よりも今回が遅い場合は(ステップS310)、第1閾値よりも10%程度小さくした第2閾値を基準速度1040とする(ステップS320)。
【0021】
本実施の形態におけるナビゲーション装置5は、広域地図を示す広域地図画面95を表示するとともに、広域地図の一部の領域を拡大した地図を示す子画面(拡大地図画面)97を、その一部の領域の表示位置で広域地図画面95に重畳して表示画面に表示する表示処理部90と、拡大地図画面95の移動速度を算出する速度算出処理部103と、広域地図を拡大した詳細地図データ30に基づき、上記一部の領域を含む所定領域を拡大した拡大地図を生成する拡大地図生成処理部101と、移動速度が基準速度1040以上のときは、上記一部の領域のラスタデータに基づく地図を子画面97が示す地図として選択し、移動速度が基準速度1040未満のときは、上記拡大地図のうちで、上記一部の領域に対応する領域のラスタデータに基づく地図を子画面97が示す地図として選択する選択処理部104とを含む。したがって、子画面97を広域地図画面95中の所定領域内の任意の位置へ、自由にかつ高速に移動できる。
【0022】
本実施の形態におけるナビゲーション装置5は、好ましくは、子画面97の移動後の上記一部の領域が上記所定領域に含まれていないことを検出する拡大地図画面表示領域はみ出し検出処理部107および拡大地図画面位置管理処理部108をさらに含む。子画面97の移動速度が基準速度1040未満のときであって、かつ拡大地図画面表示領域はみ出し検出処理部107および拡大地図画面位置管理処理部108により上記一部の領域が上記所定領域に含まれていないことが検出された場合、拡大地図生成処理部101が、変更された上記一部の領域を含む別の所定領域を拡大した別の拡大地図を生成するまでの間、選択処理部104は、上記一部の領域のラスタデータに基づく地図を子画面97が示す地図として選択する。したがって、子画面97を広域地図画面95中の任意の位置へ、自由にかつ高速に移動できる。
【0023】
本実施の形態におけるナビゲーション装置5においては、好ましくは、移動速度が基準速度1040を上回る際の基準速度1040は第1閾値であり、移動速度が基準速度1040を下回る際の基準速度1040は第1閾値よりも小さな第2閾値である。これにより、子画面97の表示は、ラスタ拡大バッファ110の画像(図2の97−1)と拡大地図生成バッファ109の画像(図2の97−2)とを交互に繰り返して表示画面が見づらくなることを防止できる。
【0024】
本実施の形態におけるナビゲーション装置5は、好ましくは、ユーザが子画面97に接触してその接触位置を広域地図画面95の中で変化させると、子画面97の移動を検出する拡大地図画面移動検出処理部20をさらに含む。速度算出処理部103により算出される移動速度は、拡大地図画面移動検出処理部20により子画面97の移動が検出された際の子画面97の移動速度である。したがって、子画面97を広域地図画面95中の任意の位置へ、自由にかつ高速に移動できる。
【0025】
−−−変形例−−−
(1) 図8は、子画面97の形状を矩形ではなく任意形状で表示する方法を示したものである。重ね合わせ処理部70は、マスクパターン111に記録されているビットパターンに従って拡大地図生成バッファ109の内容を切り抜いて表示する。この例では、例えばマスクパターン111の斜線部分の形状を1で表現し、円の内側を0で表現するものとする。そうすると1の部分は広域地図生成バッファ60のデータが選択され、0の部分は拡大地図生成バッファ109のデータが選択され、子画面97として表示される。
【0026】
図9は、図8の処理をフローで示したものである。最初に、マスクパターン111から1ワード(ここでは32ビットを想定)を読み出す(ステップS400)。マスクパターン111は1画素が1ビットの構成であるので32画素分のデータを読み出したことになる。次に、読み出したマスクパターン111のデータを左側に1ビットシフトする(ステップS405)。その結果最も左側の1ビットがキャリービットとしてはじき出され、そのビットが1か0かを判定することができる(ステップS410)。その結果、もし0なら拡大地図生成バッファ109から表示される1画素を読み出し(ステップS415)し、もし1なら広域地図生成バッファ60から表示される1画素を読み出す(ステップS420)。次に、読み出したそのデータをフレームバッファ80内の拡大地図107の領域に書き込む(ステップS425)。その後、広域地図生成バッファ60の読み出しアドレスを更新(ステップS430)、拡大地図生成バッファ109の読み出しアドレスを更新(ステップS435)、フレームバッファ80の書き込みアドレスの更新を行う(ステップS440)。マスクパターン111の1ワードの全てのシフト処理が終了したら(ステップS445)、マスクパターン111の読み出しアドレスを更新する(ステップS450)。以上の処理を全ての画素の処理が終了するまで繰り返す(ステップS455)。もし、選択処理部104がラスタ拡大バッファ110を選択していたら、図9の中のステップS415とステップS435は、拡大地図生成バッファ109の代わりに拡大バッファ110となる。この方式により、マスクパターン111のパターン形状を変更することで、子画面97の形状を自由に変更できる。
【0027】
変形例(1)におけるナビゲーション装置5においては、子画面97の形状を矩形に限らない任意形状とすることができる。
【0028】
(2) 図10は、下地となる広域地図がスクロールされるときの子画面97の処理の機能構成を示したものである。この場合も、広域地図のスクロール速度の違いによって、子画面97の表示を拡大地図生成バッファ109のデータと広域地図生成バッファ60のデータを切り替える処理を行う。これにより、広域地図が高速でスクロール中も拡大地図を表示することができる。図10の構成は、図5の拡大地図画面移動検出処理部20が、広域地図画面移動検出処理部25に代わったものである。この広域地図画面移動検出処理部25は、広域地図をスクロールする操作が行われると、その広域地図生成処理部50で広域地図をスクロールさせる距離だけ移動した地図を生成する。広域地図のスクロール操作方法は、例えば指で広域地図画面を触れたまま、指を動かす方法がある。
【0029】
図11は、図10の構成の処理フローを示す。広域地図のスクロール操作があったかどうかを、例えば1/30秒単位で判定する(ステップS500)。もしスクロール操作があれば、指の動いた分だけ表示位置がずれるように広域地図を生成し、結果を広域地図生成バッファ60に格納する。この時、スクロールする前の画像の中でスクロール後も表示される部分は、広域地図生成バッファ60内でそのスクロール分だけずらしてコピー処理を行い、不足分を継ぎ足して生成を行うことで、全面の生成を行うよりも処理時間を小さくできる。従って、スクロールの移動量が少ないほど継ぎ足し分が少なくなるので高速に処理可能であり、逆にスクロール量が大きい(高速スクロール)ほど生成処理時間が大きくなる。そのため、高速スクロールを行う時は子画面の生成処理を少なくして全体の処理負荷を減らすことが必要になる。
【0030】
スクロールにより広域地図画面95に表示される広域地図が移動することによって、広域地図画面が変化する。広域地図画面中に表示されている拡大地図画面(子画面97)の広域地図画面中における位置は変わらないが、広域地図画面が変化したことにより、拡大地図画面が示す部分拡大地図で拡大されている広域地図の一部の領域は、広域地図の移動とともに変更される。このときの拡大地図画面の移動量はスクロール量に一致し、拡大地図画面の移動速度はスクロール速度に一致する。
【0031】
次に、広域地図の移動前の位置と移動後の位置から、速度算出処理部103で拡大地図画面の移動速度を算出する(ステップS510)。上記速度が基準速度1040の値(閾値)以上か否かを判定する(ステップS520)。もし閾値以上(基準速度1040以上)であれば、広域地図生成バッファ60から、当該場所の部分地図の画像を読み出して、ラスタ画像拡大処理部102で拡大した画像を重ね合わせ処理部70で広域地図と合成する(拡大地図画面を広域地図画面に重畳する)。こうすることにより、広域地図が高速でスクロール中は、拡大地図のベクトル地図生成処理を無くすことができるため、全体の処理負荷を減らすことが可能となる。
【0032】
一方、スクロール速度が閾値未満の場合は、子画面に表示すべき部分拡大地図(変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図)が拡大地図生成バッファ109内に生成されている拡大地図の領域(所定領域)に含まれているか否かを判定し(ステップS530およびS540)、もし含まれていれば、選択部104により、変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図の画像が拡大地図生成バッファ109から読み出される(選択される)。この部分拡大地図の画像が重ね合わせ処理部70によって広域地図に重畳されることにより合成処理される(ステップS550)。すなわち、拡大地図画面が広域地図画面に重畳されて表示される。もし含まれていなければ、広域地図生成バッファ60から、広域地図内の当該場所の部分(変更後の一部の領域)の画像を読み出して、ラスタ画像拡大処理部102で拡大した画像を選択処理部104が選択し、これを部分拡大画像とする。この部分拡大画像が重ね合わせ処理部70で広域地図に重畳されることにより広域地図と合成される(ステップS570)。また、その処理と並行して当該場所(変更後の一部の領域)を含む別の所定領域を拡大した別の拡大地図(別の詳細地図)を拡大地図生成処理部101で生成する(ステップS580)。上記生成処理が終了したら、拡大地図生成バッファ109から、当該場所の部分地図(上記別の詳細地図)の画像のラスタデータを読み出して、ラスタデータが読み出された詳細地図が重ね合わせ処理部70で広域地図に重畳されることにより広域地図と合成される。
【0033】
変形例(2)におけるナビゲーション装置5は、好ましくは、上述した実施の形態のナビゲーション装置5の構成に加え、広域地図画面95が示す広域地図がスクロールにより移動したことを検出する広域地図画面移動検出処理部25をさらに含む。子画面97の移動は、スクロールによる広域地図の移動に応じて上記一部の領域が変更されることにより生じ、速度算出処理部103は、スクロールの際のスクロール速度を算出する。したがって、子画面97を広域地図画面95中の任意の位置へ、自由にかつ高速に移動できる。
【0034】
以上のように、本発明によれば、拡大地図が高速移動するときも、広域地図を高速にスクロールする時も拡大地図の表示を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
5 ナビゲーション装置
10 拡大地図表示処理部
20 拡大地図画面移動検出処理部
25 広域地図画面移動検出処理部
30 詳細地図データ
35 拡大率設定処理部
40 広域地図データ
50 広域地図生成処理部
60 広域地図生成バッファ
70 重ね合わせ処理部
80 フレームバッファ
90 表示処理部
95 広域地図画面
97 子画面
101 拡大地図生成処理部
102 ラスタ画像拡大処理部
103 速度算出処理部
104 選択処理部
105 拡大地図領域管理処理部
106 拡大率
107 拡大地図画面表示領域はみ出し検出処理部
108 拡大地図画面位置管理処理部
109 拡大地図生成バッファ
110 ラスタ画像拡大バッファ
111 マスクパターン
1040 基準速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域地図を示す広域地図画面を表示するとともに、前記広域地図の一部の領域を拡大した部分拡大地図を示す拡大地図画面を、前記一部の領域の表示位置で前記広域地図画面に重畳して表示する地図表示手段と、
前記拡大地図画面の移動に関する速度を算出する速度算出手段と、
前記広域地図を拡大した詳細地図のベクトルデータに基づき、前記広域地図のうちの前記一部の領域を含む所定領域を拡大した拡大地図を生成する拡大地図生成手段と、
前記移動に関する速度が基準速度以上のときは、前記広域地図の前記一部の領域を前記部分拡大地図として選択し、前記移動に関する速度が前記基準速度未満のときは、前記拡大地図のうちで、前記一部の領域に対応する領域を前記部分拡大地図として選択する選択手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記拡大地図画面の移動後の前記一部の領域が前記所定領域に含まれていないことを検出するはみ出し検出手段をさらに備え、
前記移動に関する速度が前記基準速度未満のときであって、かつ前記はみ出し検出手段により前記一部の領域が前記所定領域に含まれていないことが検出された場合、前記拡大地図生成手段が、変更された前記一部の領域を含む別の所定領域を拡大した別の拡大地図を生成するまでの間、前記選択手段は、前記広域地図の変更された前記一部の領域を前記部分拡大地図として選択することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のナビゲーション装置において、
前記移動に関する速度が前記基準速度を上回る際の前記基準速度は第1閾値であり、
前記移動に関する速度が前記基準速度を下回る際の前記基準速度は前記第1閾値よりも小さな第2閾値であることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置において、
ユーザが前記拡大地図画面に接触してその接触位置を前記広域地図画面の中で変化させると、前記拡大地図画面の移動を検出する拡大地図画面移動検出手段をさらに備え、
前記速度算出手段により算出される前記移動に関する速度は、前記拡大地図画面移動検出手段により前記拡大地図画面の移動が検出された際の前記拡大地図画面の移動速度であることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のナビゲーション装置において、
前記広域地図画面が示す前記広域地図がスクロールにより移動したことを検出する広域地図画面移動検出手段をさらに備え、
前記拡大地図画面の移動は、前記スクロールによる前記広域地図の移動に応じて前記一部の領域が変更されることにより生じ、
前記速度算出手段により算出される前記移動に関する速度は、前記スクロールの際のスクロール速度であることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−88176(P2013−88176A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226888(P2011−226888)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】