説明

ナビシステム、ナビサーバ、ナビクライアントおよびナビ方法

【課題】ナビサーバおよびナビクライアントのそれぞれにより使用されるマップデータの相違の存在を許容しながら、ナビサーバによるルート探索結果をナビクライアントに有効利用させることができるシステム等を提供する。
【解決手段】座標値という共通の記述が存在することにより、ナビサーバ100およびナビクライアント200のそれぞれにより使用されるマップデータの相違の存在を許容しながら、ナビサーバ100によるルート探索結果をナビクライアント200に有効利用させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザを指定位置まで案内するナビゲーション技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビサーバと車両に搭載等されているナビクライアントとの通信により、ナビサーバによって検索されたルートをナビクライアントに再現させる技術的手法が提案されている(特許文献1参照)。「ナビ」は「ナビゲーション」の略記である。
【0003】
具体的には、ナビサーバによって検索されたサーバルートの一部を構成するリンクを識別するためのリンク識別情報がナビクライアントに送信される。これに応じて、ナビクライアントにより、当該リンク識別情報に関連付けられているリンクを表わす緯度および経度の座標列の情報が記憶装置から読み出され、当該座標列情報に基づいてクライアントルートが探索かつ出力される。この際、ナビサーバから送信されたリンク識別情報だけでは補えない不連続部分を接続する補間処理が実行されることにより、当該サーバルートと完全にまたはほぼ一致するクライアントルートが探索されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−019924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ナビサーバにより使用されるサーバマップデータと、ナビクライアントにより使用されるクライアントマップデータとが厳密に整合していない場合、サーバルートから著しく乖離したクライアントルートが探索される可能性がある。マップデータ間の相違には、たとえば、カバーされているリンクの範囲の相違のほか、リンク識別情報の記述方式などのフォーマットの相違が含まれる。
【0006】
そこで、本発明は、ナビサーバおよびナビクライアントのそれぞれにより使用されるマップデータの相違の存在を許容しながら、ナビサーバによるルート探索結果をナビクライアントに有効利用させることができるシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明のナビシステムは、ナビサーバとナビクライアントとにより構成されているナビシステムであって、前記ナビサーバは、各地点が緯度および経度を含む座標値により記述され、かつ、ルート計算用のリンクが座標値の群により記述されているサーバマップを保存するように構成されているサーバ記憶装置と、前記ナビクライアントから指定地点情報を受信し、前記指定地点情報に基づいて2つの指定地点のそれぞれを認識した上で、前記サーバマップを用いて、前記2つの指定地点を結ぶ複数のリンクにより構成されている一または複数のサーバルートを探索するように構成されている第1サーバ演算処理要素と、前記第1サーバ演算処理要素により探索された前記サーバルートの配置態様が座標値により表現されているルート情報を前記ナビクライアントに宛てて送信するように構成されている第2サーバ演算処理要素とを備え、前記ナビクライアントは、各地点が緯度および経度を含む座標値により記述されているクライアントマップを保存するように構成されているクライアント記憶装置と、画像出力装置と、前記ナビサーバに対して前記指定地点情報を送信するように構成されている第1クライアント演算処理要素と、前記ナビサーバから前記ルート情報を受信し、前記ルート情報に含まれる座標値により表現される配置態様と、前記クライアントマップにおいて一致する配置態様を有するルートをクライアントルートとして、前記クライアントマップに重ねて前記画像出力装置に出力させるように構成されている第2クライアント演算処理要素とを備えていることを特徴とする。
【0008】
前記サーバマップおよび前記クライアントマップのうち一方である指定マップにより各リンクにおける前記ナビクライアントのユーザの移動コストが記述され、前記第1サーバ演算処理要素および前記第1クライアント演算処理要素のうち前記指定マップを使用する第1指定演算処理要素が、前記ユーザの出発地点および目的地点のうち少なくとも一方としての基準地点の周囲にある地点であって、前記基準地点と当該地点とを結ぶ一または複数のリンクにより構成されている近傍ルートに沿った前記ユーザの移動コストが相対的に低い当該地点を前記2つの指定地点のうち少なくとも一方として優先的に認識するように構成されていることが好ましい。
【0009】
前記第1サーバ演算処理要素が、前記2つの指定地点のうちいずれかが含まれる指定範囲の出口または入口が両方通行道路に接している場合、当該両方通行道路において前記指定範囲からの進出または前記指定範囲への進入が比較的容易な方向に前記ユーザを進行させる前記一または複数のサーバルートを探索するように構成されていることが好ましい。
【0010】
前記クライアント記憶装置が、種類が異なる複数の前記クライアントマップを保存するように構成され、前記第2クライアント演算処理要素が、前記ユーザにより指定された種類の前記クライアントマップを選択的に前記画像出力装置に表示させるように構成されていることが好ましい。
【0011】
前記課題を解決するためのナビサーバは、前記ナビシステムを構成するナビサーバであって、前記サーバ記憶装置と、前記第1サーバ演算処理要素と、前記第2サーバ演算処理要素とを備えていることを特徴とする。
【0012】
前記課題を解決するためのナビクライアントは、前記ナビシステムを構成するナビクライアントであって、前記クライアント記憶装置と、前記画像出力装置と、前記第1クライアント演算処理要素と、前記第2クライアント演算処理要素とを備えていることを特徴とする。
【0013】
前記課題を解決するための本発明のナビ方法は、各地点が緯度および経度を含む座標値により記述され、かつ、ルート計算用のリンクが座標値の群により記述されているサーバマップを保存するように構成されているサーバ記憶装置を備えているナビサーバと、各地点が緯度および経度を含む座標値により記述されているクライアントマップを保存するように構成されているクライアント記憶装置と、画像出力装置とを備えているナビクライアントとにより実行されるナビ方法であって、前記ナビクライアントが、前記ナビサーバに対して指定地点情報を送信するステップと、前記ナビサーバが、前記指定地点情報に基づいて2つの指定地点のそれぞれを認識させた上で、前記サーバマップを用いて、前記2つの指定地点を結ぶ複数のリンクにより構成されている一または複数のサーバルートを探索するステップと、前記ナビサーバが、前記サーバルートの配置態様が座標値により表現されているルート情報を前記ナビクライアントに宛てて送信するステップと、前記ナビクライアントが、前記ルート情報に含まれる座標値により表現される配置態様と、前記クライアントマップにおいて一致する配置態様を有するルートをクライアントルートとして、前記クライアントマップに重ねて前記画像出力装置に出力させるステップとを備えていることを特徴とする。
【0014】
前記サーバマップおよび前記クライアントマップのうち一方である指定マップにより各リンクにおける前記ナビクライアントのユーザの移動コストが記述され、前記ナビサーバまたは前記ナビクライアントのうち前記指定マップを使用する指定機器が、前記ユーザの出発地点および目的地点のうち少なくとも一方としての基準地点の周囲にある地点であって、前記基準地点と当該地点とを結ぶ一または複数のリンクにより構成されている近傍ルートに沿った前記ユーザの移動コストが相対的に低い当該地点を前記2つの指定地点のうち少なくとも一方として優先的に認識するステップを備えていることが好ましい。
【0015】
前記ナビサーバが、前記2つの指定地点のうちいずれかが含まれる指定範囲の出口または入口が両方通行道路に接している場合、当該両方通行道路において前記指定範囲からの進出または前記指定範囲への進入が比較的容易な方向に前記ユーザを進行させる前記一または複数のサーバルートを探索するステップを備えていることが好ましい。
【0016】
なお、本発明の構成要素が情報を「認識する」とは、当該構成要素が情報を受信すること、データベースやメモリから探索または読み出すこと、受信または検知等した基礎情報に対して指定の演算処理を実行することによって情報を算定、測定、推定、設定、決定、探索、予測等すること、受信等されたパケットをデコードして情報を顕在化させること、さらには算定等した情報をメモリに保存すること等、他の情報処理のために当該情報を準備するためのあらゆる情報処理を実行することを意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のナビシステムおよびナビ方法等によれば、図6(a)上方に示されているサーバルートroute1(一点鎖線)の位置、姿勢および形状等の配置態様f(p)が、サーバマップmap1の各地点を特定するための座標値により表現された形態で同図下方に示されているようにルート情報として抽出される(図2/STEP120参照)。
【0018】
そして、図6(b)上方に示されている当該サーバルートroute1の配置態様f(p)が、同図下方に示されているように座標値により各地点が記述されているクライアントマップmap2において再現された結果として、クライアントルートroute2(二点鎖線)が出力される。すなわち、サーバルートroute1の画像データと、クライアントマップmap2の画像データとが、両マップmap1およびmap2の共通記述部分である座標値により、位置、姿勢および形状が整合するように重ね合わせられて出力装置202に表示される。
【0019】
このように、座標値という共通の記述が存在することにより、ナビサーバ100およびナビクライアント200のそれぞれにより使用されるマップデータの相違の存在を許容しながら、ナビサーバ100によるルート探索結果をナビクライアント200に有効利用させることができる。すなわち、サーバマップおよびクライアントマップが、共通リンクのリンク識別情報の記述方式等のフォーマットについて異なっていても、ナビサーバ100によるルート探索結果をナビクライアント200に有効利用させることができる。
【0020】
また、出発地点p1がそのままサーバルートの始点としての第1指定地点q1として認識されるのではなく、ユーザが出発地点p1から目的地点p2に向かう初期段階(近傍ルートを通行する段階)の移動コストに鑑みて適当な地点が第1指定地点q1として認識されうる(図3(a)(b)参照)。
【0021】
さらに、目標地点p2がそのままサーバルートの終点としての第2指定地点q2として認識されるのではなく、ユーザが出発地点p1から目的地点p2に向かう終期段階(近傍ルートを通行する段階)の移動コストに鑑みて適当な地点が第2指定地点q2として認識されうる(図4(a)(b)参照)。
【0022】
このため、ナビクライアント200においてサーバルートが再現された結果としてのクライアントルートにしたがって、ユーザをその目的地点p2まで円滑に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態としてのナビシステムの構成図。
【図2】本発明の一実施形態としてのナビ方法の手順説明図。
【図3】サーバルートの第1指定地点の設定方法に関する説明図。
【図4】サーバルートの第2指定地点の設定方法に関する説明図。
【図5】指定地点近傍におけるサーバルートの探索方法に関する説明図。
【図6】サーバルートに基づくクライアントルートの再現方法に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(ナビシステムの構成)
図1に示されているナビシステムは、ナビサーバ100と、ナビクライアント200とにより構成されている。複数のナビクライアント200のうち、少なくとも一部のナビクライアント200が、一時的または定常的にナビサーバ100として機能してもよい。
【0025】
ナビサーバ100は、サーバ記憶装置104と、第1サーバ演算処理要素110と、第2サーバ演算処理要素120とを備えている。ナビサーバ100はネットワークを介したナビクライアント200との通信機能を有し、一または複数のサーバコンピュータにより構成されている。通信ネットワークとしては、インターネット、電話回線用ネットワークまたは衛星放送を用いた通信ネットワークなどが採用されうる。
【0026】
サーバ記憶装置104は、各地点が緯度および経度により記述されているサーバマップを保存するように構成されている。サーバマップによれば、離間した2つの地点(交差点など)を結ぶリンクは、当該リンク上の複数の地点を表わす座標値群または座標列により記述されている。少なくとも一部のリンクが、当該リンクを識別するためのリンク識別情報または当該リンクにより構成される道路の種類などと関連付けられて記述されていてもよい。また、公園、河川、施設の敷地などの所在範囲は、当該範囲の輪郭線または閉曲線上の複数の地点を表わす座標列により記述されている。各範囲が、当該範囲に所在する物の種類などと関連付けられて記述されていてもよい。
【0027】
第1サーバ演算処理要素110は、ナビクライアント200から指定地点情報を受信し、当該指定地点情報に基づいて2つの指定地点のそれぞれを認識するように構成されている。第1サーバ演算処理要素110は、サーバマップを用いて、2つの指定地点を結ぶ複数のリンクにより構成されている一または複数のサーバルートを探索するように構成されている。
【0028】
第2サーバ演算処理要素120は、第1サーバ演算処理要素110により探索されたサーバルートの配置態様が座標値により表現されているルート情報を作成した上で、当該ルート情報をナビクライアント200に対して送信するように構成されている。
【0029】
第1サーバ演算処理要素110および第2サーバ演算処理要素120のそれぞれは、プログラマブルコンピュータにより構成されている。本発明の構成要素が担当の情報演算処理を実行するとは、当該構成要素がメモリからプログラムを読み取り、当該プログラムにしたがって当該担当の情報演算処理を実行するようにプログラムされていることを意味する。プログラムは、ナビサーバ100に対してネットワーク経由でダウンロードまたは記憶媒体経由でインストールされる。第1サーバ演算処理要素110および第2サーバ演算処理要素120のそれぞれは、その一部または全部が物理的に独立別個のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0030】
ナビクライアント200は、入力装置201と、出力装置202と、クライアント記憶装置204と、第1クライアント演算処理要素210と、第2クライアント演算処理要素220とを備えている。ナビクライアント200は携帯型の機器により構成されていてもよく、車両に定常的または一時的に搭載される機器として構成されていてもよい。
【0031】
入力装置201は、プッシュボタン式またはタッチパネル式のインターフェースにより構成され、ユーザによる目的地点の指定入力等の情報入力操作を可能としている。マイクおよび当該マイクにより収集された音響信号を解析してユーザの発話内容または入力を意図する情報を認識する音声認識装置により構成されていてもよい。
【0032】
出力装置202は、クライアントマップ等が表示される液晶パネル等から構成される画像出力装置により構成されている。入力装置201がタッチパネル式のインターフェースにより構成されている場合、画像出力装置にはタッチ式のボタンが表示される。出力装置202が、画像出力装置のほか、当該画像出力装置に表示されている画像情報に関連する音声信号を出力する音声出力装置により構成されていてもよい。
【0033】
クライアント記憶装置204は、各地点が緯度および経度により記述されているクライアントマップを保存するように構成されている。クライアントマップによれば、離間した2つの地点を結ぶリンクは、当該リンク上の複数の地点を表わす座標値群または座標列により記述されている。少なくとも一部のリンクが、当該リンクを識別するためのリンク識別情報または当該リンクにより構成される道路の種類などと関連付けられて記述されていてもよい。また、公園、河川、施設の敷地などの所在範囲は、当該範囲の輪郭線または閉曲線上の複数の地点を表わす座標列により記述されている。各範囲が、当該範囲に所在する物の種類などと関連付けられて記述されていてもよい。
【0034】
クライアントマップはサーバマップと同一のマップであってもよいし、サーバマップとは少なくともフォーマットの一部が異なるマップであってもよい。
【0035】
第1クライアント演算処理要素210は、指定地点情報を作成した上で、当該指定地点情報をナビサーバ100に対して送信するように構成されている。「指定地点情報」は、サーバルートの2つの端点となる指定地点のそれぞれの座標値の認識の基礎となる情報である。第1クライアント演算処理要素210は、ナビクライアント200に搭載されているGPS受信機(図示略)により受信されたGPS信号等に基づき、ナビクライアント200の現在位置を測定するように構成されている。第1クライアント演算処理要素210は、入力装置201を通じてユーザにより入力された目的地点等を認識するように構成されている。
【0036】
第2クライアント演算処理要素220は、ナビサーバ100からルート情報を受信し、当該ルート情報に含まれる指定地点の座標値に基づき、クライアントマップにおける地点を指定するように構成されている。第2クライアント演算処理要素220は、当該地点に対して一定の配置関係を有し、かつ、ルート情報に含まれるサーバルートの形状が一致するルートをクライアントルートとして、クライアントマップに重ねて出力装置202に出力させるように構成されている。
【0037】
第1クライアント演算処理要素210および第2クライアント演算処理要素220のそれぞれは、プログラマブルコンピュータにより構成されている。プログラムは、ナビクライアント200に対してネットワーク経由でダウンロードまたは記憶媒体経由でインストールされる。第1クライアント演算処理要素210および第2クライアント演算処理要素220のそれぞれは、その一部または全部が物理的に独立別個のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0038】
(ナビ方法)
前記構成のナビシステムにより実行されるナビ方法の一実施形態について説明する。
【0039】
ナビクライアント200において、第1クライアント演算処理要素210により、ユーザの目的地点(正確にはその座標値)p2が認識される(図2/STEP212)。たとえば、出力装置202に表示されているクライアントマップにおいて、入力装置201を通じてユーザにより指定された地点が目的地点p2として認識される。
【0040】
クライアントマップ上に複数の目的地点候補を表わすマークが表示され、当該マークのうち入力装置201を通じてユーザにより選択された1つのマークに対応する目的地点候補が目的地点p2として認識されてもよい。多数のPOI(Point of Interest)の中から、ユーザがあらかじめ入力装置201を通じてナビクライアント200に登録しておいた嗜好区分に分類されるPOIの位置を表わすマークが、目的地点候補の位置を表わすマークとしてクライアントマップ上に表示されてもよい。
【0041】
そのほか、施設等の名称、住所、電話番号または電子メールアドレスなどの基礎情報が入力装置201を通じてユーザにより入力または指定され、クライアントマップにおいて当該基礎情報に関連付けられている地点が目的地点p2として認識されてもよい。
【0042】
第1クライアント演算処理要素210により、ユーザの出発地点(正確にはその座標値)p1が認識される(図2/STEP211)。たとえば、目的地点p2が認識された時点におけるナビクライアント200の現在地点が出発地点p1として認識される。そのほか、目的地点p2と同様に、入力装置201を通じてユーザによって指定等された地点が出発地点p1として認識されてもよい。
【0043】
そして、第1クライアント演算処理要素210により、ナビクライアント200の出発地点p1および目的地点p2のそれぞれの座標値が含まれている「指定地点情報」が作成され(図2/STEP214)、その上で当該指定地点情報がナビサーバ100に対して送信される(図2/矢印01参照)。指定地点情報に付随して、ナビクライアント200を識別するためのクライアント識別情報もナビサーバ100に対して送信される。
【0044】
続いて、ナビサーバ100において、第1サーバ演算処理要素110により、ナビクライアント200から指定地点情報が受信され、当該指定地点情報に基づいて2つの指定地点のそれぞれが認識される(図2/STEP112)。たとえば、指定地点情報に含まれる出発地点p1および目的地点p2のそれぞれが、第1指定地点(正確にはその座標値)q1および第2指定地点(正確にはその座標値)q2のそれぞれとして認識される。
【0045】
出発地点p1の周辺にある地点が第1指定地点q1として認識されてもよい。たとえば、出発地点p1から最短距離にあるリンク上の地点が第1指定地点q1として認識される。
【0046】
また、第1サーバ演算処理要素110により、出発地点(基準地点)p1の周囲にある地点のうち、出発地点p1と当該地点とを結ぶ一または複数のリンクにより構成されている近傍ルートに沿ったユーザの移動コストが相対的に低い地点が、第1指定地点q1として優先的に認識されてもよい。
【0047】
移動コストの評価に際して、サーバマップにより各リンクにおけるユーザの移動コストが記述されているサーバマップが用いられる。移動距離、移動所要時間もしくはユーザの身体負荷またはこれらのうち少なくとも1つを変数とする関数の値が移動コストに該当する。ユーザが車両によって移動する場合、当該車両の移動距離、移動所要時間、ユーザの身体負荷(車両の運転負荷)、予測燃料消費量もしくは所要料金またはこれらのうち少なくとも1つを変数とする関数の値が移動コストに該当する。
【0048】
各リンクにおける移動所要時間は、外部情報源から得られる道路交通情報から認識されうる。各リンクのユーザまたは車両の交通量を測定するために設置されている測定機器、および、現在位置を時系列的に測定するプローブ機器としてのナビクライアント200のほか、当該測定機器または当該プローブ機器から測定結果を収集した上で、当該収集情報を解析して各リンクにおける移動所要時間を予測するように構成されている道路交通情報センターなどが当該外部情報源に該当する。ナビサーバ100が当該道路交通情報センターを構成していてもよい。
【0049】
図3(a)に示されているように出発地点p1からの直線距離は短いものの、ユーザが通行不可能な第1因子Obs1(河川、森林、公園、建造物またはその敷地など)を基準として出発地点p1とは反対側にある地点が第1指定地点q1(1)として認識された場合、近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離が長くなる分、移動コストが高く評価される。
【0050】
その一方、同じく図3(a)に示されているように出発地点p1からの直線距離は長いものの、第1因子Obs1からみて出発地点p1と同じ側にある地点が第1指定地点q1(2)として認識された場合、近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離が短くなる分、移動コストが低く評価される。したがって、当該2つの地点q1(1)およびq1(2)のうち、後者が第1指定地点q1として認識される。
【0051】
また、図3(b)に示されているように近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離は短いものの、当該近傍ルートが、ユーザが通行可能であるものの通行困難な第2因子Obs2(交通渋滞または混雑が発生している道路または範囲、坂道が多い道路、線路の踏切を通る道路など)を通過する場合、移動コストが高く評価される。各リンクの傾斜態様は、各地点が緯度および経度に加えて高度が含まれる座標値によって記述されるサーバマップの使用により判断されうる。
【0052】
その一方、同じく図3(b)に示されているように近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離は長いものの、当該近傍ルートが第2因子Obs2を通過していない場合、移動コストが低く評価される。したがって、当該2つの地点q1(1)およびq1(2)のうち、後者が第1指定地点q1として認識される。
【0053】
さらに、図4(a)に示されているように目的地点p2までの直線距離は短いものの、第1因子Obs1を基準として目的地点p2とは反対側にある地点が第2指定地点q2(1)として認識された場合、近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離が長くなる分、移動コストが高く評価される。その一方、同じく図4(a)に示されているように目的地点p2までの直線距離は長いものの、第1因子Obs1からみて目的地点p2と同じ側にある地点が第2指定地点q2(2)として認識された場合、近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離が短くなる分、移動コストが低く評価される。したがって、当該2つの地点q2(1)およびq2(2)のうち、後者が第2指定地点q2として認識される。
【0054】
また、図4(b)に示されているように近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離は短いものの、当該近傍ルートが、第2因子Obs2を通過する場合、移動コストが高く評価される。その一方、同じく図4(b)に示されているように近傍ルート(破線)に沿ったユーザの移動距離は長いものの、当該近傍ルートが第2因子Obs2を通過していない場合、移動コストが低く評価される。したがって、当該2つの地点q2(1)およびq2(2)のうち、後者が第2指定地点q2として認識される。
【0055】
続いて、第1サーバ演算処理要素110により、サーバマップを用いて、第1指定地点q1および第2指定地点q2を結ぶ複数のリンクにより構成されている一または複数のサーバルートが探索される(図2/STEP114)。
【0056】
たとえば、第1指定地点q1および第2指定地点q2までの移動コストが最小になるという方針にしたがってサーバルートが探索される。ユーザにより入力装置201を通じて指定された移動コストの種類が指定地点情報とともにナビクライアント200からナビサーバ100に送信され(図2/矢印01参照)、当該指定種類の移動コストが最小になるようにサーバルートが探索されてもよい。
【0057】
具体的には、図5(a)に示されているように、第1指定地点q1が含まれる第1指定範囲A1の出入口が両方通行道路(破線)に接している場合、当該両方通行道路において第1指定範囲A1からの進出が比較的容易な方向にユーザを進行させるようなサーバルートが探索される。たとえば、両方通行道路が左側通行の道路である場合、第1指定範囲A1から右折しながら進出するようなルートR(1)ではなく、第1指定範囲A1から左折しながら進出するようなルートR(2)がサーバルートとして優先的に探索される。これとは逆に両方通行道路が右側通行の道路である場合、他方のルートR(1)がサーバルートとして優先的に探索される。
【0058】
また、図5(b)に示されているように、第2指定地点q2が含まれる第2指定範囲A2の出入口が両方通行道路(破線)に接している場合、当該両方通行道路において第2指定範囲A2への進入が比較的容易な方向にユーザを進行させるようなサーバルートが探索される。たとえば、両方通行道路が左側通行の道路である場合、第2指定範囲A2に右折しながら進入するようなルートR(1)ではなく、第2指定範囲A2に左折しながら進入するようなルートR(2)がサーバルートとして優先的に探索される。これとは逆に両方通行道路が右側通行の道路である場合、他方のルートR(1)がサーバルートとして優先的に探索される。
【0059】
次に、第2サーバ演算処理要素120により、サーバルートの配置態様が座標値により表現されている「ルート情報」が作成され(図2/STEP120)、その上で当該ルート情報が、指定地点情報に付属するクライアント識別情報(図2/矢印01参照)により識別されるナビクライアント200に対して送信される(図2/矢印02)。
【0060】
ルート情報は、少なくとも第1指定地点q1から第2指定地点q2を含むサーバルート上の複数の地点のそれぞれの座標値が含まれている。当該複数の地点の密度は、ルート情報の通信コストなどが考慮された上で適当に調節されうる。また、一般道路から高速道路への入口または高速道路から一般道路への出口など、重要度が高いエリアにおける地点密度が他の箇所よりも高くするなど、地点の密度に疎密の差がつけられてもよい。
【0061】
そのほか、ルート情報において、サーバルート上の少なくとも1つの地点に加えて、当該地点を基準として定義されている、サーバルートの形状および姿勢を表わす一または複数の関数y=f(x)(x:緯度、y:経度)により、その配置態様が表現されていてもよい。複数の地点を包含する、サーバルートの少なくとも一部の配置態様が当該関数により表現されることにより、ルート情報の通信コストおよびその演算処理負荷の軽減が図られている。
【0062】
ルート情報には、リンクごとの移動コストの高低と、当該移動コストの高低に応じた各リンクの表示形態(色彩または輝度など)の指定とが含まれていてもよい。
【0063】
そして、ナビクライアント200において、第2クライアント演算処理要素220によりルート情報が受信される。そして、当該ルート情報に含まれる座標値により表現される配置態様と、クライアントマップにおいて一致する配置態様を有するルートをクライアントルートとして生成し、クライアントマップに重ねて出力装置202に出力させる(図2/STEP220)。
【0064】
ルート情報にサーバルート上の複数の地点のそれぞれの座標値が含まれている場合、クライアントマップ上において当該座標値を有する複数の地点が特定された上で、当該複数の地点を結ぶ線分の描画データがクライアントルートとして生成される。ルート情報により指定されている、各リンクの道路種類の相違および移動コストのうち少なくとも1つの相違に応じた表示形態にしたがって各リンクが出力装置202に表示されるように、当該クライアントルートの描画データが生成されてもよい。
【0065】
そのほか、ルート情報において、サーバルート上の少なくとも1つの地点と、クライアントマップ上において当該座標値を有する地点が特定された上で、当該地点を基準とする一または複数の関数y=f(x)により姿勢および形状が表わされる描画データがクライアントルートとして生成される。
【0066】
クライアント記憶装置204に複数種類のクライアントマップが保存され、入力装置201を通じてユーザにより指定された種類のクライアントマップが出力装置202に表示されてもよい。
【0067】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態によれば、サーバマップが、各リンクにおけるナビクライアント200のユーザの移動コストが記述されている「指定マップ」に該当し、ナビサーバ100が当該指定マップを使用する「指定機器」に該当し、かつ、第1サーバ演算処理要素110が当該指定マップを使用する「第1指定演算処理要素」に該当していた。
【0068】
これに代えて、少なくとも一部のナビクライアント200について、クライアントマップが「指定マップ」に該当し、ナビクライアント200が「指定機器」に該当し、かつ、第1クライアント演算処理要素210が「第1指定演算処理要素」に該当していてもよい。
【0069】
この場合、第1クライアント演算処理要素210により、出発地点p1またはその周囲にある地点が第1指定地点q1として認識され(図3(a)(b)参照)、かつ、目的地点p2またはその周囲にある地点が第2指定地点q2として認識される(図4(a)(b)参照)。
【0070】
そして、第1クライアント演算処理要素210により、第1指定地点q1および第2指定地点q2のそれぞれが座標値により表現されている指定地点情報が生成される(図2/STEP214参照)。その上で、第1サーバ演算処理要素110により、当該指定地点情報から直接的に第1指定地点q1および第2指定地点q2が認識される。
【符号の説明】
【0071】
100‥ナビサーバ、104‥サーバ記憶装置、110‥第1サーバ演算処理要素、120‥第2サーバ演算処理要素、200‥ナビクライアント、204‥クライアント記憶装置、210‥第1クライアント演算処理要素、220‥第2クライアント演算処理要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビサーバとナビクライアントとにより構成されているナビシステムであって、
前記ナビサーバは、
各地点が緯度および経度を含む座標値により記述され、かつ、ルート計算用のリンクが座標値の群により記述されているサーバマップを保存するように構成されているサーバ記憶装置と、
前記ナビクライアントから指定地点情報を受信し、前記指定地点情報に基づいて2つの指定地点のそれぞれを認識した上で、前記サーバマップを用いて、前記2つの指定地点を結ぶ複数のリンクにより構成されている一または複数のサーバルートを探索するように構成されている第1サーバ演算処理要素と、
前記第1サーバ演算処理要素により探索された前記サーバルートの配置態様が座標値により表現されているルート情報を前記ナビクライアントに宛てて送信するように構成されている第2サーバ演算処理要素とを備え、
前記ナビクライアントは、
各地点が緯度および経度を含む座標値により記述されているクライアントマップを保存するように構成されているクライアント記憶装置と、画像出力装置と、
前記ナビサーバに対して前記指定地点情報を送信するように構成されている第1クライアント演算処理要素と、
前記ナビサーバから前記ルート情報を受信し、前記ルート情報に含まれる座標値により表現される配置態様と、前記クライアントマップにおいて一致する配置態様を有するルートをクライアントルートとして、前記クライアントマップに重ねて前記画像出力装置に出力させるように構成されている第2クライアント演算処理要素とを備えていることを特徴とするナビシステム。
【請求項2】
請求項1記載のナビシステムにおいて、
前記サーバマップおよび前記クライアントマップのうち一方である指定マップにより各リンクにおける前記ナビクライアントのユーザの移動コストが記述され、
前記第1サーバ演算処理要素および前記第1クライアント演算処理要素のうち前記指定マップを使用する第1指定演算処理要素が、前記ユーザの出発地点および目的地点のうち少なくとも一方としての基準地点の周囲にある地点であって、前記基準地点と当該地点とを結ぶ一または複数のリンクにより構成されている近傍ルートに沿った前記ユーザの移動コストが相対的に低い当該地点を前記2つの指定地点のうち少なくとも一方として優先的に認識するように構成されていることを特徴とするナビシステム。
【請求項3】
請求項1または2記載のナビシステムにおいて、
前記第1サーバ演算処理要素が、前記2つの指定地点のうちいずれかが含まれる指定範囲の出口または入口が両方通行道路に接している場合、当該両方通行道路において前記指定範囲からの進出または前記指定範囲への進入が比較的容易な方向に前記ユーザを進行させる前記一または複数のサーバルートを探索するように構成されていることを特徴とするナビシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載のナビシステムにおいて、
前記クライアント記憶装置が、種類が異なる複数の前記クライアントマップを保存するように構成され、
前記第2クライアント演算処理要素が、前記ユーザにより指定された種類の前記クライアントマップを選択的に前記画像出力装置に表示させるように構成されていることを特徴とするナビシステム。
【請求項5】
請求項1〜4記載のナビシステムを構成するナビサーバであって、
前記サーバ記憶装置と、前記第1サーバ演算処理要素と、前記第2サーバ演算処理要素とを備えていることを特徴とするナビサーバ。
【請求項6】
請求項1〜4記載のナビシステムを構成するナビクライアントであって、
前記クライアント記憶装置と、前記画像出力装置と、前記第1クライアント演算処理要素と、前記第2クライアント演算処理要素とを備えていることを特徴とするナビクライアント。
【請求項7】
各地点が緯度および経度を含む座標値により記述され、かつ、ルート計算用のリンクが座標値の群により記述されているサーバマップを保存するように構成されているサーバ記憶装置を備えているナビサーバと、各地点が緯度および経度を含む座標値により記述されているクライアントマップを保存するように構成されているクライアント記憶装置と、画像出力装置とを備えているナビクライアントとにより実行されるナビ方法であって、
前記ナビクライアントが、前記ナビサーバに対して指定地点情報を送信するステップと、
前記ナビサーバが、前記指定地点情報に基づいて2つの指定地点のそれぞれを認識させた上で、前記サーバマップを用いて、前記2つの指定地点を結ぶ複数のリンクにより構成されている一または複数のサーバルートを探索するステップと、
前記ナビサーバが、前記サーバルートの配置態様が座標値により表現されているルート情報を前記ナビクライアントに宛てて送信するステップと、
前記ナビクライアントが、前記ルート情報に含まれる座標値により表現される配置態様と、前記クライアントマップにおいて一致する配置態様を有するルートをクライアントルートとして、前記クライアントマップに重ねて前記画像出力装置に出力させるステップとを備えていることを特徴とするナビ方法。
【請求項8】
請求項7記載のナビ方法において、
前記サーバマップおよび前記クライアントマップのうち一方である指定マップにより各リンクにおける前記ナビクライアントのユーザの移動コストが記述され、
前記ナビサーバまたは前記ナビクライアントのうち前記指定マップを使用する指定機器が、前記ユーザの出発地点および目的地点のうち少なくとも一方としての基準地点の周囲にある地点であって、前記基準地点と当該地点とを結ぶ一または複数のリンクにより構成されている近傍ルートに沿った前記ユーザの移動コストが相対的に低い当該地点を前記2つの指定地点のうち少なくとも一方として優先的に認識するステップを備えていることを特徴とするナビ方法。
【請求項9】
請求項7または8記載のナビシステムにおいて、
前記ナビサーバが、前記2つの指定地点のうちいずれかが含まれる指定範囲の出口または入口が両方通行道路に接している場合、当該両方通行道路において前記指定範囲からの進出または前記指定範囲への進入が比較的容易な方向に前記ユーザを進行させる前記一または複数のサーバルートを探索するステップを備えていることを特徴とするナビ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185098(P2012−185098A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49600(P2011−49600)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】