説明

ナフサを触媒改質するためのプロセス

【課題】ナフサを原料として、芳香族炭化水素及びエチレンを製造する触媒改質プロセスを提供する。
【解決手段】0.15MPa〜3.0MPaの圧力、300℃〜540℃の温度、2.1h−1〜50h−1の体積空間速度、の条件下、水素ガス存在下にてナフサを改質触媒に接触させ、85質量%より大きいナフタレンの転換比率、及び、30質量%未満のパラフィンのアレン及びC炭化水素への転換比率を達成する。ナフサが、良質のアレン及びエチレン分解材料両方の製造のための原料となるように、ナフサからアレンを製造する一方で、ナフサからパラフィンを最大限に製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフサを触媒改質するためのプロセスに関する。特に、本発明は、原料としてナフサを用いることにより、芳香族炭化水素(アレン)及びエチレン分解物質を製造するための触媒改質プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒改質及び蒸気分解は、石油化学分野における、十分に成長した産業技術である。触媒改質の主な目的は、アレン、高オクタン価のガソリン及び水素を製造することであり、蒸気分解の主な目的は、エチレン及び比較的少量のプロピレンを製造することである。触媒改質装置における原料は、ナフサであり、これは、蒸気分解装置における主な原料でもある。原油が重質になり、ナフサの生成率が減少し、続いて、エチレン及びアレンの世界的需要が高まることを考えると、触媒改質装置及び蒸気分解装置における原料をめぐる争奪戦の問題が、ますます顕著になる。
【0003】
触媒改質プロセスにおいて、シクロヘキサンのアレンへの脱水素化反応、アルキルシクロペンタンのアレンへの脱水素化反応及び異性化反応、パラフィンのアレンへの脱水素化反応及び環化反応、パラフィンの、ガソリンとは異なる沸点範囲を有する軽質炭化水素の生成物への水素化分解反応、アルキルベンゼンの脱アルキル化反応、及び、パラフィンの異性化反応を含むいくつかの競争反応が同時に起こり得る。高オクタン価のガソリンの混合組成物又はアレンを得るために、ナフタレンをアレンへ脱水素化反応及び環化反応をするだけではなく、アレンの生成率を最大限に増加できるようにパラフィンを転換することも望まれる。従って、以前より、パラフィンのアレンへの高い選択性を伴う転換が、注目されているが、パラフィンのアレンへの高い選択性を伴う転換により、改質技術を進歩させることは困難であった。
【0004】
パラフィンのアレンへの転換に関して、中国公開公報第1267708号には、三つの触媒ゾーンを用いることによる、アレンが豊富な生成物を製造するための、触媒改質プロセスが開示されている。上記プロセスには、少なくとも三つの連続的な触媒域を備える触媒システムにおいて炭化水素の原料と接触させる工程が含まれる。ここで、触媒システムには、一つの最初の二重作用触媒改質領域、白金族金属及び非酸ゼオライトからなる触媒を含む一つのゼオライト改質領域、及び、最終の二重作用触媒改質領域が含まれる。先行技術と比較して、組み合わせた技術プロセスは、大きな処理範囲及び高いアレン生成率を備えており、特に、連続的に再生された触媒の、可動相改質装置と共に用いることができる。
【0005】
英国特許第1165972号には、ガソリン又はナフサの沸点範囲を有する石油系炭化水素のための触媒改質プロセスが開示されている。上記プロセスには、15体積%のナフサ、25体積%のパラフィンを含む石油系炭化水素を、少なくとも90のオクタン価を有する改質油、及び、水素含有リサイクルガスに転換する工程(この工程の転換は、複数の断熱固定相反応領域、多くの領域の前線でもたらされる少なくとも一つのナフタレン脱水素化反応領域、及び、多くの領域の後方でもたらされる少なくとも一つのパラフィン脱水素環化反応領域において、分子状水素及び白金族金属を含む支持された改質触媒の存在下で行われる。この工程において、パラフィンの脱水素環化反応領域に対するナフタレンの脱水素化反応領域の触媒体積比は、1:20〜3:1の範囲内であり、水素/オイルのモル比は0.5〜8.0であり、最初の反応装置は、総改質プロセス時間の少なくとも80%の間にて438℃〜493℃で導入温度を維持し、ナフタレンから75%〜95%のアレンへの転換を行い、且つ、少なくとも10質量%のナフタレンを含むナフタレン脱水素化反応領域からの排出物を形成する。)、ナフタレンの脱水素化領域からパラフィンの脱水素環化反応領域へ移動する工程(この工程では、水素/オイルのモル比は7〜30であり、総改質プロセス時間の少なくとも50%の間、ナフタレンの脱水素化反応領域の、最初の反応装置の導入温度よりも少なくとも6.7℃大きくなるように、導入温度は482℃〜538℃となっている。この工程により、望まれる改質油及び水素含有リサイクルガスを形成する。)が含まれる。
【0006】
英国特許第1313367号には、炭化水素原料を改質する方法が開示されている。上記方法には、ナフタレンを含む炭化水素原料、及び、パラフィンを、改質油に改質する工程、炭化水素原料及び水素ガスを、レニウムを含まずアルミナ支持体上の白金族金属を含む触媒で満たされた脱水素化反応装置に通し、ナフタレンの脱水素化反応をもたらし、アレンを形成する工程、次に、炭化水素供給物及び水素ガスを、アルミニウム支持体上の白金族金属及びレニウムを含む触媒で満たされたナフタレン脱水素化反応装置に通し、パラフィンの脱水素環化反応をもたらし、アレンを形成する工程が含まれる。
【0007】
最近の触媒改質技術は、主に、改質によりナフサをアレンに転換する場合に、エチレン分解原料としての高品質パラフィンを備えるエチレン装置に最大限供給する方法よりむしろ、ナフサにおけるナフタレン及びパラフィンをアレンに最大限転換する方法に焦点があてられている。
【0008】
ナフサは、標準(n−)パラフィン、異性化パラフィン、ナフタレン及びアレンのような多くの炭化水素からなる混合物である。異性化パラフィン及びナフタレンと比較して、標準パラフィンから分解により生成するエチレンはより高収率である。アレンのベンゼン環は、通常の分解条件下では比較的分解が困難であり、エチレン生成に寄与しない。しかしながら、触媒改質条件下でナフタレンをアレンに転換することは容易であり、ナフタレンは良質の触媒改質原料である。触媒改質で用いられる原料及び蒸気分解装置を最大限利用する方法は、人々の関心があり且つ解決を熱望している問題である。
【0009】
精留は、ナフサを狭いフラクションに分離するための効果的な方法である。しかしながら、標準パラフィンから他の炭化水素に分離する作用を達成することは難しい。
【0010】
吸着分離技術により、ナフサから標準パラフィンを分離することができる。中国公開公報第1476474号には、ナフサ改質装置及び蒸気分解装置に供給する原料蒸気を得るための方法である、標準パラフィンの蒸気分解によりエチレンを製造するための方法が開示されている。上記方法は、まず、ナフサをCパラフィン蒸気及びC−C炭化水素蒸気に分別する工程、C−C炭化水素蒸気を吸着分離する工程、標準(n−)アルカンを選択的に吸着する工程、脱着のような分別により得られるCパラフィンを用いる工程、Cパラフィンから分離した脱着溶液中の標準アルカンを、エチレンを製造するために蒸気分解領域に供給する工程、及び、高オクタン価のガソリンを得るためにラフィネート油を改質領域に供給する工程からなる。
【0011】
中国公開公報第101198574号には、標準パラフィンの蒸気分解によりエチレンを得るための方法が開示されている。この方法は、C−C炭化水素を吸着分離する工程、非標準(非n−)アルカンから標準アルカンを分離する工程、それを脱着C10−C16炭化水素及びその混合物として用いる工程、エチレンを製造するために吸着分離された標準パラフィンを蒸気分解領域に供給する工程、及び、非標準(非n−)炭化水素を改質領域に供給しアレンに転換する工程からなる。
【0012】
中国公開公報第1710030号には、ナフサの最適化された利用方法が開示されている。この方法は、5Aモレキュラーシーブを用いてナフサを吸着分離する工程、標準(n−)炭化水素が豊富な脱着されたオイル生成物及び標準炭化水素が乏しいラフィネート油炭化水素を得る工程からなり、脱着オイル中の標準炭化水素は、80質量%〜100質量%の含有量である。脱着オイルは良質の蒸気分解材料として用いられ得る。又、脱着オイルを精留により狭いフラクションにカットし、試薬及び高品質溶媒オイル生成物を得る。そして、ラフィネート油は、良質の触媒改質原料又は高オクタン価の汚れの無いガソリン混合組成物として用いられ得る。
【0013】
ナフサの吸着分離において、蒸気分解のための原料としての標準パラフィンは、エチレンの生成率を増大させるが、ナフサにおいて標準パラフィンが低含有量なので、ナフサの需要が著しく増大することにより、同様なエチレン生産量を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】中国公開公報第1267708号
【特許文献2】英国特許第1165972号
【特許文献3】英国特許第1313367号
【特許文献4】中国公開公報第1476474号
【特許文献5】中国公開公報第101198574号
【特許文献6】中国公開公報第1710030号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、浅触媒改質方法(shallow catalytic reforming method)により、ナフサから、アレン、及び、良質のパラフィンを同時に且つ最大限で製造する、ナフサを触媒改質するためのプロセスを提供することである。本発明のさらなる目的は、原料としてナフサを用いることによりアレン及びエチレンを製造するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、水素ガス存在下におけるナフサを触媒改質するためのプロセスは、0.15MPa〜3.0MPaの圧力、300℃〜540℃の温度、2.1h−1〜50h−1の体積空間速度の条件下でナフサを改質触媒と接触させ、浅触媒改質反応を実行し、85質量%より大きいナフタレン転換比率、及び、30質量%未満のアレン及びC−炭化水素へのパラフィンの転換比率を達成する工程からなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るプロセスは、ナフサの浅触媒改質方法を含み、ナフサ中のナフタレンはアレンに転換し、同時にパラフィンの転換が制御され、改質プロセスにおいてパラフィンを最大限に得る。パラフィンは、蒸気分解によってエチレンを得るための良質な原料である。従って、本発明のプロセスは、ナフサ中の組成物を十分に利用し、ナフタレンをアレンに転換することができ(アレンを製造することは容易である)、パラフィンを可能な限り他の物質に転換することができ、触媒改質生成物中により多くのパラフィンを残すことができる。生成物中のアレンから分離した後、パラフィンを、蒸気分解によりエチレンを製造するための装置中における良質な原料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る好ましいプロセスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ナフサにおけるナフタレンの物質転換を確かなものとし、同時に、可能な限りパラフィンの転換を避けるナフタレンの浅触媒改質プロセスに関する(すなわち、反応条件を制御することにより改質反応の範囲を制御する)。本発明のプロセスにおいて、改質生成物におけるパラフィンの大部分を残留させるために、分枝鎖イソアルカンへのパラフィンの異性化反応、アレンへの脱水素環化反応、メタンへの水素添加分解反応、C−Cアルカンへの水素化分解反応を含む反応を、最小限とする。改質生成物中のアレンは、パラフィンから分離され、そして、パラフィンを蒸気分解装置に供給しエチレンを製造し、同時に、プロピレン及び1,3−ブタジエンを得る。上記三つのオレフィンを「3オレフィン」として略す。同様な量のナフサを用いることにより、先行技術に比べて本発明は、さらに、軽質アレン(ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTXと略す))、エチレン、プロピレン及び1,3−ブタジエンを製造することができる。
【0020】
本発明に係る浅触媒改質方法には、反応条件(主に、温度及び原料の空間速度)を制御することにより改質反応の範囲を制御し、可能な限りパラフィンを転換することが含まれる。ナフサにおけるナフタレンの転換比は、90質量%より大きく、アレン及びC−炭化水素へのパラフィンの転換比は、10質量%未満であり、ここでC−炭化水素は、炭素原子を4又はそれ未満有する炭化水素である。
【0021】
本発明のプロセスにおける触媒改質反応は、好ましくは、0.2MPa〜2.0MPaの圧力、350℃〜520℃(より好ましくは400℃〜500℃)の温度、3h−1〜30h−1(より好ましくは8.0h−1〜25.0h−1)のナフサの体積空間速度、0.1:1〜20:1(より好ましくは1:1〜8:1)の水素/炭化水素の体積比の条件で行われる。
【0022】
本発明に係る触媒改質は、連続した(可動相)改質技術、半再生(固定相)改質技術、又は、循環再生改質技術を用いることにより行われ得る。
【0023】
本発明に係る改質触媒は、0.01質量%〜5.0質量%の第VIII族金属、0.01質量%〜5.0質量%のハロゲン、及び、90.0質量%〜99.97質量%の無機酸化物支持体からなる。
【0024】
さらに、上記改質触媒は、0.01質量%〜5.0質量%の第VIII族金属、0.01質量%〜5.0質量%のハロゲン、Re、Sn、Ge、Ir及びRhから選ばれる0.01質量%〜10.0質量%の金属、及び、80.0質量%〜99.97質量%の無機酸化物支持体からなるものであってもよい。
【0025】
上記改質触媒は、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、In、Co、Ni、Fe、W、Mo、Cr、Bi、Sb、Zn、Cd及びCuからなる一群から選ばれる一つ又はそれ以上の金属構成物質からなるものであってもよい。
【0026】
改質触媒における無機酸化物支持体は、アルミナ、マグネシア、酸化クロム、B、TiO、ThO、ZnO、ZrO、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、酸化アルミナ−クロム、Al−B、SiO−ZrO、様々なセラミック、様々なアルミナ、様々なボーキサイト、SiO、炭化ケイ素、様々な合成ケイ酸、様々な天然ケイ酸、及び、粘土、;Xゼオライト、Yゼオライト、モルデナイト、βゼオライト、Ωゼオライト又はLゼオライトのような結晶シリコン−アルミニウム−ゼオライト(水素タイプであってもよい(好ましくは非酸タイプ)、ただし、非酸タイプの結晶シリコン−アルミニウム−ゼオライトのカチオン交換可能な位置を占める、一つ又はいくつかのアルカリ金属が存在していてもよい。)、;ホスホアルミン酸塩、又は、ホスホアルミノケイ酸塩のような非シリコン−アルミニウム−ゼオライトからなる。無機酸化物支持体は、アルミナであることが好ましい。
【0027】
改質触媒は、従来の方法により得られるものであり、この方法は、初めの、球形又は円筒形に成形した支持体を製造する工程、次の、金属構成物質及びハロゲンを浸透させて導入する工程からなる。改質触媒が第2の金属構成物質を含む触媒、さらに、第3の金属構成物質を含む触媒である場合、好ましい方法は、まず、第2の金属構成物質及び第3の金属構成物質を支持体に導入し、最終的に、第VIII族金属及びハロゲンを導入する。金属構成物質を導入した支持体を乾燥し、450℃〜650℃で焼成し、酸化状態の改質触媒を得た。酸化状態の改質触媒は、一般的にハロゲン調整処理を施さなければならない。触媒に導入したハロゲンは塩素であることが好ましく、ハロゲン調整処理は、370℃〜600℃での水−塩素活性処理により行われる。用いる前において、酸化状態の改質触媒は、315℃〜650℃での水素雰囲気下にて還元し、還元状態の改質触媒を得る必要がある。白金レニウム改質触媒に関しては、さらに、前加硫処理が必要である。
【0028】
本発明に係るナフサは、40℃〜80℃のASTM D−86初留点、及び、160℃〜220℃の終留点を有する炭化水素混合物であってもよく、特に、アルカン、ナフタレン、アレン及びオレフィンを含むC−C12の炭化水素であってもよい。
【0029】
本発明に係るナフサは、30質量%〜85質量%のアルカン、10質量%〜50質量%のナフタレン、5質量%〜30質量%のアレンからなるものであってもよい。
【0030】
本発明に係るナフサは、直留ナフサ、水素化分解されたナフサ、コークスナフサ、触媒分解されたナフサ、又は、フィールド縮合物からなる。
【0031】
オレフィン、硫黄、窒素、ヒ素、酸素、塩素及びそれらに類するもののようなナフサの不純物は、触媒改質装置及び改質触媒において不利な効果を有し得る。従って、改質反応の前にナフサを水素飽和オレフィンに水素化精製することが好ましく、硫黄、窒素、ヒ素、酸素、塩素及びそれらに類するもののような不純物を除去し水素化精製されたナフサを得ることが好ましい。
【0032】
ナフサの水素化精製反応は、260℃〜460℃(好ましくは280℃〜400℃)の温度、1.0MPa〜8.0MPa(好ましくは1.6MPa〜4.0MPa)の圧力、1h−1〜20h−1(好ましくは2h−1〜8h−1)の原料の体積空間速度、10:1〜1000:1(好ましくは50:1〜600:1)の反応段階における水素/炭化水素の体積比の条件下で行う。
【0033】
水素化精製触媒は、水素化脱硫黄化、脱窒素化及び脱酸素化に加え、オレフィンを水素化飽和することができる。水素化精製触媒は、5質量%〜49質量%の水素化活性組成物、0.1質量%〜1.0質量%のハロゲン、及び、50.0質量%〜94.9質量%の無機酸化物支持体からなる。水素化活性組成物は、Co、Ni、Fe、W、Mo、Cr、Bi、Sb、Zn、Cd、Cu、In及び希土類金属からなる一群から選ばれる一つ又はそれ以上の金属酸化物である。無機酸化物支持体は、アルミナであることが好ましい。
【0034】
上述の水素化精製触媒は、従来の方法により生成してもよい。例えば、中国公開公報第1169337号には、まず、水酸化アルミニウムを成形する工程、それを空気又は水蒸気中において焼成しγ−アルミニウム支持体を得る工程、次に、それに対して含浸法により水素化活性組成物を導入する工程からなる方法が開示されている。
【0035】
水素化精製ナフタレンに関して、さらに以下の方法を、有害不純物を除去するために用いてもよい。例えば、中国公開公報第1353005号には、水酸化カルシウム、若しくは、水酸化カルシウム+炭酸カルシウム、又は、炭酸ナトリウム+炭酸カルシウムの活性組成物からなる脱塩素剤を用いることにより、ナフサ中の塩素を除去する方法が開示されている。中国公開公報第86100015号には、例えば、ニッケル、珪藻土、二酸化ケイ素及びアルミナからなる脱硫剤のような、適切な脱硫剤を用いることによりナフサ中の硫黄を除去する方法が開示されている。中国公開公報第1095749号には、例えば、アルミナに支持された金属ニッケルのような、適切なヒ素除去剤を用いることによりナフサ中のヒ素不純物を除去する方法が開示されている。
【0036】
水素化精製されたナフサの生成物が、乾燥ガス及び液化ガスを得るために分離される。こうして得られる液体生成物は、0.5μg/g未満の量の硫黄、0.5μg/g未満の量の窒素、1.0ng/g未満の量のヒ素、10ng/g未満の量の鉛を含有する精製されたナフサである。
【0037】
本発明のプロセスにおいて、以下の工程2)は、前述の浅触媒改質反応工程の後であってもよい。
【0038】
2)精製された生成物をガス−液体分離装置に導入し、水素、液化ガス及び改質油に分離する工程。
【0039】
次に、以下の工程3)は、以下からなる工程であってもよい:
3)改質油をアレン分離装置に通し、アレン及びパラフィンを分離し、アレンを豊富に含むフラクション、及び、パラフィンを豊富に含むフラクションを得る工程。
【0040】
次に、以下の工程4)は、以下からなる工程であってもよい:
4)分解することによりエチレンを製造するために、パラフィンを豊富に含むフラクションを蒸気分解装置に導入する工程。
【0041】
上記浅触媒改質反応とアレン分離技術及び蒸気分解技術とを組み合わせることにより、発明に係るプロセスは、触媒改質によるアレンの製造の間に、エチレンを最大限に製造することができる。従来の触媒改質プロセス又は吸着分離プロセスに比べ、発明に係るプロセスは、同等なアレン生成率の条件下の同等な量のナフサを用い、より多くのBTX、エチレン、プロピレン及び1,3−ブタジエンを製造することができる。
【0042】
上記工程2)〜4)の詳細を以下に記載する。
【0043】
上述の本発明に係る浅触媒改質反応プロセスの次に、本発明のプロセスにより得られる触媒改質生成物を、ガス−液体分離装置に直接供給し、水素ガス、液化ガス及びその改質油を分離し得る。ガス−液体分離の装置の特別な作動方法は、改質された生成物を冷却し、ガス−液体分離タンクに供給する工程、水素が豊富なガスを液体相から分離する工程からなる。この工程では、ガス−液体分離タンクの作動温度を0℃〜65℃とし、次に、液相生成物を分留塔に供給する。ここで、C又はCより軽い軽質な炭化水素は塔の頂点から分離され、C又はCと同等又はより重い炭化水素(5又はそれ以上の炭素原子を有するC炭化水素、又は、6又はそれ以上の炭素原子を有するC炭化水素)の改質油の混合物は、塔の底で得ることができる。
【0044】
上述の改質油におけるアレン及びパラフィンを、アレン分離装置により分離することができ(アレン分離装置は、アレン抽出装置又はアレン吸着分離装置であることが好ましい。)、アレンの豊富なフラクション及びパラフィンの豊富なフラクションを得ることができる。
【0045】
改質油におけるアレンをアレン抽出装置により分離し、そこで用いられている抽出溶媒は、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、トリグリコール、テトラグリコール、ペンタグリコール、メタノール又はアセトニトリルからなる一群から選ばれる溶媒であることが好ましい。
【0046】
アレン抽出法は、液体液体抽出プロセス又は液体蒸留プロセスであってもよい。
【0047】
液体液体抽出によるアレンを分離するためのプロセスは、改質油を液体の抽出溶媒に接触させることにより、塔の底でアレン化合物の豊富な溶媒、及び、塔の頂点でアレン化合物に貧しいラフィネート液体を得る工程を含む。ここでは、ラフィネート液体を、吸収塔(scrubbing tower)で精製し、微量残留溶媒を除去し、パラフィンが豊富な炭化水素混合物を得てもよい。アレン化合物が豊富な溶媒は、溶媒分離塔に供給する。ここで、アレンは回収塔の頂点から放出し、亜鉛溶媒は、塔の底から放出し、そして、抽出塔にリサイクルされる。
【0048】
抽出蒸留によるアレンの分離のためのプロセスは、抽出蒸留塔に改質油を供給する工程、ガス相条件下で抽出溶媒と接触する工程からなり、非アレン化合物及び少量の溶媒は、塔の頂点から放出し、アレンの豊富な溶媒は、塔の底から放出され、溶媒分離塔に供給し、アレン化合物を溶媒から分離する。こうして得られた希薄溶媒は、抽出蒸留塔へリサイクルされる。
【0049】
ベンゼン、トルエン及びキシレン(キシレンの異性体であるp−キシレンも)を製造し、吸着分離するために、アレン抽出工程で分離される混合されたアレンを、アレン混合装置に供給してもよい。アレン混合装置は、一般的に、アレン抽出部、C8アレン異性化部、吸着分離部、トルエン不均化部及びアレンアルキル転移化部からなる一群から選らばれるユニットの一部又は全てからなり、ベンゼン、トルエン、p−キシレン、m−キシレン及びそれらに類するものを製造するために用いられ得る。
【0050】
本発明に係る改質された生成物からアレンの分離した後、得られたアレンが豊富な化合物、及び、パラフィンが豊富な炭化水素混合物は、続く反応装置内にて原料として用いられており、パラフィンが豊富な炭化水素混合物におけるアレンの純度及びアレンの含有量に、正確な制限はない。従って、従来のアレン抽出ユニットに比べて簡単な処置を、アレン化合物を抽出するために用いることができる。この場合、溶媒分離塔は、プレートの数がより少なくてもよい。抽出溶媒の抽出原料に対する質量比は、1〜10であってもよく、1〜5であることが好ましい。
【0051】
本発明に係る改質された生成物中のアレンを、吸着分離法によりパラフィンから分離することができる。改質油は、吸着床に吸着される(そこで、その中のアレンは吸着され、アレン以外は吸着床から放出される)。次に、吸着剤を吸着床に供給し吸着床に吸着させる。吸着分離における、そこで用いられている吸着床は、アレンへの吸着能力を有する何れの多孔質材料であってもよく、NaXゼオライト及びNaYゼオライトであることが好ましい。
【0052】
上記アレン分離工程により得られるパラフィンが豊富な炭化水素混合物は、エチレンを製造するための蒸気分解原料として適切に用いられる。ここにおける、蒸気分解は、0.05MPa〜0.30MPaの圧力、0.01s〜0.6sの反応物質滞留時間、0.3〜1.0の水/オイルの質量比、及び、760℃〜900℃の分解炉排出温度の条件下で行われる。
【0053】
本発明の好ましい解決法は、図を用いてさらに説明する。
【0054】
パイプライン1からのナフサと、パイプライン2からの補助水素ガスとを混合し、それを、パイプライン9からのリサイクルされた水素ガスと共に前水素化反応装置3に供給する。前水素化生成物を、パイプライン4経由でガス−液体分離タンク5に供給した。リサイクルするために、ガス−液体分離タンク5の上部から分離された水素が豊富なガスが、パイプライン6経由で循環圧縮装置8に供給され、ガス−液体分離タンク5の底から放出される蒸気を、パイプライン7経由で精留塔10に供給する。精留において、液化ガスは、精留塔10の上部のパイプライン11経由で系から放出される。精製されたナフサは、精留塔10の底から放出され、パイプライン12経由でパイプライン19からのリサイクルされた水素ガスと混合され、本発明に係る浅触媒改質プロセスに関する改質反応装置13へ供給される。改質生成物をパイプライン14経由で改質生成物ガス−液分離タンク15へ供給する。ここで、改質生成物ガス−液分離タンク15の上部から分離される水素を豊富に含むガスは、リサイクルするためにパイプライン16経由で循環圧縮装置18へ供給され、改質生成物ガス−液分離タンク15の底から放出される液体組成物は、パイプライン17経由で改質生成物精留塔20へ供給される。精留により得られる液化ガスは、上部パイプライン21により系から放出される。改質油は、改質生成物精留塔20の底から放出され、パイプライン22経由でアレン分離領域23へ供給される。アレン分離領域23は、抽出装置又は吸着分離装置であってもよく、溶媒を用いて抽出(又は吸着)し、アレンと非アレンに分離する。分離後のパラフィンを豊富に含む組成物を、パイプライン24経由で水洗浄装置26へ供給する。蒸気分解によるエチレンの製造のために、水洗浄により、パラフィンを豊富に含む組成物が、パイプライン27経由で蒸気分解領域32へ供給される。溶媒水抽出を含む水洗浄装置26の底から放出される混合物は、パイプライン28経由で放出される。これは、アレン分離領域23へリサイクルされてもよい。アレン分離領域23から放出されるアレンが豊富な溶媒は、溶媒からアレンを分離するためにパイプライン25経由で溶媒回収塔29へ供給され、溶媒回収塔29の上部で得られるアレン蒸気は、パイプライン30経由で放出され、このアレン蒸気を、BTXのようなアレン生成物を分離するために、又は、キシレン異性化反応及びp−キシレン吸着分離のような以下の処理のために、アレン混合装置へ供給してもよい;溶媒回収塔29の底で得られる希薄溶媒を、パイプライン31経由で放出し、アレン分離領域23へリサイクルし得る。
【0055】
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0056】
〔実施例1〕
本実施例は、ナフサの水素化精製に関する。
【0057】
20mLの固定床連続流動反応装置に、0.03質量%のCoO、2.0質量%のNiO、19.0質量%のWO、0.7質量%のF、及び、78.27質量のAlからなる水素化精製触媒A(RS−1、「Sinopec Catalyst Company Changling Division」製)20mLを導入した。表1にまとめられた組成及び性質を有するナフサを、290℃の温度、1.6MPaの水素分圧、200:1の水素/炭化水素の体積比、及び、8.0h−1の原料体積空間速度の条件下にて水素化精製した。生成物を水冷却装置に供給し、気相及び液相に分離した。上記2つの相をそれぞれ測定し、それらの組成を分析した。精製されたナフサの組成及び性質を表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表2に示された結果によると、水素化精製後において、ナフサ中におけるオレフィン、硫黄、窒素、ヒ素、及び、鉛の含有量は、原料の触媒改質触媒の必要条件を満たしている。
【0061】
〔実施例2〜3〕
表2における精製されたナフサを、本発明に係るプロセスにより触媒改質する。
【0062】
触媒改質反応において、0.35質量%のPt、0.30質量%のSn、1.0質量%のCl、及び、残量のγ−AlからなるPtSn/γ−Al触媒B(GCR−100A、「HUNAN JIANCHANG PETROCHEMICAL CO.,LTD」製)を用いた。
【0063】
100mLの固定床連続流動反応装置に、50mLの触媒Bを導入した。触媒改質原料として表2にまとめられた精製されたナフサを、500℃の反応原料内部温度、0.34MPaの反応圧、6.7の水素/炭化水素のモル比、及び、各々20.0h−1及び8.0h−1の原料体積空間速度の条件下で改質した。改質された生成物を精留し、C改質油を得た。反応の結果を表3に示す。
【0064】
〔実施例4〕
表2における精製されたナフサを、本発明のプロセスにより触媒改質した。0.26質量%のPt、0.26質量%のRe、1.0質量%のCl及び残量のγ−AlからなるPtRe/γ−Al触媒C(CB−60 catalyst、「SINOPEC CATALYST COMPANY Changling Division」製)を用いた。
【0065】
100mLの固定床連続流動反応装置に、50mLの触媒Cを導入した。使用前に、触媒Cを、425℃の温度を有する水素ストリーム中に0.1質量%の硫化水素を添加することにより予め加硫処理し、触媒の硫黄含有量を0.06質量%にする必要がある。
【0066】
表2にまとめた、触媒改質原料としての精製されたナフサを、475℃の反応原料内部温度、1.4MPaの反応圧、6.7の水素/炭化水素のモル比、18.0h−1の原料体積空間速度の条件下にて改質した。改質された生成物を精留し、C改質油を得た。反応結果を表3に示す。
【0067】
〔実施例5〕
表2における精製されたナフサを、本発明に係るプロセスに従って触媒改質した。0.50質量%のPt、0.8質量%のCl、及び、残量のγ−AlからなるPt/γ−Al触媒D(高白金ペレット「SINOPEC CATALYST COMPANY Changling Division」製)を用いた。
【0068】
100mLの固定床連続流動反応装置に、50mLの触媒Dを導入した。表2にまとめられた触媒改質原料としての精製されたナフサを、475℃の反応原料内部温度、1.4MPaの反応圧、6.7の水素/炭化水素のモル比、及び、20.0h−1の原料体積空間速度の条件下で改質した。反応結果を表3に示す。
【0069】
〔比較例1〕
本比較例では、表2における精製したナフサを、従来のプロセスにより触媒改質したことを示す。
【0070】
精製されたナフサを、原料の体積空間速度を2.0h−1とした点以外、実施例2のプロセスに基づき触媒改質した。結果を表3に示す。
【0071】
〔比較例2〕
本比較例では、ナフサの吸着分離後における結果として得られるラフィネート油の触媒改質効果を示す。
【0072】
吸着分離のために表1にまとめたナフサを、5Aモレキュラーシーブを有する固定床に供給した(ここで、200℃の吸着温度、0.3h−1の原料の重量空間速度、8:1の直径に対する高さの比を有する5Aモレキュラーシーブ床、30分間続く吸着作用の条件であった。)。5Aモレキュラーシーブにより吸着されなかったガスを濃縮し、ナフタレン及びアレンを豊富に含むラフィネート油を得た。400℃の脱着温度及び200h−1の脱着剤原料の空間速度により、吸着した金属を、窒素ガスを用いて脱着し、脱着された標準パラフィンを豊富に含むオイルを得た。
【0073】
結果として得られたラフィネート油を、比較例1に記載のプロセスに基づき触媒改質した。この結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
〔実施例6〜8〕
100mLの固定床連続流動反応装置において、50mLのPtRe/γ−Al触媒B、及び、触媒改質原料としての、表2にまとめられた精製されたナフサを用いて、異なる反応温度、及び、0.70MPaの反応圧且つ2.2の水素/炭化水素のモル比での触媒改質反応における原料の体積空間速度の効果について実験を行った。実施例における反応原料の内部温度、原料の体積空間速度、及び、反応結果を、表4に示す。
【0076】
〔実施例9〕
100mLの固定床連続流動反応装置に、50mLのPtRe/γ−Al触媒Cを導入し、触媒改質原料としての表2に示された精製されたナフサを、1.30MPaの反応圧、4.5の水素/炭化水素のモル比、436℃の反応温度、2.1h−1の原料体積空間速度の条件下で、本発明に係るプロセスに基づき改質した。反応結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
表3及び4によると、ナフタレンのアレンへの転換を続けると、反応温度の減少、又は、原料の体積空間速度の増加により、本発明におけるパラフィンのアレン及びC炭化水素に対する転換比が大幅に減少し、従来の改質反応に比べてパラフィンの多くが残留した。本発明に係るプロセスにおいて、ナフタレンの転換比率が85質量%より大きくなり、パラフィンのアレン及びCオレフィンに対する転換比は30質量%未満となった。多くの場合、パラフィンのアレン及びCオレフィンに対する転換比率は、10質量%未満であった。
【0079】
〔実施例10〕
以下の実施例では、アレンの分離後の、本発明に係るプロセスにより得られたC改質油の効果を示す。
【0080】
アレンの抽出分離のための溶剤としてスルホランを用いる場合に関して、実施例2で得られるC改質油を、抽出塔にてスルホランと接触させた。ここで、溶媒/原料の質量比は2、抽出塔の頂点の圧力は0.45MPa、還流比は0.25、塔へ供給される溶媒の温度は85℃、塔に供給される原料の温度は50℃である。
【0081】
アレン化合物を豊富に含む溶媒を抽出塔の底で得、非アレン化合物を含むラフィネート液体を塔の頂点から得た。アレン化合物を豊富に含む溶媒を、抽出溶媒を蒸留分離し、混合アレンを得た。そして、ラフィネート液体を水で洗浄、残留微量溶媒を除去し、パラフィンを豊富に含む炭化水素混合物を得た。パラフィン(ナフサと比べて)及びアレン(C改質油中のアレンに比べて)を豊富に含む炭化水素混合物の生成率を、表5に示す。
【0082】
〔実施例11〕
実施例3にて得られるC改質油を、実施例10と同様な方法で処理した。パラフィン(ナフサと比べて)及びアレン(C改質油中のアレンに比べて)を豊富に含む炭化水素混合物の生成率を、表5に示す。
【0083】
〔比較例3〕
本比較例では、アレン分離後の従来の触媒改質されたC油の効果を示す。
【0084】
実施例10のプロセスに従って、比較例1で得られるC改質油におけるアレン及びパラフィンを、抽出溶媒としてスルホランを用いることにより分離した。パラフィン(ナフサと比べて)及びアレン(C改質油中のアレンに比べて)を豊富に含む炭化水素混合物の生成率を、表5に示す。
【0085】
〔比較例4〕
表1にまとめられたナフサを、吸着分離のために、5Aモレキュラーシーブを備える固定床に供給した(ここで、200℃の吸着温度、0.3h−1の原料の重量空間速度、8:1の直径に対する高さの比を有する5Aモレキュラーシーブ床、30分間続く吸着作用の条件であった。)。5Aモレキュラーシーブにより吸着されなかったガスを濃縮し、ナフタレン及びアレンを豊富に含むラフィネート油を得た。400℃の脱着温度及び200h−1の脱着剤原料の空間速度により、吸着した金属を、窒素ガスを用いて脱着し、脱着された標準パラフィンを豊富に含むオイルを得た。そのナフサに対する生成率を表5に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
表5の結果によれば、本発明のプロセスにより得られるパラフィンを豊富に含む炭化水素混合物の生成率は、従来の改質プロセス及び吸着分離プロセスにより得られるパラフィンを豊富に含む炭化水素混合物の生成率と比較して、著しく増加する。本発明に係るプロセスは、分解によるエチレンの製造のための良質の原料である更なるパラフィンを得ることができる。これにより、ナフサを、アレンを製造し且つ最大限に高品質のエチレン分解原料を得るための原料とするために、本発明に係るプロセスは、ナフサ中の原料を十分に利用し、アレンを製造しつつ、最大限にパラフィンを得てもよいということがわかる。
【0088】
〔実施例12〕
本実施例は、本発明に係るプロセスにより得られるパラフィンを豊富に含む炭化水素混合物の蒸気分解効果を示す。
【0089】
実施例10に基づき得られるパラフィンを豊富に含む炭化水素混合物を、蒸気分解材料として利用した。蒸気分解反応は、0.185MPaの分解炉放出口の圧力、0.20sの滞留時間、0.55の水/オイルの質量比、及び、840℃の分解炉放出口の温度条件下で行った。エチレンの生成率を表6に示す。
【0090】
〔実施例13〕
実施例11に基づき得られるパラフィンを豊富に含む炭化水素混合物を、蒸気分解原料として利用した。蒸気分解反応は、0.185MPaの分解炉放出口の圧力、0.20sの滞留時間、0.55の水/オイルの質量比、及び、840℃の分解炉放出口の温度条件下で行った。エチレンの生成率を表6に示す。
【0091】
〔比較例5〕
本実施例では、従来の触媒改質プロセス及びアレン抽出プロセスにより得られる標準パラフィンを豊富に含む炭化水素混合物の蒸気分解効果を示す。
【0092】
比較例3におけるアレンの抽出分離により得られるパラフィンを豊富に含む炭化水素混合物を、蒸気分解のための原料として利用し、実施例12のプロセスに基づき分解した。エチレンの生成率を表6に示す。
【0093】
〔比較例6〕
本実施例では、ナフサから抽出分離プロセスにより得られる標準パラフィンを豊富に含む炭化水素混合物の蒸気分解効果を示す。
【0094】
比較例4における吸着分離プロセスにより得られる標準パラフィンを豊富に含む吸着オイルを、蒸気分解のための原料として利用し、実施例12におけるプロセスに基づき分解した。エチレンの生成率を表6に示す。
【0095】
【表6】

【0096】
ナフサを先行技術に基づき吸着分離した後、標準パラフィンを豊富に含む炭化水素混合物からの蒸気分解エチレン及び3つのオレフィンの生成率はより高いものの、吸着分離により得られる標準パラフィンは低収率である。従って、蒸気分解のために有用な原料は、同様に且つ大幅に減少する。ここで、100kgナフサに対するエチレン及び3つのオレフィンの生産量は、それぞれ、11.28kg及び17.15kgであり、本発明の実施例12及び13よりも低い生産量である。従来の触媒改質に比べて、本発明に係るプロセスは、ナフサ100kgあたりのエチレン及び3つのオレフィンの生産量が著しく増加させることができる。
【0097】
〔実施例14〕
本実施例では、本発明に係るプロセスによるナフサ100kgから得ることができるエチレン及びアレンの生成率を示す。
【0098】
表2における精製されたナフサを、実施例2のプロセスに基づいて触媒改質し、C改質油を得た。実施例10におけるプロセスに基づいて、改質油からアレンを抽出分離した。次に、こうして得られたパラフィンを豊富に含む炭化水素混合物を、実施例12のプロセスに基づいて蒸気分解した。エチレン及びアレンの生産量を表7に示す。
【0099】
〔比較例7〕
本比較例では、先行技術に基づいてナフサ100kgから得ることができるエチレン及びアレンの生産量を示す。
【0100】
ナフサ100kgを二分割し、一方を62.90kgの量とし、他方を37.10kgの量とした。
【0101】
ナフサ62.90kgを、比較例4のプロセスに基づき吸着分離した。分離後に得られる標準パラフィンを豊富に含む脱着油を、実施例12の分解条件下で蒸気分解し、そして、ラフィネート油を、比較例1のプロセスに基づき触媒改質した。次に、ナフサ37.10kgを、実施例12に基づく分解条件下で蒸気分解した。上記2つのプロセスにより得られるエチレン及びアレンの生産量を表7に示す。
【0102】
【表7】

【0103】
表7における結果は、同じアレンの生産量を、本発明及び比較例7の先行技術のプロセスにおいて、ナフサ100kgから得る場合、本発明に係るプロセスにおけるBTX生産量は、0.88kgの差(即ち4.14%の差)で増加し、本発明に係るプロセスでのエチレン生産量は、4.53kgの差(即ち25.00%の差)で増加し、そして、本発明に係るプロセスにおける3つのオレフィンの生産量は、6.85kgの差(即ち23.39%の差)で増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.15MPa〜3.0MPaの圧力、
300℃〜540℃の温度、
2.1h−1〜50h−1の体積空間速度、
の条件下、水素ガス存在下にてナフサを改質触媒に接触させ、浅触媒改質反応(shallow catalytic reforming reaction)を実行する工程を含み、
85質量%より大きいナフタレンの転換比率、及び、
30質量%未満のパラフィンのアレン及びC炭化水素への転換比率を達成することを特徴とするナフサを触媒改質するためのプロセス。
【請求項2】
上記浅触媒改質反応により、
90質量%より大きいナフタレンの転換比率、及び、
10質量%未満のパラフィンのアレン及びC炭化水素への転換比率を達成することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
上記浅触媒改質反応を、
0.2MPa〜2.0MPaの圧力、
350℃〜520℃の温度、
3.0h−1〜30h−1の体積空間速度、
の条件下にて実行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
上記浅触媒改質反応において、
水素/炭化水素のモル比が、0.1:1〜20:1の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
上記浅触媒改質反応において、
水素/炭化水素のモル比が、1:1〜8:1の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
ナフサの改質反応を、
400℃〜500℃の温度、且つ、
8.0h−1〜25.0h−1のナフサの体積空間速度、
の条件下にて実行することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
改質反応生成物をガス−液分離装置に供給し、水素ガス、液化ガス及び改質油に分離することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
改質油におけるアレン及びパラフィンを、アレン分離装置により分離し、アレンを豊富に含むフラクション及びパラフィンを豊富に含むフラクションを得ることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
アレン分離装置が、アレン抽出装置又はアレン脱着分離装置であることを特徴とする請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
上記改質油が、C又はC炭化水素の炭化水素混合物であることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
アレン抽出装置で用いられる抽出溶媒が、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、トリグリコール、テトラグリコール、ペンタグリコール、メタノール又はアセトニトリルからなる一群から選ばれることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
抽出溶媒及び抽出原料の質量比が1〜5であることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
アレン吸着分離装置にて用いられる吸着剤は、NaX又はNaYであることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項14】
パラフィンを豊富に含むフラクションを、蒸気分解装置に供給し、分解反応を実行し、エチレンを製造することを特徴とする請求項8に記載のプロセス。
【請求項15】
分解反応を、
0.05MPa〜0.03MPaの圧力、
0.01s〜0.6sの反応物質滞留時間、
0.3〜1.0の水/オイルの質量比、
760℃〜900℃の分解炉放出口の温度、
の条件下にて実行することを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
上記ナフサは、40℃〜80℃のASTM D-86初留点、及び、160℃〜220℃の終留点を有する炭化水素混合物であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
ナフサは、直留ナフサ、水素化分解されたナフサ、コークスナフサ、触媒分解されたナフサ、又は、フィールド縮合物からなることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
上記ナフサが、30質量%〜85質量%のアルカン、10質量%〜50質量%のナフタレン、及び、5質量%〜30質量%のアレンを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
上記ナフサが、0.5μg/g未満の量の硫黄、0.5μg/g未満の量の窒素、1.0ng/g未満の量のヒ素、10ng/g未満の量の亜鉛を含有する水素化精製されたナフサであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−255149(P2012−255149A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−119997(P2012−119997)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509059424)中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院 (14)
【Fターム(参考)】