説明

ナフタレン−2,3−ジオール誘導体および抗癌剤

【課題】ナフタレン−2,3−ジオール誘導体を含有してなる抗癌剤の提供。
【解決手段】下式で表される誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩。


(式中、X〜Xは、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、芳香族複素環基等を表し、R〜Rは、水素原子、アルキル基等を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフタレン環の6位に三級炭素が結合したナフタレン−2,3−ジオール誘導体を含有してなる抗癌剤および新規ナフタレン−2,3−ジオール誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナフタレンの2位および3位にヒドロキシ基を有し、6位に、tert−ブチル基を有する化合物(例えば、非特許文献1参照)がルミネセンス(spectral-luminescence)を有する化合物の中間体として知られている。
下記式で示される5位または6位に置換アミノアルキル基が置換したナフタレン−2,3−ジオール誘導体等が強心活性を有していることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、R、Rは水素原子等を表し、Qは水素原子、メチル基等を表し、Rは水素原子等を表し、R、Rは水素原子、低級アルキル基等を表し、R、Rは水素原子、メチル基等を表す)
下記式で示される6位に置換基を有するナフタレン誘導体が5−リポキシゲナーゼ阻害作用を有し、アレルギー症、喘息等の予防、治療薬として有用なことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【化2】

【0006】
(式中、R、Rは水素原子等を表し、Xは低級アルキレン基、−CO−等を表し、Rは水酸基、カルボキシル基、アルキル基、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、置換されていてもよいアミノ基等を表す)
下記式等で示されるナフタレン−2,3−ジオール誘導体等が、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤として有用であることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【化3】

【0008】
(式中、R、RはNO、CN、CHO等を表し、RはC〜Cアルキル基、NH−(C〜C)アルキル基等を表し、tは0〜4を表す)
また、下記式で示されるナフタレン誘導体を含有するフォトレジスト組成物が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
【化4】

【0010】
(式中、RおよびRは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アリール基等を表し、a〜dは、0もしくは1〜3の整数を表す)
【0011】
さらに、下記式で示される抗ウイルス活性等を示すビスナフタレン誘導体が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0012】
【化5】

【0013】
(式中、RおよびR’は、水素原子、置換もしくは非置換のC〜Cアルキル基等を表し、Rはカルボキシル基等を表し、nは2である)
しかしながら、これら何れの化合物も、抗癌剤としては知られていない。
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,169,108号公報
【特許文献2】特開平4−154736号公報
【特許文献3】WO02/22551
【特許文献4】特開平5−34913号公報
【特許文献5】米国特許第5,780,675号公報
【非特許文献1】Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii,1988,262-267
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、ナフタレン−2,3−ジオール誘導体を含有してなる優れた抗癌剤および新規ナフタレン−2,3−ジオール誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、ナフタレン環の6位に三級炭素が結合したナフタレン−2,3−ジオール誘導体が、抗癌活性を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明は、
(1) 式(I)
【0018】
【化6】

【0019】
{式中、X〜Xは、同一または異なって、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表し、
〜Rは、同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基、置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表す)、NR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、S(O)nR(式中、nは、0、1または2を表し、Rは、前記Rと同義である)、COR10(式中、R10は、前記Rと同義である)、COOR11(式中、R11は、前記Rと同義である)、OCOR12(式中、R12は、前記Rと同義である)、CONR1314(式中、R13およびR14は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR15COR16(式中、R15およびR16は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR17COOR18(式中、R17およびR18は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR19SO20(式中、R19およびR20は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR21C(=Q)NR2223[式中、Qは、酸素原子、硫黄原子、NR24(式中、R24は、前記Rと同義である)、NCN、CHNOまたはC(CN)を表し、R21、R22およびR23は、同一または異なって、前記Rと同義である]、NR25SONR2627(式中、R25、R26およびR27は、同一または異なって、前記Rと同義である)、SONR2829(式中、R28およびR29は、同一または異なって、前記Rと同義である)、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す}
で表されるナフタレン−2,3−ジオール誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩を含有してなる抗癌剤、
(2)X〜Xが、置換もしくは非置換アルキル基である(1)記載の抗癌剤、
(3)XおよびXが、メチル基を表し、Xが、n−プロピル基または2,2−ジメチルプロピル基である(2)記載の抗癌剤、および、
(4)R〜Rが、水素原子である(1)〜(3)記載の抗癌剤に関する。
また、本発明は、
(5)式(Ia)
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、X1aおよびX2aは、同一または異なって、非置換アルキル基を表し、X3aは、C〜C10の非置換アルキル基を表す)
で表されるナフタレン−2,3−ジオール誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩、および、
(6)X1aおよびX2aが、メチル基を表し、X3aが、n−プロピル基または2,2−ジメチルプロピル基である(5)記載のナフタレン−2,3−ジオール誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のナフタレン−2,3−ジオール誘導体は、優れた抗癌活性を有し、各種の癌に対して抗癌剤として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明における各基の定義は、以下の通りである。
アルキル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
〜C10アルキル基は、前記アルキル基の定義中の炭素数2〜10のアルキルを意味する。
【0024】
シクロアルキル基は、例えば、炭素数3〜8のシクロアルキル、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、1−シクロヘキセニル等が挙げられる。
アルケニル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルケニル、具体的には、ビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル等が挙げられる。
アルキニル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルキニル、具体的には、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、イソプロピニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、2−ペンテン−4−イニル、2−ヘキシニル等が挙げられる。
アリール基は、例えば、炭素数6〜14のアリール、具体的には、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
アラルキル基は、そのアリール部分は前記アリール基と同義であり、アルキル部分は前記アルキル基と同義であり、例えば、炭素数7〜15のアラルキル、具体的にはベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル等を挙げることができる。
【0025】
芳香族複素環基は、同一または異なって、少なくとも1以上の異項原子、例えば、窒素、酸素、硫黄等を含む5員または6員の芳香族複素環基からなり、該複素環基は、単環性または該単環性複素環基が複数またはアリール基と縮合した多環性の縮合芳香族複素環基、例えば、二環性もしくは三環性複素環基であってもよい。単環性の芳香族複素環基の具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等が挙げられ、多環性の縮合芳香族複素環基としては、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、カルバゾリル、キノリル、イソキノリル、アクリジニル、ナフチリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インダゾリル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、プリニル、プテリジニル、チアントレニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル等を挙げることができる。
【0026】
芳香族複素環アルキル基は、その芳香族複素環部分は前記芳香族複素環基と同義であり、アルキル部分は前記アルキル基と同義であり、例えば、少なくとも1以上の異項原子を含む芳香族複素環アルキル、具体的にはピリジルメチル、ピリジルエチル、フラニルメチル、チエニルメチル等を挙げることができる。
【0027】
脂環式複素環基は、同一または異なって、少なくとも1以上の異項原子、例えば、窒素、酸素、硫黄等を含み、飽和または一部不飽和結合が存在してもよい3〜8員の脂環式複素環基であり、単環性あるいは該単環性の複素環基が複数またはアリール基もしくは芳香族複素環基と縮合した多環性の縮合脂環式複素環基であってもよい。単環性の脂環式複素環基として、具体的には、アジリジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジヒドロチアゾリル、テトラヒドロフラニル、1,3−ジオキソラニル、チオラニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、オキサチアニル、オキサジアジニル、チアジアジニル、ジチアジニル、アゼピニル、ジヒドロアゾシニル等が例示され、多環性の縮合脂環式複素環基として、具体的には、インドリニル、イソインドリニル、クロマニル、イソクロマニル、キヌクリジニル等を挙げることができる。
【0028】
ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基および脂環式複素環基における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基、脂環式複素環基、OR、NR、S(O)mR(式中、mは、0、1または2を表す)、COR、COOR、OCOR、CONR、NRCOR、NRCOOR、NRSO、NRC(=Q)NR(式中、Qは、酸素原子、硫黄原子、NR、NCN、CHNOまたはC(CN)を表す)、NRSONR、SONR、ニトロ基、シアノ基およびハロゲン原子等から適宜選択される。ここで、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基または脂環式複素環基等を表す。
【0029】
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基および脂環式複素環基は、前記と同義である。
また、置換基としてのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基および脂環式複素環基等は、さらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記した置換基と同様のものが挙げられる。
【0030】
これら置換基の置換数としては、同一または異なって、最大各基に存在する水素原子の数まで可能であるが、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0031】
本発明の抗癌剤としては、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)という)であれば特に制限されないが、化合物(I)において、R〜Rは、水素原子である化合物が好ましく、また、X〜Xは、置換もしくは非置換のアルキル基であることが好ましく、XおよびXは、メチル基がより好ましく、Xは、C以上のアルキル基であることがより好ましく、具体的には、n−プロピル基または2,2−ジメチルプロピル基であることがさらに好ましく抗癌剤として用いることができる。
【0032】
化合物(I)の薬理学的に許容される塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等が挙げられ、酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の各無機酸塩、および、有機酸としてのギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、安息香酸等のカルボン酸類、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸類が挙げられる。金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩が、アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の各塩が、有機アミン塩としては、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、トルイジン等の各塩が挙げられる。
【0033】
次に、本発明の抗癌剤として使用される化合物(I)の製造法の例について説明するが、該化合物は、前記した特許文献等に記載の方法に準じて製造可能であり、また、市販品として入手することもできる。
なお、化合物(I)の中で、特に、式(Ia)で表される化合物は新規化合物であるが、下記製造方法により、製造することができる。
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、R、R、R、R、R、X、XおよびXは前記と同義であり、X1aは前記Xから一水素原子を除いた基を表す)
【0036】
化合物(I)は、化合物(II)と化合物(III)を、酸触媒の存在下、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。酸触媒の酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム等のルイス酸等が挙げられる。
【0037】
なお、化合物(II)は、市販品として入手可能であるか、前記した特許文献等に記載されている方法あるいはそれらに準じて得ることができ、化合物(III)は、市販品として入手可能である。
【0038】
上記製造法において、定義した基が実施方法の条件下で変化するかまたは方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される保護基の導入および脱離方法[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)参照]等を用いることにより目的化合物を得ることができる。また、各置換基に含まれる官能基の変換は、上記製造法以外にも公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations) 、R.C.ラロック(Larock)著(1989年)等]によっても行うことができ、化合物(I)の中には、これを合成中間体としてさらに別の誘導体(I)へ導くことができるものもある。
【0039】
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
【0040】
化合物(I)の中には、各種異性体が存在し得るものがあるが、本発明は、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を抗癌剤として使用することができる。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、酸または塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水あるいは各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明の抗癌剤として使用することができる。
【0041】
化合物(I)またはそれらの薬理学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤とすることが望ましく、該医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくは二種以上の担体と混合し、製剤学の常法により製造することができる。
【0042】
投与経路としては、経口投与または吸入投与、静脈内投与などの非経口投与が挙げられる。
投与形態としては、錠剤、吸入剤、注射剤などが挙げられ、錠剤は、例えば乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、界面活性剤、グリセリン等の、各種添加剤を混合し、常法に従い製造すればよく、吸入剤は、例えば乳糖等を添加し、常法に従い製造すればよい。注射剤は、水、生理食塩水、植物油、可溶化剤、保存剤等を添加し、常法に従い製造すればよい。
【0043】
化合物(I)またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、通常成人一人当たり、0.001mg〜5g、好ましくは0.1mg〜1g、より好ましくは1〜500mgを、一日一回ないし数回に分けて投与する。
【0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
6−(2−メチル−2−ペンチル)ナフタレン−2,3−ジオール(化合物1)の合成
【0046】
【化9】

【0047】
2,3−ジヒドロキシナフタレン(3)16.0gをトルエン30mLに溶かし、硫酸0.5mL、2−メチル−1−ペンテン(4)を12mL加え、60℃で5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、水に注ぎ、得られた混合溶液を酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、除媒し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を11.7g(収率48%)得た。
H−NMR(300MHz,CDOD)δ:7.50−7.36(2H,m),7.23(1H,dd),7.08−6.96(2H,m),1.69−1.58(2H,m),1.32(6H,s),1.15−0.98(2H,m),0.82(3H,t).
【実施例2】
【0048】
6−(2,4,4−トリメチル−2−ペンチル)ナフタレン−2,3−ジオール(化合物2)の合成
【0049】
【化10】

【0050】
2,3−ジヒドロキシナフタレン(3)16.0gをトルエン30mLに溶かし、硫酸0.5mL、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン(5)を16mL加え、60℃で6時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、水に注ぎ、得られた混合溶液を酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、除媒し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を10.8g(収率40%)得た。
H−NMR(300MHz,CDOD)δ:7.53(1H,d),7.52(1H,d),7.38(1H,dd),7.18(1H,s),7.16(1H,s),1.80(2H,s),1.41(6H,s),0.72(9H,s)
【実施例3】
【0051】
細胞増殖阻害試験
ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS;ハイクロン(Hyclone)社)を含有したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;インビトロジェン−ギブコBRL(Invitrogen-Gibco BRL)社)を培養培地として、96穴プレートで5000細胞/ウエル(cells/well)の密度で、5%COで満たされた37℃の恒温室で8時間培養した。各ウエルに、各種濃度となるように調製した試験サンプル(DMSO溶液より調製)の10%FBS含有DMEM溶液を添加し、培養を継続した。2日間培養後の生細胞数を、MTS法による細胞増殖試験キット(プロメガ(Promega)社;CellTiter96(R) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay)を用いて測定し、細胞増殖スコアを次式に従って算出した。
【0052】
細胞増殖スコア(%)=100xM/ M

:サンプルを添加した場合のMTS試薬による吸光度
:サンプル溶解用の溶媒のみを添加した場合のMTS試薬による吸光度

試験結果は、各濃度における細胞増殖阻害率で表した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【実施例4】
【0054】
化合物(1)10mg、乳糖70mg、デンプン15mg、ポリビニルアルコール4mgおよびステアリン酸マグネシウム1mg(計100mg)からなる組成を用い、常法により、錠剤を調製する。
【実施例5】
【0055】
常法により、化合物(2)70mg、精製大豆油50mg、卵黄レシチン10mgおよびグリセリン25mgからなる組成に、全容量100mLとなるよう注射用蒸留水を添加し、バイアルに充填後、加熱滅菌して注射剤を調製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

{式中、X〜Xは、同一または異なって、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表し、
〜Rは、同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基、置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表す)、NR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、S(O)nR(式中、nは、0、1または2を表し、Rは、前記Rと同義である)、COR10(式中、R10は、前記Rと同義である)、COOR11(式中、R11は、前記Rと同義である)、OCOR12(式中、R12は、前記Rと同義である)、CONR1314(式中、R13およびR14は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR15COR16(式中、R15およびR16は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR17COOR18(式中、R17およびR18は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR19SO20(式中、R19およびR20は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR21C(=Q)NR2223[式中、Qは、酸素原子、硫黄原子、NR24(式中、R24は、前記Rと同義である)、NCN、CHNOまたはC(CN)を表し、R21、R22およびR23は、同一または異なって、前記Rと同義である]、NR25SONR2627(式中、R25、R26およびR27は、同一または異なって、前記Rと同義である)、SONR2829(式中、R28およびR29は、同一または異なって、前記Rと同義である)、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す}
で表されるナフタレン−2,3−ジオール誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩を含有してなる抗癌剤。
【請求項2】
〜Xが、置換もしくは非置換アルキル基である請求項1記載の抗癌剤。
【請求項3】
およびXが、メチル基を表し、Xが、n−プロピル基または2,2−ジメチルプロピル基である請求項2記載の抗癌剤。
【請求項4】
〜Rが、水素原子である請求項1〜3記載の抗癌剤。
【請求項5】
式(Ia)
【化2】

(式中、X1aおよびX2aは、同一または異なって、非置換アルキル基を表し、X3aは、C〜C10の非置換アルキル基を表す)
で表されるナフタレン−2,3−ジオール誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
1aおよびX2aが、メチル基を表し、X3aが、n−プロピル基または2,2−ジメチルプロピル基である請求項5記載のナフタレン−2,3−ジオール誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩。

【公開番号】特開2008−120694(P2008−120694A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302962(P2006−302962)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(506374708)有限責任中間法人ファルマIP (9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】