説明

ナフタレンカルボン酸アミドの製造方法

【課題】高収率、低コストでナフタレンカルボン酸アミドを製造する方法を提供すること。
【解決手段】式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとを、エーテル結合を有する溶媒中で反応させることを含む、式[1]で表されるナフタレンカルボン酸アミドの製造方法を提供する。


[1]


[2]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフタレンカルボン酸アミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸に代表されるヒドロキシナフタレンカルボン酸から得られる、ヒドロキシナフタレンカルボン酸アミドやその誘導体はアゾ色素などの有機色素、医薬、農薬等の合成原料として重要な化合物である。
【0003】
従来、ヒドロキシナフタレンカルボン酸アミド誘導体の製造方法として、ヒドロキシナフタレンカルボン酸誘導体の酸ハロゲン化物を、アンモニアガスやアンモニア水をアミド化剤として用いてアミド化する方法が知られている(特許文献1〜3を参照)。
【0004】
しかしながら、アンモニアガスやアンモニア水をアミド化剤として用いる場合は、粘膜への刺激や、悪臭の発生など作業環境上大きな問題がある。また、アンモニアガスについては、気体であるがゆえに、流量の制御が困難であったり、取り扱いに難がある。また、反応液中にアンモニアガスを吹き込みアミド化を行う場合などには、反応により生成したヒドロキシナフトエ酸アミド誘導体が吹き込み管の先端で析出してしまい、吹き込み管が閉塞しやすいなどの問題もある。
【0005】
別のアミド化方法として、ヒドロキシナフタレンカルボン酸をN,N−ジメチルホルムアミドを溶媒に用いて、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩および1−ヒドロキシベンゾチアゾールの存在下に、炭酸アンモニウムによってアミド化する方法が知られている(特許文献4、Preparation 58を参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献4に記載の方法は、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩や1−ヒドロキシベンゾチアゾールなどの高価な試薬を多量に使用するものであり、工業的に有利な方法ではない。
【0007】
このため、安価で作業環境に影響の少ないアミド化剤を用いる、ヒドロキシナフタレンカルボン酸アミドの製造方法が求められている。
【特許文献1】国際公開第2005/012231号パンフレット
【特許文献2】特開昭62−120348号公報
【特許文献3】特開昭63−174963号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0182091号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、安価で作業環境に影響の少ないアミド化剤を用い、アンモニアやアンモニア水をアミド化剤として用いた場合と同等以上の高収率、低コストでナフタレンカルボン酸アミドを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとを、エーテル結合を有する溶媒中で反応させることを含む、式[1]で表されるナフタレンカルボン酸アミドの製造方法を提供する:
【化1】

[1]
【化2】

[2]
[式[1]および式[2]において、
Halは、塩素原子または臭素原子である;
mは、1または2の整数である;
Rは、水素原子、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよい飽和アルキル基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜20の分岐を有していてもよい飽和アルカノイル基、およびベンゾイル基からなる群より選択される基である;
Xは、水素原子、シアノ基、式[3]で表される基、式[4]で表される基、および式[5]で表される基;
−(CO−NH)n−Y [3]
−CO−O−Y [4]
【化3】

[5]
からなる群より選択される基であり、mが2である場合にはXは水素原子である;
nは、1または2の整数である;
は、水素原子、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基から選択される基である;
は、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基である;
Zは、−O−、−S−または−NH−である;
Aは、置換基を有していてもよい芳香族環、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基から選択される基である]。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において、「芳香族」とは、6員の単環または縮合環であって、縮合環の環数4までの芳香族基を意味する。
「共役二重結合を有する複素環基」とは、1以上のN、S、およびOからなる群から選択されるヘテロ原子を含み、共役二重結合を有する5員乃至6員の単環または縮合環である複素環基を意味する。縮合環を形成する場合は環数6までのものとする。
【0011】
本発明において原料として用いる、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドは、公知の何れの方法によって得られたものであってもよい。
例えば、以下の式[9]で表されるナフタレンカルボン酸を、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどの溶媒を用いて、塩化チオニル、臭化チオニル、塩化オキサリルなどの酸ハロゲン化剤を用いて、酸ハロゲン化物とした後に、溶媒および余剰の酸ハロゲン化剤を大気圧下または減圧下に留去することにより調製することができる。
【化4】

[9]
[式[9]において、m、R、およびXは式[1]および式[2]における定義と同意]。
【0012】
式[9]で表されるナフタレンカルボン酸と酸ハロゲン化剤の反応温度としては、0〜80℃が好ましく、30〜50℃が特に好ましい。
式[9]で表されるナフタレンカルボン酸と酸ハロゲン化剤との反応に用いる溶媒としてはテトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
式[9]で表されるナフタレンカルボン酸と酸ハロゲン化剤との反応は、空気中で行ってもよいが、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスの雰囲気下におこなうのが好ましい。
式[9]で表されるナフタレンカルボン酸と酸ハロゲン化剤の反応を行う圧力は特に制限されず、大気圧下、加圧下、減圧下のいずれにおいても行うことが出来る。
式[9]で表されるナフタレンカルボン酸と酸ハロゲン化剤の反応時間は、ナフタレンカルボン酸の種類によっても異なるが、通常0.5〜20時間、好ましくは0.5〜5時間で行われる。
【0013】
本発明において用いる式[2]で表される好ましいナフタレンカルボン酸ハライドの原料として用いるのに好適な、式[9]で表されるナフタレンカルボン酸の例としては、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−7−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−8−ナフトエ酸、2−ヒドロキシナフタレン−1,6−ジカルボン酸、およびこれらの化合物中のヒドロキシ基をメチル基、ベンジル基またはアセチル基で修飾した化合物、ならびに以下の式[I]、式[II]および式[III]で表される化合物が挙げられる。
【化5】

[I]
【化6】

[II]
【化7】

[III]
[式[I]、式[II]、および式[III]においてRおよびXは式[1]および式[2]における定義と同意]。
これらのナフタレンカルボン酸中では、式[I]、式[II]、および式[III]で表される化合物が特に好ましい。式[I]、式[II]、および式[III]で表される化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−アセトキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、2−アセトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸、2−ヒドロキシ−3−エトキシカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸、2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸、2−ヒドロキシ−3−フェニルアミノカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸、2−ヒドロキシ−6−メトキシカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸、2−ヒドロキシ−6−エトキシカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸、2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸、および2−ヒドロキシ−6−フェニルアミノカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸が挙げられる。
【0014】
式[I]、式[II]、および式[III]で表される化合物の中でも最も好ましいものは、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、2−アセトキシ−3−ナフトエ酸、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸、または2−アセトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸である。
【0015】
これらの式[9]で表されるナフタレンカルボン酸の調製方法は特に限定されず、例えば、ナフトールのアルカリ金属塩を二酸化炭素と反応させるコルベシュミット法や、アルキル基、アシル基、またはホルミル基を有し、かつ、水酸基をアルキル基、アラルキル基、またはアシル基などにより保護されたナフトールをコバルトやマンガンなどの金属を含む触媒の存在下に分子状酸素により酸化した後、所望より水酸基の脱保護を行う方法などにより調製することができる。
【0016】
本発明において用いる、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドにおいて、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよい飽和アルキル基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜20の分岐を有していてもよい飽和アルカノイル基、およびベンゾイル基からなる群より選択される基である。
【0017】
Rが炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよい飽和アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、イソヘキシル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、およびn−オクタデシル基などが挙げられる。
【0018】
Rが炭素原子数7〜12のアラルキルである場合の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、および2−ナフチルメチルなどが挙げられる。
【0019】
Rが炭素原子数2〜20の分岐を有していてもよい飽和アルカノイル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、2−メチルプロパノイル基、ブタノイル基、3−メチルブタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、ペンタノイル基、3−メチルブタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、およびステアロイル基などが挙げられる。
【0020】
本発明において用いる、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドにおいて、基Xは、水素原子、シアノ基、式[3]で表される基、式[4]で表される基、および式[5]で表される基からなる群より選択されるものである。
【0021】
Xが式[3]で表される基である場合の、Xの例としてはアルキルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、およびアミノカルボニル基などが挙げられる。
【0022】
式[3]中、Yは水素原子、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基から選択される基である。
が炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基である場合のYの例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、イソヘキシル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、ビニル基、およびアリル基などが挙げられる。
【0023】
が置換基を有していてもよい芳香族基である場合のYの例としては、フェニル基、ナフチル基、およびアントラキノニル基などが挙げられる。
【0024】
が置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基である場合の複素環基を構成する複素環の例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾロンおよびフタルイミドなどが挙げられる。
【0025】
が芳香族基、または共役二重結合を有する複素環基である場合に、Yが有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、フェノキシ基、アミノ基、炭素原子数2〜6のアルカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、水酸基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボキシル基、フェノキシカルボニル基、炭素原子数2〜6のアルキルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、炭素原子数1〜6のアルキルアミノスルホニル基、および炭素原子数2〜6のアルケニル基からなる群より選択される基が挙げられる。Yが複数の置換基を有する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
が有する置換基が芳香族基を含む場合には、置換基中の芳香族基は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、およびシアノ基からなる群より選択される一つ以上の置換基を有していてもよい。
【0027】
が芳香族基、または共役二重結合を有する複素環基である場合に有していてもよい置換基の具体例としては、クロル基、ブロム基、ヨード基、またはフルオロ基などのハロゲン原子;クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基、またはトリフルオロメチル基などの炭素原子数1〜6のハロゲン化アルキル基;ニトロ基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ペンチル基、イソヘキシル基、またはn−ヘキシル基などの炭素原子数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、またはn−ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1〜6のアルコキシ基;シアノ基;フェノキシ基;アミノ基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブタノイルアミノ基、またはペンタノイルアミノ基などの炭素原子数2〜6のアルカノイルアミノ基;ベンゾイルアミノ基;水酸基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、またはn−ヘキシルオキシカルボニル基などの炭素原子数2〜6のアルコキシカルボキシル基;フェノキシカルボニル基;メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、n−プロピルアミノカルボニル基、n−ブチルアミノカルボニル基、またはn−ヘキシルアミノカルボニル基などの炭素原子数2〜6のアルキルアミノカルボニル基;フェニルアミノカルボニル基;メチルアミノスルホニル基、エチルアミノスルホニル基、n−プロピルアミノスルホニル基、n−ブチルアミノスルホニル基、n−プロピルアミノスルホニル基、またはn−ヘキシルアミノスルホニル基などの炭素原子数1〜6のアルキルアミノスルホニル基;およびビニル基、またはアリル基などの炭素原子数2〜6のアルケニル基が挙げられる。
【0028】
本発明において用いる、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドにおいて、Xが式[4]で表される基である場合のY2は、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基である。かかるY2の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、ビニル基、およびアリル基などが挙げられる
【0029】
本発明において用いる、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドにおいて、Xが式[5]で表される基である場合、Zは、−O−、−S−または−NH−であり、Aは、置換基を有していてもよい芳香族環、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基から選択される基である。Aが置換基を有していてもよい芳香族環である場合のAの具体例としてはベンゼン、ナフタレン、アントラキノンなどの芳香族環が挙げられる。Aが置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環である場合のAの具体例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾロンおよびフタルイミドなどが挙げられる。これらの芳香族環もしくは共役二重結合を有していてもよい複素環が有していてもよい置換基の例としては、前述のYが芳香族基もしくは共役二重結合を有する複素環基である場合に有していてもよい置換基と同様である。
【0030】
本発明において用いる、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドにおいて、Xが水素原子以外のものである場合には、例えば、国際公開第96/032366号パンフレット、国際公開第00/023525号パンフレット、国際公開第01/087859号パンフレット、および国際公開第2005/012231号パンフレットなどに記載の方法を参照し調製することができる。
【0031】
本発明において用いる式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドにおいて、ハロゲノカルボニル基を構成するハロゲン原子(Hal)は、塩素または臭素である。これらのハロゲン原子の中では、ナフタレンカルボン酸ハライドの調製が容易であり、アミド化反応時の反応性に優れることなどから、塩素原子であるのが好ましい。
【0032】
本発明において用いる式[2]で表される好ましいナフタレンカルボン酸ハライドの例としては、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸クロリド、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸クロリド、1−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−7−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−8−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシナフタレン−1,6−ジカルボン酸ジクロリド、およびこれらの化合物中のヒドロキシ基をメチル基、ベンジル基またはアセチル基で修飾した化合物、ならびに以下の式[6]、式[7]および式[8]で表される化合物が挙げられる。
【化8】

[6]
【化9】

[7]
【化10】

[8]
[式[6]、式[7]、および式[8]においてRおよびXは式[1]および式[2]における定義と同意]。
【0033】
これらのナフタレンカルボン酸ハライドの中では、式[6]、式[7]、および式[8]で表される化合物が特に好ましい。式[6]、式[7]、および式[8]で表される化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸クロリド、2−アセトキシ−3−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸クロリド、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸ジクロリド、2−アセトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸ジクロリド、2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸クロリド、2−ヒドロキシ−3−エトキシカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸クロリド、2−ヒドロキシ−3−n−ブトキシカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸クロリド、2−ヒドロキシ−3−フェニルアミノカルボニル−6−ナフタレンカルボン酸クロリド、2−ヒドロキシ−6−メトキシカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸クロリド、2−ヒドロキシ−6−エトキシカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸クロリド、2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸クロリド、および2−ヒドロキシ−6−フェニルアミノカルボニル−3−ナフタレンカルボン酸クロリドが挙げられる。
【0034】
式[6]、式[7]、および式[8]で表される化合物の中でも最も好ましいものは、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸ジクロリド、2−アセトキシ−3−ナフトエ酸クロリド、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリド、または2−アセトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸ジクロリドである。
【0035】
本発明において用いる式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドは、酢酸アンモニウムとの反応に供され、式[1]で表されるナフタレンカルボン酸アミドとされる。
【0036】
本発明において、酢酸アンモニウムは、粉体として用いてもよく、後述の反応溶媒を用いた懸濁液または溶液として用いてもよい。
【0037】
本発明においてアミド化に用いる酢酸アンモニウムの量は、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライド中のハロゲノカルボニル基の量に対して、好ましくは0.8〜10倍モル、より好ましくは1.0〜7倍モル、最も好ましくは1.2〜5倍モルである。
【0038】
本発明において用いる酢酸アンモニウムは高度に精製された高純度品を用いるのが好ましいが、蟻酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの他のアンモニウム塩を含む粗化合物であってもよい。
【0039】
酢酸アンモニウムが他のアンモニウム塩を含む場合には、酢酸アンモニウムと他のアンモニウム塩の合計量中、酢酸アンモニウムが80重量%以上であるのが好ましく、90重量%以上であるのが好ましく、95重量%以上であるのが特に好ましい。
酢酸アンモニウムが他のアンモニウム塩を含む粗化合物である場合には、かかる粗化合物の使用量としては酢酸アンモニウムの純度を考慮して用いればよい。
【0040】
本発明において、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムの反応にはエーテル結合を有する溶媒を用いる。本発明において用いるエーテル結合を有する溶媒の分子構造は、直鎖状、分岐鎖状あるいは環状のいずれのものであってもよい 本発明において用いるエーテル結合を有する溶媒は、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムを反応させる条件下において液体であれば特に制限されない。反応温度がエーテル結合を有する溶媒の大気圧における沸点を超える場合は、反応槽として耐圧装置を用いればよい。
本発明において用いるエーテル結合を有する溶媒のうち特に好ましいものは、−40℃〜100℃において、大気圧で液状のものである。
【0041】
本発明に好適に用いられるエーテル結合を有する溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、トリオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル 、ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群より選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0042】
これらの溶媒の中では、反応性、生成物の回収操作が容易であること、反応後に精製して再利用しやすいことなどから、テトラヒドロフランを単独で用いるのが特に好ましい。
【0043】
本発明において、エーテル結合を有する溶媒とともに、エーテル結合を有さない溶媒を使用することも可能である。
本発明において用いることができる、エーテル結合を有さない溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの脂肪酸エステル;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;塩化メチレン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン;アセトニトリル、プロピオニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの含窒素溶媒などが挙げられる。
【0044】
本発明においてエーテル結合を有する溶媒とともに、エーテル結合を有さない溶媒を用いる場合の、エーテル結合を有さない溶媒の使用量は、溶媒総量の50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
【0045】
本発明において、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムを反応させる方法は、本発明における所定の条件で行われる限り特に制限されず、回分式であっても、連続式であってもよい。
【0046】
式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとをエーテル結合を有する溶媒中で反応させる操作の態様としては例えば以下の1)〜4)のものが挙げられる。
1)反応槽中のエーテル結合を有する溶媒と式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドからなる混合液に、酢酸アンモニウムを、粉体あるいは、エーテル結合を有する溶媒との混合液として添加し、攪拌混合し反応させる方法;
2)反応槽中のエーテル結合を有する溶媒と酢酸アンモニウムからなる混合液に、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドを、固体状あるいは、エーテル結合を有する溶媒との混合液として添加し、攪拌混合し反応させる方法;
3)エーテル結合を有する溶媒と式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドからなる混合液と、酢酸アンモニウムとエーテル結合を有する溶媒との混合液を、同時に反応槽に加え、攪拌混合し反応させる方法;
4)エーテル結合を有する溶媒を仕込んだ反応槽に、固体状のナフタレンカルボン酸ハライドと、粉体の酢酸アンモニウムを同時に添加し、攪拌混合し反応させる方法。
【0047】
1)〜4)に例示する態様の中では、反応収率に優れ、副生物の生成が少ないことなどから、2)の態様を用いるのが特に好ましい。
2)の態様にて、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムを反応させる場合には、エーテル結合を有する溶媒と酢酸アンモニウムを10分〜5時間、より好ましくは15分〜4時間、特に好ましくは30分〜3時間、混合状態で保持した後に、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドを添加するのが、反応収率の点で好ましい。
【0048】
上記の1)〜4)方法において、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドおよび/または酢酸アンモニウムを反応槽に添加する方法は特に制限されず、所定の量を一度に添加してもよく、連続的または断続的に少量ずつ添加してもよい。これらの添加方法の中でも、副反応が起こりにくい事などから、連続的または断続的に少量ずつ添加する方法がより好ましい。
式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとの反応に用いる反応槽は、反応液が十分に撹拌される限り特に制限されず、公知の種々の反応槽を用いることができる。
【0049】
本発明において、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムを反応させる圧力条件は特に制限されず、減圧下、加圧下、または大気圧下の何れの条件下において行ってもよい。また、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムの反応は空気中で行ってもよいが、窒素、ネオン、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下に行うのが好ましい。
【0050】
本発明において、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとをエーテル結合を有する溶媒中で反応させる温度は、反応が良好に進行する限り特に制限されず、ナフタレンカルボン酸ハライドや溶媒の種類、溶媒の使用量などに応じて適宜選択すればよい。
【0051】
式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとの反応、即ち、アミド化反応は典型的には、−40〜100℃で行うのが好ましく、−20〜80℃で行うのがより好ましく、0〜60℃で行うのが最も好ましい。
【0052】
本発明における、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとの反応時間は、反応温度、ナフタレンカルボン酸ハライドおよび溶媒の種類によって異なるが、典型的には15分〜10時間で行われる。
【0053】
上記の条件により反応を行うことにより、式[1]で表されるナフタレンカルボン酸アミドを調製することができる。このようにして得られたナフタレンカルボン酸アミドは、反応液中に析出している場合には、遠心分離やフィルタープレスなどの常法によって回収すればよく、反応液中に溶解している場合には、反応液を濃縮するなどの方法により、ナフタレンカルボン酸アミドを析出させた後に回収すればよい。
【0054】
このようにして回収された式[1]で表されるナフタレンカルボン酸アミドは、所望により、水やメタノール、またはメタノール水溶液などによる洗浄や、適当な溶媒を用いて再結晶するなどの方法により精製された後に、アゾ色素などの有機色素、医薬、農薬等の合成原料として好適に使用される。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0055】
実施例1
[酸クロル化工程]
2−アセトキシ−6−ナフトエ酸23.1g(0.1モル)、N,N−ジメチルホルムアミド0.1g、およびテトラヒドロフラン185gを容量300mlのガラス製容器に仕込み、室温にて攪拌下に塩化チオニル23.9gを滴下した。次いで、50℃に昇温し、同温度にて30分反応を行った。得られた反応液より、ロータリーエバポレーターを用い、テトラヒドロフランと過剰の塩化チオニルを留去し、残渣として2-アセトキシ-6-ナフトエ酸クロリド24.9g(0.1モル)を得た。
【0056】
[アミド化工程]
酢酸アンモニウム15.4g(0.2モル)およびテトラヒドロフラン69.3gを容量300mlのガラス製容器に仕込み、20℃にて攪拌下に1時間保持した。
次いで、酸クロル化工程により得られた2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドをテトラヒドロフラン115.5gに溶解させた液を、テトラヒドロフラン中の酢酸アンモニウムの懸濁液に15分で滴下し、引き続き20℃にて30分攪拌保持しアミド化反応を行った。
【0057】
反応終了後の反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析したところ、原料の2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドに対して、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸アミドの生成率は94モル%であった。
【0058】
実施例2
[酸クロル化工程]
2−アセトキシ−6−ナフトエ酸23.1g(0.1モル)を2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸18.8g(0.1モル)に変え、テトラヒドロフラン94gを用いることの他は、実施例1と同様にして、酸クロル化を行い、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸クロリド20.6g(0.1モル)を得た。
【0059】
[アミド化工程]
酸クロル化工程により得られた2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸クロリドをテトラヒドロフラン25gに溶解させることの他は、実施例1と同様にしてアミド化を行った。
【0060】
反応終了後の反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析したところ、原料の2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸クロリドに対して、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミドの生成率は77モル%であった。
【0061】
実施例3
[酸クロル化工程]
2−アセトキシ−6−ナフトエ酸23.1g(0.1モル)を2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−6−ナフトエ酸24.6g(0.1モル)に変え、テトラヒドロフラン123gを用いることの他は、実施例1と同様にして、酸クロル化を行い、2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−6−ナフトエ酸クロリド26.4g(0.1モル)を得た。
【0062】
[アミド化工程]
酸クロル化工程により得られた2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−6−ナフトエ酸クロリドをテトラヒドロフラン54gに溶解させることの他は、実施例1と同様にしてアミド化を行った。
【0063】
反応終了後の反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析したところ、原料の2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−6−ナフトエ酸クロリドに対して、2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニル−6−ナフトエ酸アミドの生成率は72モル%であった。
【0064】
実施例4
[酸クロル化工程]
2−アセトキシ−6−ナフトエ酸23.1g(0.1モル)を2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシカルボニル−3−ナフトエ酸28.8g(0.1モル)に変え、テトラヒドロフラン288gを用い、容量500mlのガラス製容器を用いることの他は、実施例1と同様にして、酸クロル化を行い、2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシカルボニル−3−ナフトエ酸クロリド30.6g(0.1モル)を得た。
【0065】
[アミド化工程]
酸クロル化工程により得られた2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシカルボニル−3−ナフトエ酸クロリドをテトラヒドロフラン54gに溶解させることの他は、実施例1と同様にしてアミド化を行った。
【0066】
反応終了後の反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析したところ、原料の2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシカルボニル−3−ナフトエ酸クロリドに対して、2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシカルボニル−3−ナフトエ酸アミドの生成率は88モル%であった。
【0067】
実施例5
実施例1と同様にして、反応液からテトラヒドロフランおよび塩化チオニルを留去し、残渣として得られた2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドに対して、テトラヒドロフラン185gを加え、40℃に昇温し均一に溶解させた。
【0068】
得られた2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドのテトラヒドロフラン溶液に、20℃にて、酢酸アンモニウムの粉末15.4g(0.2モル)を少量ずつ加え、同温度にて4時間アミド化反応を行った。
【0069】
反応終了後の反応液をHPLCにより分析したところ、原料の2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドに対して、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸アミドの生成率は77モル%であった。
【0070】
実施例6
アミド化反応に用いる溶媒をテトラヒドロフランからジエチレングリコールジエチルエーテルに変えることの他は、実施例5と同様にしてアミド化反応を行った。
【0071】
反応終了後の反応液をHPLCにより分析したところ、原料の2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドに対して、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸アミドの生成率は70モル%であった。
【0072】
比較例1〜3
酢酸アンモニウムに変えて、表1に記載の種類のアンモニウム塩を用いることの他は、実施例5と同様にしてアミド化反応を行った。
【0073】
反応終了後のHPLCによる、原料の2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドに対する、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸アミドの生成率(モル%)を表1に記す。
【0074】
【表1】

【0075】
比較例4および5
アミド化反応の溶媒にテトラヒドロフランに変えて、表2に記載の溶媒を用いることの他は実施例5と同様にしてアミド化反応を行った。
【0076】
反応終了後のHPLCによる、原料の2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリドに対する、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸アミドの生成率(モル%)を表2に記す。
【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドと酢酸アンモニウムとを、エーテル結合を有する溶媒中で反応させることを含む、式[1]で表されるナフタレンカルボン酸アミドの製造方法:
【化1】

[1]
【化2】

[2]
[式[1]および式[2]において、
Halは、塩素原子または臭素原子である;
mは、1または2の整数である;
Rは、水素原子、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよい飽和アルキル基、炭素原子数7〜12のアラルキル基、炭素原子数2〜20の分岐を有していてもよい飽和アルカノイル基、およびベンゾイル基からなる群より選択される基である;
Xは、水素原子、シアノ基、式[3]で表される基、式[4]で表される基、および式[5]で表される基;
−(CO−NH)n−Y [3]
−CO−O−Y [4]
【化3】

[5]
からなる群より選択される基であり、mが2である場合にはXは水素原子である;
nは、1または2の整数である;
は、水素原子、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基から選択される基である;
は、炭素原子数1〜20の分岐を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい脂肪族基である;
Zは、−O−、−S−または−NH−である;
Aは、置換基を有していてもよい芳香族環、および置換基を有していてもよい共役二重結合を有する複素環基から選択される基である]。
【請求項2】
酢酸アンモニウムの量が、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライド中のハロゲノカルボニル基の量に対して0.8〜10倍モルである、請求項1に記載のナフタレンカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項3】
式[2]において、Halが塩素原子である、請求項1または2に記載のナフタレンカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項4】
ナフタレンカルボン酸ハライドが、式[6]、式[7]、または式[8]で表される化合物である、請求項1から3のいずれかに記載のナフタレンカルボン酸アミドの製造方法:
【化4】

[6]
【化5】

[7]

【化6】

[8]
[式[6]、式[7]、および式[8]において、Hal、RおよびXは式[1]および式[2]における定義と同意]。
【請求項5】
ナフタレンカルボン酸ハライドが、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸クロリド、2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸ジクロリド、2−アセトキシ−3−ナフトエ酸クロリド、2−アセトキシ−6−ナフトエ酸クロリド、2−アセトキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸ジクロリドからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1から4の何れかに記載のナフタレンカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項6】
エーテル結合を有する溶媒が、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、トリオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびジエチレングリコールジブチルエーテルからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1から5の何れかに記載のナフタレンカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項7】
エーテル結合を有する溶媒がテトラヒドロフランである、請求項1から6の何れかに記載のナフタレンカルボン酸アミドの製造方法。
【請求項8】
エーテル結合を有する溶媒および酢酸アンモニウムからなる混合液を提供する工程、および、該混合液に、式[2]で表されるナフタレンカルボン酸ハライドを添加する工程を含む、請求項1から7の何れかに記載のナフタレンカルボン酸アミドの製造方法。

【公開番号】特開2007−332095(P2007−332095A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167463(P2006−167463)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000189659)上野製薬株式会社 (76)
【Fターム(参考)】