説明

ナフトキノン系抗がん活性成分の効率的製造

【課題】本発明の課題は、従来では大量生産が困難であったノウゼンカズラ科植物に含有される有効成分を安定的かつ持続的に生産することである。
【解決手段】本発明は、特定の培養条件下におけるノウゼンカズラ科植物の細胞培養により抗がん活性成分NQ801を効率的に製造する方法に関する。本発明の成分生産系は抗がん活性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノウゼンカズラ科植物の細胞培養により抗がん活性成分を効率的に製造する方法に関する。本発明はまた、ノウゼンカズラ科植物の細胞培養により生産された抗がん活性成分を含有する該植物の細胞塊またはカルスを含む、食品にも関する。
【背景技術】
【0002】
ノウゼンカズラ科タベブイア属の広葉樹タベブイア・アベラネダエ(Tabebuia avellanedae;タベブイア・インペティギノーサ(Tabebuia impetiginosa)とも称される;ブラジル産薬用植物事典, 第158〜159頁, 株式会社アボック社出版局, 1996年4月27日初版発行を参照のこと)は、南米アマゾン川流域を原産とする大木である。これらの植物は古代インカの時代より知られた伝統的な民間薬であり、その樹皮は利尿薬や収斂薬として利用されてきた。これらの植物はまた、抗がん、抗真菌、抗菌および抗炎症等の効果を示す医薬資源としても着目されている。これらの植物に含まれる有効成分としては、式:
【化1】

で示されるNQ801(化学名:(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ジオン;NFD(登録商標);ナフトキノン系天然色素成分)が挙げられ、様々な腫瘍細胞に対して強力な細胞毒性を示すと同時に有意な抗がん活性を有することが知られている(特許文献1、2および非特許文献1を参照のこと)。
【0003】
NQ801の入手方法としては、一般にタベブイア・アベラネダエの樹皮からの抽出方法が知られている(特許文献1および非特許文献1を参照のこと)。しかしながら、この植物の人工栽培は非常に困難であり、さらに樹皮からの抽出による収率は乾燥質量に対して0.001〜0.05%程度と極めて低いため(非特許文献1を参照のこと)、従来の抽出方法によるNQ801の大量生産は容易でなかった。
【0004】
一方、植物細胞工学技術を用いた組織培養方法の一つとして、植物体からカルスを誘導する方法が知られている(特許文献3〜6を参照のこと)。カルスは、分化した植物組織の一部(外植片または植物片)を適当な培地中で培養することにより得られる無定形の組織塊であり、これを完全な植物体にまで分化させることもできる。
【0005】
一般に、カルス培養により植物の有効成分を生産する方法は、植物細胞を培地中にて継代培養して増殖させ、植物から細胞塊またはカルスを誘導および増殖させる工程、および該工程で増殖させた細胞塊またはカルスを別の新たな培地に移植して継代培養することにより有効成分を生産する工程を必要とする(特許文献3〜6および非特許文献1を参照のこと)。すなわち、従来のカルス培養は、細胞増殖工程にて4〜5週間ごとに何代かの継代培養を行った後、細胞増殖用の培地を別の新たな培地に置き換えて有効成分を生産していた。そのため、従来法では、植物に含まれる所望量の有効成分を生産するまでに膨大な時間と手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−145162号公開公報
【特許文献2】特開2006−290871号公開公報
【特許文献3】特開平5−186361号公開公報
【特許文献4】特開平7−184679号公開公報
【特許文献5】特開平10−42888号公開公報
【特許文献6】特開平10−52296号公開公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】上田伸一ら, ファイトケミストリー(Phytochemistry), 1994年, 第36巻, 第2号, p. 323-325
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題の一つは、改良された細胞培養技術を用いて、従来では大量生産が困難であったノウゼンカズラ科植物に含まれる有効成分、特に抗がん活性成分を効率的に製造することである。
【0009】
本発明が解決しようとする別の課題は、培養条件を検討することにより、有効成分の製造に必要な工程数を軽減し、安定的かつ持続的に有効成分を製造することである。培養条件としては、特に培地、およびこれに含まれる種々の物質が挙げられる。
【0010】
本発明が解決しようとするさらなる課題は、改良された細胞培養技術により生産された細胞塊またはカルスの全部または一部を含む、食品(特に健康食品もしくは機能性食品など)、医薬または医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の具体的態様を提供する:
(1)ノウゼンカズラ科植物の細胞塊を一以上の培地中にて懸濁培養または固体培養することにより抗がん活性成分を生産する成分生産工程(a)を含むことを特徴とする、抗がん活性成分の製造方法;
【0012】
(2)さらに工程(a)で得られた細胞塊、工程(a)で用いられた培地またはその両者から一種以上の抗がん活性成分を回収する成分回収工程(b)を含む、(1)記載の方法。
【0013】
(3)ノウゼンカズラ科植物がタベブイア・アベラネダエ(Tabebuia avellanedae)またはタベブイア・インペティギノーサ(Tabebuia impetiginosa)である、(1)記載の方法;
【0014】
(4)培地が成長調整物質および有機補充物質を含む、(1)記載の方法;
【0015】
(5)成長調整物質がオーキシン類、サイトカイニン類およびその混合物からなる群から選択される、(4)記載の方法;
【0016】
(6)オーキシン類がナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、インドール酢酸(IAA)、4-クロロインドール酢酸、インドール酪酸(IBA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)およびその混合物からなる群から選択され、サイトカイニン類がベンジルアデニン(BA)、カイネチン(K)およびその混合物からなる群から選択される、(5)記載の方法;
【0017】
(7)サイトカイニン類がベンジルアデニンまたはカイネチンである、(5)記載の方法;
【0018】
(8)オーキシン類およびサイトカイニン類がそれぞれ0.1〜2.5 ppm濃度である、(5)記載の方法;
【0019】
(9)有機補充物質が糖、寒天、ゲランガムおよびその混合物からなる群から選択される、(4)記載の方法;
【0020】
(10)抗がん活性成分が式:
【化2】

で示される2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ジオンまたはその誘導体である、(1)記載の方法;
【0021】
(11)抗がん活性成分が式:
【化3】

で示されるNQ801(化学名:(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ジオン)またはその誘導体である、(1)記載の方法;
【0022】
(12)抗がん活性成分が工程(a)で得られた細胞塊、工程(a)で用いられた培地またはその両者の総質量に対して少なくとも5質量%製造される、(1)記載の方法;
【0023】
(13)さらにノウゼンカズラ科植物の細胞を懸濁培養または固体培養により増殖させる細胞増殖工程を含む、(1)記載の方法;および
【0024】
(14)(1)の工程(a)で得られた、細胞塊。
【0025】
(15)(1)の工程(a)で得られた細胞塊、工程(a)で用いられた培地またはその両者を含有する、食品。
【0026】
成分生産工程における成長調整物質は、植物細胞の細胞塊またはカルスの誘導および増殖に影響を与えることができる。そのため、細胞塊またはカルスの誘導および増殖は、成長調整物質の種類および濃度などの要因に依存しうる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、特定の培養条件下において、成分生産工程のみで有効成分を効率的に生産できるという従来技術にはない特徴的な効果を奏する。すなわち、本発明は、従来の細胞培養における何代もの継代培養による細胞増殖工程を必要とせず、短期間(5日〜60日)で物質生産が可能であるという効果を奏する。当該効果は、特定の成長調整物質の種類およびその濃度を選択することにより、特に顕著となる。
【0028】
本発明は、特定の培養条件下において、さらに細胞増殖工程を含むことにより、該工程で得られた細胞塊を再利用(継代培養)して何度でも有効成分を製造することができるという効果を奏する。これは、本発明における成分調整物質などの培養条件の調節により、細胞塊の増殖と成分生産が同時に起こるため、上記工程を含むことが成分生産に不利とならないためである。
【0029】
本発明は、植物体の植物組織から有効成分を直接抽出する方法と比べて、安定的かつ持続的な物質生産が短期間で可能であるという効果を奏する。これは、本発明では、従来のカルスの誘導および増殖に必要な工程が不要または短期間であるためである。
【0030】
ノウゼンカズラ科植物には種々の生理活性成分が含まれているにもかかわらず、本発明の製造方法により特定の有効成分、特にNQ801を主要な成分の一つとして選択的に製造することができるという予測し得ない効果を奏する。
【0031】
本発明の成分生産工程で用いられた培地の有機溶媒抽出物は、腫瘍細胞に対して顕著な細胞毒性効果を奏する。これは、該工程で有効成分を産生した細胞塊またはカルスから有効成分が培地中に分泌されたためである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、参考例2の殺菌方法の検討における植物体または植物組織の様子を示す。図1中、αは70%エタノールのみで殺菌した場合、βは70%エタノールおよび次亜塩素酸ナトリウムで殺菌した場合を示す。
【図2】図2は、実施例2のナフタレン酢酸(NAA)およびベンジルアデニン(BA)をそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地における培養開始から一ヶ月後の培地の状態を示す。
【図3】図3は、実施例3のタベブイア・アベラネダエの成分生産工程における懸濁培養(液体培養)の様子を示す。
【図4】図4は、実施例4.1の定量分析における培地の様子を示す。
【図5】図5は、実施例4.3の成分生産系の初代培養物の抽出成分のみ、およびこれとNQ801を混合したもののHPLCチャートを示す。
【図6】図6は、実施例4.3の成分生産系の初代培養物の抽出成分のIT-TOF-MSスペクトルを示す。各ピーク上部の数字はそのピークにおける物質の分子量を示しており、下線部分はNQ801とその異性体のピークを示す。
【図7】図7は、2,4-DおよびBAをそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地中で5日間培養された成分生産系から回収された成分のHPLCチャートを示す。図中の各ピーク上の数値はそれぞれ、下から各ピークの保持時間、含有成分全体に対する面積比(%)および面積を示す。面積比はHPLCのUV光(254 nm)により算出されたものである。
【図8】図8は、2,4-DおよびBAをそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地中で15日間培養された成分生産系から回収された成分のHPLCチャートを示す。HPLCのUV光(254 nm)によれば、NQ801は全体に対して15.8%含まれていることを示す。
【図9】図9は、2,4-DおよびKをそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地中で10日間培養された成分生産系から回収された成分のHPLCチャートを示す。図中のピーク上の数値は保持時間を示す。
【図10】図10は、2,4-DおよびKをそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地中で20日間培養された成分生産系から回収された成分のHPLCチャートを示す。図中のピーク上の数値は保持時間を示す。
【図11】図11は、2,4-DおよびKをそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地中で30日間培養された成分生産系から回収された成分のHPLCチャートを示す。図中の各ピーク上の数値はそれぞれ保持時間を示す。
【図12】図12は、実施例4.3の成分生産系の初代培養〜第三代継代培養における抽出成分のHPLCチャートを示す。これにより継代培養しても生産されたNQ801の相対面積比はほぼ変化しないことが示される。
【図13】図13は、NAAおよびBAをそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地中で15、30および60日間懸濁培養された成分生産系ならびに2,4-DおよびBAをそれぞれ1.0 ppm濃度で含む培地中で30日間懸濁培養された成分生産系から回収された成分のHPLCチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の製造方法は、(a)成分生産工程、および(b)成分回収工程を含む。
【0034】
(a)成分生産工程において、植物片またはこれからカルス培養により誘導されたカルスを培地中にて培養し、有効成分を生産する。
【0035】
植物片は植物体の任意の部位から採取する。植物体としては、ノウゼンカズラ科植物、好ましくはノウゼンカズラ科タベブイア属の植物、より好ましくはタベブイア・アベラネダエ(Tabebuia avellanedae)またはタベブイア・インペティギノーサ(Tabebuia impetiginosa)が挙げられる。
【0036】
植物体から植物片を採取する部位としては、葉、茎、根、芽、花、種、胚、樹皮または植物本体などの成長点を有する組織が挙げられる。好ましい部位は、葉または茎である。
【0037】
カルス培養は、分化した植物組織の一部(外植片または植物片)を適当な培地中で培養することを意味する。本明細書において、カルス培養により得られる無定形の組織塊は、「細胞塊」または「カルス」と称する。細胞塊およびカルスには、細胞培養の初期段階において形成される組織塊であって、通常では形成されているか否か明確ではないが、培地の色を変色、好ましくは黄色または赤紫色に変色させる組織塊が含まれる。好ましい細胞塊またはカルスは、ノウゼンカズラ科植物の植物組織から誘導される。より好ましくは、ノウゼンカズラ科タベブイア属植物の植物組織から誘導される。特に好ましくは、タベブイア・アベラネダエまたはタベブイア・インペティギノーサの植物組織から誘導される。
【0038】
培地としては、ムラシゲ・スクーグ(Murashige-Skoog; MS)培地またはリンスマイヤー・スクーグ(Linsmaier-Skoog; LS)培地などを基礎培地とする一以上の液体または固体培地が挙げられる。好ましい培地は、ムラシゲ・スクーグ液体培地を基礎とする。本明細書における培地は、基礎培地と、成長調整物質および有機補充物質とを含む、培地である。培地は、さらに有効成分の生産を阻害しない他の成分を含んでもよい。そのような成分としては、マクロもしくはミクロ塩類またはビタミンが挙げられる。好ましい培地のpHは、5〜6であり、特に好ましくは5.6である。本発明の培地には、成長調整物質を一以上添加することができる。
【0039】
成長調整物質は、カルスの誘導および増殖に影響を与える物質の総称を意味し、植物ホルモンとも称される。好ましい成長調整物質は、オーキシン類、サイトカイニン類およびその混合物からなる群から選択される。成長調整物質の濃度は、0.1〜2.5 ppmである。好ましくは0.5〜2.0 ppmであり、より好ましくは1.0 ppmである。
【0040】
オーキシン類は、成長調整物質の一種であり、天然オーキシンまたは合成オーキシンを意味する。天然オーキシンとしては、インドール酢酸(IAA)、インドール酪酸(IBA)およびその混合物からなる群から選択される物質が挙げられる。好ましい天然オーキシンは、インドール酢酸、4-クロロインドール酢酸またはインドール酪酸である。合成オーキシンとしては、ナフタレン酢酸(NAA)、ナフトキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)およびその混合物からなる群から選択される物質が挙げられる。好ましい合成オーキシンは、ナフタレン酢酸、2-ナフトキシ酢酸または2,4-ジクロロフェノキシ酢酸であり、より好ましくはナフタレン酢酸または2,4-ジクロロフェノキシ酢酸である。
【0041】
サイトカイニン類は、成長調整物質の一種を意味する。好ましいサイトカイニン類は、ベンジルアデニン(BA)またはカイネチン(K)である。
【0042】
有機補充物質は、培地に含まれる有機物質を意味する。好ましい有機補充物質は、糖類、寒天、ゲランガムおよびその混合物からなる群から選択される。懸濁培養における有機補充物質としては、糖類が好ましく、固体培養における有機補充物質としては、寒天、ゲランガムおよびその混合物からなる群から選択される物質が好ましい。好ましい糖類は、二糖であり、特に好ましくはスクロースである。
【0043】
マクロまたはミクロ塩類は、植物の育成培地に含まれてよい無機塩類を意味する。無機塩類としては、N、P、K、Ca、Mg、Mn、Zn、B、Co、Cu、Mo、FeまたはIを構成元素とする物質が挙げられる。
【0044】
ビタミンは、当分野にて通常用いられるビタミンを意味する。好ましいビタミンは、ビタミンB群であるニコチン酸、チアミン、ピリドキシン、イノシトールおよびその水溶性塩からなる群から選択される。
【0045】
有効成分は、植物体に含まれる生理活性を有する種々の物質を意味する。好ましい有効成分は、細胞毒性、抗腫瘍活性または抗がん活性を有する一種以上の成分である。より好ましくは、細胞毒性、抗腫瘍活性または抗がん活性を有するナフトキノン系成分である。さらに好ましくは、式:
【化4】

で示される2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ジオンまたはその塩、水和物もしくは溶媒和物などの誘導体である。特に好ましくは、式:
【化5】

で示されるNQ801(化学名:(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ジオン;NFD(登録商標))またはその塩、水和物もしくは溶媒和物などの誘導体である。
【0046】
成分生産および物質生産は、植物片、または植物組織から誘導されたカルスを培養して植物の有効成分を生産することを意味し、これらは同義である。
【0047】
成分生産工程に要する培養期間は、5〜60日であり、好ましくは15〜45日である。さらに、サイトカイニン類としてベンジルアデニンを用いた場合には、より好ましい培養期間は30〜45日である。サイトカイニン類としてカイネチンを用いた場合には、より好ましい培養期間は15〜30日である。成分生産工程における培養は、液体培養(懸濁培養および静置培養を含む)または固体培養のいずれであってもよく、好ましくは懸濁培養または固体培養である。
培養は、初代培養または二代以上の継代培養のいずれであってもよい。
【0048】
(b)成分回収工程において、上記成分生産工程で生産された有効成分を成分生産系からの抽出により回収する。
【0049】
有効成分は、通常、細胞塊から培地に放出されるため、培地からの抽出により回収することができる。有効成分はまた、細胞塊からの直接抽出または培地と細胞塊の混合物からの抽出によっても回収することができる。
抽出は、通常、培地または培地と細胞塊の混合物に適宜水を加えた後、ハロゲン化アルキル溶媒、例えばクロロホルムなどの有機溶媒で行う。
【0050】
成分生産系は、本発明の成分生産工程で得られた細胞塊、好ましくは該工程で有効成分を生産した細胞塊、該工程で用いられた培地およびその混合物からなる群から選択される物質を意味する。
【0051】
本発明の製造方法は、上記カルス培養段階を細胞増殖工程としてさらに含むことができる。細胞増殖工程において植物体からカルスを誘導および増殖させた後、成分生産工程にて該カルスを培養することができる。
細胞増殖工程にて用いられる培地および培養方法などの条件は、成分生産工程と同一であるか、または異なっていてよい。
細胞増殖工程に要する培養期間は、0〜60日であり、好ましくは30〜45日である。
【0052】
従来、細胞増殖用培地と成分生産用培地とは異なっており、これらを使い分ける必要があった。具体的には、細胞増殖用培地で4〜5週間おきに数代継代培養を行った後、培地を成分生産用培地と交換しなければ、目的の成分を得ることができなかった。すなわち、従来技術では、最終的に目的の成分を得るために、膨大な時間と手間を必要としていた。
【0053】
しかし、本発明の2,4-DおよびBAを含む培地、NAAおよびBAを含む培地ならびに2,4-DおよびKを含む培地を用いた場合には、カルス化から物質生産までを同一の培地で行うことができる(後述の第2表および第3表を参照のこと)。言い換えれば、本発明は、当分野にて通常行われている細胞増殖工程におけるカルスの継代培養が必須ではないため、細胞増殖工程を経なくても、成分生産工程のみでカルスの形成および物質生産が可能であるという予想外の効果を奏する。
【0054】
本発明はまた、従来のカルス化および継代培養後の成分生産と比較し、通常では考えられない極めて早い段階で有効成分を生産しうるという顕著な効果も奏する。すなわち、本発明は、継代培養によりカルスを成長させ、次いで成長したカルスを成分生産用培地に移し替えるという手間を省いて、目的の成分を得ることができるという有利な効果を奏する。
【0055】
本発明はさらに、NAAおよびBAを含む培地を用いた場合には、カルス化から物質生産までを同一の培地で行うことができることに加えて(後述の第2表および第3表を参照のこと)、カルスの継代培養ができるという特徴も有する。この点、カルスの継代培養の際に回収された培地から有効成分を抽出することができるうえ、継代培養したカルスを新たな培地に移し替えることによりさらなる物質生産を行うことができるため、本発明は安定的かつ持続的な有効成分の製造をもたらす。
【0056】
上記成分生産工程および細胞増殖工程にて用いられる植物体は、植物の種子からの栽培により得てもよい。
【0057】
植物体の栽培は、好ましくはビニールハウス中、25〜35℃にて明期を含む条件(暗期8時間、明期16時間)で行う。成長した植物体は、殺菌した後、上記成分生産工程または細胞増殖工程に用いることができる。
【0058】
植物体の殺菌は、強アルカリ性塩を含むアルコールにより行い、好ましくは60〜80%エタノールおよび1%次亜塩素酸ナトリウムの混合物で5〜10分間行う。より好ましい殺菌は、70%エタノールおよび1%次亜塩素酸ナトリウムの混合物で10分間行う。
【0059】
本明細書における成分生産系は、直接的(例えばそのままで)または間接的に(例えば粉末または液体状態などにて)、食品、医薬または医薬組成物に有効成分またはその他の成分として含まれていてよい。
【実施例】
【0060】
参考例1 植物体の栽培
本発明を実施するにあたって、タベブイア・アベラネダエ(タベブイア・アベラネダエの種子はタヒボジャパン株式会社より入手可能;Tabebuia avellanedae seed (Lot: 000717))の栽培を行った。播種用培地として、1%の無栄養の寒天培地を使用した。該植物は一週間ほどで発芽し、次いで園芸用土(割合は赤玉土7:バーミキュライト3)に鉢上げして、温度25℃、明期16時間、暗期8時間の人工気象器内で生育させた。タベブイア・アベラネダエは南米アマゾン原産であるので、温度を28℃に上昇させ、霧吹きなどにより湿度を上昇させたところ、成長点からツル状に成長した。ある程度成長させた後、インキュベータの中に簡易ビニールハウスを作って該植物を栽培した。簡易ビニールハウス内で温度を地温30℃まで上昇させ、湿度も上昇させると、該植物は横に伸び、葉や茎が成長した。
【0061】
参考例2 殺菌方法の検討
参考例1にて栽培された植物体の殺菌方法を検討した。70%エタノールのみ(和光純薬工業株式会社より入手可能)、および70%エタノールと1%次亜塩素酸ナトリウム溶液(和光純薬工業株式会社より入手可能)の二種類の殺菌用溶媒を用いて、殺菌により適当なものを検討した。
【0062】
具体的には、殺菌は、70%エタノールのみで2分間(α)と、70%エタノールで1分間および次亜塩素酸ナトリウムで10分間(β)との二種類を用いてクリーンベンチ内で行った(図1を参照のこと)。70%エタノールのみで殺菌したものでは、2日後、植物体はすべて枯死してしまったが、70%エタノールおよび次亜塩素酸ナトリウムで殺菌したものでは、植物体の枯死は確認されなかった。結果として、βの殺菌方法が望ましいことが判明したので、以下の実施例ではβの方法を用いて植物体を殺菌した。
上記の方法で殺菌した植物体を滅菌水で数回洗浄した後、該植物体からリーフディスク(葉:約1 cm2、茎:1 cm長の切片)を作成し、以下の実施例に用いた。
【0063】
実施例1 細胞増殖工程における培地スクリーニング
培地の基本組成としては表1に示されるムラシゲ・スクーグ(MS)培地を用い、培養条件は30℃、暗期24時間とした。
【表1】

【0064】
カルスの形成および増殖の観点からカルス化の頻度および生育の状態を調べるため、成長調整物質の種類および濃度を検討した。
本実施例で培地に添加した成長調整物質は、ナフタレン酢酸(以下、NAA)、ベンジルアデニン(以下、BA)、一般にタベブイア・アベラネダエの植物片のカルス化を促すとされるカイネチン(以下、K)およびインドール酢酸(以下、IAA)、およびナフトキノン系成分の抽出を促すとされる2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(以下、2,4-D)を用い、これらのオーキシン類とサイトカイニン類との組み合わせでスクリーニングを行った。成長調整物質の濃度は、それぞれ0.5、1.0および2.0 ppmとした。
【表2】

◎:カルス化が起こり、カルス塊(細胞塊)が日に日に成長し続けた。
○:カルス化が起こったが、カルス塊(細胞塊)の成長が遅かった。
×:カルス化が起こったが、カルス塊(細胞塊)は成長せず黒色化した。
【0065】
細胞増殖工程において、成長調整物質を含まない培地ではカルス化も成分生産もなかった。
第2表に示されるように、培地にNAAおよびBAからなる成長調整物質を添加した場合には、カルス塊の成長が遅く、IAAおよびKからなる成長調整物質を添加した場合には、カルス塊の成長に関し他の培地よりも優れていた。
一方、培地に2,4-DおよびBAからなる成長調整物質を添加した場合には、カルス化は起こったが、カルス塊は黒色化した。
また、培地に2,4-DおよびKからなる成長調整物質を添加した場合には、他の培地を用いた場合よりもカルス化が早く、カルス塊の黒色化も早かった。
【0066】
実施例2 成分生産工程における培地スクリーニング
実施例2.1 成長調整物質の濃度の検討
カルスから生産されたナフトキノン系成分が培地に混入し始めると、培地が黄色く変色した。培地中のナフトキノン系成分含有濃度の度合いは、視認することが出来たので、これを結果とした。物質生産の観点から、成長調整物質の種類、濃度、培養期間、およびカルス化〜ナフトキノン系成分抽出における成長調整物質の組合せを検討した。
【0067】
【表3】

A:抽出前の培地が非常に濃い黄色を示した。
B:白色紙上に置いたときに、抽出前の培地の黄色が視認できた。
C:無色透明(抽出後の有機溶媒層も黄色を呈さなかった)。
成分生産工程において、成長調整物質を含まない培地ではナフトキノン系成分の生産は確認できなかった。
【0068】
第2表および第3表は、細胞増殖用培地および成分生産用培地として2,4-DおよびBAを含む培地または2,4-DおよびKを含む培地を用いた場合には、他の培地を用いた場合と比較して、形成されたカルスが黒色化したにもかかわらず、成分生産工程において効率的にNQ801またはその誘導体を生産したことを示す。
さらに、IAAおよびKを含む培地を用いた場合には、カルス化の点では優れていたが、NQ801は生産されなかった(第2表および第3表を参照のこと)。
【0069】
実施例2.2 培養期間の検討
【表4】

A:抽出前の培地が非常に濃い黄色を示した。
B:白色紙上に置いたときに、抽出前の培地の黄色が視認できた。
C:無色透明(抽出後の有機溶媒層も黄色を呈さなかった)。
−:未検討。
【0070】
第4表に示されるように、培養期間によってナフトキノン系成分の生産量が変化したものは、NAAおよびBAからなる成長調整物質を添加した培地のみであった。
2,4-DおよびBAならびに2,4-DおよびKからなる成長調整物質を添加した培地から非常に濃い黄色成分が抽出された。これらの培地では、置床後、5〜10日で培地にナフトキノン系成分が生産され始めた。
さらに、2,4-DおよびKからなる成長調整物質を添加した培地では、置床後20日でも濃い黄色成分であるナフトキノン系成分が生産された。
【0071】
実施例2.3 継代培養の検討
NAAおよびBAを1 ppm濃度にて含む培地条件下、植物体を培養した。培養開始から一ヶ月経過した後、同じ成分の培地に継代を行った(図2を参照のこと)。カルス化すると、培地の色が黄色に変色し、ナフトキノン系成分が生産されたと考えられる。これにより、上記培地を用いた場合には、カルス化から物質生産までを同一の培地で行うことができることに加えて(第2表および第3表を参照のこと)、カルスの継代培養ができることが判明した。
【0072】
実施例3 成分生産工程における懸濁培養
細胞増殖工程にて黄色成分が現れたタベブイア・アベラネダエ由来のカルスをMS液体培地にて培養した。カルスの懸濁培養によって、カルス本体からナフトキノン系成分が抽出されるかを検討した。成長調整物質はそれぞれ1.0 ppm濃度のNAAおよびBAを用いた。培養開始後一週間で培地が黄色に変色した(図3を参照のこと)。この培地をクロロホルムで抽出し、濃縮して定量したところ、液体培地150 ml中ナフトキノン系成分20 mgを得た。再度、同じ手順で行ったが、一ヶ月培養しても培地に色は付かなかった。
【0073】
実施例4 成分生産系からのナフトキノン系成分の抽出(成分回収工程)および分析
実施例4.1 定量分析
成分生産系で生産されたナフトキノン系成分と見られる物質が培地に混入し始めると、黄色く変色した(図4を参照のこと)。当該成分を同定するため、薄層液体クロマトグラフィー(TLC)分析を行った。
【0074】
まず、容器に培地200 mlとクロロホルム300 mlを合わせ、目的の成分をクロロホルムにより培地から抽出した。これを吸引ろ過し、エバポレーターで濃縮を行った。濃縮後、得られたナフトキノン系成分の質量は14 mgであった。
【0075】
実施例4.2 TLC分析
次に、TLC板(Merckシリカゲル60F254プレート)にNQ801と成分生産系から抽出された成分をスポットしたものを、展開溶媒としてノルマルヘキサン:酢酸エチル(7:3)を用いて分離した。
【0076】
成分生産系で生産された成分を濃縮した後、TLC板に数回スポットした。これをUV(UV IRRADIATER(相互理化学硝子製作所);UV光254 nm)で検出した結果、成分生産系で生産された成分中に純粋なNQ801と同じ位置の成分およびその前後に数種類の成分が確認できた。
【0077】
実施例4.3 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析
成分生産系における初代培養成分の濃縮画分をHPLCにより分析し、HPLCパターンをNQ801と比較した。
なお、本実施例では株式会社島津製作所製LC-10AのHPLCシステムを用いた。
【0078】
初代培養成分の濃縮抽出物(NAA+BA 1.0 ppm、培養期間一ヶ月)およびこれをNQ801と混合した成分をHPLCにより分析した。
図5に示されるように、成分生産系で生産された成分にNQ801が含まれていることが分かった。
【0079】
初代培養成分の濃縮抽出物のIT-TOF-MS(株式会社島津製作所製LCMS-IT-TOF)分析結果を図6に示す。NQ801の他にもその分子量に似たピークがいくつか存在したが、驚くべきことに、本発明の製造方法により、NQ801が主要な成分の一つとして選択的に得られた。
HPLCのUV光(254 nm)で得られたピークの面積比から算出すると、成分生産系で得られた細胞塊またはカルスは、成分生産系の総質量に対して5〜15質量%以上のNQ801を含有することが分かった(図7および8を参照のこと)。
【0080】
特に、2,4-DおよびBAを含む培地を用いた場合では、植物組織の一部(植物片)を培地に静置後数日で培地の色が黄色に変色した。図7に示されるように、静置後5日目においてNQ801が成分全体に対する面積比として約9.3%生産されたことが確認できた。また、2,4-DおよびBAを1.0 ppm濃度にて含む培地において15日間培養した場合には、全成分の面積比に対してNQ801が15.8%生産された(図8を参照のこと)。そして、2,4-DおよびKを含む培地を用いた場合では、静置後10日目および30日目にてNQ801が成分全体に対する面積比としてそれぞれ50%および80%生産された(図9および11を参照のこと)。
【0081】
以上のことから、これらの培地を用いた場合には、カルスの明確な形成を経ることなく、NQ801またはその誘導体が生産されたと考えられる。従来法によりタベブイア・アベラネダエの樹皮から抽出されるNQ801は0.001質量%以下であることから、本発明の方法により予想外かつ有意な量でNQ801を生産できることが分かった。
【0082】
次に、初代培養〜第三代継代培養までの濃縮抽出成分のHPLCパターンを比較した。結果を図12に示す。
初代培養成分は一ヶ月の培養期間で行い、二代目および三代目はそれぞれさらに5日培養したものから抽出した。初代培養、第二代継代培養および第三代継代培養の濃縮後のナフトキノン系成分の質量はそれぞれ、14、15および15 mgであった。
初代培養〜第三代継代培養により得られたナフトキノン系成分の生産量の成分生産系全体に対するピーク面積比はほぼ変化しなかった。従って、本実施例により本発明の成分生産系においてカルスの継代培養は不要であることが判明した。
【0083】
成分生産工程における懸濁培養について、NAAおよびBAを1.0 ppm濃度で含む培地および2,4-DおよびBAを1.0 ppm濃度で含む培地における成分生産系成分をHPLCにより測定した。HPLCチャートを図13に示す。図13に示されるように、すべての培養条件においてNQ801の生成が確認された。
【0084】
細胞毒性試験
本発明の成分生産工程で用いた培地の抽出エキスの細胞毒性試験を行った。具体的には、以下の試験例1および2のように行った。
【0085】
試験例1 A-549細胞(肺がん細胞)に対する抗がん活性
A-549細胞(肺がん細胞;株番号ECACC86012804;当時の大日本製薬株式会社ラボラトリープロダクツ部より入手)を、予めウシ胎児血清(FBS)20%を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を入れた35 mmシャーレに1x105/mlの濃度にて播種した。これを5%CO2中で36℃にて1日間インキュベートし、シャーレ底に細胞が密着していることを確認した。得られたA-549細胞を三群に分け、第一群には本発明の成分生産系で用いた培地の抽出エキスを、第二群には抗がん活性を有することが知られているNQ801(特許文献2を参照のこと)を、第三群には従来法によるタベブイア・アベラネダエ樹皮からのエーテル抽出画分をそれぞれ1、10、100および1000μg/mlの濃度にて添加した。これらを36℃にて3日間インキュベーションし、生存細胞を計数し、生存率を算出した。結果を第5表に示す。
【0086】
試験例2 MCF-7細胞(乳がん細胞)に対する抗がん活性
MCF-7細胞(乳がん細胞;株番号ECACC86012803;当時の大日本製薬株式会社ラボラトリープロダクツ部より入手)について、試験例1と同様の手順により細胞毒性試験を行った。結果を第5表に示す。
【0087】
【表5】


第5表は、A-549細胞に関し、1、10および100μg/mlの濃度において、本発明の成分生産系で用いた培地の抽出エキスがNQ801とほぼ同程度の抗がん活性を示すことを明らかにする。
第5表は、MCF-7細胞に関し、1および10μg/mlの濃度において、本発明の成分生産系で用いた培地の抽出エキスがNQ801とほぼ同程度の抗がん活性を示し、100μg/mlの濃度ではNQ801と抗がん活性に全く差が見られないことを示す。
【0088】
試験例1および2の結果から、本発明の成分生産系で用いた培地の抽出エキスからNQ801を単離精製しなくても、それ自体がNQ801と同程度の活性を示すことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の成分生産系で用いた培地からの抽出物は、細胞毒性、抗腫瘍活性および抗がん活性を示すことから、それ自体医薬、薬学、食品および生化学分野などの種々の分野にて利用することができる。本発明の成分生産系は、そのHPLCパターンから複数の成分を含有していると考えられるが、これをそのまままたは粉末化もしくは液体化して、有効成分またはその他の成分として組成物または食品などに含まれていてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノウゼンカズラ科植物の細胞塊を一以上の培地中にて懸濁培養または固体培養することにより抗がん活性成分を生産する成分生産工程(a)を含むことを特徴とする、抗がん活性成分の製造方法。
【請求項2】
さらに工程(a)で得られた細胞塊、工程(a)で用いられた培地またはその両者から一種以上の抗がん活性成分を回収する成分回収工程(b)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ノウゼンカズラ科植物がタベブイア・アベラネダエ(Tabebuia avellanedae)またはタベブイア・インペティギノーサ(Tabebuia impetiginosa)である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
培地が成長調整物質および有機補充物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
成長調整物質がオーキシン類、サイトカイニン類およびその混合物からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
オーキシン類がナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、インドール酢酸(IAA)、4-クロロインドール酢酸、インドール酪酸(IBA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)およびその混合物からなる群から選択され、サイトカイニン類がベンジルアデニン、カイネチン(K)およびその混合物からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
オーキシン類およびサイトカイニン類がそれぞれ0.1〜2.5 ppm濃度である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
有機補充物質が糖、寒天、ゲランガムおよびその混合物からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項9】
抗がん活性成分が式:
【化1】

で示される2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ジオンまたはその誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
抗がん活性成分が式:
【化2】

で示されるNQ801(化学名:(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ジオン)またはその誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
抗がん活性成分が工程(a)で得られた細胞塊、工程(a)で用いられた培地またはその両者の総質量に対して少なくとも5質量%製造される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
さらにノウゼンカズラ科植物の細胞を懸濁培養または固体培養により増殖させる細胞増殖工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
請求項1の工程(a)で得られた、細胞塊。
【請求項14】
請求項1の工程(a)で得られた細胞塊、工程(a)で用いられた培地またはその両者を含有する、食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−220606(P2010−220606A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201563(P2009−201563)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(592198736)タヒボジャパン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】