説明

ニオブ化合物を含有する調製物

【課題】本発明の課題は、適切な条件下でか焼した場合に、少なくとも99%の純度を有し、ひいては錯化剤または対イオンからの不純物を1%まで含有し、質量%で表される高いニオブ含有率(22質量%より大)を有する五酸化ニオブが得られる、優れた水溶性(30gNb/lより大)を有するニオブ化合物を提供することである。
【解決手段】アンモニウム(ビスアクオオキソビスオキサラト)ニオベート(NH4)[Nb(O)(C242(H2O)2]およびその水和物を、水、補助剤、乳化剤、抗菌剤、水溶性バッグ、水溶性ポリマー、ポリビニルアルコール、シュウ酸、シュウ酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1の別の成分と一緒に含有する調製物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のニオブ化合物、その製造方法および該ニオブ化合物を含有する調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ化合物は、他の適用の中でも、特定の触媒またはセラミック材料のためのドーパントとして使用することに適している。セラミック材料は、たとえば多層セラミックキャパシタ、圧電セラミックおよびフェライトのような適用において使用されるエレクトロセラミックスを含む。
【0003】
この出願では、触媒担体または活性種をドーパントと混合し、かつその後の製造工程でか焼する。か焼は通常、ニオブ化合物が純粋な五酸化ニオブへと変換される条件下で行われる。このような適用は、エタンの水素化分解、炭化水素の脱水素、重縮合における固体の酸性触媒、またはアンモ酸化を含むが、これらに限定されない。ニオブ化合物が使用されている触媒は、特にブタンをアンモニアと酸素との存在下でアクリロニトリルへと変換するため、ブタンを酸素の存在下でアクロレインへと変換(酸化)するため、アルカンの酸化による脱水素、たとえばプロパンからプロペンへの変換のための触媒である。このような適用はたとえば、非特許文献1に開示されており、この開示は引用することによって全ての有用な目的のために包含される。ニオブ化合物との混合はしばしば、水性の溶液、懸濁液または乳液中で行われる。
【0004】
このような適用のために、ニオブ化合物が優れた水溶性を示し、適切な条件下でか焼した場合に、錯化剤からの不純物または対イオンを含有しない純粋な五酸化ニオブが得られ、かつ高いニオブ含有率(質量%)を有しており、従って、ニオブ化合物を少量添加することによって適切な高いニオブ濃度を有する水溶液を製造することができることは重要である。
【0005】
非特許文献2には、Limar等が、シュウ酸ニオブ錯体であるNa[Nb(O)(C242(H2O)]×4H2Oならびに(NH43[Nb(O)(C243]×xH2Oを開示している。しかしこれらの化合物は、上記の条件を完全に満足するものではない。対イオンとしてナトリウムを用いた場合、か焼後にナトリウム不純物が五酸化ニオブ中に残留する。アンモニウム錯体は3倍の負電荷を有するため、低いニオブ含有率を生じる。3つのシュウ酸イオンと配位することにより同様に、ニオブ含有率が質量%で低下する効果を生じる。さらに、それぞれわずか20gNb/lおよび40gNb/lにすぎない水溶性を著しく改善する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chemical Reviews 1999(99)、第3603〜3624頁
【非特許文献2】Russian Journal of Inorganic Chemistry、第9巻、第10号、1964年10月、第1288〜1291頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、適切な条件下でか焼した場合に、少なくとも99%の純度を有し、ひいては錯化剤または対イオンからの不純物を1%まで含有し、質量%で表される高いニオブ含有率(22質量%より大)を有する五酸化ニオブが得られる、優れた水溶性(30gNb/lより大)を有するニオブ化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、ニオブ化合物であるアンモニウム(ビスアクオオキソビスオキサラト)ニオベート(NH4)[Nb(O)(C242(H2O)2]、および式1
【化1】

の相応する三水和物であるアンモニウム(ビスアクオオキソビスオキサラト)ニオベート三水和物(NH4)[Nb(O)(C242(H2O)2]×3H2Oにより解決される。
【0009】
本発明による化合物により、適切な条件下でか焼した場合に、99%の純度を有し、錯化剤または対イオンからの不純物を1%未満含有する五酸化ニオブが得られる。有利には該化合物は、少なくとも99.9%、特に少なくとも99.99%の純度を有する。図1は、X線構造分析により測定した、本発明による化合物の三次元構造を示している。数字はÅでのそれぞれの結合の長さを示す。
【0010】
本発明による化合物は、20℃で52gNb/l(1リットルあたりのニオブのグラム数)の優れた水溶性を示し、かつ最大の溶解度は温度50℃で114.8gNb/lであるが、これに対して従来技術による化合物の溶解度は上記のとおりである。
【0011】
本発明による化合物は、24.3質量%のニオブ含有率を有するが、その一方で、従来技術による化合物(NH43[Nb(O)(C243]は、単にニオブ21.8質量%のニオブ含有率を有するのみである。材料中での高いニオブのパーセンテージは、錯体中のその他の全ての元素、たとえば窒素および炭素が、か焼の際に除去されるため、経済的に有利である。
【0012】
アンモニウム以外の対イオンは通常、不適切である。というのも、その他の対イオン、たとえばアルカリイオンは、か焼の際に不純物を生じ、その一方でアンモニウムが気体状のアンモニアとして気化するか、またはこのようなカチオンはアンモニウムイオンよりも高い分子量を有するためにニオブの低い質量%を生じるからである。
【0013】
本発明はまた、本発明による化合物の製造方法にも関する。
【0014】
従来技術による化合物は、水酸化ニオブとシュウ酸アンモニウムとを水中に溶解し、かつその後の工程で、ニオブ化合物の溶解度を下げるために、その後に水を低減することによって体積を低減するか、またはアセトンを添加し、ニオブ化合物はいずれの場合にも沈殿する。ニオブ濃度は約2モルNb/lである(1リットルあたりのニオブのモル数)。
【0015】
これに対して本発明による方法では、水酸化ニオブとシュウ酸とを水中に溶解し、かつ気体状のアンモニアを通過させる。アンモニアが溶解し、かつシュウ酸を中和し、これによって約35℃〜約50℃まで、有利には約40℃〜約45℃まで昇温される。反応を早めるために、反応混合物を80℃未満まで、有利には70℃未満まで、およびさらに有利には約60℃に加熱することも可能である。
【0016】
添加の順序は有利には、水酸化ニオブ、シュウ酸およびアンモニアである。原料は通常、撹拌下で水に添加される。原料の添加は、一度に行ってもよいが、しかし複数回に分けて添加することが、特に本発明による化合物を比較的大量に製造する場合には、有利である。
【0017】
ニオブ対シュウ酸のモル比は、1:2.8であるが、この計算は、結晶水を含むシュウ酸のモル量に基づいている。
【0018】
ニオブの濃度は、約2モルNb/l未満でなくてはならず、有利には約1.4モルNb/l〜約1.9モルNb/l、特に約1.5モルNb/l〜約1.7モルNb/l、さらに有利には約1.6モルNb/l以下である。
【0019】
アンモニア水溶液を気体状のアンモニアの代わりに使用してもよいが、ただし、ニオブ濃度は上記のとおりの適切な水準である。
【0020】
有利にはアンモニアを25質量%含有する水溶液を本発明による方法のために使用する。
【0021】
反応混合物のpH値は約3.5未満、さらに有利には、反応混合物のpH値は約1〜約3であり、特に約1〜約2である。
【0022】
添加されるアンモニアの量は、このpH値を達成するために適切であり、かつ当業者であれば容易に計算できる。
【0023】
アンモニアの添加が終了した後で、反応混合物を約25℃以下の温度に、特に10℃〜23℃、または15℃〜22℃、または18℃〜20℃に冷却する。
【0024】
反応混合物の量に依存して、妥当な時間で冷却を達成するために、つまり24時間以下で所望の温度に冷却するために、積極的な冷却が必要とされる。積極的な冷却は、当業者に公知の任意の適切な手段により、たとえば反応容器を外部で冷却することにより、または反応容器内に設置された熱交換器に冷媒を循環させることにより実施することができる。
【0025】
有利には40℃から20℃への冷却は、4時間以内に行われる。冷却時間中の平均的な冷却速度は、約3℃/時〜約10℃/時、有利には約4℃/時〜約8℃/時の範囲であり、特に約5℃/時である。
【0026】
反応生成物は冷却の間に沈殿するので、これを反応混合物から濾別し、引き続き約80℃未満、有利には約75℃未満、特に約70℃の温度で乾燥させる。乾燥は、空気中で、不活性ガス、たとえばアルゴンまたは窒素中で、または減圧下で、空気もしくは不活性ガスの存在下に行うことができる。
【0027】
更なる精製は、付加的な再結晶により達成することができる。有利には前記の再結晶は、水を溶剤として使用して実施する。上記の乾燥工程を、同様に実施して水を除去することができる。
【0028】
意外なことに、反応混合物中のニオブ濃度は、従来技術による方法におけるよりも低いにもかかわらず、より高いニオブ含有率を有する反応生成物が製造されたことが判明した。この理由のため、本発明による方法は、エネルギー消費量が少ないためにより経済的であり、有機溶剤は関与せず、かつ得られる化合物のより高いニオブ含有率を達成することができる。
【0029】
本発明はまた、本発明による化合物であるアンモニウム(ビスアクオオキソビスオキサラト)ニオベート(NH4)[Nb(O)(C242(H2O)2]を含有する調製物にも関する。最も単純な場合には、本発明による調製物は、アンモニウム(ビスアクオオキソビスオキサラト)ニオベート(NH4)[Nb(O)(C242(H2O)2]と水とを含有する。このような調製物は、水中の該化合物の飽和水溶液であってもよいし、または水性スラリーであってもよいが、しかし付加的な成分、たとえば乳化剤のような助剤または殺菌剤、除草剤もしくは殺菌剤のような抗菌剤を含有していてもよい。有利には該調製物は、シュウ酸および/またはシュウ酸アンモニウムを含有している。さらに有利にはシュウ酸および/またはシュウ酸アンモニウムは、5質量%〜10質量%、有利には7質量%〜9質量%、さらに有利には8質量%の量で存在している。質量パーセントの記載は、シュウ酸およびシュウ酸アンモニウムそれぞれの量を表す。
【0030】
該化合物は、ヒトの皮膚もしくは呼吸器に対して刺激性であるか、またはヒトの健康および快適さに影響を与える場合があるか、または植物、動物または環境に対して不利な影響を与える場合がある。これらの理由のため、本発明による化合物は、微粉を生じ、従って周囲の環境に該化合物が制御されない方法で曝露される傾向の低い形で提供されることが有利である。さらに、本発明による化合物を定義された量で提供することにより、重量もしくは体積に基づいた簡単な計量が可能になる。このような溶液またはスラリーは、体積に基づいた計量にとって適切である。
【0031】
より頻繁に使用され、かつ曝露および微粉の生成が実際に材料を計量する間に回避されるべきであるのみでなく、秤量の間にも回避されるべきである重量に基づいた計量にとって、本発明による化合物の定義された量を、使用の際に破壊される容器、たとえばバッグに収容することは有利である。
【0032】
より具体的には、本発明による調製物は、本発明による化合物の定義された量をバッグ内に含んでいる。有利にはこのバッグは、本発明によるニオブ化合物が触媒またはフェライトを製造するために使用される反応媒体中で可溶性である。最も有利には、該バッグは、国際特許出願WO9845185、WO9737903およびUS特許US−B−5666785に記載されているバッグ、ならびに"Verpackungs−Rundschau(包装の展望)"、1997年11月、第40頁に記載されているように、水溶性ポリマーからなっており、これらは引用することにより全ての有用な目的のために包含される。
【0033】
バッグは水中に投入されると溶解するにもかかわらず、内側が耐水性を備えていることは特に有利である。このようにして、水性の溶液またはスラリーを、水溶性のバッグに入れて、水性の反応媒体に投入することができる。従って本発明は、本発明による化合物、該化合物の溶液またはスラリーを含有する可溶性ポリマーフィルムからなる容器を含む調製物にも関する。有利な実施態様では、ポリマーフィルムはポリビニルアルコールからなるフィルムである。もう1つの有利な実施態様では、該調製物は、ポリビニルアルコールのフィルムを含む閉じられたバッグ内の、本発明によるニオブ化合物のスラリーまたは粉末である。
【0034】
もう1つの実施態様では、該調製物は、ポリビニルアルコールのフィルムを含む閉じられたバッグ内の本発明による固体のニオブ化合物である。
【0035】
本発明のさらにもう1つの実施態様では、該調製物は、本発明によるニオブ化合物を含有する固体の成形された物品である。この固体の成形された物品は、ニオブ化合物を通常の添加剤、助剤、滑剤などと混合し、かつこうして得られた混合物をプレス成形することにより製造することができる。成形された物品は、意図された使用のために適切な任意の形状を有していてよく、たとえば立方形、球形、円柱形、立方形またはこれらの組み合わせの形状であってよい。成形された物品の大きさは通常、意図された使用のために適切な範囲であり、一般にそれぞれの成形された物品の中心からその最も外側の端部までの直径が、0.5cm〜10cmである。有利にはニオブ化合物は、タブレットの大きさと形状とを有する。より具体的には、このような大きさと形状は、高さよりも直径が大きく、かつ高さが約0.1cm〜約3cmの範囲内であるか、または約0.3cm〜約2cm、特に約0.4cm〜約0.8cmの範囲内であり、直径は同時に有利には約0.3cm〜約5cmであるか、または約0.5cm〜約4cm、特に約0.8cm〜約2cm、とりわけ約1.5cm〜約1cmである。この代替形では、このようなタブレットの大きさおよび形状は、約0.1cm〜約3cmの直径、または約0.3cm〜約2cmの直径を有する球形である。
【0036】
本発明によるニオブ化合物は、滑剤または助剤、たとえば水溶性のワックスまたはポリマー、たとえばパラホルムアルデヒド、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、高度に酸化されたポリワックスまたは脂肪酸のアルカリ塩もしくはアルカリ土類塩と混合することができる。有利な実施態様では、添加剤は、水と接触して体積の膨張を示し、従って成形された物品、たとえば本発明によるニオブ化合物を含有するタブレットを破壊する添加剤である。このような添加剤は、崩壊剤としても公知であり、医薬の適用においても使用されており、かつ通常は、セルロース誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、またはデンプン誘導体、たとえばアルカリ金属のデンプングリコレート、たとえばグリコール酸ナトリウムデンプンを含み、後者はJRS Pharma LPからEXPLOTAB(登録商標)またはVIVASTAR(登録商標)として市販されている。適切な崩壊剤は、EP−A−1006148にも記載されており、これは引用することにより全ての有用な目的のために包含される。
【0037】
別の実施態様では、これらの添加剤は、水と接触して気泡を発生し、従って本発明によるニオブ化合物を含有する成形された物品を破壊する添加剤、たとえば固体の酸性化合物および炭酸塩である。より具体的には、本発明は、本発明によるニオブ化合物と炭酸塩および固体の酸性化合物との混合物を含み、これは有利には成形された物品、たとえばタブレットへとプレス成形される。一般に、全ての水溶性炭酸塩、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、またはこれらの混合物を使用することができる。固体の酸性化合物は、固体の酸、たとえばクエン酸もしくは酒石酸であっても、または無機酸の塩、たとえば硫酸水素ナトリウム、特にシュウ酸であってもよく、これはなお、化合物の製造からの不純物として存在していてもよい。しかし通常は、十分な量の固体の酸性化合物、たとえばシュウ酸を添加することが要求される。有利な実施態様では、シュウ酸および炭酸アンモニウムを本発明によるニオブ化合物と混合し、かつ成形された物品、好ましくはタブレットへとプレス成形する。この調製物は、成形された物品の容易な崩壊および本発明によるニオブ化合物の迅速な溶解を確保する。ニオブ化合物はしばしば乾燥およびか焼される水溶液に添加されるので、炭酸アンモニウムとシュウ酸との前記の混合物は、これらの化合物が、一緒に水中に投入された場合に、シュウ酸アンモニウムを形成し、これは金属塩を含む残留物を残すことなくか焼することができるため有利である。
【0038】
本発明によるニオブ化合物の意図された使用が、前記ニオブ化合物を酸性の水溶液へ添加することを含む場合、炭酸アンモニウムおよび/またはその他の可溶性の炭酸塩が存在していれば十分であり、固体の酸性化合物は不要である。この場合、水溶性炭酸塩、たとえば炭酸カルシウムを使用するとしても、水溶性の炭酸塩が有利である。
【0039】
本発明のもう1つの実施態様では、調製物が、実質的に本発明によるニオブ化合物からなるプレス成形された物品である。意外なことに、本発明によるニオブ化合物は、容易に、異なった大きさと形状の成形された物品へとプレス成形することができ、かつ添加剤もしくは助剤を添加しなくても水と接触すると容易に溶解し、かつ前記の成形された物品は、優れた機械的安定性を有しており、微粉の発生が回避されることが判明した。成形された物品は、有利には本発明によるニオブ化合物からなり、かつ該化合物からプレス成形により得ることができる。有利には前記の成形された物品は、上記の大きさと形状とを有するタブレットである。従って、本発明によるニオブ化合物からなるタブレットは、単に、その他の成分としては前記のニオブ化合物の製造に由来する通常の不純物を含有するのみである。
【0040】
本発明はまた、
本発明によるニオブ化合物を準備する工程、
場合により該ニオブ化合物を固体の酸性化合物および固体の炭酸塩と混合して、第一の混合物を得る工程、
該ニオブ化合物または該第一の混合物をダイへ移す工程、
ダイの中身をプレスして成形された物品を得る工程
を有する、本発明によるニオブ化合物の成形された物品を製造する方法にも関する。
【0041】
このような方法は、周知の、市販されており、かつたとえば医薬の製造のために使用される慣用の装置中で容易に実施することができる。所望の場合には、ダイの壁、およびダイの内容物をプレスするコアは、滑剤または離型剤が施与されていてもよい。適切な離型剤はたとえば脂肪酸のアルカリ塩またはアルカリ土類塩である。
【0042】
本発明によるニオブ化合物の製造方法はより経済的であり、エネルギー消費量がより少なく、有機溶剤が関与せず、かつ得られる化合物の高いニオブ含有率が達成可能であるため、本発明は環境の保護にも貢献する。
【0043】
従って本発明は、エネルギーの消費量が低減され、有機溶剤が関与しない方法によりニオブ化合物を製造することを含む環境保護のための方法にも関する。有利な実施態様では、この方法は、ニオブ含有率が高められた化合物も十分に提供する。
【0044】
本発明はまた、化学材料、有利には本発明による化合物のバッチ、ロット、または出荷のための製品仕様を作成するための方法にも関し、この方法は、前記バッチ、ロット、または出荷のための少なくとも1の特性値を規定することを含む。特性値は、化合物にとって特有の特性値、たとえば化学式、分子量、特定の元素の質量パーセント、融点、沸点等であってもよいし、またはロット、バッチ、または出荷にとって特有の特性値、たとえば純度、バッチ番号もしくはロット番号、調製物の成分のリスト、粒径、粒子の形状、粒径分布などであってもよい。
【0045】
特にこのような方法は、ロット、バッチまたは出荷あたり、少なくとも1の特性値を規定する工程、前記ロット、バッチまたは出荷の特性値を、ロット、バッチまたは出荷を同定する情報との関連で記録する工程(アーカイビング)、少なくとも1のロット、バッチまたは出荷の少なくとも1の特性値を選択する工程、ロット、バッチまたは出荷を同定する情報との関連で、同定された前記ロット、バッチまたは出荷の少なくとも1の特性値を配列することにより製品仕様を回収する工程、およびロット、バッチまたは出荷を同定する情報と一緒に少なくとも1の特性値を表示することにより製品仕様を作成する工程を含む。
【0046】
本発明の意味での表示とは、たとえばコンピューターのプリントアウトにより印刷することによって、または慣用の印刷によって製品仕様の紙コピーを作成することであってもよいし、あるいはまた製品仕様をコンピューターの表示画面上に表示することに関するものであってもよい。
【0047】
表示は、ロット、バッチまたは出荷を同定する情報との関連で少なくとも1の特性値のアーカイブへのアクセスを有するコンピュータープログラムにより、あるいはウェブのブラウザーに表示されるインターネットのウェブページによって行うことができる。
【0048】
もう1つの実施態様では、製品仕様を作成する方法は、特性値が、化合物のバッチ、ロットまたは出荷のための製品仕様用紙、購入指示書、送り状、契約書、契約のためのウェーバー、またはこれらの組み合わせに含まれている方法である。有利には、該化合物は、本発明による化合物であるか、または異なったニオブ化合物、たとえばシュウ酸ニオブ錯体である。
【0049】
本発明のもう1つの実施態様において製品仕様を作成する方法は、前記の規定が、特定の材料の前記のバッチ、ロットまたは出荷のための少なくとも1の特性値を決定することを含む方法である。決定は、通常の測定方法により前記のバッチ、ロットまたは出荷を測定または分析し、これによりロット、バッチまたは出荷にとって特有の、もしくは化合物にとって特有の特性値を決定することを含む。測定されるべき特性値が、化合物にとって特有の特性値である場合、測定工程は、このような特性値を含む辞書中の化合物特有の特性値にアクセスすることも含む。この辞書は、ライブラリの形で物理的に、または電子データベースの形で入手可能であってよい。後者の場合、前記の決定は、コンピュータープログラムによって実施することができる。
【0050】
本発明のもう1つの実施態様では、製品仕様を作成する方法は、前記の規定が、少なくとも1の界面電位の値により特定の材料のバッチ、ロットまたは出荷を特性決定することを含む方法である。
【0051】
本発明のもう1つの実施態様では、製品仕様を作成するための方法はさらに、特定の材料の前記のバッチ、ロット、または出荷の少なくとも1の形態学的な値、たとえば表面積、粒径、構造、多孔度、またはこれらの組み合わせを規定する工程を含む。
【0052】
このような方法は、製品仕様、有利には上記の製品仕様を顧客に提供する工程、顧客が自分の目的のために適切な少なくとも1のロット、バッチまたは出荷の少なくとも1の特性値を選択する工程、顧客の目的のために適切な化学材料を提供するロット、バッチまたは出荷を同定する工程、前記のロット、バッチまたは出荷を選択する工程、および前記の選択されたロット、バッチまたは出荷の発注をする工程に関する。付加的にこの方法はさらに、発注されたロット、バッチまたは出荷を、ロット、バッチまたは出荷を選択した顧客に提供する工程を含んでいてもよい。
【0053】
本発明はまた、既存の製品記載を、少なくとも1の特性値を追加することにより、特定の材料の等級、型または銘柄に関して更新する工程を含む、化学材料の等級、型、または銘柄の同定を改善する方法にも関する。
【0054】
本発明はまた、前記の製品記載が、カタログ、ウェブサイト、パンフレット、化学材料文献、広告、ラベルまたはこれらの組み合わせ中に存在する、製品仕様を使用することを含む、製品仕様を作成する方法、上記のとおりの化学材料の等級、型または銘柄の同定を改善する方法、または顧客との商取引を行う方法にもする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による化合物の三次元構造を示す図
【実施例】
【0056】
例1:
水酸化ニオブ(241kg、ニオブ含有率:23.6%*)を、撹拌下に水30Lに添加した。引き続きシュウ酸(225kg)およびアンモニア水溶液(33l、NH3 25質量%)を添加した。アンモニアの添加により該溶液は40℃に昇温した。該溶液を一夜攪拌し、かつ次いで23℃に冷却し、所望のシュウ酸ニオブ錯体を溶液から沈殿させた。沈殿物を濾別し、かつ70℃で約20時間乾燥させて、粗製シュウ酸アンモニウムニオブ錯体213kgが得られた。水から再結晶させて、純粋な[NH4][Nb(O)(C242(H2O)2]×3H2O錯体が得られた。
【0057】
例2:
水酸化ニオブ(254kg、ニオブ含有率:24.7%*)を、撹拌下に水34Lに添加した。引き続きシュウ酸(238.4kg)およびアンモニア水溶液(37l、NH3 25質量%)を添加した。アンモニアを添加した後、該溶液は61℃に加熱され、この温度で9時間攪拌した。その後、該溶液を24℃に冷却し、所望のシュウ酸ニオブ錯体を溶液から沈殿させた。沈殿物を濾別し、かつ78℃で約24時間乾燥させて、粗製シュウ酸アンモニウムニオブ錯体204kgが得られた。水から再結晶させると、純粋な[NH4][Nb(O)(C242(H2O)2]×3H2O錯体が得られた。
【0058】
* 水酸化ニオブのニオブ含有率は、使用したバッチの含水率に依存する。
【0059】
例3:タブレットの製造および溶解度の試験
表に記載されている量のシュウ酸アンモニウムニオブ錯体を、P172タイプ(製造業者?、型?)の実験室用プレス中で、直径1cmを有する円柱形の形状を有するタブレットへとプレス成形した。厚さは表中にmmで記載されている。溶解度の試験のために、温度23℃を有する脱塩水100mlをすでに含有している250mlのビーカー中にそれぞれのタブレット5gを添加し、かつマグネチックスターラーにより、長さ3cmを有する攪拌棒の最大速度で攪拌した。清澄で完全に透明な溶液が得られ、固体の断片がなくなるまでの時間を測定した。比較例として、粉末状のシュウ酸アンモニウムニオブ錯体を同一の条件下で使用し、清澄で、固体を含有しない溶液が得られるまでの時間は240秒であった。
【0060】
【表1】

【0061】
例4:機械的特性の試験(「クラッシュ試験」)
上記の表に記載されているそれぞれの大きさのタブレット20個を、40cmの高さから、机の上に自由に落下させた。タブレットは、破壊された材料の屑をいくつか示したにすぎなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ化合物である、アンモニウム(ビスアクオオキソビスオキサラト)ニオベート(NH4)[Nb(O)(C242(H2O)2]およびその水和物。
【請求項2】
請求項1記載の化合物を製造する方法であって、
水酸化ニオブとシュウ酸とを水中に溶解する工程、
アンモニアを添加する工程、
反応混合物を冷却する工程
を有する方法。
【請求項3】
反応混合物中のニオブ濃度が、約2gNb/l未満である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
反応混合物が、約35℃〜約80℃の温度を有する、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
反応混合物を、約25℃以下の温度に冷却する、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
アンモニアの添加を、アンモニア水溶液の添加により、または気体状アンモニアを反応混合物に通過させることにより実施する、請求項2から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
方法が、さらに濾過工程を含む、請求項2から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
方法が、さらに乾燥工程を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
乾燥工程を、約80℃未満の温度で実施する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
式1の化合物を、水、補助剤、乳化剤、抗菌剤、水溶性バッグ、水溶性ポリマー、ポリビニルアルコール、シュウ酸、シュウ酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1の別の成分と一緒に含有する調製物。
【請求項11】
調製物が、式1の化合物の水中の飽和溶液または式1の化合物の水性スラリーを含有する、請求項10載の調製物。
【請求項12】
調製物が、請求項1に記載の化合物の定義された量を、バッグ中に含有する、請求項10記載の調製物。
【請求項13】
バッグが、水中で、または反応媒体中で可溶性のバッグである、請求項12記載の調製物。
【請求項14】
前記調製物が、請求項1記載の化合物、該化合物の溶液または該化合物のスラリーを含有する可溶性のポリマーフィルムからなる容器を含有する、請求項10記載の調製物。
【請求項15】
ポリマーフィルムが、ポリビニルアルコールを含有する、請求項10から14までのいずれか1項記載の調製物。
【請求項16】
前記調製物が、ポリビニルアルコールのフィルムを含有する閉じられたバッグ内の請求項1記載の固体化合物である、請求項14または15記載の調製物。
【請求項17】
触媒、セラミック材料、エレクトロセラミック材料またはフェライトを製造するための、請求項1記載の化合物または該化合物の調製物の使用。
【請求項18】
バッチ、ロットまたは出荷のための少なくとも1の特性値を規定することを含む、請求項1記載の化合物のバッチ、ロットまたは出荷のための製品仕様を作成する方法。
【請求項19】
特定のバッチ、ロットまたは出荷を要求するための、および/または特定の材料の特定のバッチ、ロットまたは出荷を提供するための特性値を含む製品仕様を使用することを含む、顧客と商取引を行う方法。
【請求項20】
特性値が、請求項1記載の化合物のバッチ、ロットまたは出荷のための製品仕様用紙、購入指示書、送り状、契約書、契約のためのウェーバー、またはこれらの組み合わせに含まれている、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記の規定が、特定の材料の前記バッチ、ロットまたは出荷のための少なくとも1の特性値を決定することを含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項22】
前記の決定が、前記のバッチ、ロットまたは出荷を測定または分析することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記の規定が、少なくとも1の界面電位の値により、特定の材料のバッチ、ロットまたは出荷を特性決定することを含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項24】
さらに、少なくとも1の形態学的な値、たとえば表面積、粒径、構造、多孔度、またはこれらの組み合わせを、特定の材料の前記のバッチ、ロットまたは出荷に規定する工程を含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1の特性値を加えることにより、特定の材料の等級、型、または銘柄に関する既存の製品記載を更新する工程を含む、特定の材料の等級、型、または銘柄の同定を改善する方法。
【請求項26】
前記の製品記載が、カタログ、ウェブサイト、パンフレット、特定の材料文献、広告、ラベル、またはこれらの組み合わせに存在する、請求項18、19または25記載の方法。
【請求項27】
請求項1記載の調製物であって、該調製物が、プレス成形された物品である調製物。
【請求項28】
成形された物品が、円柱形または球形の形を有する、請求項27記載の調製物。
【請求項29】
実質的に請求項1記載の化合物からなる、請求項27または28記載の調製物。
【請求項30】
前記の調製物が、請求項1記載の化合物、および少なくとも1の添加剤、補助剤、助剤、離型剤、滑剤、またはこれらの組み合わせを含有する、請求項27または28記載の調製物。
【請求項31】
前記の調製物が、少なくとも1の炭酸塩を含有する、請求項30記載の調製物。
【請求項32】
前記の調製物が、炭酸塩および固体の酸性化合物を含有する、請求項31記載の調製物。
【請求項33】
炭酸塩が、炭酸アンモニウムであり、かつ固体の酸性化合物が、シュウ酸である、請求項32記載の調製物。
【請求項34】
本発明によるニオブ化合物の成形された物品を製造する方法であって、
請求項1記載のニオブ化合物を準備する工程、
場合により該ニオブ化合物を固体の酸性化合物および固体の炭酸塩と混合して、第一の混合物を得る工程、
該ニオブ化合物または該第一の混合物をダイへ移す工程、
ダイの中身をプレスして成形された物品を得る工程
を有する、本発明によるニオブ化合物の成形された物品を製造する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214490(P2012−214490A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142414(P2012−142414)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2008−532633(P2008−532633)の分割
【原出願日】平成18年9月16日(2006.9.16)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】